JP2017089554A - エンジンの制御装置 - Google Patents

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昌彦 藤本
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Abstract

【課題】適正な燃焼を実現しつつ冷却損失をより確実に小さく抑えることのできるエンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】燃焼室6内に超臨界水または亜臨界水を噴射する水噴射装置22を設け、エンジンの運転領域の少なくとも一部に設定された水噴射領域A2において、燃焼室6内で燃料と空気の混合気が燃焼を開始する前かつ圧縮行程の後期に超臨界水または亜臨界水を燃焼室6内に噴射する後段水噴射W2と、圧縮行程の後期よりも前に超臨界水または亜臨界水を燃焼室6内に噴射する前段水噴射W1とを、水噴射装置22に実施させる。
【選択図】図9

Description

本発明は、ピストンが気筒に往復動可能に嵌装されるとともに、前記ピストンの冠面を底面とする燃焼室が前記気筒に区画されたエンジンの制御装置に関する。
従来、エンジンにおいて、燃費性能を高めるべく、燃焼ガスの熱エネルギーが燃焼室の壁面からエンジン外部に放出されることに伴う損失すなわち冷却損失を小さく抑えることが求められている。
これに対して、例えば、特許文献1には、燃焼室の中央部分に燃料を滞留させて燃焼室の外周部分に空気層を形成し、この空気層によって燃焼ガスの熱エネルギーの外部への放出を抑制するエンジンが開示されている。
特開2015−102004号公報
特許文献1のエンジンによれば冷却損失を小さく抑えて燃費性能を高めることができる。しかしながら、このエンジンでは、燃焼室の中央部分に燃料が集中されるため、燃焼室内に局所的にリッチな混合気(燃料の割合が高い混合気)が生成されやすい。そのため、燃焼室内で適正な燃焼が行われずスモーク等が悪化するおそれがある。
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、適正な燃焼を実現しつつ冷却損失をより確実に小さく抑えることのできるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、ピストンが気筒に往復動可能に嵌装されるとともに、前記ピストンの冠面を底面とする燃焼室が前記気筒に区画されたエンジンの制御装置において、前記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給装置と、前記燃焼室内に超臨界水または亜臨界水を噴射する水噴射装置と、前記燃料供給装置と前記水噴射装置とを含むエンジンの各部を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記エンジンの運転領域の少なくとも一部に設定された水噴射領域において、前記燃焼室内で前記燃料と空気の混合気が燃焼を開始する前かつ圧縮行程の後期に前記超臨界水または亜臨界水を前記燃焼室内に噴射する後段水噴射と、前記圧縮行程の後期よりも前に前記超臨界水または亜臨界水を前記燃焼室内に噴射する前段水噴射とを、前記水噴射装置に実施させることを特徴とするエンジンの制御装置を提供する(請求項1)。
本発明によれば、圧縮行程の後期とこれよりも前とに分けて燃焼室内に水が噴射されるため、燃焼室の壁面全体により確実に水による遮熱層を形成することができる。従って、混合気を均質な状態で燃焼させて適正な燃焼を実現しながら、この遮熱層によってより確実に冷却損失を抑えることができる。
具体的には、圧縮行程の後期よりも前のタイミングでは、燃焼室内の圧力が比較的低いため燃焼室に噴射された水のペネトレーション(貫徹力)は比較的高くなる。従って、前段水噴射では、燃焼室の壁面のうち水噴射装置から比較的遠い部分にまで水を到達させることができる。一方、圧縮行程の後期は、燃焼室内の圧力が比較的高いため燃焼室に噴射された水のペネトレーションは比較的低くなる。従って、後段水噴射では、燃焼室の壁面のうち水噴射装置に近い部分に水を滞留させることができる。従って、燃焼室の壁面のより全体に水による遮熱層を形成することができる。
特に、本発明では、前記水として通常の気体の水よりも密度の高い超臨界水または亜臨界水が用いられている。そのため、遮熱層における水の密度を高めて高い断熱効果を得ることができ、冷却損失をより確実に小さくして燃費性能を高めることができる。
なお、本発明において、圧縮行程後期とは、圧縮行程を3つ(初期、中期、後期)に分けたときの後期であり、圧縮上死点前60°CA(クランク角)から圧縮上死点までの期間をいう。
本発明において、前記気筒に吸気を導入するための吸気ポートを開閉する吸気弁を備え、前記制御手段は、前記圧縮行程の後期よりも前かつ前記吸気弁が閉弁した後に、前記水噴射装置に前記前段水噴射を実施させるのが好ましい(請求項2)。
このようにすれば、吸気ポートから吸気が流入するのに伴って燃焼室内に生じる気流が、前段水噴射に係る水に及ぼす影響を小さく抑えることができ、前段水噴射によって気筒内に噴射された水をより確実に燃焼室の壁面のうち比較的遠い部分に到達させることができる。
本発明において、水噴射装置としては、前記燃焼室の天井面の中央に、前記ピストンの冠面の中央を臨む姿勢で取付けられているものが挙げられる(請求項3)。
この場合では、前段水噴射によってピストンの冠面すなわち燃焼室の底面全体に超臨界水または亜臨界水を到達させ、後段水噴射によって燃焼室の天井面に超臨界水または亜臨界水を滞留させることができ、これにより燃焼室の壁面全体に超臨界水または亜臨界水の遮熱層を形成することができる。
