JP2017170364A - アルキレンオキシド製造用触媒、その製造方法、およびアルキレンオキシドの製造方法 - Google Patents

アルキレンオキシド製造用触媒、その製造方法、およびアルキレンオキシドの製造方法 Download PDF

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Nozomi Obayashi
希 大林
博之 廣田
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博之 廣田
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Abstract

【課題】高性能(高い選択率、および低い反応温度)で触媒寿命に優れたレニウム含有アルキレンオキシド製造用触媒を提供する。【解決手段】銀、セシウム、リチウム、レニウム、およびタングステン等のレニウム共促進剤を含む触媒成分が、所定の構造のα−アルミナ担体に担持されてなり、かつセシウム含有量が所定の範囲内であるアルキレンオキシド製造用触媒である。【選択図】なし

Description

本開示は、アルキレンオキシド製造用触媒、その製造方法、およびアルキレンオキシドの製造方法に関する。
分子状酸素含有ガスにより銀触媒の存在下でエチレンを接触気相酸化してエチレンオキシドを製造する方法は、工業的に広く用いられている。この接触気相酸化に用いる銀触媒については、その担体、担持方法、反応促進剤の種類やその添加量などに関し、複数の技術が提案されている。
かようなエチレンオキシド製造用触媒として、銀を主成分とし、レニウムをさらに含む触媒が知られている。例えば、特許文献1には所定の担体に、銀(Ag)、セシウム(Cs)、レニウム(Re)およびタングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含む触媒成分を担持してなる、エチレンオキシド製造用触媒に係る発明が開示されている。また、特許文献2には、オレフィンのエポキシ化のための触媒であって、担体ならびに、担体上に付着させられた、銀、レニウム促進剤、イオウ等の第1の共促進剤、およびタングステン等の第2の共促進剤を含み、第2の共促進剤に対する第1の共促進剤のモル比は1より大きい触媒、に係る発明が開示されている。
国際公開第2010/113963号パンフレット 特開2014−159028号公報
アルキレンオキシド製造用触媒がレニウムを含むことにより選択性の向上が期待できる一方、レニウムを含む触媒は触媒活性が十分でない(高い反応温度を要求する)場合があり、さらには短寿命であるという問題がある。触媒性能が低かったり、触媒性能の劣化が速かったりすると、装置の運転上限温度による制約で製造継続ができなくなり、また触媒を頻繁に交換する必要が生じるため工業生産上好ましくない。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高性能(高い選択率、および低い反応温度)で触媒寿命に優れたレニウム含有アルキレンオキシド製造用触媒を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、銀、セシウム、リチウム、レニウム、ならびにタングステン、モリブデン、バナジウムおよびクロムから選択される少なくとも一種の元素を含む触媒成分が、所定の構造のα−アルミナ担体に担持されてなり、かつセシウム含有量が所定の範囲内であるアルキレンオキシド製造用触媒によって上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば、高性能(高い選択率、および低い反応温度)で触媒寿命に優れたレニウム含有アルキレンオキシド製造用触媒を提供することができる。
本発明の一側面は、α−アルミナを主成分として含む担体と、前記担体に担持されてなる触媒成分と、を含む、アルキレンオキシド製造用触媒であって、前記触媒成分は、銀、セシウム、リチウム、レニウム、ならびにタングステン、モリブデン、バナジウムおよびクロムから選択される少なくとも一種の元素を含み、前記触媒中のセシウム含有量が1000質量ppm以上3000質量ppm以下であり、前記担体のBET比表面積が0.5m/g担体以上1.3m/g担体以下であり、ならびに前記担体における細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合が、全細孔容積の10%以上50%以下である、アルキレンオキシド製造用触媒(以下、単に「本発明に係る触媒」とも称する。)に関する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(25℃)で行う。
<担体>
担体は、α−アルミナ(α−Al)を主成分とし、BET比表面積が0.5m/g担体以上1.3m/g担体以下であり、且つ、細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合が全細孔容積の10%以上50%以下であるものを用いる。担体のBET比表面積や、細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合が上記範囲外であると、高い触媒性能と触媒寿命とを両立させることが困難となる。
本明細書において、担体が「α−アルミナを主成分とする」とは、担体におけるα−アルミナの含有量が、担体の全質量に対して、90質量%以上であることを意味する。担体におけるα−アルミナの含有量は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは97質量%以上である。ここで、担体におけるα−アルミナの含有量の上限は、100質量%である。また、「α−アルミナを主成分とする担体」を、単に「α−アルミナ担体」とも称する。
担体は、α−アルミナを主成分とするものであればその他の組成は特に制限されない。
担体は、α−アルミナを主成分とするものであればその他の組成は特に制限されないが、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物や遷移金属の酸化物を含有しうる。これらの含有量についても特に制限はないが、アルカリ金属の酸化物(例えば、NaO)またはアルカリ土類金属の酸化物の含有量は、酸化物換算で、担体の全質量に対して、好ましくは0.001〜5質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%である。NaOの含有量は、担体の全質量に対して、好ましくは0.001〜5質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。NaOの含有量が0.001質量%以上であれば、特に優れた寿命安定性が得られうる。また、NaOの含有量が5.0質量%以下であれば、特に高い選択性が得られうる。
また、本発明に係る担体は、シリカ(酸化ケイ素、SiO)を含有してもよい。ここで、担体におけるシリカの含有量は、特に制限されないが、担体の全質量に対して、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.2〜5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3.0質量%である。担体中のSiOの含有量が0.1質量%以上であれば、特に優れた寿命安定性が得られうる。また、SiOの含有量が10質量%以下であれば、特に高い選択性が得られうる。
なお、担体の組成や各成分の含有量は、蛍光X線分析法を用いて決定できる。より具体的には、測定装置としてBRUKER社製S8 TIGERを用い、ファンダメンタルパラメータ法(FP法)にて測定することができる。
本発明では、比表面積(BET比表面積)は、0.5m/g担体以上1.3m/g担体以下である担体を用いる。このような担体を使用することにより、触媒成分を十分量担持しつつ、触媒成分であるレニウムおよびレニウム共促進剤(タングステン、モリブデン、バナジウム、およびクロムからなる群から選択される元素)の移動を抑制・防止でき、触媒性能の低下を抑えることができるという利点がある。なお、担体の比表面積が上記下限を下回ると、吸水率が充分に確保できず、触媒成分の担持が困難になるおそれがある。逆に、担体の比表面積が上記上限を超える場合には、熱的な劣化などで触媒成分が移動し、反応前と比較して反応中の触媒の担持状態が変化しやすいため、触媒性能の低下度合いが大きくなるおそれがある。また、比表面積が高すぎると、アルキレンオキシド製造用触媒を用いた気相酸化反応の生成物であるアルキレンオキシドの逐次反応が促進されるため、触媒の選択率が低下する。担体のBET比表面積の上限は、好ましくは1.0m/g担体以下であり、より好ましくは0.9m/g担体未満であり、さらに好ましくは0.8m/g担体以下、特に好ましくは0.8m/g担体未満である。担体のBET比表面積が0.9m/g担体未満であると、選択率および触媒活性がより一層優れたものとなる。ある実施形態では、担体の比表面積(BET比表面積)は、好ましくは0.5m/g担体以上1.0m/g担体以下、より好ましくは0.5m/g担体以上0.9m/g担体未満である。なお、本明細書において、「比表面積」は、BET比表面積を表わす。ここで、「BET比表面積」は、BET(Brunauer−Emmet−Teller)法により測定された値である。
