JP2018027673A - 樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体並びにその製造方法 - Google Patents

樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体並びにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性に優れる多層構造体を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体であって、該接着性樹脂層がカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対し飽和脂肪酸(B)を500ppm〜10000ppm含有する樹脂組成物からなることを特徴とする多層構造体を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体に関するものであり、さらに詳しくは、ガスバリア性樹脂層との接着性を保持しつつ、優れた透明性を有した接着性樹脂層用樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体並びにその製造方法に関するものである。
食品や様々な物品を包装するための包装材料には、多様な包装形態を達成すべく、任意の形状に加工することが容易なポリオレフィン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂が多用されている。さらに食品の鮮度や品質を長期間保つため、酸素の透過を防ぐガスバリア層を設け、酸素等の透過を防止していた。
従来の包装材料に一般的に設けられているガスバリア層としては、無機物からなるガスバリア層、有機物からなるガスバリア層を挙げることができる。無機物からなるガスバリア層としては、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層などの金属層、または酸化ケイ素蒸着層や酸化アルミニウム蒸着層などの金属化合物層が使用されている。しかし、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層などの金属層は、包装内容物が見えないこと、廃棄性に劣ること等の欠点がある。また、酸化ケイ素蒸着層や酸化アルミニウム蒸着層などの金属化合物層は、印刷、ラミネート等の二次加工の際の変形、輸送時の振動や衝撃、包装材の変形
や落下などで割れが発生し、ガスバリア性が著しく低下するなどの欠点がある。
一方で、樹脂からなるガスバリア層として、ポリアミド系樹脂からなる層や、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(以下、EVOHと称することがある)等のビニルアルコール系樹脂からなる層が使用されている。ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコールおよびEVOH等のビニルアルコール系樹脂からなる層は透明であり、ガスバリア層の割れが比較的発生しにくく、廃棄面での問題が少ないという利点があるため、広く包装材料に用いられている。
ここで、EVOHは水酸基を豊富に有し、ポリアミド系樹脂はアミド結合を豊富に有するため、それぞれ水素結合を有し酸素の透過を阻害するためガスバリア性に優れる。しかしながら、樹脂内に水が浸入すると樹脂間の水素結合が弱まり、ガスバリア性が低下するため、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂でEVOHやポリアミド系樹脂等のガスバリア性樹脂を挟持した多層構造体として各種包装用途へ用いられることが多い。このとき、EVOHやポリアミド系樹脂等の水素結合が豊富なガスバリア性樹脂とポリオレフィン系樹脂等の疎水性の高い樹脂は接着性が悪いため、通常、これらの層間に接着性樹脂層を設ける必要がある。
従来、接着性を改良する目的で、かかる接着樹脂層として、ポリオレフィンの一部あるいは全部を不飽和カルボン酸もしくはその誘導体から選ばれた少なくとも1種以上のモノマーで変性したポリオレフィンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂あるいはポリエステル樹脂を積層するにあたり、少なくとも1層以上に、高級脂肪酸の金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩および金属ケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種以上を、特定量にて配合する技術が知られている(特許文献1)。
また特許文献2には、強い接着力を有し、かつ優れたリサイクル性を有する接着性樹脂組成物として、不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性された成分を含む変性ポリオレフィン系樹脂に対して200〜2000重量ppmのアルカリ性化合物、及び変性ポリオレフィン系樹脂に対して20〜400重量ppmの有機酸又はその酸無水物を含有する接着性樹脂組成物が記載されている。
特開昭54−087783 特開2003−268332
しかしながら、フィードブロック・ダイ形状の多様化、成形装置の高機能化といった近年の成形技術の高度化や、層数増加などの多層構造体の高機能化に伴って、多層構造体の透明性は低下しやすくなる傾向があり、前述のような従来の接着性樹脂を用いた場合には、成形条件によっては透明性が不十分となる場合があった。
その一方で、近年は特に内容物への安心感が強く求められることから、内容物が包装体を通しても明確に確認できるよう、視認性の高い多層構造体が好まれる傾向にある事から、接着性を保持しつつ、優れた透明性を有する多層構造体が要望されていた。
そこで、本発明はこのような背景下において、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体において、接着性を保持しつつ、優れた透明性を有する多層構造体およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
しかるに本発明者は、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体において、ガスバリア性樹脂層/接着性樹脂層の積層界面で発生する僅かな界面荒れが、優れた透明性を阻害する原因になっていることに着目した。
そしてかかる問題を解決するために、上記多層構造体の接着性樹脂層において、接着性樹脂に対する配合剤として飽和脂肪酸を多量に含有させた樹脂組成物を用いることにより、予想外にもガスバリア性樹脂層/接着性樹脂層の積層界面で発生する界面荒れを抑制することが可能となり、透明性が向上することを見出したものである。
なお従来技術においては、接着性樹脂に対して飽和脂肪酸を配合すると、接着性樹脂の接着性を低下させることが知られていた(特許文献2、表2、製造例6および製造例7参照)。これは、接着性樹脂が有するカルボキシル基または酸無水物基と、飽和脂肪酸が反応するなどして失活するためと考えられる。ゆえに、当業者であれば、かかる接着性樹脂層に配合剤として飽和脂肪酸を用いることはむしろ避けるところ、本発明者らはあえて多量に配合することで接着性を保持しつつ、優れた透明性を有する多層構造体が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体であって、該接着性樹脂層がカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対し飽和脂肪酸(B)を500ppm〜10000ppm含有する樹脂組成物からなることを特徴とする多層構造体である。
また本発明は、上記接着性樹脂層用樹脂組成物、並びに、共押出成形法または共射出成型法にて上記多層構造体を得ることを特徴とする多層構造体の製造方法も提供するものである。
