図1A−Dは、抗CD11a抗体の精製についてPoros HS50、SPSFF、SO3 Monolith、及びMustang Sを使用したクロマトグラムを示す。
図2は、SPSFF、Poros HS50、Mustang S、及びSO3 monolithを使用して収集した抗CD11a抗体(g/L CV又はMV)を含んでなる様々な量の産物での、C/C0(Mab(「モノマー抗体」)濃度)及びC/C0(チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(「CHOP」)濃度)を示す。Cは収集した分画におけるMab又はCHOP濃度であり、C0はロードにおけるMab又はCHOP濃度である。
図3は、SO3 monolith、Mustang S、SPSFF、及びPoros HS50を使用して収集した抗CD11a抗体(g/L CV又はMV)を含んでなる様々な量の産物での、C/C0(Mab濃度)及びC/C0(高分子量(「HMW」)濃度)を示す。Cは収集した分画におけるMab又はHMWパーセンテージであり、C0はロードにおけるMab又はHMWパーセンテージである。
図4A−Dは、SO3 monolith、Mustang S、SPSFF、及びPoros HS50を使用して収集した抗CD11a抗体(g/L CV又はMV)を含んでなる様々な量の産物での、C/C0(Mab濃度)、C/C0(HMW1濃度)及びC/C0(HMW2濃度)を示す。
図5Aは、Poros HS50を使用してロードされた抗CD11a抗体を含んでなる産物におけるHMW及びMabのクロマトグラムを示す;図5Bは、Poros HS50を使用した溶出プールにおけるHMW及びMabのクロマトグラムを示す(中の図はピークの拡大セクションを示す);図5Cは、Poros HS50を使用して収集された抗CD11a抗体を含んでなる様々な量の産物(g/L CV)を有する、素通り(「FT」)プールにおける蓄積HMW%及びFT分画におけるHMW%を示す。
図6Aは、SPSFFカラムを使用して収集された抗CD11a抗体を含んでなる様々な量の産物を有するFTプールのクロマトグラムを示す;図6Bは、SPSFFを使用して収集された、抗CD11a抗体を含んでなる様々な量の産物(mg/mL CV)を有するFTプールにおける蓄積HMW%及びFT分画におけるHMW%を示す;図6Cは、SPSFFを使用して収集された抗CD11a抗体(mg/mL)を含んでなる様々な量の産物と共にHMW%を示す。
図7A−Dは、抗VEGF抗体の精製について、Poros HS50、SPSFF、SO3 Monolith、及びMustang Sを使用したクロマトグラムを示す。
図8は、Poros HS50、Mustang S、SO3 monolith、及びSPSFFを使用してロードされた様々な量の産物(g/L CV又はMV)と共に、抗VEGF抗体のC/C0(Mab濃度)を示す。
図9は、SPSFF、Sartobind S、Poros HS50、Mustang S、及びSO3 monolithを使用して収集された抗VEGF抗体(g/L CV又はMV)を含んでなる様々な量の産物と共に、C/C0(CHOP濃度)を示す。
図10は、SPSFF、Poros HS50、Mustang S、及びSO3 monolithを使用して収集された抗VEGF抗体(g/L CV又はMV)を含んでなる様々な量の産物と共に、DNAの量(pg/mg)を示す。
図11は、SPSFF、Sartobind S、希釈Mabを用いるPoros HS50、Poros HS50、Mustang S、及びSO3 monolithを使用して収集された抗VEGF抗体(g/L CV又はMV)を含んでなる様々な量の産物と共に、C/C0(HMW濃度)を示す。
図12A−Bは、SPSFF、希釈Mabを用いるPoros HS50、Poros HS50、Mustang S、及びSO3 monolithを使用して収集された抗VEGF抗体(g/L CV又はMV)を含んでなる様々な量の産物と共に、C/C0(HMW1濃度)及びC/C0(HMW2濃度)を示す。
図13A−Eは、様々なpH及び塩濃度下で抗CD20抗体を含んでなる産物を使用した、樹脂(Poros HS50、SE HiCap、SPSFF、SPXL、及びCapto S)に結合した%HMWを示す。
図14A−Eは、様々なpH及び塩濃度下で抗CD20抗体を含んでなる産物を使用した、樹脂(Poros HS50、SE HiCap、SPSFF、SPXL、及びCapto S)に結合した%CHOPを示す。
図15は、Poros HS50及びCapto Sを使用して収集された抗CD20抗体(g/L CV)を含んでなる様々な量の産物と共に、C/C0(HMW濃度)を示す。
図16は、Poros HS50及びCapto Sを使用して収集された抗CD20抗体(g/L CV)を含んでなる様々な量の産物と共に、HMW(%)を示す。
図17は、Poros HS50及びCapto Sを使用して収集された抗CD20抗体(g/L CV)を含んでなる様々な量の産物と共に、C/C0(CHOP濃度)を示す。
図18は、Poros HS50及びCapto Sを使用して収集された抗CD20抗体(g/L CV)を含んでなる様々な量の産物と共に、蓄積CHOP(ppm)を示す。
図19A−Bは、抗VEGF抗体の精製について様々な流量下でSPSFFを使用した、ランタイム(図19A)及び産物ローディング体積(図19B)に対してプロットした、280nmで得られたUVトレースのクロマトグラムを示す。
図20は、様々な流量下でSPSFFを使用して収集された抗VEGF抗体(mg/mL CV)を含んでなる様々な量の産物のと共に、C/C0(Mab濃度)及びC/C0(CHOP濃度)を示す。
図21は、様々な流量下でSPSFFを使用して収集された抗VEGF抗体(mg/mL CV)を含んでなる様々な量の産物のと共に、DNA(pg/mg)の量を示す。
図22は、様々な流量下でSPSFFを使用して収集された抗VEGF抗体(g/L CV)を含んでなる様々な量の産物のと共に、C/C0(HMW濃度)を示す。
図23は、様々な流量下でPoros HS50を使用して収集された抗VEGF抗体(g/L CV)を含んでなる様々な量の産物のと共に、C/C0(HMW濃度(%))、C/C0(CHOP濃度(ppm))、及びDNAの量(pg/mg)を示す。
図24は、抗VEGF抗体の精製について、様々なローディング伝導率下でPoros HS50を使用したクロマトグラムを示す。
図25A−Bは、様々なローディング伝導率下で、抗VEGF抗体を含んでなる産物でロードされたPoros HS50を使用した、溶出(P1ピーク)からの溶出液及び洗浄(P2ピーク)からの溶出液のクロマトグラムを示す。
図26は、抗VEGF抗体の精製について、様々なローディング伝導率下でPoros HS50を使用してロードされた様々な量のCHOP(ug/mL CV)と共に、分画におけるCHOPの量(ppm)を示す。
図27は、様々な伝導率下でPoros HS50を使用して収集された抗VEGF抗体(mg/mL CV)を含んでなる様々な量の産物と共に、C/C0(HMW濃度)を示す。
図28A−Bは、様々なローディング伝導率及び様々な流量下で収集された抗VEGF抗体を含んでなる様々な量の産物と共に、DNAの量(pg/ml)を示す(異なるローディング伝導率に対し異なる量のロード中DNA(pg/mg))。
図29は、直線塩勾配溶出で溶出されるPoros HS50を使用して収集された抗VEGF抗体(mg/mL CV)を含んでなる様々な量の産物と共に、DNAの量(pg/mL)及び抗体濃度を示す。
図30は、4.6cm又は14.2cmの床高を有するPoros HS50を使用してロードされた抗VEGF抗体(gL CV)を含んでなる様々な量の産物と共に、C/C0(HMW濃度(%))、C/C0(CHOP濃度(ppm))、及びDNAの量(pg/mg)を示す。
図31A−Fは、様々なpH及び伝導率(バッファー塩としてNaAC又はグリシンHClを使用)下でCapto Adhere樹脂を使用した、抗VEGF抗体(FT分画中)、抗CD11a抗体、及び抗CD20抗体の%Mab回収を示す。
図32A−Fは、抗VEGF抗体、抗CD11a抗体、及び抗CD20抗体について、様々なpH及び伝導率(バッファー塩としてNaAC又はグリシンHClを使用)下でCapto Adhere樹脂を使用した、%HMW結合を示す。
図33A−Fは、抗VEGF抗体、抗CD11a抗体、及び抗CD20抗体について、様々なpH及び伝導率(バッファー塩としてNaAC又はグリシンHClを使用)下でCapto Adhere樹脂を使用した、%CHOP結合を示す。
図34は、抗CD11a抗体の精製について、連結Capto Adhereカラム及びPoros HS50カラムを使用したクロマトグラムを示す。
(発明の詳細な説明)
I.定義
「ポリペプチド」又は「タンパク質」なる用語は、鎖長がより高レベルの三次及び/又は四次構造をつくるのに十分であるアミノ酸の配列を意味する。よって、タンパク質は、そのような構造を持たないまたアミノ酸ベースの分子である「ペプチド」とは区別される。典型的には、ここで使用されるタンパク質は少なくとも約5−20kD、あるいは少なくとも約15−20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量を有するであろう。「ペプチド」は、一般には高レベルの三次及び/又は四次構造を示さないアミノ酸の配列を意味する。ペプチドは一般に約5kD未満の分子量を有している。
ここでの定義に包含されるポリペプチドの例は、哺乳動物タンパク質、例えばレニン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ウィルブランド因子などの凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲン活性化剤、例えばウロキナーゼ又はヒト尿素又は組織型プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子-α及びβ;エンケファリン分解酵素;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA-4等の細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又は神経増殖因子、例えばNGF-β;血小板誘導増殖因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α、及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む、TGF-β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP);CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばCA125(卵巣癌抗原)又はHER2、HER3又はHER4レセプター;イムノアドヘシン;及び上に列挙したタンパク質の何れかの断片及び/又は変異体、並びに例えば上に列挙したタンパク質の何れかを含むタンパク質に結合する抗体断片を含む抗体を含む。
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体)とは、ポリペプチドの純度が増加され、それがその天然環境に存在するより、及び/又は実験室条件下で最初に合成及び/又は増幅された時より純粋な形態で存在することを意味する。純度は相対用語であり、必ずしも絶対純度を意味するのではない。
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」と融合したポリペプチドを含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有し、その長さはそれが融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また好ましくは、タグポリペプチドは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8から50のアミノ酸残基(好ましくは、約10から20の残基)を有する。
ここでの目的に対する「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するポリペプチドの形態を意味し、その中で、「生物学的」活性とは、天然又は天然発生ポリペプチドが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力以外の、天然又は天然発生ポリペプチドによって引き起こされる生物機能(阻害又は刺激)を意味し、「免疫学的」活性とは、天然又は天然発生ポリペプチドが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力を意味する。
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全にブロック、阻害、又は中和する任意の分子が含まれる。同様に、「アゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子が含まれる。適切なアゴニスト又はアンタゴニスト分子には、特にアゴニスト又アンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然ポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体等が含まれる。ポリペプチドのアゴニスト又アンタゴニストを同定する方法は、ポリペプチドと候補アゴニスト又アンタゴニスト分子を接触させ、そして通常はポリペプチドに関連している一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することが含まれ得る。
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、補体存在下における標的細胞の溶解に関する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1補体が同族抗原と複合した分子(例えばポリペプチド(例えば抗体))に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているようにして実施することができる。
興味の抗原、例えば腫瘍関連ポリペプチド抗原標的「に結合する」ポリペプチドは、十分な親和性で抗原に結合するものであり、ポリペプチドは、抗原を発現している細胞又は組織を標的にするのに診断的及び/又は治療的薬剤として有用であり、他のポリペプチドと有意には交差反応しない。このような実施態様では、「非標的」ポリペプチドに対するポリペプチドの結合の程度は、それの特定標的ポリペプチドに対するポリペプチドの結合の約10%未満であり、蛍光標識細胞分取(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)によって決定される。
標的分子に対するポリペプチドの結合に関して、特定ポリペプチド又は特定ポリペプチド標的上のエピトープ「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的である」なる用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般的には結合活性を持たない類似な構造の分子であるコントロール分子の結合と比較した、分子の結合を決定することによって測定できる。例えば、特異的結合は、標的と類似なコントロール分子、例えば過剰な非標識標的を用いる競合によって決定できる。この場合、プローブに対する標識表記の結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害されたら、特異的結合が示される。
「腫瘍細胞の増殖を阻害する」ポリペプチド、又は「増殖阻害」ポリペプチドは、癌細胞の測定可能な程の増殖阻害を引き起こすものである。一実施態様では、増殖阻害は、細胞培養で約0.1から30μg/ml又は約0.5nMから200nMのポリペプチド濃度で測定することができ、増殖阻害は、ポリペプチドへの腫瘍細胞の曝露後1−10日で確かめられる。約1μg/kg〜約100mg/kg体重でのポリペプチドの投与が、ポリペプチドの最初の投与から約5日〜約3ヶ月内に、好ましくは約5〜約30日内に、腫瘍サイズ又は腫瘍細胞増殖における低減をもたらす場合に、ポリペプチドはインビボにおいて増殖阻害性である。
「アポトーシスを誘導する」ポリペプチドは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)により決定されるプログラム細胞死を誘発するものである。好ましくは、細胞は腫瘍細胞、例えば前立腺、***、卵巣、胃、子宮内膜、肺、腎臓、結腸、膀胱細胞である。アポトーシスに伴う細胞のイベントを評価するために種々の方法が利用できる。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位置をアネキシン結合により測定することができ;DNA断片化はDNAラダーリングにより評価することができ;DNA断片化に伴う細胞核/クロマチン凝縮は低二倍体細胞の何らかの増加により評価することができる。好ましくは、アネキシン結合アッセイにおいて、アポトーシスを誘発するポリペプチドは、未処理細胞の約2〜50倍、好ましくは約5〜50倍、最も好ましくは約10〜50倍のアネキシン結合を誘発するという結果を生じるものである。
「細胞死を誘発する」ポリペプチドは、生細胞を生育不能にするものである。好ましくは、細胞は癌細胞であり、例えば***、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸、甲状腺、膵臓又は膀胱細胞である。インビトロ細胞死は、抗体依存性細胞媒介細胞障害(ADCC)又は補体依存性障害(CDC)によって誘導される細胞死を区別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の無い状態で確かめられうる。従って、細胞死に関するアッセイは、熱不活性化血清(すなわち、補体の無い)を用いて、免疫エフェクター細胞が無い状態で実施されうる。ポリペプチドが細胞死を誘発できるか否か決定するために、ヨウ化物(PI)、トリパンブルー(Moore et al. Cytotechnology 17:1-11 (1995)を参照)又は7AADの取込みによって評価される膜完全性の欠失が、未処理細胞と比較して評価されうる。
「抗体」なる用語はここでは最も広い意味で使用され、特にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を呈する限り抗体断片を包含する。「免疫グロブリン」(Ig)なる用語は、ここにおいて抗体と互換可能に使用される。
抗体は全て免疫グロブリン折り畳みに基づいて様々な構造を有する天然に生じる免疫グロブリン分子である。例えば、IgG抗体は、機能的抗体を形成するためにジスフフィド結合している2つの「重」鎖と2つの「軽」鎖を有している。各重鎖と軽鎖自体は「定常」(C)及び「可変」(V)領域を含む。V領域は抗体の抗原結合特異性を決定する一方、C領域は免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において構造的サポートを与え機能する。抗体の抗原結合特異性又は抗体の抗原結合断片は、抗体が特定の抗原に特異的に結合する能力である。
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造的特性によって決定される。可変性は可変ドメインの110アミノ酸スパンに均一に分布はしていない。代わりに、V領域は、それぞれ9−12アミノ酸長である「高頻度可変領域」と呼ばれる極端に可変性の短い領域によって分離された15−30のアミノ酸のフレームワーク領域(FRs)と呼ばれる相対的に不変の伸展からなる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR領域を含み、多くの場合、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する3つのCDRによって連結されたβシート配置になっている。各鎖の高頻度可変領域はFR領域に極めて近接して保持されており、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に関与している(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合には直接には関与しないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。
各V領域は典型的には3つの相補性決定領域(それぞれが「高頻度可変ループ」を含む「CDR」)と4つのフレームワーク領域を含む。特定の所望の抗原に対して実質的な親和性で結合するのに必要とされる最少の構造単位である抗原結合部位は、従って3つのCDRと、適切な高次構造でCDRを保持し提示するためにそれらの間に散在した少なくとも3つ、好ましくは4つのフレームワーク領域を含むであろう。古典的な4本鎖抗体は、VH及びVLドメインが協働して定める抗原結合部位を有している。ある種の抗体、例えばラクダ及びサメ抗体は、軽鎖を欠き、重鎖のみによって形成される結合部位に依存する。結合部位が重鎖又は軽差によって形成され、VH及びVLの間に協働がない単一ドメイン操作免疫グロブリンを調製することができる。
「可変」なる用語は、可変ドメインのある部分が、抗体間で配列が広範囲に相違しているという事実を意味し、それぞれの特定の抗体のその特定の抗原への結合性及び特異性に使用される。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメインにわたって均一に分布しているのではない。それは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの双方において、高頻度可変領域と称される3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FRs)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する、3つの高頻度可変領域によって連結された、大きくはβシート配置を採る4つのFR領域をそれぞれ含む。各鎖の高頻度可変領域はFRにより他の鎖からの高頻度可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDを参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への抗体の関与を示す。
