JP2018103108A - エレクトレットフィルター - Google Patents
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Abstract
【課題】電荷安定性ならびに耐オイルミスト性に優れたエレクトレットフィルターを提供する。【解決手段】本発明のエレクトレットフィルターは、担体表面に異なる融点またはガラス転移温度を有する2種以上の含フッ素成分が担持されており、前記2種以上の含フッ素成分うち、少なくとも1種が前記担体表面で平滑面を、別の1種が前記担体表面で凸部を、形成している。【選択図】なし
Description
本発明はエレクトレットフィルターに関する。
従来、防塵マスク、各種空調用エレメント、空気清浄機、キャビンフィルター、各種装置等において集塵、保護、通気などを目的とし、多孔質フィルターが用いられている。
多孔質フィルターのうち、繊維状物からなるフィルターは高い空隙率を有し、長寿命、低通気抵抗という利点を備えており幅広く用いられている。これら繊維状物からなるフィルターは、さえぎり、拡散、慣性衝突などの機械的捕集機構により繊維上に粒子を捕捉するが、実用的な使用環境において捕捉する粒子の空気力学相当径が0.1〜1.0μm程度の場合にフィルター捕集効率の極小値をもつことが知られている。
上記の極小値におけるフィルター捕集効率を向上させるため、電気的な引力を併用する方法がある。たとえば、被捕集粒子に電荷を与える方法、またはフィルターに電荷を与える方法、さらには両者の組み合わせが用いられる。フィルターに電荷を与える方法としては、電極間にフィルターを配置し通風時に誘電分極させる方法や絶縁材料に長寿命の静電電荷を付与する方法が知られており、特に後者の手法は外部電源などのエネルギーを必要としないため、エレクトレットフィルターとして幅広く用いられている。
エレクトレットフィルターには、初期捕集効率を高めるため、またフィルター加工や保管時における静電電荷の減衰による性能低下を抑制するため、エレクトレット化が可能で耐湿安定性および耐熱安定性に優れたエレクトレット材料が用いられる。
しかしながら、エレクトレットフィルターは粒子の捕集に伴い静電引力が低下するという欠点があり、とりわけ表面張力の小さなオイルミストは繊維表面を薄く被覆することで電荷の消失が著しく促進される。一般的なエレクトレットフィルターには、電荷安定性に優れたポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂等が用いられているが、これらのうち最も表面張力の小さなポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン類からなる繊維状物であっても、ポリαオレフィン(PAO)、フタル酸ジオクチル(DOP)およびタバコ煙などに代表されるオイルミストに対しては材料特性として十分な撥油性を示さないため、オイルミスト負荷時の捕集効率維持性能(以下、「耐オイルミスト性」という)が低いという問題がある。
かかる問題を解決するため、フィルターを構成する繊維状物の表面張力を下げることで撥油性を与え、繊維表面でのミストの広がりや繊維素材内部への吸収拡散を抑制して電荷の消失を低減させて耐オイルミスト性を向上させる方法が知られている。具体的には、撥油性を高めるために樹脂内にパーフルオロ基を有した添加剤を混合する方法(たとえば特許文献1)、熱可塑性フッ素樹脂を溶融紡糸する方法(たとえば特許文献2および3)、パーフルオロ基を有したエマルジョン加工剤で表面をコーティング処理する方法(たとえば特許文献4)、プラズマおよびフッ素ガスなどを用い水素原子を置換することによりフッ素原子を導入する方法(たとえば特許文献5)アモルファス化により可溶性と熱可塑性を付与し、電荷安定性とコーティング性を両立したフッ素系樹脂をコーティングする方法(たとえば特許文献6)などにより、電荷安定性を維持しながら表面張力を低減させ、耐オイルミスト性を高めたエレクトレットが用いられている。しかしながら、これらの方法は平滑面における素材自身の化学的性質(表面張力値)により撥油性を発現させているためトリフルオロメチル(CF3)末端基の表面張力が最大値効果を有する組成であり撥油性の向上は既に限界となっている。
また、上記の問題を解決するため、微細な凹凸表面またはフラクタル表面とフッ素系材料とを組み合わせることにより、素材自身により優れた撥油表面を作成する方法(たとえば特許文献7、8、9および非特許文献1)が開示されている。
Journal of Polymer science: Part B: Polymer Physics., 46,1984 (2008)
しかしながら、本発明者の検討によると、上記従来技術では、フッ素系化合物を単純に無機担体上に付着させても粘接着性を有するため電荷安定性を阻害し、電荷安定性と撥油性の両立ができないという問題を有していることがわかった。また、上記従来技術は反応性を持たない炭化水素油や純水からなる液滴に対する撥水撥油性を考慮したものであり、タバコ煙やミスト状の極めて微細な粒子などに対しては効果が少ないか、場合によりエレクトレットの安定性を阻害するという問題があることがわかった。
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされ、その目的は、電荷安定性ならびに耐オイルミスト性に優れたエレクトレットフィルターを提供するものである。
なお、以下では、素材としての低表面張力化を「撥油性」、オイルミストに対する効率低下抑制効果を「耐オイルミスト性」と記載する。本明細書で用いる撥油性とは低表面張力化により液体のひろがり抑制効果を意味するものであり、濡れの原理から鑑みて表面張力値の大きな水に対しての作用(撥水性)も含まれるものである。
本発明のエレクトレットは前記の課題を解決するために、発明者が鋭意検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は下記とおりである。
1.異なる融点またはガラス転移温度を有する2種以上の含フッ素成分が担持されており、前記2種以上の含フッ素成分うち、少なくとも1種が前記担体表面で平滑面を、別の1種が前記担体表面で凸部を、成分の融点またはガラス転移温度が40℃以上であることを特徴とする1に記載のエレクトレットフィルター。
3.前記2種以上の含フッ素粒子が金属または金属酸化物を含まないことを特徴とする1または2に記載のエレクトレットフィルター
4.前記担体がメルトブローン不織布であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレットフィルター。
1.異なる融点またはガラス転移温度を有する2種以上の含フッ素成分が担持されており、前記2種以上の含フッ素成分うち、少なくとも1種が前記担体表面で平滑面を、別の1種が前記担体表面で凸部を、成分の融点またはガラス転移温度が40℃以上であることを特徴とする1に記載のエレクトレットフィルター。
3.前記2種以上の含フッ素粒子が金属または金属酸化物を含まないことを特徴とする1または2に記載のエレクトレットフィルター