本発明は、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体であって、該接着性樹脂層がカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対し飽和脂肪酸(B)を500ppm〜10000ppm含有する樹脂組成物からなることを特徴とする多層構造体である。このため、かかる多層構造体はガスバリア層/接着性樹脂層の積層界面で発生する界面荒れが抑制され、優れた透明性を有する多層構造体を得ることが可能となる。
さらに、従来技術においては接着性樹脂層に飽和脂肪酸を配合する場合には接着性が低下すると考えられていたところ、本発明においては接着性が保持される。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
本発明は、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体であって、該接着性樹脂層がカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対し飽和脂肪酸(B)を500ppm〜10000ppm含有する樹脂組成物からなることを特徴とする多層構造体である。また本発明は、上記接着性樹脂層用樹脂組成物、並びに、共押出成形法または共射出成型法にて上記多層構造体を得ることを特徴とする多層構造体の製造方法も提供するものである。
<熱可塑性樹脂層>
本発明の多層構造体における熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂は、公知一般の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ環状オレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等のエラストマー;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物、ポリアミド系樹脂等のガスバリア性樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン樹脂等の接着性樹脂等が挙げられる。
本発明の効果を効果的に得られる点で好ましくはポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の比較的疎水性の高い熱可塑性樹脂である。特に好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、殊に好ましくはポリエチレン系樹脂である。
上記ポリオレフィン系樹脂の密度は限定されないが、通常0.85g/cm3〜0.96g/cm3、好ましくは0.87g/cm3〜0.95g/cm3である。また、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は特に限定されないが、成形性の点から通常0.01〜50g/10分、さらには0.1〜10g/10分のものが好ましい。かかるMFRは、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂の場合は190℃、荷重2.16kgでの値を意味し、ポリプロピレン系樹脂の場合は230℃、荷重2.16kgでの値を意味する。
<ガスバリア性樹脂層>
本発明のガスバリア性樹脂層に用いるガスバリア性樹脂として、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物、ポリアミド樹脂などが用いられる。中でも、透明性が高く、ガスバリア層の割れが比較的発生しにくく、廃棄面での問題が少ない、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物やポリアミド樹脂が好ましい。
本発明でガスバリア性樹脂として用いるEVOHについて説明する。
本発明で用いるEVOHは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いることができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行ない得る。
すなわち、本発明で用いるEVOHは、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、場合によってはケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場からの入手のしやすさや製造時の不純物の処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。この他、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
EVOHにおけるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定した値であり、通常20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%、特に好ましくは25〜40モル%である。かかる含有量が少なすぎると、高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に多すぎると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値であり、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
また、上記EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは3〜35g/10分である。かかるMFRが高すぎると、製膜性が低下する傾向がある。また、MFRが低すぎると溶融押出が困難となる傾向がある。
また、本発明に用いられるEVOHは、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
上記コモノマーは、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類や、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−メチレンプロパン−1,3−ジオール等のヒドロキシ基含有オレフィン類や、そのエステル化物である、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−ヒドロキシプロパン、3−アセトキシ−1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル等のグリセリンモノ不飽和アルキルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類、アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
特に、ヒドロキシ基含有オレフィン類を共重合したEVOHは、二次成形性が良好になる点で好ましく、中でも側鎖に1級水酸基を有するEVOH、特には、1,2−ジオールを側鎖に有するEVOHが好ましい。
上記1,2−ジオールを側鎖に有するEVOHは、側鎖に1,2−ジオール構造単位を含むものである。上記1,2−ジオール構造単位とは、具体的には下記の一般式(1)で示される構造単位である。
Figure 2018027673
〔上記一般式(1)において、R1,R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示す。R4,R5およびR6は、それぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の飽和炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等があげられる。
特に、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を含有する場合、その含有量は通常0.1〜20モル%、さらには0.1〜15モル%、特には0.1〜10モル%のものが好ましい。
