JP2018103495A - 非空気圧タイヤの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボイドの発生を抑制し、耐久性を向上できる非空気圧タイヤの製造方法を提供する。【解決手段】熱硬化性樹脂で構成された非空気圧タイヤの製造方法であって、液粘度が600〜6000mPa・sとなるように前記熱硬化性樹脂の原料液を調整する工程と、調整した前記熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程と、脱泡した前記熱硬化性樹脂の原料液を金型に注入して硬化させる工程と、を含む。【選択図】図1
Description
本発明は、熱硬化性樹脂で構成された非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)の製造方法に関する。
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能力は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能力はない。また、非空気圧タイヤでは、弾性を高めてクッション性を改善することも可能であるが、空気入りタイヤが有するような荷重支持能または耐久性が悪くなるという問題がある。
非空気圧タイヤとして、例えば、下記の特許文献1には、外側環状部と、外側環状部から半径方向内向きに延び、ホイールに固定される複数のスポークとを含む非空気圧タイヤが記載されている。スポークは、ポリウレタン液体を回転金型に注ぐことによって形成される。
また、下記の特許文献2には、樹脂母材中に埋め込まれた繊維を有する複合材筒体を補強要素として用いた非空気圧タイヤが記載されている。
また、下記の特許文献3には、内側環状部と、外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結させる支持構造とを備える非空気圧タイヤが記載されている。この非空気圧タイヤは、ポリウレタン等で構成される。
特許文献1〜3の非空気圧タイヤは、ポリウレタン等の樹脂材料で構成されているが、特許文献1〜3は、その樹脂材料の物性についての詳細は開示していない。使用する樹脂材料の物性や硬化挙動などによっては、気泡(ボイド)が樹脂材料中に残留してしまし、耐久性などに悪影響を及ぼすことが考えられる。
そこで、本発明の目的は、ボイドの発生を抑制し、耐久性を向上できる非空気圧タイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤの製造方法は、熱硬化性樹脂で構成された非空気圧タイヤの製造方法であって、
液粘度が600〜6000mPa・sとなるように前記熱硬化性樹脂の原料液を調整する工程と、
調整した前記熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程と、
脱泡した前記熱硬化性樹脂の原料液を金型に注入して硬化させる工程と、を含む。
即ち、本発明の非空気圧タイヤの製造方法は、熱硬化性樹脂で構成された非空気圧タイヤの製造方法であって、
液粘度が600〜6000mPa・sとなるように前記熱硬化性樹脂の原料液を調整する工程と、
調整した前記熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程と、
脱泡した前記熱硬化性樹脂の原料液を金型に注入して硬化させる工程と、を含む。
液粘度を600〜6000mPa・sとすることで、熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程において、泡を噛みにくく、かつ泡が抜けやすくなる。これにより、熱硬化性樹脂の原料液を金型に注入して硬化させた際、ボイドの発生が抑制され、その結果、耐久性を向上できる。
本発明に係る非空気圧タイヤの製造方法において、前記熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程では、自転・公転ミキサーを用いて撹拌することが好ましい。
自転・公転ミキサーを用いることで、泡を効果的に抜きつつ、熱硬化性樹脂の原料液を撹拌することができる。
本発明に係る非空気圧タイヤの製造方法において、前記熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程では、自転・公転ミキサーを用いて、公転速度を700rpm以上、かつ自転速度を400rpm以上、かつ撹拌時間を1分以上で撹拌することが好ましい。
この条件により自転・公転ミキサーを用いて熱硬化性樹脂を撹拌することで、泡を効果的に抜きつつ、熱硬化性樹脂の原料液を撹拌することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る非空気圧タイヤの製造方法の製造工程の一例を示すフローチャートである。図2は、非空気圧タイヤTの一例を示す正面図である。図3は、支持構造体SSを成形するための金型を示しており、(a)正面図、(b)縦断面図である。
本実施形態の非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを備えている。支持構造体SSは、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた中間環状部2と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部3と、内側環状部1と中間環状部2とを連結し周方向に各々が独立する複数の内側連結部4と、外側環状部3と中間環状部2とを連結し周方向に各々が独立する複数の外側連結部5とを備える。この実施形態では、支持構造体SSが中間環状部2を備えているが、中間環状部2は必ずしも必要ではなく、中間環状部2を設けず、内側連結部4と外側連結部5とが連続して1本の連結部を構成してもよい。非空気圧タイヤTは、図2のように支持構造体SSの外周側にベルト層6、トレッド層7などを備えていてもよい。
