JP2017090065A - 時計部品および時計部品の製造方法 - Google Patents

時計部品および時計部品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2017090065A
JP2017090065A JP2015216181A JP2015216181A JP2017090065A JP 2017090065 A JP2017090065 A JP 2017090065A JP 2015216181 A JP2015216181 A JP 2015216181A JP 2015216181 A JP2015216181 A JP 2015216181A JP 2017090065 A JP2017090065 A JP 2017090065A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
core
balance
wheel
hairspring
coating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015216181A
Other languages
English (en)
Inventor
智夫 池田
Tomoo Ikeda
池田  智夫
洋輔 阿部
Yosuke Abe
洋輔 阿部
優作 仁井田
Yusaku Niida
優作 仁井田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Citizen Watch Co Ltd
Original Assignee
Citizen Watch Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Citizen Watch Co Ltd filed Critical Citizen Watch Co Ltd
Priority to JP2015216181A priority Critical patent/JP2017090065A/ja
Publication of JP2017090065A publication Critical patent/JP2017090065A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Micromachines (AREA)

Abstract

【課題】組み立て精度が高く、かつ、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えた時計部品を提供すること。
【解決手段】ひげぜんまい108およびテン輪109が固定されたテン芯109aと、当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109と、の外表面を被覆する一続きの被膜301と、を備えたテンプ104を構成した。これにより、テン芯109aにひげぜんまい108あるいはテン輪109を組み付ける際に被覆が障害となって組み立て精度が低下することを防止できるので、組み立て精度が高く、かつ、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えた時計部品を提供することができる。
【選択図】図3

Description

この発明は、機械式時計の時計部品および時計部品の製造方法に関する。
機械式時計の駆動機構(ムーブメント)は、ひげぜんまいやテン輪などによって構成される調速機構(テンプ)を備えている。ひげぜんまいおよびテン輪はテン芯に固定されており、時計においてひげぜんまい、テン輪およびテン芯は一体的に動作する。従来、金属材料を加工して製造されたひげぜんまいが広く用いられていたが、近年、金属材料に代えて、水晶やシリコンなどの結晶構造を有する材料をエッチング加工することによって製造されたひげぜんまいを用いた時計があった。
水晶製やシリコン製のひげぜんまいは、金属製のひげぜんまいよりも加工精度のばらつきが抑えられ高精度に製造できるため、計時精度の向上を図ることができる一方で、脆性材料であるため耐衝撃性に劣る。このため、従来、たとえば、シリコン製のひげぜんまいの外表面を、酸化ケイ素(SiO2)などの非晶質材料によって形成された膜や、金属製の膜によって被覆することで、ひげぜんまいの耐衝撃性の向上を図るようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1、2を参照。)。
特表2008−544290号公報 特許第5599917号公報
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に記載された従来の技術は、シリコン製のひげぜんまいを、膜によって被覆した後に組み立てに供するため、テン芯に組み付ける段階におけるひげぜんまいの寸法精度が低下してしまい、エッチング加工によって高精度に製造されたひげぜんまいを用いても、ムーブメントの組み立て不良が発生することがあるという問題があった。
