患者へ流体薬剤を送達する流体送達デバイスについて、以下に説明する。デバイスは、薬剤の量を収納するリザーバと、患者へ薬剤を送達する投薬インターフェースとを含む。デバイスは、注射によって投薬インターフェースから薬剤を送達し、注射に関する情報を別個の使用者デバイスへ伝送することによって、デバイスでの物理的入力に応答するように構成される。注射および情報の伝送は、デバイスが患者の皮膚に対して着用されている間に行うことができる。他の実施形態では、送達デバイスは、自己注射器またはペン注射器を含むことができる。
デバイスについて、ボーラス注射器の文脈で以下に説明するが、別法として、別のタイプの大量デバイス(LVD)とすることもできることが理解されよう。図1を参照すると、デバイス1は保護ハウジング2を含み、保護ハウジング2内には薬剤リザーバ3および投薬インターフェース4が、デバイス1の他の構成要素とともに位置する。ハウジング2は、成形プラスチックまたは別の適した材料から形成される。薬剤リザーバ3は、カプセル5内に設けられ、カプセル5は、薬剤の単一用量を含むことができる。カプセル5は、ガラスなどの不活性材料から形成され、ハウジング2の内部空胴内に固定される。カプセル5は、デバイス1の再利用を可能にするように交換可能とすることができる。別法として、カプセル5は、デバイス1内で交換不可とすることもでき、したがって、カプセル5の内容物を使い切った後は、薬剤を送達するためにデバイス1を使用することができなくなり、処分しなければならない。デバイス1のこの使い捨ての性質は、患者が正しくない交換カプセルを誤って設置することができないことを確実にすることによって、容易な動作を促進し、安全を改善する。
投薬インターフェース4は、デバイス1から患者内への薬剤の注射のための注射要素を含む。注射要素について、図1に示すように、カニューレ6の文脈で以下に説明するが、別法として、他のタイプの注射要素を使用することもできることが理解されよう。代替の注射要素の例については、以下でさらに論じる。
カニューレ6は、遠位端7を含み、遠位端7は、使用中、デバイス1のハウジング2を通って患者の体組織内へ突出する。カニューレ6はまた、近位端8を含み、近位端8は、上述したリザーバ3から薬剤を受けるように配置される。たとえば、カプセル5内の退出ポートの形の開口部9は、薬剤がカプセル5から流れ出て、最終的にカニューレ6の近位端8に入ることを可能にすることができる。カプセル5内の開口部9は、開口部9およびカニューレ6の近位端8に連結された導管10によって少なくとも部分的に設けられる流路によって、カニューレ6の近位端8に連結される。これについて、以下でより詳細に説明する。
カニューレ6は、使用しないときはカニューレ6をハウジング2内に安全に格納することが可能になるように、ハウジング2の外部を通って制御可能に伸長可能および/または引き込み可能とすることができる。デバイス1は、これを容易にするするために、使用者が動作可能なアクチュエータ11を含むことができる。アクチュエータ11は、デバイス1のハウジング2に対するカニューレ6の動きによりカニューレ6を伸長および/または後退させるように構成される。一例は、ばね付き要素12と、ばね付き要素12を解放するスイッチ13とを含むアクチュエータ11である。スイッチ13によって解放したとき、ばね付き要素12は、自動的に延び、それによってカニューレ6をハウジング2から注射位置内へ部分的に駆動するように構成することができる。アクチュエータ11は、電動式とすることができる。たとえば、上述したばね付き要素12を解放するスイッチ13を電動式とすることができる。電力はまた、ばね付き要素12を再びその元の非伸長位置へ後退させ、それによってカニューレ6も引き込むために使用することができる。この目的で、アクチュエータ11は、電気モータ14と、ばね付き要素12に連結された適した駆動機構とを含むことができる。電力は、デバイス1内の電池15または他の電源によって提供することができ、これは充電可能とすることができる。
特に、薬剤のカプセル5を交換できるようなデバイス1の構成である場合、電池15を充電可能とすることができる。このタイプの構成では、デバイス1は、滅菌した部材と、滅菌していない部材とを含む。デバイス1の滅菌した部材は交換可能であり、交換可能なカプセル5を含む。デバイス1の滅菌していない部材は再利用可能であり、デバイス1の再利用可能な要素を含む。滅菌していない部材内の要素は、たとえば、充電可能な電池15を含むことができる。概して、滅菌していない部材は、デバイス1の安全な動作のために滅菌する必要なく安全に再利用することができる要素を含む。しかし、滅菌する必要のない要素をデバイス1の滅菌していない部材に排他的に制限する要件はないことが理解されよう。たとえば、デバイス1の滅菌した部材内に他の交換可能な要素とともに電池15を含むことが可能である。この構成では、電池15は、カプセル5が交換されるたびに交換されるため、充電可能でない。
以下でより詳細に説明するように、デバイス1は、デバイス1のアクチュエータ11および/または他の要素の動作を制御するように構成された電子コントローラ16を含むことができる。電子コントローラ16は、プロセッサ28およびメモリ29を含み、たとえば、システムバス(図示せず)を使用してデバイス1のアクチュエータ11および/または他の要素に通信接続された電子マイクロコントローラを含むことができる。図2のデバイス1のブロック図にスイッチ13、モータ14、電池15、およびコントローラ16を示すが、図1には図示しない。