支持構造体SS(内側環状部1、中間環状部2、外側環状部3、内側連結部4、及び外側連結部5)は、補強構造を除いて基本的に同じ熱硬化性樹脂にて一体的に成形される。
本発明に係る非空気圧タイヤの製造方法は、熱硬化性樹脂の原料液を金型に注入して硬化させることにより熱硬化性樹脂で構成された非空気圧タイヤを製造するものである。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
上記の熱硬化性樹脂のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。ポリウレタン樹脂のなかでも、主原料のイソシアネート成分にパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)を用いたものが特に好ましい。PPDIを用いたポリウレタン樹脂は、優れた耐屈曲疲労性、耐加水分解性を持つ。また、PPDIを用いたポリウレタン樹脂は、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いたポリウレタン樹脂と比較して、ヒステリシスによる発熱性が低く(低発熱性)、動的特性が優れている。また、ポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、エステル(アジペート)系、カプロラクトン系、カーボネート系、エーテル系などを用いることができる。これらのうち、耐屈曲疲労性やその他の機械特性では、エステル(アジペート)系、カプロラクトン系、カーボネート系のほうが更に良好であるのに対して、耐加水分解性では、エーテル系>カーボネート系>カプロラクトン系>エステル(アジペート)系の順となっているが、いずれのポリオール成分を用いた場合であっても、PPDIを用いたポリウレタン樹脂は、TDIを用いたポリウレタン樹脂と比較して、高い耐加水分解性を持つ。
図3は、支持構造体SSを成形するための金型を示しており、(a)正面図、(b)縦断面図である。金型10は、支持構造体SSに対応するキャビティCを有する。各々のキャビティC1〜C5は、それぞれ支持構造体SSの内側環状部1、中間環状部2、外側環状部3、内側連結部4、外側連結部5に対応している。このようなキャビティCは、円筒状の中型11と、円筒状の外型12と、断面扇形状の中子13,14と、円盤状の上型15(図3(a)では不図示)と、円盤状の下型16とによって形成される。中型11は、内側環状部1の内周側を成形し、外型12は、外側環状部3の外周側を成形し、中子13は、内側環状部1の外周側と中間環状部2の内周側および内側連結部4を成形し、中子14は、外側環状部3の内周側と中間環状部2の外周側および外側連結部5を成形するためのものである。また、上型15と下型16は、支持構造体SSのタイヤ幅方向両側面を成形するためのものである。上型15には、注入口15aが設けられている。中型11、外型12、中子13,14は、下型16に固定することができ、上型15は下型16に対して開閉可能になっている。
本発明の製造方法は、上記のような非空気圧タイヤTを好適に製造できる製造方法であって、液粘度が600〜6000mPa・sとなるように熱硬化性樹脂の原料液を調整する工程と、調整した熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程と、脱泡した熱硬化性樹脂の原料液を金型に注入して硬化させる工程と、を含むものである。
非空気圧タイヤTの製造工程が開始されると、まず、ステップS10の調整工程が行なわれる。調整工程では、液粘度が600〜6000mPa・sとなるように熱硬化性樹脂の原料液を調整する。液粘度を600〜6000mPa・sとすることで、後述する撹拌・脱泡工程において、泡を噛みにくく、かつ泡が抜けやすくなる。なお、本発明の液粘度は、熱硬化性樹脂の原料液の80℃における液粘度である。
次いで、ステップS20の撹拌・脱泡工程が行なわれる。撹拌・脱泡工程では、ステップS10の調整工程にて液粘度を調整した熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する。
撹拌・脱泡工程は、自転・公転ミキサーを用いて熱硬化性樹脂の原料液を撹拌することが好ましい。自転・公転ミキサーを用いるのは、泡噛みを抑えながら原料液を撹拌するためである。自転のみの場合、原料液を撹拌することができるが、撹拌と同時に泡を噛んでしまう。自転とともに公転もすることで、泡を効果的に抜きながら原料液を撹拌することができる。
自転・公転ミキサーを用いて熱硬化性樹脂の原料液を撹拌する際、公転速度を700rpm以上、かつ自転速度を400rpm以上、かつ撹拌時間を1分以上で撹拌することが好ましい。また、公転速度を1400rpm以下、かつ自転速度を700rpm以下、かつ撹拌時間を5分以下で撹拌することがより好ましい。公転速度が700rpm未満、自転速度が400rpm未満、もしくは撹拌時間が1分未満の場合、泡を十分に抜くことができず、また、熱硬化性樹脂の原料液の撹拌が不十分となり、硬化後の硬度が低下する。公転速度が1400rpmを超え、自転速度が700rpmを超え、もしくは撹拌時間が5分を超える場合、撹拌時に泡が多く発生し、ボイドが増えて耐久性が低下する。
