JP2018053302A - 有機樹脂被覆表面処理金属板 - Google Patents

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拓也 柏倉
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Abstract

【課題】内容品充填後のパストライズ処理やレトルト処理等の殺菌処理にも対応可能な優れた耐熱水密着性を有する缶体、缶蓋を提供可能であると共に、経済性にも優れ、かつ環境への負荷が小さい有機樹脂被覆表面処理金属板を提供する。【解決手段】金属板の少なくとも片面に、表面処理皮膜層及び該表面処理皮膜層上に有機樹脂被覆層が形成されて成る有機樹脂被覆表面処理金属板であって、該表面処理皮膜層が主成分としてポリカルボン酸系重合体及び該ポリカルボン酸系重合体の架橋成分としてポリアルコールを含有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、飲料缶等の缶体・缶蓋用途に用いられる有機樹脂被覆表面処理金属板に関するものであり、より詳細には、内容品充填後に施される殺菌処理にも対応可能な優れた耐熱水密着性を有する缶体、缶蓋を提供可能であると共に、経済性にも優れ、かつ環境への負荷が小さい有機樹脂被覆表面処理金属板に関する。
アルミニウム等の金属板を有機樹脂で被覆した有機樹脂被覆金属板は、缶用材料として古くから知られており、この有機樹脂被覆金属板を絞り加工或いは絞り・しごき加工に付して、飲料等を充填するためのシームレス缶とし、或いはこれをプレス成形してイージーオープンエンド等の缶蓋とすることもよく知られている。例えば、エチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル樹脂から成る熱可塑性樹脂フィルムを有機樹脂被覆層として有する有機樹脂被覆金属板は、シームレス缶用の製缶材料として使用されている(特許文献1)。
また、このような缶体・缶蓋用途の有機樹脂被覆金属板に用いられる金属板としては、一般に、耐食性や有機樹脂被覆層との密着性を確保することを目的として、化成処理等の表面処理を施した表面処理金属板が用いられる。このような表面処理としては、例えばリン酸クロメート処理があり、リン酸クロメート処理を施した表面処理金属板から成る有機樹脂被覆表面処理金属板は、それを用いてシームレス缶等を成形した場合において、製缶適性に優れると共に、内容物充填・密封後の殺菌処理時における有機樹脂被覆層と金属基材間の密着性(耐熱水密着性)に優れることから、広く使用されてきたが、環境保護の観点からノンクロム系表面処理への要請が高まっている。
これまでに缶用材料向けのノンクロム系表面処理が数多く提案されてきた。例えば有機樹脂被覆シームレスアルミニウム缶向けとして、ジルコニウム化合物とリン化合物、及びフェノール化合物を用いた有機無機複合系の化成処理が提案されており、優れた製缶適性や耐熱水密着性を発現し得るものである(特許文献2)。しかしながら、上記で提案されている表面処理は、処理後に水洗が必要な化成型(反応型)の表面処理であることから、廃水が大量に発生するため、廃水処理にコストがかかり、かつ環境への負荷が大きいことが懸念される。
一方で化成型の表面処理と異なり、処理後に水洗が不要で、廃水処理にかかるコストを低減でき、かつ環境への負荷も小さい塗布型の表面処理(塗布型処理)によるノンクロム系表面処理も缶用材料向けに提案されている。例えばジルコニウム化合物とジルコニウム架橋されたポリアクリル酸が含有されて成る塗布型下地皮膜が形成された樹脂被覆アルミニウム板が提案されている(特許文献3)。
特開2001−246695号公報 特開2007−76012号公報 特開2007−176072号公報
しかしながら、上記特許文献3で提案されている塗布型下地皮膜は、特にキャップ成型用の樹脂被覆アルミニウム板向けに提案されており、加工量の少ないキャップへの成形には適したものであったとしても、キャップに比してより過酷な成形加工により形成されるシームレス缶用の有機樹脂被覆金属板に適用した場合には、以下のような問題点がある。即ち、それを用いてシームレス缶を形成した場合に、内容物充填・密封後のパストライズ処理(熱水シャワー処理)やレトルト処理などの殺菌処理の際に、主に缶体成形の後加工(ネッキング加工やフランジ加工)を施した部分において、有機樹脂被覆層と金属基材間の耐熱水密着性の不足により、有機樹脂被覆層が剥離する場合があり、シームレス缶用の有機樹脂被覆金属板に適用するためには、さらなる改善が必要である。
従って、本発明の目的は、内容品充填後のパストライズ処理やレトルト処理等の高温・湿潤環境下に賦された場合においても、フランジ部における有機樹脂被覆層の剥離を抑制できる優れた耐熱水密着性を有すると共に、経済性に優れ、かつ環境への負荷が小さいノンクロム系の塗布型処理により形成される表面処理皮膜層を有する有機樹脂被覆表面処理金属板を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、金属板の少なくとも片面に、主成分としてポリアクリル酸等のポリカルボン酸系重合体と該ポリカルボン酸系重合体の架橋成分としてポリアルコールを含有し、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコールが架橋構造を形成している表面処理皮膜層、及び該表面処理皮膜層上に形成された有機樹脂被覆層を有する有機樹脂被覆表面処理金属板が、内容品充填後のパストライズ処理やレトルト処理等の高温・湿潤環境下に賦された場合においても、フランジ部における有機樹脂被覆層の剥離を抑制できる優れた耐熱水密着性を有する缶体を提供可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明によれば、金属板の少なくとも片面に、表面処理皮膜層及び該表面処理皮膜層上に有機樹脂被覆層が形成されて成る有機樹脂被覆表面処理金属板であって、該表面処理皮膜層が主成分としてポリカルボン酸系重合体及び該ポリカルボン酸系重合体の架橋成分としてポリアルコールを含有することを特徴とする有機樹脂被覆表面処理金属板が提供される。