担体の表面には多数の細孔(開気孔)が存在し、担体の内部に連通している。本発明においては、細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合が全細孔容積の10%以上50%以下である担体(すなわち、細孔直径が10μm以上の細孔を全細孔容積の10%以上50%以下の割合で有する担体)を用いる。このような比較的大きな細孔を多く有することによって、得られる触媒の活性や選択率等の触媒性能を向上できる。また、このような担体を使用してアルキレンオキシドを製造すると、触媒の再現性や製造時の歩留まりを向上できる。細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合が全細孔容積の10%未満であると、得られる触媒の触媒寿命(寿命性能)が過度に低下する。また、触媒の選択性(初期選択率、選択率)も低下し、経済性が悪化する。細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合が全細孔容積の50%を超えると、担体の強度が過度に低下し、触媒の製造や反応器への充填に支障をきたす。
上述の担体により触媒性能が向上するメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、アルキレンオキシド製造用触媒のように、多孔質担体に触媒成分を担持する、いわゆる担持型触媒では、担体の内部に存在する細孔内に触媒成分を付着(担持)させる必要がある。このため、担体の外表面から内部に連通する開気孔の存在が必要となる。換言すれば、理論上は担体の閉気孔に触媒成分は担持されない。上述したように、本発明に係る担体は、従来の触媒に用いられる担体に比して、径の比較的大きな開気孔を多数有することから、担体に触媒成分を担持する工程において、触媒前駆体溶液が担体の外表面に存在する開気孔から速やかに侵入し、連通する担体内部の細孔に浸潤すると考えられる。その結果、担体に吸収されずに残存した余分な触媒前駆体溶液が担持装置の壁面に付着する量が減少し、最終的に触媒成分の歩留まりが向上すると考えられる。また、適度な孔径の細孔が存在することによって、連通する細孔内に触媒前駆体溶液を毛細管現象により満遍なく含浸させ、触媒成分の粒子が担体内部にも高分散して担持される。その結果、銀をはじめとする触媒成分の偏在が防止され、高い活性および高い選択率を示すとともに、複数回に亘る触媒製造における再現性も向上すると考えられる。なお、これらのメカニズムはあくまでも推測に基づくものであり、実際には他のメカニズムによって上述したような本発明の効果が得られていたとしても、本発明の技術的範囲は何ら影響を受けることはない。
より高い選択性(初期選択率、選択率)および触媒寿命(寿命性能)を考慮すると、担体における10μm以上の細孔直径を有する細孔の容積の割合は、全細孔容積に対して、15%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。担体における細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合の上限は、45%以下であることが好ましい。好ましい一実施形態では、担体における細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合は、15%以上50%以下であり、より好ましくは15%以上45%以下、さらに好ましくは20%以上45%以下、最も好ましくは30%以上45%以下である。
本明細書において、担体における細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合(担体の全細孔容積に占める細孔直径が10μm以上の細孔の容積の割合(%))は、下記数式1に従って算出される。なお、担体の細孔分布および細孔容積は、水銀圧入法により得られる値を採用するものとし、より具体的には、実施例に記載される方法によって測定される値である。
担体における細孔の容積の割合は、担体の製造時に用いる気孔形成剤の量を調整することにより制御できる。例えば、10μm以上の細孔直径を有する細孔の容積の割合を高くするためには、担体の製造時において気孔形成剤の量を多くすればよい。また、担体における細孔直径は、担体の製造時に用いる気孔形成剤の粒径を調整することにより制御できる。例えば、担体における細孔直径を大きくするためには、気孔形成剤の粒径を大きくすればよい。
本発明で用いる担体は細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合が全細孔容積の10%以上50%以下であり、且つ、細孔直径50μm以上である細孔の容積の割合が全細孔容積の15%未満であることが好ましい。かような担体は、比較的大きな細孔を多く有しながらも機械的強度にも優れるため、触媒の構造的な耐久性が向上する。このため、長期間のアルキレンオキシドの製造にさらに適した触媒が得られる。触媒成分の歩留まり向上や、触媒前駆体溶液の高分散等の観点からは、細孔直径50μm以上である細孔の容積の割合が高い方が好ましいが、本発明に係る触媒は、最適化された触媒成分組成が採用されることにより、細孔直径50μm以上である細孔の容積の割合が低くとも優れた触媒性能が発揮されうる。担体における細孔直径50μm以上である細孔の容積の割合(担体の全細孔容積に占める細孔直径が50μm以上の細孔の容積の割合(%))は、より好ましくは10%以下(下限:0%以上)である。なお、細孔直径50μm以上である細孔の容積の割合(担体の全細孔容積に占める細孔直径が50μm以上の細孔の容積の割合(%))は、下記数式2に従って算出される。
担体の単位質量あたりの全細孔容積は、特に制限されないが、担体の強度および触媒成分の担持が容易であるという観点から、好ましくは0.35mL/g担体以上0.53mL/g担体以下であり、より好ましくは0.35mL/g担体以上0.50mL/g担体以下である。
担体の吸水率は、特に制限されないが、好ましくは10%以上70%以下であり、より好ましくは20%以上50%以下であり、さらに好ましくは25%以上45%以下である。このような吸水率を有する担体は、十分な強度を維持でき、かつ表面積を保持して、触媒成分を担持する際の含浸操作を容易に行うことができる。なお、担体の吸水率は、下記実施例に記載される方法によって測定される値である。
担体の形状は、特に制限されず、リング状、球状、円柱状、ペレット状のほか、従来公知の知見が適宜参照されうる。また、担体のサイズ(平均直径)についても特に制限はなく、好ましくは3mm以上20mm以下であり、より好ましくは5mm以上10mm以下である。なお、担体がリング状である場合の担体のサイズもまた特に制限されないが、例えば、担体の外径(平均直径)は、好ましくは3〜20mmであり、より好ましくは5〜10mmである。担体の内径(平均内径)は、好ましくは1〜7mmであり、より好ましくは2〜6mmである。担体の長さ(平均長さ)は、好ましくは3〜20mmであり、より好ましくは5〜15mmである。なお、上記担体の外径(平均直径)、内径(平均内径)及び長さ(平均長さ)は、統計学的に有意な平均値(例えば、100個以上の平均値)である。
(担体の製造方法)
担体の製造方法は特に制限されない。例えば、少なくともα−アルミナを主成分とするα−アルミナ粉体と、バインダーと、必要に応じてシリカを提供する原料としてのケイ素化合物と、気孔形成剤と、溶媒と、を混練して杯土を調製し、得られた杯土を適当な形状に成形した後、必要に応じ乾燥し、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガスおよび/または空気等のガス雰囲気下で焼成する方法が好ましく使用される。
担体原料のα−アルミナ粉体の純度(含有量)は、90質量%以上、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、特に好ましくは99.5質量%以上(上限:100質量%)のものが用いられる。
α−アルミナ粉体はほかに、酸化アルミ、特に無定形のアルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ムライトなど(これらを「無定形アルミナ等」と総称する);酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化セシウムなどのアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物など(これらを「アルカリ等」と総称する);を含んでいてもよい。なお、担体を成型体にする前の原料α−アルミナ粉体には、微量ながらナトリウム(酸化ナトリウム)が含まれていることがある。この場合には、予めその粉体中の酸化ナトリウム量を把握することにより、担体が所望の酸化ナトリウム含有量となるように、担体調製時にナトリウム化合物を添加し、担体を得ることができる。同様に、所望のシリカ含有量になるように、シリカを提供するためのケイ素化合物を考慮しつつアルミナ源を選定することができる。
α−アルミナ粉体の粒径に関しても特に制限はないが、α−アルミナ粉体の一次粒子径は、好ましくは0.01μm以上100μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上10μm以下である。また、α−アルミナ粉体の二次粒子径は、好ましくは0.1μm以上1,000μm以下であり、より好ましくは10μm以上200μm以下である。