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、高い組み立て精度を確保し、かつ、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えた時計部品および時計部品の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる時計部品は、機械式時計のテンプを構成するひげぜんまいおよびテン輪と、前記ひげぜんまいおよび前記テン輪が固定されたテン芯と、前記テン芯と、当該テン芯に固定されたひげぜんまいおよびテン輪と、の外表面を被覆する一続きの被膜と、を備えたことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記の発明において、前記ひげぜんまいが、シリコンによって形成され、前記被膜が、シリコンより柔軟性の高い樹脂によって形成されていることを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記の発明において、前記被膜が、パラキシリレン系ポリマーによって形成されていることを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記の発明において、前記被膜が、前記テン芯の軸芯方向における両端部であって、当該テン芯を支持する支持部材と接触する位置には設けられていないことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記の発明において、前記被膜が、前記ひげぜんまいと前記テン芯との間、および、前記テン輪と前記テン芯との間には設けられていないことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計の製造方法は、機械式時計のテンプを構成する時計部品の製造方法であって、テン芯にひげぜんまいおよびテン輪を固定する固定工程と、前記固定工程において前記ひげぜんまいおよび前記テン輪が固定された前記テン芯の軸芯方向における両端部を固定した状態で、前記テン芯と、当該テン芯に固定されたひげぜんまいおよびテン輪と、の外表面を被覆する一続きの被膜を一括して形成する被膜形成工程と、を含んだことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計の製造方法は、上記の発明において、パラキシリレン系ポリマーを用いた気相蒸着重合法により、被膜を形成することを特徴とする。
この発明にかかる時計部品および時計部品の製造方法によれば、組み立て精度が高く、かつ、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えた時計部品および時計を提供することができるという効果を奏する。
機械式時計の駆動機構を示す説明図である。 ひげぜんまいの構造を示す説明図である。 テンプの構造を示す説明図である。 図3の一部を拡大して示す説明図である。 治具を用いて気相蒸着重合法をおこなっているところを示す説明図である。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる時計部品および当該時計部品の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
まず、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される、この発明にかかる実施の形態の時計部品が組み込まれる時計の駆動機構として、機械式時計の駆動機構について説明する。図1は、機械式時計の駆動機構を示す説明図である。図1においては、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される、この発明にかかる実施の形態の時計部品が組み込まれる機械式時計の駆動機構を示している。
図1において、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される時計部品が組み込まれる機械式時計の駆動機構101は、香箱102、脱進機103、調速機構(テンプ)104、輪列105などを備えている。香箱102は、薄い円筒形状をなす箱の内側に、図示を省略する動力ぜんまいを収容している。香箱102の外周部には香箱車と呼ばれる歯車が設けてあり、輪列105を構成する二番車と噛み合っている。
動力ぜんまいは、巻回された状態の長尺状の金属薄板であって、香箱102の中に収容されている。動力ぜんまいの中心の端部(巻回された状態において内周側に位置する端部)は、香箱102の中心軸(香箱真)に取り付けられている。動力ぜんまいの外側の端部(巻回された状態において外周側に位置する端部)は、香箱102の内面に取り付けられている。
脱進機103は、がんぎ車106およびアンクル107によって構成される。がんぎ車106は、カギ型の歯を備えた歯車であって、がんぎ車106の歯はアンクル107に噛み合う。アンクル107は、がんぎ車106の歯に噛み合うことによってがんぎ車106の回転運動を往復運動に変換する。
テンプ104は、ひげぜんまい108やテン輪109などによって構成される。ひげぜんまい108とテン輪109とは、テン輪109の中心に設けられたテン芯109aによって連結されている。ひげぜんまい108は、巻回された状態の長尺状の部材であって、渦巻き形状をなしている(図2を参照)。ひげぜんまい108は、機械式時計に組み込まれて駆動機構101を構成した状態において、優れた等時性を示すように設計されている。
テンプ104は、ひげぜんまい108のバネ力による伸縮によって、規則正しく往復運動をおこなうことができる。テン輪109は、リング形状をなし、アンクル107からの反復運動を調節・制御して、一定速度の振動を保つ。テン輪109は、テン輪109がなすリング形状の内側には、テン芯109aから放射状に延設するアームが設けられている。
