JP2018062295A - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Masahiro Hara
雅宏 原
勇作 山本
Yusaku Yamamoto
勇作 山本
寺田 仁
Hitoshi Terada
仁 寺田
拓也 中野
Takuya Nakano
拓也 中野
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Abstract

【課題】左右後輪のそれぞれのスリップ度合いが左右前輪のスリップ度合いの平均値に近づくように左右輪独立制御を実施する場合に、車両の高速域での制動安定性の確保のために後輪低制動力特性が採用されていても左右後輪の双方の制動力が高められることを抑制できるようにする。【解決手段】左右の後輪10Rの制動力を独立して制御可能なブレーキ装置20を備える車両1において、左右の後輪10Rのそれぞれのスリップ率Sが共通の目標スリップ率Stに近づくように左右輪独立制御を実行する。左右輪独立制御は、車両1の高速域では、減速度Gが、低速域で用いられる制御開始Gth1よりも低い制御開始Gth2以上であるときに実行される。低速域では、左右の前輪10Fのスリップ率Sの平均値であるベース値Stbが目標スリップ率Stとして使用され、高速域では、ベース値Stbに補正係数Kを乗じて得られる値を目標スリップ率Stとして使用される。【選択図】図6

Description

この発明は、車両の制動制御装置に関し、より詳細には、左右後輪の制動力を独立して制御する左右輪独立制御が行われる車両を制御するうえで好適な制動制御装置に関する。
特許文献1には、左右後輪の制動力を独立して制御可能な車両用制動力制御装置が開示されている。この制御装置によれば、後輪のスリップ度合い(例えば、スリップ率)が目標スリップ度合いとなるように左右後輪の制動力が個別に制御される。この目標スリップ度合いは、前輪のスリップ度合いよりも所定量だけ低くなるように設定される。また、目標スリップ度合いは、接地荷重増大側の後輪の目標スリップ度合いが接地荷重減少側の後輪の目標スリップ度合いよりも高くなるように補正される。
特開2012−096610号公報
車両の重心は、一般的に、車両中心から左右方向にずれていることが多く、また、乗車人数や積荷の量の変化によっても変化する。車両の重心がこのようにずれていると、左右の車輪の接地荷重に差が生じる。左右の車輪の接地荷重が異なると、左右の車輪に同じ制動力が与えられたときに、操舵輪が直進位置にあっても車両は接地荷重減少側に偏向しようとする。これは、制動時の車輪のスリップ度合いは接地荷重に比例するため、車両中心からの車両の重心位置のずれに起因して左右の車輪の接地荷重が異なると、左右の車輪に同じ制動力が与えられたときに、接地荷重減少側の車輪の車輪速の方が反対側の車輪の車輪速よりも低くなるためである。
そこで、左右後輪のそれぞれのスリップ度合い(例えば、スリップ率)が共通の目標スリップ度合いと等しくなるように左右後輪の制動力を独立して制御するという態様で左右輪独立制御を行うことが考えられる。このような左右輪独立制御によれば、上述のように左右の車輪の接地荷重が異なっている状況で制動が行われたときに、接地荷重増大側の制動力が接地荷重減少側の制動力よりも大きくなるように左右後輪の制動力を制御できる。その結果、接地荷重減少側に偏向しようとする車両のヨーモーメントを打ち消すためのヨーモーメント(いわゆる、アンチスピンモーメント)を左右後輪に付与できるようになる。これにより、車両の制動安定性を高めることができる。
上述の左右輪独立制御の目標スリップ度合いとして、左右前輪のスリップ度合いの平均値を用いることが考えられる。ここで、前後の車輪の制動力配分が理想制動力配分曲線の近傍である場合には、後輪の制動力が適切に高められているといえる。このため、この場合には、制動時に後輪のスリップ度合いが上昇し易い状況にあるといえる。後輪のスリップ度合いが上昇し易い状況にあると、上述のように左右の車輪の接地荷重が異なっている状況で制動が行われたときに、目標スリップ度合い(すなわち、左右前輪のスリップ度合いの平均値)が左右後輪のそれぞれのスリップ度合いの値の間に収まる状態が形成され易くなる。左右輪独立制御によれば、この状態が形成されると、接地荷重減少側(すなわち、高スリップ度合い側)の後輪の制動力を下げつつ、接地荷重増大側(すなわち、低スリップ度合い側)の後輪の制動力が高められる。したがって、前後の車輪の制動力配分が理想制動力配分曲線の近傍である場合には、アンチスピンモーメントが左右後輪に適切に付与され易くなる。
一方、車両の高速域での制動安定性を高く確保するために、後輪の制動力配分を理想制動力配分に対して余裕を持たせて減らした特性(便宜上、ここでは、「後輪低制動力特性」と称する)を採用することが考えられる。この後輪低制動力特性の下では、前後の車輪の制動力配分が理想制動力配分曲線の近傍にある場合と比べて、制動時に後輪のスリップ度合いが上昇しにくくなる。その結果、後輪低制動力特性の下で左右前輪のスリップ度合いの平均値を目標スリップ度合いとして左右輪独立制御が実行されたときには、左右後輪の双方のスリップ度合いが目標スリップ度合いよりも低い状態が形成され易くなる。左右輪独立制御によれば、このような状態では、左右後輪のスリップ度合いを目標スリップ度合いに近づけるべく、接地荷重増大側の後輪の制動力だけでなく、接地荷重減少側(高スリップ度合い側)の後輪の制動力が高められることになる。このようにして左右後輪の双方の制動力が高められていくと、高速域での制動安定性を重視して採用された後輪低制動力特性を維持することが難しくなることがある。
