JP2018062638A - 一方向プリプレグおよび繊維強化熱可塑性樹脂シート - Google Patents

一方向プリプレグおよび繊維強化熱可塑性樹脂シート Download PDF

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Abstract

【課題】高い強度と成形性とを兼ね備えた繊維強化熱可塑性樹脂シートを提供すること、および、このような繊維強化熱可塑性樹脂シートを得ることができる一方向プリプレグを提供すること、ならびに、一方向プリプレグの製造方法を提供する。【解決手段】開繊された強化繊維、および、式(1):[式中、nは1〜4の整数を表す]で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む、テープ状の一方向プリプレグであって、該ビスフェノールA型エポキシ樹脂は1000〜35000の重量平均分子量を有し、該一方向プリプレグの厚み方向における該強化繊維の平均含有数は10本以下である、一方向プリプレグ。【選択図】図1

Description

本発明は、強化繊維を含む一方向プリプレグおよび繊維強化熱可塑性樹脂シートに関する。
繊維強化プラスチック(FRP)は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリックスとし、さらに該樹脂中に炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む複合材料である。マトリックスが熱可塑性樹脂である繊維強化プラスチックは、タンク、容器、船舶、自動車などの幅広い分野において使用されている。
繊維強化プラスチックを製造する方法として、例えば特許文献1には、溶媒で希釈して低粘度化した溶液を連続繊維束に含浸し、次工程で溶媒を除去する方法が記載されている。特許文献2には、溶融樹脂中に浸漬した連続繊維束を開繊し、しごき、さらに樹脂に圧力を付与するなどして機械的に含浸させるプルトルージョン法が記載されている。特許文献3には、含浸後に張力を掛け、支点間距離に依存する幅方向と該テープにかかる面抗力により幅の収縮を防ぎ、繊維の直線性を保ちUDテープを製造する方法が記載されている。さらに、特許文献4には、熱可塑性樹脂を含浸させた強化繊維束を、所定の式で算出される距離で互いに離間した2つの支持部材で支持しつつ固化させる繊維強化複合材の製造方法が記載されている。
また、近年、例えば特許文献5に記載されるように、繊維強化された熱可塑性プラスチックの製造方法として、未硬化の熱可塑性樹脂と強化繊維とを混合して用いる方法も提案されている。
特開2005−239843号公報 特開2009−143158号公報 特願2014−134969号公報 特開2016-11403号公報 特許第4708797号公報
繊維強化プラスチックについて、上記種々の製造方法が提案されてはいるが、繊維強化プラスチックの成形性と強度を高めることに対する要求はなお存在する。そのため、本発明は、高い強度と成形性とを兼ね備えた繊維強化熱可塑性樹脂シートを提供すること、および、このような繊維強化熱可塑性樹脂シートを得ることができる一方向プリプレグを提供すること、ならびに、該一方向プリプレグの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、強化繊維間にマトリックス樹脂が含浸されていない隙間(ボイド)が存在すると、最終的に得られる成形体の力学特性が低下すること、および、厚い強化繊維束が含まれていると、局所的に繊維配向が過多となり、繊維を介した繊維軸方向と異にする方向への応力伝達が出来ず、本来繊維が持つ強度を十分に活かせないことに着目し、繊維強化熱可塑性樹脂シートを得るための一方向プリプレグについて検討した。その結果、以下に説明する本発明の一方向プリプレグにより上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の好適な態様を包含する。
〔1〕開繊された強化繊維、および、式(1):
Figure 2018062638
[式中、nは1〜4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む、テープ状の一方向プリプレグであって、該ビスフェノールA型エポキシ樹脂は1000〜35000の重量平均分子量を有し、該一方向プリプレグの厚み方向における該強化繊維の平均含有数は10本以下である、一方向プリプレグ。
〔2〕前記一方向プリプレグの幅方向における前記強化繊維の平均含有密度は150〜2000本/mmである、前記〔1〕に記載の一方向プリプレグ。
〔3〕ビスフェノールAをさらに含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の一方向プリプレグ。
〔4〕前記一方向プリプレグに含まれる前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と前記ビスフェノールAとの質量比は50:50〜90:10である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の一方向プリプレグ。
〔5〕強化繊維は炭素繊維である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の一方向プリプレグ。
〔6〕前記一方向プリプレグの幅長の変動係数は5%以下である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の一方向プリプレグ。
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の一方向プリプレグのランダム積層体である、繊維強化熱可塑性樹脂シート。
〔8〕前記繊維強化熱可塑性樹脂シートの単位厚みあたりの前記一方向プリプレグの層数は10〜20層/mmである、前記〔7〕に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
〔9〕(a)強化繊維を、厚み方向における平均含有数が10本以下になるまで開繊する工程、ここで、開繊された強化繊維の幅長の変動係数は5%以下である、および、
(b)開繊された強化繊維に、式(1):
Figure 2018062638
[式中、nは1〜4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含浸させる工程
を少なくとも含む、一方向プリプレグの製造方法。
本発明の一方向プリプレグを用いることにより、成形性と強度に優れる繊維強化熱可塑性樹脂シートを得ることができる。
本発明の一方向プリプレグの断面の模式図である。 本発明によらない一方向プリプレグの断面の模式図である。 トラバースガイドを備えた装置の概略側面図である。 開繊ガイド、幅ガイドおよび開繊槽を備えた装置の概略側面図である。 実施例および比較例の一方向プリプレグを製造するために使用した製造装置の概略側面図である。 実施例および比較例の一方向プリプレグに樹脂組成物を含浸させるため使用した製造装置の概略側面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明の一方向プリプレグは、開繊された強化繊維、および、式(1):
Figure 2018062638
[式中、nは1〜4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含み、該ビスフェノールA型エポキシ樹脂は1000〜35000の重量平均分子量を有し、該一方向プリプレグの厚み方向における該強化繊維の平均含有数は10本以下である。本発明の一方向プリプレグにおいて、厚み方向における強化繊維の平均含有数が10本以下であることと、1000〜35000の重量平均分子量を有する比較的低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂とを含んでいることにより、樹脂マトリックス中にボイド等が含まれることなく強化繊維が存在する。このため、本発明の一方向プリプレグを用いて得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートが、高い成形性と強度とを兼ね備える。
