しかし、前記引用文献1の発明は、深絞り成形用発泡シート及びこのシートを深絞り成形してなる発泡容器は、該シートの特性により、高倍率な深絞り成形・熱成形ができ、酸素に対するガスバリア性及び防湿性に優れた発泡容器を提供できるにとどまり、該シートはポリスチレン発泡シートであるがゆえに熱耐性がなく、加熱調理に耐えうる包装容器ではなかった。
従来の発泡シートについて言えば、前記引用文献1以外でも、一般に熱可塑性を有する発泡シートの原料には、ポリスチレン、ポリエチレンが主に用いられている。ここで、ポリスチレンは脆性を有し、発泡ポリスチレンシートの耐熱温度は70〜90℃であり、ポリプロピレンを1〜50重量部を混合しない場合は耐熱性に劣る。
また、ポリスチレン発泡シートに用いられるポリスチレンには多種あり、スチレン系モノマーと共重合可能な他の共重合成分を含んだものや、ゴム変性ポリスチレンを用いることもるが、ゴム変性ポリスチレンの場合20質量%を越える場合は耐衝撃性に劣る。
さらに、ポリスチレン発泡シートはセルサイズが比較的大きいため、型面の出、表面の美観、耐熱性等劣る。このため、タルク、炭酸カルシウムや金属粉等の充填材を押出機に投入する前にマスターバッチ化して配合したり、さらに、タルク、シリカ等の反応混合物等を気泡調整剤として添加することにより改良しなければならない。
その上、ポリスチレンを押出発泡成形することにより発泡シートを製造する場合、炭化水素、プロパン等種々の揮発性発泡剤や分解型発泡剤等を添加する。気泡を細かく、かつ成形性をよくするためには、分解型発泡剤とN2、CO2等を併用しなければならない。
また、ポリスチレン発泡シートの密度が0.05g/cm3未満では深絞り成形に適さず、一方、0.80g/cm3を越えると成形サイクルが長くなる傾向となるので好ましくない。
さらに、ポリスチレン発泡シートの厚みが0.3mm未満では強度が不充分となる傾向となり、成形品としての用途が少なくなる。一方、3.0mmを越えると、深絞り成形品の場合、壁面や底面の厚みのバランスが取り難くなり、また残存する発泡剤量のコントロールが難しくなる。
その上、ポリスチレン発泡シートに耐衝撃性及び深絞り成形性を付加し表面光沢を高めるためには、少なくとも1層以上のハイインパクトポリスチレンからなる補助層が積層されることが必要であるが、ハイインパクトポリスチレンとしてゴム変性ポリスチレンを用い、20質量%を越える場合は強度不足を生じる場合がある。また、ハイインパクトポリスチレン層の厚みが、0.001mm未満では十分な深絞り性、耐衝撃性が得られない場合があり、一方、1.0mmを越えると、深絞り成形後の収縮が大きくなる傾向となり、絞り成形容器の寸法安定性が悪化する場合がある。
前記のとおり、ポリスチレン発泡シートに熱耐性、剛性や耐衝撃性、成形性、美観を付加するためには、各種添加剤やフイルムを積層することを必要とし、条件の幅も狭く、そのため製造方法が煩雑となる。
本発明の目的は、前記従来例の不都合を解消し、断熱性、耐熱性、耐寒衝撃性、成形性、美観、バリア性に優れ、被包装体を保護及び利用する保存状態から適温喫食可能な状態への温度変化に耐えうる、深絞り成形包装容器を提供することにある。さらに、インライン成形により、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートから包装容器をワンストップで簡便に製造でき利便性に優れた、深絞り成形包装容器の製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、深絞り成形包装容器は、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートを成形したことを要旨とするものである。
請求項1記載の本発明によれば、ポリプロピレン樹脂含有発泡シート(以下「本発明発泡シート」という)の特性により、従来のポリスチレン発泡シートに比べて融点が高く、130℃近辺から熱による変化が始まり160℃がピークとなるため、被包装物を収納した状態で電子レンジ加熱をしても本発明の深絞り成形包装容器は変形しないため、被包装物を収納したままで電子レンジ加熱が可能である。
また、本発明発泡シートの特性により、断熱・保冷性に優れるため、被包装物の流通段階で、被包装物の温度変化が少なくてすみ、被包装物の品質劣化を防ぐことができる。
本発明発泡シートは、非結晶性樹脂が配合されている為、耐寒衝撃性に優れ、被包装物を凍結状態で保管する場合、本発明の深絞り成形包装容器も冷凍状態に置かれるが、流通中の衝撃でも破損しない。