輪列105は、香箱102からがんぎ車106の間に設けられて、それぞれが噛み合わされた複数の歯車によって構成される。具体的には、輪列105は、二番車110、三番車111、四番車112などによって構成される。香箱102の香箱車は、二番車110と噛み合っている。四番車112には秒針113が装着され、二番車110には分針114が装着されている。図1においては、時針や各歯車を支持する地板などは図示を省略する。
駆動機構101においては、動力ぜんまいの中心は逆回転できないように香箱102の中心(香箱真)に固定されており、動力ぜんまいの外側の端部は香箱の内周面に固定されているため、香箱102の中心(香箱真)に巻き付けられた動力ぜんまいが元に戻ろうとすると、巻き上げられた方向と同じ方向にほどけようとする動力ぜんまいの外側の端部に付勢されて、香箱102が巻き上げられたぜんまいがほどける方向と同じ方向に回転する。香箱102の回転は、二番車110、三番車111、四番車112に順次伝達され、四番車112からがんぎ車106に伝達される。
がんぎ車106にはアンクル107が噛み合っているため、がんぎ車106が回転すると、がんぎ車106の歯(衝撃面)がアンクル107の入り爪を押し上げ、これによってアンクル107におけるテンプ104側の先端がテンプ104を回転させる。テンプ104が回転すると、アンクル107の出爪が即座にがんぎ車106を停止させる。テンプ104がひげぜんまい108の力で逆回転すると、アンクル107の入り爪が解除され、がんぎ車106が再び回転する。
このように、調速機構104は、等時性のあるひげぜんまい108の伸縮によってテンプ104に規則正しい往復回転運動を繰り返させ、脱進機103は、テンプ104に対して往復運動するための力を与え続けるとともに、テンプ104からの規則正しい振動によって輪列105における各歯車を一定速度で回転させる。がんぎ車106、アンクル107、テンプ104は、テンプ104の往復運動を回転運動に変換する調速機構を構成する。
(ひげぜんまい108の構造)
図2は、ひげぜんまい108の構造を示す説明図である。図2においては、ひげぜんまい108を図1における矢印X方向から見た平面図と、当該平面図におけるA−A断面と、を示している。図2において、ひげぜんまい108は、細いコイル形状のぜんまい部201を備えている。また、ひげぜんまい108は、細いコイル形状のぜんまい部201における、内周側の端部に設けられたひげ玉202を備えている。
ぜんまい部201とひげ玉202とは、接続部202aによって接続されている。ぜんまい部201は、接続部202aを介して、ひげ玉202を中心にひげ玉202を巻回するコイル形状をなす。さらに、ひげぜんまい108は、細いコイル形状のぜんまい部201における、外周側の端部に設けられたひげ持203を備えている。ひげ持203は、テンプ104を支持するテンプ受(図示を省略する)に固定される。
図2において、符号tは、ひげぜんまい108の厚さ寸法を示している。ひげぜんまい108の厚さ寸法は、後述する積層基板(SOI基板)におけるSi層の板厚寸法または、シリコン単結晶基板から形成される厚さ方向の寸法に応じて定められる。図2において、符号wは、ひげぜんまい108の平面視における幅寸法を示している。
ひげぜんまい108の幅寸法は、ひげぜんまい108における位置に応じて異ならせてもよい。すなわち、ひげぜんまい108におけるぜんまい部201の一部の幅寸法をwとし、別の一部の幅寸法をwよりも大きい寸法としてもよい。具体的には、たとえば、ひげぜんまい108の長さ方向(ひげ玉202から渦巻きに沿って外周側のひげ持203までの方向)において、特定の位置の幅寸法を選択的に異ならせてもよい。これにより、ひげぜんまい108の柔軟性あるいは伸縮性を低下させることなく、強度を効果的に高めることができる。
(テンプ104の構造)
つぎに、テンプ104の構造について説明する。図3は、テンプ104の構造を示す説明図である。図4は、図3の一部を拡大して示す説明図である。図3および図4においては、テンプ104を、テン芯109aの軸方向に沿って切断した断面を示している。
図3において、テンプ104は、ひげぜんまい108とテン輪109とを、ひげぜんまい108およびテン輪109の中心においてテン芯109aに固定することによって構成されている。また、テンプ104は、図示を省略する振り石や、振り石をテン芯109aに固定する振り座(大ツバ、小ツバ)などを備えている。
ひげぜんまい108は、シリコン(Si)によって形成することができる。具体的に、シリコン製のひげぜんまい108は、たとえば、シリコン単結晶基板あるいは積層基板(SOI基板)を、図2に示したひげぜんまい108の形状にエッチング加工することによって形成することができる。
SOI基板は、支持層、酸化膜(Box層)および活性層(Si層)の3つの層が、厚さ方向に沿って支持層、酸化膜、活性層の順で積層されて構成されている。SOI基板において、活性層は、シリコンによって形成されている。SOI基板を用いる場合、ひげぜんまい108は、たとえば、活性層に対して、深掘りRIE技術によるエッチング加工をおこなうことによって形成する。
SOI基板において、酸化膜は、深掘りRIE技術によるエッチング加工をおこなう際のストッパとして機能する。シリコン製のひげぜんまい108の製造に際しては、シリコン単結晶基板あるいはSOI基板における活性層の表側面に、ひげぜんまい108の形状に基づいたマスクを形成し、当該マスクを用いたエッチング加工をおこなう。マスクの形成やエッチング加工については、公知の技術を用いて容易に実現することができるため、説明を省略する。