本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板においては、
1.前記表面処理皮膜層における前記ポリアルコールの含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体の固形分100質量部に対して20質量部以下であること、
2.前記ポリカルボン酸系重合体が、ポリアクリル酸であること、
3.前記ポリアルコールが、ポリビニルアルコール、または澱粉類であること、
4.前記表面処理皮膜層の単位面積当たりの皮膜重量が、炭素原子換算で2〜100mg/mであること、
5.前記有機樹脂被覆層が、ポリエステル樹脂フィルムであること、
6.前記金属板が、アルミニウム板であること、
が好適である。
本発明によればまた、上記有機樹脂被覆表面処理金属板から成ることを特徴とする缶体又は缶蓋が提供される。
本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板により、内容品充填後に施される殺菌処理にも対応可能な優れた耐熱水密着性を有する缶体・缶蓋を提供することが可能になる。
しかも本発明の表面処理皮膜層は、ノンクロム系の塗布型処理により形成されることから、経済性に優れていると共に環境への負荷が少ないという利点がある。
本発明の上述する作用効果は後述する実施例の結果からも明らかである。
主成分としてポリアクリル酸等のポリカルボン酸系重合体と該ポリカルボン酸系重合体の架橋成分としてポリアルコールを含有する表面処理皮膜層、及び該表面処理皮膜層上に有機樹脂被覆層を形成して成る有機樹脂被覆表面処理金属板を用いてシームレス缶を作製したものでは、耐熱水密着性評価において、有機樹脂被覆の剥離が防止されている(実施例1〜18)。
これに対して、架橋成分であるポリアルコールを配合することなく、ポリカルボン酸系重合体のみで形成された表面処理皮膜層を有する有機樹脂被覆表面処理金属板、或いはポリアルコールのみで、ポリカルボン酸系重合体を含有しない表面処理皮膜層を有する有機表面処理金属板では、フランジ部で有機樹脂被覆層の剥離が生じている(比較例1及び2)。
本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板の断面構造の一例を示す図である。
(表面処理皮膜層)
本発明の有機樹脂表面処理金属板における表面処理皮膜層は、少なくとも主成分としてポリカルボン酸系重合体及び該ポリカルボン系重合体の架橋成分としてポリアルコールを含有していることが重要な特徴であり、それにより優れた耐熱水密着性を有する缶体を提供することが可能となる。本発明の作用効果は以下のように推察している。
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコールを含有する表面処理皮膜層が金属板上に形成された後、特定の条件下での熱処理(200℃程度)に賦された際、表面処理皮膜層中において、ポリカルボン酸系重合体に含まれるカルボキシル基とポリアルコールに含まれる水酸基との間でエステル化反応が起こり、ポリカルボン酸系重合体がポリアルコールにより架橋された架橋構造が形成されると考えられる。この架橋により、主成分であるポリカルボン酸系重合体の耐熱水性が顕著に向上され、殺菌処理のような高温・湿潤環境下に賦された場合においても、皮膜が充分な強度を保持することが可能となる。一方、ポリカルボン酸系重合体に含まれる遊離のカルボキシル基(ポリアルコールの水酸基とエステル結合を形成していないカルボキシル基)は、表面処理皮膜層上に形成される有機樹脂被覆層と強い相互作用を形成するため、高温・湿潤環境下に賦された場合においても、この遊離のカルボキシル基を介して、皮膜と有機樹脂被覆層は良好に密着することができる。これらの効果が組み合わさることにより、本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板から成形された缶体は、内容物充填後に殺菌処理に賦された際にも、有機樹脂被覆層の剥離が抑制され、優れた耐熱水密着性を発現するものと考えている。
本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板における表面処理皮膜層の組成としては、ポリカルボン酸系重合体の固形分100質量部に対して、ポリアルコールが20質量部以下、特に0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部未満、特に好ましくは0.5〜5質量部の量で含有されていることが好適である。上記範囲よりもポリアルコールが多い場合は、上記範囲にある場合に比して、過度に架橋が形成されることで缶体の成形のような過酷な加工に際して表面処理皮膜層が金属基材に追従することが困難になり、その結果、缶体成形後に有機樹脂被覆層の歪みを緩和するために施される熱処理工程において、缶口端で有機樹脂被覆層が剥離する場合があり、製缶適性が顕著に劣化するおそれがあり、また耐熱水密着性も劣化するおそれがある。一方、上記範囲よりもポリアルコールが少ない場合には、上記範囲にある場合に比して、十分に架橋が形成されないことで表面処理皮膜層の耐熱性及び耐水性が不足し、殺菌処理時に皮膜強度を保持できず内部破壊しやすくなり、その結果、有機樹脂被覆層が剥離するおそれがあり、耐熱水密着性が劣化する場合がある。また缶体成形後の熱処理工程においても、耐熱性の不足により、皮膜が内部破壊しやすくなり、それにより有機樹脂被覆層が剥離する場合があり、製缶適性が劣化するおそれがある。