ここで使用される場合、「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合性を生じる抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、VLの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)及びVHの31−35B(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、VLの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及びVHの残基26−32(H1)、52A−55(H2)及び96−101(H3)(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含みうる。
「フレームワーク」又は「FR」残基はここに定義した高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異的抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれ、各々単一の抗原結合部位を持つ2つの同一な抗原結合断片、及び残りの「Fc」断片、その名称は容易に結晶化する能力を反映している、を生成する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋結合可能なF(ab')2断片が生成される。
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。この構造において、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用し、VH-VL二量体の表面において抗原結合部位を定める。全体として6つの超可変領域が、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含んでなるFvの半分)でさえ、全結合部位より低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を有する。
Fab断片はまた軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を有しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として産生された。抗体断片の他の化学結合もまた知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体には異なるクラスが割り当てられる。インタクトな抗体には5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、更にこれらの幾つかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。ある実施態様では、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それによりscFvが抗原結合に対して望ましい構造を形成するのが可能になる。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を意味し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH-VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成が不可能なリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは、例えば、欧州特許出願公開第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)により詳細に記載されている。
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、一般に少量で存在しうるモノクローナル抗体の生産中に生じうる可能な変異体を除いて同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物に対して、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンによって汚染されていない点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature 256, 495 (1975)により記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、あるいは例えば組換えDNA法によって作製することができる(例えば、米国特許第4816567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature 352:624-628(1991)及びMarks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
ここでのモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応配列に一致するか又は類似するが、鎖の残りは、他の種由来の又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片における対応配列に一致するか又は類似する「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5693780号)。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、上述のFR置換を除いて、ヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも一で、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
ここでの目的に関して、「インタクトな抗体」は、重及び軽可変ドメイン並びにFc領域を含んでなるものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。好ましくは、インタクトな抗体は、一又は複数のエフェクター機能を有する。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる。
「ネイキッド抗体」とは、細胞傷害性部分又は放射性標識などの異種性分子にコンジュゲートされていない(ここに定義されている)抗体である。
幾つかの実施態様では、「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因しうる生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fc受容体結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体のダウンレギュレーションが含まれる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。抗体は細胞障害細胞を「備えて」おり、これはこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al., PNAS (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。幾つかの実施態様では、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するために使用される。幾つかの実施態様では、FcRは天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRsに関しては、 Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); and de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRsはここでの「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母性IgGsが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性レセプターFcRn(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))も含まれる。
「逐次的」なる用語は、ここで使用される場合、方法の工程(a)及び(b)間に、クロマトグラフィー工程を持たないことを指す。
「連続的」なる用語は、ここで使用される場合、直接連結された陽イオン交換材料及び混合モード材料か、又は陽イオン交換及び混合モード材料間で連続的な流れを可能にする何らかの他の機構を有することを指す。
「混入物」とは、所望のポリペプチド産物とは異なる物質を指す。混入物には、限定するものではないが、宿主細胞物質、例えばCHOP;浸出プロテインA;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集体又は誘導体;他のポリペプチド;内毒素;ウイルス性混入物;細胞培養培地成分等が含まれる。
ここにおいて値又はパラメーターへの「約」の言及は、その値又はパラメーター自体に対するバリエーションを含む(述べる)。例えば、「約X」を指す説明は、「X」の説明を含む。
ここにおいて、及び添付の請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「or」、及び「the」は、文脈が明らかに他を指さない限り複数系を含む。ここに記載されている発明の態様及びバリエーションは、態様及びバリエーション「から成る」及び/又は「から本質的に成る」を含む。
II.精製の方法
ここで提供されるのは、ポリペプチド及び少なくとも一つの混入物を含んでなる組成物からポリペプチドを精製する方法である。特に、方法は、オーバーロード陽イオン交換材料を使用することを含む。例えば、方法は、陽イオン交換材料1Lあたり約150gより高いローディング密度でローディングすることを含む。
ここで提供されている精製方法は、混合モード材料にローディングすることを更に含みうる。例えば、幾つかの実施態様では、方法は、(a)組成物を、陽イオン交換材料1Lあたり約150gより高いローディング密度でローディングする工程;及び(b)陽イオン交換材料から回収された組成物を、混合モード材料にローディングする工程の逐次工程を含む。別の例では、幾つかの実施態様では、方法は、(a)組成物を混合モード材料にローディングする工程;及び(b)混合モード材料から回収された組成物を、陽イオン交換材料1Lあたり約150gより高いローディング密度でローディングする工程の逐次工程を含む。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、逐次工程は連続的である。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、逐次工程は非連続的である。幾つかの実施態様では、連続的精製は、同じ流量、伝導率、及び/又はpHを使用する。
上記の方法は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー材料にローディングする工程を更に含みうる。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー材料にローディングする工程は一般的に、必ずしもではないが、他のクロマトグラフィー工程(一又は複数)の前に実施される。幾つかの実施態様では、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー材料へのローディングの工程は、オーバーロード陽イオン交換及び混合モード(任意の順)クロマトグラフィーの逐次工程と組合せられうる。幾つかの実施態様では、逐次工程は連続的である。幾つかの実施態様では、連続的精製は、同じ流量、伝導率、及び/又はpHを使用する。
陽イオン交換材料は負に帯電した固相であり、固相上又は中を通過する水溶液における陽イオンとの交換のためのフリー陽イオンを有する。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、陽イオン交換材料は、膜、モノリス、又は樹脂でありうる。好ましい実施態様では、陽イオン交換材料は樹脂でありうる。陽イオン交換材料は、カルボン酸官能基又はスルホン酸官能基、例えば、限定するものではないが、スルホン酸、カルボン酸、カルボキシメチルスルホン酸、スルホイソブチル、スルホエチル、カルボキシル、スルホプロピル、スルホニル、スルホキシエチル、又はオルトリン酸を含みうる。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、陽イオン交換材料は、一般的なクロマトグラフィー材料又は対流クロマトグラフィー材料を使用しうる。一般的なクロマトグラフィーは、例えば分散(perfusive)材料(例えばポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂)及び拡散性材料(例えば架橋アガロース樹脂)を含む。幾つかの実施態様では、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂は、Poros HS樹脂でありうる。Poros HS樹脂は、Poros HS 50μm又はPoros HS 20μm粒子でありうる。幾つかの実施態様では、架橋アガロース樹脂は、sulphopropyl-Sepharose Fast Flow(「SPSFF」)樹脂でありうる。対流クロマトグラフィー材料は、膜(例えば、ポリエーテルスルホン)又はモノリス材料(例えば、架橋ポリマー)でありうる。ポリエーテルスルホン膜は、Mustang Sでありうる。架橋ポリマーモノリス材料は、架橋ポリ(グリシジル メタクリレート-co-エチレン ジメタクリレート)、例えば、monolith SO3でありうる。
陽イオン交換材料の例は当分野で知られており、限定するものではないが、Mustang S、Sartobind S、SO3 Monolith、S Ceramic HyperD、Poros HS50、Poros HS20、SPSFF、SP-Sepharose XL(SPXL)、CM Sepharose Fast Flow、Capto S、Fractogel Se HiCap、Fractogel SO3、又はFractogel COOを含む。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、陽イオン交換材料はPoros HS50である。幾つかの実施態様では、Poros HS樹脂は、Poros HS 50μm又はPoros HS 20μm粒子でありうる。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、混合モード材料は、次の機能:陰イオン交換、水素結合、及び疎水性相互作用の内一又は複数が可能な官能基を含む。幾つかの実施態様では、混合モード材料は、陰イオン交換及び疎水性相互作用が可能な官能基を含む。混合モード材料は、リガンドとしてN-ベンジル-N-メチル エタノール アミン、4-メルカプト-エチル-ピリジン、ヘキシルアミン、又はフェニルプロピルアミンを含み得、又は架橋ポリアリルアミンを含みうる。混合モード材料の例は、Capto-Adhere、MEP HyperCel、HEA HyperCel又はPPA HyperCel樹脂又はChromaSorb膜を含む。幾つかの実施態様では、混合モード材料はCapto-Adhere樹脂である。
幾つかの実施態様では、ここで提供されるのは、ポリペプチドを該ポリペプチド及び少なくとも一つの混入物を含んでなる組成物から精製する方法であって、該方法が(i)又は(ii)を含む方法である:(i)(a)組成物を、樹脂1Lあたり約150gより高いローディング密度でPoros HS50にローディングする工程;及び(b)Poros HS50から回収された組成物をCapto-Adhereにローディングする工程の逐次工程;又は(ii)(a)組成物をCapto-Adhereにローディングする工程;及び(b)Capto-Adhereから回収された組成物を、樹脂1Lあたり約150gより高いローディング密度でPoros HS50にローディングする工程の逐次工程。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、組成物は、陽イオン交換材料1Lあたり約150g、200g、300g、400g、500g、550g、600g、650g、700g、800g、900g、又は1000gの何れかより高いローディング密度で、陽イオン交換材料にロードされる。組成物は、陽イオン交換材料1Lあたり約150g及び2000g、150g及び1500g、150g及び1000g、200g及び1500g、300g及び1500g、400g及び1000g、又は500g及び1000gの何れかの間のローディング密度で、陽イオン交換材料にロードされうる。幾つかの実施態様では、組成物は、陽イオン交換材料1Lあたり約150g、300g、500g、550g、600g、650g、700g、800g、850g、900g、1000g、1500g、又は2000gの何れかのローディング密度で、陽イオン交換材料にロードされる。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、組成物は、混合モード材料1Lあたり約25g、50g、75g、100g、150g、200g、300g、400g、500g、又は550gの何れかより高いローディング密度で、混合モード材料にロードされる。組成物は、混合モード材料1Lあたり約25g及び1000g、25g及び700g、又は25g及び500gの何れかの間のローディング密度で混合モード材料にロードされる。
様々なバッファーが、例えば、バッファーの所望のpH、バッファーの所望の伝導率、興味のタンパク質の特性、及び精製方法に依存して用いられうる。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、方法はバッファーを使用することを含む。バッファーは、ローディングバッファー、平衡バッファー、又は洗浄バッファーでありうる。幾つかの実施態様では、一又は複数のローディングバッファー、平衡バッファー、及び/又は洗浄バッファーは同じである。幾つかの実施態様では、ローディングバッファー、平衡バッファー、及び/又は洗浄バッファーは異なる。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、バッファーは塩を含む。バッファーは、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はその混合を含みうる。幾つかの実施態様では、バッファーは塩化ナトリウムバッファーである。幾つかの実施態様では、バッファーは酢酸ナトリウムバッファーである。
ロードとは、ここで使用される場合、クロマトグラフィー材料にロードされる組成物である。ローディングバッファーは、興味のポリペプチドを含んでなる組成物を、クロマトグラフィー材料にロードするために使用されるバッファーである。クロマトグラフィー材料は、精製される組成物をローディングするより前に、平衡バッファーで平衡化されうる。洗浄バッファーは、組成物をクロマトグラフィー材料にローディングした後、固相から興味のポリペプチドを溶出するために使用される。
伝導率とは、2つの電極間に電流を伝導する、水溶液の能力を指す。溶液中では、電流はイオン輸送によって流れる。従って、水溶液中に存在するイオンの量が増すとともに、溶液はより高い伝導率を有するだろう。伝導率の測定の基本単位は、ジーメンス(又はモー(mho))、モー(mS/cm)であり、導電率計、例えば様々なモデルのOrion導電率計を使用して測定できる。電気伝導率は電流を運ぶ溶液中におけるイオンの能力であるため、溶液の伝導率は、その中のイオンの濃度を変化させることによって変更されうる。例えば、溶液中における緩衝剤の濃度及び/又は塩(例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又は塩化カリウム)の濃度は、所望の伝導率を得るために変更されうる。好ましくは、様々なバッファーの塩濃度が、所望の伝導率を得るために変更される。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、伝導率は、約2mS/cm、5mS/cm、7.5mS/cm、又は10mS/cmの何れかより大きい伝導率を有する。伝導率は、約2mS/cm及び25mS/cm、2mS/cm及び10mS/cm、3mS/cm及び8mS/cm、2mS/cm及び6mS/cm、4mS/cm及び6mS/cm、又は2mS/cm及び4mS/cmの何れかの間でありうる。幾つかの実施態様では、伝導率は、約2mS/cm、3mS/cm、4mS/cm、5mS/cm、6mS/cm、8mS/cm、又は10mS/cmの何れかである。一態様では、伝導率は、ローディングバッファー、平衡バッファー、及び/又は洗浄バッファーの伝導率である。幾つかの実施態様では、一又は複数のローディングバッファー、平衡バッファー、及び洗浄バッファーの伝導率は同じである。幾つかの実施態様では、ローディングバッファーの伝導率は、洗浄バッファー及び/又は平衡バッファーの伝導率と異なる。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、バッファーは、約10、9、8、7、又は6の何れか未満のpHを有する。バッファーは、約3及び10、4及び8、4及び6、又は5及び6の何れかの間のpHを有しうる。幾つかの実施態様では、pHは約4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、又は8の何れかである。pHは、ローディングバッファー、平衡バッファー、又は洗浄バッファーのpHでありうる。幾つかの実施態様では、一又は複数のローディングバッファー、平衡バッファー、及び洗浄バッファーのpHは同じである。幾つかの実施態様では、ローディングバッファーのpHは、平衡バッファー及び/又は洗浄バッファーのpHと異なる。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、流量は、約50CV/時、40CV/時、又は30CV/時の何れか未満である。流量は、約5CV/時及び50CV/時、10CV/時及び40CV/時、又は18CV/時及び36CV/時の何れかの間でありうる。幾つかの実施態様では、流量は、約9CV/時、18CV/時、25CV/時、30CV/時、36CV/時、又は40CV/時の何れかである。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、流量は、約100cm/時、75cm/時、又は50cm/時の何れか未満である。流量は、約25cm/時及び150cm/時、25cm/時及び100cm/時、50cm/時及び100cm/時、又は65cm/時及び85cm/時の何れかの間でありうる。流量は、陽イオン交換材料に対する流量、又は混合モード材料に対する流量でありうる。幾つかの実施態様では、陽イオン交換材料に対する流量は、混合モード材料に対する流量と同じである。幾つかの実施態様では、陽イオン交換材料に対する流量は、混合モード材料に対する流量と異なる。
