JP2018074081A - リチウムイオンキャパシタ用の負極 - Google Patents
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Abstract
Description
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時に高い出力放電特性を発揮する蓄電システムが要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
他方、現在ハイブリッド電気自動車で一般に採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力特性をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(すなわち、蓄電素子の放電容量に対する放電量の割合(%))50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計である。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)は、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、そのようなリチウムイオン電池は、実用的な耐久性を持たせるために、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲で使用される。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
キャパシタのエネルギーは1/2・C・V2(ここで、Cは静電容量、Vは電圧)で表される。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着及び脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵及び放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高出力かつ高耐久性を有するが、しかしながらエネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)を有するが、しかしながら出力特性及び耐久性に課題がある。更に、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタの用途としては、例えば、鉄道、建機、自動車用の蓄電素子等が挙げられる。これらの用途においては、さらなる入出力特性と高負荷充放電サイクル特性の向上が求められる。
特許文献2には、活性炭の表面に炭素質材料が被着した複合多孔性炭素材料を負極活物質に用いた負極において、特定のリチウムイオンの吸蔵状態となるように調整することで高い出力特性と大電流充放電サイクル耐久性を示すことが開示されている。特許文献2に記載のリチウムイオンの吸蔵状態は、リチウムイオンを吸蔵した負極活物質層について固体7Li−NMRスペクトルを測定し、得られるスペクトルの−20〜40ppmの範囲においてローレンツ曲線を仮定した3つに波形に分離し、得られるそれぞれのピークについてリチウムイオン量を算出する手法により得られる。本発明者らの検討によると、このような手法で測定されるリチウムイオンの吸蔵状態は、1次粒子径が1μm以上の負極活物質に用いた負極においては、これを用いたリチウムイオンキャパシタの入出力特性や高負荷充放電サイクル特性と高い相関性を示す。しかしながら、1次粒子径がサブミクロン以下の負極活物質に用いた負極においては、これを用いたリチウムイオンキャパシタの入出力特性や高負荷充放電サイクル特性との相関性は低い。
本発明者らは、1次粒子径が350nm以下の負極活物質を用いた負極活物質層において、後述する方法により得られるリチウムイオンの吸蔵状態が、その負極を用いたリチウムイオンキャパシタの入出力特性と高負荷充放電サイクル特性に大きく影響を与えることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]負極集電体と、前記負極集電体の片面又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有する負極であって、
前記負極活物質の1次粒子径は、12nm以上350nm以下であり、
前記負極活物質層単位体積当たりのBET比表面積が、20m2/cc以上350m2/cc以下であり、
前記負極活物質層はリチウムイオンがドープされており、そして
前記負極活物質層の固体7Li−NMRスペクトルにおいて、4ppm〜30ppmの範囲にあるピーク面積より計算されるリチウム量が、前記負極活物質層の単位質量当たり0.10mmol/g以上10.0mmol/g以下の範囲にあることを特徴とする前記負極。
[2]前記負極活物層の膜厚が片面当たり10μm以上60μm以下である、[1]に記載の負極。
[3]前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、前記負極活物質単位質量当たり1,050mAh/g以上2,500mAh/g以下である、[1]又は[2]に記載の負極。
[4]前記負極活物質は、カーボンブラックと炭素質材料とを含有する複合炭素材料である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の負極。
[5]正極集電体と、前記正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する正極と、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の負極と、セパレータと、リチウムイオンを含む非水系電解液とを有するリチウムイオンキャパシタ。
[6]前記正極は、下記一般式(1)〜(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、前記正極物質層の単位質量当たり1.60×10−4mol/g〜300×10−4mol/g含有する、[5]に記載のリチウムイオンキャパシタ。
[7]前記正極は、正極活物質以外のリチウム化合物を含有する、[5]又は[6]に記載のリチウムイオンキャパシタ。
[8]前記リチウム化合物の平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である、[7]に記載のリチウムイオンキャパシタ。
[9]前記リチウム化合物は、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[7]又は[8]に記載のリチウムイオンキャパシタ。
[10]前記正極活物質層に含まれる前記正極活物質は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下を示す活性炭である、[5]〜[9]のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
[12]前記正極活物質層に含まれる前記正極活物質は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下を示す活性炭である、[5]〜[9]のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
リチウムイオンキャパシタは一般に、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素とする。電解液としては、リチウムイオンを含む有機溶媒(以下、「非水系電解液」ともいう。)を用いる。
1)負極活物質の粉体を電子顕微鏡で数視野撮影し、それらの視野中の粒子の粒子径を、全自動画像処理装置等を用いて2,000〜3,000個程度計測し、これらを算術平均した値を1次粒子径とする方法。(カーボンブラック便覧第3版(株式会社図書出版、昭和48年5月25日発行)第4ページ)。
2)得られた負極の表面及び/又は断面を電子顕微鏡で数視野撮影し、上記の方法で算術平均して求める方法。
リチウムイオンキャパシタを解体して負極を取り出したうえで、上記の方法2)により、又は
前記取り出した負極から負極活物質以外の成分を除いたうえで、上記の方法1)により、
測定することができる。
上記負極から負極活物質以外の成分を除くには、例えば以下の方法によることができる。
先ず、取り出した負極をエチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートに浸漬し、電解液、リチウム塩等を取り除いて風乾する。次にこれをメタノールとイソプロパノールとから成る混合溶媒に浸漬して負極活物質に吸蔵したリチウムイオンを失活させて再度風乾する。次に負極活物質層に含まれる結着材を取り除くために、リチウムイオンを失活した負極を蒸留水又はNMPに浸漬する。次いで、必要に応じてヘラ等で負極活物質を剥ぎ取ったうえで、これに超音波を照射して負極集電体から負極活物質を滑落させ、吸引濾過により、負極活物質を回収する。更に必要に応じて、得られた負極活物質を再度蒸留水又はNMPに浸漬して超音波を照射した後に、吸引濾過することを、数回繰り返して行ってもよい。最後に、得られた負極活物質を170℃において真空乾燥することにより、該負極活物質の粉体を得ることができる。
