JP2018087360A - 酸化物スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
Description
この場合、耐環境性がより向上し、抵抗値がより低減した透明導電酸化物膜を成膜することができる。
金属膜は、例えば、Ag膜またはAg合金膜である。Ag膜またはAg合金膜の厚さは、通常、5〜400nmの範囲にある。透明導電積層膜として用いる場合、Ag膜またはAg合金膜の厚さは、好ましくは5〜20nmの範囲にある。反射導電積層膜として用いる場合、Ag膜またはAg合金膜の厚さは、好ましくは40〜400nmの範囲にある。
また、このAg膜またはAg合金膜に積層する透明導電酸化物膜の膜厚は、通常、10〜100nmの範囲である。
Gaは、成膜された透明導電酸化物膜の耐環境性と耐アルカリ性を向上させる作用がある。Gaはまた、Agとの相性がよく、成膜された透明導電酸化物膜の金属膜への濡れ性を向上させる作用もある。透明導電酸化物膜の金属膜に対する濡れ性が向上することによって、透明導電酸化物膜と金属膜とが強く密着するので、積層膜としての導電性、透明性、耐環境性を向上させることができる。
ここで、Gaの含有量が10原子%未満の場合には、成膜された透明導電酸化物膜の耐環境性と耐アルカリ性を向上させる効果を確保できず、また透明導電酸化物膜のAg膜への濡れ性を向上させることができないおそれがある。一方、Gaの含有量が多くなりすぎると、却って酸化物スパッタリングターゲットの導電性が悪化しDCスパッタが不可となるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、Gaの含有量を10.0原子%以上20.0原子%以下の範囲に設定している。
Tiは、成膜された透明導電酸化物膜の耐環境性と耐アルカリ性をより向上させる効果を有する。
ここで、Tiの含有量が0.5原子%未満の場合には、成膜された透明導電酸化物膜の耐環境性と耐アルカリ性を十分に向上させることができないおそれがある。一方、Tiの含有量が5.0原子%を超えると、成膜された透明導電酸化物膜のエッチング加工性が低下して、金属膜との積層膜とした場合に、一括でエッチングすることが難しくなるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、Tiの含有量を0.5原子%以上5.0原子%以下の範囲に設定している。
上記の添加元素は、成膜された透明導電酸化物膜の耐環境性をより向上させる効果を有する。また、上記の添加元素は、三価以上の原子価を有することから、酸化亜鉛のドーパントとして作用して、成膜された透明導電酸化物膜の導電性を向上させて、抵抗値をより低くすることができ、その結果、この透明導電酸化物膜と金属膜とを積層した積層膜の抵抗値を、長期間にわたって安定化させることができる。
ここで、上記添加元素の含有量が0.01原子%未満の場合には、成膜された透明導電酸化物膜の耐環境性と導電性を十分に向上させることができないおそれがある。一方、添加元素の含有量が10.0原子%を超えると、成膜された透明導電酸化物膜の金属膜に対する濡れ性が低下して、金属膜との積層膜とした場合に、積層膜としての導電性や透明性が低下するおそれがある。また、成膜された透明導電酸化物膜のエッチング加工性が低下して、金属膜との積層膜とした場合に、一括でエッチングすることが難しくなるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、添加元素の含有量を0.01原子%以上10.0原子%以下の範囲に設定している。
Znの酸化物であるZnOは、Agの結晶性を向上させるとともに、AgまたはAg合金を薄膜化した場合でもAgの凝集を抑える効果がある。このため、ZnOを主成分とする透明導電酸化物膜を下地とすることによって、薄膜で光の透過率の高いAg膜またはAg合金を形成することができる。
このような理由から、本実施形態では、Znの含有量を、上記の元素の残部と設定している。
