JP2018100435A - アルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度と曲げ性に優れた6000系アルミニウム合金板を提供する。
【解決手段】Mg:0.5〜1.3質量%、Si:0.7〜1.5質量%を含み、Mn:0.05〜0.5質量%、Zr:0.04〜0.20質量%、およびCr:0.04〜0.20質量%から選択される一種以上をさらに含み、残部がAlおよび不可避不純物であり、粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度が0.001個/nm以下であり、200〜250℃で10〜30分保持する人工時効処理後の粒界のPFZ幅が60nm以下である、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板である。
【選択図】図1
【解決手段】Mg:0.5〜1.3質量%、Si:0.7〜1.5質量%を含み、Mn:0.05〜0.5質量%、Zr:0.04〜0.20質量%、およびCr:0.04〜0.20質量%から選択される一種以上をさらに含み、残部がAlおよび不可避不純物であり、粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度が0.001個/nm以下であり、200〜250℃で10〜30分保持する人工時効処理後の粒界のPFZ幅が60nm以下である、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板である。
【選択図】図1
Description
本発明は、アルミニウム合金板に関する。より詳細には、自動車および鉄道車両などの骨格構造を構成する部材に好適なAl−Mg−Si系アルミニウム合金板に関する。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車等の輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。かかる要求に答えるべく、自動車等の材料として、鋼板等の鉄鋼材料に代えて、軽量なアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。
例えば、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクグリッド等のパネル構造体に使用されるアウタパネル(外板)およびインナパネル(内板)等のパネルには、アルミニウム合金板の中でも薄肉でありかつ高強度なアルミニウムパネル板が採用されており、とりわけ、Al−Mg−Si系合金板(JIS規定の6000系合金板等)が適用されている。外板および内板用のアルミニウム合金では、高い加工性を有することが求められており、そのような要求に応えるため、これまでにも種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、溶体化後の冷却速度を制御することで、曲げ加工性を改善したアルミニウム合金板が開示されている。
一方で、自動車のフロントピラー、センターピラー、ルーフレール、ダッシュボード、サイドメンバー、クロスメンバー、サイドシルおよびシルインナー等の骨格構造(いわゆる、ホワイトボディ)に用いる材料としても、燃費の向上の観点から、鉄鋼材料に変えて、軽量かつ高強度であるAl−Mg−Si系合金板を適用する要求がある。輸送機器の骨格構造に用いる材料として、高い強度を有することに加えて、衝突時のエネルギーを十分に吸収できるよう曲げ性に優れた材料の開発が求められている。
しかしながら、車両の骨格構造に適用する材料として、十分に優れた強度と曲げ性とを有するアルミニウム合金の開発が未だ進んでいないのが実情である。
しかしながら、車両の骨格構造に適用する材料として、十分に優れた強度と曲げ性とを有するアルミニウム合金の開発が未だ進んでいないのが実情である。
本発明は、このような要求に応えるためになされたものであって、その目的は、強度と曲げ性に優れた6000系アルミニウム合金板を提供することである。
本発明の態様1は、Mg:0.5〜1.3質量%、Si:0.7〜1.5質量%を含み、Mn:0.05〜0.5質量%、Zr:0.04〜0.20質量%、およびCr:0.04〜0.20質量%から選択される一種以上をさらに含み、残部がAlおよび不可避不純物であり、粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度が0.001個/nm以下であり、200〜250℃で10〜30分保持する人工時効処理後の粒界のPFZ幅が60nm以下である、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板である。
本発明の態様2は、Cu:0質量%超0.5質量%以下をさらに含む、態様1に記載のアルミニウム合金板である。
本発明の態様3は、Sc:0.02〜0.1質量%をさらに含む、態様1または2に記載のアルミニウム合金板である。
本発明の態様4は、Ag:0.01〜0.2質量%、およびSn:0.001〜0.1質量%から選択される一種以上をさらに含有する、態様1から3のいずれかに記載のアルミニウム合金板である。
本発明の態様5は、200〜250℃で10〜30分保持する人工時効処理後の0.2%耐力が250MPa以上であり、かつVDA曲げ角度が60°以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム合金板である。
本発明によれば、強度と曲げ性に優れた6000系アルミニウム合金板を提供することができる。
本発明者らは、自動車等の輸送車両の骨格構造を構成する部材として十分に優れた強度と曲げ性とを有する6000系アルミニウム合金板を実現すべく、様々な角度から検討した。
6000系アルミニウム合金板では、焼付け塗装等の人工時効処理を施すと、結晶粒界近傍にSiおよびMg2Si等の析出物が存在しない無析出帯(PFZ:Precipitate Free Zone)が形成される。PFZは、強度が低くまた曲げ性が低いため、曲げ加工時に割れの起点となることが知られている。
本発明者らは、このような強度および曲げ性を低下させるPFZの幅を低減することにより、アルミニウム合金の強度と曲げ性とを向上できることに着眼した。
鋭意検討した結果、本発明者らは、アルミニウム合金板の結晶粒界に析出する遷移元素系の分散粒子の数密度を低減することにより、人工時効処理後に結晶粒界近傍に現れるPFZ幅を低減することができ、その結果、強度と曲げ性に優れたアルミニウム合金板を提供できることを見出した。
遷移元素系分散粒子が所定の数密度以上で結晶粒界に存在すると、溶体化処理の冷却時に粒界拡散してきたMg及びSiの分散粒子表面への複合析出が促進され、その結果マトリックス中から粒界へのMg、Si原子の拡散が助長されると共に粒界近傍のMgおよびSi原子濃度が低下してこれらの元素の欠乏層の領域が広がり、PFZ幅を増大させ、曲げ性を劣化させる。
しかし、本発明のアルミニウム合金では、結晶粒界に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度を低減することにより、MgおよびSiの分散粒子への複合析出を抑制することができる。その結果、MgおよびSiの欠乏領域を小さくすることができ、PFZ幅を低減することができ、強度および曲げ性を向上することができるのである。
6000系アルミニウム合金板では、焼付け塗装等の人工時効処理を施すと、結晶粒界近傍にSiおよびMg2Si等の析出物が存在しない無析出帯(PFZ:Precipitate Free Zone)が形成される。PFZは、強度が低くまた曲げ性が低いため、曲げ加工時に割れの起点となることが知られている。
本発明者らは、このような強度および曲げ性を低下させるPFZの幅を低減することにより、アルミニウム合金の強度と曲げ性とを向上できることに着眼した。