代替方法は、アクチュエータ11が機械式タイマなどのタイミング要素の制御下で動作することである。タイミング要素は、カウントダウンタイマとすることができる。タイミング要素のカウントダウン期間の経過は、薬剤の用量の注射の完了などのイベントが生じたことを示すことができる。カウントダウン期間の経過により、アクチュエータ11は、たとえばカニューレ6を再びデバイス1のハウジング2内へ引き込むことによって、カニューレ6または他の注射要素を動かすことができる。
カニューレ6の遠位端7は、患者の体組織内へのその挿入を容易にするために鋭利にすることができる。別法として、投薬インターフェース4はまた、体組織内へのカニューレ6の遠位端7の挿入を助ける別個の針(図示せず)またはトロカール(図示せず)を含むことができる。針は、上記で論じたカニューレ6と同様に、デバイス1のハウジング2から制御可能に伸長可能および/または引き込み可能とすることができる。針は、カニューレ6が体組織内へ動くことを可能にするために、患者の皮膚を穿刺するように構成される。針は、たとえば、カニューレ6の中心を通って延びるように配置することができる。皮膚を穿刺した後、デバイス1は、薬剤の送達前に、針を再びハウジング2内へ後退させるように構成される。デバイス1が上述したタイプの別個の針を含む場合、デバイス1は、針の伸長および後退を容易にするために、カニューレ6に関連してすでに論じたものに類似のアクチュエータを含むことができる。
別の代替方法は、針自体を通って薬剤を送達することである。この場合、針は、従来の注射針のものに類似の特性を有する。針の近位端は、上記で論じたカニューレ6と同様に、薬剤リザーバ3に連結され、その結果、流体薬剤が針を通って患者の体組織内へ流れることができる。デバイス1がこのようにして構成される場合、カニューレ6は、投薬インターフェース4から省略することができる。
カニューレ6または他の注射要素内への薬剤の流れは、流量制御装置17によって制御される。図1に示すように、流量制御装置17は、上述した開口部9を通ってカプセル5から薬剤を駆動するようにカプセル5を通って一方の端部から他方の端部へ可動のピストン18を含むことができる。適した駆動機構(図示せず)が、ピストン18に機械的に連結され、カプセル5内でピストン18を動かすように動作可能である。ピストン18の動きは、電動式とすることができる。たとえば、電気モータ19を駆動機構に連結することができる。電気モータ19は、上述した電池15などのデバイス1内の電源によって給電される。
追加または別法として、流量制御装置17は、そのように意図される前に薬剤がカプセル5から流れ出るのを防止するために、カプセル5内の開口部9に封止20を含むことができる。封止20は、薬剤が上述した導管10を介してカプセル5からカニューレ6または他の注射要素内へ動くことを可能にするために、壊すことができ、または何らかの他の方法で開けることができる。デバイス1は、たとえば下記で説明するように、患者が始動したトリガに応答して、封止20を壊し、かつ/またはピストン18を動かすことによって、流量制御装置17を動作させるように構成される。
図3を参照すると、ハウジング2の接触領域21は、デバイス1の使用中に患者の皮膚に対して着用されるように配置される。接触領域21は、たとえば、ハウジング2の底面上に位置することができる。接触領域21は、患者の皮膚に対して着用されたときに快適になるように選択される幾何学的および触覚的特性を有する。カニューレ6または他の注射要素は、薬剤の送達中、ハウジング2の接触領域21を通って、患者の体組織内へ突出する。接触領域21は、たとえば、アパーチャ22を含むことができ、カニューレ6は、デバイス1の使用中にアパーチャ22を通って突出する。アパーチャ22は、上記で説明した伸長および後退動作中を含めて、上述したカニューレ6および/または別個の針を収容するのに十分な大きさである。
デバイス1の使用中、接触領域21は、締結具によって患者の皮膚に対して保持される。締結具は、デバイス1の使用中に注射要素が患者の体に対して固定位置で維持されることを確実にするために、数時間などの長時間にわたって接触領域21を皮膚に対して安定した位置で保持するのに適している。図1および図3に示すように、適した締結具の一例は、接触領域21を患者の皮膚に一時的に付着させる粘着剤層23である。粘着剤層23は、一般的な絆創膏で使用される標準的な生体適合性の接着剤を含むことができる。デバイス1の接触領域21はまた、粘着剤層23を患者の皮膚に取り付ける前に粘着剤層23を損傷から保護し、粘着剤層23が望ましくない物体に貼り付くのを防止するために、粘着剤層23に重なる保護カバー(図示せず)を含む。保護カバーは、デバイス1の使用前に粘着剤層23を露出させるために、たとえばカバーを粘着剤層23から剥がすことによって、接触領域21から選択的に取り外し可能である。