また、本発明で使用されるEVOHは、異なる他のEVOHとの混合物であってもよく、上記他のEVOHとしては、エチレン構造単位の含有量が異なるもの、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレート(MFR)が異なるもの、他の共重合成分が異なるもの等をあげることができる。
本発明でガスバリア性樹脂層として用いるポリアミド樹脂について説明する。
本発明で使用されるポリアミド樹脂は、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーがあげられる。また、共重合ポリアミド樹脂としては、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ−P−フェニレンテレフタルアミドや、ポリ−P−フェニレン・3−4'ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これらのポリアミド樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート等があげられる。あるいは、これらの末端変性ポリアミド樹脂であってもよく、好ましくは末端変性ポリアミド樹脂である。
上記末端変性ポリアミド樹脂とは、具体的には例えば、炭素数1〜22の炭化水素基で変性された末端変性ポリアミド樹脂であり、市販のものを用いてもよい。より詳細には、例えば末端変性ポリアミド樹脂の末端COOH基の数[X]と、末端CONR12基(但し、R1は炭素数1〜22の炭化水素基、R2は水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基)の数[Y]が、
100×Y/(X+Y)≧5
を満足する末端変性ポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
上記末端変性ポリアミド樹脂は、通常の未変性ポリアミド樹脂のカルボキシル基を末端調整剤によりN−置換アミド変性したものであり、変性前のポリアミド樹脂が含有していたカルボキシル基の総数に対して5%以上変性されたポリアミド樹脂である。かかる変性量が少なすぎると、ポリアミド樹脂中のカルボキシル基が多く存在することとなり、かかるカルボキシル基が溶融成形時にEVOHと反応してゲル等を発生し、得られたフィルムの外観が不良となりやすい傾向がある。かかる末端変性ポリアミド樹脂は、例えば特公平8−19302号公報に記載の方法にて製造することができる。
本発明におけるガスバリア性樹脂層においては、上記ガスバリア性樹脂をマトリクスとした樹脂組成物を用いることも可能である。この時、ガスバリア性樹脂の量は、ガスバリア性樹脂層全体に対して通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。かかる量が少なすぎる場合は、本発明の効果が充分に得られない傾向がある。
特に、本発明の多層構造体を熱水殺菌処理食品の包装材として用いた場合、上記包装材の熱水殺菌処理後に、包装材端部にてガスバリア性樹脂層のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物が溶出することを防止する目的で、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物とポリアミド樹脂を混合することが好ましい。ポリアミド樹脂は、アミド結合がエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物のOH基および/またはエステル基との相互作用によりネットワーク構造を形成することが可能であり、これにより、熱水処理時のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物の溶出を防止することができる。従って、レトルト食品やボイル食品の包装材として本発明の多層構造体を用いる場合には、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物とポリアミド樹脂を混合することが好ましい。エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物/ポリアミド樹脂の含有比は、重量比にて通常99/1〜70/30であり、好ましくは97/3〜75/25、特に好ましくは95/5〜85/15である。ポリアミド樹脂の重量比率が大きすぎる場合には、ロングラン成形性およびガスバリア性が低下する傾向がある。ポリアミド樹脂の重量比率が小さすぎる場合には、熱水処理後のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物の溶出抑制効果が低下する傾向がある。
上記熱可塑性樹脂、ガスバリア性樹脂層には、本発明の趣旨を阻害しない範囲内(例えば、30重量%以下、好ましくは10重量%以下)において、従来公知の可塑剤、フィラー、クレー(モンモリロナイト等)、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含んでいてもよい。
<接着性樹脂層用樹脂組成物>
本発明においては、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体において、該接着性樹脂層がカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対し飽和脂肪酸(B)を多量にて含有する場合、ガスバリア性樹脂層/接着性樹脂層の積層界面で発生する界面荒れを抑制し、優れた透明性を有する多層構造体が得られる。
かかる理由は明らかではないが、接着性樹脂に対して飽和脂肪酸(B)を多量含有する場合、カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)中のカルボキシル基または酸無水物基の失活を最小限に抑えつつ、かつ多層成形時には、ガスバリア性樹脂層と接着性樹脂層の溶融状態での相互作用が適度に抑制されためと推測される。このような効果は、従来の知見からは予想外の効果である。
また、多層構造体におけるガスバリア性樹脂/接着性樹脂層の積層界面の接着性が保持されるという、従来公知の傾向とは相反する、予想外の効果も得られる。
<カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)>
本発明の多層構造体における接着性樹脂層用樹脂組成物に用いられるカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)について説明する。かかる樹脂は接着性樹脂として公知の樹脂であり、例えばオレフィンモノマーとカルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーを共重合したり、ポリオレフィン系樹脂にカルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーをグラフトしたりすることにより得られる。
カルボキシル基としては、例えば、不飽和ジカルボン酸や不飽和モノカルボン酸が挙げられる。具体的には、不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、ハイミック酸、シトラコン酸、イタコン酸等が挙げられ、不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、ブタン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、ドデセン酸、リノール酸、アンゲリカ酸、けい皮酸等が挙げられる。また酸無水物基としては、例えば、前記の不飽和ジカルボン酸または不飽和モノカルボン酸の酸無水物が挙げられ、具体的には、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸の無水物等が挙げられる。カルボキシル基または酸無水物基は2種以上が併用されていても良い。これらのうち、特に無水マレイン酸は、ガスバリア性樹脂層との接着性が良いことから好適である。
カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)の原料として用いるポリオレフィン樹脂(以下、ベース樹脂と称する場合がある)は上記したポリオレフィン系樹脂を用いることが可能である。
かかるベース樹脂としては例えば、エチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体、エチレンと他のモノマーとの共重合体、プロピレンと他のモノマーとの共重合体等が挙げられ、他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数3〜20程度のα―オレフィンや、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を意味する。
更にベース樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・オクテン共重合体、エチレン・ブテン・ヘキセン共重合体、エチレン・ブテン・オクテン共重合体、エチレン・ヘキセン・オクテン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、及び、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系重合体;プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ヘキセン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体等のプロピレン系重合体;ブテン系重合体等が挙げられる。
ここで、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体とは、それぞれ、エチレン、プロピレン、またはブテンをモノマー単位の50モル%以上の組成で含有する樹脂を言う。これらのポリオレフィン樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
これらの中では、エチレン系重合体であるエチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体や、プロピレン系重合体であるプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体が安価で容易に入手することができ、経済性に優れるため好ましい。更には機械的特性の観点から、エチレン単独重合体、エチレン・α―オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体が好ましい。
本発明で用いるカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)は、ガスバリア性樹脂層との接着性の観点から、前記の不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物をベース樹脂にグラフト変性させたものが好適に用いる事が出来る。
ここで「グラフト変性」とは、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物をベース樹脂の共重合成分として用いるのではなく、既に製造されているベース樹脂に対し、反応によって不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を結合させるものである。すなわち、本発明において「グラフト変性」とは、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物がベース樹脂の骨格に対して鎖長が長い側鎖として導入される場合のみならず、ベース樹脂に化学結合していれば包含される。
ベース樹脂のグラフト変性は、従来公知の種々の方法で行うことができる。変性方法は限定されないが、溶融させたベース樹脂に不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を添加してグラフト共重合させる溶融変性法、溶媒に溶解させたベース樹脂に不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を添加してグラフト共重合させる溶液変性法等が挙げられる。これらのうち、衛生性の観点から、溶媒を使用しなくてもよい溶融変性法が好ましく、押出機を用いてグラフト変性することがより好ましい。なお、効率よくグラフト変性するためには、ラジカル開始剤の存在下に変性することが好ましい。
カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)は、グラフト変性させたベース樹脂だけからなるものであっても、ベース樹脂と同種又は異種の未変性ベース樹脂との混合物のいずれであってもよい。
カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)の密度は限定されないが、通常0.85g/cm3〜0.96g/cm3、好ましくは0.87g/cm3〜0.95g/cm3である。また、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は特に限定されないが、成形性の点から通常0.01〜50g/10分、さらには0.1〜10g/10分のものが好ましい。ここで、ベース樹脂のMFRは、ベース樹脂がエチレン系重合体またはブテン系重合体の場合は190℃、荷重2.16kgでの値を意味し、ベース樹脂がプロピレン系重合体の場合は230℃、荷重2.16kgでの値を意味する。
上記カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)の、厚み90μmフィルムとした場合のフーリエ変換型赤外分光分析(透過法)による1710cm-1の吸光度(α)と1450cm-1の吸光度(β)の比(α/β)は、通常0.005〜0.5であり、好ましくは0.01〜0.1であり、特に好ましくは0.03〜0.08である。かかる吸光度比(α/β)が大きすぎる場合には、フィッシュアイ、異物発生等により多層構造体の外観が悪化する傾向があり、小さすぎる場合には多層構造体の接着強度が低下する傾向がある。
なお、かかる吸光度比(α/β)は、カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン樹脂におけるカルボキシル基または酸無水物基の含有量の指標であり、C−H変角振動に由来する1450cm-1の吸光度(β)に対するC=O伸縮振動に由来する1710cm-1の吸光度(α)の割合を示している。すなわち、かかる吸光度比が大きいほどカルボキシル基または酸無水物基含有量が多いことを表す。
上記カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)における吸光度比(α/β)は、下記の条件で測定し算出する。
100℃で3時間加熱乾燥したポリオレフィン系樹脂(A)を、ミクロトームでスライスして厚み90μmの試験片を作製する。この時に使用するポリオレフィン系樹脂(A)は、ペレットでもフィルムでも良い。ついで、得られた試験片をフーリエ変換型赤外分光分析装置(FT−IR)で透過法にて測定することによって、1710cm-1の吸光度(α)と1450cm-1の吸光度(β)を測定し、かかる値を用いて吸光度比(α/β)を算出する。
<(B)飽和脂肪酸>
本発明の多層構造体における接着性樹脂層用樹脂組成物に用いられる飽和脂肪酸(B)とは、飽和炭化水素のカルボン酸であり、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸などが挙げられる。上記飽和脂肪酸(B)の分子量としては、通常150〜900g/mol、好ましくは230〜700g/mol、特に好ましくは280〜570g/molである。また、飽和脂肪酸(B)は通常炭素数4〜28の飽和脂肪酸であり、好ましくは炭素数6〜24の飽和脂肪酸であり、特に好ましくは炭素数8〜23の飽和脂肪酸である。