鋭意検討した結果、本発明者らは、アルミニウム合金板の結晶粒界に析出する遷移元素系の分散粒子の数密度を低減することにより、人工時効処理後に結晶粒界近傍に現れるPFZ幅を低減することができ、その結果、強度と曲げ性に優れたアルミニウム合金板を提供できることを見出した。
遷移元素系分散粒子が所定の数密度以上で結晶粒界に存在すると、溶体化処理の冷却時に粒界拡散してきたMg及びSiの分散粒子表面への複合析出が促進され、その結果マトリックス中から粒界へのMg、Si原子の拡散が助長されると共に粒界近傍のMgおよびSi原子濃度が低下してこれらの元素の欠乏層の領域が広がり、PFZ幅を増大させ、曲げ性を劣化させる。
しかし、本発明のアルミニウム合金では、結晶粒界に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度を低減することにより、MgおよびSiの分散粒子への複合析出を抑制することができる。その結果、MgおよびSiの欠乏領域を小さくすることができ、PFZ幅を低減することができ、強度および曲げ性を向上することができるのである。
以下に、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を詳細に説明する。
なお、本発明の実施形態でいう「アルミニウム合金板」とは、熱間圧延板または冷間圧延板などの圧延板に対して、溶体化処理および焼入れ処理などの調質を施した後のアルミニウム合金板であって、塗装焼付等の人工時効処理を施す前のアルミニウム合金板をいう。
なお、本発明の実施形態でいう「アルミニウム合金板」とは、熱間圧延板または冷間圧延板などの圧延板に対して、溶体化処理および焼入れ処理などの調質を施した後のアルミニウム合金板であって、塗装焼付等の人工時効処理を施す前のアルミニウム合金板をいう。
1.組織
(1)粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度:0.001個/nm以下
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、粒界上に析出する遷移元素系の分散粒子の数密度を所定の値以下に制御していることを特徴する。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、粒界上に析出する遷移元素系の分散粒子の数密度を所定の値以下に制御していることを特徴する。
粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度が大きい場合、製造過程において溶体化処理後の冷却時に、粒界拡散してきたMgおよびSiの分散粒子への複合析出が促進される。その結果、マトリックス中から粒界への、MgおよびSiの拡散が助長され、それにより粒界近傍のMgおよびSiの濃度が低下し、MgおよびSiの欠乏領域が拡大し、PFZ幅が増大し、強度および曲げ性が劣化する。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板では、粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度を低減することにより、MgおよびSiの分散粒子への複合析出を抑制することができる。その結果、MgおよびSiの欠乏領域を小さくすることができ、PFZ幅を小さくし、強度および曲げ性を向上することができる。
粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度が0.001個/nm以下であれば、上述したPFZ幅の低減による曲げ性向上の効果が得られる。遷移元素系の分散粒子の数密度は、好ましくは0.0005個/nm以下である。
本発明の実施形態では、数密度を規定する粒界上の遷移元素系の分散粒子として、円相当直径で0.05μm以上の大きさを有する分散粒子のみを対象としている。これは、0.05μm未満の大きさの分散粒子であれば、PFZ幅の増大に及ぼす影響が無視できる程度に小さいためである。
本発明の実施形態において、“遷移元素系の分散粒子”とは、Mn、Cr、Zr、FeおよびCuなどを含む、金属間化合物のことである。
(2)人工時効処理後の粒界のPFZ幅:60nm以下
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を含む6000系アルミニウム合金板では、焼付け塗装等の人工時効処理を施すことによって、結晶粒界近傍に、SiおよびMg2Si等の析出物が存在しない無析出帯(PFZ:Precipitate Free Zone)が形成される。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、上述したように結晶粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度を低減することにより、MgおよびSiの分散粒子への複合析出を抑制することができるので、MgおよびSiの欠乏領域を小さくすることができ、PFZ幅を十分に小さくすることができる。その結果、優れた強度と曲げ性とを両立するアルミニウム合金板を提供することができる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を含む6000系アルミニウム合金板では、焼付け塗装等の人工時効処理を施すことによって、結晶粒界近傍に、SiおよびMg2Si等の析出物が存在しない無析出帯(PFZ:Precipitate Free Zone)が形成される。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、上述したように結晶粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度を低減することにより、MgおよびSiの分散粒子への複合析出を抑制することができるので、MgおよびSiの欠乏領域を小さくすることができ、PFZ幅を十分に小さくすることができる。その結果、優れた強度と曲げ性とを両立するアルミニウム合金板を提供することができる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金は、結晶粒界近傍のPFZ幅が十分に低減されたものである。PFZ幅が十分に低減されているという特性は、溶体化処理後の本発明に係るアルミニウム合金板(すなわち、T4材)に対して人工時効処理を行い、すなわちT6材になるように調質することで、とりわけ顕著に発現することができる。
そのため、本発明の実施形態では、T4材のアルミニウム合金板に対して人工時効処理を施し、その人工時効処理後の、すなわちT6材に調質されたアルミニウム合金板に対してPFZ幅の測定を行うことにより、アルミニウム合金板を規定している。
例えば、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を、200〜250℃で10〜30分保持する人工時効処理をすることにより、十分に低減されたPFZ幅を確認することができる。
そのため、本発明の実施形態では、T4材のアルミニウム合金板に対して人工時効処理を施し、その人工時効処理後の、すなわちT6材に調質されたアルミニウム合金板に対してPFZ幅の測定を行うことにより、アルミニウム合金板を規定している。
例えば、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を、200〜250℃で10〜30分保持する人工時効処理をすることにより、十分に低減されたPFZ幅を確認することができる。
このように、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、人工時効処理を施すことにより、十分に低減されたPFZ幅を顕著に発現することができる。本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、人工時効処理を施した後の粒界のPFZ幅が60nm以下であり、好ましくは40nm以下である。
