JP2018103109A - エレクトレットフィルターおよびエレクトレットフィルターの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電荷安定性ならびに耐オイルミスト性に優れたエレクトレットフィルターを提供する。【解決手段】本発明のエレクトレットフィルターの製造方法は、融点35℃以上300℃以下のポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解、かつ一部が未溶解の懸濁液を担体表面に塗布する工程を含む。【選択図】なし
Description
本発明はエレクトレットフィルターおよびエレクトレットフィルターの製造方法に関する。
従来、防塵マスク、各種空調用エレメント、空気清浄機、キャビンフィルター、各種装置において集塵、保護、通気などを目的とし多孔質フィルターが用いられている。
多孔質のうち、繊維状物からなるフィルターは高い空隙率を有し、長寿命、低通気抵抗という利点を有しており幅広く用いられている。これら繊維状物からなるフィルターは、さえぎり、拡散、慣性衝突などの機械的捕集機構により繊維上に粒子を捕捉するが、実用的な使用環境において捕捉する粒子の空気力学相当径が0.1〜1.0μm程度の場合にフィルター捕集効率の極小値を持つことが知られている。
上記の極小値におけるフィルター捕集効率を向上させるため、電気的な引力を併用する方法が知られている。たとえば、被捕集粒子に電荷を与える、またはフィルターに電荷を与える方法、さらには両者の組み合わせが用いられる。フィルターに電荷を与える方法としては、電極間にフィルターを配置し通風時に誘電分極させる方法や、絶縁材料に長寿命の静電電荷を付与する方法が知られており、特に後者の手法は外部電源などのエネルギーを必要としないため、エレクトレットフィルターとして幅広く用いられている。
エレクトレットフィルターには、初期捕集効率を高めるため、またフィルター加工や保管時における静電電荷の減衰による性能低下を抑制するため、エレクトレット化が可能で耐湿安定性および耐熱安定性に優れたエレクトレット材料が用いられる。
しかしながら、エレクトレットフィルターは粒子の捕集に伴い静電引力が低下するという欠点があり、とりわけ表面張力の小さなオイルミストは繊維表面を薄く被覆することで電荷の消失が著しく促進される。一般的なエレクトレットフィルターには、電荷安定性に優れたポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂等が用いられているが、これらのうち最も表面張力の小さなポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン類からなる繊維状物であっても、ポリαオレフィン(PAO)、フタル酸ジオクチル(DOP)およびタバコ煙などに代表されるオイルミストに対しては材料特性として十分な撥油性を示さないため、オイルミスト負荷時の捕集効率維持性能(以下、「耐オイルミスト性」という)が低いという問題がある。
かかる問題を解決するため、フィルターを構成する繊維状物の表面張力を下げることで撥油性を与え、繊維表面でのオイルミストの広がりや繊維素材内部への吸収拡散を抑制して電荷の消失を低減させて耐オイルミスト性を向上させる方法が知られている。具体的には、撥油性を高めるために樹脂内にパーフルオロ基を有した添加剤を混合する方法(たとえば特許文献1)、熱可塑性フッ素樹脂を溶融紡糸する方法(たとえば特許文献2および3)、パーフルオロ基を有したエマルジョン加工剤で表面をコーティング処理する方法(たとえば特許文献4)、プラズマおよびフッ素ガスなどを用い水素原子を置換することによりフッ素原子を導入する方法(たとえば特許文献5)、アモルファス化により可溶性と熱可塑性を付与し、電荷安定性とコーティング性を両立したフッ素系樹脂をコーティングする方法(たとえば特許文献6)などにより、電荷安定性を維持しながら表面張力を低減させ、耐オイルミスト性を高めたエレクトレットが用いられている。しかしながら、これらの方法は平滑面における素材自身の化学的性質(表面張力値)により撥油性を発現させているためトリフルオロメチル(CF3)末端基の表面張力が最大値効果を有する組成であり撥油性の向上は既に限界となっている。
また、上記の問題を解決するため、微細な凹凸表面またはフラクタル表面とフッ素系材料とを組み合わせることにより、素材自身よりも優れた撥油表面を作成する方法(たとえば特許文献7、8、9および非特許文献1)が開示されている。
Journal of Polymer science : Part B: Polymer Physics., 46,1984(2008)
しかしながら、本発明者の検討によると、上記従来技術では、フッ素系化合物を単純に無機担体上に付着させても粘接着性を有するため電荷安定性を阻害し、電荷安定性と撥油性との両立ができないという問題を有していることがわかった。また、上記従来技術は反応性を持たない炭化水素油や純水からなる液滴に対する撥水撥油性を考慮したものであり、タバコ煙やミスト状の極めて微細な粒子などに対しては効果が少ないか、場合によりエレクトレットの安定性を阻害するという問題があることがわかった。
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされ、その目的は、電荷安定性ならびに耐オイルミスト性に優れたエレクトレットフィルターを製造する方法、また、それによって得られたエレクトレットフィルターを提供するものである。
なお、以下では、素材としての低表面張力化能力を「撥油性」、オイルミストに対する効率低下抑制効果を「耐オイルミスト性」と記載する。本発明細書で用いる撥油性とは低表面張力化により液体のひろがり抑制効果を意味するものであり、濡れの原理から鑑みて表面張力値の大きな水に対しての作用(撥水性)も含まれるものである。
本発明のエレクトレットは前記の課題を解決するために、発明者が鋭意検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は下記の通りである。
1.ポリテトラフルオロエチレンを表面に担持したエレクトレットフィルターの製造方法において、融点35℃以上300℃以下のポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解、かつ一部が未溶解の懸濁液を担体表面に塗布する工程を含むことを特徴とするエレクトレットフィルターの製造方法。
