(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例1は、自動運転を実行する車両に搭載された車両制御装置に関する。ここでは、本線を走行している車両(以下、「第1車両」という)と、本線に合流しようとする車両(以下、「第2車両」という)とが存在し、第2車両が第1車両の前方に合流する状況を想定する。合流を実行するために、本実施例に係る車両制御装置は、ITS(Intelligent Transport Systems)等の通信システムにおいて取得した情報を利用する。ITSは、各車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムである。通信システムは、IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)と同様に、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能を使用する。そのため、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。一方、ITSにおいて、パケット信号はブロードキャスト送信される。このような車車間通信によって、各端末装置は、車両の速度あるいは位置等の情報を互いに交換する。
ここで、路車間通信と車車間通信との干渉を低減するために、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブロードキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてパケット信号をブロードキャスト送信する。その結果、路車間通信と車車間通信とが時分割多重される。なお、基地局装置からの制御情報を受信できない端末装置、つまり基地局装置によって形成されたエリアの外に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なくCSMA方式にてパケット信号を送信する。
このような車車間通信を利用して取得した情報をもとに、第1車両に搭載された車両制御装置は、第2車両の合流が完了する場合の第1車両と第2車両の配置を推定することによって、第1車両と第2車両とが接近するか否かを判定する。接近する場合、当該車両制御装置は、第1車両の速度を減速させて、第2車両との車間距離を確保する。ここで、接近とは干渉とも呼ばれ、これは、第2車両の合流が完了すると推定される位置とタイミングまで、第1車両が本線を定速走行した場合に、第1車両が第2車両の前方近傍から後方近傍までの範囲(以下、「干渉範囲」という)内に位置することである。前述のごとく、合流をスムーズにするために、干渉範囲はある程度広い方が好ましい。しかしながら、干渉範囲が広くなるほど、第1車両が減速すべき距離が長くなり、本線の車両の流れが悪化する。
これに対応するために、第1車両に搭載された車両制御装置は、第2車両から前方近傍までの干渉範囲の距離(以下、「第1距離」という)を、第2車両から後方近傍までの干渉範囲の距離(以下、「第2距離」という)よりも短くする。つまり、干渉範囲のうち、第2車両の後方の部分よりも第2車両の前方の部分が狭くされる。第2距離は短くされないので、第2車両と第1車両との車間距離は確保され、第2車両はスムーズに合流可能である。一方、第2車両は第1車両よりも一般的に速度が低いので、第2車両は第1車両に追いつきにくい。そのため、第1距離が長ければ第1車両が減速すべき距離が長くなる。そこで、第1距離を短くすることによって、第1車両が減速すべき距離が短くされ、本線の車両の流れの悪化が抑制される。
以下では、(1)本実施例に係る車両制御装置において使用される通信システムの概要、(2)車両制御装置を順に説明する。
(1)通信システムの概要
図1は、本発明の実施例1に係る通信システム100の構成を示す。これは、1つの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、ネットワーク20を含む。ここでは、第1車両12aのみに示しているが、各車両12には、端末装置14が搭載されている。また、エリア22が、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外24が、エリア22の外側に配置される。
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、2つの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
通信システム100において、基地局装置10は、交差点に固定して設置される。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から受信した信号、あるいは図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、フレームを繰り返し生成する。例えば、GNSS衛星から受信した信号に含まれた時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。
基地局装置10は、各フレームを複数に分割することによって、複数のサブフレームを生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、フレーム中の複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信する。路車送信期間において、複数のパケット信号がブロードキャスト送信されることもある。また、パケット信号には、例えば、事故情報、渋滞情報、信号情報等が含まれる。なお、パケット信号には、路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報およびフレームに関する制御情報も含まれる。
図2(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図2(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。これは、端末装置14がブロードキャスト送信に使用可能なサブフレームを複数時間多重することによってフレームが形成されているといえる。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。Nは、8以外であってもよい。
図2(b)は、基地局装置10のうちの1つ、例えば、図示しない第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームの路車送信期間を除く期間と、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、端末装置14がパケット信号をブロードキャスト送信可能な期間である。つまり、第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信可能である。また、フレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置14がパケット信号をブロードキャスト送信可能である。