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、左右後輪のそれぞれのスリップ度合いが左右前輪のスリップ度合いの平均値である共通の目標スリップ度合いに近づくように左右後輪の制動力を独立して制御する左右輪独立制御を実施する場合に、車両の高速域での制動安定性の確保のために後輪低制動力特性が採用されていても左右後輪の双方の制動力が高められることを抑制できるようにした車両の制動制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る車両の制動制御装置は、左右後輪の制動力を独立して制御可能なブレーキ装置を備える車両の制動制御装置である。前記制動制御装置が行う制動力制御は、前記左右後輪のそれぞれのスリップ度合いが共通の目標スリップ度合いに近づくように前記左右後輪の制動力を独立して制御する左右輪独立制御を含む。前記制動制御装置は、前記車両の低速域では、前記車両の減速度が第1所定値以上であるときに前記左右輪独立制御を実行し、前記低速域よりも高速側の高速域では、前記減速度が前記第1所定値よりも小さい第2所定値以上であるときに前記左右輪独立制御を実行する。前記左右輪独立制御は、前記低速域では、左右前輪のスリップ度合いの平均値を前記目標スリップ度合いとして用いて実行され、前記高速域では、前記平均値よりも低くなるように補正された補正値を前記目標スリップ度合いとして用いて実行される。
前記補正値は、前記左右輪独立制御の実行中の前記減速度が高い場合にはそれが低い場合と比べて、前記平均値に対する減少度合いが高くなるように補正された値であってもよい。
前記補正値は、同一減速度のための前記補正値を比較したときに、前記左右輪独立制御の開始時の前記減速度が低い場合にはそれが高い場合と比べて、前記平均値に対する減少度合いが高くなるように補正されてもよい。
前記補正値は、前記左右輪独立制御の実行中の前記車両のヨーレート指標値が高い場合にはそれが低い場合と比べて、前記平均値に対する減少度合いが高くなるように補正された値であってもよい。
本発明によれば、車両の高速域では、低速域において左右輪独立制御が開始される時の車両の減速度(第1所定値)よりも低い減速度(第2所定値)に到達した時に、左右輪独立制御が開始される。これにより、後輪低制動力特性(後輪の制動力配分を理想制動力配分に対して余裕を持たせて減らした特性)を実現可能な環境を創出することができる。そのうえで、本発明によれば、左右輪独立制御は、低速域では左右前輪のスリップ度合いの平均値を目標スリップ度合いとして用いて実行されるのに対し、高速域では上記平均値よりも低くなるように補正された補正値を目標スリップ度合いとして用いて実行される。これにより、高速域では、前輪のスリップ度合いよりも後輪のスリップ度合いが低くなるように左右輪独立制御が実行される。その結果、高速域での制動安定性の確保のために後輪低制動力特性が採用されていても左右後輪の双方の制動力が高められることを抑制できるようになる。
本発明の実施の形態1の制動制御装置が適用される車両の構成の一例を表した概略図である。 本発明の実施の形態1に係る左右輪独立制御を説明するための概念図である。 本発明の実施の形態1に係る左右輪独立制御による左右後輪の制動力の調整の一例を説明するための図である。 前輪の制動力と後輪の制動力との関係を表した図である。 本発明の実施の形態1において、高速用設定を伴う左右輪独立制御に用いられる補正係数Kの設定を説明するための図である。 本発明の実施の形態1に係る制動制御を実現するためにECUにより実行されるルーチンを示すフローチャートである。 図6に示すルーチンが実行された場合の左右輪独立制御の動作の一例を表した図である。 本発明の実施の形態2において、高速用設定を伴う左右輪独立制御に用いられる補正係数K’の設定を説明するための図である。 本発明の実施の形態2に係る制動制御を実現するためにECUにより実行されるルーチンを示すフローチャートである。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の制動制御装置が適用される車両1の構成の一例を表した概略図である。図1に示すように、本実施形態の車両1は、4つの車輪10を備えている。以下の説明では、左前輪、右前輪、左後輪および右後輪を、それぞれ10FL、10FR、10RLおよび10RRと称する。また、前輪をまとめて10Fと称し、後輪をまとめて10Rと称する場合もある。
車両1は、ステアリングホイール12aを有するステアリング装置12を備えている。ステアリング装置12は、運転者によるステアリングホイール12aの操作に応じて、車両1の操舵輪である前輪10Fの向きを変更するように構成されている。
車両1は、ブレーキ装置20を備えている。ブレーキ装置20は、ブレーキペダル22、マスタシリンダ24、ブレーキアクチュエータ26、ブレーキ機構28および油圧配管30を含んでいる。マスタシリンダ24は、ブレーキペダル22の踏力に応じた油圧を発生し、発生した油圧をブレーキアクチュエータ26に供給する。