かかる飽和脂肪酸(B)は複数種を併用するのが好ましい。特に好ましくは飽和脂肪酸(B)として、炭素数4〜12の飽和脂肪酸(B1)、炭素数13〜20の飽和脂肪酸(B2)、炭素数21〜28の飽和脂肪酸(B3)を併用する。飽和脂肪酸(B1)として、さらに好ましくは炭素数6〜12の飽和脂肪酸であり、最も好ましくは炭素数8〜12の飽和脂肪酸である。また、飽和脂肪酸(B2)として、さらに好ましくは炭素数15〜20の飽和脂肪酸であり、最も好ましくは炭素数17〜20の飽和脂肪酸である。そして、飽和脂肪酸(B3)として、さらに好ましくは炭素数21〜24の飽和脂肪酸であり、最も好ましくは炭素数21〜23の飽和脂肪酸である。
上記飽和脂肪酸(B)の含有量は、カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対して500ppm〜10000ppmであり、好ましくは550ppm〜5000ppmであり、さらに好ましくは600ppm〜2000ppmである。かかる含有量が少なすぎると発明の効果が十分に発揮されない傾向があり、含有量が多すぎるとガスバリア性樹脂層との接着力が低下する傾向がある。
<(C)酸素吸収剤>
本発明の多層構造体における接着性樹脂層用樹脂組成物には、酸素を吸収する目的で、カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)、飽和脂肪酸(B)の他、さらに酸素吸収剤(C)を含有してもよい。
上記酸素吸収剤(C)とは、本発明の多層構造体にて包装される内容物よりも素早く酸素を捕捉する目的で用いられる化合物である。具体的には、無機系の酸素吸収剤、有機系の酸素吸収剤、無機触媒(遷移金属系触媒)と有機化合物を組み合わせて用いる複合型酸素吸収剤等があげられる。
上記無機系酸素吸収剤としては、金属,金属化合物があげられ、これらと酸素が反応することにより酸素を吸収するものである。上記金属としては、水素よりもイオン化傾向の大きい金属(Fe、Zn、Mg、Al、K、Ca、Ni、Sn等)が好ましく、代表的には鉄である。これらの金属は、粉末状で用いられることが好ましい。鉄粉としては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉等、その製法等によらず、従来公知のものを特に限定されることなく何れも使用可能である。また、使用する鉄は、一旦酸化された鉄を還元処理したものであってもよい。また、上記金属化合物としては酸素欠損型金属化合物が好ましい。ここで、酸素欠損型金属化合物としては、酸化セリウム(CeO2)や、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)等があげられ、これらの酸化物が還元処理により結晶格子中から酸素が引き抜かれて酸素欠損状態となり、雰囲気中の酸素と反応することにより酸素吸収能を発揮するものである。このような金属および金属化合物は、反応促進剤としてハロゲン化金属等を含有することも好ましい。
上記有機系酸素吸収剤としては、例えば、水酸基含有化合物、キノン系化合物、二重結合含有化合物、被酸化性樹脂があげられる。これらに含まれる水酸基や二重結合に酸素が反応することにより、酸素を吸収することができる。上記有機系酸素吸収剤としては、ポリオクテニレン等のシクロアルケン類の開環重合体や、ブタジエン等の共役ジエン重合体およびその環化物等が好ましい。
このような酸素吸収剤(C)の含有量は、カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対して、通常1〜30重量%であり、好ましくは3〜25重量%であり、より好ましくは5〜20重量%である。
<(D)その他の配合剤>
本発明の多層構造体における接着性樹脂層用樹脂組成物には、上記各成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲内にて(例えば、接着性樹脂層用樹脂組成物全体の5重量%以下にて)、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;高級脂肪酸エステル(高級脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等の飽和脂肪族アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等のビス脂肪酸アミド)、(削除した方が良いかと思いますがいかがでしょうか。);フッ化エチレン樹脂等の滑剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト等);界面活性剤;共役ポリエン化合物等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
本発明の多層構造体における接着性樹脂層用樹脂組成物において、該樹脂組成物全体に対するカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)以外の樹脂を本発明の効果を損なわない程度(通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下)含有することも可能である。かる量が多すぎる場合、本発明の効果発現が不十分となる傾向がある。
本発明の多層構造体における接着性樹脂層用樹脂組成物において、該樹脂組成物全体に対するカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)の量は、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、殊に好ましくは95重量%以上である。かかる量が少なすぎる場合、本発明の効果発現が不十分となる傾向がある。
<接着性樹脂層用樹脂組成物の調製方法>
本発明の多層構造体の接着性樹脂層用樹脂組成物の製造方法については特に限定されず、公知の手法で飽和脂肪酸(B)をカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)と配合すればよい。例えば、両成分を多層構造を形成する成形機に供する前にあらかじめ配合してもよいし、多層構造を形成する成形機に供するフィーダー内で両成分を配合してもよいし、多層構造を形成する成形機にてカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)を溶融し、飽和脂肪酸(B)をサイドフィードするなど成形過程で配合してもよい。生産性の点で、多層構造を形成する成形機
に供する前に両成分を配合するのが好ましい。
多層構造を形成する成形機に供する前にあらかじめ両成分を配合するにあたり、飽和脂肪酸(B)をカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に配合したペレットである場合、本発明の多層構造体製造時の生産性が向上するため好ましい。この場合、飽和脂肪酸(B)がカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットの内部および/または外部表面に存在すればよい。
飽和脂肪酸(B)をカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットの内部に存在させる方法として、具体的には、(I)(A)、(B)成分を一括で混合した後に溶融混練する方法、(II)(A)成分を含有した溶液に(B)成分を添加して混合後、溶液中の溶剤を除去する方法、(III)(B)成分を含有した溶液に(A)成分を投入して含浸後乾燥する方法等を挙げることができ、中でも、(I)の方法が生産性、経済性の点で実用的である点で工業上好ましい。
