JP2018039226A - 氷雪付着防止シート - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、視認性が要求される構造物(例えば信号機等)に氷雪が付着すると、その視認性が悪化する。光透過性のある構造物(例えば窓等)に氷雪が付着すると、その光透過性が悪化する。
一方で、加熱素子の加熱により構造物に付着する氷雪を溶解し、氷雪の付着を防止するとき、加熱素子により溶解する氷雪を滑落させ易くすることができれば、加熱素子の消費電力が抑えられると共に、上記様々な問題も短時間で解決できる。また、氷雪が加熱素子の加熱により溶解された後に、水滴が付着しにくければ、加熱素子が動作していない間に水滴が凍結し、氷雪が付着しやすくなるという事態も回避される。
<1>
基材と、前記基材上に設けられ、複数の導電性線状体を有する加熱素子と、を備え、
構造物に貼付けたときに露出する露出面における水の接触角が90°以上である氷雪付着防止シート。
<2>
前記構造物に貼り付けたときに露出する露出面における水の滑落角度が20°以下である<1>に記載の氷雪付着防止シート。
<3>
光線透過率が70%である<1>又は<2>に記載の氷雪付着防止シート。
<4>
前記導電性線状体が、金属ワイヤーを含む線状体、又は導電性糸を含む線状体である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の氷雪付着防止シート。
本実施形態に係る氷雪付着防止シート(以下「シート」とも称する)は、基材と、基材上に設けられ、複数の導電性線状体を有する加熱素子と、を備える。そして、シートを被着体である構造物に貼り付けたときに露出するシートの露出面における水の接触角が90°以上である。
このように、本実施形態に係るシートでは、高い光線透過率を有し、かつ加熱素子により溶解する氷雪や、氷雪の溶解後に残る水滴が滑落し易い。
そして、視認性が要求され又は光線透過性を有する構造物に、本実施形態に係るシートを貼付けることで、構造物の機能(視認性、光線透過性)を阻害することなく、構造物への氷雪や水滴の付着を防止し、氷雪や水滴による構造物の機能悪化を防ぐことができる。
温度25℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、測定対象のシートの面に、2mlの純水を滴下し、滴下した純水の接触角を、水接触角計「商品名DAS−100「KRUSS社製」)を用いて、測定する。
シートの露出面における水の滑落角度が20°以下であれば、さらに、氷雪や水滴が滑落し易くなり、氷雪による構造物の機能悪化を防ぐことができる。
温度25℃、50%RHの環境下で、測定対象のシートを、水張りにて傾斜角0°にした試料台(ガラス板)上に載置する。次に、次いで、純水14μLをシートの面に滴下して液滴を形成する。その後、上記試料台を傾斜させてゆき、液滴の後退角が変化したときの試料台の傾斜角を水の滑落角度として求める。
シートの光線透過率が70%以上あれば、構造物の機能(視認性、光線透過性)を阻害することがなくなる。
シートの面抵抗が800Ω/□以下であれば、印加する電圧の低減が容易に実現される。
基材20は、例えば、基材本体22と、表面層24とを有する。表面層24は、シート10の露出面を構成する。
基材本体22としては、樹脂フィルム、ガラスフィルム等の、光線透過性を有するフィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂等の周知の樹脂、又はこれらを2種以上含む混合樹脂のフィルム(シート)が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム等の周知のゴム、又はこれらを2種以上含む混合ゴムのフィルム(シート)も挙げられる。
ガラスフィルムとしては、例えば、ケイ酸塩ガラス、スズリン酸塩ガラス、亜鉛ホウ酸ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミケイ酸ガラス、シリカガラス等の周知のガラスのフィルム(シート)が挙げられる。
プライマー層を構成する成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子紫外線吸収剤としては、紫外線吸収骨格がポリマー構造内に共有結合している構造を有するものであり、重量平均分子量が5,000以上のものが好ましく、より好ましくは10,000以上である。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
また、凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法
等が挙げられる。
これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、接着剤層40および表面層24との密着性向上の観点、及び操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。
表面層24は、シート10の露出面を構成する層であり、表面(基材本体と対面しない側の面)における水の接触角が90°以上である。また、表面層24は、表面における水の接触角が90°以上、かつ水の滑落角度が20°以下であることが好ましい。
そして、表面層24は、上記特性を満たす材料で構成された層が適用される。具体的には、次の通りである。
なお、シリコーン樹脂は、溶剤型、エマルジョン型、及び無溶剤型のいずれであってもよい。
そして、特定組成物の硬化層は、面状態及び硬化性が良好であり、かつ、耐候性に優れたものとなる。
より具体的には、当該シラン系化合物同士の縮合反応が開始するためには、反応開始時に(A)成分及び(B)成分中のアルコキシ基(式(a)中のOR1、及び式(b)中のOR3)が水と反応して脱離し、水酸基に置換される必要がある。そこで、(A)成分及び(B)成分中のアルコキシ基が有するアルキル基(式(a)中のR1、及び式(b)中のR3)を特定の炭素数を有するアルキル基とすることで、当該反応が促進されて未縮合点が少ない架橋密度の高い硬化層が形成されると考えた。そして、当該アルキル基の炭素数を制御することで長期間の屋外暴露後においてもクラックの発生及び進行を抑制(以下、単に「クラック抑制効果」ともいう。)し、また、暴露前後における撥水性の低下が少ない(以下、単に「撥水性維持効果」ともいう。)硬化層を得られることを見出した。
式(a):Si(OR1)p(X1)4−p
〔式(a)中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X1は、ハロゲン原子を表す。R1及びX1が複数存在する場合、複数のR1及びX1は、互いに同一でも、異なっていてもよい。pは0〜4の整数を表す。〕
なお、(A)成分は、1種のみからなる化合物から構成されていてもよく、上記式(a)で表される2種以上の化合物から構成されていてもよい。
R1として選択し得るアルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよいが、直鎖であることが好ましい。
なお、上記の式(a)で表されるシラン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(A)成分としては、前記式(a)中のpが4であるシラン系化合物を含むことが好ましい。
式(b):R2Si(OR3)q(X2)3−q
〔式(b)中、R2は、炭素数1〜22のアルキル基を表す。R3は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X2は、ハロゲン原子を表す。R3及びX2が複数存在する場合、複数のR3及びX2は、互いに同一でも、異なっていてもよい。qは0〜3の整数を表す。〕
なお、(B)成分は、1種のみからなる化合物から構成されていてもよく、上記式(b)で表される2種以上の化合物から構成されていてもよい。
当該アルキル基の炭素数が23を超えると、特定組成物の硬化性、得られる特定組成物から形成される硬化層の撥水性維持効果、及びクラック抑制効果が劣る。また、得られる特定組成物がゲル化し易く、当該特定組成物から形成される硬化層の面状態も悪化する傾向にある。アルキル基の炭素数が4以上であれば、得られる特定組成物から形成される硬化層の表面について、水滴の滑落加速度が大きく、水滴を滑落させる時間を短縮させることができ、撥水性がより優れたものとなる。
R2として選択し得るアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−イコシル基、n−ドコシル基、メチルペンチル基、ペンチルヘキシル基、ブチルペンチル基、2−エチルヘキシルが挙げられ、特定組成物の硬化層の硬化性の観点からメチル基、エチル基が好ましく、また、より良好なクラック抑制効果を得る観点からメチル基がより好ましい。
なお、上記の式(b)で表される3官能シラン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(B)成分としては、前記式(b)中のqが3である3官能シラン系化合物を含むことが好ましい。
金属触媒は、チタン、アルミニウム、及び亜鉛から選ばれる1種以上の金属原子を含有し、触媒作用発現のために光照射を必要としない金属触媒(C)である。
なお、本明細書において、当該「触媒作用発現のために光照射を必要としない金属触媒」とは、(A)成分と(B)成分との縮合反応に対する触媒作用を発現するために光照射を必要としない金属触媒のことを指す。例えば、酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)等の、光照射により電子と正孔を生成することで酸化反応及び還元反応を引き起こすといった、触媒作用発現のために光照射が必要とされる、一般に光触媒と呼ばれるものは除かれる。