また、前記とは異なる構成として、水噴射装置として、前記燃焼室の天井面の中央から前記気筒の径方向の一方側にずれた位置に、前記気筒の径方向の他方側の内周面を臨む姿勢で取付けられているものが挙げられる(請求項4)。
この場合では、前段水噴射によって燃焼室の壁面のうち気筒の径方向について水噴射装置と反対側に位置する部分に超臨界水または亜臨界水を到達させ、後段水噴射によって燃焼室の壁面のうちその径方向について水噴射装置側の部分に超臨界水または亜臨界水を滞留させることができ、これにより燃焼室の壁面全体に超臨界水または亜臨界水の遮熱層を形成することができる。
また、本発明において、前記水噴射領域は、エンジン負荷が予め設定された基準負荷以上の領域であるのが好ましい(請求項5)。
このようにすれば、エンジン負荷が高く燃焼温度が高いことに伴って増大しやすい冷却損失を効果的に小さく抑えることができる。
また、本発明において、前記エンジン本体の幾何学的圧縮比は、18以上35以下に設定されており、前記水噴射領域における前記エンジン本体の有効圧縮比は、15以上に設定されているのが好ましい(請求項6)。
このようにすれば、有効圧縮比が高いことに伴って増大しやすい冷却損失を小さく抑えつつ、有効圧縮比を高くしてエンジントルクを高めることができる。
以上説明したように、本発明のエンジンの制御装置によれば、適正な燃焼を実現しつつ冷却損失をより確実に小さく抑えることができる。
本発明の一実施形態にかかるエンジンシステムの構成を示した図である。 エンジン本体の概略断面図である。 ピストン冠面を示した図である。 超臨界水を説明するための水の状態図である。 亜臨界水を説明するための水の状態図である。 ヒートパイプの動作を説明するための概略断面図である。 エンジンの制御系統を示すブロック図である。 エンジンの制御領域を示した図である。 高負荷領域における筒内圧、吸気弁のリフトカーブおよび水噴射率を示した図である。 第1実施形態に係る前段水噴射の様子を示したエンジン本体の概略断面図である。 第1実施形態に係る後段水噴射の様子を示したエンジン本体の概略断面図である。 第2実施形態に係る前段水噴射の様子を示したエンジン本体の概略縦断面図である。 第2実施形態に係る後段水噴射の様子を示したエンジン本体の概略縦断面図である。 第2実施形態に係る前段水噴射の様子を示したエンジン本体の概略横断面図である。 第2実施形態に係る後段水噴射の様子を示したエンジン本体の概略横断面図である。 他の実施形態に係るピストン冠面を示した概略図である。
図1は、本発明の一実施形態にかかるエンジンシステムの構成を示す図である。本実施形態のエンジンシステムは、4ストロークのエンジン本体1と、エンジン本体1に燃焼用の空気を導入するための吸気通路30と、エンジン本体1で生成された排気を排出するための排気通路40と、水循環装置60とを備える。
エンジン本体1は、例えば、4つの気筒2を有する4気筒エンジンである。本実施形態では、エンジン本体1は、ガソリンを含む燃料の供給を受けて駆動される。本実施形態のエンジンシステムは車両に搭載され、エンジン本体1は車両の駆動源として利用される。
(1)エンジン本体
図2は、エンジン本体1の概略断面図である。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、気筒2に往復動(上下動)可能に嵌装されたピストン5とを有している。
ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。燃焼室6はいわゆるペントルーフ型であり、シリンダヘッド4の下面で構成される燃焼室6の天井面4aは吸気側および排気側の2つの傾斜面からなる三角屋根状をなしている。
図3は、気筒2内を示した横断面図であってピストン5の冠面5aを示した図である。ピストン5の冠面5aには、その中心部を含む領域をシリンダヘッド4とは反対側(下方)に凹ませたキャビティ10が形成されている。このキャビティ10は、ピストン5が上死点まで上昇したときの燃焼室6の大部分を占める容積を有するように形成されている。
本実施形態では、エンジン本体1の幾何学的圧縮比、つまり、ピストン5が下死点にあるときの燃焼室6の容積とピストン5が上死点にあるときの燃焼室6の容積との比は、18以上35以下(例えば20程度)に設定されている。
シリンダヘッド4には、吸気通路30から供給される空気を気筒2(燃焼室6)内に導入するための吸気ポート16と、気筒2内で生成された排気を排気通路40に導出するための排気ポート17とが形成されている。これら吸気ポート16と排気ポート17とは、気筒2毎にそれぞれ2つずつ形成されている。また、シリンダヘッド4には、各吸気ポート16の気筒2側の開口をそれぞれ開閉する吸気弁18と、各排気ポート17の気筒2側の開口をそれぞれ開閉する排気弁19とが設けられている。
各排気ポート17には、それぞれヒートパイプ70が取り付けられている。本実施形態では、1つの排気ポート17にそれぞれ1つのヒートパイプ70が取り付けられており、1つの気筒2に2つのヒートパイプ70が配置されている。ヒートパイプ70は、水循環装置60の一部を構成する部品である。ヒートパイプ70の詳細については後述する。
シリンダヘッド4には、燃焼室6内に燃料を噴射する燃料噴射装置(燃料供給装置)21が設けられている。本実施形態では、燃料噴射装置21は、サイド噴射方式で燃料を燃焼室6内に噴射するようにシリンダヘッド4に取付けられており、その先端が燃焼室6の内周面から燃焼室6内を臨むように配置されている。
