JP2018017324A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Tomohiro Chinbe
友宏 珍部
典弘 塚本
Norihiro Tsukamoto
典弘 塚本
圭祐 太田
Keisuke Ota
圭祐 太田
友弘 浅見
Tomohiro Asami
友弘 浅見
宏将 高井
Hiromasa Takai
宏将 高井
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Abstract

【課題】有段自動変速機を備える車両の制御装置において、タイアップによるショックを発生させることなく、変速進行を促す。
【解決手段】油圧制御を通じて複数の係合要素を選択的に係合または解放させることにより変速比が異なる複数のギヤ段を成立させる自動変速機を備える車両の制御装置である。被駆動アップシフト変速または駆動ダウンシフト変速の実行中、変速進行が停滞していると判定された場合(S3)に、解放側係合要素の係合油圧を低下側に補正する(S5)とともに、係合油圧を低下させることで解放側クラッチトルクTcdrnが略0になっても変速進行の停滞が解消されていないと判定された場合(S6、S7)には、係合側係合要素の係合油圧を増加側に補正する(S9)。
【選択図】図7

Description

本発明は、車両の制御装置に関し、特に、有段自動変速機を備える車両の制御装置に関するものである。
油圧制御を通じて複数の係合要素を選択的に係合または解放させることにより変速比が異なる複数のギヤ段を成立させる自動変速機に関し、従来から、変速進行の停滞を解消するための様々な手法が提案されている。
例えば、特許文献1には、イナーシャ相の開始を検出したら、油圧制御の態様をイナーシャ相中の態様に移行する一方、イナーシャ相の開始検出時点から所定時間を経過すると変速動作を強制的に終了させる自動変速機の変速制御装置において、イナーシャ相の開始を検出できない場合には、バックアップ時間を上回った時にイナーシャ相開始異常と判断し、油圧制御の態様をイナーシャ相中の態様に強制的に移行するとともに、イナーシャ相開始異常と判断された時点から所定時間を経過した場合には変速動作を強制的に終了させることが提案されている。
この特許文献1のものによれば、イナーシャ相の開始検出時点またはイナーシャ相開始異常と判断された時点から所定時間を経過した場合には、変速動作を強制的に終了させることから、摩擦係合要素の耐久性を確保することができるとされている。
特開2007−127162号公報
確かに、上記特許文献1のものによれば、変速進行の停滞が生じた場合でも、変速動作を強制的に終了させることで、変速進行の停滞を解消することができる。
もっとも、自動変速機における回転部材(例えば入力軸)の回転速度変化が停滞しているような場合には、変速動作を強制的に終了させるよりも、当該回転部材の回転速度変化を促すことで、自然な形で変速動作を終了させて変速進行の停滞を解消する方が望ましい。
そこで、例えば入力軸トルクだけでは変速を完了させるために必要なイナーシャトルクを確保することが困難であると判断した場合に、係合油圧を増圧して係合側係合要素を締結することで、係合側係合要素によって変速に必要なイナーシャトルクを確保して、変速進行の停滞を解消することが考えられる。
しかしながら、かかる手法では、解放側係合要素がトルク容量を持った状態で係合側係合要素を締結するとタイアップ状態となり、ショックが発生してドライバビリティが悪化するおそれがある。また、アイドルトルク付近ではトルク信号精度が悪化するため、入力軸トルクだけでは変速を完了させるのに必要なイナーシャトルクを確保することが困難か否かを判断すること自体が難しいことから、係合側係合要素の係合油圧を増圧する場合と増圧しない場合とが明確でなく、ドライバビリティが安定しないという問題がある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有段自動変速機を備える車両の制御装置において、タイアップによるショックを発生させることなく、変速進行を促す技術を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る車両の制御装置では、先ず解放側係合要素によって変速進行の停滞の解消を図るとともに、解放側係合要素による停滞解消が困難である場合に初めて、係合側係合要素によって変速進行の停滞の解消を図るようにしている。
具体的には、本発明は、エンジンと、油圧制御を通じて複数の係合要素を選択的に係合または解放させることにより変速比が異なる複数のギヤ段を成立させて当該エンジンからの動力を駆動輪側へ伝達する自動変速機と、を備える車両の制御装置を対象としている。
そして、上記制御装置は、イナーシャ相開始に関連して発生する、上記自動変速機の回転部材の回転速度変化に基づいて変速進行状況を判定する変速進行状況判定手段を備え、上記自動変速機が被駆動状態でのアップシフト変速または上記自動変速機が駆動状態でのダウンシフト変速の実行中、上記変速進行状況判定手段によって変速進行が停滞していると判定された場合に、解放側係合要素の係合油圧を低下側に補正するとともに、係合油圧を低下側に補正することで当該解放側係合要素のトルク容量が略0になっても、上記変速進行状況判定手段によって変速進行の停滞が解消されていないと判定された場合には、係合側係合要素の係合油圧を増加側に補正することを特徴とするものである。
例えば、自動変速機が被駆動状態でのアップシフト変速(以下、被駆動アップシフト変速ともいう)では、駆動輪の連れ回りにより自動変速機の回転部材(例えば入力軸)が回転していることから、解放側係合要素の係合油圧を下げて係合を緩めることで、回転部材の回転速度が変化(低下)する。一方、自動変速機が駆動状態でのダウンシフト変速(以下、駆動ダウンシフト変速ともいう)では、動力により回転する自動変速機の回転部材(例えば入力軸)に対し、係合要素が恰も回転抵抗となっていることから、解放側係合要素の係合油圧を下げることで、回転部材の回転速度が変化(上昇)する。