図2(c)は、図示しない第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームの路車送信期間を除く期間と、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図2(d)は、図示しない第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームの路車送信期間を除く期間と、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図1に戻る。
端末装置14は、前述のごとく、車両12に搭載され移動可能である。端末装置14は、基地局装置10からのパケット信号を受信すると、エリア22に存在すると推定する。端末装置14は、エリア22に存在する場合、パケット信号に含まれた制御情報、特に路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報およびフレームに関する情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置14のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。端末装置14は、路車送信期間とは異なった期間である車車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信する。ここで、車車送信期間においてCSMA/CAが実行される。一方、端末装置14は、エリア外24に存在していると推定した場合、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号をブロードキャスト送信する。端末装置14は、他の端末装置14からのパケット信号を受信する。例えば、端末装置14は、受信したパケット信号をもとに、他の端末装置14が搭載された車両12の接近を認識する。ここでは、受信したパケット信号に含まれた情報をもとに、車両12の合流の処理が実行される。
(2)車両制御装置
図3(a)−(b)は、本発明の実施例1の前提となる車両12間の合流を示す。図3(a)は、合流前における車両12の配置を示す。図3(a)において、左側から右側への進行方向を有する本線200と、左側から右側への進行方向を有するとともに、本線200に合流するための合流路202とが配置される。第1車両12aは、本線200、特に合流前の本線200を右側に向かって走行し、第2車両12bは合流路202を右側に向かって走行する。このような第2車両12bによる合流が開始される位置は合流区間起点204と示され、第2車両12bによる合流が完了される位置は目標合流位置206と示される。合流区間起点204と目標合流位置206との間の区間は合流走行区間208と示され、合流走行区間208において第2車両12bは本線200に合流する。
図3(b)は、推定された合流完了時の車両12の配置を示す。これは、図3(a)の状況において、第1車両12aに搭載される車両制御装置によって推定される配置である。この推定には、前述の車車間通信によって取得された第2車両12bの位置情報、速度情報が使用されるとともに、次の走行モデルが使用される。走行モデルにおいて、第2車両12bは、合流路202を合流区間起点204まで定速走行し、合流区間起点204から想定合流加速度で目標速度まで加速走行する。一方、走行モデルにおいて、第1車両12aは定速走行する。このような走行モデルによって第2車両12bが目標合流位置206に到達した場合、図3(b)のように第1車両12aは第2車両12bの後方を走行する。その際の第2車両12bと第1車両12aとの車間距離は「d」と示される。ここでは、第2車両12bの前方と第1車両12aの前方との間の距離を車間距離としている。車間距離「d」が干渉範囲に含まれる場合、車両制御装置は、第1車両12aを減速させることによって、目標とする車間距離、例えば、本線200の規制速度の2秒分の距離を確保する。
図4は、本発明の実施例1の車両12の構成を示し、特に、自動運転に関連する構成を示す。車両12は、端末装置14、位置情報取得装置16、車両制御装置30、自動運転制御装置32を含む。車両制御装置30は、I/O部40、合流処理部42を含む。合流処理部42は、干渉処理部44を含み、干渉処理部44は、第1取得部50、第2取得部52、判定部54、指示部56を含む。自動運転制御装置32は、I/O部60、処理部62を含む。車両12は、図3(a)−(b)の第1車両12a、第2車両12bに対応する。
位置情報取得装置16は、車両12の位置情報を取得するとともに、車両12の速度情報も取得する。位置情報および速度情報の取得には公知の技術が使用されればよい。例えば、位置情報は、衛星測位、自律航法による測位、それらの組合せのいずれかを実行することによって取得される。また、位置情報は、マップマッチングによって取得されてもよい。位置情報取得装置16は、取得した位置情報、速度情報を定期的にI/O部40に出力する。
端末装置14は、ITSに対応した通信処理を実行可能であり、路車間通信および車車間通信を実行する。本実施例においては車車間通信を説明の対象にする。端末装置14は、I/O部40を介して位置情報取得装置16からの位置情報と速度情報を受けつける。端末装置14は、受けつけた位置情報と速度情報が含まれたパケット信号をブロードキャスト送信する。また、端末装置14は、図示しない他の端末装置14であって、かつ他の車両12に搭載された他の端末装置14からのパケット信号を受信する。受信したパケット信号に含まれた位置情報と速度情報は、他の車両12の位置情報と速度情報に相当する。端末装置14は、受信したパケット信号に含まれた位置情報と速度情報とをI/O部40に出力する。なお、端末装置14において送受信されるパケット信号には、位置情報と速度情報だけが含まれるのではなく、他の情報、特に車両12の合流に必要な情報が含まれてもよい。他の情報については、合流処理とともに説明する。
自動運転制御装置32は、自動運転制御機能を実装した自動運転コントローラである。処理部62は、自動運転制御機能を実行する。自動運転制御機能には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。I/O部60は、処理部62における処理を実行するために必要な情報をI/O部40から受けつける。このような情報は、位置情報取得装置16あるいは図示しないセンサにおいて取得されたデータであってもよいし、車両制御装置30からのコマンドであってもよい。また、I/O部60は、処理部62における処理によって生成された情報、例えばコマンドをI/O部40に出力する。
