以下、本発明の実施の形態に係る緩衝器を、鉄道車両等に用いられる油圧緩衝器に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態を示している。この第1の実施の形態では、板部材のディスクバルブ側に、内側環状シートと外側環状シートとを形成した場合を例示している。
図1において、第1の実施の形態による油圧緩衝器1は、例えば鉄道車両の車体と台車(いずれも図示せず)との間に横置き状態で取付けられるものである。この油圧緩衝器1は、後述の内筒6、ピストン7、ピストンロッド8、ピストン流路10、ピストン用板部材11、ディスクバルブ12、ボトムバルブ14を含んで構成されている。
ここで、第1の実施の形態では、油圧緩衝器1を横置き状態で配置しているから、図1においてピストンロッド8の突出側を左側とし、ボトムキャップ3側を右側として説明する。なお、油圧緩衝器1の配置形態は、多くの配置形態の一例を示したもので、図1に示す横置き状態に限らず、縦置き、斜め置きにも配置することができる。
油圧緩衝器1の外筒2は、後述する内筒6の外周側に位置して該内筒6と同軸に設けられている。外筒2の底部側となる右端は、ボトムキャップ3によって閉塞され、左端は、後述のロッドガイド21によって閉塞されている。ここで、ボトムキャップ3には、例えば鉄道車両の車体または台車に取付けられる取付アイ4が設けられ、ピストンロッド8の左端(先端)には、台車または車体に取付けられる取付アイ5が設けられている。
内筒6は、油圧緩衝器1のシリンダを構成するもので、外筒2の内側に該外筒2と同軸に設けられている。内筒6の右端側は、後述のバルブボディ15に嵌合し、このバルブボディ15を介してボトムキャップ3に固定されている。内筒6の左端側は、ロッドガイド21に嵌合することにより、外筒2の開口側に位置決め状態で固定されている。内筒6内には、作動流体としての作動油が封入されている。作動流体としては、作動油に限らず、例えば添加剤を混在させた水等を用いることができる。
内筒6と外筒2との間には円筒状のリザーバ室Aが形成され、このリザーバ室A内には、作動油と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド8の縮小時(縮み行程)に当該ピストンロッド8の進入体積分を補償すべく圧縮されるものである。
ピストン7は、内筒6内に軸方向に摺動可能に挿入(嵌装)されたバルブ部材を構成している。このピストン7は、内筒6内をピストンロッド8側のロッド側油室Bとボトムキャップ3(ボトムバルブ14)側のボトム側油室Cとの2つの圧力室に仕切っている。ピストン7は、内筒6の内周面に対面する円筒部7Aと、この円筒部7Aの左側(ピストンロッド8側)を閉塞するように円筒部7Aの左端部を縮径してなる環状底部7Bとにより有底筒状に形成されている。環状底部7Bの内周側は、ピストンロッド8の取付軸部8Aが挿嵌されるロッド挿嵌孔7Cとなっている。
ここで、図2に示すように、環状底部7Bのピストンロッド8側の端面は、後述のピストン用板部材11が液密状態で当接して取付けられる平坦な取付面7B1となっている。また、ピストン7には、環状底部7Bを軸方向に貫通するように、後述のピストン流路10が設けられている。
ピストンロッド8は、軸方向の一端(左端)が内筒6の外部へ延出されている(図1参照)。一方、ピストンロッド8の軸方向の他端(右端)は、内筒6内に進入してピストン7の軸中心位置に連結されている。これにより、ピストンロッド8の他端側は、ロッドガイド21を介して軸方向に伸長、縮小可能に突出し、取付アイ5を介して例えば鉄道車両の台車に取付けられている。
