JP2018065152A - 多層サブマージアーク溶接方法 - Google Patents

多層サブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた溶接金属靭性を得ながら、低温割れを抑制し、ビード外観が良好であり、溶着量が十分である、高品質な溶接金属を得ることができる厚鋼板用多層サブマージアーク溶接方法を提供する。【解決手段】厚鋼板に多層サブマージアーク溶接を施す際の1パス目の溶接入熱が200kJ/cm以上であり、質量%で、鉄粉を20〜40%含有するフラックスを使用し、溶接金属が、質量%で、B:0.0012〜0.0025%、Mo:0.20〜0.35%含有し、以下の式(1)で表される溶接割れ感受性組成Pcmが0.16〜0.23である組成を有する多層サブマージアーク溶接方法。Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)式(1)中、C、Mn、Si、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは各元素の含有量(質量%)であり、含有しない元素の含有量は零とする。【選択図】図1

Description

本発明は、多層サブマージアーク溶接方法に関し、具体的には、厚鋼板用の多層サブマージアーク溶接方法に関する。
高層ビルの建築においては、構造物の大型化に伴い厚鋼板が用いられるようになっている。この厚鋼板としては、板厚が50mm以上である極厚鋼板が用いられている。厚鋼板で製造される鉄骨ボックス柱の角継手においてはサブマージアーク溶接が広く用いられており、特に、溶接施工能率向上のために多電極溶接が適用されている。
例えば、特許文献1では、2電極1パス溶接で板厚が50mm以上である厚鋼板用のサブマージアーク溶接を実施可能な技術が開示されている。
一方、設備上の制約や過大な溶接入熱を回避する観点から多層溶接も適用されている。多層溶接では、特に初層溶接の高温割れが問題となることから、特許文献2では、開先角度や溶接条件の規定により初層溶接金属の高温割れを回避する技術が開示されており、特許文献3では、2パス目の溶接狙い位置の制御によって初層溶接金属の高温割れを回避する技術が開示されている。さらに、大入熱サブマージアーク溶接金属の靭性向上のために、特許文献4では、フラックスおよびワイヤの化学成分を規定して溶接金属の焼入れ性を向上させる技術が開示されている。
特許第2947731号公報 特開平3−118978号公報 特許第3624727号公報 特許第3552375号公報
しかしながら、前述の従来のサブマージアーク溶接方法では、十分に高品質な溶接金属を得られるとはまだ言えなかった。ここで高品質であるとは、水素割れなどの低温割れを抑制し、ビード外観が良好であり、溶着量が十分であることを指す。
そこで、本発明は、優れた溶接金属靭性を得ながら、低温割れを抑制し、ビード外観が良好であると共に、溶着量が十分である、高品質な溶接金属を得ることができる厚鋼板用多層サブマージアーク溶接方法を提供することを目的とする。
なお、溶着量が十分であるとは、鋼板に加工した開先において溶着金属が鋼板表層まで十分に充填されていることを指す。
本発明者らは、鋭意検討の結果、厚鋼板の多層サブマージアーク溶接において種々の溶接条件で溶接継手を作製し、溶接品質を評価した。その結果、溶接金属およびフラックスの成分組成を制御することにより、優れた溶接金属靭性を得ながら溶接金属における低温割れを抑制できることを見出した。すなわち溶接金属中のMoおよびBの含有量を制御すること、特定式で表される溶接割れ感受性組成Pcmを制御すること、およびフラックス中の鉄粉の含有量を制御することにより、溶接金属中に生じる粒界フェライト組織の低減および粒界析出を抑制して、低温割れの抑制を実現できることを知見した。
本発明はこのような知見に基づいて完成したものであり、その要旨は、以下の通りである。
[1]厚鋼板に多層サブマージアーク溶接を施す際の1パス目の溶接入熱が200kJ/cm以上であり、
質量%で、鉄粉を20〜40%含有するフラックスを使用し、
溶接金属が、質量%で、B:0.0012〜0.0025%、Mo:0.20〜0.35%含有し、以下の式(1)で表される溶接割れ感受性組成Pcmが0.16〜0.23である組成を有することを特徴とする多層サブマージアーク溶接方法。
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)