リチウムイオンキャパシタに組み込まれている負極を測定サンプルに用いる場合には、測定サンプルの前処理として、例えば以下の方法を用いることが好ましい。
先ず、アルゴン等の不活性雰囲気下でリチウムイオンキャパシタを解体し、負極を取り出す。取り出した負極を鎖状カーボネート(例えばメチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等)に浸漬し、非水系電解液やリチウム塩等を取り除いて風乾する。次いで、例えば以下の(1)、(2)、又は(3)の方法を用いることが好ましい。
(1)得られる負極をメタノールとイソプロパノールとから成る混合溶媒に浸漬して負極活物質に吸蔵したリチウムイオンを失活させて、風乾する。次いで、真空乾燥等を用いて得られる負極に含まれる鎖状カーボネートや有機溶媒等を取り除くことにより、測定サンプルを得ることができる。
(2)アルゴン等の不活性雰囲気下で、得られる負極を作用極に、金属リチウムを対極及び参照極に用い、これらを非水系電解液に浸して電気化学セルを作製する。得られる電気化学セルについて充放電機等を用いて、負極電位(vs. Li/Li+)が1.5V〜3.5Vの範囲になるように調整する。次いで、アルゴン等の不活性雰囲気下で電気化学セルから負極を取り出し、これを鎖状カーボネートに浸漬し、非水系電解液やリチウム塩等を取り除いて風乾する。次いで、真空乾燥等を用いて得られる負極に含まれる鎖状カーボネート等を取り除くことにより、測定サンプルを得ることができる。
(3)上記で得られる負極をそのまま測定サンプルとして用いることができる。
上記で得られる測定サンプルについて負極活物質層の体積Vano(cc)を測定する。図1に負極の断面図を示してあるが、負極集電体と負極活物質層の積層方向に対する水平面を断面、前記水平面と垂直に交わる面を平面としたとき、測定サンプルの平面の幾何学面積をSanoとし、後述する負極活物質層の総膜厚をtanoとしたとき、負極活物質層の体積はVano=Sano×tanoにより算出できる。
1次粒子径がサブミクロン以下の負極活物質では、4ppm以下の高磁場側に固体7Li−NMRのスペクトルのピークが観察される。これは1次粒子径が小さくなるに従い、負極活物質の表面の吸蔵サイトが増加し、リチウムイオンがそこにトラップされることで、リチウムイオンと負極活物質との相互作用が小さくなるためと考えられる。このため、負極活物質内部の電子密度が低下し電子伝導性が損なわれ高い入出力特性が発現できない。また、このような吸蔵状態にあるリチウムイオンは高負荷充放電サイクル中に自己放電されやすいため、自己放電されたリチウムイオンが非水系電解液と還元反応して失活し、良好な高負荷充放電サイクル特性が得られない。
他方、4ppm〜30ppmのリチウムイオン量が増加することで、リチウムイオンが負極活物質表面だけでなく内部にまで吸蔵され、負極活物質の電子伝導性が向上し、さらにリチウムイオンと負極活物質との相互作用が大きくなるため自己放電を抑制でき、高い入出力特性と高負荷充放電サイクル特性を発現できる。
シフト基準として1mol/Lの塩化リチウム水溶液を用い、外部標準として別途測定したそのシフト位置を0ppmとする。1mol/Lの塩化リチウム水溶液測定時には試料を回転させず、照射パルス幅を45°パルスとして、シングルパルス法にて測定する。
上記の方法によって得られた負極活物質層の固体7Li−NMRスペクトルについて、4ppm〜30ppmの範囲にある成分についてピーク面積を求める。次に、これらのピーク面積を、測定用ローター中における試料高さを負極活物質層の測定時と同じにして測定した1mol/Lの塩化リチウム水溶液のピーク面積で除し、さらに測定に用いる負極活物質層の質量で除すことで、負極活物質層中のリチウム量を算出できる。本明細書では、負極活物質層の質量とは、負極活物質層に吸蔵されるリチウムイオン、負極活物質層に含有される被膜又は堆積物等を含む負極活物質層の質量である。
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
本実施形態の負極活物質は、カーボンブラックと炭素質材料とを含有する複合炭素材料が好ましい。また、複合炭素材料とリチウムイオンを吸蔵・放出可能な物質を併用することができる。具体的には、複合炭素材料以外の炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫、及び錫化合物等が挙げられる。複合炭素材料の含有率は、負極活物質の合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。複合炭素材料の含有率は100質量%でよいが、他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
第一の形態としては、リチウムイオンキャパシタを作製する前に、負極活物質に設計値として予め吸蔵させるリチウムイオンである。
第二の形態としては、リチウムイオンキャパシタを作製し、出荷する際の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
第三の形態としては、リチウムイオンキャパシタをデバイスとして使用した後の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
負極活物質にリチウムイオンをドープしておくことにより、得られるリチウムイオンキャパシタの容量及び作動電圧を良好に制御することが可能となる。
複合炭素材料は、1次粒子径が12〜300nmであり、かつBET比表面積が200〜1,500m2/gであるカーボンブラックと、
炭素質材料の前駆体と混捏して得られた混捏物を、800℃〜3,200℃において焼成又は黒鉛化した後、平均粒子径(D50)1〜20μmに粉砕することにより、得ることができる。
複合炭素材料の製造における炭素質材料前駆体の使用量は、カーボンブラック100質量部に対して、30質量部以上200質量部以下が好ましい。より好ましくは30質量部以上150質量部以下である。この割合が30質量部以上であれば、複合化による効果によって高い出力特性を実現できる。他方、この割合が200質量部以下であれば、適度なBET比表面積を保持することができ、リチウムイオンのプレドープ量を高めることができる。上記複合炭素材料は、1種類のみで使用するか又は2種以上を混合して使用してもよい。
上記のとおり、原料として用いるカーボンブラックの1次粒子径は、12〜300nmであることが好ましい。市場で入手できる各種銘柄のカタログ値からは、ほとんどのカーボンブラックがこの範囲の粒子径を有するとされる。
上記のカーボンブラックと上記の炭素質材料前駆体とを、加熱ニーダ等の適宜の混捏機を用いて混捏する。混捏後、非酸化性雰囲気中、800℃〜3,200℃において焼成又は黒鉛化する。この熱処理温度が800℃未満では、粒子表面の官能基が残存する。得られるリチウムイオンキャパシタにおいて、この残存官能基がリチウムイオンと反応するため、容量ロスの増加、及び放電曲線1V付近の変極点の発生を来たし、好ましくない。熱処理温度が3,400℃を超えると、黒鉛化された粒子が昇華してしまうので、3,200℃の温度における焼成又は黒鉛化処理が限界である。
粉砕後、必要に応じて800〜3,200℃で再焼成又は再黒鉛化してもよい。
窒素ガスの吸脱着における等温吸着線において、窒素ガスの相体圧(P/P0)が0.8前後までは窒素ガス吸着量の変化が少なく、0.8を超えると急激に増大する。本実施形態における複合炭素材料は、窒素ガスの吸脱着における等温吸着線において、窒素ガスの相対圧(P/P0)が0.99付近における窒素ガスの吸着量が、10〜1,000ml/gであることが好ましい。この要件は、本実施形態における複合炭素材料において、細孔直径2nm以下のマイクロポアの細孔容積が全細孔容積の20%以下であることを示すものである。
本実施形態における負極活物質層は、負極活物質の他に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
本実施形態における負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態のリチウムイオンキャパシタにおける負極集電体としては、銅箔が好ましい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば1〜100μmが好ましい。なお、負極集電体が貫通孔又は凹凸を有するときには、貫通孔又は凹凸が存在しない部分に基づいて負極集電体の厚みを測定するものとする。
