JP2017132918A - 摩擦材 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドラムブレーキに備えられるブレーキシューのライニングとして用いる摩擦材であって、ドラムに摩擦材が摩擦接触してドラムが振動することに起因するブレーキ鳴きを抑制することのできる摩擦材の提供。【解決手段】ドラムに接触する第一の摩擦材層34とドラムブレーキのシュー31に固定される第二の摩擦材層35とが一体となったドラムブレーキ用ライニングである摩擦材33であって、第二の摩擦材層35が、エラストマー及び多孔質充填材を含む摩擦材。多孔質充填材がバーミキュライトであり、エラストマーがアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のうちの少なくとも1種であることが好ましい摩擦材33。第二の摩擦材層35中のエラストマーの含有量が、0.5〜20質量%であり、多孔質充填材の含有量が、0.5〜20質量%であることが、好ましい、摩擦材33。【選択図】図1

Description

本発明は摩擦材に関し、より詳しくは、乗用車、商用車、産業機械、鉄道車両、荷物車両等に搭載されるドラムブレーキに備えられるブレーキシューのライニングとして用いる摩擦材に関する。
ドラムブレーキは、軸とともに回転する円筒形状の部材(ドラム)に対し摩擦材(ライニング)を押し当て、運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで制動力を得るものであり、ドラムの外側に摩擦材を押し当てる外接式と、内側に押しつける内接式と、外側と内側の両方に押しつける内外接式の3種類のものが使用されている。
摩擦材は、これを支持するシューに固定されて使用され、摩擦材が固定されたシュー(ブレーキシュー)を回転するドラムに油圧ピストンの力で、又は、エアー圧で押し付けることによって摩擦力を発揮し、その摩擦力(運動エネルギー)を熱エネルギーに変換して制動させる。
摩擦材とシューとの固定は、接着剤を用いて摩擦材とシューを当接させて固定する方法、リベット又はボルトとナット等の固定具を用いて固定する方法等によりなされている。一般に、比較的小型のブレーキシューでは接着剤により摩擦材とシューとの固定がなされ、鉄道車両等に用いる大型のブレーキシューでは固定具を用いて摩擦材とシューとの固定がなされている。
ドラムブレーキ用ライニングとして用いる摩擦材は、上記したように回転するドラムに摩擦接触し、運動エネルギーを熱エネルギーに変えて制動力を発生させる役割を担っているため、優れた耐熱性、耐摩耗性、摩擦性能等が要求され、さらには制動時のブレーキ鳴きが発生しにくいこと(鳴き特性)も重要な特性として要求されている。
ブレーキ鳴きは摩擦材とドラムとの間で発生する摩擦力が原因となって発生する振動現象であり、一般的に、降温時や降坂等の熱履歴を受けた際に顕著に発生する。
ドラムブレーキの鳴きを改善するために、例えば特許文献1では、ドラムとシューの間に介装されるライニングであって、前記ドラムの内面に摩擦接触する摩擦材と前記シューに固着される制振材とが一体的に形成され、前記制振材が5〜30容積%の粘弾性材料を含むドラムブレーキのライニングが提案されている。
また、ライニングを複数の層から構成し、鳴き特性を改善しようとする技術についてはいくつか提案がなされている。例えば、特許文献2では、繊維基材、樹脂結合剤、カシューダスト及びその他の充填剤を含む摩擦面側摩擦材層と、耐熱強度の強い樹脂を結合剤とし、前記カシューダストの少なくとも一部をゴム粉末に置換えた他は前記摩擦面側摩擦材層と同じ組成である裏板側摩擦材層とを具備する摩擦材が提案され、特許文献3では、石綿以外の繊維成分とフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂成分と黒鉛、硫酸バリウム等の充填材粉末成分とを含有する摩擦材において、摩擦面と平行に摩擦材構成成分が少なくとも一種以上互いに異なる、または摩擦材構成成分の含有比率が互いに異なる2層から成る非石綿系摩擦材が提案されている。
特開平8−28616号公報 特開平7−292348号公報 特開平5−331452号公報
摩擦材がシューに接着剤で固定されたブレーキシューでは制動時のブレーキ鳴きは比較的抑えやすいが、固定具を用いて摩擦材が固定されたブレーキシューは、使用していくうちにシューと摩擦材の間に隙間が開いたり歪んだりしてしまい、その場合に鳴きが発生しやすく、制動時に不快な騒音が発生することがある。上記の従来技術では依然鳴きが発生してしまい、改善の余地が残されていた。