ピストンロッド8の他側の先端部は、ピストン7との連結部となるもので、縮径されてピストン7のロッド挿嵌孔7Cに挿着される取付軸部8Aとなっている。この取付軸部8Aの先端側には、おねじ部8A1が形成されている。また、図2に示すように、取付軸部8Aの基端側、即ち、ピストンロッド8の本体部分と取付軸部8Aとの間は、取付軸部8Aよりも大径で、ピストンロッド8の本体部分よりも小径な小径部8Bとなっている。取付軸部8Aと小径部8Bとの間は、第1段部8Cとなり、この第1段部8Cとピストン7との間には、後述のピストン用板部材11を挟んで固定することができる。
小径部8Bは、その外周面の直径寸法を軸方向位置で異ならせることにより、取付軸部8A側で小径なディスクガイド面8B1と、ディスクガイド面8B1よりも大径なばねガイド面8B2とを有している。ディスクガイド面8B1には、後述するディスクバルブ12の内周側が摺接する。即ち、ディスクガイド面8B1は、後述のディスクバルブ12が軸方向に移動するのを許しつつ、径方向の移動を制限するようにガイドするものである。同様に、ばねガイド面8B2は、後述のばね部材13によってディスクバルブ12を的確に付勢できるように、ばね部材13の伸縮動作をガイドするものである。
ピストンロッド8には、小径部8Bとピストンロッド8の本体部分との間に位置して、小径部8Bと連続した第2段部8Dが形成されている。この第2段部8Dとディスクバルブ12との間には、ディスクバルブ12をピストン用板部材11に向けて付勢するばね部材13が設けられている。即ち、ばね部材13は、ディスクバルブ12のピストン用板部材11と反対側に配されている。
ここで、ピストンロッド8は、その取付軸部8Aをピストン7のロッド挿嵌孔7C等に挿嵌し、おねじ部8A1に締結部材としてのナット9を螺着する。これにより、ピストンロッド8の他端部にピストン7を一体的に取付けることができる。この場合、ピストンロッド8の第1段部8Cとピストン7の環状底部7Bとの間には、ピストン用板部材11が共締め状態で固定されている。また、合せて、ピストン用板部材11と第2段部8Dとの間には、ディスクバルブ12およびばね部材13も開閉可能に配されている。
ピストン流路10は、ピストンロッド8の伸長、縮小動作によってピストン7が移動したときに、内筒6内に画成されたロッド側油室Bとボトム側油室Cとの間で作動油を流通させる流路を構成している。ピストン流路10は、ピストン7の環状底部7Bに設けられている。ピストン流路10は、環状底部7Bの取付面7B1に凹陥して設けられた円環状溝部10Aと、この円環状溝部10Aの溝底から環状底部7Bを軸方向に貫通した状態で周方向に間隔をもって複数本設けられた貫通孔10B(2本のみ図示)とにより構成されている。
次に、本発明の特徴部分の一部を構成するピストン用板部材11について、その構成、機能等を述べる。
ピストン用板部材11は、ピストン7の環状底部7Bのディスクバルブ12側に、該ピストン7と別部材として設けられている。ピストン用板部材11は、環状底部7Bの取付面7B1に液密に当接した円環状の板状体として形成されている。ピストン用板部材11の内周側は、ピストン7の環状底部7Bとピストンロッド8の第1段部8Cとの間に挟まれて固定される固定部11Aとなっている。また、ピストン用板部材11の外周側には、ピストン流路10の円環状溝部10Aに対応する位置に周方向に間隔をもって複数本の貫通孔11B(2本のみ図示)が設けられている。
ピストン用板部材11の外周側には、ディスクバルブ12側となる左面側に位置して、ディスクバルブ12が当接する当接部11Cが形成されている。この当接部11Cには、ピストン流路10(貫通孔11B)の内周側に配置される内側環状シート11Dと、ピストン流路10(貫通孔11B)の外周側を囲む外側環状シート11Eとが形成されている。
内側環状シート11Dと外側環状シート11Eとは、ピストン用板部材11からディスクバルブ12に向けて突出した直径寸法が異なる円環状の突条として形成され、同心円上に配置されている。これにより、内側環状シート11Dと外側環状シート11Eとの間は、各貫通孔11Bに連通した環状の凹陥溝11Fとなっている。