4.前記担体がメルトブローン不織布であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレットフィルター。
本発明によれば、撥油性、耐オイルミスト性、および電荷安定性に優れた、高性能のエレクトレットフィルターを提供することが可能となる。
以下に本発明のエレクトレットフィルターの実施の形態について説明する。なお、本発明のエレクトレットフィルターは、以下に限定されず、本発明の趣旨に則り用途毎に最適な構成を選択できるものである。
本発明のエレクトレットフィルターに用いられる担体は、担体としての所望の特性を有するものであれば特に制限されないが、形状の自由度および素材そのもの電荷安定性を考慮し、電気抵抗の高い合成樹脂からなることが好ましい。具体的には、非フッ素系合成樹脂であるポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、環状オレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂などが挙げられ、中でもポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、環状オレフィン等のポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンからなる場合は、疎水性、電気抵抗、成形性などのバランスが良好であり、実用性に優れたエレクトレットが得られる。
撥油性をより高めるために担体にフッ素原子を含有した合成樹脂を用いることも好ましい。そのような合成樹脂として、例えばポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライドコポリマー(THV)などが挙げられ、撥油性の観点からはポリテトラフルオロエチレン、FEP、PFA、ETFEがより好ましい。
上記合成樹脂には樹脂自体の劣化を抑制し、さらにはエレクトレットの初期電荷量および電荷安定性を高めるために、従来公知の配合剤および配合組成を好ましく用いることができる。たとえば、配合剤としては各種金属塩、酸化防止剤、光安定化剤、アイオノマー樹脂などが挙げられる。配合組成としては、異なる樹脂成分を混合することにより得られるブレンドポリマーなどが挙げられる。エレクトレットとしての初期電荷量および電荷安定性を考慮した場合、少なくとも1種がエレクトレット化可能な合成樹脂であることが好ましい。
本発明のエレクトレットフィルターは、担体である繊維状物がエレクトレット化されて成る。繊維状物とは、長繊維または短繊維からなる織編物、不織布、綿状物等の繊維状物や延伸フィルムから得られる繊維状物を含むものであり、用途に応じて適当な形状および厚みに成形したものを使用することができる。エレクトレットをフィルター用途として利用する場合は、不織布であることが最も好ましい。
不織布を得る方法としては、単成分繊維、芯鞘繊維やサイドバイサイド繊維といった複合繊維、分割繊維等の短繊維をカーディング、エアレイド、湿式抄紙法などによりシート化する方法、連続繊維よりなるスパンボンド法、メルトブローン法、エレクトロスピニング法、フォーススピニング法などにより得る方法など、従来公知の方法を用いることが可能である。なかでも、機械的捕集機構を効果的に利用する観点から緻密で細繊度を容易に得られるメルトブローン法、エレクトロスピニング法やフォーススピニング法で得られる不織布が好ましく、残溶剤の処理を必要としない観点からメルトブローン法、溶融エレクトロスピニング法や溶融フォーススピニング法で得られる不織布がより好ましい。
本発明のエレクトレットフィルターにおいて、担体を成す繊維状物に用いられる繊維の直径は、0.001〜100μmであることが好ましく、0.005〜20μmであることがより好ましく、0.01〜10μmであることがさらに好ましく、0.02〜5μmであることが特に好ましく、0.03〜3μmであることが最も好ましい。繊維の直径が100μmよりも太い場合には実用的な捕集効率を得ることが困難であり、電荷減衰時の効率低下が大きい。繊維の直径が0.001μmよりも細い場合には、エレクトレットとしての電荷を付与することが困難である。
本発明のエレクトレットフィルターにおいて、担体を成す繊維状物は、単独の素材の均一物であってもよいし、素材および繊維径の異なる2種以上の素材を用いてなる混合物であってもよい。繊維状物の製法も限定されない。
本発明のエレクトレットフィルターは、担体表面に異なる融点またはガラス転移温度を有する2種以上の含フッ素成分が担持されており、前記2種以上の含フッ素成分うち、少なくとも1種が前記担体表面で平滑面を、別の1種が前記担体表面で凸部を形成している。
上記形状とするための具体的方法として、(1)予め平滑な含フッ素面を得た後に凸部となる成分を付着させる方法、(2)コーティング溶液に融点もしくはガラス転移温度、および溶解性の異なる2以上の成分を混在させ溶解度の差により凹凸を形成する方法、(3)コーティング液をエマルジョンもしくはサスペンションとし、融点もしくはガラス転移温度が低い成分を加熱処理により平滑面とする方法、(4)予め凸成分を担体表面に形成させたのち、溶液を付着させる方法、(5)予め凸成分を担体表面に形成させた後、融点もしくはガラス転移温度の低い成分を付着させ、加熱処理により平滑化する方法などを例示することができる。
予め平滑な含フッ素面を得る方法としては、(1)担体成分に含フッ素成分を混合しておく方法、(2)フッ素ガスにより担体をフッ素化する方法、(3)フッ素プラズマにより担体をフッ素化する方法、(4)表面重合により担体表面に含フッ素樹脂層を得る方法、(5)含フッ素成分の溶液により担体表面をコーティングする方法、(6)含フッ素成分のエマルジョンもしくはサスペンションを付着させたのち、熱処理により平滑化させる方法、(7)含フッ素成分の粒子状物を気相にて付着させたのち、熱処理により平滑化させる方法、(8)含フッ素成分を蒸着し平滑化させる方法などを例示することができる。
凸部となる成分を予め加工された含フッ素平面に付着させる方法としては、(1)エマルジョン、サスペンジョンなどをコーティング液として塗布する方法(2)エマルジョン、サスペンジョン、溶液等をスプレーにより噴霧、粒子化する方法、(3)蒸散や昇華などを用い、蒸気や液滴から表面に析出させる方法、などを例示することができる。
予め凸部を形成する方法としては、(1)担体のエッチング処理を用いる方法、(2)2以上の成分を付着させておき、溶解度もしくは蒸気圧の差により少なくとも1成分を除去する方法、(3)担体となる樹脂成分に予め凸成分を混合しておく方法、(4)エマルジョン、サスペンジョン、溶液等をスプレーにより噴霧、粒子化する方法、(5)蒸散や昇華などを用い、蒸気や液滴から表面に析出させる方法、などを例示することができる。
