JP2018083998A - セラミックナノファイバの製造方法 - Google Patents

セラミックナノファイバの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強度及び耐熱性に優れたセラミックナノファイバを効率よく製造することができるセラミックナノファイバの製造方法を提供すること。【解決手段】BET比表面積が40m2/g以下、繊維中に含まれる有機高分子成分の含有率が0.1質量%以下であるセラミックナノファイバの製造方法であり、セラミックナノ粒子と有機高分子化合物を含む原料液を、エレクトロスピニング法により紡糸して繊維体を得る紡糸工程、及び前記繊維体を、前記セラミックナノ粒子の融点以下の温度で加熱し、該セラミックナノ粒子どうしを焼結により固結させる焼結工程を具備し、前記紡糸工程においては、前記原料液として、セラミック比率が80質量%以上99質量%以下で、粘度が80mPa・s以上1500mPa・s以下のものを用いる。【選択図】図1

Description

本発明は、セラミックナノファイバの製造方法に関し、より詳しくは、強度と耐熱性に優れるセラミックナノファイバの製造方法及びそれを用いたフィルターの製造方法に関する。
ナノファイバは高い捕集率や低圧力損失の点からフィルター用途として有用である。
従来、一般又は産業用フィルターとしては、高分子ポリマーなどの有機物から成る不織布や膜が使用されることが多いが、乾燥炉や焼却炉のガス処理など一部の産業用途においては、耐熱性が求められるためセラミック製のフィルターが使用される。
セラミック製のナノファイバを製造する手法として、エレクトロスピニング法が知られており、(1)金属アルコキシド溶液を原料液としてエレクトロスピニングによりナノファイバを形成してから焼成する方法(特許文献1参照)や、(2)金属酸化物源となる金属元素と繊維形成助剤と界面活性剤とを含有する溶液を原料液として、エレクトロスピニングによりナノファイバを形成してから焼結する方法(特許文献2参照)が挙げられる。
また本出願人は、(3)繊維形成能を有する無機ナノ粒子と、保護コロイドを有する貴金属ナノ粒子と、繊維形成能を有する有機物とを含む原料液を、エレクトロスピニング法に付して、該原料液からナノファイバを形成する方法(特許文献3参照)を提案した。
特開2003−73964号公報 WO2012/153806A1 特開2014−55367号公報
しかし、前記(1)の方法は、原料液中で金属アルコキシドの重合反応が進行して、原料液の物性が不安定となるため、生産安定性の点で好ましくない。また、前記(1)の方法では、セラミックナノ粒子を用いていない。
前記(2)の方法では、金属酸化物の含有率が25〜33%と低いために、焼結後のナノファイバの強度が十分とはならず、強度が要求される用途への利用が難しい。
また前記(3)の方法によって製造するナノファイバは、貴金属ナノ粒子の触媒等の機能を活かすために粒子間に空隙が多く、強度の観点からは改善の余地があった。
従って、本発明の課題は、上述した従来技術が有する課題を解決し得るセラミックナノファイバの製造方法を提供することにある。
本発明は、BET比表面積が40m/g以下、繊維中に含まれる有機高分子成分の含有率が0.1質量%以下であるセラミックナノファイバの製造方法であって、セラミックナノ粒子と有機高分子化合物を含む原料液を、エレクトロスピニング法により紡糸して繊維体を得る紡糸工程、及び前記繊維体を、前記セラミックナノ粒子の融点以下の温度で加熱し、該セラミックナノ粒子どうしを焼結により固結させる焼結工程を具備しており、前記紡糸工程において、前記原料液として、セラミック比率が80質量%以上99質量%以下で、粘度が80mPa・s以上1500mPa・s以下のものを用いる、セラミックナノファイバの製造方法を提供するものである。
また本発明は、セラミックナノファイバを含むフィルターの製造方法であって、前記のセラミックナノファイバの製造方法で、セラミックナノファイバのシート状物を製造した後、該シート状物に、プリーツ加工、コルゲート加工、及びハニカム加工から選択される1以上の加工を施し、立体的な形状を有するフィルターを製造する、フィルターの製造方法を提供するものである。
本発明のセラミックナノファイバの製造方法によれば、強度及び耐熱性に優れたセラミックナノファイバを効率よく製造することができる。
本発明のフィルターの製造方法によれば、強度及び耐熱性に優れたフィルターを効率よく製造することができる。
