JP2018034610A - 走行制御システム、及び走行制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】後続列車との位置関係について考慮し列車遅れを抑止する走行制御システムを提供する。
【解決手段】走行制御システムは、地上制御装置101と、線路上を走行する複数の列車の各々に搭載された車上制御装置と、を備える走行制御システムであって、車上制御装置は、第1の送信部を備え、地上制御装置は、受信部305と、予測部306と、生成部311と、第2の送信部309と、を備える。受信部は、車上制御装置から、列車の位置と速度とを受信する。予測部は、列車の位置と速度とに基づいて、制御対象となる列車の運行ダイヤと、線路上を走行する制御対象となる列車の後ろの後続列車の運行ダイヤと、を予測する。生成部は、予測した運行ダイヤに従って制御対象となる列車が線路を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した、走行計画を生成する。第2の送信部は、走行計画を、列車に搭載された車上制御装置に送信する。
【選択図】図3
【解決手段】走行制御システムは、地上制御装置101と、線路上を走行する複数の列車の各々に搭載された車上制御装置と、を備える走行制御システムであって、車上制御装置は、第1の送信部を備え、地上制御装置は、受信部305と、予測部306と、生成部311と、第2の送信部309と、を備える。受信部は、車上制御装置から、列車の位置と速度とを受信する。予測部は、列車の位置と速度とに基づいて、制御対象となる列車の運行ダイヤと、線路上を走行する制御対象となる列車の後ろの後続列車の運行ダイヤと、を予測する。生成部は、予測した運行ダイヤに従って制御対象となる列車が線路を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した、走行計画を生成する。第2の送信部は、走行計画を、列車に搭載された車上制御装置に送信する。
【選択図】図3
Description
本発明の実施形態は、走行制御システム、及び走行制御装置に関する。
従来から、列車が走行している際に、先行列車に近接した場合に、運転保安システムにより自列車に保安ブレーキを作動させる技術が提案されている。このような技術においては、自列車に遅れが生じたりする可能性がある。
そこで、先行列車の走行を予測して、自列車を走行させることで、自列車の加減速を抑止する技術が提案されている。
しかしながら、従来技術においては、先行列車との位置関係による、自列車の加減速制御に留まり、後続列車との位置関係については考慮していなかった。
実施形態の走行制御システムは、地上制御装置と、線路上を走行する複数の列車の各々に搭載された車上制御装置と、を備える走行制御システムであって、車上制御装置は、第1の送信部を備え、地上制御装置は、受信部と、予測部と、生成部と、第2の送信部と、を備える。第1の送信部は、車上制御装置が搭載された列車の位置と速度とを地上制御装置に送信する。受信部は、複数の列車の各々に搭載された車上制御装置から、当該車上制御装置が搭載された列車の位置と速度とを受信する。予測部は、受信部が受信した列車の位置と速度とに基づいて、制御対象となる列車の運行ダイヤと、線路上を走行する制御対象となる列車の後ろの後続列車の運行ダイヤと、を予測する。生成部は、予測部が予測した運行ダイヤに従って制御対象となる列車と、後続列車と、が走行した場合における、制御対象となる列車と後続列車との位置関係に基づいて、制御対象となる列車が線路を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した、当該線路上の位置の変化に従った速度を表した走行計画を生成する。第2の送信部は、生成部が生成した走行計画を、制御対象となる列車に搭載された車上制御装置に送信する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における列車走行管理システムの構成を例示した図である。図1に示される列車走行管理システムは、地上システム100と、列車毎に設けられている車上システム150と、から構成されている。
図1は、第1の実施形態における列車走行管理システムの構成を例示した図である。図1に示される列車走行管理システムは、地上システム100と、列車毎に設けられている車上システム150と、から構成されている。
地上システム100は、地上制御装置101と、運行管理システム102と、ATC地上装置103と、地上基地局105a、105b、105cと、を備えている。これらの構成は、地上ネットワーク110を介して接続されている。
運行管理システム102は、必要に応じて地上制御装置101に対して、運行ダイヤを送信する。
ATC地上装置103は、軌道回路を構成している、線路180のレールを介して閉そく区間毎に列車が存在するか否かを検知し、検知結果をATC信号として、レールを介して列車内の(図示しない)ATC車上装置に送信する。また、ATC地上装置103は、各列車に対して、前方の先行列車までの位置に関する情報(例えば先行列車までの閉そく区間数など)を、レールを介して送信する。
また、ATC地上装置103は、ATC車上装置からの情報に基づいた、進路構成情報、保守ブレーキパターンの停止位置情報、臨時速度制限情報、故障情報などの情報を、地上制御装置101に送信する。
地上基地局105a、105b、105cは、線路180に沿って設置された無線基地局であって、線路180を走行する列車(例えば、列車170a、170b)との間で情報を送受信する。
列車(例えば、列車170a、170b)の各々に設けられている車上システム150には、車上制御装置151が含まれており、列車(例えば、列車170a、170b)に関する様々な制御を行う。
図2は、第1の実施形態の列車170aに搭載された車上システム150の構成例を示した図である。図2に示されるように、車上システム150は、車上制御装置151と、速度検知装置201と、位置検知装置202と、ATC車上装置203と、を備えている。
速度検知装置201は、車軸に取り付けた速度発電機などの出力信号を処理して列車170aの速度を算出し、速度情報として、車上制御装置151に送信する。
位置検知装置202は、速度検知装置201により検出された速度情報を積算して、駅からの移動距離を算出するとともに、地上の定点に設置された地上子から検出された地上子信号に基づいて、移動距離に基づく位置情報を調整することで、列車170aの位置情報を算出する。本実施形態では、位置情報として、線路180上の起点地点からの距離を示したキロ程を算出するが、列車170aの位置を示す情報であれば良い。そして、位置検知装置202は、算出した位置情報を、車上制御装置151に送信する。
なお、本実施形態は、列車170aの速度情報や位置情報を算出する構成として、速度検知装置201や位置検知装置202を適用する例について説明するが、これらの構成に制限するものではなく、列車170aの走行状態を検出できれば、どのような装置・システムを利用しても良い。例えば、列車170aの位置情報を検出する装置として、GPS受信機を用いても良い。
ATC車上装置203は、運転保安システムの一部であり、ATC地上装置103から受信した、前方の先行列車までの位置に関する情報に基づいて、未開通進路への進入防止や先行列車への衝突を防止する。例えば、ATC車上装置203は、先行列車の手前(外方)に停止するための保守ブレーキパターンを生成する。