平滑面および凸部を形成する成分としては、所望の撥油特性が得られる含フッ素成分であれば特に制限されないが、界面活性剤不含かつ、粒子核を形成するための金属ならびに金属酸化物を含まないことが好ましい。すなわち、界面活性剤を含有する粒子においては、粒子自体や基材の撥水撥油性や電荷安定性を阻害するためである。また、金属および金属酸化物表面にフッ素系のコート層を用いることで含フッ素粒子化する方法では、(1)金属酸化物表面に均一なコーティングを行うことが困難であり微細液滴に対する撥油性を発揮することが困難であること、(2)金属との反応性を利用する化合物においては、C6以下の単一直鎖化合物においては常温粘性を有しており、エレクトレットの電荷安定性や粒子同士の付着分散性を阻害すること、(3)タバコ煙など反応性や酸・塩基性を有する物質に対して耐加水分解性に劣ることなどを例示することができる。
本発明のエレクトレットフィルターにおいて、担体表面に平滑面と凸部とを形成し、かつ撥水および撥油性を付与するために、融点もしくはガラス転移温度の異なる少なくとも2種の含フッ素成分を用いる。用いる含フッ素成分としては、具体的には、フッ素化グラファイトもしくは含フッ素重合体が好ましく、粒子同士の粘着や流動による電荷安定性の阻害を抑制するため、いずれの成分も40℃以上のガラス転移温度または融点を有することが好ましい。より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上、最も好ましくは100℃以上である。そのような含フッ素成分としては、例えばPTFE、FEP、PFA、ETFE、PCTFE、PVDF、THV、ならびに少なくとも側鎖にC6以下のパーフルオロ構造を有するアクリル酸重合体、メタクリル酸重合体、フッ素溶剤に可溶性を有する変性PTFEなどを例示することができる。
特に、含フッ素アクリル酸重合体や含フッ素メタクリル酸重合体においては、ランダム重合の場合にガラス転移温度を上昇させる。そのため、重合体の主鎖にハロゲン原子を導入することや、剛直な短鎖メチルメタクリレート、トリフルオロメチルメタクリレート、立体障害の大きなスチレンおよび、ジシクロペンテニル、ジシクロペンタニル基含有オレフィンとの共重合および、立体規則性重合の導入により結晶性を発現させる方法などが好ましい方法である。
含フッ素アクリル酸重合体や含フッ素メタクリル酸のより具体的な例としては、モノマー成分として含フッ素オレフィン類、共重合性を有する炭化水素オレフィン類、側鎖にフルオロアルキル基を有するアクリレート、メタクリレートおよび、フッ素基を含有しないアルキル基を側鎖に有するアクリレート、メタクリレート、および各々に対してα−クロロアクリレートおよびメタクリレートからなる、少なくとも一部に含フッ素構造を有した重合体が挙げられる。
このうち、撥油性の観点から鑑みて含フッ素アルキル基もしくは含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルキレン基を有することが好ましく、含フッ素アクリレートもしくはメタクリレートにおいては、トリフルオロメチル基が末端に位置するパーフルオアクリル基を有してなることが好ましい。パーフルオロ基の炭素数は1個以上7個以下であれば好ましく用いられるが、4から6個の炭素数からなるパーフルオロアルキル基を側鎖の末端に有してなることがより好ましい。主鎖とのスペーサーとして、1以上の芳香族基、直鎖もしくは分岐状脂肪族鎖、環状脂肪族基を有してなることも好ましい。連結基としては酸素、珪素、窒素原子などを含んでもよいが、より好ましくは水素、フッ素、炭素のみからなる構造である。これは、不対原子ならびに非対称な極性成分を持たないため、表面張力および吸湿性の低減に効果があり、耐油性とエレクトレット性に対して有利な効果を与える。
とりわけ、α−クロロアクリレートおよびメタクリレートを用いた場合には、立体障害の大きな塩素原子を主鎖に組み込むことが可能であるため、含フッ素量を維持したままガラス転移温度を高めることができる。よって、電荷安定性と撥油性の発現には特に有利である。
また、本発明においては、C7F14以下の含フッ素アルキル基もしくは含フッ素アルキレン基を用いるため、所望のガラス転移温度もしくは結晶性を得るため、含フッ素モノマーとの共重合モノマーとして炭素数12から30の直鎖脂肪族基を有するアクリレートもしくはメタクリレートを用いることも好ましい。長鎖脂肪族基は側鎖の結晶性とガラス転移温度の向上に効果を有するとともに、エステル基の遮蔽と分子運動性を低減する為にエレクトレットの安定性向上に寄与する。具体的な一例としては、ラウリルアクリレート、ミリスチルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレートおよびメタクリレートを例示することができる。
また、含フッ素モノマーとの共重合モノマーとして、分岐状脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基を有してなるアクリレートもしくはメタクリレートを用いることも好ましい。大きな立体障害を有するため結晶性もしくはガラス転移温度の向上に顕著な効果を有するとともに、エステル基の遮蔽と分子運動性を低減する為にエレクトレットの安定性向上に寄与する。シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)、(例えば、炭素数7〜20の)多環式の脂肪族基(例えば、ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基)、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基などであり、具体的な一例としては、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ボルニルアクリレート、アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−t−ブチルフェニルアクリレート、ナフチルアクリレートなどを例示することができる。
このうち、より好ましくはジシクロペンタニルアクリレート(ホモポリマーTg=120℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(ホモポリマーTg=175℃)、イソボニルメタクリレート(ホモポリマーTg=180℃)、イソボルニルアクリレート(ホモポリマーTg=94℃)であり、ホモポリマーのガラス転移温度は直鎖脂肪族基よりも顕著に高いという特徴があり、含フッ素モノマーの量を確保しながら重合物として高いガラス転移温度を得ることができる。
また、含フッ素モノマーとの共重合モノマーとして、分岐状脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基を有してなる非ハロゲン化オレフィンを用いることもこのましい、大きな立体障害を有し、かつ極性成分の少ない炭化水素構造のみからなるためガラス転移温度の向上とともに吸湿性も低減されるため、エレクトレットの安定性向上に寄与する。具体的な一例としては、スチレン(ホモポリマーTg=100℃)などを例示することができる。
他のモノマーとしてハロゲン化オレフィン、架橋性を有する官能基、酸化防止作用および電荷安定性を付与するヒンダードフェノール構造もしくはヒンダードアミン構造を有するものを用いることもできる。
