JP3780111B2 - 加工密着性および耐食性に優れた2ピース缶用フィルムラミネート鋼板 - Google Patents

加工密着性および耐食性に優れた2ピース缶用フィルムラミネート鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工後の密着性および耐食性に優れたフィルムラミネート鋼板に関し、特に、フィルムラミネート後に厳しい加工を施される2ピース缶用フィルムラミネート鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の製缶工程においては、ぶりき、電解クロメート処理鋼板(以下、TFSと称する)、アルミニウムなどの金属板に1回あるいは複数回の塗装を施し、その後製缶加工を行う場合と、製缶加工した後に塗装を行う場合がある。
【0003】
また、近年、金属板に有機樹脂フィルムをラミネートする技術が開発され、実用化されている。特開昭57−182428号公報,特公昭61−3676号公報等には、金属板側をフィルムの融点以上に加熱し、熱融着によって接着する方法が開示されている。
【0004】
フィルムラミネート後に施される加工としては種々の方法があるが、特に加工度の高いものとしては、金属板に絞り,しごき,引張り,曲げなどの加工を単独あるいは組み合わせ、必要に応じて繰り返し施すことにより、缶底部および缶銅部を一体成形する2ピース缶製造方法がある。
【0005】
一方、近年、製缶メーカーでは材料節減の観点から缶体の薄肉化が進められており、そのために2ピース缶では製缶時の加工度の増大といった手段が講じられている。
【0006】
ところで、フィルムラミネート後に施される厳しい加工は、下地表面処理鋼板のめっき皮膜の形態に大きな影響を与える。例えばTFSの場合、ドロービード加工後の素材からフィルムを溶解除去してめっき皮膜を観察すると、金属クロム層および水和クロム酸化物層には多数の亀裂が生じ、金属クロムおよび鉄の新生面が現れることが判明した。すなわち、最表層の有機樹脂フィルムは大きな延性を有するため、かなり厳しい加工を施しても健全な外観を呈するが、有機樹脂フィルムや下地鋼板に比べて極めて薄い皮膜である電解クロメート皮膜は特に影響を受けやすく、下地鋼板が滑りを起こして界面に新生面を生じながら変形する際に、亀裂が生じるものと考えられる。
【0007】
有機樹脂フィルムと下地表面処理鋼板の密着性は、有機樹脂フィルムと電解クロメート処理皮膜との界面の接着状態に依存するため、電解クロメート処理皮膜に亀裂が生じて健全な接着界面が減少することにより、加工した後の密着性(以下、加工密着性と称する)および耐食性は劣化する。
【0008】
このように、材料節減を目的とした薄肉化を進めるために加工度を大きくすれば、加工密着性および耐食性等の性能の劣化が大きくなる。これは、前述の熱融着によるフィルム接着方法を用いた場合においても同様であり、加工密着性および加工耐食性の劣化が大きく実用には供し難い。
【0009】
このような問題を解決するための技術として、エポキシ樹脂とその硬化剤を含む重合組成物等を予め塗布した有機樹脂フィルムを金属板にラミネートする方法が、特公昭63−13829号公報,特開平1−249331号公報,特公平4−74176号公報,特公平5−71035号公報,特開平2−70430号公報等に開示されている。また、鋼板の片面または両面にエポキシ・フェノール系、エポキシ・ユリア系、ウレタン系等の接着用プライマーを塗布する方法が特開平4−344231号公報に開示されている。
【0010】
これらの方法によれば加工密着性および耐食性はある程度改善されるが、内容物が酸性飲料等の腐食性飲料では塗装缶等には劣り耐食性の面からは十分だとはいえない。
【0011】
また、製造工程で特に厳しい加工を施す場合にはより以上の加工密着性および耐食性が要求され、缶に外部から打痕等の衝撃が与えられた場合にはさらに性能劣化の程度が大きくなることから、これらの技術による加工密着性および耐食性の改善では不十分であり、一部の内容物では適用することができないという問題がある。
【0012】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、フィルムラミネート後に厳しい加工を施される缶体の、加工密着性および耐食性の劣化を抑制し、あらゆる内容物に対して適用可能な、2ピース缶用フィルムラミネート鋼板を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために、ラミネートフィルムのような熱可塑性樹脂からなる従来の有機樹脂フィルムとの密着性が比較的良好な表面処理鋼板であるTFSを下地として、かかる有機樹脂フィルムとTFSとの接着界面における接着機構を詳細に検討した。本発明者らは、さらに、かかる従来の有機樹脂フィルムと接着した後に厳しい加工を受けた場合の接着界面を詳細に調査し、内容物充填後の内面の水性環境あるいはレトルト処理時の高温水蒸気環境において、加工密着性および耐食性が劣化する機構についても詳細に調査した。
【0014】
そして、接着機構を調査した結果、樹脂フィルムとTFS界面との接着は水素結合が支配的因子になっていることが判明した。その接着力は水素結合によるものであるため共有結合によるもの等に比べてあまり高くない。
【0015】
密着性が不十分な場合、高加工により樹脂フィルムにずれが生じ、フィルムが破断を起こす場合もあり、金属部分が露出すると耐食性が劣化する。
【0016】