上記方法(I)における溶融混練方法については、その手段としては、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミルなどの公知の溶融混練装置を使用して行うことができ、通常は150〜300℃、好ましくは180〜280℃で、通常1分〜20分間程度溶融混練する。特に単軸又は二軸の押出機を用いることが容易にペレットを得られる点で工業上有利であり、また必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。特に、水分や副生成物(熱分解低分子量物等)を除去するために、押出機に1個以上のベント孔を設けて減圧下に吸引したり、押出機中への酸素の混入を防ぐために、ホッパー内に窒素等の不活性ガスを連続的に供給したりすることにより、熱着色や熱劣化が軽減された品質の優れた接着性樹脂層用樹脂組成物を得ることができる。
また、押出機等の溶融混練装置への供給方法についても特に限定されず、1)(A)、(B)成分をドライブレンドして一括して押出機に供給する方法、2)(A)成分を押出機に供給して溶融させたところに固体状の(B)成分を供給する方法(ソリッドサイドフィード法)、3)(A)成分を押出機に供給して溶融させたところに溶融状態の(B)成分を供給する方法(メルトサイドフィード法)等を挙げることができるが、中でも、1)の方法が装置の簡便さ、ブレンド物のコスト面等で実用的である。
上記溶融混練後に接着性樹脂層用樹脂組成物ペレットを作製する方法としては公知の手法を用いることが可能であり、ストランドカット法、ホットカット法、アンダーウォーターカット法等が挙げられる。工業的生産性の点で好ましくはストランドカット法である。
上記ペレットの形状は、例えば、球形(オーバル形)、円柱形、立方体形、直方体形等任意の形状が採用可能である。通常、球形(オーバル形)または円柱形であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、球形(オーバル形)の場合は径が通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmであり、高さは通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmであり、円柱形の場合は底面の直径が通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmであり、長さは通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmである。
上記接着性樹脂層用樹脂組成物またはペレットの含水率は、通常0.001〜5重量%、さらには0.01〜2重量%、特には0.1〜1重量部になるようにするのが好ましく、該含水率が低すぎると、ロングラン成形性が低下する傾向にあり、逆に高すぎると、押出成形時時に発泡が発生する傾向がある。
尚、ここで言う接着性樹脂層用樹脂組成物ペレットの含水率については、以下の方法により測定・算出されるものである。
[含水率の測定方法]
接着性樹脂層用樹脂組成物ペレットを電子天秤にて秤量(W1:単位g)後、150℃に維持された熱風オーブン型乾燥器に入れ、5時間乾燥させてから、更にデシケーター中で30分間放冷させた後の重量を同様に秤量(W2:単位g)して、以下の(1)式から算出する。
[式2]
含水率(%)={(W1−W2)/W1}×100 ・・・(2)
また、飽和脂肪酸(B)をカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットの外部に存在させる方法として、例えば、(1)カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットに(B)成分をドライブレンドする方法、(2)加熱したカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットに溶融させた(B)成分をブレンドする方法、(3)少量のシリコンオイル等を混ぜたカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットに(B)成分をブレンドする方法、(4)グリセリン等の液状可塑剤を含ませたカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットに(B)成分をブレンドする方法、(5)カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットに少量の溶媒に溶解させた(B)成分をブレンドする方法等を挙げることが出来るが、工業上好適には(1)の方法が採用され、かかる方法について更に具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットの表面に(B)成分を付着させるに当たっては、(B)成分の付着性を向上させるために、かかるペレットの含水率を0.1〜5重量%(更には0.5〜4重量%、特には1〜3重量%)に調整しておくことが好ましく、かかる含水率が0.1重量%未満では(B)成分が脱落しやすく付着(添着)分布が不均一となり、逆に5重量%を越えると(B)が凝集してこの時も付着(添着)分布が不均一となる傾向がある。
また、ブレンドには、ロッキングミキサー、リボンブレンダー、ラインミキサー等の公知の混合装置を用いて付着させることが出来る。
<多層構造体の製造方法>
本発明の多層構造体を作製する方法は、公知の溶融成形手法が採用可能である。本発明においては、特に共射出成形法、共押出成形法など、溶融状態にてガスバリア性樹脂と接着性樹脂層用樹脂組成物が接する成形方法の場合、本発明の効果が特に効果的に得られる傾向がある。
例えば、ガスバリア性樹脂、熱可塑性樹脂および上記接着性樹脂層用樹脂組成物とを共押出成形する方法;熱可塑性樹脂のフィルム、シート等にガスバリア性樹脂および上記接着性樹脂層用樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法;ガスバリア性樹脂のフィルム、シート等に熱可塑性樹脂および上記接着性樹脂層用樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法等があげられる。これらの中でも、コストや環境の観点から考慮して共押出成形する方法が好ましい。溶融成形温度は、通常150〜300℃、好ましくは180〜250℃の範囲から選択される。
本発明の多層構造体は、必要に応じて(加熱)延伸処理を行うことも可能である。延伸処理は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。また、延伸方法としてはロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。延伸温度は、通常40〜170℃、好ましくは60〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が低すぎた場合は延伸性が不良となり、高すぎた場合は安定した延伸状態を維持することが困難となる。
なお、延伸後に寸法安定性を付与することを目的として、次いで熱固定を行なってもよい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、例えば上記延伸した多層構造体(延伸フィルム)を、緊張状態を保ちながら通常80〜180℃、好ましくは100〜165℃で、通常2〜600秒間程度熱処理を行なう。
また、本発明の多層構造体を用いて得られてなる多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定するなどの処理を行なえばよい。
さらに、場合によっては、本発明の多層構造体からカップやトレイ状の多層容器を得ることも可能である。多層容器の作製方法としては、通常絞り成形法が採用され、具体的には真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト式真空圧空成形法等があげられる。さらに、多層パリソン(ブロー前の中空管状の予備成形物)からチューブやボトル状の多層容器を得る場合はブロー成形法が採用され、具体的には押出ブロー成形法(双頭式、金型移動式、パリソンシフト式、ロータリー式、アキュムレーター式、水平パリソン式等)、コールドパリソン式ブロー成形法、射出ブロー成形法、二軸延伸ブロー成形法
