JP2017179094A - 紙と接触する樹脂成形体部分を備えた物品 - Google Patents

紙と接触する樹脂成形体部分を備えた物品 Download PDF

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Abstract

【課題】複写機の内部部品であるガイドのように、紙と接触する樹脂成形体部分を備えた物品であって、耐衝撃性に優れ、紙と接触した場合の接触音の発生が抑制されたものを提供する。【解決手段】紙と接触する部分を備えた物品であって、紙と接触する前記部分の少なくとも表面の一部が、ゴム強化樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されており、熱可塑性樹脂組成物(X)は、ジグラー(ZIEGLER)社製スティック&スリップ測定装置SSP−02を使用して測定される異音リスク値が、以下の測定条件において3以下である物品。測定条件:縦150mm、横60mm、厚さ4mmの試験片及び縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片を用意し、後者の試験片の片面に普通紙を貼り付け、温度23℃、湿度50%RH、荷重40N、速度10mm/秒、振幅20mmで3回、前者の試験片の樹脂面と後者の試験片の普通紙面とを擦り合わせて測定。【選択図】なし

Description

本発明は、複写機の内部部品であるガイドのように、紙と接触する樹脂成形体部分を備えた物品であって、耐衝撃性に優れ、かつ、紙と接触した場合の接触音の発生が抑制された物品に関する。
紙を媒体として情報の入出力を行う複写機、プリンター、イメージスキャナ等のオフィス機器や、その周辺機器(例えば、オートフィーダ、ソータ)は、紙と接触する部分を備えることが不可避であり、当該部分と紙とが搬送中に動的に接触して騒音の原因となることはよく知られている。
昨今、上記機器のハウジング及び内部部品は樹脂成形品で製造されることが多くなっている一方で、処理能力を向上させるために上記機器の高速化が追求されており、紙と上記機器の樹脂成形品からなる部品との動的な接触による騒音を低下させ、上記機器の静粛性を向上させることが一層求められている。
従来、複写機等の画像形成装置の用紙トレイの底部や側部に発泡ウレタン等の吸音性を有する材料からなる吸音部材を貼り付けることにより、紙と給紙部材との接触音等の騒音を吸収し低減することが提案されている(特許文献1)が、部品点数が増えるという問題がある。
また、複写機の内部部品を、芳香族ポリエステル及びスチレン系樹脂からなるポリマーアロイにガラス繊維と特定粒子形状の軽質炭酸カルシウムを配合した熱可塑性樹脂組成物から成形することにより、耐熱性及び剛性が向上するだけでなく、トナー融着や紙こすれによる紙詰まりを起こさない表面平滑性及び光沢性がもたらされることが報告されているが、複写機の内部部品と紙との接触音の低減については何ら目的としていない(特許文献2)。
特開2003−89437号公報 特開2012−233043号公報
本発明の目的は、複写機の内部部品であるガイドのように、紙と接触する樹脂成形体部分を備えた物品であって、耐衝撃性に優れ、かつ、紙と接触した場合の接触音の発生が抑制されたものを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、上記物品の紙と接触する樹脂成形体部分の材質としてゴム強化樹脂を含み、特定の異音リスク値を示す熱可塑性樹脂組成物を採用することで、耐衝撃性に優れ、さらに、上記接触音の発生も抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。当該材料として特定の温度範囲の融点を有する熱可塑性樹脂組成物を使用した場合には、上記異音の発生が特に抑制できることもわかった。
かくして、本発明の一局面によれば、紙と接触する部分を備えた物品であって、
紙と接触する前記部分の少なくとも表面の一部が、ゴム強化樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されており、
前記熱可塑性樹脂組成物(X)は、ジグラー(ZIEGLER)社製スティック&スリップ測定装置SSP−02を使用して測定される異音リスク値が、以下の測定条件において3以下である物品が提供される。
測定条件:
縦150mm、横60mm、厚さ4mmの試験片、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片を用意し、後者の試験片の片面に普通紙を貼り付け、温度23℃、湿度50%RH、荷重40N、速度10mm/秒、振幅20mmで3回、前者の試験片の樹脂面と後者の試験片の普通紙面とを擦り合わせて測定。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記熱可塑性樹脂組成物(X)として、結晶性を有するもの、具体的には、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点が0〜120℃の範囲にあるものが使用される。
本発明によれば、紙と接触する部分を備えた物品において、当該部分の材質としてゴム強化樹脂を含み、上記異音リスク値が3以下を示す熱可塑性樹脂組成物を採用することとしたので、紙と当該部分に接触した場合の接触音の発生が抑制されるとともに、当該物品又は上記部分の耐衝撃性も良好に維持される。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び/又は共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点(本明細書において、「Tm」と表記することもある)は、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値である。