また、加工密着性および耐食性が劣化する機構を調査した結果、フィルムラミネート後に施される厳しい加工は、下地表面処理鋼板のめっき皮膜の形態に大きな影響を与えることも判明した。例えばTFSの場合、金属クロム層および水和クロム酸化物層には頻繁に亀裂が生じ、金属クロムおよび鉄の新生面が現れていたことがわかった。すなわち、最表層の有機樹脂フィルムは大きな延性を有するため、かなり厳しい加工を施しても健全な外観を呈するが、有機樹脂フィルムや下地鋼板に比べて極薄い皮膜である電解クロメート処理皮膜は特に影響を受けやすく、下地鋼板が滑りを起こして界面に新生面を生じながら変形する際に、亀裂が生じるものと考えられる。
【0017】
有機樹脂フィルムと下地表面処理鋼板の密着性は、有機樹脂フィルムと電解クロメート処理皮膜との界面の接着状態に依存するため、電解クロメート処理皮膜に亀裂が生じて健全な接着界面が減少することにより、加工した後の密着性は劣化する。また、その密着性の劣化は、フィルムが破断を起こす場合もあり、耐食性をも劣化させる。
【0018】
また、内容物充填後の内面の水性環境あるいはレトルト処理時の高温水蒸気環境においては、樹脂フィルムを透過した水分子がフィルム/TFS界面を攻撃するため、密着性の劣るものは、その劣化をより促進させられる。
【0019】
以上に加工密着性および耐食性が劣化する機構について説明したが、かかる知見に基づき、本発明者らは、この劣化を抑制するために従来材にない有機樹脂層の導入を見出した。すなわち、従来の樹脂フィルムとTFSとの界面に、界面における密着性を向上させ、かつ、高加工により破断することなく、金属の露出および金属イオンの溶出を防ぐ有機樹脂層(以下、第1の樹脂層とも称する。)を介挿することである。
【0020】
この第1の樹脂層の介挿により従来の最表層の樹脂フィルム(以下、第2の樹脂フィルム層とも称する。)とTFSとの両界面における密着性を向上させるには、TFSおよび第2の樹脂フィルム層それぞれに対して、この第1の樹脂層の密着性が優れ、かつ、材料自体が凝集破壊を起こさないことが必要である。
【0021】
凝集破壊を起こさないためには、第1の樹脂層を形成する有機物成分がある程度の高分子量体であることが好ましい。また、TFSとの密着性に優れるには、TFSとの水素結合を向上させること、あるいは共有結合、配位結合を起こさせることが好ましいと考えられる。水素結合を向上させるためには水酸基、カルボキシルキ等の極性基の導入が好ましく、また、配位結合を形成するためにも水酸基、カルボキシル基等を導入することが好ましい。
【0022】
また、第2の樹脂フィルム層との密着性を高めるためには、樹脂フィルムとの相溶性を高めることにより二次結合力を向上させることが好ましいと考えられる。例えば第2の樹脂フィルム層がポリエステル系樹脂の場合には、第1の樹脂層を形成する有機物成分に芳香環等を導入することにより溶解パラメータをポリエステル系樹脂に近づけることが有効である。
【0023】
この第1の樹脂層が高加工により破断しないで金属の露出を防ぐためには、高加工の際の伸びに耐え、電解クロメート処理皮膜の上を覆っている必要があり、そのためには第1の樹脂層を形成している有機物が高分子量体で、かつフレキシブルな骨格を有することを必要とする。また、覆うだけでなく、その材料自体も耐食性を有することが必要であり、そのためには、有機物が例えば芳香環等の剛直な骨格を有することが必要となる。
【0024】
また、金属イオンの溶出を防止するためには、金属イオンとの間で配位結合を形成する可能性の有る水酸基、カルボキシル基等の導入が望ましい。
【0025】
これらのことをまとめると、第1の樹脂層を形成する有機物としては剛直な構造(例えば芳香環)とフレキシブルな構造とのバランスが必要となり、また水酸基、カルボキシル基等の極性基の導入が必要となる。
【0026】
このような知見に基づき、本発明者らは、従来のラミネート時のフィルムあるいは鋼板への有機溶媒系接着剤塗布といった方法とは全く関係なく、TFSの水和クロム酸化物層にある特定の水系有機物あるいは有機溶媒系有機物、環境問題の観点からは好ましくは水系有機物を塗布することにより、フィルムラミネート後の鋼板に厳しい加工を施した後の加工密着性および耐食性が著しく改善されることを見出した。
【0027】
すなわち、本発明は、鋼板と、この鋼板の少なくとも一方の面上に形成され、下層が片面あたり30mg/m以上の付着量を有する金属クロム層で、上層が片面あたり金属クロム換算で5〜30mg/mの付着量を有する水和クロム酸化物層の電解クロメート処理層と、この電解クロメート処理層上に形成された第1の樹脂層と、この第1の樹脂層上に形成された熱可塑性の第2の樹脂フィルム層とを具備し、前記第1の樹脂層はカルボキシル基含有ラジカル共重合性単量体がグラフト重合せしめられた共重合ポリエステル樹脂と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂を含むことを特徴とする加工密着性および耐食性に優れた2ピース缶用フィルムラミネート鋼板を提供する。
【0028】
なお、本発明においては、前記第1の樹脂層の平均付着量が固形分濃度として50〜10000mg/mであることが好ましく、その樹脂組成物の主成分はカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体がグラフト重合せしめられた共重合ポリエステル樹脂60〜99重量部と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂1〜40重量部からなることが好ましい。
【0029】
また、本発明においては、前記熱可塑性の第2の樹脂フィルム層は、厚さ10μm以上のポリエステル系樹脂フィルム層であることが好ましい。
【0030】
このような構成を有する本発明によれば、省資源の観点から進められている缶体の薄肉化に伴う加工度の増大による加工密着性および耐食性の劣化を抑制し、高温水蒸気環境であるレトルト処理等が必要な内容物にも適用可能な2ピース缶用フィルムラミネート鋼板をコストの増大を伴うことなく提供することが可能となる。
