以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態による排気浄化システム100は、内燃機関ICE等と共に車両に搭載されている。内燃機関ICEは、圧縮自着火式のディーゼルエンジンであり、車両を走行させるための動力源である。内燃機関ICEは、軽油を燃焼させることにより、動力を発生させる。
内燃機関ICEには、過給器11及びインタークーラ14等が設けられている。過給器11には、吸気管12及び排気管13が接続されている。吸気管12は、過給器11のコンプレッサ部に空気を流通させる吸気通路を形成している。排気管13は、過給器11のタービン部から排気浄化システム100に排気ガスを流通させる排気通路を形成している。
尚、以下の説明では、空気及び排気ガスの流れ方向に基づいて、上流側及び下流側が規定される。即ち、吸気管12における上流側は、コンプレッサ部に近い側を示しており、排気管13における下流側は、タービン部に近い側を示している。
排気浄化システム100は、内燃機関ICEの排気系90に設けられている。排気浄化システム100は、内燃機関ICEにおける軽油の燃焼によって生じた物質を浄化する後処理システムである。排気浄化システム100は、内燃機関ICEから排出される排気ガスに含有される物質の中で、特に窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に分解することによって浄化する。排気浄化システム100は、燃料改質装置20、NOx浄化装置30、新気導入装置81、及び機関制御装置(Engine Control Unit 以下、ECU)50を備えている。
燃料改質装置20は、排気管13の中間に設けられている。排気管13において、過給器11と燃料改質装置20との間には、酸化触媒及びディーゼル微粒子捕集フィルタ等の後処理装置がさらに設けられている。燃料改質装置20は、燃料(軽油)を改質することによって改質燃料を生成する。改質燃料は、NOx浄化装置30にてNOxの還元に用いられる還元剤である。燃料改質装置20にて還元剤の生成に用いられる燃料は、内燃機関ICEにて動力の発生に用いられる燃料と共有されている。燃料改質装置20は、排気通路を通じてNOx浄化装置30に還元剤を供給する。燃料改質装置20は、燃料噴射弁21、ハウジング24、昇温器22、及び改質触媒23を有している。
燃料噴射弁21は、改質触媒23の上流側に位置し、排気管13又はハウジング24に取り付けられている。燃料噴射弁21は、燃料ポンプ72と接続されている。燃料噴射弁21には、燃料ポンプ72の作動により、燃料タンク71に貯留されている燃料が供給される。燃料噴射弁21は、排気通路に臨む一つ又は複数の噴孔を有している。燃料噴射弁21は、電磁ソレノイドに電磁力を発生させることにより、噴孔から燃料を噴射する。燃料噴射弁21は、噴孔を通過することによって微粒化された燃料を改質触媒23に供給する。
ハウジング24は、金属の薄い板材によって容器状に形成されている。ハウジング24は、昇温器22及び改質触媒23を収容している。ハウジング24は、排気管13と接続されており、排気通路の一部を形成している。
昇温器22は、通電によって発熱する発熱体である。昇温器22は、改質触媒23と一体的に配置されている。昇温器22が発生させた熱量は、改質触媒23に伝達され、改質触媒23を昇温させる。昇温器22は、燃料噴射弁21によって噴射された燃料を間接的に昇温させ、活性化し易い状態にする。
改質触媒23は、例えばハニカム状に形成されたコージェライトに、ゼオライト又は酸化アルミニウム(Al2O3,以下、アルミナ)等をコーティングしたモノリス触媒である。改質触媒23の触媒作用により、燃料の主成分である炭化水素は、部分的に酸化する。その結果、例えばアルデヒド基(CHO)に酸化された状態の部分酸化物(例えばアルデヒド)、或いは一酸化炭素(CO)及び水素(H2)等が還元剤として機能する改質燃料として、燃料改質装置20から供給される。
NOx浄化装置30は、NOx触媒31、及びNOx触媒31を収容する金属製のハウジング35等によって構成されている。NOx触媒31は、改質燃料を用いて排気ガス中のNOxを浄化する。NOx触媒31は、担体32及び触媒金属33を有し、ハニカム状に形成されたモノリス触媒である。担体32は、例えばアルミナ等である。担体32は、触媒金属33を担持する基材となる。触媒金属33は、例えば銀(Ag)である。触媒金属33は、担体32の表面に位置し、NOxの還元反応を促進させる。
担体32には、上述のアルミナに加え、ゼオライト、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニアのうちの一つ又は複数を用いることが可能である。また、触媒金属33には、上述の銀に加え、銅(Cu)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)、ラジウム(Rh)等を用いることが可能である。さらに、コバルト(Co)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、テクネチウム(Tc)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)等が触媒金属33に用いられてもよい。加えて上記の金属は、酸化物の状態で担体32に担持されていてもよい。また、複数種類の上記金属が単体又は酸化物として、担体32に担持されていてもよい。