そうして、本発明では、被駆動アップシフト変速または駆動ダウンシフト変速、換言すると、解放側係合要素の係合油圧によって回転部材の回転速度を制御する変速の実行中において、回転部材の回転速度変化が停滞している場合に、解放側係合要素の係合油圧を低下側に補正することから、回転部材の回転速度変化を促して変速進行の停滞の解消を図ることができる。
さらに、係合油圧を低下側に補正することで解放側係合要素のトルク容量が略0になっても、変速進行の停滞が解消されていない場合には、係合側係合要素の係合油圧を増加側に補正することから、変速に必要なイナーシャトルクを確保して変速進行の停滞の解消を確実に図ることができる。加えて、解放側係合要素のトルク容量が略0になって初めて係合側係合要素の係合油圧を増加側に補正することから、タイアップによるショック発生を確実に抑えることができる。
また、上記制御装置では、上記解放側係合要素のトルク容量を略0にする場合には、当該解放側係合要素のトルク容量が略0になる油圧のうち最も高い油圧値になるように、当該解放側係合要素の係合油圧を低下側に補正することが好ましい。
この構成によれば、解放側係合要素のトルク容量が略0になる油圧のうち最も高い油圧値になるように、係合油圧を補正することから、運転者が不意にアクセルペダルを踏み込んだ場合でも、直ぐにトルク容量を略0よりも高くすることができるので、タービン吹き等が生じるのを抑えることができる。
以上説明したように、本発明に係る車両の制御装置によれば、タイアップによるショックを発生させることなく、変速進行の停滞を解消することができ、これにより、ドライバビリティを安定させることができる。
本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。 トルクコンバータおよび自動変速機の構成を示すスケルトン図である。 自動変速機における変速段毎の第1クラッチ〜第4クラッチ、第1ブレーキおよび第2ブレーキの係合状態を示す係合表である。 車両の制御系の構成を示すブロック図である。 変速進行の停滞がない場合のタイムチャートの一例である。 係合油圧とトルク容量との関係を模式的に説明する図である。 変速進行制御の処理手順を説明するためのフローチャート図である。 変速進行制御を行った場合のタイムチャートの一例である。 従来の制御における変速進行が停滞した場合のタイムチャートの一例である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、図1〜図4を参照して、本実施形態に係る車両100について説明する。
車両100は、図1に示すように、エンジン1と、トルクコンバータ2と、自動変速機3と、油圧制御装置4と、ECU5と、を備えている。この車両100は、たとえばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式であり、エンジン1の出力が、トルクコンバータ2および自動変速機3を介してデファレンシャル装置6に伝達され、左右の駆動輪(前輪)7に分配されるようになっている。
−エンジン−
エンジン1は、走行用の駆動力源であり、たとえば多気筒ガソリンエンジンである。エンジン1は、スロットルバルブのスロットル開度(吸入空気量)、燃料噴射量、点火時期などにより運転状態を制御可能に構成されている。
−トルクコンバータ−
トルクコンバータ2は、図2に示すように、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト1aに連結されたポンプインペラ21と、自動変速機3に連結されたタービンランナ22と、トルク増幅機能を有するステータ23と、エンジン1と自動変速機3とを直結するためのロックアップクラッチ24とを含んでいる。なお、図2では、トルクコンバータ2および自動変速機3の回転中心軸に対して、下側半分を省略して上側半分のみを模式的に示している。
−自動変速機−
自動変速機3は、エンジン1と駆動輪7との間の動力伝達経路に設けられ、入力軸3aの回転を変速して出力軸3bに出力するように構成されている。この自動変速機3では、入力軸3aがトルクコンバータ2のタービンランナ22に連結され、出力軸3bがデファレンシャル装置6などを介して駆動輪7に連結されている。
自動変速機3は、第1遊星歯車装置31aを主体として構成される第1変速部(フロントプラネタリ)31、第2遊星歯車装置32aと第3遊星歯車装置32bとを主体として構成される第2変速部(リアプラネタリ)32、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2などによって構成されている。
第1変速部31を構成する第1遊星歯車装置31aは、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であって、サンギヤS1と、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1と、これらピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するプラネタリキャリアCA1と、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1とを備えている。
プラネタリキャリアCA1は、入力軸3aに連結され、その入力軸3aと一体的に回転するようになっている。サンギヤS1は、トランスミッションケース30に固定され、回転不能である。リングギヤR1は、中間出力部材として機能し、入力軸3aに対して減速されてその減速回転を第2変速部32に伝達する。