本発明発泡シートは、樹脂を発泡したソフトな素材でありクッション性を有し、本発明深絞り成形包装容器をさらに通函等に入れて流通する場合でも、本発明の深絞り成形包装容器同志、又は、本発明の深絞り成形包装容器と他の製品との摩擦や衝撃があっても破損しない。
本発明発泡シートは、熱成形性の良い底フイルムを加熱しながら真空成形することにより被包装物に合わせたくぼみを作り、その中に被包装物を充填した後、蓋フイルムを被せてシールし、その後カットする包装形態である、被包装物のラインで、本発明の深絞り成形包装容器の成形がインラインで可能である。このため、広い保管スペースを要する立体形状に成形された包装容器を仕入れずとも、ロール状のフラットフィルムを仕入れることで食品等の包装を立体的な形状の容器とすることができ、同一のフイルムにより被包装物の形状や容量に応じて成形して包装することができるため、包材の仕入れの省労力化、省スペース化が可能であり、しかも包装する時点でフイルムを加熱成形するため衛生的で効率的に被包装物を包装できる。
本発明発泡シートは、微細セルのため、本発明の深絞り成形包装容器の外面にきれいな印刷ができる。
請求項2記載の本発明は、深絞り成形包装容器は、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートに、ポリエチレンの単層フイルムをラミネートしたシートを成形したことを要旨とするものである。
請求項2記載の本発明によれば、ポリエチレン単層フイルムの特性により、本発明深絞り成形包装容器に耐熱性、耐寒性、剛性、耐衝撃性、腰の強さ、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性等の機能を付加することができる。
請求項3記載の本発明は、深絞り成形包装容器は、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートに、フィラー含有ポリプロピレンの単層フイルムをラミネートしたシートを成形したことを要旨とするものである。
請求項3記載の本発明によれば、本発明深絞り成形包装容器にポリプロピレンの単層フイルムの特性の剛性、腰の強さ、透明性、防湿性に加えて、選択したフィラーの剛性、バリア性等、優れた機能を付加することができる。
請求項4記載の本発明は、深絞り成形包装容器は、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートに、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリプロピレンの積層フイルムをラミネートしたシートを成形したことを要旨とするものである。
請求項4記載の本発明によれば、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリプロピレンの積層フイルムを採用することにより、フィラー含有ポリプロピレン単層フイルムを採用する場合に比して、エチレンビニルアルコール共重合体の特性である、乾燥状態におけるガス遮断性による、酸化・変色防止、ガス充填、保香性の優れた機能を、本発明深絞り成形包装容器に付加することができる。
請求項5記載の本発明は、深絞り成形包装容器は、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートに、フィラー含有ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、フィラー含有ポリプロピレンの積層フイルムをラミネートしたシートを成形したことを要旨とするものである。
請求項5記載の本発明によれば、フィラー含有ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、フィラー含有ポリプロピレンの積層フイルムを採用することにより単層フイルムを採用する場合に比して、エチレンビニルアルコール共重合体の特性である、乾燥状態におけるガス遮断性による、酸化・変色防止、ガス充填、保香性の優れた機能と、選択したフィラーの剛性、バリア性等の機能を相乗的に付加した本発明深絞り成形包装容器とすることができる。