NOx触媒31は、触媒温度が低温(約200℃未満)である場合、NOx浄化装置30に流入する排気ガス中のNOxを吸着する。一方で、触媒温度が高温(約200℃以上)となった場合、NOx触媒31は、吸着していたNOxを脱離させる。脱離されたNOxは、NOx触媒31の触媒作用により、燃料改質装置20から供給される改質燃料と反応する。改質燃料が還元剤として機能することにより、NOxは、窒素に還元される。排気ガス中にはNOxの他に酸素(O2)も含まれているが、改質燃料は、酸素の存在下においても、NOxと選択的に反応する。
新気導入装置81は、新気導入管82及び導入制御バルブ83等によって構成されている。新気導入管82は、補強されたゴム製のホース材、又は湾曲させた金属製の管状部材等によって形成されている。新気導入管82の一端は、吸気系のうちでインタークーラ14の下流側に位置する部分と接続されている。新気導入管82の他端は、排気管13のうちで改質触媒23の上流側に位置する部分と接続されている。新気導入管82は、インタークーラ14を通過した空気を、燃料改質装置20に導入させる導入通路を形成している。
導入制御バルブ83は、新気導入管82の中間に設けられている。導入制御バルブ83は、導入通路を連通状態及び遮断状態のうちで切り替える。導入制御バルブ83は、ECU50によって開閉を制御される電磁弁と、排気通路から吸気通路への空気及び排気ガスの逆流を防止するチェックバルブとを組み合わせた構成とされている。
ECU50は、内燃機関ICEに係る制御を統合的に実施する制御装置である。ECU50は、プロセッサ51、RAM52、記憶媒体53、並びに計測信号及び制御信号の入出力インターフェース54を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。ECU50は、複数の車載センサ40と接続されている。車載センサ40には、アクセルペダル及びステアリング等へ入力された運転者の操作情報を検出するセンサ、並びに回転速度及び吸気温度等の内燃機関ICEに係る稼動情報を検出するセンサが含まれている。
加えてECU50には、後処理に係る構成として、燃料噴射弁21、昇温器22、燃料ポンプ72、及び導入制御バルブ83が接続されている。さらにECU50には、排気ガスセンサ41、入口温度センサ43、複数(三つ)の触媒温度センサ44a〜44c、還元剤センサ45、外気温センサ47、及びエアフロメータ49等が接続されている。
排気ガスセンサ41は、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力するO2センサと、排気ガス中のNOx濃度に応じた計測信号を出力するNOxセンサとを組み合わせた構成である。排気ガスセンサ41は、改質触媒23の上流側に配置され、改質触媒23に流入する排気ガスの酸素濃度及びNOx濃度を検出する。
入口温度センサ43及び各触媒温度センサ44a〜44cは、熱電対又はサーミスタ等である。入口温度センサ43は、NOx触媒31の上流側に配置され、NOx触媒31に流入する排気ガスの温度に応じた計測信号を出力する。各触媒温度センサ44a〜44cは、それぞれハウジング35に取り付けられている。各触媒温度センサ44a〜44cは、排気ガスの流れ方向に沿って、互いに間隔を空けつつNOx触媒31に複数配置されている。各触媒温度センサ44a〜44cは、触媒の劣化に関連する物理量の一つとして、NOx触媒31の複数箇所の温度をそれぞれ検出し、触媒温度に応じた計測信号を出力する。
還元剤センサ45は、排気管13のうちで、燃料改質装置20とNOx浄化装置30との間の区間に取り付けられている。還元剤センサ45は、改質触媒23と燃料噴射弁21との間に位置し、改質触媒23から供給される還元剤の状態を検出する。例えば還元剤センサ45は、改質触媒23を通過した炭化水素の種類を判別し、判別結果に応じた計測信号を出力する。
外気温センサ47は、車両の外部の温度に応じた計測信号を出力する。エアフロメータ49は、吸気管12に設けられている。エアフロメータ49は、白金熱線等を有するセンサであり、吸気通路を流れる空気の流速に応じた計測信号を出力する。エアフロメータ49の計測信号に基づき、内燃機関ICEに供給される吸入空気の流量がECU50に取得される。
ECU50は、プロセッサ51による排気浄化処理プログラムの実行により、図2に示す情報取得部62、定常判定部63、劣化推定部64、及び還元制御部65を、NOxの後処理に係る機能ブロックとして構築する。以下、ECU50に構築される各機能ブロックの詳細を、図2及び図1に基づき説明する。
情報取得部62は、例えば後処理に関連する情報として、各触媒温度センサ44a〜44cのそれぞれから、NOx触媒31の劣化に関連する物理量として、このNOx触媒31の各所における温度を検出した検出値を取得する。加えて情報取得部62は、排気ガスセンサ41の計測信号に基づき、排気ガスに含まれるNOx及び酸素濃度を取得する。また情報取得部62は、入口温度センサ43の計測信号に基づき、NOx浄化装置30に流入する排気ガスの温度を取得する。さらに情報取得部62は、還元剤センサ45の計測信号に基づき、NOx触媒31に供給される改質燃料の炭化水素の種類及び供給量を取得する。