なお、特定組成物の硬化層が光触媒を含有する場合には、例えば、光触媒自体が固形物であるため表面粗さが大きくなることによる撥水性の低下や、光触媒の親水性付与効果による撥水性の低下、並びにシラン化合物の重合体の加水分解を促進することによる耐久性の低下といった問題が生じる虞がある。
これらの特定の種類の金属触媒(C)を含むことで、(A)成分と(B)成分との縮合反応を効果的に促進させ、特定組成物の硬化層の硬化性を向上させることができる。
また、(A)成分及び(B)成分と共に(C)成分を含む特定組成物とすることで、比較的低温下(130℃以下)でも硬化反応を進行させることができる。
チタンアルコキシドとしては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド等が挙げられる。
チタンキレートとしては、例えば、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート等のチタンアセチルアセトネート; チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のチタンエチルアセトアセテート; チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のチタントリエタノールアミネート;チタンテトラオクチレングリコネート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコネート)、チタンジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)等のチタンオクチレングリコネート;チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩等が挙げられる。
チタンアシレートとしては、例えば、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムのアセトアセテート錯体としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
アルミニウムのアセチルアセトネート錯体としては、例えば、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレート等が挙げられる。
チタン系触媒としては、チタンキレートが好ましく、チタンエチルアセトアセテート、チタンアセチルアセトネート又はチタンオクチレングリコネートがより好ましく、チタンエチルアセトアセテートが更に好ましく、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)がより更に好ましい。
特定組成物中の(C)成分の含有量は、特定組成物の硬化層の硬化性を向上させる観点、及び、比較的低温下(130℃以下)でも硬化反応を進行させ得る特定組成物とする観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.010〜50.000モル%、より好ましくは0.100〜30.000モル%、更に好ましくは0.150〜20.000モル%、より更に好ましくは0.300〜10.000モル%、より更に好ましくは0.500〜6.000モル%、より更に好ましくは1.000〜3.000モル%である。
特定組成物は、特定組成物の硬化層の硬化性をより向上させる観点から、さらに酸触媒(D)を含むことが好ましい。
特定組成物中に酸触媒(D)を含有することで、(A)成分及び(B)成分が有する反応性官能基の加水分解が促進され、シラン系化合物同士の縮重合反応がより促進され、硬化性に優れた特定組成物の硬化層を形成することができる。
酸触媒(D)としては、(A)成分及び(B)成分の反応性官能基の加水分解を促進させる作用を有する成分であれば特に制限はないが、特定組成物の硬化層の硬化性をより向上させる観点から、塩酸、リン酸、酢酸、ギ酸、硫酸、メタンスルホン酸、臭酸、p−トルエンスルホン酸、及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、塩酸を含むことがより好ましい。
特定組成物中の(D)成分の含有量は、特定組成物の硬化層の硬化性をより向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.001〜1.000モル%、より好ましくは0.005〜0.500モル%、更に好ましくは0.010〜0.100モル%、より更に好ましくは0.020〜0.070モル%である。