本発明の一方向プリプレグに含まれる強化繊維としては、例えばアラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維、ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維、その他、ボロン繊維、天然繊維、変性した天然繊維などを繊維として用いた強化繊維などが挙げられる。これら強化繊維としては、数千本以上のフィラメントで構成される強化繊維が好ましく、一方向プリプレグを製造するにあたり3000〜60000本のフィラメントで構成される強化繊維が好適に利用される。本発明の一方向プリプレグを成形体として使用する場合、成形体の強度・剛性の観点から、強化繊維は炭素繊維であることがより好ましい。本発明の一方向プリプレグは、1種類の強化繊維を含有してもよいし、二種以上の強化繊維を組み合わせて含有してもよい。
強化繊維が炭素繊維である本発明の一方向プリプレグの好ましい一態様において、炭素繊維はピッチ系の炭素繊維であってもよいし、PAN系の炭素繊維であってもよい。取扱性の観点から、炭素繊維がPAN系の炭素繊維であることが好ましい。
強化繊維における撚りの有無は特に限定されないが、マトリックス樹脂の浸透を高めやすい観点からは、撚りが少ないかまたは撚りのない強化繊維が好ましい。強化繊維の撚り数は、同様の観点から、好ましくは1回/m以下、より好ましくは0.5回/m以下、さらにより好ましくは0.3回/m以下である。
炭素繊維は、一定のトラバース幅で円筒状の管であるボビンに巻かれていることが多い。炭素繊維1本のフィラメント径は、通常5〜8μmであり、複数の炭素繊維が所定のフィラメント数(具体的には1000本(1K)、3000本(3K)、6000本(6K)、12000本(12K)、15000本(15K)、18000本(18K)、24000本(24K)、30000本(30K)、60000本(60K))で扁平状に集合した繊維束(炭素繊維トウ)が好適に利用される。炭素繊維のフィラメント数は、開繊された炭素繊維や本発明の一方向プリプレグの所望される幅や厚みに応じて適宜変更してよいが、生産性の観点から、好ましくは3000〜60000本、より好ましくは6000〜24000本である。フィラメント数が上記の上限以下であることが、製造されるプリプレグ内部のボイドの発生を抑制しやすいため好ましい。また、フィラメント数が上記の下限以上であることが、開繊する際の単糸切れによる毛羽立ちおよびプリプレグの割れを抑制しやすいため好ましい。
本発明の一方向プリプレグは、開繊された強化繊維を含む。
本発明の一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維において、厚み方向における強化繊維の平均含有数は10本以下である。厚み方向における該平均含有数が10本よりも多いと、厚み方向に強化繊維が重なりすぎているために、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂を繊維中に十分均一に含浸させることができずに、繊維と繊維の間に樹脂が含浸されていない隙間(ボイド)が生じてしまう。プリプレグにボイドが含まれていると、このボイドは、プリプレグから例えばランダム積層体を経て成形された成形体中に残り、それに起因して成形体の十分な強度が得られない。あるいは、成形体の十分な強度を達成するためには、プリプレグからランダム積層体や成形品を製造する工程においてボイドが除去されるように、高温および/または高圧を適用することや、長いプレス時間を適用するなどの厳しい条件が必要になる。このような厳しい条件は、樹脂の劣化や生産効率の低下をもたらすため好ましくない。また、局所的に繊維配向が過多となり、繊維を介した繊維軸方向と異にする方向への応力伝達ができず、本来繊維が持つ強度を十分に活かせない。厚み方向における平均含有数の上限は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の浸透をより高めると共に、本発明の一方向プリプレグのランダム積層体の強度を高めやすい観点から、好ましくは8本以下、より好ましくは7本以下、さらにより好ましくは6本以下である。該厚み方向における平均含有数の下限値は、樹脂の浸透を高めやすい観点からは少ないほどよく、特に限定されないが、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上、さらにより好ましくは3本以上である。
開繊された強化繊維が上記の構成を有することにより、本発明の一方向プリプレグの厚み方向における強化繊維の平均含有数を10本以下とすることができる。同様に、本発明の一方向プリプレグの厚み方向における強化繊維の平均含有数は、好ましくは8本以下、より好ましくは7本以下、さらにより好ましくは6本以下、特に好ましくは5.5本以下である。また、該厚み方向における平均含有数の下限値は、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上、さらにより好ましくは3本以上である。
本発明の一方向プリプレグに含まれる厚み方向における強化繊維の含有数は、プリプレグを厚み方向に切断した断面を樹脂等で包埋して電子顕微鏡等を用いて観察し、得られた画像において厚み方向に存在する繊維の本数を数えることにより測定する。このようにして、少なくとも5箇所の断面画像において厚み方向に存在する繊維の本数を数え、その平均値を厚み方向における強化繊維の平均含有数とする。上記断面観察において、切断時の外力によるプリプレグへの影響を最小限にするために、例えばプリプレグの両面を金属等の剛性のある板で挟み固定した状態で切断し、断面観察を行ってもよい。なお、上記少なくとも5箇所の測定は、本発明の一方向プリプレグがある程度の長さを有する場合(例えばボビンに巻き取られた形態のテープ状である場合)には、繊維軸方向に例えば50cm程度の間隔で少なくとも5箇所について測定を行ってもよいし、本発明の一方向プリプレグがカットされたテープの形態である場合には、カットされた複数のプリプレグの中から任意に少なくとも5つのプリプレグを取り出して測定を行ってもよい。以下、複数箇所について測定する場合には、上記と同様にして複数箇所の測定を行ってよい。
本発明の一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維の幅方向における前記強化繊維の平均含有密度は、好ましくは150〜2000本/mm、より好ましくは500〜1500本/mm、さらにより好ましく700〜1000本/mmである。幅方向における強化繊維の平均含有密度が上記の上限以下である場合、樹脂を含浸させる際にプリプレグ内部にボイドが生じにくい。また、幅方向における強化繊維の平均含有密度が上記の下限以上である場合、プリプレグの割れの発生を防止しやすい。開繊された強化繊維が上記の構成を有することにより、本発明の一方向プリプレグに含まれる幅方向における強化繊維の平均含有密度を、好ましくは150〜2000本/mm、より好ましくは500〜1500本/mm、さらにより好ましく700〜1000本/mmとすることができる。本発明の一方向プリプレグの幅方向における強化繊維の平均含有密度を上記の範囲内にすることにより、薄層でありながらも割れが生じにくく、かつ、ボイドが低減されるという本発明の一方向プリプレグの特徴をより向上させやすい。さらに、このような特徴を有する本発明の一方向プリプレグを用いることにより、繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形性および強度を高めやすく、また、繊維強化熱可塑性樹脂シートから製造した成形体の品質も向上させやすい。ここで、幅方向における前記強化繊維の平均含有密度は、本発明のプリプレグの単位幅あたりに含まれる強化繊維の平均含有数であり、次の式(2)より算出される。なお、式(2)中の厚み方向における強化繊維の平均含有数の測定方法は上記に述べたとおりである。また、式(2)中の(1/強化繊維の単糸直径[mm])は、幅方向1mmあたりの単位積層内に含まれ得る強化繊維の本数を表す。
Figure 2018062638
本発明の一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維の幅長の変動係数(CV値)は、好ましくは5%以下である。本発明において、変動係数は開繊された強化繊維の繊維方向にほぼ直交する幅の長さを少なくとも10箇所において測定し、この結果から得た平均値および標準偏差から、変動係数(CV)=平均値/標準偏差の式により算出される。開繊された強化繊維が上記の構成を有することにより、本発明の一方向プリプレグにおける幅長の変動係数を、好ましくは5%以下とすることができる。これにより、本発明のプリプレグからランダム積層体を製造する際に、積層ムラが生じにくくなり、ランダム積層体の等方性を確保しやすくなる。