(押出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出成形インライン式二軸延伸ブロー成形法等)等があげられる。 本発明の多層積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液または溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行なうことができる。
<多層構造体>
本発明の多層構造体の層構成は、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有するものであり、各層は隣接するものである。
すなわち、ガスバリア性樹脂層をα、本発明の接着性樹脂層をβ、熱可塑性樹脂層をγ、とするとき、例えばα/β/γ、γ/β/α/β/γ、γ/β/α/α/β/γ、γ/β/α/β/α/β/γ等任意の組み合わせが可能である。また、このような多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品当等を再溶融成形して得られる、該ガスバリア性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物を含むリサイクル層を設けても良い。かかるリサイクル層は本発明の多層構造体において熱可塑性樹脂層として考慮するが、特にリサイクル層Rとするとき、例えばα/β/R、α/β/R/γ、γ/α/β/R、R/β/α/β/R、γ/R/β/α/β/R/γ等とすることも可能である。
本発明の多層構造体の熱可塑性樹脂層として、上述したガスバリア性樹脂や接着性樹脂を用いることが可能である。したがって、上記した層構成におけるγをαおよびβに置換することが可能である。例えば、α/β/α、α/β/β、α/β/α/β/α、β/β/α/β/β、α/β/α/α/β/α、γ/β/α/γ/β/α、γ/β/α/β/α/β/γ等任意の組み合わせが可能である。
尚、同種層が複数ある場合は、層の樹脂種や組成が同一であっても異なってもよい。
本発明の多層構造体(延伸したものを含む)の厚み、さらには多層構造体を構成する接着性樹脂層、ガスバリア性樹脂層、熱可塑性樹脂層の厚みは、層構成、接着性樹脂層用樹脂組成物のベース樹脂の種類、ガスバリア性樹脂の種類、熱可塑性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性等により適宜設定されるものである。なお、下記の数値は、接着性樹脂層、ガスバリア性樹脂層、熱可塑性樹脂層のうち少なくとも1種の層が2層以上存在する場合には、同種の層の厚みを総計した値である。
本発明の多層構造体(延伸したものを含む)の厚みは、目的とする用途により任意に選択可能であるが、通常10〜5000μm、好ましくは30〜3000μm、特に好ましくは50〜2000μmである。かかる値が上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
そして、接着性樹脂層は、通常0.5〜250μm、好ましくは1〜150μm、特に好ましくは3〜100μmである。かかる値が上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
ガスバリア性樹脂層は、通常1〜500μm、好ましくは3〜300μm、特に好ましくは5〜200μmである。かかる厚みが薄すぎる場合には、ガスバリア性が低下することがある。また、厚すぎる場合には、多層構造体におけるガスバリア性が過剰性能となり、不必要な原料を使用することとなるため経済性を損なう傾向がある。
熱可塑性樹脂層は通常5〜30000μm、好ましくは10〜20000μm、特に好ましくは20〜10000μmである。かかる値が上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
多層構造体におけるガスバリア性樹脂層と接着性樹脂層の厚み比(ガスバリア性樹脂層/接着性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの薄い層同士の比にて、通常10/90〜99/1、好ましくは20/80〜95/5、特に好ましくは50/50〜90/10、殊に好ましくは70/30〜90/10である。かかる値が上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
さらに、多層構造体における熱可塑性樹脂層と接着性樹脂層の厚み比(熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの薄い層同士の比にて、通常10/90〜99/1、好ましくは20/80〜95/5、特に好ましくは50/50〜90/10、殊に好ましくは80/20〜90/10である。かかる値が上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。なお、熱可塑性樹脂がガスバリア性樹脂層である場合は、かかる厚み比は適用されず、ガスバリア性樹脂層と接着性樹脂層の厚み比のみを考慮する。
また、多層構造体における熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層の厚み比(熱可塑性樹脂層/ガスバリア性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの薄い層同士の比にて、通常50/50〜99/1、好ましくは60/40〜95/5、特に好ましくは70/30〜90/10である。かかる値が記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。なお、熱可塑性樹脂がガスバリア性樹脂層である場合は、かかる厚み比は考慮されない。
上記のようにして得られた本発明の多層構造体は、包装材料として有用である。かかる多層構造体からなる袋、カップ、トレイ、チューブ、ボトル等の容器、蓋材等は、例えば生肉、畜肉加工品(ハム、ベーコン、ウインナー等)加工米等の一般的な食品や調理済み食品、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、味噌、わさび、からし、焼肉等のたれ、ゼリー、プリン、ヨーグルト等の半固形状食品・調味料、発酵食品、サラダ油等の油脂食品、スープ、みりん、清酒、ビール、ワイン、ジュース、紅茶、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、牛乳等の液体状飲料、ペットフード、化粧品、医薬品、洗剤、香粧品、工業薬品、農薬、燃料等各種の用途に有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、実施例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
[実施例1]
<接着性樹脂層用樹脂組成物の製造>
カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)として、無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン[LyondellBasell社製「PLEXAR PX3236」、吸光度比(α/β):0.05、密度:0.922g/cm3、MFR:2.0g/10分(190℃、荷重2160g)]を用い、これに対して飽和脂肪酸(B)として、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸を用いた。すなわち、前記ポリオレフィン系樹脂(A)に対してラウリン酸を237ppm、ステアリン酸を323ppm、ベヘン酸を380ppm用いた。すなわち、前記ポリオレフィン系樹脂(A)に対して飽和脂肪酸(B)は940ppmであった。
前記ポリオレフィン系樹脂(A)ペレット、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸を配合し一括でドライブレンドしたあと、20mmφ二軸押出成形装置(L/D=25)で溶融混練してペレット化した。