従って、ピストン用板部材11は、その内周側にピストンロッド8の取付軸部8Aが挿通されることにより、ピストンロッド8に対してピストン7と同軸に固定されている。この固定状態では、ピストン用板部材11は、ピストン7と一体的に構成されており、ピストン用板部材11の各貫通孔11Bはピストン流路10と連通している。一方、内側環状シート11Dと外側環状シート11Eとは、ディスクバルブ12が離着座するもので、高さ寸法を揃えることによってディスクバルブ12が着座したときに、このディスクバルブ12に液密に当接することができる。
ピストン用板部材11は、ピストン7と別個の部材として形成されている。これにより、ディスクバルブ12の離着座によって各環状シート11D,11Eが摩耗したときには、ピストン用板部材11を交換するだけで、各環状シート11D,11Eを新しくすることができる。
ディスクバルブ12は、ピストン7に設けられたピストン流路10、ピストン用板部材11の各貫通孔11Bからなる流路を開閉(連通、遮断)するものである。ディスクバルブ12は、例えば、ピストン用板部材11の内側環状シート11D、外側環状シート11Eおよび凹陥溝11Fに対面する円環状の板状体として形成されている。ディスクバルブ12は、ピストン用板部材11側の面が各環状シート11D,11Eに離着座するシール面12Aとなり、後述のばね部材13側の面がばね部材13の当接する当接面12Bとなっている。ディスクバルブ12は、その内周側がピストンロッド8の小径部8Bのディスクガイド面8B1によって軸方向に移動可能に案内されている。
ばね部材13は、ピストンロッド8の小径部8Bの外周側に位置して第2段部8Dとディスクバルブ12との間に設けられている。ばね部材13は、例えば圧縮コイルばねからなり、ディスクバルブ12をピストン用板部材11に向けて付勢するものである。ばね部材13は、小径部8Bのばねガイド面8B2によって内周側から伸縮方向に支持(ガイド)されている。このため、ばね部材13は、ディスクバルブ12を正確に付勢することで、ディスクバルブ12を円滑に開閉させることができる。
次に、本発明の特徴部分の一部を構成するボトムバルブ用板部材17を備えたボトムバルブ14について、その構成、機能等を述べる。
図1に示すように、ボトムバルブ14は、内筒6の右端側に位置してボトムキャップ3と内筒6との間に設けられている。ボトムバルブ14は、後述のバルブボディ15、ボトムバルブ流路16、ボトムバルブ用板部材17、ディスクバルブ19、ばね部材20を含んで構成されている。
バルブボディ15は、バルブ部材を構成するもので、ボトムキャップ3の内面と内筒6の他端との間に嵌合して固着されている。即ち、バルブボディ15は、内筒6内に嵌着(嵌装)され、外筒2と内筒6との間のリザーバ室Aと内筒6内のボトム側油室Cとの間を仕切っている。図1、図3に示すように、バルブボディ15は、段付の円板状体として形成されている。バルブボディ15は、ボトムキャップ3に対面した円板部15Aと、前記円板部15Aの中心部から一側に向けて突出した軸部15Bと、前記円板部15Aの外周側からボトムキャップ3側(他側)に突出した環状脚部15Cと、前記円板部15Aの外周側から一側に向けて突出した嵌合筒部15Dとにより構成されている。
円板部15Aのピストン7側の端面は、後述のボトムバルブ用板部材17が液密状態で当接して取付けられる平坦な取付面15A1となっている。また、円板部15Aは、ボトムキャップ3との間に作動油を流通させるための空間部15Eを有している。また、軸部15Bのピストン7側の先端側には、おねじ部15B1が形成されている。
また、環状脚部15Cは、ボトムキャップ3の内面側に嵌合して取付けられるものである。環状脚部15Cには、空間部15Eをリザーバ室Aに連通させるための複数個の切欠溝15C1(2個のみ図示)が径方向に形成されている。さらに、嵌合筒部15Dは、内筒6の他端側に内側から嵌合することにより、この内筒6を位置決め状態で固定するものである。
