JP2017057439A - 金属−多孔性高分子金属錯体複合材料の製造方法および金属−多孔性高分子金属錯体複合材料 - Google Patents

金属−多孔性高分子金属錯体複合材料の製造方法および金属−多孔性高分子金属錯体複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】金属イオンと配位子から形成される多孔性高分子金属錯体及びその粉末または膜の形成方法を提供することである。またそれにより形成される多孔性高分子金属錯体膜から成る複合体を提供する。【解決手段】金属イオン源として金属板を用意し、配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、前記溶液に前記金属板を投入して、前記金属板と前記配位子物質とを反応させ、前記金属板上に下記式(1)[MLx]n(1)(式中、M、L、nは明細書中に定義するものである)で表される多孔性高分子金属錯体膜を形成し、前記金属板が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記反応を停止することを含む、前記金属板上に前記多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の形成方法。【選択図】なし

Description

本発明は金属または金属酸化物を利用した金属−多孔性高分子金属錯体複合材料の製造方法、および本方法により製造される金属−多孔性高分子金属錯体複合材料に関する。
多孔性高分子金属錯体(PCP:Porous Coordination Polymer)は、金属イオンと有機配位子から構成される結晶性固体で、種々の金属イオン、有機配位子の組み合わせおよび骨格構造の多様性を有している。ナノレベルの細孔の細孔径分布、細孔分布が極めて高精度に制御された多孔体であるため、ガス分離/貯蔵材料、センサー、触媒、導電性材料等への応用が検討されている。(非特許文献1〜非特許文献4)
多孔性高分子金属錯体は、金属イオンと有機配位子から構成されるため、所望する金属イオンを含有する金属塩と有機配位子を提供することができる物質(以下、「配位子物質」という)との反応から得る事ができる。本反応は金属塩と配位子物質との溶液中、または溶媒を使用せずに、金属塩と配位子物質とを混合する固相でも行う事ができる。また、金属塩の代わりに、金属板を電極として用い、これに通電する事で、金属板から溶出した金属イオンと配位子物質とを反応させる電気化学的合成法も知られている。また、金属酸化物と配位子物質とを高温で反応させることで、金属酸化物を多孔性高分子金属錯体に変換する手法も提案されている。
多孔高分子金属錯体は、膜化すると、以下のような種々の利点がある。多孔性高分子金属錯体を、膜化する技術は重要である。多孔性高分子金属錯体を、触媒として利用する場合は、表面積を増加させて反応を促進する効果が得られる。センサー、導電性材料として利用する場合も、膜として多孔性高分子金属錯体を利用する事でデバイスの小型化が可能となる。膜化した多孔性高分子金属錯体を用いてガス分離を行う事も可能である。
PCPは、樹脂等と異なり、弾性に乏しい脆性材料であるから、薄膜化する場合は、何らかの基板の上に多孔性高分子金属錯体膜を形成する事が多い。
このような方法としては以下の方法が知られている
(1)金属塩と配位子物質とを含有する溶液中に基板を浸漬し、基板上に多孔性高分子金属錯体膜を形成させる方法(非特許文献8)。
(2)金属塩を含有する溶液と、配位子物質を含有する溶液中に、交互に基板を浸漬する事によって、ステップバイステップで基板上に多孔性高分子金属錯体膜を形成させる方法(非特許文献9)。
(3)高真空を利用して、多孔性高分子金属錯体成分を基板上に析出させる方法(非特許文献5、6)。
(4)配位子物質溶液に金属酸化物を浸漬し、高温で反応させることで金属酸化物表面を多孔性高分子金属錯体膜に変換することにより、結果として金属酸化物表面に多孔性高分子金属錯体膜を形成させる方法(非特許文献10)。
また、これらの方法に、基板表面と多孔性高分子金属錯体の馴染みをよくする目的で、カルボン酸含有官能基の薄層をSAM(Self-Assembled Molecular)手法を用いて形成する手法も組み合わせて利用される(非特許文献7)。
特開2010−059111号公報
北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年214-218頁 Huppら、Chem. Soc. Rev., (2009) 1450 Jamesら、Chem.Soc.Rev., (2003) 276 Zhouら、Chem. Soc. Rev., (2009) 1477 Fischerら、Angew. Chem. Int., Ed. (2004), 43, 2839(高真空利用の合成) Fischerら、Chem. Commun., (2009) 119(高真空利用の合成) Fischerら、Angew. Chem. Int., Ed. (2009), 48, 5038(SAM利用の合成) Beinら、J. Am. Chem. Soc., (2007) 129, 8054(一般的な溶液法による薄膜合成) 北川ら、J. AM. CHEM. SOC,, 2008, 130, 15778(ステップバイステップ法) 北川ら、Nature Mat., (2012) 717(金属酸化物との高温反応) Longら、 J. Am. Chem. Soc., (2014) 10752 Yahiら、J. AM. CHEM. SOC.,(2005)1504 Cheethamら、Dalton Trans., (2008) 2034 Tannenbaumら、Eur. J. Inorg. Chem., 2009, 2338 Williamsら、Science, (1999) 283, 1148 Burrowsら、Dalton Trans., (2008) 6788 Dietzelら、Angew. Chem. Int., Ed. (2005) 6354