【0031】
【発明の実施の態様】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0032】
本発明に係る2ピース缶用フィルムラミネート鋼板は、下地鋼板の少なくとも一方の面上に形成され、下層が片面あたり30mg/m以上の付着量を有する金属クロム層で、上層が片面あたり金属クロム換算で5〜30mg/mの付着量を有する水和クロム酸化物層の電解クロメート処理層と、このクロメート処理層上に形成された第1の樹脂層と、この第1の樹脂層上に形成された熱可塑性の第2の樹脂フィルム層とを具備し、前記第1の樹脂層はカルボキシル基含有ラジカル共重合性単量体がグラフト重合せしめられた共重合ポリエステル樹脂(以下、カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂とも称する。)と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂を含む。
【0033】
本発明において、下地鋼板は特に限定されるものではなく、通常この種の表面処理鋼板に用いられる鋼板であれば使用することができる。例えば、板厚0.1〜0.3mmの通常の低炭素冷延鋼板、低炭素Alキルド鋼板等が用いられる。
【0034】
このような下地鋼板の少なくとも一方の面に、直接またはクロムめっき後に表面処理皮膜として、下層が金属クロム層、上層が水和クロム酸化物層からなる二層の電解クロメート処理皮膜が形成される。この際の電解クロメート処理方法としては通常用いられる公知の方法を採用することができ、金属クロムと水和クロム酸化物とを同時に析出させる一液法、および金属クロム層形成後に水和クロム酸化物を析出させる二液法のいずれでもよい。
【0035】
ここで下層の金属クロム付着量は、好ましくは片面あたり30mg/m2 以上であるが、より好ましくは30〜300mg/m2 である。その付着量が30mg/m2 未満の場合には耐食性に問題を生じる。300mg/m2 を超えても性能上全く劣ることはないが、経済的観点から好ましくない。いずれにしても、通常の電解クロメート処理鋼板に用いられる量であれば問題ない。
【0036】
上層の水和クロム酸化物の付着量は、好ましくは片面あたり金属クロム換算で5〜30mg/m2 である。その付着量が5mg/m2 未満では金属クロム層が水和クロム酸化物によって均一に覆われず金属層の露出面積が大となり、耐食性および耐経時劣化性、加工密着性が劣るため好ましくない。また、30mg/m2 を超えると水和クロム酸化物層が厚すぎることによって生じる外観の劣化および密着性の劣化を引き起こし好ましくない。
【0037】
電解クロメート処理皮膜の上には、カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物からなる第1の樹脂層が形成される。これらの樹脂組成物は有機溶媒系、水系どちらの形態でも得られるが、どちらの形態でも本発明に用いることができる。
【0038】
カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂を得る技術は数多く公開されている公知の方法により行うことができる。
【0039】
例えば低分子量の共重合ポリエステルの溶剤溶解型のグラフト変性や水分散する方法は特開昭57−57065号公報、米国特許3634351号、米国特許4517322号等に開示されている。また、高分子量の共重合ポリエステルの主鎖または末端に重合性不飽和二重結合を導入し、それに対してラジカル重合性単量体をグラフトまたはブロック重合せしめる方法は特開昭57−38810号公報、特開平3−294322号公報、特開平5−262870号公報等に、水分散化する方法は特公昭61−57874号公報、特開昭59−223374号公報、特開昭61−200109号公報、特開昭62−525510号公報、特開平6−256437号公報、特開平7−330841号公報、特開平9−25450号公報等に開示されている。
【0040】
本発明における共重合ポリエステル樹脂は、本来それ自身で水に分散または溶解しないものであり、一般的に溶融重合で合成される。その数平均分子量(GPCによる)は好ましくは5000〜100000である。共重合ポリエステルはジカルボン酸成分とグリコール成分とから合成されるが、ジカルボン酸成分の好ましい重合組成は、芳香族ジカルボン酸60〜99mol%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸0〜40mol%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸0.5〜10mol%である。かかる組成比が好ましいのは、共重合ポリエステル樹脂の安定性からである。
【0041】
芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。また、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等とその無水物を挙げることができる。また、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸類としてフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。
【0042】
一方、グリコール成分は炭素数2〜10の脂肪族グリコール及び/又は炭素数6〜12の脂環族グリコール及び/又はエーテル結合含有グリコールである。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を、エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。これらグリコール類は単独でも二以上の組み合わせでも可能である。