保守ブレーキパターンは、先行列車の手前に停止するために、列車170aの位置に対する速度が、許容された速度(照査速度)の範囲か否かを照合するための情報とする。
ATC車上装置203は、速度検知装置201による速度情報、位置検知装置202による位置情報に基づいて、列車170aの速度が、現在の列車170aの位置に対する保守ブレーキパターンの照査速度を超えたか否かを判断する。ATC車上装置203は、照査速度を超過したと判定した場合、保安ブレーキを作動させて列車170aを停車させる。また、列車170aの速度が、照査速度を所定値より下回っていた場合、保安ブレーキを解除する。例えば、先行列車が次の閉そく区間に移動し、ATC車上装置203は、運転曲線が進行方向に移動するように更新した場合に、保安ブレーキが解除され、力行可能となる。
車上制御装置151は、路線データベース251と、車両データベース252と、情報送信部253と、情報受信部254と、ノッチ情報取得部255と、ATO機能部256と、を備えている。車上制御装置151は、速度検知装置201から速度情報、位置検知装置202から位置情報を取得する。
車両データベース252は、列車170aの車両に相当する車両データを記憶する。車両データとしては、列車長、列車重量などの他、編成の引張力特性テーブルおよび制動力特性テーブル(列車速度に対応した引張力または制動力の特性を定義したテーブル)、列車力行時の力行電流特性テーブルや制動時の回生電流テーブル(列車速度に対応した編成の力行電流または回生電流の特性を定義したテーブル)が含まれている。
路線データベース251は、走行経路上の勾配、曲線、トンネル、速度制限などの路線データを記憶している。
ノッチ情報取得部255は、列車170aの速度を制御するためのノッチ情報を取得する。
情報送信部253は、地上基地局105aを介して、地上制御装置101に対して、車上制御装置151が搭載された列車170aの速度情報、位置情報、及びノッチ情報をリアルタイムに送信する。
情報受信部254は、地上基地局105aを介して、地上制御装置101から、列車170aを含む列車群のダイヤ情報や、列車170aを走行制御するための列車走行指令情報を、リアルタイムに受信する。受信したダイヤ情報、及び列車走行指令情報は、ATO機能部256に受け渡される。
ATO機能部256は、取得したダイヤ情報、列車走行指令情報を参照して、列車170aの自動運転操作(力行/ブレーキ指令の出力)を行う。これにより、列車170aが走行する。
列車走行指令情報としては、例えば、列車170aが存在する位置に対応する速度など、当該線路180上の位置の変化に従った速度が表された車両の走行計画の一種である、運転曲線が考えられるが、列車170aの走行を指示できる(自動運転制御できる)情報であれば他の情報であっても良い。
なお、ATO機能部256は、地上制御装置101と通信ができない状況においても、取得済みのダイヤ情報、路線データベース251に記憶された路線データ、及び車両データベース252に記憶された車両データ等に基づいて、列車170aの走行計画となる運転曲線を生成しても良い。
列車170aの走行を開始する際の手順について説明する。まず、列車170aの始発駅における出発準備として、運転士が車上制御装置151に列車番号を設定する。車上制御装置151が、列番情報を自動的に取得し、設定するようにしても良い。車上制御装置151に列車番号が設定された場合に、車上制御装置151は、地上制御装置101に、列車走行指令情報の送信要求を行う。地上制御装置101は、ダイヤ情報に従って生成した運転曲線を、列車走行指令情報として車上制御装置151に送信する。その後、運転士が、出発時刻以降に出発ボタンを押下した場合に、車上制御装置151のATO機能部256が自動運転を開始する。
次に地上制御装置101を含めた地上システムについて説明する。図3は、第1の実施形態の地上システムの各構成を例示した図である。
運行管理システム102は、運行ダイヤデータベース351を備えている。運行管理システム102は、運行ダイヤデータベース351に記憶された運行ダイヤで示されたダイヤ情報を、地上制御装置101等に送信する。
地上基地局群105(地上基地局105a〜地上基地局105c)は、それぞれ受信部361と、送信部362と、を備え、列車170a〜170bと、地上制御装置101と、の間で情報の送受信を行う。
例えば、受信部361は、列車170a〜170b、又は地上制御装置101から、情報を受信する。送信部362は、列車170a〜170b、又は地上制御装置101に対して、受信部361が受信した情報を送信する。さらに、地上基地局群105は、一方の列車から受信した情報を、他方の列車に送信しても良い。
地上制御装置101は、路線データベース301と、車両データベース302と、制御データベース303と、運行履歴データベース304と、受信部305と、運行予測部306と、判定部307と、運転曲線生成部308と、送信部309と、を備えている。
路線データベース301は、線路180の走行経路上の勾配、曲線、トンネル、速度制限などの路線データを記憶している。
車両データベース302は、線路180を走行する各列車の車両に相当する車両データを記憶する。
制御データベース303は、閉そく制御条件、連動制御条件、信号制御条件などの制御条件を記憶する。
運行履歴データベース304は、線路180を走行していた列車の走行履歴を記憶する。例えば、運行履歴データベース304は、過去の運行中の車両故障などに関する故障原因と、回復までに要した時間と、を履歴として記憶する。
受信部305は、地上基地局105a、105b、105cを介して、線路180上の各列車の各々に搭載された車上制御装置151から、当該車上制御装置151が搭載された列車の速度情報、位置情報、及びノッチ情報を受信する。
また、受信部305は、運行管理システム102から、運行ダイヤデータベース351に格納されていた各列車のダイヤ情報を受信する。また、運行管理システム102上でダイヤ情報が変更された場合、受信部305は、変更されたダイヤ情報を受信する。
ダイヤ情報には、例えば、線路180を走行する予定の列車毎の列車番号、運用車両種別、上り・下りの運転方向や走行区間、各駅における到着時刻、出発時刻、使用番線が含まれている。
なお、ダイヤ情報は、当日実施予定の運行ダイヤだけでなく、既に列車が走行済みの区間の実績ダイヤの情報も含まれてもよい。実績ダイヤの情報は、運行履歴データベース304に格納される。
また、受信部305は、ATC地上装置103から、地上ATCモニタ情報を受信する。地上ATCモニタ情報には、進路構成情報や保守ブレーキパターンの停止位置情報、臨時速度制限情報、故障情報などの情報が含まれている。
運転曲線生成部308は、生成部311と、選択部312と、を備え、運行ダイヤ通りに運行している場合、運行管理システム102から受信したダイヤ情報に基づいて、運行ダイヤに従って走行するための各列車の運転曲線を生成する。
本実施形態の運転曲線生成部308は、ダイヤ情報の予定出発時刻、予定到着時刻から各駅間での運行ダイヤ上の駅間走行時間を算出し、駅間走行時間で列車を走行させる運転曲線を生成する。運転曲線生成部308は、既に提案されている動的計画法のアルゴリズムを用いて駅間走行時間分を所定の誤差範囲内とした上で消費エネルギーが最小となるように、運転曲線を生成しても良い。さらに、運転曲線生成部308は、駅間最高速度を所定の低減幅で低減させてゆき、繰返し計算により、駅間走行時間が所定の誤差範囲内となる運転曲線を生成するアルゴリズムを用いても良い。このように、運転曲線を生成するために、種々の運転曲線作成アルゴリズムを利用しても良い。