燃料噴射装置21は、図外の燃料ポンプにより圧送された燃料を気筒2内に噴射する。本実施形態では、全運転領域において燃料と空気との混合気を予め混合させて、この混合気を圧縮上死点(TDC)付近で自着火させる予混合圧縮自着火燃焼が実施されるよう構成されている。これに伴い、図2に示した例では、エンジン本体1に気筒2内のガスに点火するための点火プラグが設けられていないが、冷間始動時等において混合気の適正な燃焼のために点火が必要な場合等には、適宜エンジン本体1に点火プラグを設けてもよい。
シリンダヘッド4には、さらに、気筒2内に超臨界水または亜臨界水を噴射する水噴射装置22が設けられている。
図2に示すように、本実施形態では、水噴射装置22は、その先端が、燃焼室6の天井面の中央に位置してピストン5の冠面5aのほぼ中央を臨む姿勢で取り付けられている。水噴射装置22としては、例えば、従来のエンジンに用いられる、燃料を気筒2内に噴射するための装置を適用することができ、その詳細な構造の説明は省略する。なお、水噴射装置22は、例えば、20MPa程度で気筒2内に超臨界水を噴射する。
超臨界水とは、水の臨界点よりも温度および圧力が高い水であって、気体のように分子が激しく運動しながら液体に近い高い密度を有する。つまり、超臨界水は気体または液体の水に相変化するのに潜熱を必要としない水である。詳細は後述するが、本実施形態では、このような性状の水を気筒2内に噴射することで、気筒2内に形成された燃焼室6の壁面に遮熱層を形成する。
図4を用いて具体的に説明する。図4は、横軸をエンタルピーとし、縦軸を圧力としたときの水の状態図を示したものである。この図4において、領域Z2は液体の領域、領域Z3は気体の領域、領域Z4は液体と気体が共存する領域である。実線で示したラインLT350、LT400・・・LT1000は、それぞれ同じ温度となる点をつないだ等温度線であって、それぞれ数字が温度(K)を示している。例えば、LT350は350Kの等温度線であり、LT1000は1000Kの等温度線である。そして、点C1が臨界点、領域Z1が臨界点C1よりも温度および圧力が高い領域であり、超臨界水はこの領域Z1に含まれる水である。具体的には、水の臨界点が、温度:647.3K,圧力:22.12MPaの点であるのに対して、超臨界水は温度圧力がこれら以上すなわち温度が647.3K以上かつ圧力が22.12MPa以上の水である。
図4において、破線で示したラインLR0.01、LR0.1・・・、LR500は、それぞれ同じ密度となる点をつないだ等密度線であって、それぞれ数字が密度(kg/m)を示している。例えば、LR0.01は密度が0.01kg/mの等密度線であり、LR1000は密度が500kg/mの等密度線である。
この等密度線LRと領域Z1,Z3との比較から明らかなように、領域Z1に含まれる水すなわち超臨界水の密度は50kg/mから500kg/m程度と液体の水に近い値であって気体の密度よりも非常に高い値となっている。
なお、エンジンシステムにて生成して気筒2内に噴射する超臨界水としては、密度が250kg/m以上の超臨界水を用いるのが好ましい。
また、図4において矢印Y1で示すように、通常の液体の水は気体に変化するために大きなエンタルピーを必要とする。すなわち、通常の液体の水は気体に変化するのに比較的大きな潜熱を必要とする。これに対して、矢印Y2で示すように、超臨界水では、通常の気体の水に変化するのにほとんどエンタルピーすなわち潜熱を必要としない。
ここで、図4から明らかなように、領域Z1に近い領域に含まれる水は、密度も高く気体に変化するための潜熱も小さく、超臨界水に近い性状を有する。従って、本実施形態では、前記のように超臨界水を気筒2内に噴射するが、超臨界水に代えて領域Z1に近い領域に含まれる水である亜臨界水を生成および気筒2内に噴射してもよい。例えば、図5に示す領域Z10であって、温度が600K以上かつ密度が250kg/m以上の領域Z10に含まれる亜臨界水を生成および噴射してもよい。
(2)吸気通路
吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31と、スロットルバルブ32とが設けられており、エアクリーナ31およびスロットルバルブ32を通過した後の空気がエンジン本体1に導入される。
スロットルバルブ32は、吸気通路30を開閉するものである。ただし、本実施形態では、エンジンの運転中、スロットルバルブ32は基本的に全開もしくはこれに近い開度に維持されており、エンジンの停止時等の限られた運転条件のときにのみ閉弁されて吸気通路30を遮断する。
(3)排気通路
排気通路40には、上流側から順に、排気を浄化するための浄化装置41、熱交換器42、コンデンサー43、排気シャッターバルブ44が設けられている。熱交換器42およびコンデンサー43は、水循環装置60の一部を構成するものである。浄化装置41は、例えば、三元触媒41からなる。
本実施形態では、図1等に示すように、浄化装置41と熱交換器42とは、これらを保温するための蓄熱用ケース49の内側に収容されている。蓄熱用ケース49は、二重管構造を有しており、その外周壁の内側には、空間49aが形成されている。この空間49aには、蓄熱材が充填されており、この蓄熱材により、浄化装置41および熱交換器42は保温される。すなわち、蓄熱用ケース49の内側に位置する浄化装置41等に高温の排気が流入すると、この排気により空間49c内の蓄熱材は暖められ、この蓄熱材によって浄化装置41および熱交換器42は保温される。蓄熱材としては、例えば、エルスルトール等のように加熱されることで溶融してこれにより熱エネルギーを蓄熱する潜熱蓄熱材や、塩化カルシウム等のように加熱されることで化学反応してこれにより熱エネルギーを蓄熱する化学蓄熱材等が挙げられる。
