JP2017181388A - ガラス基板の熱収縮率測定方法及び熱収縮率測定装置、並びにガラス基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
C(熱収縮率)=(L0−L)/L0
ここで、L0:熱収縮前のガラス板の長さ
L:熱収縮後のガラス板の長さ
前記ガラス基板から熱収縮率を測定する測定用基板を所定の枚数(n枚)切り出す測定用基板の切り出し工程;
前記測定用基板を固定する固定機構に設置して、前記測定用基板の主表面上の2ヶ所にビッカース圧痕(圧痕A、圧痕B)を付けるビッカース圧痕付与工程;及び
前記測定用基板上の前記圧痕Aおよび前記圧痕Bのそれぞれに定められる測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の距離Xを、熱処理前(距離X0)、および熱処理後(距離X1)で測定する測長工程、を備え、
前記ビッカース圧痕付与工程において、前記n枚の測定用基板上の各々に前記圧痕Aと圧痕Bの圧痕距離が同一となるようにビッカース圧痕を入れて、
前記測長工程において、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大し、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定し、該輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、熱処理前と熱処理後に、前記測定点A及び測定点Bの座標位置(x,y)を算出し、当該算出に基づいて前記熱処理前の距離X0、および前記熱処理後の距離X1を計算により測定して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求めることを特徴とする、ガラス基板の熱収縮率測定方法。
前記ビッカース圧痕付与プロセスにおいて、前記n枚の測定用基板上の各々に、前記圧痕Aと圧痕Bの圧痕距離が同一となるようにビッカース圧痕を入れて、
前記測長プロセスにおいて、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大し、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定し、該輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、前記測定点の位置(座標位置x,y)を算出し、当該算出に基づいて前記熱処理前の距離X0および前記熱処理後の距離X1を計算により測定して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求めることを特徴とする、ガラス基板の製造方法。
前記ガラス基板から同一の大きさで(縦の長さ×横の長さ)所定の枚数(n枚)切り出された熱収縮率測定のための測定用基板を一枚又は複数枚固定する固定機構を備え、前記測定用基板の主表面上の2ヶ所にビッカース圧痕(圧痕A、圧痕B)を付けるビッカース圧痕付与手段;及び
前記測定用基板上の前記圧痕Aと前記圧痕Bのそれぞれに定められる測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の距離Xを、熱処理前(距離X0)、および熱処理後(距離X1)で測定する測長する測長手段、を備え、
前記ビッカース圧痕付与手段は、前記n枚の測定用基板上の各々に、前記圧痕Aと圧痕Bの圧痕距離が同一となるようにビッカース圧痕を入れて、
前記測長手段は、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大して、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定する圧痕輪郭決定手段;前記輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、前記測定点の位置(座標位置x,y)を算出する測定点位置算出手段;および、前記測定点算出手段で算出された前記測定点(測定点A、測定点B)の位置に基づいて前記熱処理前の距離X0および前記熱処理後の距離X1を計算して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求める熱収縮率計算手段、を有する、ことを特徴とするガラス基板の熱収縮率測定装置。
また、上述の本発明に係るガラス基板の熱収縮率測定方法を適用したガラス基板の製造方法によれば、寸法精度の高いガラス基板を製造することができる。
