JP2018002901A - 樹脂組成物及び樹脂硬化物並びに樹脂硬化物を含む高電圧機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】伝熱性能が高く、膨張・収縮が抑制され、破壊靭性及び絶縁寿命が向上した絶縁材料(樹脂硬化物)を得る。【解決手段】エポキシ樹脂と、硬化剤と、高熱伝導材と、低線膨張材と、ナノ粒子と、を含む樹脂組成物であって、高熱伝導材、低線膨張材及びナノ粒子は、表面に有機基を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂組成物及び樹脂硬化物並びに樹脂硬化物を含む高電圧機器に関する。
近年、高電圧機器の小型化・高信頼化を目指し、多種の添加物を樹脂中に混在させる手法がとられている。特に、樹脂の高熱伝導率化、低線膨張係数化、破壊靭性向上、絶縁寿命向上等のために、高熱伝導材、低線膨張材、エラストマー等、ナノ粒子等の機能性材料が多種添加されている。
特許文献1には、疎水性ナノ粒子を添加してデンドライト構造を樹脂内に形成することにより、絶縁材料の破壊靭性と絶縁寿命とを向上する技術が開示されている。
絶縁材料の高熱伝導率化、低線膨張係数化等を目的に、高熱伝導材、低線膨張材、靭性向上用エラストマーのような機能性添加材を多種混在させている場合、特に樹脂内でこれらの機能性添加材の比率が多くなると、機能性添加材が硬化前の樹脂内にて凝集して沈殿する可能性がある。樹脂内で添加材の沈降が発生する場合、樹脂の輸送手段を低温化するなど、添加剤の沈殿を抑える手段が必要となり、そのための設備及び維持管理コストが増大する。
特許文献1では、絶縁材料の高熱伝導材及び低線膨張材に関しては開示されていない。
本発明は、伝熱性能が高く、膨張・収縮が抑制され、破壊靭性及び絶縁寿命が向上した絶縁材料(樹脂硬化物)を得ることを目的とする。
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、高熱伝導材と、低線膨張材と、ナノ粒子と、を含み、高熱伝導材、低線膨張材及びナノ粒子は、表面に有機基を有する。
本発明によれば、絶縁材料の伝熱性能が高くでき、かつ、膨張・収縮を抑制することができ、破壊靭性及び絶縁寿命を向上させることができる。
本発明の絶縁材料は、伝熱性能を高める高熱伝導材と、高温度差環境での残留熱応力を低減する低線膨張材と、平均粒径(「平均粒子径」ともいう。)が200nm以下のナノ粒子と、を含む。高熱伝導材、低線膨張材及びナノ粒子は、同一の主骨格を有することが望ましい。さらに、高熱伝導材、低線膨張材及びナノ粒子は、有機基及び無機基の両方が結合しているものであってもよい。
以下では、平均粒径200nm以下のナノ粒子を「ナノ粒子」と略称する。
有機基としては炭化水素基が望ましく、無機基としては水酸基が望ましい。
なお、高熱伝導材、低線膨張材及びナノ粒子は、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミナ、アルミ以外の金属の酸化物等を用いることができる。
樹脂に添加する高熱伝導材及び低線膨張材の平均粒径は、5μm以上50μm以下が好ましい。平均粒径が5μmより小さい場合、絶縁材料の粘度が上昇し、高熱伝導材及び低線膨張材の高充填化が困難となり、絶縁材料の高熱伝導化と低線膨張化も困難となる。平均粒径が50μmより大きい場合、樹脂との界面を伝ってクラックや電気トリーが進展しやすくなり、絶縁寿命が短くなる。
樹脂に添加するナノ粒子の平均粒径は200nm以下であり、体積に対する表面積が大きいため、少量の添加で絶縁材料の物性改善ができるためである。
なお、高熱伝導材の一例としては、破砕シリカがある。低線膨張材の一例としては、溶融シリカがある。ナノ粒子の一例としては、ナノシリカがある。
本発明の絶縁材料は、熱伝導性を高める高熱伝導材と、高温度差環境での残留熱応力を低減する低線膨張材と、ナノ粒子とは、同一の主骨格を有し、かつ、有機基と無機基の両方が結合している。ナノ粒子の含有量は、絶縁材料の5質量%以下とする。ここで、高熱伝導材及び低線膨張材のうちのいずれかが有機基を有しない構成である場合、有機基を有しない粒子が凝集し、均質な絶縁材料が得られなくなる。
なお、本発明の絶縁材料は、高電圧機器の絶縁のために用いる絶縁材料である。高電圧機器は、600Vを超える電圧を用いるものである。なお、10kV以上、更には100kV以上の電圧を用いる高電圧機器に適用してもよい。
本発明のベース樹脂は、常温で液状であり、かつ、当量が200g/eq以下のエポキシ樹脂である。硬化剤は、常温で液状の酸無水物である。その他、エポキシ樹脂硬化触媒が含まれていることが望ましい。
また、絶縁材料には、コアシェルゴム粒子が含まれていることが望ましい。これにより、靱性を向上させることができる。
さらに、必要に応じて、分散剤、カップリング剤を追加してもよい。常温は室温と同義であることとし、20℃以上30℃以下とする。
図1は、本発明の絶縁材料の微視的な構造を模式的に示したものである。
本図において、絶縁材料は、樹脂材料1と、溶融シリカ2と、破砕シリカ3と、ナノシリカ4と、を含む。樹脂材料1は、硬化前においてはエポキシ樹脂と硬化剤とを含む。これらは、硬化後においてはエポキシ樹脂硬化物となる。
本明細書においては、硬化前の絶縁材料を「樹脂組成物」と呼び、硬化後の絶縁材料を「樹脂硬化物」と呼ぶ。
溶融シリカ2、破砕シリカ3及びナノシリカ4(以下、これらをまとめて単に「シリカ」ともいう。)は、ともに表面修飾を施したものである。具体的には、シランカップリング反応により、シリカの表面に存在する水酸基(ヒドロキシ基)にアルキル基、フルオロアルキル基等の有機基(疎水基)を結合させたものである。この場合、シリカの表面には、水酸基等の無機基(親水基)も残存していると考えられる。