第2変速部32を構成する第2遊星歯車装置32aは、シングルピニオン型の遊星歯車機構であって、サンギヤS2と、ピニオンギヤP2と、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するプラネタリキャリアRCAと、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤRRとを備えている。
また、第2変速部32を構成する第3遊星歯車装置32bは、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であって、サンギヤS3と、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2およびP3と、それらピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持するプラネタリキャリアRCAと、ピニオンギヤP2およびP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤRRとを備えている。なお、ピニオンギヤP2、プラネタリキャリアRCAおよびリングギヤRRは、第2遊星歯車装置32aおよび第3遊星歯車装置32bで共用されている。
サンギヤS2は、第1ブレーキB1によりトランスミッションケース30に選択的に連結される。また、サンギヤS2は、第3クラッチC3を介してリングギヤR1に選択的に連結される。さらに、サンギヤS2は、第4クラッチC4を介してプラネタリキャリアCA1に選択的に連結される。サンギヤS3は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に選択的に連結される。プラネタリキャリアRCAは、第2ブレーキB2によりトランスミッションケース30に選択的に連結される。また、プラネタリキャリアRCAは、第2クラッチC2を介して入力軸3aに選択的に連結される。リングギヤRRは、出力軸3bに連結され、その出力軸3bと一体的に回転するようになっている。
第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2は、いずれも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる摩擦係合要素であり、油圧制御装置4およびECU5によって制御される。なお、請求項との関係では、これら第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2が、油圧制御を通じて選択的に係合または解放される「係合要素」に相当する。
図3は、変速段(ギヤ段)毎の第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の係合状態または解放状態を示した係合表である。なお、図3の係合表において、○印は「係合状態」を示し、空白は「解放状態」を示している。
図3に示すように、この例の自動変速機3では、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合されることにより、変速比(入力軸3aの回転速度ωi/出力軸3bの回転速度ωo)が最も大きい第1変速段(1st)が成立する。第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合されることにより第2変速段(2nd)が成立する。
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合されることにより第3変速段(3rd)が成立し、第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合されることにより第4変速段(4th)が成立する。第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合されることにより第5変速段(5th)が成立し、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合されることにより第6変速段(6th)が成立する。第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合されることにより第7変速段(7th)が成立し、第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合されることにより第8変速段(8th)が成立する。なお、第3クラッチC3および第2ブレーキB2が係合されることにより後進段(Rev)が成立する。
−油圧制御装置−
油圧制御装置4は、自動変速機3の摩擦係合要素の状態(係合状態または解放状態)を制御するために設けられている。なお、油圧制御装置4は、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ24を制御する機能も有する。
−ECU−
ECU(制御装置)5は、エンジン1の運転制御および自動変速機3の変速制御などを行うように構成されている。具体的には、ECU5は、図4に示すように、CPU51と、ROM52と、RAM53と、バックアップRAM54と、入力インターフェース55と、出力インターフェース56とを含んでいる。
CPU51は、ROM52に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。ROM52には、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップなどが記憶されている。RAM53は、CPU51による演算結果や各センサの検出結果などを一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM54は、イグニッションをオフする際に保存すべきデータなどを記憶する不揮発性のメモリである。
入力インターフェース55には、クランクポジションセンサ81、入力軸回転速度センサ82、出力軸回転速度センサ83、アクセル開度センサ84およびスロットル開度センサ85などが接続されている。