本発明の一方向プリプレグの好ましい態様を、図を用いて説明する。図1は、厚み方向における強化繊維の平均含有数が10本以下である本発明の好ましい一態様の一方向プリプレグを厚み方向に切断した際の断面の模式図を表す。図2は、厚み方向における強化繊維の平均含有数が10本より多い、本発明に該当しない一方向プリプレグを厚み方向に切断した際の断面の模式図を表す。本発明の好ましい一態様を示す図1においては、ビスフェノールA型樹脂を含むマトリックス樹脂1が強化繊維2の間に十分に浸透しているが、本発明に該当しない一態様を示す図2では、強化繊維2の間にビスフェノールA型樹脂を含むマトリックス樹脂1が存在しないボイド3が存在していると考えられる。この違いが、最終的な成形品を製造する際の成形性や、得られた成形品の強度に影響を与えると考えられる。なお、図1は本発明の一方向プリプレグの一態様を示す模式図であり、本発明の一方向プリプレグの断面形状を何ら限定するものではない。
本発明の一方向プリプレグは、さらに、式(1):
Figure 2018062638
[式中、nは1〜4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む。該ビスフェノールA型エポキシ樹脂は1000〜35000の重量平均分子量を有する。これにより、テープ生産時の取扱い性が良く、さらにこのテープを用いて製造される繊維強化熱可塑性シートの成形性・賦形性を高めることができる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の重量平均分子量は、生産性・成形性の観点から、好ましくは5000〜25000である。ここで、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた装置により測定される。重量平均分子量が上記の下限以上であることが一方向プリプレグの取扱性の観点から好ましく、重量平均分子量が上記の上限以下であることが、ランダム積層体を製造する際の樹脂の流動性が良好となり、ボイド率が低く十分な強度を有する成形体を製造しやすいため好ましい。
本発明の一方向プリプレグは、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と反応し得るさらなる化合物を含むことが好ましい。このような化合物としては、例えばビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;BPA)、ビスフェノールF(4,4’−メチレン−ビスフェノール;BPF)、ビスフェノールS(ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;BPS)、ビスフェノールB(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;BPB)、ビスフェノールE(4,4’−(メチルメチレン)ビスフェノール;BPE)、ビスフェノールP(2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;BPP)等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。本発明の一方向プリプレグがビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と反応し得るさらなる化合物とを含むことが、これらの成分が続くランダム積層体の成形時に重合し、より強固なシートを得やすいため好ましい。また、プリプレグの製造およびランダム積層体の成形の際に、重合する樹脂内に取り込まれることで、成形体の耐熱性を高めることが期待できる。
本発明の一方向プリプレグがビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールAとを含む本発明の好ましい一態様において、一方向プリプレグに含まれる前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と前記ビスフェノールAとの質量比は、プリプレグを用いて得られる成形体の強度・剛性・耐熱性の観点から好ましくは50:50〜90:10、より好ましくは60:40〜80:20である。質量比におけるビスフェノールAの割合が上記の下限以上であることがプリプレグから得られる成形体の耐熱性を高める観点から好ましい。また、質量比におけるビスフェノールAの割合が上記の上限以下であることが、開繊された強化繊維にビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールAを良好な分散状態で含浸させやすいため好ましい。
本発明の一方向プリプレグは、上記の他に任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば有機溶媒、反応促進剤、カップリング剤、顔料、消泡剤、防カビ剤、劣化防止剤等が挙げられる。これらの添加剤を加える場合、その量は添加の目的等に応じて適宜変更してよい。
本発明の一方向プリプレグは、テープ状である。テープ状のプリプレグはボビンに巻き取られた形態であってもよいし、これを所定の長さに切断した形態であってもよい。
本発明の一方向プリプレグの平均厚みは、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜180μm、さらにより好ましくは40〜160μmである。平均厚みが上記の上限以下であることが、プリプレグ内部のボイドの発生を抑制できるため好ましい。また、平均厚みが上記の下限以上であることが、プリプレグの割れを抑制できるため好ましい。上記平均厚みは、プリプレグの少なくとも10箇所について、該プリプレグの厚みを厚み計を用いて測定した平均値である。
上記した開繊された強化繊維の平均含有密度および厚みを考慮すれば、本発明の一方向プリプレグの平均幅は、例えば12Kの炭素繊維の原糸を用いる場合、好ましくは10〜18mmである。この場合、平均幅を10mm以上とすると、製造されるプリプレグ内部のボイドの発生を抑制しやすく、平均幅を18mm以下とすると、開繊する際の単糸切れによる毛羽立ちおよびプリプレグの割れを抑制しやすい。ここで、上記平均幅は、測定用カメラ等を用いて、プリプレグの幅を少なくとも10箇所について測定した平均値である。なお、本発明の一方向プリプレグにおいて、幅方向とは、プリプレグ表面における繊維方向に直交する方向である。
本発明の一方向プリプレグの繊維方向の平均長さは特に限定されない。一方向プリプレグの使用用途に応じて適宜変更される。
本発明の一方向プリプレグは、最終的に得られる成形体の成形性や機械的強度を高めやすい観点から、平均厚み2mmを有する繊維強化熱可塑性シートにおいてJIS−7075に従い測定し、好ましくは0〜0.4%のボイド率を有する。
本発明の一方向プリプレグにおいて、開繊された強化繊維に拘束剤を付着させてもよい。拘束剤を付着させることにより、開繊された強化繊維の幅の拘束性を高めやすく、また、本発明の一方向プリプレグを製造する際に発生し得る割れを抑制することができる。拘束剤の付着量は、最終的に得られるプリプレグの物性低下への影響を考慮して、強化繊維の重量に基づいて0.8重量%以下であることが好ましく、0.3〜0.5重量%であることがより好ましい。拘束剤の付着量を上記の上限以下とすることが、開繊された強化繊維の幅の拘束性を高めやすいため好ましい。拘束剤の付着量を上記した範囲とすることで、プリプレグから得られる成形体の物性低下および一方向プリプレグを製造する際に発生し得る割れを抑制しやすい。使用する拘束剤の種類としては特に限定されないが、乳化させたエポキシ樹脂や乳化させた変性ポリオレフィン樹脂等が好適に利用される。
本発明はまた、
(a)強化繊維を、厚み方向における平均含有数が10本以下になるまで開繊する工程、ここで、開繊された強化繊維の幅長の変動係数は5%以下である、および、
(b)開繊された強化繊維に、式(1):
Figure 2018062638
[式中、nは1〜4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含浸させる工程
を少なくとも含む、一方向プリプレグの製造方法も提供する。本発明の上記一方向プリプレグも、好ましくは本発明の製造方法により製造される。本発明の製造方法は、強化繊維を厚み方向における平均含有数が10本以下になるまで開繊する工程(以下において「工程(a)」とも称する)と、開繊された強化繊維に樹脂を含浸させる工程(以下において「工程(b)」とも称する)とが含まれていればよいが、通常は、工程(a)を行った後で、工程(b)が行われる。しかし、開繊を行いながら含浸を行う、工程(a)と工程(b)とを同時に行う方法も本発明の製造方法に含まれる。