人工時効処理後のPFZ幅がこのような範囲であれば、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を、車両等の骨格構造用の部材として用いた場合に、優れた耐衝突特性を発揮することができる。
人工時効処理後のPFZ幅がこのような範囲であれば、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を、車両等の骨格構造用の部材として用いた場合に、優れた耐衝突特性を発揮することができる。
粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度、および粒界のPFZ幅は、例えば透過電子顕微鏡(TEM)を用いて以下のように測定することができる。
粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度は、例えば、溶体化処理後のT4材に調質されたアルミニウム合金板から、ランダムに5箇所をサンプリングし、板厚中心部が観察面となるようにTEM観察用試験片として調製した後、電子ビームの入射方向が(100)面に平行になるように調整し、倍率10万倍以上で、各サンプル毎に粒界の領域を3視野撮影する。そして各視野毎に、粒界上の析出物をエネルギー分散型X線分析(EDX)で分析し、Mg−Si系析出物、Mg−Si−Cu系析出物およびSi析出物を除いた、遷移元素系析出物を同定し、それらのうち、円相当直径で0.05μm以上のサイズに相当する析出物数をカウントして、粒界長さあたりの数密度(個/nm)として計算する。そして各サンプルの3視野における数密度の平均値を算出し、5箇所のサンプルにおける平均値を求めることにより測定できる。
PFZ幅は、例えば、人工時効処理後の、すなわちT6材に調質されたアルミニウム合金板から、上述した溶体化処理後のTEM観察と同様の方法で5つのサンプルを調製し、電子ビームの入射方向が(100)面に平行になるように調整する。そして、倍率10万倍以上で、各サンプル毎に粒界の領域を3視野観察し、各視野内で、最もPFZの幅が広い箇所のPFZ幅を測定する。そして合計15箇所のPFZ幅の平均値を求めることにより、アルミニウム合金板のPFZ幅を測定することができる。
なお、PFZとは、TEM写真において、一方の結晶粒の析出領域(TEM写真において、色が濃い領域)と析出希薄領域(TEM写真において、色が薄い領域)の界面と、結晶粒界とにより囲まれた領域である。PFZ幅とは、TEM写真において、結晶粒の析出領域と析出希薄領域との界面と、結晶粒界と、の間の距離である。
2.化学成分組成:
次に、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の組成について説明する。本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は6000系アルミニウム合金からなるものであり、その成分組成は、6000系アルミニウム合金として通常の化学成分組成を有していればよい。
次に、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の組成について説明する。本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は6000系アルミニウム合金からなるものであり、その成分組成は、6000系アルミニウム合金として通常の化学成分組成を有していればよい。
(1)Si:0.7質量%以上1.5質量%以下
SiはMgとともに、固溶強化に寄与する元素である。また、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車の構造材として必要な強度(耐力)を得るための必須の元素である。
また、所定の量以上を添加することで、溶体化冷却時に、粒界に拡散して形成されるSi原子の濃度欠乏層の厚みを薄くし、PFZ幅を低減し、曲げ性を向上することができる。
SiはMgとともに、固溶強化に寄与する元素である。また、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車の構造材として必要な強度(耐力)を得るための必須の元素である。
また、所定の量以上を添加することで、溶体化冷却時に、粒界に拡散して形成されるSi原子の濃度欠乏層の厚みを薄くし、PFZ幅を低減し、曲げ性を向上することができる。
Si含有量が0.7質量%未満では強度が不足する。そのため、Si含有量は0.7質量%以上であり、好ましくは0.8質量%以上である。
一方、Si含有量が1.5質量%を超えると、粗大な化合物を形成し、延性を劣化させる。そのため、Si含有量は1.5質量%以下、好ましくは1.4質量%以下である。
一方、Si含有量が1.5質量%を超えると、粗大な化合物を形成し、延性を劣化させる。そのため、Si含有量は1.5質量%以下、好ましくは1.4質量%以下である。
(2)Mg:0.5質量%以上1.3質量%以下
Mgも、Siとともに、固溶強化に寄与する元素である。また、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、Siとともに強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車の構造材としての必要な耐力を得るための必須の元素である。また、所定の量以上を添加することで、溶体化冷却時に、粒界に拡散して形成されるMg原子の濃度欠乏層の厚みを薄くし、PFZ幅を低減し、曲げ性を向上することができる。
Mgも、Siとともに、固溶強化に寄与する元素である。また、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、Siとともに強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車の構造材としての必要な耐力を得るための必須の元素である。また、所定の量以上を添加することで、溶体化冷却時に、粒界に拡散して形成されるMg原子の濃度欠乏層の厚みを薄くし、PFZ幅を低減し、曲げ性を向上することができる。
Mg含有量が0.5質量%未満では強度が不足する。そのため、Mg含有量は0.5質量%以上であり、0.6質量%以上が好ましい。
一方、Mg含有量が1.3質量%を超えると、冷間圧延時にせん断帯が形成されやすくなり、圧延時の割れの原因となる。そのため、Mg含有量は1.3質量%以下、好ましくは1.2質量%以下とする。
一方、Mg含有量が1.3質量%を超えると、冷間圧延時にせん断帯が形成されやすくなり、圧延時の割れの原因となる。そのため、Mg含有量は1.3質量%以下、好ましくは1.2質量%以下とする。
(3)Mn:0.05質量%以上0.5質量%以下、Zr:0.04質量%以上0.20質量%以下およびCr:0.04質量%以上0.20質量%以下から選択される1種以上
Mn、ZrおよびCrは分散粒子として存在し、結晶粒微細化に寄与し、成形性を向上させる。これらの元素の添加量が少なすぎると、分散粒子の数密度が低下し、ストレッチ時の耐力の増大量が低下することで、焼き付け塗装後の強度が低下するおそれがある。一方、これらの元素の含有量が多すぎると、粗大な化合物を形成し、延性を劣化させるおそれがある。
そのため、Mnの含有量は0.05質量%以上0.5質量%以下、Zrの含有量は0.04質量%以上0.20質量%以下、Crの含有量は0.04質量%以上0.20質量%以下である。
Mn、ZrおよびCrは、1種のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
Mn、ZrおよびCrは分散粒子として存在し、結晶粒微細化に寄与し、成形性を向上させる。これらの元素の添加量が少なすぎると、分散粒子の数密度が低下し、ストレッチ時の耐力の増大量が低下することで、焼き付け塗装後の強度が低下するおそれがある。一方、これらの元素の含有量が多すぎると、粗大な化合物を形成し、延性を劣化させるおそれがある。