クランクポジションセンサ81は、エンジン1の回転速度Neを算出するために設けられている。入力軸回転速度センサ82は、自動変速機3の入力軸3aの回転速度(入力軸回転速度ωi)(=タービン回転速度ωt)を算出するために設けられている。出力軸回転速度センサ83は、自動変速機3の出力軸3bの回転速度(出力軸回転速度ωo)を算出するために設けられている。なお、出力軸3bの回転速度から車速Vを算出することが可能である。アクセル開度センサ84は、アクセルペダルの踏込量(操作量)であるアクセル開度Accを検出するために設けられている。スロットル開度センサ85は、スロットルバルブのスロットル開度を検出するために設けられている。
出力インターフェース56には、インジェクタ91、イグナイタ92、スロットルモータ93および油圧制御装置4などが接続されている。インジェクタ91は、燃料噴射弁であり、燃料噴射量を調整可能である。イグナイタ92は、点火プラグによる点火時期を調整するために設けられている。スロットルモータ93は、スロットルバルブのスロットル開度を調整するために設けられている。
そして、ECU5は、各センサの検出結果などに基づいて、スロットル開度、燃料噴射量および点火時期などを制御することにより、エンジン1の運転状態を制御可能に構成されている。また、ECU5は、油圧制御装置4を制御することにより、自動変速機3の変速制御およびトルクコンバータ2のロックアップクラッチ24の制御を実行可能に構成されている。
ECU5による変速制御では、例えば、車速Vおよびアクセル開度Accをパラメータとする変速マップ(図示せず)に基づいて目標変速段が設定され、現在の変速段が目標変速段になるように油圧制御装置4が制御される。
また、本実施形態では、ECU5は、自動変速機3が被駆動状態でのアップシフト変速(以下、被駆動アップシフト変速ともいう)、または、自動変速機3が駆動状態でのダウンシフト変速(以下、駆動ダウンシフト変速ともいう)の実行中、変速進行状況に応じて、解放側係合要素の係合油圧、または、解放側および係合側係合要素の係合油圧を補正する制御(以下、変速進行制御ともいう)を行うが、その詳細については後述する。
−変速モデルを用いた変速制御−
本実施形態において実行される変速進行制御を説明する前に、前述した自動変速機3において変速目標値を実現させる制御操作量を決定するための変速制御の概略について説明する。
一般的な変速制御としては、例えば変速ショックや変速時間等が適切であるか否かを実車にて評価しつつ適合により予め定められた制御マップに基づいて、変速時の各摩擦係合要素のトルク容量(或いは油圧指令値)を決定して変速を実行する手法がある。この制御マップを用いる手法では、パワーオンダウンシフトやパワーオフアップシフト等の変速パターンおよび変速前後の変速段の組み合わせに応じて、多数の制御マップを作成しておく必要がある。そのため、自動変速機の変速段が多段化されるほど、適合作業に多くの労力が必要となってしまう。
そこで、本実施形態では、変速制御として、制御マップを用いる手法に代えて、変速目標値を実現させる制御操作量を決定する変速モデルを用いて変速を実行する手法を採用している。変速目標値は、変速時に実現したい変化態様を定める要素(例えば変速時間、駆動力等)の目標値である。制御操作量は、制御対象に対して操作する要素(エンジントルク、クラッチトルク等)の要求値である。
以下、変速モデルを用いた変速制御について説明する。変速中における運動方程式は、下記の式(1)および式(2)で表される。
Figure 2018017324
この式(1)および式(2)は、自動変速機3を構成する相互に連結された各回転要素毎の運動方程式、および、自動変速機3を構成する遊星歯車装置における関係式から導き出されたものである。各回転要素毎の運動方程式は、各回転要素におけるイナーシャと回転速度時間変化率との積で表されるトルクを、遊星歯車装置の3つの部材、および摩擦係合要素の両側の部材のうち各回転要素に関与する部材に作用するトルクにて規定した運動方程式である。また、遊星歯車装置における関係式は、遊星歯車装置の歯車比を用いて、その遊星歯車装置の3つの部材におけるトルクの関係と回転速度時間変化率の関係とを各々規定した関係式である。
式(1)および式(2)において、dωt/dtは、タービン回転速度ωt(すなわち自動変速機3の入力軸回転速度ωi)の時間微分すなわち時間変化率であり、入力軸3a側の回転部材の速度変化量としての入力軸3aの角加速度(以下、入力軸角加速度という)を表している。dωo/dtは、自動変速機3の出力軸回転速度ωoの時間変化率であり、出力軸角加速度を表している。Ttは、入力軸3a側の回転部材上のトルクとしての入力軸3a上のトルクであるタービントルクすなわち自動変速機3の入力軸トルクTiを表している。このタービントルクTtは、トルクコンバータ2のトルク比tを考慮すればエンジントルクTe(=Tt/t)と同意である。Toは、出力軸3b側の回転部材上のトルクとしての出力軸3b上のトルクである出力軸トルクを表している。Tcaplは、変速時に係合動作を行う摩擦係合要素のトルク容量(以下、係合側クラッチトルクともいう)である。Tcdrnは、変速時に解放動作を行う摩擦係合要素のトルク容量(以下、解放側クラッチトルクともいう)である。a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2はそれぞれ、式(1)および式(2)を導き出した際に定数としたものであり、各回転要素におけるイナーシャおよび遊星歯車装置の歯車比から設計的に定められる係数である。この定数の具体的な数値は、例えば変速の種類(例えば変速パターンや変速前後の変速段の組み合わせ)毎に異なる。従って、運動方程式としては1つの所定のものであるが、自動変速機3の変速には、変速の種類毎に異なる定数とされたそれぞれの変速の種類に対応する運動方程式が用いられる。