上記、工程(a)で使用する強化繊維は、特に限定されないが、通常「原糸」とも称される未開繊の強化繊維である。このような強化繊維は、一定のトラバース幅で円筒状の管であるボビンに巻かれており、これを解舒して使用することが多い。
ここで、通常、円筒状のボビンにトラバース巻きされた原糸を単に解舒しただけでは、繊維束は進行方向に対して蛇行した状態で送り出されることとなる。上記に述べた本発明の一方向プリプレグを得やすい観点からは、原糸由来のトラバースを解消し、繊維束が蛇行することなく進行方向に対して真っ直ぐに送り出されるような装置を使用することが好ましい。
上記トラバースを解消するための装置を図3に示す。例えば、原糸を解舒して送り出す送りだし機構と、複数の糸道ガイド7と、強化繊維のトラバースを解消するトラバースガイド8とを備えた装置を使用することが好ましい。このような装置を用いて例えば炭素繊維を解舒する工程について、以下に説明する。図3に示すように、トラバースガイド8は直前の糸道ガイド7aと垂直に交差するように、直前の糸道ガイド7aの上方および下方の何れか一方に設けられている(図3では直前の糸道ガイド7aの下方に設けられている)。ここで、扁平状の繊維束のガイドとの接触面は直前の糸道ガイド7a、トラバースガイド8、直後の糸道ガイド7bの何れとも同じ面となるように送り出されることが好ましい。送り出し機構としては、原糸4をセットする原糸ボビンホルダー5と送出張力発生モーター6とを備えた装置が例示される。糸道ガイド7としては、金属製の縦ガイドローラーが好適に利用される。糸道ガイド7は、原糸ボビンホルダー5とほぼ平行となるように繊維束の進行方向に沿って設けられていることが好ましい。糸道ガイド7の直径は、設備の省スペース化および強化繊維の取扱い性の観点から好ましくは20〜40mm程度である。原糸ボビンホルダー5にセットされた強化繊維の原糸4は、送出張力発生モーター6が駆動することにより送り出され、糸道ガイド7を経て強化繊維を開繊するための工程(a)へ送られる。
原糸4の繊維束が直前の糸道ガイド7aからトラバースガイド8へ送り出される際に90°、トラバースガイド8から直後の糸道ガイド7bへ送り出される際に90°それぞれ捻られ、これらのガイドを通る際に1回撚られることとなる。これにより、原糸由来のトラバースが解消され、炭素束が蛇行することなく進行方向に対して真っ直ぐに送り出すことが可能となる。繊維束が直前の糸道ガイドから直後の糸道ガイドへ送り出される際、捻りの方向は繊維の進行方向に対してS方向、Z方向またはこれらを組み合わせて用いられる。
トラバースガイド8は糸道ガイド7と同じ金属製の縦ガイドローラーを用いてもよく、径の小さいピンガイドを用いてもよい。さらに、モーター等の駆動源を用いてトラバースガイドを繊維束の進行方向と逆方向に駆動するように設けたり、ガイドの表面に微細な凹凸を設けたりしてもよい。このようにトラバースガイド8を繊維束に対して抵抗を加えるように設けることにより、繊維束がトラバースガイド8を通過する際に繊維束の端部の折り返しを防止することができ、繊維束を扁平な状態(例えば12Kの原糸を使用する場合には、繊維方向に直交する幅が5〜8mmまたは8〜10mm)を維持したまま送り出すことができる。
トラバースガイド8と直前の糸道ガイド7aおよび直後の糸道ガイド7bとの間隔は1m以上であることが好ましい。これにより、繊維束がトラバースガイドを通過することによる端部の折り返しを防止することが可能となる。
本発明の製造方法は、例えば上記のようにして解舒した強化繊維を、厚み方向における平均含有数が10本以下になるまで開繊する工程(a)を少なくとも含む。厚み方向における該平均含有数が10本よりも多いと、厚み方向に強化繊維が重なりすぎているために、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂を繊維中に十分均一に含浸させることができずに、繊維と繊維の間に樹脂が含浸されていない隙間(ボイド)が生じてしまう。厚み方向における平均含有数の上限は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の浸透をより高めると共に、本発明の一方向プリプレグのランダム積層体の強度を高めやすい観点から、好ましくは8本以下、より好ましくは7本以下、さらにより好ましくは6本以下である。該厚み方向における平均含有数の下限値は、樹脂の浸透を高めやすい観点からは少ないほどよく、特に限定されないが、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上、さらにより好ましくは3本以上である。
工程(a)において、開繊時に強化繊維に負荷される張力は、好ましくは0.02〜0.1g/本、より好ましくは0.04〜0.06g/本である。このような範囲の張力をかけることにより、開繊性を高めやすく、かつ、単糸切れによる毛羽立ちを抑制しやすい。張力が0.02g/本より低い場合、繊維束が十分に押し広げられず得られる開繊された強化繊維の厚み方向における平均含有数を十分に少なくすることができない場合がある。また、0.1g/本より高い場合、単糸切れによる毛羽立ちが発生しやすくなる場合がある。
強化繊維の開繊性を向上させるために、超音波開繊法、静電開繊法、プレス開繊法、ジェット開繊法、通気式開繊法等の少なくとも1つを用いてもよい。
工程(a)において、例えば開繊ガイドと、幅ガイドとを備える装置を用いて開繊を行ってよい。図4には、開繊ガイド13a〜13hと幅ガイド10に加えて、開繊槽11とを備えた装置の例を示す。開繊ガイド13a〜13hは、例えば所定の直径を有する円柱形状であり、所定の位置に固定されている。開繊ガイド13a〜13hにより、開繊前の強化繊維9に対して略半径方向から荷重が負荷され、強化繊維はその進行方向に対して鉛直方向から押圧をかけられることとなる。これにより繊維束が押し広げられ強化繊維が開繊される。開繊ガイドの設置本数は特に限定されず、開繊前の強化繊維9の繊維束の幅や、一方向プリプレグの所望される幅等に応じて適宜変更してよい。繊維束と開繊ガイド13a〜13hとの巻き付け角についても同様に、適宜変更してよい。
幅ガイド10は、繊維束の両端より外側に位置するように設けられる一対のガイドからなり、開繊ガイド13a〜13hの間の少なくとも1か所に開繊ガイドに対して垂直となるように設けられる。開繊前の強化繊維9の繊維束は幅ガイド10の内側を通るため、繊維束の開繊幅を調整することが可能となり、開繊された強化繊維の幅精度を高めることができる。幅ガイド10の設置数および設置幅については特に限定されず、繊維のフィラメント数や一方向プリプレグの所望される幅等に応じて適宜変更してよい。
開繊ガイド13a〜13hおよび幅ガイド10の材質は特に限定されないが、スチール、ステンレス、アルミナ等の金属が好適に利用される。繊維の摩耗を低減させる観点からは、ステンレスの表面にクロムが電解めっきされたガイドを用いることが好ましい。このような材質のガイドは平滑化された表面を有するため、開繊の際にガイドと繊維との接触による摩耗を低下することができ、単糸切れによる毛羽立ちを抑制することができる。
開繊槽11は、水等の液体を含む開繊溶液12を貯留するために設けられる槽であり、強化繊維を液内で送り出しながら開繊できるように、その内部に開繊ガイドおよび幅ガイドを設けてよい。このように強化繊維を液中に浸しながら開繊を行うことで、強化繊維の製造の際に塗布されるサイジング剤を取り除くことができる。開繊槽におけるサイジング剤の溶出性を高めるために、開繊槽内の液体の温度を高温にしてもよいし、界面活性剤等を添加した液体を使用してもよい。
開繊された強化繊維に拘束剤を付着させてもよい。拘束剤を付着させることにより、開繊された強化繊維の幅の拘束性を高めやすく、また、本発明の一方向プリプレグを製造する際に発生し得る割れを抑制することができる。拘束剤は上記の開繊槽内に含ませてもよいし、強化繊維に含まれるサイジング剤を取り除くための開繊槽(デサイズ槽)とは別に、拘束剤を付着させる槽(リサイズ槽)を設けてもよい。拘束剤を付着させることにより、続く工程(b)において、開繊された強化繊維の幅方向の収縮を抑制しやすい。拘束剤の付着量は、最終的に得られるプリプレグの物性低下への影響を考慮して、強化繊維の重量に基づいて0.8重量%以下であることが好ましく、0.3〜0.5重量%であることがより好ましい。拘束剤の例としては、特に限定されないが、乳化させたエポキシ樹脂や変性ポリオレフィン樹脂等が好適に利用される。