より詳細な例としては、運転曲線生成部308は、運行管理システム102から取得したダイヤ情報から、運転曲線の生成対象となる対象列車の列車番号(または固有の列車IDなどでも良い)をキーとして、対象列車のダイヤ情報を抽出する。そして、運転曲線生成部308は、ダイヤ情報に含まれている運用車両種別の情報から、運用に供される車種を判断し、車両データベース302から該当する車両の車両データを取得する。さらに、運転曲線生成部308は、路線データベース301から走行経路上の勾配、曲線、トンネル、速度制限などの路線データを取得する。運転曲線生成部308は、取得した車両データ、路線データ、及びダイヤ情報に基づいて、対象列車の運転曲線を生成する。
判定部307は、運転曲線生成部308が再び運転曲線の生成が必要か否かを判定する。例えば、判定部307は、受信部305が受信した列車情報(位置情報、速度情報、ノッチ情報)に基づいて、遅延が生じたか否かの判定を行う。遅延が生じた原因としては、例えば事故等が考えられる。
運行予測部306は、判定部307の判定結果から、事故等により列車の遅れが生じていると判定された場合に、各列車からリアルタイムで受信した速度情報、位置情報、ノッチ情報、ダイヤ情報や、制御データベース303に格納された閉そく制御条件、連動制御条件、信号制御条件などの制御条件に基づいて、ATCなどの運転保安システムの動作を考慮した、列車群の運行シミュレーションを行う。本実施形態の運行予測部306は、各列車の所定の時間毎の線路上の位置まで具体的に予測し、例えば、運転曲線自体を予測しても良い。
例えば、運行予測部306は、受信部305が受信した列車群の位置情報と速度情報とに基づいて、(制御対象となる列車の前を走行している)先行列車の運行ダイヤと、制御対象となる列車の運行ダイヤと、制御対象となる列車の後ろを走行している後続列車の運行ダイヤと、を予測する。先行列車は、例えば、事故等に巻き込まれたために遅延が生じた先頭の列車が考えられる。
運行予測部306は、先行列車の運行ダイヤとして、先行列車が存在していると予測される地点から、所定の加速度(例えば、先行列車が出力可能な最大加速度)で加速して走行したと仮定した場合の、当該先行列車の運行ダイヤを予測してもよい。判定部307による判定をリアルタイムに所定時間毎に行い、当該判定結果に応じて運行予測部306が予測を行うことで、当該予測がはずれた場合でも、次の判定時に修正可能とする。
また、運行予測部306は、運行履歴データベース304に格納されている列車の運行履歴に基づいて、現在の状況に近い過去の履歴を参照して、各列車の運行ダイヤを予測しても良い。
運転曲線生成部308の生成部311は、運行予測部306が予測した運行ダイヤに従って列車群が走行した場合の、制御対象となる列車と、その前後で走行している列車との位置関係に基づいて、制御対象となる列車が線路180を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した運転曲線を複数生成する。
例えば、生成部311は、運行予測部306が予測した運行ダイヤに従って、制御対象となる列車と、先行列車と、を走行させた場合における、制御対象となる列車と先行列車との位置関係に基づいて、制御対象となる列車が線路180を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した運転曲線を生成する。
他の例としては、生成部311は、後続列車が、制御対象となる列車の遅れの影響を受ける可能性がある位置に存在する場合に、運行予測部306が予測した運行ダイヤに従って、制御対象となる列車と、後続列車と、を走行させた場合に、制御対象となる列車と後続列車との位置関係に基づいて、後続列車に遅れを生じさせないように、制御対象となる列車が線路180を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した運転曲線を生成する。
選択部312は、生成部311が複数の運転曲線を生成した場合に、当該複数の運転曲線のうち、制御対象の列車に送信する運転曲線を選択する。また、選択部312が運転曲線を選択する際に、判定部307が複数の運転曲線の各々について後続列車に遅れを生じさせるか否かの判定を行う。選択部312は、判定部307の判定結果から、後続列車に遅れを生じさせないように、後続列車との位置関係を考慮した運転曲線を選択する。また、選択部312は、位置関係だけでなく、列車の消費電力を考慮して、運転曲線を選択しても良い。
送信部309は、選択部312により選択された運転曲線で示された列車走行指令情報を、制御対象の列車に送信する。また、送信する列車走行指令情報は、列車の走行計画が表された情報であればよく、例えば、運転曲線自体であっても良い。
図4は、本実施形態の運転曲線生成部308の運転曲線の生成手法の第1の例を示した図である。図4に示される例では、説明を容易にするために、先行列車401と、制御対象となる列車402とを、運転曲線451に従って走行する計画であったとする。しかしながら、先行列車401が、時刻t0において、何らかの理由で駅間の閉そく区間k内の位置411で停止したものとする。この場合、運転曲線451での走行に対して遅れが生じる。これに対して、後続の列車402は、時刻t0において位置421で運転曲線451上を走行している。
後続の列車402は、ATC地上装置103から先行列車401に関する情報を受信した場合に、ATC車上装置203は、先行列車401が停車している閉そく区間kの進行反対側の閉そく区間(k+1)と閉そく区間kの境界431を、速度0km/hとなる起点として、先行列車401と接触することを抑止する保守ブレーキパターン461を生成する。そして、列車402の位置に対応する速度が保守ブレーキパターン461を超過した場合、列車402では、保安ブレーキが自動的に作動し、当該保守ブレーキパターン461に従って減速が行われる。
先行列車401は、停車原因が解消した後、新たに生成した運転曲線452に従って加速し、時刻t1で位置412に到達する。時刻t1において、先行列車401は、閉そく区間kから閉そく区間(k−1)に遷移した場合に、列車402のATC車上装置203は、保守ブレーキパターン461から、保守ブレーキパターン462に変更する。
列車402は、運転曲線451上を走行していた場合、保守ブレーキパターン461に抵触した時に、減速が行われる。例えば、位置422に列車402が存在する時刻t1で、保守ブレーキパターン461から保守ブレーキパターン462に変化する。このため、列車402の保安ブレーキが解除され、保守ブレーキパターン462に抵触するまで再度加速できる。
これに対して、運行予測部306が、時刻t0で、先行列車401が時刻t1で閉そく区間kから閉そく区間(k−1)に移動することを予測できた場合、運転曲線生成部308が、運転曲線451の代わりに、列車402の速度を予め一時低減させて、時刻t1以降に保守ブレーキパターン461で示された位置に対応する速度に到達する運転曲線453を再生成し、送信部309が、列車402の車上システム150に送信する。この場合、列車402が、運転曲線453に従って走行することで、保守ブレーキパターン461に抵触せずに、時刻t1で元の運転曲線451と同じ速度で走行を実現できる。
