以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係るカートリッジ式ベーンポンプ100は、車両に搭載される流体圧装置、例えば、パワーステアリング装置や変速機等の流体圧供給源として用いられる。作動流体は、作動油やその他の水溶性代替液等である。
カートリッジ式ベーンポンプ100(以下、単に「ベーンポンプ100」という。)は、あらかじめ組み立てられた状態(図1に示す状態)で、流体圧装置のボディ90に形成された収容凹部91内に着脱可能に収容される(図4参照)。駆動軸1の端部には、エンジン(図示せず)の動力が伝達され、駆動軸1に連結されたロータ2が回転する。
図1から図4に示すように、ベーンポンプ100は、駆動軸1に連結され回転駆動されるロータ2と、ロータ2の外周に開口部を有して放射状に形成される複数のスリット2aと、各スリット2aに摺動自在に挿入されロータ2に対して径方向に往復動可能に設けられる複数のベーン3と、ロータ2を収容すると共にロータ2の回転に伴ってベーン3の先端部が摺動する内周カム面4aを有するカムリング4と、を備える。
スリット2aの基端側には、ポンプの吐出圧が導かれる背圧室5が区画される。ベーン3は、背圧室5の圧力によってスリット2aから抜け出る方向に押圧され、先端部がカムリング4の内周カム面4aに当接する。これにより、カムリング4の内部には、ロータ2の外周面、カムリングの内周カム面4a、及び隣り合うベーン3によって複数のポンプ室6が区画される。
カムリング4は、内周カム面4aが略楕円形状をした環状の部材であり、ロータ2の回転に伴ってポンプ室6の容積を拡張する吸込領域とポンプ室6の容積を収縮する吐出領域とを有する。各ポンプ室6は、ロータ2の回転に伴って拡縮する。ベーンポンプ100は、カムリング4が2つの吸込領域と2つの吐出領域とを有する、いわゆる平衡型のベーンポンプである。カムリング4には、2つの吸込領域に対応する位置の両端面に、カムリング4の外側と内側とを連通する切欠き4eが形成される。
ベーンポンプ100は、ロータ2及びカムリング4の一端面(図1及び図4では上側)に当接するカバー側サイドプレート10と、ロータ2及びカムリング4の他端面(図1及び図4では下側)に当接するボディ側サイドプレート20と、カバー側サイドプレート10に当接し流体圧装置のボディ90に固定されるカバー30と、をさらに備える。カバー側サイドプレート10及びカバー30によってカバー部材が構成される。
カバー側サイドプレート10とボディ側サイドプレート20は、ロータ2及びカムリング4を挟持するように配置される。カバー側サイドプレート10とボディ側サイドプレート20とが、ロータ2及びカムリング4の両端面を挟み込むことによりポンプ室6は密閉される。
図3に示すように、カバー側サイドプレート10は、外縁部の一部を切り欠くようにして形成され作動油をポンプ室6内に導く吸込ポート11と、2つの吐出領域に対応した位置にそれぞれ形成される吐出用凹部12と、駆動軸1が挿通する貫通孔13と、を備える。
吸込ポート11は、2つの吸込領域に対応する位置にそれぞれ形成される。各吸込ポート11は、貫通孔13を中心とした円弧状に形成される。吸込ポート11は、図4に示すカムリング4と流体圧装置のボディ90との間に円環状に区画形成される吸込空間70、及びボディ90に形成された吸込流路92を通じてタンクに連通する。
吐出用凹部12は、溝状に形成され2つの吐出領域に対応する位置にそれぞれ形成される。各吐出用凹部12は、貫通孔13を中心とした円弧状に形成される。吐出用凹部12は、ベーン3を挟んで、後述するボディ側サイドプレート20に形成された第1、第2貫通孔21a、21bと対向するように設けられる。吐出用凹部12はポンプ室6を通じて第1、第2貫通孔21a、21bと連通するので、吐出用凹部12には、第1、第2貫通孔21a、21bと同じ圧力が作用する。したがって、第1、第2貫通孔21a、21b内の圧力によってベーン3に作用する力は、吐出用凹部12の圧力によって相殺され、ベーン3がカバー側サイドプレート10に押し付けられることを防止できる。