2.前記ポリテトラフルオロエチレンは、融点の異なる2種以上が混合されていることを特徴とする、上記1に記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
3.前記懸濁液として、常温以上に加熱し冷却再析出により得られた懸濁液を塗布することを特徴とする上記1または2に記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
4.前記ポリテトラフルオロエチレンとして、融点300℃以下のポリテトラフルオロエチレンと300℃以上のポリテトラフルオロエチレンとを用いることを特徴とする、上記1から3のいずれか1つに記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
5.前記担体としてメルトブローンを用いることを特徴とする上記1から4のいずれか1つに記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
また、上記いずれかに記載の本発明のエレクトレットフィルターの製造方法により製造されたエレクトレットフィルターも本発明の範囲に含まれる。
6.担体表面の少なくとも一部に融点35℃以上300℃以下のポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解かつ一部が未溶解の懸濁液が前記担体表面にコーティングされることで、前記ポリテトラフルオロエチレンを担持して成ることを特徴とするエレクトレットフィルター。
1.ポリテトラフルオロエチレンを表面に担持したエレクトレットフィルターの製造方法において、融点35℃以上300℃以下のポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解、かつ一部が未溶解の懸濁液を担体表面に塗布する工程を含むことを特徴とするエレクトレットフィルターの製造方法。
2.前記ポリテトラフルオロエチレンは、融点の異なる2種以上が混合されていることを特徴とする、上記1に記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
3.前記懸濁液として、常温以上に加熱し冷却再析出により得られた懸濁液を塗布することを特徴とする上記1または2に記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
4.前記ポリテトラフルオロエチレンとして、融点300℃以下のポリテトラフルオロエチレンと300℃以上のポリテトラフルオロエチレンとを用いることを特徴とする、上記1から3のいずれか1つに記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
5.前記担体としてメルトブローンを用いることを特徴とする上記1から4のいずれか1つに記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
また、上記いずれかに記載の本発明のエレクトレットフィルターの製造方法により製造されたエレクトレットフィルターも本発明の範囲に含まれる。
6.担体表面の少なくとも一部に融点35℃以上300℃以下のポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解かつ一部が未溶解の懸濁液が前記担体表面にコーティングされることで、前記ポリテトラフルオロエチレンを担持して成ることを特徴とするエレクトレットフィルター。
本発明によれば、撥油性、耐オイルミスト性、および電荷安定性に優れた、高性能のエレクトレットフィルターを製造および提供することが可能となる。
以下に本発明のエレクトレットフィルターの製造方法およびそれにより製造されるエレクトレットフィルターの実施の形態について説明する。なお、本発明のエレクトレットフィルターは、以下に限定されず、本発明の趣旨に則り用途毎に最適な構成を選択できるものである。
本発明のエレクトレットフィルターに用いられる担体は、担体としての所望の特性を有するものであれば特に制限されないが、形状の自由度および素材そのもの電荷安定性を考慮し、電気抵抗の高い合成樹脂からなることが好ましい。具体的には、非フッ素系合成樹脂であるポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、環状オレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂などが挙げられ、中でもポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、環状オレフィン等のポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンからなる場合は、疎水性、電気抵抗、成形性などのバランスが良好であり、実用性に優れたエレクトレットが得られる。
撥油性をより高めるために担体にフッ素原子を含有した合成樹脂を用いることも好ましい。そのような合成樹脂として、例えばポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライドコポリマー(THV)などが挙げられ、撥油性の観点からはポリテトラフルオロエチレン、FEP、PFA、ETFEがより好ましい。
上記合成樹脂には樹脂自体の劣化を抑制し、さらにはエレクトレットの初期電荷量および電荷安定性を高めるために、従来公知の配合剤および配合組成を好ましく用いることができる。たとえば、配合剤としては各種金属塩、酸化防止剤、光安定化剤、アイオノマー樹脂などが挙げられる。配合組成としては、異なる樹脂成分を混合することにより得られるブレンドポリマーなどが挙げられる。エレクトレットとしての初期電荷量および電荷安定性を考慮した場合、少なくとも1種がエレクトレット化可能な合成樹脂であることが好ましい。
本発明のエレクトレットフィルターは、担体である繊維状物がエレクトレット化されて成る。繊維状物とは、長繊維または短繊維からなる織編物、不織布、綿状物等の繊維状物や延伸フィルムから得られる繊維状物を含むものであり、用途に応じて適当な形状および厚みに成形したものを使用することができる。エレクトレットをフィルター用途として利用する場合は、不織布であることが最も好ましい。