本発明において、表面処理皮膜層の単位面積当たりの皮膜重量は、炭素原子換算で2〜100mg/m、特に5〜50mg/mの範囲にあることが好適である。上記範囲より皮膜重量が大きい場合には、皮膜が必要以上に厚膜となり、不経済である。一方で上記範囲よりも含有量が小さい場合には、皮膜が必要とされる膜厚よりも薄くなり、有機樹脂被覆層との耐熱水密着性が充分に得られないおそれがある。また、表面処理皮膜層の厚みとしては0.1μm未満であることが好ましく、特に0.005〜0.05μmの範囲にあることが特に好ましい。
(ポリカルボン酸系重合体)
本発明において表面処理皮膜層を構成するポリカルボン酸系重合体としては、既存のポリカルボン酸系重合体を用いることができるが、既存のポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体の総称である。具体的には、重合性単量体として、エチレン性不飽和カルボン酸を用いた単独重合体、単量体成分として、エチレン性不飽和カルボン酸のみからなり、それらの少なくとも2種の共重合体、またエチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、さらにアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチンなどの分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類を例示することができる。これらのポリカルボン酸系重合体は、それぞれ単独で、または少なくとも2種のポリカルボン酸系重合体を混合して用いることができる。
ここでエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が代表的なものであり、その中でもアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸が好適である。またそれらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルイタコネート等の不飽和カルボン酸エステル類、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、アクリルアミド、スチレン等が代表的なものである。
このようなポリカルボン酸系重合体の中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体、または該重合体の混合物であることが好ましい。なお、該重合体は、単独重合体でも、共重合体でもよい。また、該重合体において、前記アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、およびイタコン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位が60mol%以上、好ましくは80mol%以上、最も好ましくは100モル%の量で含まれていることが望ましい(ただし全構成単位を100mol%とする。)。すなわち、ポリカルボン酸系重合体が前記アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、およびイタコン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体のみから成る重合体であることが好ましい。なお、上記構成単位以外の構成単位が含まれる場合には、その他の構成単位としては、例えば前述のエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体などが挙げられる。更にポリカルボン酸系重合体が前記アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、およびイタコン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体のみから成る重合体である場合には、それら重合性単量体の単独重合体、共重合体、或いはそれらの混合物を用いることができる。より好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、及びそれらの混合物を用いることができる。本発明においては、ポリカルボン酸系重合体がポリアクリル酸であることが特に好ましい。
また、本発明に用いるポリカルボン酸系重合体は、本発明の目的を損なわない範囲でポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシル基の一部が、予め塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物やアンモニア等の各種アミン化合物を挙げることができる。
本発明の表面処理皮膜層を構成するポリカルボン酸系重合体は、これに限定されないが、重量平均分子量(Mw)が3,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜1,000,000の範囲にあることが望ましい。上記範囲よりも重量平均分子量が小さい場合には、表面処理皮膜層の耐熱水密着性が劣化する場合がある。一方で、上記範囲よりも重量平均分子量が大きい場合には、表面処理液の安定性が低下し、経時でゲル化するおそれがあり、生産性に劣る場合がある。
(ポリアルコール)
本発明において表面処理皮膜層を構成するポリアルコールとは、分子内に2個以上の水酸基を有する低分子量ポリアルコールや、ポリアルコール系重合体、糖類等を挙げることができる。
低分子量ポリアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、キシリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトール等を挙げることができる。
またポリアルコール系重合体としては、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ということがある)、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ブテンジオール−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンービニルアルコール共重合体等を挙げることができる。