そこで、本発明は、ドラムブレーキに備えられるブレーキシューのライニングとして用いる摩擦材であって、ドラムに摩擦材が摩擦接触してドラムが振動することに起因するブレーキ鳴きを抑制することのできる摩擦材を提供することにある。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、ドラムブレーキ用ライニングである摩擦材を、ドラムに摩擦接触する第一の摩擦材層と、ドラムブレーキのシューに固定される第二の摩擦材層とから構成し、第二の摩擦材層に特定の二種の材料を配合することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記(1)〜(5)により達成されるものである。
(1)ドラムに接触する第一の摩擦材層とドラムブレーキのシューに固定される第二の摩擦材層とが一体となったドラムブレーキ用ライニングである摩擦材であって、前記第二の摩擦材層が、エラストマー及び多孔質充填材を含むことを特徴とする摩擦材。
(2)前記多孔質充填材が、バーミキュライトであることを特徴とする前記(1)に記載の摩擦材。
(3)前記エラストマーが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のうちの少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の摩擦材。
(4)前記第二の摩擦材層中の前記エラストマーの含有量が、0.5〜20質量%であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の摩擦材。
(5)前記第二の摩擦材層中の前記多孔質充填材の含有量が、0.5〜20質量%であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の摩擦材。
本発明の摩擦材は、ドラムに摩擦接触する第一の摩擦材層と、ドラムブレーキのシューに固定される第二の摩擦材層とを一体成形して成り、第二の摩擦材層にエラストマー及び多孔質充填材を配合するので、ドラムブレーキの鳴き特性、特にドラムに摩擦材が摩擦接触してドラムブレーキが振動することに起因する鳴き特性を大幅に抑制できるという効果を奏する。
本発明の摩擦材の一実施形態を説明するための断面図である。 ドラムブレーキ(ツーリーディング式)の一般的な構成を説明するための図である。 参考例、実施例及び比較例で得られた摩擦材について、ドラムアッシー加振によるドラム減衰比を測定した結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の摩擦材の一実施形態を説明するための断面図であり、図2は、ドラムブレーキ(ツーリーディング式)の一般的な構成を説明するための図である。
図2に示したように、ドラムブレーキ10は、車輪(図示せず)と共に回転するドラム(ブレーキドラム)6の内側に、一対の弓形のブレーキシュー3がバッキングプレート5上に支持されており、各ブレーキシュー3は、その端部がホイールシリンダ7のピストン7aに係合し、ホイールシリンダ7の作動によりドラム6に押し付けられて制動力を発生する。また、バッキングプレート5上に支持した操作レバー(不図示)を操作することによって、各ブレーキシュー3をドラム6に押し付けてブレーキを作動することができるように構成されている。
ブレーキシュー3は、円弧状のシュー(リム)31と、シュー31の内側に溶接などにより固定された弓形のウェブ32と、シュー31の外側に固着されてドラム6の内周面に摺接可能な摩擦材(ライニング)33とを備える。
図1に示したように、摩擦材33には所定の間隔をあけて複数の取付孔33aが形成され、シュー31には前記取付孔33aに対向する位置に透孔31aが形成され、取付孔33a及び透孔31aにリベット4を挿通して加締めることにより、摩擦材33がシュー31に固定されてブレーキシュー3が作製される。
本発明において、摩擦材33は、図1に示したように、ドラム6に接触し、摩擦面34aを形成する第一の摩擦材層34と、シュー31に固定される第二の摩擦材層35とを備え、第一の摩擦材層34と第二の摩擦材層35は一体となるように成形されている。
第一の摩擦材層34は、回転する円筒形状のドラム6に摩擦接触し、制動力を発生させる層である。第一の摩擦材層34は、摩擦作用を与え、かつその摩擦性能を調整する摩擦調整材、補強作用を有する繊維状物質からなる繊維基材、これらの成分を一体化する結合材等の材料からなる。