車両制御装置30は、自動運転制御における車両12の合流処理を実行するためのコントローラである。合流処理部42は、車両12の合流処理を実行するが、詳細は後述する。干渉処理部44は、本車両12が図3(a)−(b)の本線200の道路を走行している第1車両12aである場合に、干渉発生の推定と、速度の調整の指示とを実行するが、詳細は後述する。一方、本車両12が図3(a)−(b)の本線200への合流路202を走行している第2車両12bである場合、干渉処理部44は処理を実行しない。I/O部40は、端末装置14、位置情報取得装置16、合流処理部42、干渉処理部44、I/O部60に接続され、各種の情報を入出力する。各種の情報にはコマンドも含まれる。車両制御装置30と自動運転制御装置32との間は直接、信号線で接続される。なお、これらはCAN(Controller Area Network)を介して接続されてもよい。また、車両制御装置30と自動運転制御装置32を統合して1つのコントローラとされてもよい。
合流処理部42を説明するために、図5(a)−(c)、図6〜図9を使用する。特に、図5(a)−(c)、図6、図7では、第1車両12aと第2車両12bとを含めた全体的な処理を説明し、図8では、第2車両12bにおける処理を説明し、図9では、第1車両12aにおける処理を説明する。図5(a)−(c)は、車両12による処理の概要を示す。合流処理は車両制御装置30において実行され、車車間通信は端末装置14において実行されるが、以下では説明を明瞭にするためにこれらの処理を車両12が実行するように示す場合もある。合流処理は4つ状態を含んでおり、それらは、状態1:サービスアウト、状態2:合意形成待ち、状態3:合意形成確立、状態4:合流完了である。
図5(a)は、状態1:サービスアウト、状態2:合意形成待ちを示す。本線200、合流路202、合流区間起点204、目標合流位置206、合流走行区間208は、図3(a)−(b)と同様に示される。状態1は、合流処理を開始する前の状態を示す。サービス起点210は、本線200、合流路202において、合流区間起点204から目標合流位置206とは反対方向に、合流区間起点204から所定の距離離れた位置に配置される。所定の距離は、予め定められた値であってもよいし、本線200、合流路202の形状に応じて設定された値であってもよい。また、本線200における所定の距離と合流路202における所定の距離とが異なっていてもよい。第1車両12aおよび第2車両12bは、サービス起点210を通過するまで、状態1になっており、合流処理を開始していない。なお、合流処理を開始していない場合であっても、第1車両12aと第2車両12bは車車間通信を実行する。
状態2は、第1車両12aにおいて、第2車両12bの存在を認識し、受入要否を確認する状態を示す。第2車両12bは、車車間通信によって本線200を第1車両12aが走行していることを認識する。第2車両12bは、サービス起点210を通過した場合に、第1車両12aに対する合流受入要請を発行する。合流受入要請には、例えば、目標合流位置206、合流残秒数の情報が含まれる。目標合流位置206は、合流完了(加速完了時)の位置であり、合流区間起点204からの距離(m)を示す。合流残秒数は、目標合流位置206への到達に要する時間(秒)を示す。ここで、合流受入要請はパケット信号に含まれてブロードキャスト送信される。
第1車両12aは、サービス起点210を通過した場合に、第2車両12bからのパケット信号であって、かつ合流受入要請が含まれたパケット信号を受信すれば、目標合流位置206において第2車両12bと干渉するか否かを判定する。干渉の判定処理については後述する。第1車両12aは、第2車両12bと干渉すると判定した場合、第2車両12bに対する合流受入受諾を発行する。合流受入受諾は、第2車両12bの受入を受諾することを知らせるための通知であり、パケット信号に含まれてブロードキャスト送信される。合流受入受諾には、例えば、合意形成対象車両、目標合流位置206、合流残秒数の情報が含まれる。合意形成対象車両は、合流時に、第1車両12aの直前に位置すると予測される合流車両、例えば、第2車両12bのIDを示す。目標合流位置206、合流残秒数は、合流受入要請に含まれる目標合流位置206、合流残秒数と同様である。一方、第1車両12aは、第2車両12bと干渉しないと判定した場合、第2車両12bに対する合流受入受諾を発行しない。
図5(b)は、状態3:合意形成確立を示す。状態3は、第1車両12aが、合意形成対象の第2車両12bをターゲットとして、減速により車間距離を確保する状態を示す。第2車両12bは、前述の走行モデルにしたがって走行する。つまり、第2車両12bは、合流区間起点204まで定速走行を実行し、合流区間起点204を通過してから想定合流加速度で目標速度まで加速しながら走行する。定速走行は、例えば、規制速度でなされる。第2車両12bは、このような走行の状況が示された情報、例えば、目標合流位置206に到達するまでの時間が示された情報が含まれた合意形成済通知を定期的に発行する。第1車両12aに対する合意形成済通知はパケット信号に含まれてブロードキャスト送信される。
一方、第1車両12aは、状態2において第2車両12bと干渉すると判定した場合、本線200を減速しながら走行する。これは、目標合流位置206において第2車両12bとの車間距離を長くするためである。なお、第1車両12aは、第2車両12bからのパケット信号に含まれた情報をもとに、第1車両12aの減速の程度を修正してもよい。第1車両12aは、第2車両12bに対する合意形成済通知を定期的に発行する。合意形成済通知では、第2車両12bが合意形成対象車両であることが示される。また、合意形成済通知は、第1車両12aの走行の状況が示された情報を含んでもよい。合意形成済通知はパケット信号に含まれてブロードキャスト送信される。
図5(c)は、状態4:合流完了を示す。状態4は、第1車両12aの前方に、合意形成対象車両である第2車両12bが合流した状態を示す。第2車両12bは、目標速度に到達した場合、本線200への合流が完了したとして、サービスアウト(本線)通知を発行する。サービスアウト(本線)通知はパケット信号に含まれたブロードキャスト送信される。第1車両12aは、第2車両12bからのパケット信号であって、かつサービスアウト(本線)通知が含まれたパケット信号を受信した場合、合意形成対象車両である第2車両12bの合流が完了したとして、サービスアウト通知を発行する。サービスアウト通知は、パケット信号に含まれたブロードキャスト送信される。
図6は、本発明の実施例1の車両12間の合流手順を示すシーケンス図である。第2車両12bは、合流受入要請を第1車両12aに送信し(S10)、第1車両12aは、合流受入受諾を第2車両12bに送信する(S12)。これらは前述の状態2に相当する。第2車両12bと第1車両12aの間で合流形成済通知を交換する(S14、S16)。これらは前述の状態3に相当する。第2車両12bは、サービスアウトを第1車両12aに送信し(S18)、第1車両12aは、サービスアウト通知を第2車両12bに送信する(S20)。これらは前述の状態4に相当する。