更に糖類としては、アラビノース、キシロース、リボース、リキソース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フラクトース等の単糖類、サッカローズ、マルトース、セロビオース、ラクトース等のオリゴ糖類、或いは澱粉類、デキストリン等の多糖類が挙げられる。
本発明においては、上記ポリアルコールの中でもPVA、ブテンジオール−ビニルアルコール共重合樹脂、澱粉類、グリセリン、ポリエチレングリコールを好適に使用することができ、特にPVA、澱粉類が好適である。
PVAとしては、特に限定されないが、けん化度が85%以上、好ましくは95%以上であり、平均重合度が50〜5000の範囲にあるものを好適に使用することができる。
澱粉類としては、水溶性の可溶性澱粉が好適に使用できる。
(触媒)
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコールの熱処理によるエステル化反応を促進する目的で、触媒として無機酸または有機酸の金属塩を適宜添加することができる。金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を挙げることができる。無機酸または有機酸の金属塩の具体的な例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム等が挙げられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好適である。無機酸および有機酸の金属塩の添加量は、ポリカルボン酸系重合体の固形分100質量部対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部である。
また、本発明における表面処理皮膜層は、本発明の目的を損なわない範囲で、ジルコニウムや亜鉛、カルシウム、アルミニウム等の多価金属化合物が含まれていても良い。
(表面処理液)
本発明の表面処理皮膜層を形成する表面処理液は、ポリカルボン酸系重合体、ポリアルコール、水性媒体、及び必要に応じてエステル化反応触媒を含有する表面処理液から形成することができる。このような表面処理液においては、ポリカルボン酸系重合体の固形分100質量部に対して、ポリアルコールが0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部未満、特に好ましくは0.5〜5質量部の量で含有されていることが好適である。また表面処理液に触媒として無機酸および有機酸の金属塩を配合する場合には、ポリカルボン酸系重合体100質量部当たり、無機酸および有機酸の金属塩の添加量が固形分換算で0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の量で配合することが好適である。
前記水性媒体としては、蒸留水、イオン交換水、純粋水等の水を使用することができ、公知の水性組成物と同様に、アルコール、多価アルコール、その誘導体等の有機溶媒を含有することができる。このような共溶剤を用いる場合には、水に対して5〜30重量%の量で含有することができる。上記範囲で溶剤を含有することにより、製膜性能が向上する。このような有機溶媒としては例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノールなどが挙げられる。
(金属板上への表面処理皮膜層の形成方法)
金属板上への表面処理皮膜層の形成方法としては特に限定されず、例えば、金属板に圧延油や防錆油等を除去するための表面洗浄(前処理)として、脱脂処理を施し、水洗や表面調整をし、次いで、前述の表面処理液を金属板上に塗布し、加熱乾燥することで表面処理皮膜層を形成させることができる。
上記脱脂処理としては特に限定されず、例えば、従来アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板の脱脂処理に用いられてきたアルカリ洗浄や酸洗浄を挙げることができる。本発明においては、表面処理皮膜層と金属基材の密着性の点から、アルカリ洗浄の後、更に、酸洗浄を行う方法、又は、上記アルカリ洗浄を行うことなく、酸洗浄を行う方法が好ましい。上記脱脂処理において、通常、アルカリ洗浄はアルカリ性クリーナーを用いて行われ、酸洗浄は酸性クリーナーを用いて行われる。
上記アルカリ性クリーナーとしては特に限定されず、例えば、通常のアルカリ洗浄に用いられるものを用いることができ、例えば、日本ペイント社製「サーフクリーナー420N−2」等が挙げられる。上記酸性クリーナーとしては特に限定されず、例えば、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸等の水溶液が挙げられる。上記脱脂処理を行った後は、金属板表面に残存する脱脂剤を除去するために、水洗処理を行なった後、エアーブロー若しくは熱空気乾燥等の方法にて、金属板表面の水分を除去する。
表面処理液は、ロールコート法、スプレー法、浸漬法、刷毛塗り法、スプレー絞り法(スプレーにより、金属板上に表面処理液を塗布した後、ロールやエアーで液膜を絞りとり乾燥する)、浸漬絞り法(金属板を表面処理液に浸漬させた後、ロールやエアーで液膜を強く絞りとり乾燥する)等の従来公知の方法で金属板に塗布処理することができ、表面処理後の乾燥条件は、50〜300℃、5秒〜5分であり、特に150〜250℃、10秒〜2分であることが好ましい。
(金属板)
本発明に用いる金属板としては、特に限定されないが、各種鋼板やアルミニウム板などが使用される。鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍した後二次冷間圧延したものを用いることができ、他にクラッド鋼板なども用いることができる。また、アルミニウム板としては、いわゆる純アルミニウムの他にアルミニウム合金から成るアルミニウム板を用いることができ、本発明においては、特にアルミニウム合金から成るアルミニウム板を好適に使用できる。上記アルミニウム板としては、例えば、アルミニウム合金5182材、アルミニウム合金5021材、アルミニウム合金5022材、アルミニウム合金5052材、アルミニウム合金3004材、アルミニウム合金3005材、アルミニウム合金3104材、アルミニウム合金1100材等が好適に用いられる。