既存の多孔性高分子金属錯体の製造法では、次のような問題点が存在する。
多孔性高分子金属錯体を構成するのは金属イオンと配位子であるため、金属イオン源として、金属塩を使用した場合、対イオンは生成する多孔性高分子金属錯体に取り込まれずに、副生成物となる。たとえば硝酸銅とテレフタル酸との反応では、硝酸が副生成物として生成することになる。
金属板を電極として利用する電気化学的合成法では、専用の設備が必要になり、一般のグラスライニング等の反応釜での合成はできない。また、導電性向上や、対極での金属の析出を防止するための導電性添加剤、犠牲還元剤等が必要となりコストアップの要因となる。
金属酸化物を利用する方法は、先行技術が極めて限られており、非特許文献10記載の方法は高温が必要であり、限定的な金属酸化物と配位子物質とで実施されているだけであり、汎用性に欠ける。
また、金属酸化物と配位子物質との反応を溶液中で行う場合は、金属イオンを溶解させて反応を促進させるために、ジメチルホルムアミド(DMF)の様な極性の高い、高沸点溶媒を使用する事が多い。さらに、ピリジンの様な塩基が反応促進剤として利用されることも多い。しかしこれらは、場合によっては多孔性高分子金属錯体の金属イオンに配位してしまうため、製造後にも多孔性高分子金属錯体の細孔中に残存してしまい、触媒、ガス吸着貯蔵の特性を低下させたり、あるいは残存する反応促進剤を除くために高温での処理が必要となる場合がある。高温での処理は煩雑であると共に、多孔性高分子金属錯体によっては熱劣化により特性が低下する場合がある。高温をかけずにこれらを除去する方法として、超臨界二酸化炭素等を使用する方法があるが、特殊装置による煩雑な工程が必要である。
既存の膜化手法においては、次のような問題点が存在する。
上記多孔高分子金属錯体の膜化の(1)(2)の方法は、溶液中の一部の金属イオンと配位子が基板上に析出するだけであり反応効率が低い。
(3)の方法は特殊装置を使った反応であり、また汎用性に欠ける。
(4)の方法は前述の通り、先行技術が極めて限られており、非特許文献10の方法では高温が必要であり、限定的な金属酸化物と配位子物質とで実施されているだけであり、汎用性に欠ける。また、得られた多孔高分子金属錯体の薄膜を、ガス分離膜や、導電性デバイスとして使用する場合には、膜の緻密性が非常に重要であるが、既存の手法で得られる手法では、基板上の多孔性高分子金属錯体形成反応を厳密に制御できているとは言い難く、結果として緻密な膜を得る事が困難であった。
本願発明は、所望する金属イオンを提供する金属イオン源と配位子物質とをアルコール系溶媒中で反応させることで、金属−多孔性高分子金属錯体複合材料を製造する方法である。用いる金属イオン源は粉末状でもよく、板状等の成形体でもかまわない。本発明で用いることができる、金属イオン源となる金属粉末又は金属板には、純金属、並びに、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物等金属を含む金属化合物の粉末又は板状成形体を含む。
金属粉末を用いて十分に反応させた場合は、金属粉末はすべて多孔性高分子金属錯体に変換されるため、多孔性高分子金属錯体の粉末粒子が得られる。金属粉末を用いて反応時間を制御し、金属粉末粒子の一部を反応させた場合は、金属粉末粒子が多孔性高分子金属錯体で部分的にコートされた、金属−多孔性高分子金属錯体複合体粉末が得られる。
金属イオン源が板状等の金属成形体で、反応時間を制御し、金属の一部を反応させた場合は、金属板上に多孔性高分子金属錯体が析出した、すなわち金属板の上に多孔性高分子金属錯体膜が形成された複合体が得られる。金属板状等の成形体で、反応時間を制御し、金属のすべてを反応させた場合は、金属粉末を使用した時と同様に、板状の多孔性高分子金属錯体が得られる。
これらの反応はアルコール系溶媒の中で温和な温度で、短時間で行うことができ、後処理等も必要なく、対イオン由来の副生物も無く、極めてクリーンかつ容易であり、汎用の装置を用いて実施可能である。反応溶媒としてジメチルホルムアミド、ピリジン等を用いず、沸点が低いアルコール系溶媒を用いるため、反応後にジメチルホルムアミド、ピリジン類が細孔内に残って多孔性高分子金属錯体の特性を低下させたり、ジメチルホルムアミド、ピリジン類を除くための熱処理をする必要もない。また、ガス吸着貯蔵の特性を低下させることもない。
金属イオン源として金属板を使用し、配位子物質Aを含有する溶液中で反応を行い、基板上に金属イオンと配位子Aとからなる多孔性高分子金属錯体膜(便宜上、PCP−Aと呼ぶ)を形成させた後に、本材料をさらに別の配位子物質Bを含有する溶液中で反応させると、基板上に配位子Aからなる多孔性高分子金属錯体膜(PCP−A)と配位子Bからなる多孔性高分子金属錯体膜(PCP−B)とを積層させた複合膜を形成する事ができる。二種の多孔性高分子金属錯体膜を複合させることで、それぞれの多孔性高分子金属錯体が有する機能の複合化が可能となる。
