JP2017219639A - 眼鏡レンズ、眼鏡レンズの設計方法、眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 プリズムシニングが付加された眼鏡レンズにおいて、第一屈折部の球面屈折力がプラスであり、プリズム測定基準点(例えば、幾何中心O)で付与されるプリズムのプリズム基底方向が第二屈折部側に向けて設定され、2つのアライメント基準マークを結ぶ線の中点を通り線と直交する方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブの、プリズムなしレンズの方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブに対する差N11の平均値が、フィッティングポイントFPより第二屈折部側領域に対して、フィッティングポイントFPより第一屈折部側領域が小さい。
【選択図】図2
Description
ここで、特許文献1は、基底方向が垂直のプリズムを左右のレンズに同じだけ付加するようにしたものであり、光学特性を上げるものではない。
本発明の実施形態にかかる眼鏡レンズを図1から図10に基づいて説明する。
眼鏡レンズの概略を図1に基づいて説明する。
図1は、累進屈折力レンズ(又は単焦点非球面レンズ)の形状を示す概略図である。
図1において、累進屈折力レンズの場合では、プリズム測定基準点Oに対して左右対称なアライメント基準マークMがそれぞれある。これらのアライメント基準マークMを結ぶ線LCの方向に平行な方向をX方向とする。線分LC上にプリズム測定基準点Oがあり、かつ、プリズム測定基準点Oは当該線分LCの中点である。一方、前記線分LCに直交する方向をY方向とする。また本願においてプリズム測定基準点Oは光学中心と一致することもある。
プリズム測定基準点Oとは、レンズのプリズム作用を測定するために製造業者(メーカー)によって規定されるレンズ上の点である。例えば、累進屈折力レンズにおいて、プリズム測定基準点Oは、メーカーが指定する2つのアライメント基準マークMの中間点に、単焦点非球面レンズにおいては光学中心Oと同一にそれぞれ配置される。光学中心Oはレンズ幾何中心Oでもある。
一方、単焦点非球面レンズの場合では、プリズム測定基準点Oを通りプリズム基底方向と直交する方向をY方向とし、プリズム測定基準点Oを通りプリズム基底方向と平行な方向をX方向とする。
そして、鼻側とは、眼鏡装用状態において装用者の鼻側に位置するレンズの位置を示し、耳側とは、眼鏡装用状態において装用者の耳側に位置するレンズの位置を示す。
なお、本願発明のレンズは、例えば固視ずれ、または斜位等の矯正のためのプリズムを含む処方がなされたプリズム処方用の眼鏡レンズである。
そして、この眼鏡レンズは、第一屈折部としての遠用部F1、第二屈折部としての近用部F2、累進部F3及び側方部F4を有し、かつ、プリズムシニング(prism thinning)が付加されたレンズである。
この眼鏡レンズは、遠用部F1は第一の屈折力を有する領域を含む。近用部F2は、第一の屈折力より大きい第二の屈折力を有する領域を含む。累進部F3は、遠用部F1と近用部F2との間に設けられ屈折力が変化する領域を含む。
さらにこの眼鏡レンズは物体側光学面としての入射面と、眼球側光学面としての出射面とを有する。
子午線LYの上であって幾何中心Oから上方の所定位置、例えば、幾何中心Oから2mmの位置にはフィッティングポイントFPがあり、フィッティングポイントFPから所定位置、例えば、幾何中心Oから8mmの位置には遠用度数測定位置FMがある。
子午線LYの幾何中心Oから下方の所定位置、例えば、幾何中心Oから下方に16mmの位置には近用度数測定位置NMがある。
遠用部F1は遠用度数測定位置FMから装用状態で上方の領域にあり、近用部F2は近用度数測定位置NMから装用状態で下方の領域にあり、累進部F3は遠用度数測定位置FMと近用度数測定位置NMとの間の領域にある。
実施例1から実施例3は、プリズム基底方向が同一(Base Down)で、遠用部の球面屈折力(S=+3,0,−3)のみそれぞれ異なる実施形態となっている。
実施例4から実施例6は、プリズム基底方向が同一(Base UP)で、遠用部の球面屈折力(S=+3,0,−3)のみそれぞれ異なる実施形態となっている。
[実施例1:プリズム基底方向が下方(Base Down)でプリズム屈折力が1.25Δ(プリズムディオプトリ)、加入度ADDが2.50(D)、遠用部1Aの球面屈折力Sが+3.0(D)の累進屈折力レンズ]
図2は、本発明の一実施形態にかかる眼鏡レンズの一例を示すもので、レンズ幾何中心をOとしたときの鉛直方向と平均カーブの差との関係を示すグラフである。
図2を参照して、横軸はY方向を示し、縦軸は平均カーブの差を示す。また、座標(0,0)は幾何中心Oを示し、フィッティングポイントFP、遠用度数測定位置FM及び近用度数測定位置NMはY軸上に位置する。遠用度数測定位置FMより右側の領域に遠用部があり、近用度数測定位置NMより左側の領域に近用部がある。
平均カーブ(単位D)はプリズム測定基準点Oを通るY方向に沿って測定する。平均カーブを算出するための測定範囲は、プリズム測定基準点Oを中点とする60mmの範囲で行った。
平均カーブを算出するための測定点の配置は、等間隔に1mmの配置とし、平均カーブは各位置での以下の計算式によって計算された面屈折力とする。
計算式:各位置での平均曲率×(レンズの屈折率−1)×1000 ……(式1)
(測定方法)
平均カーブの測定は、TALYSURF(TAYLOR HOBSON社製)で眼球側光学面に接触して行なった。
なお、測定位置は累進屈折力レンズにおいて基準位置、例えば、2点のアライメント基準マークが確認できる場合は、アライメント基準マークを通過する位置を測定位置としても良い。また、測定範囲は50mmから60mmの範囲が好ましい。そして平均カーブを算出するための測定点の数は、10点から10000点程度の範囲で選択することができるが、100点以上であることが好ましい。
測定装置は、商品名UA3P(松下電器産業社製)、商品名超高精度CNC三次元測定機LEGEX9106(株式会社ミツトヨ社製)、商品名PMD100(schneider社製)、商品名Dual LensMapper(Automation & Robotqics社製)等が好適である。本実施形態における、測定方法は、説明した上記のみならず下記のような測定をしてもよい。例えば、レンズ全面の測定後、その測定結果を分析し、プリズム測定基準点Oを通過し、プリズム基底方向と同じ方向となる直線を特定することでもよい。
図3(A)において、プリズムなしレンズの平均カーブがM1として示されている。平均カーブM1は近用部の位置(Y=−18mm)で最も低い値(1.3(D))をとり、幾何中心Oで2.1(D)であり、遠用度数測定位置FMで2.44(D)であり、遠用度数測定位置FMからレンズ周辺方向に向かうに従ってなだらかに数値が大きくなる。
プリズムシニング(prism thinning)が付加された実施例1の眼鏡レンズの平均カーブがM0として示されている。平均カーブM0は、平均カーブM1と近似したカーブであり、遠用度数測定位置FMで2.5(D)である。
図3(B)には、鉛直方向における平均カーブM1の平均カーブM0に対する差(M1―M0)がグラフN11として示されている。
グラフN11は、Y方向の−30mmの位置から−10mmの位置にかけて−0.05(D)〜−0.04(D)の範囲で緩やかに変化し、−10mmの位置から0mmの位置にかけて緩やかに上昇し、0mmの位置から18mmの位置にかけて−0.09(D)まで下降をし続け、18mmの位置から30mmの位置にかけて−0.07(D)まで上昇する。このうち、0mmの位置では−0.035(D)程度であり、フィッティングポイントFPでは−0.035(D)であり、遠用度数測定位置FMでは、−0.06(D)である。
さらに、比較例1のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN10として示されている。
グラフN10は、Y方向の−20mmの位置から−10mmmの位置にかけて0〜0.015(D)の範囲で緩やかに変化し、−10mmの位置から0mmの位置にかけて0.01(D)になるまで緩やかに下降し、0mmの位置から30mmの位置にかけて0.05(D)まで上昇する。
グラフN11で示される実施例1は、レンズ曲面の平均カーブに対するプリズムなしレンズのY方向に沿った平均カーブの差が遠用部から近用部にかけてマイナスである。特に、フィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズのY方向に沿ったレンズ曲面の平均カーブよりも小さい。
これに対して、比較例1において、フィッティングポイントFPから第一屈折部側領域における位置YA1、YA2、YA3の平均カーブの差の平均値をV0Aとし、フィッティングポイントFPから第二屈折部側領域における位置YB1、YB2、YB3の平均カーブ差の平均値をV0Bとすると、平均値V0B(図2から0.012(D))に対して平均値V0A(図2から0.025(D))が大きい。
