以下、本発明の実施の形態に係る測定装置について図面を参照しながら説明する。
[1]測定装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る測定装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1の測定装置500の測定部の構成を示す模式図である。以下、本実施の形態に係る測定装置500について、図1および図2を参照しながら説明する。図1に示すように、測定装置500は、測定部100、PC(パーソナルコンピュータ)200、制御部300および表示部400を備える。測定部100は、例えば投受光一体の撮像デバイスであり、投光部110、受光部120、照明光出力部130、ステージ140および制御基板150を含む。
測定部100は、複数の投光部110を含んでもよい。また、測定部100は複数の受光部120を含んでもよい。本実施の形態では、測定部100は2つの投光部110および2つの受光部120を含む。以下、2つの投光部110を区別する場合は、一方の投光部110を投光部110Aと呼び、他方の投光部110を投光部110Bと呼ぶ。また、2つの受光部120を区別する場合は、一方の受光部120を受光部120Aと呼び、他方の受光部120を受光部120Bと呼ぶ。
図2では、2つの投光部110および2つの受光部120のうち、2つの投光部110および1つの受光部120が示される。投光部110および受光部120は、ステージ140の斜め上方の位置で一方向に並ぶように配置される。投光部110および受光部120の配置の詳細については後述する。図2に示すように、各投光部110は、測定光源111、パターン生成部112および複数のレンズ113,114を含む。受光部120は、カメラ121およびレンズ122を含む。ステージ140上には、測定対象物Sが載置される。
各投光部110A,110Bの測定光源111は、例えば青色LED(発光ダイオード)である。測定光源111は、ハロゲンランプ等の他の光源であってもよい。測定光源111から出射された光(以下、測定光と呼ぶ)は、レンズ113により適切に集光された後、パターン生成部112に入射する。
パターン生成部112は、例えばDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)である。パターン生成部112は、LCD(液晶ディスプレイ)、LCOS(Liquid Crystal on Silicon:反射型液晶素子)またはマスクであってもよい。パターン生成部112に入射した測定光は、予め設定されたパターンおよび予め設定された強度(明るさ)に変換されて出射される。パターン生成部112から出射された測定光は、レンズ114により測定対象物Sの寸法よりも大きい径を有する光に変換された後、ステージ140上の測定対象物Sに照射される。
投光部110Aの測定光源111、レンズ113およびパターン生成部112は、受光部120の光軸と略平行に並ぶように配置される。同様に、投光部110Bの測定光源111、レンズ113およびパターン生成部112は、受光部120の光軸と略平行に並ぶように配置される。一方、各投光部110A,110Bのレンズ114は、測定光源111、レンズ113およびパターン生成部112に対してオフセットするように配置される。これにより、投光部110A,110Bの光軸が受光部120の光軸に対して傾斜し、受光部120の両側方からそれぞれ測定対象物Sに向けて測定光が出射される。
本例においては、測定光の照射範囲を広くするため、一定の画角を有するように投光部110A,110Bが構成される。投光部110A,110Bの画角は、例えば、パターン生成部112の寸法およびレンズ114の焦点距離により定まる。測定光の照射範囲を広くする必要がない場合には、画角が略0度となるテレセントリック光学系が投光部110A,110Bの各々に用いられてもよい。
測定対象物Sによりステージ140の上方に反射された測定光は、受光部120のレンズ122により集光および結像され、カメラ121の撮像素子121aにより受光される。
本例においては、受光部120の撮像視野を広くするため、一定の画角を有するように受光部120が構成される。本実施の形態においては、受光部120の撮像視野とは、受光部120により撮像が可能な空間上の領域を意味する。受光部120の画角は、例えば、撮像素子121aの寸法およびレンズ122の焦点距離により定まる。広い視野を必要としない場合には、テレセントリック光学系が受光部120に用いられてもよい。ここで、測定部100に設けられる2つの受光部120のレンズ122の倍率は互いに異なる。それにより、2つの受光部120を選択的に用いることにより、測定対象物Sを互いに異なる2種類の倍率で撮像することができる。2つの受光部120は、2つの受光部120の光軸が互いに平行となるように配置されることが好ましい。
カメラ121は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラである。撮像素子121aは、例えばモノクロCCD(電荷結合素子)である。撮像素子121aは、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサ等の他の撮像素子であってもよい。撮像素子121aの各画素からは、受光量に対応するアナログの電気信号(以下、受光信号と呼ぶ)が制御基板150に出力される。
モノクロCCDには、カラーCCDとは異なり、赤色波長の光を受光する画素、緑色波長の光を受光する画素および青色波長の光を受光する画素を設ける必要がない。ここで、測定光に青色波長等の特定波長を採用した場合、カラーCCDは特定波長の光を受光する画素しか計測に利用できないが、モノクロCCDにはそのような制約がない。そのため、モノクロCCDの計測の分解能はカラーCCDの分解能よりも高くなる。また、モノクロCCDには、カラーCCDとは異なり、各画素にカラーフィルタを設ける必要がない。そのため、モノクロCCDの感度はカラーCCDの感度よりも高くなる。これらの理由により、本例におけるカメラ121にはモノクロCCDが設けられる。
本例においては、照明光出力部130は、測定対象物Sに赤色波長の光、緑色波長の光および青色波長の光を時分割で出射する。この構成によれば、モノクロCCDを用いた受光部120により測定対象物Sのカラー画像を撮像することができる。
一方、カラーCCDが十分な分解能および感度を有する場合には、撮像素子121aは、カラーCCDであってもよい。この場合、照明光出力部130は、測定対象物Sに赤色波長の光、緑色波長の光および青色波長の光を時分割で照射する必要はなく、白色光を測定対象物Sに照射する。そのため、照明光源320の構成を単純にすることができる。
制御基板150には、図示しないA/D変換器(アナログ/デジタル変換器)およびFIFO(First In First Out)メモリが実装される。カメラ121から出力される受光信号は、制御部300による制御に基づいて、制御基板150のA/D変換器により一定のサンプリング周期でサンプリングされるとともにデジタル信号に変換される。A/D変換器から出力されるデジタル信号は、FIFOメモリに順次蓄積される。FIFOメモリに蓄積されたデジタル信号は画素データとして順次PC200に転送される。ここで、カメラ121が、例えば、モノクロCMOSカメラであって、撮像素子121aの各画素から受光量に対応するデジタルの電気信号が制御基板150へ出力される場合、A/D変換器は必ずしも必要ではない。
図1に示すように、PC200は、CPU(中央演算処理装置)210、ROM(リードオンリメモリ)220、作業用メモリ230、記憶装置240および操作部250を含む。操作部250は、キーボードおよびポインティングデバイスを含む。ポインティングデバイスとしては、マウスまたはジョイスティック等が用いられる。
ROM220には、システムプログラムが記憶される。作業用メモリ230は、RAM(ランダムアクセスメモリ)からなり、種々のデータの処理のために用いられる。記憶装置240は、ハードディスク等からなる。記憶装置240には、データ生成プログラム、計測プログラムおよび回転軸校正プログラム等が記憶される。また、記憶装置240は、制御基板150から与えられる画素データ等の種々のデータを保存するために用いられる。
CPU210は、制御基板150から与えられる画素データに基づいて画像データを生成する。また、CPU210は、生成した画像データに作業用メモリ230を用いて各種処理を行うとともに、画像データに基づく画像を表示部400に表示させる。さらに、CPU210は、後述するステージ駆動部146に制御基板150を通して駆動信号を与える。表示部400は、例えばLCDパネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。表示部400には、例えば受光部120のカメラ121によりリアルタイムで取得される画像データに基づく画像(以下、ライブ画像と呼ぶ)が表示される。
一方の投光部110Aから測定光が照射された測定対象物Sの画像と他方の投光部110Bから測定光が照射された測定対象物Sの画像とが並ぶように表示部400に表示(2画面表示)されてもよい。また、一方の投光部110Aから測定光が照射された測定対象物Sの画像と他方の投光部110Bから測定光が照射された測定対象物Sの画像とが重なるように表示部400に表示する等の合成表示がされてもよい。
2画面表示がされる場合には、例えば、一定の周期(数Hz)で投光部110A,110Bから測定対象物Sに交互に測定光が照射され、投光部110Aから測定対象物Sに測定光が照射されているときに取得される画像および投光部110Bから測定対象物Sに測定光が照射されているときに取得される画像が表示部400に別個に表示される。使用者は、表示される画像を見ながら、投光部110Aから測定光が出射されるときの受光部120の受光量および投光部110Bから測定光が出射されるときの受光部120の受光量をそれぞれ調整することができる。受光部120の受光量は、投光部110A,110Bから出射される測定光の明るさまたは受光部120の露光時間を変化させることにより調整可能である。
合成表示がされる場合も、2画面表示がされる場合と同様に、使用者は、表示される画像を見ながら、投光部110Aから測定光が出射されるときの受光部120の受光量および投光部110Bから測定光が出射されるときの受光部120の受光量をそれぞれ調整することができる。この場合、表示部400においては、合成表示の画像に加えて、一方の投光部110Aから測定光が照射された測定対象物Sの画像と、他方の投光部110Bから測定光が照射された測定対象物Sの画像とが並ぶように表示されてもよい。または、表示部400においては、2画面表示の画像と合成表示の画像とが切り替えて表示されてもよい。あるいは、表示部400においては、合成表示の画像と、一方の投光部110Aから測定光が照射された測定対象物Sの画像と、他方の投光部110Bから測定光が照射された測定対象物Sの画像とが、切り替えて表示されてもよい。
図2に示すように、ステージ140は、ステージベース141およびステージプレート142を含む。ステージベース141上にステージプレート142が配置される。ステージプレート142は、測定対象物Sが載置される載置面を有する。ステージプレート142には、クランプまたは治具等を取り付けるための取付部(例えばねじ孔)が設けられてもよい。本実施の形態に係るステージプレート142は円板形状を有する。
ステージプレート142上の空間には、略円柱状の有効領域MRが設定される。有効領域MRは、投光部110A,110Bにより測定光を照射可能でかつ受光部120により撮像可能な領域である。受光部120の撮像視野は、その受光部120が有するレンズ122の倍率、焦点深度および画角等により定まる。有効領域MRの設定内容の詳細については後述する。
ステージ140は回転機構143に取り付けられる。回転機構143は、後述する設置部161(図4)に固定されている。また、回転機構143は、例えばエンコーダおよびステッピングモータを含む。また、回転機構143は、図1のステージ操作部145またはステージ駆動部146により駆動され、ステージ140をその中心を通るとともに鉛直方向に延びる回転軸Axの周りで回転させる。使用者は、ステージ操作部145を手動で操作することにより、ステージ140を回転させることができる。また、ステージ駆動部146は、PC200より制御基板150を通して与えられる駆動信号に基づいて、回転機構143に電流を供給することにより、ステージプレート142の載置面を受光部120に相対的に回転させることができる。
ステージ140の回転時には、回転機構143のエンコーダから出力される信号が、制御基板150を通してPC200に送られる。それにより、図1のCPU210は、予め定められた基準角度からのステージプレート142の回転量(回転位置)を検出する。
なお、本実施の形態では、ステージ140は回転機構143のステッピングモータにより駆動することが可能であるとともに手動により操作することが可能であるが、これに限定されない。ステージ140は回転機構143のステッピングモータでのみ駆動することが可能であってもよいし、手動でのみ操作することが可能であってもよい。
制御部300は、制御基板310および照明光源320を含む。制御基板310には、図示しないCPUが実装される。制御基板310のCPUは、PC200のCPU210からの指令に基づいて、投光部110、受光部120および制御基板150を制御する。制御基板310および照明光源320は、測定部100に搭載されてもよい。ただし、制御基板310および照明光源320は熱を生じやすく、その熱の影響によって測定部100の精度が低下する可能性がある。したがって、測定部100の精度を確保するために、制御基板310および照明光源320が測定部100の外部に設けられることが好ましい。
照明光源320は、例えば赤色光、緑色光および青色光を出射する3つのLEDを含む。各LEDから出射される光の輝度を制御することにより、照明光源320から任意の色の光を発生することができる。照明光源320から発生される光(以下、照明光と呼ぶ)は、導光部材(ライトガイド)330を通して測定部100の照明光出力部130から出力される。なお、制御部300に照明光源320を設けずに、測定部100に照明光源320を設けてもよい。この場合、導光部材330は必要ない。