加熱素子30は、例えば、一方向に延びた複数の導電性線状体32が、互いに平行に間隔をもって配列された疑似シート構造体で構成されている。より具体的には、加熱素子30は、例えば、直線状に伸びた導電性線状体32が、導電性線状体32の長さ方向と直交する方向に、等間隔で複数配列された疑似シート構造体で構成されている。つまり、加熱素子30は、例えば、導電性線状体32がストライプ状に配列された疑似シート構造体で構成されている。
導電性線状体32の体積抵抗率Rの測定は、次の通りである。まず、後述する方法に従って、導電性線状体32の直径Dを求める。次に、導電性線状体32の両端に銀ペーストを塗布し、長さ40mmの部分の抵抗を測定し、導電性線状体32の抵抗値を求める。そして、直径Dの柱状の導電性線状体32と仮定して、導電性線状体32の断面積を算出し、これに上記の測定した長さを乗じて体積とする。得られた抵抗値を、この体積で除して、導電性線状体32の体積抵抗率Rを算出する。
特に、導電性線状体32がカーボンナノチューブを含む線状体である場合、導電性線状体32の直径を1μm〜125μmにすると、加熱素子30の製造の際に、導電性線状体32が切れることが抑制される。また、導電性線状体32の一本一本が肉眼で視認し難くなるため、加熱素子30の光線透過性が向上する。
なお、隣り合う2つの導電性線状体32の間隔とは、導電性線状体32を配列させていった方向に沿った長さであって、2つの導電性線状体32の対向する部分間の長さである(図2参照)。間隔Lは、導電性線状体32の配列が不等間隔である場合には、すべての隣り合う導電性線状体32同士の間隔の平均値であるが、間隔Lの値を制御しやすくする観点、光線透過性の均一性の確保の観点から、導電性線状体32は加熱素子30において、略等間隔に配列されていることが好ましい。
金属ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、鋼、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、はんだ等でめっきされたものであってもよく、グラファイト等の炭素材料又はポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。
導電性糸としては、導電性繊維(金属繊維、炭素繊維、イオン導電性ポリマーの繊維等)を含む糸、表面に金属(銅、銀、ニッケル等)をめっき又は蒸着した糸、金属酸化物を含浸させた糸等が挙げられる。
カーボンナノチューブ線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。このような製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブが捻られた構造を有しない線状体である。このほか、カーボンナノチューブの分散液から、紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、例えば、米国公開公報US 2013/0251619(日本国特開2011−253140号公報)に開示されている方法により行うことができる。カーボンナノチューブ線状体の直径の均一さが得られる観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが望ましく、純度の高いカーボンナノチューブ線状体が得られる観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が編まれた線状体であってもよい。
複合線状体の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛等の金属単体、これら金属単体の少なくとも一種を含む合金(銅−ニッケル−リン合金、銅−鉄−リン−亜鉛合金等)が挙げられる。
接着剤層40は、接着剤を含む層である。基材20と加熱素子30との間に接着剤層40を介在させたシート10とすることで、接着剤層40により、シート10の構造物への貼り付けが容易となる。具体的には、上述したように、シート10において、加熱素子30(その複数の導電性線状体32)から露出する接着剤層40により、シート10と構造物との接着が容易となる。
エネルギー線による硬化の条件は、用いるエネルギー線によって異なるが、例えば、紫外線照射により硬化させる場合、紫外線の照射量は、10mJ/cm2〜3,000mJ/cm2、照射時間は1秒〜180秒であることが好ましい。
なお、当該アクリル系共重合体は、単量体成分(a1’)および単量体成分(a2’)以外のその他の単量体成分(a3’)に由来する構成単位(a3)をさらに含んでいてもよい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有物モノマーとしては、例えばジアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
シアノ基含有モノマーとしては、例えばアクリロニトリル等が挙げられる。