ハロゲン化オレフィンとしては、2以上の炭素数を有するものであれば好ましく用いられるが、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンでなどを例示することができ、ガラス転移温度の向上作用の点で塩化ビニル(ホモポリマーTg=87℃)などのモノハロゲン化ビニルが好ましく用いられる。
また、本発明においては凸部の直径(以下では、粒子径)は0.1nm以上500nm以下とすることが好ましい。0.5nm以上300nm以下であることがより好ましく、1nm以上200nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上100nm以下であることが最も好ましい。粒子経が500nmより大きい場合には分散時の均一性や取り扱いが困難となるとともに、コーティングの層厚みが過大となる。また、捕集対象とする浮遊オイルミストは通常500nm以下であるため凹凸による撥油性付与が困難となる。一方で粒子経が0.1nm未満であると溶解性および融点や蒸気圧の面でコーティング用途として不適であり、撥油性および耐久安定性、エレクトレットの安定性に劣るという問題がある。
とりわけ、担体が繊維状物であって通気性や濾過特性を求められる用途においては繊維状物との直径比が重要であり、繊維径を粒子径で除した値(繊維直径÷粒子直径)が1以上であることが好ましく、より好ましくは10以上であり、最も好ましくは100以上である。一般的に繊維直径が小さいほど濾過特性(単位通気抵抗あたりの捕集効率)が向上することが知られており、コーティング層による繊維径増加を抑制するためである。
上記粒子径を調整する手法としては、(1)乳化重合ならびに懸濁重合の粒子として重合時に調整する方法、(2)衝撃、摩擦などの物理的作用により粉砕する方法、(3)フッ素系溶媒、超臨界二酸化炭素などに溶解後、噴霧により粒子化する方法、(4)フッ素系溶媒、超臨界二酸化炭素などに溶解後、貧溶媒と混合することにより再析出により粒子化する方法、(5)融点以上の温度に加熱した後に噴霧する方法、(6)圧力・温度変化による蒸散および凝縮を利用する方法などがあげられ、目的とする粒子径に応じて好ましい手法を用いることができる。乳化重合や懸濁重合ならびに再析出により得られる粒子の場合には、固液混合状態で加工剤としてそのまま用いても良いし、乾燥工程を経て粒子として取り出すことも好ましい。
物理的作用により粉砕する方法としては、湿式もしくは乾式の各種粉砕機を用いることが可能であり、具体的にはボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ホモジナイザーなどを例示することができ、粉砕と同時に乳化、懸濁させて用いることも好ましい。
液体に分散して用いる場合には分散媒として、水、炭化水素系有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒などを好ましく用いることが可能であり、2種以上を混合して用いることも好ましい。有機溶媒を用いた場合には、担体として用いる合成樹脂との親和性により、浸透性やコーティングの均一性を高めることができる。分散媒を水とする場合には各種界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤は撥油性の発現およびエレクトレットの安定性を阻害するため、担体への付着前もしくは付着後に除去操作が熱処理により蒸散させる方法、熱分解や酸化分解を行う方法、水もしくは溶媒による洗浄除去が行われる。界面活性剤を用いず含フッ素粒子を分散させる方法としては、分散媒にも含フッ素系溶媒を用いることが好ましい。
噴霧により粒子化する方法としては、エアレス式もしくはエア圧式のスプレー、超音波霧化式、ラスキンノズル式、衝突式、静電噴霧式などの方法を例示することが可能である。この場合は溶液もしくは予め粒子化された懸濁液を用いることで、容易に溶液濃度に比例した粒子径を調整することができる。特に0.1nmから500nm以下の単分散粒子を得る手法として溶液からの噴霧が好適であり、溶液状態、半蒸散状態、固体化した状態いずれの状態で付着させてもかまわない。
蒸散により粒子化する方法としては、各種熱源もしくは減圧により含フッ素材料を気化させた後、冷却もしくは加圧により直接担体表面に析出させる方法、気体中で粒子化させた後に担体表面に付着させる方法の両者を用いることができる。
本発明においては気相に分散させて担体に付着させることを気相法と言い、担体がフィルター用途の場合は、担体自身の粒子捕集特性と併せて、界面活性剤を用いず加工できる方法として最も好ましく用いられる。
本発明のエレクトレットフィルターは、担体、または含フッ素成分の少なくとも1種、の少なくともいずれか1つがエレクトレット化され、静電電荷を付与されてなることを特徴とする。
エレクトレット化法は使用時に所望の特性が得られるものであれば特に制限されず、含フッ素粒子の担持前、担持後いずれでも好ましく用いられる。前者であれば、含フッ素粉末を静電的な引力にて引き寄せることで付着や加工に利点があり、後者であれば担体の電気力線が遮蔽されないため、エレクトレット効果をより発現させることができる。
エレクトレット化法は使用時に所望の特性が得られるものであれば特に制限されず、含フッ素粒子の担持前、担持後いずれでも好ましく用いられる。前者であれば、含フッ素粉末を静電的な引力にて引き寄せることで付着や加工に利点があり、後者であれば担体の電気力線が遮蔽されないため、エレクトレット効果をより発現させることができる。
具体的なエレクトレット化法としては、高電圧による分極、荷電イオンの衝突、荷電粒子の注入など電気的作用によるもの、摩擦、衝突など固体との相互作用によるもの、液体との接触および衝突を利用したものなど、従来公知の方法を好ましく用いることができる。
本発明のエレクトレットフィルターは、フィルター効率に寄与する初期電荷量の、電荷を有しない非エレクトレット(無帯電状態)に対して以下で表される性能上昇率が、400%以上が好ましく、800%以上がより好ましく、1200%以上がさらに好ましく、1600%以上が最も好ましい。
性能上昇率は、以下のように、荷電初期の透過率である荷電後透過率と、無帯電状態での透過率である無帯電透過率から算出する。
性能上昇率[%]=(ln(荷電後透過率)÷ln(無帯電透過率))×100
ここで透過率は、風速10cm/sにおける粒子径0.3〜0.5μmの大気塵を用いて、フィルターの上流と下流にてそれぞれ粒子個数を測定して、下記式から算出する。
透過率(単位無し)=下流側粒子個数÷上流側粒子個数
性能上昇率は、以下のように、荷電初期の透過率である荷電後透過率と、無帯電状態での透過率である無帯電透過率から算出する。
性能上昇率[%]=(ln(荷電後透過率)÷ln(無帯電透過率))×100
ここで透過率は、風速10cm/sにおける粒子径0.3〜0.5μmの大気塵を用いて、フィルターの上流と下流にてそれぞれ粒子個数を測定して、下記式から算出する。
透過率(単位無し)=下流側粒子個数÷上流側粒子個数