以下、本発明にかかるガラス基板の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態において製造されるガラス基板は、特に制限されないが、例えば縦寸法及び横寸法のそれぞれが、500mm〜3500mm、1500mm〜3500mm、1800〜3500mm、2000mm〜3500mmなどが挙げられ、2000mm〜3500mmであることが好ましい。
ガラス基板の厚さは、例えば、0.1〜1.1mmが挙げられ、より好ましくは0.75mm以下の極めて薄い矩形形状の板で、例えば、0.55mm以下、さらには0.45mm以下の厚さがより好ましい。ガラス基板の厚さの下限値としては、0.15mm以上が好ましく、0.25mm以上がより好ましい。
まず、溶融されたガラスが、例えばフュージョン法あるいはフロート法等の公知の方法により、所定の厚さの帯状ガラスであるシートガラスが成形される(ステップS1)。
次に、成形されたシートガラスが所定の長さの素板であるガラス基板に採板される(ステップS2)。採板により得られたガラス基板は、搬送機構により、ピンチングなどで保持されつつ、熱処理工程に誘導され搬送される(ステップS3)。次に、この搬送されたガラス基板に対し熱処理を行なう(ステップS4)。
本実施形態で製造されるガラス基板として、以下のガラス組成のガラス基板が例示される。つまり、以下のガラス組成のガラス基板が製造されるように、熔融ガラスの原料が調合される。
SiO2 55〜80モル%、
Al2O3 8〜20モル%、
B2O3 0〜12モル%、
RO 0〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
ROのうち、MgOが0〜10モル%、CaOが0〜15モル%、SrOが0〜10%、BaOが0〜10%であることが好ましい。
また、SiO2、Al2O3、B2O3、及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO2)+Al2O3)/((2×B2O3)+RO)は4.5以上であるガラスであってもよい。また、MgO、CaO、SrO、及びBaOの少なくともいずれか含み、モル比(BaO+SrO)/ROは0.1以上であることが好ましい。
また、上記ガラス組成のガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有率は、0モル%以上0.4モル%以下であってもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5モル%含み、As2O3、Sb2O3及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
<ガラス組成>
さらに、本実施形態が適用するガラス組成の例として、次が挙げられる(質量%表示)。
SiO2:50〜70%(好ましくは、57〜64%)、Al2O3:5〜25%(好ましくは、12〜18%)、B2O3:0〜15%(好ましくは、6〜13%)を含み、さらに、次に示す組成を任意に含んでもよい。任意で含む成分として、MgO:0〜10%(好ましくは、0.5〜4%)、CaO:0〜20%(好ましくは、3〜7%)、SrO:0〜20%(好ましくは、0.5〜8%、より好ましくは3〜7%)、BaO:0〜10%(好ましくは、0〜3%、より好ましくは0〜1%)、ZrO2:0〜10%(好ましくは、0〜4%,より好ましくは0〜1%)が挙げられる。さらに、R’2O:0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
或いは、SiO2:50〜70%(好ましくは、55〜65%)、B2O3:0〜10%(好ましくは、0〜5%、1.3〜5%)、Al2O3:10〜25%(好ましくは、16〜22%)、MgO:0〜10%(好ましくは、0.5〜4%)、CaO:0〜20%(好ましくは、2〜10%、2〜6%)、SrO:0〜20%(好ましくは、0〜4%、0.4〜3%)、BaO:0〜15%(好ましくは、4〜11%)、RO:5〜20%(好ましくは、8〜20%、14〜19%),を含有することが好ましい(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種である)。さらに、R’2Oが0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
<ヤング率>
本実施形態が適用されるガラス板のヤング率として、例えば、72(Gpa)以上が好ましく、75(Gpa)以上がより好ましく、77(Gpa)以上がより更に好ましい。
<歪点>