ブレーキアクチュエータ26は、マスタシリンダ24とブレーキ機構28との間に介在する油圧回路(図示省略)を有している。油圧回路には、マスタシリンダ圧に頼らずにブレーキ油圧を昇圧するためのポンプ、ブレーキフルードを貯留するためのリザーバー、および複数の電磁バルブが備えられている。
ブレーキアクチュエータ26には、油圧配管30を介してブレーキ機構28が接続されている。ブレーキ機構28は、各車輪10に配置されている。ブレーキアクチュエータ26は、ブレーキ油圧を各車輪10のブレーキ機構28に分配する。より具体的には、ブレーキアクチュエータ26は、マスタシリンダ24または上記ポンプを圧力源として各車輪10のブレーキ機構28にブレーキ油圧を供給することができる。ブレーキ機構28は、供給されるブレーキ油圧に応じて作動するホイールシリンダ28aを有している。
さらに、ブレーキアクチュエータ26は、上記油圧回路に備えられた各種電磁バルブを制御することで、各車輪10に付与されるブレーキ油圧を独立して調整することができる。より具体的には、ブレーキアクチュエータ26は、ブレーキ油圧の制御モードとして、圧力を高める増圧モードと、圧力を保持する保持モードと、圧力を下げる減圧モードとを有している。ブレーキアクチュエータ26は、各種電磁バルブのON/OFFを制御することで、車輪10毎にブレーキ油圧の制御モードを異ならせることができる。各車輪10に付与される制動力は、それぞれのホイールシリンダ28aに供給されるブレーキ油圧に応じて定まる。このため、このような制御モードの変更により、ブレーキアクチュエータ26は、各車輪10の制動力を独立して制御することができる。
本実施形態の制動制御装置は、電子制御ユニット(ECU)40を車両1上に備えている。ECU40には、各種センサとブレーキアクチュエータ26とが電気的に接続されている。ここでいう各種センサは、車輪速センサ42、車速センサ44、加速度センサ46、ブレーキ踏力センサ48およびヨーレートセンサ50を含んでいる。車輪速センサ42は、各車輪10に配置されており、車輪10の回転速度に応じた車輪速信号を出力する。車速センサ44は、車体速度(車速)に応じた車体速度信号を出力する。加速度センサ46は、車両1の前後方向の加速度に応じた加速度信号を出力する。ブレーキ踏力センサ48は、ブレーキペダル22の踏力に応じたブレーキ踏力信号を出力する。ヨーレートセンサ50は、車両1のヨーレートに応じたヨーレート信号を出力する。
ECU40は、プロセッサ、メモリ、および入出力インターフェースを備えている。入出力インターフェースは、車両1に取り付けられた各種センサからセンサ信号を取り込むとともに、ブレーキアクチュエータ26に対して操作信号を出力する。メモリには、ブレーキアクチュエータ26を制御するための各種の制御プログラムおよびマップが記憶されている。プロセッサは、制御プログラムをメモリから読み出して実行し、これにより、制動制御装置の機能が実現される。
[実施の形態1の制動制御]
(前提とする左右輪独立制御の概要)
図2は、本発明の実施の形態1に係る左右輪独立制御を説明するための概念図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る左右輪独立制御による左右後輪10RL、10RRの制動力の調整の一例を説明するための図であり、制動時の左右後輪10RL、10RRの前後力(すなわち、制動力)とスリップ率Sとの関係を表している。
本実施形態では、車両1の制動安定性を確保するために、左右後輪10RL、10RRを対象として、「左右輪独立制御」が利用される。この左右輪独立制御は、左右後輪10RL、10RRのそれぞれのスリップ率Sが共通の目標スリップ率Stと等しくなるように、左右後輪10RL、10RRの制動力を独立して制御するものである。本実施形態で用いられる目標スリップ率Stは、ベース値Stbを有している。ベース値Stbとしては、左右前輪10FL、10FRのスリップ率Sの平均値が用いられる。そのうえで、目標スリップ率Stは、車両1の高速域では、後述のようにベース値Stbから補正される。
車輪10のスリップ率Sは、例えば、車輪速センサ42により検出される車輪速Vwと車速センサ44により検出される車体速度Vとに基づいて、次の(1)式に従って算出することができる。なお、車体速度Vは、車速センサ44の利用に代え、例えば、車輪速センサ42により検出される車輪速Vwと加速度センサ46により検出される車両1の減速度とに基づく公知の手法を利用して推定されてもよい。
Figure 2018062295
一般的に、車両の重心は、図2に示す例のように車両中心から左右方向にずれていることが多く、また、乗車人数や積荷の量の変化によっても変化する。図2は、車両1の重心が左右方向にずれている状態で制動が行われた状況を表している。このように車両1の重心がずれていると、左右の車輪10の接地荷重が異なるようになる。左右の車輪10の接地荷重が異なると、左右の車輪10に同じ制動力が与えられたときに、接地荷重減少側の車輪10(図2に示す例では、右前輪10FRおよび右後輪10RR)の車輪速の方が反対側の車輪(左前輪10FLおよび左後輪10RL)の車輪速よりも低くなる。その結果、図3中に破線で示すように、同じ制動力F1が左右後輪10RL、10RRに与えられたとした場合に、接地荷重増大側の左後輪10RLのスリップ率SRLよりも接地荷重減少側の右後輪10RRのスリップ率SRRの方が高くなる。なお、図3は、左右後輪10RL、10RRの特性を表しているが、左前輪10FLと右前輪10FRとの関係についても図3と同様である。