請求項6記載の本発明は、深絞り成形包装容器の製造方法は、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートに、ポリエチレンの単層フイルム、フィラー含有ポリプロピレンの単層フイルム、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリプロピレンの積層フイルム、フィラー含有ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、フィラー含有ポリプロピレンの積層フイルムのいずれか1つを選択し、接着剤を用いたラミネーション法又は熱を使用したラミネーション法でラミネートし、これをインライン成形で深絞り成形したことを要旨とするものである。
請求項6記載の本発明によれば、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートに各種フイルムをラミネートし、これをインライン成形により深絞り成形包装容器をワンストップで簡便に製造でき、且つ、被包装体を保護及び利用する保存状態から適温喫食可能な状態への温度変化に耐えうる、断熱性、耐熱性、耐寒衝撃性、バリア性を備えた深絞り成形包装容器を提供できる。
請求項7記載の本発明は、ラミネートは、インライン成形において行うことを要旨とするものである。
請求項7記載の本発明によれば、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートとラミネートする各フイルムをそれぞれ適宜準備しておくことで、各被包装物に必要な深絞り成形包装容器の機能を、都度付加することができるため、ラミネートしたポリプロピレン樹脂含有発泡シートを、都度準備せずに済む。
以上述べたように本発明によれば、断熱性、耐熱性、耐寒衝撃性、バリア性に優れ、被包装体を保護及び利用する保存状態から適温喫食可能な状態へとの温度変化に耐えうる、深絞り成形包装容器を提供することができる。さらに、インライン成形により、ポリプロピレン樹脂含有発泡シートから包装容器をワンストップで簡便に製造できる利便性に優れた、深絞り成形包装容器の製造方法を提供することができる。
以下本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれに限定されたものでないことは、言うまでもない。採用するフイルム及びその製造方法には公知の発明及び技術を採用することができる。
1.本発明のポリプロピレン樹脂含有発泡シート
本発明のポリプロピレン樹脂含有発泡シートは、従来の熱可塑性を有する発泡シートの欠点を解消するものであり、ポリプロピレン樹脂を含有し、熱可塑性を有する。ポリプロピレン樹脂を超臨界状態にある発泡剤と同じ環境下で混在混練し、前記混練物を常温常圧下に戻すことで、前記発泡剤が前記ポリプロピレン樹脂内部で発泡して、気泡を有するポリプロピレン樹脂発泡体からなる微細セル構造物を構成する。上記発泡体には、無臭の二酸化炭素や窒素等の不活性ガスが好ましい。
このように、本発明発泡シートは、化学発泡剤を必要としないため、2次発泡が発生せず、成形工程で壁面や底面の厚みのバランスが取りやすく、成形が安定する。
具体的に本発明発泡シートは、ポリプロピレン樹脂は45〜65重量部、ゴム成分10〜25重量部、添加成分45重量部以下との構成からなる独立気泡又は半独立気泡をもつ発泡シートである。さらに好ましくは、本発明発泡シートは押出発泡により形成し、マシーン・ダイレクションに直交する断面における100μm角内の気泡数が35個以上とする。
具体的に本発明発泡シートの製造方法は、ポリプロピレン樹脂とゴム成分と添加成分とを含む樹脂組成物を溶融させる溶融工程と、常温常圧で気体である物質の超臨界状態が維持される条件下にて、溶融した前記樹脂組成物に前記物質を超臨界状態で含浸させる含浸工程と、前記物質を含浸した前記樹脂組成物を、前記物質の超臨界状態が維持されない条件下に配することにより、前記樹脂組成物を発泡させる発泡工程を経ることにより製造する。
前記ポリプロピレンは、結晶構造の分類では、アタクチック、イソタクチック、シンジオタクチック、種類の分類では、ホモ、ブロック、ランダム等のいずれでもよい。またポリプロピレンは、発泡に適するとされる主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレン(HMS−PP)や高分子量成分を含んで分子量分布の広いポリプロピレン等の伸張粘度が高いポリプロピレンが好ましい。