図2に示すように、ボディ側サイドプレート20は、ロータ2の他端面が摺接する摺接面20aと、2つの吐出領域それぞれに対応するように摺接面20aに形成されポンプ室6の作動油を吐出する第1、第2貫通孔21a、21bと、駆動軸1が挿通する貫通孔22と、吸込空間70とポンプ室6とを連通する吸込用凹部23と、を備える。
第1、第2貫通孔21a、21bは、貫通孔22を中心として対称位置に設けられる。第1、第2貫通孔21a、21bは、貫通孔22を中心とした円弧状に形成されるとともに、ボディ側サイドプレート20を貫通して形成される。
吸込用凹部23は、2つの吸込領域に対応するように摺接面20aに形成される。各吸込用凹部23の外周端はボディ側サイドプレート20の外周面まで達しており、径方向外側に開口する凹形状に形成される。
ボディ側サイドプレート20の摺接面20aには、第1、第2貫通孔21a、21bからロータ2の回転方向後方へ向けて延びる溝である外側ノッチ26及び内側ノッチ27が形成される。外側ノッチ26は、内側ノッチ27より外周側に配置され、かつ内側ノッチ27よりロータ2の回転方向の長さが長い。
外側ノッチ26及び内側ノッチ27は、いずれも第1、第2貫通孔21a、21bからロータ2の回転方向後方へ行くほどロータ2の径方向の寸法が小さくなる先細り形状に形成される。また、外側ノッチ26及び内側ノッチ27は、ロータ2の外周面より外周側であってカムリング4の内周カム面4aより内周側に配置される。
ボディ側サイドプレート20の摺接面20aには、貫通孔22を中心として対称位置に一対の第1背圧溝24aが形成されるとともに、一対の第1背圧溝24aに対して貫通孔22を中心として略90°ずれた位置に一対の第2背圧溝24bが形成される。
第1背圧溝24aは、貫通孔22を中心とした円弧状に形成され、背圧室5に連通する。第1背圧溝24aは、第1背圧溝24aに開口する複数の背圧室5どうしを連通する。
第2背圧溝24bは、貫通孔22を中心とした円弧状に形成され、背圧室5に連通する。第2背圧溝24bは、第2背圧溝24bに開口する複数の背圧室5どうしを連通する。
図3に示すように、ボディ側サイドプレート20は、摺接面20aとは反対側の端面に開口し、第1、第2貫通孔21a、21bに連通する第1、第2円弧溝25a、25bと、第1、第2円弧溝25a、25bと第2背圧溝24bとを連通しボディ側サイドプレート20を貫通して形成される連通孔28と、第1、第2円弧溝25a、25bの外周をそれぞれ囲んでシールするシール部材としてのOリング83a、83bと、をさらに備える。Oリング83a、83bは、ボディ側サイドプレート20の第1、第2円弧溝25a、25bの外周に形成された溝内に装着され、ボディ側サイドプレート20と後述するアダプタ40との間に圧縮された状態で設けられる。
第1、第2円弧溝25a、25bは、貫通孔22を中心とした円弧状に形成される。第1円弧溝25aの底面には、第1貫通孔21a及び連通孔28が開口し、第2円弧溝25bの底面には、第2貫通孔21b及び連通孔28が開口する。これにより、第1貫通孔21a及び連通孔28は、第1円弧溝25aを通じて連通し、第2貫通孔21b及び連通孔28は、第2円弧溝25bを通じて連通する。ベーンポンプ100では、第1貫通孔21a及び第1円弧溝25aが第1吐出ポート7aを構成し、第2貫通孔21b及び第2円弧溝25bが第2吐出ポート7bを構成する。
カバー30には、駆動軸1の端部をスリーブを介して支持する貫通孔31が形成される。カバー30は、カバー30の外周部分に形成された複数の貫通孔33に図示しないボルトを挿通してボディ90に固定される。