図7は、端末装置14において送受信されるパケット信号に含まれるデータのフォーマットを示す。データは複数種類のデータフレームを含み、各データフレームは複数種類のデータエレメントを含む。データエレメントの意味は概要に示される。データフレーム「位置情報」が前述の位置情報に相当し、データフレーム「車両状態」が前述の速度情報に相当する。データフレーム「道路線形情報」は、合流区間起点204の位置情報を示し、データフレーム「走行情報」は、本線200を走行しているか、合流路202を走行しているかを示す。データフレーム「合意形成情報」は、前述の合成処理で使用される情報が含まれ、特にデータエレメント「合意形成通知種別」によって、合流受入要請、サービスイン通知、合流受入受諾、合意形成済通知、サービスアウト通知(本線)、サービスアウト通知(合流)のいずれかが指定される。
次に、図8を使用しながら、第2車両12bの合流処理部42における処理を説明する。図8は、合流処理部42における状態遷移を示す。図8に示される状態は、これまでの状態に対応する。合流処理部42は、状態1:サービスアウト(合流)において、サービスアウト通知(合流)を発行する(T100)。合流処理部42は、状態1においてサービスインを判定すれば(T102)、状態2:合流受入受託待ちに遷移させて、合流受入要請を発行する(T104)。ここで、サービスイン判定は、自車がサービス起点210から目標合流位置206に存在する場合になされる。
合流処理部42は、状態2においてサービスアウトを判定すれば(T106)、状態1に遷移させる(T100)。ここで、サービスアウト判定は、a)合流走行区間208の終点を目標速度未達で通過した場合、あるいはb)コースから外れた場合になされる。合流処理部42は、状態2において合流完了を判定すれば(T108)、状態4:サービスアウト(本線)に遷移させて、サービスアウト通知(本線)を発行する(T116)。ここで、合流完了の判定は、合流区間起点204を通過し、かつ目標速度に到達した場合になされる。合流処理部42は、状態2において合流受入受諾を受信すれば(T110)、状態3:合意形成確立に遷移させて、合意形成済通知を発行する(T112)。
合流処理部42は、状態3においてサービスアウトを判定すれば(T106)、状態1に遷移させる(T100)。合流処理部42は、状態3において合流完了を判定すれば(T114)、状態4に遷移させる(T116)。合流処理部42は、状態3において合流受入受諾あるいは合意形成済通知を受信すれば(T118)、状態3を維持する(T112)。合流処理部42は、状態3において合意形成済通知が途絶(連続N回未満)すれば(T120)、状態3を維持する(T112)。合流処理部42は、状態3において、合意形成済通知が途絶(連続N回)した場合(T122)、合流受入受諾あるいは合意形成済通知以外の情報を受信した場合(T122)、状態2に遷移させる(T104)。
次に、図9を使用しながら、第1車両12aの合流処理部42における処理を説明する。図9は、合流処理部42における別の状態遷移を示す。図9に示される状態は、これまでの状態に対応するが、これまでの状態2が状態2−1と状態2−2に分けて示される。合流処理部42は、状態1:サービスアウト(本線)において、サービスアウト通知(本線)を発行する(T200)。合流処理部42は、状態1においてサービスインを判定すれば(T202)、状態2−1:合流受入要請待ちに遷移させて、サービスイン通知を発行する(T204)。
合流処理部42は、状態2−1においてサービスアウトを判定すれば(T206)、状態1に遷移させる(T200)。ここで、サービスアウト判定は、a)合流走行区間208の終点を通過した場合、あるいはb)コースから外れた場合になされる。合流処理部42は、状態2−1において合流受入要請を受信し、干渉する車両12を検出すれば(T208)、状態2−2:合意形成待ちに遷移させて、合流受入受諾を発行する(T210)。
合流処理部42は、状態2−2においてサービスアウトを判定すれば(T206)、状態1に遷移させる(T200)。合流処理部42は、状態2−2において合意形成済通知を受信し、かつ干渉する車両12の条件が満たされる場合(T212)、状態3:合意形成確立に遷移させて、合流形成済通知を発行するとともに、速度を指示する(T220)。合流処理部42は、状態2−2において合流受入要請を受信し、干渉する車両12(対象車両以外も評価対象)を検出すれば(T214)、状態2−2を維持する(T210)。合流処理部42は、状態2−2において合意形成済通知が途絶(連続N回未満)すれば(T216)、状態2−2を維持する(T210)。合流処理部42は、状態2−2においてa)からc)のいずれかに該当する場合(T218)、状態2−1に遷移させる(T204)。a)は、合意形成済通知が途絶(連続N回)した場合であり、b)は、干渉条件を満たさない場合であり、c)は、対象車両からサービスアウト通知(合流あるいは本線)を受信した場合である。
合流処理部42は、状態3においてサービスアウトを判定すれば(T206)、状態1に遷移させる(T200)。合流処理部42は、状態3において合意形成済通知を受信し、かつ干渉する車両12の条件が満たされる場合(T212)、状態3を維持する(T220)。合流処理部42は、状態3において合意形成済通知が途絶(連続N回未満)すれば(T222)、状態3を維持する(T220)。合流処理部42は、状態3において前述のa)からc)のいずれかに該当する場合(T218)、状態2−1に遷移させる(T204)。
図4に戻る。本車両12が第1車両12aである場合に、合流処理部42は、図9の状態2−1において、干渉する車両12を検出する(T208)とともに、図9の状態3において速度を指示する(T220)。合流処理部42は、これらの処理を干渉処理部44に実行させる。第1取得部50は、I/O部40を介して位置情報取得装置16から第1車両12aの位置情報と速度情報とを取得する。また、第2取得部52は、I/O部40を介して端末装置14から第2車両12bの位置情報と速度情報とを取得する。
判定部54は、第2取得部52において取得した位置情報と速度情報と、第1取得部50において取得した位置情報と速度情報とをもとに、第2車両12bが第1車両12aの前方に合流する場合に、干渉が発生するか否かを判定する。第2車両12bが第1車両12aの前方に合流する場合は、第2車両12bが図5(a)の本線200に合流する場合に相当する。また、判定部54におけるこのような干渉判定が図9のT208の処理に相当する。ここでは、干渉判定を具体的に説明する。
判定部54は、第1車両12aの情報として、本線規制速度(Vhu)、想定本線減速度(Ah)を保持するとともに、現在速度(Vhn)、現在位置(Phn)を第1取得部50から受けつける。また、判定部54は、相対位置(Lhn)、走行距離(Rh)、調整時走行距離(R’h)、目標合流位置(Lhp)、減速開始時間(Tha)を演算により導出する。相対位置(Lhn)は、第1車両12aの現在位置(Phn)から合流区間起点204までの距離である。判定部54は、第2車両12bの情報として、想定合流加速度(Ag)を保持するとともに、現在速度(Vgn)、現在位置(Pgn)を第2取得部52から受けつける。ここで、想定合流加速度(Ag)は、予め定めた加速度であり、一般的な高速合流時の加速度を想定する。また、判定部54は、相対位置(Lgn)、目標合流位置(Lgp)を演算により導出する。相対位置(Lgn)は、第2車両12bの現在位置(Pgn)から合流区間起点204までの距離である。判定部54は、判定しきい値として、安全車間距離時間(Td)、安全車間距離前方係数(f)、安全車間距離後方係数(b)、ドライバ反応時間(Tε)を保持する。判定部54は、合流区間起点(Ps)を保持するとともに、合流完了予測時間(T)を演算により導出する。