また、α−アルミナ粉体の線収縮率は12%以上20%以下のものが好適に用いられる。ここで示す「線収縮率」とは、α−アルミナ粉体に約1質量%以上5質量%以下のフラックスを添加し、約50MPaの圧力で成形した後、約1600℃以上1700℃以下で2時間以上3時間以下の間焼成したときの長さ方向の収縮率を指す。
上記ケイ素化合物としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シラン、硫化ケイ素などの共有結合化合物;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アンモニウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸アンモニウム、リンケイ酸ナトリウム、リンケイ酸アンモニウムなどのケイ酸塩類;長石、粘土などのケイ素を含むシリカの複塩;およびシリカ混合物を挙げることができる。このなかでも、酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、粘土などのケイ素を含むシリカの複塩などを使用することが好ましい。
上記バインダーは、滑性を付与することによって押出工程を容易にせしめる。無機バインダーには、特に硝酸または酢酸のようなペプタイザーと組合せたアルミナゲルが含まれる。有機バインダーとしては、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチまたはそのアルカリ金属塩などを挙げることができる。この中でも、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを使用することが好ましい。
気孔形成剤は、本発明に係る細孔容積を達成できるものであれば特に制限されないが、添加によって触媒性能に悪影響を及ぼさないものが好ましい。具体的には、コークス、炭素粉末、グラファイト、(ポリアルキレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等のような)粉末プラスチック、セルロースおよびセルロース基材料、おが屑、ならびに粉砕堅果穀、カシュー、桃、杏、くるみ等の殻のような他の植物材料等の炭質材料である。炭素基材バインダーもまた気孔形成剤として役に立つことができる。これらうち、粉砕堅果穀、カシュー、桃、杏、くるみ等の殻のような炭質材料が好ましい。これらの気孔形成剤は、焼成時に担体から完全に除去されて、該担体中に制御された気孔が残る。また、気孔形成剤の大きさは、本発明に係る細孔容積を達成できるものであれば特に制限されないが、気孔形成剤の平均粒径(直径)が、50μm以上1000μm以下であることが好ましく、100μm以上850μm以下であることが好ましい。このような所望の粒径を有する気孔形成剤は、所望の目開きを有するメッシュで分級することによって、容易に得られる。気孔形成剤の添加量は、特に制限されないが、α−アルミナ粉体100質量部に対して、好ましくは15.5質量部以上45質量部以下であり、より好ましくは17質量部以上35質量部以下である。このような量であれば、担体における細孔直径が10μm以上の細孔を全細孔容積の10%以上50%以下の割合で容易に制御できる。
混合物を調製するために使用される溶媒は、特に制限されないが、担体製造の生産性、安全性、およびコストなどを考慮すると、水およびメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられ、特に水が好ましい。
上記で調製された杯土は、ニーダーなどの混練機を用いて十分に混合することが好ましい。このようにして混錬した後は、押し出し成型などにより適当な金型を用いて所望の形状に成型(または造粒)し、乾燥した後、焼成する。これらの調製方法については、例えば、「多孔質体の性質とその応用技術」竹内雍監修、株式会社フジ・テクノシステム発行(1999年)に記載されている。また、特開平5−329368号公報、特開2001−62291号公報、特開2002−136868号公報、特許第2983740号公報、特許第3256237号公報、特許第3295433号公報なども参照されうる。ここで、乾燥条件は、成形物が十分乾燥される条件であれば特に制限されないが、例えば、60℃以上150℃以下で約1時間以上100時間以下で成形物を乾燥することが好ましい。また、焼成条件もまた、特に制限されず、公知の担体の製造条件と同様の条件が適用できる。例えば、上記で乾燥されたものを、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガスおよび空気等のガス雰囲気下で、好ましくは1,000℃以上1,800℃以下、より好ましくは1,200℃以上1,700℃以下で、好ましくは約1時間以上100時間以下、より好ましくは約1時間以上20時間以下、焼成する。
担体の比表面積は、α−アルミナ粉体の比表面積、バインダー成分、焼成温度等を適宜選択することにより調整することができる。
<触媒成分>
本発明の触媒は、上記した担体に、銀、セシウム、リチウム、レニウム、ならびにタングステン、モリブデン、バナジウムおよびクロムから選択される少なくとも一種の元素を含む触媒成分が担持されてなり、触媒中のセシウム含有量が1000質量ppm以上3000質量ppm以下であることを特徴とする。なお、「タングステン、モリブデン、バナジウムおよびクロムから選択される元素」を、「レニウム共促進剤」とも称する。
上記触媒成分のうち、銀(Ag)が、主として触媒活性成分としての役割を担う。ここで、銀の含有量(担持量)は、特に制限されず、アルキレンオキシドの製造に有効な量で担持すればよい。銀の含有量(担持量)は、より具体的には、例えば、アルキレンオキシド製造用触媒の質量基準で(担体および触媒成分の合計質量基準で;以下、同様)、銀(Ag)換算で、好ましくは30質量%未満であり、より好ましくは1質量%以上30質量%未満であり、さらに好ましくは3質量%以上25質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以上20質量%以下である。このような範囲であれば、アルケンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してアルキレンオキシドを製造する反応を効率よく触媒できる。
セシウム(Cs)は、銀の反応促進剤として作用する。本発明においては、アルキレンオキシド製造用触媒の質量基準(セシウム(Cs)換算)で、触媒中のセシウム含有量(担持量)を1000質量ppm以上3000質量ppm以下の範囲内とする。触媒中のセシウム含有量が1000質量ppm未満であると、触媒の選択性が低下する。また、触媒中のセシウム含有量が3000質量ppmを超えると、触媒活性が低下する。セシウムの含有量(担持量)は、触媒活性と選択性とのバランスの観点から、好ましくは1500質量ppm以上2500質量ppm以下であり、より好ましくは1800質量ppm以上2500質量ppm未満であり、さらに好ましくは2000質量ppmを超えて2400質量ppm未満である。このような範囲であれば、アルケンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してアルキレンオキシドを製造する反応を有効に促進できる。
リチウム(Li)は、セシウムと同様に銀の反応促進剤として作用することに加え、レニウムや、タングステン、モリブデン、バナジウムおよびクロムから選択されるレニウム共促進剤に作用し、経時劣化によるこれらの触媒成分の失活を抑制する効果があると考えられる。リチウムの含有量(担持量)は特に制限されないが、アルキレンオキシド製造用触媒の質量基準(リチウム(Li)換算)で、好ましくは45質量ppm以上1000質量ppm以下であり、より好ましくは75質量ppm以上850質量ppm以下であり、さらに好ましくは150質量ppm以上750質量ppm以下であり、特に好ましくは150質量ppm以上700質量ppm以下である。上記のようなリチウム含有量とすることにより、銀の反応促進剤としての効果、ならびにレニウムおよびレニウム共促進剤の失活抑制効果を特に顕著に発揮することができ、さらに、触媒表面上のアルカリ金属含有量が過度に多くなることが防止されて高い触媒性能が発揮されうる。
本発明の一実施形態では、セシウム1質量部に対するリチウムの質量比(Li/Cs)が、0.03以上0.4以下であるアルキレンオキシド製造用触媒が提供される。上記のようなリチウム/セシウム質量比とすることにより、セシウムに対するリチウムの含有量が適度にバランスされ、選択性および触媒活性の両方に特に優れた触媒になるという利点がある。触媒活性と選択性とのバランスの観点から、Li/Cs(質量比)は、より好ましくは0.08以上0.4以下、さらに好ましくは0.16を超えて0.35以下である。
レニウム(Re)もまた、一般に、銀の反応促進剤として作用する。レニウムの含有量(担持量)は特に制限されないが、アルキレンオキシド製造用触媒の質量基準(レニウム(Re)換算)で、例えば50質量ppm以上2000質量ppm以下であり、好ましくは100質量ppm以上1000質量ppm以下であり、より好ましくは300質量ppm以上800質量ppm以下であり、さらに好ましくは400質量ppm以上800質量ppm以下である。このような範囲であれば、アルケンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化してアルキレンオキシドを製造する反応を有効に促進できる。特に、レニウムは触媒の選択性の点で重要な要素であると考えられる。上記範囲にレニウム量を制御することによって、触媒の選択率をより有効に向上できる。レニウムの含有量が2000質量ppm以下であれば、選択率の顕著な向上が得られ、反応温度の上昇を抑制できるため、優れた寿命性能が得られうる。