式(1)中、C、Mn、Si、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは各元素の含有量(質量%)であり、含有しない元素の含有量は0(零)とする。
ここで、本発明では、特に限定はされないが、上記厚鋼板の板厚を50mm以上とすることで特に顕著な効果が得られる。また、多層とは、2層以上のことを指す。
本発明によれば、優れた溶接金属靭性を得ながら、低温割れを抑制し、ビード外観が良好であると共に、溶着量が十分である、高品質な溶接金属を得ることができる。
本発明の開先形状を示す模式図である。 本発明の各溶接パスの溶接金属形状を示す図である。
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
本発明の多層サブマージアーク溶接方法は、厚鋼板に多層サブマージアーク溶接を施す際の1パス目の溶接入熱が200kJ/cm以上であり、質量%で、鉄粉を20〜40%含有するフラックスを使用し、溶接金属が、質量%で、B:0.0012〜0.0025%、Mo:0.20〜0.35%含有し、以下の式(1)で表される溶接割れ感受性組成Pcmが0.16〜0.23である組成を有することを特徴とし、優れた溶接金属靭性を得ながら、低温割れを抑制し、ビード外観が良好であると共に、溶着量が十分である、高品質な溶接金属を得ることができる。
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)
式(1)中、C、Mn、Si、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは各元素の含有量(質量%)であり、含有しない元素の含有量は0(零)とする。
ここで、本発明では、特に限定はされないが、上記厚鋼板の厚みを50mm以上とすることで特に顕著な効果が得られる。
以下では、本発明の多層サブマージアーク溶接に用いるフラックス、溶接により形成される溶接金属、鋼板(母材)、ワイヤの具体的構成について順に説明する。以下、フラックス、溶接金属、鋼板およびワイヤに含まれる成分組成の含有量についての「%」は、特にことわりのない限り、「質量%」のことを指す。
<フラックス>
(鉄粉:20〜40%)
本発明では、サブマージアーク溶接用のフラックスに、鉄粉を含有させると高い溶着速度が得られ、これにより溶接入熱を低減させることができる。このような効果は、フラックス全量中、鉄粉含有量を20%以上とすることで得られる。一方、フラックス全量中、鉄粉含有量を40%超えとすると、スラグ生成量が少なくなり美麗なビード外観が得難くなる。そのため、フラックス中の鉄粉含有量は20〜40%とする。また、本発明では、鉄粉は、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉等、特に限定せずに用いることができる。
また、フラックス中の鉄粉以外の成分組成は、上述したように溶接金属中のB含有量、Mo含有量、Pcmが所望の範囲にあれば、特に限定されないが、例えば、フラックス中、質量%で、SiO:10〜30%、MgO:5〜35%、CaCO:5〜15%、Al:2〜20%、TiO:2〜10%、CaF:2〜10%、B:0.02〜2.00%、Fe−Mo:3.00%以下、残部として鉄粉以外の金属粉からなる組成を使用できる。
(SiO:10〜30%)
SiOは、造滓剤として有効な成分であり、スラグの粘性を調整するために含有することが好ましい。SiOの含有量が10%未満であると、生成するスラグの融点が過剰に高くなり良好なビード外観が得られない場合がある。一方、SiOの含有量が30%超えであるとスラグ剥離性が劣化し、また溶接金属の酸素量が増加して溶接金属の靭性が劣化する場合がある。よって、SiO含有量は10〜30%とすることが好ましい。
(MgO:5〜35%)
MgOは、フラックスの過度の流動を防止する作用を有し、大入熱溶接におけるビード形状を安定化させる効果を有する。また、MgOは、スラグの塩基度を増加させて溶接金属中の酸素含有量を低減し、溶接金属の靭性を向上させる有用な成分である。しかしながら、MgO含有量が5%未満であると、上記した効果が認められない場合がある。一方、MgO含有量が35%超えであると、融点が上昇しすぎてビード外観が劣化する場合がある。よって、MgOは5〜35%とすることが好ましい。
(CaCO:5〜15%)