ベーンポンプ100は、ボディ側サイドプレート20に形成された第1、第2吐出ポート7a、7bとボディ90に形成された2つの第1、第2吐出流路93a、93b(図4参照)とをそれぞれ接続する第1、第2接続流路41a、41bが形成されるアダプタ40をさらに備える。
図4に示すように、アダプタ40は、ボディ側サイドプレート20に当接する当接面40aと後述する収容凹部91の第3凹部91cの底面に対向する環状面40fとを有する本体部40bと、本体部40bよりも小径で本体部40bから軸方向に延びる円筒部40cと、本体部40bから円筒部40c内に延び駆動軸1の端部を支持する支持孔42が形成されるボス部40dと、本体部40bの環状面40fに形成される円環状の凹溝47と、を備える。
本体部40bは、円板状に形成される。本体部40bの外周には、本体部40bとボディ90との間の作動油の漏れを防止する円環状のOリング81が設けられる。
円筒部40cは、本体部40bと同軸状に形成され、内側に内部空間40eを有する。円筒部40cの外周には、第1接続流路41aと第2接続流路42bとの連通を遮断する円環状のOリング82が設けられる。
第1接続流路41aは、当接面40aと環状面40fとの間で本体部40bを貫通するように形成され、第1吐出ポート7aと第1吐出流路93aとを接続する。具体的には、第1接続流路41aは、当接面40aに開口する円弧状の第1開口部44aと、環状面40fに開口する凹溝47と、第1開口部44aと凹溝47とを連通する貫通孔45aと、によって構成される。第1開口部44aは、ボディ側サイドプレート20の第1円弧溝25aと対向する位置に形成される。貫通孔45aは、円筒部40cの外周面に沿う円弧状に形成される(図6及び図7参照)。凹溝47は円環状に形成されるので、ベーンポンプ100の第1接続流路41aと流体圧装置の第1吐出流路93aとは互いに対向した位置に設けられていなくても、第1吐出流路93aが凹溝47に向かって開口していれば、第1接続流路41aと第1吐出流路93aとは、凹溝47を通じて連通する。
図4に示すように、第2接続流路41bは、本体部40bを貫通し円筒部40cの内部空間40eに連通して形成され、第2吐出ポート7bと第2吐出流路93bとを接続する。具体的には、第2接続流路41bは、当接面40aに開口する円弧状の第2開口部44bと、円筒部40cの内部空間40eと、第2開口部44bと円筒部40cの内部空間40eとを連通する貫通孔45bと、によって構成される。第2開口部44bは、ボディ側サイドプレート20の第2円弧溝25bと対向する位置に形成される。貫通孔45bは、ボス部40dの外周面に沿うように円弧状に形成される(図6及び図7参照)。第2接続流路41bは、ボディ90に形成された第2吐出流路93bに連通する。
次に、ベーンポンプ100の組立方法について説明する。
まず、カバー30に形成された挿入孔34にダウエルピン60を圧入する。そして、このダウエルピン60を、カバー側サイドプレート10に形成された貫通孔15、カムリング4に形成された貫通孔4c、及びボディ側サイドプレート20に形成された貫通孔29bに順次挿入し、最後にアダプタ40に形成された挿入孔46に挿入する。これにより、カバー30、カバー側サイドプレート10、カムリング4、ボディ側サイドプレート20及びアダプタ40は、積層された状態になる。なお、駆動軸1、ロータ2、及びベーン3は、カムリング4を挿入するときに、カムリング4の内部に組み込まれる。このようにして、ダウエルピン60は、カムリング4を貫通しカバー30及びアダプタ40に両端が支持されるとともに、カムリング4に対するカバー30、カバー側サイドプレート10、ボディ側サイドプレート20及びアダプタ40の相対回転を防止する。つまり、ダウエルピン60は、組立時にはこれらの部材の位置決めとして機能するとともに、組立後にはカムリング4に対するカバー側サイドプレート10及びボディ側サイドプレート20の相対回転を防止する回り止めとして機能する。