金属板の元厚は、特に限定はなく、金属の種類、容器の用途或いはサイズによっても相違するが、金属板としては一般に0.10〜0.50mmの厚みを有するのがよく、この中でも鋼板の場合には0.10〜0.30mmの厚み、アルミニウム板の場合は0.15〜0.40mmの厚みを有するのがよい。0.15mm未満では、蓋成形が困難で、かつ所望の蓋強度が得られず、一方0.40mmを超えると、経済性が悪くなるためである。
尚、本発明においては、金属板として、あらかじめ従来公知の化成処理やめっき等の表面処理を施したものを使用しても良い。
前述の表面処理としては、金属板として鋼鈑を用いる場合には、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理、リン酸塩処理等の表面処理の一種又は二種以上行ったものを挙げることができる。金属板としてアルミニウム板を用いる場合には、リン酸クロメート処理、リン酸ジルコニウム処理、リン酸塩処理等の無機系の化成処理、及び無機系の化成処理にアクリル樹脂、フェノール樹脂などの水溶性樹脂、タンニン酸等の有機成分を組み合わせた有機無機複合化成処理等を挙げることができる。
(有機樹脂被覆層)
本発明の有機樹脂被覆塗装金属板において、金属板に形成された表面処理皮膜層上に直接施される有機樹脂被覆層を構成する有機樹脂としては、特に限定されず、例えば、結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、結晶性ポリブテン−1、結晶性ポリ4−メチルペンテン−1、低−、中−、或いは高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラ又はメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの熱可塑性樹脂から構成された熱可塑性樹脂フィルムを有機樹脂被覆層として用いることができる。これらの中でも、特に熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂から構成されたポリエステル樹脂フィルムが好適である。
前記ポリエステル樹脂フィルムを構成するポリエステル樹脂としては、ホモポリエチレンテレフタレートであってもよいし、テレフタル酸以外の酸成分を酸成分基準で30モル%以下の量で、またエチレングリコール以外のアルコール成分をアルコール成分基準で30モル%以下の量で含有する共重合ポリエステル単体またはそれらのブレンド物であってもよい。
前記テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。
前記エチレングリコール以外のアルコール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのグリコール成分を挙げることができる。
また、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステル樹脂とこれら以外の結晶性ポリエステル樹脂、たとえばホモポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリブチレンテレフタレート樹脂を主体とした共重合ポリエステル樹脂、或いは、ホモポリエチレンナフタレート樹脂及び/又はポリエチレンナフタレート樹脂を主体とした共重合ポリエステル樹脂とをブレンドした樹脂であってもよい。その場合においては、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂を主体とした共重合ポリエステル樹脂に対して、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂を主体とした共重合ポリエステル樹脂以外の前記結晶性ポリエステル樹脂の配合量が5〜50wt%であることが好ましい。
上記ポリエステル樹脂の中でも特に、エチレンテレフタレート単位からなるポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレート共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂のブレンド樹脂、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂のブレンド樹脂の何れかであることが好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂のブレンド樹脂が好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合樹脂としては、イソフタル酸の含有量が20モル%以下(酸成分基準)のものが好ましい。前記ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂のブレンド樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合樹脂に対して、ポリブチレンテレフタレート樹脂を10〜50wt%の範囲でブレンドしたものが好ましい。
有機樹脂被覆層として使用するポリエステル樹脂は、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕が0.5以上、特に0.52〜0.70の範囲にあることが腐食成分に対するバリヤー性や機械的性質の点から好ましく、またガラス転移点が50℃以上、特に60℃〜80℃の範囲にあることが好ましい。