図1(a)は、本発明で製造するセラミックナノファイバの一例を模式的に示す断面図、図1(b)は、図1(a)に示すセラミックナノファイバの製造途中に形成する繊維体を模式的に示す断面図である。 図2は、エレクトロスピニングを実施するための装置を示す模式図である。 図3(a)は、実施例1で得られた繊維体のシート状物(焼結工程前)を示す画像であり、図3(b)は、図3(a)に示すシート状物の走査型電子顕微鏡像であり、図3(c)は、図3(a)に示すシート状物の焼結により得られたセラミックナノファイバのシート状物の走査型電子顕微鏡像である。 図4(a)は、実施例2で得られた繊維体のシート状物(焼結工程前)を示す画像であり、図4(b)は、図4(a)に示すシート状物の走査型電子顕微鏡像であり、図4(c)は、図4(a)に示すシート状物の焼結により得られたセラミックナノファイバのシート状物の走査型電子顕微鏡像である。 図5(a)は、比較例1で得られた繊維体のシート状物(焼結工程前)の走査型電子顕微鏡像であり、図5(b)は、図5(a)に示すシート状物の焼結により得られたシート状物の走査型電子顕微鏡像である。 図6(a)は、比較例2の紡糸工程により得られたシート状物を示す画像であり、図6(b)は、図6(a)に示すシート状物の走査型電子顕微鏡像である。 図7(a)は、比較例5で得られたセラミックナノファイバのシート状物(焼結工程後)の走査型電子顕微鏡像であり、図7(b)は、手で触ることにより、そのシート状物が崩壊した状態を示す走査型電子顕微鏡像である。
以下本発明を、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明で製造するセラミックナノファイバについて説明する(以下、このナノファイバを便宜的に「本発明のナノファイバ」ともいう。)。
本発明のナノファイバは、複数のセラミックナノ粒子の焼結体から繊維骨格が形成されている。セラミックナノ粒子は、焼結により連結され得る性質を有する無機質の粒子であって、1000nm未満の粒径を有する粒子である。セラミックナノ粒子の粒径は、例えば動的光散乱法、レーザー回折法、顕微鏡等の観察像からの計測等によって測定することができるが、とりわけ動的光散乱法による粒度分布測定装置によって測定される算術平均径が好ましく用いられる。ここで、焼結とは、融点以下の温度で加熱することによって、粒子の集合体が固まって焼結体と呼ばれる緻密な構造体を生じることをいう。セラミックナノ粒子は、粒子どうしが強固に固結した焼結体を得る観点から球形であることが好ましいが、それに限られるものではない。
本発明のナノファイバは、少なくとも一部に繊維径が10nm以上1000nm以下の繊維を含むものである。本発明のナノファイバは、好ましくは、平均繊維径が10nm以上3000nm以下であり、より好ましくは、平均繊維径が10nm以上1000nm以下である。ナノファイバの繊維径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(ナノファイバの塊、ナノファイバの交差部分、ポリマー液滴)を除き、繊維(ナノファイバ)を任意に10本以上選び出し、それぞれの繊維の長手方向に対して直交する線を引き、その線に沿って繊維径を直接読み取る。そして、その繊維径の算術平均値を、平均繊維径とする。繊維(ナノファイバ)の長手方向に交差する断面の輪郭形状が真円でない場合、その断面の中心を通る長さが最長の線分を繊維径とする。
本発明のナノファイバは、BET比表面積が40m/g以下である。本発明のナノファイバは、焼結によるセラミックナノ粒子どうしの融着の程度が大きく、図1(a)に示すように、粒子どうしが、粒子間に隙間が無いか殆ど無い状態に結合しており、BET比表面積が40m/g以下である。そのため、本発明のナノファイバは、引張強度等の強度に優れている。本発明のナノファイバのBET比表面積は、40m/g以下であり、好ましくは20m/g以下である。また下限は特に制限されないが、好ましくは0.1m/g以上であり、より好ましくは1m/g以上である。より具体的には、本発明のナノファイバのBET比表面積は、0.1m/g以上40m/g以下が好ましく、1m/g以上20m/g以下が更に好ましい。
本発明のナノファイバは、繊維中に含まれる有機高分子成分の含有率が0.1質量%以下である。有機高分子成分の含有率が0.1質量%以下であることは、ナノファイバ中に、高温下で熱分解しやすい有機高分子成分を含まないか殆ど含まないことを意味し、それによって、本発明のナノファイバは、耐熱性に優れたものとなっている。有機高分子成分の含有率の下限値はゼロである。
繊維(ナノファイバ)の、BET比表面積及び有機高分子成分の含有率の測定方法は、後述する実施例において説明する。
次に、本発明のセラミックナノファイバの製造方法(以下、単に本発明の製造方法ともいう)について説明する。
本発明の製造方法は、セラミックナノ粒子と有機高分子化合物を含む原料液を、エレクトロスピニング法により紡糸して繊維体を得る紡糸工程、及び該繊維体を、セラミックナノ粒子の融点以下の温度、好ましくは融点未満の温度で加熱し、該セラミックナノ粒子どうしを焼結により固結させる焼結工程を具備している。
前記紡糸工程においては、原料液として、セラミックナノ粒子と有機高分子化合物を含む液を用いる。紡糸工程においては、この原料液を、エレクトロスピニング法により紡糸する。この紡糸工程においては、原料液に含まれる有機高分子化合物が、繊維形成能を発現して、繊維状の繊維体が得られる。得られる繊維体は、図1(b)に示す繊維体10Aのように、有機高分子化合物に由来する有機高分子成分11中に、セラミックナノ粒子12が分散した構成を有している。