このようにして積層されたカバー30、カバー側サイドプレート10、カムリング4、ボディ側サイドプレート20及びアダプタ40は、結合部材としての2本のヘッドピン50によって、一体に保持される。以下に、ヘッドピン50について具体的に説明する。
図2及び図3に示すように、ヘッドピン50は、先端がアダプタ40に形成された係合孔43に固定される軸部51と、軸部51より大径で基端に形成された規制部52と、を有する。軸部51は、カバー30に形成された貫通孔32、カバー側サイドプレート10に形成された貫通孔14、カムリング4に形成された貫通孔4b、及びボディ側サイドプレート20に形成された貫通孔29aを貫通し、先端が係合孔43に圧入される。これにより、ヘッドピン50の規制部52とアダプタ40との間にカバー30、カバー側サイドプレート10、カムリング4及びボディ側サイドプレート20が一体化された状態に保持される。ヘッドピン50は、駆動軸1を中心として対称位置に2本設けられる。なお、軸部51の先端部に雄ねじを設け、係合孔43に形成した雌ねじと螺合させることによってヘッドピン50をアダプタ40に固定してもよい。
このように、ベーンポンプ100は、ヘッドピン50によって一体化された状態に保持できる。これにより、ベーンポンプ100をボディ90に取り付ける時、具体的には、ベーンポンプ100をボディ90に取り付けるために運搬している時や、ボディ90の収容凹部91への装着する時に、ベーンポンプ100がバラバラになってしまうことを防止できる。したがって、取り付け性が向上する。また、ベーンポンプ100をボディ90から取り外す時にも、ベーンポンプ100が一体化された状態に保持されるので、簡単に取り外すことができる。
ベーンポンプ100が流体圧装置のボディ90に取り付けられた状態、具体的には、ベーンポンプ100がボディ90の収容凹部91に収容され、カバー30がボディ90に固定された状態では、図5に示すように、カバー30とヘッドピン50の規制部52との間には隙間Sが存在する。ベーンポンプ100が駆動してポンプ室6内に高圧が発生したときに、カバー30の中央付近が持ち上げられるようにして撓んでしまう(変形してしまう)ことがある。ベーンポンプ100では、カバー30とヘッドピン50の規制部52との間には隙間Sが存在するので、このようなカバー30の撓みを許容することができる。つまり、カバー30が撓んで、ヘッドピン50の規制部52にヘッドピン50を引き抜くような力が作用しないので、ヘッドピン50の抜けや破損が防止される。このように、ベーンポンプ100はヘッドピン50によって一体化された状態に保持されるので、ベーンポンプ100を取り外すときにベーンポンプ100がバラバラになってしまうことがない。
上記実施形態では、ヘッドピン50は、2本であることを例にして説明したが、これに限らず、ヘッドピン50は、スペースを確保できればさらに多くても(3〜6本程度)もよい。ヘッドピン50の本数が多くなれば、その分ベーンポンプ100を一体化した状態を保持する保持力が向上する。逆に、ヘッドピン50の本数が少なければ、その分小型化することができる。ヘッドピン50を駆動軸を中心として対称位置に2本設けることで、最低限の本数で安定して保持することができる。また、ヘッドピン50は、その先端部が係合孔43に圧入されるように構成することで、ヘッドピン50と係合孔43のねじ加工を不要とすることができる。
このようにして組み立てられたベーンポンプ100は、ボディ90の収容凹部91に装着され、カバー30の貫通孔33に挿通されたボルトをボディ90に螺合することによりボディ90に固定される。
次に、ボディ90の収容凹部91について説明する。
図4に示すように、ボディ90の収容凹部91は、底面側から順に、底面に第2吐出流路93bが開口する第1凹部91aと、第1凹部91aより大径に形成され底面に第1吐出流路93aが開口する第2凹部91bと、第2凹部91bより大径に形成されアダプタ40の本体部40bが挿入される第3凹部91cと、第3凹部91cより大径に形成されベーンポンプ100との間に上述した吸込空間70が形成される第4凹部91dと、を有する。