次いで、ステップS30の注型工程が行なわれる。注型工程では、ステップS20の撹拌・脱泡工程にて脱泡した熱硬化性樹脂の原料液を金型10のキャビティCに注入口15aから注入する。熱硬化性樹脂の原料液としては、前述した熱硬化性樹脂を高温で軟化させたものや、反応硬化前又は架橋前の液状原料が挙げられる。
金型10に注入された熱硬化性樹脂の原料液は、加熱硬化され、非空気圧タイヤTの支持構造体SSが成型される。その後、必要に応じて、脱型した支持構造体SSの外周側に接着剤を介して、ベルト層6、トレッド層7を巻き付けて接合し、非空気圧タイヤTを製造する。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。尚、実施例等における評価項目は、下記のようにして測定を行った。
(1)耐久性
直径500mmのドラムを備えた室内ドラム試験機を使用し、試験速度を12km/hとし、タイヤ負荷荷重をJIS規定の85%から始め、規定時間ごとに荷重を上げていき、最終的に140%で走行させた。故障が生じるまでの走行距離を測定した。故障が生じるまでの走行距離が、200km以下であれば、「×」とし、200kmを越えて1000km以下であれば、「△」とし、1000kmを超えれば、「○」とした。
直径500mmのドラムを備えた室内ドラム試験機を使用し、試験速度を12km/hとし、タイヤ負荷荷重をJIS規定の85%から始め、規定時間ごとに荷重を上げていき、最終的に140%で走行させた。故障が生じるまでの走行距離を測定した。故障が生じるまでの走行距離が、200km以下であれば、「×」とし、200kmを越えて1000km以下であれば、「△」とし、1000kmを超えれば、「○」とした。
(2)ボイド数
製造した非空気圧タイヤについて、外部から視認できるボイドが10cm2当たりいくつあるか数えた。ボイドは直径が100μm以上のものを数えた。
製造した非空気圧タイヤについて、外部から視認できるボイドが10cm2当たりいくつあるか数えた。ボイドは直径が100μm以上のものを数えた。
(3)樹脂硬さ(ショアA硬度)
製造した非空気圧タイヤの硬度を計測した。硬度は、耐久性に影響する。
製造した非空気圧タイヤの硬度を計測した。硬度は、耐久性に影響する。
比較例及び実施例
液粘度、自転速度、公転速度、撹拌時間を表1及び表2のように異ならせて、それぞれ比較例1〜2及び実施例1〜10とした。評価結果を表1及び表2に示す。
液粘度、自転速度、公転速度、撹拌時間を表1及び表2のように異ならせて、それぞれ比較例1〜2及び実施例1〜10とした。評価結果を表1及び表2に示す。
表1及び表2の結果から以下のことが分かる。比較例1は、液粘度が低いため、多量の泡噛みが発生し、その結果、多数のボイドが発生して耐久性が悪い。一方、比較例2は、液粘度が高いため、ボイドの発生は抑制されるものの、注型不良によるウェルドと、撹拌不良による硬度低下とが生じ、耐久性が悪い。
実施例1〜10は、比較例1及び2に比べ、ボイドの発生が抑制され、耐久性が向上した。
実施例1は、比較例1に比べ、ボイドの発生が抑制され、耐久性が向上した。
実施例2は、実施例1に比べると、液粘度が高いため泡が抜けにくく、ボイド数が僅かに増加した。その結果、実施例1に比べると耐久性が低下した。
実施例3は、実施例4に比べると、公転速度が遅いため、硬度が低くなり、耐久性が低下した。
実施例5は、実施例4に比べると、公転速度が速いため、自転速度とのバランスが崩れ、撹拌するときに泡を噛みやすくなり、ボイドが増加した。その結果、耐久性が低下した。
実施例6は、実施例4に比べると、自転速度が遅いため、硬度が低くなり、耐久性が低下した。
実施例7は、実施例4に比べると、自転速度が速いため、撹拌するときに泡を噛みやすくなり、ボイドが増加した。その結果、耐久性が低下した。
実施例8は、実施例9に比べると、撹拌時間が短いため、硬度が低くなり、耐久性が低下した。
実施例10は、実施例9に比べると、撹拌時間が長いため、撹拌するときに泡を噛みやすくなり、ボイドが増加した。その結果、耐久性が低下した。
1 内側環状部
2 中間環状部
3 外側環状部
4 内側連結部
5 外側連結部
10 金型
C キャビティ
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ
2 中間環状部
3 外側環状部
4 内側連結部
5 外側連結部
10 金型
C キャビティ
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ
Claims (3)
- 熱硬化性樹脂で構成された非空気圧タイヤの製造方法であって、
液粘度が600〜6000mPa・sとなるように前記熱硬化性樹脂の原料液を調整する工程と、
調整した前記熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程と、
脱泡した前記熱硬化性樹脂の原料液を金型に注入して硬化させる工程と、を含む非空気圧タイヤの製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程では、自転・公転ミキサーを用いて撹拌する、請求項1に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂の原料液を撹拌して脱泡する工程では、自転・公転ミキサーを用いて、公転速度を700rpm以上、かつ自転速度を400rpm以上、かつ撹拌時間を1分以上で撹拌する、請求項1に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
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