本実施形態が適用されるガラス基板の歪率として、例えば、650℃以上が好ましく、680℃以上がより好ましく、700℃以上、720℃以上が更により好ましい。
(2−1)熱収縮率の算出
ガラス基板の熱収縮率は、次式のとおり、熱収縮前後のガラス板の寸法で定義される。
C(熱収縮率)=(L−L0)/L
L:熱処理前のマーキング間隔、L0:熱処理後のマーキング間隔
すなわち、熱処理前の測定用基板上のビッカース圧痕の圧痕A−Bの距離X0(mm)、および熱処理後の測定用基板上のビッカース圧痕A−Bの距離Xの収縮量の合計:Δa(μm)+Δb(μm)(ΔaおよびΔbは縮む方向を正とする)であるX0(mm)−X1(mm)を算出して、熱収縮率を求める。
熱収縮率(ppm)={〔Δa(μm)+Δb(μm)〕/X0(mm)}×1000
={〔X0(mm)−X1(mm)〕/X0(mm)}×1000
本実施形態の熱収縮率測定方法(熱収縮率測定工程)は、前記ガラス基板から熱収縮率を測定するための測定用基板を同一の大きさで(縦の長さ×横の長さ)所定の枚数(n枚)切り出す測定用基板の切り出しプロセス;前記測定用基板を固定するための固定機構に設置し、前記測定用基板の主表面上の2ヶ所にビッカース圧痕(圧痕A、圧痕B)を付けるビッカース圧痕付与プロセス;および、前記測定用基板上の前記圧痕Aと前記圧痕Bのそれぞれに定められる測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の距離Xを、熱処理前(距離X0)、および熱処理後(距離X1)で測定する測長プロセス、を含み、
前記ビッカース圧痕付与プロセスでは、前記n枚の測定用基板上の各々に、前記圧痕Aと圧痕Bの圧痕距離が同一となるようにビッカース圧痕を入れて、
前記測長プロセスにおいて、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大して、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定し、該輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、熱処理前と熱処理後に、前記測定点A及び測定点Bの座標位置(x,y)を算出し、当該算出に基づいて前記熱処理前の距離X0、および前記熱処理後の距離X1を計算により測定して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求めることを特徴とする。
このような本実施形態の圧痕Aと圧痕Bの距離を測長プロセスは、次のステップを含む:
i)圧痕Aおよび圧痕Bそれぞれを拡大し、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて十字形の輪郭を決定するステップ;
ii)十字形の輪郭の線位置を基準にして、十字形の輪郭内に測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)を決定し、測定点の位置(座標位置x,y)を算出するステップ;および
iii)測定点の位置算出結果に基づいて、熱処理前の距離X0、熱処理後の距離X1を計算により測定して、n枚の測定用基板について熱収縮率を求めるステップ。
本発明のガラス基板の熱収縮率測定においては、サンプル数(枚)=nの測定用基板について、熱処理前と後に、測定用基板1枚につき、圧痕A―圧痕Bの測定点間の距離X0および距離X1の測定による熱収縮率の算出操作を、所定の回数、繰り返す。
また、通常の熱収縮率を求めるプロセスにおいても、サンプル数(枚)=nの測定用基板について、1枚につき圧痕A及びBの測定点A−B間の距離X0と距離X1の測定による熱収縮率の算出操作が、所定の回数、繰り返される。従来のように、測定点を定める際、あらかじめ測定ポイント(測定点)を所定の位置に特定しておいて、測長のための基準線を人の手作業により測定ポイント(測定点)に合わせて測定点A−B間の距離Xを測長すると、熱収縮率の測定算出結果に偏りやバラツキが生じ、誤差の原因となる。しかし、測定のバラツキ、誤差をなくすには限界があった。
本発明の熱収収縮率測定方法の測長プロセスでは、上述のようにビッカースの圧痕A、圧痕Bを拡大して得られる十字形の画像を、上述のとおり、画像処理により、常に一定の十字形の輪郭が得られる。この十字形の輪郭線を基準にして、十字の輪郭内に測定点を計算に基づいて設定することができる。
さらに、一定に決定される十字形の輪郭線を基準にして、測定点Aおよび測定点Bの位置を計算により定め、測定点A及び測定点Bの座標位置(x,y)を算出する。