上記のようにして開繊された強化繊維に、次いで、該強化繊維に含まれる水分等を除去する工程、乾燥させる工程(例えば図4中の乾燥ローラー14)、および巻き取る工程(例えば図4中の駆動ローラー15および巻取部16)をそれぞれ必要に応じて施してよい。
開繊された強化繊維を乾燥させる工程では、例えば、温度調節可能な複数の乾燥ロールを使用してよい。繊維束が乾燥ロールと接触するように送り出されることにより、繊維束を完全に乾燥させることができる。乾燥ロールの温度は、テープ幅、巻き取り速度、開繊槽内の溶液の揮発性等に応じて適宜変更してよいが、80〜200℃の温度域が好適に利用される。また、各乾燥ロールの温度は同じであっても異なっていてもよい。
巻き取る工程において、開繊された強化繊維を巻き取る機構(巻き取り軸、モーターなど)とリールが使用される。巻き取り軸に取り付けられたリールが回転することにより、開繊された強化繊維をリールに巻き取ることができる。巻き取り速度は、繊維束の開繊性・開繊された強化繊維の幅等に応じて適宜変更してよい、好ましくは50m/分以下であり、より好ましくは5〜30m/分である。上記範囲の速度で巻き取りを行うことが、幅の精度を高めやすいため好ましい。
開繊された強化繊維を巻き取る工程において、各ローラーとの接触により発生する単糸切れによる毛羽立ちを取り除くために、例えばスクレーパー、ブラシ等をローラーと接触するように設けてもよい。
上記工程を経て開繊された強化繊維は、5%以下の幅長の変動係数(CV)を有する。かかる変動係数の算出方法は、一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維について、上記に述べたとおりである。幅長の変動係数を5%以下とすることにより、本発明のプリプレグからランダム積層体を製造する際に、積層ムラが生じにくく、ランダムシートの等方性を確保しやすくなる。
上記工程(a)に続く工程(b)において、開繊された強化繊維に、式(1):
Figure 2018062638
[式中、nは1〜4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含浸させる。工程(b)で含浸させるビスフェノールA型エポキシ樹脂の重量平均分子量は好ましくは1000以下である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の重量平均分子量が上記の上限以下であることが、樹脂が低粘性であり、強化繊維間にボイドが生じることなく含浸させやすいため好ましい。
工程(b)において、さらに、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と反応し得るさらなる化合物を含浸させることが好ましい。このような化合物としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールPが挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。工程(b)において、開繊された強化繊維に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と反応し得るさらなる化合物とを含浸させることが、得られる一方向プリプレグを用いてランダム積層体を製造する際に、これらの化合物が1つの一方向プリプレグ内のみでなく、隣接する一方向プリプレグ間でも重合し、ランダム積層体の強度を高めやすいため好ましい。
工程(b)において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と共にビスフェノールAを含浸させる本発明の好ましい一態様において、一方向プリプレグに含まれる前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と前記ビスフェノールAとの質量比は、プリプレグを用いて得られる成形体の強度・剛性・耐熱性の観点から、好ましくは50:50〜90:10、より好ましくは60:40〜80:20である。質量比におけるビスフェノールAの割合が上記の下限以上であることがプリプレグから得られる成形体の耐熱性を高めやすいために好ましい。また、質量比におけるビスフェノールAの割合が上記の上限以下であることが、開繊された強化繊維にビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールAを良好な分散状態で含浸させやすいため好ましい。
工程(b)において、上記の他に任意の添加剤を含浸させてもよい。添加剤としては、例えば有機溶媒、反応促進剤、カップリング剤、顔料、消泡剤、防カビ剤、劣化防止剤等が挙げられる。これらの添加剤を加える場合、その量は添加の目的等に応じて適宜変更してよい。
工程(b)においてビスフェノールA型エポキシ樹脂を含浸させる方法としては、開繊された強化繊維にビスフェノールA型エポキシ樹脂をそのまま用いて含浸させてもよいし、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と有機溶媒とを含むワニスを用いて含浸させてもよい。樹脂の粘性を低くすることで強化繊維に対する透過性を高め、強化繊維間にボイドが生じることなく含浸させやすい観点から、ワニスを用いて含浸を行うことが好ましい。ワニスに含まれ得る有機溶媒としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に対する溶解性が高い有機溶媒が好ましく、DNP・NMP等の極性溶媒がより好ましく、ケトン系溶媒がさらにより好ましく、メチルエチルケトンが特に好ましい。
含浸方法は特に限定されず、吐出ダイを用いて開繊された強化繊維の上下面にビスフェノールA型エポキシ樹脂またはその溶液を塗工することにより行ってもよいし、開繊された強化繊維をビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する溶液に浸漬させて行ってもよい。ここで、樹脂または樹脂溶液が含浸した強化繊維は、樹脂または樹脂溶液の表面張力により幅方向に収縮しやすい。この収縮により、厚みの増大や、繊維の方向性の乱れ、割れの発生などが起こり得る。このような収縮を防止するために、工程(b)において、例えば塗工装置を用いることが好ましい。
樹脂を含浸させた後、強化繊維に、ローラーによる絞りで脱液する絞り工程を施してよい。ローラーに掛ける絞り圧Pは、好ましくは0.05MPa〜0.3MPa、より好ましくは0.1MPa〜0.25MPaである。これにより、ボイド除去と樹脂量制御を行うことができる。絞り圧が上記の下限より低いと、樹脂付着量が安定せず一方向プリプレグ内部にボイドが残存するため好ましくない。また、絞り圧が上記の上限より高いと、一方向プリプレグの樹脂量を増やすことが困難となるため好ましくない。当該樹脂量は、最終的に得られる一方向プリプレグにおける強化繊維体積含有率Vfが好ましくは20〜60%、より好ましくは35〜55%になるように制御されることが好ましい。上記した範囲とすることが、本発明のプリプレグから得られる成形体の成形性の観点から好ましい。体積含有率が上記の上限以下であることが、繊維相互の交絡箇所(未含浸部)を低減しボイドレス化しやすいため好ましい。また、体積含有率が上記の下限以上であることが、成形体の強度を高めやすいため好ましい。
次いで、強化繊維に含浸させた樹脂を固化させる。固化方法は特に限定されないが、樹脂を含浸させた強化繊維を加熱して行ってよい。加熱温度は、用いる強化繊維の種類や、樹脂溶液を用いた場合には溶媒の種類や揮発温度等によって適宜変更してよいが、樹脂のガラス転移温度より100℃以上高い温度で加工することが好ましい。この固化により、式(1)で示される末端の反応基(エポキシ基)を介して樹脂が直鎖状に重合し、1000〜35000の重合平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む一方向プリプレグが得られる。