デバイス1はまた、薬剤の送達に関するフィードバックを患者へ提供するフィードバック装置24を含む。フィードバック装置24は、フィードバックが患者の近くにいる他者によって気づかれたりまたは共有されたりする可能性なく、注射の進捗を患者に知らせることができるように、フィードバックを目立たず提供するように構成される。フィードバック装置24は、薬剤送達デバイス1から別個の使用者デバイス32へフィードバックを提供させる。別個の使用者デバイス32を、図4に概略的に示す。別個の使用者デバイス32の例には、携帯電話、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、もしくは他の手持ち式コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、もしくは別のタイプのパーソナルコンピューティングデバイス、またはインターフェースが含まれる。別個の使用者デバイス32では、画面37上にフィードバックを表示することができる。フィードバック装置24は、薬剤送達デバイス1との物理的な相互作用の形で患者からの要求を検出したことに応答して、別個の使用者デバイスへフィードバックを伝送させる。これは、患者が所定の方法で薬剤送達デバイス1に物理的に接触することを伴う。この所定の方法は、薬剤送達デバイス1には分かっている。したがって、薬剤送達デバイス1は、以下でより詳細に説明するように、この物理的な接触が、フィードバックを求める要求に対応するものであると認識することが可能である。物理的な接触をフィードバックを求める要求として認識することは、フィードバック装置24内で実行することができ、または別法として、デバイス1内の他の位置で実行することができる。
デバイス1は、デバイス1への物理的入力を検出し、検出された物理的入力を示す信号を生成するように構成されたトランスデューサ25を含む。物理的入力は、デバイス1のある程度の動きを引き起こすことができ、トランスデューサ25は、これらの動きを検出することによって入力を検出するように構成することができる。トランスデューサ25は、運動センサ26を含むことができる。適した運動センサ26の一例は、圧電型加速度計などの加速度計であるが、別法として、デバイス1の動きを感知し、検出された動きを記述する信号を生成することが可能な他のタイプの運動センサを使用することもできる。
運動センサ26によって検出することができる物理的入力の一例は、デバイス1のハウジング2上のタップである。これは、患者が指関節または指先を使用することによって提供することができる。ハウジング2上のタップは、たとえば振動の形で、デバイス1内に一時的な動きを引き起こす。タップによって引き起こされるこの動きは、運動センサ26によって検出され、運動センサ26は、検出された動きを示す信号を生成するように構成される。ハウジング2上のタップによって引き起こされるデバイス1内の動きのタイプは、概して、ハウジング2がタップされるたびに類似の特徴を有する。これは、ハウジング2上のタップに応答して運動センサ26によって生成および出力される信号がすべて類似の特徴を有することを意味する。これらの類似の特徴は、フィードバック装置24が、ハウジング2上のタップを表す信号を、デバイス1の他の動きを表す信号から区別することを可能にする。
上述した種類の繰り返される信号特徴は、ハウジング2上のタップだけでなく、デバイス1への物理的入力の多くの他の種類にも適用することができる。別の種類の物理的入力の一例は、患者がデバイス1のハウジング2を長時間にわたって指で押すことである。これは、たとえば、ハウジング2内に長時間にわたる偏向を引き起こすことができ、これが運動センサ26によって検出される。運動センサ26は、ハウジング2上のタップに関して上述した信号と同様に、ハウジング2内の偏向を記述する信号を生成するように構成される。偏向を記述する信号は、タップまたはデバイス1への他の種類の物理的入力を記述する信号とは著しく異なる特徴を有する。これは、フィードバック装置24が、ハウジング2上を長時間にわたって指で押したことを示すものとしてこの信号を区別および識別することができることを意味する。
トランスデューサ25は、追加または別法として、ハウジング2の外部に電気スイッチ27を含むことができ、患者は、スイッチ27への物理的入力を提供することによって、電気スイッチ27を動作させることができる。スイッチ27への物理的入力は、スイッチ内の電気接点を接続する。これにより、スイッチ27は信号を生成し、この信号はフィードバック装置24へ通信される。フィードバック装置24は、この信号の特徴に基づいて、スイッチ27の動作を示すものとして信号を識別するように構成される。
上記の議論から、概して、デバイス1への物理的入力に応答してトランスデューサ25によって生成される信号が、デバイス1で患者から受ける物理的入力の特定の種類に関連する特徴を有することが理解されよう。物理的入力は、デバイス1での患者による作為的および計画的な接触を伴う。信号は、電気信号であり、アナログまたはデジタルとすることができる。信号は、これらの信号が対応する物理的入力を判定するために、フィードバック装置24によって解析される。このようにして、フィードバック装置24は、使用者からのフィードバックを求める異なる要求を区別することができる。フィードバック装置24はまた、フィードバックを求める要求を示す接触と偶発的な接触などのそれ以外の接触とを区別することができる。これについて、以下でより詳細に説明する。