前記ゴム成分は、例えば、ジエン系ゴム、オンフィン系ゴムなどを挙げることができる。具体的には、スチレン―エチレン―ブタジエン―スチレンゴム(SEBS)、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)、スチレン―ブタジエン―スチレンゴム(SBS)、スチレン―エチレン―プロピレンゴム(SEP)、イソプレン―ブタジエンゴム、スチレン―イソプレン―ブタジエンゴム、スチレン―イソプレンゴム、エチレン―プロピレン―ジエン共重合体ゴム(EPDM)などを挙げることができる。また、前記ゴム成分は、低分子量の場合、油分に溶けやすくなるため、重量平均分子量が200,000以上の高分子量のものが好ましい。特に、重量平均分子量が200,000以上のエチレン―プロピレン―ジエン共重合体ゴム(EPDM)やスチレン―エチレン―ブタジエン―スチレンゴム(SEBS)は好ましいゴム成分である。
前記樹脂組成には、添加剤成分としてポリエチレンが含まれてもよい。特に低密度ポリエチレンは、溶融張力が高く発泡成形に適することと融点が低いことから好ましく、さらには気泡形成、固化するためには高溶融張力低密度ポリエチレンが好ましい。低密度ポリエチレンの融点は、110〜115℃、高密度ポリエチレンの融点は120〜140℃程度である。本発明のポリプロピレン樹脂含有発泡シートに食品をのせ電子レンジで加熱した場合、加熱温度がポリエチレンの融点を超えた際にポリエチレンが軟化溶融するが、前記ポリプロピレン樹脂とゴム成分とで構成されるポリマーマトリックスの中でポリエチレンが少量溶融する。
従来のポリスチレン発泡シートに比して、本発明の発泡シートは耐熱性に優れる。耐熱特性を、示差走査熱量計(DSC)にて熱分析したところ、従来のポリエチレン発泡シートは60℃近辺より熱による変化が始まり、108℃(融点)でピークとなるが、本発明の発泡シートは130℃近辺より熱による変化が始まり、160℃(融点)後ピークとなる。よって、本発明の発泡シートは被包装物を電子レンジ加熱する場合、優れた耐熱性を有する。
本発明発泡シート(厚み1.8mm)の誘電率は、周波数1GHzにおいて1.2(F/m)であり、誘電率が低く、電子レンジの電子線の影響を受けにくいため、被包装物は加熱されるが、本発明の発泡シートは発熱しない。本値は、Agilent社製インピーダンス/マテリアル・アナライザ(装置形式:E4991A、使用治具:16453A)を使用し容積法を用い容積法にて求めた。
本発明発泡シート(厚み1.8mm)の耐寒性を、JIS K6767に準拠して下記条件下、圧縮速度1mm/minにて直径50mmの試験片全面を圧縮して圧縮硬度を測定した。具体的には、常温(23℃)及び低温(−20℃)雰囲気下で圧縮、各雰囲気下で1時間保持後に測定した。また、これらにつき、常態(23℃・50%RH)、−20℃雰囲気下中(1時間保持後)、及び、−20℃336H後、−20℃で672H後に、常温(23℃)で測定した。結果は下記表1のとおり、圧縮硬度(25%)の物性値は、常態時、−20℃336H後、−20℃672H後共に0.026MPaであり、−20℃雰囲気中0.051MPa、保持率は、−20℃336H後、−20℃672H後共に100%、−20℃雰囲気中200%であった。また、圧縮硬度(50%)の物性値は、常態時、−20℃336H後、−20℃672H後共に0.042MPaであり、−20℃雰囲気中0.080MPa、保持率は、−20℃336H後、−20℃672H後共に100%、−20℃雰囲気中190%であった。
したがって、本発明発泡シートを深絞り成形包装容器として被包装物を収納し、−20℃の冷凍下で保存しても硬くならず、柔軟性を有し割れないため、耐寒衝撃性に優れることが検証された。
セルサイズは、従来のポリエチレン発泡シートのセルサイズが1000μm以上である一方、本発明発泡シートのセルサイズは100μm以下と微細であり、その比重は、60kg/m3である。この特性により、本発明発泡シートは従来のポリエチレン発泡シートに比し、セルサイズが小さく、肉薄化に優れ、熱伝導率が低く、断熱性に優れる。
具体的には、従来のポリエチレン発泡シート(厚み1.8mm)の熱伝導率は0.039W/m・K、ポリスチレン発泡シート(厚み1.8mm)は0.040W/m・Kと高いが、本発明発泡シート(厚み1.8mm)の熱伝導率は0.032W/m・Kと低いため、断熱性に優れる。本値は、英弘精機株式会社性、熱伝導率測定装置(HC−072)を用いた熱流計法にて、対象発泡シートの表裏に温度勾配をつけ狙い平均温度を23℃として求めた。
断熱性について、本発明発泡シート(厚み1.8mm)を深絞り成形包装容器に成形し、80℃の被包装物を収納したときの、深絞り成形包装容器の外面の温度は、収納後30秒後60℃以下であり、直接触れた場合の熱さを軽減することができる。
保温性について、室温17℃において、本発明発泡シート(厚み1.8mm)を深絞り成形包装容器として80℃の湯を収納してその温度変化を測定した。15分後においても70℃を保持可能であり、優れた保温性が検証された。