テン輪109は、真鍮などの金属を用いて形成することができる。テン芯109aは、鉄などの金属を用いて形成することができる。テン芯109aは、両端部において図示を省略する支持部材などによって支持され、計時に際しては、軸心周りに回転する。テン芯109aを、鉄などの硬い材料を用いて形成することにより、落下などによる衝撃に対する耐性を確保するとともに、テン芯109aの強度を支持部材との間における摩擦によるテン芯109aの摩耗を抑制することができる。
図3および図4に示すように、テンプ104において、ひげぜんまい108、テン輪109およびテン芯109aの外表面には、被膜301が設けられている。被膜301は、テン芯109aと、当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109と、の外表面を一様に被覆している。被膜301は、一続きに連続しており、ひげぜんまい108とテン芯109aとの境界部分、および、テン輪109とテン芯109aとの境界部分においても継ぎ目がない。
被膜301は、テン芯109aの、長さ方向の両端部には設けられていない。より具体的には、被膜301は、テン芯109aが駆動機構101に組み込まれた状態において、テン芯109aとテン芯109aを支持する支持部材とが接触する位置を避けた位置に設けられている。このため、テン芯109aの両端においては、鉄など、テン芯109aを形成する材料が露出している。また、被膜301は、ひげぜんまい108とテン芯109aとの間、および、テン輪109とテン芯109aとの間には設けられていない。
被膜301は、たとえば、樹脂材料を用いて形成することができる。より具体的には、被膜301は、たとえば、パラキシリレン系ポリマーなどの樹脂材料を用いて形成することができる。パラキシリレン系ポリマーは、有機化合物のポリマーであって、ひげぜんまい108の表面において重合反応を起こさせることによって薄膜状に形成されている。パラキシリレン系ポリマーは、コンフォーマル被覆性に優れている。すなわち、パラキシリレン系ポリマーを用いることにより、たとえば、腕時計に用いられる時計部品のように、微細で、溝・孔・エッジ部分などにより複雑な形状であっても、ピンホールがなく均一膜厚の被膜301を形成することができる。
図4に示すように、パラキシリレン系ポリマーなどの樹脂材料を用いて形成された被膜301は、平滑な表面性を示し、エッジ部分においてR形状を示す。これにより、テンプ104の美観を向上させ、駆動機構の一部を外部から見えるようにしたデザインの時計において時計の美観を向上させることができる。
(テンプ104の製造方法)
つぎに、テンプ104の製造方法について説明する。テンプ104の製造に際しては、まず、テン芯109aにひげぜんまい108およびテン輪109を固定する(固定工程)。ひげぜんまい108やテン輪109は、たとえば、テン芯109aを固定した状態で、当該テン芯109aにひげぜんまい108やテン輪109をそれぞれ圧入することによって固定することができる。
つぎに、ひげぜんまい108およびテン輪109が固定されたテン芯109aを固定する。テン芯109aは、たとえば、専用の治具を用いて、テン芯109aの軸芯方向における両端部を固定する(図5を参照)。
そして、テン芯109aが固定された状態において、テン芯109aと、当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109と、の外表面に被膜301を形成する(被膜301形成工程)。被膜301は、たとえば、テン芯109aと、当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109との外表面に、樹脂材料を設けることによって形成することができる。
より具体的には、被膜301は、たとえば、テン芯109aと、当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109との外表面に、気相蒸着重合法によってパラキシリレン系ポリマーを設けることによって形成することができる。気相蒸着重合法は、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)の一つであり、気相蒸着重合法を用いて形成される被膜301は、ひげぜんまい108の表面において重合反応を起こさせることによって薄膜状に形成される。
化学気相成長により被膜301を形成することによって、物理気相成長(PVD)により形成した被膜301と比較して、テン芯109a、ひげぜんまい108およびテン輪109の外表面に、コンフォーマル被覆性が優れた被膜301を形成することができる。上記のように、パラキシリレン系ポリマーを用いて被膜301を形成することにより、エッジ部分においてはR形状が形成される。これにより、被膜301を形成するだけで、テンプ104の表面を別途研磨するなどの作業をおこなうことなく、平滑性および美観に優れたテンプ104を形成することができる。
(治具の使用方法)
つぎに、気相蒸着重合法による被膜301の形成について説明する。図5は、治具を用いて気相蒸着重合法をおこなっているところを示す説明図である。テンプ104に被膜301を形成する際は、まず、図5に示すように、テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109の下側半分程度が、治具500における配置部501内に収まるようにして、テン芯109aの両端を溝502に嵌め込む。