負極は、負極集電体の片面又は両面上に負極活物質層を有する。典型的には、負極活物質層は負極集電体の片面又は両面上に固着している。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、負極に撓みやシワが生じ難く、負極活物質層の所望の膜厚や嵩密度に調整し易い。
プレスロール同士の隙間は、負極活物質層の所望の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の負極膜厚に応じて任意の値を設定できる。
プレス速度は、負極の撓みやシワを低減するよう任意の速度に設定できる。プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。
加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、好ましくは使用する結着剤の融点マイナス60℃以上、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは結着剤の融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下にプレス部の表面を加熱する。結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下にプレス部の表面を加温する。
リチウムイオンをドープすることにより、負極電位が低くなり、正極と組み合わせた時のセル電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため高容量となり、高いエネルギー密度が得られる。本実施形態のリチウムイオンキャパシタ用負極においては、該ドープ量が1,050mAh/gを超える量であれば、負極活物質におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが十分にドープされ、更に所望のリチウム量に対する負極活物質量を低減することができるため、負極膜厚を薄くすることが可能となり、高い出力特性、及び高いエネルギー密度が得られる。また、該プレドープ量が多いほど負極電位が下がり、エネルギー密度は向上するが、2,500mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生するおそれが少ない。
本実施形態における正極は、正極集電体と、その片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。
正極活物質層は正極活物質を含み、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、及び分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。正極活物質は、炭素材料を含むことが好ましい。
正極前駆体は、正極活物質層内にリチウム化合物を含むことが好ましい。
正極活物質は、炭素材料を含むことが好ましい。炭素材料としては、好ましくはカーボンナノチューブ、導電性高分子、及び多孔性の炭素材料が挙げられ、さらに好ましくは活性炭である。正極活物質は、2種類以上の材料を混合して含んでもよく、炭素材料以外の材料、例えばリチウムと遷移金属との複合酸化物等を含んでもよい。
正極活物質の合計質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率は100質量%であってもよいが、しかしながら、他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、好ましくは90質量%以下であり、80質量%以下であってもよい。
(1)高い入出力特性を得るためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である活性炭(以下、「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である活性炭(以下、「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量V1は、正極材料をリチウムイオンキャパシタに組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、正極の嵩密度の低下を抑える点から、活性炭1のV1は0.8cc/g以下であることが好ましい。活性炭1のV1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。活性炭1の炭素源としては、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
活性炭2のメソ孔量V1は、正極材料をリチウムイオンキャパシタに組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、リチウムイオンキャパシタの容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。活性炭2のV1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、活性炭原料として通常用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭2を作製するのに適しており特に好ましい。
正極活物質に活性炭を使用する場合、活性炭1及び2は、それぞれ、単一の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって、混合物全体として上記の特徴を示すものであってもよい。
本願明細書において、「リチウム化合物」とは、正極活物質ではなく、かつ一般式(1)〜(3)の化合物でもないリチウム化合物を意味する。
リチウム化合物としては、後述のリチウムドープ工程において正極で分解し、リチウムイオンを放出することが可能である、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、シュウ化リチウム、ヨウ化リチウム、窒化リチウム、シュウ酸リチウム、及び酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、空気中での取り扱いが可能であり、吸湿性が低いという観点から炭酸リチウムがより好ましい。このようなリチウム化合物は、電圧の印加によって分解し、負極へのリチウムドープのドーパント源として機能するとともに、正極活物質層において良好な被膜を形成するので、高い高負荷充放電サイクル特性を示す正極を形成することができる。
リチウム化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
正極中に含まれるリチウム化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば、下記の方法により同定することができる。リチウム化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
解析手法にてリチウム化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法として、固体7Li−NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、リチウム化合物を同定することもできる。
酸素を含有するリチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1,000倍〜4,000倍にして測定した正極表面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定例としては、加速電圧を10kV、エミッション電流を1μA、測定画素数を256×256ピクセル、積算回数を50回として測定できる。試料の帯電を防止するために、金、白金、オスミウム等を真空蒸着やスパッタリング等の方法により表面処理することもできる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化したとき、明部を面積で50%以上含む粒子をリチウム化合物とする。
炭酸イオンを含むリチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1,000倍〜4,000倍にして測定した正極表面のラマンイメージングにより判別できる。測定条件の例として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1,800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件にて測定することができる。測定したラマンスペクトルについて、1,071〜1,104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算する。このとき、ノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