本発明の一方向プリプレグを、例えば所望の大きさを有する金型にランダムに積層するように配置させ、加熱および加圧することにより、等方性を示す繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造することができる。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造する際の加熱温度は、樹脂のガラス転移温度より100℃以上高いことが好ましい。これにより、樹脂の流動性が良好となり、更に加圧することで積層されたプリプレグ間に存在する隙間を埋めることが可能となる。この結果、得られる成形体のボイドを低減させやすくなる。
本発明の一方向プリプレグは、上記のように、1000〜35000の比較的低い重量平均分子量を有する式(1)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む。そのため、上記加熱温度で加熱して繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造する際に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のさらなる重合が進行する。この重合は、繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる1つの一方向プリプレグ内のみでなく、隣接する一方向プリプレグ間でも行われる。その結果、繊維強化熱可塑性樹脂シート中の一方向プリプレグは互いにより強固に結合し、高い強度が達成されると考えられる。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートは、上記に述べたように強度に優れると共に高い成形性を有する。これは、上記のように繊維強化熱可塑性樹脂シート製造時に樹脂が重合することに加えて、一方向プリプレグ内に強化繊維が厚み方向の強化繊維の平均含有数が10本以下となるように開繊された状態で含まれていること、および、繊維と繊維の間の樹脂が含浸されていない隙間(ボイド)の発生が限りなく抑制されていることによると考えられる。さらに、一方向プリプレグの厚み方向における該強化繊維の平均含有数が10本以下となるように開繊された強化繊維を含んでいるため、繊維強化熱可塑性樹脂シート内で局所的に一定の繊維配向が過多となることがなく、高い強度が低い変動係数で達成されると考えられる。
上記特徴を有する本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートは、優れた成形性を有する。従来既知のプリプレグには、少なからずボイドが含まれている場合が多く、このボイドはこのようなプリプレグから得た熱可塑性樹脂シートにも残存する。そのため、成形体の十分な強度を達成するためには、ボイドが除去されるように高温および/または高圧、長時間のプレス成形により、ボイドを除去する必要が生じる場合があった。また、繊維の繊維配向が過多となる部分がある場合には、繊維を介した繊維軸方向と異にする方向への応力伝達ができず、本来繊維が持つ強度を十分に活かせない場合があった。しかし、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートは、上記に述べたように、ボイドの発生が限りなく抑制され、繊維強化熱可塑性樹脂シート内で局所的に一定の繊維配向が過多となることがないため、従来よりも低温、低圧、短時間の条件でも十分な強度を有する成形体を製造することが可能である。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートを用いて成形体を製造する方法としては、プレス成形が挙げられる。プレス成形は、加工装置および型等を用いて、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートに曲げ、剪断、圧縮等の変形を加え、成形体を製造する方法である。成形形態としては、例えば深絞り、フランジ、コールゲート、エッジカーリング、型打ちなどが挙げられる。プレス成形の方法としては、金型プレス法、および、大型の部材(例えば航空機用部材)を成形するために使用されるオートクレーブ法などが挙げられる。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる樹脂は熱可塑性樹脂であるため、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートを加熱し、該樹脂を溶融、軟化させた状態で成形型の形状に変形させ、その後冷却するスタンピング成形にも適している。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートは特に成形性に優れるため、従来の繊維強化プラスチックを用いる場合では成形が困難であった深絞りのプレス成形や、低圧(4MPa以下)での成形、短時間での成形が可能なスタンピング成形に使用することができる。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートの形状は、所望される成形体の形状に応じて適宜変更してよく、特に限定されない。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートの単位厚みあたりの前記一方向プリプレグの層数は、繊維強化熱可塑性樹脂シートから得た成形体の強度を高めやすい観点から、10〜20層/mmであることが好ましい。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートは、一方向プリプレグの強化繊維に対する樹脂の含浸性が良好であるため、平均厚み2mmを有する繊維強化熱可塑性シートにおいて、JIS−7075に従い測定し、好ましくは0〜0.4%のボイド率とすることができる。このように低いボイド率を有する繊維強化熱可塑性樹脂シートから得られる成形体は、成形性に優れ、機械的強度を高めることが可能となる。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートから製造した成形体の用途は何ら限定されないが、例えば、OA機器および携帯電話等に用いられる電気、電子機器部品、支柱および補強材等の建築材料、自動車用構造部品、航空機用部品等が挙げられる。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートから製造した成形体は、高い強度を少ないばらつきで有している。また、シートに限らず一方向材としての補強材等にも利用することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
図5に、実施例および比較例の一方向プリプレグを製造するために使用した製造装置の概略側面図を示す。該製造装置は、開繊された強化繊維の巻取パッケージ17、導糸ローラー19、樹脂吐出ダイ20、搬送ベルトガイドローラー21、搬送ベルト22、乾燥炉(重合炉)23、冷却装置24を有する。
開繊された強化繊維に樹脂を含浸させる工程に関する装置をより詳細に説明するために、上記図5に示した製造装置の一部の詳細を、図6に示す。なお、図5において、開繊された強化繊維が導糸ローラー19と接する高さと、樹脂を含浸後の強化繊維が搬送ベルト22と接する高さは同じであるが、実際には実施例および比較例の一部において、図6に示されるように角度Aの傾斜となるように、高さを調整した。
〔製造例1:強化繊維の開繊方法〕
強化繊維を開繊する装置は、原糸を送り出す機構、開繊された強化繊維を巻き取る機構、および炭素繊維が通るガイド、強化繊維を開繊する開繊槽、送りだし或いは巻き取り速度を制御する制御機構を備えていた。なお、原糸を送り出す機構は、トラバースを解消する装置を有していた。繊維束を巻き取り速度20m/分で通糸し、張力を0.04〜0.06g/本の条件で繊維束を解舒後に、開繊槽中の溶液に浸した状態で、繊維束に押圧をかけることにより開繊し、水分を乾燥させて、開繊された強化繊維(以下において「開繊テープ」とも称する)を得た。なお、各実施例および比較例において、所望の平均幅が得られるようにガイド幅をそれぞれ調整した。各実施例および比較例において使用した開繊された強化繊維のフィラメント数、平均幅およびその変動係数、厚み方向における強化繊維の平均含有数は各実施例に示すとおりである。開繊された強化繊維の平均幅およびその変動係数は、カメラを用いて幅を測定した。
〔製造例2:樹脂組成物の製造〕
ナガセケムテックス社製熱溶融エポキシ(XNR/H6850)を1000g(重量平均分子量200〜1000を有する上記式(I)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂550g、300gのビスフェノールA、および、150gのメチルエチルケトンを含む)を用意し、攪拌機を用いて均一に混合し、100〜200mPa・sの粘度を有する樹脂組成物を得た。