また、保冷性について、室温25℃において、本発明発泡シート(厚み1.8mm)に、0℃のグレード蓄冷剤(200g)を収納してその温度変化を測定した。約5時間0℃を保持可能であり、優れた保冷性が検証された。
以上より、従来のポリスチレン発泡シートからなる包装容器に被包装物を収納したまま電子レンジ加熱すると、被包装物が高温になり容器にも熱が伝わるため手で持つことができなくなるが、本発明の深絞り成形包装容器であれば、被包装物が高温になっても本発明発泡シートの断熱性により、そのまま手に持つことができる。合わせて、保温性もあるため、被包装物を温かいまま維持できる。しかも、保冷性に優れ、本発明の深絞り成形包装容器に収納した冷凍状態の食品を流通過程や購入後喫食するまでの過程で、被包装物の温度変化が少ないため、品質劣化を防ぐことができ、熱伝導率が低いため本発明の深絞り成形包装容器の外面を直接触れても体温を奪われ難く冷たくない。
本発明発泡シートは、熱可塑性を有し、熱成形性に優れるため、本発明のインライン成形における深絞り成形包装容器の製造が可能となる。
本発明発泡シートは、親油性を有し、適度な油分を吸着するため、本発明の深絞り成形包装容器にから揚げ等の油分をまとった食品を収納して電子レンジ加熱することにより、適量の油脂が食材に残りおいしくヘルシーに食することができる。
本発明発泡シートは、無架橋で熱可塑性樹脂成分がある為ヒートシール性、溶断に優れる。
本発明発泡シートは、他素材とのラミネート性に優れる。
気泡構造は独立気泡であり、前記のとおりセルサイズが微細であるため、本発明の深絞り成形包装容器の外面にはきれいな印刷ができ、皮意識皮膚貼布試験で準陰性判定を有し皮膚刺激性も低く、本発明発泡シートをインライン成形した深絞り成形包装容器は、美観と感触を備え、保持した際に滑りにくいという優れた特性をも有する、立派な食器として使用可能である。
更に本発明発泡シートは、低揮発性有機化合物(低VOC)・無臭であるため、環境にやさしい。従来のポリウレタレン発泡シート(厚み1.8mm)の総揮発性有機化合物量は1103ppm、ポリエレン発泡シート(厚み1.8mm)は867ppmと高いが、本発明発泡シート(厚み1.8mm)の総揮発性有機化合物量は132ppmと低いため、環境性に優れる。本値は、加熱脱離GC/MS法による有機化合物放散量測定により、90℃、30分の熱脱着により求めた。
下記表2のとおり、本発明発泡シートの厚み0.9mm及び1.8mmの物性を示す。それぞれの密度は60kg/m
3、引張強度(TD)は0.8MPa、引張強度(MD)は1.3MPaである。また、伸び(TD)は厚み0.9mmでは80%、1.8mmでは90%、伸び(MD)は双方とも60%、圧縮応力はひずみ10%は双方とも0.013MPa、ひずみ25%は厚み0.9mmでは0.020MPa、1.8mmでは0.018MPa、ひずみ50%は0.9mmでは0.033MPa、1.8mmでは0.029MPaである。前記試験は、密度はJIS K7112に準拠、引張強度・伸びはJIS K6767に準拠し、圧縮応力はINOAC法にて求めた。
前記のとおり、本発明のポリプロピレン樹脂含有発泡シートは、独立気泡の発泡ポリプロピレンであり、化学発泡剤を必要としないため成形工程で壁面や底面の厚みのバランスが取りやすく安定した深絞り成形が可能であり、電子レンジ加熱にも誘電率が低く発熱せず、耐熱性・耐寒衝撃性に優れ、セルサイズが小さく、肉薄化に優れ、熱伝導率が低く、断熱性に優れ、熱可塑性を有し、熱成形性に優れ、無架橋で熱可塑性樹脂成分がある為ヒートシール性に優れ、溶断に優れ、他素材とのラミネート性に優れ、親油性を有する、多くの機能を有する発泡シートである。
2.ラミネートするフイルム
前記のとおり、本発明のポリプロピレン樹脂含有発泡シートは、他素材とのラミネート性に優れるため、被包装物と使用者の要求する用途に合わせたフイルムをラミネートすることにより、本発明の深絞り成形包装容器の機能性を高め、被包装物のロングライフ化を図り、広く資源にやさしい循環を供することができる。一例をあげると、引張強伸度、破裂強度、引裂強度、耐衝撃性、耐ピンホール性、腰の強さ、すべり性、耐ブロッキング性、帯電防止性、ガスバリア性、防湿性、耐油性、保香性、ヒートシール性、ホットタック性、夾雑物シール性、耐圧強度、耐水性、耐寒性、耐熱性、熱水・熱風収縮率、耐候性、透明性、遮光性、開封性、イージーピールオープン性等、ラミネートするそれぞれのフイルムの特性を選択的に重畳的に付与することができる。