そのため、Mnの含有量は0.05質量%以上0.5質量%以下、Zrの含有量は0.04質量%以上0.20質量%以下、Crの含有量は0.04質量%以上0.20質量%以下である。
Mn、ZrおよびCrは、1種のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
(4)残部
好ましい1つの実施形態では、残部は、Alおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれるTi、B、Fe、Zn、V、Na、Ca、In、Be、Srなどの微量元素の混入が想定される。
好ましい1つの実施形態では、残部は、Alおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれるTi、B、Fe、Zn、V、Na、Ca、In、Be、Srなどの微量元素の混入が想定される。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、上述した組成に限定されるものではない。本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の特性を維持できる限り、必要に応じてその他の元素を更に含んでよい。そのように選択的に含有させることができるその他の元素を以下に例示する。
(5)Cu:0質量%超0.5質量%以下
Cuは、Cuは固溶強化にて強度の向上に寄与する他、時効処理に際して、最終製品の時効硬化を促進する効果も有する。Cuのこのような効果を得るためには、0質量%超含むことが好ましい。一方、Cuの含有量が多過ぎると、耐食性を劣化させるおそれがあり、好ましくない。そのため、Cu含有量は、0.5質量%以下が好ましい。
Cuは、Cuは固溶強化にて強度の向上に寄与する他、時効処理に際して、最終製品の時効硬化を促進する効果も有する。Cuのこのような効果を得るためには、0質量%超含むことが好ましい。一方、Cuの含有量が多過ぎると、耐食性を劣化させるおそれがあり、好ましくない。そのため、Cu含有量は、0.5質量%以下が好ましい。
(6)Sc:0.02質量%以上0.1質量%以下
Scは分散粒子として存在し、結晶粒微細化に寄与し、成形性を向上させる。添加量が少なすぎると、分散粒子の数密度が低下し、ストレッチ時の耐力の増大量が低下することで、焼き付け塗装後の強度が低下するおそれがある。一方、含有量が多すぎると、粗大な化合物を形成し、延性を劣化させるおそれがある。
そのため、Scの好ましい含有量は0.02質量%以上0.1質量%以下である。
Scは分散粒子として存在し、結晶粒微細化に寄与し、成形性を向上させる。添加量が少なすぎると、分散粒子の数密度が低下し、ストレッチ時の耐力の増大量が低下することで、焼き付け塗装後の強度が低下するおそれがある。一方、含有量が多すぎると、粗大な化合物を形成し、延性を劣化させるおそれがある。
そのため、Scの好ましい含有量は0.02質量%以上0.1質量%以下である。
(7)Ag:0.01質量%以上0.2質量%以下、およびSn:0.001質量%以上0.1質量%以下、から選択される1種以上
Agは、構造材への成形加工後の人工時効熱処理によって強度向上に寄与する時効析出物を、緊密微細に析出させ、高強度化を促進する効果がある。また、Snは、添加することにより室温でのクラスタ形成を抑制して、溶体化・焼き入れ処理後の板の、優れた成形加工性を長時間保持する効果を有し、更にその後に焼付け塗装処理などの人工時効熱処理した場合の強度を向上させる。
これらの元素の添加量が少なすぎると、上述した効果を得られない。一方、添加量が多すぎると、Agは、圧延性及び溶接性などの諸特性を却って低下させ、強度向上効果も飽和し、高価となるだけである可能性があり、また、Snは、その効果は飽和し、却って熱間脆性を生じて熱間加工性(熱延性)を著しく劣化させるおそれがある。
そのため、Agの好ましい含有量は0.01質量%以上0.2質量%以下であり、Snの好ましい含有量は0.001質量%以上0.1質量%以下である。
AgおよびSnは、1種のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
Agは、構造材への成形加工後の人工時効熱処理によって強度向上に寄与する時効析出物を、緊密微細に析出させ、高強度化を促進する効果がある。また、Snは、添加することにより室温でのクラスタ形成を抑制して、溶体化・焼き入れ処理後の板の、優れた成形加工性を長時間保持する効果を有し、更にその後に焼付け塗装処理などの人工時効熱処理した場合の強度を向上させる。
これらの元素の添加量が少なすぎると、上述した効果を得られない。一方、添加量が多すぎると、Agは、圧延性及び溶接性などの諸特性を却って低下させ、強度向上効果も飽和し、高価となるだけである可能性があり、また、Snは、その効果は飽和し、却って熱間脆性を生じて熱間加工性(熱延性)を著しく劣化させるおそれがある。
そのため、Agの好ましい含有量は0.01質量%以上0.2質量%以下であり、Snの好ましい含有量は0.001質量%以上0.1質量%以下である。
AgおよびSnは、1種のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
3.機械的特性
上述のように、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、強度および曲げ性を低下させるPFZ幅が低減されているため、優れた強度を有すると同時に優れた曲げ性を有することができる。そのため、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を、自動車等の輸送機械の骨格構造に適用した場合には、車両の衝突時において優れたエネルギー吸収特性を発揮することができる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板が有する優れた強度および曲げ性は、本発明に係るアルミニウム合金板に対して、人工時効処理を行い、T6材になるように調質することで、とりわけ顕著に発現することができる。例えば、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を、200〜250℃で10〜30分保持する条件で人工時効処理することにより、優れた機械特性を確認することができる。
上述のように、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、強度および曲げ性を低下させるPFZ幅が低減されているため、優れた強度を有すると同時に優れた曲げ性を有することができる。そのため、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を、自動車等の輸送機械の骨格構造に適用した場合には、車両の衝突時において優れたエネルギー吸収特性を発揮することができる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板が有する優れた強度および曲げ性は、本発明に係るアルミニウム合金板に対して、人工時効処理を行い、T6材になるように調質することで、とりわけ顕著に発現することができる。例えば、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板を、200〜250℃で10〜30分保持する条件で人工時効処理することにより、優れた機械特性を確認することができる。
(1)強度
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、人工時効処理を行った後の、すなわち、T6材に調質した後の、引張試験により測定される0.2%耐力が250MPa以上であり、好ましい形態では270MPa以上である。これにより十分な強度を確保できる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、人工時効処理を行った後の、すなわち、T6材に調質した後の、引張試験により測定される0.2%耐力が250MPa以上であり、好ましい形態では270MPa以上である。これにより十分な強度を確保できる。