摩擦調整材としては、例えば、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、マイカ等の無機充填材、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、酸化クロム、四三酸化鉄、クロマイト等の研削材、銅、アルミニウム、青銅、亜鉛等の金属粉末、レジンダスト、カシューダスト、メラミンダスト、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の有機充填材、黒鉛(グラファイト)、三硫化アンチモン、二硫化モリブデン、コークス、硫化錫、硫化亜鉛、硫化鉄、硫化銅、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の固体潤滑材等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第一の摩擦材層34中の摩擦調整材の含有量は、所望する摩擦係数に応じて適宜調整すればよい。
繊維基材としては、有機繊維、無機繊維、金属繊維等が使用される。有機繊維としては、例えば、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、耐炎性アクリル繊維等が使用され、無機繊維としては、例えば、チタン酸カリウム繊維やアルミナ繊維等のセラミック繊維、生体溶解性無機繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール等が使用され、また、金属繊維としては、例えば、銅繊維やスチール繊維等が使用される。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第一の摩擦材層34中の繊維基材の含有量は、摩擦材としての十分な機械強度を確保するための量を適宜調整すればよい。
結合材(バインダー)としては、例えば、ストレートフェノール樹脂や、キシレン変性フェノール樹脂、カシュー変性樹脂、シリコーンゴム変性フェノール樹脂、アクリルゴム変性フェノール樹脂、ニトリルゴム変性フェノール樹脂等の変性したフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第一の摩擦材層34中の結合材の含有量は、摩擦材としての十分な機械強度、耐摩耗性を確保するための量を適宜調整すればよい。
第二の摩擦材層35は、シュー31に十分な強度で固定され、シュー31と摩擦材33全体との密着性を向上させ、ブレーキシュー3の減衰性を高める層である。ブレーキシュー3の減衰性が高まることによりドラム6の減衰性も高まり、制動時のブレーキ鳴きの発生を抑制することができる。
第二の摩擦材層35は、第一の摩擦材層34と同様に、摩擦調整材、繊維基材、結合材等の材料からなる。摩擦調整材、繊維基材、結合材としては、上記第一の摩擦材層34で例示した材料を使用することができる。
第二の摩擦材層35中の摩擦調整材の含有量は、50〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
第二の摩擦材層35中の繊維基材の含有量は、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
第二の摩擦材層35中の結合材の含有量は、5〜20質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
本発明において、第二の摩擦材層35は、エラストマー及び多孔質充填材を含む。ドラムに摩擦接触する摩擦材にエラストマーを添加し鳴き特性を改善することが一般に行われているが、エラストマーを多量に(10質量%以上)含有させると、摩擦材のフェード特性、高速効力が低下する傾向があるため、鳴き特性の改善には限界があった。本発明では、摩擦材33を第一の摩擦材層34と第二の摩擦材層35の二層で構成し、ドラム6に接触しない第二の摩擦材層35にエラストマーと多孔質充填材をともに含有させる。第二の摩擦材層35中にエラストマー及び多孔質充填材が含まれることにより、気孔率をアップさせ、よりダンピング特性を向上させ、ドラムの減衰性が高まり、制動時のブレーキ鳴きの発生を抑制できると推測される。
エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも本発明の効果がさらに高まるという観点から、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)又はこれらの組み合わせが好ましい。
エラストマーの平均粒子径は特に制限されないが、本発明の効果が向上するという観点から、20〜800μmであるのが好ましく、40〜400μmであるのがより好ましい。
なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。