リチウムの電子状態をXPSにより解析することによりリチウムの結合状態を判別することができる。測定条件の例として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和を有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)20回(フッ素)30回(リン)40回(リチウム)50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件にて測定できる。XPSの測定前に正極の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO2換算で1.25nm/min)の条件にて正極の表面をクリーニングすることができる。
得られたXPSスペクトルについて、Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiO2またはLi−C結合、55〜60eVのピークをLiF、Li2CO3、LixPOyFz(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である);C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、286eVのピークをC−O結合、288eVのピークをCOO、290〜292eVのピークをCO3 2−、C−F結合;O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−(Li2O)、531〜532eVのピークをCO、CO3、OH、POx(式中、xは1〜4の整数である)、SiOx(式中、xは1〜4の整数である)、533eVのピークをC−O、SiOx(式中、xは1〜4の整数である);F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、687eVのピークをC−F結合、LixPOyFz(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である)、PF6 −;P2pの結合エネルギーについて、133eVのピークをPOx(式中、xは1〜4の整数である)、134〜136eVのピークをPFx(式中、xは1〜6の整である数);Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、101〜107eVのピークをSixOy(式中、x、及びyは、それぞれ任意の整数である)として帰属することができる。
得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離し、スペクトルを帰属することが好ましい。得られた電子状態の測定結果及び存在元素比の結果から、存在するリチウム化合物を同定することができる。
正極を蒸留水で洗浄し、洗浄した後の水をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、又はサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計や荷電化粒子検出器を検出器と組み合わせて測定することもできるため、SEM−EDX、ラマン分光法、XPSの解析結果から同定されたリチウム化合物に基づいて、適切なカラム及び検出器を組み合わせることが好ましい。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが、イオン種の濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
正極中に含まれるリチウム化合物の定量方法を以下に記載する。正極を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極質量変化からリチウム化合物を定量することができる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm2以上200cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは25cm2以上150cm2以下である。面積が5cm2以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。有機溶媒としては、正極表面に堆積した非水系電解液分解物を除去できればよく、特に限定されないが、リチウム化合物の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでリチウム化合物の溶出が抑制されるため好ましい。そのような有機溶媒としては、例えば、メタノール、アセトン等の極性溶媒が好適に用いられる。
リチウム化合物の平均粒子径をX1とするとき、好ましくは0.1μm≦X1≦10μm、より好ましくは0.5μm≦X1≦5μmである。X1が0.1μm以上である場合、リチウムプレドープ後の正極中にリチウム化合物を残存させることができるため、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンをトラップすることにより高負荷充放電サイクル特性が向上する。X1が10μm以下である場合、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンのトラップを効率良く行うことができる。X1の測定方法は特に限定されないが、正極断面のSEM画像、及びSEM−EDX画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。正極に炭酸リチウムを含有させる場合、正極断面のラマンイメージングを測定することで炭酸イオンの分布を求めることもできる。
リチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1,000倍〜4,000倍にして測定した正極断面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化したとき、明部を面積で50%以上含む粒子をリチウム化合物とする。
リチウム化合物の平均粒子径X1は、上記正極断面SEMと同視野にて測定した正極断面SEM−EDXから得られた画像を、画像解析することで求めることができる。上記正極断面のSEM画像にて判別されたリチウム化合物の粒子Xとし、断面SEM画像中に観察されるXの粒子全てについて、断面積Sを求め、次式2にて算出される粒子径dを求める(ただし、円周率をπとする。)。
本実施形態における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びリチウム化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態のリチウムイオンキャパシタにおける正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
本実施形態において、リチウムイオンキャパシタの正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調整し、この塗工液を正極集電体の片面又は両面上に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。或いは、溶剤を使用せずに、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じ難く、正極活物質層の所望の膜厚や嵩密度に調整し易い。
プレスロール同士の隙間は、正極活物質層の所望の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体膜厚に応じて任意の値を設定できる。
プレス速度は、正極前駆体の撓みやシワを低減するよう任意の速度に設定できる。プレス部の表面温度は、室温でもよいし、必要により加熱してもよい。
加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、好ましくは使用する結着剤の融点マイナス60℃以上、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは結着剤の融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下にプレス部の表面を加熱する。結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下にプレス部の表面を加温する。
プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