デバイス1は、トランスデューサ25とフィードバック装置24との間に接続された通信カップリング(communication coupling)を含む。トランスデューサ25によって生成された信号は、この通信カップリングを介してフィードバック装置24へ通信される。プリント回路基板上の電気接続など、任意の適した通信カップリングを使用することができる。
フィードバック装置24は、上述したコントローラ16を含むことができる。トランスデューサ25から信号を受けたとき、コントローラ16は、この信号が、コントローラ16のメモリ29内の1つまたはそれ以上の事前に記憶された使用者入力を示すかどうかを判定するように構成される。これらの事前に記憶された使用者入力は、薬剤の注射についての情報を求める使用者要求を含む。たとえば、事前に記憶された使用者要求は、概して、注射を完了するまでどれだけ残っているかという標示を求める要求など、注射の進捗に関する情報を求める要求とすることができる。事前に記憶された各使用者要求は、コントローラ16のメモリ29内で、たとえばルックアップテーブルとして、事前に記憶された物理的入力にリンクされる。物理的入力は、物理的入力に関連付けられた1つまたはそれ以上の信号特徴の形でメモリ29内に記憶される。これらの信号特徴は、上述したように、関連付けられた物理的入力をデバイス1で受けたことに応答してトランスデューサ25によって生成される信号内に存在するものである。したがって、トランスデューサ25から受けた信号特徴とメモリ29内の事前に記憶された特徴とを一致させることによって、フィードバック装置24のコントローラ16は、事前に記憶された物理的入力がデバイス1で検出されているかどうかを認識し、検出されている場合、検出された物理的入力に関連付けられた事前に記憶された使用者要求を識別することが可能である。
使用者入力を認識したとき、フィードバック装置24は、適当なフィードバックを患者へ提供させることによって応答するように構成される。フィードバックを生成することは、概して、コントローラ16がメモリ29内の情報を識別し、この情報を使用して、上述した別個の使用者デバイス32への通信のために適当なメッセージをコンパイルすることを含む。たとえば、コントローラ16は、薬剤の送達を完了する時刻の標示を患者が要求していると認識したことに応答して、送達プロセスの予期される持続時間および送達プロセスが開始された時間を、メモリ29から取り出すことができる。次いでコントローラ16は、薬剤の送達を完了するまでどれだけ残っているかを計算し、この情報を含むメッセージをコンパイルすることができる。
デバイス1はまた、上述した別個の使用者デバイス32へ情報を伝送する送信機30を含む。図2を参照すると、送信機30は、たとえば、信号を別のデバイスへ無線で伝送するアンテナ31を含むことができる。
薬剤送達デバイス1は、フィードバック装置24と送信機30との間に通信カップリングを含む。プリント回路基板上の電気接続など、任意の適した通信カップリングを使用することができる。フィードバック装置24は、この通信カップリングを使用して送信機30と通信し、使用者デバイス32へフィードバックが伝送されることを可能にするように構成される。特に、送信機30は、フィードバック装置24からメッセージを受け、このメッセージを使用者デバイス32へ伝送するように構成することができる。メッセージは、すでに論じたように、使用者要求の認識に応答してフィードバック装置24によってアセンブルされた情報を含むことができる。
送信機30は、無線通信カップリングを使用して別個の使用者デバイス32へメッセージを伝送するように構成することができる。送信機30は、近くの使用者デバイスに対する探索を実行し、この探索で識別された最も近い使用者デバイスへ情報を伝送することによって、使用者デバイス32を識別することができる。たとえば、図4を参照すると、送信機30は、無線に基づく通信を使用して使用者デバイス32へメッセージを直接伝送するように構成することができる。無線信号の電力は、有効伝搬距離が小さくなるように低くすることができる。この伝搬距離は、別個の使用者デバイス32において高品質の形で信号を受けるのには十分であるが、信号がそれ以上さらに伝搬するには不十分な距離とすることができる。別個の使用者デバイス32は、概して患者に接しており、またはその他の形で薬剤送達デバイス1に非常に密接していることが想定されるため、適した距離の一例は約1メートルである。
メッセージは、送信機30が適した周知の無線通信プロトコルを使用することによって伝送される。そのようなプロトコルの一例は、Bluetooth(登録商標)である。この通信に使用することができる規格の一例は、IEEE規格802.15.1−2002である。送信機30は、メッセージを伝送する前に、別個の使用者デバイス32とのペアリングプロセスを開始して、メッセージを送るためのチャネルを確立するように構成することができる。
別法として、メッセージは、SMSまたはインターネットを介して使用者デバイス32へ伝送することができる。図4を再び参照すると、メッセージは、たとえば、インターネットを介して送信機30からサーバ33へ伝送することができる。送信機30とサーバ33との間の通信は、送信機30と無線ルータおよびモデム34との間のWi−Fi接続を介して、3Gもしく4Gの電気通信ネットワークまたはADSLなど、任意の適した方法で実施することができる。サーバ33は、これらの手段のいずれかなどによって使用者デバイス32へメッセージを通信するように構成される。