ラミネートするフイルムとしては、特に限定されるものでなく、フィラー含有ポリプロピレン(PPF)、塩化ビニリデン(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PCDC)、ポリアクリロニトル(PAN)、ポリメチルペンテン(PMP(TPX))、アクロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の単層フイルム、及び、これらを積層した多層フイルムを採用できる。
本発明発泡シートにラミネートする単層フイルムとしては、ポリエチレンを、好ましくはフィラー含有ポリプロピレンを採用できる。また、積層フイルムであれば、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリプロピレンを、好ましくはフィラー含有ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、フィラー含有ポリプロピレンを採用できる。
フィラーとは、樹脂の性質改善や機能を付加する目的で添加・混合する100μmから10nm程度のミクロ・ナノサイズの様々な形状を有する充填剤である。その性質により、機能は異なり、剛性を強化する、各種ファイバー、タルク、マイカ等や、ガスバリア性を付加する、合成マイカ系、クレー・合成マイカのナノフィラーグラスファイバー等があり、他の多くの高分子化合物を本発明の作用効果が阻害されない程度に、ロール、ニーダー、押し出し機等で樹脂に混練する。
それぞれの素材からなるフイルムの性質は以下のとおりであるが、その厚みによりその特性も異なる。例えば、ポリプロピレンの厚みにより、充分な防湿性と、壁面や底面の厚みのバランスを取りやすい深絞り成形性を有する、好ましい深絞り成形包装容器を得ることができる。
ポリエチレンは比較的安価な材料であり、耐水性、耐衝撃強度にすぐれ、ヒートシール性に優れる等加工も容易であり、特に密度が0.925〜0.940の中密度、0.940〜0.965の高密度ポリエチレンは、密度が0.90〜0.925の低密度ポリエチレンに比してヒートシールにより高温を必要とするが、腰の強さ、耐熱性、耐衝撃性、耐寒性、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性に優れている。
ポリプロピレン中、二軸延伸ポリプロピレンは無延伸ポリプロピレンの厚手フイルムから、縦横の二軸に延伸し、引っ張った状態で熱をかけて固定したものであり、延伸したものは無延伸のものに比べて伸びにくく、腰があり、引張強度、防湿性、透明性等多くの性能に優れる。
エチレンビニルアルコール共重合体は、ポリビニルアルコールにエチレンを共重合してフイルムにしたもので、乾燥状態におけるガス遮断性にたいへん優れており、酸化・変色防止、ガス充填、保香効果に優れる。
バリア性を有するフイルムをラミネートすることにより、酸素バリア性が優れるのみならず、被包装物を不活性ガス中に保持し、空気中の酸素による好ましくない変化を阻止する、ガス充填可能な深絞り成形包装容器とすることができる。優れたガスバリア性を付加するためには、エチレンビニルアルコール共重合体を積層した多層フイルムを採用することができる。これにより空気中の酸素と油脂、ビタミン、色素、香気成分等との結合による変質、カビや害虫の生命維持による増殖による弊害等を遮断して、味覚、栄養価、色調、香り等のおいしさ、食品衛生も保持できる。
不活性ガスの中で、炭酸ガスは無色・弱い刺激臭・わずかな酸味と静菌作用を、窒素ガスは無味・無臭・酸化防止作用を有する。また、発色作用を必要とするばあいは、活性ガスである酸素ガスも採用できる。
具体的には、被包装物がチーズのカビ、酸化防止には、炭酸ガスや、炭酸ガスと窒素ガスを混合したガスを、ハム類の変色、腐敗防止には、窒素ガスと炭酸ガスを混合したガス、ウインナーのカビ、腐敗防止には、炭酸ガスや、炭酸ガスと窒素ガスを混合したガスを充填することが好ましい。
シーラント性を有するフイルム中、イージーピール性を有するものを採用することができる。これにより、蓋フイルムと被包装物を収納する容器部とのシール性を必要な限度に適宜調整することができる。ヒートシール性を付加するためにはイージーピールシーラントを、積層した多層フイルムを採用することができる。
本発明のポリプロピレン樹脂含有発泡シートにフイルムをラミネートしたシートの1実施例を図6に表す。以上のとおり、種々のフイルムの選択及びそれらの組合せにより、本発明の深絞り成形包装容器に機能性を付加することが可能となる。