換言すれば、再生成された運転曲線453で走行せず、元の運転曲線451で走行した場合に、時刻t1で保守ブレーキパターン461に従って減速するため、元の運転曲線451で示された速度に復帰するためには再加速が必要となる。この場合に再加速が必要な分だけ遅れが生じる。
これに対して、再生成された運転曲線453で走行した場合に、時刻t1の時点で、列車402は、元の運転曲線451で示された位置に対応する速度で走行している。本実施形態では、再生成された運転曲線453で列車402を走行させることで、最小限の遅れで元の運転曲線451と同様の走行に復帰できる。
図4に示される例では、先行列車401と、列車402との位置関係に基づいて、運転曲線を生成する例について説明したが、列車402の後続の列車も遅延の影響が生じる可能性がある。
図5は、本実施形態の運転曲線生成部308の運転曲線の生成手法の第2の例を示した図である。図5に示される例では、図4と同様に、先行列車501と、制御対象となる列車502と、列車502の後続列車503とは、運転曲線451に従って走行する計画であったものとする。しかしながら、先行列車501が、時刻t0において、何らかの理由で駅間の閉そく区間k内の位置411で停止したものとする。この場合、運転曲線451での走行に対して遅れが生じる。これに対して、制御対象となる列車502は、時刻t0において位置421で運転曲線451上を走行している。そして、列車502の後方の後続列車503は、時刻t0において位置520で運転曲線451上を走行している。このような場合に、列車502の速度を低減させると、保守ブレーキパターン461との接触による、後続列車503の遅延が生じる可能性がある。
図4の先行列車401と同様に、先行列車501は、停車後に運転曲線452に従って加速して、時刻t1において位置412に到達する。このタイミングで、列車502のATC車上装置203は、保守ブレーキパターン461から、保守ブレーキパターン462に変更する。
この場合に、地上制御装置101の運転曲線生成部308の生成部311は、3種類の運転曲線553、554、555を生成する。これら3種類の運転曲線553、554、555のうち、どれに従った場合でも、先行列車501が閉そく区間kから移動すると予測される時刻t1以降に、閉そく区間kに基づいた保守ブレーキパターン461で減速させる位置521まで、運転曲線451に従った速度で、列車502が到達するように設定されている。このように、列車502が位置521に到達する前に保守ブレーキパターン461が変更されることで、列車502は位置521で元の運転曲線451上と同様の走行に復帰できる。これにより、先行列車501の遅延の影響を抑止できる。
運転曲線553は、時刻t0で減速を開始して、速度低減幅は小さいが、低減された速度で長距離を等速走行させる運転曲線とする。
このように、生成部311は、先行列車501が閉そく区間kから移動すると予測される時刻t1に、当該閉そく区間kに基づいた、列車502を減速させる位置521まで、列車502が移動しないように、列車502の現在の走行速度V1から、等速運転用の速度V2まで低下させた後、当該等速運転用の速度V2で可能な限り長い距離を走行させた後に加速し、保守ブレーキパターンが変更されると予想される時刻t1より後に位置521に、通常の運行ダイヤ(換言すれば運転曲線451)に従った速度で到達する運転曲線553を生成する。
運転曲線555は、減速した後に加速を行うことで、減速した後の等速走行する区間を極力短くした運転曲線とする。このため、運転曲線555の速度低減幅は、運転曲線553、554と比べて最も大きくなる。
このように、生成部311は、先行列車501が閉そく区間kから移動すると予測される時刻t1に、当該閉そく区間kに基づいた、列車502を減速させる位置521まで、列車502を移動させず、且つ、列車502の(運転曲線451で示された)現在の走行速度V1を維持させるため、位置521より進行方向反対側の位置522まで現在の走行速度V1で走行した後、現在の走行速度V1より低い速度V3(等速運転用の速度V2より低い速度)まで減速させた後、当該速度V3から加速させることで、時刻t1より後に位置521に、通常の運行ダイヤ(運転曲線451)に従った走行速度V1で到達する運転曲線555を生成する。なお、位置522は、列車の性能(例えば、速度低減幅及び速度加速幅)を考慮して、時刻t1で位置521に到着しないように算出された位置として、説明を省略する。運転曲線555は、速度V3まで減速させた後、等速走行を行わずに、走行速度V1まで加速する例とするが、全く等速走行を行わないものに制限されるものではない。
運転曲線554は、運転曲線553と運転曲線555の中間であって、減速開始位置が運転曲線553より進行方向側に存在し、速度低減幅が運転曲線553と運転曲線555の中間であって、減速した後の等速走行する区間が、運転曲線553よりも短く運転曲線555より長い区間として存在する。
しかしながら、後続列車503は、列車502と列車間隔や速度差、閉そく区間の長さなどの関係によっては、減速を行う可能性がある。例えば、減速の開始が最も早い運転曲線553で列車502が減速を行う場合、後続列車503に保守ブレーキパターン561に従った減速が生じる可能性がある。一方、減速の開始が最も遅い運転曲線555で列車502が減速を行う場合に、後続列車503は列車502の閉そく区間に基づく保守ブレーキパターン561に接触せずに、減速が必要とならない可能性がある。
そこで、本実施形態では、生成部311が複数の運転曲線を生成した場合に、選択部312は、先行列車501との位置関係だけでなく、後続列車503との位置関係を考慮して、制御対象の列車502に適用する運転曲線を選択する。このように後続列車503の遅れを考慮することで、線路180を走行する列車群全体での遅れの影響を抑止できる。
例えば、生成部311は、列車502の運転曲線を生成する際に、時刻t0から減速を開始して、速度低減幅が最小となる運転曲線553を生成する。そして、判定部307は、運行予測部306が、列車502が運転曲線553に従って走行を行った場合の後続列車503の遅れを予測する。後続列車503の遅れが発生しないと判定された場合、選択部312は、当該運転曲線553を、列車502の運転曲線として選択する。
遅れが生じる場合には、生成部311は、運転曲線554や運転曲線555を生成する。そして、選択部312は、生成された運転曲線554、555で走行した場合の後続列車503の遅れを予測する。このように、選択部312は、後続列車503に遅れを生させない運転曲線を探索する。列車502が、減速開始のタイミングが最も遅くなる運転曲線に従った場合でも、後続列車503に遅れを生じさせる場合、運転曲線生成部308は、さらに、後続列車503の運転曲線も生成する。
図6は、本実施形態の運転曲線生成部308の運転曲線の生成手法の第3の例を示した図である。図6に示される例では、図5と同様に、生成部311が、列車502の運転曲線553、554、555を生成した後に、後続列車503の運転曲線の生成も必要と判定し、運転曲線651、652、653を生成した例とする。そして、選択部312は、後続列車503より後続の列車の遅れを考慮して、運転曲線651、652、653から、後続列車503の運転曲線を選択する。この場合に、後続列車503のさらに後ろの後続列車の遅れを考慮して、運転曲線を選択する。