不織布を得る方法としては、単成分繊維、芯鞘繊維やサイドバイサイド繊維といった複合繊維、分割繊維等の短繊維をカーディング、エアレイド、湿式抄紙法などによりシート化する方法、連続繊維よりなるスパンボンド法、メルトブローン法、エレクトロスピニング法、フォーススピニング法などにより得る方法など、従来公知の方法を用いることが可能である。中でも、機械的捕集機構を効果的に利用する観点から緻密で細繊度を容易に得られるメルトブローン法、エレクトロスピニング法やフォーススピニング法で得られる不織布が好ましく、残溶剤の処理を必要としない観点からメルトブローン法、溶融エレクトロスピニング法や溶融フォーススピニング法で得られる不織布がより好ましい。
本発明のエレクトレットフィルターにおいて、担体を成す繊維状物に用いられる繊維の直径は、0.001〜100μmであることが好ましく、0.005〜20μmであることがより好ましく、0.01〜10μmであることがさらに好ましく、0.02〜5μmであることが特に好ましく、0.03〜3μmであることが最も好ましい。繊維の直径が100μmよりも太い場合には実用的な捕集効率を得ることが困難であり、電荷減衰時の効率低下が大きい。繊維の直径が0.001μmよりも細い場合には、エレクトレットとしての電荷を付与することが困難である。
本発明のエレクトレットフィルターにおいて、担体を成す繊維状物は、単独の素材の均一物であってもよいし、素材および繊維径の異なる2種以上の素材を用いてなる混合物であってもよい。繊維状物の製法も限定されない。
本発明のエレクトレットフィルターは、担体表面に、融点35℃以上300℃以下のポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解、かつ一部が未溶解の懸濁液が塗布されることで、ポリテトラフルオロエチレンが担持されたエレクトレットである。
すなわち、本発明の趣旨は、溶液中に含まれるポリテトラフルオロエチレンによる均一なコーティング層(平滑面)と未溶解の粒子状ポリテトラフルオロエチレンによる凸形状を一液で形成することを目的とする。本発明のエレクトレットフィルターは、このような構成を有することで、下記の問題を解決できる。
(1)均質な溶液を塗布すると担体表面に平滑面のみが形成される。(2)ガラス転移温度や融点が60℃以下となるエマルジョンや粒子状物を塗布した場合には、平滑面から凸形状までいずれも調整可能であるが電荷安定性が得られない。(3)ガラス転移温度や融点が60℃以上となるエマルジョンや粒子状物を塗布した場合には、凸形状が得られるものの、担体表面が露出している場合には撥油性が不足し、担体を覆うには多量の粒子を付着させる必要がある。(4)均一な成分を熱処理条件のみで、均一なコーティング層を得ながら凸形状を制御することは非常に困難である。
そこで、本発明においては、担体表面に平滑面と凸形状とを形成し、かつ撥水および撥油性を付与するために、ポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解かつ一部が未溶解の懸濁液を担体表面に塗布する。
用いられるポリテトラフルオロエチレンは電荷安定性の観点から35℃以上の融点を有することが好ましく、より好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは120℃以上、最も好ましくは150℃以上である。その一方で、溶解性を与えるためには融点320℃以下であることが好ましく、より好ましくは270℃以下であり、最も好ましくは250℃以下である。
ポリテトラフルオロエチレンは、例えば、常圧(大気中1気圧)における融点は、n−C10F22の場合には36℃、n−C12F26の場合には76℃、n−C14F30の場合には103℃、n−C16F34の場合には125℃、n−C20F42の場合には167℃、n−C31F64の場合には219℃である。また、市販混合物として、低分子量PTFEセフラルルーブV(セントラル硝子株式会社製)においては、融点範囲として100〜290℃(ピーク温度270℃)を有している。
融点が330℃以上のポリテトラフルオロエチレンは分子量が数万から数十万を有するため炭化水素系、ハロゲン系溶剤いずれにも溶解させることができない。それに対し、本発明に用いられる融点が35℃以上320℃以下のポリテトラフルオロエチレンは、炭化水素系溶剤に不溶である一方、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)および環状フッ素化物、芳香族フッ素化物からなる含フッ素溶媒に可溶であるため、溶剤系のコーティング剤として用いることもできる。
したがって、少なくとも一部を溶解させて用いるポリテトラフルオロエチレンの融点は少なくとも1種が、35℃から320℃以下であり、より好ましくは80℃から270℃であり、最も好ましくは250℃以下である。また、粒子状物として存在するポリテトラフルオロエチレンは融点35℃以上であれば溶解度以上の濃度で存在する場合にはいずれのものを用いることも可能であり、前者と同一であってもよいし、300℃以上の融点を有するより高分子量のポリテトラフルオロエチレンであってもよい。すなわち、本発明では、少なくとも一部が溶解したポリテトラフルオロエチレン溶液であり、同時に溶解性の有無にかかわらずポリテトラフルオロエチレン粒子が混在する懸濁液、を用いる。
上記の場合、粒子状物として存在するポリテトラフルオロエチレンがより高融点、低溶解度であることが好ましい。溶液への混合時や乾燥および保管時の温度上昇においても凸形状を維持することができるからである。
また、本発明においては、懸濁液から得られる担体表面の凸形状(粒子径)の直径は0.1nm以上500nm以下とすることが好ましい。0.5nm以上300nm以下であることがより好ましく、1nm以上200nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上100nm以下であることが最も好ましい。粒子経が500nmより大きい場合には分散時の均一性や取り扱いが困難となるとともに、コーティングの層厚みが過大となる。
また、前記微細な凸形状としては、捕集対象とする液滴よりも微細であることが好ましい。表面積の増加による濡れ仕事の増加のみならず、付着した粒子と担体の間に空気層が存在することで、Cassie−Baxter理論に沿った高い撥油表面を得ることができるためである。すなわち、捕集対象とする浮遊オイルミストは通常500nm以下であるため、凹凸による撥油性付与が困難となる。一方で粒子経が0.1nm未満であると溶解性および融点や蒸気圧の面でコーティング用途として不適であり、撥油性および耐久安定性、エレクトレットの安定性に劣るという問題がある。