ボトムバルブ流路16は、ピストンロッド8の伸長、縮小動作によってピストン7が移動したときに、リザーバ室A(空間部15E)とボトム側油室Cとの間で作動油を流通させる流路を構成している。ボトムバルブ流路16は、円板部15Aの取付面15A1に凹陥して設けられた円環状溝部16Aと、この円環状溝部16Aの溝底から円板部15Aを軸方向に貫通した状態で周方向に間隔をもって複数本設けられた貫通孔16B(2本のみ図示)とにより構成されている。
次に、本発明の特徴部分の一部を構成するボトムバルブ用板部材17について、その構成、機能等を述べる。
ボトムバルブ用板部材17は、バルブボディ15の円板部15Aのディスクバルブ19側に、該バルブボディ15と別部材として設けられている。ボトムバルブ用板部材17は、円板部15Aの取付面15A1に液密に当接した段付の板状体として形成されている。
ボトムバルブ用板部材17の外周側には、ディスクバルブ19側に位置して、ディスクバルブ19が当接する当接部17Aが形成されている。ボトムバルブ用板部材17の外周側には、ボトムバルブ流路16の円環状溝部16Aに対応する位置に周方向に間隔をもって複数本の貫通孔17B(2本のみ図示)が設けられている。また、当接部17Aには、ボトムバルブ流路16(貫通孔17B)の内周側に配置される内側環状シート17Cと、ボトムバルブ流路16(貫通孔17B)の外周側を囲む外側環状シート17Dとが形成されている。
内側環状シート17Cと外側環状シート17Dとは、ボトムバルブ用板部材17からディスクバルブ19に向けて突出した直径寸法が異なる円環状の突条として形成され、同心円上に配置されている。これにより、内側環状シート17Cと外側環状シート17Dとの間は、各貫通孔17Bに連通した環状の凹陥溝17Eとなっている。
一方、ボトムバルブ用板部材17の径方向内側には、ピストン7側に向けて突出すると共に、当接部17Aに対して垂直に伸びた筒状部17Fが一体に形成されている。この筒状部17Fは、内周側がバルブボディ15の軸部15Bに外嵌している。また、筒状部17Fの外周面17F1は、ディスクバルブ19の内周側に摺接することにより、該ディスクバルブ19を離着座方向(開閉方向)となる軸方向にガイドしている。
ボトムバルブ用板部材17は、筒状部17Fの内周側にバルブボディ15の軸部15Bを挿通し、軸部15Bのおねじ部15B1に締結部材としてのナット18を螺着する。これにより、ボトムバルブ用板部材17は、バルブボディ15に対して同軸に固定される。また、合せて、ボトムバルブ用板部材17の当接部17Aとナット18との間には、ディスクバルブ19およびばね部材20も開閉可能に配されている。
ボトムバルブ用板部材17の固定状態では、ボトムバルブ用板部材17はバルブボディ15と一体的に構成されており、ボトムバルブ用板部材17の各貫通孔17Bはボトムバルブ流路16と連通している。一方、内側環状シート17Cと外側環状シート17Dとは、ディスクバルブ19が離着座するもので、高さ寸法を揃えることによってディスクバルブ19を液密に当接させることができる。
ボトムバルブ用板部材17は、バルブボディ15と別個の部材として形成されている。従って、ディスクバルブ19の離着座によって各環状シート17C,17Dが摩耗したときには、ボトムバルブ用板部材17を交換するだけで、液密性の維持に関与する各環状シート17C,17Dを新しくすることができる。
ディスクバルブ19は、バルブボディ15に設けられたボトムバルブ流路16、ボトムバルブ用板部材17の各貫通孔17Bからなる流路を開閉(連通、遮断)するものである。ディスクバルブ19は、ピストン7側のディスクバルブ12と同様に、ボトムバルブ用板部材17の内側環状シート17C、外側環状シート17Dおよび凹陥溝17Eに対面する円環状の板状体として形成されている。
ディスクバルブ19は、ボトムバルブ用板部材17側の面が各環状シート17C,17Dに離着座するシール面19Aとなり、後述のばね部材20側がばね部材20が当接する当接面19Bとなっている。ディスクバルブ19は、その内周側がボトムバルブ用板部材17の筒状部17Fの外周面17F1によって軸方向に移動可能に案内されることにより、円滑に開閉できるようになっている。