実施例2は、実施例1と比較して、遠用部の球面屈折力が、S=0(D)に変更となったことを除けば同様の実施形態となっている。
図4は、眼鏡レンズの他の例を示すもので、レンズ幾何中心をOとしたときの鉛直方向と平均カーブの差との関係を示すグラフである。
図4において、実施例2のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN21として示されている。
グラフN21は、幾何中心Oの値は−0.01(D)であり、遠用度数測定位置FMでの値は−0.02(D)より小さいことを示している。
比較例2のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN20として示されている。
グラフN20は、(Y=−20mm)の位置では0(D)であり、この位置から第一屈折部側領域に向けてプラスとなる。幾何中心Oでの数値は0.02(D)であり、遠用度数測定位置FMでの数値は0.02(D)より若干大きい。
実施例3は、実施例1と比較して、遠用部の球面屈折力が、S=−3(D)に変更となったことを除けば同様の実施形態となっている。
図5は、眼鏡レンズの他の例を示すもので、レンズ幾何中心をOとしたときの鉛直方向と平均カーブの差との関係を示すグラフである。
図5において、実施例3のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN31で示されている。
グラフN31は、(Y=−20mm)から第一屈折部側領域にかけてプラスであることを示す。幾何中心O及び遠用度数測定位置FMでの値は0.01(D)より小さい。
比較例3のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN30である。
グラフN30は、(Y=−20mm)の位置では0(D)であり、この位置から第一屈折部領域にかけてプラスとなる。幾何中心Oでの数値は0.02(D)であり、遠用度数測定位置FMでの数値は0.04(D)である。
実施例4は、実施例1と比較して、プリズム基底方向が上側(UP方向)に変更となったことを除けば同様の実施形態となっている。
図6は、眼鏡レンズの他の例を示すもので、レンズ幾何中心をOとしたときの鉛直方向と平均カーブの差との関係を示すグラフである。
図6において、実施例4のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN41で示されている。
グラフN41は、実施例1のグラフN11の正負を逆にした曲線である。つまり、−30mmの位置から−10mmmの位置にかけて0.04(D)〜0.05(D)の範囲で緩やかに変化し、−10mmの位置から0mmの位置にかけて緩やかに下降し、0mmの位置から18mmの位置にかけて0.11(D)まで上昇をし続け、18mmの位置から30mmの位置にかけて0.08(D)まで下降する。このうち、0mmの位置では0.035(D)であり、フィッティングポイントFPでは0.036(D)であり、遠用度数測定位置FMでは、0.06(D)である。
比較例4のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN40で示されている。
グラフN40は、−20mmの位置から−10mmmの位置にかけて−0.015(D)〜−0.01(D)の範囲で緩やかに変化し、−10mmの位置から0mmの位置にかけて−0.005(D)になるまで緩やかに上昇し、0mmの位置から30mmの位置にかけて−0.05(D)まで下降する。このうち、0mmの位置では−0.01(D)であり、フィッティングポイントFPでは−0.009(D)であり、遠用度数測定位置FMでは、−0.01(D)である。
実施例4では、平均カーブの差が遠用部から近用部にかけてプラスである。特に、フィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズのY方向に沿ったレンズ曲面の平均カーブよりも大きい。
実施例4において、遠用部の位置YA1,YA2,YA3の平均カーブ差の平均値をV1Aとし、近用部の位置YB1,YB2,YB3の平均カーブ差の平均値をV1Bとすると、平均値V1Bに対して平均値V1Aが大きい。
これに対して、比較例4において、位置YA1、YA2、YA3の平均カーブ差の平均値をV0Aとし、位置YB1、YB2、YB3の平均カーブ差の平均値をV0Bとすると、平均値V0Bに対して平均値V0Aが小さい。
実施例5は実施例2と比較して、プリズム基底方向が上側(UP方向)に変更となったことを除けば同様の実施形態となっている。
図7は、眼鏡レンズの他の例を示すもので、レンズ幾何中心をOとしたときの鉛直方向と平均カーブの差との関係を示すグラフである。
図7において、実施例5のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN51である。
グラフN51は、幾何中心Oの値は0.01(D)よりやや大きく、遠用度数測定位置FMでの値は0.02(D)より大きい。
比較例5は、プリズム測定点のみにプリズムシニング(prism thinning)を付加した点を除いては、実施例5と同じである。
比較例5のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN50である。
グラフN50は、−20mmの位置では0であり、この位置から第一屈折部側領域(遠用部)にかけてマイナスとなる。幾何中心Oでの数値は−0.02(D)であり、遠用度数測定位置FMでの数値は−0.02(D)より若干小さい。
実施例6は、実施例3と比較して、プリズム基底方向が上側(UP方向)に変更となったことを除けば同様の実施形態となっている。
図8は、眼鏡レンズの他の例を示すもので、レンズ幾何中心をOとしたときの鉛直方向と平均カーブの差との関係を示すグラフである。
図8において、実施例6のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN61で示されている。
グラフN61は、−20mmから第一屈折部領域(遠用部)にかけてマイナスである。幾何中心O及び遠用度数測定位置FMでの平均カーブの差は−0.01(D)より大きい。
比較例6のY方向に沿った平均カーブのプリズムなしレンズに対する平均カーブの差がグラフN60である。
グラフN60は、−20mmの位置では0(D)であり、この位置から第一屈折部領域(遠用部)にかけてマイナスとなる。幾何中心Oでの数値は−0.02(D)であり、遠用度数測定位置FMでの数値は−0.04(D)である。
本発明の眼鏡レンズにて平均カーブの差を各領域、仮にフィッティングポイントFPがプリズム測定基準点Oから4mm上にあるとし、2つのアライメント基準マークを結ぶ線の中点を通り線と直交する方向においてフィッティングポイントFPから±30mmの範囲で、5mm間隔に(5〜7点程度)測定し、測定値の平均を算出した。
(ダウンプリズム:プリズム基底方向が下側の場合)
本発明(例えばHOYA製エルエスブイ)では第1屈折部領域−0・075(D)、第2屈折部領域−0.042(D)(第1<第2)、比較例(例えばHOYA製エルエスブイ)では第1屈折部領域の平均カーブの差の平均が0・027(D)、第2屈折部領域の平均カーブの差の平均が0.006(D)となる。
(アッププリズム:プリズム基底方向が上側の場合)
本発明(例えばHOYA製エルエスブイ)では、第1屈折部領域の平均カーブの差の平均が0・086(D)、第2屈折部領域の平均カーブの差の平均が0.046(D)(第1屈折部領域>第2屈折部領域)
比較例(例えばHOYA製エルエスブイ)では第1屈折部領域の平均カーブの差の平均が−0.029(D)、第2屈折部領域の平均カーブの差の平均が−0.008(D)(第1屈折部領域<第2屈折部領域)となる。
本発明の眼鏡レンズの設計装置及び設計方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図9は本発明の一実施形態の眼鏡レンズの設計装置を示すブロック図である。
眼鏡レンズの設計装置3は、入射面に入射する光線が、出射面から眼球回旋点に向けて出射する眼鏡レンズを設計する装置である。設計装置3は、出射面の光学面の傾き(以降傾斜ともいう)を決定するレンズ面形状決定部3Aを備えている。そして、レンズ面形状決定部3Aは、制御部30、記憶部31及び表示部32を備えている。
制御部30は、CPU等の演算回路、RAM等の記憶回路を備えている。そして制御部30は、記憶部31に記憶されているプログラムをRAMに展開し、RAMに展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行する。
送受信部33は、図示しない検眼装置から、装用者の検眼情報を取得する検眼情報入手部としても機能する。さらに送受信部33は、眼鏡レンズの設計に必要な情報を、図示しないコンピュータから受信し、他のコンピュータに設計データ等を送信する。