上記の成分に加え、本発明の触媒は、タングステン、モリブデン、バナジウム、およびクロムからなる群から選択される少なくとも一種類の元素を含む。これらの成分はレニウム共促進剤として作用し、単独で使用してもあるいは2種以上を併用してもよい。また、レニウム共促進剤がリチウムと作用することにより長期間にわたり安定的にレニウムの補助促進作用が持続する。このように各触媒成分が相互に作用することによって、本発明の触媒は、長期間使用しても高い触媒活性および選択性が維持できる。上記のレニウム共促進剤のうち、触媒の選択率向上に特に効果が得られることから、タングステン、モリブデン、およびクロムからなる群から選択される少なくとも一種類の元素を用いることが好ましく、タングステンおよび/またはモリブデンがより好ましく使用され、タングステンを用いることがさらに好ましい。
触媒中のレニウム共促進剤の含有量(担持量)は特に制限されないが、レニウム共促進剤による所望の効果がより顕著に発揮されうるという観点から、アルキレンオキシド製造用触媒の質量基準(各元素換算、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、およびクロム(Cr)の合計量として)で、例えば50質量ppm以上500質量ppmであり、好ましくは120質量ppm以上420質量ppm以下であり、より好ましくは200質量ppmを超えて400質量ppm以下であり、さらに好ましくは220質量ppm以上400質量ppm以下である。特に、レニウム共促進剤の含有量を400質量ppm以下とすることで、触媒活性が向上し、低い反応温度でのアルキレンオキシドの製造が可能となる。また、レニウム共促進剤の含有量を200質量ppm超(特に、220質量ppm以上)とすることにより、長期間の触媒の使用において高い選択率が特に安定的に維持されうる。一実施形態では、触媒成分としてタングステンを含み、触媒中のタングステン含有量が50質量ppm以上500質量ppm以下である、アルキレンオキシド製造用触媒が提供される。好ましい他の実施形態では、触媒成分としてタングステンを含み、触媒中のタングステン含有量が200質量ppmを超えて400質量ppm以下である、アルキレンオキシド製造用触媒が提供される。好ましいさらに別の実施形態では、触媒成分としてタングステンを含み、触媒中のタングステン含有量が220質量ppm以上400質量ppm以下であるアルキレンオキシド製造用触媒が提供される。
上記触媒成分に加えて、他の触媒成分を含んでもよい。ここで、他の触媒成分としては、特に制限されないが、例えば、銅、ニッケル、鉄、コバルト、マンガン、ニオブ、スズ、アンチモン、タンタル、ビスマス、チタン、ジルコニウム、セリウムなどが挙げられる。このような他の触媒成分の含有量(担持量)は、本発明による触媒成分の効果を阻害しない限り特に制限されないが、アルキレンオキシド製造用触媒の質量基準(各元素換算)で、例えば、10質量ppm以上1000質量ppm以下である。
触媒に硫黄やリンが過剰に含まれると触媒中の銀やセシウム、リチウム、レニウム、レニウム供促進剤を被毒し、これらの成分の相互作用を弱めるため、選択率の低下、反応温度の上昇や、触媒寿命の低下を引き起こしうる。このため、アルキレンオキシド製造用触媒中の硫黄やリンの含有量(担持量)は少ないことが好ましく、例えば、レニウム共促進剤(複数のレニウム共促進剤を含む場合は、その合計量(モル))に対する硫黄およびリンの合計量が、モル比で、1未満であることが好ましい。より具体的には、アルキレンオキシド製造用触媒の質量基準(硫黄およびリンの合計量)で、6質量ppm以下であることが好ましく、4質量ppm未満(下限:0質量ppm)であることがより好ましい。
なお、上述した触媒の組成や各成分の含有量(担持量)は、触媒前駆体溶液における、各成分の前駆体の使用量から計算して求めることができるが、例えば、蛍光X線分析法を用いて測定できる。より具体的には、測定装置としてBRUKER社製S8 TIGERを用い、ファンダメンタルパラメータ法(FP法)にて測定することができる。
蛍光X線分析法にて検出が困難なリチウムやその他の成分(例えば、硫黄、リン、塩素)などは、担体に担持された触媒成分を抽出した溶液を用いて、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析や原子吸光分析法、イオンクロマトグラフ法により測定できる。より具体的には、10gの触媒を100mLの10質量%硝酸水溶液中で30分間煮沸し、触媒成分を抽出する。抽出操作を3回実施し、得られた抽出液を合一した後に純水を加えて全量200mLに調整する。これによって得られた抽出液に含まれる各種成分を、誘導結合プラズマ発光分析法や原子吸光分析法、イオンクロマト分析法にて測定する。誘導結合プラズマ発光分析は、例えば、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製誘導結合プラズマ発光分析装置iCAP6500DUOを用いて測定できる。原子吸光分析は、例えば、島津製作所製原子吸光分光光度計AA−6650を用いて測定できる。イオンクロマトグラフ分析は、例えば、ダイオネクス社製イオンクロマトグラフDX−320を用いて測定できる。
<触媒の製造方法>
本発明のアルキレンオキシド製造用触媒は、上記したような担体を使用して、従来公知のアルキレンオキシド製造用触媒の製造方法に従って調製されうる。以下、本発明のアルキレンオキシド製造用触媒の製造方法の好ましい実施形態を記載する。下記のようにして得られた触媒は、高い選択率を保ちつつも、活性および触媒寿命にも優れる。したがって、本発明のアルキレンオキシド製造用触媒を使用することによって、アルキレンオキシドを長期に亘って高選択率で製造でき、産業上非常に有益である。しかし、本発明は、下記の好ましい実施形態に限定されず、適宜修飾してあるいは他の公知の方法によって、触媒を製造してもよい。
まず、各触媒成分の前駆体を適当な溶媒に溶解して、触媒前駆体溶液を調製する。ここで、各触媒成分の前駆体としては、溶媒に溶解する形態であれば特に制限されないが、例えば、銀の前駆体としては、硝酸銀、炭酸銀、シュウ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、乳酸銀、クエン酸銀、ネオデカン酸銀などが挙げられる。これらのうち、シュウ酸銀、および/または硝酸銀が好ましい。
セシウムやリチウムの前駆体としては、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、過レニウム酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩などを使用することが好ましい。セシウムの前駆体としては、より具体的には、硝酸セシウム、水酸化セシウム、過レニウム酸セシウム、タングステン酸セシウム、モリブデン酸セシウムがより好ましく、リチウムの前駆体としては、硝酸リチウム、水酸化リチウム、タングステン酸リチウム、モリブデン酸リチウムがより好ましい。また、レニウムの前駆体としては、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸ナトリウム、過レニウム酸カリウム、過レニウム酸、塩化レニウム、酸化レニウム、過レニウム酸セシウムなどが挙げられる。これらのうち、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸セシウムが好ましい。
レニウム共促進剤としてタングステンを用いる場合には、タングステンの前駆体として、酸化タングステン、タングステン酸、タングステン酸塩、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸および/またはヘテロポリ酸の塩などが挙げられる。これらのタングステン前駆体のうち、タングステン酸アンモニウム(例えば、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム)、タングステン酸セシウム(例えば、メタタングステン酸セシウム、パラタングステン酸セシウム)、ケイタングステン酸アンモニウム、ケイタングステン酸セシウムが好ましい。
モリブデンを用いる場合には、モリブデンの前駆体として、酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸塩、ケイモリブデン酸などのヘテロポリ酸および/またはヘテロポリ酸の塩などが挙げられる。これらのモリブデン前駆体のうち、モリブデン酸アンモニウム(例えば、パラモリブデン酸アンモニウム)、モリブデン酸セシウム、ケイモリブデン酸アンモニウム、ケイモリブデン酸セシウムが好ましい。
バナジウムを用いる場合には、バナジウムの前駆体として、酸化バナジウム、バナジン酸、バナジン酸塩などが挙げられる。これらのバナジウム前駆体のうち、バナジン酸アンモニウム(例えば、メタバナジン酸アンモニウム)、バナジン酸セシウム(例えば、メタバナジン酸セシウム、オルトバナジン酸アンモニウム)が好ましい。
クロムを用いる場合には、クロムの前駆体として、酸化クロム、クロム酸、クロム酸塩などが挙げられる。これらのクロム前駆体のうち、クロム酸アンモニウム、クロム酸セシウム、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸セシウムが好ましい。
