しかし、上述したフィルタエレメントの構成はエアクリーナ内に別系統の経路を形成した構成であるため、この構成をろ過したエアの迂回路に適用すると、図8に示すように、ろ過部111から流通口112に至る経路では、経路の曲り部分において、エアの乱流が発生してしまい、通気抵抗が上がってしまうという問題が生じる。
また、従来の構造では、図9に示すように、開口部112を有するフィルタエレメントにシール部材114を組付けようとすると、開口部112とろ過部111とが一体に形成されていることから、開口部112とろ過部111との間114aを適切にシールすることができず、十分なシールを構成することが難しいという問題もあった。
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、エアクリーナにろ過したエアを迂回させる迂回路を形成した場合であっても通気抵抗を増大させないフィルタエレメント及びこのフィルタエレメントを組み込んだエアクリーナを提供することを目的とする。
本発明に係るフィルタエレメントは、流体をろ過するろ過部と、該ろ過部を通過した流体を流通せしめる流通口を備えたフィルタエレメントであって、前記流通口の内周縁の少なくとも一辺に整流手段が形成されることを特徴とする。
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記整流手段は、前記流通口の前記ろ過部と近接する第一辺と交差する第二辺に形成されると好適である。
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記整流手段は、前記流通口の前記ろ過部と近接する第一辺に形成されると好適である。
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記整流手段は、前記ろ過部のクリーンサイドから断面円弧状に延びて前記流通口に連続すると好適である。
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記整流手段は、前記流通口の流入側及び流出側の少なくとも何れか一方に取り付けられると好適である。
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記ろ過部の外周縁及び前記流通口の外周縁をそれぞれシールするシール手段を備えると好適である。
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記シール手段は、前記ろ過部の外周縁と前記流通口の外縁部にそれぞれ相対するように略8の字状に形成されると好適である。
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記流通口が形成されるフレーム部と前記ろ過部とが別体に形成されると好適である。
また、本発明に係るエアクリーナは、ケース部材とカバー部材を組み合わせて内部を中空に形成し、該内部に上述したフィルタエレメントを組み込むことを特徴とする。
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
本発明に係るフィルタエレメントは、流通口の内周縁の少なくとも一辺に整流手段が形成されているので、エアクリーナの内部に迂回路を形成した場合であっても、流通口へ流入する空気を整流して通気抵抗の低減を図ることができる。
また、本発明に係るフィルタエレメントは、整流手段が、流通口のろ過部と近接する第一辺や第一辺と交差する第二辺に沿って形成され、さらに流通口の流入側及び流出側の少なくとも何れか一方に形成されているので、エアクリーナの流入口や流出口の配置や形状に応じて最適な通気抵抗の低減を図ることができる。
また、本発明に係るフィルタエレメントは、整流手段が断面円弧状に形成されているので、より有効な整流効果を発揮することができる。
また、本発明に係るフィルタエレメントは、ろ過部の外周縁及び流通口の外周縁をそれぞれシールするシール手段を備えているので、エアクリーナにフィルタエレメントを組み込んだ場合に、エアクリーナの気密を確実に行うことができる。
また、本発明に係るフィルタエレメントは、流通口が形成されるフレーム部とろ過部とが別体に形成されているので、フレーム部とろ過部の外縁が補強となるのでシール手段の剛性を確保してシール性を向上させることができることに加え、流通口とろ過部との間のスペースも確実にシールをすることができる。
また、本発明に係るエアクリーナは、ケース部材とカバー部材を組み合わせて内部を中空に形成し、該内部に上述したフィルタエレメントを組み込んでいるので、内部に迂回路を形成した場合であっても、通気抵抗を増加させることがなく、流入口と流出口を同じ方向に配置するような構成を採用することができる。
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係るエアクリーナの斜視図であり、図2は、本実施形態に係るエアクリーナのカバーを取り外した図であり、図3は、本実施形態に係るフィルタエレメントの斜視図であり、図4は、本実施形態に係るフィルタエレメントの分解図であり、図5は、図2におけるA−A断面図であり、図6は、本実施形態に係るフィルタエレメントの拡大図であり、図7は、図2におけるB−B断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るエアクリーナ1は、流入口4と流出口5とを有すると共に有底箱状に形成されたケース部材3と、有底箱状に形成されたカバー部材2とを互いに開口部を合わせるように組み合わせて内部を中空に形成している。