判定部54は、合流完了予測時間(T)を次のように導出する。
Lgn>0のとき、Lgn/Vgn+(Vhu−Vgn)/Ag
Lgn≦0のとき、(Vhu−Vgn)/Ag
判定部54は、目標合流位置(Lgp)を次のように導出する。
Lgn>0のとき、−(Vhu−Vgn)(Vhu+Vgn)/2Ag
Lgn≦0のとき、Lgn−(Vhu−Vgn)(Vhu+Vgn)/2Ag
判定部54は、第1車両12aの走行距離(Rh)を次のように導出する。
Rh=Vhn*T
なお、Lgn>0は、第2車両12bの現在位置(Lgn)が合流区間起点204よりも上流(合流区間起点204に到達する前)の場合に相当し、Lgn≦0は、第2車両12bの現在位置(Lgn)が合流区間起点204よりも下流(合流区間起点204の上、または合流区間起点204を通過した後)の場合に相当する。
判定部54は、Lgp−Lhn+Rh>−Td*b*VhuかつLgp−Lhn+Rh<Td*f*Vhuを満たす場合、干渉の発生を判定する。一方、判定部54は、この条件を満たさない場合、干渉が発生しないことを判定する。判定部54は、判定結果を合流処理部42に出力する。なお、複数の合流受入要請を受信した場合、判定部54は、それらのうち、現在位置で先頭の車両12から、干渉が発生するか否かを判定する。つまり、合流処理部42は、判定部54において最初に干渉するとされる車両12を対象車両とする。
図10は、判定部54における処理、特に干渉が発生するか否かを判定するための処理の概要を示す。ここでは、第2車両12bが目標合流位置206に存在する場合を想定する。このような状況において、第2車両12bよりも前方に第1距離Dfが規定されるとともに、第2車両12bよりも後方に第2距離Dbが規定される。第1距離Dfは、前述のTd*f*Vhuに相当し、第2距離Dbは、前述のTd*b*Vhuに相当する。第1距離Dfと第2距離Dbによって特定される範囲が、前述の干渉範囲に相当する。判定部54は、第2車両12bが目標合流位置206に存在する場合に第1車両12aが第1距離Dfと第2距離Dbの中で合流される場合、つまり第1車両12aが干渉範囲で合流される場合、干渉が発生すると判定する。
第1距離Dfと第2距離Dbは、いずれも本線規制速度(Vhu)に依存するので、判定部54は、本線200の規制速度に応じて、第1距離Dfと第2距離Dbとを調整する。また、判定部54において第1距離Dfは第2距離Dbよりも短くされる。これは、安全車間距離前方係数(f)が安全車間距離後方係数(b)よりも小さくされることに相当する。例えば、安全車間距離前方係数(f)は「0.25」に設定され、安全車間距離後方係数(b)は「0.75」に設定される。また、第1距離Dfは、「0」に近い値にされる。これは、第2車両12bが自律センサでタイミングを調整することを想定するからである。一方、第2距離Dbは、本線規制速度の2秒分の距離とされ、前述の目標とする車間距離に合わされる。第1距離Dfが短くされるので、第2車両12bの前方において、干渉が発生すると判定されにくくなる。一方、第2距離Dbが短くされないので、第2車両12bの後方において、干渉が発生すると判定されにくくならない。
干渉が発生する場合、判定部54は、第1車両12aの速度の調整、特に減速が必要であると判定する。判定部54は、減速が必要であると判定した場合、減速開始時間(Tha)を導出する。まず、判定部54は、調整時走行距離(R’h)を次のように導出する。
R’h=Vhn*t1+Vhn*t2+0.5*Ah*t22
判定部54は、目標到達位置(Lhp)を次のように導出する。
Lhp=Lgp+Td*b*Vhu
Lhn−R’h=Lhpとなることから、判定部54は、減速開始時間(Tha)を次のように導出する。
t1+t2=T
t2=√(2(−Td*b*Vhu−Lgp+Lhn−Rh)/Ah)
Tha=t1=T−t2
判定部54は、減速開始時間(Tha)を指示部56に出力する。
指示部56は、判定部54から減速開始時間(Tha)を受けつける。指示部56は、t1>0+Tεの場合、速度維持を決定し、I/O部40を介して自動運転制御装置32に速度維持を指示する。その際、I/O部40からは速度維持のコマンドが自動運転制御装置32に出力される。一方、指示部56は、t1≦0+Tεの場合、減速を決定し、I/O部40を介して自動運転制御装置32に減速を指示する。その際、I/O部40からは減速のコマンドが自動運転制御装置32に出力される。つまり、指示部56は、判定部54において速度の調整が必要であると判定した場合、自動運転制御装置32に速度を調整させる。指示部56におけるこのような指示が図9のT220の指示に相当する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
以上の構成による車両制御装置30の動作を説明する。図11(a)−(d)は、車両制御装置30による合流手順を示すフローチャートである。これは、第2車両12bの合流処理部42における処理に対応する。図11(a)は状態1に対応する。サービスインである場合(S100のY)、合流処理部42は状態2に遷移させる(S102)。サービスインでない場合(S100のN)、合流処理部42は状態1を維持する(S104)。
図11(b)は状態2に対応する。サービスインであり(S120のY)、合流完了判定によってT108に該当せず(S122のN)、メッセージ判定によってT110に該当しない場合(S124のN)、合流処理部42は状態2を維持する(S126)。メッセージ判定によってT110に該当する場合(S124のY)、合流処理部42は状態3に遷移させる(S128)。合流完了判定によってT108に該当する場合(S122のY)、合流処理部42は状態4に遷移させる(S130)。サービスインでない場合(S120のN)、合流処理部42は状態1に遷移させる(S132)。
図11(c)は状態3に対応する。サービスインであり(S150のY)、合流完了判定によってT114に該当せず(S152のN)、メッセージ判定によってT122に該当する場合(S124のT122)、合流処理部42は状態2に遷移させる(S156)。メッセージ判定によってT118あるいはT120に該当する場合(S154のT118またはT120)、合流処理部42は状態3を維持する(S158)。合流完了判定によってT114に該当する場合(S152のY)、合流処理部42は状態4に遷移させる(S160)。サービスインでない場合(S150のN)、合流処理部42は状態1に遷移させる(S132)。
図11(d)は状態4に対応する。合流処理部42は状態4を維持する(S180)。
図12(a)−(d)は、車両制御装置30による別の合流手順を示すフローチャートである。これは、第1車両12aの合流処理部42における処理に対応する。図12(a)は状態1に対応する。サービスインである場合(S200のY)、合流処理部42は状態2−1に遷移させる(S202)。サービスインでない場合(S200のN)、合流処理部42は状態1を維持する(S204)。