ベーンポンプ100が収容凹部91内に収容された状態では、第1凹部91aにはアダプタ40の円筒部40cが嵌合され、第3凹部91cにはアダプタ40の本体部40bが嵌合される。このとき、本体部40bの環状面40fは第3凹部91cの底面に対向する。これにより、第2凹部91bと第3凹部91cとアダプタ40の本体部40bと円筒部40cの外周とによって、つまり、第2凹部91b及び第3凹部91cの底面とアダプタ40の本体部40bとの間に円環状の高圧室94が区画される。高圧室94には、ポンプ室6から吐出された高圧の作動油が、第1貫通孔21a、第1円弧溝25a、第1開口部44a、貫通孔45a及び凹溝47を通じて導かれる。高圧室94内に導かれた作動油は、第1吐出流路93aに流出する。
第4凹部91dには、ボディ側サイドプレート20、カムリング4、カバー側サイドプレート10が収容され、第4凹部91dは、カバー30がボディ90に取り付けられることによって閉塞される。第4凹部91dとベーンポンプ100(ボディ側サイドプレート20、カムリング4及びカバー側サイドプレート10)との間には、上記した吸込流路92に連通する円環状の吸込空間70が形成される。
次に、ベーンポンプ100の動作について説明する。
図示しないエンジンなどの駆動装置の動力によって駆動軸1が回転駆動されることで、ロータ2が回転する。ロータ2の回転に伴って、2つの吸込領域に位置するポンプ室6は拡張する。これにより、タンク内の作動油が、吸込流路92、吸込空間70、切欠き4e、吸込ポート11及び吸込用凹部23を通ってポンプ室6に吸い込まれる。また、2つの吐出領域に位置するポンプ室6は、ロータ2の回転に伴って収縮する。これにより、一方の吐出領域にあるポンプ室6内の作動油が、第1吐出ポート7a(第1貫通孔21a及び第1円弧溝25a)、第1接続流路41a(第1開口部44a、貫通孔45a、及び凹溝47)、高圧室94、及び第1吐出流路93aを通じて、図示しない油圧機器へと供給され、他方の吐出領域にあるポンプ室6内の作動油が、第2吐出ポート7b(第2貫通孔21b及び第2円弧溝25b)、第2接続流路41b(第2開口部44b、貫通孔45b、及び内部空間40e)及び第2吐出流路93bを通じて、図示しない油圧機器へと供給される。ベーンポンプ100では、ロータ2が1回転する間に、各ポンプ室6が作動油の吸込、吐出を2度繰り返す。
第1、第2吐出ポート7a、7b(第1、第2円弧溝25a、25b)に吐出された作動油の一部は、それぞれ連通孔28及び第2背圧溝24bを通じて背圧室5に供給され、ベーン3の基端部3bを内周カム面4aに向かって押圧する。したがって、ベーン3は、基端部3bを押圧する背圧室5の流体圧力と、ロータ2の回転に伴って働く遠心力と、によってスリット2aから突出する方向に付勢される。これにより、ベーン3の先端部3aがカムリング4の内周カム面4aに摺接しながら回転するので、ポンプ室6内の作動油は、ベーン3の先端部3aとカムリング4の内周カム面4aとの間から漏れることなくポンプ室6から吐出される。
ベーンポンプ100は、ボディ90の収容凹部91に収容された状態では、アダプタ40の本体部40bが、収容凹部91の第3凹部91cに当接している。さらに、アダプタ40とボディ側サイドプレート20との間には、Oリング83a、83bが圧縮した状態で設けられている。これにより、Oリング83a、83bの弾性力によって、ボディ側サイドプレート20が常時ロータ2の端面に押し付けられるので、ボディ側サイドプレート20とロータ2との間からの作動油の漏れを防止できる。したがって、ベーンポンプ100の吐出効率が向上する。このように、Oリング83a、83bは、第1、第2円弧溝25a、25bの外周を囲んでシールするシール部材としての機能に加え、ボディ側サイドプレート20がロータ2の端面に常時付勢する付勢部材としての機能を有する。