情報取得部62は、内燃機関ICEの稼動状態を示す稼動情報を時系列で取得する。情報取得部62は、取得した稼動情報に基づき、内燃機関ICEの異常状態を検知可能である。稼働情報には、内燃機関ICEにおいて燃焼室に噴射される燃料噴射量、及び排気ガスのガス流量等が含まれる。ガス流量は、エアフロメータ49の検出値である吸気流量、車載センサ40から取得される吸気温度、及び入口温度センサ43の検出値である排気ガス温度等を用いて、情報取得部62により算出される。尚、ガス流量は、排気管13に設けられた流量センサによって直接的に検出されてもよい。
定常判定部63は、情報取得部62にて取得される稼動情報の推移に基づき、内燃機関ICEが定常状態であるか否かを判定する。具体的に、定常判定部63は、アイドリング又は定速走行等により、吸入空気の流量又は排気ガスのガス流量、及び燃料噴射量等の変動が所定の範囲内に収まっている場合に、定常状態であると判定する。
劣化推定部64は、後述する劣化推定処理(図6参照)の実施により、NOx触媒31各所の温度を用いて、NOx触媒31のうちで劣化の進行している部分と、無劣化又は劣化の少ない部分とを推定する。劣化推定部64は、入口温度センサ43の検出値である排気ガス温度と、各触媒温度センサ44a〜44cの検出値である触媒温度T01〜T03とを用いて、流れ方向に沿ったNOx触媒31の温度分布を取得する。NOx触媒31において劣化した部分の近傍では、還元剤の反応が生じ難くなる。そのため、実測された温度分布は、NOx触媒31の各所の劣化度合いを示した劣化分布とみなすことができる。NOx触媒31の流れ方向上流側(以下、前方)の部分が劣化している場合、温度分布は、ピークの位置が後ろ側にずれた形状となる(図3の長破線参照)。またNOx触媒31の流れ方向下流側(以下、後方)の部分が劣化している場合、温度分布は、後方部分落ち込んだ形状となる(図3の短破線参照)。
劣化推定部64は、取得した温度分布を、基準温度分布(図3の実線を参照)と比較することにより、NOx触媒31の各所の劣化度合いを判定する。基準温度分布は、予め作成された標準データを、入口温度センサ43にて実測される排気ガス温度を用いて補正することにより取得される。故に、入口温度センサ43の位置における基準温度分布の値T00Bは、入口温度センサ43によって実測された温度T00と実質同一となる。また、基準温度分布の標準データは、所定の運転条件にて、所定の燃料量の噴射により内燃機関ICEを稼動させた場合に、劣化前のNOx触媒31において示すことが想定される触媒温度の分布である。標準データは、マップデータ又は数式等の態様で記憶媒体53に記憶されている。
ここで、NOx触媒31の全体が劣化していないと仮定した場合、還元剤は、NOx触媒31の前方部分にて、多くの還元反応を生じさせている。そして、NOx触媒31の後方部分へ向かうに従い、還元剤の消費量は、漸減していくと推定される。一方で、前方部分が劣化したNOx触媒31では、全体が無劣化の状態であるNOx触媒31と比較して、前方部分にて還元反応する還元剤が減少する。故に、NOx触媒31の中間部分に到達する還元剤の量が多くなり、中間部分よりも下流側にて、触媒温度が上昇する。劣化推定部64は、上流側の劣化に伴う還元剤の到達量の変化と排気ガスの温度変化とを反映するために、基準温度分布におけるピークの位置を下流側にずらす補正を行うことができる(図3の二点鎖線参照)。
さらに詳記すると、記憶媒体53には、NOx触媒31の各所の触媒温度T_catを算出する下記の数式1,2が記憶されている。
(数1) T_cat = T_in − T_loss + T_rea
(数2) T_rea = Q_in × η
ここで、上記の数式1のT_inは流入する排気ガスの温度を示し、T_lossは放熱によって生じる温度低下を示し、T_reaは還元剤の還元反応に伴う温度上昇を示している。T_lossは、例えば外気温センサ47にて計測される外気温、及び車載センサ40によって計測される走行速度等を用いて補正される。また、Q_inは各所に到達する還元剤の流入量を示し、ηは還元剤の反応率を示している。反応率ηは、予め設定された関数マップにより、触媒各所の温度から一意に設定される。
以上の数式1,2によれば、NOx触媒31の前方部分が劣化した場合、中間部分に流入する排気ガス温度(T_in)は低下する。故に、放熱によって失われる熱量も少なくなるので、温度低下の値(T_loss)も小さくなる。一方で、中間部分に到達する還元剤の流入量(Q_in)の増加により、還元反応に伴う温度上昇の値(T_rea)が上昇する。その結果、劣化推定部64は、上述したように、温度のピーク位置を下流側にスライドさせた基準温度分布を生成するのである(図3の二点鎖線参照)。
還元制御部65は、予め作成された複数の改質制御マップに基づき、燃料改質装置20による燃料の改質を制御する。複数の改質制御マップは、記憶媒体53に記憶されている。改質制御マップは、触媒温度に対して、昇温器22、燃料噴射弁21、燃料ポンプ72、及び導入制御バルブ83の各制御量を規定する。還元制御部65は、改質制御マップに基づいて、現在の触媒温度に対応した各構成の制御を行うことにより、NOxの浄化に最適な改質状態でNOx触媒31に還元剤を供給し得る。尚、NOx触媒31が実質無劣化である場合、改質制御マップの参照に用いられる触媒温度は、例えば中間の触媒温度センサ44bの検出値であってもよく、又は各触媒温度センサ44a〜44cの検出値の平均であってもよい。