3.ラミネート方法
ラミネートの方法は特に制限はないが、接着剤を用いたラミネーション法、又は、熱を使用したラミネーション法等公知の方法を採用することができる。
接着剤を用いたラミネーション法は、接着剤を有機溶剤で適当な粘度に希釈してフイルムに塗布して、ラミネートする対象物と圧着して貼り合わせる方法であり、接着剤は各層間を接着できるものであれば特に限定されるものではなく、ポリウレタン系、ポリエステル系、エーテル系が用いられ、耐熱性、耐薬品性、深絞り適性等、使用する接着剤の特性でラミネートフイルムの性能も決まる。接着剤を用いたラミネーション法は、熱を使用したラミネーション法に比べてラミネートしたシートに腰及び剛性を付与できる。
また、熱を使用したラミネーション法は、フイルムに熱をかけて貼り合わせる手法であり、接着剤を使用しない分、材料費は安く済む。
4.蓋フイルム
一般的に、包装容器の蓋に要求される特性は、剛性、酸素バリア性、防湿性、シール性、突き刺し耐久性等があるが、それらの要求に合わせて、蓋フイルムの材質を選択し、必要に応じて組み合わせ、採用する。一例として、ポリエチレンは耐水性・耐衝撃性・ヒートシール性、ポリアミドは剛性、エチレンビニルアルコール共重合体は酸素バリア性、エチレン・酢酸ビニル共重合体は防湿性、ポリプロピレンはシール性、エチレン・酢酸ビニル共重合体はヒートシール性・突き刺し耐久性等を供する。
本発明の深絞り成形包装容器の蓋フイルムには、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を採用することができる。
これにより、本発明の深絞り成形包装容器に収納した被包装物が、外的要因である圧力、酸素、湿度、摩擦等を排除し、剛性、酸素バリア性、防湿性、ヒートシール性、突き刺し耐久性の向上を付与することができる。
5.インライン成形による深絞り成形包装容器
本発明のインライン成形による包深絞り成形装容器の製造を図面に従い詳細に説明する。図7は本発明のインライン成形による深絞り成形包装容器の製造方法の第1実施形態を示す斜視図、図8は本発明のインライン成形による深絞り成形包装容器の成形及び離型方法の工程を示す断面図、図9は本発明のインライン成形による深絞り成形包装容器の成形及び離型方法の第1工程を示す断面図、図10は本発明のインライン成形による深絞り成形包装容器の成形及び離型方法の第2工程を示す断面図、図11は、本発明のインライン成形による深絞り成形包装容器の成形及び離型方法の第3工程を示す断面図、図12は本発明のインライン成形による深絞り成形包装容器の成形及び離型方法の第4工程を示す断面図である。
図7のとおり、深絞り包装機101を使用したインライン成形による深絞り成形包装容器は、所定のフイルムを使用した底フイルム102を、成形金型104を使用して収納凹部を真空成形して、底容器を形成し、前記容器内の開口部105から底トレイ容器本体111に被包装物106を充填してから蓋フイルム107を上から被せてシール金型108で熱シールして密封し、カッティング部109で個々にカットすることにより製造する。
まず第1の工程では、図9に示すように、底容器の底フイルム115を上部金型117側にセットした状態で、下部金型116が上昇を開始する。
次に、第2の工程では、図10に示すように、下部金型116が上昇して、上部金型117と当接し、上部金型117及び下部金型116内に、下部金型116の排気連通管116aから圧縮空気を供給し、上部金型117の排気連通管117aから排気を行なうことで、底フイルム115は、加熱板118に押し付け加熱されて軟化状態となる。
第3の工程では、図11に示すように、底フイルムが加熱板118により十分に加熱された後、上部金型117の排気連通管117aから圧縮空気を上部金型117内に供給し、軟化した底フイルムを下部金型116に押し付け成形し、下部金型116の排気連通管116aからは排気又は真空引きを行なう。下部金型116内には冷却水が通水しており、成形された底フイルム115aはただちに冷却されて固形化さる。
第4の工程では、図12に示すように、成形終了後、下部金型116が下降を開始し、下部金型116が上部金型117から完全に離隔されることにより、インラインによる包装容器の成形及び離型はおこなわれる。
その後、インライン成形による深絞り成形包装容器に食材等の被包装物106が充填され、蓋フイルム107が貼り付けされて深絞り成形包装容器が完成する。