図3は、図1のCPU210により実現される機能を示す機能ブロック図である。図3に示すように、CPU210は、点群データ生成部501、計測用データ取得部502、計測用データ修正部503、計測部504、受付部505、回転制御部506および位置関係算出部507を含む。
点群データ生成部501は、受光部120により出力される受光信号に基づいて、測定対象物Sの立体形状を表す点群データを生成する。計測用データ取得部502は、有効領域MRに対応する点群データを計測用データとすべき選択があった場合に、記憶装置240に記憶される後述する領域情報に基づいてステージ140上の空間に対して有効領域MRに対応する点群データを計測用データとして取得する。また、計測用データ取得部502は、有効領域MRおよびその他の領域に対応する点群データを計測用データとすべき選択があった場合に、点群データ生成部501により生成された全ての点群データを計測用データとして取得する。
また、計測用データ修正部503は、取得された計測用データに対応する領域のうち除去すべき領域が指定された場合に、取得された計測用データから指定された領域に対応する点群データを除去する。
計測部504は、測定対象物Sの計測すべき箇所の指定を受け付け、計測用データ取得部502により取得された計測用データまたは計測用データ修正部503により修正された計測用データに基づいて、指定された箇所の計測値を算出する。
受付部505は、使用者による操作部250の操作に基づいて、計測用データを有効領域MRに対応する点群データとするか有効領域MRおよびその他の領域に対応する点群データとするかの選択を受け付ける。また、受付部505は、使用者による操作部250の操作に基づいて、取得された計測用データに対応する領域のうち除去すべき領域の指定を受け付ける。
回転制御部506は、ステージ駆動部146を制御することにより、ステージ140の回転を制御する。位置関係算出部507は、後述する回転軸校正処理において、ステージ140の回転軸Axと回転軸と受光部120との位置関係を算出する。これらの機能の詳細については後述する。
点群データ生成部501、計測用データ取得部502、計測用データ修正部503、計測部504、受付部505、回転制御部506および位置関係算出部507は、CPU210が、ROM220および記憶装置240に記憶されたシステムプログラム、データ生成プログラム、計測プログラムおよび回転軸校正プログラムのいずれかのプログラムを実行することにより実現される。これらの機能部の一部または全ては、電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
ここで、測定部100においては、複数の投光部110、複数の受光部120、照明光出力部130およびステージ140の位置関係が一定に固定されるように、これらの構成要素が連結される。
図4は、測定部100の模式的な外観斜視図である。図4では、測定部100の外観が太い実線で示されるとともに、測定部100の内部に設けられる一部の構成要素が点線で示される。図4に示すように、測定部100は台座170を含む。台座170には、2つの投光部110、2つの受光部120、照明光出力部130および制御基板150が取り付けられる。この状態で、2つの投光部110、2つの受光部120、照明光出力部130の位置関係が台座170により固定される。2つの受光部120は上下に並ぶように配置されている。また、照明光出力部130は、楕円筒形状を有し、2つの受光部120を取り囲むように配置されている。照明光出力部130の一端部には、楕円形状を有する照明光の出射口131が形成されている。さらに、2つの投光部110は、2つの受光部120および照明光出力部130を挟んで並ぶように配置される。
台座170には、さらに2つの投光部110、2つの受光部120、照明光出力部130および制御基板150の一部を収容するヘッドケーシング180が取り付けられる。2つの投光部110、2つの受光部120、照明光出力部130、制御基板150、台座170およびヘッドケーシング180によりヘッド部190が構成される。
測定部100は、さらに設置部161およびスタンド部162を含む。設置部161は、平坦な底面を有するとともに略一定幅で一方向に延びるように形成されている。設置部161は、テーブルの上面等の水平な設置面上に設置される。
スタンド部162は、設置部161の一端部に接続され、設置部161の一端部から上方に延びるように形成される。設置部161の他端部近傍の位置に図2の回転機構143が固定されている。回転機構143によりステージ140が回転可能に保持される。本実施の形態においては、設置部161およびスタンド部162は互いに着脱可能に構成されてもよい。
台座170の両側部には、使用者により把持可能な一対の把持部179が設けられている。図4では、一対の把持部179のうち一方の把持部のみが示される。また、ヘッド部190の台座170は、スタンド部162の上端に着脱可能に構成されている。使用者は、台座170の一対の把持部179を把持することにより、図4に白抜きの矢印で示すように、台座170をスタンド部162に取り付けること、および台座170をスタンド部162から取り外すことができる。
スタンド部162にヘッド部190の台座170が取り付けられることにより、ヘッド部190と設置部161とがスタンド部162により固定的に連結される。これにより、ステージ140、2つの投光部110および2つの受光部120の位置関係が一定に保持される。
各投光部110は、測定光の照射される照射領域がステージ140およびその上方の空間を含むように位置決めされる。測定光は、各投光部110から測定対象物Sに対して斜め下方に導かれる。さらに、各受光部120は、光軸が斜め下方に延びるようにかつ図2のカメラ121の撮像視野がステージ140およびその上方の空間を含むように位置決めされる。図4では、各投光部110の照射領域IRが二点鎖線で示されるとともに、一方の受光部120Aの撮像視野TR1が一点鎖線で示される。各受光部120A,120Bは、その光学系の光軸(図2のレンズ122の光軸)がステージプレート142の載置面に対して予め定められた角度(例えば45度)をなす状態で固定される。
図4に示すように、2つの投光部110A,110Bの照射領域IRの一部と受光部120Aの撮像視野TR1の一部とは、ステージ140の上方の空間内で重なり合う。投光部110A,110Bの照射領域IRと受光部120Aの撮像視野TR1とが重なり合う位置に、受光部120Aに対応する有効領域MR1が設定される。
本例の測定部100に設けられる2つの受光部120A,120Bは、レンズ122の倍率、焦点深度および画角が互いに異なる。具体的には、受光部120Bのレンズ122の倍率は受光部120Aのレンズ122の倍率よりも高い。また、受光部120Bのレンズ122の焦点深度は受光部120Aのレンズ122の焦点深度よりも小さい。さらに、受光部120Bのレンズ122の画角は受光部120Aのレンズ122の画角よりも小さい。この場合、受光部120Bの撮像視野は、受光部120Aの撮像視野TR1よりも小さくなる。それにより、一方の受光部120Aに対応する有効領域MR1はステージ140上に比較的広い範囲で設定される。これに対して、他方の受光部120Bに対応する有効領域は、受光部120Aに対応する有効領域MR1よりも狭い範囲でステージ140上に設定される。
図5は、2つの受光部120A,120Bとステージ140との位置関係の詳細を説明するための測定部100の模式的側面図である。図5では、受光部120Aの光学系の光軸A1が太い一点鎖線で示され、受光部120Aの撮像視野TR1および有効領域MR1が太い点線で示される。また、受光部120Bの光学系の光軸A2が一点鎖線で示され、受光部120Bの撮像視野TR2および有効領域MR2が点線で示される。
ここで、撮像視野TR1がステージ140を含む広い範囲に広がるように設定されているときに2つの光軸A1,A2が同一直線上にあると、撮像視野TR2がステージ140の載置面の近傍の位置から外れる可能性がある。この場合、ステージ140の載置面上に低い高さを有する測定対象物Sが載置されると、その測定対象物Sについては高倍率の受光部120Bを用いた計測を行うことができない。これに対して、本実施の形態に係る測定部100においては、図5に示すように、光軸A2が光軸A1よりも下方に位置する。それにより、撮像視野TR1の位置によらず撮像視野TR2をステージ140の載置面の近傍の位置に合わせることができる。
さらに、上記のように、ステージ140上の空間において、受光部120Bの撮像視野TR2は、受光部120Aの撮像視野TR1に包含される。この場合、例えば受光部120Aにより取得されるライブ画像には、受光部120Bにより取得可能なライブ画像の領域が含まれる。したがって、撮像に用いる受光部120A,120Bの切替が容易になる。
受光部120Aに対応する有効領域MR1は、例えばステージ140の回転軸Axと受光部120Aの光学系の焦点面との交点F1を中心として設定される。受光部120Bに対応する有効領域MR2は、例えばステージ140の回転軸Axと受光部120Bの光学系の焦点面との交点F2を中心として設定される。
これらの場合、ステージプレート142の中心に測定対象物Sを載置することにより、その測定対象物Sを有効領域MR1,MR2内に容易に配置することができる。また、測定対象物Sを移動させることなく撮像に用いる受光部120A,120Bを切り替えることにより、測定対象物Sのライブ画像の倍率を変更しつつ正確に測定対象物Sの表面状態を観察することができる。
ステージプレート142の載置面上には、受光部120A,120Bにそれぞれ対応する有効領域MR1,MR2の底面の範囲を示す指標(例えば、円)が刻印等されてもよい。この場合、使用者は、ステージ140上に設定される有効領域MR1,MR2の位置および大きさを容易に認識することができる。
以下の説明においては、受光部120Aの撮像視野TR1のうち有効領域MR1以外の領域、および受光部120Bの撮像視野TR2のうち有効領域MR2以外の領域を無効領域と呼ぶ。有効領域MR1,MR2と無効領域とを識別するための情報は、例えば測定装置500の工場出荷時点で、予め領域情報として図1の記憶装置240に記憶される。
図4および図5に示される測定部100においては、有効領域MR1,MR2を含むステージ140上の空間に、測定部100に固有の三次元座標系(以下、装置座標系と呼ぶ)が定義される。本例の装置座標系は、原点と互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸とを含む。以下の説明では、装置座標系のX軸に平行な方向をX方向と呼び、Y軸に平行な方向をY方向と呼び、Z軸に平行な方向をZ方向と呼ぶ。さらに、Z軸に平行な軸の周りで回転する方向をθ方向と呼ぶ。X方向およびY方向は、ステージプレート142の載置面に平行な面内で互いに直交する。Z方向は、ステージプレート142の載置面に平行な面に対して直交する。図4および図5では、X方向、Y方向、Z方向およびθ方向が矢印で示される。
[2]測定対象物の立体形状を示す立体形状データ
(1)三角測距方式による形状測定
測定部100においては、三角測距方式により測定対象物Sの形状が測定される。図6は、三角測距方式の原理を説明するための図である。図6ならびに後述する図7、図8、図9および図11の各図には、装置座標系とともに定義されるX方向、Y方向、Z方向およびθ方向がそれぞれ矢印で示される。
図6に示すように、投光部110から出射される測定光の光軸と受光部120に入射する測定光の光軸(受光部120の光軸)との間の角度αが予め設定される。角度αは、0度よりも大きく90度よりも小さい。
ステージ140上に測定対象物Sが載置されない場合、投光部110から出射される測定光は、ステージ140の載置面の点Oにより反射され、受光部120に入射する。一方、ステージ140上に測定対象物Sが載置される場合、投光部110から出射される測定光は、測定対象物Sの表面の点Aにより反射され、受光部120に入射する。
点Oと点Aとの間のX方向における距離をdとすると、ステージ140の載置面に対する測定対象物Sの点Aの高さhは、h=d÷tan(α)により与えられる。図1のPC200のCPU210は、制御基板150により与えられる測定対象物Sの画素データに基づいて、X方向における点Oと点Aとの間の距離dを測定する。また、CPU210は、測定された距離dに基づいて、測定対象物Sの表面の点Aの高さhを算出する。測定対象物Sの表面の全ての点の高さを算出することにより、測定光が照射された全ての点について装置座標系で表される座標を特定することができる。それにより、測定対象物Sの三次元的な形状が測定される。
測定対象物Sの表面の全ての点に測定光を照射するために、図2の投光部110からは種々のパターンを有する測定光が出射される。測定光のパターンは、図2のパターン生成部112により制御される。以下、測定光のパターンについて説明する。
(2)測定光の第1のパターン
図7は、測定光の第1のパターンを説明するための図である。図7(a)は、ステージ140上の測定対象物Sに投光部110から測定光を照射した状態を示す。図7(b)は、測定光が照射された測定対象物Sの平面図を示す。図7(a)に示すように、第1のパターンとして、Y方向に平行な直線状の断面を有する測定光(以下、ライン状測定光と呼ぶ)が投光部110から出射される。この場合、図7(b)に示すように、ステージ140に照射されたライン状測定光の部分と測定対象物Sの表面に照射されたライン状測定光の部分とは、測定対象物Sの表面の高さhに対応する距離dだけX方向に互いにずれる。したがって、距離dを測定することにより、測定対象物Sの高さhを算出することができる。
測定対象物Sの表面のY方向に沿った複数の部分が異なる高さを有する場合には、各部分について上記の距離dを測定することにより、Y方向に沿った複数の部分の高さhを算出することができる。
また、図1のCPU210は、X方向の一の位置でY方向に沿った複数の部分について距離dを測定した後、Y方向に平行なライン状測定光をX方向に走査することにより、X方向の他の位置でY方向に沿った複数の部分について距離dを測定する。これにより、X方向の複数の位置におけるY方向に沿った測定対象物Sの複数の部分の高さhが算出される。測定対象物SのX方向の寸法よりも広い範囲でライン状測定光をX方向に走査することにより、測定対象物Sの表面の全ての点の高さhを算出することができる。これにより、測定対象物Sの三次元的な形状を測定することができる。
(3)測定光の第2のパターン
図8は、測定光の第2のパターンを説明するための図である。図8に示すように、第2のパターンとして、Y方向に平行な直線状の断面を有しかつX方向に強度が正弦波状に変化するパターンを有する測定光(以下、正弦波状測定光と呼ぶ)が投光部110から複数回(本例においては4回)出射される。
図8(a)は、1回目に出射される正弦波状測定光を示す。1回目に出射される正弦波状測定光の強度は、測定対象物Sの表面上の任意の部分P0において初期位相φを有する。この正弦波状測定光が出射されることにより、測定対象物Sの表面で反射された光が受光部120により受光される。受光された光の強度が測定対象物Sの画素データに基づいて測定される。測定対象物Sの表面上の部分P0により反射された光の強度をI1とする。
図8(b)は、2回目に出射される正弦波状測定光を示す。2回目に出射される正弦波状測定光の強度は、測定対象物Sの表面上の部分P0において位相(φ+π/2)を有する。この正弦波状測定光が出射されることにより、測定対象物Sの表面で反射された光が受光部120により受光される。受光された光の強度が測定対象物Sの画素データに基づいて測定される。測定対象物Sの表面上の部分P0により反射された光の強度をI2とする。
図8(c)は、3回目に出射される正弦波状測定光を示す。3回目に出射される正弦波状測定光の強度は、測定対象物Sの表面上の部分P0において位相(φ+π)を有する。この正弦波状測定光が出射されることにより、測定対象物Sの表面で反射された光が受光部120により受光される。受光された光の強度が測定対象物Sの画素データに基づいて測定される。測定対象物Sの表面上の部分P0により反射された光の強度をI3とする。
図8(d)は、4回目に出射される正弦波状測定光を示す。4回目の正弦波状測定光の強度は、測定対象物Sの表面上の部分P0において位相(φ+3π/2)を有する。この正弦波状測定光が出射されることにより、測定対象物Sの表面で反射された光が受光部120により受光される。受光された光の強度が測定対象物Sの画素データに基づいて測定される。測定対象物Sの表面上の部分P0により反射された光の強度をI4とする。
初期位相φは、φ=tan−1[(I1−I3)/(I2−I4)]で与えられる。初期位相φから測定対象物Sの任意の部分の高さhが算出される。この方式によれば、4回の光の強度の測定により、測定対象物Sの全ての部分の初期位相φを高速かつ容易に算出することができる。なお、初期位相φは、異なる位相を有する測定光を少なくとも3回出射し、受光される光の強度を測定することにより算出することができる。測定対象物Sの表面上の全ての部分の高さhを算出することにより、測定対象物Sの三次元的な形状を測定することができる。
(4)測定光の第3のパターン
図9は、測定光の第3のパターンを説明するための図である。図9に示すように、第3のパターンとして、Y方向に平行でかつX方向に並ぶような直線状の断面を有する測定光(以下、縞状測定光と呼ぶ)が投光部110から複数回(本例においては16回)出射される。すなわち、縞状測定光においては、Y方向に平行な直線状の明部分およびY方向に平行な直線状の暗部分がX方向に周期的に配列される。
1回目の縞状測定光が出射されることにより、測定対象物Sの表面で反射された光が受光部120により受光される。受光された光の強度が、測定対象物Sの1番目の撮影画像の画素データに基づいて測定される。図9(a)は、1回目の縞状測定光に対応する測定対象物Sの1番目の撮影画像である。
2回目の縞状測定光は、1回目の縞状測定光から明部分および暗部分をX方向に1単位だけ移動させたパターンを有する。2回目の縞状測定光が出射されることにより、測定対象物Sの表面で反射された光が、受光部120により受光される。受光された光の強度が測定対象物Sの2番目の撮影画像の画素データに基づいて測定される。
3回目の縞状測定光は、2回目の縞状測定光から明部分および暗部分をX方向に1単位だけ移動させたパターンを有する。3回目の縞状測定光が出射されることにより、測定対象物Sの表面で反射された光が受光部120により受光される。受光された光の強度が、測定対象物Sの3番目の撮影画像の画素データに基づいて測定される。
同様の動作が繰り返されることにより、4〜16回目の縞状測定光に対応する光の強度が、測定対象物Sの4〜16番目の撮影画像の画素データに基づいてそれぞれ測定される。X方向の周期が16単位である縞状測定光が16回出射されることにより、測定対象物Sの表面の全ての部分に縞状測定光が照射される。なお、図9(b)は、7回目の縞状測定光に対応する測定対象物Sの7番目の撮影画像である。図9(c)は、13回目の縞状測定光に対応する測定対象物Sの13番目の撮影画像である。
図10は、測定対象物Sの特定の部分における画像が撮影されたタイミング(番数)と受光された光の強度との関係を示す図である。図10の横軸は画像の順番を示し、縦軸は受光された光の強度を示す。上述のように、測定対象物Sの各部分について、1〜16番目の撮影画像が生成される。また、生成された1〜16番目の撮影画像の各画素に対応する光の強度が測定される。
図10に示すように、撮影画像の番号に対応する撮影画像の各画素の光の強度を図示することにより散布図が得られる。得られた散布図に例えばガウシアン曲線、スプライン曲線または放物線をフィッティングさせることにより、光の強度が最大になるときの撮影画像の番号(番数)を1未満の精度で推定することができる。図10の例においては、フィッティングされた点線で示す曲線により、9番目と10番目との間である仮想的な9.38番目の撮影画像において、光の強度が最大になることが推定される。
また、フィッティングされた曲線により、光の強度の最大値を推定することができる。測定対象物Sの各部分において推定された光の強度が最大となる撮影画像の番号に基づいて、測定対象物Sの各部分の高さhを算出することができる。この方法によれば、S/N(信号/ノイズ)比が十分に大きい光の強度に基づいて、測定対象物Sの三次元的な形状が測定される。これにより、測定対象物Sの形状測定の精度を向上させることができる。
なお、正弦波状測定光または縞状測定光等の周期的なパターン形状を有する測定光を用いた測定対象物Sの形状測定においては、測定対象物Sの表面の各部分の相対的な高さ(高さの相対値)が測定される。これは、パターンを形成するY方向に平行な複数の直線(縞)の各々を識別することができず、複数の直線の1周期(2π)の整数倍に相当する不確かさが存在することにより、絶対位相が求まらないからである。そのため、測定対象物Sの一の部分の高さとその部分に隣接する部分の高さが連続的に変化しているという仮定に基づいて、測定された高さのデータに公知のアンラッピング処理が行われてもよい。
(5)測定光の第4のパターン
図11は、測定光の第4のパターンを説明するための図である。図11に示すように、第4のパターンとして、Y方向に平行な直線状の断面を有しかつ明部分と暗部分とがX方向に並ぶ測定光(以下、コード状測定光と呼ぶ)が投光部110から複数回(本例においては4回)出射される。コード状測定光の明部分および暗部分の割合は、それぞれ50%である。
本例においては、測定対象物Sの表面がX方向において複数(図11の例では16)の領域に分割される。以下、複数に分割されたX方向における測定対象物Sの領域をそれぞれ第1〜第16の領域と呼ぶ。
図11(a)は、1回目に出射されるコード状測定光を示す。1回目に出射されるコード状測定光は、測定対象物Sの第1〜第8の領域に照射される明部分を有する。また、1回目に出射されるコード状測定光は、測定対象物Sの第9〜第16の領域に照射される暗部分を有する。これにより、1回目に出射されるコード状測定光においては、明部分と暗部分とがY方向に平行でかつX方向に並ぶ。また、1回目に出射されるコード状測定光の明部分および暗部分の割合は、それぞれ50%である。
図11(b)は、2回目に出射されるコード状測定光を示す。2回目に出射されるコード状測定光は、測定対象物Sの第5〜第12の領域に照射される明部分を有する。また、2回目に出射されるコード状測定光は、測定対象物Sの第1〜第4および第13〜第16の領域に照射される暗部分を有する。これにより、2回目に出射されるコード状測定光においては、明部分と暗部分とがY方向に平行でかつX方向に並ぶ。また、2回目に出射されるコード状測定光の明部分および暗部分の割合は、それぞれ50%である。
図11(c)は、3回目に出射されるコード状測定光を示す。3回目に出射されるコード状測定光は、測定対象物Sの第1、第2、第7〜第10、第15および第16の領域に照射される明部分を有する。また、3回目に出射されるコード状測定光は、測定対象物Sの第3〜第6および第11〜第14の領域に照射される暗部分を有する。これにより、3回目に出射されるコード状測定光においては、明部分と暗部分とがY方向に平行でかつX方向に並ぶ。また、3回目に出射されるコード状測定光の明部分および暗部分の割合は、それぞれ50%である。
図11(d)は、4回目に出射されるコード状測定光を示す。4回目に出射されるコード状測定光は、測定対象物Sの第1、第4、第5、第8、第9、第12、第13および第16の領域に照射される明部分を有する。また、4回目に出射されるコード状測定光は、測定対象物Sの第2、第3、第6、第7、第10、第11、第14および第15の領域に照射される暗部分を有する。これにより、4回目に出射されるコード状測定光においては、明部分と暗部分とがY方向に平行でかつX方向に並ぶ。また、4回目に出射されるコード状測定光の明部分および暗部分の割合は、それぞれ50%である。
コード状測定光の明部分に論理“1”が割り当てられ、コード状測定光の暗部分に論理“0”が割り当てられる。また、測定対象物Sの各領域に照射される1回目〜4回目のコード状測定光の論理の並びを符号と呼ぶ。この場合、測定対象物Sの第1の領域には、符号“1011”のコード状測定光が照射される。これにより、測定対象物Sの第1の領域は、符号“1011”に符号化される。
測定対象物Sの第2の領域には、符号“1010”のコード状測定光が照射される。これにより、測定対象物Sの第2の領域は、符号“1010”に符号化される。測定対象物Sの第3の領域には、符号“1000”のコード状測定光が照射される。これにより、測定対象物Sの第3の領域は、符号“1000”に符号化される。同様に、測定対象物Sの第16の領域には、符号“0011”のコード状測定光が照射される。これにより、測定対象物Sの第16の領域は、符号“0011”に符号化される。
このように、測定対象物Sの隣り合う領域の間では、符号のいずれかの桁が“1”のみ異なるようにコード状測定光が測定対象物Sに複数回照射される。すなわち、コード状測定光は、明部分および暗部分がグレイコード状に変化するように、複数回測定対象物Sに照射される。
測定対象物Sの表面の各領域で反射された光が受光部120により受光される。受光された光の符号を測定することにより、測定対象物Sの領域ごとに、測定対象物Sが存在することにより変化した符号が得られる。得られた符号と領域ごとに測定対象物Sが存在しない場合の符号との差分を求めることにより、図6の距離dに相当する距離を算出することができる。ここで、画像におけるX軸方向には、上記の符号は1回のみ出現するというコード状測定光を用いた測定方法の特徴から、距離dの絶対的な値が算出される。これにより、測定対象物Sのその領域の絶対的な高さ(高さの絶対値)が算出される。測定対象物Sの表面上の全ての領域の高さを算出することにより、測定対象物Sの三次元的な形状を測定することができる。
上記の説明においては、測定対象物Sの表面がX方向において16の領域に分割され、コード状測定光が投光部110から4回出射されたが、これに限定されない。測定対象物Sの表面がX方向において2Nの領域(Nは自然数)に分割され、コード状測定光が投光部110からN回出射されてもよい。上記の説明においては、理解を容易にするためにNは4に設定されている。後述のデータ生成処理においては、Nは例えば8に設定される。したがって、測定対象物Sの表面はX方向において256の領域に分割される。
コード状測定光を用いた測定対象物Sの形状測定においては、コード状測定光を分離して識別可能な距離、すなわち1画素分に相当する距離が最小の分解能となる。したがって、受光部120のX方向における視野の画素数が1024画素である場合、高さが例えば10mmの測定対象物Sを10mm÷1024≒10μmの分解能で計測することができる。分解能は低いが絶対値を算出可能なコード状測定光を用いた形状測定と絶対値を算出できないが分解能が高い正弦波状測定光または縞状測定光を用いた形状測定とを組み合わせることにより、測定対象物Sの高さの絶対値をより高い分解能で算出することができる。
特に、図9の縞状測定光を用いた測定対象物Sの形状測定においては、分解能を1/100画素にすることができる。なお、1/100画素の分解能は、受光部120のX方向における視野の画素数が1024画素である場合、測定対象物Sの表面をX方向において約100000の領域に分割すること(すなわちN≒17)に相当する。そのため、コード状測定光を用いた形状測定と縞状測定光を用いた形状測定と組み合わせることにより、測定対象物Sの高さの絶対値をさらに高い分解能で算出することができる。
上述のライン状測定光を測定対象物S上で走査する方法は一般に光切断法と呼ばれる。一方、正弦波状測定光、縞状測定光またはコード状測定光を測定対象物Sに照射する方法は、パターン投影法に分類される。また、パターン投影法の中でも、正弦波状測定光または縞状測定光を測定対象物Sに照射する方法は位相シフト法に分類され、コード状測定光を測定対象物Sに照射する方法は空間コード法に分類される。
位相シフト法においては、周期的な投影パターンである正弦波状測定光または縞状測定光を出射した際に、測定対象物Sが存在しない場合の基準高さ位置から反射した受光量に基づいて計算された位相と、測定対象物Sが存在する場合の測定対象物S表面から反射した受光量に基づいて計算された位相との位相差から測定対象物Sの高さを求める。位相シフト法においては、個々の周期的な縞が区別できず、縞1周期分(2π)の整数倍に相当する不確かさが存在するため、絶対位相が求まらないという欠点がある。しかしながら、光切断法に比べて取得する画像の枚数が少ないため測定時間が比較的短く、測定分解能が高いという長所がある。