還元制御部65は、後述する改質制御処理(図4参照)の実施により、NOx触媒31の劣化に合わせて、燃料改質装置20による燃料の改質状態を補正可能である。そのため還元制御部65は、NOx触媒31の劣化度合を推定した推定結果を、劣化推定部64から取得する。還元制御部65は、劣化推定部64の推定結果に基づき、NOx触媒31のうちで劣化の少ない部分に、還元剤が活性した状態で到達するよう、燃料改質装置20による燃料の改質を制御する。
具体的に、還元制御部65は、NOx触媒31のうちで劣化の進行した部分が流れ方向に沿って下流側へ拡大するに従い、燃料改質装置20から供給される還元剤の活性を低く制御する。以上によれば、NOxの還元に好適な活性状態となる位置は、流れ方向に沿ってNOx触媒31の下流側にずれる。その結果、劣化の少ないNOx触媒31の中間から後方の部分にて、NOxの還元反応が活発に生じるようになる。
また、例えばNOx触媒31のうちで後方部分に異常な温度上昇が生じて、この後方部分が劣化した場合に、還元制御部65は、燃料改質装置20から供給される還元剤の活性を高く制御する。以上によれば、NOxの還元に好適な活性状態となる位置は、NOx触媒31の上流側に維持される。その結果、劣化の少ないNOx触媒31の前方から中間の部分にて、NOxの還元反応が活発に生じるようになる。
次に、ここまで説明した劣化推定部64及び還元制御部65にて実施される各処理を整理し、図4〜図6のフローチャートに基づき、図1及び図2を参照しつつ説明する。まず図4のフローチャートに基づいて、改質制御処理の詳細を説明する。改質制御処理は、前回の劣化診断から一定の期間が経過した場合、又は内燃機関ICEの異常状態が情報取得部62によって検知された場合等、劣化診断が必要とされるタイミングで還元制御部65によって開始される。
ここで、内燃機関ICEの異常状態とは、例えばNOx触媒31の異常な昇温、及び排気通路における酸素濃度の過剰な低下等、瞬間的な触媒劣化が懸念される状態である。こうした異常状態が生じた場合、NOx触媒31の機能が失われていないかを確認するために、改質制御処理が開始される。
S101では、劣化診断の実施判定処理(図5参照)を実施し、劣化診断が可能な状態か否かを判断する。S101の実施判定により、診断開始条件が成立していないと判定した場合、改質制御処理を終了する。一方、S101にて、診断開始条件が成立していると判定した場合、S102に進む。S102では、NOx触媒31の劣化度合いを診断するために、予め設定されたパターンで所定量の燃料を噴射させ、S103に進む。S102により、診断用の還元剤がNOx触媒31に供給される。尚、S102にて実施される診断用の燃料噴射パターンは、基準温度分布の標準データを生成する際の燃料噴射のパターンと実質同一又は相関のある燃料噴射パターンとされている。
S103では、S102によって還元剤の供給が開始されてから、予め規定された時間が経過したか否かを判定する。S103の規定時間は、NOx浄化装置30における還元反応の安定化を待機するための時間であって、例えば数10秒から1分程度の時間に設定されている。S103にて、規定時間が経過したと判定し、診断用の還元剤による還元反応が安定したと推定される場合に、S104に進む。
S104では、劣化推定部64に劣化分布推定処理(図6参照)を実施させて、S105に進む。S105では、S104の劣化分布推定処理に基づき、劣化の推定される触媒部分の有無を判定する。S105にて、劣化の推定される部分がNOx触媒31に無いと判定した場合、改質制御処理を終了する。一方、S105にて、劣化した部分がNOx触媒31に有ると判定した場合、S106に進む。
S106では、劣化の推定された部分を判定する。S106にて、NOx触媒31の後方部分が劣化していると判定した場合(図3の短破線参照)、S107に進む。この場合、無劣化又は軽微な劣化であると推定されるNOx触媒31の前方部分を積極的に機能させるため、改質後の還元剤種を最適化する制御を開始する。そのため、S107では、NOx触媒31の前方及び中間に配置された各触媒温度センサ44a,44bの検出値を用いて、改質制御マップの参照時に用いられる触媒温度を設定し、S108に進む。触媒温度は、各触媒温度センサ44a,44bの各検出値を平均した値であってもよく、又は前方及び中間の劣化度合いに応じて各検出値に重み付けをした値であってもよい。
S108では、予め高活性とされた炭化水素(例えばアルデヒド等)に改質された状態で還元剤が燃料改質装置20から供給され易くなるように、燃料改質装置20等に対する制御の補正量を設定し、改質制御処理を終了する。S108における補正量の設定は、例えば参照する改質制御マップの変更によって実現される。
S108では、高温なほど高活性に改質され易くなる燃料の性質(図7参照)に合わせて、昇温器22の温度を上昇させる(高くする)制御を実施する。加えてS108では、空燃比がリーン側であるほど高活性に改質され易くなる燃料の性質(図7参照)に合わせて、燃料噴射弁21から単位時間あたりに噴射される燃料量を少なく調整する。具体的には、燃料ポンプ72の制御によって燃料噴射弁21の噴射圧を低下させると共に、噴射の開弁時間を短縮させることで、1ショットあたりの噴射量を少なくする。そうしたうえで、噴射頻度を高く制御することにより、燃料の供給量を確保する。さらにS108では、導入制御バルブ83の制御によって新気の導入量を増加させることで、改質触媒23近傍の空燃比をリーン側に調整する。