第二の摩擦材層35中のエラストマーの含有量は、0.5〜20質量%であることが好ましい。エラストマーの含有量が0.5質量%以上であると、制動時のブレーキ鳴きの発生を抑制することができ、20質量%以下であると、ダンピング特性を維持し強度も確保できるとともに摩擦材特性として必要なフェード特性と高速効力を損なうことがない。第二の摩擦材層35中のエラストマーの含有量は、5〜20質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。
多孔質充填材としては、例えば、無機多孔質充填材が挙げられ、例えば、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム水和物、ゼオライト、けいそう土、活性炭、ポーラスシリカ、ポーラスアルミナ等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも本発明の効果がさらに高まるという観点から、バーミキュライトが好ましい。
多孔質充填材の平均粒子径は特に制限されないが、本発明の効果が向上するという観点から、250〜1000μmであるのが好ましく、300〜600μmであるのがさらに好ましい。
第二の摩擦材層35中の多孔質充填材の含有量は、0.5〜20質量%であることが好ましい。多孔質充填材の含有量が0.5質量%以上であると、制動時のブレーキ鳴きの発生を抑制することができ、20質量%以下であると、十分な気孔率の確保ができるとともに摩擦材特性として必要なフェード特性と高速効力を損なうことがない。第二の摩擦材層35中の多孔質充填材の含有量は、5〜20質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。
本発明の摩擦材33は、予め、第一の摩擦材層34を形成する摩擦材混合物と第二の摩擦材層35を形成する摩擦材混合物をそれぞれ作製し、得られた2つの摩擦材混合物を金型に充填して成形することにより一体に成形できる。摩擦材の作製は、公知の製造工程により行うことができ、例えば、予備成形、熱成形、加熱(アフターキュア)を行い、一体成形された摩擦材は、適宜研摩等を行えばよい。
摩擦材を作製する方法としては、まず、上記の各種材料を所定の組成割合で計量し、混合機にて3〜5分混合撹拌する。混合機としては、例えば、アイリッヒミキサー等の一般的なものを用いることができる。次に、この混合された摩擦材混合物を所定量取り分け、ブロック体とするために面圧20〜40MPaで、2〜5秒間加圧し予備成形を行う。その後、成形温度130〜180℃、面圧20〜40MPaで、3〜10分間加熱加圧成形を行う。更に、150〜180℃で加熱炉にて4〜8時間加熱し、完成した成形体を研摩機で所定の幅、厚み、長さに加工する。その後、ブレーキライニングを接着剤やリベットで金属製のシューに固定する。
本発明において、第二の摩擦材層35の厚みは特に制限されないが、1〜5mmであるのが好ましい。
このような工程により得られた摩擦材をシューに取り付けて使用することにより、ブレーキ鳴きを抑制することができる。
なお、上記実施形態では摩擦材がリベットによりシューに固定された形態を示して説明したが、摩擦材とシューを固定する固定具は特に限定されず、その他にボルトとナットを用いて固定してもよい。また、接着剤により摩擦材とシューとを接着し、該接着剤を固化させることにより摩擦材とシューとを固定することもできる。
いずれの方法により摩擦材とシューを固定してもよいが、本発明の摩擦材は固定具を用いてシューに固定された場合に発生するドラムの振動によるブレーキ鳴きの抑制に特に効果がある。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
(参考例1)
表1に記載の配合材料を、アイリッヒミキサーを用いて4分間撹拌し、十分に混練した。得られた混合物を、面圧30MPaで3秒間加圧し、予備成形体を作製した。次いで、予備成形体を金型に投入し、温度150℃、面圧30MPaで7分間加熱加圧成形し、その後、180℃に設定した加熱炉で6時間のアフターキュアを行った。さらに研摩機で巾150mm、厚み12.5mm、長さ178.5mmに加工し、ドラムブレーキ用ブレーキライニングである摩擦材を作製した。
この摩擦材に座繰り機により取付孔を形成し、リベットを用いてシューに固定し、最後に、摩擦面を研摩した。
(実施例1〜6及び比較例1〜2)