一方、空間コード法おいては、測定対象物Sの領域ごとに、測定対象物Sが存在することによって変化した符号が得られる。得られた符号と測定対象物Sが存在しない場合の符号との差分を領域ごとに求めることにより、測定対象物Sの絶対的な高さを求めることができる。空間コード法においても、比較的少数の画像により測定が可能であり、絶対的な高さを求めることができるという長所がある。しかしながら、位相シフト法に比べると測定分解能に限界がある。
これらの投影法は、各々短所および長所を有しているが、いずれも三角測距の原理を用いている点は共通である。上記のパターンの測定光が投影された測定対象物Sの画像データ(以下、パターン画像データと呼ぶ)に基づいて、測定対象物Sの立体形状を表す点群(ポイントクラウド)データが生成される。
以下の説明では、測定対象物Sの立体形状を表す点群データを立体形状データと呼ぶ。立体形状データは、測定対象物Sの表面上の複数の点の位置データを含む。位置データは、例えば、X方向、Y方向およびZ方向における座標を表す。この場合、立体形状データのうち任意の点のデータをPn(nは自然数)とすると、Pnは、例えば装置座標系の座標値を用いて(Xn,Yn,Zn)で表すことができる。なお、立体形状データは、点群データに基づいて生成される面情報データにより構成されてもよく、ポリゴンメッシュ等の他の形式のデータを含んでもよい。立体形状データに基づいて、測定対象物Sの立体形状を表す画像(以下、立体形状画像と呼ぶ)を表示することができる。
本実施の形態においては、立体形状画像は、二次元座標系が定義された任意の平面上に立体形状データが投影された状態を示す画像であり、使用者による計測箇所の指定を受け付けるための画像である。使用者は、測定対象物Sを見る方向(測定対象物Sに対する受光部120の位置)として立体形状データが投影される平面を指定することができる。それにより、立体形状画像により表される測定対象物Sの向きが変化する。
(6)複数の立体形状データの合成
投光部110および受光部120に対する測定対象物Sの位置および姿勢が一定であると、測定対象物Sの一部にしか測定光が照射されない。また、測定対象物Sの一部で反射される光しか受光部120に入射しない。そのため、測定対象物Sの表面の広範囲に渡る立体形状データを求めることができない。そこで、測定対象物Sの位置または姿勢を変化させることにより、互いに異なる複数の方向から測定対象物Sを撮像し、複数の撮像方向にそれぞれ対応する複数の立体形状データを取得し、取得された複数の立体形状データを合成してもよい。
図12は、複数の方向から測定対象物Sを撮像することにより複数の立体形状データを生成する例を説明するための図である。例えば、図12(a)に示すように、使用者により測定対象物Sの位置および姿勢がステージ140上で調整された後、測定光を用いて測定対象物Sが撮像されることにより最初の立体形状データが生成される。これにより取得される立体形状画像の一例が図12(d)に示される。立体形状データは、測定対象物Sの表面で反射して受光部120に入射する測定光に基づいて生成される。そのため、測定対象物Sの表面のうち受光部120の位置から視認可能な部分については立体形状データが生成されるが、測定対象物Sの表面のうち受光部120の位置から視認不可能な部分については立体形状データを生成することができない。
そこで、図12(b)に示すように、図2の回転機構143によりステージ140が一定角度回転された後、測定光を用いて測定対象物Sが撮像されることにより2番目の立体形状データが生成される。図12(b)の例では、ステージ140を上方から見た場合に、ステージ140が図12(a)の状態から反時計回りに約45度回転されている。これにより取得される立体形状画像の一例が図12(e)に示される。上記のように、ステージ140が回転すると、その回転に伴って測定対象物Sの表面のうち受光部120の位置から視認可能な部分および視認不可能な部分も変化する。その結果、最初の撮像時には取得されなかった部分を含む立体形状データが生成される。
さらに、図12(c)に示すように、図2の回転機構143によりステージ140が一定角度回転された後、測定光を用いて測定対象物Sが撮像されることにより3番目の立体形状データが生成される。図12(c)の例では、ステージ140を上方から見た場合に、ステージ140が図12(b)の状態から反時計回りに約45度回転されている。これにより取得される立体形状画像の一例が図12(f)に示される。
このようにして、ステージ140の回転および測定対象物Sの撮像が繰り返されることにより、複数の撮像方向にそれぞれ対応する複数の立体形状データが生成される。
上記の複数の撮像時には、ステージ140の回転位置(回転角度)が図1のCPU210により検出される。2つの投光部110および2つの受光部120とステージ140の回転軸Axとの位置関係は一定に保持されている。これらの相対位置を表すパラメータ(以下、機器パラメータ)が、例えば図1の記憶装置240に予め記憶される。機器パラメータは、例えば装置座標系で表される。
この場合、機器パラメータとステージ140の回転位置とに基づいて、複数の立体形状データに含まれる位置データがステージ140の一部を基準とする仮想的な共通の三次元座標系で表されるように、各立体形状データの座標変換を実行することができる。
本例では、上記のように、複数の立体形状データが共通の三次元座標系で表されるように座標変換され、座標変換された複数の立体形状データが互いに重複する部分のパターンマッチングにより合成される。それにより、測定対象物Sの外表面の広範囲に渡る立体形状データが生成される。
[3]測定対象物の外観を表すテクスチャ画像データ
測定部100においては、照明光出力部130から測定対象物Sに照明光が照射された状態または投光部110A,110Bから測定対象物Sに均一な測定光が照射された状態で、測定対象物Sの外観(表面状態)を表す画像データ(以下、テクスチャ画像データと呼ぶ)が生成される。均一な測定光とは、パターンを有さない測定光であり、照明光の代わりに用いることができる。以下、このような測定光を均一測定光と呼ぶ。測定対象物Sの表面状態は、例えば模様または色彩を含む。以下、テクスチャ画像データにより表される画像をテクスチャ画像と呼ぶ。
テクスチャ画像データの種々の例について説明する。例えば、測定対象物Sに対して受光部120の焦点位置が相対的に変化されつつ複数のテクスチャ画像データが取得されてもよい。この場合、複数のテクスチャ画像データを合成することにより、測定対象物Sの表面の全体に焦点が合ったテクスチャ画像データ(以下、全焦点テクスチャ画像データと呼ぶ)が生成される。なお、全焦点テクスチャ画像データを生成する場合、測定部100には、受光部120の焦点位置を移動させる焦点移動機構が設けられる必要がある。
また、異なる複数の撮像条件で複数のテクスチャ画像データが取得されてもよい。撮像条件は、例えば、受光部120の露光時間、照明光出力部130からの照明光の強度(明るさ)または投光部110からの均一測定光の強度(明るさ)等を含む。この場合、取得された複数のテクスチャ画像データを用いて公知のハイダイナミック(HDR)合成を行うことにより、黒つぶれおよび白とび等が抑制されたテクスチャ画像データ(以下、HDRテクスチャ画像データと呼ぶ)が生成される。
また、焦点位置が変化されるとともに撮像条件が変化されてもよい。具体的には、測定対象物Sに対して受光部120の焦点が複数の位置へ相対的に変化されるとともに、各位置において互いに異なる複数の撮像条件でテクスチャ画像データが取得される。取得された複数のテクスチャ画像データを合成することにより、測定対象物Sの表面の全体に焦点が合いかつ黒つぶれおよび白とび等が抑制されたテクスチャ画像データが生成される。
各テクスチャ画像データは、測定対象物Sの各点の色または輝度を表すテクスチャ情報(光学的表面状態を表す情報)を含む。一方、上記の立体形状データは、測定対処物Sの光学的表面状態の情報を含まない。そこで、立体形状データといずれかのテクスチャ画像データとが合成されることにより、立体形状データにテクスチャ情報が付与されたテクスチャ付き立体形状データが生成される。
テクスチャ付き立体形状データは、測定対象物Sの表面上の複数の点の位置データを含むとともに各点の位置データに対応付けられた当該点の色または輝度を示すデータを含む。この場合、テクスチャ付き立体形状データのうち任意の点のデータをTPn(nは自然数)とすると、TPnは、例えば装置座標系の座標値と、赤色、緑色および青色の三原色の成分(R,G,B)とを用いて(Xn,Yn,Zn,Rn,Gn,Bn)で表すことができる。または、TPnは、例えば装置座標系の座標値と、輝度値(I)とを用いて(Xn,Yn,Zn,In)で表すことができる。テクスチャ付き立体形状データは、点群データに基づいて生成される面情報データにより構成されてもよい。
以下の説明では、一定の焦点位置および撮像条件で取得されたテクスチャ画像データにより表されるテクスチャ画像を通常テクスチャ画像と呼び、全焦点テクスチャ画像データにより表される画像を全焦点テクスチャ画像と呼び、HDRテクスチャ画像データにより表される画像をHDRテクスチャ画像と呼ぶ。また、テクスチャ付き立体形状データにより表される画像をテクスチャ付き立体形状画像と呼ぶ。
本実施の形態においては、テクスチャ付き立体形状画像は、二次元座標系が定義された任意の平面上にテクスチャ付き立体形状データが投影された状態を示す画像であり、使用者による計測箇所の指定を受け付けるための画像である。使用者は、測定対象物Sを見る方向(測定対象物Sに対する受光部120の位置)としてテクスチャ付き立体形状データが投影される平面を指定することができる。それにより、テクスチャ付き立体形状画像により表される測定対象物Sの向きが変化する。
上記のように、テクスチャ画像データを生成するために、照明光または均一測定光を用いて測定対象物Sが撮像される。ここで、上記のように、照明光出力部130は、2つの受光部120を取り囲むように形成された照明光の出射口131を有する。このような構成により、出射口131から出射される照明光の少なくとも一部は受光部120の光軸とほぼ平行な状態で測定対象物Sに照射される。それにより、照明光を用いて測定対象物Sが撮像される場合には、生成されるテクスチャ画像データに影の成分が発生しにくい。したがって、テクスチャ画像データの生成時には照明光を用いることが好ましい。
なお、図12の例で示されるように、測定対象物Sについて複数の方向から撮像を行うことにより複数の立体形状データを生成する場合には、測定光を用いた撮像とともに照明光または均一測定光を用いた撮像を行ってもよい。この場合、複数の立体形状データにそれぞれ対応する複数のテクスチャ画像データを生成することができる。したがって、複数の立体形状データおよび複数のテクスチャ画像データを合成することにより、測定対象物Sの外表面の広い範囲に渡って立体形状および表面状態を表すテクスチャ付き立体形状データを生成することができる。
[4]形状測定
(1)形状測定の準備
まず使用者は、測定対象物Sの測定を行う前に、形状測定の準備を行う。図13は、形状測定の準備の手順を示すフローチャートである。以下、図1、図2および図13を参照しながら形状測定の準備の手順を説明する。まず、使用者は、測定対象物Sをステージ140上に載置する(ステップS1)。次に、使用者は、投光部110から測定対象物Sに測定光を照射する(ステップS2)。このとき測定対象物Sのライブ画像が表示部400に表示される。続いて、使用者は、表示部400に表示されたライブ画像を見ながら、取得されるライブ画像の明るさ、ならびに測定対象物Sの位置および姿勢の調整(以下、第1の調整と呼ぶ)を行う(ステップS3)。ステップS3において取得されるライブ画像の明るさは、測定光の光量および受光部120の露光時間のうち少なくとも一方を変化させることにより調整することができる。本実施の形態では、測定光を用いて取得されるライブ画像の明るさを観察に適した明るさにするために、測定光の光量または受光部120の露光時間のうち一方が調整される。なお、取得されるライブ画像の明るさは、測定光の光量を一定にし、受光部120の露光時間により調整されることが好ましい。それにより、測定光の光量の変化に伴って測定光源111の温度が変化することによる計測精度の低下が抑制される。
ステップS2では、上記の第1〜第4のパターンの測定光のいずれかが測定対象物Sに照射されてもよく、均一測定光が測定対象物Sに照射されてもよい。ステップS3において、測定対象物Sの計測すべき箇所(以下、計測箇所と呼ぶ)に影が発生していない場合、使用者は、測定対象物Sの位置および姿勢の調整を行う必要はなく、測定光の光量または受光部120の露光時間の調整を行えばよい。
次に、使用者は、測定光の照射を停止するとともに、照明光出力部130から測定対象物Sに照明光を照射する(ステップS4)。このとき、測定対象物Sのライブ画像が表示部400に表示される。続いて、使用者は、表示部400に表示されたライブ画像を見ながら、取得されるライブ画像の明るさの調整(以下、第2の調整と呼ぶ)を行う(ステップS5)。ステップS5において取得されるライブ画像の明るさは、基本的にステップS3の例と同様に、照明光の光量および受光部120の露光時間のうち少なくとも一方を変化させることにより調整することができる。本実施の形態では、照明光を用いて取得されるライブ画像の明るさを観察に適した明るさにするために、照明光の光量または受光部120の露光時間のうち一方が調整される。
次に、使用者は、表示部400に表示されたライブ画像を確認し、光量、受光部120の露光時間、測定対象物Sの位置および姿勢(以下、観察状態と呼ぶ)が適切であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6においては、測定対象物Sに測定光が照射されてもよく、照明光が照射されてもよく、または測定光および照明光が順に照射されてもよい。
ステップS6において、観察状態が適切でないと判定した場合、使用者は、ステップS2の処理に戻る。一方、ステップS6において、観察状態が適切であると判定した場合、使用者は、形状測定の準備を終了する。