(1)圧痕Aおよび圧痕Bそれぞれを拡大して、上述のとおり、画像処理により得られる一定の十字形の輪郭線を基準にして、輪郭線の位置から計算で測定点を定めることができる(図3(a))。
(2)圧痕Aおよび圧痕Bそれぞれを拡大して、画像処理により決定された十字形の輪郭内に、該輪郭の線位置を基準にして、縦の測長基準線(測長基準線1)、および横の測長基準線(測長基準線2)を所定の位置に設定する(図3(b))。測長基準線1と測長基準線2が交わる交点を測定点とする(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)。
(3)圧痕Aおよび圧痕Bそれぞれを拡大して、画像処理により決定された十字形の縦の帯幅を2等分して前記測長基準線1とし、十字形の横の帯幅を2等分して前記測長基準線2として定める。この方法だと、測定点(測定点A、測定点B)は十字形の輪郭内のほぼ中心に設定される(図3(c))。
このようにして定められた測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の座標位置(座標位置x,y)を計算で算出することができる。
上述のようにして得られた測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の座標位置(座標位置x,y)の算出に基づいて、熱処理前の測定点A−B間の距離X0、および熱処理後の測定点A−B間の距離X1を計算することができる。
n枚の測定用基板について、1枚につき所定の回数、上述の測長プロセスを行うことで、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求めることができる。
このように、n枚の測定用基板をすべて同一の大きさとして、n枚の測定用基板上に付けるビッカースの圧痕Aおよび圧痕Bの圧痕距離が同一の距離となるようにビッカース圧痕を付けることで、測定用基板(サンプル数n)間の熱収縮率の値のバラツキが縮小され、熱収縮率の精度向上が可能となる。
本実施形態の熱収縮率測定装置は、溶融ガラスをシート状に成形して得られるガラス基板の熱収縮率を測定するガラス基板の熱収縮率測定装置であって:
前記ガラス基板から同一の大きさで(縦の長さ×横の長さ)所定の枚数(n枚)切り出された熱収縮率測定のための測定用基板を一枚又は複数枚固定する固定機構を備え、前記測定用基板の主表面上の2ヶ所にビッカース圧痕(圧痕A、圧痕B)を付けるビッカース圧痕付与手段;及び
前記測定用基板上の前記圧痕Aと前記圧痕Bのそれぞれに定められる測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の距離Xを、熱処理前(距離X0)、および熱処理後(距離X1)で測定する測長する測長手段、を備え、
前記ビッカース圧痕付与手段は、前記n枚の測定用基板上の各々に、前記圧痕Aと圧痕Bの圧痕距離が同一となるようにビッカース圧痕を入れて、
前記測長手段は、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大して、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定する圧痕輪郭決定手段;前記輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、前記測定点の位置(座標位置x,y)を算出する測定点位置算出手段;および、前記測定点算出手段で算出された前記測定点(測定点A、測定点B)の位置に基づいて前記熱処理前の距離X0および前記熱処理後の距離X1を計算して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求める熱収縮率計算手段、を有する、ことを特徴とする。
このような固定機構によれば、測定用基板にビッカース圧痕を付ける間、測定用基板が一切動くことなく、複数枚の測定用基板上に、所定の位置、且つ所定の間隔(圧痕距離)で、圧痕Aおよび圧痕Bを付けることができる。n枚の測定用基板における圧痕A−圧痕Bの圧痕距離が同一となるように圧痕を付与することで、測定用基板(サンプル数n)間の熱収縮率の値のバラツキが縮小され、熱収縮率の値の精度向上が可能となる。
前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大して、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定する圧痕輪郭決定手段;
前記輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、前記測定点の位置(座標位置x,y)を算出する測定点位置算出手段;および、