不可避不純物は、本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットを製造する際に用いる原料粉末に混入している元素、あるいはその製造の過程で混入することが避けられない元素であって、酸化物スパッタリングターゲットの特性に影響を及ぼさない元素を意味する。不可避不純物の含有量は、酸化物スパッタリングターゲットの全体量に対して、100質量ppm以下であることが好ましい。
先ず、原料粉末として、酸化亜鉛(ZnO)粉末、酸化ガリウム(Ga2O3)粉末、酸化チタン(TiO2)粉末を準備する。さらに、必要に応じて、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、La、Nd、Sm、Gdの各添加元素をそれぞれ含む酸化物粉末を準備する。この酸化物粉末は、添加元素を3価の酸化物として含むものであることが好ましい。
これらの原料粉末は、純度が99.9質量%以上であることが好ましい。
原料粉末として、Zn、Ga、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、La、Nd、Sm、Gdの各元素のそれぞれを含む酸化物粉末を準備した。酸化物粉末はすべて純度が99.9質量%以上のものを準備した。
準備した各原料粉末を、各元素の含有割合が表1の酸化物スパッタリングターゲットの元素組成に示す組成となるように選択して秤量した。
得られた混合粉末を、圧力300kgf/cm2、温度950℃の条件で、3時間ホットプレス(HP)を行い、酸化物焼結体を得た。
得られた酸化物焼結体を機械加工することにより、直径152.4mm×厚さ6mmとされた本発明例及び比較例の酸化物スパッタリングターゲットを製造した。なお、表1に示す酸化物スパッタリングターゲットの元素組成は、ホットプレスを行う前の混合粉末を用いてICP法によって測定した。
本発明例及び比較例の酸化物スパッタリングターゲットについて、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて元素分布を測定した。その結果、本発明例で製造された酸化物スパッタリングターゲットは、いずれもターゲット中のZn、Ga、Tiの各相は分散しており、Ga及びTiの一部はZnと複合酸化物を形成していることが確認された。
図1に、本発明例2で製造した酸化物スパッタリングターゲットの元素分布の測定結果を示す。
マグネトロンスパッタ装置に、はんだ付けした酸化物スパッタリングターゲットを取り付け、1×10−4Paまで排気した後、Arガス圧:0.5Pa、直流電力密度:3.0W/cm2、ターゲット基板間距離:70mmの条件で、DC(直流)スパッタ法により成膜を行った。スパッタ時の異常放電回数は、MKSインスツルメンツ社製DC電源(型番:RPDG−50A)のアークカウント機能により、放電開始から1時間の異常放電回数として計測した。その結果を、表1に示す。
本発明例及び比較例の酸化物スパッタリングターゲットを用いて、基板上に500nmの厚さで透明導電酸化物膜を、下記の条件にてDCスパッタ法により成膜した。
基板:無アルカリガラス基板(コーニング社製イーグルXG)
到達真空度:1×10−4Pa以下
使用ガス:Ar+O2(O2分圧2%)
ガス圧:0.7Pa
電力:直流500W
ターゲット/基板間距離:70mm
なお、比較例2のスパッタリングターゲットは、DCスパッタ法によって成膜できなかったので透明導電酸化物膜の成膜は実施しなかった。
成膜された透明導電酸化物膜の膜抵抗を、三菱化学製抵抗測定器ロレスタGPを用いて、四探針法により測定した。そして、下記の式により比抵抗値を算出した。評価結果を表1に示す。
(透明導電酸化物膜の比抵抗値)=(透明導電酸化物膜の膜抵抗)×(透明導電酸化物膜の膜厚)
基板上に、透明導電酸化物膜/Ag合金膜/透明導電酸化物膜からなる3層構造の積層膜を作製した。積層膜は、膜構造(透明導電酸化物膜/Ag合金膜/透明導電酸化物膜)=40nm/8nm/40nmである透明導電積層膜、及び膜構造=10nm/100nm/10nmである反射導電積層膜の二水準とした。
基板:無アルカリガラス基板(コーニング社製イーグルXG)
到達真空度:1×10−4Pa以下
使用ガス:Ar+O2(O2分圧2%)