メッセージは、使用者デバイス32へ伝送する前に、送信機30またはフィードバック装置24によって暗号化することができる。これにより、伝送の安全性が増大する。
サーバ33は、別個の使用者デバイス32へメッセージを通信するために、患者または他の使用者の電子アドレスをそのメモリ内に記憶することができる。アドレスは、携帯電話番号、電子メールアドレス、ソーシャルメディアアドレスなどを含むことができる。このアドレスには、使用者デバイス32を使用して、たとえばSMS、電子メール、またはソーシャルメディアの受信箱にアクセスすることによってアクセスすることができる。このアドレスで受けたメッセージは、使用者デバイス32の画面37上に表示させることができる。
電子アドレスは、サーバ33に事前に登録することができる。患者は、たとえば、薬剤送達デバイス1の最初の所有権に基づいて、1つまたはそれ以上の電子アドレスをサーバ33内に登録することができる。使用者は、インターネットまたは3Gもしくは4Gの電気通信ネットワークなどの別の適した通信リンクを介して、アドレスをサーバ33へ通信することができる。患者は、同時に、薬剤送達デバイス1の通し番号または他の固有識別子をサーバ33へ通信することができる。
サーバ33は、サーバ33のメモリ内の薬剤送達デバイス1の通し番号または他の固有識別子に1つまたはそれ以上の電子アドレスをリンクすることによって、患者からのこの通信に応答するように構成することができる。これにより、後述するように、サーバ33が、薬剤送達デバイス1から受けたフィードバックを、リンクされた電子アドレスへ通信することが可能になる。
一例では、前述したようにフィードバックを求める要求を受けたとき、薬剤送達デバイス1は、薬剤送達デバイス1のフィードバックおよび固有識別子を含むメッセージを生成するように構成される。デバイス1は、前述した送信機30を使用してこのメッセージをサーバ33へ通信するように構成される。メッセージを受けたとき、サーバ33は、薬剤送達デバイス1の固有識別子をメッセージから読み取り、そのメモリ内に記憶された関連付けられた電子アドレスを参照するように構成される。サーバ33は、次いで、使用者デバイス32を使用する患者がアクセスできるように、メッセージを電子アドレスへ転送するように構成される。使用者デバイス32は、電子アドレスを周期的に検査し、最近受けたメッセージをデバイス32のメモリ内にダウンロードするように構成することができる。別法として、メッセージは、たとえば電子メールサーバによって、使用者デバイス32へ自動的にプッシュすることができる。
この技法は、薬剤送達デバイス1の固有識別子がサーバ33へのみ通信されるという点で安全である。固有識別子は、電子アドレスへは通信されない。したがって、デバイス1の固有識別子は、電子アドレスの無許可アクセスによって得ることができない。
サーバ33は、安全な位置から動作することができ、たとえば、患者への薬剤送達デバイス1の供給者によって管理することができる。
使用者デバイス32は、メモリを含むことができ、このメモリ内にアプリケーションプログラムが記憶される。アプリケーションプログラムは、使用者デバイス32のプロセッサによって実行可能な命令を含む。アプリケーションプログラムは、たとえば上述した電子アドレスにアクセスすることによって、薬剤送達デバイス1の送信機30によって送られたメッセージにアクセスし、メッセージ内の情報を使用者デバイス32の画面37上に表示させるように構成される。
このようにして、患者は、情報を目立たず要求しかつ受けることが可能である。
薬剤注射およびフィードバックプロセスの一例について、図5に関して以下に説明する。第1の工程S1で、患者は、デバイス1の接触領域21を自身の体上の注射部位に締結する。患者は、たとえば、粘着剤層23から保護カバーを剥がし、自身の皮膚に粘着剤層23を押し付けて、デバイス1を注射部位に付着させることができる。
第2の工程S2で、患者は、デバイス1のハウジング2上のスイッチ38を作動させて、薬剤の送達を開始する。デバイス1は、ハウジング2内のアパーチャ22を通って患者の体組織内へカニューレ6または他の注射要素を延ばすことによって応答するように構成される。デバイス1は、場合により、カニューレ6または他の注射要素の位置を検出し、この位置をコントローラ16へ報告するように構成されたセンサ(図示せず)を含むことができる。このようにして、カニューレ6または他の注射要素がハウジング2内のアパーチャ22を通って完全に延ばされ、薬剤を体組織内へ注射するための定位置についたことが、コントローラ16に通知される。
第3の工程S3で、流量制御装置17は、導管10を介してカニューレ6内への薬剤の用量の投薬を開始するように構成される。たとえば、コントローラ16は、カプセル5内のピストン18に連結された電気モータ19へ電池15から電力を供給させることができる。電気モータ19は、カプセル5内のピストン18の動きを駆動して、カプセル5の遠端内の開口部9を通って薬剤の用量を排出する。流量制御装置17がカプセル5の開口部9に封止20を含む場合、この封止20を開いて、流体薬剤が第1の長さの導管10内へ解放されることを可能にする。封止20は、ピストン18の動きによって引き起こされるカプセル5内の流体圧力によって破ることができ、またはコントローラ16からの信号に応答して封止20を穿孔するように動くアクチュエータ(図示せず)などの何らかの他の手段によって破ることができる。