後述のリチウムドープ工程後の正極における正極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.50g/cm3以上、より好ましくは0.55g/cm3以上1.3g/cm3以下の範囲である。正極活物質層の嵩密度が0.50g/cm3以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、リチウムイオンキャパシタの小型化を達成できる。他方、正極活物質層の嵩密度が1.3g/cm3以下であれば、正極活物質層内の空孔における非水系電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
先ず、本実施形態における負極活物質層をエチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートで洗浄し風乾した後、メタノール及びイソプロパノールから成る混合溶媒により抽出した抽出液と、抽出後の負極活物質層とを得る。この抽出は、典型的にはArボックス内にて、環境温度23℃で行われる。
上記のようにして得られた抽出液と、抽出後の負極活物質層とに含まれるリチウム量を、それぞれ、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等を用いて定量し、その合計を求めることによって、負極活物質におけるリチウムイオンのドープ量を知ることができる。得られた値を抽出に供した負極活物質量で割り付けて、リチウムイオンのドープ量(mAh/g)を算出すればよい。
本実施形態における電解液は、リチウムイオンを含む非水系電解液である。すなわちこの非水系電解液は、後述する非水溶媒を含む。非水系電解液は、非水系電解液の合計体積を基準として、0.5mol/L以上のリチウム塩を含有することが好ましい。すなわち、非水系電解液は、リチウムイオンを電解質として含む。
非水系電解液における環状ホスファゼンの含有率は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%〜20質量%であることが好ましい。環状ホスファゼンの含有率が0.5質量%以上であれば、高温における非水系電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。環状ホスファゼンの含有率が20質量%以下であれば、非水系電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。以上の理由により、環状ホスファゼンの含有率は、好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以上12質量%以下である。
尚、これらの環状ホスファゼンは、単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
非環状含フッ素エーテルの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。非環状含フッ素エーテルの含有量が0.5質量%以上であれば、非水系電解液の酸化分解に対する安定性が高まり、高温時耐久性が高いリチウムイオンキャパシタが得られる。非環状含フッ素エーテルの含有量が15質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、非環状含フッ素エーテルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
含フッ素環状カーボネートの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。含フッ素環状カーボネートの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における非水系電解液の還元分解を抑制することによって、高温における耐久性が高いリチウムイオンキャパシタが得られる。含フッ素環状カーボネートの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、含フッ素環状カーボネートは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。環状カルボン酸エステルの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での非水系電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高いリチウムイオンキャパシタが得られる。環状カルボン酸エステルの含有量が5質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、環状カルボン酸エステルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状酸無水物の含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における非水系電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高いリチウムイオンキャパシタが得られる。環状酸無水物の含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、環状酸無水物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
正極前駆体及び負極は、一般に、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体と、負極と、セパレータとを有する電極積層体、又は電極捲回体を形成する。
本実施形態によるリチウムイオンキャパシタは、典型的には、後述する電極積層体又は電極捲回体が、非水系電解液とともに外装体内に収納されて構成される。
組み立て工程では、例えば、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子及び負極端子を接続して、電極積層体を作製する。あるいは、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回した捲回体に、正極端子及び負極端子を接続して、電極捲回体を作製してもよい。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定されないが、抵抗溶接や超音波溶接などの方法で行うことができる。
外装体としては、金属缶、ラミネート包材等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネート包材としては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムの3層から構成されるラミネート包材が例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する非水系電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
乾燥した電極積層体又は電極捲回体は、金属缶やラミネート包材に代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残して封止することが好ましい。外装体の封止方法は特に限定されないが、ラミネート包材を用いる場合は、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いることができる。
外装体の中に収納した電極積層体または電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法は限定されないが、真空乾燥などにより乾燥することができる。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の質量を基準として、1.5質量%以下が好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性やサイクル特性を悪化させることがあるため好ましくない。
組立工程の終了後に、外装体の中に収納された電極積層体または電極捲回体に、非水系電解液を注液する。注液後に、更に含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に非水系電解液が浸っていない状態では、後述するリチウムドープ工程において、リチウムドープが不均一に進むため、得られるリチウムイオンキャパシタの抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の電極積層体または電極捲回体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後に、外装体が開口した状態の電極積層体または電極捲回体を減圧しながら封止することで密閉することができる。