式(1)および式(2)は、変速目標値と制御操作量との関係を定式化した自動変速機3のギヤトレーン運動方程式である。変速目標値は、変速時間および駆動力の各目標値を表現でき、ギヤトレーン運動方程式上で取り扱えるものである。本実施形態では、変速時間を表現できる物理量の一例として、入力軸角加速度dωt/dtを用いている。また、駆動力を表現できる物理量の一例として、出力軸トルクToを用いている。つまり、本実施形態では、変速目標値を、入力軸角加速度dωt/dtと、出力軸トルクToとの2つの値で設定している。
一方、本実施形態では、変速目標値を成立させる制御操作量を、タービントルクTt(エンジントルクTeも同意)と、係合側クラッチトルクTcaplと、解放側クラッチトルクTcdrnとの3つの値で設定している。そうすると、運動方程式が式(1)および式(2)の2式で構成されることに対して制御操作量が3つあるため、2つの変速目標値を成立させる制御操作量を一意に解くことはできない。尚、各式中の出力軸角加速度dωo/dtは、出力軸回転速度センサ83の検出値である出力軸回転速度ωoから算出される。
そこで、式(1)および式(2)の運動方程式に、拘束条件を追加して制御操作量を一意に解くことについて検討した。そして、本実施形態では、変速中のトルクの受け渡しを表現したり制御したりするのに適しており、また、何れの変速パターンにも対応することができる拘束条件として、解放側クラッチと係合側クラッチとで受け持つ伝達トルクのトルク分担率を用いることとしている。つまり、変速中のトルクの受け渡しを運動方程式に組み込むことができ、且つ制御操作量を一意に解くことができる、伝達トルクのトルク分担率を拘束条件として設定することとしている。トルク分担率は、自動変速機3の変速時に解放側クラッチと係合側クラッチとで受け持つ必要がある合計の伝達トルク(合計伝達トルク)を、例えば入力軸3a上のトルク(入力軸上合計伝達トルク)に置き換えたときに、その入力軸上合計伝達トルクに対して両摩擦係合要素が各々分担する伝達トルクの割合である。本実施形態では、係合側クラッチのトルク分担率を「xapl」とし、解放側クラッチのトルク分担率を「xdrn」として、それぞれのトルク分担率を、変速中のトルクの受け渡しを反映するように時系列で変化するトルク分担率x(例えば0≦x≦1)を用いて次式(3)および次式(4)のように定義する。
xapl=x …(3)
xdrn=1−x …(4)
係合側クラッチトルクTcaplと解放側クラッチトルクTcdrnとの関係式は、入力軸3a上のトルクに置き換えた「Tcapl」および「Tcdrn」と、式(3)および式(4)とに基づいて、「x」(=xapl)と「1−x」(=xdrn)とを用いて定義することができる。そして、式(1)、式(2)、および、「Tcapl」と「Tcdrn」との関係式から、制御操作量である、タービントルクTt、係合側クラッチトルクTcapl、および、解放側クラッチトルクTcdrnを算出する関係式が導き出される。タービントルクTt(エンジントルクTeも同意)は、「x」(=xapl)、「1−x」(=xdrn)、入力軸角加速度dωt/dt、および、出力軸トルクToなどを用いた関係式にて表される。同様に、係合側クラッチトルクTcaplは、「x」(=xapl)、入力軸角加速度dωt/dt、および、出力軸トルクToなどを用いた関係式にて表される。同様に、解放側クラッチトルクTcdrnは、「1−x」(=xdrn)、入力軸角加速度dωt/dt、および、出力軸トルクToなどを用いた関係式にて表される。
つまり、本実施形態の変速モデルは、変速目標値と制御操作量とを含む自動変速機3の運動方程式(式(1),(2))と、トルク分担率を表す関係(式(3),(4))とを用いて、変速目標値に基づいて制御操作量を算出するものである。このように、本実施形態では、式(1),(2)に、トルク分担率xにて設定した拘束条件を追加することで、変速モデルを用いて自動変速機3の変速を実行する。よって、2つの変速目標値に対して3つの制御操作量があったとしても、変速モデルを用いて3つの制御操作量を適切に決定することができる。この変速モデルとしては1つの所定のものであるが、上述したように変速の種類(例えば変速パターンや変速前後の変速段の組み合わせ)毎に異なる定数とされたギヤトレーン運動方程式が用いられるので、自動変速機3の変速には、それぞれの変速の種類に対応する変速モデルが用いられることになる。
−変速進行制御−
上述の如く、本実施形態では、被駆動アップシフト変速または駆動ダウンシフト変速の実行中、変速進行状況に応じて、解放側クラッチ(解放側係合要素)の係合油圧、または、解放側クラッチおよび係合側クラッチ(係合側係合要素)の係合油圧を補正する変速進行制御を行う。ここで、本実施形態の理解を容易にするために、かかる変速進行制御の説明に先立ち、変速進行の停滞が生じていない正常な駆動ダウンシフト変速と、変速進行が停滞した場合における従来の駆動ダウンシフト変速制御について説明する。
図5は、変速進行の停滞がない場合のタイムチャートの一例である。例えばアクセルペダルの踏み込みにより駆動ダウンシフト変速であるとの判定がなされると、解放側クラッチトルクTcdrnを十分に下げることによって入力軸回転速度ωiを変化させるために、図5の時刻t1において解放側クラッチの指示油圧が低下され、それに応じて図5の時刻t2において入力軸回転速度ωiが上昇し始める。
そうして、図5の時刻t2〜時刻t3にかけて、目標とする入力軸角加速度に応じて上記式(1)および式(2)の運動方程式によって決定される係合側クラッチトルクTcaplおよび解放側クラッチトルクTcdrnに基づいて、係合側クラッチの係合油圧および解放側クラッチの指示油圧を制御することで、図5の上段に示すように、入力軸回転速度ωiが狙い通りに上昇する。