ここで、検眼情報とは、眼鏡レンズの球面屈折力S、累進屈折力レンズの第一屈折部で付与する第一の屈折力、第二屈折部で付与する第二の屈折力、累進帯長、およびその他の情報である。このその他の情報には一態様として、プリズムシニング(prism thinning)に関する情報を含み、プリズム量、プリズム基底方向(上側(Up方向)、下側(Down方向))、フレームの情報が含まれる。
そして、図9で示されるデータ作成部34では、後述するプリズムの分布、基準プリズム分布及び差分プリズム分布を、光線追跡法、その他の方法で作成する。データ作成部34で作成されたデータは、一度、記憶部31で記憶される。
そして、演算部300は補正前プリズム作用演算部36、理想的プリズム作用演算部37及び補正プリズム量演算部38を備える。
まず、補正前プリズム作用演算部36は、後述するプリズムシニングレンズベクトル保存部311で保存された入射光線ベクトル及び出射光線ベクトルに基づき、プリズム処方がない基準レンズのプリズム作用を演算する。
そして、理想的プリズム作用演算部37は、プリズムシニングレンズベクトル保存部311で保存された入射光線ベクトルと後述する目標光線群保存部312で保存された出射光線ベクトルに基づき、プリズムシニングレンズに光線を入射させたときに得られる理想的な出射光線を得るためのプリズム作用を演算する。
さらに、補正プリズム量演算部38は、補正前プリズム作用演算部36で求めたプリズム作用と理想的プリズム作用演算部37で得られたプリズム作用との差分に基づき、出射面の傾きを補正するための補正プリズム量を演算する。
そして、補正部39は、補正プリズム量演算部38で求められた補正プリズム量に基づいて出射面の傾きを補正する。
記憶部本体310は、眼鏡レンズの設計装置3の動作を制御するための各種プログラム、及び各種情報を記憶する。この各種情報は、送受信部33で入手した装用者毎の検眼情報、眼鏡レンズの材料、屈折率、その他、設計するにあたり必要な設計情報を含む。
ここで、図9に加え、後述する図10を更に参照しながら説明を行う。
プリズムシニングレンズベクトル保存部311は、プリズムシニングレンズCLの入射面LIに光線を入射させた入射光線ベクトルL21A,L22A,L23A(図10(B)参照)と出射面LOから出射する出射光線ベクトルL21B,L22B,L23B(図10(B)参照)とを保存する。
目標光線群保存部312は、プリズムシニング(prism thinning)のプリズム量に対応した角度γの分だけ回転されて入射面LIに入射される入射光線ベクトルL11A、L12A,L13A(図10(A)参照)と出射面Lから出射する出射光線ベクトルL11B,L12B,L13B(図10(A)参照)とを記憶部31に保存する。ここで、入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aが目標光線群である。
眼鏡レンズの設計方法を説明するために前提となる概念を図10に基づいて説明する。
図10はレンズ設計方法の原理を説明するための概略図である。
図10(A)は、基準レンズBLを示している。
複数の物体点A1,A2,A3から発せられる光線が、基準レンズBLの入射面LIを通って出射面LOから出射するシミュレーションをする。
これらの複数の光線のうち、基準レンズBLの出射面LOの任意の点から出射してそれぞれが眼球回旋点Eに向かう光線ベクトルL01,L02,L03を、基準レンズBLの各注視線方向の基準光線群LB0とする。
本発明において、物体点A1,A2,A3は無限遠方、あるいは、有限距離にあると定義する。ここで、有限距離とは無限遠方と同一視できる程度の距離をいう。
同じく、光線ベクトルL02は、物体点A2から発せられ入射面LIに入射する入射光線ベクトルL02Aと、入射光線ベクトルL02Aの入射位置から出射面LOの任意のレンズ周辺部O2に向かうベクトルと、出射面LOのレンズ周辺部O2から眼球回旋点Eに向かう出射光線ベクトルL02Bとを備える。
同様に、さらに光線ベクトルL03は、物体点A3から発せられ入射面LIに入射する入射光線ベクトルL03Aと、入射光線ベクトルL03Aの入射位置から出射面LOの任意のレンズ周辺部O3に向かうベクトルと、出射面LOのレンズ周辺部O3から眼球回旋点Eに向かう出射光線ベクトルL03Bとを備える。
ここで、光線ベクトルL01,L02,L03のそれぞれに、プリズム測定基準点O1に付与したプリズムシニング(prism thinning)量に対応した角度γの分だけ回転された複数の光線ベクトルがL11,L12,L13で示されている。光線ベクトルL11,L12,L13のうち入射光線ベクトルがL11A,L12A,L13Aで示され、出射光線ベクトルがL11B,L12B,L13Bで示されている。
物体点A1,A2,A3から発せられる光線が、プリズムシニングレンズCLの入射面LIを通って出射面LOから出射するシミュレーションをする。
これらの複数の光線のうち、基準レンズBLの出射面LOの任意の点から出射してそれぞれが眼球回旋点Eに向かう光線ベクトルL01,L02,L03を、基準レンズBLの各注視線方向の基準光線群LB0とする。
これらの複数の光線のうち、プリズムシニングレンズCLの出射面LOのうち任意の点から出射してそれぞれが眼球回旋点Eに向かう光線ベクトルL21,L22,L23をプリズムシニングレンズCLの各注視線方向のプリズム光線群LC0とする。
同様に、光線ベクトルL22は、物体点A2から発せられ入射面LIに入射する入射光線ベクトルL22Aと、入射光線ベクトルL22Aの入射位置から出射面LOの任意のレンズ周辺部O2に向かうベクトルと、出射面LOのレンズ周辺部O2から眼球回旋点Eに向かう出射光線ベクトルL22Bとを備える。
同じく、光線ベクトルL23は、物体点A3から発せられ入射面LIに入射する入射光線ベクトルL23Aと、入射光線ベクトルL23Aの入射位置から出射面LOの任意のレンズ周辺部O3に向かうベクトルと、出射面LOのレンズ周辺部O3から眼球回旋点Eに向かう出射光線ベクトルL23Bとを備える。
同じく、物体点A2から入射され基準レンズBLの出射面LOのレンズ周辺部O2から出射する出射光線ベクトルL12Bの方向と、物体点A2から入射されプリズムシニングレンズCLの出射面LOのレンズ周辺部O2から出射する出射光線ベクトルL22Bの方向とがなす角(フレ角)をθ2とする。
同様に、物体点A3から入射され基準レンズBLの出射面LOのレンズ周辺部O3から出射する出射光線ベクトルL13Bの方向と、物体点A2から入射されプリズムシニングレンズCLの出射面LOのレンズ周辺部O3から出射する出射光線ベクトルL23Bの方向とがなす角(フレ角)をθ3とする。
すると、入射光線ベクトルL21Aが、目標光線群を構成する入射光線ベクトルL11Aと平行となるように所定角度だけ回転し、プリズムシニングレンズCLの出射面LOのプリズム測定基準点O1から出射する出射光線ベクトルL21Bの向きも変わる。
同様に、入射光線ベクトルL22Aが、目標光線群を構成する入射光線ベクトルL12Aと平行となるように所定角度だけ回転し、プリズムシニングレンズCLの出射面LOのレンズ周辺部O2から出射する出射光線ベクトルL22Bの向きが変わる。
おなじく、入射光線ベクトルL23Aが、目標光線群を構成する入射光線ベクトルL13Aと平行となるように所定角度だけ回転し、プリズムシニングレンズCLの出射面LOのレンズ周辺部O3から出射する出射光線ベクトルL23Bの向きも変わる。
出射面LOの光学面の傾斜が変更されたプリズムシニングレンズに対して、同様のシミュレーションを実施し、最終的に、角度θ1、角度θ2及び角度θ3の差が最も少なくなるような角度θ、理想的には、角度θ1、角度θ2及び角度θ3がそれぞれ角度θとなるように、出射面LOの光学面の傾斜が決定される。
本実施形態の設計方法を図11に基づいて具体的に説明する。
図11は眼鏡レンズの設計方法を示すフローチャートである。
本実施形態の設計方法は、図11のフローチャートで示される通り、まず、プリズムシニングレンズベクトル保存工程S1と目標光線群保存工程S2とを実施する。なお、本実施形態では、プリズムシニングレンズベクトル保存工程S1と目標光線群保存工程S2とを実施する順番は限定されるものではなく、目標光線群保存工程S2を実施した後、プリズムシニングレンズベクトル保存工程S1を実施するものでもよく、また両者同時に実施するものでもよい。また以降の説明は、図11に加え、図10も参照することとする。
プリズムシニングレンズベクトル保存工程は、物体点A1,A2,A3から発せられた光線であってプリズムシニングレンズCLに入射し、プリズムシニングレンズCLから出射する光線のうち眼球回旋点Eに向かう複数の光線を備えるプリズム光線群LC0をデータ作成部34で作成する。データ作成部34は、シミュレーションをして、物体点A1,A2,A3から入射面LIに光線を入射させた入射光線ベクトルL21A,L22A,L23Aと出射面LOから出射して眼球回旋点Eに向かう光線の出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bとを作成する。作成された入射光線ベクトルL21A,L22A,L23A及び出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bをプリズムシニングレンズベクトル保存部311に保存する(S1)。