【0043】
共重合ポリエステルをグラフト重合するカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸無水物等を挙げることができる。また、これらのカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体の他にカルボキシル基を含有しない重合性単量体を併用することも可能である。また、ラジカル重合性単量体は単独でも二以上の組み合わせでも可能である。
【0044】
本発明のポリエステル系グラフト重合体は、前記共重合ポリエステル中の重合性不飽和二重結合に、ラジカル重合性単量体をグラフト重合させることにより効率的に得られる。一般的には共重合ポリエステル重合体を有機溶媒中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤およびラジカル重合性単量体を反応せしめることにより合成される。
【0045】
また、本発明に係る第1の樹脂層を形成する樹脂組成物は有機溶媒系、水系いずれの形態においても用いられ得ることは前述の通りであるが、グラフト化反応生成物は塩基性化合物で中和することによって容易に平均粒子径500nm以下の微粒子に水分散化することができる。グラフト化反応が終了した時点で直ちに塩基性化合物を含有する水を投入し、さらに加熱攪拌を継続して水分散体を得る方法が望ましい。さらにグラフト化反応に用いた溶媒を蒸留によって一部または全部を容易に取り除くことができる。本発明の水系分散体は必要に応じて水を添加することにより固形分濃度を調整することができる。
【0046】
本発明の第1の樹脂層は上述のカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂とを主成分とする樹脂組成物により形成される。
【0047】
石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂としては、石炭酸、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール又はこれらの混合物をアンモニア、トリエチルアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリを触媒として縮合させたもの、又はこれをメタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコールでアルキルエーテル化したものを使用することができる。
【0048】
かかる石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂はそのままカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂に混合させるだけでも良いが、あらかじめ石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂をゲル化しない程度に反応させたものを用いても良い。
【0049】
なお、このカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂とを含む樹脂組成物に、必要に応じてさらにメラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、ブロックウレタン樹脂等の硬化物、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、他のポリエステル樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等を配合することもできる。さらに、耐食性を上げるために、必要に応じてストロンチウムクロメート、カルシウムクロメート、ジンククロメート、カルシウムシリケート、トリポリリン酸アルミ等の防錆剤を配合することもできる。
【0050】
このようにして得られるカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂を主成分とする樹脂組成物が第1の樹脂層として上述の電解クロメート処理皮膜上に形成される。その形成方法としては、鋼板にあらかじめ第1の樹脂層を形成させる方法あるいは熱可塑性の第2の樹脂フィルム層の鋼板側面にあらかじめ第1の樹脂層を形成させておく方法があるが、どちらの方法も使用することができる。
【0051】
また、その塗布方法としては、いずれの場合においても通常用いられる公知の方法を採用することができ、例えばロールコート方式、カーテンフロー方式、ダイコーター方式、浸漬方式、スプレーコート方式、カーテンフローコート方式、しごき塗装方式、ブレードコーター塗装方式、ロッドコーター塗装方式、エアードクターコーター塗装方式、キスコーター塗装方式等を挙げることができる。
【0052】
乾燥方法としては、鋼板に塗装した場合はジャケットロール方式、乾燥炉を使用する方式のどちらでも構わず、公知の方法により行うことができ、乾燥炉は例えば熱風炉、赤外線炉、誘導加熱炉等を使用することができる。乾燥温度は鋼板に塗装した場合は100〜270℃、熱可塑性樹脂フィルムに塗装した場合は50〜110℃の樹脂フィルムの耐熱温度以下で行うことが望ましい。乾燥温度はいずれの場合も2秒〜2分が望ましい。
【0053】