排気シャッターバルブ44は、EGRガスの吸気通路30への還流を促進するためのものである。
すなわち、本実施形態のエンジンシステムでは、吸気通路30のうちスロットルバルブ32よりも下流側の部分と、排気通路40のうち浄化装置41よりも上流側の部分とを連通するEGR通路51が設けられており、排気の一部がEGRガスとして吸気通路30に還流される。排気シャッターバルブ44は、排気通路40を開閉可能なバルブであり、EGRを実施する場合であって排気通路40の圧力が低い場合に閉弁側に操作されることでEGR通路51の上流側の部分の圧力を高めてEGRガスの還流を促進する。
EGR通路51には、これを開閉するEGRバルブ52が設けられており、EGRバルブ52の開弁量によって吸気通路30に還流されるEGRガスの量が調整される。また、本実施形態では、EGR通路51に、これを通過するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ53が設けられており、EGRガスはEGRクーラ53にて冷却された後吸気通路30に還流される。
(4)水循環装置
水循環装置60は、排気の熱エネルギーを利用して超臨界水を生成するためのものである。
水循環装置60は、ヒートパイプ70、熱交換器42およびコンデンサー43に加えて、水噴射装置22とコンデンサー43とを接続する水供給通路61と、水タンク62と、低圧ポンプ63と、高圧ポンプ64とを備えている。
コンデンサー43は、排気通路40を通過する排気中の水(水蒸気)を凝縮するためのものであり、コンデンサー43で凝縮した水が水噴射装置22に供給される。このように、本実施形態では、排気中の水が気筒2内に噴射される水として利用される。水タンク62は、内側に凝縮水を貯留するものである。コンデンサー43で生成された凝縮水は、水供給通路61を介して水タンク62に導入され水タンク62内で貯留される。
低圧ポンプ63は、水タンク62内の凝縮水を熱交換器42に送り込むためのポンプであり、水供給通路61のうち水タンク62と熱交換器42との間に配置されている。水タンク62内の凝縮水は、低圧ポンプ63によって熱交換器42に送り込まれる。
熱交換器42は、低圧ポンプ63から圧送された凝縮水と、排気通路40を通過する排気との間で熱交換を行わせるためのものである。熱交換器42は、排気通路40のうち浄化装置41の下流側の部分に、浄化装置41に隣接して配置されている。
本実施形態では、水供給通路61の一部61aが排気通路40の内側に挿通されることで熱交換器42が形成されており、この水供給通路61の一部61aが、排気通路40のうち浄化装置41のすぐ下流側の部分の内側に挿通されている。以下では、適宜、水供給通路61のうち排気通路40に挿入されている部分を熱交換通路61aという。
熱交換通路61aは、蓄熱用ケース49の内側に位置する排気通路40に挿通されており、前記のように、本実施形態では、蓄熱用ケース49により浄化装置41に加えて熱交換器42および熱交換通路61aも保温されている。
熱交換通路61a内の凝縮水は、排気通路40のうち熱交換通路61aが挿通された部分を通過する排気により昇温される。具体的には、この排気通路40のうち熱交換通路61aが挿通された部分を通過する排気の温度が熱交換通路61a内の凝縮水の温度よりも高いと、排気から凝縮水に熱エネルギーが付与されて、凝縮水が昇温される。ただし、エンジン本体1から排出される排気の温度は常に少なくとも100度以上あり、液体の水である凝縮水の温度よりも排気の温度の方が常に高い。従って、熱交換通路61a内の凝縮水は、常に排気により昇温される。
本実施形態では、前記のように浄化装置41のすぐ下流側に熱交換通路61aが配置されていることで、熱交換通路61a内の凝縮水には、浄化装置41での反応熱も付与されるため、凝縮水は効果的に昇温される。また、熱交換通路61aおよび熱交換通路61aが蓄熱用ケース49により保温されていることによっても凝縮水は効果的に昇温される。
高圧ポンプ64は、熱交換器42から水噴射装置22に向けて凝縮水を圧送するためのポンプである。高圧ポンプ64は、水供給通路61のうち熱交換器42すなわち熱交換通路61aとヒートパイプ70との間に配置されている。この高圧ポンプ64は、熱交換器42で昇温された凝縮水を加圧して超臨界水としながら水噴射装置22に送り込む。
ここで、水供給通路61のうち高圧ポンプ64よりも下流側の部分は、高圧ポンプ64で加圧された後の高圧の超臨界水が流通する。そのため、この部分には、高圧用の配管が用いられる。
このように、本実施形態では、基本的には、熱交換器42と高圧ポンプ64とによって凝縮水が昇温昇圧されて超臨界水が生成され、水噴射装置22に供給される。
ただし、エンジン本体1、詳細には気筒2、から排出された排気の温度が比較的高い場合には、ヒートパイプ70を介してこの高温の排気によって水供給通路61内の水が昇温されるようになっている。
すなわち、ヒートパイプ70は、高圧ポンプ64から圧送された水と、排気通路40を通過する排気との間で熱交換を行わせるためのものであるが、ヒートパイプ70は、排気の温度が基準温度以上のときにのみ凝縮水を昇温させる。
本実施形態では、ヒートパイプ70は、所定の方向に延びる略円柱状の外形を有する。図6は、ヒートパイプ70の動作を説明するための概略断面図である。この図6および図2に示すように、ヒートパイプ70は、その長手方向の一方側の端部71が排気ポート17の内側に挿入されて排気と接触するように配置され、他方の端部72が水供給通路61の内側に挿入されて水供給通路61内の水と接触するように配置されている。