図5の時刻t3において、入力軸回転速度ωiが狙い通りの同期回転速度に達すると、解放側クラッチの指示油圧を低下させるとともに、係合側クラッチの指示油圧を増加させる。そうして、低下させた解放側クラッチの指示油圧が、解放側クラッチトルクTcdrn≒0に対応する油圧(以下、トルク容量0油圧ともいう)を下回って、図5の時刻t4において下限油圧に達すると、変速を完了させるために係合側クラッチの指示油圧を一気に増加させる係合スイープが開始される。以上のような係合側および解放側クラッチの指示油圧の制御により、図5の時刻t5において変速が完了する。
本実施形態においても、変速進行の停滞が生じていない場合には、このような制御を行うことで変速を完了させる。
一方、図9は従来の駆動ダウンシフト変速制御における変速進行が停滞した場合のタイムチャートの一例である。例えばアクセルペダルの踏み込みにより駆動ダウンシフト変速であるとの判定がなされると、解放側クラッチトルクTcdrnを十分に下げることによって入力軸回転速度ωiを変化させるために、図9の時刻t1において解放側クラッチの指示油圧が低下され、それに応じて図9の時刻t2において入力軸回転速度ωiが上昇し始める。
ここで、図9の破線楕円Aに示すように、入力軸回転速度ωiがほとんど変化しない変速進行の停滞が生じると、図9の時刻t3において、入力軸3aの回転を促して変速進行の停滞を解消するべく、解放側クラッチの指示油圧を低下させるとともに、係合側クラッチの指示油圧を増加させる制御が行われる。このような従来の駆動ダウンシフト変速制御では、図9の時刻t4において解放側クラッチの指示油圧をトルク容量0油圧まで低下させても、変速進行の停滞が解消されない場合には、図9の破線楕円Bに示すように、解放側クラッチの指示油圧を下限油圧まで低下させる。
解放側クラッチの指示油圧の低下および係合側クラッチの指示油圧の増加により、図9の時刻t5において入力軸回転速度ωiが再び上昇し始め、図9の時刻t6において入力軸回転速度ωiが同期回転速度に達すると、係合側クラッチの指示油圧をさらに増加させる。その後、図9の時刻t7において係合スイープが開始されると、図9の時刻t8において変速が完了する。
以上のような係合側および解放側クラッチの指示油圧の制御により、従来の駆動ダウンシフト変速制御においても、何らかの理由で変速進行の停滞が生じた場合にも、変速進行の停滞を解消して変速を完了させることは可能である。しかしながら、従来の駆動ダウンシフト変速制御では、図9の時刻t3〜時刻t4にかけて、解放側クラッチが解放側クラッチトルクTcdrnを持った状態で係合側クラッチを締結するため、タイアップ状態となり、ショックが発生してドライバビリティが悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態では、先ず解放側クラッチによって変速進行の停滞の解消を図るとともに、解放側クラッチによる停滞解消が困難である場合に初めて、係合側クラッチによって変速進行の停滞の解消を図るようにしている。具体的には、被駆動アップシフト変速または駆動ダウンシフト変速の実行中、変速進行が停滞していると判定された場合には、解放側クラッチの係合油圧を低下側に補正するとともに、係合油圧を低下側に補正することで解放側クラッチトルクTcdrnが略0になっても、変速進行の停滞が解消されていないと判定された場合には、係合側クラッチの係合油圧を増加側に補正するように、ECU5を構成している。
より詳しくは、ECU5は、出力軸回転速度センサ83の出力信号から現在の車速Vを算出するとともに、アクセル開度センサ84の出力信号からアクセルペダルの踏込量であるアクセル開度Accを算出する。ECU5は、これら車速Vおよびアクセル開度Accに基づき変速マップを参照して目標変速段を算出する。さらに、ECU5は、入力軸回転速度センサ82および出力軸回転速度センサ83の出力信号から現在の変速段を推定し、現在の変速段と目標変速段とを比較して、アップシフト変速であるかダウンシフト変速であるかを判定する。
また、ECU5は、例えば、車速Vおよびアクセル開度Accに応じて設定される判定マップ(図示せず)を用いたり、自動変速機3の入力軸回転速度ωiおよび入力軸トルクTiに応じて設定される判定マップ(図示せず)を用いたりすることで、自動変速機3が被駆動状態か駆動状態かを判定する。これらの判定の組合せにより、ECU5は、被駆動アップシフト変速または駆動ダウンシフト変速が行われるか否かを判定する。
そうして、ECU5は、入力軸回転速度センサ82の出力信号から入力軸回転速度ωi(=タービン回転速度ωt)を算出し、所定の演算処理周期毎に、このタービン回転速度ωtを時間微分して入力軸角加速度dωt/dtを算出する。ECU5は、例えば駆動ダウンシフト変速の場合、算出した入力軸角加速度dωt/dtが0よりも大きくなると、イナーシャ相開始と判定する。
また、ECU5は、駆動ダウンシフト変速であれば、例えば、演算処理周期に算出した入力軸角加速度dωt/dtが目標とする入力軸角加速度よりも所定値以上小さい場合や、複数の演算処理周期に算出した入力軸角加速度dωt/dtの移動平均が、目標とする入力軸角加速度よりも所定値以上小さい場合等に変速進行が停滞していると判定する。
これとは逆に、ECU5は、駆動ダウンシフト変速であれば、例えば、演算処理周期に算出した入力軸角加速度dωt/dtと目標とする入力軸角加速度との差が所定値内に収まった場合や、複数の演算処理周期に算出した入力軸角加速度dωt/dtの移動平均と目標とする入力軸角加速度との差が所定値内に収まった場合等に変速進行の停滞が解消されたと判定する。
なお、請求項との関係では、ECU5が、所定の演算処理周期毎に入力軸角加速度dωt/dtを算出し、当該入力軸角加速度dωt/dtに基づいて、イナーシャ相開始、変速進行の停滞および変速進行の停滞の解消等を判定する処理が、「イナーシャ相開始に関連して発生する、自動変速機の回転部材の回転速度変化に基づいて変速進行状況を判定する変速進行状況判定手段」としての処理に相当する。