この紡糸工程で得られる繊維体も、少なくとも一部に繊維径が10nm以上1000nm以下の繊維を含むことが好ましく、より好ましくは、平均繊維径が10nm以上3000nm以下であり、更に好ましくは、平均繊維径が10nm以上1000nm以下である。繊維体の繊維径の測定方法は、本発明のナノファイバの繊維径の測定方法と同様である。
紡糸工程後の焼結工程においては、紡糸工程において得られた繊維体をセラミックナノ粒子の融点以下の温度で加熱することによって、セラミックナノ粒子どうしを焼結により固結させるとともに、繊維体中の有機高分子成分を熱分解して、有機高分子成分の含有率を0.1質量%以下に低減させる。これにより、図1(a)に示すセラミックナノファイバ10のような、セラミックナノ粒子の焼結体を繊維骨格とし、繊維内に、粒子間の隙間が無いか極めて微小かつ少ない高強度のセラミックナノファイバが得られる。また、焼結工程において得られるセラミックナノファイバの平均繊維径は、焼結工程前の繊維体の平均繊維径より小さくなっている。
原料液に含有させるセラミックナノ粒子としては、使用する溶媒に対して不溶な材料からなる無機物の粒子が好ましい。ここでいう溶媒に分散媒も含まれる。
例えば、溶媒が水又は水を50質量%超含むものである場合、水不溶性の金属又は半金属の酸化物又は水酸化物が好ましく用いられる。また水不溶性の金属又は半金属の窒化物又は炭化物を用いることもできる。そのような材料のうち、金属又は半金属の酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化カルシウム等の酸化物、或いは酸化インジウム錫などの複合酸化物等が挙げられる。そのような材料のうち、金属又は半金属の水酸化物としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの酸化物や水酸化物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してよい。これらの材料においては、二酸化ケイ素を例にとると、二酸化ケイ素からなる粒子の表面に存在するシラノール基の脱水縮合によって−Si−O−Si−の結合が生じ、この結合が多数生じることによって粒子どうしが結合する。
入手の容易性や、強度及び耐熱性に優れたナノファイバを確実に得る観点から、シリカ(二酸化ケイ素)等の酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)又は酸化セリウムの粒子を用いることが好ましい。
原料液に含有させる有機高分子化合物は、水溶性高分子でも良いし、非水溶性高分子でも良い。また天然高分子でも合成高分子でも良い。
原料液に含ませる有機高分子化合物は、紡糸工程で得られる繊維体においては、セラミック粒子とともに共に繊維体を構成する高分子成分となり、その繊維体の形態を維持する。焼結工程においては、有機高分子化合物に由来する高分子成分が、高熱により分解されて除去される。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、キトサン、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、ゼラチン、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
非水溶性高分子としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が例示できる。
用いる高分子化合物は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した高分子化合物から任意の複数種類を組み合わせて用いることもできる。
エレクトロスピニング法による繊維形成のし易さや原料液の粘度調整の観点からは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリアクリルアミド(PAM)等のノニオン性水溶性高分子を用いることが好ましい。これらも1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料液として、有機高分子化合物を溶媒に溶解又は分散させた液を用いる場合、該溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等を例示することができる。用いる溶媒は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した溶媒から任意の複数種類を選定し、混合して用いることもできる。前述した通り「溶媒」には分散媒も含まれる。
特に溶媒として水又は水を50質量%超含むものを用いる場合は、有機高分子化合物としては、前述した各種の水溶性高分子のような水溶性高分子を用いることが好ましい。この場合においても、水溶性高分子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水を50質量%超含む溶媒としては、水と有機溶媒、特に低級アルコール類(メタノール、エタノール等)との混合物が挙げられる。