図1および図2に示すように、また前記のように、本実施形態では、各排気ポート17にそれぞれヒートパイプ70が挿通されている。具体的には、水供給通路61には、その下流側端付近において、気筒2の配列方向に延びる蓄圧部65が設けられているとともに、この蓄圧部65から各水噴射装置22に向けてそれぞれ独立通路61bが延びている。そして、各排気ポート17にそれぞれ1本ずつヒートパイプ70が設けられており、ヒートパイプ70の各端部71,72がそれぞれ各排気ポート17と蓄圧部65とに挿通されている。
本実施形態では、図2に示すように、蓄圧部65はシリンダヘッド4に近接して配置されており、ヒートパイプ70はシリンダヘッド4に内蔵されている。具体的には、蓄圧部65は、排気ポート17よりも上方に位置し、ヒートパイプ70は、排気ポート17の内側空間から上方に延びて蓄圧部65に挿入されている。本実施形態では、ヒートパイプ70の排気ポート17側の端部71に、金属製の板状部材が上下方向に重ね合わされることで構成されたスタックフィン73が設けられており、この端部71に排気ポート17内の排気の熱がより多く伝えられるようになっている。
図6に示すように、ヒートパイプ70は、熱伝導性の高い材料(例えば金属)で形成されたパイプ部材であり、その内側には、真空にされた状態で作動媒体Sが液体状態で封入されている。ヒートパイプ70の内壁には、多孔質部材70a(例えば金属製の網)が設けられており、いわゆるウィックとよばれる毛細管構造が形成されている。
このヒートパイプ70では、排気ポート17に挿入された一方の端部(以下、適宜、受熱側端部という)71が排気により温められ、その温度が所定の温度以上になると、作動媒体Sが蒸発し、図6の矢印Y10に示すように、水供給通路61に挿入された他方の端部(以下、適宜、放熱側端部という)72に向かって拡散していく。このとき、排気ポート17内の排気の温度は、その熱エネルギーをヒートパイプ70すなわち作動媒体Sに付与することで低下する。そして、前記作動媒体Sの蒸気は、放熱側端部72において水供給通路61に放熱して凝縮し、再び液体に戻る。このとき、水供給通路61内の水は作動媒体Sから熱エネルギーを受けて昇温される。再び液体に戻った作動媒体Sは、前記多孔質部材70aにおける毛細管現象により、図6の矢印Y20に示すように、受熱側端部71に戻り、再度排気から熱エネルギーを奪うことで再び蒸気となり、この熱エネルギーを水供給通路61内の水に付与する。
本実施形態では、この熱の移動が生じる排気の温度(基準温度)が650K程度に設定されており、これに対応する作動媒体Sがヒートパイプ70に封入されている。例えば、作動媒体Sとしてセシウムが用いられる。
このようにして、本実施形態では、ヒートパイプ70によって、排気の温度が所定温度以上の高温になり作動媒体Sの温度が沸点以上になると、排気ポート17内の排気の熱エネルギーが水供給通路61に付与されて水供給通路61内の水が昇温される。従って、熱交換器42によって水供給通路61内の水が排気によってほぼ常時昇温されるとともに、排気の温度が基準温度以上の高温の場合には、ヒートパイプ70によってさらに水供給通路61内の水が排気によって昇温されるようになっており、排気のエネルギーを効果的に利用して超臨界水を生成することができる。特に、ヒートパイプ70が気筒2に近い位置に配置されているため、ヒートパイプ70によって、排気の高い熱エネルギーを利用して水供給通路61内の水を効果的に昇温させることができる。また、排気の温度が過剰に高い場合にはヒートパイプ70によって浄化装置41に流入する排気の温度を低く抑えることができ、かつ、排気の温度が低い場合にはこの排気をそのまま浄化装置41に流入させて浄化装置41に温度を高く維持することができ、浄化装置41の温度を適切な範囲に維持することができる。
(5)制御系統
(5−1)システム構成
図7は、エンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示すように、当実施形態のエンジンシステムは、PCM(パワートレイン・コントロール・モジュール、制御手段)100によって統括的に制御される。PCM100は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサである。
PCM100は、エンジンの運転状態を検出するための各種センサと電気的に接続されている。
例えば、シリンダブロック3には、クランク軸の回転角度および回転速度すなわちエンジン回転数を検出するクランク角センサSN1が設けられている。また、吸気通路30のうちエアクリーナ31とスロットルバルブ32との間の部分には、エアクリーナ31を通過して各気筒2に吸入される空気量(新気量)を検出するエアフローセンサSN2が設けられている。また、車両には、運転者により操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSN3が設けられている。
PCM100は、前記各種センサからの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、PCM100は、燃料噴射装置21、水噴射装置22、スロットルバルブ32、排気シャッターバルブ44、EGRバルブ52、低圧ポンプ63、高圧ポンプ64等と電気的に接続されており、前記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。