つぎに、設置台503の上面に固定板504を載置する。これにより、ひげぜんまい108およびテン輪109が固定されたテン芯109aを下側から支えている状態で、溝502の上側が塞がれるので、テン芯109aの両端を設置台503と固定板504とによって挟み込むことができ、ひげぜんまい108およびテン輪109が固定されたテン芯109aを支持することができる。このとき、テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109の上側は、開口505から突き出た状態となる。
つぎに、テン芯109a(ひげぜんまい108およびテン輪109が固定されたテン芯109a)を保持した状態の治具500とともに、パラキシリレン系ポリマーを用いた気相蒸着重合をおこなう。これにより、テン芯109a、ひげぜんまい108およびテン輪109の外表面に、被膜301を形成することができる。このとき、テン芯109aのうち、溝903に位置付けられている部分には被膜301が形成されない。
このように、図5に示した治具500を用いて、テン芯109aの両端を溝903に嵌め込んで保持することで、ひげぜんまい108およびテン輪109が固定されたテン芯109aを支えるとともに、テン芯109aの両端部分には被膜301が形成されないようにマスクすることができる。これにより、テン芯109aの両端部分に被膜301が形成されないようにマスクする手間を省くことができ、また、テン芯109aの両端部分以外はすべて一続きの被膜301を形成することができる。
上述した説明においては、治具500のような治具を用いることによって、テン芯の軸芯方向における両端部で、テン芯109aを支持する支持部材と接触する位置に、被膜301を形成しないようにしたが、気相蒸着重合法による被膜301の形成に際しては、治具を用いなくてよい。たとえば、テン芯109aの両端部を被膜301が形成されないようにあらかじめマスキングしておき、テンプ104を気相蒸着重合で被膜301を形成したのちにマスキングを除去することにより、テン芯109aの軸芯方向における両端部に、被膜301が形成されないようにしてもよい。あるいは、あらかじめテン芯109aの両端部を軸心方向に長く設計して製造し、気相蒸着重合で被膜301を形成したのちに、109aの両端部を所定の長さまで削ることにより、テン芯109aの軸芯方向における両端部に、被膜301が形成されないようにしてもよい。いずれの場合にあっても、テン芯109aの軸芯方向における両端部であって、テン芯109aを支持する支持部材と接触する位置には、被膜301が形成されない。
上述した実施の形態においては、テン芯109aと当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109との外表面を一続きの被膜301によって被覆する例について説明したが、被膜301を設ける時計部品は、テンプ104に限るものではない。被膜301は、別の部品との接触や摺動がない部品に設けることが好ましい。
被膜301は、具体的には、たとえば、一体的に動作する複数の時計部品の外表面を一続きに覆うように設けることができる。あるいは、組み立てた後は、動かずに互いの位置関係が一定となる複数の時計部品の外表面を、当該複数の時計部品を組み立てた後に覆う被膜301を設けてもよい。
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の時計部品としてのテンプ104は、機械式時計のテンプ104を構成するひげぜんまい108およびテン輪109が固定されたテン芯109aと、当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109と、の外表面を被覆する一続きの被膜301と、を備えたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品であるテンプ104によれば、テン芯109aと当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109との外表面を一続きの被膜301によって被覆することにより、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えたテンプ104を提供することができる。
また、ひげぜんまい108のみならず、テン輪109にも被膜301を形成することにより、ひげぜんまい108とテン輪109とが接触した場合にも、ひげぜんまい108とテン輪109とのそれぞれに形成された被膜301によって、耐衝撃性を大幅に向上させることができる。
また、一続きの被膜301は、テン芯109aと当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109の外表面を被覆しているため、テン芯109aにひげぜんまい108あるいはテン輪109を組み付ける際に被膜301が障害となって組み立て精度が低下することを防止できる。これにより、組み立て精度が高く、かつ、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えた時計部品を提供することができる。
また、この実施の形態のテンプ104は、ひげぜんまい108がシリコンによって形成され、被膜301がシリコンより柔軟性の高い樹脂によって形成されていることを特徴としている。
この実施の形態のテンプ104によれば、シリコン単結晶基板あるいはSiC基板に対するエッチング加工によって形成されることによって、エッチング加工が施された外表面が粗くなり平滑性が失われた場合にも、樹脂製の被膜301を設けることによって当該外表面を平滑にすることができる。これにより、ひげぜんまい108、ひいては、テンプ104の高い美観を確保することができる。