参考例1と同様の配合材料を用いて、アイリッヒミキサーを用いて4分間撹拌し、十分に混練することにより、第一の摩擦材層を形成する摩擦材混合物Aを得た。さらに表1に記載の配合材料を用いて、同様に第二の摩擦材層を形成する摩擦材混合物Bを得た。摩擦材混合物Bを予備成形プレスの金型に投入した後、摩擦材混合物Aを投入して、参考例1と同様の予備成形を行い、第一の摩擦材層と第二の摩擦材層とが一体成形された予備成形体を得た。その後、参考例1と同様の条件で熱成形、加熱、研摩を行い、ドラムブレーキ用ブレーキライニングである摩擦材を作製した。第一の摩擦材層の厚みは8.5mm、第二の摩擦材層の厚みは4.0mmとした。
この摩擦材に座繰り機により取付孔を形成し、第二の摩擦材層がシューと接触するようにして摩擦材をリベットを用いてシューに固定し、最後に、摩擦面(第一の摩擦材層の表面)を研摩した。
Figure 2017132918
<摩擦材の評価>
(1)気孔率
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた摩擦材について、JIS D4418に準拠して気孔率を測定した。
また、実施例1の気孔率に対する気孔率上昇率を下記式により算出した。
気孔率上昇率(%)=各例の気孔率−実施例1の気孔率/実施例1の気孔率×100
(2)ブレーキ鳴き
参考例1、実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた摩擦材について、シャシーダイナモに実車を乗せ、以下の条件で試験を行い、鳴き発生回数を測定した。
・摺り合せ:初速度50km/h、減速度2.0m/s、制動開始温度150℃、制動回数300回
・マトリクス:初速度10、20、40、60km/h、減速度1.0〜4.0m/s、制動開始温度50〜250℃(50℃刻み上げ下げ)、制動回数各1回
試験の結果より、70dB以上の鳴きの発生率を下記式により算出した。
鳴き発生率(%)=70dB以上の鳴き発生回数/制動回数×100
上記試験(1)、(2)の結果を表2に示す。
Figure 2017132918
(3)ドラム減衰比
さらに、参考例1、実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた摩擦材について、ドラムアッシー加振によるドラム減衰比を測定した。
ドラムアッシー加振は、摩擦材をドラムブレーキに装着し、摩擦材をドラムの内面に1MPaで加圧し、その状態で目的とする周波数応答が最も高くなるドラムの場所を特定し、その場所をハンマを用いて加振し、ドラム減衰比をFFTアナライザ(株式会社小野測器製)によって算出するというものである。なお、摩擦材のドラム内面に対する加圧は、3MPa又は6MPaで試験を行った。
結果を図3に示す。
表2の結果から、実施例1〜6の摩擦材は、鳴き発生率が参考例1に比べて著しく減少していることがわかった。また、第二の摩擦材層にエラストマーと多孔質充填材の一方しか配合されていない比較例1、2に比べても、実施例1〜6の摩擦材の鳴き発生率は低いものであった。
また、図3の結果から、実施例1〜6の摩擦材は、エラストマーと多孔質充填材の含有量が増えるごとにドラム減衰比が上昇している。このことは、ドラムの内面に摩擦材が摩擦接触してドラムが振動することに起因するブレーキ鳴きを抑制できることを意味しており、エラストマーと多孔質充填材との併用により、ブレーキ鳴きを抑制できることがわかった。
3 ブレーキシュー
31 シュー(リム)
31a 透孔
32 ウェブ
33 摩擦材(ライニング)
33a 取付孔
34 第一の摩擦材層
34a 摩擦面
35 第二の摩擦材層
4 リベット
5 バッキングプレート
6 ドラム(ブレーキドラム)
7 ホイールシリンダ
7a ピストン
10 ドラムブレーキ

Claims (5)

  1. ドラムに接触する第一の摩擦材層とドラムブレーキのシューに固定される第二の摩擦材層とが一体となったドラムブレーキ用ライニングである摩擦材であって、
    前記第二の摩擦材層が、エラストマー及び多孔質充填材を含むことを特徴とする摩擦材。
  2. 前記多孔質充填材が、バーミキュライトであることを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
  3. 前記エラストマーが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦材。
  4. 前記第二の摩擦材層中の前記エラストマーの含有量が、0.5〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦材。
  5. 前記第二の摩擦材層中の前記多孔質充填材の含有量が、0.5〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の摩擦材。
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