なお、上記の説明においては、第1の調整の後に第2の調整が行われるが、これに限定されない。第2の調整の後に第1の調整が行われてもよい。この場合、使用者は、第2の調整において測定対象物Sの位置および姿勢を調整し、第1の調整時に測定対象物Sの所望の部分に測定光が照射されていることを確認してもよい。測定対象物Sの所望の部分に測定光が照射されていない場合には、測定対象物Sの位置および姿勢を再調整し、再度第2の調整として照明光の光量または受光部120の露光時間の調整等を行ってもよい。
(2)第1の調整
図14および図15は、形状測定の準備の手順における第1の調整の詳細を示すフローチャートである。以下、図1、図2、図14および図15を参照しながら形状測定の準備の手順における第1の調整の詳細を説明する。以下、投光部110A,110Bのうち一方から出射される測定光を一方の測定光と呼び、他方から出射される測定光を他方の測定光と呼ぶ。ここで、本実施の形態に係る測定部100においては、一方および他方の測定光の光量をそれぞれ独立して設定することができる。また、一方の測定光を用いて測定対象物Sを撮像する際の受光部120の露光時間と、他方の測定光を用いて測定対象物Sを撮像する際の受光部120の露光時間とをそれぞれ独立して設定することができる。
まず、使用者は、取得されるライブ画像の明るさを観察に適した明るさにするために、一方の測定光の光量または受光部120の露光時間を仮調整する(ステップS11)。次に、使用者は、表示部400に表示される測定対象物Sのライブ画像の倍率(以下、視野サイズと呼ぶ)を調整する(ステップS12)。具体的には、使用者は、測定対象物Sの測定に用いる受光部120として、低倍率のレンズ122を有する受光部120Aと高倍率のレンズ122を有する受光部120Bとのいずれか一方を選択する。それにより、選択された受光部により取得されるライブ画像が表示部400に表示される。低倍率の受光部120Aが選択されるときの視野サイズは、高倍率の受光部120Bが選択されるときの視野サイズよりも大きくなる。なお、測定部100は、デジタルズーム機能を有してもよい。この場合、使用者は、2つの受光部120A,120Bのいずれかを選択するとともに、選択された受光部120により取得されるライブ画像の表示倍率を調整することができる。
続いて、使用者は、表示部400に表示される測定対象物Sのライブ画像に基づいて、測定対象物Sの位置および姿勢が適切であるか否かを判定する(ステップS13)。ここで、測定対象物Sの計測箇所に影が発生していない場合、使用者は、測定対象物Sの位置および姿勢が適切であると判断する。一方、測定対象物Sの計測箇所に影が発生している場合、使用者は、測定対象物Sの位置および姿勢が適切でないと判断する。
ステップS13において、測定対象物Sの位置および姿勢が適切でないと判定した場合、使用者は、測定対象物Sの位置および姿勢を調整する(ステップS14)。具体的には、使用者は、回転機構143によってステージ140を回転させる、または手で測定対象物Sを動かすことにより、測定対象物Sの位置および姿勢を調整する。その後、使用者は、ステップS13の処理に戻る。
一方、ステップS13において、測定対象物Sの位置および姿勢が適切であると判定した場合、使用者は、表示部400に表示される測定対象物Sのライブ画像に基づいて、取得されるライブ画像の明るさが観察に適した明るさであるか否か、すなわち測定対象物Sに照射される一方の測定光の光量または受光部120の露光時間が適切であるか否かを判定する(ステップS15)。
ステップS15において、一方の測定光の光量または受光部120の露光時間が適切でないと判定した場合、使用者は、一方の測定光の光量または受光部120の露光時間を調整する(ステップS16)。その後、使用者は、ステップS15の処理に戻る。
一方、ステップS15において、一方の測定光の光量が適切であると判定した場合、使用者は、表示部400に表示された測定対象物Sのライブ画像から、観察状態が適切であるか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17において、観察状態が適切でないと判定した場合、使用者は、ステップS14またはステップS16の処理に戻る。具体的には、観察状態のうち測定対象物Sの位置および姿勢が適切でないと判定した場合、使用者は、ステップS14の処理に戻る。観察状態のうち光(一方の測定光)の光量または受光部120の露光時間が適切でないと判定した場合、使用者は、ステップS16の処理に戻る。
一方、ステップS17において、観察状態が適切であると判定した場合、使用者は、一方の測定光の照射を停止するとともに、他方の投光部110Bから測定対象物Sに測定光を照射する(ステップS18)。これにより、測定対象物Sのライブ画像が表示部400に表示される。続いて、使用者は、表示部400に表示された測定対象物Sのライブ画像を見ながら、取得されるライブ画像の明るさを観察に適した明るさにするために、他方の測定光の光量または受光部120の露光時間の調整を行う(ステップS19)。
その後、使用者は、表示部400に表示される測定対象物Sのライブ画像に基づいて、取得されるライブ画像の明るさが観察に適した明るさであるか否か、すなわち他方の測定光の光量または受光部120の露光時間が適切であるか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20において、他方の測定光の光量または受光部120の露光時間が適切でないと判定した場合、使用者は、ステップS19の処理に戻る。一方、ステップS20において、他方の測定光の光量または受光部120の露光時間が適切であると判定した場合、使用者は、第1の調整を終了する。第1の調整が行われることにより、立体形状データを生成するために最適な一方および他方の測定光の光量条件、または一方および他方の測定光にそれぞれ対応する受光部120の露光時間の条件が設定される。なお、他方の投光部110Bを使用しない場合には、使用者は、ステップS17の処理の後、ステップS18〜S20の手順を省略して第1の調整を終了してもよい。
(3)第2の調整
図16は、形状測定の準備の手順における第2の調整の詳細を示すフローチャートである。以下、図1、図2および図16を参照しながら形状測定の準備の手順における第2の調整の詳細を説明する。ここで、本実施の形態に係る測定部100においては、照明光の光量を一方および他方の測定光の光量から独立して設定することができる。また、照明光を用いて測定対象物Sを撮像する際の受光部120の露光時間を、一方および他方の測定光を用いて測定対象物Sを撮像する際の受光部120の露光時間から独立して設定することができる。
まず、使用者は、取得されるライブ画像の明るさを観察に適した明るさにするために、照明光の光量または受光部120の露光時間を調整する(ステップS31)。次に、使用者は、表示部400に表示される測定対象物Sのライブ画像に基づいて、取得されるライブ画像の明るさが観察に適した明るさであるか否か、すなわち測定対象物Sに照射される照明光の光量または受光部120の露光時間が適切であるか否かを判定する(ステップS32)。
ステップS32において、照明光の光量または受光部120の露光時間が適切でないと判定した場合、使用者は、ステップS31の処理に戻る。一方、ステップS32において、照明光の光量または受光部120の露光時間が適切であると判定した場合、使用者は、取得すべきテクスチャ画像の種類を選択し(ステップS33)、第2の調整を終了する。テクスチャ画像の種類は、例えば、通常テクスチャ画像、全焦点テクスチャ画像、HDRテクスチャ画像を含む。第2の調整が行われることにより、テクスチャ画像データを生成するために最適な照明光の光量条件、または照明光に対応する受光部120の露光時間の条件が設定される。
また、ステップS33において、全焦点テクスチャ画像またはHDRテクスチャ画像が選択された場合には、全焦点テクスチャ画像データまたはHDRテクスチャ画像データを適切に取得するための設定が別途行われてもよい。例えば、全焦点テクスチャ画像が選択された場合には、焦点位置の変化範囲等が設定されてもよい。また、HDRテクスチャ画像データが選択された場合には、撮像条件の変化範囲等が設定されてもよい。また、これらの設定に基づいて、プレビュー用の全焦点テクスチャ画像またはHDRテクスチャ画像が表示部400に表示されてもよい。
(4)データ生成処理
使用者による図13の形状測定の準備の後、測定対象物Sの立体形状データおよびテクスチャ付き立体形状データを生成するためにデータ生成処理が実行される。ここで、データ生成処理は、使用者により予め設定されるデータの生成条件に基づいて実行される。データの生成条件は、データ生成処理の実行前に予め図1の記憶装置240に記憶されている。データの生成条件には、データ生成処理により生成されるべき立体形状データに関する情報が含まれる。
例えば、図12の例で示したように、複数の方向から撮像を行うことにより得られる複数の立体形状データを合成して1つの立体形状データを生成する場合には、複数の立体形状データを生成するためにステージ140(図2)を回転させる必要がある。そこで、使用者は、撮像ごとのステージ140の回転位置、ステージ140の回転方向および撮像回数等を生成条件として設定する。
より具体的な例として、使用者は、ステージプレート142を0度から360度の範囲にかけて上方から見て時計回りに120度づつ回転させ、0度、120度、240度の位置でそれぞれ撮像を行うべきことを生成条件として設定することができる。あるいは、使用者は、ステージプレート142を120度から300度の範囲にかけて上方から見て反時計回りに60度づつ回転させ、120度、180度、240度および300度の位置でそれぞれ撮像を行うべきことを生成条件として設定することができる。
生成条件の設定時には、例えば表示部400の画面上に、ステージプレート142の回転開始位置、回転終了位置、回転方向および回転ピッチ角等を入力または指定するためのユーザインターフェースが表示されてもよい。さらに、このようなユーザインターフェースにおいては、回転方向に加えてまたは回転方向の代わりに回転経由位置を入力または指定するためのユーザインターフェースが表示されてもよい。これにより、使用者は、図1の操作部250を用いて上記のユーザインターフェースを操作することにより、容易に生成条件を設定することができる。
図17は、データ生成処理のフローチャートである。図1のCPU210は、使用者によるデータ生成処理の開始の指示に応答して図1の記憶装置240に記憶されるデータ生成プログラムを実行する。
まず、CPU210は、第1の調整において設定された光量条件に従って投光部110から測定対象物Sに測定光を照射し、測定対象物Sに測定光のパターンが投影された測定対象物Sの画像データ(パターン画像データ)を取得する(ステップS41)。取得されたパターン画像データは、作業用メモリ230に記憶される。
次に、CPU210は、取得したパターン画像データを所定のアルゴリズムで処理することにより、測定対象物Sの立体形状を示す立体形状データを生成する(ステップS42)。生成された立体形状データは、作業用メモリ230に記憶される。
次に、CPU210は、図16のステップS33で選択されたテクスチャ画像の種類に対応するテクスチャ画像データを取得する(ステップS43)。取得されたテクスチャ画像データは、作業用メモリ230に記憶される。
次に、CPU210は、ステップS42で生成された立体形状データとステップS43で取得されたテクスチャ画像データとを合成することにより、テクスチャ付き立体形状データを生成する(ステップS44)。
次に、CPU210は、予め設定された生成条件に基づいて、測定対象物Sについての全ての撮像が終了したか否かを判定する(ステップS45)。全ての撮像が終了していない場合、CPU210は、生成条件に基づいてステージ140(図2)を予め定められたピッチ分回転させ(ステップS46)、ステップS41の処理に戻る。
ステップS45において全ての撮像が終了すると、CPU210は、ステップS42の処理が複数繰り返されることにより生成された複数の立体形状データの合成を行うとともに、ステップS44の処理が複数繰り返されることにより生成された複数のテクスチャ付き立体形状データの合成を行う(ステップS47)。なお、ステップS41〜S45の処理が1度しか実行されていない場合、ステップS47の処理は省略される。このようにして、測定対象物Sの計測に用いる立体形状データおよびテクスチャ付き立体形状データが生成される。
その後、CPU210は、生成された立体形状データまたはテクスチャ付き立体形状データに基づいて、測定対象物Sの立体形状画像またはテクスチャ付き立体形状画像を表示部400に表示させる(ステップS48)。
ステップS48においては、使用者は、表示部400に表示すべき画像として立体形状画像またはテクスチャ付き立体形状画像のいずれかを適宜選択することができる。ステップS45において、測定対象物Sの計測箇所が適切に表示されていない場合、使用者は、図14および図15の第1の調整を再度行ってもよい。
上記のデータ生成処理においては、ステップS41〜S45,S47,S48の処理が主として図3の点群データ生成部501により実行され、ステップS46の処理が主として図3の回転制御部506により実行される。
(5)測定対象物の計測
図17のデータ生成処理により生成された立体形状データまたはテクスチャ付き立体形状データと、使用者により設定される計測条件とに基づいて、測定対象物Sについての種々の計測が行われる。計測条件は、計測箇所および計測項目を含む。計測箇所および計測項目の詳細は後述する。
計測条件の設定時には、例えば直前のデータ生成処理により生成されたテクスチャ付き立体形状データに基づくテクスチャ付き立体形状画像が表示部400に表示される。使用者は、図1の操作部250を操作することにより、測定対象物Sを見る方向(測定対象物Sに対する受光部120の位置)を指定することができる。
図1のCPU210は、使用者による方向の指定に応答して、指定された方向から測定対象物Sを見た状態が再現されるように、表示部400上に観察対象物Sの向きが調整されたテクスチャ付き立体形状画像を表示する。この状態で、使用者は、テクスチャ付き立体形状画像を視認しつつ図1の操作部250を操作することにより、表示部400の画面上で計測条件を設定する。
図18は測定対象物Sの一例を示す外観斜視図であり、図19は図18の測定対象物Sについてデータ生成処理を実行することにより取得されるテクスチャ付き立体形状画像の一例を示す図である。図18に示すように、本例の測定対象物Sは、基板B1と、その基板B1上に実装される素子B2,B3とを含む。