ポンプ室6から高圧の作動油が吐出されるようになると、第1、第2円弧溝25a、25b内の作動油の圧力も高圧になる。これにより、ボディ側サイドプレート20がロータ2の端面に押し付けられる。さらに、ポンプ室6から高圧の作動油が、第1吐出ポート7a及び第1接続流路41aを通じて高圧室94内にも導かれる。これにより、高圧室94内の作動油の圧力によって、アダプタ40が第3凹部91cの底面から離間しボディ側サイドプレート20に押し付けられる。これにより、アダプタ40は、高圧室94に導かれた高圧の作動油によってボディ側サイドプレート20をロータ2に向けて付勢し、ボディ側サイドプレート20をロータ2の端面に押し付ける。
ポンプ室6が高圧になると、Oリング83a、83bの弾性力だけではボディ側サイドプレート20をロータ2に向かって充分に押し付けることができないが、ボディ側サイドプレート20は、Oリング83a、83bの弾性による付勢力に加えて、第1、第2円弧溝25a、25b内の作動油の圧力、及びアダプタ40に作用する作動油の圧力によってもロータ2に押し付けられることになるので、高圧時においてもボディ側サイドプレート20とロータ2との間からの作動油の漏れを防止できる。
また、内部空間40eや高圧室94内に高圧の作動油が導かれた状態では、アダプタ40がボディ側サイドプレート20に押し付けられるので、Oリング83a、83bはアダプタ40とボディ側サイドプレート20との間で強く圧縮される。したがって、第2円弧溝25a、25b内の作動油が高圧になっても、Oリング83a、83bが溝からはみ出してしまうことを防止できる。
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
ベーンポンプ100は、ロータ2及びカムリング4の他端面に当接するボディ側サイドプレート20と、ボディ側サイドプレート20に形成された第1、第2吐出ポート7a、7bとボディ90に形成された第1、第2吐出流路93a、93bとを接続する第1、第2接続流路41a、41bが形成されるアダプタと、を備える。アダプタ40を適宜変更することで、ボディ側サイドプレート20に形成された第1、第2吐出ポート7a、7bとボディ90に形成された第1、第2吐出流路93a、93bとの位置のずれや形状の違いにかかわらず、第1、第2吐出ポート7a、7bと第1、第2吐出流路93a、93bとを接続させることができる。さらに、ボディ90の第1、第2吐出流路93a、93bを第1、第2円弧溝25a、25bの形状や位置に合わせて形成しなくてもよいので、設計の自由度が向上する。
カートリッジ式ベーンポンプは、様々な流体圧装置に装着される。このため、第1、第2吐出流路93a、93bの配置は、流体圧装置によって異なることがある。また、ボディ側サイドプレート20は、ロータと摺動するため耐久性に優れた鉄系の焼結金属によって形成される。このような鉄系の焼結金属は、加工性が悪く、材料自体も高いため第1、第2吐出流路93a、93bとの位置に適合させて製作すると、コストの上昇を招く。そこで、ベーンポンプ100では、ボディ側サイドプレート20に形成された第1、第2吐出ポート7a、7bとボディ90に形成された第1、第2吐出流路93a、93bと接続する部材を、ボディ側サイドプレート20とは別のアダプタ40として構成し、さらに加工性に優れたアルミニウム合金で形成する。これにより、流体圧装置の第1、第2吐出流路93a、93bの配置や形状が異なっても、ボディ側サイドプレート20を共通化することができるとともに、アダプタ40を簡単に制作することができる。さらに、アルミニウム合金を用いることで、加工時間を短縮できるとともに材料費を抑制できるので、コストの上昇を抑えることができる。また、鉄に比べて比重の軽いアルミニウム合金を用いることで、ベーンポンプ100の軽量化を図ることができる。また、ボディ側サイドプレート20は鉄系の焼結金属によって形成されるので、耐久性が向上し、ロータ2との焼き付きが防止される。