ポリエステル樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムには、それ自体公知のフィルム用配合剤、滑剤、アンチブロッキング剤、顔料、各種帯電防止剤、酸化防止剤等を公知の処方によって配合することができる。
ポリエステル樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、一般に5〜40μmの範囲にあることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムから成る有機樹脂被覆層は二層構成にすることもでき、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合には、下層として、エチレンテレフタレート単位を主体とし、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の少なくとも一種を1〜30モル%(酸成分基準)の量で含有し、上層となるポリエステル樹脂における上記酸成分の配合量よりも、その量が多いポリエステル樹脂から形成することが、加工密着性、耐デント性等の点から特に好適である。
熱可塑性樹脂フィルムから成る有機樹脂被覆層は、エポキシフェノール系やポリエステルフェノール系等の従来公知の接着プライマー層を介して、表面処理皮膜層の上に形成しているものであっても良い。接着プライマー層は、表面処理皮膜層と有機樹脂被覆層との両方に優れた接着性を示すものである。
エポキシフェノール系の接着プライマーとしては、特にエポキシ樹脂とフェノール樹脂を50:50〜99:1の重量比、特に60:40〜95:5の重量比で含有する塗料から形成されることが、密着性と耐食性の観点から好ましい。
ポリエステルフェノール系の接着プライマーとしては、特にポリエステル樹脂とフェノール樹脂を50:50〜99:1の重量比、特に60:40〜95:5の重量比で含有する塗料から形成されることが、密着性と耐食性の観点から好ましい。
上記接着プライマー層は一般に0.1〜10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は予め表面処理金属板上の表面処理皮膜層上に設けても良く、あるいは上記ポリエステル樹脂フィルム等の有機樹脂被覆層上に設けても良い。
また本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板において、樹脂塗料組成物から成る塗膜を有機樹脂被覆層とすることもできる。好適に使用できる樹脂塗料組成物としては、熱硬化性樹脂塗料、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリル樹脂、エポキシフェノール樹脂、エポキシユリア樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、シリコーン樹脂、油性樹脂等を用いた樹脂塗料、或いは熱可塑性樹脂塗料、例えばビニルオルガノゾル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、塩化ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、アクリル重合体、飽和ポリエステル樹脂等を用いた樹脂塗料を挙げることができる。これらの樹脂塗料は単独でも2種以上の組合せでも使用される。これらの中でもポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリル樹脂、エポキシフェノール樹脂、エポキシユリア樹脂、ビニルオルガノゾルのうちの1種、又は2種以上を用いた樹脂塗料から成る塗膜が好適である。
尚、上記塗膜の好適な乾燥塗膜質量は5〜200mg/dmが好ましい。
(表面処理金属板上への有機樹脂被覆層の形成方法)
表面処理金属板上への有機樹脂被覆層の形成方法としては、有機樹脂被覆層が熱可塑性樹脂フィルムである場合には、例えば、熱可塑性樹脂フィルムを予め従来公知の方法により形成した後、表面処理金属板上に熱接着法で被覆する方法や、加熱溶融した熱可塑性樹脂を押出機を用いてフィルム状に押出し、直接表面処理金属板上に被覆する押出ラミネート法などが好適である。また、熱可塑性樹脂フィルムを形成した後で被覆する場合、フィルムは延伸されていてもよいが、未延伸フィルムであることが成形加工性及び耐デント性の点からは好ましい。
有機樹脂被覆層が塗膜である場合には、ロールコート法、スプレー法等、従来公知の方法で表面処理板上に塗料組成物を塗工し、乾燥・焼き付けすることで形成させることができる。
図1は、本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板の断面構造の一例を示すものであり、この有機樹脂被覆表面処理金属板1は、金属板2の両面に施された表面処理皮膜層3a,3b、有機樹脂被覆層4a,4bとから成っている。図1に示す具体例においては、金属板2の容器内外面の両方に表面処理皮膜層3a,3bを介して有機樹脂被覆層4a,4bが形成されているが、本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板において、表面処理皮膜層3及び有機樹脂被覆層4は、少なくとも片面に形成されていればよく、もう一方の面には、異なる表面処理皮膜層および有機樹脂被覆層を形成することもできる。
(缶体及びその製法)
本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板から成る缶体は、従来公知の成形法により製缶することができる。
本発明の有機樹脂被覆表面処理覆金属板は、有機樹脂被覆層が優れた加工密着性を有していることから、絞り加工、絞り・深絞り加工、絞り・しごき加工、絞り・曲げ伸ばし加工・しごき加工等の過酷な加工により成形されるシームレス缶を、破胴やフランジ形成部の樹脂被覆の剥離を生じることなく成形することができる。
シームレス缶の側壁部は、有機樹脂被覆表面処理金属板の絞り−再絞り加工による曲げ伸ばし或いは更にしごき加工により、有機樹脂被覆表面処理金属板の元厚の20〜95%、特に25〜85%の厚みとなるように薄肉化されていることが好ましい。