また、テン芯109aと当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109の外表面を、シリコンよりも柔軟性の高い樹脂によって被覆することにより、ひげぜんまい108の伸縮に支障をきたすことなく、ひげぜんまい108を外部から保護することができる。
これにより、ひげぜんまい108の機能を確保して計時の精度を確保するとともに、テンプ104の美観を確保し、組み立て精度が高く、かつ、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えた時計部品を提供することができる。
また、この実施の形態のテンプ104は、被膜301が、パラキシリレン系ポリマーによって形成されていることを特徴としている。この実施の形態のテンプ104によれば、ひげぜんまい108の側面のように微細な隙間にもピンホールのない薄膜コーティングを形成することができる。
これによっても、ひげぜんまい108の機能を確保して計時の精度を確保するとともに、テンプ104の美観を確保し、組み立て精度が高く、かつ、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えた時計部品を提供することができる。
また、この実施の形態のテンプ104は、被膜301が、テン芯109aの軸芯方向における両端部であって、当該テン芯109aを支持する支持部材と接触する位置には設けられていないことを特徴としている。
この実施の形態のテンプ104によれば、テン芯109aを支持する支持部材と接触する位置に被膜301を設けないことによって、被膜301がテン芯109aの回転動作に支障を来すことを回避して計時の精度を確保することができる。これにより、計時の精度が高く、かつ、組み立て精度の高い、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えたテンプ104を提供することができる。
また、この実施の形態のテンプ104は、被膜301が、ひげぜんまい108とテン芯109aとの間、および、テン輪109とテン芯109aとの間には設けられていないことを特徴としている。
この実施の形態のテンプ104によれば、ひげぜんまい108とテン芯109a、および、テン輪109とテン芯109aとを直接接触させた状態で、テンプ104を組み立てることができる。これにより、各部品どうしの間に被膜301が存在することにより組み立ての精度が低下することを防止し、組み立て精度が高く、かつ、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えた時計部品を提供することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品としてのテンプ104の製造方法は、テン芯109aにひげぜんまい108およびテン輪109を固定し、ひげぜんまい108およびテン輪109が固定されたテン芯109aの軸芯方向における両端部を固定した状態で、テン芯109aと当該テン芯109aに固定されたひげぜんまい108およびテン輪109との外表面を被覆する一続きの被膜301を一括して形成するようにしたことを特徴としている。
この実施の形態のテンプ104の製造方法によれば、テン芯109aにひげぜんまい108およびテン輪109を固定した後に、これらのテン芯109a、ひげぜんまい108およびテン輪109を一括して覆う一続きの被膜301を形成することにより、組み立て精度を低下させることなく、外部からの衝撃に対する高い耐性を備えたテンプ104を、容易かつ確実に製造することができる。
また、この実施の形態のテンプ104の製造方法は、パラキシリレン系ポリマーを用いた気相蒸着重合法により、被膜301を形成することを特徴としている。この実施の形態のテンプ104の製造方法によれば、テン芯109aにひげぜんまい108およびテン輪109を固定した、微細で複雑な形状をした部品であっても、外表面全体に平滑な被膜301を確実に形成することができる。また、柔軟性の高いパラキシリレン系ポリマーを用いて被膜301を形成することにより、被膜301を衝撃に対する緩衝材として機能させ、被膜301によって外部からの衝撃を緩衝することができる。これにより、耐衝撃性を大幅に向上させることができる。
以上のように、この発明にかかる時計部品および時計部品の製造方法は、時計における機械部品を構成する時計部品および時計部品の製造方法に有用であり、特に、機械式時計の駆動機構を構成する時計部品および時計部品の製造方法に適している。
101 駆動機構
102 香箱
103 脱進機
104 調速機構(テンプ)
105 輪列
106 がんぎ車
107 アンクル
108 ひげぜんまい
109 テン輪
109a テン芯
110 二番車
111 三番車
112 四番車
301 被膜

Claims (7)

  1. 機械式時計のテンプを構成するひげぜんまいおよびテン輪と、
    前記ひげぜんまいおよび前記テン輪が固定されたテン芯と、
    前記テン芯と、当該テン芯に固定されたひげぜんまいおよびテン輪と、の外表面を被覆する一続きの被膜と、
    を備えたことを特徴とする時計部品。
  2. 前記ひげぜんまいは、シリコンによって形成され、
    前記被膜は、シリコンより柔軟性の高い樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の時計部品。