1.本発明の物品
本発明の物品は、紙と接触する部分を備えた物品、特に、搬送中などの移動下にある紙と接触する部分を備えた物品、すなわち、紙と動的に接触する部分を備えた物品であればよい。とりわけ、本発明の物品は、紙を媒体として情報の入出力を行う印刷機、複写機、プリンター、イメージスキャナー等のオフィス機器や、その周辺機器(例えば、オートフィーダ、ソータ)の紙と接触する部分を備えた内部部品の成形材料として好適である。本発明の物品の具体例としては、例えば、複写機、プリンター、FAX、イメージスキャナーなどの内部部品、例えば、ガイド、用紙トレイ、排紙トレイなどが挙げられる。
2.熱可塑性樹脂組成物(X)
本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)(本明細書では「成分(X)」ともいう)は、ゴム強化樹脂(A)(本明細書では「成分(A)」ともいう)を必須成分として含み、上記異音リスク値が3以下を示すものであればよい。異音リスク値は、ドイツ自動車工業会(VDA)規格準拠の仕様にて、2種類の材質で接触部材を作製した時のスティックスリップ異音発生リスクを10段階の指数で示したものであり、上記異音レベルが3以下なら合格とされている。本発明は、ゴム強化樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)が、上記異音リスク値3以下を示すものである場合、紙との接触音が良好に抑制されることを見出したことに基づくものである。
本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)は、耐衝撃性の観点から、熱可塑性樹脂組成物(X)全体を100質量%とした場合に、ゴム含量が5〜60質量%であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物(X)が結晶性を有すると、又は、結晶性を有する成分を含有すると、その成形品と紙との接触音の発生を抑制する効果がさらに優れて好ましい。具体的には、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点が0〜120℃の範囲にあることが好ましく、10〜90℃の範囲がより好ましく、20〜80℃の範囲がさらにより好ましい。尚、上記のように、融点(Tm)は、JIS K 7121−1987に準じて得られるが、0〜120℃の範囲における吸熱パターンのピークの数は、一つに限定されず、二つ以上でもよい。また、0〜120℃の範囲に見られるTm(融点)は、下記ゴム強化樹脂(A)、特にゴム質部分(a1)に由来するものであってよく、または、ゴム強化樹脂(A)に関連して下記する添加剤、例えば、数平均分子量が10,000以下といった低分子量のポリオレフィンワックス等の摺動性付与剤に由来するものであってもよい。なお、該摺動性付与剤は、ゴム強化樹脂(A)に添加されたものであっても、熱可塑性樹脂組成物(X)に直接添加されたものであってもよい。
本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)は、必要に応じてさらに他の熱可塑性樹脂を含んでもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、これらのうち、ポリカーボネート樹脂(本明細書では「成分(B)」ともいう)、ポリオレフィン樹脂(本明細書では「成分(C)」ともいう)が好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)における他の熱可塑性樹脂の含有量は、必要とする耐衝撃性、耐熱性、成形品外観又はその他の特性に応じて決められる。
ポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、上記成分(A)及び上記成分(B)の合計100質量%に対して20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。ゴム強化樹脂(A)の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量%に対して80〜20質量%であることが好ましく、70〜30質量%であることがより好ましい。この範囲であれば、耐衝撃性及び耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。
ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、上記成分(A)及び上記成分(C)の合計100質量%に対して30〜85質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。ゴム強化樹脂(A)の含有量は、成分(A)及び成分(C)の合計100質量%に対して70〜15質量%であることが好ましく、50〜20質量%であることがより好ましい。この範囲であれば、成形品外観に優れた樹脂組成物が得られる。
以下、本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)について詳述する。
2−1.ゴム強化樹脂(A)