上記各触媒成分の前駆体は、単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。また、上記各触媒成分の前駆体の添加量は、上記した所定の触媒組成となるように適宜決定できる。すなわち、上記した銀、セシウム、リチウム、レニウム、およびレニウム共促進剤の含有量(担持量)となるように、それぞれの触媒成分前駆体の添加量を選択すればよい。
上記各触媒成分の前駆体を溶解する溶媒もまた、各触媒成分の前駆体を溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノールおよびエタノールなどのアルコール類、ならびにトルエンなどの芳香族化合物などが挙げられる。これらのうち、水、エタノールが好ましい。
ここで、触媒前駆体溶液は、上記触媒成分に加えて、必要に応じて、錯体を形成するための錯化剤をさらに溶媒に添加してもよい。錯化剤としては、特に制限されないが、例えば、ピリジン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミンなどが挙げられる。上記錯化剤は単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してもよい。錯化剤の添加量は、特に制限されないが、例えば、銀化合物と錯化剤とが錯体を形成するように、銀化合物と等モル量となるようにするのがよい。このように銀化合物と錯化剤との錯体を生成させることにより銀の可溶化が進行し、含浸作業が容易となる。
次いで、このように調製された触媒前駆体溶液を、上記で準備した担体に含浸させる。含浸工程は20℃以上120℃以下の温度で0.1時間以上10時間以下の時間で行うことが好ましい。ここで、上記触媒前駆体溶液は、触媒前駆体毎に別々に調製して担体に順次含浸させてもよいし、あるいは各触媒前駆体を一つの溶媒に溶解して一つの触媒前駆体溶液とし、これを担体に含浸させてもよい。
触媒前駆体溶液を担体に順次含浸する方法としては、例えば、セシウムやリチウムなどのアルカリ金属を含む溶液を、銀を含む溶液より先に担体に含浸させ(第1含浸処理)、加熱処理する(プレドープする)方法が挙げられる。プレドープ法では、リチウム前駆体のみを含有する溶液、もしくはセシウム前駆体のみを含有する溶液で行ってもよいし、リチウム前駆体およびセシウム前駆体の両方を含有する溶液で行ってもよい。第1含浸処理で化合物を含む溶液を担体へ含浸させた後、必要に応じて80℃以上120℃未満で適宜乾燥させる。その後、担体を空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、120℃以上800℃以下の温度で、好ましくは150℃以上700℃以下の温度で加熱処理する。加熱処理時間は、例えば、5分間以上100時間以下、好ましくは0.2時間以上10時間以下の時間である。こうして得られたアルカリ金属担持担体に、銀およびその他の触媒成分を含む触媒前駆体溶液を含浸させる(第2含浸処理)ことで、所望の成分が担持された触媒が得られる。銀およびその他の触媒成分を含む触媒前駆体溶液を含浸させた担体は、第1含浸処理後の担体と同様にして乾燥させ、加熱処理を行う。第2含浸処理後の焼成温度は、1段階で行ってもよいし、2段階以上で行ってもよい。好ましくは、2段階以上の焼成を行う。第2含浸処理後の焼成条件としては、酸素含有雰囲気中にて100℃以上450℃未満で第1の熱処理を5分間以上100時間以下の時間で施し、第1熱処理物を得、次いで第1熱処理物に、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)雰囲気中にて450℃以上800℃以下で第2の熱処理を0.1時間以上10時間以下の時間で施すことが好ましい。
一方で、上記のプレドープ法を実施せず、銀、セシウム、リチウム、レニウム、およびレニウム共促進剤を含む溶液を同時に担体に含浸させてもよい。本発明の触媒では、セシウムやリチウムのようなアルカリ金属が、銀、レニウムおよびレニウム共促進剤に作用することで良好な触媒活性、選択性、寿命性能が得られる。そのため、アルカリ金属をプレドープし、その後に銀、レニウムおよびレニウム共促進剤を担体へ含浸させるよりも、銀、セシウム、リチウム、レニウム、およびレニウム共促進剤を含む溶液を用いてこれらの触媒成分を同時に担体に含浸させる方法がより好ましい。この場合の含浸の条件は、例えば20℃以上120℃以下の温度で0.1時間以上10時間以下の時間である。
続いて、含浸後の担体を乾燥し、焼成する。乾燥は、空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、必要であれば減圧下で、80℃以上120℃未満の温度で行う。また、焼成は、空気、酸素、または不活性ガス(例えば、窒素)の雰囲気中で、120℃以上800℃以下の温度で、好ましくは150℃以上700℃以下の温度で0.1時間以上100時間以下、好ましくは0.2時間以上10時間以下の時間で行えばよい。なお、焼成温度は、1段階で行ってもよいし、2段階以上で行ってもよい。好ましくは、2段階以上の温度帯で焼成を行う。一実施形態では、焼成条件として、第1の熱処理(1段階目の焼成)を酸素含有雰囲気(例えば、空気中)で120℃以上300℃以下にて0.1時間以上10時間以下の時間で行った後、第2の熱処理(2段階目の焼成)を空気雰囲気中で300℃を超えて450℃にて0.1以上10時間の時間で行う。また、別の好ましい実施形態では、触媒前駆体溶液を含浸させた担体に120℃以上450℃未満で第1の熱処理を施して第1熱処理物を得、次いで第1熱処理物に450℃以上800℃以下で第2の熱処理を施して第2熱処理物を得る。さらに別のより好ましい実施形態では、第1の熱処理を酸素含有雰囲気中で行い、および第2の熱処理を不活性ガス雰囲気中で行う。例えば、焼成条件として、第1の熱処理(1段階目の焼成)を酸素含有雰囲気(例えば、空気中)にて120℃以上450℃未満、さらに好ましくは120℃以上400℃以下で、5分間以上10時間以下の時間行った後、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)雰囲気中にて450℃以上800℃以下、さらに好ましくは500℃以上700℃以下で、0.1時間以上10時間以下、さらに好ましくは1時間以上5時間以下の時間、焼成を行う。このような条件で行うことによって、触媒寿命をより向上させることができる。なお、本明細書において「酸素含有雰囲気」とは、雰囲気ガス中に酸素が含まれていればよいが、例えば、雰囲気ガス中の酸素の割合が5体積%以上100体積%以下であり、好ましくは10体積%以上100体積%以下である。
本発明の触媒を製造するための好ましい一実施形態は、銀、セシウム、リチウム、レニウム、ならびにタングステン、モリブデン、バナジウムおよびクロムから選択される少なくとも一種の元素を含む触媒前駆体溶液を、α−アルミナを主成分として含む担体に含浸させること;触媒前駆体溶液を含浸させた担体に、120℃以上450℃未満で第1の熱処理を施し、第1熱処理物を得ること;ならびに第1熱処理物に、450℃以上800℃以下で第2の熱処理を施し、第2熱処理物を得ること、を含む。これにより、触媒性能および触媒寿命に特に優れた触媒を得ることができる。
<アルキレンオキシドの製造方法>
本発明の一側面は、上記のアルキレンオキシド製造用触媒を用いて、分子状酸素含有ガスによりアルケンを気相酸化することを含む、アルキレンオキシドの製造方法に関する。本発明の別の側面は、上記の製造方法により得られうるアルキレンオキシド製造用触媒を用いて、分子状酸素含有ガスによりアルケンを気相酸化することを含む、アルキレンオキシドの製造方法に関する。アルキレンオキシドの製造方法は、触媒として上記のアルキレンオキシド製造用触媒または上記製造方法で得られうるアルキレンオキシド製造用触媒を使用する点を除けば、常法に従って行われうる。
以下、アルキレンオキシドの製造方法の好ましい実施形態を記載する。しかし、本発明は、下記の好ましい実施形態に限定されず、適宜修飾してあるいは他の公知の方法に本発明の触媒を使用することによって、アルキレンオキシドを製造できる。
本発明のアルキレンオキシド製造方法で用いられるアルケンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、およびイソブテン等のオレフィンが用いられるが、好ましくはエチレンである。また、本発明のアルキレンオキシド製造方法で製造されるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、およびイソブチレンオキシド等が例示できるが、好ましくはエチレンオキシドである。
アルキレンオキシドの製造条件は、例えば、工業的製造規模における一般的な条件、すなわち反応温度150℃以上300℃以下、好ましくは180℃以上280℃以下、反応圧力0.2MPa以上4MPa以下、好ましくは0.5MPa以上3MPa以下、空間速度1,000hr−1以上30,000hr−1以下(STP)、好ましくは3,000hr−1以上8,000hr−1以下(STP)が採用される。触媒に接触させる原料ガスとしては、オレフィン(例えば、エチレン)0.5容量%以上40容量%以下、酸素3容量%以上10容量%以下、炭酸ガス1容量%以上30容量%以下、残部の窒素、アルゴン、水蒸気等の不活性ガスおよびメタン、エタン等の低級炭化水素類からなり、さらに反応抑制剤としてのエチルクロライド、エチレンジクロライド、ビニルクロライド、メチルクロライドなどの塩化アルキルを0.1容量ppm以上10容量ppm以下含有するものが挙げられる。本発明の製造方法において使用される分子状酸素含有ガスとしては、空気、酸素および富化空気が挙げられる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。