この第1の樹脂層の好ましい付着量は、固形分濃度として50〜10000mg/m2 であり、その樹脂組成物の好ましい組成はカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂60〜99重量部と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂1〜40重量部からなるものである。
【0054】
その付着量が固形分濃度として50mg/m2 未満の場合には充分な被覆度が得られないため耐食性が低下し、10000mg/m2 を超えると第1の樹脂層内部で凝集破壊を引き起こし易くなり、その結果、加工性および耐食性が低下する傾向にある。
【0055】
また、カルボキシルグラフト共重合体が60重量部未満では加工密着性、耐食性が低下し、99重量部を超えると耐食性が低下する。
【0056】
本発明のラミネート鋼板では、耐食性等の観点から前記第1の樹脂層の上に熱可塑性の第2の樹脂フィルム層がラミネートされる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系等、通常用いられるいずれの有機樹脂フィルムも用いることができるが、加工密着性、耐食性等の観点からはポリエステル系樹脂フィルムが好ましい。
【0057】
さらに、熱可塑性の第2の樹脂フィルム層の厚さは、10μm以上であることが好ましい。厚さが10μm未満になると、耐傷つき性に劣ることおよびフィルム製造の際ピンホール等を生じやすくなりその結果耐食性に劣る結果となるからである。
【0058】
熱可塑性樹脂をフィルムにするためには、押出溶融した樹脂をTダイ方式でフィルム化する一般的な方法を使用することができる。また、そのフィルムはそのままの無延伸の状態あるいは二軸延伸等の延伸処理を行った状態のどちらで使用しても構わない。
【0059】
また、熱可塑性の第2の樹脂フィルムをラミネートする方法については、あらかじめフィルムを作製しておいてラミネートする方法とTダイ方式で押出溶融した樹脂をそのままラミネートする方法等があるが、いずれの方法を用いてラミネートしても構わない。
【0060】
熱可塑性の第2の樹脂フィルムが熱溶着によりラミネートされる場合、鋼板を第2の樹脂フィルムの融点以上に加熱しロールを使用してフィルムを圧着する方法が一般的である。そのラミネート技術は数多く公開されている公知の方法により行うことができる。例えば金属板に有機樹脂フィルムをラミネートする技術として特開昭57−182428号公報、特公昭61−3676号公報等には、金属板側をフィルムの融点以上に加熱し、熱融着によって接着する方法が開示されている。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例を順次説明する。
【0062】
[供試材]
(1)表面処理鋼板
全ての実施例および比較例は、低炭素Alキルド連鋳鋼で、厚さ0.20mmのT4CA材を原板鋼帯とし、これに後述する表面処理を施して製造した。
【0063】
(2)塗布用有機材(第1の樹脂フィルム材)
有機物種別:A
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸47mol%、イソフタル酸48mol%、フマル酸5mol%、ジオール成分として1,4−ブタンジオール50mol%、エチレングリコール50mol%の組成比の共重合ポリエステル樹脂を合成した。その共重合ポリエステル樹脂300重量部、メチルエチルケトン450重量部、イソプロピルアルコール150重量部、アクリル酸35重量部、アクリル酸エチル65重量部、オクチルメルカプタン1.5重量部、アゾビスイソブチルニトリル6重量部を反応させグラフト体溶液を得、その後トリエチルアミンで中和した後イオン交換水を添加、有機溶剤を蒸留で取り除き、水系カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂を得た。生成した水分散体は平均粒子径70mm、グラフト効率50%であった。
【0064】
つぎに上記カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体がグラフト重合せしめられた共重合ポリエステル樹脂95重量部と熱硬化型石炭酸・ホルムアルデヒド樹脂を水中に分散させた石炭酸系レゾール型フェノール樹脂エマルジョン(粘度3000cP、ゲル化時間160sec[150℃],不揮発分51%[105℃/3h]、乳白色液状体)5重量部を混合し、樹脂組成物とした(有機物種別A)。
【0065】
有機物種別B:
有機物種別Aと同様のポリエステル系グラフト共重合体95重量部と熱硬化型石炭酸/メタクレゾール=1/1・ホルムアルデヒド樹脂を水中に分散させた石炭酸/メタクレゾール系レゾール型フェノール樹脂エマルジョン(粘度3500cP、ゲル化時間180sec[150℃]、不揮発分53%[105℃/3h]、乳白色液状体)5重量部を混合し、樹脂組成物とした(有機物種別B)。
【0066】
有機物種別C:
有機物種別Aと同様のポリエステル系グラフト共重合体95重量部と熱硬化型メタクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を水中に分散させたメタクレゾール系レゾール型フェノール樹脂エマルジョン(粘度3200cP、ゲル化時間170sec[150℃]、不揮発分51%[105℃/3h]、乳白色液状体)5重量部を混合し、樹脂組成物とした(有機物種別C)。
【0067】
有機物種別D:
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸45mol%、イソフタル酸40mol%、セバシン酸10%、フマル酸5mol%、ジオール成分として1,4−ブタンジオール80mol%、エチレングリコール20mol%の組成比の共重合ポリエステル樹脂を合成した。その共重合ポリエステル樹脂300重量部、メチルエチルケトン450重量部、イソプロピルアルコール150重量部、アクリル酸35重量部、アクリル酸エチル65重量部、オクチルメルカプタン1.5重量部、アゾビスイソブチルニトリル6重量部を反応させグラフト体溶液を得、その後トリエチルアミンで中和した後イオン交換水を添加、有機溶剤を蒸留で取り除き、水系カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂を得た。生成した水分散体は平均粒子径90nm、グラフト効率45%であった。
【0068】
つぎに上記カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂60重量部と熱硬化型石炭酸・ホルムアルデヒド樹脂を水中に分散させた石炭酸系レゾール型フェノール樹脂エマルジョン(粘度3000cP、ゲル化時間160sec[150℃]、不揮発分51%[105℃/3h]、乳白色液状体)40重量部を混合し、樹脂組成物とした(有機物種別D)。
【0069】
有機物種別E:
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸47mol%、イソフタル酸48mol%、フマル酸5mol%、ジオール成分としてネオペンチルグリコール50mol%、エチレングリコール50mol%の組成比の共重合ポリエステル樹脂を合成した。その共重合ポリエステル樹脂300重量部、メチルエチルケトン450重量部、イソプロピルアルコール150重量部、アクリル酸65重量部、アクリル酸エチル65重量部、オクチルメルカプタン1.5重量部、アゾビスイソブチルニトリル6重量部を反応させグラフト体溶液を得、その後トリエチルアミンで中和した後イオン交換水を添加、有機溶剤を蒸留で取り除き、水系カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂を得た。生成した水分散体は平均粒子径60nm、グラフト効率60%であった。
【0070】
つぎに上記カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂99重量部と熱硬化型石炭酸・ホルムアルデヒド樹脂を水中に分散させた石炭酸系レゾール型フェノール樹脂エマルジョン(粘度3000cP、ゲル化時間160sec[150℃]、不揮発分51%[105℃/3h]、乳白色液状体)1重量部をブレンドし、樹脂組成物とした(有機物種別E)。
【0071】
有機物種別F:
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸47mol%、イソフタル酸48mol%、フマル酸5mol%、ジオール成分として、1,4−ブタンジオール50mol%、エチレングリコール50mol%の組成比の共重合ポリエステル樹脂を合成した。その共重合ポリエステル樹脂300重量部、メチルエチルケトン450重量部、イソプロピルアルコール150重量部、アクリル酸35重量部、アクリル酸エチル65重量部、オクチルメルカプタン1.5重量部、アゾビスイソブチルニトリル6重量部を反応させグラフト効率50%の有機溶媒系カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂を得た。
【0072】
つぎに上記カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂95重量部と石炭酸・ホルムアルデヒド樹脂より合成した有機溶媒系石炭酸系レゾール型フェノール樹脂(粘度6000cP、ゲル化時間140sec[150℃]、不揮発分52%[105℃/3h]、褐色液状体)5重量部を混合し、樹脂組成物とした(有機物種別F)。
【0073】
有機物種別G:
有機物種別Aと同様のカルボキシル基含有ラジカルグラフト共重合ポリエステル樹脂40重量部と熱硬化型石炭酸・ホルムアルデヒド樹脂を水中に分散させたメタクレゾール系レゾール型フェノール樹脂エマルジョン(粘度3300cP、ゲル化時間170sec[150℃]、不揮発分51%[105℃/3h]、乳白色液状体)60重量部を混合し、樹脂組成物とした(有機物種別G)。
【0074】
有機物種別H:
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸47mol%、イソフタル酸48mol%、フマル酸5mol%、ジオール成分としてネオペンチルグリコール50mol%、エチレングリコール50mol%の組成比の共重合ポリエステル樹脂を合成した。その共重合ポリエステル樹脂をグラフト重合しないまま、メチルエチルケトンに溶解させ、有機溶媒系の共重合ポリエステル樹脂を得た。
【0075】
つぎに上記カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂95重量部と石炭酸・ホルムアルデヒド樹脂より合成した有機溶媒系石炭酸系レゾール型フェノール樹脂(粘度6000cP、ゲル化時間140sec[150℃]、不揮発分52%[105℃/3h],褐色液状体)5重量部を混合し、樹脂組成物とした(有機物種別H)。
【0076】
有機物種別I:
有機物種別Aと同様のカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂のみを樹脂組成物とした(有機物種別I)。
【0077】
有機物種別J:
分子量約7000のビスフェノールタイプの有機溶媒系エポキシ樹脂80重量部と石炭酸・ホルムアルデヒド樹脂より合成した有機溶媒系石炭酸系レゾール型フェノール樹脂(粘度6000cP、ゲル化時間140sec[150℃]、不揮発分52%[105℃/3h]、褐色液状体)20重量部をブレンドし、樹脂組成物とした(有機物種別J)。
【0078】
(3)フィルムラミネート