床高は、使用されるクロマトグラフィー材料の高さである。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、床高は、約3cm、10cm、又は15cmの何れかより大きい。床高は、約3cm及び35cm、5cm及び15cm、3cm及び10cm、又は5cm及び8cmの何れかの間でありうる。幾つかの実施態様では、床高は、約3cm、5cm、10cm、又は15cmの何れかである。幾つかの実施態様では、陽イオン交換材料に対する床高は、混合モード材料に対する床高と同じである。幾つかの実施態様では、陽イオン交換材料に対する床高は、混合モード材料に対する床高と異なる。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、少なくとも一つの混入物は、何れか一又は複数のCHOP、侵出プロテインA、DNA、凝集タンパク質、細胞培養培地成分、ゲンタマイシン、及びウィルス混入物である。
CHOPは、宿主細胞からのタンパク質、すなわちチャイニーズハムスター卵巣タンパク質である。CHOPの量は、酵素結合免疫吸着測定法(「ELISA」)又はメソスケールディスカバリー(「MSO」)によって測定されうる。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、CHOPの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の何れかより大で低減される。CHOPの量は、約10%及び99%、30%及び95%、30%及び99%、50%及び95%、50%及び99%、75%及び99%、又は85%及び99%の何れかの間で低減されうる。幾つかの実施態様では、CHOPの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%の何れかで低減される。幾つかの実施態様では、低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物におけるCHOPの量を、精製工程(一又は複数)前の組成物におけるCHOPの量と比較することによって決定される。
凝集ポリペプチドは、高分子量(HMW)タンパク質でありうる。幾つかの実施態様では、凝集ポリペプチドは、興味のポリペプチドの多量体である。HMWは二量体、最高で8×モノマー、又は興味のポリペプチドより大でありうる。凝集タンパク質(例えばHMW)を測定する方法は、当分野で知られており、実施例セクションに記載されている。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、凝集タンパク質の量は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の何れかより大で低減される。凝集タンパク質の量は、約10%及び99%、30%及び95%、30%及び99%、50%及び95%、50%及び99%、75%及び99%、又は85%及び99%の何れかの間で低減されうる。凝集タンパク質の量は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の何れかで低減されうる。幾つかの実施態様では、低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物における凝集タンパク質の量(例えばHMW)を、精製工程(一又は複数)前の組成物における凝集タンパク質の量(例えばHMW)と比較することによって決定される。
浸出プロテインAは、それが結合している固相から脱離又は洗浄されたプロテインAである。例えば、浸出プロテインAは、プロテインAクロマトグラフィーカラムから浸出しうる。プロテインAの量は、例えばELISAによって測定されうる。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、浸出プロテインAの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の何れかより大で低減される。浸出プロテインAの量は、約10%及び99%、30%及び95%、30%及び99%、50%及び95%、50%及び99%、75%及び99%、又は85%及び99%の何れかの間で低減されうる。幾つかの実施態様では、浸出プロテインAの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の何れかで低減される。幾つかの実施態様では、低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物における浸出プロテインAの量を、精製工程(一又は複数)前の組成物における浸出プロテインAの量と比較することによって決定される。
DNA、例えばCHO細胞DNAを測定する方法は、当分野で知られており、実施例セクションに記載されている。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、DNAの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の何れかより大で低減される。DNAの量は、約10%及び99%、30%及び95%、30%及び99%、50%及び95%、50%及び99%、75%及び99%、又は85%及び99%の何れかの間で低減されうる。DNAの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%の何れかで低減されうる。幾つかの実施態様では、低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物におけるDNAの量を、精製工程(一又は複数)前の組成物におけるDNAの量と比較することによって決定される。
細胞培養培地成分とは、細胞培養培地に存在する成分を指す。細胞培養培地は、細胞を収集する時の細胞培養培地でありうる。幾つかの実施態様では、細胞培養培地成分はゲンタマイシンである。ゲンタマイシンの量は、ELISAによって測定されうる。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、細胞培養培地成分の量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の何れかより大で低減される。細胞培養培地成分の量は、約10%及び99%、30%及び95%、30%及び99%、50%及び95%、50%及び99%、75%及び99%、又は85%及び99%の何れかの間で低減されうる。幾つかの実施態様では、細胞培養培地成分の量はは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は98%の何れかで低減される。幾つかの実施態様では、低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物における細胞培養培地成分の量を、精製工程(一又は複数)前の組成物における細胞培養培地成分の量と比較することによって決定される。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、方法は、ここに記載されている何れかのクロマトグラフィー工程より前又は後に、一又は複数の精製工程を更に含みうる。幾つかの実施態様では、方法は、ポリペプチドを含んでなる組成物を、工程(a)及び(b)の前又は後に一又は複数の更なる精製工程に課すことを更に含む。他の精製手順は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー;ゲル濾過クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィーゲル電気泳動;透析;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカにおけるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;及びポリペプチドのエピトープタグ形態を結合する金属キレートカラムを含む。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、方法は、精製されたポリペプチドを回収することを更に含む。幾つかの実施態様では、精製ポリペプチドは、ここに記載されている何れかの精製工程から回収される。クロマトグラフィー工程は、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、又はプロテインAクロマトグラフィーでありうる。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、方法は、精製方法の精製されたポリペプチドを薬学的に許容可能な担体と組み合わせることを更に含む。
III.ポリペプチド
ポリペプチドは、ポリペプチドを精製する何れかの方法における使用、及びここに記載されている方法によって精製されたポリペプチドを含んでなる製剤のために提供される。
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは治療用ポリペプチドである。治療ポリペプチドは、腫瘍細胞の増殖を阻害、アポトーシスを誘発、及び/又は細胞死を誘発しうる。幾つかの実施態様では、ポリペプチドはアンタゴニストである。幾つかの実施態様では、ポリペプチドはアゴニストである。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは抗体である。
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、約5,000ダルトン、10,000ダルトン、15,000ダルトン、25,000ダルトン、50,000ダルトン、75,000ダルトン、100,000ダルトン、125,000ダルトン、又は150,000ダルトンの何れかより大きい分子量を有する。ポリペプチドは、約50,000ダルトン〜200,000ダルトン又は100,000ダルトン〜200,000ダルトンの何れかの間の分子量を有しうる。あるいは、ここにおける使用のためのポリペプチドは、約120,000ダルトン又は約25,000ダルトンの分子量を有する。
pIは等電点であり、特定の分子又は表面が正味電荷を保有していないpHである。ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、ポリペプチドのpIは、約6〜10、7〜9、又は8〜9の何れかの間でありうる。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、約6、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10の何れかのpIを有する。
ここに記載されている方法を使用して精製されるポリペプチドは一般的に、組換え技術を使用して産生される。組換えタンパク質の産生方法は、例えば米国特許第5,534,615号及び同第4,816,567号に記載され、出典明記によりここに援用する。幾つかの実施態様では、興味のタンパク質は、CHO細胞において産生される(例えばWO94/11026を参照)。組換え技術を使用する場合、ポリペプチドは細胞内で、細胞膜周辺空間において、又は培地に直接分泌されて産生されうる。
ポリペプチドは培養培地から、又は宿主細胞溶解物から回収されうる。ポリペプチドの発現において使用される細胞は、様々な物理的又は化学的手段、例えば凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破砕、又は細胞溶解剤によって破損されうる。ポリペプチドが細胞内で産生される場合、第一工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carter等, Bio/Technology 10: 163-167 (1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌されたポリペプチドの単離方法を記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間解凍する。細胞細片は遠心分離で除去できる。ポリペプチドが培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のポリペプチド濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の増殖を防止してもよい。
(A)抗体
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、ポリペプチドを精製する何れかの方法、及びここに記載されている方法によって精製されるポリペプチドを含んでなる製剤における使用のためのポリペプチドは抗体である。
抗体の分子標的は、CDタンパク質及びそれらのリガンド、例えば、限定するものではないが:(i)CD3、CD4、CD8、CD19、CD11a、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、及びCD79β(CD79b);(ii)ErbB受容体ファミリーのメンバー、例えばEGF受容体、HER2、HER3又はHER4受容体;(iii)細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びv/3インテグリン、そのアルファ又はベータサブユニットを含む(例えば抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);(iv)増殖因子、例えばVEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子,7等;及び(v)細胞表面及び膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)、例えば米国特許第7,521,541号に記載されているもの等を含む。
他の例示的抗体は、限定するものではないが、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗HER-2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl-2抗体、抗E-カドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15-3抗体、抗CA19-9抗体、抗c-erbB-2抗体、抗P-糖タンパク抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras腫瘍性タンパク質抗体、抗LewisX抗体、抗Ki-67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c-myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパ軽鎖抗体、抗ラムダ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異的抗原抗体、抗S-100抗体、抗タウ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体及び抗Tn抗原抗体から選択されるものを含む。
(i)ポリクローナル抗体
幾つかの実施態様では、抗体はポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物において産生される。免疫化される種において免疫原性であるポリペプチド、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はRとR1が異なったアルキル基であるR1N=C=NRにより結合させることが有用でありうる。
動物を、例えばポリペプチド又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3体積と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、動物を、完全フロイントアジュバントに入れた元の量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。幾つかの実施態様では、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったポリペプチドにコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたポリペプチド融合体として組換え細胞培養中で作製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
(iii)モノクローナル抗体
幾つかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られる、すなわち、その集団を構成する個々の抗体が、モノクローナル抗体の生産中に生じ、一般には少量で存在する可能な変異体を除いて、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。よって、「モノクローナル」との修飾語は、離散した又はポリクローナル抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。
モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターをここに記載されるようにして免疫し、免疫化に用いられるポリペプチドと特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いてミエローマ細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 590-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親のミエローマ細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親のミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含むであろう(HAT培地)。
幾つかの実施態様では、ミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性であるものである。これらの中でも、幾つかの実施態様では、ミエローマ株化細胞は、マウスミエローマ系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。幾つかの実施態様では、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定される。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson等, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード解析によって決定されうる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が含まれる。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばポリペプチドA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティクロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)直ぐに分離され配列決定される。幾つかの実施態様では、ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンポリペプチドを産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はミエローマ細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説文献は、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262 (1993)及びPluckthun, Immunol. Revs., 130:151-188 (1992)を含む。
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して作製される抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用するマウス及びヒト抗体のそれぞれの単離を記述している。次の刊行物は、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生産(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783 (1992))、並びに非常に大きいファージライブラリーを構築するための組合せの感染及びインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc. Acids. Res., 21:2265-2266 (1993))を記述している。よって、これらの技術はモノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替法である。