目標光線群保存工程は、物体点A1,A2,A3から発せられた光線であって基準レンズBLに入射し、基準レンズBLから出射する光線のうち眼球回旋点Eに向かう複数の光線とを備える基準光線群LB0を作成する。
ついで、基準光線群LB0に基づいて、出射光線ベクトルL01B,L02B,L03Bのそれぞれにプリズム量に対応した角度γの分だけ回転された複数の光線が、出射されて眼球回旋点に向かうように、基準レンズに複数の光線を入射させた場合の入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aをデータ作成部34で作成する。
データ作成部34は、シミュレーションによって、基準光線群LB0を構成する入射光線ベクトルL01A,L02A,L03Aと出射光線ベクトルL01B,L02B,L03Bを作成する。さらに、データ作成部34は、目標光線群を構成する入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aと出射光線ベクトルL11B,L12B,L13Bを作成し、これら光線ベクトルを目標光線群保存部312に保存する(S2)。
補正前プリズム作用演算工程は、プリズムシニングレンズベクトル保存部311から、入射光線ベクトルL21A,L22A,L23A及び出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bを呼び出し、補正前、つまり、現在の基準レンズBLのプリズム作用を補正前プリズム作用演算部36で演算する(S3)。
[理想的プリズム作用演算工程]
理想的プリズム作用演算工程は、プリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存された出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bと、目標光線群保存工程S2で保存された出射光線ベクトルL11B,L12B,L13Bとを呼び出し、プリズムシニングレンズCLに光線を入射させたときに得られる理想的な出射光線を得るためのプリズム作用を理想的プリズム作用演算部37で演算する(S4)。理想的な出射光線とは、物体点A1,A2,A3から入射され基準レンズBLの出射面LOから出射する出射光線ベクトルL11B,L12B,L13Bの方向と、物体点A1,A2,A3から入射されプリズムシニングレンズCLの出射面LOから出射する出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bの方向とがなす角度θ1,θ2,θ3が角度θとなるような出射光線である。理想的プリズム作用演算部37により、角度θを演算する。
補正プリズム量演算部38によって、補正前プリズム作用演算工程で求めたプリズム作用と理想的プリズム作用演算工程で得られたプリズム作用との差分を演算し、その差分に基づいて出射面L0の傾きを補正するために補正プリズム量を演算する(S5)。つまり、補正プリズム量演算部38では、角度θ1と角度θとの差、角度θ2と角度θとの差、角度θ3と角度θとの差をそれぞれ演算する。
[補正工程]
補正工程は、補正プリズム量演算工程で求められた補正プリズム量に基づいて出射面LOの傾きを補正部39で補正する(S6)。
つまり、補正プリズム量演算部38で演算された角度θ1と角度θとの差、角度θ2と角度θとの差、角度θ3と角度θとの差が小さくなるように、出射面LOのプリズム測定基準点O1及びレンズ周辺部O2,O3を含む出射面の光学面での傾斜を変更する(図10(B)の一点鎖線LOA参照)。前述の傾斜は、複数の任意の点に対応した各点の局所的な傾斜であり、光学面の傾きを含む。
判定工程は、出射面LOの傾きが補正されたら、出射面LOに基づいて、工程S1、工程S3、工程S5を実施し、工程S5で求められたプリズム作用の差分、つまり、角度θ1と角度θとの差、角度θ2と角度θとの差、角度θ3と角度θとの差が目標値以下か否かを判定する(S7)。ここで、目標値とは、眼鏡レンズの種類、屈折力等に応じて適宜設定されるものである。目標値は、記憶部31に予め記憶されている。
プリズム作用の差分が目標値以下である場合(YES)には、設計が終了する。プリズム作用の差分が目標値を超える場合(NO)には、工程S6で実施される補正の回数をカウントし、カウントされた回数が所定回数未満か否かを判定する(S8)。
所定回数は、適宜設定されるものであり、例えば、3回である。設定された回数は記憶部31に予め記憶される。カウントされた回数が所定の回数未満である場合(YES)には、工程S1から工程S6までを繰り返し実施する。カウントされた回数が所定の回数に達した場合(NO)には、設計が終了する。
以上の構成の眼鏡レンズの設計方法は、コンピュータの設計プログラムより実施される。
[実施例1:プリズム基底方向が下方(Base Down)でプリズム屈折力が1.25(Δ)、加入度ADDが2.50(D)、球面屈折力Sが+3.0(D)の累進屈折力レンズ]
図12は、眼鏡レンズの設計方法の手順を示す概略図である。
図12(A)は、プリズム測定基準点Oでプリズムシニング(prism thinning)が付加されたプリズムの分布が示す。なお、後述する図14(A)(B)(C)は図12(A)(B)(C)に相当するものであり、これらの図において、座標は出射面LOの座標位置であり、各図の左側が鼻側であり、右側が耳側である。
図12(A)で示されるプリズムの分布は、座標(0,0)の原点から下側に2mm離れた位置Pc(座標(0,−2))では、プリズム量ΔPが0〜1(D)の領域P0の中心となっている。そして、領域P0の外側はプリズム量ΔPが1〜2(D)の領域P1である。さらに、領域P1の外側はプリズム量ΔPが2〜3(D)の領域P2である。そして、領域P2の外側はプリズム量ΔPが2〜3(D)の領域P3である。したがって、プリズム分布は、位置Pcを中心として外側に向かうに従ってプリズム量ΔPが1D単位で大きくなる。図12(A)のプリズム分布はプリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存される。
基準プリズム分布は、図12(B)に示される通り、原点から下側に2mm離れた位置Pcを含む最小の楕円領域が0〜1(D)の領域P0であり、プリズム測定基準点O1と同心上に径の異なる楕円領域が配置される。図12(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図12(C)において、差分プリズム分布は、原点から上に3mmの位置(座標(0,3))を含む領域は、0.0〜0.25(D)である。そしてこの領域の外側に位置する領域のプリズム量は、0.25〜0.50(D)である。さらに、この外側に位置する領域のプリズム量は、0.50〜0.75(D)である。
図12(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
図13は、設計方法の手順で効果が得られることの実験を説明するための概略である。
図13(A)は眼球から1m先の物体面Kを左右の眼で見た場合の実験の概略を示す。図13(B)は、物体面Kのうち水平方向Hより上方であって水平に沿った線KLを左右の眼で見た場合の視線のずれを示す概略図である。この視線のずれの計算は、まず左右の眼球回旋点Eを結んだ直線SEの中点SMを通る物体面Kの法線SLと、線KLの上の所定の位置Qnと中点SMとを結ぶ線Snとのなす角度をφと定義する。角度φは、線Snが法線SLと一致する場合には、0°であり、図13(A)において右側がプラス、左側がマイナスである。角度φが40°、30°、20°、10°、0°、−10°、−20°、−30°、−40°における各物体点から右眼、左眼のそれぞれの眼球回旋点を通る光線を追跡する。そして、レンズの出射面から出射された出射光線ベクトルを物体面Kの方に伸ばして物体面とぶつかった位置を右眼、左眼の出射光線ベクトルについてそれぞれ計算する。計算の結果、右眼から計算された位置と左眼から計算された位置との差は視線のずれである。表1は、実施例1とプリズムなしレンズとの視線のずれの差分と、比較例1とプリズムなしレンズとの視線のずれの差分とをそれぞれ求めた結果である。
図14は、眼鏡レンズの設計方法の手順を示す概略図。
図14(A)では、座標(0,−8)の位置Pcは、0〜1(D)の領域P0の中心である。図14(A)のプリズム分布はプリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存される。