実施例、比較例に記載された表面処理鋼板を200×300mmの切板にし、その両面に次に示す条件で市販のポリエステルフィルムを第2の樹脂フィルム層としてラミネートした。
【0079】
フィルム:二軸配向ポリエステルフィルム(ポリエチレングリコールとテレフタル酸/イソフタル酸の共重合体)
フィルム厚さ:25μm
フィルムの結晶融解温度:229℃
ラミネート直前の鋼板温度:235℃
ラミネート速度:2m/秒
ラミネート後の冷却:水冷(急冷)
[2]評価
(1)絞り加工性
・密着性評価
ラミネート板を直径158mmの円板に打抜き、絞り比2.98で円筒状カップに絞り加工を施した後、カップ内面のフィルムの剥離状況をルーペで観察した。その際に、剥離なしの良好な状態を5点とし、4点、3点、2点、1点と小さくなるにつれて剥離の程度が大きくなるように5段階に分けて評価した。
【0080】
・耐食性評価
また、絞り加工したカップを、0.4%クエン酸水溶液中に50℃、14日間浸漬し、水洗、乾燥後、同様にカップ内面の剥離程度を同基準で5段階評価した。
【0081】
(2)曲げ曲げ戻し加工
・密着性評価
フィルムラミネート板を30×300mmのたんざく状に切り出し、先端Rが0.25mmの工具を用い、押さえ圧400kgfでドロービードテストを行い、サンプル表面をルーペで観察した。その際、絞り加工性評価と同様に剥離の程度を5段階で評価した。
【0082】
・耐食性評価
また、曲げ曲げ戻し加工したフィルムラミネート板を、0.4%クエン酸水溶液中に50℃、14日間浸漬し、水洗、乾燥後、同様にカップ内面の剥離程度を同基準で5段階評価した。
【0083】
(3)リパックテスト
・密着性評価
フィルムラミネート板を直径110mmの円板に打抜き、まず最初に絞り比1.51で円筒状カップ絞り加工を施し、次いで絞り比1.20で再絞り加工を施して、円筒状カップ(全絞り比1.81)を作成した。このカップの内面のフィルムの剥離状況をルーペで観察し、絞り加工性評価と同じ基準で剥離程度を5段階評価した。
【0084】
・耐食性評価
さらに、本カップ中に0.4%クエン酸をリパックし、カップの中央部に直径1/2インチ、1kgの鋼球を高さ100mmより落下させた後、38℃で4カ月間の貯蔵を行い、この貯蔵テスト後のカップ内面のフィルムと金属板の剥離状況をルーペで観察し、上と同じ基準で5段階評価した。
【0085】
加工性の評価は、絞り加工、曲げ曲げ戻し加工、リパックテストによる加工性を外観の良否等により目視で判断し、いずれも良好なものを○とし、それ以外を×と評価した。
【0086】
また、密着性の評価は絞り加工、曲げ曲げ戻し加工、リパックテストによる加工後のルーペ観察による剥離状況の5段階評価が、いずれも5、4の良好なものを○と、3の普通のものを△、それ以外を×と評価した。
【0087】
また、耐食性の評価は絞り加工、曲げ曲げ戻し加工、リパックテストによる加工後の耐食性評価の5段階評価が、いずれも5、4の良好なものを○と、3の普通のものを△、それ以外を×と評価した。
【0088】
表1および表2に示す実施例1〜27および比較例1〜8についてこれらの評価を行った。その結果を表1、2に示す。
【0089】
【表1】
Figure 0003780111
【0090】
【表2】
Figure 0003780111
【0091】
(実施例1)
前記表面処理原板に、表1に示すように、金属Cr付着量125mg/m2 、金属クロム換算での水和クロム酸化物付着量17mg/m2 となるような電解クロメート処理を施した後、前記水系カルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂と石炭酸系レゾール型フェノール樹脂からなる樹脂組成物(有機物種別A)をリバースロールコーターで塗布し、乾燥することによって付着量960mg/m2 の第1の樹脂層を形成した。その表面処理鋼板に対し、先に示す条件下で第2の樹脂フィルム層としてポリエステルフィルムをラミネートし、その後、絞り加工、曲げ曲げ戻し加工、リパックテストにより、加工性、密着性、耐食性を評価した。これらの評価結果を、表1に併せて示す。
【0092】
その結果本表面処理鋼板は、フィルムラミネート後の加工性が優れているばかりでなく、加工後の密着性、処理後の耐食性にも優れていることが確認された。
【0093】
(実施例2〜7、比較例1〜3)
これらにおいては、表1、表2に示すように、電解クロメート処理条件を種々に変え、それ以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。これらの評価結果を表1、表2に併記する。
【0094】
表1、表2から明らかなように、下層の金属クロム付着量が、片面あたり30mg/m2 以上、上層の水和クロム酸化物の付着量が5〜30mg/m2 の実施例2〜7はいずれも加工性、密着性、耐食性とも優れていた。
【0095】
これに対し、下層の金属クロム付着量が30mg/m2 未満の比較例1は、耐食性に劣っていた。また上層の水和クロム酸化物の付着量が、5mg/m2 未満の比較例2は、密着性および耐食性が劣っていた。さらに、上層クロム水和酸化物の付着量が30mg/m2 を超えた比較例3は外観が劣化し密着性および耐食性が劣っていた。
【0096】
(実施例8〜11、21、22)
これらにおいてはカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂と石炭酸系レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物(有機物種別A)の付着量を種々に変化させ、それ以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。これらの評価結果を表1、表2に併記する。