前記測定点算出手段で算出された前記測定点(測定点A、測定点B)の位置に基づいて前記熱処理前の距離X0および前記熱処理後の距離X1を計算して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求める熱収縮率計算手段。
また、輪郭決定部は、さらに、画像処理の機能で輪郭線の条件を設定することが、より好ましい。例えば、圧痕Aおよび圧痕Bそれぞれを拡大して得られた十字形の画像について、白色の十字形とその背景色との色に基づいて、十字形の輪郭付近の色を分解して輪郭線を特定する条件を設定することで、十字形の輪郭を常に一定に決定することができる。
このように、圧痕Aおよび圧痕Bそれぞれの十字形の画像を得て、十字形の輪郭が、画像処理などの条件に基づいて一定に決定されることで、所定の回数、繰り返される熱収縮率の算出操作の課程において、常に、圧痕Aおよび圧痕Bの十字形の輪郭を一定に決めることができる。さらに、一定に決定される十字形の輪郭線を基準にして、測定点Aおよび測定点Bの位置を計算により定めることで、人の手作業による操作を介さずに、測定点Aおよび測定点Bを決定し、測定点A−B間の距離Xを正確に測長することが出来る。この結果、熱収縮率の測定算出において、値の偏りやバラツキ、誤差は著しく抑制される。
例えば、測定点設定部により、輪郭線の位置が数値表示され、設定する測定点の位置を、輪郭線の位置から数値で特定することができる(図3(a))。
あるいは、測定点設定部により、上述の手段で決定された十字形の輪郭内に、該輪郭の線位置を基準にして、縦の測長基準線(測長基準線1)、および横の測長基準線(測長基準線2)を所定の位置に設定することができる(図3(b))。このとき、設定する測長基準線の位置を、輪郭線の位置から数値表示で特定できるようにする。そして、測長基準線1と測長基準線2が交わる交点を測定点とする(測定点A、測定点B)。
あるいは、測定点設定部により、上述の手段で決定された十字形について、十字の縦の帯幅を2等分して測長基準線1とし、十字の横の帯幅を2等分して測長基準線2として、測長基準線を計算で2本定めることができる。さらに、測長基準線1と測長基準線2の交点を測定点とする(測定点A、測定点B)。この測定点の場合、十字形の輪郭内のほぼ中心に設定される(図3(c))。
さらに、測定点位置算出手段で算出された測定点(測定点A、測定点B)の位置に基づいて前記熱処理前の距離X0および前記熱処理後の距離X1を計算して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を演算し、熱収縮率の値を表示および記憶する、熱収縮率演算手段、を有する。
測長用固定プレートにより、測長する間、測定用基板が一切動くことなく、複数枚の測定用基板を、効率よく、且つ、正確に測定点A−Bの距離を熱処理前および後で測定することができる。特に、薄板ガラスについて、微細なレベルの熱収縮率を測定する場合、熱収縮率が測定する間が長いと、室温や湿度などの環境条件の変化で、熱収縮率が変動してしまう。このような変動を補正するために、通常、補正用のガラス板を用いて、測定用ガラス基板の測定と同時、または数分以内の時間差の範囲内で、補正用のガラス板についても熱収縮率を測定し、測定結果を補正する。
本実施形態では、測長用固定プレートにより測定する時間を短縮化することができるため、たとえ測定する間に熱収縮率の変動が発生したとしても、このような変動を極めて小さく抑えることができ、熱収縮率の測定のバラツキを抑制できる。
以上説明したように、本実施形態の熱収縮率測定方法(熱収縮率測定工程)、および熱収縮率測定装置は、測定バラツキが抑制された精度の高い熱収縮率を測定することができるため、熱収縮量の小さいガラス基板の熱収縮率を測定するのに適している。
以下、熱収縮率の小さい寸法精度の高いガラス基板を製造するための熱処理(前記ステップS4)について、一例を説明する。
歪点が661℃である場合、熱処理温度は、歪点(661℃)−(60℃〜260℃)=601℃〜401℃であることが好ましい。しかし、ガラス基板の熱収縮率を小さくして、ガラス基板を高精細ディスプレイ用ガラス基板として用いるためには、上記の温度範囲に限定されない。例えば、熱処理温度は、400℃〜550℃でもよい。
加熱工程、維持工程、冷却工程における速度、時間の範囲を以下に示す。
(1)加熱工程:t1−0=10分〜60分、Tm1−室温=400℃〜600℃、昇温速度S1は、(Tm1−室温)/(t1−0)=6.7℃/分〜60℃/分。