本発明のエレクトレットフィルターにおいて、使用時、保管時および形状加工時に求められる電荷安定性としては、以下に記載の性能維持率として10%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましく、90%以上が最も好ましい。性能維持率は80℃環境下における30分放置(熱処理)の前後にて風速10cm/sの0.3〜0.5μm大気塵効率から算出される。
性能維持率[%]=(ln(熱処理後透過率)÷ln(熱処理前透過率))×100
性能維持率[%]=(ln(熱処理後透過率)÷ln(熱処理前透過率))×100
本発明により得られる撥油性に関しては、必要とされる特性(たとえば防水、防汚、撥水、撥油)に応じて調整することが可能であるが、例えば不織布、織布等の繊維状物からなるフィルターとして用いられる場合には、JIS K6768およびAATCC118法により用いられる表面張力試験液において、10秒以内の浸透性を与える表面張力として少なくとも無加工品(たとえばPPメルトブローンにおける代表値としては36mN/m)よりも向上していれば好ましく用いることができる。具体的には31mN/m以下が好ましく、29mN/m以下がより好ましく、27mN/m以下がさらに好ましく、25mN/m以下が最も好ましい。これらは防塵マスクの国家検定オイルミストの試験液体であるDOPが31mN/m、PAO(たとえばEmery3004)が29mN/mであり、実使用における鉱物および植物性オイルミストへの対応を考慮したものである。本発明者らの検討によると、シート形状での撥油性とフィルターとしての耐油性には相関があり、毛管現象により吸収が生じない程度の撥油性が得られていれば、フィルターとしても明確な耐油性(効率低下の抑制)が確認される。これは素材表面の耐油性(接触角)と多孔質体への吸収現象に相関があるためであり。ミスト試験時における繊維表面に捕集されたエアロゾルの接触角や捕集状態との相関がある。また混合物であるタバコ煙自体の表面張力値は明確ではないが、上記液体における浸透性低下とともに、明確な耐久性向上効果が確認される。
本発明のエレクトレットフィルターは、吸油または吸水機能を有した繊維層(以下、「吸液層」という)を積層して用いることも好ましい。吸油や吸水などの吸液機能を有した吸液層を用いることで、撥油性により生じた液滴の滴りを抑制し、エレクトレット表面から液滴を移行し拡散することで、エレクトレット性の消失や通気抵抗上昇を抑制することができる。
吸液層の素材としては、液滴を吸収するものであれば特に制限されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース、レーヨンなどからなる繊維シート素材、活性炭、ゼオライト、パルプなど多孔質材料を間隙に含有または表面に加工したシート素材などを好ましく用いることができる。より好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系素材またはポリエステルであり、さらに好ましくはポリプロピレンである。
吸液層に用いられる繊維は1種類または2種類以上を組み合わせて用いることも好ましく、通風抵抗や粗大粒子の捕集などの観点で適当な素材を選択することができる。
吸液層として用いられる素材は非エレクトレットおよびエレクトレットいずれでも好ましく用いることが可能であり、エレクトレット化されてなることがより好ましい。
吸液層の製法は所望の特性が得られるものであれば特に制限されないが、サーマルボンド法、スパンボンド法、スパンレース法、溶融および溶液法によるエレクトロスピニング法および、フォーススピニング法など、好ましい方法によりシート化した素材を用いることができる。
吸液層を構成する繊維としては、直径が0.005〜100μmであることが好ましく、0.01〜20μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
さらに必要に応じて他の構成部材と併用することができる。すなわち、プレフィルター層、繊維保護層、補強部材、または機能性繊維層などと組み合わせて用いることも好ましい。
プレフィルター層および繊維保護層としては、例えばスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、発泡ウレタンなどであり、補強部材としては、例えばサーマルボンド不織布、各種ネットを例示することができる。また、機能性繊維層としては例えば抗菌、抗ウイルスおよび識別や意匠を目的とした着色繊維層などを例示することができる。吸液層にこれら機能を持たせることは厚みや通気抵抗を低減する方法として好ましい。
本発明のエレクトレットフィルターは、得られる集塵、保護、通気、防汚、防水などの機能により幅広く用いることが可能であり、とりわけ、防塵マスク、各種空調用エレメント、空気清浄機、キャビンフィルター、空調機、各種装置の保護を目的としたフィルターとして好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されることはない。初めに、後段で説明する実施例および比較例で作製したエレクトレットフィルターの物性の評価方法について説明する。
(撥油性)
撥油性は以下の試験方法にて評価した。
JIS K6768に定められた配合にて40mN/m〜25mN/mの範囲にて1mN/m間隔の試験液を調整した。別途、AATCC118法に定められた1級から8級までの試験液とPAO(Emery3004)を試験液として準備した。各々を微生物試験用マイクロピペッターにてエレクトレットフィルターの試験サンプル表面に対し20μlずつ静置し、10秒後の浸透度合いを観察した。JIS試験液およびAATCC試験液に関しては浸透度の小さな液体(表面張力の大きな液体)から試験を開始し、浸透が生じたところを浸透/非浸透の境界値とした。評価結果としては、境界における非浸透側の数字を対象試料の撥油性として用いた。なお、表裏に差異がある場合には、より浸透度の低い方を数値として用いた。
水耐浸透とPOA耐浸透については、浸透度合いの観察において、浸透しなかったものを○とし、浸透したものを×と評価した。
撥油性は以下の試験方法にて評価した。
JIS K6768に定められた配合にて40mN/m〜25mN/mの範囲にて1mN/m間隔の試験液を調整した。別途、AATCC118法に定められた1級から8級までの試験液とPAO(Emery3004)を試験液として準備した。各々を微生物試験用マイクロピペッターにてエレクトレットフィルターの試験サンプル表面に対し20μlずつ静置し、10秒後の浸透度合いを観察した。JIS試験液およびAATCC試験液に関しては浸透度の小さな液体(表面張力の大きな液体)から試験を開始し、浸透が生じたところを浸透/非浸透の境界値とした。評価結果としては、境界における非浸透側の数字を対象試料の撥油性として用いた。なお、表裏に差異がある場合には、より浸透度の低い方を数値として用いた。
水耐浸透とPOA耐浸透については、浸透度合いの観察において、浸透しなかったものを○とし、浸透したものを×と評価した。
(捕集効率)
エレクトレットフィルターの荷電初期の捕集効率(表1では「荷電後効率」と記載)は以下の試験方法にて評価した。