上述のように、制動時には左右の車輪10の制動力が同じであっても左側の車輪10FL、10RLと右側の車輪10FR、10RRとの間でスリップ率Sに差が生じ、重力オフセットによるモーメント(図2中に示す時計回りのモーメント)が車両1に発生する。その結果、図2に示す例もそうであるように操舵輪(前輪10F)が直進位置にあっても、車両1は、接地荷重減少側(図2に示す例では右側)に偏向しようとする。
上述のように左右の車輪10の接地荷重が異なっている状況で制動が行われた場合には、本実施形態の左右輪独立制御を適用することで次のような効果が得られる。ここでは、左右輪独立制御の目標スリップ率Stの一例として、図3に示すように左右後輪10RL、10RRのそれぞれのスリップ率SRL、SRRの間にある値St1が用いられる例について説明する。
図2および図3に示す一例では、左右輪独立制御が実行されることにより、左右後輪10RL、10RRのそれぞれのスリップ率Sが共通の目標スリップ率St1と等しくなるように、左右後輪10RL、10RRの制動力が独立して制御される。これにより、接地荷重増大側(すなわち、重力オフセットに基づくモーメントによる旋回の外側)の車輪である左後輪10RLの制動力は、スリップ率Sを高めるためにF1からFRLに増やされる。一方、接地荷重減少側(すなわち、上記旋回の内側)の車輪である右後輪10RRの制動力は、スリップ率Sを下げるためにF1からFRRに減らされる。
左右輪独立制御によれば、上述のように接地荷重増大側の左後輪10RLの制動力を接地荷重減少側の右後輪10RRの制動力よりも増大させるという態様で、左右後輪10RL、10RRの制動力に差が与えられる。その結果、車両1には、この制動力の左右差によるモーメント(図2中に示す反時計回りのモーメント)が発生する。このモーメントは、重力オフセットによるモーメントを打ち消すためのヨーモーメント(いわゆるアンチスピンモーメント)として作用する。これにより、車両1の制動安定性を高めることができる。以上説明した左右輪独立制御は、車両1の状況に応じて各車輪10への制動力配分を適切に制御するEBD(Electronic Brake force Distribution:電子制御制動力配分制御)の1つに相当する。
なお、図3に示す特性から分かるように、目標スリップ率St1以外の任意のスリップ率Sの値で比較した場合においても、接地荷重増大側の車輪(10RL)の制動力は、接地荷重減少側の車輪(10RR)の制動力よりも大きくなる。したがって、左右輪独立制御の実行中に後輪10Rの制動力に左右差が与えられると、目標スリップ率StがSt1のようにスリップ率SRL、SRRの間の値でなくてもアンチスピンモーメントが車両1に生じようとする。ただし、図3に示す例のように目標スリップ率Stが左右後輪10RL、10RRのスリップ率SRL、SRRの間にある場合には、接地荷重増大側(すなわち、車両1の旋回の外側)の後輪10Rの制動力を増やしつつ接地荷重増大側(上記旋回の内側)の後輪10Rの制動力が減らされるので、アンチスピンモーメントをより有効に発生させられる。
(高速域での左右輪独立制御の課題)
図4は、前輪10Fの制動力と後輪10Rの制動力との関係を表した図である。図4中の放物曲線は、前後の車輪10の制動力の理想的な配分を表す理想制動力配分曲線である。実際の制動力配分をこの理想制動力配分曲線に近づけることで、車両1の制動性能を高めることができる。図4中の理想制動力配分曲線以外の線は、実際の制動力配分線を表している。
図4の原点P0と点P1との間を結ぶ直線L0は、左右輪独立制御が実施されていないときに用いられる実制動力配分線である。点P1は、実制動力配分線L0上で車両1の減速度GがGth1になる点に相当する。本実施形態では、車速(車体速度)Vが低速域にある場合には、減速度GがGth1に到達したときに左右輪独立制御が開始される設定(以下、「低速用設定」と称する)が用いられる。以下、低速用設定を伴う左右輪独立制御が開始される時の減速度Gを、単に「制御開始Gth1」と称する。左右輪独立制御によれば、左右後輪10RL、10RRのスリップ率Sが目標スリップ率Stに等しくなると、左右後輪10RL、10RRに付与される制動力が保持される。直線L1は、この低速用設定の下で減速度GがG1を超えて高まっていく状況において、左右後輪10RL、10RRの制動力が保持されている場合の実制動力配分線に相当する。
点P1は理想制動力配分曲線の近くに位置している。このため、低速用設定によれば、後輪10Rの制動力を適切に高められた状態で左右輪独立制御を実施できているといえる。後輪10Rの制動力が高められていると、制動時に後輪10Rのスリップ率Sが上昇し易い状況にあるといえる。低速用設定の使用により後輪10のスリップ率Sが上昇し易い状況にあると、上述のように左右の車輪10Rの接地荷重が異なっている状況で制動が行われたときに、目標スリップ率St(すなわち、左右前輪10FL、10FRのスリップ率Sの平均値)が左右後輪10RL、10RRのそれぞれのスリップ率S(SRL、SRR)の値の間に収まる状態C1が形成され易くなる。