第3の工程S3は、患者によるスイッチ38の動作から所定の量の時間が経過することによってトリガすることができる。別法として、第3の工程S3は、カニューレ6が患者内へ延ばされたことを上述したセンサが検出したことに応答してトリガすることができる。
デバイス1は、コントローラ16によって指示される方法および速度で薬剤の用量を送達するように構成することができる。たとえば、用量は、事前に設定された速度で連続して患者へ投与することができる。別法として、用量は、事前に設定された期間にわたって複数の個別の部分に分けて、またはピストン18の適当な動きによって任意の他の方法で、患者へ投与することができる。
第4の工程S4で、フィードバック装置24は、トランスデューサ25からの信号を監視して、患者からの情報を求める要求に対応するデバイス1上の物理的入力を検出するように構成される。フィードバック装置24は、トランスデューサ25からの信号と、使用者要求に関連付けられた物理的入力を示す事前に記憶された信号特徴とを比較し、一致を識別することによって、要求を識別する。フィードバック装置24は、情報を求める要求を検出したことに応答して、この情報を含むメッセージをコンパイルし、送信機30を介して患者の使用者デバイス32へこのメッセージを伝送させる。この情報は、前述したように、使用者デバイス32の画面37上に表示される。
第5の工程S5で、コントローラ16は、アクチュエータ11がカニューレ6を患者の体組織から後退させて薬剤送達プロセスを終了させるように構成される。カニューレ6または他の注射要素の後退により、フィードバック装置24は、フィードバック装置24自体を無効にすることができる。別法として、カニューレ6または他の注射要素の後退により、フィードバック装置24は、送信機30を無効にすることができる。これにより、デバイス1が使用されていないとき、薬剤送達デバイス1がフィードバックメッセージを伝送することができないことが確実になる。
追加または別法として、上述した無効化は、デバイス1を患者の体から取り外すことによって引き起こすことができる。そのような体からの取り外しを検出するために、適した近接センサを接触領域21内に含むことができる。別法として、無効化は、ハウジング2上のスイッチ38の作動によるデバイス1の起動などのトリガイベントから所定の量の時間後に実行することができる。
記載する代替方法は、単独でまたは組み合わせて使用することができることが理解されよう。
デバイス1について、自動的に伸長/後退する注射要素を含むという観点で説明したが、注射要素は、ハウジングを通って恒久的に突出するように固定することができることが理解されよう。これらの状況では、注射要素は、デバイスの使用前に要素が損傷を受けまたは他のものを偶発的に損傷するあらゆる危険を最小にするために、取り外し可能なガードによって保護することができる。これらの状況では、注射要素は概して、上述したように、後の工程ではなく、デバイスが患者の皮膚に対して配置されている間に患者の体組織内へ導入されることも理解されよう。注射要素は、上述したカニューレ6を含むことができ、または針を含むことができる。上に示したように、一例では、注射要素は、カニューレ配置のトロカール(孔をもたない)を含み、これにより、薬剤送達中、可撓管は患者の組織内に残るが、針は使用者内に残らない。
デバイス1の動作について、電子コントローラ16の制御下で動作するという観点で主に説明した。しかし別法として、可能な場合、デバイス1の個々の要素は、電子コントローラ16なしで動作することができる。たとえば、特定の要素の動作は、デバイス1内の機械式タイマなどのタイミング要素によって、トリガすることができまたは他の方法で制御することができる。タイミング要素は、比較的簡単なものとすることができ、カウントダウンタイマを含むことができる。タイミング要素の固定のカウントダウン期間の経過により、要素は特定の方法で動作することができる。たとえば、タイミング要素により、アクチュエータ11は、カニューレ6を伸長および/または後退させることができる。追加または別法として、別個のタイミング要素により、流量制御装置17は、たとえば流れの開始もしくは中止または流量の変更によって、カニューレ6内への薬剤の流れを制御することができる。
タイミング要素は、患者によるデバイス1の最初の起動(たとえば、上述したスイッチ38の動作後)に応答して、固定のカウントダウン期間をカウントダウンするように構成することができる。別法として、タイミング要素は、ハウジング2からのカニューレ6または他の注射要素の伸長に応答して、固定のカウントダウン期間をカウントダウンするように構成することができる。別法として、タイミング要素は、患者の体へのデバイス1の接触領域21の取り付けに応答して、固定のカウントダウン期間をカウントダウンするように構成することができる。いつデバイス1が取り付けられたかを判定するために、接触領域21内で1つまたはそれ以上の適した近接センサを使用することができる。
デバイス1について、薬剤を皮下に送達するように構成されるものとして上述した。しかし、デバイス1は、代わりに、たとえば顕微針を使用する皮内注射または何らかの他の方法の注射向けに構成することもできる。