  3. 前記被膜は、パラキシリレン系ポリマーによって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の時計部品。
  4. 前記被膜は、前記テン芯の軸芯方向における両端部であって、当該テン芯を支持する支持部材と接触する位置には設けられていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の時計部品。
  5. 前記被膜は、前記ひげぜんまいと前記テン芯との間、および、前記テン輪と前記テン芯との間には設けられていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の時計部品。
  6. 機械式時計のテンプを構成する時計部品の製造方法であって、
    テン芯にひげぜんまいおよびテン輪を固定する固定工程と、
    前記固定工程において前記ひげぜんまいおよび前記テン輪が固定された前記テン芯の軸芯方向における両端部を固定した状態で、前記テン芯と、当該テン芯に固定されたひげぜんまいおよびテン輪と、の外表面を被覆する一続きの被膜を一括して形成する被膜形成工程と、
    を含んだことを特徴とする時計部品の製造方法。
  7. 前記被膜形成工程は、パラキシリレン系ポリマーを用いた気相蒸着重合法により、前記被膜を形成することを特徴とする請求項6に記載の時計部品の製造方法。
JP2015216181A 2015-11-02 2015-11-02 時計部品および時計部品の製造方法 Pending JP2017090065A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015216181A JP2017090065A (ja) 2015-11-02 2015-11-02 時計部品および時計部品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015216181A JP2017090065A (ja) 2015-11-02 2015-11-02 時計部品および時計部品の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2017090065A true JP2017090065A (ja) 2017-05-25

Family

ID=58769297

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015216181A Pending JP2017090065A (ja) 2015-11-02 2015-11-02 時計部品および時計部品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2017090065A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5496034B2 (ja) 時計てんぷ用の平ひげぜんまい、およびてん輪/ひげぜんまいアセンブリ
US8591101B2 (en) Escapement governor, mechanical watch, pallet fork (incomplete) manufacturing method, and roller manufacturing method
JP5122073B2 (ja) ひげゼンマイ付きテンプの調速機とその製造方法
EP3232277B1 (en) Timepiece component and method for manufacturing timepiece component
JP2017534892A (ja) モノリシック時計レギュレータ、そのような時計レギュレータを有する時計ムーブメントおよび時計
JP5366318B2 (ja) デテント脱進機およびデテント脱進機の作動レバーの製造方法
RU2699924C1 (ru) Часовой подвижный узел с однонаправленным зубчатым колесом
JP5872181B2 (ja) 機械部品、機械組立体および時計
JP5366319B2 (ja) デテント脱進機およびそれを有する機械式時計
JP5964089B2 (ja) 時計用回転錘および時計用回転錘を備えた時計
JP2016133494A (ja) 時計部品の製造方法および時計部品
JP2017090065A (ja) 時計部品および時計部品の製造方法
JP6249480B2 (ja) 時計用部品、ムーブメント、時計、および時計用部品の製造方法
JP6444059B2 (ja) てんぷ、調速機、ムーブメントおよび時計
JP6853077B2 (ja) 時計部品、ムーブメントおよび時計
JP6736365B2 (ja) 時計部品の製造方法
JP6585968B2 (ja) ぜんまい及びぜんまいの製造方法
JP2021081299A (ja) 時計用部品及び時計
JP2020134226A (ja) ひげぜんまい、てんぷ、時計用ムーブメントおよび時計
JP2015152402A (ja) 磁気軸受構造、ムーブメントおよび時計
JP7476768B2 (ja) テンプ、ムーブメント、機械式時計およびテンプの製造方法
JP6128857B2 (ja) 装飾構造体、回転錘および時計
JP7159077B2 (ja) 温度補償型てんぷ、ムーブメント及び時計
JP6721454B2 (ja) 時計用部品
JP6579696B2 (ja) 機械部品、機械部品の製造方法、ムーブメントおよび時計