左右輪独立制御によれば、上述の状態C1が形成されると、内輪(すなわち、接地荷重減少側の後輪)10Rの制動力を下げつつ外輪(すなわち、接地荷重増大側の後輪)10Rの制動力が高められるようになる。したがって、前後の車輪10の制動力配分が理想制動力配分曲線の近傍である場合には、アンチスピンモーメントが左右後輪10RL、10RRに適切に付与され易くなる。なお、図4には、そのような左右後輪10RL、10RRの制動力の調整例、すなわち、実制動力配分線L1に対して外輪10Rの制動力を高めつつ内輪10Rの制動力を下げるように制動力に左右差が与えられる一例が表されている。
本実施形態では、低速用設定が用いられる低速域よりも高速側の高速域に車速Vがある場合には、減速度GがGth1よりも低い減速度Gth2(以下、単に、「制御開始Gth2」と称する)に到達したときに左右輪独立制御が開始される設定(以下、「高速用設定」と称する)が用いられる。図4中の点P2は、実制動力配分線L0上で車両1の減速度GがG2になる点に相当する。このG2は、高速用設定の下で用いられる制御開始Gth2の一例に相当する。より具体的には、本実施形態では、高速用設定の下で用いられる制御開始Gth2として、車速Vに応じて異なる値(より詳細には、車速Vが高いほど、より低い値)が用いられる。G2はそのような複数の制御開始Gth2の1つに相当する。
直線L2は、高速用設定の下で減速度Gが制御開始Gth2を超えて高まっていく状況において、左右後輪10RL、10RRに付与される制動力が保持されている場合の実制動力配分線に相当する。高速用設定の下で用いられる制御開始Gth2は、上述のように、低速用設定の下で用いられる制御開始Gth1よりも低い。図4に示すように、実制動力配分線L2によれば、低速用の実制動力配分線L1と比べて、後輪10Rの制動力配分を理想制動力配分に対して余裕を持たせて減らした特性(以下、「後輪低制動力特性」と称する)を実現することができる。この後輪低制動力特性によれば、後輪10Rのコーナリングパワーの低下を抑制できるので車両1の制動安定性を高められる。
上述の後輪低制動力特性の下では、前後の車輪10の制動力配分が理想制動力配分曲線の近傍にある場合と比べて、制動時に後輪10Rのスリップ率Sが上昇しにくくなる。その結果、後輪低制動力特性の下で左右前輪10FL、10FRのスリップ率Sの平均値を目標スリップ率Stとして左右輪独立制御が実行されたときに、左右後輪10RL、10RRの双方のスリップ率Sが目標スリップ率Stよりも低い状態C2が形成され易くなる。
左右輪独立制御によれば、上記の状態C2では、左右後輪10RL、10RRのスリップ率Sを共通の目標スリップ率Stに近づけるべく、図4中に示す一例のように、外輪(接地荷重増大側の後輪)10Rの制動力だけでなく、内輪(接地荷重減少側の後輪)10Rの制動力が高められることになる。このようにして左右後輪10RL、10RRの双方の制動力が高められていくと、高速域での制動安定性を重視して採用された後輪低制動力特性を維持することが難しくなる。また、左右後輪10RL、10RRの双方の制動力が高められると、左右後輪10RL、10RRの間で制動力に左右差を持たせていても、有効なアンチスピンモーメントを車両1に付与しにくくなる。
(実施の形態1の特徴的な制御)
本実施形態では、高速域での上述の課題に鑑み、左右輪独立制御が実行される際の車速Vに応じて、目標スリップ率Stが次のように変更される。すなわち、低速域では、上述のベース値Stbがそのまま目標スリップ率Stとして使用される。一方、高速域では、以下に図5を参照して説明する手法に従ってベース値Stbよりも低くなるように補正された補正値が目標スリップ率Stとして使用される。これにより、高速域では、前輪10Fのスリップ率Sよりも後輪10Rのスリップ率Sが低くなるように左右輪独立制御が実行される。
図5は、本発明の実施の形態1において、高速用設定を伴う左右輪独立制御に用いられる補正係数Kの設定を説明するための図である。本実施形態では、高速用設定を使用する際の目標スリップ率Stは、次の(2)式に従って、ベース値Stbに補正係数Kを乗じて得られる値として算出される。
St=Stb×K ・・・(2)
補正係数K(0<K<1)は、図5に示すように、高速用設定を伴う左右輪独立制御の実行中の減速度Gと、左右輪独立制御の開始時の減速度Gである制御開始Gth2とに応じて変更される。より具体的には、同一の制御開始Gth2の下では、補正係数Kは、左右輪独立制御の実行中の減速度Gが高いほど小さくなるように設定されている。また、制御開始Gth2が低い場合には、それが高い場合と比べて、同一減速度Gでの補正係数Kが小さくなるように設定されている。なお、図4中に示す補正係数K、減速度Gおよび制御開始Gth2の数値はそれぞれ一例である。そして、これらの数値は、適用対象の車両の仕様(例えば、前後の車輪の制動力配分)に応じて異なるものとなる。
上述した補正係数Kの設定によれば、左右輪独立制御の実行中の減速度Gが高い場合にはそれが低い場合と比べて、ベース値Stbに対する減少度合いが高くなるように目標スリップ率Stを補正することができる。また、本設定によれば、同一減速度Gでの目標スリップ率Stを比較したとき、制御開始Gth2が低い場合には、それが高い場合と比べて、ベース値に対する減少度合いが高くなるように目標スリップ率Stを補正することができる。