とりわけ、担体が繊維状物であって通気性や濾過特性を求められる用途においては繊維状物との直径比が重要であり、繊維径を粒子径で除した値(繊維直径÷粒子直径)が1以上であることが好ましく、より好ましくは10以上であり、最も好ましくは100以上である。一般的に繊維直径が小さいほど濾過特性(単位通気抵抗あたりの捕集効率)が向上することが知られており、コーティング層による繊維径増加を抑制するためである。
上記粒子径を調整する手法としては、(1)乳化重合ならびに懸濁重合の粒子として重合時に調整する方法、(2)衝撃、摩擦などの物理的作用により粉砕する方法、(3)フッ素系溶媒、超臨界二酸化炭素などに溶解後、噴霧により粒子化する方法、(4)フッ素系溶媒、超臨界二酸化炭素などに溶解後、貧溶媒と混合することにより再析出により粒子化する方法、(5)融点以上の温度に加熱した後に噴霧する方法、(6)圧力・温度変化による蒸散および凝縮を利用する方法、(7)温度による溶解度差を利用するものであって、少なくとも一部をフッ素系溶媒などに溶解させたのち、冷却再析出する方法、(8)少なくとも一部をフッ素系溶媒などに溶解させたのち、溶媒を除去することで析出させる方法などが挙げられ、目的とする粒子径に応じて好ましい手法を用いることができる。乳化重合や懸濁重合ならびに再析出により得られる粒子の場合には、固液混合状態で加工剤としてそのまま用いてもよいし、乾燥工程を経て粒子として取り出すことも好ましい。
物理的作用により粉砕する方法としては、湿式もしくは乾式の各種粉砕機を用いることが可能であり、具体的にはボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ホモジナイザーなどを例示することができ、粉砕と同時に乳化、懸濁させて用いることも好ましい。
本発明の製造方法においては、少なくとも一部がポリテトラフルオロエチレンの溶液であり、同時に未溶解のポリテトラフルオロエチレンの粒子が混在した懸濁液を、用いることを特徴としており、(1)少なくとも1種のポリテトラフルオロエチレン粒子を溶解度以上に混合する方法、(2)少なくとも1種のポリテトラフルオロエチレンが溶解した溶液に、前述の方法により微粒子化された溶解度のポリテトラフルオロエチレンを混合する方法、(3)少なくとも一種のポリテトラフルオロエチレンを完全に溶解させた後に、濃縮もしくは冷却により再析出させる方法などを例示することができる。
本発明においては上記の懸濁液を担体に付着させた後、溶媒を除去することで凸部を有したポリテトラフルオロエチレンコーティング層を得ることを目的としており、本目的が達成できるものであればいずれの方法であっても好ましく用いることができるが、たとえば担体に塗布、噴霧する方法、担体を浸漬する方法などを例示することができる。必要に応じて、加熱することにより担体表面への付着を促進するとともに、電荷安定性を阻害する低沸点成分を除去することができる。
本発明のエレクトレットフィルターは、担体またはポリテトラフルオロエチレンの少なくとも一方がエレクトレット化され、静電電荷を付与されてなる。エレクトレット化法は使用時に所望の特性が得られるものであれば特に制限されず、担持前、担持後いずれでも構わない。好ましくは担持後であり、電荷量の制御がより容易である。
具体的なエレクトレット化法としては、高電圧による分極、荷電イオンの衝突、荷電粒子の注入など電気的作用によるもの、摩擦、衝突など固体との相互作用によるもの、液体との接触および衝突を利用したものなど、従来公知の方法を用いることができる。より好ましくは、液体との接触や摩擦を用いる方法であり、極性を有した酸化生成物を増加させずにエレクトレット化が可能となるため、撥油性および耐オイルミスト性の観点からより好ましい。
本発明のエレクトレットフィルターは、フィルター効率に寄与する初期電荷量の、電荷を有しない非エレクトレット(無帯電状態)に対して以下に記載の性能上昇率が、400%以上が好ましく、800%以上がより好ましく、1200%以上がさらに好ましく、1600%以上が最も好ましい。
性能上昇率は、以下のように、荷電初期の透過率である荷電後透過率と、無帯電状態での透過率である無帯電透過率から算出する。
性能上昇率[%]=(ln(荷電後透過率)÷ln(無帯電透過率))×100
ここで透過率は、風速10cm/sにおける粒子径0.3〜0.5μmの大気塵を用いて、フィルターの上流と下流にてそれぞれ粒子個数を測定して、下記式から算出する。
透過率(単位無し)=下流側粒子個数÷上流側粒子個数
性能上昇率は、以下のように、荷電初期の透過率である荷電後透過率と、無帯電状態での透過率である無帯電透過率から算出する。
性能上昇率[%]=(ln(荷電後透過率)÷ln(無帯電透過率))×100
ここで透過率は、風速10cm/sにおける粒子径0.3〜0.5μmの大気塵を用いて、フィルターの上流と下流にてそれぞれ粒子個数を測定して、下記式から算出する。
透過率(単位無し)=下流側粒子個数÷上流側粒子個数
本発明のエレクトレットフィルターにおいて、使用時、保管時および形状加工時に求められる電荷安定性としては、以下に記載の性能維持率として10%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましく、90%以上が最も好ましい。性能維持率は80℃環境下における30分放置(熱処理)の前後にて風速10cm/sの0.3〜0.5μm大気塵効率から算出される。
性能維持率[%]=(ln(熱処理後透過率)÷ln(熱処理前透過率))×100
性能維持率[%]=(ln(熱処理後透過率)÷ln(熱処理前透過率))×100