図14(B)で示される基準プリズム分布は、座標(0,−8)を含む最小の領域P0が0〜1(D)の領域P0である。そして、領域P0と同心上に径が異なり、かつ、1(D)であり、ピッチ毎大きくなる楕円領域が配置される。図14(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図14(C)で示される差分プリズム分布では、座標(0,0)の原点を含む領域が0.00〜0.25(D)である、そして、その外側は0.25〜0.50(D)の領域である。図14(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
以上の手順の設計方法でレンズ周辺での視線のずれが解消されていることを説明する。
表2は実施例2とプリズムなしレンズとの視線のずれの差分と、比較例2とプリズムなしレンズとの視線のずれの差分とをそれぞれ求めた結果である。
図15は、眼鏡レンズの設計方法の手順を示す概略図である。
図15(A)は、座標(0,5)の位置Pcが、プリズム量が0〜1(D)の領域P0の中心となるプリズム分布である。図15(A)のプリズム分布はプリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存される。
図15(B)で示される基準プリズム分布は、座標(0,5)を含む最小の領域P0が0〜1(D)の領域P0である。そして、領域P0と同心上に領域の大きさとプリズム量が異なる楕円領域が配置される。図15(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図15(C)で示される差分プリズム分布は、座標(0,0)の原点を含む領域が0.00〜0.25(D)である。そして、その外側は0.25〜0.50(D)の領域である。図15(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
以上の手順の設計方法でレンズ周辺での視線のずれが解消されていることを説明する。
表3は実施例3とプリズムなしレンズとの視線のずれの差分と、比較例3とプリズムなしレンズとの視線のずれの差分とをそれぞれ求めた結果を示す。
図16は、眼鏡レンズの設計方法の手順を示す概略図である。
図16(A)は、座標(0,−3)の位置Pcは、0〜1(D)の領域P0の中心である。図16(A)のプリズム分布はプリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存される。
図16(B)で示される基準プリズム分布は、座標(0,−3)を含む最小の領域P0が0〜1(D)の領域P0である。そして領域P0と同心上に径が異なり、かつ、大きくなる楕円領域が配置される。図16(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図16(C)で示される差分プリズム分布では、座標(0,0)の原点を含む領域が0.00〜0.25(D)である。そして、その外側は0.25〜0.50(D)の領域である。図16(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
以上の手順の設計方法でレンズ周辺での視線のずれが解消されていることを説明する。
表4は実施例4とプリズムなしレンズとの視線のずれの差分と、比較例4とプリズムなしレンズとの視線のずれの差分とをそれぞれ求めた結果を示す。
図17は、眼鏡レンズの設計方法の手順を示す概略図である。
図17(A)では、座標(0,15)の位置Pcは、0〜1(D)の領域P0の中心である。図17(A)のプリズム分布はプリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存される。
図17(B)で示される基準プリズム分布は、座標(0,15)を含む最小の領域P0が0〜1(D)の領域P0である。そして、領域P0と同心上に径が異なり、かつ、大きくなる楕円領域が配置される。図17(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図17(C)で示される差分プリズム分布では、座標(0,0)の原点を含む領域が0.00〜0.25(D)である。そして、その外側が0.25〜0.50(D)の領域である。図17(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
以上の手順の設計方法でレンズ周辺での視線のずれが解消されていることを説明する。
表5は、実施例5とプリズムなしレンズとの平均カーブの差分と、比較例5とプリズムなしレンズとの平均カーブの差分とを示す。
図18は、眼鏡レンズの設計方法の手順を示す概略図である。
図18(A)では、座標(0,−15)の位置Pcは、0〜1(D)の領域P0の中心である。図18(A)のプリズム分布はプリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存される。
図18(B)で示される基準プリズム分布は、座標(0,−15)を含む最小の領域P0が0〜1(D)の領域P0である。そして、領域P0と同心上に径が異なり、かつ、大きくなる楕円領域が配置される。図18(B)のプリズム分布は、目標光線群保存工程S2で保存される。
図18(C)で示される差分プリズム分布では、座標(0,0)の原点を含む領域が0.00〜0.25(D)であり、その外側が0.25〜0.50(D)の領域である。図18(C)で示される差分プリズム分布は、補正プリズム量演算工程S5で求められる。
以上の手順の設計方法でレンズ周辺での視線のずれが解消されていることを説明する。
表6は、実施例6とプリズムなしレンズとの平均カーブの差分と、比較例6とプリズムなしレンズとの平均カーブの差分とを示す。
次に、本発明の眼鏡レンズの製造装置の一実施形態を図19に基づいて説明する。
図19において、眼鏡レンズの製造装置4は、眼鏡レンズを設計する眼鏡レンズ設計部と、眼鏡レンズ設計部で設計された眼鏡レンズを加工する加工部40と、を備えている。
眼鏡レンズ設計部は、図8で示される眼鏡レンズの設計装置3と同じである。
加工部40は、レンズ素材に加工を行う加工部本体(図示せず)と、加工部本体を駆動する加工駆動部41と、眼鏡レンズの設計装置3で設計されたデータを受信する受信部42と、受信部42で受信されたデータに基づいて加工駆動部41を制御する制御部43とを備えて構成されている。
受信部42は、眼鏡レンズの設計装置3の送受信部33から送信されるデータを受信する。ここで、受信部42と送受信部33とは無線あるいはコードを介して電気的に接続されている。また、本実施形態では、眼鏡レンズの設計装置3で設計されたデータをUSBメモリー等の記憶媒体に記憶させておき、この記憶媒体から受信部42に設計データを受信するものでもよい。
次に、本発明の眼鏡レンズの製造方法を図20に基づいて説明する。
図20は眼鏡レンズの製造方法を示すフローチャートである。
図20において、まず、眼鏡レンズの設計装置3で眼鏡レンズの設計工程を実施する(S201)。眼鏡レンズの設計工程は、図11で示される眼鏡レンズの設計方法の手順により実施される。
そして、眼鏡レンズを設計する工程で設計された眼鏡レンズを加工する加工工程を実施する。
即ち、受信部42で眼鏡レンズの設計装置3の送受信部33から送信されるデータを受信すると(S202)、制御部43により制御されながら加工駆動部41により工具等を駆動してレンズ素材を加工する(S203)。
(1)図2に示される通り、球面屈折力Sがプラスであり、プリズム測定基準点Oで付与されるプリズムのプリズム基底方向が近用部側に向けて設定され、Y方向のうち少なくともフィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズのY方向に沿ったレンズ曲面の平均カーブよりも小さく、平均カーブの差N11をマイナスとした。
本発明の発明者は、2つのアライメント基準マークを結ぶ線の中点を通りこの線と直交する方向に沿った平均カーブを、プリズムなしレンズと、プリズム測定基準点O近傍でのみ所望のプリズムのみにプリズムシニング(prism thinning)が付加された従来のレンズとについて、それぞれ求め、比較例のレンズの平均カーブに対するプリズムなしレンズの平均カーブの差を検討した。その結果、第一屈折部の球面屈折力がプラスであり、プリズム測定基準点Oで付与されるプリズムのプリズム基底方向が第二屈折部側に向けて設定された従来のレンズでは、平均カーブの差の平均値は、フィッティングポイントFPより第一屈折部側が第二屈折部側に比べて大きくなることが判明した。これは、プリズムシニングレンズに付加したプリズムと比べて第一屈折部において大きなプリズム作用を生むことになり、これが左右両眼での視線のずれを生むと考えられる。