ボーラス注射デバイスは、大量デバイス(LVD)として知られているタイプのものとすることができる。LVD注射デバイスは、比較的大きい用量、特に少なくとも1ml、典型的には最大2.5ml、場合によっては最大10mlの薬剤を投薬するように構成される。
ボーラス注射デバイスは、それぞれの薬剤のボーラスを送達して所定の時間内に薬剤の体積を患者の体に入れるように構成される。しかし、注射速度は重要でないことがあり、すなわち厳重な制御は必要ないことがある。しかし、送達部位を取り囲む組織への損傷を回避するために、送達速度に対する上限(生理学的)が存在することがある。薬剤のボーラス用量を送達するためにかかる時間は、薬剤の量(体積)、薬剤の粘性、および注射デバイスを使用することが意図される注射部位の性質を含むいくつかの要因に応じて、数分から何時間にも及ぶことがある。
使用者または医療従事者の観点から、注射デバイスは、患者の生活様式および予定に与える衝撃を最小にしながら、患者が注射と注射の間に自身の疾病を思い出すことが最小になるように構成されることが望ましい。通常、治療の処置予定は断続的であり、すなわち1週間に1回の注射、2週間に1回の注射、または1か月に1回になることがある。したがって、患者は通常、自身の疾病に対処する日常的な作業を行っておらず、したがって必要とされる注射を実行する日常的な作業/経験を極めてわずかしか行っていない。したがって、患者によるその動作を簡略化する注射デバイスの構成が非常に望ましい。
この注射デバイスの構成は、ボーラス動作向けであることが意図されるため、基礎動作に使用されることが意図される注射デバイスと比較するとかなり異なる。また、その使用もかなり異なる。たとえば、基礎タイプのインスリンポンプは、概して、プログラム可能な送達速度プロファイル、ボーラス計算器など、多くの高度な糖尿病専用の機能を含むため、比較的高価である。さらに、輸液セットを介して体へ連結することで、患者が治療の進行中に自身の視野内でポンプを操縦および操作することが可能になる。さらに、糖尿病患者は通常、輸液セットを設定し、ポンプを連結および動作させ、シャワーを浴びるようなイベントではポンプを水に露出させないようにポンプを一時的に外すという日常的な作業を行う。対照的に、上述したボーラス注射デバイスは、比較的簡単で安価なデバイスとすることができる。これらのボーラス注射デバイスは、薬剤を再充填することができない使い捨てのデバイスとして提供することができ、それにより複雑さおよびコストがさらに低減される。
上述したアクチュエータは、機械式アクチュエータを含むことができ、たとえば1つまたはそれ以上のばね付き要素を含むことができる。アクチュエータは、別法として、ソレノイド、圧電アクチュエータ、磁気アクチュエータ、または他の機構を含むことができる。
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味する。いくつかの実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有することができ、または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA分子、RNA分子、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモン、もしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物を含むことができる。様々なタイプまたはサブタイプの化合物も企図される。たとえば、RNAは、RNAi、siRNAまたはmiRNAを含むことができる。他の実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症または関節リウマチの処置または予防に有用である。いくつかの実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症の処置または予防のための少なくとも1つのペプチドを含むことができる。薬学的に活性な化合物は、さらに、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物を含むことができる。
インスリン類似体としては、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンがある。
インスリン誘導体としては、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
エキセンジン−4としては、たとえば、エキセンジン−4(1−39)がある。
ホルモンとしては、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストがある。
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。