CaCOは、溶接中に分解し、CaOとCOとになる。このCOガスにより、溶接金属を外気からシールドするとともに、溶接雰囲気中の水素分圧を低下させ、溶接金属中への水素の侵入を防止することができる。また、CaOは、塩基性成分であり、スラグの融点を上昇させ、溶接金属の靭性を向上させることができる。しかしながら、CaCOの含有量が5%未満であると、上記したようなCOガスによるシールド効果が認められず、耐水素割れ性が低下する場合がある。一方、CaCOの含有量が15%を超えであると、COガスの発生量が増加し、溶接作業性、ビード外観が低下する場合がある。よって、CaCO含有量は5〜15%とすることが好ましい。
(Al:2〜20%)
Alは、粘性を低下させずにスラグの融点を上昇させるため、スラグの融点の調整に有効な成分である。しかしながら、Al含有量が2%未満では、上記した効果が認められない場合がある。一方Al含有量が20%超えであると、スラグの融点が上昇しすぎてビード幅の不均一やビード外観の劣化を招く場合がある。よって、Al含有量は2〜20%とすることが好ましい。
(TiO:2〜10%)
TiOは、スラグの流動性を向上させ、スラグの剥離性を改善するとともに、アーク空洞内で部分的に還元されてTiとして溶接金属中に移行し、溶接金属の靭性を改善することに有効に作用する。しかしながら、TiO含有量が2%未満であると、上記した効果が認められない場合がある。一方、TiO含有量が10%超えであると、ビード外観が劣化する場合がある。よって、TiO含有量は2〜10%とすることが好ましい。
(CaF:2〜10%)
CaFは、融点を上昇させることなくスラグの塩基度を増加させることができ、溶接金属の酸素量の調整に有効である。しかしながら、CaF含有量が2%未満であると、その効果を得にくくなる場合がある。一方、CaF含有量が10%超えであると、スラグの粘性が低下しすぎてビード外観が悪化する場合がある。よって、CaF含有量は2〜10%とすることが好ましい。
(B:0.02〜2.00%)
をフラックスに添加すると還元されたBが溶接金属中に移行して粒界フェライトの生成を抑制し溶接金属の靭性向上に有効である。B含有量が0.02%未満であるとその効果は小さく、一方、2.00%を超えると溶接金属の靭性が劣化しやすくなるため、B含有量は0.02〜2.00%とすることが好ましい。
(Fe−Mo:3.00%以下)
Fe−Moをフラックスに添加することにより溶接金属の焼入れ性を向上させる効果が得られる。溶接金属のMo量が0.20〜0.35%となるように、フラックスのFe−Mo含有量は3.00%以下とすることが好ましい。
(鉄粉以外の金属粉)
上記以外の残部は、鉄粉以外の金属粉からなる成分組成とすることができる。
<溶接金属>
溶接金属としては、本発明では、溶接金属中のMoとBの含有量を適正量とし、粒界フェライト組織の低減および粒界析出の抑制により低温割れを抑制できる。そこで、まず、溶接金属中のB含有量、Mo含有量およびPcmについて説明する。
(B:0.0012〜0.0025%)
溶接金属中のBは、溶接金属の焼入れ性を向上させて粒界フェライトの生成を抑制し靭性を向上させるために有効な成分であるが、溶接金属中のB含有量が0.0012%未満であると、粒界フェライトの生成率が増大し、低温割れが生じる。一方、溶接金属中のB含有量が0.0025%超えであると、次パス溶接によって再熱される溶接金属中に粒界析出物が生じ、低温割れが発生する。以上の理由より、溶接金属中のB含有量は、0.0012〜0.0025%である。
(Mo:0.20〜0.35%)
溶接金属中のMoも、溶接金属の焼入れ性を向上させる成分として有効であり、この効果を得るために、Moは0.20%以上の含有が必要である。Moの含有によって、溶接金属中の粒界フェライト量を低減すると同時に、同様の目的で含有するB量を低減することもでき、粒界析出の抑制による低温割れ抑制の効果が得られる。一方、Mo含有量が0.35%を超えると、溶接金属中のベイナイトの生成率が増大し、溶接金属が脆化する。そのため、溶接金属中のMo含有量は0.20〜0.35%である。
(溶接割れ感受性組成Pcm:0.16〜0.23)
本発明では、溶接金属中に含まれる成分組成について、以下の式(1)で表されるPcmを0.16〜0.23とする。Pcmが0.16未満であると、十分な焼入れ性が確保できない。一方、Pcmが0.23超えであると、割れ感受性が高くなる。そのため、溶接金属のPcmは0.16〜0.23とする。
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)