一方、S106にて、NOx触媒31の前方部分が劣化していると判定した場合(図3の長破線参照)、S109に進む。この場合、無劣化又は軽微な劣化であると推定されるNOx触媒31の後方部分を積極的に機能させるため、改質後の還元剤種を最適化する制御を開始する。そのため、S109では、NOx触媒31の中間及び後方に配置された各触媒温度センサ44b,44cの検出値を用いて、改質制御マップの参照時に用いられる触媒温度を設定し、S110に進む。触媒温度は、各触媒温度センサ44b,44cの各検出値を平均した値であってもよく、又は中間及び後方の劣化度合いに応じて各検出値に重み付けをした値であってもよい。
S110では、低活性のまま燃料が燃料改質装置20から供給されるように、燃料改質装置20等に対する制御の補正量を設定し、改質制御処理を終了する。S110における補正量の設定は、S108と同様に、例えば参照する改質制御マップの変更によって実現される。
S110では、S108とは逆の補正が行われる。即ちS110では、昇温器22の温度を降下させる(低く抑える)制御を実施し、燃料の温度上昇を抑える。さらにS110では、単位時間あたりに噴射される燃料量を多く調整する。具体的には、燃料ポンプ72の制御によって燃料噴射弁21の噴射圧を上昇させると共に、噴射の開弁時間を延長させることで、1ショットあたりの噴射量を多くする。そうしたうえで、過剰な燃料供給を防ぐために、噴射頻度は低く調整される。さらに導入制御バルブ83の制御によって新気の導入量を低減させて、改質触媒23近傍の空燃比をリッチ側に調整する。
以上のS108及びS110では、目標となる改質燃料の改質状態が設定される。還元制御部65は、還元剤センサ45の検出結果として取得する還元剤の状態が、目標として設定された改質状態に近づくように、昇温器22及び燃料噴射弁21等を、還元剤センサ45の検出値に基づいてフィードバック制御する。こうした制御の結果、目標とされる改質状態に還元剤センサ45の検出値が漸近しない場合、還元制御部65は、改質触媒23に劣化又は異常が生じていると診断する。
次に、改質制御処理のS101にて実施される劣化診断の実施判定処理の詳細を、図5のフローチャートに基づいて説明する。
S121では、内燃機関ICEの暖機運転が終了しているか否かを判定する。S121にて、暖機運転中であると判定した場合、実施判定処理及び改質制御処理を終了する。一方、S121にて、内燃機関ICEの暖機運転が終了していると判定した場合、S122に進む。
S122では、内燃機関ICEが所定の運転状態、即ち定常状態にあるか否かを定常判定部63に判定させる。高精度な劣化推定を実現するには、運転状態の変動が小さい状態で診断実施されることが望ましい。S122では、排気ガスのガス流量及び燃料消費量等の推移から、これらの変動が大きく、内燃機関ICEが定常状態に無い(非定常状態である)と判定した場合、実施判定処理及び改質制御処理を終了する。一方、S122にて、内燃機関ICEが定常状態にあると判定した場合、実施判定処理を終了し、改質制御処理のS102に進む。
次に、改質制御処理のS104に基づき、劣化推定部64にて実施される劣化推定処理の詳細を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
S141では、入口温度センサ43及び各触媒温度センサ44a〜44cから検出値を取得する。そして、取得した各温度センサ43,44a〜44cの検出値に基づき、流れ方向に沿ったNOx触媒31の温度分布(図3の各破線参照)を作成し、S142に進む。S142では、S141にて取得された排気ガス温度に基づき、基準温度分布が算出される(図3の実線参照)。そして、S141にて作成された実測分布における各位置の触媒温度T01〜T03を、算出した基準温度分布上の温度T01B〜T03Bと個別に比較し、S143に進む。
以上のS142では、実測された触媒温度T01〜T03と算出された基準温度T01B〜T03Bとの比較が上流側から順に実施される。即ち、初回のS142では、最も上流側に配置された触媒温度センサ44aの計測位置について、触媒温度T01と基準温度T01Bとを比較する。二回目のS142では、中間に配置された触媒温度センサ44bの計測位置について、触媒温度T02と基準温度T02Bとを比較する。三回目のS142では、最も下流側に配置された触媒温度センサ44cの計測位置について、触媒温度T03と基準温度T03Bとを比較する。
S143では、S142による比較結果に基づき、触媒温度と基準温度との温度差から、温度の比較を行った触媒部分の劣化を判断する。S143にて、実測の各触媒温度T01〜T03が各基準温度T00B〜T03Bと同程度である場合、温度比較を行った触媒部分は、無劣化又は軽微な劣化であると判断し、S145に進む。一方で、S143の温度比較の結果、実測の各触媒温度T01〜T03が各基準温度T00B〜T03Bよりも低い場合、温度比較を行った触媒部分は、劣化していると判断し、S144に進む。