本発明の製造方法においては、原料液として、セラミック比率が80質量%以上99質量%以下で、粘度が80mPa・s以上1500mPa・s以下のものを用いる。
〔原料液のセラミック比率〕
原料液のセラミック比率とは、セラミックナノ粒子と有機高分子化合物との合計の質量に対する、セラミックナノ粒子の質量の割合を百分率で表した値である。
セラミック比率が80質量%以上であると、エレクトロスピニング及びその後の焼結により、強度に優れたセラミックナノファイバが得られる一方、セラミック比率が80質量%未満であると、得られるセラミックナノファイバが、強度が不十分なものとなりやすい。その理由は、セラミック比率が高いと、紡糸工程においてセラミックナノ粒子どうしが密に存在する繊維体が得られ、それによって、焼結工程において、セラミックナノ粒子どうしが、隙間がないか殆ど無い状態に強固に固結した強い焼結体を骨格とするセラミックナノファイバが得られる一方、セラミック比率が低いと、紡糸工程において、セラミックナノ粒子どうしの間隔が広い繊維体が得られ、それによって、焼結工程において、セラミックナノ粒子どうしが少ない接触面積で結合した脆い焼結体を骨格とするセラミックナノファイバしか得られないことにあると考えられる。
強度に優れたセラミックナノファイバを得る観点から、原料液のセラミック比率(%)は、エレクトロスピニングにより紡糸可能であることを条件に、高いほど好ましく、好ましくは82%以上であり、より好ましくは85%以上である。また、原料液のセラミック比率(%)の上限値は99質量%である。99質量%を超えると、エレクトロスピニングにより紡糸することが難しくなる。使用する有機高分子化合物の選択の自由度を高める観点からは、原料液のセラミック比率(%)の上限値は96質量%以下であることが好ましい。
〔原料液の粘度〕
原料液の粘度が80mPa・s以上1500mPa・s以下のものを用いる。
原料液の粘度が80mPa・s未満であると、紡糸工程でエレクトロスピニングを行う際に、噴出された原料液が球形の液滴となって飛散する現象を生じ、繊維状の繊維体を得ることが困難となる。
他方、原料液の粘度が1500mPa・s超であると、紡糸工程でエレクトロスピニングを行う際に、原料液をノズルからスムーズに吐出させることが難しくなり、セラミックナノファイバの前段階の繊維体を得ることが難しくなる。
エレクトロスピニングによる紡糸性及び強度の高いセラミックナノファイバを得る観点から、原料液の粘度は、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上であり、また好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは800mPa・s以下であり、また、好ましくは100mPa・s以上1000mPa・s以下、より好ましくは200mPa・s以上800mPa・s以下である。
〔原料液の固形分濃度〕
エレクトロスピニング法における紡糸の過程で原料液が十分に乾燥し、繊維体を形成させる観点から、原料液は、下記方法により算出した固形分濃度が、5%以上50%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上30%以下である。
〔固形分濃度の算出方法〕
固形分濃度とは、原料液全体の質量に対する、原料液に含有するセラミックナノ粒子と有機高分子化合物及びその他の不揮発性の成分の合計の質量の割合を百分率で表した値である。その他の不揮発性の成分とは、紡糸工程において実質的に揮発せずに繊維体に残存する成分であって、公知の充填剤、架橋剤、分散剤、粘度調整剤、金属塩、顔料等の着色剤、粘土鉱物等を含むことができる。固形分の算出方法としては、原料液の製造時における各原料の配合量から算出することができる。または原料液をハロゲン水分計(例えば、HR83、メトラー・トレド社製)にて105℃で60分加熱し、加熱前の原料液の質量に対する加熱後の残存物の質量の割合として測定される値を固形分濃度として用いることもできる。
原料液中におけるセラミックナノ粒子の濃度は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、また好ましくは5質量%以上30質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
原料液中における有機高分子化合物の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であり、また好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、より好ましくは1質量%以上3質量%以下である。
〔セラミックナノ粒子の粒径〕
また原料液に含有させるセラミックナノ粒子は、平均粒子径が5nm以上100nm以下であることが好ましい。平均粒子径を100nm以下とすることで、紡糸工程において、セラミックナノ粒子間の隙間が減少した粒子が密に存在する繊維体が一層確実に得られ、それによって、焼結工程により、セラミックナノ粒子どうしが強く結合した強度の高いセラミックナノファイバがより確実に得られる。同様の観点から、使用するセラミックナノ粒子の平均粒子径は、5nm以上80nm以下がより好ましく、5nm以上70nm以下が更に好ましい。