式(1)中、C、Mn、Si、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは各元素の含有量(質量%)であり、含有しない元素の含有量は0(零)とする。
また、溶接金属中の成分組成としては、上記の内容以外は、特に限定されないが、例えば、溶接金属中、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.10〜0.80%、Mn:0.70〜2.50%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、B:0.0012〜0.0025%、Mo:0.20〜0.35%、Cu:0.5%以下を含有し、上記式(1)で表されるPcmが0.16〜0.23であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成とすることができる。
(C:0.03〜0.15%)
Cは、溶接金属の焼入れ性を向上させ、強度を確保するために必要な元素である。しかしながら、C含有量が0.03%未満であると、十分な焼入れ性が得られない場合がある。一方、C含有量が0.15%超えであると、溶接金属の高温割れが発生するばかりでなく、マルテンサイト相が生成して低温靭性が劣化する場合がある。よって、C含有量は0.03〜0.15%とすることが好ましい。
(Si:0.10〜0.80%)
Siは、脱酸作用を有し溶接金属の酸素低減に有効な元素である。しかしながら、Si含有量が0.10%未満であると、溶融金属の湯流れ性が劣下して溶接作業の効率が低下する場合がある。一方、Si含有量が0.80%超えであると、溶接金属の高温割れが発生する場合がある。よって、Si含有量は0.10〜0.80%とすることが好ましい。
(Mn:0.70〜2.50%)
Mnは、溶接金属の強度を確保し、かつ焼入れ性を向上させる元素である。しかしながら、Mn含有量が0.70%未満であると、十分な焼入れ性が得られない場合がある。一方、Mn含有量が2.50%超えであると、溶接金属の高温割れが発生するばかりでなく、上部ベイナイトあるいはマルテンサイト相が生成して低温靭性が劣化する場合がある。よって、Mn含有量は0.70〜2.50%とすることが好ましい。
(P:0.03%以下)
Pは不純物として鋼中に存在し、低融点の燐化鉄が結晶粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、P含有量は0.03%以下とすることが好ましい。
(S:0.01%以下)
Sは不純物として鋼中に存在し、低融点の硫化鉄が結晶粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、S含有量は0.01%以下とすることが好ましい。
(Cu:0.5%以下)
Cuは高温割れの原因となり、加えて低温割れ感受性も高めるため、Cu含有量は0.5%以下とすることが好ましい。
(残部は、Feおよび不可避的不純物)
上記以外の残部は、Feおよび不可避的不純物とすることができる。
また、上記成分組成として、溶接金属は、Ni:0.05〜3.00%以下を含有していてもよい。
(Ni:0.05〜3.00%)
Niは、溶接金属の強度、靭性を向上させる元素である。しかしながら、Ni含有量が0.05%未満であると、強度、靭性を向上させる効果を十分に得られない場合がある。一方、Ni含有量が3.00%超えであると、低温靭性の劣化、低温割れが発生する場合がある。よって、Niを含有する場合、Ni含有量は0.05〜3.00%とすることが好ましい。
また、上記成分組成として、溶接金属は、さらに、Cr:0.50%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Ti:0.01〜0.10%のうちから選ばれる少なくともいずれか1種を含有していてもよい。
(Cr:0.50%以下)
Crは、溶接金属の強度、靭性を向上させる元素である。しかしながら、Cr含有量が0.50%超えであると、低温靭性の劣化、低温割れが発生する場合がある。よって、Crを含有する場合、Cr含有量は0.50%以下とすることが好ましい。
(Nb:0.10%以下)
Nbは、大入熱溶接において溶接金属の強度を向上させ、かつ組織を微細化して低温靭性を向上させる元素である。しかしながら、Nb含有量が0.10%を超えると、溶接金属の高温割れが発生する。したがって、Nbを含有する場合、Nb含有量は0.10%以下とすることが好ましい。
(V:0.10%以下)