尚、上記カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)における吸光度比(α/β)は、下記の条件で測定し算出した。
100℃で3時間加熱乾燥したカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)ペレットを、ミクロトームでスライスして厚み90μmの試験片を作製した。ついで、得られた試験片をフーリエ変換型赤外分光分析装置(FT−IR)で透過法にて測定することによって、1710cm-1の吸光度(α)と1450cm-1の吸光度(β)を測定し、かかる値を用いて吸光度比(α/β)を算出した。
<多層構造体の製造>
3種5層多層共押出キャストフィルム製膜装置に、上記で調製した接着性樹脂層用樹脂組成物、熱可塑性樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)[日本ポリエチレン社製「UF240」、密度:0.920g/cm3、MFR:2.1g/10分(190℃、荷重2160g)]、ガスバリア性樹脂としてEVOH[エチレン含有率38モル%、ケン化度99.7モル%、密度:1.17g/cm3、MFR4.1g/10分(210℃、荷重2160g)]を用い、下記条件で多層共押出成形により、熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/ガスバリア性樹脂層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層の3種5層構造の多層構造体(フィルム)を得た。
多層構造体の各層の厚み(μm)は、37.5/5/15/5/37.5であり、多層構造体の全厚みは100μmであった。成形装置のダイ温度は、全て210℃に設定した。
[多層共押出成形条件]
・中間層押出機(EVOH):40mmφ単軸押出機(バレル温度:210℃)
・上下層押出機(LLDPE):40mmφ単軸押出機(バレル温度:210℃)
・中上下層押出機(接着性樹脂層用樹脂組成物):32mmφ単軸押出機(バレル温度
:210℃)
・ダイ:3種5層フィードブロック型Tダイ(ダイ温度:210℃)
・引取速度:14m/分
・ロール温度:50℃
<多層構造体の外観>
上記で製造した多層構造体を、JIS K 7374「プラスチックー像鮮明度の求め方」に準拠した像鮮明率測定(光学櫛は0.25mm)により評価した。フィルム試験片は、フィルム機械方向を鉛直方向として測定した。測定器にはスガ試験機社製ICM−1型写像性測定器を用いた。
この像鮮明率数値が高いほど、透明性が優れている事を意味する。結果を表1に示す。
<剥離強度>
上記で製造した多層構造体における、接着性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間の剥離強度を、下記条件にてT−peel剥離試験を実施し評価した。結果を表1に示す。
[T−peel剥離試験条件]
装置:Autograph AGS-H(島津製作所製)
ロードセル:500N
試験方法:T−peel法(T型状にして剥離)
試験片サイズ: 幅15 mm
試験速度: 300 mm/min
[比較例1]
実施例1において、飽和脂肪酸(B)を配合しなかった。それ以外は、実施例1と同様に行い、接着性樹脂層用樹脂組成物および多層構造体を得た。
得られた多層構造体を実施例1と同様に評価した。
上記評価結果を下記表1に併せて示す。
Figure 2018027673
比較例1は接着性樹脂層として接着性樹脂のみを用いた場合の評価である。本発明の多層構造体を用いた実施例1においては、飽和脂肪酸(B)を多量配合することで、透明性は約2倍に向上した。
なお特許文献2によると、製造例6は、無水コハク酸を100重量ppm有する接着性樹脂組成物を用いて、エチレン・ビニルアルコール共重合体20μm/接着性樹脂10μm/エチレン・プロピレンランダム共重合体40μmの3層フィルムを得て、エチレン・ビニルアルコール共重合体層と接着性樹脂層との層間接着力を測定し、その接着強度が2.0N/cmであったことが記載されている。また、製造例7では無水コハク酸を加えていない以外は製造例6と同様にして3層フィルム得て、エチレン・ビニルアルコール共重合体層と接着性樹脂層との層間接着力を測定し、その接着強度が3.4N/cmであったことが記載されており、無水コハク酸を含有することで接着強度が41%も低下することが記載されている。
従って、上記比較例1における剥離強度と比較して、実施例1の剥離強度が102%になり、接着性が保持されることは従来の傾向とは異なる予想外の効果である。
上記実験例から、本発明の接着性樹脂層用樹脂組成物は、カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対して飽和脂肪酸(B)を含有する事で、接着性を保持しつつ、優れた透明性を有する多層構造体が得られることがわかる。

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体であって、該接着性樹脂層がカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対し飽和脂肪酸(B)を500ppm〜10000ppm含有する樹脂組成物からなることを特徴とする多層構造体。
  2. 前記樹脂組成物における飽和脂肪酸(B)の分子量が150〜900g/molであることを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
  3. 前記樹脂組成物における飽和脂肪酸(B)の炭素数が4〜28であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の多層構造体。
  4. 前記樹脂組成物における飽和脂肪酸(B)として、炭素数4〜12の飽和脂肪酸(B1)、炭素数13〜20の飽和脂肪酸(B2)、炭素数21〜28の飽和脂肪酸(B3)を併用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層構造体。
  5. 前記樹脂組成物におけるカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)が、厚み90μmのフィルムとした場合のフーリエ変換型赤外分光分析(透過法)による1710cm-1の吸光度(α)と1450cm-1の吸光度(β)の比(α/β)が0.005〜0.5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層構造体。
  6. 前記ガスバリア性樹脂が、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物またはポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層構造体。
  7. 全厚みが、10〜5000μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層構造体。
  8. ガスバリア性樹脂層と接着性樹脂層との厚み比(ガスバリア性樹脂層/接着性樹脂層)が10/90〜99/1であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多層構造体。
  9. カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対し飽和脂肪酸(B)を500ppm〜10000ppm含有することを特徴とする接着性樹脂層用樹脂組成物。
  10. 熱可塑性樹脂、ガスバリア性樹脂およびカルボキシル基または酸無水物基を含有するポリオレフィン系樹脂(A)に対し飽和脂肪酸(B)を500ppm〜10000ppm含有する接着性樹脂層用樹脂組成物を用い、共押出成形法または共射出成型法にて、熱可塑性樹脂層とガスバリア性樹脂層との間に接着性樹脂層を有する多層構造体を得ることを特徴とする多層構造体の製造方法。
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