リチウムドープ工程では、正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のリチウム化合物を分解してリチウムイオンを放出し、負極でリチウムイオンを還元することにより負極活物質層にリオチウムイオンをプレドープすることが好ましい。
リチウムドープ工程後に、電極積層体又は電極捲回体にエージングを行うことが好ましい。エージング工程では、非水系電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にリチウムイオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で非水系電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
エージング工程後に、更にガス抜きを行い、非水系電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。非水系電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られるリチウムイオンキャパシタの抵抗が上昇してしまう。
ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、外装体を開口した状態で電極積層体または電極捲回体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。ガス抜き後、外装体をシールすることにより外装体を密閉し、リチウムイオンキャパシタを作製することができる。
[静電容量]
本明細書では、静電容量F(F)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、リチウムイオンキャパシタを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとする。ここで得られたQを用いて、F=Q/(3.8−2.2)により算出される値を、静電容量F(F)という。
本明細書では、内部抵抗Ra(Ω)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、リチウムイオンキャパシタを25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=3.8−Eo、及びRa=ΔE/(20C(電流値A))により算出される値を、内部抵抗Ra(Ω)という。
Ra・Fは、大電流に対して十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.2以下である。Ra・Fが3.0以下であれば、優れた入出力特性を有するリチウムイオンキャパシタを得ることができる。そのため、このリチウムイオンキャパシタを用いた蓄電システムと、例えば高効率エンジンとを組み合わせること等によって、リチウムイオンキャパシタに印加される高負荷にも十分に耐え得ることとなり、好ましい。Ra・Fの下限値としては、好ましくは0.3以上である。
本明細書では、高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率は、以下の方法によって測定する。
先ず、リチウムイオンキャパシタを25℃に設定した恒温槽内で、300Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて300Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う。この高負荷充放電サイクルを60,000回繰り返し、試験開始前と試験終了後に上述した内部抵抗Ra(Ω)と同様な方法で内部抵抗を測定し、試験開始前の内部抵抗をRa(Ω)、試験終了後の内部抵抗をRb(Ω)とする。試験開始前に対する高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率は、Rb/Raにより算出される。
高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率Rb/Raは、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率が2.0以下であれば、充放電を繰り返してもリチウムイオンキャパシタの特性が維持される。そのため、長期間安定して優れた入出力特性を得ることができ、リチウムイオンキャパシタの長寿命化につながる。Rb/Raの下限値は、好ましくは0.9以上である。
[活性炭の調製]
[活性炭1]
破砕されたヤシ殻炭化物を小型炭化炉内へ入れ、窒素雰囲気下、500℃で3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、予熱炉で加温した水蒸気を1kg/hで上記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた賦活された活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りし、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭1の平均粒子径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭1の細孔分布を測定した結果、BET比表面積が2,360m2/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
フェノール樹脂を、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲気下、600℃で2時間炭化処理を行った後、ボールミルで粉砕し、分級して平均粒子径7.0μmの炭化物を得た。得られた炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲下、800℃で1時間加熱して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、濃度2mol/Lに調製した希塩酸中で1時間撹拌洗浄し、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥することにより、活性炭2を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭2の平均粒子径を測定した結果、7.1μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭2の細孔分布を測定した結果、BET比表面積が3,627m2/g、メソ孔量(V1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V2)が2.28cc/g、V1/V2=0.66であった。
上記で得た活性炭1を正極活物質として用いて正極前駆体を製造した。
活性炭1を57.5質量部、リチウム化合物として平均粒子径2.5μmの炭酸リチウムを30.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液を得た。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚さ15μmの貫通孔を持たないアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥して正極前駆体(以下、それぞれ「片面正極前駆体」、及び「両面正極前駆体」という。)を得た。得られた正極前駆体を、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。
1次粒子径30nm、BET比表面積254m2/gのカーボンブラック(CB1)100重量部と、軟化点110℃、メタフェーズ量(QI量)13%の光学的等方性ピッチ(P1)50重量部と、を加熱ニーダ−で混捏して得られた混捏物を、非酸化性雰囲気下、1,000℃において焼成した。これを平均粒子径(D50)2μmに粉砕することにより、複合炭素材料1を得た。複合炭素材料1の平均粒子径は、日機装(株)製MT−3300EXを用いて測定した。
複合炭素材料1について、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて上述した方法によりBET比表面積を算出した。結果を下記表1に示す。
また、複合炭素材料1について、日立ハイテクノロジーズ製走査電子顕微鏡(SU8220)を用いて、加速電圧1kV、測定倍率50,000倍の条件で複合炭素材料1のSEM像を取得し、上述した方法により1次粒子径を算出した。結果を下記表2に示す。