(2)曲げ性
衝突時のエネルギー吸収特性を示す曲げ性は、例えばドイツ自動車工業会で規定されたVDA基準“VDA238−100 Plate bending test for metallic materials”に基づくVDA曲げ試験を行うことにより測定できる曲げ角度(本明細書において、VDA曲げ角度と言うことがある)(°)により評価することができる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、人工時効処理を行った後の、すなわち、T6材に調質した後の、VDA試験曲げ試験により測定される曲げ角度が60°以上であり、好ましい実施形態では70°以上である。これにより、十分に優れたエネルギー吸収特性を確保できる。
衝突時のエネルギー吸収特性を示す曲げ性は、例えばドイツ自動車工業会で規定されたVDA基準“VDA238−100 Plate bending test for metallic materials”に基づくVDA曲げ試験を行うことにより測定できる曲げ角度(本明細書において、VDA曲げ角度と言うことがある)(°)により評価することができる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、人工時効処理を行った後の、すなわち、T6材に調質した後の、VDA試験曲げ試験により測定される曲げ角度が60°以上であり、好ましい実施形態では70°以上である。これにより、十分に優れたエネルギー吸収特性を確保できる。
4.製造方法
次に本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法について説明する。
上述したように、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、結晶粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度が十分に低減されており、そのため、粒界へのSiおよびMg2Si等の析出を抑制することができ、PFZ幅を十分に低減することができるのである。
以下の製造工程の説明から分かるように、このような特性は、とりわけ、均質化熱処理における昇温速度を厳密に制御し、さらに、溶体化処理温度およびその冷却時における冷却速度を制御することにより達成することができるのである。
以下、各工程について説明する。
(1)溶解、鋳造
まず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分規格範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して、アルミニウム合金鋳塊(スラブ)を鋳造する。
次に本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法について説明する。
上述したように、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板は、結晶粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度が十分に低減されており、そのため、粒界へのSiおよびMg2Si等の析出を抑制することができ、PFZ幅を十分に低減することができるのである。
以下の製造工程の説明から分かるように、このような特性は、とりわけ、均質化熱処理における昇温速度を厳密に制御し、さらに、溶体化処理温度およびその冷却時における冷却速度を制御することにより達成することができるのである。
以下、各工程について説明する。
(1)溶解、鋳造
まず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分規格範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して、アルミニウム合金鋳塊(スラブ)を鋳造する。
(2)均質化熱処理
次いで、鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理を施す。
均質化熱処理の温度は、均質化熱処理の温度は、450℃以上で融点未満の均質化温度(保持温度)で行う。この均質化熱処理(均熱処理)により、組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことができる。この均質化温度が450℃未満であると、結晶粒内の偏析を十分に無くすことができず、これが破壊の起点として作用するために、曲げ性が低下する。
次いで、鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理を施す。
均質化熱処理の温度は、均質化熱処理の温度は、450℃以上で融点未満の均質化温度(保持温度)で行う。この均質化熱処理(均熱処理)により、組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことができる。この均質化温度が450℃未満であると、結晶粒内の偏析を十分に無くすことができず、これが破壊の起点として作用するために、曲げ性が低下する。
本発明の実施形態では、均質化熱処理の際の加熱昇温条件を制御することにより、最終的に得られるアルミニウム合金板のPFZ幅を低減させ、曲げ性を向上することができる。具体的には、加熱昇温条件を以下のように制御する。
(200℃〜450℃:80℃/時間以上)
本発明の実施形態では、アルミニウム合金鋳塊を、200℃〜450℃までの温度域を80℃/時間以上の平均加熱速度で昇温する。好ましくは、200℃〜450℃までの温度域の平均加熱速度は、好ましくは90℃/時間以上であり、より好ましくは100℃/時間以上である。
本発明の実施形態では、アルミニウム合金鋳塊を、200℃〜450℃までの温度域を80℃/時間以上の平均加熱速度で昇温する。好ましくは、200℃〜450℃までの温度域の平均加熱速度は、好ましくは90℃/時間以上であり、より好ましくは100℃/時間以上である。
当該温度域における平均加熱速度が80℃/時間未満であると、遷移元素系の分散粒子が結晶粒界に過剰に析出し、後の溶体化処理工程の冷却時に、粒界拡散してきたMgおよびSiが分散粒子表面に複合析出することを促進し、その結果、マトリックスからMgおよびSiの拡散が助長されることにより、結晶粒界近傍のMgおよびSiの原子濃度が低下する。そのため、結晶粒界近傍におけるMgおよびSi元素の欠乏層の領域が広がり、PFZ幅が増大し、曲げ性が低下する。
当該温度域における平均加熱速度が80℃/時間以上であると、結晶粒界における遷移元素系の分散粒子の過剰な析出を抑制することができ、上述したMgおよびSiの複合析出を抑制することができるので、PFZ幅を低減でき、曲げ性を向上することができる。
当該温度域における平均加熱速度が80℃/時間以上であると、結晶粒界における遷移元素系の分散粒子の過剰な析出を抑制することができ、上述したMgおよびSiの複合析出を抑制することができるので、PFZ幅を低減でき、曲げ性を向上することができる。
(450℃〜均質化温度:40℃/時間以下)
450℃〜均質化温度までの温度域での平均加熱速度が40℃/時間を超えると、粒界上に析出した遷移元素系の分散粒子を粗大にすることができず、粒界上の分散粒子の数密度が大きくなり、人工時効後のPFZ幅が大きくなる。そのため、450℃〜均質化温度までの温度域は、40℃/時間以下の平均加熱速度で昇温する。当該温度域を40℃/時間以下の平均加熱速度で昇温することにより、粒界に析出した遷移元素系の分散粒子をより粗大化し、粒界上の分散粒子の数密度の低減を促進することができ、人工時効後のPFZ幅を低減することができる。