ばね部材20は、ボトムバルブ用板部材17の筒状部17Fの外周側に位置してナット18とディスクバルブ19との間に設けられている。即ち、ばね部材20は、ディスクバルブ19のボトムバルブ用板部材17と反対側に配されている。ばね部材20は、ディスクバルブ19をピストン用板部材11に向けて付勢するものである。ばね部材20は、例えば、ナット18側の直径寸法が小さく、ディスクバルブ19側の直径寸法が大きな円錐状の圧縮コイルばねとして構成されている。ばね部材20は、ナット18側の小径部分がボトムバルブ用板部材17の筒状部17Fによって径方向に位置決めされているから、大径部分でディスクバルブ19を安定的に付勢することができる。
ロッドガイド21は、外筒2および内筒6の一端側(左端側)に位置して、段付円筒状に形成されている。ロッドガイド21は、内筒6の一側部分を外筒2の中央に位置決めすると共に、その内周側でピストンロッド8を軸方向に摺動可能にガイド(案内)している。ここで、ロッドガイド21には、リザーバ室Aとロッド側油室Bとの間を連通する流路21Aが設けられ、この流路21Aには、弁機構22が設けられている。
弁機構22は、ロッドガイド21の流路21Aに設けられている。弁機構22は、ピストンロッド8が伸長してピストン7によりロッド側油室Bが縮小されたときに開弁し、ロッド側油室B内の作動油を流路21Aを通じてリザーバ室Aに流通させるものである。一方で、弁機構22は、リザーバ室Aからロッド側油室Bへの作動油の流れを規制している。
第1の実施の形態による油圧緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
油圧緩衝器1は、右端側に位置するボトムキャップ3に設けられた取付アイ4が、例えば鉄道車両の車体に取付けられる。一方、ピストンロッド8の突出端側の取付アイ5が、例えば鉄道車両の台車に取付けられる。これにより、ピストンロッド8が内筒6内へと軸方向に縮小したり、ピストンロッド8が内筒6から軸方向に伸長したりして鉄道車両の振動を減衰するように緩衝することができる。
即ち、ピストンロッド8が縮小行程にある場合、ピストン7がボトムバルブ14側に摺動変位する。これにより、ボトム側油室C内は、高圧状態になるから、このボトム側油室C内の圧力は、ピストン流路10とピストン用板部材11の各貫通孔11Bを通じてロッド側油室B内に流れようとする。このときに、ピストン用板部材11の内側環状シート11D、外側環状シート11Eに液密に当接しているディスクバルブ12を、ばね部材13の付勢力に抗して開弁させる。このときに、ばね部材13による付勢力がピストン流路10等を流通する作動油に抵抗を与えることにより、ピストンロッド8の縮小動作を抑えるように緩衝することができる。
ピストンロッド8の縮小行程では、ロッドガイド21に設けられた弁機構22は、ロッド側油室B内の圧力を受けて開弁し、ピストンロッド8の進入体積分だけロッド側油室B内の作動油をリザーバ室A側に流出させる。このときに、弁機構22は、閉弁方向に付勢されているから、この付勢力によっても減衰力を発生することができる。
一方、ピストンロッド8が伸長行程にある場合、ピストン7がロッドガイド21側に摺動変位する。これにより、ロッド側油室B内は、高圧状態になるから、弁機構22は、ロッド側油室B内の圧力を受けて開弁し、ピストンロッド8の進入体積分だけロッド側油室B内の作動油をリザーバ室A側に流出させる。このときに、弁機構22は、閉弁方向に付勢されているから、この付勢力によっても減衰力を発生することができる。