(ECUによる処理)
図6は、本発明の実施の形態1に係る制動制御を実現するためにECU40により実行されるルーチンを示すフローチャートである。なお、本ルーチンは、車両1の始動後に所定の周期で繰り返し実行されるものとする。
図6に示すルーチンでは、ECU40は、まず、加速度センサ46、車輪速センサ42および車速センサ44を用いて、減速度G、車輪速Vwおよび車速Vをそれぞれ取得する(ステップ100)。
次に、ECU40は、ステップ100にて取得された車輪速Vwと車速(車体速度)Vと上記(1)式とを利用して、スリップ率Sを車輪10毎に算出する(ステップ102)。次いで、ECU40は、ステップ100にて取得された左右前輪10FL、10FRのスリップ率Sの平均値を目標スリップ率Stのベース値Stbとして算出する(ステップ104)。
次に、ECU40は、左右輪独立制御の所定の開始条件Aが成立したか否かを判定する(ステップ106)。開始条件Aは、以下に説明するように、ステップ100にて取得された減速度Gと車速Vとに基づいて事前に定められている。開始条件Aは、減速度Gが所定の閾値であるときに成立するように定められている。そして、この閾値は、車速Vに応じて異なるように設定されている。より具体的には、車速Vが所定値Vth未満の低速域では、上述の制御開始Gth1が上記閾値として用いられる(低速用設定)。一方、車速Vが所定値Vth以上となる高速域では、Gth1よりも小さな制御開始Gth2が上記閾値として用いられる。また、高速域では、車速Vが高いほど、より低い制御開始Gth2が上記閾値として用いられる(高速用設定)。
ECU40は、ステップ106において開始条件Aが不成立であると判定した場合には、今回の処理サイクルを速やかに終了させる。この場合には、各車輪10のホイールシリンダ28aには、ブレーキペダル22の踏力に応じたブレーキ油圧が供給される。より具体的には、各車輪10のホイールシリンダ28aには、所定の前後配分に従う制動力が得られるように、また、前輪10Fおよび後輪10Rのそれぞれの左右方向に関しては同じ制動力が得られるようにブレーキアクチュエータ26により調整されたブレーキ油圧が供給される。
一方、ECU40は、ステップ106において開始条件Aが成立したと判定した場合には、現在の車速Vと所定値Vthとの比較結果に基づいて現在の車速域が高速域であるか否かを判定する(ステップ108)。その結果、ECU40は、現在の車速域が低速域であると判定した場合には、ステップ110に進む。ステップ110では、ステップ104にて算出されたベース値Stbをそのまま目標スリップ率Stとして用いつつ、左右輪独立制御が実行される。
また、ECU40は、ステップ108において現在の車速域が高速域であると判定した場合には、ステップ112に進む。ECU40は、減速度Gおよび制御開始Gth2と補正係数Kとの関係(図5に示すような関係)を定めたマップ(図示省略)を記憶している。ステップ112では、そのようなマップを参照して、ステップ100にて取得された減速度Gと、ステップ106にて用いられた制御開始Gth2とに応じた補正係数Kが取得される。そのうえで、取得された補正係数Kをステップ104にて算出されたベース値Stbに乗じて得られる補正値が目標スリップ率Stとして算出される。本ステップ112では、このようにして算出された目標スリップ率Stを用いつつ左右輪独立制御が実行される。
図7は、図6に示すルーチンが実行された場合の左右輪独立制御の動作の一例を表した図である。以上説明した図6に示すルーチンによれば、低速域で行われる左右輪独立制御では、相対的に高い制御開始Gth1を用いる「低速用設定」が使用される。また、低速域では、ベース値Stb(すなわち、左右前輪10FL、FRのスリップ率Sの平均値)がそのまま目標スリップ率Stとして用いられる。これにより、図7に示すように(図4に示す一例と同様に)、理想制動力配分曲線に近づくように後輪10Rの制動力配分が適切に高められた状態で、左右輪独立制御を実施できるようになる。その結果、外輪(すなわち、接地荷重増大側の後輪)10Rの制動力を高めつつ内輪(すなわち、接地荷重減少側の後輪)10Rの制動力を下げるという態様で左右輪独立制御が実行され易くなる。このため、アンチスピンモーメントを左右後輪10RL、10RRに適切に付与され易くなるので、車両1の制動安定性を高く確保することができる。さらに付け加えると、以上説明した低速域用の左右輪独立制御によれば、高速域と比べて相対的に車両1の制動安定性が確保され易い低速域において、理想制動力配分曲線近傍まで後輪10Rの制動力を積極的に利用することで車両1の制動性能を高めつつ、制動安定性を高く確保できるようになる。
また、上記ルーチンによれば、高速域で行われる左右輪独立制御では、制御開始Gth1よりも低い制御開始Gth2を用いる「高速用設定」が使用される。また、高速域では、ベース値Stbよりも低くなるように補正された補正値が目標スリップ率Stとして用いられる。このような左右輪独立制御によれば、制御開始Gth2を制御開始Gth1よりも低くしたことにより、上述の「後輪低制動力特性」(低速用の実制動力配分線L1と比べて、後輪10Rの制動力配分を理想制動力配分に対して余裕を持たせて減らした特性)を実現可能な環境を創出することができる。そのうえで、目標スリップ率Stを下げたことにより、左右輪独立制御の実行中に左右後輪10RL、10RRの双方の制動力が高められる調整が行われにくくすることができる。換言すると、外輪10Rの制動力を高めつつ内輪10Rの制動力を下げるという態様にて左右輪独立制御が実行され易くすることができる。これにより、図7に示すように左右輪独立制御の実行中に後輪低制動力特性を良好に維持しつつ、アンチスピンモーメントが左右後輪10RL、10RRに適切に付与され易くすることができる。すなわち、高速域において、制動安定性を重視した後輪低制動力特性を維持しつつ、左右輪独立制御による制動安定性向上効果を得られるようにすることができる。