S144では、NOx触媒31の前方が劣化しているとの判断に基づき、NOx触媒31の中間又は後方にて反応する還元剤が増えたものとして、基準温度分布を補正し(図3の二点鎖線参照)、S145に進む。
S145では、各触媒温度センサ44a〜44cが配置された全ての計測位置について、実測された触媒温度と基準温度との比較が終了したか否かを判定する。S145にて、比較の終了していない計測位置があると判定した場合、S142に戻り、残りの計測位置のうちで最も上流側の触媒温度が、基準温度と比較される。そして、S142〜S144の繰り返しにより、全ての計測位置の温度比較が終了した場合、劣化推定処理を終了し、S105に移行する。
ここまで説明した第一実施形態では、燃料改質装置20による燃料の改質によって還元剤が生成される。故に、燃料改質装置20から供給される還元剤について、活性の高さを制御することが可能となる。また劣化推定部64は、NOx触媒31の温度分布を生成し、生成した温度分布から劣化の少ない触媒部分を推定できる。この劣化の少ない触媒部分に活性した状態の還元剤が到達するよう燃料改質装置20を制御すれば、劣化の少ない触媒部分は、活性化された還元剤を優先的に用いて、排気ガス中のNOxを浄化する作用を十分に発揮し得る。その結果、劣化によるNOx触媒31の性能低下を抑制できる排気浄化システム100が実現される。
加えて、NOx触媒31の劣化は、通常、流れ方向に沿って、上流側から下流側へと拡大する。また、改質燃料は、燃料改質装置20からNOx触媒31へ流れる過程において、排気ガスの中でも次第に活性化する。故に、第一実施形態のように、NOx触媒31の劣化範囲の拡大に伴って燃料改質装置20から供給される改質燃料の活性を下げる調整を行えば、還元剤としての改質燃料は、劣化していない触媒部分に到達した時点で、NOxの活性に好適な活性状態となり得る。したがって、劣化の少ない触媒部分は、排気ガス中のNOxの浄化作用を確実に発揮できるようになる。
また第一実施形態では、改質燃料を低活性にするために、燃料噴射弁21から単位時間あたりに噴射される燃料量が多くされる。さらに第一実施形態では、改質燃料を低活性にするために、昇温器22の温度が低く抑えられる。これらの制御によれば、改質燃料は、排気ガス中での活性化を遅らされ、劣化していない部分に到達する時点で、NOxの還元に好適な活性状態となり得る。したがって、劣化の少ない触媒の部分は、還元反応に好適な活性状態となった還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを浄化できる。
加えて第一実施形態では、各触媒温度センサ44a〜44cによる温度分布が、劣化の進行度合いを示す劣化分布とみなして用いられている。NOx触媒31において劣化の進行した部分の近傍では、還元反応が生じ難くなっているため、劣化前の状態と比較して、触媒温度は低い値となる。そのため、NOx触媒31の複数箇所の温度を検出し、現在の排気ガス温度等に基づく基準温度分布と比較することで、NOx触媒31のうちで劣化の進行している部分が、容易且つ確実に推定可能になる。
また第一実施形態では、予め設定された診断開始条件の成立時に診断のための還元剤の供給が開始される。こうした構成であれば、劣化推定部64は、内燃機関ICEの稼動状態が安定した条件下にて、NOx触媒31の劣化度合いを推定できる。その結果、現在のNOx触媒31の劣化状態に合わせて改質状態を最適に調整された還元剤が、NOx触媒31に到達するようになる。
さらに第一実施形態の還元制御部65は、還元剤センサ45の検出値から炭化水素の種別を判定し、フィードバック制御の実施によって目標とする改質状態を作り出している。故に、還元制御部65は、燃料改質装置20から放出される改質燃料の活性度合いを正確に制御できる。以上によれば、NOx触媒31のうちで劣化の少ない部分には、NOxの還元に適した状態の還元剤が確実に到達するようになる。さらに、還元剤センサ45の検出値に基づき、改質触媒23の劣化診断が可能になる。
また第一実施形態では、新気導入装置81によって燃料改質装置20への空気の導入が可能にされている。こうした構成であれば、燃料改質装置20に流入する排気ガスについて、空燃比及び温度の調整幅が拡大される。その結果、還元制御部65は、燃料改質装置20から放出される改質燃料の活性度合いを、さらに自在に制御可能になる。
さらに第一実施形態では、インタークーラ14の下流側の配管から分岐させた新気導入管82により、燃料改質装置20への空気の導入が実現されている。こうした構成であれば、ポンプ等の空気を圧送するための構成を追加しなくても、高圧な吸気通路内への空気の導入が可能になる。
尚、第一実施形態において、内燃機関ICEが「機関」に相当し、燃料改質装置20が「燃料改質器」に相当し、燃料噴射弁21が「燃料噴射部」に相当し、昇温器22が「昇温部」に相当し、NOx触媒31が「触媒」に相当する。また、還元剤センサ45が「還元剤検出部」に相当し、ECU50が「浄化制御装置」に相当し、還元制御部65が「改質制御部」に相当し、新気導入装置81が「新気導入部」に相当する。
(第二実施形態)