〔平均粒子径の測定方法〕
セラミックナノ粒子の平均粒子径は以下のようにして測定される。セラミックナノ粒子を原料液で用いる溶媒に任意の濃度に希釈し、動的光散乱法による粒度分布測定装置(ナノ粒子解析装置SZ−100、株式会社堀場製作所製)によって粒度分布を測定し、体積基準の算術平均径をセラミックナノ粒子の平均粒子径とした。測定条件は、ナノアナリシスモード、体積基準、単分散、ナロー、検出角度173°とした。
〔原料液の曳糸性〕
エレクトロスピニングによる紡糸性を向上させ、より確実に、強度に優れたセラミックナノファイバが得られるようにする観点から、原料液は、紡糸するのに適切な曳糸性を有することが好ましい。曳糸性は、以下に示す方法により測定した原料液の破断長さを指標とし、その破断長さが、2mm以上30mm以下であり、より好ましくは3mm以上10mm以下である。
〔原料液の破断長さの測定方法〕
原料液の破断長さは曳糸性・牽糸性・凝固性測定装置(NEVA METER IMI−0901、株式会社石川鉄工所)によって測定した。直径3mmの測定子、容量60μLの測定皿を用いて、23℃60%RHの環境下で10回測定を行い、その2回目から9回目の測定値の平均を原料液の破断長さとした。測定条件は、伸長速度10mm/秒、浸漬深さ0.5mm、浸漬時間2秒、待機時間2秒、凝固率50%として測定を行った。
原料液には、セラミックナノ粒子及び有機高分子化合物に加えて、公知の充填剤、架橋剤、分散剤、粘度調整剤、金属塩、顔料等の着色剤、粘土鉱物等を含むことができる。
本発明の製造方法においては、上述した原料液から、エレクトロスピニングにより繊維体を製造する。図2には、エレクトロスピニングを実施するための装置30が示されている。エレクトロスピニングを実施するためには、シリンジ31、高電圧源32、導電性コレクタ33を備えた装置30が用いられる。シリンジ31は、シリンダ31a、ピストン31b及びキャピラリ31cを備えている。キャピラリ31cの内径は10μm以上1000μm以下程度である。シリンダ31a内には、前記の原料液が充填されている。高電圧源32は、例えば10kV以上40kV以下の直流電圧源である。高電圧源32の正極はシリンジ31における原料液と導通している。高電圧源32の負極は接地されている。導電性コレクタ33は、例えば金属製の板であり、接地されている。シリンジ31におけるキャピラリ31cの先端と導電性コレクタ33との間の距離は、例えば30mm以上300mm以下程度に設定されている。図2に示す装置30は、大気中で運転することができる。運転環境に特に制限はないが、温度20℃以上40℃以下、湿度10%RH以上50%RH以下であることが好ましい。
シリンジ31と導電性コレクタ33との間に電圧を印加した状態下に、シリンジ31のピストン31bを徐々に押し込み、キャピラリ31cの先端から原料液を押し出す。押し出された原料液においては、溶媒が揮発するとともに、繊維形成能を有する有機物が固化しつつ、電位差によって伸長変形しながら繊維体を形成し、導電性コレクタ33に引き寄せられる。伸長変形しながら繊維体が形成される際に、溶媒が揮発するとともに、繊維体の表面に該有機物が移動して有機物層(例えば水溶性樹脂層)が形成される。その結果、セラミックナノ粒子は繊維の内部に取り込まれ、粒子どうしが密に接触した構造が形成される。セラミックナノ粒子の粒径は、目的とするセラミックナノファイバの直径よりも十分に小さいことが好ましい。このようにして繊維体が製造される。繊維体は、その製造の原理上は、無限長の連続繊維となる。
このようにして製造された繊維体は、その複数本がランダムに堆積されてシート状を有している。この繊維体のシート状物を、導電性コレクタ33から剥離して、焼結工程に供する。
焼結工程においては、剥離した繊維体のシート状物を、加熱装置内に入れて、セラミックナノ粒子の融点以下の温度で加熱し、繊維体内のセラミックナノ粒子どうしを焼結により固結させるとともに、高分子成分を熱分解させ、その割合を0.1質量%以下に低下させる。これにより、強度及び耐熱性に優れた目的のセラミックナノファイバが得られる。焼結工程における繊維体の加熱には、繊維体を加熱可能な任意の加熱装置を用いることができ、例えば、炉の内部の温度を任意に設定できる電気炉等を用いることができる。繊維体を、搬送しながら加熱処理できる連続加熱処理装置を用いることもできる。
焼結工程における繊維体の加熱は、セラミックナノ粒子の融点以下の温度で行うが、原料液に用いた有機高分子化合物の熱分解温度以上で行うことが好ましい。有機高分子化合物の熱分解温度は、例えば以下のようにして測定される。
即ち、熱重量測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXSTAR6000、TG/DTA6300など)を用いて、有機高分子化合物を酸化雰囲気下で30℃から1000℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、その質量減少率を測定する。質量減少率が90%以上となった時の温度を熱分解温度とする。