450℃〜均質化温度までの温度域での平均加熱速度が40℃/時間を超えると、粒界上に析出した遷移元素系の分散粒子を粗大にすることができず、粒界上の分散粒子の数密度が大きくなり、人工時効後のPFZ幅が大きくなる。そのため、450℃〜均質化温度までの温度域は、40℃/時間以下の平均加熱速度で昇温する。当該温度域を40℃/時間以下の平均加熱速度で昇温することにより、粒界に析出した遷移元素系の分散粒子をより粗大化し、粒界上の分散粒子の数密度の低減を促進することができ、人工時効後のPFZ幅を低減することができる。
(均質化温度到達後の保持時間:4時間以上)
上述した平均加熱速度によりアルミニウム合金鋳塊を加熱し、融点未満の均質化温度まで到達した後、当該均質化温度で4時間以上保持することが好ましい。これにより、粒界に析出した遷移元素系の分散粒子をより粗大化し、数密度を低減することができる。
上述した平均加熱速度によりアルミニウム合金鋳塊を加熱し、融点未満の均質化温度まで到達した後、当該均質化温度で4時間以上保持することが好ましい。これにより、粒界に析出した遷移元素系の分散粒子をより粗大化し、数密度を低減することができる。
上述した均質化熱処理工程は、1回均熱条件、2回均熱条件または2段均熱条件のいずれにより行ってもよい。2段均熱条件が好ましく、1回均熱条件がより好ましい。
1回均熱条件では、均質化温度での保持後、熱延開始温度まで冷却するか、あるいは熱延開始温度か、その近傍で保持して、熱延を開始する。2回均熱条件とは、1回目の均熱後に、一旦室温を含む200℃以下の温度まで冷却し、更に、再加熱し、その温度で一定時間維持した後に、熱延を開始する。これに対して、2段均熱条件とは、1回目の均熱後に冷却はするものの、200℃以下までは冷却せず、より高温で冷却を停止した上で、その温度で維持した後に、そのままの温度か、より高温に再加熱した上で熱延を開始する。
いずれの条件であっても、均質化熱処理の1回目の昇温(すなわち、1回均熱条件における昇温、2回均熱条件における1回目の昇温または2段均熱条件における昇温)において200℃〜450℃までの平均加熱速度を80℃/時間以上に制御することにより、粒界における遷移元素系の分散粒子の過剰な析出を抑制することができ、最終的に得られるアルミニウム合金板のPFZ幅を低減し、曲げ性を向上することができる。
(3)熱間圧延
熱間圧延は、圧延する板厚に応じて、鋳塊(スラブ)の粗圧延工程と、仕上げ圧延工程と、から構成される。粗圧延工程および仕上げ圧延工程では、リバース式あるいはタンデム式などの圧延機が適宜用いられる。
熱間圧延は、圧延する板厚に応じて、鋳塊(スラブ)の粗圧延工程と、仕上げ圧延工程と、から構成される。粗圧延工程および仕上げ圧延工程では、リバース式あるいはタンデム式などの圧延機が適宜用いられる。
熱間圧延開始(すなわち、粗圧延開始)温度が固相線温度を超えると、バーニング(すなわち、鋳塊の一部溶融)が起こるため熱延自体が困難となることがある。また、熱延開始温度が350℃未満では熱延時の荷重が高くなりすぎ、熱延自体が困難となることがある。したがって、熱延(粗圧延)開始温度は350℃〜固相線温度が好ましく、更に好ましくは400℃〜固相線温度の範囲である。
(4)熱延焼鈍処理
後述する冷間圧延を行う前に、必要に応じて熱延板の焼鈍(荒鈍)を行ってもよい。熱延板を焼鈍することにより、結晶粒の微細化および集合組織の適正化によって、成形性などの特性を更に向上することができる。
後述する冷間圧延を行う前に、必要に応じて熱延板の焼鈍(荒鈍)を行ってもよい。熱延板を焼鈍することにより、結晶粒の微細化および集合組織の適正化によって、成形性などの特性を更に向上することができる。
(5)冷間圧延
冷間圧延では、得られた熱延板を圧延して、所望の最終板厚の冷延板(コイルも含む)に製作する。結晶粒をより微細化させるためには、冷間圧延率は40%以上であることが好ましく、また上述した焼鈍工程と同様の目的で、冷間圧延パス間で中間焼鈍を行ってもよい。
冷間圧延では、得られた熱延板を圧延して、所望の最終板厚の冷延板(コイルも含む)に製作する。結晶粒をより微細化させるためには、冷間圧延率は40%以上であることが好ましく、また上述した焼鈍工程と同様の目的で、冷間圧延パス間で中間焼鈍を行ってもよい。
(6)溶体化処理および焼入れ処理
(溶体化処理温度:500℃以上)
得られた冷延板に対して、溶体化処理および室温までの焼入れ処理を行う。この溶体化処理により、MgおよびSiを十分に固溶することができ、強度を向上することができる。溶体化処理温度(保持温度)が500℃未満であると、MgおよびSiの各元素を十分に固溶させることができず、高い強度を得られない。従って、溶体化処理温度(保持温度)は500℃以上であり、好ましくは550℃以上である。
(溶体化処理温度:500℃以上)
得られた冷延板に対して、溶体化処理および室温までの焼入れ処理を行う。この溶体化処理により、MgおよびSiを十分に固溶することができ、強度を向上することができる。溶体化処理温度(保持温度)が500℃未満であると、MgおよびSiの各元素を十分に固溶させることができず、高い強度を得られない。従って、溶体化処理温度(保持温度)は500℃以上であり、好ましくは550℃以上である。
(500〜300℃の平均冷却速度:50℃/秒以上)
上述したように、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法では、均質化熱処理工程において、200〜450℃の温度範囲を80℃/秒以上の大きな平均加熱速度で昇温し、さらに450℃〜均質化温度までの温度範囲を40℃/時間以下の平均加熱速度で昇温している。これにより、冷延板は、溶体化処理を行うことによって、その結晶粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度は十分に低減されている。
上述したように、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法では、均質化熱処理工程において、200〜450℃の温度範囲を80℃/秒以上の大きな平均加熱速度で昇温し、さらに450℃〜均質化温度までの温度範囲を40℃/時間以下の平均加熱速度で昇温している。これにより、冷延板は、溶体化処理を行うことによって、その結晶粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度は十分に低減されている。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法では、このように冷延板に対して、溶体化処理を行い、その溶体化処理温度での保持後の平均冷却速度を厳密に制御することにより、最終的に得られるアルミニウム合金板の結晶粒界上に存在する遷移元素系の分散粒子の数密度を十分に低減し、PFZ幅を低減させ、曲げ性を向上することができる。
具体的には、本発明の実施形態に係る製造方法では、溶体化処理後、500〜300℃の温度域を、50℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する。このような大きな平均冷却速度で冷却することにより、冷却中におけるMgおよびSiの粒界拡散を抑制することができる。その結果、粒界に析出している遷移元素系の分散粒子表面に、MgおよびSiが複合析出することを抑制できるので、結晶粒界近傍でMg原子およびSi原子の欠乏層が形成されるのを抑制できる。そのため、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板に人工時効処理を施してT6材に調質した場合に、粒界のPFZ幅を60nm以下に低減することができ、優れた強度および曲げ性を発揮することができる。
焼入れ処理においてこのような50℃/秒以上の平均冷却速度を確保するために、ファンを用いた空冷、ならびにミスト、スプレーおよび浸漬等の水冷手段を適宜選択して用いてよい。
(7)予備時効処理
本実施形態に係る製造方法では、焼付け塗装工程などの人工時効硬化処理での時効硬化性をより高めるために、必要に応じて、焼入れ処理後に予備時効処理をしてもよい。予備時効処理は、60〜150℃の温度範囲、好ましくは70〜120℃の温度範囲で、1〜24時間保持することが好ましい。予備時効処理後の冷却速度は、1℃/時間以下であることが好ましい。