図8は、横軸がエンジン回転数、縦軸がエンジン負荷の制御マップを示している。本実施形態では、制御領域として、エンジン負荷が予め設定された基準負荷Tq1未満の低負荷領域A1と、エンジン負荷が基準負荷Tq1以上の高負荷領域(水噴射領域)A2とが設定されている。以下に、各領域A1、A2の制御内容について説明する。
(5−2)低負荷領域
低負荷領域A1では、要求されるエンジントルクが小さいため有効圧縮比を小さくすることができる。そこで、低負荷領域A1では、ポンピングロスを小さく抑えてエネルギー効率を高めるべく有効圧縮比が小さい値とされる。例えば、有効圧縮比は15よりも小さい値に抑えられる。具体的には、吸気弁18が吸気下死点よりも遅角側であって比較的遅い時期に閉弁され、これによって有効圧縮比が小さくされる。
低負荷領域A1では、混合気の発熱量が小さく燃焼温度が比較的低いため、燃焼により生成されるNOx(いわゆるRaw NOx)が少なく抑えられる。そのため、この領域A1では、三元触媒41によりNOxを浄化させる必要がなく、空燃比を三元触媒によるNOx浄化が可能な理論空燃比にする必要がない。そこで、低負荷領域A1では、燃費性能を高めるべく混合気の空燃比がリーンすなわち空気過剰率λ>1とされる。
低負荷領域A1では、EGRガスが気筒2内に還流される。すなわち、低負荷領域A1では、EGRバルブ52が開弁されて、排気通路40内の排ガスの一部がEGRガスとして吸気通路30に還流される。また、エンジン負荷が非常に低く、排気通路40内の圧力すなわちEGR通路51の上流側の圧力が低い運転領域では、排気シャッターバルブ44が閉じ側に制御されてEGRガスの還流が促進される。
本実施形態では、低負荷領域A1において、燃料量に対する燃焼室6内の全ガス重量の割合であるG/Fが35以上となるようにEGRガスが還流される。また、エンジン負荷が高いほどEGR率(気筒2内の全ガス容量のうちEGRガスの容量が占める割合)が大きくされる。
低負荷領域A1では、水噴射装置22による燃焼室6内への超臨界水の噴射は停止される。そして、これに伴い低圧ポンプ63および高圧ポンプ64の駆動が停止される。
低負荷領域A1では、圧縮行程後半(圧縮上死点前90°CA〜圧縮上死点まで)に、燃料噴射装置21によって燃焼室6内にすべての燃料が噴射される。例えば、圧縮上死点前30°CA付近に全燃料が燃焼室6内に噴射される。
(5−3)高負荷領域
高負荷領域A2では、エンジントルクを確保するために有効圧縮比が低負荷領域A1での有効圧縮比よりも大きくされる。本実施形態では、高負荷領域A2において、有効圧縮比が15以上とされる。具体的には、吸気弁18の閉弁時期が低負荷領域A1における閉弁時期よりも進角側とされ、これによって有効圧縮比が低負荷領域A1よりも高くされる。
高負荷領域A2では、三元触媒によるNOx浄化が可能となるように、空燃比が理論空燃比とされる。すなわち、空気過剰率λが1とされる。また、高負荷領域A2では、EGRバルブ52が閉弁されてEGRガスの還流が停止され、G/Fが35より小さい値とされる。
ここで、高負荷領域A2では、エンジン負荷が高く燃焼室6内に噴射される燃料および発熱量が多いために燃焼室6内の温度が高くなる。特に、本実施形態では有効圧縮比が高いことに伴い燃焼室6内の温度はさらに高くなる。そのため、高負荷領域A2では冷却損失が大きくなるおそれがある。また、燃焼室6内の温度が高いことに伴って、高負荷領域A2では、特に、燃料と空気とが十分に混合していない状態すなわち燃焼室6内において混合気が均質でない状態(混合気の空燃比が不均一である状態)で燃焼が開始するとスモークが悪化するおそれがある。
そこで、高負荷領域A2では、燃焼室6内の混合気がより均質化された状態で燃焼が開始するように、複数回に分けて燃料を気筒2内に噴射する。具体的には、圧縮行程前半(吸気下死点〜圧縮上死点前90°CAまで)に比較的多量の燃料を噴射し、圧縮行程後半に残りの燃料の一部を噴射し、さらにその後圧縮上死点よりもわずかに進角側の時期に残りの燃料を噴射する。これにより、混合気を均質化させつつ、この混合気を圧縮上死点後に自着火させる。
また、高負荷領域A2では、燃焼室6の壁面に超臨界水の層X(図10参照)が形成されるように、水噴射装置22によって燃焼室6内に超臨界水を噴射させる。すなわち、圧ポンプ63および高圧ポンプ64を駆動して、水噴射装置22から燃焼室6内に超臨界水を噴射させる。
図9は、高負荷領域A2での水噴射のタイミング、吸気弁18のリフトカーブ、燃焼室6内の圧力すなわち気筒2内の圧力である筒内圧を示したものである。なお、図9には、有効圧縮比を異ならせたときの複数の筒内圧の変化を示している。
図9に示すように、高負荷領域A2では、燃料と空気の混合気が燃焼を開始する前であって、圧縮行程を初期と中期と後期とに分けたときの圧縮行程の後期(圧縮上死点前60°CA〜圧縮上死点)の所定時期t2に後段水噴射W2が実施される。また、圧縮行程の後期よりも前であって吸気弁18の閉弁時期IVCよりも遅角側の時期t1に前段水噴射W1が実施される。
本実施形態では、圧縮行程の初期(吸気下死点BDC〜圧縮上死点前120°CA)に前段水噴射W1が開始される。また、圧縮行程後期のより遅角側の時期(例えば、圧縮上死点前30°CA〜圧縮上死点)までの間に後段水噴射W2が実施される。
このように異なる時期に分割して水噴射が実施されることで、高負荷領域A2では、燃焼室6の壁面全体に遮熱層Xが形成される。
具体的には、前段水噴射W1は、圧縮行程の後期よりも前であって筒内圧P1が比較的低い時期に実施されている。そのため、前段水噴射W1に係る超臨界水の噴霧のペネトレーション(貫徹力)は相対的に高く、超臨界水の噴霧は水噴射装置22からより遠い位置まで飛散する。