カバー部材2及びケース部材3は、夫々合成樹脂で形成されており、例えばポリプロピレン系樹脂やポリアミド系樹脂等の熱可塑性の合成樹脂が好適に用いられる。さらに、カバー部材2とケース部材3の組み付けは、公知の係合手段8で互いに組み合わされており、本実施形態では係合手段8にクリップを用いている。
図2に示すように、本実施形態に係るエアクリーナ1の内部は、平板状のフィルタエレメント10が収納されるとともに、流入口4から流入したエアがフィルタエレメント10で濾過された後、流出口5へ向かう迂回路6が形成されている。また、フィルタエレメント10は、カバー部材2とケース部材3によって外縁部のシール手段14を挟み込むように組み付けられており、カバー部材2が取り付けられた状態ではフィルタエレメント10のろ過部11の位置決めを確実に行っている。
このように構成することで、本実施形態に係るエアクリーナ1は、流入口4から導入したエアがケース部材3の内部を通ってフィルタエレメント10のろ過部11に至り、フィルタエレメント10を下側から上側へ向かって通過する際に該エアが濾過される。また、濾過されたエアはカバー部材2の内壁に沿って移動すると共に、フィルタエレメント10の流通口12を介してケース部材3の内壁に沿って迂回路6に至り、迂回路6から流出口5を介して内燃機関に供給される。
フィルタエレメント10は、図3に示すようにシート状の濾材を襞状に折り込んで平板状に形成したろ過部11と、ろ過部11の一方端側に形成される流通口12と、ろ過部11の外縁部及び流通口12の外縁部をシールするシール手段14とを備えている。ろ過部11は、不織布やろ紙等、周知の濾材が好適に用いられる。
図4に示すように、フィルタエレメント10は、ろ過部11の外周に形成されたフィルタフレーム16とろ過部11と別体に形成された流通口12が形成されたフレーム部15並びに、流通口12の外縁部に相対する第1の開口14aとろ過部11の外縁部に相対する第2の開口14bとを有する概略8の字状のシール手段14とから構成されている。
また、図3に示すように、ろ過部11と流通口12の連続する第一辺21の内周縁には、第一辺21の延設方向(図3における幅方向)に沿って第1の整流手段13aが形成され、第一辺21と交差する第二辺22の内周縁には、第2の整流手段13bが形成されている。なお、第1の整流手段13a及び第2の整流手段13bは上述したフレーム部15に一体に形成されると好適である。
図5に示すように、第1の整流手段13aは、フィルタフレーム16と空隙を介して配置されているので、カバー部材2を組付けた際に、当該空隙にカバー部材2の内面から突出した図示しないリブが挿入されることで当該リブが空隙の位置に存在するシール手段14と確実に当接することができる。
また、第1の整流手段13aは、流通口12の流入側INの内周縁に形成されると共に、ろ過部11のクリーンサイドCから断面円弧状に延びて流通口12に連続している。このように整流手段13が形成されることで、クリーンサイドCを迂回するろ過されたエアが乱流を生じることなく整流されて流通口12に導入され、通気抵抗の低減を図ることができる。
さらに、図6及び7に示すように、第2の整流手段13bは、流通口12の流出側OUTの内周縁に形成されると共に、第1の整流手段13aと同様に断面円弧状に延びて流通口12から連続している。なお、この第2の整流手段13bの円弧形状の先にエアクリーナ1の流出口5を有する迂回路6が配置されるように形成することで、迂回路6を通ったろ過されたエアの乱流を生じることなく円滑にエアクリーナ1外に流し出すことで通気抵抗の低減を図ることができる。
さらに、本実施形態に係るフィルタエレメント10は、ろ過部11とフレーム部15とを別体に構成しているので、図6に示すように、フィルタフレーム16とフレーム部15のそれぞれの外縁部をシール手段14でシールすることができるので、ろ過部11と流通口12の間のシール性を向上させることができる。
このように、本実施形態に係るエアクリーナ1は、ケース部材3に流入口4と流出口5が形成されており、流入口4と流出口5の高低差がないレイアウトに対応することができると共に、追加的な配管などを用いることなくこのようなレイアウトを実現することができるので、通気抵抗を増加させることなく、エアクリーナ1の小型化及び薄型化を図ることが可能となる。
また、ろ過部11と流通口12の間のシール性が向上しているので、ろ過部11と流通口12の間でのエア漏れを確実に防止することができる。
なお、上述した本実施形態に係るエアクリーナ1において、ケース部材3とカバー部材2の組み付けは、クリップなどの係合手段8を用いて着脱自在に組み付けられている場合について説明を行ったが、ビスなどの周知の締結手段を用いて互いに組み付けるように構成しても構わない。
さらに、フィルタエレメント10は、シート状の濾材を襞状に折り込んで平板状に形成した場合について説明を行ったが、襞状に折り込まずに平板状のまま構成しても構わないその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。