本実施形態に係る製造方法では、焼付け塗装工程などの人工時効硬化処理での時効硬化性をより高めるために、必要に応じて、焼入れ処理後に予備時効処理をしてもよい。予備時効処理は、60〜150℃の温度範囲、好ましくは70〜120℃の温度範囲で、1〜24時間保持することが好ましい。予備時効処理後の冷却速度は、1℃/時間以下であることが好ましい。
(8)予歪み処理
本実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法では、必要に応じて、上述した溶体化および焼入れ処理後、または予備時効処理を行う場合には、予備時効処理後の冷却完了後6時間以上経過した後、冷延板に対して5〜20%程度の歪みを加えてもよい。これにより、冷延板に転位が導入される。焼き入れ処理後または予備時効処理後の6時間以上経過した後ではクラスタが存在する。そのため、その後の人工時効処理や焼付け塗装処理時には、クラスタが転位の回復に伴う移動の障害となって、転位が回復しにくくなる。その結果、従来の析出強化だけでなく、転位強化によっても人工時効処理や焼付け塗装処理後の強度を高くすることができる。さらには、歪みを導入することにより、焼付け塗装処理時または人工時効処理時に、粒界のPFZに存在する転位に、MgおよびSiが優先的に析出し、その結果、PFZ幅をさらに低減させることができ、曲げ性をより向上することができる。
本実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法では、必要に応じて、上述した溶体化および焼入れ処理後、または予備時効処理を行う場合には、予備時効処理後の冷却完了後6時間以上経過した後、冷延板に対して5〜20%程度の歪みを加えてもよい。これにより、冷延板に転位が導入される。焼き入れ処理後または予備時効処理後の6時間以上経過した後ではクラスタが存在する。そのため、その後の人工時効処理や焼付け塗装処理時には、クラスタが転位の回復に伴う移動の障害となって、転位が回復しにくくなる。その結果、従来の析出強化だけでなく、転位強化によっても人工時効処理や焼付け塗装処理後の強度を高くすることができる。さらには、歪みを導入することにより、焼付け塗装処理時または人工時効処理時に、粒界のPFZに存在する転位に、MgおよびSiが優先的に析出し、その結果、PFZ幅をさらに低減させることができ、曲げ性をより向上することができる。
予歪み処理工程において、冷延板への歪みの加え方は任意でよい。例えば、引張試験、冷間圧延およびレベラ−等により、歪みを加えてもよい。
以上に説明した本発明の実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法に接した当業者であれば、試行錯誤により、上述した製造方法と異なる製造方法により本発明に係るアルミニウム合金板を得ることができる可能性がある。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
1.試験片作製
表1に示す組成のアルミニウム合金鋳塊を、DC鋳造法により溶製した。
なお、表1〜表3において、下線を伏した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。
表1に示す組成のアルミニウム合金鋳塊を、DC鋳造法により溶製した。
なお、表1〜表3において、下線を伏した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。
続いて、得られた鋳塊に、表2に示す条件で均質化熱処理および熱間圧延を行い、3〜25mmの熱圧板を得た。この熱延板に対して冷間圧延を行い、厚さ2.0mmの冷延板を得た。得られた冷延板に対して、表2に示す条件で溶体化処理を行った後、100℃×8時間の予備時効処理を施し、T4材に調質されたアルミニウム合金板を得た。溶体化処理において、到達温度での保持時間を30分とした。所定の試料については、さらに引張試験により、表2に示す条件で予歪み処理を行った。なお、表2で表記している均質化熱処理の平均加熱速度は、均熱パターンが2回均熱条件である試験片では、1回目の昇温における平均加熱速度を示している。
続いて、全ての試験片に対して、表2に示す条件で人工時効処理を行い、T6材に調質されたアルミニウム合金板を得た。
続いて、全ての試験片に対して、表2に示す条件で人工時効処理を行い、T6材に調質されたアルミニウム合金板を得た。
2.組織の観察
以下の要領にて、粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度、および粒界のPFZ幅を測定した。これらの結果を表3に示す。
以下の要領にて、粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度、および粒界のPFZ幅を測定した。これらの結果を表3に示す。
(分散粒子の数密度)
粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度は、人工時効処理を行う前のT4材に対してTEM観察を行い測定した。具体的には、T4材の試験片から5箇所をサンプリングし、板厚中心部でTEM観察をできるように試験片を調整した。そして、電子ビームの入射方向が(100)面に平行になるように調整し、倍率10万倍以上で、各サンプル毎に粒界の領域を3視野撮影した。各視野において、粒界上の析出物をエネルギー分散型X線分析(EDX)で分析し、Mg−Si系析出物、Mg−Si−Cu系析出物およびSi析出物を除いた、遷移元素系の析出物を同定し、それらのうち、円相当直径で0.05μm以上のサイズに相当する析出物数をカウントして、粒界長さあたりの数密度(個/nm)として計算した。各サンプルの3視野における数密度の平均値を算出し、5箇所のサンプルにおける平均値を求め、その試験片の粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度とした。表3において、「粒界析出物の数密度」として示した。
粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度は、人工時効処理を行う前のT4材に対してTEM観察を行い測定した。具体的には、T4材の試験片から5箇所をサンプリングし、板厚中心部でTEM観察をできるように試験片を調整した。そして、電子ビームの入射方向が(100)面に平行になるように調整し、倍率10万倍以上で、各サンプル毎に粒界の領域を3視野撮影した。各視野において、粒界上の析出物をエネルギー分散型X線分析(EDX)で分析し、Mg−Si系析出物、Mg−Si−Cu系析出物およびSi析出物を除いた、遷移元素系の析出物を同定し、それらのうち、円相当直径で0.05μm以上のサイズに相当する析出物数をカウントして、粒界長さあたりの数密度(個/nm)として計算した。各サンプルの3視野における数密度の平均値を算出し、5箇所のサンプルにおける平均値を求め、その試験片の粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度とした。表3において、「粒界析出物の数密度」として示した。
(粒界のPFZ幅)
粒界のPFZ幅は、人工時効処理後のT6材に対してTEM観察を行い測定した。具体的には、T6材の試験片から5箇所をサンプリングし、板厚中心部でTEM観察をできるように試験片を調整した。そして、電子ビームの入射方向が(100)面に平行になるように調整した。そして、倍率10万倍以上で、各サンプル毎に粒界の領域を3視野観察し、各視野内で、最もPFZの幅が広い箇所のPFZ幅を測定した。そして合計15箇所のPFZ幅の平均値を求め、その試験片の粒界のPFZ幅とした。表3において、「PFZ幅」として示した。