なお、図9に示すように、有効圧縮比に応じて筒内圧は変化するが、いずれの有効圧縮比においても圧縮行程後期よりも前における筒内圧は小さく、圧縮行程後期における筒内圧は高くなる。
本実施形態では、前記のように水噴射装置22が燃焼室6の天井面4aの中央に位置している。従って、図10に示すように、前段水噴射W1では、超臨界水の噴霧X1は、気筒2の径方向外側に広がりながらピストン5の冠面5aに向かって飛散し、ピストン5の冠面5a全体に到達してこの冠面5a全体に遮熱層Xを形成する。
一方、後段水噴射W2は、圧縮行程の後期あって筒内圧P2が比較的高い時期に実施されている。そのため、後段水噴射W2に係る超臨界水の噴霧のペネトレーション(貫徹力)は相対的に低く、超臨界水の噴霧の飛散距離は前段水噴射W1に比べて短くなる。そのため、後段水噴射W2に係る超臨界水の噴霧X2は水噴射装置22の周囲に滞留する。本実施形態では、水噴射装置22が前記ように燃焼室6の天井面4aの中央に取付けられていることで、図11に示すように、後段水噴射W2の噴霧X2は、燃焼室6の天井面4aの中央およびその周囲に滞留し、この天井面4aに遮熱層X2を形成する。従って、これら前段水噴射W1と後段水噴射W2とによって、燃焼室6の壁面の全体にわたって遮熱層Xが形成される。
ここで、遮熱層Xを形成するための物質として超臨界水(または亜臨界水)ではなく通常の液体の水を用いることが考えられる。しかしながら、前記のように、通常の液体の水では水蒸気への変化時に潜熱を必要とする。そのため、通常の液体の水を噴射した場合には、水の蒸発に伴って混合気の温度が低下してしまい熱効率が悪化する。
そこで、本実施形態では、前記のように、密度が高く、潜熱を必要としない超臨界水を燃焼室6内に噴射して、超臨界水によって遮熱層Xを形成する。
(6)作用等
以上のように、本実施形態では、高負荷領域A2にて、燃焼室6内に超臨界水を噴射して燃焼室6の壁面に超臨界水による遮熱層Xを形成していることで、冷却損失を小さく抑えて燃費性能を高めることができる。特に、高負荷領域かつ有効圧縮比が15以上とされた領域A2であって燃焼温度が高くなり冷却損失が大きくなりやすい領域でこの制御を実施しており、冷却損失を効果的に小さく抑えることができる。
また、前記のように、高負荷領域A2ではスモークが悪化するおそれがあるが、本実施形態では、燃料と空気とを均質に混合させつつ超臨界水によって遮熱層Xを形成することができ、スモークの悪化を抑制しつつ燃費性能を高めることができる。具体的には、仮に遮熱層を空気で形成した場合には、空気と燃料とを均質に混合することができない。これに対して、本実施形態では、超臨界水で遮熱層Xを形成しているため、遮熱層Xを形成しつつ混合気を均質にすることができ、冷却損失を抑制しつつ適正な燃焼を実現してスモークの悪化を抑制することができる。
特に、本実施形態では、圧縮行程の後期とこれよりも前とに分けて燃焼室6内に超臨界水が噴射されることで、前記のように、燃焼室6の壁面全体により確実に超臨界水を存在させることができる。従って、適正な燃焼を実現しつつ、超臨界水により形成された遮熱層Xによってより確実に冷却損失を抑えることができる。
また、前記実施形態では、吸気弁18の閉弁後に前段水噴射W1が実施されている。そのため、吸気ポート16から吸気が流入することに伴って燃焼室6内に生じる気流が前段水噴射W1に係る水の噴霧に及ぼす影響を小さく抑えることができる。そのため、前段水噴射W1に係る水の噴霧をより確実に燃焼室6の壁面のうち比較的遠い部分に到達させることができる。
(7)第2実施形態
前記実施形態では、水噴射装置22が、その先端が燃焼室6の天井面4aの中央に位置して、ピストン5の冠面5aのほぼ中央を臨むように取り付けられている場合について説明したが、水噴射装置22を図12に示すように取り付けてもよい。すなわち、水噴射装置22を、サイド噴射方式として、その先端が燃焼室6の内周面から燃焼室6内を臨むように配置してもよい。詳細には、水噴射装置22を、燃焼室6の天井面4aの中央から気筒2の径方向の一方側(図11における左側)にずれた位置に、気筒2の内周面のうち気筒2の径方向の他方側(図11における右側)の部分を臨む姿勢で取付けてもよい。
この第2実施形態において、水噴射装置22と燃料噴射装置21との配置以外は前記第1実施形態と同様であり、第2実施形態においても、高負荷領域A2において、前段水噴射W1と後段水噴射W2が実施される。
ただし、この第2実施形態では、水噴射装置22が前記のように配置されていることに伴い、図12に示すように、前段水噴射W1に係る超臨界水の噴霧X10は、燃焼室6の壁面のうち気筒2の径方向について水噴射装置22が配置されている側と反対側の部分に向かって飛散する。そして、これにより、図12および図14(図14は、図12に対応する図であって燃焼室6内を上方から見た図)に示すように、ピストン冠面5aのおよそ半分および燃焼室の壁面のおよそ半分であって気筒2の径方向について水噴射装置22が配置されている側と反対側の部分に遮熱層X10_aが形成される。
そして、後段水噴射W2に係る超臨界水の噴霧X20は、図13および図15(図15は図13に対応する図であって燃焼室6内を上方から見た図)に示すように、水噴射装置22の周囲に滞留し、ピストン冠面5aのおよそ半分であって水噴射装置22に近い側の部分と、燃焼室6の天井面4aに遮熱層X20_aが形成される。そして、これにより、燃焼室6の壁面のほぼ全体に遮熱層Xが形成される。
従って、この第2実施形態でも、超臨界水により形成された遮熱層Xによって冷却損失が低減されて燃費性能が高められる。
(8)他の変形例