また、補正係数Kに基づく目標スリップ率Stの補正によれば、高速用設定を伴う左右輪独立制御の実行中の減速度Gが高い場合にはそれが低い場合と比べて、ベース値Stbに対する減少度合いが高くなるように目標スリップ率Stが補正される。減速度Gが高くなると、後輪10Rの荷重が低下するので車両1の挙動が乱れ易くなる。上述の補正の設定によれば、減速度Gが高い場合にはそれが低い場合と比べて、左右輪独立制御の実行によって後輪10Rの制動力が高められるのを抑制できる。このため、左右輪独立制御の実行中の減速度Gの変化にかかわらず、車両1の制動安定性を適切に確保できるように目標スリップ率Stを補正できる。
また、補正係数Kに基づく目標スリップ率Stの補正によれば、同一減速度Gでの目標スリップ率Stを比較したとき、制御開始Gth2が低い場合には、それが高い場合と比べて、ベース値Stbに対する減少度合いが高くなるように目標スリップ率Stが補正される。制御開始Gth2をより低くさせる設定は、後輪10Rの制動力を抑制させるための上述の後輪低制動力特性をより効果的に得るべく利用される。したがって、制御開始Gth2に基づく補正の設定によれば、制御開始Gth2がより低い場合、すなわち、後輪10Rの制動力をより大きく抑制したい場合に、左右輪独立制御の実行によって後輪10Rの制動力を高められにくくできる設定が得られる。
実施の形態2.
次に、図8および図9を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。以下の説明では、実施の形態2のシステム構成の一例として、図1に示す構成が用いられているものとする。
[実施の形態2の制動制御]
上述した実施の形態1では、高速用設定を伴う左右輪独立制御の実行中の減速度Gと制御開始Gth2とに基づいて補正係数Kが設定されている。これに対し、本実施形態の制動制御は、目標スリップ率Stを補正するための補正係数K’が車両1のヨーレートYRに基づいて設定されているという点において、実施の形態1の制動制御と相違している。
図8は、本発明の実施の形態2において、高速用設定を伴う左右輪独立制御に用いられる補正係数K’の設定を説明するための図である。本実施形態の補正係数K’は、実施の形態1の補正係数Kと同様に、ベース値Stbに乗じられるものである。本実施形態では、ヨーレート指標値の取得のために、一例として、ヨーレートセンサ50が出力するヨーレート信号が利用される。
図8に示すように、補正係数K’は、ヨーレートYRの微小領域では1.0に設定されている。このため、この微小領域は、補正係数K’による補正が作用しない不感帯として機能する。図8に示す設定では、補正係数K’は、微小領域よりも高ヨーレート側の領域において、左右輪独立制御の実行中のヨーレートYRが高いほど小さくなるように設定されている。
上述した補正係数K’の設定によれば、左右輪独立制御の実行中のヨーレートYRが高い場合にはそれが低い場合と比べて、ベース値Stbに対する減少度合いが高くなるように目標スリップ率Stを補正することができる。
(ECUによる処理)
図9は、本発明の実施の形態2に係る制動制御を実現するためにECU40により実行されるルーチンを示すフローチャートである。図9に示すルーチン中のステップ100〜110の処理については、実施の形態1において既述した通りである。
本ルーチンでは、ECU40は、ステップ100の処理に続いて、ヨーレートセンサ50を用いてヨーレートYRを取得する(ステップ200)。なお、目標スリップ率Stの補正に用いられるヨーレート指標値は、このようにヨーレートセンサ50を用いて取得されるヨーレートYRに限られない。すなわち、ヨーレート指標値は、例えば、左右前輪10FL、10FRの車輪速の差が大きいほど大きい値として取得されてもよい。
また、本ルーチンでは、ECU40は、ステップ108において現在の車速域が高速域であると判定した場合には、ステップ202に進む。ECU40は、ヨーレートYRと補正係数K’との関係(図8に示すような関係)を定めたマップ(図示省略)を記憶している。ステップ202では、そのようなマップを参照して、ステップ200にて取得されたヨーレートYRに応じた補正係数Kが取得される。そのうえで、取得された補正係数K’をステップ104にて算出されたベース値Stbに乗じて得られる補正値が目標スリップ率Stとして算出される。本ステップ202では、このようにして算出された目標スリップ率Stを用いつつ左右輪独立制御が実行される。
以上説明した図9に示すルーチンによっても、実施の形態1と同様に、高速域では、ベース値Stbよりも低くなるように補正された補正値が目標スリップ率Stとして使用される。これにより、高速域において、制動安定性を重視した後輪低制動力特性を維持しつつ、左右輪独立制御による制動安定性向上効果が得られる。