表面修飾により、高熱伝導材、低線膨脹材及びナノ粒子は、図1に示すように網目構造体を形成するようになる。
以下、本発明の構成材料について説明する。
(1)エポキシ樹脂
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、好ましくは、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。より好ましいエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が200g/eq以下のものが、樹脂粘度の低減の観点から好ましい。
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、好ましくは、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。より好ましいエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が200g/eq以下のものが、樹脂粘度の低減の観点から好ましい。
具体的には、DIC(株)製EPICLON840(エポキシ当量180〜190g/eq、粘度9000〜11000mP・s/25℃)、EPICLON850(エポキシ当量183〜193g/eq、粘度11000〜15000mP・s/25℃)、EPICLON830(エポキシ当量165〜177g/eq、粘度3000〜4000mP・s/25℃)三菱化学(株)製jER827(エポキシ当量180〜190g/eq、粘度9000〜11000mP・s/25℃)、jER828(エポキシ当量184〜194g/eq、粘度12000〜15000mP・s/25℃)、jER806(エポキシ当量160〜170g/eq、粘度1500〜2500mP・s/25℃)、jER807(エポキシ当量160〜175g/eq、粘度3000〜4500mP・s/25℃)等が挙げられる。耐熱性の観点からはビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、低粘度化の観点からはビスフェノールF型エポキシ樹脂の使用が好ましい。また、両特性バランスをとるため、これらのエポキシ樹脂はブレンドして用いることもできる。
(2)酸無水物
酸無水物としては、常温で液状である酸無水物を用いることが好ましい。その例としては、日立化成工業(株)製HN−2000(酸無水物当量166g/eq、粘度30〜50mPa・s/25℃)、HN−5500(酸無水物当量168g/eq、粘度50〜80mPa・s/25℃)、MHAC−P(酸無水物当量178g/eq、粘度150〜300mPa・s/25℃)、DIC(株)製EPICLON B−570H(酸無水物当量166g/eq、粘度40mPa・s/25℃)等を挙げることができる。
酸無水物としては、常温で液状である酸無水物を用いることが好ましい。その例としては、日立化成工業(株)製HN−2000(酸無水物当量166g/eq、粘度30〜50mPa・s/25℃)、HN−5500(酸無水物当量168g/eq、粘度50〜80mPa・s/25℃)、MHAC−P(酸無水物当量178g/eq、粘度150〜300mPa・s/25℃)、DIC(株)製EPICLON B−570H(酸無水物当量166g/eq、粘度40mPa・s/25℃)等を挙げることができる。
(3)エポキシ樹脂硬化触媒
本発明のエポキシ樹脂と酸無水物との硬化反応を促進するエポキシ樹脂硬化触媒の例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノペンタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルモルフォリン等のアミン類、又、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムブロマイド、アリルドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムアセチレート等の第4級アンモニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−アジン−2−メチルイミダゾール、1−アジン−2−ウンデシル等のイミダゾール類、アミンとオクタン酸亜鉛やコバルト等との金属塩、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、N−メチル−ピペラジン、テトラメチルブチルグアニジン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルテトラフェニルボレート、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等のアミンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、アルミニウムトリアルキルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトアセテート、アルミニウムアルコラート、アルミニウムアシレート、ソジウムアルコラートなどが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂と酸無水物との硬化反応を促進するエポキシ樹脂硬化触媒の例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノペンタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルモルフォリン等のアミン類、又、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムブロマイド、アリルドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムアセチレート等の第4級アンモニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−アジン−2−メチルイミダゾール、1−アジン−2−ウンデシル等のイミダゾール類、アミンとオクタン酸亜鉛やコバルト等との金属塩、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、N−メチル−ピペラジン、テトラメチルブチルグアニジン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルテトラフェニルボレート、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等のアミンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、アルミニウムトリアルキルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトアセテート、アルミニウムアルコラート、アルミニウムアシレート、ソジウムアルコラートなどが挙げられる。
エポキシ硬化触媒の添加量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.2質量部以上、2.0質量部以下の範囲とすることが好ましく、これにより高速硬化が可能になる。
(4)コアシェルゴム粒子
コアシェルゴム粒子は、クラックの進展を最小限に抑制するものである。また、コアシェルゴム粒子は、エポキシ樹脂に対して分散性が優れていることも選択の基準になっている。
コアシェルゴム粒子は、クラックの進展を最小限に抑制するものである。また、コアシェルゴム粒子は、エポキシ樹脂に対して分散性が優れていることも選択の基準になっている。
コアシェルゴム粒子の例としては、Rohm&Haas社製、商品名パラロイドEXL2655(平均粒径200nm)、ガンツ化成(株)製、商品名スタフィロイドAC3355(平均粒径0.1〜0.5μm)、ゼフィアックF351(平均粒径0.3μm)等が挙げられる。このように、コアシェルゴム粒子の平均粒径を0.1μmm以上1μm以下とすることが好ましい。
(5)カップリング剤
カップリング剤としては、各種のシラン系、チタネート系カップリング剤が使用できる。そのようなカップリング剤の例としては、シラン系カップリング剤としては、信越化学工業(株)製KBM−402、KBM−403、KBM−502、KBM−504等のエポキシシラン、ビニルシランが好ましい例として挙げられる。チタネート系カップリング剤としては、日本曹達(株)製S−151、S−152、S−181等を挙げることができる。
カップリング剤としては、各種のシラン系、チタネート系カップリング剤が使用できる。そのようなカップリング剤の例としては、シラン系カップリング剤としては、信越化学工業(株)製KBM−402、KBM−403、KBM−502、KBM−504等のエポキシシラン、ビニルシランが好ましい例として挙げられる。チタネート系カップリング剤としては、日本曹達(株)製S−151、S−152、S−181等を挙げることができる。
(6)分散剤
分散剤としては、各種のノニオン系界面活性剤が好ましく、その例としてはビックケミージャパン(株)製、BYK−W903、BYK−W980、BYK−W996、BYK−W9010等を挙げることができる。
分散剤としては、各種のノニオン系界面活性剤が好ましく、その例としてはビックケミージャパン(株)製、BYK−W903、BYK−W980、BYK−W996、BYK−W9010等を挙げることができる。
(7)シリカ
本発明におけるシリカは、シリカ表面に存在するヒドロキシ基等の無機基をシランカップリング剤により修飾したものである。すなわち、当該シリカは、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシル基その他の有機基を有し、かつ、ヒドロキシ基等の無機基と縮合反応を生じるメトキシ基、エトキシ基その他の反応基を有するシランカップリング剤により、シリカ表面を修飾したものである。シランカップリング剤の量を調整することにより、ヒドロキシ基の一部がシリカの表面に残るようにすることができる。これにより、基材の表面に無機基と有機基が共存する状態とすることができる。
本発明におけるシリカは、シリカ表面に存在するヒドロキシ基等の無機基をシランカップリング剤により修飾したものである。すなわち、当該シリカは、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシル基その他の有機基を有し、かつ、ヒドロキシ基等の無機基と縮合反応を生じるメトキシ基、エトキシ基その他の反応基を有するシランカップリング剤により、シリカ表面を修飾したものである。シランカップリング剤の量を調整することにより、ヒドロキシ基の一部がシリカの表面に残るようにすることができる。これにより、基材の表面に無機基と有機基が共存する状態とすることができる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の具体的な説明のためのものであって、本発明の範囲がこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の発明思想の範囲内において自由に変更可能である。
(1)破壊靭性値の測定
本発明の絶縁材料の機械的物性を検証するために、三点曲げ試験を行い、破壊靭性値を測定した。始めに板状の硬化物を作製し、直方体状に切断した。