(2)維持工程:t2−t1=60分〜150分、Tm1−Tm1=0、速度S2=(Tm1−Tm1)/(t2−t1)=0℃/分。
(3)第1冷却工程:t3−t2=60分〜120分、Tm1−Tm2=50℃〜150℃、第1降温速度S3=(Tm1−Tm2)/(t3−t2)=0.8℃/分〜2.5℃/分。
(4)第2冷却工程:t4−t3>t3−t2、Tm2−室温=350℃〜450℃、第2降温速度S4は、(Tm2−室温)/(t4−t3)>第1降温速度S3。
ここで、室温は、25℃に限定されず、例えば、0℃〜30℃である。また、熱処理温度は、500℃に限定されず、400℃〜600℃の任意の温度であり、中間温度は、400℃に限定されず、熱処理温度−(50℃〜150℃)の任意の温度である。また、昇温速度・降温速度は、ガラス基板G全体を昇温・降温する平均速度である。
また、上述のガラス基板の製造方法によれば、上述のガラス基板の熱収縮率測定方法を適用することにより、得られたガラス基板の熱収縮率を高精度で測定することができ、熱収縮率の小さい寸法精度の高いガラス基板を製造することができる。
次に、ビッカース圧痕が付与された5枚の測定用基板(熱処理前)について、圧痕A,圧痕Bの測定点A−B距離X0を算出する。
このようにして、5枚の測定用基板それぞれに決定された測定点A,Bについて、測定点A,Bの位置が算出され、引き続き、測定点A−B距離X0(熱処理前)が計算された。
さらに、所定の演算処理により、5枚の測定用基板について熱収縮率が求められ表示された。
このように、5枚の測定用基板上に同一の圧痕距離を得て、圧痕Aおよび圧痕Bそれぞれについて、一定の条件に基づいて圧痕(十字形)の輪郭画像を決定して、測長プロセスを繰り返した。人の手操作を介さずに、一定の位置に機械的に決定される十字形の輪郭線を基準にして、測定点Aおよび測定点Bの位置を計算により定めることで、測定点A−B間の距離Xを正確に算出することが出来た。熱収縮率値を算出した結果、全ての測定用ガラス基板について、熱収縮率測定値の偏りやバラツキが抑制され、バラツキ範囲は±0.5ppmとなり、精度高く熱収縮率を測定することが出来た。
101 測定点
102 側長基準線
103 サンプル固定機構
Claims (8)
- 溶融ガラスをシート状に成形して得られるガラス基板の熱収縮率を測定するガラス基板の熱収縮率測定方法であって、
前記ガラス基板から熱収縮率を測定する測定用基板を所定の枚数(n枚)切り出す測定用基板の切り出し工程;
前記測定用基板を固定する固定機構に設置して、前記測定用基板の主表面上の2ヶ所にビッカース圧痕(圧痕A、圧痕B)を付けるビッカース圧痕付与工程;及び
前記測定用基板上の前記圧痕Aおよび前記圧痕Bのそれぞれに定められる測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の距離Xを、熱処理前(距離X0)、および熱処理後(距離X1)で測定する測長工程、を備え、
前記ビッカース圧痕付与工程において、前記n枚の測定用基板上の各々に前記圧痕Aと圧痕Bの圧痕距離が同一となるようにビッカース圧痕を入れて、
前記測長工程において、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大し、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定し、該輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、熱処理前と熱処理後に、前記測定点A及び測定点Bの座標位置(x,y)を算出し、当該算出に基づいて前記熱処理前の距離X0、および前記熱処理後の距離X1を計算により測定して、前記n枚の測定用基板について熱収縮率を求めることを特徴とする、ガラス基板の熱収縮率測定方法。 - 前記測長工程において、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大し、画像処理により決定された十字形の輪郭内に、該輪郭の線位置を基準にして、縦の測長基準線(測長基準線1)および、横の測長基準線(測長基準線2)を所定の位置に設定し、前期測長基準線1と前記測長基準線2が交わる交点を前記測定点とし(測定点A、測定点B)、前記測定点の位置(座標位置x,y)を算出して、当該算出に基づいて前記熱処理前の距離X0および前記熱処理後の距離X1を計算して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求める、請求項1に記載のガラス基板の熱収縮率測定方法。