ゴム強化樹脂(A)は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)に耐衝撃性を付与するのに好適に使用され、ゴム含量は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)全体を100質量%とした場合に、5〜60質量%であることが好ましい。また、ゴム強化樹脂(A)は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)が有する上記の紙との接触音等の異音の発生を抑制する機能をさらに優れたものとするため、結晶性を有することが好ましい。具体的には、JIS K 7121−1987に準じて測定した上記熱可塑性樹脂組成物(X)の融点が0〜120℃の範囲にあることが好ましく、10〜90℃の範囲がより好ましく、20〜80℃の範囲がさらにより好ましい。
ゴム強化樹脂(A)は、例えば、ゴム質重合体に由来するゴム質部分(a1)とビニル系単量体に由来する構成単位を含む樹脂部分(a2)とからなり、ゴム質部分(a1)は樹脂部分(a2)がグラフト重合したグラフト共重合体を形成していることが好ましい。したがって、ゴム強化樹脂(A)は、上記グラフト共重合体と、ゴム質部分(a1)にグラフト重合していない樹脂部分(a2)とから少なくとも構成されることが好ましく、さらに、樹脂部分(a2)がグラフトしていないゴム質部分(a1)、又は、添加剤等のその他の成分を含んでもよい
上記ゴム質部分(a1)は、25℃でゴム質(ゴム弾性を有する)であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。また、上記ゴム質部分(a1)は、ジエン系重合体(以下、「ジエン系ゴム」という)及び非ジエン系重合体(以下、「非ジエン系ゴム」という)のいずれから構成されてもよい。また、これらの重合体は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。このうち、本発明においては、耐衝撃性向上の点から、上記ゴム質部分(a1)の少なくとも一部がジエン系ゴムから構成されることが好ましい。また、紙との接触音等の異音の抑制効果の点から、上記ゴム質部分(a1)の少なくとも一部が非ジエン系ゴムから構成されることが好ましく、上記ゴム質部分(a1)の全部が非ジエン系ゴムから構成されることが特に好ましい。
非ジエン系ゴムとしては、エチレン・α―オレフィン系ゴム;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物に由来する構造単位を含む(共)重合体を水素添加してなる水素添加重合体(但し、水素添加率は50%以上)等が挙げられる。この水素添加重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
本発明においては、紙との接触音等の異音の抑制効果の点から、上記非ジエン系ゴムとして、エチレン・α−オレフィン系ゴムを使用することが好ましい。エチレン・α−オレフィン系ゴムは、エチレンに由来する構造単位と、α−オレフィンに由来する構造単位とを含む共重合体ゴムである。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。α−オレフィンの炭素原子数は、耐衝撃性の観点から、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、更に好ましくは3〜8である。エチレン・α−オレフィン系ゴムにおけるエチレン:α−オレフィンの質量比は、通常5〜95:95〜5、好ましくは50〜95:50〜5、より好ましくは60〜95:40〜5である。エチレン:α−オレフィンの質量比が上記範囲にあると、得られる成形品の耐衝撃性がさらに優れて、好ましい。エチレン・α−オレフィン系ゴムは、必要に応じて、非共役ジエンに由来する構造単位を含んでもよい。非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類が挙げられ、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンの、ゴム質重合体全量に対する割合は、通常0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%である。
本発明においては、エチレン・α−オレフィン系ゴムとして、融点(Tm)が0〜120℃のものを使用することが好ましい。エチレン・α−オレフィン系ゴムのTm(融点)は、より好ましくは10〜90℃、さらにより好ましくは20〜80℃である。エチレン・α−オレフィン系ゴムが融点(Tm)を有するということは、該ゴムが結晶性を有することを意味する。したがって、かかる融点(Tm)を備えるエチレン・α−オレフィン系ゴムを使用することで、上記熱可塑性樹脂組成物(X)に0〜120℃の範囲で融点を発現させ、紙との接触部分に耐衝撃性だけでなく、紙との接触音等の異音抑制効果をさらに優れたものとすることができる。ゴム強化樹脂(A)がかかる結晶性を有すると、スティックスリップ現象の発生が抑制されるため、その成形品と紙とが動的に接触した場合、紙との接触音等の異音の発生が抑制されると考えられる。尚、スティックスリップ現象は、特開2011−174029公報等に開示されている。
エチレン・α−オレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃;JIS K 6300に準拠)は、通常5〜80、好ましくは10〜65、より好ましくは10〜45である。ムーニー粘度が上記範囲にあると、成形性が優れる他、成形品の衝撃強度及び外観がさらに優れて、好ましい。