図12(b)は状態2−1に対応する。サービスインであり(S220のY)、メッセージ判定によってT208に該当しない場合(S222のN)、合流処理部42は状態2−1を維持する(S224)。メッセージ判定によってT208に該当する場合(S222のY)、合流処理部42は状態2−2に遷移させる(S226)。サービスインでない場合(S220のN)、合流処理部42は状態1に遷移させる(S228)。
図12(c)は状態2−2に対応する。サービスインであり(S240のY)、メッセージ判定によってT212に該当せず(S242のN)、メッセージ判定によってT218に該当する場合(S244のT218)、合流処理部42は状態2−1に遷移させる(S246)。メッセージ判定によってT214あるいはT216に該当する場合(S244のT214またはT216)、合流処理部42は状態2−2を維持する(S248)。メッセージ判定によってT212に該当する場合(S242のY)、合流処理部42は状態3に遷移させる(S250)。サービスインでない場合(S240のN)、合流処理部42は状態1に遷移させる(S252)。
図12(d)は状態3に対応する。サービスインであり(S270のY)、メッセージ判定によってT218に該当する場合(S272のT218)、合流処理部42は状態2−1に遷移させる(S274)。メッセージ判定によってT222に該当する場合(S272のT222)、合流処理部42は状態3を維持する(S276)。サービスインでない場合(S270のN)、合流処理部42は状態1に遷移させる(S278)。
本発明の実施例によれば、第2車両12bの前方に設定される第1距離を、第2車両12bの後方に設定される第2距離よりも短くするので、第2距離を短くさせないことによって、第2車両12bの合流をスムーズにできる。また、第1距離を短くするので、第2車両12bの前方において、干渉が発生すると判定されにくくなる。また、干渉が発生すると判定されにくくなるので、減速をされにくくできる。また、減速がされにくくなるので、本線200を走行する車両12への影響を低減できる。また、道路の規制速度に応じて、第1距離と第2距離とを調整するので、各道路に適した第1距離と第2距離とを設定できる。また、本線200への合流路202を走行している第2車両12bが、本線200に合流する場合において、第2車両12bの合流をスムーズにしながら、本線200を走行する車両12への影響を低減できる。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例2も、実施例1と同様に、自動運転を実行する車両に搭載された車両制御装置に関する。ここでも、第1車両が走行している本線に、合流路からの第2車両が合流する状況を想定する。実施例1においては、車車間通信によって第1車両と第2車両との間で情報を交換することによって、4つの状態を遷移しながら第2車両を合流させるための合流処理が実行される。一方、実施例2においては車車間通信が実行されず、合流地点付近に設置された基地局装置との路車間通信が実行される。このような路車間通信を使用した合流処理は、次の2つのパターンに分類される。
1つ目のパターン(以下、「第1パターン」という)では、基地局装置から第1車両への路車間通信が実行され、基地局装置から第2車両への路車間通信が実行されない。つまり、本線を走行している車両は路車間通信を実行するが、合流路を走行する車両は路車間通信を実行しない。この場合、基地局装置は、合流路を走行する第2車両を検出可能なセンサを備えており、センサでの検出結果を路車間通信でブロードキャスト送信する。第1車両は、基地局装置からの検出結果を受信し、検出結果をもとに速度を調整しながら、第2車両を合流させる。なお、第1パターンにおいて第2車両では自動運転が実行されていなくてもよい。
2つ目のパターン(以下、「第2パターン」という)では、基地局装置から第2車両への路車間通信が実行され、基地局装置から第1車両への路車間通信が実行されない。つまり、合流路を走行している車両は路車間通信を実行するが、本線を走行する車両は路車間通信を実行しない。この場合、基地局装置は、本線を走行する第1車両を検出可能なセンサを備えており、センサでの検出結果を路車間通信でブロードキャスト送信する。第2車両は、基地局装置からの検出結果を受信し、検出結果をもとに速度を調整しながら合流する。なお、第2パターンにおいて第1車両では自動運転が実行されていなくてもよい。実施例2における車両12は、図4と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
(1)第1パターン
図13(a)−(c)は、本発明の実施例2に係る車両12による処理の概要を示す。図13(a)は、状態1:サービスアウトを示す。第1車両12a、第2車両12b、本線200、合流路202、合流区間起点204、目標合流位置206、合流走行区間208は、図5(a)−(c)と同様に示される。また、第2車両12bは、第1車両12aよりも前方の位置において本線200に合流しようとする。しかしながら、図5(a)−(c)とは異なって、第1車両12a、第2車両12bは車車間通信を実行しない。その代わりに、図13(a)では、本線200に基地局装置10が設置され、基地局装置10は、本線200を走行する第1車両12aと路車間通信を実行する。一方、基地局装置10は、合流路202を走行する第2車両12bと路車間通信を実行しない。
ここで、基地局装置10には図示しないセンサが設けられており、センサは、検出範囲300を形成することによって、合流路202を走行する第2車両12bを検出する。基地局装置10は、検出結果を車両検知情報として路車間通信によって送信する。車両検知情報には、第2車両12bの速度、合流区間起点204までの距離が含まれる。また、合流路202に複数の車両12が走行していた場合、車両検知情報には、複数の車両12に関する情報が含まれる。
図13(b)は、状態2:車間調整を示す。状態2は、第1車両12aが、基地局装置10からの車両検知情報に含まれた第2車両12bをターゲットとして、減速により車間距離を確保する状態を示す。ここで、第1車両12aは、第2車両12bが合流区間起点204を通過した後に、想定加速度で加速することを想定し、第2車両12bと干渉するか否かを判定する。また、第1車両12aは、第2車両12bと干渉すると判定した場合、第2車両12bの合流が容易となるように、減速して車間を確保する。干渉するか否かの判定、減速のための減速開始時間の導出は、実施例1と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。減速開始時間は、車間調整開始時間と呼ばれてもよい。図13(c)は、第1車両12aの前方に、第2車両12bが合流した状態を示す。これは、図5(c)と同様に示される。
図14は、本発明の実施例2の車両12における合流手順を示すシーケンス図である。基地局装置10は、車両検知情報を第1車両12aに順次送信する(S300、S302、S304)。第1車両12aは、これらの車両検知情報を受信する。これは、前述の状態1、状態2に相当する。