DNAは、また例えばヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc. Nat. Acad. Sci., USA, 81:6851 (1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることによって、修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する一つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位を含むキメラ二価抗体がつくり出される。
ここに記載されている何れかの方法の幾つかの実施態様では、抗体はIgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMである。幾つかの実施態様では、抗体はIgGモノクローナル抗体である。
(iv)ヒト化抗体
幾つかの実施態様では、抗体はヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。幾つかの実施態様では、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には幾らかの高頻度可変領域残基及び場合によっては幾らかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽鎖又は重鎖の可変領域の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、方法の幾つかの実施態様では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これら表示を調べることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
(v)ヒト抗体
幾つかの実施態様では、抗体はヒト抗体である。ヒト化のための別法として、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化時に産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993);Bruggerman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);及び米国特許第5591669号、同第5589369号及び同第5545807号を参照のこと。
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty等, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージ、例えばM13又はfdの大きい又は小さいコートポリペプチド遺伝子の何れかにおいてインフレームでクローニングされる。糸状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含んでいるので、抗体の機能特性に基づく選択により、その特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性の幾つかを模倣する。ファージディスプレイは多様な形式で実施されうる;その概説については、例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントの幾つかの供給源がファージディスプレイのために使用されうる。Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小さいランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の多様な配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築することができ、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイを、Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って、単離することができる。また米国特許第5565332号及び同第5573905号を参照のこと。
ヒト抗体はまたインビトロ活性化B細胞によって産生させることもできる(米国特許第5567610号及び同第5229275号を参照)。
(vi)抗体断片
幾つかの実施態様では、抗体はヒト抗体断片である。抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照のこと)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上で検討した抗体ファージライブラリーから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')2断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法によれば、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の技術は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性でありうる。
幾つかの実施態様では、ここに記載されている抗体の断片が提供される。幾つかの実施態様では、抗体断片は抗原結合断片である。幾つかの実施態様では、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv、Fv、及びダイアボディから成る群から選択される。
(vii)二重特異性抗体
幾つかの実施態様では、抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、二重特異性抗体結合アームは、細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと組み合わされうる。二重特異性抗体は完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作製する方法は当該分野において知られている。完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の手順が国際公開第93/8829号及びTraunecker等、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
異なったアプローチ法によれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。幾つかの実施態様では、融合は、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとである。幾つかの実施態様では、軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が融合体の少なくとも一つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合体をコードするDNAと、所望されるならば、免疫グロブリン軽鎖が別個の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物中に同時形質移入される。これは、構築に使用される3つのポリペプチド鎖の不等の比が最適な収率をもたらす実施態様において3つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に多大な柔軟性をもたらす。しかしながら、等しい比の少なくとも二つのポリペプチド鎖の発現が高収率となるとき、又は比が特に意義を持たない場合に二つ又は三つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を一つの発現ベクターに挿入することができる。
このアプローチ法の幾つかの実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照のこと。
米国特許第5731168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセントを最大にすることができる。幾つかの実施態様では、界面は抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的な「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第二の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体のような不要の他の最終産物に対してヘテロ二量体の収量を増大させるメカニズムが提供される。
二特異性抗体は、架橋又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの一方の抗体がアビジンと結合され、他方がビオチンと結合されうる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療(国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373号、及び欧州特許出願公開第03089号)等の用途が提案されてる。ヘテロコンジュゲート抗体は任意の簡便な架橋方法によって作製されうる。適切な架橋剤は当該分野でよく知られており、多くの架橋技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) はインタクトな抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作製し単離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelny等, J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法はまた抗体ホモ二量体の生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作製する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体を使用する二重特異性抗体断片の他の製造方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照のこと。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等 J.Immunol. 147:60(1991)。
(viii)多価抗体
幾つかの実施態様では、抗体は多価抗体である。多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも早く内部移行(及び/又は異化)されうる。ここで提供されている抗体は、3又はそれ以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であり得(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に産生せしめることができる。多価抗体は二量体化ドメインと3又はそれ以上の抗原結合部位を有しうる。好ましい二量体化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を有する(又はそれらからなる)。このシナリオにおいて、抗体はFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3又はそれ以上の抗原結合部位を有しているであろう。ここでの好ましい多価抗体は3ないし約8、好ましくは4の抗原結合部位を有する(又はそれらからなる)。多価抗体は少なくとも一つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を有し、ポリペプチド鎖は2又はそれ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを有し得、ここでVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域の一つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖は、VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を含みうる。ここでの多価抗体は好ましくは、少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドを更に含む。ここでの多価抗体は、例えば約2から約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを有しうる。ここで考察される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを有し、場合によってはCLドメインを更に有する。
(ix)他の抗体修飾
ここに提供されている抗体をエフェクター機能について修飾し、例えば抗体の抗体-依存細胞性細胞傷害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強ことが所望されうる。これは、抗体のFc領域における一又は複数のアミノ酸置換の導入によって達成されうる。あるいは又は加えて、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上したインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体-依存細胞性細胞傷害性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる(Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照)。
抗体の血清半減期を増加するために、US2006/0067930に記載されるようにアミノ酸変更が抗体に為され得、出典明記によりその全体を援用する。
(B)ポリペプチド変異体及び修飾
ここに記載されている抗体を含むポリペプチドのアミノ酸配列修飾は、ここに記載されているポリペプチド(例えば抗体)を精製する方法において使用されうる。
(i)変異体ポリペプチド
「ポリペプチド変異体」は、ポリペプチドの完全長天然配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、ポリペプチドの細胞外ドメイン(シグナルペプチド有無)と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するここに定義されているポリペプチド、好ましくは活性ポリペプチドを意味する。このようなポリペプチドは、例えば完全長の天然アミノ酸配列のN末端又はC末端に、一又は複数のアミノ酸残基が挿入又は欠失されたポリペプチドを含む。通常は、TATポリペプチド変異体は、完全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、ポリペプチドの細胞外ドメイン(シグナルペプチド有無)と比較して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性の何れかを有するだろう。場合によっては、変異体ポリペプチドは、天然ポリペプチド配列と比較して一以上の保存アミノ酸置換、あるいは天然ポリペプチド配列と比較して約2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の何れか以下の保存アミノ酸置換を有するだる。
変異体ポリペプチドは、例えば完全長天然ポリペプチドと比較した場合、N末端又はC末端で切断されているか、又は内部残基を欠如し得る。特定の変異体ポリペプチドは、所望の生物学的活性に必須でないアミノ酸残基を欠如しうる。切断、欠失、及び挿入を有するこれらの変異体ポリペプチドは、多くの一般的な方法の何れかによって調製されうる。所望の変異体ポリペプチドは、化学的に合成されうる。他の適切な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望の変異体ポリペプチドをコードする核酸断片を単離及び増幅することを含む。核酸断片の所望の終端を定めるオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて、5’及び3’プライマーで使用される。好ましくは、変異体ポリペプチドは、ここに記載されている天然ポリペプチドと少なくとも一つの生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を有するポリペプチドまでの長さに亘るアミノ末端融合及び/又はカルボキシ末端融合、並びに単一又は複数アミノ酸残基の配列内挿入を含む。端末挿入の例には、N末端メチオニル残基を持つ抗体、又は細胞傷害性ポリペプチドに融合された抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させるポリペプチド又は酵素への抗体のN末端又はC末端の融合が含まれる。
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/又は生物学的特性を向上することができれば望ましい。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、抗体核酸への適切なヌクレオチド変化の導入により、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失型、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終構成物が所望する特徴を有していれば、欠失、挿入及び置換をどのように組合せてもよい。アミノ酸変化はまた、ポリペプチド(例えば抗体)の翻訳後プロセスを変更し得、例えば糖鎖付加部位の数又は位置を変化させる。
どのアミノ酸残基が、所望の活性に悪影響をおよぼすことなく挿入、置換又は欠失されうるか決定するためのガイダンスは、ポリペプチドの配列を、相同の既知ポリペプチド分子と比較し、高相同性の領域に為されるアミノ酸配列変化の数を最小限にすることによって見出されうる。
突然変異誘発に好ましい位置であるポリペプチド(例えば抗体)の所定の残基又は領域の同定に有益な方法は、Cunningham及びWells (1989) Science, 244:1081-1085に開示されているように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的となる残基又は残基の組が同定され(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電した残基)、中性の、又は負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)で置換され、アミノ酸の抗原との相互作用に影響を与える。ついで、置換に対する機能的感受性を示しているそのアミノ酸位置を、置換の部位において又は置換の部位に対して、更なる又は他の変異体を導入することにより精密にする。よって、アミノ酸配列バリエーションを導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決定される必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を解析するために、標的コドン又は領域においてalaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を実施し、発現した抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
他のタイプの変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子中に、異なる残基で置換される少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。置換突然変異誘発について最も関心ある部位は高度可変領域を含むが、FR改変もまた考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して下の表1に示される。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1に「例示的置換」と名前を付けられるか、又はアミノ酸クラスに言及して更に下記するように、より実質的な変化が導入され得、生成物がスクリーニングされる。
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩の維持についてのその効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性に従ってグループ化することができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, 2版, pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1)無極性:Ala(A),Val(V),Leu(L),Ile(I),Pro(P),Phe(F),Trp(W),Met(M);
(2)無電荷極性:Gly(G),Ser(S),Thr(T),Cys(C),Tyr(Y),Asn(N),Gln(Q);
(3)酸性:Asp(D),Glu(E);
(4)塩基性:Lys(K),Arg(R),His(H)。
別法では、天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
抗体の適切な高次構造の維持に関与しない任意のシステイン残基も、一般的には、セリンと置換して、分子の酸化的安定性を改善して、異常な架橋を防ぐことができる。逆に、システイン結合をポリペプチドに付加して、その安定性を改善してもよい(特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般に、更なる開発のために選択される得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有するであろう。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用するアフィニティ成熟である。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位に全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このようにして生成された抗体変異体は、糸状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と標的の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体がひとたび生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択することができる。