表1に示す4種類のα−アルミナ担体(担体a、担体b、担体cおよび担体d)を調製した。また、担体の比表面積、吸水率、細孔分布および細孔容積、触媒成分の含有量は、下記方法によって測定した。各担体のより具体的な製造方法を以下に示す。
(担体aの製造)
100質量部の高純度α−アルミナ粉体(α−アルミナ含有量=99.9質量%;二次粒子径=55μm;BET比表面積=1.1m/g;)と、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びコーンスターチからなる9.7質量部の有機バインダー(組成:セルロース:メチルセルロース:カルボキシメチルセルロースナトリウム:コーンスターチ(質量比)=6:1:4:8)と、気孔形成剤として180μm〜250μmに分級された30.5質量部のクルミ殻と、7.1質量部のシリカゾル(日産化学社製、商品名:スノーテックスО;粒径=10〜15nm)と、35.6質量部の水とをニーダーに投入し、十分に混練した。得られた杯土をリング状に押出成形し、80℃で24時間、十分に乾燥した後、1550℃で2時間焼成して外径8mm、内径4mm、長さ8mmのリング状成形体である担体a(α−アルミナの含有量:98.4質量%)を得た。
(担体bの製造)
担体aの製造において、180μm〜250μmに分級されたクルミ殻の添加量を25.4質量部に変更し、焼成温度を1400℃としたこと以外は、担体aの製造と同様にして、担体b(α−アルミナの含有量:98.6質量%)を得た。
(担体cの製造)
100質量部の高純度α−アルミナ粉体(α−アルミナ含有量=99.9質量%;二次粒子径=60μm;BET比表面積=0.8m/g;)と、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びコーンスターチからなる9.7質量部の有機バインダー(組成:セルロース:メチルセルロース:カルボキシメチルセルロースナトリウム:コーンスターチ(質量比)=6:2:3:8)と、気孔形成剤として180μm〜250μmに分級された5.1質量部のクルミ殻と、3.6質量部のシリカゾル(日産化学社製、商品名:スノーテックスО;粒径=10〜15nm)と、40.7質量部の水とをニーダーに投入し、十分に混練した。得られた杯土をリング状に押出成形し、80℃で24時間、十分に乾燥した後、1400℃で2時間焼成して外径8mm、内径4mm、長さ8mmのリング状成形体である担体a(α−アルミナの含有量:98.3質量%)を得た。
(担体dの製造)
100質量部の高純度α−アルミナ粉体(α−アルミナ含有量=99.9質量%;二次粒子径=55μm;BET比表面積=1.5m/g;)と、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びコーンスターチからなる9.7質量部の有機バインダー(組成:セルロース:メチルセルロース:カルボキシメチルセルロースナトリウム:コーンスターチ(質量比)=6:2:3:8)と、気孔形成剤として425μm〜500μmに分級された25.4質量部のクルミ殻と、4.1質量部のシリカゾル(日産化学社製、商品名:スノーテックスО;粒径=10〜15nm)と、39.6質量部の水とをニーダーに投入し、十分に混練した。得られた杯土をリング状に押出成形し、80℃で24時間、十分に乾燥した後、1550℃で2時間焼成して外径7mm、内径3mm、長さ7mmのリング状成形体である担体a(α−アルミナの含有量:98.4質量%)を得た。
(担体の比表面積の測定)
担体の比表面積(BET比表面積)は、下記方法に従って測定した。
担体をハンマーで粉砕した後、篩で分級して0.85〜1.2mmの粒径(直径)の画分を回収し、約0.2gを正確に秤量した。秤量したサンプルを200℃にて60〜120分間前処理装置(マウンテック社製プレヒートユニット)内で脱気し、BET(Brunauer−Emmet−Teller)法(測定機器:Macsorb−1201、マウンテック社製)により測定した。
(担体の吸水率の測定)
担体の吸水率は、日本工業規格(JIS R2205(1998))に記載の方法に準拠して、以下のa)〜d)の手法により測定した。
a)担体を120℃に保温した乾燥機中に入れ、恒量に達した際の質量を秤量した(乾燥質量:W1(g));
b)上記a)で秤量した担体を純水中に沈めて30〜60分間煮沸した後、室温の純水中にて冷却し、飽水サンプルとした;
c)上記b)で得た飽水サンプルを純水中から取り出し、湿布ですばやく表面を拭い、水滴を除去した後に秤量した(飽水サンプル質量:W2(g));
d)上記で得られたW1(g)およびW2(g)を用い、下記数式3に従って、吸水率(%)を算出した。
(担体の細孔分布、細孔容積の測定)
担体の細孔分布および細孔容積は、下記水銀圧入法に従って測定した。具体的には、200℃の前処理装置(マウンテック社製プレヒートユニット)内にて60〜120分間脱気した担体をサンプルとして使用した。このようにして得られたサンプルについて、測定装置としてオートポアIII9420W(株式会社島津製作所製)を用い、1.0〜60,000psiaの圧力範囲および60個の測定ポイントで、細孔分布および細孔容積のデータを得た。この細孔分布および細孔容積のデータに基づいて、上記数式1により10μm以上の細孔直径を有する細孔の細孔容積割合(%)を、上記数式2により50μm以上の細孔直径を有する細孔の細孔容積割合(%)を、それぞれ算出した。
(担体の成分分析)
担体の成分分析は、蛍光X線分析法を用いて測定した。より具体的には、測定装置としてBRUKER社製S8 TIGERを用い、ファンダメンタルパラメータ法(FP法)にて測定した。
(触媒成分含有量の分析)
調製した触媒中の銀、セシウム、レニウム、およびタングステンまたはモリブデンの含有量については、蛍光X線分析法により測定した。測定装置としてBRUKER社製S8 TIGERを用い、ファンダメンタルパラメータ法(FP法)にて測定した。触媒中のリチウムの含有量については、調製した触媒からの抽出操作を行い、得られた抽出液を誘導結合プラズマ発光分析(ICP)法により測定した。抽出操作は、具体的には、10gの触媒を100mLの10質量%硝酸水溶液中で30分間煮沸し、触媒成分を溶出させることにより行った。抽出操作を3回実施し、得られた抽出液を合一した後に純水を加えて全量200mLに調整し、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析に供した。測定装置としては、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製誘導結合プラズマ発光分析装置iCAP6500DUOを用いた。一部の触媒については、触媒に不純物として含まれる硫黄およびリンについても上記と同様のICP法により測定した。
実施例1
シュウ酸銀20.0gを含む水スラリー(水スラリー中の水の含有量:5g)、硝酸セシウム0.192g、硝酸リチウム0.227g、過レニウム酸アンモニウム0.050g、メタタングステン酸アンモニウム6水和物0.031gを、10mLの水に溶解し、さらに錯化剤としてエチレンジアミン7mLを加え、触媒前駆体溶液を調製した。
この触媒前駆体溶液を、担体a(α−アルミナ担体、BET比表面積=0.69m/g担体、吸水率=43.5%、細孔容積=0.44mL/g担体、細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合=41.7%)50.0gに0.5時間含浸させた後、90℃で減圧乾燥した。これを空気気流中300℃で15分間熱処理した後、窒素気流中600℃で3時間熱処理して触媒Aを得た。
このようにして調製された触媒Aの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=15.0質量%、Cs(Cs換算)=2130質量ppm、Li(Li換算)=370質量ppm、Re(Re換算)=550質量ppm、W(W換算)=350質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.17である。また、硫黄とリンの含有量は、それぞれS(S換算)=1.0質量ppm、P(P換算)=2.7ppmであった。
実施例2
実施例1において、硝酸リチウムの添加量を0.378gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Bを得た。このようにして調製された触媒Bの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.8質量%、Cs(Cs換算)=2110質量ppm、Li(Li換算)=610質量ppm、Re(Re換算)=540質量ppm、W(W換算)=360質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.29である。また、硫黄とリンの含有量は、それぞれS(S換算)=1.2質量ppm、P(P換算)=2.9質量ppmであった。