Vは、大入熱溶接において溶接金属の強度を向上させ、かつ組織を微細化して低温靭性を向上させる元素である。しかしながら、V含有量が0.10%を超えると、溶接金属の高温割れが発生する。したがって、Vを含有する場合、V含有量は0.10%以下とすることが好ましい。
(Ti:0.01〜0.10%)
Tiは、その酸化物が微細なフェライトの生成核となり,溶接金属の低温靭性を向上させる効果がある。しかしながら、Ti含有量が0.01%未満では、酸化物が十分に生成しないので低温靭性向上の効果が得られない場合がある。 一方、Ti含有量が0.10%を超えると、溶接金属が硬化して低温靭性の劣化を招く場合がある。したがって、Tiは0.01〜0.10%の範囲内を満足することが好ましい。
<鋼板(母材)>
本発明の多層サブマージアーク溶接に用いる鋼板(母材)は、特に限定されないが、例えば、母材中、質量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.30%以下、Mn:0.50〜2.50%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成とすることができる。
<ワイヤ>
本発明の多層サブマージアーク溶接に用いるワイヤ(溶接ワイヤ)は、上述したように溶接金属中のB含有量、Mo含有量、Pcmが所望の範囲にあれば、特に限定されないが、例えば、ワイヤ中、質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.10%以下、Mn:0.30〜2.50%、P:0.05%以下、S:0.01%以下を含有し、必要に応じて、Cu:0.50%以下、Ni:3.00%以下、Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、V:0.20%以下から選ばれる少なくとも1種をさらに含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成とすることができる。
溶接ワイヤのワイヤ径は限定しないが、初層溶接金属の高温割れ危険部を2パス目の溶接で溶融するため、第1電極のワイヤ径を5.3mm以下として電流密度を増大させることが好ましい。
<溶接条件>
本発明の多層サブマージアーク溶接では、上述した鋼板に片面Y開先加工を施し、上述したワイヤおよびフラックスを用いて溶接継手を作製することができる。
図1は本発明の開先形状の一例を示す模式図である。図1では、一例として、板厚が70mmである鋼板を用い、開先角度を35°として、ルートフェイスを3mmとする場合を示すが、本発明では、この例に限定されない。開先角度については、30°未満にすると溶接金属の凝固割れが発生しやすくなる。一方、開先角度を50°より大きくすると開先を充填するために必要となるワイヤ溶着量が増加し、溶接入熱を高く設定する必要が生じる場合がある。よって、開先角度は30°以上50°以下とすることが好ましい。
また、ルートフェイスは、3mm未満にすると、それに伴って開先深さが大きくなり、開先を充填するために必要となるワイヤ溶着量が増加し、溶接入熱を高くする必要が生じる場合がある。一方、ルートフェイスを15mmよりも大きくすると、深い溶込みを得るために溶接入熱を高くする必要が生じる場合がある。以上のことから、ルートフェイスは3mm以上15mm以下とすることが好ましい。
そして、本発明の多層サブマージアーク溶接では、2層以上の多層サブマージアーク溶接に適用することができ、溶接パス数を適宜変えることができる。
本発明の多層サブマージアーク溶接方法は、溶接施工能率向上のために、1パス目の溶接の溶接入熱は200kJ/cm以上とする。好ましくは、1パス目の溶接の溶接入熱は、溶接金属および溶接熱影響部の強度と靭性を確保するため、600kJ/cm以下である。
また、特に限定されないが、2パス目以降の溶接の溶接入熱は、高い溶接施工能率を確保するために、1パス目の溶接入熱の0.25倍以上とすることが好ましい。また、上記の2パス目以降の溶接の溶接入熱は、溶接金属と開先壁の間に融合不良が発生することを防ぐために、1パス目の溶接入熱の0.75倍以下とすることが好ましい。
また、各溶接パスの電極数は限定されないが、溶接施工能率を向上させるためには2電極以上で溶接を実施することが好ましい。溶接ワイヤのワイヤ径は限定しないが、初層溶接金属の高温割れ危険部を2パス目の溶接で溶融するため第1電極のワイヤ径は5.3mm以下として電流密度を増大させることが好ましい。溶接金属のB含有量、Mo含有量、Pcmの調整は、溶接ワイヤおよびフラックスの一方または両方の成分調整によって実施できる。