エチレン・α−オレフィン系ゴムは、紙との接触音等の異音発生の低減の観点から、非共役ジエン成分を含有しないエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましく、これらのうち、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体がさらに好ましく、エチレン・プロピレン共重合体が特に好ましい。
上記成分(A)のゴム質部分は、紙との接触音低減効果の観点から、その全部が非ジエン系ゴム、特にエチレン・α−オレフィン系ゴムから構成されることが好ましいが、上記非ジエン系ゴムに加えて、上記ジエン系ゴムから構成されても良い。上記成分(A)のゴム質部分が、非ジエン系ゴムに加えて、上記ジエン系ゴムから構成されていると、熱可塑性樹脂組成物(X)の成形性及び耐衝撃性、並びに、得られる成形品の外観がさらに十分なものとなる。
ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等のブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のイソプレン系共重合体等が挙げられる。これらは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。該ジエン系ゴム質重合体は、架橋重合体であってよいし、未架橋重合体であってもよい。
本発明において、ゴム強化樹脂(A)中のゴム質部分(a1)の含有量即ちゴム含量は、ゴム強化樹脂(A)全体100質量%に対して、好ましくは3〜80質量%、より好ましくは3〜65質量%、さらに好ましくは4〜55質量%、さらに好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは7〜45質量%である。ゴム質部分(a1)の含有量が前記範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物(X)の耐衝撃性、紙との接触音等の異音の低減効果、寸法安定性、及び成形性等がさらに優れて好ましい。
ゴム強化樹脂(A)の樹脂部分(a2)は、ビニル系単量体に由来する構造単位からなり、該ビニル系単量体は特に限定されるものではないが、芳香族ビニル化合物を含むことが好ましく、芳香族ビニル化合物と該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物とから構成されてもよい。上記芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物としては、好ましくは、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物から選ばれた少なくとも1種が使用でき、さらに必要に応じて、これらの化合物と共重合可能な他のビニル系単量体も使用することができる。かかる他のビニル系単量体としては、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられ、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記マレイミド系化合物の具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記不飽和酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物の具体例としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム強化樹脂(A)中の上記芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量の下限値は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物に由来する構造単位の合計を100質量%とした場合に、好ましくは40質量%、より好ましくは50質量%、更に好ましくは60質量%である。尚、上限値は、通常、100質量%である。
ゴム強化樹脂(A)の樹脂部分(a2)が構造単位として、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物に由来する構造単位を含む場合、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量は、両者の合計を100質量%とした場合に、通常40〜90質量%であり、好ましくは55〜85質量%であり、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量は、両者の合計を100質量%とした場合に、10〜60質量%であり、好ましくは15〜45質量%である。
ゴム強化樹脂(A)は、例えば、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造することができる。この製造方法における重合方法は、上記グラフト共重合体が得られる限り特に限定されず、公知の方法を適用することができる。重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合方法とすることができる。これらの重合方法では、公知の重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤等を適宜使用することができる。
上記製造方法では、通常、ビニル系単量体同士の(共)重合体がゴム質重合体にグラフト重合したグラフト共重合体と、ゴム質重合体にグラフト重合していないビニル系単量体同士の(共)重合体との混合生成物が得られる。場合により、上記混合生成物は、該(共)重合体がグラフト重合していないゴム質重合体を含むこともある。本発明のゴム強化樹脂(A)は、ゴム質重合体に由来するゴム質部分(a1)とビニル系単量体に由来する構成単位を有する樹脂部分(a2)とからなり、ゴム質部分(a1)は樹脂部分(a2)がグラフト重合したグラフト共重合体を形成していることが好ましいので、上記のようにして製造されたグラフト共重合体と(共)重合体との混合生成物を、ゴム強化樹脂(A)としてそのまま使用することができる。