本発明の絶縁材料の機械的物性を検証するために、三点曲げ試験を行い、破壊靭性値を測定した。始めに板状の硬化物を作製し、直方体状に切断した。
図2は、試験片の構造を示したものである。
本図において、試験片5は、細長い直方体状であり、長軸の中央部に鋭角のノッチ6を有する。三点曲げ試験を行う際、ノッチ6は下向きにし、2つの支点7で支持した状態に設置する。そして、試験片5の上面の中央部に荷重を加える。2つの支点7の間の距離は、60mmである。
三点曲げ試験は、ASTM D5045に準拠し、試験片5が破壊されるまで荷重をかけることにより、破壊靭性値を測定した。
(2)絶縁寿命の測定
本発明の絶縁材料の電気的物性を検証するために、絶縁寿命を測定した。
本発明の絶縁材料の電気的物性を検証するために、絶縁寿命を測定した。
図3Aは、試験片の断面構造を示したものである。図3Bは、試験片の上面図である。
これらの図に示すように、試験片9は、直径が60mm、厚さが30mmの円柱状である。試験片9には、針状電極10が挿入されている。また、試験片9の底部には、導電性塗料11が塗られている。針状電極10の先端と導電性塗料11との距離は、3mmである。針状電極10と導電性塗料11との間には、AC(交流)15kVの高電圧を印加するようになっている。導電性塗料11は、接地されている。
以下の比較例及び実施例において用いた材料について説明する。
樹脂材料としては、主剤のエポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))と、硬化剤の3−メチルヘキサヒドロフタル酸(HN−5500、日立化成工業(株))と、を用いた。比較例及び実施例ともに、エポキシ樹脂100質量部に対して3−メチルヘキサヒドロフタル酸90質量部を混合したものを用いた。
破砕シリカは、(株)龍森製のXJ−7(平均粒径6.3μm)である。
溶融シリカは、デンカ(株)製のFB−20D(平均粒径22.5μm)である。
ナノシリカは、日本アエロジル(株)製のAEROSIL200(平均粒径12nm)である。このナノシリカは、比較例及び実施例ともに、表面修飾をしたものを用いた。表面修飾により、シランカップリング剤を用いて、最外表面に有機基であるメチル基(−CH3)が配置されるようにした。この結果、ナノシリカの表面には、有機基及び無機基の両方が存在する状態となる。
比較例においては、破砕シリカ及び溶融シリカは、表面修飾をしないでそのまま用いた。よって、比較例においては、破砕シリカ及び溶融シリカの表面には、無機基である水酸基が露出している。
これに対して、実施例においては、破砕シリカ及び溶融シリカに表面修飾を施したものを用いた。表面修飾は、ナノシリカと同様のものであり、シランカップリング剤を用いて、最外表面に有機基であるメチル基(−CH3)を配置する処理である。
(比較例1)
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを10質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は1.0p.u.であり、絶縁寿命は1.0p.u.であった。
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを10質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は1.0p.u.であり、絶縁寿命は1.0p.u.であった。
(比較例2)
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを13質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は1.2p.u.であり、絶縁寿命は1.0p.u.であった。
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを13質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は1.2p.u.であり、絶縁寿命は1.0p.u.であった。
(比較例3)
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを15質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は1.2p.u.であり、絶縁寿命は1.1p.u.であった。
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを15質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は1.2p.u.であり、絶縁寿命は1.1p.u.であった。
(比較例4)
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを20質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は1.3p.u.であり、絶縁寿命は1.2p.u.であった。
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを20質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は1.3p.u.であり、絶縁寿命は1.2p.u.であった。
表1は、比較例の条件及び試験結果を示したものである。
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを10質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は2.0p.u.であり、絶縁寿命は2.0p.u.であり、比較例1と比べて破壊靭性値と絶縁寿命が向上した。