図15は、本発明の実施例2の端末装置14において受信されるパケット信号に含まれるデータのフォーマットを示す図である。データは複数種類のデータフレームを含み、各データフレームは複数種類のデータエレメントを含む。データエレメントの意味は概要に示される。データフレーム「車両検知情報」が前述の車両検知情報に相当する。また、データエレメント「検知車両位置」は、合流区間起点204までの距離を示し、データエレメント「検知車両速度」は、第2車両12bの速度を示す。なお、データエレメント「路側機ID」は、基地局装置10を識別するための情報に相当する。
図16は、本発明の実施例2の車両制御装置30における状態遷移を示す。これは、第1車両12aの合流処理部42における処理に相当する。図16に示される状態は、これまでの状態に対応する。合流処理部42は、状態1:サービスアウト(本線)において、サービスアウト通知(本線)を発行する(T300)。合流処理部42は、状態1においてサービスインを判定すれば(T302)、状態2:車間調整に遷移させて、車間調整通知を発行するとともに、速度を指示する(T304)。合流処理部42は、状態2においてサービスアウトを判定すれば(T306)、状態1に遷移させる(T300)。ここで、サービスアウト判定は、a)合流走行区間208の終点を通過した場合、あるいはb)コースから外れた場合になされる。
(2)第2パターン
図17(a)−(c)は、本発明の実施例2に係る車両12による別の処理の概要を示す。図17(a)は、状態1:サービスアウトを示す。第1車両12a、第2車両12b、本線200、合流路202、合流区間起点204、目標合流位置206、合流走行区間208は、図13(a)−(c)と同様に示される。ここでも、第1車両12a、第2車両12bは車車間通信を実行せずに、本線200に基地局装置10が設置される。しかしながら、基地局装置10は、合流路202を走行する第2車両12bと路車間通信を実行し、本線200を走行する第1車両12aと路車間通信を実行しない。
基地局装置10には図示しないセンサが設けられており、センサは、検出範囲302を形成することによって、本線200を走行する車両12を検出する。基地局装置10は、検出結果を車両検知情報として路車間通信によって送信する。車両検知情報には、第1車両12aの速度、合流区間起点204までの距離が含まれる。また、本線200に複数の車両12が走行していた場合、車両検知情報には、複数の車両12に関する情報が含まれる。
図17(b)は、状態2:合流タイミング調整を示す。状態2は、第2車両12bが、基地局装置10からの車両検知情報に含まれた第1車両12aをターゲットとして、本線200への合流のタイミングを調整する状態を示す。第2車両12bは、基地局装置10からの車両検知情報をもとに、本線車の存在を認識し、合流可否を確認する。その際、第2車両12bは、第1車両12aが定速で走行することを想定するとともに、第2車両12bが合流区間起点204を通過した後に想定加速度で加速することを前提にする。第2車両12bは、合流が容易となる位置を算出するとともに、加速タイミングを調整する。特に、第2車両12bは、合流可能な時間内で、最も早く発生する合流可能な車間を狙って合流する。合流完了(加速完了時)の位置が、目標合流位置206として示される。
ここで、第2車両12bの干渉処理部44においてなされる合流可否の確認を具体的に説明する。第2車両12bが合流する場合として、ケース1からケース3の3種類が想定される。ケース1では、第1車両12aの前方に第2車両12bが合流しようとする。干渉処理部44は、第1車両12aから第2距離Dbよりも前方に第2車両12bが合流するのであれば、第1車両12aの前方に合流可であると判定する。ケース2では、第1車両12aの後方に第2車両12bが合流しようとする。干渉処理部44は、第1車両12aから第1距離Dfよりも後方に第2車両12bが合流するのであれば、第1車両12aの後方に合流可であると判定する。ケース3では、第1車両12aの後方に設定された第1距離Dfと、第1車両12aの前方に設定された第2距離Dbとの間に、第2車両12bが合流しようとする。第1距離Dfと第2距離Dbとの組合せは、実施例1の干渉範囲に相当する。この場合、干渉処理部44は、第1車両12aの後方に第2車両12bが合流するように、第2車両12bの速度を調整する。
さらに、干渉処理部44における干渉が発生するか否かの判定と、第2車両12bの速度の調整とを詳細に説明する。干渉処理部44の判定部54は、第1車両12aの情報として、本線規制速度(Vhu)を保持するとともに、現在速度(Vhn)、現在位置(Phn)、相対位置(Lhn)を第2取得部52から受けつける。相対位置(Lhn)は、第1車両12aの現在位置(Phn)から合流区間起点204までの距離である。また、判定部54は、走行距離(Rh)、目標合流位置(Lhp)を演算により導出する。判定部54は、第2車両12bの情報として、想定合流加速度(Ag)を保持するとともに、現在速度(Vgn)、相対位置(Lgn)を第1取得部50から受けつける。相対位置(Lgn)は、第2車両12bの現在位置(Pgn)から合流区間起点204までの距離である。また、判定部54は、目標合流位置(Lgp)を演算により導出する。判定部54は、判定しきい値として、安全車間距離時間(Td)、安全車間距離前方係数(f)、安全車間距離後方係数(b)、ドライバ反応時間(Tε)を保持する。判定部54は、合流区間起点(Ps)を保持するとともに、合流区間終点(Le)を第2取得部52から取得し、合流完了予測時間(T)を演算により導出する。
判定部54は、以下のように初期値を算出する。判定部54は、加速所要時間(Ta)を(Vhu−Vgn)/Agによって導出する。また、判定部54は、合流完了予測時間(T1)を、Lgn>0のときLgn/Vgn+Taとし、Lgn≦0のときTaとする。さらに、判定部54は、合流車目標合流位置(Lgp1)を、Lgn>0のとき−(Vhu−Vgn)(Vhu+Vgn)/2Agとし、Lgn≦0のときLgn−(Vhu−Vgn)(Vhu+Vgn)/2Agとする。判定部54は、定速走行距離上限(Rgmax)を、合流区間距離+Lgp1(合流区間距離=合流区間終点)とする。なお、Rgmax<0のとき合流失敗とされる。これは、目標速度まで加速に要する距離が不足の場合に相当する。
なお、Lgn>0は、第2車両12bの現在位置(Lgn)が合流区間起点204よりも上流(合流区間起点204に到達する前)の場合に相当し、Lgn≦0は、第2車両12bの現在位置(Lgn)が合流区間起点204よりも下流(合流区間起点204の上、または合流区間起点204を通過した後)の場合に相当する。
次に、判定部54は、判定処理を次のように実行する。判定部54には、合流完了予測時間(T)、合流車目標到達位置(Lgp)、加速所要時間(Ta)、定速走行距離上限(Rgmax)が入力される。判定部54は、第1車両12aの走行距離(Rh)を次のように導出する。
Rh=Vhn*T