ゴム強化樹脂(A)は、ゴム質重合体(a)の不存在下に、ビニル系単量体を重合することにより製造した(共)重合体(A´)を添加されたものであってもよい。この(共)重合体(A´)は、ゴム強化樹脂(A)に添加されると、ゴム質部分(a1)にグラフト重合していない樹脂部分(a2)を構成することになる。
上記のとおり、本発明のゴム強化樹脂(A)は、ゴム質部分が非ジエン系ゴムとジエン系ゴムの混合物であってもよい。このような複数のゴムを含有するゴム強化樹脂(A)の製造方法としては、例えば、非ジエン系ゴム質重合体及びジエン系ゴム質重合体を含有するゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造する方法の他、非ジエン系ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造したゴム強化樹脂と、ジエン系ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造したゴム強化樹脂とを混合する方法などによって得ることができる。
ゴム強化樹脂(A)のグラフト率は、通常10〜150%、好ましくは15〜120%、より好ましくは20〜100%、特に好ましくは20〜80%である。ゴム強化樹脂(A)のグラフト率が前記範囲にあると、本発明の物品の耐衝撃性がさらに良好となる。
グラフト率は、下記数式(1)により求めることができる。
グラフト率(質量%)=((S−T)/T)×100 …(1)
上記式中、Sはゴム強化樹脂(A)1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化樹脂(A)1グラムに含まれるゴム質部分(a1)の質量(g)である。このゴム質部分(a1)の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法により求めることができる。
グラフト率は、例えばゴム強化樹脂(A)を製造する際のグラフト重合で用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるゴム強化樹脂(A)のアセトンに可溶な成分(以下、「アセトン可溶分」ともいう)の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃)は、通常0.05〜0.9dl/g、好ましくは0.07〜0.8dl/g、より好ましくは0.1〜0.7dl/gである。極限粘度が前記範囲にあると、樹脂組成物の耐衝撃性、成形性がより良好となる。
極限粘度[η]の測定は下記方法で行うことができる。まず、ゴム強化樹脂(A)のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
極限粘度[η]は、例えば、ゴム強化樹脂(A)をグラフト重合する際に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度、重合時間等を適宜選択することにより調整することができる。また、ゴム強化樹脂(A)に、このアセトン可溶分の極限粘度[η]と異なる極限粘度[η]を備える(共)重合体(A´)を混合して調整することができる。
ゴム強化樹脂(A)は、摺動性付与剤及びその他の添加剤を含んでもよい。摺動性付与剤は、熱可塑性樹脂組成物(X)に摺動性を付与して本発明の物品の組み立てを容易にするだけでなく、使用時に本発明の物品から軋み音等の異音が発生するのを抑制する効果を付与することができる。摺動性付与剤の代表例としては、特開2011−137066号公報に記載されるような低分子量酸化ポリエチレン(c1)、超高分子量ポリエチレン(c2)、ポリテトラフルオロエチレン(c3)や、低分子量(例えば、数平均分子量10,000以下)ポリオレフィンワックス、シリコーンオイルなどが挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、融点が0〜120℃に存在するポリエチレンワックス等が好ましい。また、このような融点を有するポリオレフィンワックスや、融点が0〜120℃に存在するその他の添加剤をゴム強化樹脂(A)に添加した場合、ゴム強化樹脂(A)のゴム質部分が融点(Tm)を備えていなくても、軋み音等の異音の発生抑制効果を得ることができる。これらの摺動性付与剤は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの摺動性付与剤の配合量は、ゴム強化樹脂(A)100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。
また、他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、老化防止剤、充填剤、帯電防止剤、難燃性付与剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、防かび剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、顔料(たとえば、赤外線吸収、反射能力を有する、機能性を付与した顔料も含む。)等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの添加剤の配合量は、ゴム強化樹脂(A)100質量部に対して、通常0.1〜30質量部である。