焼結工程における繊維体の加熱温度(焼成温度)は、セラミックナノ粒子が酸化ケイ素の場合、800℃以上が好ましく、より好ましくは900℃以上、更に好ましくは1000℃以上であり、また、1500℃以下が好ましく、より好ましくは1200℃以下であり、より具体的には、800℃以上1500℃以下であることが好ましく、より好ましくは1000℃以上1500℃以下である。
焼結工程における繊維体の加熱温度(焼成温度)は、セラミックナノ粒子の種類によって適宜好ましい範囲が選択されるが、セラミックナノ粒子の融点を絶対温度でMP(K)としたとき、0.5MP(K)以上MP(K)以下の範囲とすることが好ましく、0.55MP(K)以上0.9MP(K)以下の範囲とすることがより好ましく、0.6MP(K)以上0.8MP(K)以下の範囲とすることが更に好ましい。
セラミックナノ粒子の融点は、例えば以下の方法により測定される。
即ち、セラミックナノ粒子の乾燥物を示差走査熱量計(DSC)によって常温から1500℃まで昇温し、得られたDSC曲線のセラミックナノ粒子の溶融による吸熱ピークのピークトップをセラミックナノ粒子の融点とする。なお、セラミックナノ粒子として融点が異なる複数種類のセラミックナノ粒子を用いる場合、融点の低いセラミックナノ粒子の融点を、セラミックナノ粒子の融点とする。
焼結工程における加熱時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上であり、また好ましくは1440分以下、より好ましくは600分であり、また好ましくは10分以上1440分以下、より好ましくは30分以上600分以下である。
紡糸工程で製造する繊維体は、シート状であることが好ましく、その繊維体のシート状物を焼結して得られるセラミックナノファイバもシート状の形態を維持していることが好ましい。本発明の製造方法で製造されるセラミックナノファイバは、強度及び耐熱性に優れており、その特性を活かすことのできる多様な用途に用いることができる。例えば、本発明の製造方法で得られるセラミックナノファイバのシート状物は、乾燥炉や焼却炉、自動車や船舶等のエンジンから排出されるガス中に含まれる粉塵等を捕集するためのフィルター等として好適に使用することができる。
本発明の製造方法により製造したセラミックナノファイバのシート状物において、セラミックナノファイバは、それらの交点において結合しているか又はセラミックナノファイバどうしが絡み合っている。それによって、セラミックナノファイバのシート状物は、それ単独でシート状の形態を保持することが可能である。セラミックナノファイバのシート状物は、ナノファイバどうしが、絡み合っており、且つ一部又は全部の交点におい結合していても良い。
本発明の製造方法により製造したセラミックナノファイバのシート状物は、強度に優れているため、後加工として、シート状物にプリーツ加工、コルゲート加工、及びハニカム加工から選択される1以上の加工を施し、立体的な形状を有するフィルターとして使用することもできる。
コルゲート加工とは、波板状にプリーツ加工したシート部材を平らなシート部材と積層することで固定化する加工であり、得られるフィルターは、例えば、板状の形態であったり、板状物を巻回し円筒状にした形態を有するものとなる。
ハニカム加工とは、波板状にプリーツ加工したシート部材を平らなシート部材と積層することで固定化し、それを複数層積層する加工であり、得られるフィルターは、例えば、板状、直方体状又は円筒状の形態を有するものとなる。
セラミックナノファイバのシート状物に対する加工は、一枚のシート状物に対して施しても良く、二枚以上を重ねたシート状物に対して施しても良い。また、セラミックナノファイバのシート状物を、他のシート材料と積層した後に、上述した加工を後加工として施しても良い。
本発明で製造されるセラミックナノファイバのシート状物を用いて製造されるフィルターは、高捕集効率、低圧力損失、高い耐熱性等の優れた性質を有している。
本発明で製造されるセラミックナノファイバやそのシート状物の用途は特に制限されず、フィルター以外にも多様な用途に用いることができる。例えば、複合材料の強化材、医療用ファブリック、断熱材、防音材、、細胞培養用の足場材、電池用部材等に用いることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
(1)原料液の調製
以下の各成分を混合して原料液を調製した。なお使用したセラミックナノ粒子の原料は水分散体の状態であったが、以下に記載した配合量は固形分質量を意味する。また水の配合量は、原料のセラミックナノ粒子に含まれる水も含めた値を意味する。
・ポリビニルアルコール(有機高分子化合物、クラレ(株)製「PVA224」、けん化度87〜89mol%)2.4g
・シリカ(セラミックナノ粒子、扶桑化学工業株式会社製「超高純度コロイダルシリカ PL−1」、平均粒子径60nm、濃度20%)11.8g(固形分)