ガス圧:0.7Pa
電力:直流500W
ターゲット/基板間距離:70mm
到達真空度:5×10−5Pa以下
使用ガス:Ar
ガス圧:0.5Pa
電力:直流200W
ターゲット/基板間距離:70mm
三菱化学製抵抗測定器ロレスタGPを用いて、四探針法よりシート抵抗を測定した。
透過率は、膜構造=40nm/8nm/40nmの透明導電積層膜について測定した。
透過率は、分光光度計(日立分光光度計U−4100)を用いて測定した。なお、表2に記載した透過率は、波長550nmの可視光における透過率である。
反射率は、膜構造=10nm/100nm/10nmの反射導電積層膜について測定した。
反射率は、分光光度計(日立分光光度計U−4100)を用いて測定した。なお、表3に記載した反射率は、青色波長である波長400nm〜450nmにおける可視光の平均値である。
積層膜を、温度85℃、湿度85%の雰囲気に調整した恒温恒湿槽中に100時間静置する恒温恒湿試験を実施した。
膜構造=40nm/8nm/40nmの透明導電積層膜については、シート抵抗の反化率から耐環境性を評価した。すなわち、透明導電積層膜については、恒温恒湿試験後のシート抵抗を上述の方法により測定した。そして、恒温恒湿試験前後におけるシート抵抗の変化率(=恒温恒湿試験後のシート抵抗/恒温恒湿試験前のシート抵抗×100)を算出した。
恒温恒湿試験後の透明導電積層膜の外観観察結果の一例を図2及び図3に示す。図2は、本発明例2で作製した透明導電積層膜の恒温恒湿試験後の外観観察写真であり、積層膜の変色や斑点が発生しない場合の例である。図3は、比較例1で作製した透明導電積層膜の恒温恒湿試験後の外観観察写真であり、透明導電積層膜に斑点が発生した場合の例である。
積層膜を、40℃の5質量%NaOH水溶液中に10分間浸漬する浸漬試験を実施した。浸漬試験後の積層膜について膜厚を測定した。そして、浸漬試験前後における膜厚の変化率(=浸漬試験後の膜厚/浸漬試験前の膜厚×100)を算出した。膜厚の変化率が10%未満であったものを「○」、膜厚の変化率が10%以上50%未満であったものを「△」、膜厚の変化率が50%以上であったものを「×」と評価した。
なお、膜厚の測定は、積層膜の形成時に、予めガラス基板上の一部にマスキングテープを貼り付けることによって積層膜内に段差を形成し、その段差を段差測定計(DEKTAK-XT)で測定することによって行った。
積層膜の表面に、フォトリソグフィーにより配線幅30μmの櫛型パターンのフォトレジスト層を形成した。次いで、エッチング液(燐硝酢酸:関東化学SEAシリーズ)を用いて、エッチング処理を行った。そして、エッチング処理後の積層膜の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。積層膜の透明導電酸化物膜/Ag合金膜/透明導電酸化物膜の全ての膜が均一にエッチングされているものを「○」、透明導電酸化物膜/Ag合金膜/透明導電酸化物膜が均一にエッチングされていない(透明導電酸化物膜が残存している)ものを「×」と評価した。
エッチング加工性は、透明導電積層膜および反射導電積層膜のいずれも不十分であった。これは、透明導電酸化物膜がエッチング液に溶解しにくくなったためであると推察される。
Claims (2)
- 金属成分元素の含有割合が、全金属成分元素量に対してGaが10.0原子%以上20.0原子%以下、Tiが0.5原子%以上5.0原子%以下、残部がZnおよび不可避不純物とされた酸化物からなることを特徴とする酸化物スパッタリングターゲット。
- 全金属成分元素量に対して、さらにZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi及びランタノイド系列の元素からなる元素群より選ばれる少なくとも1種または2種以上の添加元素を、0.01原子%以上10.0原子%以下の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載の酸化物スパッタリングターゲット。
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