本発明により得られる撥油性に関しては、必要とされる特性(たとえば防水、防汚、撥水、撥油)に応じて調整することが可能であるが、例えば不織布、織布等の繊維状物からなるフィルターとして用いられる場合には、JIS K6768およびAATCC118法により用いられる表面張力試験液において、10秒以内の浸透性を与える表面張力として少なくとも無加工品(たとえばPPメルトブローンにおける代表値としては36mN/m)よりも向上していれば好ましく用いることができる。具体的には31mN/m以下が好ましく、29mN/m以下がより好ましく、27mN/m以下がさらに好ましく、25mN/m以下が最も好ましい。これらは防塵マスクの国家検定オイルミストの試験液体であるDOPが31mN/m、PAO(たとえばEmery3004)が29mN/mであり、実使用における鉱物および植物性オイルミストへの対応を考慮したものである。本発明者らの検討によると、シート形状での撥油性とフィルターとしての耐油性には相関があり、毛管現象により吸収が生じない程度の撥油性が得られていれば、フィルターとしても明確な耐油性(効率低下の抑制)が確認される。これは素材表面の耐油性(接触角)と多孔質体への吸収現象に相関があるためであり。ミスト試験時における繊維表面に捕集されたエアロゾルの接触角や捕集状態との相関がある。また混合物であるタバコ煙自体の表面張力値は明確ではないが、上記液体における浸透性低下とともに、明確な耐久性向上効果が確認される。
本発明のエレクトレットフィルターは、吸油または吸水機能を有した繊維層(以下、「吸液層」という)を積層して用いることも好ましい。吸油や吸水などの吸液機能を有した吸液層を用いることで、撥油性により生じた液滴の滴りを抑制し、エレクトレット表面から液滴を移行し拡散することで、エレクトレット性の消失や通気抵抗上昇を抑制することができる。
吸液層の素材としては、液滴を吸収するものであれば特に制限されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース、レーヨンなどからなる繊維シート素材、活性炭、ゼオライト、パルプなど多孔質材料を間隙に含有または表面に加工したシート素材などを好ましく用いることができる。より好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系素材またはポリエステルであり、さらに好ましくはポリプロピレンである。
吸液層に用いられる繊維は1種類または2種類以上を組み合わせて用いることも好ましく、通風抵抗や粗大粒子の捕集などの観点で適当な素材を選択することができる。
吸液層として用いられる素材は非エレクトレットおよびエレクトレットいずれでも好ましく用いることが可能であり、エレクトレット化されてなることがより好ましい。
吸液層の製法は所望の特性が得られるものであれば特に制限されないが、サーマルボンド法、スパンボンド法、スパンレース法、溶融および溶液法によるエレクトロスピニング法および、フォーススピニング法など、好ましい方法によりシート化した素材を用いることができる。
吸液層を構成する繊維としては、直径が0.005〜100μmであることが好ましく、0.01〜20μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
本発明においては担体が繊維状物などの多孔質体の場合には、表裏の加工濃度を変化させることにより、担持量の少ない側を吸液層、他方を撥油層として機能させてもよい。
さらに必要に応じて他の構成部材と併用してもちいることができる。すなわち、プレフィルター層、繊維保護層、補強部材、または機能性繊維層などと組み合わせて用いることも好ましい。
プレフィルター層および繊維保護層としては、例えばスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、発泡ウレタンなどであり、補強部材としては、例えばサーマルボンド不織布、各種ネットを例示することができる。また、機能性繊維層としては例えば抗菌、抗ウイルスおよび識別や意匠を目的とした着色繊維層などを例示することができる。吸液層にこれら機能を持たせることは厚みや通気抵抗を低減する方法として好ましい。
本発明のエレクトレットフィルターは、得られる集塵、保護、通気、防汚、防水などの機能により幅広く用いることが可能であり、とりわけ、防塵マスク、各種空調用エレメント、空気清浄機、キャビンフィルター、空調機、各種装置の保護を目的としたフィルターとして好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されることはない。初めに、後段で説明する実施例および比較例で作製したエレクトレットフィルターの物性の評価方法について説明する。
(撥油性)
撥油性は以下の試験方法にて評価した。
JIS K6768に定められた配合にて40mN/m〜25mN/mの範囲にて1mN/m間隔の試験液を調整した。別途、AATCC118法に定められた1級から8級までの試験液とPAO(Emery3004)を試験液として準備した。各々を微生物試験用マイクロピペッターにてエレクトレットフィルターの試験サンプル表面に対し20μlずつ静置し、10秒後の浸透度合いを観察した。JIS試験液およびAATCC試験液に関しては浸透度の小さな液体(表面張力の大きな液体)から試験を開始し、浸透が生じたところを浸透/非浸透の境界値とした。評価結果としては、境界における非浸透側の数字を対象試料の撥油性として用いた。なお、表裏に差異がある場合には、より浸透度の低い方を数値として用いた。
水耐浸透とPOA耐浸透については、浸透度合いの観察において、浸透しなかったものを○とし、浸透したものを×と評価した。
撥油性は以下の試験方法にて評価した。
JIS K6768に定められた配合にて40mN/m〜25mN/mの範囲にて1mN/m間隔の試験液を調整した。別途、AATCC118法に定められた1級から8級までの試験液とPAO(Emery3004)を試験液として準備した。各々を微生物試験用マイクロピペッターにてエレクトレットフィルターの試験サンプル表面に対し20μlずつ静置し、10秒後の浸透度合いを観察した。JIS試験液およびAATCC試験液に関しては浸透度の小さな液体(表面張力の大きな液体)から試験を開始し、浸透が生じたところを浸透/非浸透の境界値とした。評価結果としては、境界における非浸透側の数字を対象試料の撥油性として用いた。なお、表裏に差異がある場合には、より浸透度の低い方を数値として用いた。
水耐浸透とPOA耐浸透については、浸透度合いの観察において、浸透しなかったものを○とし、浸透したものを×と評価した。
(捕集効率)
エレクトレットフィルターの荷電初期の捕集効率(表1では「荷電後効率」と記載)は、以下の試験方法にて評価した。
評価粒子:大気塵(粒径0.3〜0.5μm間の粒子を含む)
風速 :10cm/s
捕集効率:フィルターの通過前後(上流側および下流側)における粒径0.3〜0.5μm間の粒子個数を光散乱計数法により計測し、以下の式から求めた。