ポリペプチドの他のタイプのアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。ポリペプチドは、非アミノ酸部分を含みうる。例えばポリペプチドはグリコシル化されうる。このようなグリコシル化は、宿主細胞又は宿主生物中においてポリペプチドの発現中に自然に生じ得、又はヒトの介入による故意の修飾でありうる。変更とは、ポリペプチドに見い出される一又は複数の糖鎖部分の欠失、及び/又はポリペプチドに存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、或いはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
他の修飾には、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
(ii)キメラポリペプチド
ここに記載されているポリペプチドは、他の異種性ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合されたポリペプチドを含んでなるキメラ分子を形成するように修飾されうる。幾つかの実施態様では、キメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとのポリペプチドの融合を含む。エピトープタグは一般的に、ポリペプチドのアミノ-又はカルボキシル-末端に置かれる。ポリペプチドのこのようなエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出できる。またエピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他のタイプのアフィニティーマトリックスを使用する親和性精製により、ポリペプチドが容易に精製されるのを可能にする。
別の実施態様では、キメラ分子は、免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域とのポリペプチドの融合を含みうる。キメラ分子の二価形態は、「イムノアドヘシン」と呼ばれる。
ここで使用される場合、「イムノアドヘシン」なる用語は、異種ポリペプチド(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを結合した抗体様分子を示す。構造的に、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち、「異種」である)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgM等の任意の免疫グロブリンから得ることができる。
好ましくはIg融合体は好ましくは、Ig分子内の少なくとも一つの可変領域の代わりに、可溶性(膜貫通ドメインの欠失又は不活性化)形態のポリペプチドの置換を含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。
(iii)ポリペプチドコンジュゲート
ポリペプチド製剤における使用のためのポリペプチドは、細胞毒性物質、例えば化学療法剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素、又はその断片)、又は放射性同位元素(すなわち放射性コンジュゲート)にコンジュゲートされうる。
このようなコンジュゲートの生成に有用な化学療法剤が使用されうる。また、使用されうる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。放射性コンジュゲートポリペプチドの生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。ポリペプチド及び細胞障害性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドのポリペプチドへの抱合のためのキレート剤の例である。
ポリペプチドと、一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、トリコセン(trichothene)、及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体のコンジュゲートが、ここで考察される。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する***阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された。合成マイタンシノール及びその誘導対及びアナログもまた考えられる。ポリペプチド-マイタンシノイドコンジュゲートを作成するための、当分野で知られた多くの連結基があり、例えば米国特許第5,208,020号に開示されているものを含む。連結基は、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施態様では、結合はメイタンシノール又はメイタンシノール類似体のC-3位で形成される。
他の興味のコンジュゲートは、一又は複数のカリチアマイシン分子にコンジュゲートされたポリペプチドを含む。抗生物質のカリチアマイシンファミリーは、pM以下の濃度で二本鎖DNA分解を生じることができる。カリチアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製は、例えば米国特許第5,712,374号を参照のこと。使用されうるカリチアマイシンの構造類似体は、限定するものではないが、γ1 I、α2 I、α3 I、N-アセチル-γ1 I、PSAG及びθ1 Iを含む。抗体がコンジュゲート可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よってポリペプチド(例えば抗体)媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
ここに記載されているポリペプチドとコンジュゲート可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)が含まれる
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、ポリペプチドと核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間のコンジュゲートでありうる。
また別の実施態様では、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために「受容体」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートさせ得、ここでポリペプチド-受容体コンジュゲートが患者に投与され、続いて除去剤を使用して循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞傷害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートした「リガンド」(例えばアビジン)が投与される。
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤)を活性抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性酵素にコンジュゲートさせてもよい。イムノコンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態にそれを転化するようにプロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
有用な酵素には、限定されるものではないが、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含むプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた当該分野で知られている酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤にプロドラッグを転化させるために使用することもできる。
(iv)他
ポリペプチドの他のタイプの共有結合的修飾は、ポリペプチドを、様々な非タンパク質ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのコポリマーの一つに結合することを含む。ポリペプチドはまた、例えばコアセルベーション技術又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Gennaro, A.R., Ed., (1990)に開示されている。
IV.製剤及び方法における使用のためのポリペプチドの取得
ここに記載されている精製の方法におけるポリペプチドは、組換え方法を含む当分野で良く知られている方法を使用して得られうる。以下のセクションは、これらの方法に関するガイダンスを提供する。
(A)ポリヌクレオチド
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAが含まれる。
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、限定するものではないが、ポリペプチドmRNAを保有し検出可能なレベルでそれを発現すると信じられている組織から調製されるcDNAライブラリーを含む、何れかの供給源から得られうる。従って、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得られることができる。ポリペプチドをコードする遺伝子はまた、ゲノムライブラリーから、又は既知の合成手順(例えば、自動核酸合成)によって得られうる。
例えば、ポリヌクレオチドは、軽鎖又は重鎖のような全免疫グロブリン分子鎖をコードしうる。完全な重鎖は、重鎖可変領域(VH)ばかりでなく重鎖定常領域(CH)を含み、これは典型的には3つの定常ドメイン:CH1、CH2及びCH3;及び「ヒンジ」領域を含む。ある状況では、定常領域の存在が望ましい。
ポリヌクレオチドによってコードされうる他のポリペプチドは、抗原結合抗体断片、例えば単一ドメイン抗体(「dAbs」)、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)2及び「ミニボディ」を含む。ミニボディは(典型的には)CH1及びCK又はCLドメインが切り取られた二価抗体断片である。ミニボディは一般的な抗体より小さいので、それらは臨床/診断用途では良好な組織浸透を達成するはずであるが、dAbsのような一価抗体断片よりも高い結合親和性を保持しなければならない二価である。従って、内容が矛盾しない限り、ここで使用される「抗体」なる用語は抗体分子全体ばかりでなく、上で検討したタイプの抗原結合抗体断片もまた包含する。好ましくは、コードされたポリペプチド中に存在する各フレームワーク領域は、対応するヒトアクセプターフレームワークに対して少なくとも一つのアミノ酸置換を含む。よって、例えば、フレームワーク領域は、アクセプターフレームワーク領域に対して、全体で3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15のアミノ酸置換を含みうる。
適切には、ここに記載されているポリヌクレオチドは単離及び/又は精製されうる。幾つかの実施態様では、ポリヌクレオチドは単離されたポリヌクレオチドである。
「単離されたポリヌクレオチド」なる用語は、分子がその通常の又は自然の環境から除去され又は分離されており、又はそれがその通常の又は自然の環境では存在しないような形で製造されたことを示すものである。ある実施態様では、ポリヌクレオチドは精製されたポリヌクレオチドである。精製されたという用語は、少なくとも幾らかの汚染分子又は物質が除去されたことを示すものである。
適切には、ポリヌクレオチドは、関連したポリヌクレオチドが組成物中に存在する優性な(つまり最も豊富な)ポリヌクレオチドを構成するように、実質的に精製される。
本発明は従ってここに記載された重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする挿入断片を含む組換え核酸が、ここに記載されている方法において使用されうる。定義では、そのような核酸は、コード化一本鎖核酸、上記コード化核酸とそれに対する相補的核酸からなる二重鎖核酸、又はこれらの相補的(一本鎖)核酸自体を含む。
修飾はまた抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインの外側に作製することもできる。そのような変異体核酸は、一又は複数のヌクレオチドが同じアミノ酸をコードする新しいコドンを有する他のヌクレオチドによって置き換えられるサイレント変異でありうる。そのような変異体配列は縮重配列でありうる。縮重配列は元々コードされていたアミノ酸配列の変化を生じないで他のヌクレオチドによって限られない数のヌクレオチドが置き換えられる点で遺伝暗号の意味内で変性される。そのような縮重配列は、重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインの最適な発現を得るために特定の宿主、特に酵母、最近又は哺乳動物細胞によって好まれるその異なった制限部位及び/又は特定のコドンの頻度のために有用でありうる。
ここに定義された特定の性質を有するポリペプチドのアミノ酸配列又はそのようなポリペプチドをコードする任意のヌクレオチド配列と配列同一性又は配列相同性の度合いを有する配列(以下「相同配列」と称す)。ここで、「ホモログ」なる用語は、対象のアミノ酸配列及び対象のヌクレオチド配列とあ所定の相同性を有している配列を意味する。ここで、「相同性」なる用語は、「同一性」と等しくできる。
幾つかの実施態様では、相同のアミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列は機能的活性を保持し及び/又は抗体の活性を亢進するポリペプチドをコードしなければならない。幾つかの実施態様では、相同配列は、対象配列と少なくとも約75、85、又は90%同一の何れかであ得、好ましくは少なくとも約95又は98%同一でありうるアミノ酸配列を含むものである。典型的には、相同体は対象アミノ酸配列と同じ活性部位等を含むであろう。相同性は類似性(つまり、類似の化学的性質/機能を有しているアミノ酸残基)によってもまた考慮されうるが、幾つかの実施態様では、配列同一性によって相同性を表現するのが好ましい。
本文脈において、相同配列は、ここに記載のポリペプチドをコードする核酸配列(対象配列)と少なくとも約75、85、又は90%同一であり、好ましくは少なくとも約95又は98%同一でありうるヌクレオチド配列を含むものである。典型的には、相同体は、対象配列と同じ活性部位等をコードする配列を含むであろう。相同性は類似性(つまり、類似の化学的性質/機能を有しているアミノ酸残基)によってもまた考慮されうるが、幾つかの実施態様では、配列同一性によって相同性を表現するのが好ましい。
これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位特異的)突然変異による調製、PCR突然変異誘発、及び前もって調製された変異体又は抗体の非変異型のカセット変異導入法を含む。
(B)ポリペプチドの発現
以下の説明は、主として、ポリペプチドコード化ポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによりポリペプチドを産生させる方法に関する。勿論、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてポリペプチドを調製することができると考えられている。例えば、適切なアミノ酸配列、又はその一部分を、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生成してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., サン フランシスコ, カリフォルニア(1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動を使用することによってインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(フォスター シティー, カリフォルニア)を用いて、製造者の指示によって実施してもよい。ポリペプチドの種々の部分を別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて所望するポリペプチドを生成させてもよい。
ここに記載のポリヌクレオチドは、ポリペプチドの産生のために発現ベクター(一又は複数)に挿入される。「コントロール配列」なる用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。コントロール配列は、限定するものではないが、プロモーター(例えば天然付随又は異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント、及び転写終結配列を含む。
ポリヌクレオチドは、他のポリヌクレオチド配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーの核酸は、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドの核酸に作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合した核酸配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
選択遺伝子成分− 一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換されたそれらの細胞の検出を可能にするために、選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性又はネオマイシン耐性)を含む(例えばUS4,704,362を参照)。幾つかの実施態様では、選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリン等の抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、(c)例えばバシラス菌に対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
選択技術の一例においては、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換したこれらの細胞は、抗薬物性を付与し、選択工程を生存するタンパク質を生産する。このような優性選択の例としては、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸又はハイグロマイシンが使用される。
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、ここに記載されている抗体をコードする核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することのできるもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びIII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である(例えばATCC CRL-9096)。
あるいは、ここに記載されているポリペプチドをコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選べるマーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地における細胞増殖により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照。
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb et al., Nature 282:39 (1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics 85:12 (1977)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、トリプトファンの不存在下における増殖による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠陥酵母株(ATCC 20,622あるいは 38,626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって補完される。
さらに、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる。あるいは、組換え子ウシのキモシンの大量生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology 8:135 (1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株からの、組換えによる成熟したヒト血清アルブミンを分泌する安定した複数コピー発現ベクターも開示されている。Fleer et al., Bio/Technology 9:968-975 (1991)。
シグナル配列成分− ポリペプチドは直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟ポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても産生される。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換されうる。酵母の分泌に関しては、天然シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又はWO90/13646に記載されているシグナルにより置換されうる。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