本実施形態の運転曲線生成部308は、先行列車501、列車502、後続列車503等の遅れ時間の合計が最小になるように、運転曲線を生成し、選択する。なお、本実施形態では、遅れ時間の合計を最小とするように制御する例について説明したが、他の基準に基づいて、運転曲線を生成し、選択しても良い。例えば、運転曲線生成部308は、遅れの影響のある列車数を最小にしたり、最大遅延時間を最小化したり、総遅延時間(各駅での到着時刻や出発時刻における遅延時間の総和)を最小化するようにしてもよい。このように、路線の特性や運用に適切と考えられる評価指標に基づいて、運転曲線の最適化を行えばよい。
また、選択部312が運転曲線を選択する際の基準は、後続列車の遅れに基づいて運転曲線を選択することに制限するものではなく、他の基準に基づいて運転曲線を選択しても良い。例えば、生成された複数の運転曲線のうち、どの運転曲線を選択しても、後続列車に遅れが生じる場合に、選択部312は、複数の運転曲線から、消費エネルギーを低減できる運転曲線を選択することが考えられる。例えば、減速から再力行するまでの速度低減幅が大きいと消費エネルギーが無駄になる。さらには、選択部312が列車遅れの評価指標に対して、消費エネルギーを所定の重み付けで加算した結果を、評価指標として用いて運転曲線を選択しても良い。
例えば、列車502と、後続列車503との間隔が十分開いていれば、列車502用に生成された複数の運転曲線553、554、555のうち、どれを選択した場合でも、後続列車503が列車502との間の保守ブレーキパターンに抵触することがない場合もある。この場合、選択部312は、複数の運転曲線553、554、555の各々に従って列車502を走行させた場合の消費電力を算出する。そして、選択部312は、算出した消費電力を評価指標として、複数の運転曲線553、554、555から、消費電力が最も小さくなる運転曲線を選択する。
ところで、先行列車及び後続列車の走行速度等によっては、先行列車の保守ブレーキパターンが解除される時に、後続列車を元の運転曲線上に戻すのが難しい場合がある。このような場合は、運転曲線生成部308は、後続列車のために、保守ブレーキパターンに抵触するような運転曲線を生成しても良い。例えば、後続列車が先行列車の保守ブレーキパターンへの抵触が避けられないような場合、生成部311は、運転曲線を等速走行して保守ブレーキパターンに抵触するような運転曲線を生成するのではなく、時刻t0など可能な限り早い時期から惰行を開始し、図4で示した保守ブレーキパターン461に抵触する時機を遅らせるような運転曲線を生成しても良い。
そして、運転曲線生成部308による遅れの影響を受ける全ての列車についての運転曲線の生成、及び選択が完了した場合に、送信部309が、選択された運転曲線を、列車走行指令情報として、各列車に送信する。
そして、各列車の車上制御装置151のATO機能部256は、受信した列車走行指令情報に従って、列車の自動運転を行う。
次に、本実施形態の地上制御装置101における運転曲線の生成処理について説明する。図7は、本実施形態の地上制御装置101における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
まず、地上制御装置101は、当日の列車運行開始前に起動し、初期化処理を行う(S701)。この際に、地上制御装置101は、各種機器・システム故障およびエラーの検出や、各処理機能におけるメモリの初期化や、他システムとの情報伝送の確立等を行う。また、何らかの異常やエラーが生じた場合、その旨を(図示しない)管理コンソール画面などに表示し、指令員や管理者による対応を促す。
次に、受信部305は、地上ネットワーク110を介して、運行管理システム102から、ダイヤ情報を受信する(S702)。当該ダイヤ情報を受信するために、送信部309が、運行管理システム102に対して、ダイヤ情報の送信を要求しても良い。
次に、運転曲線生成部308が、ダイヤ情報に従って各列車が走行するために、列車毎の運転曲線を生成する(S703)。そして、送信部309が、生成された運転曲線を、各列車に送信する。
次に、判定部307が、運行管理システム102からの新たなダイヤ情報の受信の有無から、運行ダイヤに変更があるか否かを判定する(S704)。ダイヤの変更がないと判定した場合(S704:No)、S706に遷移する。
一方、判定部307が、運行管理システム102からの新たなダイヤ情報の受信の有無から、運行ダイヤに変更があると判定した場合(S704:Yes)、運転曲線生成部308が、変更後の運行ダイヤに従って、各列車が走行するために、列車毎の運転曲線を再生成する(S705)。そして、送信部309が、生成された運転曲線を、各列車に送信する。
次に、地上制御装置101の受信部305は、地上基地局105a〜150cを介して、線路180を走行する各列車の車上制御装置151から、列車の速度情報、位置情報、ノッチ情報を受信する(S706)。当該受信は、所定の間隔毎に行われる。
そして、判定部307は、受信した列車の速度情報、位置情報、及びノッチ情報に基づいて、列車に遅延が生じているか否かを判定する(S707)。遅延が生じていないと判定された場合(S707:No)、S712に遷移する。
列車に遅延が生じているか否かの判定は、どのような手法を用いても良い。例えば、判定部307は、ダイヤ情報に従って生成された運転曲線から、現在時刻における列車の位置および速度を特定できる。そして、判定部307は、特定された位置及び速度と、各列車から受信した速度情報及び位置情報とを比較する。そして、判定部307は、運転曲線上の列車位置と、実際の列車位置との間に所定値以上の距離差が生じた場合に、当該列車を遅延と判定する。運転曲線と実際の列車の位置及び速度とを比較することで、採時地点である駅だけでなく駅間走行中の遅れを把握できる。
また、判定部307は、通常の列車の遅れの判定手法である、各駅における実績ダイヤと計画ダイヤとを比較して判断してもよい。
他の例としては、判定部307は、速度情報で示される、リアルタイムの現在位置における速度が、運転曲線上の現在位置における速度に対して、所定の速度差以上低い場合、遅延が生じていると予測を行っても良い。
判定部307は、遅延が生じていると判定した場合(S707:Yes)、運行予測部306が、受信した列車情報と、運行履歴データベース304と、から遅延が生じた後の各列車の運行ダイヤを予測する(S708)。
遅延列車が生じていると判定された場合、運行予測部306が、各列車の速度情報、位置情報、ノッチ情報を初期値として、現在時刻以降の列車群の運行をシミュレーションにより予測する。予測する際に、閉そく装置、転てつ器、連動装置、信号装置などの運転保安システムの動作を考慮した、いわゆる列車群運行シミュレーションを実施し、先行列車による保守ブレーキパターンへの抵触などの影響を考慮した予測を行う。
なお、何らかの異常の発生に起因する遅れが生じた場合、異常の継続時間などを見積もることは困難な場合が多い。運行予測部306が列車運行を予測する際に、このようなケースについても、何らかの条件を仮定して予測を行う。例えば、運転曲線から逸脱して遅れ始めた列車が存在する場合、列車の走行の予測として、現在の列車速度からさらに減速して遅れが拡大する、現在の列車速度で等速走行する、現在の列車速度から元の運転曲線に戻るように加速して遅れが縮小する、などが考えられる。本実施形態の運行予測部306は、予測が外れた場合でも、発生した遅れが解消するまで、所定の周期で予測を繰り返し行う。このため、予測を誤った場合でも以降の予測で修正できるものと考え、遅れが生じた列車が最大限の回復運転を行う(例えば、最大加速度で加速する)ものと仮定して、予測を行う。