エネルギー線硬化性の成分としては、例えばエネルギー線が紫外線である場合には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の化合物であって、一分子中に紫外線重合性の官能基を2つ以上有する化合物等が挙げられる。
エネルギー線硬化性の成分は、単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
硬化性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、エポキシ基、エーテル基、エステル基、エチレン性不飽和結合を有する基等が挙げられる。これら硬化性官能基を有する化合物としては、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。
エネルギー線硬化性官能基を有する化合物により表面修飾された無機充填剤であると、例えば、シート10を構造物に貼付けた後に硬化した粘着剤層が強靭となる。これにより、構造物に貼付けたシート10に吸盤を貼り付けて、シート10をはがす際等に、硬化後の粘着剤層が破壊することを回避することが容易となる。
なお、粘着剤層が表面修飾された無機充填剤を含有する場合には、粘着剤層は、別途エネルギー線硬化性の成分を含んでいることが好ましい。
なお、無機充填剤の平均粒径は、デジタル顕微鏡により無機充填剤を20個観察し、無機充填剤の最大径と最小径の平均径を直径として測定し、その平均値とする。
本実施形態に係るシート10の製造方法は、特に限定されない。シート10は、例えば、次の工程を経て製造される。
まず、基材20の上に、接着剤層40の形成用組成物を塗布し、塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて、接着剤層40を作製する。次に、基材20と接着剤層40との積層体(その接着剤層40)上に、導電性線状体32を配列しながら配置して、加熱素子30を形成する。例えば、ロール部材の外周面に、基材20と接着剤層40との積層体を配置した状態で、ロール部材を回転させながら、接着剤層40上に導電性線状体32を螺旋状に巻き付ける。その後、螺旋状に巻き付けた導電性線状体32の列をロール部材の軸方向に沿って切断する。これにより、加熱素子30を形成すると共に、接着剤層40上に配置する。そして、基材20と接着剤層40と加熱素子30の積層体を、ロール部材から取り出す。この方法によれば、例えば、ロール部材を回転させながら、導電性線状体32の繰り出し部をロール部材の軸と平行な方向に沿って移動させることで、加熱素子30における隣り合う導電性線状体32の間隔Lを調整することが容易となる。
本実施形態に係るシート10は、構造物に適用して使用される。このような適用の具体的な例として、上述のようにシート10が接着剤層40を有する場合には、シート10は、構造物に対して加熱素子30が設けられた側の面を対面させて、加熱素子30における「複数の導電性線状体」の間から露出する接着剤層40の接着力によって、構造物に貼付けて使用される。接着剤層40が硬化性を有する場合、シート10を構造物に貼付けた後、接着剤層40を硬化する。なお、構造物に貼付けたシート10では、基材20及び接着剤層40によって、加熱素子30が保護される。
一方、光線透過性を有する構造物としては、屋外において使用又は設置する構造物であって、例えば、窓(屋外観賞用の窓、ディスプレイ用の窓等)、太陽光発電パネルの光入射側の透明基板等が例示できる。
そして、これらの構造物にシート10を貼付けることで、構造物の機能(視認性、光線透過性)を阻害することなく、構造物への氷雪の付着を防止し、氷雪による構造物の機能悪化を防ぐことができる。
このため、光源として発光ダイオードを有する構造物に、本実施形態に係るシート10を適用することが有効である。また、光源を有さない構造物に、本実施形態に係るシート10を適用することも有効である。
本実施形態に係るシート10は、上記形態に限定されず、変形、又は改良してもよい。以下、本実施形態に係るシート10の変形例について説明する。以下の説明では、本実施形態に係るシート10で説明した部材と同一であれば、図中に、同一符号を付してその説明を省略または簡略する。
本実施形態に係るシート10は、例えば、図5に示すように、シート10が接着剤層40を有する場合において、加熱素子30の表面(接着剤層40と対面しない側の面)上に剥離層44を有するシート11であってもよい。
第1の変形例であるシート11では、シート11を構造物に貼付ける前において、剥離層44で加熱素子30及び加熱素子30(その複数の導電性線状体32)から露出する接着剤層40を保護し、取扱いによる加熱素子30の破損、及び接着剤層40の接着能の低下を抑制できる。一方で、剥離層44を剥離することで、シート11を構造物に貼付けることができる。