しかも、ピストン7がロッドガイド21側に摺動変位したことにより、ボトム側油室C内が低圧状態になるから、リザーバ室A内の作動油をボトムバルブ流路16、ボトムバルブ用板部材17の各貫通孔17Bを通じてボトム側油室C内に流れようとする。このときに、ボトムバルブ用板部材17の内側環状シート17C、外側環状シート17Dに液密に当接しているディスクバルブ19を、ばね部材20の付勢力に抗して開弁させる。このときに、ばね部材20による付勢力がボトムバルブ流路16等を流通する作動油に抵抗を与えることにより、ピストンロッド8の伸長動作を抑えるように緩衝することができる。
次に、ディスクバルブ12,19の開弁、閉弁動作によってシール面が摩耗を生じた場合には、摩耗した部品を交換する必要がある。そこで、摩耗した部品の交換作業について、その一例を説明する。
まず、ピストン7側の摩耗部品の交換作業では、内筒6からピストン7とピストンロッド8を一緒に取外す。ピストン7とピストンロッド8を取出したら、ナット9を緩め、ピストンロッド8の取付軸部8Aからピストン7、ピストン用板部材11およびディスクバルブ12を取外す。この場合、ディスクバルブ12の開閉に伴って摩耗を生じる部分は、ピストン用板部材11の内側環状シート11D、外側環状シート11Eと、ディスクバルブ12のシール面12Aとになる。そこで、ピストン用板部材11とディスクバルブ12を新しいもの(または、補修されたもの)に交換し、先程取外したピストン7と一緒にピストンロッド8に組付ける。
一方、ボトムバルブ14側の摩耗部品の交換作業では、外筒2から内筒6とボトムバルブ14を一緒に取外す。ボトムバルブ14を内筒6から取出したら、ナット18を緩め、バルブボディ15の軸部15Bからボトムバルブ用板部材17、ディスクバルブ19およびばね部材20を取外す。この場合、摩耗を生じているのは、ボトムバルブ用板部材17の内側環状シート17C、外側環状シート17Dと、ディスクバルブ19の内周側が摺接する筒状部17Fと、ディスクバルブ19のシール面19Aとなる。そこで、ボトムバルブ用板部材17とディスクバルブ19を新しいもの(または、補修されたもの)に交換し、既存のバルブボディ15に組付ける。
かくして、第1の実施の形態によれば、ピストン7のディスクバルブ12側となる環状底部7Bの取付面7B1には、ディスクバルブ12が当接する当接部11Cが形成されたピストン用板部材11を設けている。また、ピストン用板部材11のディスクバルブ12側には、ピストン流路10の内周側に配置される内側環状シート11Dと、ピストン流路10の外周側を囲む外側環状シート11Eとが形成されている。
このように構成したことにより、ディスクバルブ12の開閉動作によって摩耗する部品は、ピストン用板部材11とディスクバルブ12となる。従って、摩耗部品の交換作業では、ピストン用板部材11、ディスクバルブ12に比較して高価なピストン7を交換することなく再使用できる。この結果、小さく単純な形状で安価なピストン用板部材11とディスクバルブ12の少なくとも何れか一方を交換するだけでよく、ピストン7側における摩耗部品の交換を安価に行うことができる。
一方、バルブボディ15のディスクバルブ19側となる円板部15Aの取付面15A1には、ディスクバルブ19が当接する当接部17Aが形成されたボトムバルブ用板部材17を設けている。また、ボトムバルブ用板部材17のディスクバルブ19側には、ボトムバルブ流路16の内周側に配置される内側環状シート17Cと、ボトムバルブ流路16の外周側を囲む外側環状シート17Dとが形成されている。
このように構成したことにより、ディスクバルブ19の開閉動作によって摩耗する部品は、ボトムバルブ用板部材17とディスクバルブ19となる。従って、摩耗部品の交換作業では、大きく複雑で高価なバルブボディ15は交換することなく、小さく単純な形状で安価なボトムバルブ用板部材17とディスクバルブ19との少なくとも何れか一方を交換するだけでよい。この結果、バルブボディ15側においても、摩耗部品の交換を安価に行うことができる。さらに、ボトムバルブ14側では、ディスクバルブ19の内周側が摺接して摩耗する筒状部17Fも新しいもの(または、補修されたもの)に交換されるため、交換後においても、ディスクバルブ19を安定して摺動させることができる。