他の例としては、ラッシュ時に駅での旅客の乗降時間の増加により停車時間が延びる場合などがある。このような場合の遅れを予測するため、運行履歴データベース304に、過去の実績の運行における列車の運転曲線や駅における停車時間などを格納しておく。そして、運行予測部306は、当該運行履歴データベース304を参照し、現在の状況との統計的な類似性に基づいて、列車の遅延時間を予測しても良い。
また、列車などの故障などに起因する遅れを予測するため、運行履歴データベース304に、過去の運行中の車両故障などに関する故障原因と回復までに要した平均時間や最大時間などを格納しておく。そして、運行予測部306は、列車に搭載されているモニタ装置が検出した故障情報と、運行履歴データベース304に格納されている情報と、に基づいて、車両故障時における遅延時間を予測しても良い。
遅れが生じた場合、受信部305が、停車や徐行運転の発生地点、発生時刻、及び継続時間等を、実績の情報として受信し、運行予測部306が、受信した実績の情報に基づいて、列車群運行シミュレーションを行い、運行ダイヤを予測する。例えば、運行予測部306が、降雨や風速による運行制限および臨時速度制限や、車両機器の故障にともなう速度制限、ホーム混雑による旅客乗降遅延等に基づいて、予測される運行ダイヤを生成する。
先行列車の遅れが後続列車に遅延を生じさせると予測される場合、運行予測部306は、予測される全ての遅延列車について、予測された遅れに関する「遅れ評価値」を生成する。遅れ評価値は、例えば遅延列車本数や、最大遅延時分、総遅延時分(遅延のある列車の各駅での到着時刻および出発時刻における遅れ時分の総和)、遅延回復までの所要時間、またはこれらに所定の重みを乗じて加算した値など種々考えられるが、対象路線の運用および評価に適切な評価値を利用すれば良い。
そして、運転曲線生成部308の生成部311は、予測された運行ダイヤに従って、運転曲線を生成する(S709)。
そして、判定部307は、生成された運転曲線に従って走行した場合に、先行列車の位置関係で制御対象列車に生じる遅れや、後続列車との位置関係で後続列車に生じる遅れが許容範囲内か否かを判定する(S710)。許容範囲内と判定した場合(S710:Yes)、選択部312が当該運転曲線を送信対象として選択し、S711に遷移する。
一方、許容範囲内ではないと判定した場合(S710:No)、S709において、生成部311が、減速する位置等を変更した運転曲線を再生成し、S710による判定を行う。S709による運転曲線の生成は、図4〜図6で説明した通りとして、説明を省略する。
そして、送信部309は、選択された運転曲線に従った、列車走行指示情報を、制御対象の列車に送信する(S711)。
その後、判定部307は、全ての列車の運行が終了したか否かを判定する(S712)。終了していないと判定した場合(S712:No)、S704から再び処理を行う。
一方、判定部307は、全ての列車の運行が終了したと判定した場合(S712:Yes)、処理を終了する。
本実施形態においては、車上制御装置151から、速度情報、位置情報、ノッチ情報を受信する例について説明したが、受信する列車情報を、速度情報、位置情報、ノッチ情報に制限するものではない。例えば、ノッチ情報は、列車の加減速に関わる情報であって、列車走行の予測精度の向上を目的としている。このため、ノッチ情報の代わりに、列車の主電動機の出力や引張力などの情報を受信しても良い。また、地上制御装置101の運行履歴データベース304が、各列車の速度情報、位置情報について時間推移を含めて記憶しても良い。これにより、運行予測部306は、格納された情報から、列車の加減速を推定した上で、運行ダイヤを生成できる。この場合、情報伝送量の削減や、伝送周期の向上を期待することができる。さらには、車上制御装置151から、加速度情報を受信しても良い。受信した加速度情報を、運行予測に適用することで、より高い精度の予測を実現できる。
また、本実施形態では、運転保安システムとしてATC(自動列車制御装置)を適用した例について説明した。しかしながら、先行列車との位置関係による保守ブレーキパターンの推移や進路開通時機を予測可能なものであれば良い。例えば、パターン制御式ATS(自動列車停止装置)システムや、CBTCなどの無線列車制御システムを使用してもよい。
本実施の形態においては、このようにして作成した運転曲線を、列車走行指令情報として、地上制御装置101から地上ネットワーク110、地上基地局群105、車上制御装置の情報受信部254を介して、各列車の車上制御装置151に送信している。しかし、地上システムと車上システム間の通信回線の容量などによっては送信する情報を圧縮してデータ伝送時間の短縮化や必要な伝送帯域の削減を図るため、運転曲線データを間引きしたり、運転曲線データ上における速度やノッチ(または加速度や引張力、制動力)などの条件変化点や操作変化点の情報のみを送信するようにしてもよい。その他、ATO機能部256によって列車走行を制御することが可能なデータであれば列車走行指令情報としてどのような形式のデータを送信するようにしても良い。
本実施形態では、車上制御装置151は、地上制御装置101から受信した列車走行指令情報に基づいて自動運転を行うことで、列車群の遅れの影響が最小となるような最適な列車運行を実現できる。
さらに、地上制御装置101の運転曲線生成部308は、後続列車の遅れを考慮した運転曲線を生成することで、後続列車への遅れを抑止できる。
(第2の実施形態)
なお、第1の実施形態においては、車上制御装置151のATO機能部256が、列車を自動運転する例について説明したが、自動運転する手法に制限するものではない。そこで、第2の実施形態では、運転士が運転する例について説明する。
なお、第1の実施形態においては、車上制御装置151のATO機能部256が、列車を自動運転する例について説明したが、自動運転する手法に制限するものではない。そこで、第2の実施形態では、運転士が運転する例について説明する。
図8は、第2の実施形態の、列車170aに搭載された車上システム150aの構成例を示した図である。図8に示されるように、車上システム150aは、第1の実施形態の車上制御装置151の代わりに車上制御装置800が設けられている。なお、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を割り当て、説明を省略する。
車上制御装置800は、第1の実施形態の車上制御装置151と比べて、ATO機能部256の代わりに、運転支援機能部801が設けられている。
運転支援機能部801は、表示器850に接続されている。表示器850は、運転台上に設置されている。そして、運転支援機能部801は、受信した列車走行指令情報に基づいた、運転士への運転操作に関する情報を、表示器850に表示する。これにより、本実施形態は、地上制御装置101で生成された運転曲線に従った、運転士の運転操縦を実現できる。本実施形態では、当該構成を実現することで、列車にATO機能の搭載が不要となる。このため、既存路線への導入が容易になるとともに、コスト低減が図れる。
(第3の実施形態)