剥離基材としては、例えば、紙基材、紙基材等に熱可塑性樹脂(ポリエチレン等)をラミネートしたラミネート紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。紙基材としては、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー(例えば、ブタジエン系樹脂、イソプレン系樹脂等)、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
剥離層44の剥離剤層の厚さは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層の厚さは、0.01μm〜2.0μmが好ましく、0.03μm〜1.0μmがより好ましい。
剥離基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、プラスチックフィルムの厚さは、3μm〜150μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましい。
本実施形態に係るシート10は、例えば、図6に示すように、シート10が接着剤層40を有する場合において、加熱素子30の表面(接着剤層40と対面しない側の面)上に接着剤層46及び剥離層44を順次積層したシート12であってもよい。
第2の変形例であるシート12では、シート12を構造物に貼付ける前において、接着剤層46及び剥離層44で加熱素子30を保護し、取扱いによる加熱素子30の破損を抑制できる。一方で、剥離層44を剥離することで、接着剤層46によりシート12を構造物に貼付けることができる。
接着剤層40と接着剤層46との厚さは、各々、3μm〜150μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましい。また、接着剤層40と接着剤層40との厚さの合計値(接着剤層の総厚さ)は、10μm〜300μmが好ましく、20μm〜200μmであることがより好ましい。
また、本形態において、接着剤層40を省略した構成としてもよい。この場合には、加熱素子30における整列した導電性線状体32同士の間で基材20と接着剤層46とが接着し、加熱素子30及び接着剤層46が基材20上に固定される。
本実施形態に係るシート10は、例えば、図7に示すように、加熱素子30の導電性線状体32が周期的に湾曲又は屈曲したシート13であってよい。具体的には、導電性線状体32は、例えば、正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波等の波形状であってもよい。つまり、加熱素子30は、例えば、一方に延びた波形状の導電性線状体32が、導電性線状体32の延びる方向と直交する方向に、等間隔で複数配列された構造としてもよい。
なお、図7は、一方に延びた波形状の導電性線状体32が、導電性線状体32の延びる方向と直交する方向に、等間隔で複数配列された加熱素子30を有するシート15が示されている。
本実施形態に係るシート10は、例えば、図8に示すように、配列された複数の導電性線状体32からなる疑似シート構造体を複数積層した加熱素子30を有するシート14であってもよい。複数の疑似シート構造体は、互いの導電性線状体32を平行に積層してもよいし、交差させて積層させてもよい。一方の疑似シート構造体において平行に配列され、交わることのない導電性線状体32同士が、他方の疑似シート構造体の導電性線状体32によっていわば橋渡しされ、これらの間の電気的な接続を生じさせることができる観点からは、互いの導電性線状体32を交差させて積層させることが好ましい。
ここで、一方の疑似シート構造体における導電性線状体32が、他方の疑似シート構造体における間隙部分(隣り合う導電性線状体32同士の間隔の部分)と重なり、間隙部分が塞がれることによって、光線透過性が低下する可能性があるが、L/Dの値を上述した範囲内で調整することで、容易に十分な光線透過性を確保することができる。
なお、図8には、互いの導電性線状体32を交差させて、2つの疑似シート構造体を積層した加熱素子30を有するシート14が示されている。
本実施形態に係るシート10は、例えば、図9に示すように、加熱素子30をシート面方向(シート表面に沿った方向)に複数配列したシート15であってもよい。複数の加熱素子30は、互いの導電性線状体32を平行に配列してもよいし、交差させて配列させてもよい。
なお、図9には、互いの導電性線状体32を平行に配列させて、2つの加熱素子30を配列したシート15が示されている。
(1)特定組成物の調製
次に示す種類及び配合量比(有効成分の比率であり、テトラエトキシシランのモル数を100とした場合におけるそれぞれの成分のモル数の比率(モル%)により記載した。)の各成分を配合し、エタノールを加えて希釈し、有効成分濃度1.8Mの特定組成物の溶液を調製した。
・テトラエトキシシラン 100モル%