粒界のPFZ幅は、人工時効処理後のT6材に対してTEM観察を行い測定した。具体的には、T6材の試験片から5箇所をサンプリングし、板厚中心部でTEM観察をできるように試験片を調整した。そして、電子ビームの入射方向が(100)面に平行になるように調整した。そして、倍率10万倍以上で、各サンプル毎に粒界の領域を3視野観察し、各視野内で、最もPFZの幅が広い箇所のPFZ幅を測定した。そして合計15箇所のPFZ幅の平均値を求め、その試験片の粒界のPFZ幅とした。表3において、「PFZ幅」として示した。
3.機械的特性
機械的特性を以下のようにして測定した。これらの結果は表3に示す。
機械的特性を以下のようにして測定した。これらの結果は表3に示す。
(強度)
強度は、人工時効処理後のT6材に対して引張試験を行い、0.2%耐力(MPa)を測定することにより評価した。引張試験は、引張方向が圧延方向と垂直となるようにJIS5号試験片に加工し、JIS Z 2241(2011改訂版)に基づき、評点間距離50mmで引張速度5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
本発明では、0.2%耐力が250MPa以上である場合を合格とした。
強度は、人工時効処理後のT6材に対して引張試験を行い、0.2%耐力(MPa)を測定することにより評価した。引張試験は、引張方向が圧延方向と垂直となるようにJIS5号試験片に加工し、JIS Z 2241(2011改訂版)に基づき、評点間距離50mmで引張速度5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
本発明では、0.2%耐力が250MPa以上である場合を合格とした。
(曲げ性)
曲げ性は、人工時効処理後のT6材に対して、ドイツ自動車工業会で規定されたVDA基準“VDA238−100 Plate bending test for metallic materials”に基づくVDA曲げ試験を行い、測定された曲げ角度(°)により評価した。この試験方法を、図1に斜視図で示す。
先ず、前記T6材の板状試験片を、ロールギャップを設けて、互いに平行に配置した2個のロール上に、図1に点線で示すように、水平で左右均等の長さに載置する。具体的には、T6材の板状試験片を、その圧延方向と、上方に垂直に立てて配置した板状の押し曲げ治具の延在方向とが、互いに直角になるように、ロールギャップ中央にその中央部が位置するよう、2個のロール上に、水平で左右均等の長さに載置する。そして、上方から前記押し曲げ治具を板状試験片の中央部に押し当てて荷重を負荷し、この板状試験片を前記狭いロールギャップに向けて押し曲げ(突き曲げ)て、曲げ変形した板状試験片中央部を前記狭いロールギャップ内に押し込む。
曲げ性は、人工時効処理後のT6材に対して、ドイツ自動車工業会で規定されたVDA基準“VDA238−100 Plate bending test for metallic materials”に基づくVDA曲げ試験を行い、測定された曲げ角度(°)により評価した。この試験方法を、図1に斜視図で示す。
先ず、前記T6材の板状試験片を、ロールギャップを設けて、互いに平行に配置した2個のロール上に、図1に点線で示すように、水平で左右均等の長さに載置する。具体的には、T6材の板状試験片を、その圧延方向と、上方に垂直に立てて配置した板状の押し曲げ治具の延在方向とが、互いに直角になるように、ロールギャップ中央にその中央部が位置するよう、2個のロール上に、水平で左右均等の長さに載置する。そして、上方から前記押し曲げ治具を板状試験片の中央部に押し当てて荷重を負荷し、この板状試験片を前記狭いロールギャップに向けて押し曲げ(突き曲げ)て、曲げ変形した板状試験片中央部を前記狭いロールギャップ内に押し込む。
この際に、上方からの押し曲げ治具からの荷重Fが最大となる時の板状試験片の中央部の曲げ外側の角度を曲げ角度(°)として測定して、その曲げ角度の大きさで衝撃吸収性を評価する。この曲げ角度が大きいほど、板状試験片は、途中で圧壊せずに、曲げ変形が持続しており、衝撃吸収性(圧壊特性)が高く、曲げ性に優れていると言える。
このVDA曲げ試験の試験条件として、図1に記載した記号を用いて示すと、板状試験片は幅b:60mm×長さl:60mmの正方形形状とし、2個のロール直径Dは各々30mm、ロールギャップLは板状試験片板厚の2.0倍の4mmとした。sは荷重Fが最大となる時の板状試験片中央部のロールギャップ内への押し込み深さである。また、板状の押し曲げ治具は、図1に示すように、板状試験片の中央部に押し当たる、下端側の辺が、その先端(下端)の半径が0.2mmφとなるように尖ったテーパ状とされている。上記曲げ試験は、各例とも板状試験片3枚ずつ(3回)行い、曲げ角度(°)はこれらの平均値を採用した。
本発明では、VDA曲げ角度が60°以上である場合を合格とした。
本発明では、VDA曲げ角度が60°以上である場合を合格とした。
4.まとめ
表1〜3に示すように、発明例である試験片No.1〜9は、本発明で規定する全ての要件(組成、製造条件および組織)を満たす実施例である。これらの試料はいずれも250MPa以上の0.2%耐力および60°以上のVDA曲げ角度を達成している。
表1〜3に示すように、発明例である試験片No.1〜9は、本発明で規定する全ての要件(組成、製造条件および組織)を満たす実施例である。これらの試料はいずれも250MPa以上の0.2%耐力および60°以上のVDA曲げ角度を達成している。
これに対して、No.10は、均質化熱処理の200〜450℃の温度範囲での平均加熱速度が小さいため、粒界上に分散粒子が過剰に析出し、PFZ幅が増大した。その結果、曲げ性が不足した。
No.11は、450℃〜均質化温度の温度範囲での平均加熱速度が大きい例である。そのため、粒界上の分散粒子の数密度が増大し、PFZ幅が増大した。その結果、曲げ性が不足した。
No.12は、均質化熱処理の200〜450℃の温度範囲での平均加熱速度が小さく、450℃〜均質化温度までの平均加熱速度が大きい例である。そのため、粒界上に分散粒子が過剰に析出し、PFZ幅が増大し、曲げ性が不足した。
No.13は、均質化熱処理の200〜450℃の温度範囲での平均加熱速度が小さく、450℃〜均質化温度までの平均加熱速度が大きい例である。そのため、粒界上の分散粒子の数密度が増大し、PFZ幅が増大し、曲げ性が不足した。
No.14は、溶体化処理の保持温度が低い例である。そのため、粒界上に分散粒子が過剰に析出し、PFZ幅が増大し、強度が不足した。
No.15は、Mg含有量が少ないため、PFZ幅が増大し、強度が不足した。
No.16は、Si含有量が少ないため、PFZ幅が増大し、強度が不足した。
Claims (5)
- Mg:0.5〜1.3質量%、
Si:0.7〜1.5質量%
を含み、
Mn:0.05〜0.5質量%、
Zr:0.04〜0.20質量%、および
Cr:0.04〜0.20質量%
から選択される一種以上をさらに含み、
残部がAlおよび不可避不純物であり、
粒界上に存在する0.05μm以上の遷移元素系の分散粒子の数密度が0.001個/nm以下であり、
200〜250℃で10〜30分保持する人工時効処理後の粒界のPFZ幅が60nm以下である、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板。 - Cu:0質量%超0.5質量%以下
をさらに含む、請求項1に記載のアルミニウム合金板。 - Sc:0.02〜0.1質量%
をさらに含む、請求項1または2に記載のアルミニウム合金板。 - Ag:0.01〜0.2質量%、および
Sn:0.001〜0.1質量%
から選択される一種以上をさらに含有する、請求項1から3のいずれかに記載のアルミニウム合金板。 - 200〜250℃で10〜30分保持する人工時効処理後の0.2%耐力が250MPa以上であり、かつVDA曲げ角度が60°以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム合金板。
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