そこで、本発明では、平均カーブの、プリズムなしレンズの平均カーブに対する差の平均値を、フィッティングポイントFPより第二屈折部側領域に対して、フィッティングポイントFPより第一屈折部側領域を小さく設定した。これにより、比較例のレンズで生じていた第一屈折部における付加したプリズムに対して大きすぎるプリズム作用が解消され、周辺での視線のずれが少なくなる。両眼のそれぞれにおいて、周辺での視線のずれがなくなると、左右両眼での視線のずれが解消されることになる。ここで平均カーブに対する差とは、例えば基準レンズの平均カーブから本願眼鏡レンズの平均カーブを引いた差分である。
従来のレンズでは、平均カーブの差は、第一屈折部において、プリズム測定基準点Oから離れるにしたがってプラスの方向に大きくなることが判明した。これはプリズムなしレンズのレンズ曲面に対して従来のレンズは平均カーブが小さいことを意味している。平均カーブがプリズムなしのレンズより小さいことによって、プリズム測定基準点Oから第一屈折部の方向に離れた点におけるプリズム量はプリズム測定基準点Oにおいて与えたプリズム量に対して大きくなる(以下、この状態をプリズムの不均衡とする)。これが左右両眼で見たときの視線のずれを生む原因になる。そこで、本発明では、与えたプリズム量に対してプリズム測定基準点Oより第一屈折部の方向においてはプリズム量がプリズム測定基準点Oより大きくなることを考慮し、プリズムなしレンズのレンズ曲面の平均カーブに対する差を大きくした。これによりプリズムの不均衡が解消され、左右両眼での視線のずれが解消されることになる。
一方、従来のレンズでは、平均カーブの差の平均値は、フィッティングポイントFPより第二屈折部側領域に対して、第一屈折部側領域が小さいことが判明した。これは、プリズムシニングレンズに付加したプリズムと比べて第一屈折部において小さすぎるプリズム作用を生むことになり、これが左右両眼での視線のずれを生むと考えられる。
そこで、本発明の眼鏡レンズは、基準レンズの平均カーブと眼鏡レンズの平均カーブとの差を平均カーブの差としたとき、直交方向でフィッティングポイントFPを境界とした第二屈折部側領域における平均カーブの差の平均値が、第一屈折部側領域における平均カーブの差の平均値よりも小さいことを特徴とする。これにより、比較例のレンズで生じていた第一屈折部における付加したプリズムに対して小さすぎるプリズム作用が解消され、周辺での視線のずれが少なくなる。
そこで、本発明では、平均カーブの差において遠用度数測定位置での値を、0.02(D)以下にした。これにより、比較例のようにプリズムなしレンズのレンズ曲面に対する平均カーブが小さかった(プリズムなしレンズのレンズ曲面に対する平均カーブの差がプラスであった)ために起こったプリズムの不均衡が解消されるような傾きがレンズ面に付与されることになり、左右両眼での視線のズレが解消される。
図6に示される通り、球面屈折力Sがプラスであり、プリズム測定基準点Oで付与されるプリズムのプリズム基底方向が遠用部側に向けて設定され、Y方向に沿った平均カーブの、プリズムなしレンズのレンズ曲面のY方向に沿った平均カーブに対する差の平均値V1A,V1Bが、フィッティングポイントFPより近用部側の領域の平均値V1Bに対して、フィッティングポイントFPより遠用部側領域の平均とV1Aが大きい構成とした。
本発明の眼鏡レンズでは、前述の方向のうち少なくともフィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズのレンズ曲面の前述の方向に沿った平均カーブよりも小さい構成が好ましい。
本発明では、フィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズの平均カーブよりも小さくしたことにより、第一屈折部において生じていた小さすぎるプリズム作用が相殺され、周辺での視線のずれが少なくなる
本発明の眼鏡レンズでは、前述の方向のうち少なくともフィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズのレンズ曲面の前述の方向に沿った平均カーブよりも小さい構成が好ましい。
本発明では、フィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズの平均カーブよりも小さくしたことにより、第一屈折部において生じていた小さすぎるプリズム作用が相殺され、周辺での視線のずれが少なくなる。
従来のレンズでは、平均カーブの差の平均値は、フィッティングポイントFPより第二屈折部側領域に対して、第一屈折部側領域が小さいことが判明した。これは、プリズムシニングレンズに付加したプリズムと比べて第一屈折部において小さすぎるプリズム作用を生むことになり、これが左右両眼での視線のずれを生むと考えられる。
図4及び図5に示される通り、遠用部の球面屈折力Sがマイナス又は0であり、プリズム測定基準点Oで付与されるプリズムのプリズム基底方向が近用部側に向けて設定され、Y方向に沿った平均カーブの、プリズムなしレンズのレンズ曲面のY方向に沿った平均カーブに対する差N21,N31の遠用度数測定位置FMにおける値を0.02(D)以下とした。
以上の眼鏡レンズでは、平均カーブの差が比較例とは異なるように設定されているので、比較例のような周辺での視線のずれが少なくなり、左右両眼での視線のずれが解消される。
従来のレンズでは、平均カーブの差は、第一屈折部において、プリズム測定基準点Oから離れるにしたがってプラスの方向に大きくなることが判明した。これはプリズムなしレンズのレンズ曲面に対して従来のレンズは平均カーブが小さいことを意味している。平均カーブがプリズムなしのレンズより小さいことによって、プリズム測定基準点Oから第一屈折部の方向に離れた点におけるプリズム量はプリズム測定基準点Oにおいて与えたプリズム量に対して大きくなる。(以下、この状態をプリズムの不均衡とする)。これが左右両眼で見たときの視線のずれを生む原因になる。そこで、本発明では、与えたプリズム量に対してプリズム測定基準点Oより第一屈折部の方向においてはプリズム量がプリズム測定基準点Oより大きくなることを考慮し、プリズムなしレンズのレンズ曲面の平均カーブに対する差を大きくした。これによりプリズムの不均衡が解消され、左右両眼での視線のずれが解消されることになる。
さらに、図11に示される通り、演算された補正プリズム量に基づいて出射面LOの傾斜面を補正した後に、所定回数の補正を行ったか否かの判定をするので、所定回数繰り返した場合には出射面LOを補正の補正を終了するので、設計時間の短縮を図ることができる。
例えば、実施形態の眼鏡レンズの設計方法では、プリズムシニングレンズCLの出射面LOの傾斜を補正したが、本発明では、プリズムシニングレンズCLの入射面LIの傾斜を補正するものでもよい。ここで、眼球側光学面とは、出射面であり、眼球側の面であり、後面、凹面とも称されることがある。物体側光学面とは、入射面であり、物体側の面であり、前面、凸面とも称されることもある。
また、第一屈折部を遠用部とし、第二屈折部を近用部としたが、本発明では、第一屈折部を、中距離を見るのに適したレンズ(中近レンズ)や、第一屈折部と第二屈折部とを装用者の手元を見るのに適したレンズ(近々レンズ)であってもよい。
[1]図1,図3を参照して説明する。
本発明の実施形態は、第一の屈折力を有する第一屈折部(例えば、遠用部F1)、第一の屈折力より大きい第二の屈折力を有する第二屈折部(例えば、近用部F2)、第一屈折部と第二屈折部との間に設けられた累進部F3とを備えプリズムシニング(prism thinning)が付加された眼鏡レンズであって、第一屈折部の球面屈折力がプラスであり、プリズム測定基準点O(例えば、幾何中心O)で付与されるプリズムのプリズム基底方向が第二屈折部側に向けて設定され、2つのアライメント基準マークMを結ぶ線LCの中点LMを通り線LCと直交する方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブの、プリズムなしレンズの方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブに対する差N11の平均値が、フィッティングポイントFPより第二屈折部側領域に対して、フィッティングポイントFPより第一屈折部側領域が小さいことを特徴とする眼鏡レンズである
[2]図1、図2を参照して説明する。
さらに好ましい本発明の実施形態は、前述の眼鏡レンズにおいて、前述の方向(Y方向)のうち少なくともフィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズの方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面の平均カーブよりも小さいことを特徴とする眼鏡レンズである。
[3]図5、図4を参照して説明する。
別の本発明の実施形態は、遠用部F1、近用部F2及び累進部F3を備えプリズムシニング(prism thinning)が付加された眼鏡レンズであって、遠用部F1の球面屈折力がマイナス又は0であり、プリズム測定基準点Oで付与されるプリズムのプリズム基底方向が近用部側に向けて設定され、2つのアライメント基準マークMを結ぶ線LCの中点を通り線LCと直交する方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブの、プリズムなしレンズの方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブに対する差N21,N31の遠用度数測定位置FMでの値が0.02(D)以下であることを特徴とする眼鏡レンズである。