このような前駆体領域のDNAは、ここに記載されているポリペプチドをコードする核酸配列にリーディングフレームが結合される。
複製開始点− 発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にするポリヌクレオチド配列を含む。一般に、この配列はクローニングベクターにおいて、宿主染色体DNAとは独立にベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自律的複製配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である(SV40開始点が典型的には初期プロモーターを有しているため用いられる)。
プロモーター成分− 発現及びクローニングベクターは通常、宿主生体により認識され、ポリペプチドをコードする核酸に作用可能に結合するプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターは、phoAプロモーター、βラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含む。しかし、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するプロモータもまたポリペプチドをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
適切には、発現コントロール配列は、真核細胞宿主細胞(例えばCOS細胞−例えばCOS7細胞−又はCHO細胞)を形質転換又はトランスフェクトできるベクターにおける真核生物プロモーター系である。一旦ベクターが適切な宿主に組み込まれたら、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベルの発現、及び交差反応抗体の収集と精製に適した条件下に維持される。
真核生物に対してもプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子は、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるAT富化領域を有する。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモータはEP73657に更に記載されている。また酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのここに記載されているポリペプチドの転写は、例えば、ポリオーマウィルス、鶏痘ウイルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及び最も好ましくはサルウィルス40(SV40)等のウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、ヒートショックプロモーターによって、提供されるこのようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点をさらに含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、Hind III E制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主でDNAを発現する系が、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の変更例は米国特許第4,601,978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞におけるヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
エンハンサーエレメント成分− より高等の真核生物によるここに記載されているポリペプチドをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。哺乳動物の遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物のプロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、ポリペプチドコード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
転写終結成分− 真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026とそこに開示した発現ベクターを参照されたい。
ポリヌクレオチド配列(例えば、配列及び任意の発現コントロール配列をコードする可変重及び/又は可変軽鎖)を含むベクターは、よく知られた方法によって宿主細胞に転移され得、これは細胞宿主のタイプに依存して異なる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションが原核細胞に一般的に使用され、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、微粒子銃(biolistic)又はウィルスベーストランスフェクションが他の細胞宿主に使用されうる。(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 2nd ed., 1989)を参照のこと)。哺乳類細胞を形質転換するために使用される他の方法は、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、及びマイクロインジェクションの使用を含む。トランスジェニック動物の産生のために、導入遺伝子が受精卵母細胞にマイクロインジェクトされるか、又は胚性幹細胞のゲノムに組み込まれ得、このような細胞の核が除核卵母細胞に移される。
重鎖及び軽鎖を別個の発現ベクターにクローニングしたとき、ベクターを同時形質移入して発現させ、インタクトな免疫グロブリンのアセンブリを得る。ひとたび発現されると、全抗体、個々の軽鎖及び重鎖、又は他の免疫グロブリン形態を、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動等(一般的にはScopes, Protein Purification (Springer- Verlag, N.Y., (1982)を参照)を含む当該分野の標準的な手順に従って精製することができる。少なくとも約90から95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98から99%又はそれ以上の均一性が、薬学的用途のため、最も好ましい。
(C)コンストラクト
典型的には、コンストラクトは、適切な宿主におけるポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチド(一又は複数)の発現を可能にする発現ベクターである。コンストラクトは、例えば一又は複数の次のものを含みうる:宿主細胞において活性なプロモーター;一又は複数の制御配列、例えばエンハンサー;複製起点;及びマーカー、好ましくは選択可能マーカー。宿主は真核生物又は原核生物宿主でありうるが、真核生物(特に哺乳動物)宿主が好ましいであろう。適切なプロモーターの選択は明らかに、使用される宿主細胞にある程度依存するが、ヒトウイルス、例えばHSV、SV40、RSV等からのプロモーターを含みうる。数多くのプロモーターが当業者に知られている。
コンストラクトは、3つの軽鎖高頻度可変ループ又は3つの重鎖高頻度可変ループを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みうる。あるいは、ポリヌクレオチドは、3つの重鎖高頻度可変ループ及び適切な長さの適切に可動性のリンカーによって結合させられた3つの軽鎖高頻度可変ループを含むポリペプチドをコードしうる。他の可能性は、単一のコンストラクトが軽鎖ループを含むものと重鎖ループを含むものの2つの別個のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みうることである。別個のポリペプチドは独立に発現され得るか又は単一の共通のオペロンの一部を形成しうる。
コンストラクトは、一又は複数の調節特性、例えばエンハンサー、複製起点、及び一又は複数のマーカー(選択可能等)を含みうる。コンストラクトは、プラスミド、酵母人工染色体、酵母ミニ染色体の形態を取り得、又はウイルス、特に弱毒ウイルス又はヒトに対して非病原性の類似物のゲノムの全て又は一部に組み込まれうる。
コンストラクトは、哺乳動物、好ましくはヒトの患者に安全に投与するために簡便に製剤化されうる。典型的には、それらは複数のアリコートで提供され、各アリコートは少なくとも一の正常な成人ヒト患者の効果的な免疫化のために十分なコンストラクトを含む。
コンストラクトは液体又は固形形態で提供され得、好ましくは、使用前に滅菌された水が典型的には再水和させられる凍結乾燥粉末として提供される。
コンストラクトは、コンストラクトの投与に応じて(例えば特異的抗体力価によって測定して)患者の免疫応答を増大させる効果を有するアジュバント又は他の成分と共に製剤化されうる。
(D)ベクター
「ベクター」なる用語は発現ベクター及び形質転換ベクター及びシャトルベクターを含む。
「発現ベクター」なる用語はインビボ又はインビトロ発現可能なコンストラクトを意味する。
「形質転換ベクター」なる用語は、該種のものであり得、又は異なった種のものでありうる一実体から他の実体に移され得るコンストラクトを意味する。コンストラクトがある種から他の種へ移され得る場合、例えば大腸菌プラスミドから細菌、例えばバシラス属に移される場合、形質転換ベクターはしばしば「シャトルベクター」と呼ばれる。それは大腸菌プラスミドから植物のアグロバクテリウムへ移すことができるコンストラクトでさえありうる。
ベクターは、ポリペプチドの発現をもたらすために、下記のように適切な宿主細胞に形質転換され得る。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ウィルス粒子、又はファージの形態でありうる。適切な核酸配列が、様々な手順によってベクターに挿入されうる。一般的に、DNAは、当分野で知られている技術を使用して適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(一又は複数)に挿入される。一又は複数のこれらの要素を有する適切なベクターの構築は、当業者に知られている標準的なライゲーション技術を使用する。
ベクターは、例えば複製起点、場合によっては上記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター及び場合によってはプロモーターの制御因子を有するプラスミド、ウイルス又はファージベクターでありうる。
これらの発現ベクターは、エピソームとして又は宿主染色体DNAのインテグラル(integral)な部分として、宿主生物において典型的には複製可能である。
(E)宿主細胞
宿主細胞は細菌、酵母又は他の真菌細胞、虫細胞、植物細胞、又は哺乳類細胞等でありうる。
遺伝子的に操作されたトランスジェニック多細胞宿主生物が、ポリペプチドの産生に使用されうる。生物は、例えばトランスジェニック哺乳類動物(例えばトランスジェニックヤギ又はマウス系)でありうる。
適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物、例えば大腸菌などの腸内細菌科を含む。様々な大腸菌株が公的に入手可能であり、例えば大腸菌K12株MM294(ATCC 31,446);大腸菌X1776(ATCC 31,537);大腸菌株W3110(ATCC 27,325)及びK5 772(ATCC 53,635)である。他の適切な原核生物宿主細胞は、エスケリキア属等の腸内細菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチア・マルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバシリ・スブチリス(B. subtilis)及びバシリ・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、バシリリチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスなどを含む。これらの例は説明するものであり限定ではない。株W3110は、組換えポリヌクレオチド産物発酵に一般的な宿主株であるため、特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は、最低限量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、宿主の内因性ポリペプチドをコードする遺伝子に遺伝子変異をもたらすよう修飾され得、このような宿主の例は、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF-lac)169 degP ompT kanを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan’を有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を有する37D6である大腸菌W3110株40B4;及び変異ペリプラズムプロテアーゼを有する大腸菌を含む。あるいは、インビトロのクローニング方法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が適する。
これらの原核生物宿主には、典型的には宿主細胞と適合性がある発現制御配列(例えば複製起点)を含む発現ベクターを作製することができる。また、任意の数の様々なよく知られたプロモーターが存在し、例えばラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、βラクタマーゼプロモーター、又はファージλからのプロモーター系ある。典型的には、プロモーターは、場合によってはオペレーター配列と共に発現を制御し、転写及び翻訳を開始させ完了させるためのリボソーム結合部位配列等を有する。
真核生物微生物が発現に使用されうる。例えば糸状菌又は酵母などの真核細胞微生物が、ポリペプチドをコードするベクターに適したクローニング又は発現宿主である。サッカロマイセス・セレヴィシエが、一般的に使用される下等真核生物宿主微生物である。他は、シゾサッカロミセス・ポンベ;クリベロミセス属宿主、例えばK.ラクティス(K.lactis)(MW98-8C,CBS683,CBS4574)、K.フラジリス(K.fragilis)(ATCC12、424)、K.ブルガリカス(K.bulgaricus)(ATCC 16,045)、K.ウィケラミ(K.wickeramii)(ATCC 24,178)、K.ワルティ(K.waltii)(ATCC 56,500)、K.ドロソフィララム(K.drosophilarum)(ATCC 36,906)、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)、及びK.マルキシアナス(K.marxianus);ヤロウイア属(EP 402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris);カンジダ属(Candida);トリコデルマ・リーシア(Trichoderma reesia);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);スクワニオミセス属(Schwanniomyces)、例えばスクワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);及び糸状菌、例えばニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラミジウム属(Tolypocladium)、及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えばA.ニデュランス(A.nidulans)およびA.ニガー(A.niger)を含む。メチロトローフ酵母がここでは好適であり、限定するものではないが、ハンセヌラ属、カンジダ属、クロエケラ属、ピチア属、サッカロマイセス属、トルロプシス属、及びロドトルラ属から成る属から選択される、メタノールにおいて増殖可能な酵母を含む。サッカロミセス属が、発現コントロール配列(例えばプロモーター)、及び複製起点、停止配列等を有する適切なベクターにより、好ましい酵母宿主である。典型的なプロモーターは、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及び他の糖分解酵素を含む。誘導性酵母プロモータは、特に、アルコール脱水素酵素、イソシトクロムC、及びマルトース及びガラクトース利用に関与する酵素からのプロモーターを含む。
微生物に加えて、哺乳動物組織細胞培養をまた用いて、ここに記載のポリペプチドを発現し、生産することができ、ある場合には好ましい(Winnacker, From Genes to Clones VCH Publishers, N.Y., N.Y. (1987)を参照)。幾つかの実施態様に対しては、真核生物細胞が好ましいが、これは異種ポリペプチド(例えばインタクトな免疫グロブリン)を分泌可能な多くの適切な宿主細胞株が当該分野で開発されているためであり、CHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、好ましくはミエローマ細胞株、又は形質転換されたB細胞又はハイブリドーマを含む。幾つかの実施態様では、哺乳類宿主細胞はCHO細胞である。
幾つかの実施態様では、宿主細胞は脊椎動物宿主細胞である。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞);ハムスター乳児腎細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO又はCHO-DP-12株);マウスのセルトリ細胞;サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76,ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);バッファローラット肝細胞(W138,ATCC CCL 75);バッファローラット肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス***腫瘍細胞(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞;MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
あるいは、ポリペプチドコード化配列を導入遺伝子中に取り込み、トランスジェニック動物のゲノム内に導入し、続いてトランスジェニック動物の乳中で発現させることができる。適切な導入遺伝子は、カゼイン又はβラクトグロブリンのような乳腺特異的遺伝子由来のエンハンサー及びプロモーターに作用可能に連結した軽鎖及び/又は重鎖のコード配列を含む。
あるいは、ここに記載の抗体はトランスジェニック植物(例えばタバコ、トウモロコシ、ダイズ及びアルファルファ)において生産することができる。改善された「植物抗体」ベクター(Hendy et al., J. Immunol. Methods 231:137-146 (1999))及び形質転換性作物種の増加と組み合わさった精製方策が、かかる方法を、ヒト及び動物の治療法のためばかりでなく、工業的用途(例えば触媒抗体)のために組換え体免疫グロブリンを生産する実際的で効果的な手段にした。更に、植物生産抗体は安全で効果的であることが示され、動物由来材料の使用を回避する。更に、植物及び哺乳動物細胞生産抗体のグリコシル化パターンの差は抗原結合又は特異性に殆ど又は全く影響を持たない。また、毒性又はHAMAは、植物由来の分泌性二量体IgA抗体の局所経口投与を受ける患者には観察されなかった(Larrick et al., Res. Immunol. 149:603-608 (1998)を参照)。
宿主細胞を、ここに記載したポリペプチド生成のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach M. Butler, ed. (IRL Press, 1991)に見出すことができる。
真核生物細胞形質移入及び原核生物細胞形質転換の方法、例えば、CaCl2、CaPO4、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開の国際公開89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が用いられる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen et al., J. Bact. 130:946 (1977)及びHsiao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown et al., Methods in Enzymology 185:527-537 (1990) and Mansour et al., Nature 336:348-352 (1988)を参照のこと。
ポリペプチド、例えば抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合、例えば治療用の抗体が細胞傷害剤(例えば、毒素)と結合し、イムノコンジュゲートそれ自身が腫瘍細胞の破壊において効果を示す場合など、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ない場合に、細菌で産生させることができる。完全長抗体は、循環中でより長い半減期を有する。大腸菌での産生が、より迅速でより費用効率的である。細菌でのポリペプチドの発現については、発現と分泌を最適化する翻訳開始部位(TIR)及びシグナル配列を記載している米国特許第5,840,523号を参照のこと(これらの特許は出典明記によりここに援用する)。発現の後、抗体は、大腸菌細胞ペーストから可溶性分画へ分離し、例えば、アイソタイプに応じてプロテインA又はGカラムを介して精製することができる。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現させた抗体を精製するための工程と同じようにして行うことができる。