〔実施例1〕
単糸直径7μm、フィランメント数12kの炭素繊維の原糸(a)を、製造例1の方法に従い開繊した。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ1」とも称する)は、16mmの平均幅、2.4%の幅長の変動係数(CV)、5.25本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ1を、所定の速度(4mm/分)で通糸し、製造例2で得た樹脂組成物を樹脂吐出ダイ(含浸ダイ)から吐出させ、テープに含浸させた。ここで、含浸工程における装置の設定の詳細は、図6に示される搬送ベルトガイドローラー21の中心と下面ダイヘッド20bとの間の距離Bを20mmとし、角度Aを1°とした。含浸後の樹脂含浸テープを搬送ベルトで受け、200℃に設定した乾燥・重合炉を1分間かけて通過させ、テープ状の一方向プリプレグ1を製造した。製造したテープの長さは200mであった。上記工程においてテープにかかる張力は300gであった。その結果、平均厚み0.071mm、平均幅15.1mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、両面の樹脂付着性が良好であった。
〔実施例2〕
単糸直径7μm、フィラメント数12kの炭素繊維の原糸(b)を、製造例1の方法に従い開繊した。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ2」とも称する)は、16mmの平均幅、4.7%の幅長の変動係数(CV)、5.25本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ2を用い、図6に示される距離Bを10mmとし、角度Aを2°としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状の一方向プリプレグ2を製造した。その結果、平均厚み0.06mm、平均幅17.1mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、両面の樹脂付着性が良好であった。
〔実施例3〕
単糸直径7μm、フィランメント数12kの炭素繊維の原糸(c)を、製造例1の方法に従い開繊した。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ3」とも称する)は、13mmの平均幅、4.4%の幅長の変動係数(CV)、6.46本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ3を用い、図6に示される距離Bを10mmとし、角度Aを2°としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状の一方向プリプレグ3を製造した。その結果、平均厚み0.10mm、平均幅14.1mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、両面の樹脂付着性が良好であった。
〔実施例4〕
単糸直径7μm、フィランメント数12kの炭素繊維の原糸(d)を、製造例1の方法に従い開繊した。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ4」とも称する)は、13mmの平均幅、4.1%の幅長の変動係数(CV)、6.46本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ4を用い、図6に示される距離Bを20mmとし、角度Aを1°としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状の一方向プリプレグ4を製造した。その結果、平均厚み0.10mm、平均幅13.2mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、両面の樹脂付着性が良好であった。
〔実施例5〕
単糸直径7μm、フィランメント数60kの炭素繊維の原糸(e)を、製造例1の方法に従い開繊した。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ5」とも称する)は、80mmの平均幅、3.8%の幅長の変動係数(CV)、5.25本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ5を用い、テープにかかる張力を1000gとし、図6に示される距離Bを20mmとし、角度Aを1°としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状の一方向プリプレグ5を製造した。その結果、平均厚み0.072mm、平均幅78mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、両面の樹脂付着性が良好であった。
〔実施例6〕
単糸直径7μm、フィランメント数15kの炭素繊維の原糸(f)を、製造例1の方法に従い開繊した。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ6」とも称する)は、17mmの平均幅、1.6%の幅長の変動係数(CV)、6.2本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ6を用い、図6に示される距離Bを20mmとし、角度Aを1°としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状の一方向プリプレグ6を製造した。その結果、平均厚み0.075mm、平均幅15mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、両面の樹脂付着性が良好であった。
〔実施例7〕
単糸直径7μm、フィランメント数12kの炭素繊維の原糸(g)を、製造例1の方法に従い開繊した。なお、開繊工程において、拘束剤として変性ポリオレフィン樹脂を炭素繊維の重量に対して0.4%の量で付着させた。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ7」とも称する)は、17mmの平均幅、1.6%の幅長の変動係数(CV)、6.2本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ7を用い、図6に示される距離Bを20mmとし、角度Aを1°としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状の一方向プリプレグ7を製造した。その結果、平均厚み0.095mm、平均幅13mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、両面の樹脂付着性が良好であった。
〔比較例1〕
単糸直径7μm、フィランメント数12kの炭素繊維の原糸(h)を、製造例1の方法に従い開繊した。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ8」とも称する)は、16mmの平均幅、6.4%の幅長の変動係数(CV)、5.25本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ8を用い、図6に示される距離Bを70mmとし、角度Aを10°としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状の一方向プリプレグ8を製造した。一方向プリプレグ8を製造時、強化繊維の幅方向への収縮が見られた。その結果、平均厚み0.17mm、平均幅7.1mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、幅が収縮した。
〔比較例2〕
単糸直径7μm、フィランメント数12kの炭素繊維の原糸(i)を、製造例1の方法に従い開繊した。開繊された炭素繊維(以下、「開繊テープ9」とも称する)は、16mmの平均幅、7.2%の幅長の変動係数(CV)、5.25本の厚み方向における強化繊維の平均含有数を有していた。開繊テープ9を用い、図6に示される距離Bを100mmとし、角度Aを0°としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状の一方向プリプレグ9を製造した。その結果、平均厚み0.3mm、平均幅5mm、繊維体積含有量(Vf)40%(付着量精度±2%)のプリプレグを得た。得られたプリプレグは、幅が収縮し、棒状になった。