そのうえで、上記ルーチンによれば、左右輪独立制御の実行中のヨーレートYRが高い場合にはそれが低い場合と比べて、ベース値Stbに対する減少度合いが高くなるように目標スリップ率Stが補正される。左右の車輪10の接地荷重が異なっている状況で制動が行われた際に重力オフセットによる大きなモーメントが車両1に作用すると、ヨーレートYRが大きくなる。ヨーレートYRによれば、車両1の挙動の乱れを適切に把握でき、ヨーレートYRが大きい場合には、上記モーメントに起因する挙動の乱れが大きいと判断できる。このため、補正係数K’に基づく目標スリップ率Stの補正によれば、左右輪独立制御の実行中のヨーレートYRの変化にかかわらず、車両1の制動安定性を適切に確保できるように目標スリップ率Stを補正できる。
ところで、上述した実施の形態1においては左右輪独立制御の実行中の減速度Gおよび制御開始Gth2に応じた減少度合いで、また、実施の形態2においては左右輪独立制御の実行中のヨーレートYRに応じた減少度合いで、ベース値Stbよりも低くなるように高速域の目標スリップ率Stが補正される。しかしながら、本発明における高速域の目標スリップ度合いは、左右前輪のスリップ度合いの平均値(ベース値Stbがこれに相当)よりも低くなるように補正されたものであればよい。すなわち、高速域の目標スリップ度合いの補正は、必ずしも上述の減速度G等に応じた減少度合いで行われなくてもよく、例えば、予め定められた固定値に基づいて行われてもよい。また、本発明における低速域の目標スリップ度合いは、厳密に左右前輪のスリップ度合いの平均値(ベース値Stbがこれに相当)に限られず、当該平均値の近傍の値であってもよい。
また、上述した実施の形態1および2の左右輪独立制御では、スリップ率Sがスリップ度合いの一例として用いられている。しかしながら、本発明における左右輪独立制御は、左右後輪のそれぞれのスリップ度合いが目標スリップ度合いと等しくなるように左右後輪の制動力を独立して制御するものであればよく、スリップ率Sに代え、例えば、スリップ量(すなわち、車体速度Vから車輪速Vwを引いて得られる差)がスリップ度合いとして用いられてもよい。
また、上述した実施の形態1および2においては、車両1の4つの車輪10の制動力を独立して制御可能なブレーキ装置20を例に挙げた。しかしながら、本発明に係る制動制御は、少なくとも左右後輪の制動力を独立して制御可能なブレーキ装置を備える車両に対して適用することができる。
なお、上述した実施の形態1および2においては、低速用設定の下で用いられる制御開始Gth1が本発明における「第1所定値」に相当し、高速用設定の下で用いられる制御開始Gth2が本発明における「第2所定値」に相当する。
1 車両
10 車輪
10F 前輪
10FL 左前輪
10FR 右前輪
10R 後輪
10RL 左後輪
10RR 右後輪
12 ステアリング装置
12a ステアリングホイール
20 ブレーキ装置
22 ブレーキペダル
24 マスタシリンダ
26 ブレーキアクチュエータ
28 ブレーキ機構
28a ホイールシリンダ
30 油圧配管
40 電子制御ユニット(ECU)
42 車輪速センサ
44 車速センサ
46 加速度センサ
48 ブレーキ踏力センサ
50 ヨーレートセンサ

Claims (4)

  1. 左右後輪の制動力を独立して制御可能なブレーキ装置を備える車両の制動制御装置であって、
    前記制動制御装置が行う制動力制御は、前記左右後輪のそれぞれのスリップ度合いが共通の目標スリップ度合いに近づくように前記左右後輪の制動力を独立して制御する左右輪独立制御を含み、
    前記制動制御装置は、前記車両の低速域では、前記車両の減速度が第1所定値以上であるときに前記左右輪独立制御を実行し、前記低速域よりも高速側の高速域では、前記減速度が前記第1所定値よりも小さい第2所定値以上であるときに前記左右輪独立制御を実行し、
    前記左右輪独立制御は、前記低速域では、左右前輪のスリップ度合いの平均値を前記目標スリップ度合いとして用いて実行され、前記高速域では、前記平均値よりも低くなるように補正された補正値を前記目標スリップ度合いとして用いて実行されることを特徴とする車両の制動制御装置。
  2. 前記補正値は、前記左右輪独立制御の実行中の前記減速度が高い場合にはそれが低い場合と比べて、前記平均値に対する減少度合いが高くなるように補正された値であることを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。
  3. 前記補正値は、同一減速度のための前記補正値を比較したときに、前記左右輪独立制御の開始時の前記減速度が低い場合にはそれが高い場合と比べて、前記平均値に対する減少度合いが高くなるように補正されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制動制御装置。
  4. 前記補正値は、前記左右輪独立制御の実行中の前記車両のヨーレート指標値が高い場合にはそれが低い場合と比べて、前記平均値に対する減少度合いが高くなるように補正された値であることを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。
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