・水 85.7g
(2)紡糸工程
図2に示す装置を用い、以下の条件でエレクトロスピニングを実施し、繊維体がランダムに堆積された繊維体のシート状物を得た。
・印加電圧:30kV
・キャピラリ−コレクタ間距離:180mm
・原料液吐出量:0.5mL/h
・製造環境:23℃、50%RH
(3)焼結工程
得られた繊維体のシート状物を、電気炉内に収容し、セラミックナノ粒子の融点以下の温度である1100℃で60分間にわたり加熱し、セラミックナノファイバのシート状物を得た。
図3(a)に、紡糸工程で得られた繊維体のシート状物の画像を示し、図3(b)に、そのシート状物のSEM像を示し、図3(c)に、そのシート状物から得られたセラミックナノファイバのシート状物のSEM像を示した。なお、図3(a)には、紡糸工程で得られた繊維体のシート状物を、縦横50mmの大きさにカットしたものが示されている。またシート状物の厚みは0.5mmであった。
〔実施例2〜5〕
原料液の組成を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミックナノファイバのシート状物を得た。なお使用したセラミックナノ粒子の原料は水分散体の状態であったが、以下に記載した配合量は固形分質量を意味する。また水の配合量は、原料のセラミックナノ粒子に含まれる水も含めた値を意味する。シート状物の厚みは0.5mmであった。
実施例2について、図4(a)に、紡糸工程で得られた繊維体のシート状物の画像を示し、図4(b)に、そのシート状物のSEM像を示し、図4(c)に、そのシート状物から得られたセラミックナノファイバのシート状物のSEM像を示した。
表1中、PVA217、PVA124及びPAMは、以下の通りである。
PVA217:ポリビニルアルコール(有機高分子化合物、クラレ(株)製「PVA217」、けん化度87〜89mol%)
PVA124:ポリビニルアルコール(有機高分子化合物、クラレ(株)製「PVA124」、けん化度98〜99mol%)
PAM:ポリアクリルアミド(有機高分子化合物、MTアクアポリマー(株)製「アコフロック N−100」)
〔実施例6〕
焼結工程における加熱温度及び加熱時間を1000℃、60分間に代えた以外は、実施例1と同様にして、セラミックナノファイバのシート状物を得た。
〔実施例7〕
原料液の組成を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミックナノファイバのシート状物を得た。
表1中の酸化チタンは、以下の通りである。
・酸化チタン(セラミックナノ粒子、多木化学株式会社製「酸化チタンゾル AM−15」、平均粒子径38nm、濃度16%)
〔実施例8〕
原料液の組成を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミックナノファイバのシート状物を得た。
表1中の酸化セリウムは、以下の通りである。
・酸化セリウム(セラミックナノ粒子、多木化学株式会社製「酸化セリウムゾル B−10」、平均粒子径25nm、濃度12%)
〔比較例1〕
原料液の組成を表1に示す通りに変更し、原料液のセラミック比率を75%に代えた以外は、実施例1と同様にして、セラミックナノファイバのシート状物を得た。
〔比較例2,3〕
原料液の組成を表1に示す通りに変更し、原料液の粘度を80Pa・s未満として、実施例1と同様のエレクトロスピニングによる紡糸を試みたところ、比較例2においては、図6(a)に示すように、シート状物が得られたが、そのシート状物においては、図6(b)に示すように、繊維状物の他に球形や紡錘形の固化物が多く生じており、繊維体のシート状物は得られなかった。
〔比較例4〕
原料液の組成を表1に示す通りに変更し、原料液の粘度を2015Pa・sとして、実施例1と同様のエレクトロスピニングによる紡糸を試みたところ、原料液がノズルからスムーズに吐出されなかった。
〔比較例5〕
焼結工程における加熱温度及び加熱時間を500℃、60分間に代えた以外は、実施例1と同様にして、セラミックナノファイバのシート状物を得た。
〔原料液〕
実施例及び比較例で用いた原料液の粘度を以下の方法により測定し、その結果を表1に示した。
〔原料液の粘度の測定方法〕
E型粘度計(VISCONIC、TOKIMEC製)を用い、23℃、50%RH環境下で原料液の粘度を3回測定し、その平均値を原料液の粘度とした。
〔評価〕
実施例1〜8及び比較例1,5で得られたセラミックナノファイバについて、前述した方法により平均繊維径を測定し、また、以下に示す方法により、1)BET比表面積、2)有機高分子成分の含有率、及び3)引張強度を測定した。それらの結果を表1に示した。
1)BET比表面積
得られたセラミックナノファイバのシート状物を、比表面積・細孔分布測定装置(日本ベル株式会社)を用いて、液体窒素を用いた多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。BET比表面積の導出にはBJH法を採用した。シート状物は105℃で2時間加熱する前処理を施した。
2)有機高分子成分の含有率