ここで、前記実施形態では、高負荷領域A2でのみ、燃焼室6の壁面に超臨界水による遮熱層Xを形成した場合について説明したが、低負荷領域A1において高負荷領域A2と同様の水噴射を実施して燃焼室6の壁面に超臨界水による遮熱層を形成してもよい。また、超臨界水による遮熱層Xを形成する運転領域(前記実施形態における高負荷領域A2)の有効圧縮比は15未満であってもよい。
ただし、エンジン負荷が高い、あるいは、有効圧縮比が高い場合は、燃焼温度が高くなるため、冷却損失が大きくなりやすい。また、スモークが悪化しやすい。そのため、エンジン負荷が高い領域、または、有効圧縮比15以上の領域でのみ超臨界水による遮熱層を形成しても、高い効果を得ることができる。
また、前記実施形態のように、水循環装置60を設け、排ガスの熱エネルギーを利用して超臨界水を生成する場合では、エンジン負荷が低い低負荷領域や有効圧縮比が低い領域では、燃焼温度が低く排ガスの温度が低いために超臨界水を必要量生成できないおそれがある。また、不足したエネルギーを別途設けたヒータ等で補うようにした場合には、エネルギー効率が悪化してしまう。そのため、この場合には、特にエンジン負荷が高いあるいは有効圧縮比が高く排ガスの温度が高い運転領域でのみ超臨界水の噴射を実施するのが好ましい。
また、水循環装置60を省略して、前記のように別途設けたヒータ等を用いて超臨界水を生成してもよい。ただし、前記のように水循環装置60を用いればエネルギー効率を高くしつつ着火遅れを適正量確保することができる。
また、前記実施形態では、燃焼室6内に水として超臨界水が噴射される場合について説明したが、前述したように、亜臨界水であって超臨界水に近い性状を有する水を超臨界水の代わりに気筒2内に噴射してもよい。この場合であっても、密度が通常の水よりも高く潜熱が非常に小さいことから着火遅れ時間を長くすることができる。
また、燃焼形態は自着火燃焼に限らず、点火プラグによって混合気が点火されることで燃焼が開始する形態であってもよい。また、燃料として、ガソリンを含まない燃料が用いられてもよい。
また、前記実施形態では、キャビティ510がピストン5の冠面5aの中心部に設けられた場合について説明したが、例えば、図16に示すように、キャビティ510がピストン5の冠面5aにおいて気筒2の径方向外側に偏った状態で設けられていてもよい。そして、この場合には、キャビティ510と燃焼室6の壁面とが近接しているため、キャビティ510内で生成された火炎(燃焼ガス)Fと燃焼室6の壁面との接触に伴う冷却損失が非常に大きくなるおそれがある。そのため、このような場合において、前記実施形態に係る超臨界水の噴射を行い燃焼室6の壁面に超臨界水による遮熱層を形成すれば、冷却損失を効果的に低減することができる。
1 エンジン本体
2 気筒
4a 燃焼室の天井面
5 ピストン
5a ピストンの冠面
10 燃焼室
18 吸気弁
21 燃料噴射装置
22 水噴射装置
40 排気通路
41 浄化装置
X 遮熱層

Claims (6)

  1. ピストンが気筒に往復動可能に嵌装されるとともに、前記ピストンの冠面を底面とする燃焼室が前記気筒に区画されたエンジンの制御装置において、
    前記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給装置と、
    前記燃焼室内に超臨界水または亜臨界水を噴射する水噴射装置と、
    前記燃料供給装置と前記水噴射装置とを含むエンジンの各部を制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、前記エンジンの運転領域の少なくとも一部に設定された水噴射領域において、前記燃焼室内で前記燃料と空気の混合気が燃焼を開始する前かつ圧縮行程の後期に前記超臨界水または亜臨界水を前記燃焼室内に噴射する後段水噴射と、前記圧縮行程の後期よりも前に前記超臨界水または亜臨界水を前記燃焼室内に噴射する前段水噴射とを、前記水噴射装置に実施させることを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジンの制御装置において、
    前記気筒に吸気を導入するための吸気ポートを開閉する吸気弁を備え、
    前記制御手段は、前記圧縮行程の後期よりも前かつ前記吸気弁が閉弁した後に、前記水噴射装置に前記前段水噴射を実施させることを特徴とするエンジンの制御装置。
  3. 請求項1または2に記載のエンジンの制御装置において、
    前記水噴射装置は、前記燃焼室の天井面の中央に、前記ピストンの冠面の中央を臨む姿勢で取付けられていることを特徴とするエンジンの制御装置。
  4. 請求項1または2に記載のエンジンの制御装置において、
    前記水噴射装置は、前記燃焼室の天井面の中央から前記気筒の径方向の一方側にずれた位置に、前記気筒の径方向の他方側の内周面を臨む姿勢で取付けられていることを特徴とするエンジンの制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のエンジンの制御装置において、
    前記水噴射領域は、エンジン負荷が予め設定された基準負荷以上の領域であることを特徴とするエンジンの制御装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のエンジンの制御装置において、
    前記エンジン本体の幾何学的圧縮比は、18以上35以下に設定されており、
    前記水噴射領域における前記エンジン本体の有効圧縮比は、15以上に設定されていることを特徴とするエンジンの制御装置。
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