インライン成形温度は特に限定されるものではなく、成形するのに十分なだけ樹脂が軟化する温度であればよいが、使用するシートによってその好適な温度範囲は異なる。
本発明の深絞り成形発泡容器効果は、その絞り比(S)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに1.2以上の場合でも発揮される。絞り比(S)とは、S=(容器の深さ)/(容器の開口部に内接する最大径の円の直径)で表し、容器の最深部の深さの値を、フイルムあるいはシートの平面に形成された開口部の形状に接する最も大きい内接円の直径で割ることにより求められる。
6.本発明の深絞り成形包装容器
以下、本発明の深絞り成形包装容器の優位性を、比較例との差異を検証するための実証実験をした。具体的には、比較例は従来品であるポリスチレン発泡シートを成形して得た深絞り成形包装容器、実施例1はポリプロピレン樹脂含有発泡シートをインライン成形した深絞り成形包装容器であり、実施例2はポリプロピレン樹脂含有発泡シートにフィラー含有ポリプロピレンを被包装物を収納する面にラミネートした深絞り成形包装容器であり、それぞれのサイズは150mm×110mm×高さ30mmとした。
図に従って説明すると、図1は本発明の深絞り成形包装容器の実施例1の断面図、図3は本発明の深絞り成形包装容器の実施例2の断面図、図2、図4、図5は本発明の深絞り成形包装容器の1実施例を示す断面図である。
6−1.耐熱性
耐熱性を検証するため、下記表3のとおり、被包装物を収納した包装容器を電子レンジ加熱して検証評価した。具体的には、被包装物として市販のから揚げ(コンビニエンスストアで揚げたから揚げ)1個を収納した、比較例、実施例1、実施例2を、500Wの電子レンジで1分間、1.5分間、2分間、3分間加熱をした後のそれぞれの包装容器の変化を観察した。評価は、○:変化なし、△:溶解しはじめた、×:穴が開いた、ことを表す。
図に従って説明すると、比較例の図13は1分間加熱後、図14は2分間加熱後、図15は3分間加熱後を表す。1分間加熱後にはすでに深絞り成形包装容器の表面が溶解しはじめ、1.5分間加熱後は同表面に穴が開き、2分間加熱後は同表面に置いたから揚げが接した面積と同等の穴が開き、穴の立ち上がりが斜めに茶褐色に焦げ溶け、3分間加熱後は同表面に置いたから揚げが接した面積と同等の穴が開き、穴の立ち上がりが垂直に近い角度で焦げ溶けた。
一方、実施例1の図16は2分間加熱後、図17は3分間加熱後を表す。2分間加熱後は深絞り成形包装容器の表面が少しくぼんだもののほぼ変化はなく、3分加熱後にようやく表面が溶解し始めた。実施例1は、から揚げから出た油脂が深絞り成形包装容器の表面にたまっていないが、これは、から揚げに接した面はポリプロピレン樹脂含有発泡シートそのものであり、その優れた親油性が検証されたといえる。
実施例2の図18は1分間加熱後、図19は1.5分間加熱後、図20は2分間加熱後、図21は3分間加熱後を表す。1分間加熱後、1.5分加熱後共に深絞り成形包装容器の表面には変化はなく、2分加熱後に多少のゆがみが生じたが表面に穴はなく、3分加熱後にゆがみが生じ表面が部分的に薄くなり溶解が始まったものの穴は開かなかった。
以上より、1.5分間加熱後は同表面に穴が開いた比較例(従来品であるポリスチレン発泡シートを成形して得た深絞り成形包装容器)に比して、実施例1、実施例2共に2分間加熱後でも同表面の変化はなく、本発明の深絞り成形包装容器の耐熱性は、従来の包装容器に比して優れていることが検証された。
6−2.耐寒衝撃性
耐寒衝撃性を検証するため、下記表4のとおり、本発明の深絞り成形包装容器に水を入れ凍結させた後、コンクリート面上に落下させる包装容器の割れ度合いを検討評価した。具体的には、実施例2(0.9mm及び1.8mm)に水200gを入れ、冷凍庫で凍結させた後、コンクリート面上に50cmの高さから、それぞれ10回、9回落下させた。評価は、割れない:○、割れた:×で表す。結果、実施例2のシートの厚み0.9mm、1.8mmのどちらにおいても、すべての落下回数において割れが生じなかった。以上より、本発明の包装容器は、耐寒衝撃性が高いことが検証された。
7.被包装物
被包装物としては、特に限定されるものでなく、食品、おしぼり、等、あらゆるものを収納・包装でき、例えば、冷凍品、冷蔵品、常温品、弁当、丼物、ご飯、和・洋・中華の惣菜、焼き魚、煮魚、ハム、ソーセージ、から揚げ、焼売、餃子、カレー、シチュー、スープ、煮こごり状の汁物、ソースのたっぷりかかっている食品、ディップ、ソース、バーニャカウダソース、チーズソース、チョコレートソース、チーズ、チョコレート等がある。