上記ゴム強化樹脂(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂を含むものであってもよい。
2−2.ポリカーボネート樹脂(B)
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物(X)は、上記のとおり、ポリカーボネート樹脂(B)を含有することができる。ポリカーボネート樹脂(B)を含有する場合、耐熱性が向上するので好ましい。本発明において、ポリカーボネート樹脂(B)は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば特に限定されず、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、これらのポリカーボネート樹脂は、末端がR−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルをエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよい。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量は、好ましくは15,000〜40,000、より好ましくは17,000〜30,000、特に好ましくは18,000〜28,000である。この粘度平均分子量が高いほど、耐衝撃性が高くなる一方、流動性が十分でなく、成形加工性が不十分になる可能性がある。尚、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
2−3.ポリオレフィン樹脂
本発明の成分(C)のオレフィン系樹脂としては、例えば、炭素数2〜10のオレフィン類の少なくとも1種からなるオレフィン系樹脂が挙げられる。このオレフィン系樹脂(C)は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
オレフィン系樹脂(C)の形成に用いるオレフィン類の例としては、エチレン、及びプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルへキセン−1等のα−オレフィン、更にノルボルネン等の環状オレフィン等が挙げられる。こららは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのうち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1およびノルボルネンが好ましい。
オレフィン系樹脂(C)の形成において必要に応じて用いることのできる他の単量体としては、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オレフィン系樹脂(C)としては、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体等のプロピレン単位を主として含む重合体、ポリエチレン、エチレン−ノルボルネン共重合体が好ましく、これらは単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。尚、上記プロピレン・エチレン共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等があり、いずれも使用できる。
また、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の何れのものも使用できる。
更に、本発明で使用されるオレフィン系樹脂(C)としては、重合触媒を脱触媒したもの、または、酸無水物、カルボキシル基、エポキシ基等で変性したものを用いることもできる。
オレフィン系樹脂(C)の結晶性の有無は問わないが、室温下、X線回折による結晶化度が10%以上であるものを少なくとも1種用いることが好ましい。
また、オレフィン系樹脂(C)のJISK7212に準拠して測定した融点が40℃以上であるものを少なくとも1種用いることが好ましい。
本発明の成分(C)としてポリプロピレン系樹脂を使用する場合、JISK7210:1999(230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、ポリエチレン系樹脂を使用する場合は、JISK6922−2(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、特に好ましくは0.1〜60g/10分である。
更に、本発明の目的である軋み音低減をより有効に達成するためには、オレフィン系樹脂の中でポリエチレン系樹脂を用いることが特に好ましい。
3.本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混練機を用いて適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。更に、各々の成分を混練するに際しては、それらの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練したあと、押出機によりペレット化することもできる。溶融混練温度は、通常180〜240℃、好ましくは190〜230℃である。
4.本発明の物品の製造方法
本発明の物品は、少なくとも紙と接触する部分を熱可塑性樹脂組成物(X)の成形品で構成することにより製造することができ、全体を熱可塑性樹脂組成物(X)の成形品で構成してもよい。上記成形品は、熱可塑性樹脂組成物(X)を射出成形、プレス成形、シート押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等の公知の成形法により成形することで製造することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。実施例中、部および%は特に断らない限り質量基準である。