ここに記載されているグリコシル化ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。トランスフェクションのための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、そのようなウィルスはここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質転換に使用できる。
ポリペプチドを産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
V.製剤及び製剤の製造方法
またここに提供されるのは、ここに記載されている方法によって精製されたポリペプチド(例えば抗体)を含んでなる製剤及び製剤の製造方法である。例えば、精製されたポリペプチドは、薬学的に許容可能な担体と組合せられうる。
幾つかの実施態様におけるポリペプチド製剤は、所望の純度を有するポリペプチドを、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と混合することによって保存のために調製されうる。
「担体」とは、ここで使用される場合、使用される投与量及び濃度では、それに曝露される細胞又は哺乳類に非毒性である薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤を含む。しばしば、薬学的に許容可能な担体は、水性pH緩衝液である。
許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
幾つかの実施態様では、ポリペプチド製剤中のポリペプチドは、機能的活性を維持している。
インビボ投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
ここにおける製剤は、治療される特定の適応症の必要に応じて一以上の活性化合物も含み得、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補活性を有するものである。例えば、ポリペプチドに加え、更なるポリペプチド(例えば抗体)を含むことが望ましい。あるいは又は加えて、組成物は、化学療法剤、細胞傷害剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤、及び/又は心臓保護剤を更に含みうる。このような分子は、意図される目的に効果的な量の組合せにおいて適切に存在する。
V.製造品
ここに記載の方法によって精製されたポリペプチド及び/又はここに記載の方法によって精製されたポリペプチドを含んでなる製剤は、製造品内に含まれうる。製造品は、ポリペプチド及び/又はポリペプチド製剤を収容する容器を含みうる。好ましくは、製造品は:(a)容器内にここに記載のポリペプチド及び/又はポリペプチド製剤を含んでなる組成物を収容する容器;及び(b)被験体に製剤を投与するための指示を有するパッケージ挿入物を含む。
製造品は容器と該容器上又は該容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は製剤を収容又は含み得、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性剤はポリペプチドである。ラベル又はパッケージ挿入物は、ポリペプチド及び提供されている何れかの他の薬剤の投与量及び間隔に関する具体的なガイダンスと共に、被験体における組成物の使用を示す。製造品は更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業及び使用者観点から所望される他の材料を更に含みうる。幾つかの実施態様では、容器はシリンジである。幾つかの実施態様では、シリンジは、注入装置内に更に含まれる。幾つかの実施態様では、注入装置は自動注入装置である。
「パッケージ挿入物」は、効能、用途、服用量、投与、配合禁忌、パッケージされている製品と併用される他の治療薬、及び/又はそのような治療薬の使用に関する警告等についての情報を含む、治療薬の商業的包装に慣習的に含められる指示書を指すために使用される。
発明の更なる詳細は、以下の非限定的実施例によって説明される。明細書中における全引用の開示は、出典明記によりここに援用される。
実施例
以下の実施例は、発明の純粋な例示であることを意図し、従って、何れにおいても発明を制限するとして考えられるべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は説明のために提供され、限定のためではない。
実施例1− オーバーロードされた陽イオン交換材料の選択
この実施例は、組換えヒト化抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体、組換えヒト化抗CD11a抗体、及び組換えキメラ抗CD20抗体を精製するための、陽イオン交換クロマトグラフィープロセスを記載する。抗VEGF抗体、抗CD11a抗体、及び抗CD20抗体の構造は米国特許第7,169,901号、及び同第6,703,018号、及び同第5,736,137号にそれぞれ開示され、その各々を出典明記によりここに援用する。
材料及び方法
精製方法
チャイニーズハムスター卵巣細胞において産生されたモノクローナル抗体を有する細胞培養液を、細胞デブリを取り除くために連続的遠心分離で処理し、そしてデプスフィルター及び0.2umフィルターを用いる濾過により更に浄化した。収集した細胞培養液を、プロテインAクロマトグラフィーを通して精製した。クロマトグラフィーの間、ローディング及び洗浄条件は中性pH範囲であり、溶出は低pH範囲で実施した。プロテインAカラムから得られたタンパク質プールのpH及び伝導率を、陽イオン交換クロマトグラフィーに使用されるローディング条件に調整し、次いで0.22um濾過した。同じpH及び伝導率を、陽イオン交換クロマトグラフィーローディング条件、平衡条件、初回洗浄条件に使用した。濾過し、平衡化したタンパク質プールを、続く陽イオン交換クロマトグラフィーのための産物として使用した。産物の濃度(g/L)を、280nmの吸光度によって決定した。特定の陽イオン交換クロマトグラフィー条件を、下の「実験手順及び結果」のセクションに示すように実施した。
アッセイ
全ての実施例のアッセイを下に示すように実施した。
抗体濃度アッセイ
収集した細胞培養液(HCCF)における抗体濃度を、Poros protein A HPLCアッセイ(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して決定した。カラムは2.0mL/分の流量で操作し、pH6.3のリン酸ナトリウム/塩化ナトリウムバッファーにおいて平衡化し、pH2.5の酢酸/グリシン溶液で溶出した。280nmでの吸光度をモニタし、溶出ピーク面積を使用して標準曲線から抗体濃度を定量化した。プロテインAアフィニティー又はイオン交換クロマトグラフィーを通して得られた精製プールにおける抗体を、10mm路長フローセルの分光光度計を使用して、280nmでの吸光度により決定した(光散乱に対する補正のため、320nmでの吸光度を減算した)。抗体濃度を、[(280nmでの吸光度−320nmでの吸光度)×希釈]/消衰係数として算出した。
CHOPアッセイ
2つのCHOPアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及びMeso Scale Discovery (MSD)アッセイを使用した。
CHOP ELISAアッセイ− 選択したランからのサンプルをアッセイグループに使用し、スタンダード及び検証ELISAを実施し、CHOPのレベルを定量化した。親和性精製ヤギ抗CHOP抗体をマイクロタイタープレートウェルに固定した。CHOP、スタンダード、及びコントロールを有するサンプルの希釈をウェルにおいてインキュベートし、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗CHOP抗体でインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素活性を、o-フェニレンジアミン二塩酸塩で検出した。CHOPを、マイクロタイタープレートリーダーにおいて492nmで吸光度を読むことによって定量化した。コンピュータカーブフィッティングプログラムを使用して標準曲線を生成し、自動的にサンプル濃度を算出した。ELISAのアッセイ範囲は典型的には5ng/mL〜320ng/mLであり、結果をプール比較のためにppmに標準化した。
CHOP MSD アッセイ− 選択したランからのサンプルをアッセイグループに使用し、スタンダード及び検証MSDアッセイを実施し、CHOPのレベルを定量化した。親和性精製ヤギ抗CHOP抗体をマイクロタイタープレートウェルに固定した。CHOP、スタンダード、及びコントロールを有するサンプルの希釈をウェルにおいてインキュベートし、その後、MSD SULFO-TAG NHS-ESTERにコンジュゲートしたヤギ抗CHOP抗体でインキュベートした。NHS-ESTERは、タンパク質の第一アミン基に容易にカップリングするアミン反応性リンカー、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを有する。CHOP濃度を、MSD Read Bufferの添加、プレートの底への電気の適用後、測定した。標識された検出抗体は、トリプロピルアミン含有Read Bufferと相互作用して、620nmでMulti-Arrayマイクロプレートの電極面で生じる電気化学的刺激により光を放出し、CCDカメラによって測定される。濃度を次いで、標準曲線に対する逆回帰によって得た。アッセイのアッセイ範囲は典型的には5ng/mL〜1530ng/mLであり、結果をプール比較のためにppmに標準化した。
プロテインAアッセイ
プロテインAクロマトグラフィーを回収プロセスに使用し、サンプルにおける侵出プロテインAを検出した。プロテイン-Aのレベルを、サンドイッチプロテイン-A ELISAによって決定した。ニワトリ抗ブドウ球菌プロテインA抗体をマイクロタイタープレートウェルに固定した。サンプル処理手順は、サンプル希釈、及びマイクロウェーブ補助加熱を使用するプロテインA/IgG複合体の解離を、サンドイッチELISAにおけるサンプルのランの前の前処理工程として含んだ。プロテインAは、サンプルに存在するなら、コート抗体に結合した。結合プロテインAを、西洋ワサビペルオキシダーゼがコンジュゲートした抗タンパク質抗体を用いて検出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素活性を、比色シグナルを生成する2コンポーネントTMB基質を用い定量化した。
ゲンタマイシンアッセイ
競合ELISAを使用して、全てのプールにおけるゲンタマイシン濃度を決定した。ゲンタマイシン-BSAに対するヤギポリクローナル抗体を、マイクロタイタープレートウェルに固定した。ゲンタマイシンは、抗体への結合について、ビオチン化-ゲンタマイシンと競合した。結合したビオチン標識ゲンタマイシンの量を、西洋ワサビペルオキシダーゼ-ストレプトアビジン及びo-フェニレンジアミン基質の添加により検出した。サンプルを、アッセイ希釈剤に段階希釈し、吸光度読取りが、アッセイの定量化可能範囲内になるようにした(0.37−90ng/mL)。
サイズ排除クロマトグラフィー
モノクローナル抗体のサイズ不均一性を、高速サイズ排除クロマトグラフィーアッセイによって決定した。TSK-GEL G3000SWXLカラム(7.8 mm x 300 mm, Tosoh Bioscience, Montgomeryville, PA)を使用し、モノマー及び高分子量種(HMW)に分離した。カラムを、200mMのリン酸カリウム、250mMの塩化カリウムpH6.2移動相を使用して、0.3mL/分の流量で操作した。20μgの抗体を、各サンプルに注入した。280nmでの吸光度を使用して、モノマー及びHMWの分離をモニタした。モノマー及びHMWのパーセンテージを、それらのピーク面積に基づいて算出した。
DNAアッセイ
CHO細胞アッセイのためのTaqman PCRは、リアルタイムPCRを使用し、産物サンプルにおけるCHO DNAを検出し定量化する。サンプル及びコントロールからのDNAはまず、Qiagen's Virus Biorobotキットを使用して抽出される。抽出されたサンプル、コントロール、及びスタンダードDNAを、ABI配列検出システムを用い、96-ウェルプレートにおいて、PCRプライマー及びプローブを使用して、TaqManリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に課した。プライマーは、モンゴルキヌゲネズミゲノムの反復DNA配列の110塩基対セグメントによって規定される。プローブを、5'末端に光レポータ色素、3'末端にクエンチャーを用いて標識した。プローブがインタクトな場合、レポーターの発光スペクトルはクエンチャーによって抑制される。ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性はプローブを加水分解してレポートを放出し、蛍光発光の増加をもたらす。配列検出器は、DNA増幅の間、連続的に測定される蛍光発光の増加に正比例に増幅される産物を定量化する。DNAが閾値を超えて増幅されたサイクル数(CT)が、標準曲線に対して算出される。1pg/mL−10,000pg/mLの範囲の標準曲線が生成され、サンプル中におけるDNAの定量化に使用される。
実験手順及び結果
抗CD11a抗体の精製
3タイプの陽イオン交換材料:樹脂、膜、及びモノリスをこの研究において評価した。これらの3つの陽イオン交換材料を使用した、抗CD11a抗体のオーバーロード陽イオン交換精製プロセスを、プロセス性能(例えば、不純物除去、工程収率、及び産物品質)について評価した。
最高で1000g/L CV(カラム体積)又はMV(膜又はモノリス体積)までの産物でロードされた、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(0.66cm内径(「i.d.」)×5cm,15.1CV/時)及びSPセファロースFF(「SPSFF」)(0.66cm i.d.×4.8cm,15.7CV/時))、モノリス(SO3 Monolith(0.34mL,353MV/時))、及び膜(Mustang S(0.18mL,333MV/時))のクロマトグラムを、pH5.5及び3mS/cmでランした。図1を参照。
最高で1000g/L CV又はMVまでロードされる様々な量の産物を用い、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(15.1CV/時又は75cm/時)及びSPSFFカラム(15.7CV/時又は75cm/時))、膜(Mustang S(333MV/時))、及びモノリス(SO3 Monolith(353MV/時))の性能を、pH5.5及び3mS/cmで評価した。図2に示すように、Mustang S、Monolith SO3、及びPoros HS50については93%を超えるモノマー抗CD11a抗体回収が、SPSFFについては約88%のモノマー抗CD11a抗体回収があった。
最高で1000g/L CV又はMVまでロードされる様々な量の産物を用い、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(15.1CV/時又は75cm/時)及びSPSFFカラム(15.7CV/時又は75cm/時))、膜(Mustang S(333MV/時))、及びモノリス(SO3 Monolith(353MV/時))のCHOPを除去する能力を、pH5.5及び3mS/cmで評価した。図2に示すように、モノリス材料、SO3 Monolithは、他の2つの陽イオン交換材料より、CHOP除去に優れた。膜(Mustang S)及びPoros HS50カラムは、CHOP除去において類似であり、SPSFFカラムより優れた。図2を参照。
最高で1000g/L CV又はMVまでロードされる様々な量の産物を用い、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(15.1CV/時又は75cm/時)及びSPSFFカラム(15.7CV/時又は75cm/時))、膜(Mustang S(333MV/時))、及びモノリス(SO3 Monolith(353MV/時))のHMWを除去する能力を、pH5.5及び3mS/cmで評価した。図3に示すように、樹脂陽イオン交換材料、Poros HS50は、HMWの除去において最も効果的であり、続いてSPSFFであった。更に、Mustang Sは、HMW除去において、SO3モノリスより優れた。図3を参照。
最高で1000g/L CV又はMVまでロードされる様々な量の産物を用い、陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム及びSPSFFカラム)、膜(Mustang S)、及びモノリス(SO3 Monolith)の、HMW1及びHMW2を除去する能力をまた、pH5.5及び3mS/cmで評価した。図4に示すように、Poros HS50及びMustang Sは、HMW2の除去においてより効果的であった。
最高で1000mg/mL CVまでの様々な量でロードされる産物を用い、Poros HS50(15.1CV/時又は75cm/時)の、HMW1及びHMW2を除去する能力を、pH5.5及び3mS/cmで調査した。HMWは、ロード及び溶出プールにおいてそれぞれ6.26%及び60%であった。図5に示すように、Poros HS50は、HMW1及びHMW2双方の除去において効果的であった。
HMWを除去するSPSFFの能力を、最高で約800g/L CVまでの様々な量の産物でロードされる産物を用い、pH5.5及び3mS/cmで評価した。図6はクロマトグラム及びHMW除去を示す。
3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム及びSPSFFカラム)、膜(Mustang S)、及びモノリス(SO3 Monolith)の性能を、表2にまとめた。抗CD11aの精製の商業的プロセスは、結合-溶出モード及び15−44mg/mL CVのローディング密度を使用した。表2に示すように、SO3 MonolithがCHOPの除去に最も効果的であり、Poros HS樹脂がHMWの除去に最も効果的であった。オーバーロードPoros HSプロセスは、商業的SPSFFプロセスと、HMW及びCHOP除去において類似だった。表2を参照。
抗VEGF抗体の精製
3タイプの陽イオン交換材料:樹脂、膜、及びモノリスをこの研究において評価した。これらの3つの陽イオン交換材料を使用した、抗VEGF抗体のオーバーロード陽イオン交換精製プロセスを、プロセス性能(例えば、不純物除去、工程収率、及び産物品質)について評価した。
1000g/L CV又はMVに近い産物でロードされた、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(0.66cm i.d.×5.4cm,18.5CV/時)及びSPSFFカラム(0.66cm i.d.×5.5cm,18.5CV/時))、モノリス(SO3 Monolith(0.34mL,176MV/時))、及び膜(Mustang S(0.35mL,171MV/時))のクロマトグラムを、pH5.5及び5mS/cmでランした。図7を参照。
0及び1000g/L CV又はMVの間でロードされる様々な量の産物を用い、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(1.8mL)及びSPSFFカラム(1.8mL))、膜(Mustang S(0.35mL))、及びモノリス(SO3 Monolith(0.34mL))の性能を、pH5.5及び5mS/cmで評価した。膜及びモノリスクロマトグラフィーでは、使用した流量は100−400MV/時であった。樹脂では、使用した流量は50−200cm/時(9−36CV/時)間であった。図8に示すように、全ての陽イオン交換材料の使用において、90%を超すモノマー抗VEGF抗体の回収があった。
0及び1000g/L CV又はMVの間でロードされる様々な量の産物を用い、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(18CV/時及び1.7mL)及びSPSFFカラム(18CV/時及び1.7mL))、膜(Mustang S(171MV/時)及びSartobind S(120MV/時))、及びモノリス(SO3 Monolith(176MV/時))のCHOPを除去する能力を、pH5.5及び5mS/cmで評価した。図9に示すように、モノリス、SO3 Monolithは、他の2つの陽イオン交換材料より、CHOP除去に優れた。樹脂(Poros HS50カラム及びSPSFFカラム)及び膜(Mustang S及びSartobind S)陽イオン交換材料は、CHOPの除去において類似であった。図9を参照。
0及び1000g/L CV又はMVの間でロードされる様々な量の産物を用い、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(18CV/時)及びSPSFFカラム(18CV/時))、膜(Mustang S(171CV/時))、及びモノリス(SO3 Monolith(176CV/時))の、DNAを除去する能力を、pH5.5及び5mS/cmで評価した。樹脂陽イオン交換材料Poros HS50が、DNA除去において最も効果的だった。図10を参照。
0及び1000g/L CV又はMVの間でロードされる様々な量の産物を用い、3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(Poros HS50カラム(18CV/時)、1:2希釈モノマー抗体(「Mab」)を用いるPoros HS50カラム(18CV/時)、及びSPSFFカラム(18CV/時))、膜(Mustang S(176MV/時)及びSartobind S(120MV/時))、及びモノリス(SO3 Monolith(171MV/時))のHMWを除去する能力を、pH5.5及び5mS/cmで評価した。図11に示すように、樹脂陽イオン交換材料、Poros HS50は、HMW除去において最も効果的であり、続いてSPSFFであった。更に、Mustang Sは、HMW除去において、SO3モノリスより優れた。図11を参照。