評価粒子:大気塵(粒径0.3〜0.5μm間の粒子を含む)
風速 :10cm/s
捕集効率:フィルターの通過前後(上流側および下流側)における粒径0.3〜0.5μm間の粒子個数を光散乱計数法により計測し、以下の式から求めた。
捕集効率(%)=(1−(下流側粒子個数÷上流側粒子個数))×100
エレクトレットフィルターの荷電初期の捕集効率(表1では「荷電後効率」と記載)は以下の試験方法にて評価した。
評価粒子:大気塵(粒径0.3〜0.5μm間の粒子を含む)
風速 :10cm/s
捕集効率:フィルターの通過前後(上流側および下流側)における粒径0.3〜0.5μm間の粒子個数を光散乱計数法により計測し、以下の式から求めた。
捕集効率(%)=(1−(下流側粒子個数÷上流側粒子個数))×100
(耐オイルミスト性)
オイルミストへの負荷耐性(耐オイルミスト性)は以下の2種の試験方法にて評価した。なお、試験において、低極性の鉱物系粒子としてPAOミストを用い、水および多種多様な極性分子を含有する複合粒子としてタバコ煙を用いた。
(耐オイルミスト性1:PAO耐久寿命)
フィルターを72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し下記条件にて通風を行った。
評価装置 :TSI−8130型フィルターテスター
風量 :6L/min(5cm/s)
負荷粒子 :PAO(Emery3004)平衡帯電
個数最頻径0.184μm
濃度 :100mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
連続的に粒子負荷を行い、上記評価装置における捕集効率が50%となった時点を評価の終点とし、試験前後の重量より50mmφあたりのサンプル上に捕集されたPAO重量を算出した。
(耐オイルミスト性2:タバコ煙耐久寿命)
[タバコ煙負荷]
1m3アクリル容器中でJEM1467法に準拠した吸煙器と手法にて日本たばこ社製メビウスを4本燃焼させた。72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し、風量12L/minにて10分間通気を行った。参考となる粒子濃度は柴田科学デジタル粉塵計P−2Lにて4000CPMから3000CPMへの減少となり、概ね1本/サイクル程度の負荷量となる。初期および1サイクル負荷毎に、下記の効率および重量を計測し、効率50%を割り込んだ時点を終点とする。縦および横軸を普通軸として捕集効率とタバコ煙の捕集重量をプロットし、効率50%となる時点の数値を読み取り耐久寿命として算出した。
[タバコ煙負荷時の捕集効率]
タバコ煙負荷後のサンプルを用いた場合、光散乱計数器(レーザーパーティクルカウンター)の粒子径計測に干渉を生じるため、光散乱濃度法にて効率評価を行った。なお、レーザーパーティクルカウンターによる0.3−0.5μmの効率とほぼ一致することを確認している。
タバコ煙負荷後のサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し下記条件にて通風を行った。
評価装置 :TSI−8130型フィルターテスター
風量 :6L/min(5cm/s)
負荷粒子 :固体NaCl(2w%NaCl水から発生)平衡帯電
個数最頻径0.075μm
濃度 :200mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
なお、評価風量が小さいため上下の検出器が平衡となる時間として20秒の値を設定し、1サイクルのフィルターテスターモード(効率計測モード)の数値を用いた。
オイルミストへの負荷耐性(耐オイルミスト性)は以下の2種の試験方法にて評価した。なお、試験において、低極性の鉱物系粒子としてPAOミストを用い、水および多種多様な極性分子を含有する複合粒子としてタバコ煙を用いた。
(耐オイルミスト性1:PAO耐久寿命)
フィルターを72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し下記条件にて通風を行った。
評価装置 :TSI−8130型フィルターテスター
風量 :6L/min(5cm/s)
負荷粒子 :PAO(Emery3004)平衡帯電
個数最頻径0.184μm
濃度 :100mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
連続的に粒子負荷を行い、上記評価装置における捕集効率が50%となった時点を評価の終点とし、試験前後の重量より50mmφあたりのサンプル上に捕集されたPAO重量を算出した。
(耐オイルミスト性2:タバコ煙耐久寿命)
[タバコ煙負荷]
1m3アクリル容器中でJEM1467法に準拠した吸煙器と手法にて日本たばこ社製メビウスを4本燃焼させた。72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し、風量12L/minにて10分間通気を行った。参考となる粒子濃度は柴田科学デジタル粉塵計P−2Lにて4000CPMから3000CPMへの減少となり、概ね1本/サイクル程度の負荷量となる。初期および1サイクル負荷毎に、下記の効率および重量を計測し、効率50%を割り込んだ時点を終点とする。縦および横軸を普通軸として捕集効率とタバコ煙の捕集重量をプロットし、効率50%となる時点の数値を読み取り耐久寿命として算出した。
[タバコ煙負荷時の捕集効率]
タバコ煙負荷後のサンプルを用いた場合、光散乱計数器(レーザーパーティクルカウンター)の粒子径計測に干渉を生じるため、光散乱濃度法にて効率評価を行った。なお、レーザーパーティクルカウンターによる0.3−0.5μmの効率とほぼ一致することを確認している。
タバコ煙負荷後のサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し下記条件にて通風を行った。
評価装置 :TSI−8130型フィルターテスター
風量 :6L/min(5cm/s)
負荷粒子 :固体NaCl(2w%NaCl水から発生)平衡帯電
個数最頻径0.075μm
濃度 :200mg/m3
粒子検出法:光散乱濃度法
なお、評価風量が小さいため上下の検出器が平衡となる時間として20秒の値を設定し、1サイクルのフィルターテスターモード(効率計測モード)の数値を用いた。
<実施例1>
n−C16F34(融点125℃)をパーフルオロヘキサンに溶解させた後、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸漬させ、0.75g/m2の担持を行った。この数値は、乾燥残渣となったn−C16F34(融点125℃)の値である。
引き続き、n−C20F42(融点167℃)をパーフルオロヘキサンに0.03重量%濃度で溶解させた後ラスキンノズルを用いて気中に分散させた。溶媒揮発後のDMA−CNC法による最頻粒子径は18nmであった。濾過法を用い上記ポリプロピレン不織布に0.18g/m2捕集した。この数値は、乾燥残渣となったn−C20F42(融点167℃)の値である。このようにして得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、実施例1のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