図8〜図11に示す第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態による改質制御処理では、内燃機関ICEが定常状態で稼動している期間に、NOx触媒31の劣化度合いが推定される。以下、第二実施形態の改質制御処理の詳細を、図8のフローチャートに基づき、図1及び図2を参照しつつ説明する。この改質制御処理は、第一実施形態と同様に、前回の劣化診断から一定の期間が経過した場合、又は内燃機関ICEの異常状態が検知された場合等に、還元制御部65によって開始される。
S201では、内燃機関ICEの運転変動に基づき、劣化診断が開始可能か否かを判定する。具体的にS201では、内燃機関ICEの運転変動を示す稼働情報として、排気ガスのガス流量及び燃料噴射量等が、所定の監視時間、定常判定部63によって継続的に監視される。そして、予め設定された一定の期間、ガス流量及び燃料噴射量等の変動が、閾値として設定された所定の変動幅に収まっているか否かを判定する(図9のドットの領域参照)。その結果、ガス流量及び燃料噴射量の各変動について、それぞれの閾値内に収まっている状態が一定の期間を超えて継続した場合に、劣化診断を開始可能と判定し、S202に進む。一方で、ガス流量及び燃料噴射量の各変動が激しく、劣化診断の開始が不可能であると判定した場合、改質制御処理を終了する。
S202では、内燃機関ICEが定常状態を維持した期間の期末において、入口温度センサ43及び各触媒温度センサ44a〜44cから検出される検出値を用いて、NOx触媒31の流れ方向に沿った温度分布を生成し、S203に進む。第二実施形態でも、各温度センサ43,44a〜44cの検出値に基づく温度分布は、NOx触媒31の劣化分布とみなすことができる。
S203では、第一実施形態のS104(図4参照)と同様に、劣化推定部64に劣化推定処理を実施させる。このS203に基づき、劣化推定部64は、第一実施形態のS142〜S145と実質同一の処理を実施し、NOx触媒31のうちで劣化している部分を推定する。そして還元制御部65は、劣化推定部64にて推定された劣化部分の情報に基づき、S204〜S209の各処理を実施する。これらS204〜S209の各処理は、第一実施形態におけるS105〜S110(図4参照)と実質同一である。
以上のS207及びS209にて設定された改質の補正を実行する場合、還元制御部65は、各触媒温度センサ44a〜44cにて検出される触媒温度を用いたフィードバック制御により、燃料の改質状態を目標とする改質状態に調整可能である。こうした制御を実現するために、還元制御部65は、NOx触媒31において還元反応により発生する発生熱の分布を推定する(図10の実線参照)。還元制御部65は、燃料の改質に際して生成される副産物(メタン,エチレン,エタン,アセトアルデヒド等)の反応熱も加味して、発生熱の分布を生成することができる。以下、推定した発生熱の分布をターゲットとし、燃料の改質状態を調整する改質調整処理の詳細を、図11のフローチャートに基づき、図1及び図2を参照しつつ説明する。
S221では、内燃機関ICEの暖機運転が終了しているか否かを判定する。S221にて、暖機運転中であると判定した場合、改質調整処理を終了する。一方、S221にて、内燃機関ICEの暖機運転が終了していると判定した場合、S222に進む。
S222では、内燃機関ICEが所定の運転状態、即ち定常状態にあるか否かを定常判定部63に判定させる。S222にて、内燃機関ICEが定常状態に無いと判定した場合、改質調整処理を終了する。一方、S222にて、内燃機関ICEが定常状態にあると判定した場合、S223に進む。
S223では、改質制御処理にて設定された改質補正後の制御条件で還元剤の供給を開始し、S224に進む。S224では、S223にて還元剤の供給が開始されてから、予め規定された時間が経過したか否かを判定する。S223の規定時間は、NOx浄化装置30における還元反応の安定化を待機するための時間である。S224にて、規定時間が経過したと判定し、改質補正後に投入された還元剤による反応が安定したと推定される場合に、S225に進む。
S225では、NOx触媒31の温度分布に基づき、NOx触媒31の各所にて還元剤の反応に伴って発生している発生熱の分布(図10の実線参照)を生成し、S226に進む。S226では、S225にて生成した実測に基づく発生熱の分布と、推定した発生熱の分布(図10の破線参照)とを比較し、S227に進む。
S227では、S226にて比較した二つの発生熱の分布について、整合が取れているか否かを判定する。S227にて、実測に基づく発生熱の分布が推定した発生熱の分布と整合している場合、改質調整を行うことなく、改質調整処理を終了する。一方、S227にて、実測に基づく発生熱の分布が推定した発生熱の分布からずれていると判定した場合、S228に進む。
S228では、推定した発生熱の分布に、実測に基づく発生熱の分布が近づくように、改質に関連する各構成、具体的には、燃料噴射弁21、昇温器22、燃料ポンプ72、及び導入制御バルブ83の制御量を調整し、S225に戻る。そして、実測に基づく発生熱の分布が推定した発生熱の分布と整合が取れるまで、S225〜S228を繰り返す。
ここまで説明した第二実施形態でも、第一実施形態と同様に、劣化の少ない触媒部分が排気ガス中のNOxを浄化する作用を十分に発揮し得るので、劣化によるNOx触媒31の性能低下は、抑制可能となる。