1.原料〔P〕
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂として、下記の合成例1で得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P1)を用いた。
1−1.合成例1(原料P1(エチレン・プロピレン(EP)ゴム強化芳香族ビニル系樹脂)の合成)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)30部、スチレン52.5部、アクリロニトリル17.5部、トルエン120部を仕込み、内温を70℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.5部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・α−オレフィン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂を得た。この樹脂に含まれるグラフト樹脂におけるグラフト率は55%、未グラフトの(共)重合体(以下、「アセトン可溶分」という。)の含有率は53.5%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.32dl/gであった。
1−2.合成例2(原料P2(エチレン・プロピレン(EP)ゴム強化芳香族ビニル系樹脂)の合成)
エチレン・プロピレン共重合体ゴムの代わりにエチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体(エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン=63/32/5(%)、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)33、融点(Tm)なし、ガラス転移温度(Tg)は−52℃)を用いた以外、合成例1と同様の方法により、エチレン・α−オレフィン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂を得た。この樹脂に含まれるグラフト樹脂におけるグラフト率は60%、未グラフトの(共)重合体(以下、「アセトン可溶分」という。)の含有率は52%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.4dl/gであった。
1−3.合成例3(原料P3(ジエン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂)の合成)
攪拌機付き重合器に、水280部および重量平均粒子径0.26μm、ゲル分率90%のポリブタジエンラテックス60部(固形分換算)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら60℃に加熱した後、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる単量体混合物を60℃で5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合温度を65℃にし、1時間撹拌続けた後、重合を終了させ、グラフト共重合体のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。その後、得られたラテックスに、2,2′−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状のジエン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂を得た。得られた樹脂のグラフト率は40%、未グラフトの(共)重合体(以下、「アセトン可溶分」という。)の含有率は16%であり、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.38dl/gであった。
2.原料〔Q〕
ゴム質重合体に由来する部分を含まない熱可塑性樹脂として、下記の原料Q1を用いた。
2−1.原料Q1(AS樹脂)
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、0.47dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体。ガラス転移温度(Tg)は、103℃であった。
3.原料〔R〕
3−1.原料R1(PC樹脂)
出光興産社製ポリカーボネート樹脂「タフロンA2200(商品名)」を使用した。粘度平均分子量(Mv)は、22,000、ガラス転移温度(Tg)は、153℃であった。
4.原料〔S〕
4−1.原料S1(ポリエチレン樹脂)
日本ポリエチレン社製高密度ポリエチレン「ノバテックHDHJ560」(商品名)を用いた。メルトフローレートは、7g/10分、融点(Tm)は135℃であった。
5.原料〔T〕
5−1.原料T1(ポリオレフィン系ワックス)
三洋化成工業株式会社製ポリエチレンワックス「サンワックス171−P(商品名)」を使用した。数平均分子量(Mn)は1500、融点(Tm)は101℃であった。
5−2.原料T2(シリコーンオイル)
信越シリコーン株式会社製シリコーンオイル「KF−54(商品名)」を使用した。25℃の動粘度は400cStであった。
実施例1〜17及び比較例1
1.熱可塑性樹脂組成物の作製