上記のようにして得た一方向プリプレグ1〜9について、下記の測定方法に従い、一方向プリプレグの厚み方向における強化繊維の平均含有数、幅方向における前記強化繊維の平均含有密度、平均厚み、平均幅、繊維体積含有率を測定した。また、樹脂の付着性を下記の評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。さらに、得られた一方向プリプレグ1〜9に含まれる上記式(I)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定したところ、いずれも1000〜35000であった。
一方向プリプレグの厚み方向における強化繊維の含有数は、得られたプリプレグを厚み方向に切断し、その断面を電子顕微鏡を用いて100〜1000倍に拡大して観察し、得られた画像において厚み方向に存在する繊維の本数を数えることにより測定した。上記測定を5箇所について行い、その平均値を厚み方向における強化繊維の平均含有数とした。
一方向プリプレグの幅方向における強化繊維の平均含有密度は、上記のようにして測定した厚み方向における強化繊維の平均含有数と、各実施例および比較例で使用した炭素繊維の単糸直径から、上記式(2)に従い算出した。
平均厚みは、一方向プリプレグの厚みを厚み計を用いて1m毎において測定し、その平均値を算出して得た。
平均幅は、一方向プリプレグの幅をカメラを用いて繊維方向に対して少なくとも50cm毎において測定し、その平均値を算出して得た。
繊維体積含有量を、1mあたりのプリプレグの重量から測定したところ、繊維体積含有量は、いずれの実施例および比較例においても40%であった。また、付着量精度はいずれの実施例および比較例においても±2%であった。
樹脂付着性は、得られた一方向プリプレグの両面について、繊維が剥き出しになった部分(擦れ)の有無を次の基準に従い評価した。
樹脂付着性の評価基準
A:繊維が剥き出しになった部分が全くない
B:繊維が剥き出しになった部分がほぼない
C:繊維が剥き出しになった部分がやや多い
D:繊維が剥き出しになった部分が非常に多い
Figure 2018062638
〔実施例8〕
実施例1で得たテープを、繊維方向の長さが20mmとなるようにカットした。このようにして得た一方向プリプレグを、300mm角の金型内に繊維方向がばらばらになるように散布した後、金型を、加圧せずに150℃で10分間加熱し、一方向プリプレグに含まれる樹脂を重合させた。その後、150℃を維持しながら、4MPaで20分間加圧し、その後80℃以下まで降温させて脱型した。このようにして、2mmの平均厚みを有する、300mm角の一方向プリプレグのランダム積層体1(非連続繊維等方性シート)を製造した。
〔実施例9〕
実施例3で得たテープを用いたこと以外は実施例8と同様にして、一方向プリプレグのランダム積層体3を製造した。
〔実施例10〕
実施例6で得たテープを用いたこと以外は実施例8と同様にして、一方向プリプレグのランダム積層体3を製造した。
〔実施例11〕
実施例7で得たテープを用いたこと以外は実施例8と同様にして、一方向プリプレグのランダム積層体4を製造した。
〔比較例3〕
比較例1で得たテープを用いたこと以外は実施例8と同様にして、一方向プリプレグのランダム積層体5を製造した
〔比較例4〕
比較例2で得たテープを用いたこと以外は実施例8と同様にして、一方向プリプレグのランダム積層体6を製造した
上記のようにして得たランダム積層体1〜6について、下記の測定方法に従い、平均曲げ強度および平均曲げ弾性率を測定した。得られた結果を表2に示す。また、断面性状を下記の評価方法に従い評価した。得られた結果を表2に示す。
平均曲げ強度および平均曲げ弾性率の測定は、ASTM D790に従い、島津製作所製万能試験機(100kNテンシロン)を用いて行った。測定試料としては、各実施例および比較例で得たランダム積層体を、縦80mm、横35mm、厚み2mmに切り出した試験片を多数作成し、そこから10本を抜き出して使用した。10回の測定で得た結果から、平均値およびCVを算出した。
断面性状は、得られたランダム積層体を厚み方向に切断した断面を、電子顕微鏡により観察し、樹脂の偏りの有無を次の基準に従い評価した。
樹脂付着性の評価基準
A:樹脂の偏りが全くない
B:樹脂の偏りがほぼない
C:樹脂の偏りがやや多い
D:樹脂の偏りが非常に多い
Figure 2018062638
1 マトリックス樹脂
2 強化繊維
3 ボイド
4 原糸
5 原糸ボビンホルダー
6 送出張力発生モーター
7 糸道ガイド
7a 直前の糸道ガイド
7b 直後の糸道ガイド
8 トラバースガイド
9 開繊前の強化繊維
10 幅ガイド
11 開繊槽
12 開繊溶液
13a〜13h 開繊ガイド
14 乾燥ローラー
15 駆動ローラー
16 巻取部
17 開繊された強化繊維の巻取りパッケージ
18 開繊された強化繊維
19 導糸ローラー
20 樹脂吐出ダイ
20a 上面ダイヘッド
20b 下面ダイヘッド
21 搬送ベルトガイドローラー
22 搬送ベルト
23 乾燥炉
24 冷却装置
25 一方向プリプレグテープ
本発明の一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維の幅長の変動係数(CV値)は、好ましくは5%以下である。本発明において、変動係数は開繊された強化繊維の繊維方向にほぼ直交する幅の長さを少なくとも10箇所において測定し、この結果から得た平均値および標準偏差から、変動係数(CV)=標準偏差/平均値の式により算出される。開繊された強化繊維が上記の構成を有することにより、本発明の一方向プリプレグにおける幅長の変動係数を、好ましくは5%以下とすることができる。これにより、本発明のプリプレグからランダム積層体を製造する際に、積層ムラが生じにくくなり、ランダム積層体の等方性を確保しやすくなる。

Claims (9)

  1. 開繊された強化繊維、および、式(1):
    Figure 2018062638
    [式中、nは1〜4の整数を表す]
    で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む、テープ状の一方向プリプレグであって、該ビスフェノールA型エポキシ樹脂は1000〜35000の重量平均分子量を有し、該一方向プリプレグの厚み方向における該強化繊維の平均含有数は10本以下である、一方向プリプレグ。
  2. 前記一方向プリプレグの幅方向における前記強化繊維の平均含有密度は150〜2000本/mmである、請求項1に記載の一方向プリプレグ。
  3. ビスフェノールAをさらに含む、請求項1または2に記載の一方向プリプレグ。
  4. 前記一方向プリプレグに含まれる前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と前記ビスフェノールAとの質量比は50:50〜90:10である、請求項1〜3のいずれかに記載の一方向プリプレグ。
  5. 強化繊維は炭素繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の一方向プリプレグ。
  6. 前記一方向プリプレグの幅長の変動係数は5%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の一方向プリプレグ。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の一方向プリプレグのランダム積層体である、繊維強化熱可塑性樹脂シート。
  8. 前記繊維強化熱可塑性樹脂シートの単位厚みあたりの前記一方向プリプレグの層数は10〜20層/mmである、請求項7に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
  9. (a)強化繊維を、厚み方向における平均含有数が10本以下になるまで開繊する工程、ここで、開繊された強化繊維の幅長の変動係数は5%以下である、および、
    (b)開繊された強化繊維に、式(1):
    Figure 2018062638
    [式中、nは1〜4の整数を表す]
    で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含浸させる工程
    を少なくとも含む、一方向プリプレグの製造方法。
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