さらに、ECU5は、例えばROM52に記憶された図6に示すようなマップに基づいて、解放側クラッチトルクTcdrnが略0であるか否かを判定するように構成されている。具体的には、ECU5は、解放側クラッチの指示油圧がピストンストロークエンド圧以下であれば、図6に示すマップに基づいて、解放側クラッチトルクTcdrnが略0であると判定する。
そうして、ECU5は、被駆動アップシフト変速または駆動ダウンシフト変速、換言すると、解放側クラッチの係合油圧によって入力軸回転速度ωiを制御する変速の実行中において、入力軸角加速度dωt/dtに基づいて変速進行が停滞していると判定した場合には、先ず解放側クラッチの係合油圧を低下側に補正するように構成されている。これにより、入力軸3aの回転速度変化を促して変速進行の停滞の解消を図ることができる。
さらに、ECU5は、解放側クラッチの係合油圧を低下側に補正することで解放側クラッチトルクTcdrnが略0になっても、変速進行の停滞が解消されていないと判定した場合に初めて、係合側クラッチの係合油圧を増加側に補正するように構成されている。これにより、変速に必要なイナーシャトルクを確保して変速進行の停滞を確実に解消することができるとともに、解放側クラッチトルクTcdrnが略0になって初めて係合側クラッチの係合油圧を増加側に補正することから、タイアップによるショック発生を確実に抑えることができる。
なお、本実施形態では、ECU5は、解放側クラッチトルクTcdrnを略0にする場合には、解放側クラッチトルクTcdrnが略0になる油圧のうち最も高い油圧値、すなわちトルク容量0油圧になるように、解放側クラッチの係合油圧を低下側に補正するように構成されている。これにより、運転者が不意にアクセルペダルを踏み込んだ場合でも、直ぐに解放側クラッチトルクTcdrnを略0よりも高くすることができるので、タービン吹き等が生じるのを抑えることができる。
−変速進行制御ルーチン−
次に、本実施形態に係る変速進行制御の手順を図7のフローチャートに沿って説明する。
先ず、ステップS1では、ECU5が、現在の車速Vやアクセル開度Accや入力軸トルクTiに基づき変速マップや判定マップ等を参照して、駆動ダウンシフト変速または被駆動アップシフト変速が行われるか否かを判定する。このステップS1での判定がNOの場合には、本発明が適用される場面ではないので、そのままENDする。一方、ステップS1での判定がYESの場合にはステップS2に進む。
次のステップS2では、ECU5が、イナーシャ相が開始したか否かを判定する。具体的には、ECU5は、入力軸回転速度センサ82の出力信号に基づいて算出した入力軸角加速度dωt/dtが0よりも大きくなると、イナーシャ相開始と判定する。このステップS2での判定がNOの場合には、ステップS4に進み解放側クラッチトルクTcdrnが0よりも大きいか否かを判定し、このステップS4の判定がYESであれば(通常、イナーシャ相開始前はYESとなる)、ステップS5に進み解放側クラッチトルクTcdrnを下げることによって、イナーシャ相の開始を促す。一方、このステップS2での判定がYESの場合には、ステップS3に進む。
次のステップS3では、ECU5が、変速が進行しているか否かを判定する。ECU5は、例えば、演算処理周期毎に算出した入力軸角加速度dωt/dtと目標とする入力軸角加速度との差が所定値内に収まっている場合には変速が進行していると判定する。そうして、ステップS3での肯定判定(YES)が、入力軸回転速度ωiが同期回転速度に達するまで続けば、そのままENDする。これらステップS1→ステップS2→ステップS3→ENDという流れは、上記図5で例示した正常な変速制御に相当する。
これに対し、入力軸回転速度ωiが同期回転速度に達するまでに、ステップS3での判定がNOになった場合(当初からNOの場合も含む)、換言すると、変速進行が停滞していると判定された場合には、ステップS4に進む。
次のステップS4では、ECU5が、上記図6に例示したマップを参照して、現在の指示油圧とピストンストロークエンド圧とを比較することで、解放側クラッチトルクTcdrnが0よりも大きいか否かを判定する。このステップS4での判定がYESの場合には、ステップS5に進む。
次のステップS5では、ECU5が、解放側クラッチの指示油圧を低下側に補正し、解放側クラッチトルクTcdrnを下げることによって、停滞している入力軸3aの回転を促した後、ステップS6に進む。
次のステップS6では、ECU5が、変速進行の停滞が解消されたか否かを判定する。具体的には、ECU5は、演算処理周期に算出した入力軸角加速度dωt/dtと目標とする入力軸角加速度との差が所定値内に収まった場合等に変速進行の停滞が解消されたと判定する。このステップS6での判定がYESの場合、すなわち、解放側クラッチトルクTcdrnを下げることによって変速進行の停滞が解消された場合には、そのままENDする。一方、この次のステップS6での判定がNOの場合にはステップS7に進む。
次のステップS7では、ECU5が、現在の指示油圧とピストンストロークエンド圧とを比較することで、解放側クラッチトルクTcdrnが略0になったか否かを判定する。このステップS7での判定がNOの場合には、解放側クラッチトルクTcdrnを更に下げることによって、停滞している入力軸3aの回転を促す余地があることから、ステップS5に戻る。そうして、ECU5は、解放側クラッチの指示油圧を低下側に補正することで、変速進行の停滞が解消されれば(ステップS6の判定がYES)、そのままENDし、変速進行の停滞が解消されていなければ(ステップS6の判定がNO)、解放側クラッチトルクTcdrnが略0になったか否かを判定するという手順を繰り返す。
一方、ステップS7での判定がYESの場合、換言すると、係合油圧を低下側に補正することで解放側クラッチトルクTcdrnが略0になっても変速進行の停滞が解消されていない場合には、ステップS8に進む。次のステップS8では、タイアップが生じるのを回避すべく、ECU5が、解放側クラッチトルクTcdrnが略0と判定されてから、解放側クラッチの応答遅れ時間が経過したか否かを判定する。このステップS8での判定がNOの場合には、解放側クラッチの応答遅れ時間が経過するまで当該ステップS8の判定を繰り返す。一方、ステップS8での判定がYESの場合にはステップS9に進む。