上述した実施形態では、地上制御装置101が運転曲線を生成する例について説明した。しかしながら、運転曲線を生成するのを地上制御装置101に制限するものではない。そこで、第3の実施形態では、車上制御装置で生成する場合について説明する。
上述した実施形態では、地上制御装置101が運転曲線を生成する例について説明した。しかしながら、運転曲線を生成するのを地上制御装置101に制限するものではない。そこで、第3の実施形態では、車上制御装置で生成する場合について説明する。
図9は、本実施形態の走行管理システムの概念を例示した図である。図9に示されるように、運行管理システム102と通信を行う列車に搭載された車上制御装置901が、列車群の運転曲線を生成する。
図10は、本実施形態の車上制御装置901の構成例を示した図である。図10に示されるように、車上システム150bは、車上制御装置901が設けられている。車上制御装置901は、ノッチ情報取得部255、ATO機能部256に加えて、路線データベース301、車両データベース302、制御データベース303、運行履歴データベース304、運行予測部306、判定部307、運転曲線生成部308、受信部1001、送信部1002を備えている。
つまり、路線データベース301、車両データベース302、制御データベース303、運行履歴データベース304、運行予測部306、判定部307、運転曲線生成部308を、車上制御装置901に設けることで、上述した実施形態の地上制御装置101と同様の処理を実現できる。
そして、受信部1001、及び送信部1002は、運行管理システム102との間で情報を送受信するだけではなく、各列車の車上制御装置901との間で情報の送受信を行う。
これにより、受信部1001は、車車間通信によって、各列車の速度情報、位置情報、ノッチ情報を受信する。さらに、送信部1002が、ダイヤ情報や、列車走行指令情報を、各列車に送信する。列車間の通信手法としては、どのような手法を用いても良い。
本実施形態では、地上制御装置101及び地上基地局105a〜105cを削減できるので、コスト低減を図ることができる。また、車上制御装置は、列車毎に搭載されているため、運転曲線を生成するシステムを二重化することができる。これにより、ある列車の車上制御装置の一部に故障が生じた場合でも、他の車上制御装置で運転曲線を生成できるため、システムの可用性を高めることができる。
本実施形態では、列車同士の情報伝送として、車車間通信を行う例について説明したが、列車間隔が長い場合などに、地上無線基地局を経由して情報伝送を行っても良い。さらには、車車間通信と地上無線基地局経由の通信を混在させてもよい。
車上制御装置901の受信部1001は、始発駅を出発前に、運行管理システム102から、少なくとも自列車、自列車の後続列車、及び自列車が追い越す予定の列車のダイヤ情報を受信する。
ダイヤ情報を受信する際には、例えば、各駅に設置された無線LANなどを経由して受信することが考えられる。例えば、始発駅を出発前に、自列車の列車番号の設定が予め行われているため、送信部1002が、設定された列車番号を用いて、運行管理システム102にダイヤ情報の送信要求を行えば良い。
また、列車と運行管理システム102との間の伝送容量に余裕がある場合、受信部1001が、現在時刻以降に運用される全ての列車のダイヤ情報を受信しても良い。このようにダイヤ情報に変更があった場合、受信部1001が、全列車のダイヤ情報を一括して受信したATO、車車間通信によって、走行中の他の列車のダイヤ情報を更新できる。
各列車の車上制御装置901は、各駅を出発するまでに、ダイヤ情報に設定された駅間走行時間に基づいて、少なくとも次駅までの運転曲線を生成する。そして、運転士が出発時刻以降に出発ボタンを押下することで、ATO機能部256が、列車の自動運転を行う。
車上制御装置901は、所定の周期で列車の速度、位置を取得している。このため、車上制御装置901の判定部307は、運転曲線と比較することで、自列車に遅れが生じているか否かを判定できる。そして、遅れが所定の範囲内にあると判定された場合、ATO機能部256が、運転曲線に基づいた自動運転を継続する。
判定部307が、自列車に遅れが生じていると判定した場合、ATCの進路開通情報などの情報に基づいて、先行列車による保守ブレーキパターンへの抵触による遅れか否かを判定する。先行列車による保守ブレーキパターンへの抵触ではなく、自列車が遅延の先頭であると判定した場合、当該列車の車上制御装置901が、自列車と後続列車を含む列車群の運行制御を行う。運行予測部306が、自列車、先行列車、後続列車を含む列車群のダイヤ情報に基づいて、列車群運行シミュレーションを行い、自列車および後続列車の遅れを予測する。運行予測部306は、ダイヤ情報に基づいて後続列車の走行について遅れを予測しても良いが、後続列車から速度情報、位置情報、ノッチ情報等を車車間通信で受信することで、精度の良い予測を実現できる。
運行予測部306により自列車の後続列車の遅れが予測された場合、さらに後続列車への遅れの影響が考えられる。このため、運行予測部306は、遅延の影響が予測されなくなる列車まで、順次後続列車のダイヤ情報に基づいて、当該後続列車の遅れを予測する。
次に、運転曲線生成部308が、自列車および遅延の影響が予測された全ての後続列車について、遅れの影響が小さくなるような運転曲線を生成する。なお、遅れの影響が小さくなるような運転曲線の例は、第1の実施形態で説明したので、説明を省略する。
運転曲線生成部308が、遅れの影響が予測された全ての後続列車について、運転曲線を生成した場合に、送信部1002が、運転曲線に基づいた列車走行指令情報を、後続列車に送信する。なお、自列車用の運転曲線に基づいた列車走行指令情報は、自列車のATO機能部256に受け渡される。これにより、自列車及び後続列車は、遅れの影響が少なくなるような自動運転制御が行われる。
本実施形態においては、自列車の遅れが所定値未満となり、遅延が解消された場合に、自列車による、列車群の運行制御を終了する。そして、後続列車に遅れが残っている場合、遅れの先頭となった列車が、列車群の運行制御を行う。なお、列車群の運行制御は、上述した制御と同様とする。
なお、本実施形態では、遅延の先頭の列車に搭載された車上制御装置901が、後続の運転曲線を生成する例について説明したが、遅延の先頭の列車が他の列車の運転曲線を生成することに制限するものではない。例えば、線路180を走行している先頭列車が、当該線路180上を走行している全ての列車群の運転曲線を生成しても良い。
また、本実施形態は、第1の実施形態と同様にATO機能部256を備えた例について説明するが、第2の実施形態と同様に運転支援機能部801を設けても良い。これにより、運転士の運転を支援できるため、第2の実施形態と同様の効果を得られる。
上述した実施形態によれば、列車に遅延が発生した場合、後続列車との運転間隔を考慮して、運転曲線を生成した。これにより、後続列車の遅れを抑止することができる。また、運転曲線を生成する際に、制御対象列車と後続列車との運転間隔だけで無く、制御対象列車と先行列車との運転間隔も考慮して、運転曲線を生成した。これにより、先行列車との位置関係による減速等を抑止できるため、遅れをさらに抑止できる。また、後続列車だけでなく、さらにその後続列車も考慮し、列車群の遅れが少なくなるように制御できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