捕集効率(%)=(1−(下流側個粒子数÷上流側粒子個数))×100
エレクトレットフィルターの荷電初期の捕集効率(表1では「荷電後効率」と記載)は、以下の試験方法にて評価した。
評価粒子:大気塵(粒径0.3〜0.5μm間の粒子を含む)
風速 :10cm/s
捕集効率:フィルターの通過前後(上流側および下流側)における粒径0.3〜0.5μm間の粒子個数を光散乱計数法により計測し、以下の式から求めた。
捕集効率(%)=(1−(下流側個粒子数÷上流側粒子個数))×100
(耐オイルミスト性)
オイルミストへの負荷耐性(耐オイルミスト性)は以下の2種の試験方法にて評価した。なお、試験において、低極性の鉱物系粒子としてPAOミストを用い、水および多種多様な極性分子を含有する複合粒子としてタバコ煙を用いた。
(耐オイルミスト性1:PAO耐久寿命)
フィルターを72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し下記条件にて通風を行った。
評価装置 :TSI−8130型フィルターテスター
風量 :6L/min(5cm/s)
負荷粒子 :PAO(Emery3004)平衡帯電
個数最頻径0.184μm
濃度 :100mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
連続的に粒子負荷を行い、上記評価装置における捕集効率が50%となった時点を評価の終点とし、試験前後の重量より50mmφあたりのサンプル上に捕集されたPAO重量を算出した。
濃度 :100mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
連続的に粒子負荷を行い、上記装置における捕集効率が50%となった時点を評価の終点とし、試験前後の重量より50mmφあたりのサンプル上に捕集されたPAO重量を算出した。
(耐オイルミスト性2:タバコ煙耐久寿命)
[タバコ煙負荷]
1m3アクリル容器中でJEM1467法に準拠した吸煙器と手法にて日本たばこ社製メビウスを4本燃焼させた。72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し、風量12L/minにて10分間通気を行った。参考となる粒子濃度は柴田科学デジタル粉塵計P−2Lにて4000CPMから3000CPMへの減少となり、概ね1本/サイクル程度の負荷量となる。初期および1サイクル負荷毎に、下記の効率および重量を計測し、効率50%を割り込んだ時点を終点とする。縦および横軸を普通軸として捕集効率とタバコ煙の捕集重量をプロットし、効率50%となる時点の数値を読み取り耐久寿命として算出した。
[タバコ煙負荷時の捕集効率]
タバコ煙負荷後のサンプルを用いた場合、光散乱計数器(レーザーパーティクルカウンター)の粒子径計測に干渉を生じるため、光散乱濃度法にて効率評価を行った。なお、レーザーパーティクルカウンターによる0.3−0.5μmの効率とほぼ一致することを確認している。
タバコ煙負荷後のサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し下記条件にて通風を行った。
評価装置 :TSI−8130型フィルターテスター
風量 :6L/min(5cm/s)
負荷粒子 :固体NaCl(2w%NaCl水から発生)平衡帯電
個数最頻径0.075μm
濃度 :200mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
なお、評価風量が小さいため上下の検出器が平衡となる時間として20秒の値を設定し、1サイクルのフィルターテスターモード(効率計測モード)の数値を用いた。
オイルミストへの負荷耐性(耐オイルミスト性)は以下の2種の試験方法にて評価した。なお、試験において、低極性の鉱物系粒子としてPAOミストを用い、水および多種多様な極性分子を含有する複合粒子としてタバコ煙を用いた。
(耐オイルミスト性1:PAO耐久寿命)
フィルターを72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し下記条件にて通風を行った。
評価装置 :TSI−8130型フィルターテスター
風量 :6L/min(5cm/s)
負荷粒子 :PAO(Emery3004)平衡帯電
個数最頻径0.184μm
濃度 :100mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
連続的に粒子負荷を行い、上記評価装置における捕集効率が50%となった時点を評価の終点とし、試験前後の重量より50mmφあたりのサンプル上に捕集されたPAO重量を算出した。
濃度 :100mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
連続的に粒子負荷を行い、上記装置における捕集効率が50%となった時点を評価の終点とし、試験前後の重量より50mmφあたりのサンプル上に捕集されたPAO重量を算出した。
(耐オイルミスト性2:タバコ煙耐久寿命)
[タバコ煙負荷]
1m3アクリル容器中でJEM1467法に準拠した吸煙器と手法にて日本たばこ社製メビウスを4本燃焼させた。72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し、風量12L/minにて10分間通気を行った。参考となる粒子濃度は柴田科学デジタル粉塵計P−2Lにて4000CPMから3000CPMへの減少となり、概ね1本/サイクル程度の負荷量となる。初期および1サイクル負荷毎に、下記の効率および重量を計測し、効率50%を割り込んだ時点を終点とする。縦および横軸を普通軸として捕集効率とタバコ煙の捕集重量をプロットし、効率50%となる時点の数値を読み取り耐久寿命として算出した。
[タバコ煙負荷時の捕集効率]
タバコ煙負荷後のサンプルを用いた場合、光散乱計数器(レーザーパーティクルカウンター)の粒子径計測に干渉を生じるため、光散乱濃度法にて効率評価を行った。なお、レーザーパーティクルカウンターによる0.3−0.5μmの効率とほぼ一致することを確認している。
タバコ煙負荷後のサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し下記条件にて通風を行った。
評価装置 :TSI−8130型フィルターテスター
風量 :6L/min(5cm/s)