図2は、本発明の各溶接パスの溶接金属形状を示す図である。図2では、4パスを施した場合の例を示すが、本発明では、この例に限定されず、2パス以上であれば所望の効果を得ることができる。
以上、説明したように、本発明によれば、厚鋼板の多層サブマージアーク溶接においてフラックスおよび溶接金属の化学成分を制御することにより、優れた溶接金属靭性を得ながら、溶接金属の低温割れを抑制し、ビード外観が良好であると共に、溶着量が十分である、高品質な溶接金属が得られるようになる。
以下、実施例に基づき、本発明について説明する。
板厚70mmの590N/mm級鋼板に片面Y開先加工を施した後、種々の成分組成を持つボンドフラックスを用いて多層サブマージアーク溶接継手を作製した。溶接パス数は4パスとした。表1に鋼板成分を示し、表2にワイヤ成分を示し、表3に溶接条件を示し、表4にフラックス成分を示す。また、作製した溶接継手の3パス目の溶接金属化学成分を表5に示す。また、溶接品質および3パス目の溶接金属のシャルピー衝撃性能を評価した結果を表6に示す。溶接品質は超音波探傷による割れの有無の確認および目視によるビード外観の評価を行った。また、シャルピー衝撃性能については、JIS Z 2242に基づいて測定したvE0(J)の値を示す。vE0については、50J以上の場合を溶接金属靭性が優れているとした。
低温割れについては、超音波探傷および溶接部断面マクロ観察により低温割れの有無を確認し、低温割れが視認されない場合を合格とした。
また、溶着量については、鋼板に加工した開先を溶着金属が鋼板表層まで充填している場合を十分であるとして合格とした。
また、ビード外観については、目視で確認し、アンダーカット、オーバーラップ、スラグ剥離不良が無い場合を合格とした。
Figure 2018065152
Figure 2018065152
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試験No.1〜4は本発明例であり、フラックス中の鉄粉の含有量を制御しつつ、溶接金属のB量、Mo量、Pcmを制御したため優れた溶接金属靭性を得ながら溶接金属における低温割れを抑制できた。
試験No.5〜11は比較例である。試験No.5は溶接金属のB量が少な過ぎて、溶接金属に粒界フェライトが生成し低温割れが発生した。試験No.6は溶接金属のB量が多過ぎて、4パス目の溶接による再熱部に粒界析出物が生じ、低温割れが発生した。試験No.7は溶接金属のMo量が少な過ぎて、溶接金属に粒界フェライトが生成し低温割れが発生した。試験No.8は溶接金属のMo量が多過ぎて、溶接金属中のベイナイトの生成率が増大し、優れた溶接金属靭性が得られなかった。試験No.9は溶接金属のPcmが低いため、十分な焼入れ性が確保できず、優れた溶接金属靭性が得られなかった。試験No.10はフラックスの鉄粉含有量が過少で低温割れおよび溶着量不足が発生した。試験No.11はフラックスの鉄粉含有量が過大で、ビード外観不良となった。
なお、ここでは3パス目の溶接金属の化学成分およびシャルピー衝撃性能を評価したが、他の溶接パスについても同様に溶接金属の成分組成を制御できることを確認した。
1 第1層(初層、1パス目に形成される溶接金属)
2 第2層(2パス目に形成される溶接金属)
3 第3層(3パス目に形成される溶接金属)
4 第4層(4パス目に形成される溶接金属)

Claims (1)

  1. 厚鋼板に多層サブマージアーク溶接を施す際の1パス目の溶接入熱が200kJ/cm以上であり、
    質量%で、鉄粉を20〜40%含有するフラックスを使用し、
    溶接金属が、質量%で、B:0.0012〜0.0025%、Mo:0.20〜0.35%含有し、以下の式(1)で表される溶接割れ感受性組成Pcmが0.16〜0.23である組成を有することを特徴とする多層サブマージアーク溶接方法。
    Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)
    式(1)中、C、Mn、Si、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは各元素の含有量(質量%)であり、含有しない元素の含有量は0(零)とする。
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