得られたシームレス缶は、少なくとも一段の熱処理に付し、加工により生じるフィルムの残留歪みを除去し、加工の際用いた滑剤を表面から揮散させ、更に表面に印刷した印刷インキを乾燥硬化させる。熱処理後の容器は急冷或いは放冷した後、所望により、一段或いは多段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻締用の缶とする。また、シームレス缶を成形した後、シームレス缶の上部を変形させてボトル形状にすることも可能である。
(缶蓋及びその製法)
本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板から成る缶蓋は、従来公知の缶蓋の製法により成形することができる。
特に缶蓋の成形に適した有機樹脂被覆表面処理金属板としては、前述したエポキシフェノール系やポリエステルフェノール系等の接着プライマー層を介して、有機樹脂被覆層としてポリエステル樹脂フィルムが形成された有機樹脂被覆表面処理金属板を挙げることができ、上記接着プライマー層は、乾燥膜厚で0.3〜3μmの厚みで形成されていることが好ましい。
また有機樹脂被覆層として、エポキシフェノール系塗料、エポキシアクリル系塗料、ポリエステル系塗料、エポキシユリア系塗料、ビニルオルガノゾル系塗料等から成る塗膜が形成された有機樹脂被覆表面処理金属板も好適に使用することができる。
また缶蓋の形状は、内容物注出用開口を形成するためのスコア及び開封用のタブが設けられたイージーオープン蓋等の従来公知の形状を採用することができ、フルオープンタイプ又はパーシャルオープンタイプ(ステイ・オン・タブタイプ)の何れであってもよい。
イージーオープン蓋の成形は、先ずプレス成形工程で、有機樹脂被覆金属板を円板の形に打抜くと共に、所望の蓋形状に成形する。次いで、スコア刻印工程で、スコアダイスを用いて、蓋の外面側からスコアが金属素材の厚み方向の途中に達するようにスコアの刻印を行う。リベット形成工程において、リベット形成ダイスを用いてスコアで区画された開口予定部に外面に突出したリベットを形成させ、タブ取付工程で、リベットに開口用タブを嵌合させ、リベットの突出部を鋲出してタブを固定させることにより、イージーオープン蓋が成形される。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下において「部」とあるのは「質量部」を意味する。
[実施例1〜18]
(表面処理液の調製)
ポリカルボン酸系重合体をイオン交換水中に溶解させ、2質量%のポリカルボン酸系重合体水溶液を得た。ポリアルコールをイオン交換水中に溶解させ、2質量%のポリアルコール水溶液を得た。次いでポリカルボン酸系重合体水溶液に、ポリアルコール水溶液を所定の配合比となるように、常温にて攪拌しながら徐々に添加した。さらに触媒を配合する場合においては、触媒の水溶液を調製し、所定の配合比となるように、常温にて攪拌しながらポリカルボン酸系重合体及びポリアルコールを含む水溶液中に添加した。次いで攪拌しながらイオン交換水を加え、水溶液中のポリカルボン酸系重合体の固形分濃度が0.5〜1質量%となるように調製し、表面処理液を得た。
ポリカルボン酸系重合体としては、ポリアクリル酸(東亞合成社製「ジュリマーAC−10L、Mw=約50,000」:表中「PAA1」と表記、「ジュリマーAC−10H、Mw=約800,000」:表中「PAA2」と表記)を用いた。ポリアルコールとしてはポリビニルアルコール(和光純薬社製「ポリビニルアルコール500 完全けん化型、平均重合度400〜600、けん化度96%以上」:表中「PVA1」と表記、「ポリビニルアルコール3500 部分けん化型、平均重合度=3100〜3900、けん化度=86〜90%」:表中「PVA2」と表記)、可溶性澱粉(和光純薬社製「でんぷん、溶性」)、ブテンジオールービニルアルコール共重合樹脂(日本合成化学社製「ニチゴーGポリマーAZF8035W」:表中「BVOH」と表記)、グリセリン(和光純薬社製「グリセリン」)、ポリエチレングリコール(和光純薬社製「ポリエチレングリコール200、平均分子量=180〜200」:表中「PEG」と表記)を用いた。触媒としては次亜リン酸ナトリウム(和光純薬社製「ホスフィン酸ナトリウム一水和物」)を用いた。各実施例において、用いたポリカルボン酸系重合体とポリアルコールの種類、及び表面処理液におけるポリカルボン酸系重合体の固形分100部に対するポリアルコール及び触媒の固形分配合量を表1に示す。
(表面処理金属板の作製)
金属板として、アルミニウム板(3104合金板 板厚:0.28mm 板寸法:200×300mm)を使用した。まず、日本ペイント社製のアルカリ性クリーナー「サーフクリーナー420N−2」(商品名)の2%水溶液中(60℃)に、6秒間浸漬してアルカリ洗浄を行った。アルカリ洗浄後、水洗してから、2%硫酸水溶液中(60℃)に6秒間浸漬して酸洗浄を行い、水洗してから乾燥した。得られた金属板の両面に表面処理液を塗布し、200℃に設定したオーブン内に60秒間保持して乾燥させ、表面処理金属板を作製した。
(皮膜重量測定)
得られた表面処理金属板における表面処理皮膜層中のポリカルボン酸系重合体、及びポリアルコールに由来する炭素(C)の単位面積当たりの重量(mg/m)は、蛍光X線分析装置を用いて測定した。測定に際して、まず、単位面積当たりの炭素の重量が既知で炭素の重量が異なるサンプルをそれぞれ複数測定し、この際の強度より、強度−重量の検量線を作製した。同様の条件で、各実施例における表面処理金属板についても測定し、得られた測定強度を検量線に基づき、炭素の重量に変換することにより、表面処理皮膜層の炭素換算の皮膜重量を測定した。測定結果を表1に示す。
使用機器:理学電機製 ZSX100e
測定条件:測定径 20mm
X線出力 50kV−70mA
(有機樹脂被覆表面処理金属板の作製)