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを13質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は2.2p.u.であり、絶縁寿命は2.1p.u.であり、比較例2と比べて破壊靭性値と絶縁寿命が向上した。
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを15質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は2.4p.u.であり、絶縁寿命は2.2p.u.であり、比較例3と比べて破壊靭性値と絶縁寿命が向上した。
エポキシ樹脂100質量部に対して、表面修飾を施したナノシリカを20質量部混合して用いた。その結果、破壊靭性値は2.5p.u.であり、絶縁寿命は2.4p.u.であり、比較例4と比べて破壊靭性値と絶縁寿命が向上した。
表2は、実施例の条件及び試験結果を示したものである。
実施例1〜4の液状樹脂組成物を25kg準備した。この液状樹脂組成物を80℃に加熱して、1torrで約10分間脱気した。80℃における樹脂粘度は、3.0Pa・sであった。モデル真空遮断器の型を80℃に加熱し、脱気後の液状樹脂組成物25kgを流し込み、再度1torrで20分間、真空脱気した。その後、大気中で100℃/5時間、170℃/7時間の条件で硬化した。次いで、8時間かけて50℃に冷却し、型を外して、モデル真空遮断器(真空遮断器の試作品)を作製した。
図4は、その真空遮断器の断面を模式的に示したものである。
真空遮断器100は、絶縁材料層12、固定電極13、可動電極14、固定側エンドプレート15、可動側エンドプレート16、真空絶縁容器17(アルミナ製)及びベローズ18を含む。この真空遮断器100は、絶縁材料層1に本発明の絶縁材料を用いた点以外は公知の構成であるため、詳細な説明は省略する。
絶縁材料層12の外面及び断面観察の結果、エポキシ樹脂硬化物の内部にクラックやボイドは認められなかった。このことから、絶縁材料層12は、耐熱性、耐クラック性及び絶縁信頼性に優れていることがわかった。
本発明の絶縁材料は、真空遮断器を含むスイッチギヤ、モールド変圧器、発電機等に用いることができ、これらの機器の耐熱性、耐クラック性及び絶縁信頼性を高めることができる。特に、高電圧を用いる機器(高電圧機器)において有効である。
本明細書において、高電圧機器としては、変圧器、スイッチギヤ、回転機、ブッシング等が挙げられる。
以下、本発明の効果についてまとめて示す。
本発明によれば、樹脂に高熱伝導材と低線膨張材とを添加することにより、絶縁材料の高熱伝導化と低線膨張化とを両立することができる。
絶縁材料に含まれる高熱伝導材と低線膨張材とナノ粒子とは、同一の主骨格を有し、かつ、有機基及び無機基の両方を有している。これにより、高熱伝導材と低線膨張材とナノ粒子とが水素結合的(オーダ10kcal/mol)に結合する。このとき、高熱伝導率材と低線膨張係数材とナノ粒子とは、絶縁材料内で複数の線状の凝集体を形成して、網目構造を形成する。この網目構造がクラック進展及び電気トリー進展を抑制し、破壊靭性及び絶縁寿命を向上することができる。なお、網目構造は、「デンドライト構造」とも呼ばれるものである。
1:樹脂材料、2:溶融シリカ、3:破砕シリカ、4:ナノシリカ、5:試験片、6:ノッチ、7:支点、9:試験片、10:針状電極、11:導電性塗料、12:絶縁材料層、13:固定電極、14:可動電極、15:固定側エンドプレート、16:可動側エンドプレート、17:真空絶縁容器、18:ベローズ、100:真空遮断器。
Claims (10)
- エポキシ樹脂と、
硬化剤と、
高熱伝導材と、
低線膨張材と、
ナノ粒子と、を含み、
前記高熱伝導材、前記低線膨張材及び前記ナノ粒子は、表面に有機基を有する、樹脂組成物。 - 請求項1記載の樹脂組成物であって、
前記高熱伝導材は、破砕シリカであり、
前記低線膨張材は、溶融シリカであり、
前記ナノ粒子は、ナノシリカである、樹脂組成物。 - 請求項1又は2に記載の樹脂組成物であって、
前記高熱伝導材及び前記低線膨張材の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であり、
前記ナノ粒子の平均粒子径は、200nm以下である、樹脂組成物。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
前記有機基は、アルキル基又はフルオロアルキル基である、樹脂組成物。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
前記有機基は、メチル基である、樹脂組成物。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
前記高熱伝導材、前記低線膨張材及び前記ナノ粒子は、表面に無機基を更に有し、
前記無機基は、水酸基である、樹脂組成物。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
ゴム粒子を更に含む、樹脂組成物。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
前記高熱伝導材、前記低線膨張材及び前記ナノ粒子は、デンドライト構造を形成している、樹脂組成物。 - 請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物が硬化して形成されたものである、樹脂硬化物。
- 請求項9記載の樹脂硬化物を含む、高電圧機器。
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