n−C16F34(融点125℃)をパーフルオロヘキサンに溶解させた後、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸漬させ、0.75g/m2の担持を行った。この数値は、乾燥残渣となったn−C16F34(融点125℃)の値である。
引き続き、n−C20F42(融点167℃)をパーフルオロヘキサンに0.03重量%濃度で溶解させた後ラスキンノズルを用いて気中に分散させた。溶媒揮発後のDMA−CNC法による最頻粒子径は18nmであった。濾過法を用い上記ポリプロピレン不織布に0.18g/m2捕集した。この数値は、乾燥残渣となったn−C20F42(融点167℃)の値である。このようにして得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、実施例1のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例2>
n−C16F34(融点125℃)をパーフルオロヘキサンに溶解させた後、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸漬させ、0.75g/m2の担持を行った。引き続き、ポリテトラフルオロエチレン(融点330℃)の水性分散体を300℃の加熱により界面活性剤成分を除去した後、パーフルオロヘキサンに1重量%濃度に分散させた(溶解度は0.1重量%以下であった)後、ラスキンノズルを用いて気中に分散させた。溶媒揮発後のDMA−CNC法による最頻粒子径は210nmであった。濾過法を用い上記ポリプロピレン不織布に0.16g/m2捕集した後、得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、実施例2のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
n−C16F34(融点125℃)をパーフルオロヘキサンに溶解させた後、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸漬させ、0.75g/m2の担持を行った。引き続き、ポリテトラフルオロエチレン(融点330℃)の水性分散体を300℃の加熱により界面活性剤成分を除去した後、パーフルオロヘキサンに1重量%濃度に分散させた(溶解度は0.1重量%以下であった)後、ラスキンノズルを用いて気中に分散させた。溶媒揮発後のDMA−CNC法による最頻粒子径は210nmであった。濾過法を用い上記ポリプロピレン不織布に0.16g/m2捕集した後、得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、実施例2のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例3>
懸濁重合によりジシクロペンタニルメタクリレートと2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートとの1:9の重量比のランダム共重合体(ガラス転移温度61℃)を得た。これをパーフルオロヘキサン中で粉砕を行うと同時に分散体とし、1重量%濃度に調整した。
別途、懸濁重合によりジシクロペンタニルメタクリレートと2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート3:8重量比のランダム共重合体(ガラス転移温度81℃)を得た。これをパーフルオロヘキサン中で粉砕を行うと同時に分散体とし、1重量%濃度に調整した。両者を1:1重量比で混合した後に、分散液のままメルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸透、付着させた後に風乾および70℃での熱処理を行った。付着量は0.82g/m2であり、走査式電子顕微鏡での観察による最頻粒子径は240nmであった。熱処理前後の観察結果より、一方が溶融皮膜化していることが確認された。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、実施例3のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
懸濁重合によりジシクロペンタニルメタクリレートと2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートとの1:9の重量比のランダム共重合体(ガラス転移温度61℃)を得た。これをパーフルオロヘキサン中で粉砕を行うと同時に分散体とし、1重量%濃度に調整した。
別途、懸濁重合によりジシクロペンタニルメタクリレートと2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート3:8重量比のランダム共重合体(ガラス転移温度81℃)を得た。これをパーフルオロヘキサン中で粉砕を行うと同時に分散体とし、1重量%濃度に調整した。両者を1:1重量比で混合した後に、分散液のままメルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸透、付着させた後に風乾および70℃での熱処理を行った。付着量は0.82g/m2であり、走査式電子顕微鏡での観察による最頻粒子径は240nmであった。熱処理前後の観察結果より、一方が溶融皮膜化していることが確認された。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、実施例3のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例1>
メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に対し、液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、比較例1のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に対し、液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、比較例1のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例2>
n−C16F34(融点125℃)をパーフルオロヘキサンに溶解させた後、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸漬させ、0.97g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法によりエレクトレット化処理を行い、比較例2のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