ベーンポンプ100の始動時は、吐出側の圧力が低圧であるので、吐出側の圧力によっては、ボディ側サイドプレート20をロータ2の端面に充分に押し付けることができない。これにより、ポンプ室6内の作動油がボディ側サイドプレート20とロータ2との間から漏れてしまい、ポンプの吐出効率が低下する。そこで、ベーンポンプ100では、アダプタ40とボディ側サイドプレート20との間にOリング83a、83bが圧縮して設けられる。これにより、Oリング83a、83bの弾性力によって、ボディ側サイドプレート20はロータ2の端面に押し付けられるので、ボディ側サイドプレート20とロータ2との間の漏れを低圧時にも防止できる。さらに、Oリング83a、83bは、第1、第2円弧溝25a、25bのシール部材としても機能するので、部品点数を少なくすることができる。
また、Oリング83a、83bの弾性力によって、ボディ側サイドプレート20はロータ2の端面に常時押し付けられるので、ヘッドピン50によってボディ側サイドプレート20をロータ2に押し付ける力を発生させる必要がない。したがって、ヘッドピン50を細くしたり、本数を少なくしたりすることができる。
ベーンポンプ100では、Oリング83a、83bを設けることによって、ベーンポンプ100を構成する各部材の寸法誤差を許容できる。具体的には、アダプタ40の本体部40b、ボディ側サイドプレート20、カムリング4、カバー側サイドプレート10、及びカバー30の収容凹部91に挿入される部位の駆動軸1の軸方向の寸法の合計が第3凹部91cの底面までの深さ寸法より小さくても、Oリング83a、83bの圧縮分だけ許容することができる。
なお、Oリング83a、83bに代えて、付勢部材を、例えば、アダプタ40の本体部とボディ90の第3凹部91cの底面との間に設けることもできる。この場合、付勢部材として、Oリングに限らず、皿ばねなどの部材を採用することもできる。
ベーンポンプ100では、アダプタ40とボディ90の底面との間でポンプ室6から吐出された高圧の作動油が導かれる円環状の高圧室94が区画される。ポンプ室6から吐出された高圧は、本体部40bの環状面40f全体に作用するので、ボディ側サイドプレート20をロータ2の端面に強く押し付けることができる。
ベーンポンプ100では、アダプタ40の本体部40bは円板状に形成され、円筒部40cは円筒状に形成される。これにより、本体部40b及び円筒部40cに設けられるOリング81、82は円環状で構成できる。したがって、Oリング81、82の形状が単純になり、Oリング81、82を簡単に製作することができる。さらに、本体部40b及び円筒部40cを同軸状に形成すれば、アダプタ40の加工が簡単になるとともに加工精度を向上することができる。
また、Oリング81は円筒部40cの外周に設けられることにより、円筒部40cをボディの第1凹部91aの底面に当接させてシールする必要がないので、アダプタ40の軸方向の加工精度を必要としない。これにより、加工時間を短縮できる。また、Oリング81、82は、それぞれ本体部40b及び円筒部40cの外周に設けられるので、ベーンポンプ100のボディ90への取り付け時などにOリング81、82が脱落することを防止できる。
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