負荷粒子 :固体NaCl(2w%NaCl水から発生)平衡帯電
個数最頻径0.075μm
濃度 :200mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
なお、評価風量が小さいため上下の検出器が平衡となる時間として20秒の値を設定し、1サイクルのフィルターテスターモード(効率計測モード)の数値を用いた。
<実施例1>
n−C20F41(融点167℃)とパーフルオロヘキサンとを3:97重量部の割合で混合させた後、50℃に加温して溶解して冷却することにより懸濁液を作製した。この懸濁液は、25℃における液中における溶解度が1重量%であった。この懸濁液にメルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布を浸漬させ風乾することで、乾燥重量として0.75g/m2の担持を行った。この数値は、乾燥残渣となったn−C20F41(融点167℃)の値である。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電して実施例1のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
n−C20F41(融点167℃)とパーフルオロヘキサンとを3:97重量部の割合で混合させた後、50℃に加温して溶解して冷却することにより懸濁液を作製した。この懸濁液は、25℃における液中における溶解度が1重量%であった。この懸濁液にメルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布を浸漬させ風乾することで、乾燥重量として0.75g/m2の担持を行った。この数値は、乾燥残渣となったn−C20F41(融点167℃)の値である。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電して実施例1のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例2>
n−C16F34(融点125℃)とパーフルオロヘキサンとを1:99重量部の割合で混合し完全な溶液とした。別途、乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレン(融点330℃:粒子径210nm)の水性分散体を300℃の加熱により界面活性剤成分を除去した後、パーフルオロヘキサンと1:99重両部の割合で混合し懸濁液を作製した。この懸濁液は、液中に対する溶解度が0.1w%以下であった。前者の溶液と後者の懸濁液とを1:1で混和した後に、実施例1と同一の未加工メルトブローン不織布を同一手法を施し、乾燥重量で0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し実施例2のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
n−C16F34(融点125℃)とパーフルオロヘキサンとを1:99重量部の割合で混合し完全な溶液とした。別途、乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレン(融点330℃:粒子径210nm)の水性分散体を300℃の加熱により界面活性剤成分を除去した後、パーフルオロヘキサンと1:99重両部の割合で混合し懸濁液を作製した。この懸濁液は、液中に対する溶解度が0.1w%以下であった。前者の溶液と後者の懸濁液とを1:1で混和した後に、実施例1と同一の未加工メルトブローン不織布を同一手法を施し、乾燥重量で0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し実施例2のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例3>
低分子量PTFEセフラルルーブV(セントラル硝子株式会社製、融点範囲100〜290℃(ピーク温度270℃)、粒子径1μm)を、パーフルオロヘキサンに1:99重量部で混合し、オートクレーブ中で300℃まで加熱することで溶解、冷却することにより懸濁液を作製した。この懸濁液に実施例1と同一の未加工メルトブローン不織布を浸漬させ60℃にて乾燥させて、乾燥重量で0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し実施例3のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。遠心分離により混合液の固形分のみを回収したところ、粉末の投入量に対し85%が不溶であった。
低分子量PTFEセフラルルーブV(セントラル硝子株式会社製、融点範囲100〜290℃(ピーク温度270℃)、粒子径1μm)を、パーフルオロヘキサンに1:99重量部で混合し、オートクレーブ中で300℃まで加熱することで溶解、冷却することにより懸濁液を作製した。この懸濁液に実施例1と同一の未加工メルトブローン不織布を浸漬させ60℃にて乾燥させて、乾燥重量で0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し実施例3のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。遠心分離により混合液の固形分のみを回収したところ、粉末の投入量に対し85%が不溶であった。
<比較例1>
メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に対し、そのまま液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し比較例1のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に対し、そのまま液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し比較例1のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例2>
n−C16F34(融点125℃)とパーフルオロヘキサンとを1:99重量部の割合で混合し、完全に溶解させた。これに実施例1と同一のメルトブローン不織布を浸漬させ風乾することで、0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し比較例2のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