表1に示す原料〔P〕、〔Q〕、〔R〕、〔S〕及び〔T〕を同表に示す配合割合で混合した。その後、二軸押出機(型式名「TEX44、日本製鋼所」)を用いて、表1のシリンダー温度で溶融混練してペレット化した。得られた樹脂組成物を用い、下記の測定及び評価に供した。結果を下記表に示す。
2.融点(Tm)
JIS K7121−1987に従い、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度から求めた。
3.シャルピー衝撃強さ
樹脂組成物を成形して120mm×80mm×2mmの試験片を作製し、ISO179に準拠して測定した。成形は射出成形機IS100GN(商品名:東芝機械製)を用いて、表1のシリンダー温度、金型温度50℃、射出速度40mm/s、射出圧力100MPaの条件で行った。
3.軋み音評価I及びII(異音リスク値)
熱可塑性樹脂組成物を、東芝機械製の射出成形機「IS−170FA](商品名)を用いて、表1のシリンダー温度、射出圧力50MPa、金型温度60℃の条件で射出成形することにより得た、縦150mm、横100mm、厚さ4mmの成形品から、縦150mm、横60mm、厚さ4mm、及び縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片をディスクソーで切り出した。次に、番手#100のサンドペーパーで試験片の端部を面取りした後、細かなバリをカッターナイフで除去し、大小2枚の軋み音評価用試験片を得た。
上記評価用試験片のうち、縦150mm、横60mm、厚さ4mmの試験片を60±5℃に調整したオーブン槽内に100時間放置した後、25℃で24時間冷却して熱老化させた評価用試験片を得た。
上記評価用試験片のうち、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片に普通紙(コクヨ社製コピー用紙「WHITE PPC」(商品名)、坪量:64g/m2、連量:55kg、紙厚:92μm、白色度:92%(ISO方式)、ECFパルプ100%)を貼り付け、これら大小2枚の試験片をジグラー(ZIEGLER)社製スティックスリップ試験機SSP−02にセットし、温度23℃、湿度50%RH、荷重40N又は95N、速度1mm/秒又は10mm/秒の条件で、振幅20mmで3回、紙面と樹脂面を擦り合わせた時の異音リスク値を測定した(軋み音評価II)。また、熱老化を行わない以外、上記と同様の方法での異音リスク値も測定した(軋み音評価I)。なお、この試験法は、熱老化させて評価を行うため、軋み音低減効果の持続性も評価することができる。
Figure 2017179094
表1から以下のことがわかる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕を用いた実施例1〜17は、異音リスク値が低く、紙との接触音を抑制する効果が優れることが判った。
これに対し、ゴム強化樹脂を含まない比較例1及び2では、紙との接触音を抑制する効果が得られなかった。
本発明は、紙と接触する樹脂成形体部分を備えた物品に好適に応用でき、例えば、オフィス機器やその周辺機器の内部部品を製造するのに好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 紙と接触する部分を備えた物品であって、
    紙と接触する前記部分の少なくとも表面の一部が、ゴム強化樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されており、
    前記熱可塑性樹脂組成物(X)は、ジグラー(ZIEGLER)社製スティック&スリップ測定装置SSP−02を使用して測定される異音リスク値が、以下の測定条件において3以下である物品。
    測定条件:
    縦150mm、横60mm、厚さ4mmの試験片、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片を用意し、後者の試験片の片面に普通紙を貼り付け、温度23℃、湿度50%RH、荷重40N、速度10mm/秒、振幅20mmで3回、前者の試験片の樹脂面と後者の試験片の普通紙面とを擦り合わせて測定。
  2. 前記ゴム強化樹脂(A)が、
    ゴム質重合体に由来するゴム質部分(a1)と、芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位を含む樹脂部分(a2)とを含む、請求項1に記載の物品。
  3. 前記熱可塑性樹脂組成物(X)のゴム含量が5〜60質量%である、請求項1又は2に記載の物品。
  4. 前記熱可塑性樹脂組成物(X)が0〜120℃の範囲の融点(JIS K 7121−1987に準じて測定)を備える、請求項1乃至3の何れか1項に記載の物品。
  5. 前記ゴム質重合体部(A−1)が、エチレン・α―オレフィン系ゴム質重合体に由来する、請求項2乃至4の何れか1項に記載の物品。
  6. 前記熱可塑性樹脂組成物(X)が、摺動性付与剤を含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載の物品。
  7. 前記摺動性付与剤が、低分子量ポリオレフィンワックス及びシリコーンオイルからなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項6に記載の物品。
  8. 複写機内部部品である、請求項1乃至7の何れか1項に記載の物品。
  9. 前記複写機内部部品は、複写機の内部に配置されるガイドである、請求項8に記載の物品。
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