カートリッジ式ベーンポンプ100は、駆動軸1に連結され回転駆動されるロータ2と、ロータ2の外周に開口部を有して放射状に形成される複数のスリット2aと、各スリット2aに摺動自在に挿入されるベーン3と、ベーン3の先端部が摺接する内周カム面4aを有するカムリング4と、ロータ2とカムリング4と隣り合うベーン3との間に区画されるポンプ室6と、ロータ2及びカムリング4の一端面に当接するとともに、ボディ90に固定されるカバー部材(カバー30及びカバー側サイドプレート10)と、ロータ2及びカムリング4の他端面に当接するボディ側サイドプレート20と、ボディ側サイドプレート20に形成されポンプ室6から吐出される作動流体が導かれる第1、第2吐出ポート7a、7bと、ボディ側サイドプレート20に形成された第1、第2吐出ポート7a、7bとボディ90に形成された第1、第2吐出流路93a、93bとを接続する第1、第2接続流路41a、41bが形成されるアダプタ40と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、アダプタ40を適宜変更することで、ボディ側サイドプレート20に形成された第1、第2吐出ポート7a、7bとボディに形成された第1、第2吐出流路93a、93bとの位置のずれや形状の違いにかかわらず、第1、第2吐出ポート7a、7bと第1、第2吐出流路93a、93bとを接続させることができる。さらに、ロータ2が摺動するボディ側サイドプレート20を共通化することができる。
また、カートリッジ式ベーンポンプ100は、ボディ側サイドプレート20をロータ2に向けて常時付勢する付勢部材(Oリング83a、83b)をさらに備えること特徴とする。
この構成によれば、付勢部材(Oリング83a、83b)によってボディ側サイドプレート20はロータ2に向けて常時付勢されるので、ボディ側サイドプレート20とロータ2の間からの漏れを防止できる。したがって、ポンプの吐出効率が向上する。
また、カートリッジ式ベーンポンプ100は、付勢部材(Oリング83a、83b)は、アダプタ40とボディ側サイドプレート20との間に圧縮して設けられ、ボディ側サイドプレート20に形成された第1、第2吐出ポート7a、7bの外周を囲んでシールするシール部材であることを特徴とする。
この構成によれば、第1、第2吐出ポート7a、7bからの漏れを防止するシール部材(Oリング83a、83b)が、付勢部材(Oリング83a、83b)として機能する。これにより、部品点数を少なくできる。
また、カートリッジ式ベーンポンプ100は、アダプタ40は、カートリッジ式ベーンポンプ100がボディ90内に収容された状態において、ボディ90の底面との間でポンプ室6から吐出された高圧の作動流体が導かれる円環状の高圧室94を区画し、高圧室94に導かれた高圧の作動流体によってボディ側サイドプレート20をロータ2に向けて付勢することを特徴とする。
この構成によれば、高圧時には、ボディ側サイドプレート20は、高圧室94に導かれた高圧の作動流体によってロータ2に向けて付勢されるので、高圧時においてもボディ側サイドプレート20とロータ2の間からの漏れを防止できる。
また、カートリッジ式ベーンポンプ100は、ボディ側サイドプレート20は、焼結金属によって形成され、アダプタ40は、アルミニウム合金によって形成されることを特徴とする。
この構成によれば、ボディ側サイドプレート20は、鉄系の焼結金属によって形成されるので耐久性が向上し、ロータ2との焼き付きが防止される。また、アダプタ40は、鉄系の焼結金属よりも軽いアルミニウム合金によって形成されるので、軽量化を図ることができる。さらに、アルミニウム合金は加工性が良いので、アダプタ40を簡単に製作することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
ベーンポンプ100は、吐出ポートを2つ設けたが、1つであってもよい。また、カバー30は、カバー側サイドプレート10と一体に形成されていてもよい。高圧室94が形成されていれば、凹溝47は形成されなくてもよい。
ボディ90には、2つの吐出流路(第1、第2吐出流路93a、93b)が設けられているが、吐出流路は1つであってもよい。この場合には、例えば、アダプタ40に円筒部40cを設けないことで、第1、第2接続流路41a、41bを高圧室94で合流させることができる。