n−C16F34(融点125℃)とパーフルオロヘキサンとを1:99重量部の割合で混合し、完全に溶解させた。これに実施例1と同一のメルトブローン不織布を浸漬させ風乾することで、0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し比較例2のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例3>
乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレン(融点330℃:粒子径210nm)の水性分散体を300℃の加熱により界面活性剤成分を除去した後、パーフルオロヘキサンと1:99重両部の割合で混合し懸濁液を作製した。この懸濁液は、液中に対する溶解度が0.1w%以下であった。この懸濁液に実施例1と同一のメルトブローン不織布を浸漬させ、風乾することで0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し比較例3のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレン(融点330℃:粒子径210nm)の水性分散体を300℃の加熱により界面活性剤成分を除去した後、パーフルオロヘキサンと1:99重両部の割合で混合し懸濁液を作製した。この懸濁液は、液中に対する溶解度が0.1w%以下であった。この懸濁液に実施例1と同一のメルトブローン不織布を浸漬させ、風乾することで0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し比較例3のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例4>
低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末セフラルルーブV(セントラル硝子株式会社製、融点範囲100〜290℃(ピーク温度270℃)、粒子径1μm)をパーフルオロヘキサンに1:99重量部で混合した。これに実施例1と同一の未加工メルトブローン不織布を浸漬させ、60℃にて乾燥、乾燥重量で0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し比較例4のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。遠心分離により混合液の固形分のみを回収したところ、粉末の投入量に対し99%以上が不溶であった。
低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末セフラルルーブV(セントラル硝子株式会社製、融点範囲100〜290℃(ピーク温度270℃)、粒子径1μm)をパーフルオロヘキサンに1:99重量部で混合した。これに実施例1と同一の未加工メルトブローン不織布を浸漬させ、60℃にて乾燥、乾燥重量で0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともに、コロナ放電法により荷電し比較例4のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。遠心分離により混合液の固形分のみを回収したところ、粉末の投入量に対し99%以上が不溶であった。
表1において、実施例1〜3と比較例2〜4とにより含フッ素材料の担持加工をすることで、液滴に対する撥水撥油性が得られることがわかる。また、実施例1〜3と比較例2の対比により凹凸を有することで、耐オイルミスト特性に優れたエレクトレットを得ることができることがわかる。さらに、実施例1〜3と比較例3および4との対比により、ポリテトラフルオロエチレン溶液と粒子を組み合わせた懸濁液で加工することで、耐オイルミスト特性に優れたエレクトレットを得ることができることがわかる。
本発明のエレクトレットフィルターは、簡便な装置や工程で製造でき、かつ、撥油性、耐オイルミスト性、電荷安定性に優れており、幅広い用途展開が可能である。一例としては、防塵および防毒マスク、空気清浄機、建物ならびに乗物の換気システム、空調機、各種装置の保護を目的としたフィルターなどに用いることができる。
Claims (6)
- ポリテトラフルオロエチレンを担体表面に担持したエレクトレットフィルターの製造方法において、
融点35℃以上300℃以下のポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解かつ一部が未溶解の懸濁液を担体表面に塗布する工程を含むことを特徴とするエレクトレットフィルターの製造方法。 - 前記ポリテトラフルオロエチレンは、融点の異なる2種以上が混合されていることを特徴とする、請求項1に記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
- 前記懸濁液として、常温以上に加熱し冷却再析出により得られた懸濁液を塗布することを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
- 前記ポリテトラフルオロエチレンとして、融点300℃以下のポリテトラフルオロエチレンと300℃以上のポリテトラフルオロエチレンとを用いることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
- 前記担体としてメルトブローンを用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエレクトレットフィルターの製造方法。
- 担体表面の少なくとも一部に融点35℃以上300℃以下のポリテトラフルオロエチレンの一部が溶解かつ一部が未溶解の懸濁液が前記担体表面にコーティングされることで、前記ポリテトラフルオロエチレンを担持して成ることを特徴とするエレクトレットフィルター。
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- 2016-12-27 JP JP2016252605A patent/JP2018103109A/ja active Pending
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