100…地上システム、101…地上制御装置、102…運行管理システム、103…ATC地上装置、105a〜105c…地上基地局、110…地上ネットワーク、150…車上システム、151…車上制御装置、170a〜170b…列車、180…線路、201…速度検知装置、202…位置検知装置、203…ATC車上装置、251…路線データベース、252…車両データベース、253…情報送信部、254…情報受信部、255…ノッチ情報取得部、256…ATO機能部、301…路線データベース、302…車両データベース、303…制御データベース、304…運行履歴データベース、305…受信部、306…運行予測部、307…判定部、308…運転曲線生成部、309…送信部、311…生成部、312…選択部、351…運行ダイヤデータベース、800…車上制御装置、801…運転支援機能部、850…表示器、901…車上制御装置、1001…受信部、1002…送信部。
Claims (10)
- 地上制御装置と、線路上を走行する複数の列車の各々に搭載された車上制御装置と、を備える走行制御システムであって、
前記車上制御装置は、
前記車上制御装置が搭載された列車の位置と速度とを前記地上制御装置に送信する第1の送信部を備え、
前記地上制御装置は、
前記複数の列車の各々に搭載された車上制御装置から、当該車上制御装置が搭載された列車の位置と速度とを受信する受信部と、
前記受信部が受信した列車の位置と速度とに基づいて、制御対象となる列車の運行ダイヤと、前記線路上を走行する前記制御対象となる列車の後ろの後続列車の運行ダイヤと、を予測する予測部と、
前記予測部が予測した前記運行ダイヤに従って前記制御対象となる列車と、前記後続列車と、が走行した場合における、前記制御対象となる列車と前記後続列車との位置関係に基づいて、前記制御対象となる列車が前記線路を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した、当該線路上の位置の変化に従った速度を表した走行計画を生成する生成部と、
前記生成部が生成した前記走行計画を、前記制御対象となる列車に搭載された前記車上制御装置に送信する第2の送信部と、
を備える走行制御システム。 - 前記予測部は、さらに、前記制御対象となる列車より前の先行列車の運行ダイヤとして、当該先行列車の存在地点から、所定の加速度で加速して走行すると仮定した場合の、当該先行列車の運行ダイヤを予測し、
前記生成部は、前記予測部が予測した前記運行ダイヤに従って、前記制御対象となる列車と、前記先行列車と、を走行させた場合における、前記制御対象となる列車と前記先行列車との位置関係に基づいて、前記制御対象となる列車が前記線路を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した走行計画を生成する、
請求項1に記載の走行制御システム。 - 前記生成部は、前記先行列車及び後続列車との位置関係に応じた走行計画を導出する際に、前記先行列車に基づいた基準位置までの走行経路のうち、減速する位置、減速度合い、及び減速してから走行する区間のうちいずれか一つ以上を異ならせた複数の走行計画を生成し、前記後続列車との位置関係に応じて、前記複数の走行計画からいずれか一つを選択する、
請求項2に記載の走行制御システム。 - 前記生成部は、前記後続列車との位置関係と、列車の電力消費量と、に応じて、前記複数の走行計画からいずれか一つを選択する、
請求項3に記載の走行制御システム。 - 前記生成部は、前記先行列車が閉そく区間から移動すると予測される時刻に、当該閉そく区間に基づいた、前記制御対象となる列車を減速させる第1の位置まで、前記制御対象となる列車を移動させず、且つ、前記制御対象となる列車の現在の走行速度である、第1の速度を維持させるため、前記第1の位置より進行方向反対側の第2の位置まで前記第1の速度で走行した後、前記第1の速度より低い第2の速度まで減速させた後、当該第2の速度から加速させることで、前記予測される時刻より後に前記第1の位置に、前記第1の速度で到達する運転曲線を生成する、
請求項2乃至4のいずれか一つに記載の走行制御システム。 - 前記生成部は、当該先行列車が閉そく区間から移動すると予測される時刻に、当該閉そく区間に基づいた、前記制御対象となる列車を減速させる第1の位置まで、前記制御対象となる列車が移動しないように、前記制御対象となる列車の現在の走行速度である、第1の速度から第3の速度まで低下させた後、前記第3の速度で可能な限り長い距離を走行させた運転曲線を生成する、
請求項2乃至4のいずれか一つに記載の走行制御システム。 - 前記生成部は、当該先行列車が存在する閉そく区間に基づいた、前記制御対象となる列車を減速させる第1の位置まで、惰行で走行させる運転曲線を生成する、
請求項2乃至4のいずれか一つに記載の走行制御システム。 - 過去の運行中の車両故障などに関する故障原因と、回復までに要した時間と、を記憶した記憶部を、さらに備え、
前記予測部は、前記記憶部を参照して、前記制御対象となる列車の運行ダイヤと、前記後続列車の運行ダイヤと、を予測する、
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の走行制御システム。 - 自列車の位置と速度とを取得する取得部と、
前記自列車より後ろを走行する後続列車から、位置と速度とを受信する受信部と、
前記取得部が取得した前記自列車の位置と速度、及び前記受信部が受信した前記後続列車の位置と速度に基づいて、前記自列車の運行ダイヤと、前記後続列車の運行ダイヤと、を予測する予測部と、
前記予測部が予測した前記運行ダイヤに従って前記自列車と、前記後続列車と、が走行した場合における、前記自列車と前記後続列車との位置関係に基づいて、前記自列車が線路を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した、当該線路上の位置の変化に従った速度を表した走行計画を生成する生成部と、
前記生成部が生成した前記走行計画に従って、前記自列車の走行を制御する制御部と、
を備える走行制御装置。 - 前記生成部は、さらに、前記予測部が予測した前記運行ダイヤに従って前記自列車と、前記後続列車と、が走行した場合における、前記自列車と前記後続列車との位置関係に基づいて、前記後続列車が前記線路を走行する際の加速及び減速を行う区間を調整した、当該線路上の位置の変化に従った速度を表した第2の走行計画を生成し、
前記生成部が生成した前記第2の走行計画を、前記後続列車に送信する送信部を、さらに備える、
請求項9に記載の走行制御装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2021041858A (ja) * | 2019-09-12 | 2021-03-18 | 公益財団法人鉄道総合技術研究所 | シミュレーション装置およびプログラム |
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CN114348061A (zh) * | 2021-12-17 | 2022-04-15 | 交控科技股份有限公司 | 列车进路办理方法及*** |
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2016
- 2016-08-30 JP JP2016168423A patent/JP2018034610A/ja active Pending
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