上記の[複合炭素材料の調製例1]において、使用するカーボンブラック及びピッチの種類及び使用量、並びに粉砕後の平均粒子径を、それぞれ、表1に記載のとおりとした他は、[複合炭素材料の調製例1]と同様にして複合炭素材料2〜13を調製し、評価を行った。結果を下記表1及び表2に示す。
[カーボンブラック]
CB1:1次粒子径30nm、BET比表面積254m2/gのカーボンブラック
CB2:1次粒子径30nm、BET比表面積1,000m2/gのカーボンブラック
CB3:1次粒子径48nm、BET比表面積39m2/gのカーボンブラック
[ピッチ]
P1:軟化点110℃、メタフェーズ量(QI量)13%の光学的等方性ピッチ
複合炭素材料1を負極活物質として用いて負極を製造した。
複合炭素材料1を80質量部、アセチレンブラックを2質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を18質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚さ10μmの貫通孔を持たない電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極を得た(以下、「両面負極」ともいう。)。得られた負極を、ロールプレス機を用いてプレスした。上記で得られた負極の膜厚を小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極の任意の10か所で測定した。測定された膜厚の平均値から銅箔の厚さを引いて、負極の負極活物質層の膜厚を求めた。負極の負極活物質層の膜厚は、片面あたり40μmであった。
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、全非水系電解液に対してLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度比が25:75(モル比)であり、かつLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を溶解して得た溶液を非水系電解液として使用した。
調製した非水系電解液におけるLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度は、それぞれ、0.3mol/L及び0.9mol/Lであった。
上記で得た正極前駆体と負極を用いて、後述する条件で複数のリチウムイオンキャパシタを製造した。
[組立]
得られた両面負極と片面及び両面正極前駆体とを10cm×10cm(100cm2)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子及び正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体を得た。この電極積層体を、アルミラミネート包材から構成される外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、及びシール圧1.0MPaの条件下でヒートシールした。封止体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、大気圧下、温度25℃、及び露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液を約80g注入した。続いて、電極積層体を収納しているアルミラミネート包材を減圧チャンバーの中に入れ、大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返した後、15分間静置した。さらに、大気圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した(大気圧から、それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、アルミラミネート包材の中に収納されており、かつ非水系電解液を含浸させた電極積層体を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止して、リチウムイオンキャパシタを作製した。
得られたリチウムイオンキャパシタに対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、40℃環境下、電流値150mAで電圧4.6Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.6V定電圧充電を15時間継続する手法により初期充電を行い、負極にリチウムドープを行った。
リチウムドープ後のリチウムイオンキャパシタを25℃環境下、50mAで電圧2.2Vに到達するまで定電流放電を行った後、50mAで電圧4.0Vに到達するまで定電流充電行い、さらに4.0V定電流充電を30時間行う定電流定電圧充電工程を実施した。
エージング後のリチウムイオンキャパシタを、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に上記リチウムイオンキャパシタを入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機にリチウムイオンキャパシタを入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
上記で得たリチウムイオンキャパシタの内、1つについては後述する[Ra・Fの測定]及び[高負荷充放電サイクル試験]を実施した。残りのリチウムイオンキャパシタを用いて後述する[負極の固体7Li−NMR測定]、[使用後負極の負極活物質層の解析]、[負極中のリチウムイオンのドープ量測定]、及び[正極活物質層に含まれる式(1)〜(3)の化合物の定量]をそれぞれ実施した。
得られたリチウムイオンキャパシタについて、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、上述した方法により、静電容量Fと25℃における内部抵抗Raを算出し、Ra・Fを得た。結果を下記表2に示す。
得られたリチウムイオンキャパシタについて、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、上述した方法により高負荷充放電サイクル試験を実施し、高負荷充放電サイクル試験後の内部抵抗Rbを測定して、Rb/Raを得た。結果を下記表2に示す。
上記で得たリチウムイオンキャパシタの負極につき、負極活物質層の固体7Li−NMR測定を行った。
先ず、上記で製造したリチウムイオンキャパシタに対して、アスカ電子社製の充放電装置(ACD−01)を用いて、環境温度25℃の下で、50mAの電流で2.9Vまで定電流充電した後、2.9Vの定電圧を15時間印加する定電流定電圧充電を行った。
次いで、負極活物質層の採取をアルゴン雰囲気下で行った。リチウムイオンキャパシタをアルゴン雰囲気下で解体し、負極を取り出した。続いて、得られた負極をジエチルカーボネートに2分以上浸漬してリチウム塩等を除去した。同様の条件でジエチルカーボネートへの浸漬をもう1度行った後、風乾した。その後、負極から負極活物質層を採取し、秤量した。
得られた負極活物質層を試料として、固体7Li−NMR測定を行った。測定装置としてJEOL RESONANCE社製ECA700(7Li−NMRの共鳴周波数は272.1MHzである)を用い、室温環境下において、マジックアングルスピニングの回転数を14.5kHz、照射パルス幅を45°パルスとして、シングルパルス法により測定した。シフト基準として1mol/Lの塩化リチウム水溶液を用い、外部標準として別途測定したそのシフト位置を0ppmとした。1mol/Lの塩化リチウム水溶液測定時には試料を回転させず、照射パルス幅を45°パルスとして、シングルパルス法により測定した。
上記の方法によって得られた負極活物質層の固体7Li−NMRスペクトルにおいて、上述した方法により、リチウムイオンを吸蔵した負極活物質層の単位質量当たりのリチウム量を算出した。結果を下記表2に示す。
上記で得たリチウムイオンキャパシタの負極について、使用後負極の負極活物質層単位体積当たりのBET比表面積を測定した。
先ず、上記で製造したリチウムイオンキャパシタに対して、アスカ電子社製の充放電装置(ACD−01)を用いて、環境温度25℃の下で、50mAの電流で2.9Vまで定電流充電した後、2.9Vの定電圧を15時間印加する定電流定電圧充電を行った。
次いで、負極の採取をアルゴン雰囲気下で行った。リチウムイオンキャパシタをアルゴン雰囲気下で解体し、負極を取り出した。続いて、得られた負極をジエチルカーボネートに2分以上浸漬して非水系電解液やリチウム塩等を除去し、風乾した。その後、得られた負極をメタノールとイソプロパノールとから成る混合溶媒に15時間浸漬して負極活物質に吸蔵したリチウムイオンを失活させ、風乾した。次いで、得られた負極を、真空乾燥機を用いて温度170℃の条件にて12時間真空乾燥することにより、測定サンプルを得た。得られた測定サンプルについて、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、窒素を吸着質として、上述した方法により、使用後負極の負極活物質層単位体積当たりのBET比表面積を測定した。結果を下記表2に示す。