[4]図3を参照して説明する。
さらに別の本発明の実施形態は、第一の屈折力を有する第一屈折部(例えば、遠用部F1)、第一の屈折力より大きい第二の屈折力を有する第二屈折部(例えば、近用部F2)、第一屈折部と第二屈折部との間に設けられた累進部F3とを備えプリズムシニング(prism thinning)が付加された眼鏡レンズであって、第一屈折部の球面屈折力がプラスであり、プリズム測定基準点O(例えば、幾何中心O)で付与されるプリズムのプリズム基底方向が第一屈折部側に向けて設定され、2つのアライメント基準マークMを結ぶ線LCの中点LMを通り線LCと直交する方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブの、プリズムなしレンズの方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブに対する差N41の平均値が、フィッティングポイントFPより第二屈折部側の領域に対して、フィッティングポイントFPより第一屈折部側領域が大きいことを特徴とする眼鏡レンズである。
[5]図6を参照して説明する。
さらに好ましい本発明の実施形態は、前述の眼鏡レンズにおいて、前述の方向(Y方向)のうち少なくともフィッティングポイントFPから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、プリズムなしレンズのレンズ曲面の方向(Y方向)に沿った平均カーブよりも大きいことを特徴とする眼鏡レンズである。
[6]図7,図8を参照して説明する。
さらに別の本発明の実施形態は、遠用部F1、近用部F2及び累進部F3を備えプリズムシニング(prism thinning)が付加された眼鏡レンズであって、遠用部F1の球面屈折力がマイナス又は0であり、プリズム測定基準点O(例えば、幾何中心O)で付与されるプリズムのプリズム基底方向が遠用部側に向けて設定され、2つのアライメント基準マークMを結ぶ線LCの中点LMを通り線LCと直交する方向に沿ったレンズ曲面における平均カーブの、プリズムなしレンズの方向(Y方向)に沿ったレンズ曲面における平均カーブに対する差N51,N61の遠用度数測定位置FMでの値が−0.02(D)以上であることを特徴とする眼鏡レンズである。
[7]図9、図10を参照して説明する。
さらに別の本発明の実施形態は、第一の屈折力を有する第一屈折部(例えば、遠用部F1)、第一の屈折力より大きい第二屈折力を有する第二屈折部(例えば、近用部F2)、第一屈折部と第二屈折部との間に設けられた累進部F3とを備えプリズムシニング(prism thinning)が付加された眼鏡レンズを設計する方法であって、プリズムシニング(prism thinning)の量に対応したプリズムが付加されたレンズをプリズムシニングレンズCLとし、プリズム以外の処方値が全て同じでプリズムが付加されていないレンズを基準レンズBLとし、基準レンズBLにおいて、プリズムに対応した角度γの分だけ回転された複数の光線が出射されて眼球回旋点に向かうように基準レンズに複数の光線を入射させた場合における、入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aを目標光線群とし、複数の物体点A1,A2,A3から発せられたそれぞれの光線がプリズムシニングレンズCLの物体側光学面(入射面LI)に入射し、プリズムシニングレンズCLの眼球側光学面(出射面LO)から出射する光線のうち眼球回旋点Eに向かう複数の光線をプリズムシニングレンズの各注視線方向のプリズム光線群LCOとしたとき、プリズム光線群LCOを構成する光線のうち任意の点と同じ位置を通る複数の光線ベクトルが目標光線群に対して平行となるように、物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)の傾斜を決定するレンズ面形状決定工程を備えたことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法である。
[8]図11を参照して説明する。
さらに好ましい本発明の実施形態は、前述の眼鏡レンズの設計方法において、レンズ面形状決定工程は、プリズムシニングレンズCLに光線を物体側光学面(入射面LI)に入射させた入射光線ベクトルL21A,L22A,L23Aと眼球側光学面(出射面LO)から出射する出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bとを保存するプリズムシニングレンズベクトル保存工程S1と、目標光線群を保存する目標光線群保存工程S2と、プリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存された入射光線ベクトルL21A,L22A,L23A及び出射光線ベクトルL21B,L22B,L23Bから、補正前のプリズムシニングレンズCLのプリズム作用を演算する補正前プリズム作用演算工程S3と、プリズムシニングレンズベクトル保存工程S1で保存された入射光線ベクトルL21A,L22A,L23Aと目標光線群保存工程で保存された目標光線群とから、基準レンズBLから出射する出射光線ベクトルの方向とプリズムシニングレンズCLから出射する出射光線ベクトルの方向とのなす角度が任意の点でそれぞれ同一となる理想的プリズム作用演算工程S4と、補正前プリズム作用演算工程S3で求めたプリズム作用と理想的プリズム作用演算工程S4で得られたプリズム作用との差分に基づき物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)の傾きを補正するために補正プリズム量を演算する補正プリズム量演算工程S5と、補正プリズム量演算工程S5で求められた補正プリズム量に基づいて物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)を補正する補正工程S6と、を備えたことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法である。
[9]図11を参照して説明する。
さらに好ましい本発明の実施形態は、前述の眼鏡レンズの設計方法において、補正工程S6の後に、プリズムシニングレンズベクトル保存工程S1、補正前プリズム作用演算工程S3及び補正プリズム量演算工程S5を実施し、プリズム作用の差分が目標値以下もしくは所定回数の補正を行ったか否かの判定を実施し(S7)、プリズム作用の差分が目標値以下もしくは所定回数の補正を行ったら補正工程S6を終了することを特徴とする眼鏡レンズの設計方法である。
[10]図11を参照して説明する。
さらに別の本発明の実施形態は、眼鏡レンズの設計工程S201と、眼鏡レンズを設計する工程S201で設計された眼鏡レンズを加工する加工工程S203と、を備え、眼鏡レンズの設計工程S201は、第一の屈折力を有する第一屈折部(例えば、遠用部F1)、第一の屈折力より大きい第二屈折力を有する第二屈折部(例えば、近用部F2)、第一屈折部と第二屈折部との間に設けられた累進部F3とを備えプリズムシニング(prism thinning)が付加された眼鏡レンズを設計する工程であって、プリズムシニング(prism thinning)の量に対応したプリズムが付加されたレンズをプリズムシニングレンズCLとし、プリズム以外の処方値が全て同じでプリズムが付加されていないレンズを基準レンズBLとし、基準レンズBLにおいて、プリズムに対応した角度γの分だけ回転された複数の光線が出射されて眼球回旋点に向かうように基準レンズに複数の光線を入射させた場合における、入射光線ベクトルL11A,L12A,L13Aを目標光線群とし、複数の物体点A1,A2,A3から発せられたそれぞれの光線がプリズムシニングレンズCLの物体側光学面(入射面LI)に入射し、プリズムシニングレンズCLの眼球側光学面(出射面LO)から出射する光線のうち眼球回旋点Eに向かう複数の光線をプリズムシニングレンズの各注視線方向のプリズム光線群LCOとしたとき、プリズム光線群LCOを構成する光線のうち任意の点と同じ位置を通る複数の光線ベクトルが目標光線群に対して平行となるように、物体側光学面(入射面LI)又は眼球側光学面(出射面LO)の傾斜を決定することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法である。
Claims (10)
- 第一の屈折力を有する第一屈折部と、前記第一の屈折力より大きい第二の屈折力を有する第二屈折部とを備えプリズムシニングが付加された眼鏡レンズであって、
前記第一屈折部の球面屈折力がプラスであり、