次のステップS9では、ECU5が、係合側クラッチの指示油圧を増加側に補正し、停滞している入力軸3aの回転を促した後、ENDする。
−制御例−
次に、本実施形態の変速進行制御による制御例を図8のタイムチャートに沿って説明する。なお、解放側および係合側クラッチの指示油圧における破線で示す指示油圧は、変速進行の停滞が生じないと仮定した場合の正常な指示油圧(以下、正常時指示油圧ともいう)を表しており、これら正常時指示油圧等は、上記式(1)および式(2)の運動方程式によって決定される係合側クラッチトルクTcaplおよび解放側クラッチトルクTcdrnに基づいて設定される。
例えばアクセルペダルの踏み込みにより駆動ダウンシフト変速であるとの判定がなされると、解放側クラッチトルクTcdrnを下げることによって入力軸回転速度ωiを変化させるために、図8の時刻t1において解放側クラッチの指示油圧が低下され、それに応じて図8の時刻t2において入力軸回転速度ωiが上昇し始める。
ここで、図8の時刻t3において、図8の破線楕円Aに示すように、入力軸回転速度ωiがほとんど変化しない変速進行の停滞が生じると、入力軸3aの回転を促して変速進行の停滞を解消するべく、解放側クラッチの指示油圧が低下側に補正される。かかる補正により、白抜き矢印で示すように、正常時指示油圧よりも低い指示油圧にて、その後の解放側クラッチの制御が行われることになる。
そうして、図8の時刻t4において解放側クラッチの指示油圧をトルク容量0油圧まで低下させても、変速進行の停滞が解消されない場合には、解放側クラッチの指示油圧をトルク容量0油圧に維持する。このように、解放側クラッチの指示油圧をトルク容量0油圧よりも下げないことによって、運転者が不意にアクセルペダルを踏み込んだ場合でも、直ぐに解放側クラッチトルクTcdrnを略0よりも高くすることができるので、タービン吹き等が生じるのを抑えることができる。
そうして、図8の時刻t4から解放側クラッチの応答遅れ時間が経過した図8の時刻t5において、係合側クラッチの指示油圧が増加側に補正されると、変速進行の停滞が解消され、再び入力軸回転速度ωiが上昇し始める。このとき、解放側クラッチの指示油圧はトルク容量0油圧に維持されているので、タイアップによるショックの発生が確実に抑えられる。かかる補正により、黒塗り矢印で示すように、正常時指示油圧よりも高い指示油圧にて、その後の係合側クラッチの制御が行われることになる。
図8の時刻t6において入力軸回転速度ωiが同期回転速度に達すると、解放側クラッチの指示油圧が低下され、図8の時刻t7において係合スイープが開始されると、図8の時刻t8において変速が完了する。
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神または主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
上記実施形態では、車両100がFFである例を示したが、これに限らず、車両が、FR(フロントエンジン・リアドライブ)であってもよいし、4輪駆動であってもよい。
また、上記実施形態では、エンジン1がガソリンエンジンである例を示したが、これに限らず、エンジンはディーゼルエンジンであってもよい。
さらに、上記実施形態では、解放側クラッチの指示油圧がピストンストロークエンド圧以下であれば、解放側クラッチトルクTcdrnが略0であると判定するようにしたが、これに限らず、例えば、種々の条件を考慮して、解放側クラッチの指示油圧が、ピストンストロークエンド圧に適合値を加えた油圧値以下であれば、解放側クラッチトルクTcdrnが略0であると判定するようにてもよい。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
本発明によると、変速進行の停滞が生じた場合でも、タイアップによるショックを発生させることなく、変速進行の停滞を解消することができるので、有段自動変速機を備える車両の制御装置に適用して極めて有益である。
3 自動変速機
3a 入力軸(回転部材)
5 ECU(制御装置)(変速進行状況判定手段)
100 車両
B1 第1ブレーキ(係合要素)
B2 第2ブレーキ(係合要素)
C1 第1クラッチ(係合要素)
C2 第2クラッチ(係合要素)
C3 第3クラッチ(係合要素)
C4 第4クラッチ(係合要素)

Claims (2)

  1. エンジンと、油圧制御を通じて複数の係合要素を選択的に係合または解放させることにより変速比が異なる複数のギヤ段を成立させて当該エンジンからの動力を駆動輪側へ伝達する自動変速機と、を備える車両の制御装置であって、
    イナーシャ相開始に関連して発生する、上記自動変速機の回転部材の回転速度変化に基づいて変速進行状況を判定する変速進行状況判定手段を備え、
    上記自動変速機が被駆動状態でのアップシフト変速または上記自動変速機が駆動状態でのダウンシフト変速の実行中、上記変速進行状況判定手段によって変速進行が停滞していると判定された場合に、解放側係合要素の係合油圧を低下側に補正するとともに、係合油圧を低下側に補正することで当該解放側係合要素のトルク容量が略0になっても、上記変速進行状況判定手段によって変速進行の停滞が解消されていないと判定された場合には、係合側係合要素の係合油圧を増加側に補正することを特徴とする車両の制御装置。
  2. 上記請求項1に記載の車両の制御装置において、
    上記解放側係合要素のトルク容量を略0にする場合には、当該解放側係合要素のトルク容量が略0になる油圧のうち最も高い油圧値になるように、当該解放側係合要素の係合油圧を低下側に補正することを特徴とする車両の制御装置。
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