ボトムバルブ用板部材17の径方向内側には、当接部17Aに対して垂直に伸びディスクバルブ19の内周側が摺接する筒状部17Fが、一体に形成されている。従って、筒状部17Fは、ディスクバルブ19を開閉の方向となる軸方向に案内することができるから、ディスクバルブ19の閉弁時の密着性(液密性)を高めることができる。しかも、ディスクバルブ19が径方向にずれるのを抑制することで、このディスクバルブ19を最小限の大きさで形成することができる。これにより、ディスクバルブ19の軽量化、開閉の応答性等を向上することができる。
ピストン7との連結部となるピストンロッド8の他端部には、ディスクバルブ12の内周側が摺接する小径部8Bが設けられている。この小径部8Bとピストンロッド8の本体部分との境界部位には、小径部8Bと連続して第2段部8Dが設けられている。この上で、ピストンロッド8の第2段部8Dとディスクバルブ12との間には、ディスクバルブ12をピストン用板部材11に向けて付勢するばね部材13が設けられている。これにより、ピストンロッド8の第2段部8Dを利用してばね部材13を安定的に支持することができる。
一方、ボトムバルブ14側では、ディスクバルブ19のボトムバルブ用板部材17と反対側となる当接面19Bには、ディスクバルブ19をボトムバルブ用板部材17に向けて付勢するばね部材20を配している。ばね部材20およびボトムバルブ用板部材17は、バルブボディ15の軸部15Bに螺着されるナット18によって固定されている。この場合、ボトムバルブ用板部材17は、ナット18によって筒状部17Fが固定されている。また、ボトムバルブ用板部材17とナット18との間には、筒状部17Fによって空間が形成されるから、この空間を利用してばね部材20を配置することができる。
次に、図4、図5は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、ディスクバルブの板部材側に内側環状シートと外側環状シートとが形成されていることにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図4において、第2の実施の形態によるピストン用板部材31は、第1の実施の形態によるピストン用板部材11とほぼ同様に、ピストン7の環状底部7Bに液密に当接した円環状の板状体として形成され、その内周側が固定部31Aとなり、外周側に複数本の貫通孔31B(2本のみ図示)が設けられている。各貫通孔31Bが設けられたピストン用板部材31の外周側は、ディスクバルブ12が当接する当接部31Cとなっている。しかし、第2の実施の形態によるピストン用板部材31は、当接部31Cに内側環状シートと外側環状シートが形成されていない点で、第1の実施の形態によるピストン用板部材11と相違している。
第2の実施の形態によるピストン7側のディスクバルブ32は、第1の実施の形態によるディスクバルブ12とほぼ同様に、シール面32Aと当接面32Bを有する円環状の板状体として形成されている。しかし、第2の実施の形態によるディスクバルブ32は、シール面32Aに内側環状シート32Cと外側環状シート32Dが形成されている点で、第1の実施の形態によるディスクバルブ12と相違している。
ディスクバルブ32のシール面32Aには、ピストン流路10(貫通孔31B)の内周側に配置される内側環状シート32Cと、ピストン流路10(貫通孔31B)の外周側を囲む外側環状シート32Dとが形成されている。これにより、内側環状シート32Cと外側環状シート32Dとの間は、各貫通孔31Bに連通した環状の凹陥溝32Eとなっている。
図5に示すように、第2の実施の形態によるボトムバルブ用板部材33は、第1の実施の形態によるボトムバルブ用板部材17とほぼ同様に、当接部33A、各貫通孔33B(2本のみ図示)および筒状部33Cを有している。しかし、第2の実施の形態によるボトムバルブ用板部材33は、当接部33Aに内側環状シートと外側環状シートが形成されていない点で、第1の実施の形態によるボトムバルブ用板部材17と相違している。