ここで、上記の図4および図5に示すように、測定対象物Sを撮像する受光部120Aは、撮像視野TR1が少なくともステージ140の載置面およびその周辺の空間を含むように位置決めされる。そのため、データ生成処理においては、受光部120Aに測定対象物S以外の位置で反射された測定光が入射する。この場合、図19に示すように、データ生成処理を実行することにより取得されるテクスチャ付き立体形状画像には、受光部120Aの撮像視野TR1(図4および図5)内に存在する多数の部材を示す画像が含まれる。
具体的には、図19のテクスチャ付き立体形状画像においては、測定対象物Sの画像SIとともに、図2のステージ140の画像140Iと、図3の設置部161の画像160Iと、図3の測定部100が載置されるテーブルの画像TIと、テーブル上に載置された鉛筆の画像PEとが含まれる。これらの画像140I,160I,TI,PEを表す点群データは、上記の有効領域MR1,MR2(図5)から外れた無効領域に対応し、基本的に測定対象物Sの計測には不要である。
測定対象物Sの計測を行う際に不要な点群データが多数存在すると、使用者は計測条件を誤って設定する可能性がある。また、計測の計算処理や表示処理が不必要に重くなる可能性もある。そこで、本実施の形態に係る測定装置500においては、使用者は、データ生成処理で生成された立体形状データから有効領域に対応する点群データのみを計測用データとして取得すること、または有効領域および無効領域に対応する点群データを計測用データとして取得することを選択することができる。この場合、図1のCPU210は、使用者による選択に応じて、データ生成処理により生成された立体形状データから計測用データを取得する。
また、使用者は、取得された計測用データに対応する領域から除去すべき領域を指定することができる。この場合、図1のCPU210は、使用者による指定に応じて、取得された計測用データのうち指定された領域に対応する点群データを除去することにより、計測用データを修正する。
図20は、図19のテクスチャ付き立体形状画像のうち有効領域内に対応する部分のみを表すテクスチャ付き立体形状画像の一例を示す図である。例えば、表示部400に図19に示されるテクスチャ付き立体形状画像が表示された状態で、使用者が、有効領域に対応する点群データを計測用データとして取得することを選択する。それにより、図1のCPU210により、図18の例に対応する立体形状データから無効領域に対応する点群データが除去され、残った点群データが計測用データとされる。
図20のテクスチャ付き立体形状画像では、図19のテクスチャ付き立体形状画像からステージ140の画像140Iのうち載置面以外の部分、設置部161の画像160I、テーブルの画像TIおよび鉛筆の画像PEが除去されている。
図20のテクスチャ付き立体形状画像において、使用者は、さらにステージ140の画像140Iが不要であると考えた場合に、表示部400の画面上で不要な部分の画像を指定することにより、計測用データに対応する領域から除去すべき領域を指定する。
図21は、除去すべき領域の指定方法の一例を示す図である。図21に示すように、使用者は、例えば表示部400に観察対象物Sおよびステージ140の載置面を含むテクスチャ付き立体形状画像が表示された状態で、テクスチャ付き立体形状画像とともに表示されるポインタPIを移動させつつテクスチャ付き立体形状画像上の複数の部分を指定することにより除去すべき領域を指定することができる。図21の例では、テクスチャ付き立体形状画像のうちポインタPIにより一点鎖線で取り囲まれる部分に対応する領域が除去すべき領域として指定される。それにより、指定された領域に対応する点群データが、図21のテクスチャ付き立体形状画像に対応する立体形状データから除去される。
図22は、図21のテクスチャ付き立体形状画像から指定された領域に対応する部分が除去されたテクスチャ付き立体形状画像の一例を示す図である。使用者は、表示部400に表示されるテクスチャ付き立体形状画像を確認することにより除去すべき領域がないと判断した上で、計測条件の設定を行う。このとき、表示部400に表示されるテクスチャ付き立体形状画像に対応する立体形状データが計測用データとなる。
図22のテクスチャ付き立体形状画像によれば、使用者は、測定対象物Sの画像SIにおいて、基板B1、素子B2および素子B3のそれぞれの画像B1I,B2I,B3Iを明りょうに区別することができる。
使用者は、測定対象物Sの各部の形状を大まかに把握しつつテクスチャ付き立体形状画像上で計測箇所を指定する。このとき、使用者は、計測箇所を特定するために、計測箇所を含む幾何形状(例えば、点、直線、円、面、球、円筒および円錐等)を指定することができる。また、使用者は、指定した幾何形状についての計測項目を指定することができる。計測項目は、使用者により指定される測定対象物Sの計測箇所において計測されるべきパラメータの種類であり、距離、高さ、直径および面積等を含む。
図23〜図25は、図18の基板B1の上面と素子B2の上面との間の距離を計測する際の計測条件の設定例を示す図である。例えば、使用者は、表示部400の画面上に表示されるポインタPIを操作することにより、図23に示すように、素子B2の上面に対応する画像B2Iの部分を計測箇所として指定する。次に、使用者は、ポインタPIを操作することにより、図24に示すように、基板B1の上面に対応する画像B1Iの部分を計測箇所として指定する。
ここで、計測条件の設定時には、使用者により指定された計測箇所が他の部分とは異なる態様で表示されることが好ましい。図23および図24の例では、使用者により指定された計測箇所にハッチングが施されている。これにより、使用者は、自己の指定した計測箇所を容易に識別することができる。
続いて、使用者は、計測項目として指定された2つの計測箇所(平面)間の距離を指定する。それにより、基板B1の上面に対応する点群データと素子B2の上面に対応する点群データとに基づいて、基板B1の上面と素子B2の上面との間の距離が算出される。その結果、図25に示すように、算出結果が計測結果としてテクスチャ付き立体形状画像上に表示される。図25の例では、基板B1の上面と素子B2の上面との間の距離として、“zz(mm)”が表示される。
図26は、計測処理のフローチャートである。図1のCPU210は、使用者による計測条件の設定開始の指示に応答して図1の記憶装置240に記憶される計測プログラムを実行する。
まず、CPU210は、測定対象物Sの立体形状データを図1の記憶装置240から読み込む(ステップS51)。このとき、使用者は、記憶装置240に記憶された1または複数の立体形状データから所望の立体形状データを読み込み対象として指定してもよい。この場合、CPU210は、使用者により指定された立体形状データを記憶装置240から読み込む。
次に、CPU210は、使用者による図1の操作部250の操作および記憶装置240に予め記憶された領域情報に基づいて、計測用データを生成する計測用データ生成処理を行う(ステップS52)。計測用データ生成処理の詳細は後述する。
次に、CPU210は、計測用データ生成処理により生成された計測用データに対応する測定対象物Sの立体形状画像を表示部400に表示させる(ステップS53)。このとき、CPU210は、使用者による方向の指定に応じて測定対象物Sの立体形状画像の表示の向き、サイズまたは姿勢を調整する。
次に、CPU210は、使用者による計測条件の設定を受け付ける(ステップS54)。具体的には、CPU210は、使用者が図1の操作部250を操作することにより、図23〜図25に示すように指定される計測箇所および計測項目の情報を受け付け、受け付けた情報を図1の記憶装置240に記憶させる。
次に、CPU210は、設定された計測条件に対応する計測値を計測用データに基づいて算出し、算出された計測値を表示部400に表示させる(ステップS55)。
本実施の形態においては、使用者は、図1の操作部250を操作することにより、計測の完了をCPU210に指示することができる。そこで、CPU210は、ステップS54の処理後、使用者から計測の完了が指示されたか否かを判定する(ステップS56)。計測の完了が指示されない場合、CPU210は、ステップS54の処理に戻る。一方、計測の完了が指示されると、計測処理が終了する。
計測処理の終了後、CPU210は、直前に実行された計測処理で取得された1または複数の計測値を、予め定められた形式で図1の記憶装置240にデータファイルとして保存してもよい。このとき、CPU210は、使用者によるファイル名の指定に応答して、記憶装置240に記憶されるデータファイルの名称を決定してもよい。また、CPU210は、図1のPC200に測定装置500の外部装置として印字装置が接続される場合に、当該印字装置を制御することにより、取得された1または複数の計測値を報告書形式で紙面上に印字してもよい。
上記のステップS51においては、CPU210は、測定対象物Sの立体形状データに代えて、測定対象物Sのテクスチャ付き立体形状データを読み込んでもよい。この場合、CPU210は、ステップS53において、計測用データに対応する測定対象物Sのテクスチャ付き立体形状画像を表示部400に表示させる。なお、測定装置500においては、計測処理時に読み込まれるべきデータの種類が使用者により選択可能であってもよい。この場合、上記のステップS51において、立体形状データおよびテクスチャ付き立体形状データのうち使用者により選択されたデータが読み込まれる。
計測用データ生成処理の詳細を説明する。図27は、図26のステップS52で実行される計測用データ生成処理のフローチャートである。図27に示すように、CPU210は、図26のステップS51で読み込まれた立体形状データに基づいて表示部400に立体形状画像を表示させる(ステップS61)。
その後、CPU210は、使用者による図1の操作部250の操作に基づいて、データ生成処理で生成された立体形状データから有効領域に対応する点群データを計測用データとして取得すること、または有効領域および無効領域に対応する点群データを計測用データとして取得することのいずれが選択されたかを判定する(ステップS62)。すなわち、CPU210は、立体形状データから無効領域に対応する点群データを除去すべきか否かを判定する。
有効領域に対応する点群データを計測用データとして取得すべき選択(無効領域を除去すべき選択)を受けた場合、CPU210は、図1の記憶装置240に予め記憶された領域情報に基づいて、図26のステップS51で読み込まれた立体形状データから無効領域に対応する点群データを除去することにより有効領域に対応する計測用データを生成する(ステップS63)。
一方、有効領域および無効領域に対応する点群データを計測用データとして取得すべき選択(無効領域を除去しない選択)を受けた場合、CPU210は、図26のステップS51で読み込まれた立体形状データを計測用データとする(ステップS64)。この計測用データは、有効領域および無効領域に対応する。
続いて、CPU210は、ステップS63,S64のいずれかの処理により取得された計測用データに対応する立体形状画像を表示部400に表示させる(ステップS65)。
次に、CPU210は、使用者による図1の操作部250の操作に基づいて、除去すべき領域の指定を受けたか否かを判定する(ステップS66)。このとき、使用者は、図1の操作部250を操作することにより、図21の例で説明したように、表示部400に表示される立体形状画像上でポインタPIを移動させつつ、除去すべき領域に対応する部分を指定することができる。
除去すべき領域の指定がない場合(例えば、使用者が一定期間以上除去すべき領域の指定を行わない場合)、CPU210は計測用データ生成処理を終了し、図26のステップS53の処理に進む。一方、除去すべき領域の指定があると、CPU210は、ステップS63,S64のいずれかの処理で取得された計測用データから指定された領域に対応する点群データを除去し(ステップS67)、計測用データ生成処理を終了し、図26のステップS53の処理に進む。
上記のステップS61,S65においては、図26のステップS51でテクスチャ付き立体形状データが読み込まれた場合、CPU210は、表示部400にテクスチャ付き立体形状画像を表示させる。
なお、本実施の形態に係る計測用データ生成処理においては、上記のステップS62,S64の処理は省略されてもよい。この場合、計測用データ生成処理においては、図17のデータ生成処理で生成された立体形状データから自動的に無効領域に対応する位置データが除去され、計測用データが生成される。
また、計測用データ生成処理においては、上記のステップS65〜S67の処理が省略されてもよい。この場合、使用者の指定に基づく点群データの除去が行われないので、誤操作による計測用データの生成ミスが防止される。
上記の計測処理においては、計測用データ生成処理のステップS61,S63〜S65の処理が主として図3の計測用データ取得部502により実行され、計測用データ生成処理のステップS67の処理が主として図3の計測用データ修正部503により実行される。また、計測用データ生成処理のステップS62,S66の処理が主として図3の受付部505により実行され、ステップS51,S53〜S56の処理が主として図3の計測部504により実行される。
(6)計測条件の設定時に利用可能な第1の機能
上記のように、計測条件の設定時には、使用者は、測定対象物Sを見る方向を指定することにより、表示部400に表示される立体形状画像上の測定対象物Sの向きを容易に変更することができる。
計測条件の設定内容によっては、その設定に好ましい表示態様が存在する。例えば、測定対象物Sの任意の平面内で2つの直線間の距離を計測したい場合には、当該平面をその平面に対して直交する方向に見るように測定対象物Sの立体形状画像が表示されることが好ましい。それにより、使用者は、当該平面上の2つの直線を容易かつ正確に指定することができる。そこで、本実施の形態に係る測定装置500は、計測条件の設定時に利用可能な第1の機能を有する。
第1の機能は、計測条件の設定時に、使用者に測定対象物Sにおける任意の面を指定させるとともに、指定された面を基準面とし、その基準面を当該基準面に対して直交する方向に見るように立体形状画像上の測定対象物Sの向きを調整するとともにその向きを固定する機能である。