- 前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大し、前記十字形の輪郭内に設定される前記測長基準線1および前記測長基準線のそれぞれが、画像処理により決定された十字形の縦の帯幅を2等分して前記測長基準線1とし、十字形の横の帯幅を2等分して前記測長基準線2として定められ、前記測定点(測定点A、測定点B)が前記十字形の輪郭内のほぼ中心に設定される、請求項2に記載のガラス基板の熱収縮率測定方法。
- 前記測定用基板の切り出し工程において、n枚の測定用基板を全て同一の大きさ(縦の長さ×横の長さ)で切り出す、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス基板の熱収縮率測定方法。
- 前記ガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板の熱収縮率測定方法。
- 溶融ガラスをシート状に成形する成形工程と、シート状に成形して得られるガラス基板の熱収縮率を測定する熱収縮率測定工程とを含むガラス基板の製造方法であって、
前記熱収縮率測定工程は、前記ガラス基板から熱収縮率を測定するための測定用基板を同一の大きさで(縦の長さ×横の長さ)所定の枚数(n枚)切り出す測定用基板の切り出しプロセス;前記測定用基板を固定するための固定機構に設置し、前記測定用基板の主表面上の2ヶ所にビッカース圧痕(圧痕A、圧痕B)を付けるビッカース圧痕付与プロセス;及び、前記測定用基板上の前記圧痕Aと前記圧痕Bのそれぞれに定められる測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の距離Xを、熱処理前(距離X0)、および熱処理後(距離X1)で測定する測長プロセス、を含み、
前記ビッカース圧痕付与プロセスにおいて、前記n枚の測定用基板上の各々に、前記圧痕Aと圧痕Bの圧痕距離が同一となるようにビッカース圧痕を入れて、
前記測長プロセスにおいて、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大し、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定し、該輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、前記測定点の位置(座標位置x,y)を算出し、当該算出に基づいて前記熱処理前の距離X0および前記熱処理後の距離X1を計算して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求めることを特徴とする、ガラス基板の製造方法。 - 前記ガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板であることを特徴とする請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
- 溶融ガラスをシート状に成形して得られるガラス基板の熱収縮率を測定するガラス基板の熱収縮率測定装置であって、
前記ガラス基板から同一の大きさで(縦の長さ×横の長さ)所定の枚数(n枚)切り出された熱収縮率測定のための測定用基板を一枚又は複数枚固定する固定機構を備え、前記測定用基板の主表面上の2ヶ所にビッカース圧痕(圧痕A、圧痕B)を付けるビッカース圧痕付与手段;及び
前記測定用基板上の前記圧痕Aと前記圧痕Bのそれぞれに定められる測定点(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)の距離Xを、熱処理前(距離X0)、および熱処理後(距離X1)で測定する測長する測長手段、を備え、
前記ビッカース圧痕付与手段は、前記n枚の測定用基板上の各々に、前記圧痕Aと圧痕Bの圧痕距離が同一となるようにビッカース圧痕を入れて、
前記測長手段は、前記圧痕Aおよび前記圧痕Bそれぞれを拡大して、十字形の画像を得て、画像処理に基づいて前記十字形の輪郭を決定する圧痕輪郭決定手段;前記輪郭の線位置を基準にして、前記十字形の輪郭内に前記測定点を定めて(圧痕Aの測定点A、圧痕Bの測定点B)、前記測定点の位置(座標位置x,y)を算出する測定点位置算出手段;および、前記測定点算出手段で算出された前記測定点(測定点A、測定点B)の位置に基づいて前記熱処理前の距離X0および前記熱処理後の距離X1を計算して、n枚の前記測定用基板について熱収縮率を求める熱収縮率計算手段、を有する、ことを特徴とするガラス基板の熱収縮率測定装置。
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