得られたセラミックナノファイバのシート状物を、熱重量測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXSTAR6000、TG/DTA6300など)を用いて、質量A(mg)のシート状物を酸化雰囲気下で30℃から1000℃まで昇温速度5℃/分で加熱する。高分子成分の熱分解温度における質量減少がB(mg)であったとき、そのシート状物の有機高分子成分の含有率は以下の式で算出することができる。
有機高分子成分の含有率(質量%)=(B/A)×100
3)引張強度の測定方法
得られたセラミックナノファイバのシート状物(厚み0.5mm)を50mm角に切り出し、引張試験機(精密万能試験機AG−Xplus、株式会社島津製作所)にて引張試験を行った。引張試験における最大点荷重を引張強度とした。支点間距離20mmでセットし、クロスヘッド速度10mm/minで測定した。
表1に示す結果から明らかなとおり、実施例1〜実施例6のように、セラミックナノ粒子としてシリカを用いた原料液を、セラミック比率が80質量%以上99質量%以下且つ粘度が80mPa・s以上1500mPa・s以下のものとして、紡糸工程及びそれ続く焼結工程を行うことで、平均繊維径が1000nm以下で、BET比表面積が低く、引張強度等の強度も強い、セラミックナノファイバが得られることが判る。また、それらのセラミックナノファイバは、有機高分子成分も含有率も低く、耐熱性も有している。またセラミック粒子として酸化チタン、酸化セリウムを用いた実施例7、8も同様に強度の高いシート状物が得られることが分かる。
これに対して、比較例1のように、原料液のセラミック比率が80質量%未満であると、得られるセラミックナノファイバのBET比表面積が大きくなり、引張強度等の強度も不十分となる。また、比較例2,3のように、原料液のセラミック比率が80質量%以上であっても、原料液の粘度が80mPa・s以上未満であると、前述のとおり、紡糸工程において、繊維体のシート状物が得られなかった。これらから、強度及び耐熱性に優れたセラミックナノファイバを得るためには、原料液が、本発明で規定する所定のセラミック比率及び粘度を有することが重要であることが判る。
また比較例5のように、焼結工程における加熱温度が低いと、セラミック粒子どうしが密に強固した焼結体が生じず、得られるセラミックナノファイバは、BET比表面積が大きく、強度が低いものとなった。比較例5においては、図7(a)に示すように、セラミックナノファイバのシート状物が得られたが、そのシート状物は、引張強度が低く、また、手で軽く触ると、図7(b)に示すように繊維が崩れた。
10 セラミックナノファイバ
10A 繊維体
11 有機高分子成分
12 セラミックナノ粒子
30 エレクトロスピニングの実施装置

Claims (7)

  1. BET比表面積が40m/g以下、繊維中に含まれる有機高分子成分の含有率が0.1質量%以下であるセラミックナノファイバの製造方法であって、
    セラミックナノ粒子と有機高分子化合物を含む原料液を、エレクトロスピニング法により紡糸して繊維体を得る紡糸工程、及び前記繊維体を、前記セラミックナノ粒子の融点以下の温度で加熱し、該セラミックナノ粒子どうしを焼結により固結させる焼結工程を具備しており、
    前記紡糸工程において、前記原料液として、セラミック比率が80質量%以上99質量%以下で、粘度が80mPa・s以上1500mPa・s以下のものを用いる、セラミックナノファイバの製造方法。
  2. 前記セラミックナノ粒子の平均粒子径が5nm以上100nm以下である、請求項1に記載のセラミックナノファイバの製造方法。
  3. 前記セラミックナノ粒子が、酸化ケイ素、酸化チタン又は酸化セリウムの粒子である、請求項1又は2に記載のセラミックナノファイバの製造方法。
  4. 前記焼結工程における前記繊維体の加熱温度が1000℃以上1500℃以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載のセラミックナノファイバの製造方法。
  5. 製造するセラミックナノファイバの平均繊維径が10nm以上3000nm以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載のセラミックナノファイバの製造方法。
  6. 前記紡糸工程においては、繊維体をシート状に堆積させ、前記焼結工程においては、セラミックナノファイバのシート状物を得る、請求項1〜5の何れか1項に記載のセラミックナノファイバの製造方法。
  7. セラミックナノファイバを含むフィルターの製造方法であって、
    請求項1〜6の何れか1項に記載のセラミックナノファイバの製造方法で、セラミックナノファイバのシート状物を製造した後、該シート状物に、プリーツ加工、コルゲート加工、及びハニカム加工から選択される1以上の加工を施し、立体的な形状を有するフィルターを製造する、フィルターの製造方法。
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