実施例3
実施例1において、硝酸リチウムの添加量を0.076gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Cを得た。このようにして調製された触媒Cの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.8質量%、Cs(Cs換算)=2080質量ppm、Li(Li換算)=120質量ppm、Re(Re換算)=550質量ppm、W(W換算)=330質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.06である。また、硫黄とリンの含有量は、それぞれS(S換算)=1.2質量ppm、P(P換算)=2.8質量ppmであった。
実施例4
実施例1において、硝酸リチウムの添加量を0.529g、メタタングステン酸アンモニウム6水和物の添加量を0.039gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Dを得た。このようにして調製された触媒Dの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.9質量%、Cs(Cs換算)=2100質量ppm、Li(Li換算)=730質量ppm、Re(Re換算)=560質量ppm、W(W換算)=420質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.35である。
実施例5
実施例1において、硝酸リチウムの添加量を0.605g、メタタングステン酸アンモニウム6水和物の添加量を0.039gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Eを得た。このようにして調製された触媒Eの各成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=15.0質量%、Cs(Cs換算)=2080質量ppm、Li(Li換算)=870質量ppm、Re(Re換算)=550質量ppm、W(W換算)=410質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.42である。
実施例6
実施例1において、硝酸セシウムの添加量を0.171gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Fを得た。このようにして調製された触媒Fの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=15.2質量%、Cs(Cs換算)=1820質量ppm、Li(Li換算)=370質量ppm、Re(Re換算)=540質量ppm、W(W換算)=350質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.20である。また、硫黄とリンの含有量は、それぞれS(S換算)=0.8質量ppm、P(P換算)=2.7ppmであった。
実施例7
実施例1において、硝酸セシウムの添加量を0.214gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Gを得た。このようにして調製された触媒Gの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(銀換算)=14.9質量%、Cs(Cs換算)=2370質量ppm、Li(Li換算)=360質量ppm、Re(Re換算)=570質量ppm、W(W換算)=380質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.15である。また、硫黄とリンの含有量は、それぞれS(S換算)=0.9質量ppm、P(P換算)=2.7ppmであった。
実施例8
実施例1において、メタタングステン酸アンモニウム6水和物の添加量を0.020gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Hを得た。このようにして調製された触媒Hの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.8質量%、Cs(Cs換算)=2150質量ppm、Li(Li換算)=360質量ppm、Re(Re換算)=540質量ppm、W(W換算)=210質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.17である。
実施例9
実施例1において、メタタングステン酸アンモニウムの代わりにパラモリブデン酸アンモニウム(七モリブデン酸六アンモニウム・4水和物)を0.013g添加したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Iを得た。このようにして調製された触媒Iの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.9質量%、Cs(Cs換算)=2090質量ppm、Li(Li換算)=370質量ppm、Re(Re換算)=550質量ppm、Mo(Mo換算)=120質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.18である。
実施例10
実施例1において、使用する担体を担体b(α−アルミナ担体、BET比表面積=0.92m/g担体、吸水率=45.0%、細孔容積=0.45mL/g担体、細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合=29.1%)50.0gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Jを得た。このようにして調製された触媒Jの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.9質量%、Cs(Cs換算)=2110質量ppm、Li(Li換算)=360質量ppm、Re(Re換算)=560質量ppm、W(W換算)=370質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.17である。
比較例1
実施例1において、硝酸リチウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Kを得た。このようにして調製された触媒Kの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.8質量%、Cs(Cs換算)=2100質量ppm、Re(Re換算)=550質量ppm、W(W換算)=340質量ppmであった。
比較例2
実施例1において、メタタングステン酸アンモニウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Lを得た。このようにして調製された触媒Lの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.8質量%、Cs(Cs換算)=2130質量ppm、Li(Li換算)=360質量ppm、Re(Re換算)=540質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.17である。
比較例3
シュウ酸銀20.0gを含む水スラリー(水スラリー中の水の含有量:5g)、硝酸セシウム0.064g、硝酸リチウム0.076g、過レニウム酸アンモニウム0.050g、メタタングステン酸アンモニウム6水和物0.031gを、10mLの水に溶解し、さらに錯化剤としてエチレンジアミン7mLを加え、触媒前駆体溶液を調製した。この触媒前駆体溶液を、50.0gの担体aに0.5時間含浸させた後、90℃で減圧乾燥した。これを空気気流中300℃で15分間熱処理して触媒Mを得た。
このようにして調製された触媒Mの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=15.1質量%、Cs(Cs換算)=710質量ppm、Li(Li換算)=120質量ppm、Re(Re換算)=540質量ppm、W(W換算)=360質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.17である。
比較例4
硝酸リチウム0.076gを15mLの水に溶解させた溶液を、50.0gの担体aに0.5時間含浸させた後、90℃で減圧乾燥した。これを空気気流中300℃で15分間熱処理し、リチウムが担持された担体を得た。シュウ酸銀20.0gを含む水スラリー(水スラリー中の水の含有量:5g)、硝酸セシウム0.064g、過レニウム酸アンモニウム0.050g、メタタングステン酸アンモニウム6水和物0.031gを、10mLの水に溶解し、さらに錯化剤としてエチレンジアミン7mLを加えて調製した触媒前駆体溶液を上記のリチウム担持担体に0.5時間含浸させた後、90℃で減圧乾燥した。これを空気気流中300℃で15分間熱処理して触媒Nを得た。
このようにして調製された触媒Nの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.9質量%、Cs(Cs換算)=730質量ppm、Li(Li換算)=120質量ppm、Re(Re換算)=550質量ppm、W(W換算)=350質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.16である。