判定部54は、Lgp−Lhn+Rh≦−Td*b*Vhuである場合、ケース1に該当し、第1車両12aの前方に合流可能であると判定する。なお、Lgn≦0&T≦Ta+Tεの場合、指示部56は加速を指示する。それ以外の場合、指示部56は指示を出力しない。また、合流完了予測時間(T)、目標合流位置(Lgp)が出力される。判定部54は、Lgp−Lhn+Rh≦Td*f*Vhuである場合、ケース2に該当し、第1車両12aの後方に合流可能であると判定する。その際、合流完了予測時間(T)、目標合流位置(Lgp)が出力される。判定部54は、Lgp−Lhn+Rh>−Td*b*Vhu、かつLgp−Lhn+Rh<Td*f*Vhuである場合、ケース3に該当し、干渉が発生すると判定する。その際、第2車両12bのタイミング調整により、第1車両12aの後方に合流が可能になる。
判定部54は、タイミング調整を次のように実行する。
−Td*b*Vhu−(Lgp−Lhn+Rh)=−(Vhn−Vgn)*t
t=(Td*b*Vhu+Lgp−Lhn+Rh)/(Vhn−Vgn)
T=T+t、Lgp=Lgp−t*Vgnで更新される。さらに、判定部54は、合流区間走行時間判定を実行し、T≦Rgmax/Vgn+Taである場合、合流可能であると判定する。一方、判定部54は、前述の条件を満たさない場合、合流失敗と判定する。
図17(c)は、状態3:サービスアウト(本線)を示す。状態3は、例えば、第1車両12aの前方に、第2車両12bが合流した状態を示す。これは、図13(c)と同様に示される。
図18は、本発明の実施例2の車両12における別の合流手順を示すシーケンス図である。基地局装置10は、車両検知情報を第2車両12bに順次送信する(S320、S322、S324)。第2車両12bは、これらの車両検知情報を受信する。これは、前述の状態1、状態2に相当する。
図19は、本発明の実施例2の車両制御装置30における別の状態遷移を示す。これは、第2車両12bの合流処理部42における処理に相当する。図19に示される状態は、これまでの状態に対応する。合流処理部42は、状態1:サービスアウト(合流)において、サービスアウト通知(合流)を発行する(T400)。合流処理部42は、状態1においてサービスインを判定すれば(T402)、状態2:合流タイミング調整に遷移させて、合流タイミング調整通知を発行するとともに、速度を指示する(T404)。合流処理部42は、状態2においてサービスアウトを判定すれば(T406)、状態1に遷移させる(T400)。ここで、サービスアウト判定は、a)目標速度未達のまま合流走行区間208の終点を通過した場合、あるいはb)コースから外れた場合になされる。合流処理部42は、状態2において合流完了を判定すれば(T408)、状態3:サービスアウト(本線)に遷移させて、サービスアウト通知(本線)を発行する(T410)。ここで、合流完了は、合流区間起点204を通過し、かつ目標速度に到達した場合に判定される。
図20は、本発明の実施例2の車両制御装置30による合流手順を示すフローチャートである。本線200の車両12の前方に合流可能でなく(S300のN)、本線200の車両12の後方に合流可能であれば(S302のY)、干渉処理部44は合流可能であると判定する(S304)。本線200の車両12の前方に合流可能である場合(S300のY)、干渉処理部44は合流可能であると判定する(S304)。本線200の車両12の後方に合流可能でない場合(S302のN)、干渉範囲内であれば(S306のY)、干渉処理部44は、速度を調整後、合流可能であると判定する(S308)。干渉範囲内でなければ(S306のN)、干渉処理部44は合流不可であると判定する(S310)。
本発明の実施例によれば、基地局装置10に設けたセンサでの検出結果をもとに車両制御装置30において合流処理を実行するので、車車間通信に対応しない車両12が含まれる場合であっても、路車間通信に対応した車両12において合流処理を実行できる。また、車車間通信に対応しない車両12が含まれる場合であっても、路車間通信に対応した車両12において合流処理が実行されるので、合流処理を早期に実現できる。
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の車両制御装置は、車両に搭載可能な車両制御装置であって、本車両の位置情報と速度情報とを取得する第1取得部と、他の車両の位置情報と速度情報とを取得する第2取得部と、第2取得部において取得した位置情報と速度情報と、第1取得部において取得した位置情報と速度情報とをもとに、他の車両が本車両に合流する場合に本車両の速度の調整が必要であるか否かを判定する判定部と、判定部において速度の調整が必要であると判定した場合、速度を調整させる指示部とを備える。判定部は、他の車両よりも第1距離前方から、他の車両よりも第2距離後方の範囲において、本車両が合流される場合、速度の調整が必要であると判定し、判定部において第1距離は第2距離よりも短い。
この態様によると、他の車両の前方に設定される第1距離を、他の車両の後方に設定される第2距離よりも短くするので、他の車両の合流をスムーズにしながら、本線を走行する車両への影響を低減できる。
判定部は、本車両が走行している道路の規制速度に応じて、第1距離と第2距離とを調整してもよい。この場合、道路の規制速度に応じて、第1距離と第2距離とを調整するので、各道路に適した第1距離と第2距離とを設定できる。
本車両は本線道路を走行しており、他の車両は本線への合流路を走行していてもよい。この場合、本線への合流路を走行している他の車両が、本線道路に合流する場合において、他の車両の合流をスムーズにしながら、本線を走行する車両への影響を低減できる。
本発明の別の態様は、車両制御方法である。この方法は、車両に搭載可能な車両制御装置における車両制御方法であって、本車両の位置情報と速度情報とを取得するステップと、他の車両の位置情報と速度情報とを取得するステップと、取得した本車両の位置情報と速度情報と、取得した他の車両の位置情報と速度情報とをもとに、他の車両が本車両に合流する場合に本車両の速度の調整が必要であるか否かを判定するステップと、速度の調整が必要であると判定した場合、速度を調整させるステップとを備える。判定するステップは、他の車両よりも第1距離前方から、他の車両よりも第2距離後方の範囲において、本車両が合流される場合、速度の調整が必要であると判定し、判定するステップにおいて第1距離は第2距離よりも短い。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例1、2において、合流路202を走行している車両12が本線200に合流する場合を一例として使用している。しかしながらこれに限らず例えば、所定の距離の間に車線変更をしなければならない場合であってもよい。本変形例によれば、適用範囲を拡大できる。
本発明の実施例1において車車間通信が利用され、本発明の実施例2において路車間通信として第1パターンと第2パターンとが利用されている。しかしながらこれに限らず例えば、車車間通信、第1パターン、第2パターンが任意に組み合わされてもよい。本変形例によれば、組み合わせた効果を得ることができる。