n−C16F34(融点125℃)をパーフルオロヘキサンに溶解させた後、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸漬させ、0.97g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法によりエレクトレット化処理を行い、比較例2のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例3>
懸濁重合によりジシクロペンタニルメタクリレートと2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート1:9重量比のランダム共重合体(ガラス転移温度61℃)を得た。これをパーフルオロヘキサン中で粉砕を行うと同時に分散体とし、1重量%濃度に調整した。分散液のままメルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸透、付着させた後に風乾および70℃での熱処理を行った。付着量は0.85g/m2であり溶融皮膜化していることが確認された。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、比較例3のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
懸濁重合によりジシクロペンタニルメタクリレートと2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート1:9重量比のランダム共重合体(ガラス転移温度61℃)を得た。これをパーフルオロヘキサン中で粉砕を行うと同時に分散体とし、1重量%濃度に調整した。分散液のままメルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸透、付着させた後に風乾および70℃での熱処理を行った。付着量は0.85g/m2であり溶融皮膜化していることが確認された。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、比較例3のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例4>
日産化学工業株式会社製シリカゾル、スノーテックスST−30をイソプロピルアルコールで希釈し、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸透、乾燥重量にて0.57g/m2担持させた。引き続き、n−C16F34(融点125℃)をパーフルオロヘキサンに溶解させた後、引き続いて0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、比較例4のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
日産化学工業株式会社製シリカゾル、スノーテックスST−30をイソプロピルアルコールで希釈し、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸透、乾燥重量にて0.57g/m2担持させた。引き続き、n−C16F34(融点125℃)をパーフルオロヘキサンに溶解させた後、引き続いて0.75g/m2の担持を行った。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、比較例4のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例5>
日産化学工業株式会社製シリカゾル、スノーテックスST−30に対し1H,1H,2H,2H,−パーフルオロオクチルトリメトキシシランを加水分解させた後、過剰量反応させた。イソプロピルアルコールで希釈させた後、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸透、乾燥重量にて0.57g/m2担持させた。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、比較例5のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。重合固化物は粘性を有しており、融点もしくはガラス転移温度は25℃以下であった。結果を表1に示す。
日産化学工業株式会社製シリカゾル、スノーテックスST−30に対し1H,1H,2H,2H,−パーフルオロオクチルトリメトキシシランを加水分解させた後、過剰量反応させた。イソプロピルアルコールで希釈させた後、メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレン不織布に浸透、乾燥重量にて0.57g/m2担持させた。得られたシートに対して液滴による撥油性試験を行うとともにコロナ放電法により荷電し、比較例5のエレクトレットフィルターを得た。このエレクトレットフィルターについて各種評価を行った。重合固化物は粘性を有しており、融点もしくはガラス転移温度は25℃以下であった。結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜3と比較例2〜5とにより含フッ素材料の担持加工をすることで、液滴に対する撥水撥油性が得られることがわかる。また、実施例1、2と比較例2との対比、実施例2と比較例3との対比により、凹凸を有することで耐オイルミスト特性に優れたエレクトレットフィルターを得ることができることがわかる。さらに、実施例1〜3と比較例4および5との対比により、金属不含かつ常温以上に融点もしくはガラス転移温度を有する材料を用いることで、電荷安定性に優れることがわかる。
本発明のエレクトレットフィルターは、簡便な装置や工程で製造でき、かつ、撥油性、耐オイルミスト性、電荷安定性に優れており、幅広い用途展開が可能である。一例としては、防塵および防毒マスク、空気清浄機、建物ならびに乗物の換気システム、空調機、各種装置の保護を目的としたフィルターなどに用いることができる。
Claims (4)
- 担体表面に異なる融点またはガラス転移温度を有する2種以上の含フッ素成分が担持されており、
前記2種以上の含フッ素成分うち、少なくとも1種が前記担体表面で平滑面を、別の1種が前記担体表面で凸部を、形成していることを特徴とするエレクトレットフィルター。 - 前記2種以上の含フッ素成分の融点またはガラス転移温度が40℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトレットフィルター。
- 前記2種以上の含フッ素粒子が金属または金属酸化物を含まないことを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトレットフィルター。
- 前記担体がメルトブローン不織布であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレットフィルター。
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