比較例5
実施例1において、硝酸セシウムの添加量を0.278gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Oを得た。このようにして調製された触媒Oの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=15.0質量%、Cs(Cs換算)=3120質量ppm、Li(Li換算)=360質量ppm、Re(Re換算)=560質量ppm、W(W換算)=330質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.12である。
比較例6
実施例1において、メタタングステン酸アンモニウムの代わりにパラモリブデン酸アンモニウムを0.013g添加し、硝酸リチウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Pを得た。このようにして調製された触媒Pの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=15.1質量%、Cs(Cs換算)=2110質量ppm、Re(Re換算)=550質量ppm、Mo(Mo換算)=120質量ppmであった。
比較例7
実施例1において、使用する担体を担体c(α−アルミナ担体、BET比表面積=0.74m/g担体、吸水率=41.0%、細孔容積=0.38mL/g担体、細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合=8.3%)50.0gに変更し、硝酸セシウムの添加量を0.139gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Qを得た。このようにして調製された触媒Qの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=15.1質量%、Cs(Cs換算)=1720質量ppm、Li(Li換算)=350質量ppm、Re(Re換算)=540質量ppm、W(W換算)=340質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.20である。
比較例8
実施例1において、使用する担体を担体d(α−アルミナ担体、BET比表面積=1.41m/g担体、吸水率=46.1%、細孔容積=0.45mL/g担体、細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合=29.5%)50.0gに変更し、硝酸セシウムの添加量を0.171gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Rを得た。このようにして調製された触媒Rの各触媒成分の含有量(触媒の質量基準)は、Ag(Ag換算)=14.8質量%、Cs(Cs換算)=1860質量ppm、Li(Li換算)=350質量ppm、Re(Re換算)=550質量ppm、W(W換算)=350質量ppmであった。リチウムとセシウムの質量比は、Li/Cs=0.19である。
上記実施例1〜11で得られた触媒A〜Jおよび上記比較例1〜8で得られた触媒K〜Rについて、下記方法によって、触媒性能を評価した。結果を下記表2に示す。なお、下記表2において、下記(触媒評価)方法によって算出された触媒性能を「初期触媒性能」と称する。
(触媒評価)
上記実施例および比較例により得られた触媒A〜Rを、それぞれ、粒径0.60〜0.85mmに破砕した。次に、破砕した触媒1.2gを、それぞれ、内径3mm、管長300mmの外部が加熱式の二重管式ステンレス製反応器に充填し、この充填層にエチレン30容量%、酸素7.0容量%、二酸化炭素2.0容量%、ビニルクロライド2.3〜3.8容量ppm、残余が窒素からなるガスを導入し、1.6MPaGで、空間速度5500h−1の条件で、エチレン転化率が10モル%となるようにして、気相酸化反応を行った。なお、エチレンオキシド製造時の転化率(モル%)および初期選択率(モル%)は、それぞれ下記数式4および数式5に従って算出される値である。下記数式4における「反応したエチレン」、および数式5における「エチレンオキシドに変化したエチレンのモル数」は、ガスクロマトグラフィーによって分析した値に基づく。
また、下表における「反応温度」は、エチレン転化率が10モル%となる反応温度であり、反応温度が低いほど触媒活性に優れる(低温でも高い触媒活性を有する)ことを示す。
上記実施例で得られた触媒A〜C、比較例で得られた触媒Kについて、下記方法によって、触媒寿命を評価した。結果を下記表3に示す。なお、下記表3において、下記(触媒寿命の評価)方法によって算出された触媒性能を「触媒寿命性能」と称する。
(触媒寿命の評価)
上記気相酸化反応の条件を維持し、触媒1kgあたり300kgのエチレンオキシドを生産した触媒、および触媒1kgあたり600kgのエチレンオキシドを生産した触媒について、上記記触媒評価(初期触媒性能)を基準にして選択率の変化量および反応温度の変化量を求め、これを触媒寿命の指標として評価した。下記表3に、1kgの触媒が300kgのエチレンオキシドを生産する前後での、選択率の低下度合いおよび反応温度の上昇度合いを、それぞれΔS300(モル%)およびΔT300(℃)として示した。また、1kgの触媒が600kgのエチレンオキシドを生産する前後での、選択率の低下度合いおよび反応温度の上昇度合いを、それぞれΔS600(モル%)およびΔT600(℃)として示した。選択率および反応温度共に、初期触媒性能での測定値に対する変化量(選択率変化量:ΔS(モル%)、 反応温度変化量:ΔT(℃))が小さいほど、触媒寿命に優れることを示す。なお、ΔSは、触媒1kgあたり300kgのエチレンオキシドを生産した触媒、および600kgのエチレンオキシドを生産した触媒についての選択率の値から、初期触媒性能評価時の触媒についての選択率の値を差し引いて算出した。
上記表2に示される初期性能結果から、本発明の触媒は、比較例の触媒に比して、高い選択率を保ちながらも反応温度が有意に低く、触媒性能に優れることが分かる。また、本発明の触媒は、反応熱による触媒成分の移動や凝集に伴う状態変化を抑制でき、触媒の寿命を延長できることが期待できる。
また、上記表3に示される触媒寿命性能結果から、本発明の触媒は、比較例の触媒に比して、長期使用後の選択率の低下および反応温度の上昇が有意に抑えられることが分かる。この結果から、本発明の触媒は、触媒寿命を有意に向上(延長)できると考察される。ゆえに、本発明の触媒を使用することによって、長期にわたって高い性能(高い選択率、および低い反応温度)でアルキレンオキシドを製造できる。

Claims (8)

  1. α−アルミナを主成分として含む担体と、前記担体に担持されてなる触媒成分と、を含む、アルキレンオキシド製造用触媒であって、
    前記触媒成分は、銀、セシウム、リチウム、レニウム、ならびにタングステン、モリブデン、バナジウムおよびクロムから選択される少なくとも一種の元素を含み、
    前記触媒中のセシウム含有量が1000質量ppm以上3000質量ppm以下であり、
    前記担体のBET比表面積が0.5m/g担体以上1.3m/g担体以下であり、ならびに
    前記担体における細孔直径10μm以上である細孔の容積の割合が、全細孔容積の10%以上50%以下である、アルキレンオキシド製造用触媒。
  2. セシウムに対するリチウムの質量比(Li/Cs)が、0.03以上0.4以下である、請求項1に記載のアルキレンオキシド製造用触媒。
  3. 前記触媒成分としてタングステンを含み、
    前記触媒中のタングステン含有量が200質量ppmを超えて400質量ppm以下である、請求項1または2に記載のアルキレンオキシド製造用触媒。
  4. 前記担体のBET比表面積が0.9m/g担体未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルキレンオキシド製造用触媒。
  5. 前記担体における細孔直径50μm以上である細孔の容積の割合が、全細孔容積の15%未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルキレンオキシド製造用触媒。
  6. 銀、セシウム、リチウム、レニウム、ならびにタングステン、モリブデン、バナジウムおよびクロムから選択される少なくとも一種の元素を含む触媒前駆体溶液を、α−アルミナを主成分として含む担体に含浸させること;
    前記触媒前駆体溶液を含浸させた前記担体に、120℃以上450℃未満で第1の熱処理を施し、第1熱処理物を得ること;ならびに
    前記第1熱処理物に、450℃以上800℃以下で第2の熱処理を施し、第2熱処理物を得ること、
    を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルキレンオキシド製造用触媒の製造方法。
  7. 前記第1の熱処理を酸素含有雰囲気中で行い、および前記第2の熱処理を不活性ガス雰囲気中で行う、請求項6に記載のアルキレンオキシド製造用触媒の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルキレンオキシド製造用触媒を用いて、分子状酸素含有ガスによりアルケンを気相酸化することを含む、アルキレンオキシドの製造方法。
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