・ヘキシルトリエトキシシラン 50.0モル%
・チタンジイソプロポキシビス(エチルアセテート)、マツモトファインケミカル(株)製、「オルガチックス TC−750」 3.000モル%
・塩酸 0.059モル%
基材本体として、片面にプライマー層が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、製品名「コスモシャインA−4100」、厚さ50μm)を用いた。
この基材本体のプライマー層上に、上記のとおり調整した特定組成物の溶液を、マイヤーバーを用いて、塗布して塗膜を形成した。次いで、当該塗膜を80℃で2分間乾燥し、厚さ0.7μmの表面層を有する基材を作製した。
直径3cmのゴムロールに、厚さ38μmの第一の剥離フィルム上に厚さ10μmのアクリル粘着剤層を設けた積層シートをアクリル粘着剤層が露出するように巻き付けた。そして、ゴムロールの円周方向における積層シートの両端部を両面テープで固定した。一本の金属ワイヤーからなる導電性線状体(金属種:タングステン、株式会社トクサイ製、TWG−B、直径:10μm、体積抵抗率5.29×10−8Ω・m)を、ゴムロールの端部付近に位置する積層シートのアクリル粘着剤層表面に付着させた上で、導電性線状体を繰り出しながらゴムロールで巻き取り、少しずつゴムロールをロール軸と平行な方向に等速移動させていき、導電性線状体が等間隔でらせんを描きながらゴムロールに巻きつくようにした。さらに、導電性線状体が設けられた粘着剤層の表面及び導電性線状体を覆うように、第二の剥離フィルムを貼り合わせた。次に、ロール軸と平行に、第一の剥離フィルム、粘着剤層、及び導電性線状体を第二の剥離フィルムごと切断し、第一の剥離フィルム、粘着剤層、導電性線状体が配列された加熱素子、及び第二の剥離フィルムをこの順で有する積層体を得た。導電性線状体は等間隔に配列され、各間隔は0.5mmであった。
次に、この積層体から、第二のフィルムを剥がし、加熱素子、及び加熱素子(その導電性線状体)から露出した粘着剤層を覆うように、上記の基材を、表面層が設けられていない面を対向させて貼付けた。
基体として、厚さ38μmの剥離フィルム「SP−PET381130(リンテック(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、氷雪付着防止シートを作製した。
基体として、剥離処理がされていない厚さ50μmのPETフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、氷雪付着防止シートを作製した。
各例で得られた氷雪付着防止シートの水の接触角、水の滑落角度、光線透過率及び面抵抗について、既述の方法に従って、測定した。また、各例で得られた氷雪付着防止シートの加熱素子について、導電性線状体の直径D及び間隔Lを既述の方法に従って、測定した。結果を表1に示す。
各例で得られた氷雪付着防止シートを50mm×100mmの長方形に裁断し、2mmの厚さのフロートガラス板に貼り付けて試料を得た。裁断は、長方形の100mmの長さの辺の方向と導電性線状体が伸びている方向が一致するようにした。この試料を−10℃環境に放置した。試料が−10℃以下になった事を確認し、水滴をヒーター表面に14ml垂らした。水滴が凍った後、試料を20°、60°、90°の角度に傾け、氷雪を付着させた状態で、24V−2A、5分の条件でシートの加熱素子に通電し、電圧を印加した。そして、電圧印加後、表面に水滴が付着しているかを確認し、各角度について下記基準により評価した。
A:通電完了直後に氷雪または水滴が付着していなかった。
B:通電完了直後に氷雪または水滴が付着していた。
特に、水の接触角90°以上、かつ水の滑落角度が20°以下の氷雪付着防止シートは、水の接触角90°以上、かつ水の滑落角度が20°超えの氷雪付着防止シートに比べ、加熱素子により溶解する氷雪や水滴が滑落し易いことがわかる。
20 基材
22 基材本体
24 表面層
30 加熱素子
32 導電性線状体
34 剥離層
40 接着剤層
42 給電部
44 剥離層
46 接着剤層
Claims (4)
- 基材と、前記基材上に設けられ、複数の導電性線状体を有する加熱素子と、を備え、
構造物に貼付けたときに露出する露出面における水の接触角が90°以上である氷雪付着防止シート。 - 前記構造物に貼り付けたときに露出する露出面における水の滑落角度が20°以下である請求項1に記載の氷雪付着防止シート。
- 光線透過率が70%である請求項1又は請求項2に記載の氷雪付着防止シート。
- 前記導電性線状体が、金属ワイヤーを含む線状体、又は導電性糸を含む線状体である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の氷雪付着防止シート。
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