上記で得たリチウムイオンキャパシタの負極について、負極活物質単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量を測定した。
先ず、上記で製造したリチウムイオンキャパシタに対して、アスカ電子社製の充放電装置(ACD−01)を用いて、環境温度25℃の下で、50mAの電流で2.9Vまで定電流充電した後、2.9Vの定電圧を15時間印加する定電流定電圧充電を行った。
次いで、負極の採取をアルゴン雰囲気下で行った。リチウムイオンキャパシタをアルゴン雰囲気下で解体し、負極を取り出した。続いて、得られた負極をジエチルカーボネートに2分以上浸漬して非水系電解液やリチウム塩等を除去し、風乾した。その後、得られた負極をメタノールとイソプロパノールとから成る混合溶媒に15時間浸漬して負極活物質に吸蔵したリチウムイオンを失活させ、抽出液を得た。得られた抽出液と抽出後の負極に含まれるリチウム量をそれぞれICP−MSを用いて定量した。得られるリチウム量の合計値を負極に含まれる負極活物質の質量で割り付けて、リチウムイオンのドープ量を算出した。結果を下記表2に示す。
リチウムイオンキャパシタを2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているアルゴン(Ar)ボックス内で、リチウムイオンキャパシタを解体して正極を取り出した。取り出した正極をジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態で、サイドボックス中で真空乾燥させた。
[XOCH2CH2OXについて]
XOCH2CH2OXのCH2:3.7ppm(s,4H)
CH3OX:3.3ppm(s,3H)
CH3CH2OXのCH3:1.2ppm(t,3H)
CH3CH2OXのCH2O:3.7ppm(q,2H)
[正極前駆体の製造]
正極活物質を表2に示すとおりとした他は実施例1と同様にして正極前駆体を製造した。
[負極の製造]
負極活物質と負極活物質層片面当たりの膜厚を表2に示すとおりとした他は実施例1と同様にして負極を製造した。
[リチウムイオンキャパシタの製造、評価]
上記で得た正極前駆体と負極と組み合わせ、リチウムドープ工程を表2に示す条件とした他は、実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタを製造し、評価を行った。結果を下記表2に示す。
<実施例20〜21>
[正極前駆体の製造]
平均粒子径1.9μmの酸化リチウムと平均粒子径2.2μmの水酸化リチウムをそれぞれリチウム化合物として用いた他は実施例6と同様にして正極前駆体を製造した。
[リチウムイオンキャパシタの製造、評価]
上記で得た正極前駆体を用いた他は、実施例6と同様にしてリチウムイオンキャパシタを製造し、評価を行った。結果を下記表2に示す。
<比較例7>
[負極の製造]
1次粒子径が1,948nm、BET比表面積が1,752m2/gのヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合多孔質炭素材料1を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合多孔質炭素材料1を炉から取り出した。
得られた複合多孔質炭素材料1について、実施例1と同様の方法で1次粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、1次粒子径は2,102nm、BET比表面積は253m2/gであった。得られた複合多孔質炭素材料1を負極活物質として用いた他は実施例1と同様にして負極を製造した。
[リチウムイオンキャパシタの製造、評価]
上記で得た負極を用いた他は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタを製造し、評価を行った。結果を下記表2に示す。
<比較例8>
[負極の製造]
1次粒子径が375nm、BET比表面積が1,893m2/gのヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合多孔質炭素材料2を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合多孔質炭素材料2を炉から取り出した。
得られた複合多孔質炭素材料2について、実施例1と同様の方法で1次粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、1次粒子径は412nm、BET比表面積は287m2/gであった。得られた複合多孔質炭素材料2を負極活物質として用いた他は実施例1と同様にして負極を製造した。
[リチウムイオンキャパシタの製造、評価]
上記で得た負極を用いた他は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタを製造し、評価を行った。結果を下記表2に示す。
Claims (11)
- 負極集電体と、前記負極集電体の片面又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有する負極であって、
前記負極活物質の1次粒子径は、12nm以上350nm以下であり、
前記負極活物質層単位体積当たりのBET比表面積は、20m2/cc以上350m2/cc以下であり、
前記負極活物質層はリチウムイオンがドープされており、そして
前記負極活物質層の固体7Li−NMRスペクトルにおいて、4ppm〜30ppmの範囲にあるピーク面積より計算されるリチウム量が、前記負極活物質層の単位質量当たり0.10mmol/g以上10.0mmol/g以下の範囲にあることを特徴とする前記負極。 - 前記負極活物層の膜厚が片面当たり10μm以上60μm以下である、請求項1に記載の負極。
- 前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、前記負極活物質単位質量当たり1,050mAh/g以上2,500mAh/g以下である、請求項1又は2に記載の負極。
- 前記負極活物質は、カーボンブラックと炭素質材料とを含有する複合炭素材料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の負極。
- 正極集電体と、前記正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する正極と、請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極と、セパレータと、リチウムイオンを含む非水系電解液とを有するリチウムイオンキャパシタ。
- 前記正極は、下記一般式(1)〜(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、前記正極物質層の単位質量当たり1.60×10−4mol/g〜300×10−4mol/g含有する、請求項5に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記正極は、正極活物質以外のリチウム化合物を含有する、請求項5又は6に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記リチウム化合物の平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である、請求項7に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記リチウム化合物は、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7又は8に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記正極活物質層に含まれる前記正極活物質は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下を示す活性炭である、請求項5〜9のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記正極活物質層に含まれる前記正極活物質は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下を示す活性炭である、請求項5〜9のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
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