プリズム測定基準点で付与されるプリズムのプリズム基底方向が前記第二屈折部側に向けて設定され、
眼鏡レンズでプリズムシニングが含まれない眼鏡レンズを基準レンズとし、
前記眼鏡レンズの2つのアライメント基準マークを結ぶ線の中点を通り前記線と直交する方向に沿った前記レンズ曲面で、前記眼鏡レンズの前記直交方向に沿ったレンズ曲面のうちフィッティングポイントから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、前記基準レンズの前記直交方向の平均カーブよりも大きいことを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項1に記載された前記眼鏡レンズにおいて、
前記基準レンズの平均カーブと前記眼鏡レンズの平均カーブとの差を平均カーブの差としたとき、
前記直交方向でフィッティングポイントを境界とした第二屈折部側領域における平均カーブの差の平均値が、第一屈折部側領域における平均カーブの差の平均値よりも大きいことを特徴とする眼鏡レンズ。 - 遠用部、近用部を備えプリズムシニングが付加された眼鏡レンズであって、
前記遠用部の球面屈折力がマイナス又は0であり、プリズム測定基準点で付与されるプリズムのプリズム基底方向が近用部側に向けて設定され、
眼鏡レンズでプリズムシニングが含まれない眼鏡レンズを基準レンズとし、
前記眼鏡レンズの2つのアライメント基準マークを結ぶ線の中点を通り前記線と直交する方向に沿ったレンズ曲面で、
前記基準レンズの平均カーブと前記眼鏡レンズとの平均カーブの差を平均カーブの差としたとき、
遠用屈折力測定点での前記平均カーブの差の値が0.02D以下であることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 第一の屈折力を有する第一屈折部と、前記第一の屈折力より大きい第二の屈折力を有する第二屈折部とを備えプリズムシニングが付加された眼鏡レンズであって、
前記第一屈折部の球面屈折力がプラスであり、
プリズム測定基準点で付与されるプリズムのプリズム基底方向が前記第一屈折部側に向けて設定され、
眼鏡レンズでプリズムシニングが含まれない眼鏡レンズを基準レンズとし、
前記眼鏡レンズの2つのアライメント基準マークを結ぶ線の中点を通り前記線と直交する方向に沿ったレンズ曲面で、前記眼鏡レンズの前記方向に沿った前記レンズ曲面のうち少なくともフィッティングポイントから屈折力が小さくなる方向の平均カーブが、前記基準レンズの前記直交方向の平均カーブよりも小さいことを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項4に記載された眼鏡レンズにおいて、
前記基準レンズの平均カーブと前記眼鏡レンズの平均カーブとの差を平均カーブの差としたとき、
前記直交方向でフィッティングポイントを境界とした第二屈折部側領域における平均カーブの差の平均値が、第一屈折部側領域における平均カーブの差の平均値よりも小さいことを特徴とする眼鏡レンズ。 - 遠用部、近用部及び累進部を備えプリズムシニングが付加された眼鏡レンズであって、
前記遠用部の球面屈折力がマイナス又は0であり、プリズム測定基準点で付与されるプリズムのプリズム基底方向が遠用部側に向けて設定され、
眼鏡レンズでプリズムシニングが含まれない眼鏡レンズを基準レンズとし、
前記眼鏡レンズの2つのアライメント基準マークを結ぶ線の中点を通り前記線と直交する方向に沿ったレンズ曲面で、
前記基準レンズの平均カーブと前記眼鏡レンズの平均カーブの差を平均カーブの差としたとき、
前記平均カーブに対する差の遠用度数測定位置での値が0.02D以上であることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 第一の屈折力を有する第一屈折部と、前記第一の屈折力より大きい第二屈折力を有する第二屈折部と、前記第一屈折部と前記第二屈折部との間に設けられた累進部とを備えプリズムシニングが付加された眼鏡レンズを設計する方法であって、
前記プリズムシニングの量に対応したプリズムが付加されたレンズをプリズムシニングレンズとし、
前記プリズムシニングの量に対応したプリズムが付加されていないレンズを基準レンズとし、
前記基準レンズにおいて、前記プリズムに対応した角度の分だけ回転された複数の光線が出射されて眼球回旋点に向かうように前記基準レンズに複数の光線を入射させた場合における、入射光線ベクトルを目標光線群とし、
複数の物体点から発せられたそれぞれの光線が前記プリズムシニングレンズの物体側光学面に入射し、前記プリズムシニングレンズの眼球側光学面から出射する光線のうち眼球回旋点に向かう複数の光線のうちプリズムシニングレンズの各注視線方向に向かう光線群をプリズム光線群としたとき、前記プリズム光線群を構成する光線が、同じ位置を通る前記目標光線群の光線に対して平行となるように、前記眼球側光学面の傾きを含む形状を決定するレンズ面形状決定工程を備えたことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。 - 請求項7に記載された眼鏡レンズの設計方法において、
前記レンズ面形状決定工程は、
前記プリズムシニングレンズに光線を前記物体側光学面に入射させた入射光線ベクトルと前記眼球側光学面から出射する出射光線ベクトルとを保存するプリズムシニングレンズベクトル保存工程と、
前記目標光線群を保存する目標光線群保存工程と、
前記プリズムシニングレンズベクトル保存工程で保存された前記入射光線ベクトル及び前記出射光線ベクトルから、補正前の前記プリズムシニングレンズのプリズム作用を演算する補正前プリズム作用演算工程と、
前記プリズムシニングレンズベクトル保存工程で保存された入射光線ベクトルと前記目標光線群保存工程で保存された前記目標光線群とから、前記基準レンズから出射する出射光線ベクトルの方向と前記プリズムシニングレンズから出射する出射光線ベクトルの方向とのなす角度が前記任意の点でそれぞれ同一となる理想的プリズム作用演算工程と、
前記補正前プリズム作用演算工程で求めたプリズム作用と前記理想的プリズム作用演算工程で得られたプリズム作用との差分に基づき前記物体側光学面又は前記眼球側光学面の傾きを補正するために補正プリズム量を演算する補正プリズム量演算工程と、
前記補正プリズム量演算工程で求められた補正プリズム量に基づいて前記物体側光学面又は前記眼球側光学面を補正する補正工程と、を備えた
ことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。 - 請求項8に記載された眼鏡レンズの設計方法において、
前記補正工程の後に、前記プリズムシニングレンズベクトル保存工程、前記補正前プリズム作用演算工程及び前記補正プリズム量演算工程を実施し、前記プリズム作用の差分が目標値以下もしくは所定回数の補正を行ったか否かの判定を実施し、前記プリズム作用の差分が目標値以下もしくは所定回数の補正を行ったら前記補正工程を終了する
ことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。 - 眼鏡レンズの設計工程と、前記眼鏡レンズを設計する工程で設計された眼鏡レンズを加工する加工工程と、を備え、
前記眼鏡レンズの設計工程は、第一の屈折力を有する第一屈折部、前記第一の屈折力より大きい第二屈折力を有する第二屈折部、前記第一屈折部と前記第二屈折部との間に設けられた累進部とを備えプリズムシニングが付加された眼鏡レンズを設計する工程であって、前記プリズムシニングの量に対応したプリズムが付加されたレンズをプリズムシニングレンズとし、
プリズムが付加されていないレンズを基準レンズとし、
前記基準レンズにおいて、プリズムに対応した角度の分だけ回転された複数の光線が出射されて眼球回旋点に向かうように前記基準レンズに複数の光線を入射させた場合における、入射光線ベクトルを目標光線群とし、
複数の物体点から発せられたそれぞれの光線が前記プリズムシニングレンズの物体側光学面に入射し、前記プリズムシニングレンズの眼球側光学面から出射する光線のうち眼球回旋点に向かう複数の光線をプリズムシニングレンズの各注視線方向のプリズム光線群としたとき、
複数の物体点から発せられた光線が、前記基準レンズの物体側光学面に入射し、前記プリズム処方レンズの眼球側光学面から出射する光線のうち、眼球回旋点に向かう複数の光線を目標光線群とし、
複数の物体点から発せられた光線が、前記プリズムシニングレンズの物体側光学面に入射し、前記プリズムシニングレンズの眼球側光学面から出射する光線のうち、眼球回旋点に向かう複数の光線をプリズム光線群としたとき、
前記プリズム光線群を構成する光線のうち任意の点と同じ位置を通る複数の光線ベクトルが前記目標光線群に対して平行となるように、前記物体側光学面又は前記眼球側光学面の傾斜を決定することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
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