0及び1000g/L CV又はMVの間でロードされる様々な量の産物を用い、陽イオン交換材料、樹脂Poros HS50カラム(18CV/時)、希釈Mabを用いるPoros HS50カラム(18CV/時)、及びSPSFFカラム(18CV/時))、膜(Mustang S(176MV/時))、及びモノリス(SO3 Monolith(171MV/時))の、HMW1及びHMW2を除去する能力を、pH5.5及び5mS/cmで評価した。図12に示すように、HMW2除去はHMW1除去より、一般的により効果的であった。図12を参照。
3タイプの陽イオン交換材料、樹脂(SPSFFカラム(1.88mL)及びPoros HS50カラム(1.85mL))、膜(Mustang Sコイン(0.35mL)及びMustang S(Acrodisc 0.18mL))、及びモノリス(SO3 Monolithディスク(0.34mL-1ディスク)及びSO3 Monolithディスク(0.68mL-2ディスク))の動的結合能(「DBC」)を、pH5.5及び5mS/cmで、複数の流量を使用して評価した。表3に記載し、示すように、陽イオン交換樹脂は、膜及びモノリスより優れたMab結合能を有した。一般的に、陽イオン交換材料のMab結合能は、それらのHMWを除去する能力と相関した。図11及び表3を参照。Poros HS50は、SPSFFより優れた物質輸送を示した。表3を参照。Poros HS50は、Mustang S及びMonolith SO3より高いDBCを示した。表3を参照。
抗CD20抗体の精製
様々なタイプの陽イオン交換樹脂(Poros HS50、SE HiCap、SPSFF、SPXL及びCapto S)の、HMWを除去する能力を、ハイスループット96-ウェルプレート及びバッチ結合モードを使用して、70−90mg/mL樹脂でロードされる産物を用い、様々なpH及び塩濃度下で、抗CD20抗体の精製について評価した。HMW除去は、樹脂に結合した%HMWによって評価した。図13に示すように、Poros HS50は、HMWの除去において最も効果的であり、次いでSE HiCapであった。更に、SPSFFは、HMW除去においてSPXLより優れた。図13を参照。更に、SPXLは、HMWの除去においてCapto Sと類似だった。図13を参照。
様々なタイプの樹脂(Poros HS50、SE HiCap、SPSFF、SPXL及びCapto S)の、CHOPを除去する能力を、ハイスループット96-ウェルプレートを使用して、様々なpH及び塩濃度下で、70−90mg/mL樹脂でロードされる産物を用い評価した。CHOP除去は、樹脂に結合した%CHOPによって評価した。図14に示すように、Poros HS50は、CHOPの除去において最も効果的であり、次いでSE HiCapであった。更に、SPSFFは、CHOP除去においてSPXLより優れた。図14を参照。更に、SPXLは、CHOPの除去においてCapto Sより優れた。図14を参照。
Poros HS50及びCapto S樹脂のHMWを除去する能力を、5mS/cm及び異なるpH(Poros HS50はpH5.5及びpH6及びCapto SはpH5及びpH5.5)でロードされた様々な量の産物を用い、カラムクロマトグラフィーを使用して更に調査した。図15に示すように、Poros HS50は、HMWの結合においてCapto Sより優れた。蓄積HMW%は、Capto S樹脂におけるランからの収集産物プールにおいてより、Poros HS50樹脂におけるランからの収集産物プールにおいて低かった。図16を参照。
Poros HS50及びCapto S樹脂のCHOPを除去する能力をまた、5mS/cm及び異なるpH(Poros HS50はpH5.5及びpH6及びCapto SはpH5及びpH5.5)でロードされた様々な量の産物を用い、カラムクロマトグラフィーを使用して調査した。図17に示すように、Poros HS50は、CHOPの結合においてCapto Sより優れた。蓄積CHOPは、Capto S樹脂におけるランからの収集産物プールにおいてより、Poros HS50樹脂におけるランからの収集産物プールにおいて低かった。図18を参照。
実施例2−様々な精製条件を使用したオーバーロード陽イオン交換クロマトグラフィー
この実施例は、抗体を精製するためのオーバーロード陽イオン交換クロマトグラフィープロセスを記載する。
材料及び方法
精製方法
濾過し、平衡化したタンパク質プールを、実施例1に記載のように調製し、陽イオン交換クロマトグラフィーのための産物として使用した。
カラムを、Poros HS50又はSPSFF又はCapto S樹脂を用いてそれぞれ充填した。カラムの寸法は0.66cm i.d.×5〜15cm床高であった。使用した流量は、50−200cm/時(9−36カラム体積(CV)/時)だった。クロマトグラフィーを280nmでモニタし、室温で実施した。
クロマトグラフィーからの抗体の排除を避けるために、例えば、最適化ローディング伝導率はpH5−6で4−6mS/cmであり、この下で最大動的結合能が得られる。第一グループ研究において、5−6mS/cmの伝導率及び5.0−5.5のpHを、陽イオン交換カラムにおけるローディング条件で使用した。
280nmにより決定される産物を、各ラン中、最高で1000g/Lまでのカラム体積でロードした。マトリックス平衡バッファーを使用する洗浄工程を、UVトレースがベースラインに戻るまで、ローディング工程後すぐに適用した。高塩濃度溶液を用いる溶出工程を、各クロマトグラフィーラン中、マトリックスから結合種を剥離するために使用した。結合種は不必要なHMW種、DNA、CHOP、及び他の不純物を含んだ。カラムを、各ラン後、0.5NのNaOH溶液で浄化し、0.1NのNaOH溶液に保管した。
ローディング及び洗浄工程の間、各ランからの素通り画分を分画し、適切なサイズの円錐管に収集した。各分画におけるタンパク質濃度を、UV-Vis分光光度計を使用して測定した。不純物含有、例えば宿主細胞タンパク質、DNA、侵出プロテインA、及びゲンタマイシンを、上記全ローディング及び洗浄工程を網羅するように、選択分画において決定した。
実験手順及び結果
SPSFFを使用する抗VEGF抗体の精製
最高で1000mg/mL CVまでの産物ローディング量を用い、SPSFF(0.66cm id×5.5cm床高)のクロマトグラムを、NaACにおいて、pH5.5,5mS/cmで、様々な流量(9CV/時、8CV/hr、及び36CV/時)下でランした。図19を参照。
最高で1000/L CVまでロードされる様々な量の産物を用い、SPSFFについてのCHOP、DNA及びHMW除去に関する様々な流量(9CV/時、18CV/時、及び36CV/時)の効果を、pH5.5及び5mS/cmで評価した。図20に示すように、CHOP除去は、試験した流量に有意には影響されなかった。しかしながら、図21及び22に示すように、DNA及びHMW除去は、試験した流量に影響された。
Poros HS50を使用する抗VEGF抗体の精製
最高で1000/L CVまでロードされる様々な量の産物を用い、Poros HS50についてのCHOP、DNA及びHMW除去に関する様々な流量(18CV/時及び36CV/時)の効果を、pH5.5及び5mS/cmで評価した。図23に示すように、HMW、CHOP及びDNA除去は、試験した流量に有意には影響されなかった。
Poros HS50のMab結合能力を、最高で1000mg/mL CVまでロードされる様々な量の産物を使用し、pH5.5及び18CV/時で、様々なローディング伝導率(3mS/cm、5mS/cm、8mS/cm、13mS/cm、及び18mS/cm)で評価した。図24に示すように、より高いローディング伝導率は、より低いMab結合能力と相関した。
Poros HS50のクロマトグラムを、pH5.5で、様々なローディング伝導率(5mS/cm、8mS/cm、13mS/cm、及び18mS/cm)下でランした。P1は350mMのNaACで溶出ピークを示し、P2は0.5NのNaOHで浄化ピークを示した。図25を参照。図25に示すように、5mS/cm及び8mS/cmのローディング伝導率下で、Poros HS50への典型的な結合があった。さらに、13mS/cmで部分結合があった。図25を参照。18mS/cmで、典型的な素通りがあった。図25を参照。
CHOP除去におけるPoros HS50の能力を、18CV/時で、最高で1000mg/mL CVまでにロードされた様々な量の産物を用い、様々な伝導率条件(3mS/cm、5mS/cm、5mS/cm及び2倍希釈CHOPでロード、8mS/cm、13mS/cm、及び18mS/cm)下で、pH5.5で調査した。図26に示すように、CHOP除去は、より低いローディング伝導率下でより効果的だった。
HMW除去におけるPoros HS50の能力を、最高で1000g/L CVまでロードされる様々な量の産物及び18CV/時を用い、様々なローディング伝導率(3mS/cm、5mS/cm、5mS/cm及び2倍希釈Mab(2.37mg/ml)、8mS/cm、13mS/cm、及び18mS/cm)下で、pH5.5で評価した。図27に示すように、3mS/cmで、プロセスの最初に、Poros HS50に結合する低量のHMWがあった。13mS/cmでは、プロセスの最初に高量のHMWがPoros HS50に結合し、結合するHMWの量は経時に低下した。図27を参照。
最高で1000mg/mL CVまでロードされる様々な量の産物を用いた、DNA除去におけるPoros HS50の能力を、pH5.5で、様々なローディング伝導率及び流量(3mS/cm及び18CV/時、5mS/cm及び18CV/時、5mS/cm及び36CV/時、8mS/cm及び18CV/時、13mS/cm及び18CV/時、及び18mS/cm及び18CV/時)下で評価した。ロードにおけるDNAの量は、3mS/cm、5mS/cm、8mS/cm、13mS/cm、及び18mS/cmのローディング伝導率条件についてそれぞれ約1000pg/mg、1000pg/mg、7000pg/mg、16821pg/mg、及び18566pg/mgであった。図28(A)及び(B)に示すように、Poros HS50は、試験したローディング伝導率下でDNAを結合できた。
300mg/mL CVでロードされる産物を用い、DNAを結合するPoros HS50の能力をまた、勾配溶出によりpH5.5で評価した。図29に示すように、DNAはpH5.5及び5mS/cmでカラムに結合し、直線塩勾配溶出中に溶出オフされた。
ゲンタマイシンを除去するPoros HS50(1.88mL樹脂)の能力を、最高で約990g/L CVまでロードされる様々な量の産物を用い、pH5.5、5mS/cm、及び18CV/時で評価した。表4に示すように、Poros HS50は、オーバーロードプロセスにおいてゲンタマイシンを除去できた。
プロテインAを除去するPoros HS50(1.88mL樹脂)の能力を、最高で約990g/L CVまでロードされる様々な量の産物を用い、pH5.5、5mS/cm、及び18CV/時で評価した。表5に示すように、Poros HS50は、オーバーロードプロセスにおいてプロテインA浸出液を除去できた。カラムからのプロテインAブレークスルーは、727及び860g/L CVの間の収集だった。表5を参照。
異なるカラム床高(4.6cm床高及び14.2cm床高)下で、HMW、CHOP及びDNAを除去するPoros HS50の能力を、最高で1000mg/mL CVまでロードされる様々な量の産物を用い、pH5.5、5mS/cm、及び18CV/時で評価した。図30に示すように、試験したカラム床高(4.6cm及び14.2cm)は、HMW、CHOP、又はDNA除去に有意な影響を持たなかった。更に、4.6cm及び14.2cmのカラム床高は、同じ滞留時間(3分)を保った。
Poros HS50カラム(1.88mL)からの溶出分画における荷電変異体の分布を、最高で1000g/L CVまでロードされる様々な量の産物を用い、pH5.5、5mS/cm、及び18CV/時で評価した。塩基変異体を、荷電変異体分析を実施するより前に、CPB(カルボキシペプチダーゼB)で処理した。表6に示すように、最終プールにおける荷電変異体(酸性及び塩基性変異体)及び主要変異体の分布は、実質的には変化しなかった。低ローディング量での素通りでは、より高いパーセンテージの酸性変異体があった。表6を参照。Poros HS50は、幾らかの塩基性変異体に結合可能であった。表6を参照。
実施例3−混合モードクロマトグラフィーを用いるポリペプチドの精製
この実施例は、抗VEGF抗体、抗CD11a抗体、及び抗CD20抗体を精製するための混合モードクロマトグラフィープロセスを説明する。
材料及び方法
精製方法
濾過し、平衡化したタンパク質プールを、後の混合モードクロマトグラフィーのために、実施例1に記載のように調製した。プールを、1.5MのTris塩基又は2Nの氷酢酸を用い、5〜8.5のpHに調整した。塩素濃度を、3MのNaClの添加により、0mM〜250mMに調製した。特定の混合モードクロマトグラフィー条件を、下の「実験手順及び結果」のセクションに示すように実施した。
実験手順及び結果
混合モード樹脂、例えばCapto Adhereの性能を、ハイスループットスクリーニング実験において、様々なpH及び塩条件下で、複数の抗体、抗VEGF抗体(70mg/ml樹脂)、抗CD11a抗体(90mg/ml樹脂)、及び抗CD20抗体(90mg/ml樹脂)を用いて評価した。濾過し平衡化したプロテインA精製プールにおけるCHOPの量(ppm)及び%HMWは、497及び7.6(抗VEGF抗体)、820及び6.4(抗CD11a抗体)、及び4720及び3.5(抗CD20抗体)であった。図31、32、及び33は、様々なpH及び塩条件下での、Mab回収、樹脂へのHMWの結合、及び樹脂へのCHOPの結合の結果をそれぞれ示す。図31に示すように、抗VEGF抗体及び抗CD20抗体については、pH及び伝導率の増加は、Capto Adhere樹脂へのMabの結合を増加させた。pHは、抗CD11a抗体を結合するCapto Adhereの能力に有意に影響した。図31を参照。抗VEGF抗体、抗CD11a抗体、及び抗CD20抗体について、pHの増加は、Cato Adhere樹脂に結合するHMW種のパーセンテージを増加させた。図32を参照。pHは、HMWを結合するCapto Adhereの能力に、伝導率より有意に影響した。図32を参照。Capto Adhere樹脂は、より広いpH及び伝導率範囲下でCHOPを結合できた。図33に示す様に、抗VEGF抗体、抗CD11a抗体、及び抗CD20抗体についての多数のコンタープロットで、80%を超えるCHOPが樹脂に結合した。
抗VEGF抗体の精製について、ハイスループットスクリーニング実験及びカラムクロマトグラフィーにおけるCapto Adhereの性能を、表7にまとめる。一般的に、ハイスループット実験で得られた観察は、カラムクロマトグラフィー実験から得られた結果と相関した。
CHOP及びHMWを除去するCapto Adhereの能力をまた、pH5.5及び5mS/cmで、抗CD11aの精製について、カラムクロマトグラフィーにおいて調査した。Capto Adhere樹脂は、産物が約700mg/mL樹脂でロードされた場合、CHOPレベルを20ppm未満に低減できた;しかしながらCapto Adhereは%HMWを低減できなかった。データは示していない。
実施例4−オーバーロード陽イオン交換クロマトグラフィー及び標準陰イオン交換クロマトグラフィーの組合せを使用した抗CD11a抗体の精製
この実施例は、組換えヒト化CD11a抗体の精製について、オーバーロード陽イオン交換クロマトグラフィー及び標準陰イオン交換クロマトグラフィーの組合せを使用したプロセスを説明する。
材料及び方法
チャイニーズハムスター卵巣細胞において産生されたモノクローナル抗体を有する細胞培養液を、細胞デブリを取り除くために連続的遠心分離で処理し、そしてデプスフィルター及び0.2umフィルターを用いる濾過により更に浄化した。抗CD11a抗体を、a)開発ランオーバーロード陽イオン交換:(i)プロテインA精製(Prosep vA)、(ii)陽イオン交換精製(CEX)(Poros HS50、オーバーロードモード)、及び(ii)陰イオン交換(AEX)(QSFF)、又は(b)商業的プロセス(i)プロテインA精製(Prosep vA)、(ii)CEX(SPSFF)、及び(ii)AEX(QSFF)の何れかによって精製した。ランニング条件を表8に挙げる。
実験手順及び結果
オーバーロードCEXをAEXと組み合わせるプロセスの性能を、CHOP除去及びMab回収に関して評価した。結果を表9にまとめる。
HMW、CHOP、ゲンタマイシン、DNA、及び侵出プロテインAを除去するPoros HS50及びQSFFの能力を、2つの条件下で評価した:(a)pH5.5、3.5mS/cmでのPoros HS50及びpH8.0、3.5mS/cmでのQSFF;及び(b)pH5.5、5.0mS/cmでのPoros HS 50及びpH8.0、5.0mS/cmでのQSFF。条件(a)及び(b)の結果を、表10及び表11にそれぞれまとめる。ゲンタマイシン、DNA、及び侵出プロテインAは、検出限界未満まで除去された。条件(b)下より条件(a)下で、より優れたCHOP除去があった。条件(a)下より条件(b)下で、より優れたHMW除去があった。産物収率は、各クロマトグラフィー工程に関して少なくとも90%であった。
実験5−オーバーロード陽イオン交換クロマトグラフィー及び混合モードクロマトグラフィーの組合せを使用した精製
この実施例は、抗CD11a抗体及び抗CD20抗体の精製について、オーバーロード陽イオン交換クロマトグラフィー及び混合モードクロマトグラフィーの組合せを使用したプロセスを説明する。
材料及び方法
濾過し、平衡化したタンパク質プールを、後の陽イオン交換クロマトグラフィー及び/又は混合モードクロマトグラフィーのために、実施例1に記載のように調製した。具体的な陽イオン交換クロマトグラフィー及び/又は混合モードクロマトグラフィー条件は、下の「実験手順及び結果」のセクションに示すように実施した。
実験手順及び結果
抗CD11a精製
実験1−上記の濾過及び平衡化した産物を、オーバーロードPoros HS50カラム及びCapto Adhereカラムを使用し、Poros HS50についてはおよそ〜600g/L CV、及びCapto Adhereについては約〜100g/L CVのロード産物を用い、pH5.5、5mS/cm、及び100cm/時で精製した。実験を2つの異なるシーケンス:a)シーケンスA:(i)Poros HS50カラム(0.66cm×5cm)及び(ii)Capto Adhere(1.5cm×20cm)又はb)シーケンスB(i)Capto Adhere(0.66cm×20cm)及び(ii)Poros HS50カラム(0.66cm×5cm)において実施した。シーケンスAでは、Poros HS50カラム及びCapto Adhereカラムのローディング密度は、それぞれ600mg/mL樹脂及び106mg/mL樹脂だった。シーケンスBでは、Capto Adhereカラム及びPoros HS50カラムのローディング密度は、それぞれ100mg/mL樹脂及び569mg/mL樹脂だった。
不純物除去に関する結果を、シーケンスAについては表12に、シーケンスBについては表13にまとめる。両手順の不純物除去に関する産物回収収率及び結果は、商業的プロセスの純度及び収率を満たした。
実験2−上記の濾過及び平衡化された産物を、下の表に記載する様々な条件下で、pH5.5、5mS/cm、及び100cm/時で、Poros HS50についてはおよそ566g/L CV、及びCapto Adhereについては約614g/L CVのロード産物を用い、Capto Adhere(0.66cm×5.2cm)、次いでPoros HS50カラム(0.66cm×4.8cm)を使用して連続的に精製した。
連続的プロセスのクロマトグラム結果を図34に示す。連続プロセスは、約90%のMab回収収率となった。データは示していない。更に、ロード中では617ppmのCHOPが存在したが、プールには3.4ppmのみであり、ロードには6.37%のHMWが存在したが、プールには0.6%(90% HMW除去)のみであり、DNA、プロテインA浸出液、及びゲンタマイシンは検出限界未満だった。
抗CD20精製
実験1−プロテインAクロマトグラフィーからの産物プールを、およそ600g/L CVのロード産物によるPoros HS50カラム(0.66cm×5cm)、及びCapto Adhereについてはおよそ316g/L CVのロード産物によるCapto Adhere(0.66cm×8cm)を使用して、pH5.5、5mS/cm、及び100cm/時で精製した。
結果を、下の表15に提供する。オーバーロードPoros HSは、〜50%の%HMW低減、98%のCHOP低減となった。Poros HS50が、%HMWの低減において、SE Hicap、SPFF、SPXL及びCapto Sと比較して最もよい樹脂であった(データは示していない)。Capto Adhere樹脂は、更なる%HMW低減をもたらさなかったが、99%CHOP低減があった(CHOPブレークスルーが観察された)。
実験2−上記の濾過及び平衡化産物を、pH5.5、5mS/cm、及び100cm/時で、Poros HS50についてはおよそ〜600g/L CV、及びCapto Adhereについては約340g/L CVのロード産物を用い、オーバーロードPoros HS50カラム(0.66cm×4.8cm)及びCapto Adhere(0.66cm×7cm)カラムを使用して連続的に精製した。実験を、下の表に記載の条件下で、2つの異なるシーケンスにおいて実施した:a)シーケンスA:(i)Poros HS50カラム及び(ii)Capto Adhere又はb)シーケンスB(i)Capto Adhere及び(ii)Poros HS50カラム。
結果を、下の表17に提供する。連続的プロセスは、約90%(Poros HS50次いでCapto Adhere)及び約87%(Capto Adhere次いでPoros HS50)のMab回収収率となった。オーバーロードPoros HSは、%HMWにおいて〜59%の低減、CHOPは10ppm未満に低減、DNA、プロテインA浸出液、ゲンタマイシンは検出限界未満であった。