図28〜図30は、第1の機能を利用した計測条件の設定例を説明するための図である。例えば、使用者が、図23に示すように、図18の測定対象物Sの素子B2の上面を指定した場合を想定する。この状態で、使用者は、図1の操作部250を操作することにより、指定した面を基準面として第1の機能を利用することを指令することができる。
この場合、図28に示すように、指定された基準面をその基準面に対して直交する方向に見るように立体形状画像上の測定対象物Sの向きが調整され、固定される。このようにして、測定対象物Sをその基準面に対して直交する方向に見た平面的な画像が表示される。以下の説明では、測定対象物Sを基準面に対して直交する方向に見た状態で固定された平面的な立体形状画像を基準面画像と呼ぶ。
続いて、使用者は、例えば図29に示すように、指定した基準面上で素子B2の互いに平行な2つの辺を計測箇所として指定するとともに、2つの辺の2線間の距離を計測項目として指定する。このとき、使用者により指定された素子B2の2つの辺の画像L1,L2は他の部分に比べて強調表示される。計測条件が設定されることにより、計測用データに基づいて指定された計測条件に対応する計測値が算出される。算出された計測値は、図30に示すように、基準面画像上に表示される。図30の例では、図18の素子B2の2つの辺の間の距離として、“xx(mm)”が表示される。
上記のように、第1の機能によれば、基準面画像が用いられることにより、使用者は、測定対象物Sの立体的な形状を意識することなく、計測条件の設定を直感的に行うことができる。
基準面画像は以下のように表示されてもよい。図31は、基準面画像の他の表示例を示す図である。図31の基準面画像においては、基準面以外の測定対象物Sの部分に、基準面に対する高さの差分に応じた色が付される。ここで、高さとは、基準面に対して直交する方向における基準面からの距離を意味する。図31においては、色の違いがドットパターンの違いで表される。この場合、使用者は、基準面と他の部分との高さの差を容易に認識することができる。上記のように、基準面画像は、立体形状データまたはテクスチャ付き立体形状データを所定の基準面からの高さで表した高さ画像として機能する。
(7)計測条件の設定時に利用可能な第2の機能
上記のように、計測条件の設定内容によっては、その設定に好ましい表示態様が存在する。例えば、測定対象物Sの互いに交差する2つの面間の角度を計測したい場合には、測定対象物Sのプロファイル(断面形状)を表す画像(以下、プロファイル画像と呼ぶ)が表示されることが好ましい。この場合、プロファイル上で、対象となる2つの面にそれぞれ含まれる2つの直線を容易かつ正確に指定することができる。そこで、本実施の形態に係る測定装置500は、計測条件の設定時に利用可能な第2の機能を有する。
第2の機能は、計測条件の設定時に、使用者に測定対象物Sにおける任意の断面を指定させるとともに、指定された断面のプロファイル画像を表示する機能である。
図32〜図34は、第2の機能を利用した計測条件の設定例を説明するための図である。例えば、使用者は、図1の操作部250を操作することにより、第2の機能を利用することを指令することができる。この場合、プロファイル画像が表示されるべき断面位置の指定が受け付けられる。本例では、図32に示すように、第1の機能により表示される基準面画像上で線分LSによりプロファイル画像が表示されるべき測定対象物Sの断面位置が指定される。
この場合、計測用データに基づいて、線分LSを通りかつ基準面に直交する面上における測定対象物Sのプロファイルを表すプロファイルデータが生成される。生成されたプロファイルデータに基づいて、図33のプロファイル画像が表示される。プロファイル画像は、測定対象物Sのプロファイルを表すプロファイル線PLを含む。このとき、表示部400の画面上には、プロファイル画像とともに図32の基準面画像が表示されてもよい。
続いて、使用者は、例えば図34に示すように、表示されたプロファイル線PL上で図18の素子B2の上面に対応する直線と図18の基板B1の一端面に対応する直線との間の角度を計測項目として指定する。このとき、図34に示すように、使用者により指定された素子B2の上面および基板B1の一端面を表す画像L11,L12は他の部分に比べて強調表示される。計測条件が設定されることにより、計測用データに基づいて指定された計測条件に対応する計測値が算出される。算出された計測値は、プロファイル画像上に表示される。図34の例では、素子B2上面と基板B1の一端面との間の角度として、“yy(度)”が表示される。
上記のように、第2の機能によれば、プロファイル画像が用いられることにより、計測条件の設定の利便性が向上する。
[5]キャリブレーション
使用者は、図4のヘッド部190の台座170の両側部に設けられた把持部179を把持することにより、ヘッド部190をスタンド部162から取り外すことができる。この場合、ヘッド部190をスタンド部162とは異なる支持体に取り付けるまたは設置面上に載置することにより、ステージ140に載置できないような測定対象物Sについて形状の測定が可能になる。
しかしながら、一度取り外されたヘッド部190が再度スタンド部162に取り付けられる場合、必ずしもヘッド部190は取り外される前と同じ位置に取り付けられるとは限らない。この場合、ヘッド部190の着脱の前後で、ヘッド部190とステージ140の回転軸Axとの間の位置関係にずれが発生する可能性がある。
上記のように、図1の記憶装置240に予め記憶されている機器パラメータは、立体形状データの生成に用いられる。そのため、記憶装置240に記憶されている機器パラメータが実際のヘッド部190およびステージ140の位置関係から異なると、データ生成処理においてステージ140を回転させつつ生成される複数の立体形状データを正確に合成することができない。
また、有効領域MR1,MR2はヘッド部190の受光部120A,120Bの位置を基準として設定されるので、ヘッド部190の着脱が行われるごとに上記の位置ずれが発生すると、有効領域MR1,MR2とステージ140との間にも位置ずれが生じる。
そこで、ヘッド部190がスタンド部162から取り外された後、ヘッド部190が再度スタンド部162に取り付けられる際には、機器パラメータを校正(キャリブレーション)する必要がある。
本実施の形態では、機器パラメータを校正するための回転軸校正処理が行われる。回転軸校正処理は、例えばヘッド部190をスタンド部162から取り外した後、ヘッド部190を再度スタンド部162に取り付けた際に、使用者の指示に基づいて実行される。
図35は、回転軸校正処理の一例を示すフローチャートである。図1のCPU210は、使用者による回転軸校正処理の開始の指示に応答して図1の記憶装置240に記憶される回転軸校正プログラムを実行する。
ここで、回転軸校正処理の実行前には、使用者により平板状のキャリブレーションボードが、ステージ140の載置面に対して傾斜するように予めステージ140上に配置される。キャリブレーションボードには、校正用の指標が設けられる。指標は、刻印により形成されてもよいし、塗料を用いたマーキングにより形成されてもよい。
回転軸校正処理の開始が指示されると、CPU210は、まず予め定められたステージ140の複数(例えば3つ)の回転位置にそれぞれ対応する複数の立体形状データを生成する(ステップS101)。具体的には、ステージ140が段階的に回転されることによってステージ140の回転位置が予め定められた複数の角度位置に段階的に変化される。ステージ140が各回転位置にあるときに、投光部110からキャリブレーションボードに測定光が照射され、受光部120によりパターン画像データが取得される。各パターン画像データに基づいて立体形状データが生成される。これにより、複数の回転位置に対応する複数の立体形状データが生成される。
次に、CPU210は、予め定められた複数の回転位置と複数の立体形状データのうちの校正用の指標に対応する点群データとに基づいて、装置座標系における受光部120A,120Bとステージ140の回転軸Axとの相対的な位置関係を算出する(ステップS102)。次に、CPU210は、算出された位置関係に基づいて、記憶装置240に記憶される機器パラメータを更新する(ステップS103)。これにより、回転軸校正処理が終了する。
上記の回転軸校正処理によれば、受光部120A,120Bとステージ140の回転軸Axとの相対的な位置関係が正確に算出される。それにより、算出された位置関係を含む機器パラメータに基づいて、データ生成処理において生成される複数の立体形状データを正確に合成することができる。また、ステージ140上のあるべき位置から有効領域MR1,MR2がずれることが防止される。これらの結果、観察対象物Sの計測精度の低下が抑制される。上記の回転軸校正処理においては、ステップS102の処理が主として図3の位置関係算出部507により実行される。
キャリブレーションボードの形状は既知であり、キャリブレーションボードにおける校正用の指標の位置も既知である。それにより、上記の回転軸校正処理において複数の回転位置で複数の立体形状データをそれぞれ生成した場合には、それらの立体形状データとキャリブレーションボードの形状と校正用の指標の位置とに基づいて、生成される立体形状データの精度を担保するための校正を行うことができる。すなわち、取得した複数の立体形状データからキャリブレーションボードの形状がより正確に再現されるように、立体形状データの生成処理を校正することができる。この校正により、ヘッド部190において投光部110と受光部120との間の位置関係にずれが生じる場合でも、生成される立体形状データの精度が担保される。このように、本実施の形態に係る回転軸校正処理によれば、受光部120A,120Bとステージ140の回転軸Axとの相対的な位置関係を正確に算出することができると同時に、立体形状データの生成処理を校正することができる。
[6]遮光機構
測定光以外の外乱光が測定対象物Sにより反射されて受光部120A,120Bに入射すると、その受光部120A,120Bから出力される受光信号に外乱光に起因するノイズ成分が含まれる。この場合、データ生成処理で生成される点群データの精度が低下する。
そこで、本実施の形態に係る測定部100には、ステージ140上の有効領域MR1,MR2を含む空間に測定部100の周辺の外乱光が進入することを防止するための遮光機構が取り付けられる。図36は、遮光機構が取り付けられた測定部100の外観斜視図である。図36に示すように、遮光機構600は、後方カバー部材610、前方カバー部材620、前方カバー支持部材630およびヒンジ部640を含む。ここで、図36の測定部100においては、Y方向のうちスタンド部162からステージ140に向かう方向を前方と呼び、その逆の方向を後方と呼ぶ。
後方カバー部材610は、スタンド部162の上端部に着脱可能に取り付けられる。後方カバー部材610は、受光部120A,120Bの撮像視野TR1,TR2とスタンド部162との間の位置で湾曲しつつX方向に延びるように形成されている。なお、図36では、受光部120A,120Bのうち一方の受光部120Aの撮像視野TR1のみが示される。
後方カバー部材610の両側部には、後方カバー部材610の上方の空間を覆うように前方カバー支持部材630が接続されている。後方カバー部材610がスタンド部162に取り付けられた状態で、前方カバー支持部材630の後端部は、ヘッドケーシング180の前端部につながる。前方カバー支持部材630の前端部にヒンジ部640を介して前方カバー部材620が接続されている。前方カバー部材620は、前方カバー支持部材630の前端部からステージ140の上方に向かってさらに前方に延びるように形成されている。
また、前方カバー部材620は、図36に太い点線で示すように、ヒンジ部640によりステージ140上の空間を開閉可能に設けられている。前方カバー部材620は、閉状態でステージ140の載置面の全体に対向するように形成され、ステージ140上の空間を上方から覆う。また、このとき、前方カバー支持部材630および前方カバー部材620は、投光部110A,110Bから測定対象物Sに照射される測定光を遮蔽しない。一方、前方カバー部材620は、開状態で、ステージ140上の空間を上方から覆わない。
上記の構成によれば、測定部100においては、遮光機構600が取り付けられかつ前方カバー部材620が閉状態にあるときに、ステージ140上の有効領域MR1,MR2の上方からの外乱光が遮光機構600により遮蔽される。また、有効領域MR1,MR2へ照射される測定光は、前方カバー部材620および前方カバー支持部材630により遮蔽されない。それにより、受光部120A,120Bに入射する外乱光が低減されるので、外乱光に起因するノイズ成分が低減される。その結果、点群データの精度の低下が抑制される。
また、上記の構成によれば、ステージ140上の空間の後方からの外乱光の一部が遮光機構600のうちの後方カバー部材610により遮蔽される。また、有効領域MR1,MR2へ照射される測定光は後方カバー部材610により遮蔽されない。それにより、受光部120A,120Bに入射する外乱光がより低減されるので、外乱光に起因するノイズ成分がより低減される。その結果、点群データの精度の低下がより抑制される。
また、上記の構成によれば、前方カバー部材620を開状態にすることにより、ステージ140上の測定対象物Sの載置作業および測定対象物Sの位置決め作業等を容易に行うことができる。このように、前方カバー部材620がステージ140上の空間を開閉可能に構成されているので、測定対象物Sの計測作業が容易になる。
遮光機構600には、ステージ140上の空間の後方からの外乱光をより多く遮蔽するために、以下の遮光部材が取り付けられてもよい。図37は、後方カバー部材610に取り付けられる後方遮光部材の一例を示す測定部100の外観斜視図である。図37の例では、後方カバー部材610の下端部から設置部161の上面まで延びるように、後方カバー部材610に暗幕状の後方遮光部材650が取り付けられている。
また、遮光機構600には、さらに、ステージ140上の空間の前方、左方および右方からの外乱光を遮蔽するために、以下の遮光部材が設けられてもよい。図38は、前方カバー部材620に取り付けられる前側方遮光部材の一例を示す測定部100の外観斜視図である。図38の例では、略U字形状を有する前方カバー部材620の外縁下端部から設置部161の周囲まで下方に延びるように、前方カバー部材620に暗幕状の前側方遮光部材660が取り付けられている。