抗体としては、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている略球状血漿タンパク質(約150kDa)がある。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有することができるので、糖タンパク質にも分類される。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり;分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖;すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2本の重鎖および2本の軽鎖を含むことができる「Y」字型の分子である。各重鎖は約440アミノ酸長であり得;各軽鎖は約220アミノ酸長であり得る。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらのフォールディングを安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含むことができる。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは、典型的には、約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリンフォールドを有する。
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが規定され;これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり;αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)および可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインおよび可撓性を加えるためのヒンジ領域から構成される定常領域を有し;重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリンドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一のB細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン:すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を含み;哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
抗体の一般的な構造は類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)に3つであることが多い可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、通常、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンを有する塩である。薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
いくつかの実施形態では、様々な粘性の薬剤を注射することができる。たとえば、粘性は、約3〜約50cPの範囲とすることができる。他の実施形態では、粘性は、約3cP未満または約50cP超とすることができる。注射は、患者の体内の皮下、筋肉内、または経皮的な位置へ薬剤を送達することをさらに含むことができる。薬剤は、液体、ゲル、スラリー、懸濁液、粒子、粉末、または他のタイプの形とすることができる。
典型的な注射体積は、約1mL〜約10mLの範囲とすることができる。注射速度は、約0.5mL/分、約0.2mL/分、または約0.1mL/分とすることができる。そのような注射プロファイルは、流量の点で概して一定、持続時間の点で概して連続的、または概して一定かつ概して連続的とすることができる。これらの注射はまた、単一の投与工程で行うことができる。そのような注射プロファイルを、ボーラス注射と呼ぶことができる。
そのような薬剤で機能する送達デバイスは、すでに論じたように、患者へ薬剤を送達するように構成された針、カニューレ、または他の注射要素を利用することができる。そのような注射要素の外寸または外径は、たとえば、27G以下とすることができる。さらに、注射要素は、剛性とすることができ、可撓性とすることができ、1つまたはそれ以上の材料の範囲を使用して形成することができる。さらにいくつかの実施形態では、注射要素は、2つまたはそれ以上の構成要素を含むことができる。たとえば、剛性のトロカールが、すでに論じたように、可撓性のカニューレとともに動作することができる。最初に、トロカールとカニューレの両方が、皮膚を穿刺するようにともに動くことができる。次いで、トロカールは後退することができるのに対して、カニューレは標的組織内に少なくとも部分的に残る。後に、カニューレは、送達デバイス内へ別個に後退させることができる。
挿入要素を挿入する挿入機構は、任意の適した形をとることができる。上述したように、挿入機構は、機械式のばねに基づく機構とすることができる。別法として、挿入要素機構は、たとえば、使用者内への挿入要素の挿入を引き起こす電気モータおよび歯車機構を含むことができる。別法として、挿入機構は、気体または流体圧力で動作する機構とすることができ、その場合、針を駆動するエネルギー源は、加圧ガスのリザーバまたは2つもしくはそれ以上の化学物質を混ぜ合わせて気体もしくは流体圧力を作り出す化学システムである。