【0097】
表1、表2から明らかなように、いずれも、加工性、密着性、耐食性において良好な評価を得た。特に付着量が50〜10000mg/m2 の実施例8〜11は、いずれも、加工性、密着性、耐食性が優れていた。
【0098】
(実施例12〜16、23)
ここにおいては、前記に示すように、第1の樹脂層を構成するカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物の組成あるいは組成比を変化させ、それ以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。これらの評価結果を表1に併記する。
【0099】
表1、表2から明らかなように、実施例12〜16は、加工性、密着性、耐食性が特に優れていた。
【0100】
(比較例4〜7)
比較例4では、従来の技術である第1の樹脂層を形成しないこと以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。また、比較例5では第1の樹脂層としてグラフト重合を行っていない共重合ポリエステル樹脂を用いた(有機物種別H)以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。また、比較例6ではカルボキシルグラフト共重合ポリエステル樹脂のみを第1の樹脂層(有機物種別I)として用いた以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。また、比較例7では第1の樹脂層としてエポキシフェノール樹脂(有機物種別J)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。
【0101】
これらの評価結果を表2に併記する。
【0102】
表2から明らかなように、いずれも耐食性が劣っていた。
【0103】
(実施例17〜19、24、比較例8)
ここにおいては、最表層である第2の樹脂フィルム層の厚みを10μm(実施例17)、50μm(実施例18)、80μm(実施例19)、8μm(実施例24)と変化させ、それ以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。また、比較例8では第2の樹脂フィルム層を形成しないこと以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。これらの評価結果を表1、表2に併記する。
【0104】
表1、表2から明らかなように、実施例17〜19は、加工性、密着性、耐食性が特に優れていた。またフィルムの無い比較例8は耐食性が劣っていた。
【0105】
(実施例20、25〜27)
ここにおいては、Tダイ方式で押出溶融した実施例1と同様の共重合ポリエステル樹脂をそのままラミネートして25μmのフィルム層を形成した。それ以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た(実施例20)。また実施例25〜27ではフィルムを25μmのポリプロピレン(実施例25)、ポリエチレン(実施例26)、ナイロン6(実施例27)に変えた以外は実施例1と同様の操作を行って表面処理鋼板を得た。これらの評価結果を表1、表2に併記する。
【0106】
表1、表2から明らかなように、実施例20は、加工性、密着性、耐食性が特に優れていたのに対し、実施例25〜27は、耐食性においてこれより劣っていた。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、フィルムラミネート後に厳しい加工を施された際にも加工密着性および耐食性に優れ、缶体の薄肉化に伴う加工度の増大に対応することができるものであって、レトルト処理を必要とするような内容物等あらゆる内容物に適用可能な2ピース缶用フィルムラミネート鋼板が提供される。このように本発明では、繁雑な工程を経ることなく、優れた加工密着性および加工耐食性が得られるので、その経済的価値は極めて高い。

Claims (3)

  1. 鋼板と、この鋼板の少なくとも一方の面上に形成され、下層が片面あたり30mg/m以上の付着量を有する金属クロム層で、上層が片面あたり金属クロム換算で5〜30mg/mの付着量を有する水和クロム酸化物層の電解クロメート処理層と、この電解クロメート処理層上に形成された第1の樹脂層と、この第1の樹脂層上に形成された熱可塑性の第2の樹脂フィルム層とを具備し、前記第1の樹脂層はカルボキシル基含有ラジカル共重合性単量体がグラフト重合せしめられた共重合ポリエステル樹脂と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂を主成分とすることを特徴とする加工密着性および耐食性に優れた2ピース缶用フィルムラミネート鋼板。
  2. 前記第1の樹脂層の平均付着量が固形分濃度として50〜10000mg/mであり、その樹脂組成物の主成分はカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体がグラフト重合せしめられた共重合ポリエステル樹脂60〜99重量部と石炭酸及び/又はクレゾール系レゾール型フェノール樹脂1〜40重量部からなることを特徴とする請求項1に記載の加工密着性および耐食性に優れた2ピース缶用フィルムラミネート鋼板。
  3. 前記熱可塑性の第2の樹脂フィルム層が、厚さ10μm以上のポリエステル系樹脂フィルム層であることを特徴とする請求項1または2に記載の加工密着性および耐食性に優れた2ピース缶用フィルムラミネート鋼板。
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