図38に示されるように、遮光機構600に後方遮光部材650および前側方遮光部材660が取り付けられることにより、ステージ140上の空間の全周が後方遮光部材650および前側方遮光部材660により取り囲まれる。それにより、ステージ140上の空間の前方、後方、左方および右方を含む全側方からの外乱光が後方遮光部材650および前側方遮光部材660により遮蔽される。したがって、受光部120A,120Bに入射する外乱光がさらに低減されるので、外乱光に起因するノイズ成分がさらに低減される。その結果、点群データの精度の低下がさらに抑制される。
上記の後方遮光部材650および前側方遮光部材660は、樹脂または金属で形成されてもよいし、布またはゴムで形成されてもよい。なお、後方遮光部材650および前側方遮光部材660は、布またはゴム等の軟質素材で形成されることが好ましい。
図38の前側方遮光部材660は、ナイロン製の布および複数の金属製の骨部材を含み、上下方向に伸縮可能な蛇腹状に形成されている。この場合、使用者は、前側方遮光部材660を上下に伸縮させることにより、ステージ140上の測定対象物Sの載置作業および測定対象物Sの位置決め作業等を容易に行うことができる。
上記の図36〜図38の構成においては、遮光機構600、後方遮光部材650および前側方遮光部材660のうちステージ140上の空間に向く部分は、光を吸収するような色(例えば黒色)で構成されることが好ましい。それにより、ステージ140上の空間内で測定光または照明光が、遮光機構600、後方遮光部材650および前側方遮光部材660の内面で反射することが抑制される。その結果、散乱する測定光または照明光に起因するノイズ成分が低減される。
[7]ステージプレート
図2のステージプレート142は、以下の構成を有してもよい。図39は、ステージプレート142の構成の一例を示す図である。図39のステージプレート142は、固定部401および傾斜部402を含む。固定部401は平坦な固定載置面401aを有し、傾斜部402は平坦な傾斜載置面402aを有する。
固定部401はステージベース141に固定されており、固定載置面401aは水平に維持される。一方、傾斜部402は、傾斜載置面402aが水平に維持される水平姿勢と、固定載置面401aに対して傾斜載置面402aが傾斜される傾斜姿勢とに切替可能に設けられる。図39(a)においては傾斜部402が水平姿勢にあり、図39(b)においては傾斜部402が傾斜姿勢にある。傾斜部402が傾斜姿勢にあるときには、傾斜部402の下面が支持部材403により支持される。
傾斜載置面402aの傾斜角度(水平面に対する傾斜載置面402aの傾斜角度)D2は、傾斜載置面402aが受光部120A,120Bの光軸A1,A2に直交する角度に設定されてもよいし、他の角度に設定されてもよいし、複数の角度に変更可能に設定されてもよい。
図40は、傾斜部402が傾斜姿勢にある状態で測定対象物Sを撮像する例を示す測定部100の模式的側面図である。本例では、傾斜載置面402aは受光部120A,120Bの光軸A1,A2に直交するように傾斜載置面402aの傾斜角度D2(図39)が設定されているものとする。例えば、互いに平行な上面および下面を有する測定対象物Sをその下面が傾斜載置面402aに接触するように傾斜載置面402a上に載置する。このとき、測定対象物Sの上面は、受光部120A,120Bのそれぞれの光軸A1,A2に対して直交する。
それにより、図40の状態で測定対象物Sが撮像されるときに表示部400に表示されるライブ画像は、測定対象物Sの上面をその真上から見たときの測定対象物Sの画像として表示される。それにより、通常の顕微鏡を使用する場合と同様の感覚で測定対象物Sを観察することが可能になる。
上記のように、本例のステージプレート142によれば、傾斜載置面402aが固定載置面401aに対して傾斜するように、傾斜載置面402aと固定載置面401aとの間の角度を変更することができる。それにより、使用者は、測定対象物Sを傾斜載置面402aおよび固定載置面401aのいずれか一方に選択的に載置することができる。したがって、測定対象物Sの姿勢を容易に変更することができる。また、測定対象物Sおよびその計測箇所に応じて傾斜載置面402aの角度を適切に変更することができる。したがって、測定対象物Sの計測の利便性が向上する。
[8]領域情報
本実施の形態に係る測定装置500においては、上記のように、有効領域MR1,MR2は、投光部110A,110Bにより測定光を照射可能でかつ受光部120により撮像可能な領域である。上記の点に加えて、受光部120の有効領域は、以下の点を考慮して設定されてもよい。
有効領域は、ステージ140のステージプレート142の載置面が除かれるように設定されてもよい。この場合、図41および図40の例に示すように、ステージプレート142の傾斜部402が水平姿勢と傾斜姿勢とに切替可能である構成においては、ステージプレート142の傾斜部402の状態に応じた有効領域が設定されてもよい。これらの場合、使用者は、ステージプレート142の存在を考慮することなく測定対象物Sの計測を行うことができる。
図38の例に示すように、測定部100に遮光機構600が取り付けられるとともに後方カバー部材610および前方カバー部材620にそれぞれ後方遮光部材650および前側方遮光部材660が取り付けられる場合を想定する。この場合、受光部120の撮像視野が大きいと、その受光部120による測定対象物Sの撮像時に前側方遮光部材660の内面の一部が測定対象物Sとともに撮像される。そこで、有効領域は、前側方遮光部材660よりも内側でかつその外縁が前側方遮光部材660に近接するように設定されてもよい。それにより、前側方遮光部材660の内側に有効領域を大きく確保することができる。
[9]効果
(1)本実施の形態に係る測定装置500においては、投光部110A,110B、受光部120A,120Bおよびステージ140が一体的に設けられているので、受光部120A,120Bとステージ140上に予め定められる有効領域MR1,MR2との位置関係が一義的に定まる。
それにより、データ生成処理により生成された立体形状データから有効領域MR1,MR2に対応する点群データを計測用データとして取得する処理では、受光部120A,120Bと有効領域MR1,MR2との位置関係に基づいて有効領域MR1,MR2にのみ対応する計測用データを正確に取得することができる。取得された計測用データに基づいて、指定された箇所の計測値が算出される。
有効領域MR1,MR2にのみ対応する計測用データには、無効領域に対応する点群データが含まれない。そのため、使用者により指定された箇所の計測値が無効領域に対応する点群データに基づいて誤って算出されることがない。また、使用者が測定対象物Sの計測すべき箇所として無効領域内の箇所を誤って指定した場合でも、無効領域に対応する点群データが計測値の算出に用いられない。したがって、異常な計測値の算出が防止される。これらの結果、測定対象物Sの所望の箇所の形状を容易かつ正確に測定することが可能になる。
(2)計測用データ生成処理においては、有効領域MR1,MR2に対応する点群データのみを計測用データとして取得すること、または有効領域MR1,MR2および無効領域に対応する点群データを計測用データとして取得することのいずれかの選択に応じて計測用データが取得される。
この場合、使用者は、有効領域MR1,MR2および無効領域に対応する点群データを計測用データとして取得することを選択することにより、有効領域MR1,MR2に対応する点群データとともに無効領域に対応する点群データを用いて無効領域内の箇所を対象とする測定対象物Sの計測値を得ることができる。また、測定対象物Sのうち無効領域に存在する部分の計測値を得ることができる。
(3)計測用データ生成処理においては、除去すべき領域の指定があった場合に、計測用データから指定された領域に対応する点群データが除去される。この場合、使用者は、除去すべき領域を指定することにより、指定された領域に対応する点群データが除去された計測用データを得ることができる。それにより、使用者は、一旦取得された計測用データを計測内容に応じて修正することができる。したがって、測定対象物Sの計測の利便性が向上する。
(4)データ生成処理においては、データの生成条件によっては、ステージ140が回転されつつ複数の回転位置で測定対象物Sが撮像される。この場合、ステージ140の回転軸Axが受光部120A,120Bの光軸A1,A2と平行でないので、ステージ140が回転されることにより、受光部120A,120Bに向けられる測定対象物Sの箇所が変わる。そのため、ステージ140の回転位置が異なる状態で測定対象物Sに測定光が照射されることにより、測定対象物Sの異なる箇所での反射光が受光部120A,120Bによって受光される。
上記のように、複数の回転位置で撮像を行うことにより複数の回転位置にそれぞれ対応する複数の立体形状データが生成される。複数の立体形状データが合成されることにより、測定対象物Sの外表面の広範囲に渡る立体形状データが生成される。
[10]他の実施の形態
(1)上記実施の形態では、有効領域は受光部120ごとに設定されるが、本発明はこれに限定されない。1つの受光部120に対して大きさの異なる複数の有効領域が設定されてもよい。また、この場合、CPU210は、使用者による有効領域の選択を受け付け、使用者により選択された有効領域に基づいて計測用データを生成してもよい。
(2)上記実施の形態では、有効領域を表す情報は、測定装置500の工場出荷時点で予め領域情報として記憶装置240に記憶されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、領域情報は、測定対象物Sの計測前に使用者により編集可能であってもよい。この場合、使用者は、測定対象物Sの計測内容に応じてより適切な領域情報を設定することが可能になる。それにより、測定装置500の利便性が向上する。
(3)上記実施の形態では、測定装置500の測定部100には、測定対象物Sを撮像するための構成として光学系の倍率が互いに異なる2つの受光部120A,120Bが設けられるが、本発明はこれに限定されない。測定装置500には、測定対象物Sを撮像するための構成として1つの受光部120のみが設けられてもよい。この場合、測定装置500の構成がより単純化する。
(4)上記実施の形態では、受光部120A,120Bの光学系の倍率は変化しないが、本発明はこれに限定されない。受光部120A,120Bの各々の光学系としてズームレンズが設けられてもよい。この場合、受光部120A,120Bにそれぞれ対応する有効領域MR1,MR2のサイズは、ズームレンズの倍率に応じて変化してもよい。
(5)上記実施の形態では、受光部120A,120Bに単眼カメラが用いられるが、単眼カメラに代えてまたは単眼カメラに加えて、複眼カメラが用いられてもよい。また、複数の受光部120Aおよび複数の受光部120Bが用いられ、ステレオ法によって立体形状データが生成されてもよい。また、上記実施の形態では、2つの投光部110が用いられるが、立体形状データの生成が可能であれば、1つの投光部110のみが用いられてもよく、または3つ以上の投光部110が用いられてもよい。
また、投光部110からの均一な測定光を用いてテクスチャ画像データを取得する場合には、照明光出力部130および照明光源320が設けられなくてもよい。また、パターン画像データを合成してテクスチャ画像データを生成することも可能であり、その場合にも照明光出力部130および照明光源320が設けられなくてもよい。
また、上記実施の形態では、パターン画像データおよびテクスチャ画像データが共通の受光部120A,120Bによって取得されるが、立体形状データを取得するための受光部と、ライブ画像データおよびテクスチャ画像データを取得するための受光部とが別個に設けられてもよい。
また、上記実施の形態では、三角測距法により点群データが生成されるが、TOF(Time Of Flight)法等の他の方法により点群データが生成されてもよい。
(6)上記実施の形態においては、ステージ駆動部146によりステージ140が回転軸Axの周りで回転可能に構成され、他の方向には移動しないが、本発明はこれに限定されない。
ステージ140は、例えば回転軸Axの周りで回転可能であるとともに、X方向、Y方向およびZ方向のうち少なくとも一方向に移動可能に構成されてもよい。この場合、ステージ140に対して一定姿勢で測定対象物Sが載置された状態で、ステージ140の回転位置および位置を自在に変更することができる。したがって、データ生成処理時に、より多様な方向から測定対象物Sを撮像することができる。その結果、測定対象物Sの表面のより広範囲に渡る立体形状データを求めることが可能になる。
[11]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態においては、設置部161および回転機構143がステージ保持部の例であり、測定対象物Sが測定対象物の例であり、ステージ140がステージの例であり、投光部110,110A,110Bが投光部の例であり、受光部120,120A,120Bが受光部の例であり、ヘッド部190がヘッド部の例であり、スタンド部162が連結部の例である。
また、点群データ生成部501が点群データ生成手段の例であり、有効領域MR,MR1,MR2が有効領域の例であり、記憶装置240が記憶手段の例であり、計測用データ取得部502が計測用データ取得手段の例であり、計測部504が計測手段の例であり、測定装置500が測定装置の例である。
また、操作部250、表示部400および受付部505が第1の受付手段の例であり、操作部250、表示部400および受付部505が第2の受付手段の例であり、計測用データ修正部503が計測用データ修正手段の例であり、光軸A1,A2が受光部の光軸の例であり、回転軸Axが回転軸の例であり、回転機構143、ステージ駆動部146および回転制御部506が回転制御手段の例である。
また、キャリブレーションボードおよび位置関係算出部507が算出手段の例であり、遮光機構600が第1の遮光部材の例であり、後方カバー部材610が第2の遮光部材の例であり、後方遮光部材650および前側方遮光部材660が第3の遮光部材の例であり、固定載置面401aが第1の載置面の例であり、傾斜載置面402aが第2の載置面の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。