加えて第二実施形態の劣化推定部64は、定常判定部63によって内燃機関ICEが定常にあると判定された場合に、NOx触媒31の劣化度合いを推定可能である。以上によれば、特定の燃料噴射パターンによる診断のためだけの燃料供給は、不要となる。加えて劣化推定部64は、内燃機関ICEが通常稼動しているうちに、NOx触媒31の劣化度合いの推定を完了させることができる。
また第二実施形態の還元制御部65は、燃料の改質状態を補正する場合に、各触媒温度センサ44a〜44cの検出値を用いたフィードバック制御により、燃料の改質状態を目的の改質状態に調整可能である。故に、NOx触媒31には、現在の劣化度合いに合うよう改質状態を最適に調整された還元剤が到達するようになる。
加えて第二実施形態では、フィードバック制御においてターゲットとされ発生熱の分布に、副産物による反応熱が加味されている。こうした発生熱の分布と整合するように燃料の改質状態が調整されれば、劣化の少ない触媒部分は、NOxの浄化作用を確実に発揮可能となる。
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
上記実施形態では、実測された触媒温度T01〜T03と基準温度T01B〜T03Bとの比較によって劣化部分を推定していたが、劣化を判別するための閾値、即ち、触媒温度と基準温度との温度差ΔTは、適宜変更可能である。この温度差ΔTは、例えばゼロであってもよい。さらに、温度差ΔTは、NOx触媒の全体に亘って一定に設定されていてもよく、又は前方から後方へ向かうに従って漸増又は漸減するよう設定されていてもよい。
上記実施形態では、各触媒温度センサ44a〜44cの検出値に基づき、連続した線状の温度分布が劣化分布として規定されていた。しかし、劣化分布の態様は、上記の態様に限定されない。例えば、触媒温度の計測位置と実測された触媒温度とが単純に紐付けされたデータテーブルが劣化分布とされてもよい。
上記実施形態では、各触媒温度センサ44a〜44cが、NOx触媒31の劣化に関連する物理量として、触媒温度を計測していた。しかし、NOx触媒の劣化に関連する物理量は、触媒温度に限定されない。例えば触媒内の酸素濃度、NOx濃度、及び炭化水素の状態等の情報が、劣化に関連する物理量に相当し得る。そして、これらの物理量を検出する構成として、O2センサ、NOxセンサ、及びHCセンサ等を劣化検出部として、NOx浄化装置に複数設けることが可能である。
さらに、触媒温度センサのような劣化検出部は、個数及び配置を適宜変更されてよい。例えば劣化検出部は、NOx浄化装置に二つだけ設けられていてもよく、又は四つ以上設けられていてもよい。また、複数の劣化検出部は、流れ方向に沿って等間隔に配置されていてもよく、又は不等間隔に並べられていてもよい。さらに、複数の劣化検出部は、流れ方向に沿って一直線上に並んでいてもよく、又は一部の劣化検出部が他の劣化検出部に対してオフセットされていてもよい。
上記実施形態の定常判定部63は、内燃機関ICEの定常状態を判定する稼動情報として、排気ガスのガス流量及び燃料噴射量の推移を取得していた。しかし、定常状態を判定する際に用いる稼働情報は、適宜変更可能である。例えば、内燃機関ICEの出力軸の回転速度及び吸気流量等が定常状態の判定に用いられもよい。また定常判定部は、複数の稼働情報の変動が全て閾値内に収まっている場合に定常状態と判定してもよく、又は特定の稼動情報が閾値内に収まっていた場合に定常状態と判定してもよい。
上記実施形態の還元制御部65は、改質燃料の温度及び空燃比の複合的な制御により、改質燃料における活性度の高低を調整していた。しかし、還元制御部は、例えば改質燃料の温度のみ又は空燃比のみを制御可能であってもよい。また上記第二実施形態のように、NOx触媒の発生熱の分布を用いて改質状態をフィードバック制御する構成であれば、還元剤センサ45(図1参照)に相当する構成は、省略されてもよい。
上記実施形態では、過給器11のコンプレッサ部にて昇圧された空気が改質触媒に供給されていた。しかし、電動ポンプによって圧送された空気が、排気管内の圧力に抗して改質触媒に供給されてもよい。こうした構成であれば、ECUは、電動ポンプの吐出量を制御することにより、改質触媒に供給する空気量を増減させることができる。さらに、改質触媒に空気を導入する構成は、省略されていてもよい。
上記実施形態において、ECU50のプロセッサ51等によって提供されていた機能は、上述のものとは異なるハードウェア及びソフトウェア、或いはこれらの組み合わせによって提供可能である。例えば、内燃機関ICEの稼動を統合制御するECU50とは別に設けられた後処理専用の制御回路が、「浄化制御装置」として、改質制御処理、劣化推定処理、及び改質調整処理等の一部又は全部を実行してもよい。さらに、プロセッサ51にて実行されるプログラム及び各制御マップ等を記憶する記憶媒体53には、フラッシュメモリ及びハードディスク等の種々の非遷移的実体的記憶媒体が採用可能である。
上記実施形態では、車両に搭載された内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排気浄化システムに、本開示の特徴構成を適用した例を説明した。しかし、車載された内燃機関に限らず、船舶、鉄道車両、及び航空機等に搭載された内燃機関又は外燃機関の排気ガスを浄化する排気浄化システムにも、本開示の特徴構成は適用可能である。さらに、発電用に設置された内燃機関又は外燃機関の排気ガスを浄化する排気浄化システムにも、本開示の特徴構成は適用可能である。