缶体用の有機樹脂被覆表面処理板は、以下の方法により作製した。得られた表面処理金属板を、予め板温度250℃に加熱しておき、表面処理金属板の両面に、有機樹脂被覆層としてポリエステル樹脂フィルムを、ラミネートロールを介して熱圧着した後、直ちに水冷することにより有機樹脂被覆表面処理金属板を得た。尚、ポリエステル樹脂フィルムとしては、12μm厚のポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合樹脂フィルムを用いた。
(シームレス缶の作製)
作製した缶体用の有機樹脂被覆表面処理金属板の両面に、パラフィンワックスを静電塗油した後、直径156mmの円形に打ち抜き、浅絞りカップを作成した。次いで、この浅絞りカップを、再絞り−しごき加工及びドーミング成形を行い、開口端縁部のトリミング加工を行い、201℃で75秒間、次いで210℃で80秒間熱処理を施し、開口端をネッキング加工、フランジング加工を行い、缶胴211径でネック部206径の容量500mlのシームレス缶を作製した。シームレス缶の諸特性は以下の通りであった。
缶体径:66mm
缶体高さ:168mm
元板厚に対する缶側壁部の平均板厚減少率:60%
(比較例1)
表1に示すように、ポリアルコールを含有しない表面処理液を使用した以外は、実施例1と同様にしてシームレス缶を作製した。
(比較例2)
表1に示すように、ポリカルボン酸系重合体を含有しない表面処理液を使用した以外は、実施例1と同様にしてシームレス缶を作製した。
(比較例3)
金属板として、リン酸クロメート処理(化成型処理)を施した表面処理アルミニウム板(3104合金板 板厚:0.28mm 板寸法:200×300mm 表面処理皮膜中のクロム含有量:20mg/m)を用いて、前記「有機樹脂被覆表面処理金属板の作製」の項に記載した通りに、有機樹脂被覆表面処理金属板を作製し、前記「シームレス缶の作製」の項に記載した通りにシームレス缶を作製した。
(シームレス缶の評価方法)
実施例1〜18及び比較例1〜3により得られたシームレス缶について、下記の評価を行い、結果を表1に示した。
(製缶適性評価)
熱処理時フランジ部剥離性評価は、前記「シームレス缶の作製」の項に記載した通りに、缶体をトリミング加工まで行った後、オーブンを用いて、201℃で75秒間、次いで210℃で80秒間の熱処理を行った後、缶体の開口端(フランジ形成部)を顕微鏡で観察し、缶体の開口端より有機樹脂被覆層の剥離度合いで評価した。評価結果を表1に示す。
◎:剥離した部分の最大長さが0.1mm未満
○:剥離した部分の最大長さが0.1mm以上0.2mm未満
△:剥離した部分の最大長さが0.2mm以上0.3mm未満
×:剥離した部分の最大長さが0.3mm以上
(耐熱水密着性評価)
耐熱水密着性評価は、前記「シームレス缶の作製」の項に記載した通りにシームレス缶を作製した後、内面側ネック部の最小径部に内面から缶周に沿ってカッターナイフで金属面まで達するキズを付与した状態で、100℃の熱水に10分間浸漬後のネック部の有機樹脂被覆層の剥離状態を観察して評価した。評価結果を表1に示す。
◎:全周に渡って剥離が認められない
○:一部剥離が認められるが、その剥離部分の長さが缶全周長さの5%未満
△:一部剥離が認められるが、その剥離部分の長さが缶全周長さの5%以上10%
未満
×:剥離部分の長さが全周方向の10%以上
本発明の有機樹脂被覆表面処理金属板は、それを用いてシームレス缶等を成形した場合に、殺菌工程のような高温・湿潤環境下に賦された場合にも、有機樹脂被覆層の剥離を抑制できる優れた耐熱水密着性を発現可能であるため、缶体及び缶蓋に好適に使用することができ、しかも過酷な成形加工に賦された場合にも優れた耐熱水密着性を有することから、特に絞りしごき缶等のシームレス缶に好適に利用することができる。
1 有機樹脂被覆表面処理金属板、2 金属板、3 表面処理皮膜層、4 有機樹脂被覆層。

Claims (9)

  1. 金属板の少なくとも片面に、表面処理皮膜層及び該表面処理皮膜層上に有機樹脂被覆層が形成されて成る有機樹脂被覆表面処理金属板であって、該表面処理皮膜層が主成分としてポリカルボン酸系重合体及び該ポリカルボン酸系重合体の架橋成分としてポリアルコールを含有することを特徴とする有機樹脂被覆表面処理金属板。
  2. 前記表面処理皮膜層における前記ポリアルコールの含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体の固形分100質量部に対して、20質量部以下であることを特徴とする請求項1記載の有機樹脂被覆表面処理金属板。
  3. 前記ポリカルボン酸系重合体が、ポリアクリル酸であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の有機樹脂被覆表面処理金属板。
  4. 前記ポリアルコールが、ポリビニルアルコール、または澱粉類であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の有機樹脂被覆表面処理金属板。
  5. 前記表面処理皮膜層の単位面積当たりの皮膜重量が、炭素原子換算で2〜100mg/mであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の有機樹脂被覆表面処理金属板。
  6. 前記有機樹脂被覆層が、ポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の有機樹脂被覆表面処理金属板。
  7. 前記金属板が、アルミニウム板であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の有機樹脂被覆表面処理金属板。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の有機樹脂被覆表面処理金属板から成ることを特徴とする缶体。
  9. 請求項1〜7の何れかに記載の有機樹脂被覆表面処理金属板から成ることを特徴とする缶蓋。
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