第2の実施の形態によるボトムバルブ14側のディスクバルブ34は、第1の実施の形態によるディスクバルブ19とほぼ同様に、シール面34Aと当接面34Bを有する円環状の板状体として形成されている。しかし、第2の実施の形態によるディスクバルブ34は、シール面34Aに内側環状シート34Cと外側環状シート34Dが形成されている点で、第1の実施の形態によるディスクバルブ19と相違している。また、内側環状シート34Cと外側環状シート34Dとの間は、各貫通孔33Bに連通した環状の凹陥溝34Eとなっている。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、ピストン用板部材31、ボトムバルブ用板部材33の構成を簡略化することができる。
なお、第1の実施の形態では、ピストン7側にピストン用板部材11を設け、ボトムバルブ14側にボトムバルブ用板部材17を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、ピストン7側とボトムバルブ14側との何れか一方だけに板部材を設ける構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用できるものである。
第1の実施の形態では、付勢部材として圧縮コイルばねからなるばね部材13,20を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、付勢部材として、皿ばね、ゴムばね等を用いる構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用できるものである。
各実施の形態では、油圧緩衝器1を鉄道車両に設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、4輪自動車および2輪車に用いる緩衝器、一般産業機器を含む各種の機械機器に用いる緩衝器、建築物に用いる緩衝器等、緩衝すべき対象を緩衝する各種の緩衝器にも適用することができる。
以上説明した実施形態に基づく緩衝器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
緩衝器の第1の態様としては、流体が封入されているシリンダと、該シリンダ内に嵌装され、該シリンダ内を少なくとも2室に仕切るバルブ部材と、一端が前記シリンダの外部へ延出されているピストンロッドと、前記バルブ部材に設けられ、前記ピストンロッドが移動したときに前記流体が流通する流路と、該流路を開閉するディスクバルブと、を有し、前記バルブ部材の前記ディスクバルブ側には、前記ディスクバルブが当接する当接部が形成された板部材を設け、該板部材の前記ディスクバルブ側、または、前記ディスクバルブの前記板部材側には、前記流路の内周側に配置される内側環状シートと、前記流路の外周側を囲む外側環状シートと、が形成されている。
第2の態様としては、第1の態様において、前記板部材の径方向内側には、前記当接部に対して垂直に伸び前記ディスクバルブの内周側が摺接する筒状部が、一体に形成されている。
第3の態様としては、第2の態様において、前記ディスクバルブの前記板部材と反対側には、前記ディスクバルブを前記板部材に向けて付勢する付勢部材を配し、前記付勢部材および前記板部材は、締結部材によって固定される。
第4の態様としては、第1の態様において、前記バルブ部材は、前記ピストンロッドの他端に連結されたピストンであって、前記ピストンロッドの前記ピストンとの連結部には、前記ディスクバルブの内周側が摺接する小径部を有し、該小径部と連続して前記ピストンロッドに形成される段部と前記ディスクバルブとの間には、前記ディスクバルブを前記板部材に向けて付勢する付勢部材が設けられている。