この場合、配位子Bの直径が多孔性高分子膜(PCP−A)の細孔径より小さい場合は、配位子Bが多孔性高分子膜(PCP−A)の細孔内を通って金属Aと反応するため、得られる材料の構成は金属A/PCP−B/PCP−Aとなる。一方、配位子Bの直径が多孔性高分子膜(PCP−A)の細孔径より大きい場合は、金属イオンが細孔内を通過してPCP−A膜の上で配位子Bと反応するため、得られる材料の構成は金属A/PCP−A/PCP−Bとなる。これらの構成は、細孔径と配位子の大きさだけではなく、溶媒等の反応条件にも影響を受けるため、必ずしも一義的に決められない。
また、金属イオン源として金属板を使用する際に、金属板A上に金属箔Bを付けた板を使用すると、まず金属Bと配位子物質との反応が生じるため、金属板A上に金属Bと配位子とから形成される多孔性高分子金属錯体膜(便宜上、B−PCPと呼ぶ)が形成される。金属Bが全て消費されるまで反応を進ませることで、金属A/B−PCPの構成の材料を得ることができる。そして金属A/B−PCPが形成された後にさらに配位子物質と反応させると、今度は金属Aが配位物質と反応することで多孔性高分子膜(便宜上、A−PCPと呼ぶ)が生成して、金属A/PCP−B/PCP−Aの構成が得られる。これらの構成は、反応時間、細孔径と配位子の大きさとの関係、溶媒等の反応条件にも影響を受けるため、必ずしも一義的に決められない。
上述したように、本発明に基づいて、金属板と多孔性高分子金属錯体膜から種々の複合体を調整することができる。
基板金属上に配位子Aからなる多孔性高分子金属錯体膜(便宜上、PCP−Aと言う)と配位子Bからなる多孔性高分子金属錯体膜(PCP−B)とを積層させた複合膜を形成する為には、基板金属上に配位子Aからなる多孔性高分子金属錯体膜(PCP−A)が形成された複合材料を、配位子Bの溶液に浸漬すれば良いが、最終的に形成される複合体の複合体構造は、用いる金属,配位子物質A、Bの種類に依存すると考えられる。形成されたPCP−Aの細孔径よりも配位子Bが大きい場合は、基板金属から微量溶解した金属イオンがPCP−Aの細孔内を拡散し、配位子Bと反応し、PCP−A層上にPCP−B層が形成されるため、最終的に形成される複合材料は、基板金属/PCP−A/PCP−Bの構成となる。
一方、PCP−Aの細孔径よりも配位子Bが小さい場合は、PCP−Aの細孔内を配位子Bが拡散し、基板金属と反応するため、形成される複合材料は、基板金属/PCP−B/PCP−Aの構成となる。但し、PCP−Aと配位子Bの相互作用が強い場合は、PCP−Aの細孔内への配位子Bの拡散が阻害される結果、金属イオンがPCP−Aの細孔内を拡散して配位子Bと反応する方が優先され、結果として、基板金属/PCP−A/PCP−Bの構成が得られる場合もある。
本発明の方法で得られた多孔性高分子金属錯体膜は、金属イオンと配位子物質との反応が高度に制御されて行われるため、緻密な膜が形成可能であり、触媒、ガス貯蔵/分離材料、センサー、電子デバイス等に好適に使用可能である。
本発明の目的は、金属イオンと配位子から形成される金属−多孔性高分子金属錯体膜及びその粉末の形成方法を提供することである。またこれら粉末、膜を利用した装置、デバイス類を提供することである。
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、金属イオン源を、アルコール系溶媒を用いて配位子物質と反応させた結果、副生成物を伴うこと無く多孔性高分子金属錯体が得られ、さらに、金属イオン源の形状を選択し、反応を制御した場合には金属−多孔性高分子金属錯体の複合材料が得られる事を見いだし、本発明を完成するに至った。また、本発明の材料が、ガス分離材料、電子デバイス等に利用できることから、本発明を完成するに至った。
(1) 金属イオン源として、純金属板、金属酸化物板、金属窒化物板から成る群より選ばれる金属板を用意し、
配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、
前記溶液に前記金属板を投入して、
前記金属板と前記配位子物質とを反応させ、前記金属板上に
下記式(1)
[MLxn (1)
(式中、Mは、前記金属イオン源由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[MLx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表される多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
前記金属板が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記反応を停止すること
を含む、
前記金属板上に前記多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の形成方法。
(2) 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である(1)に記載の形成方法。
(3) 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である(2)に記載の形成方法。
(4) 前記反応が、温度−20〜150℃で行われる(1)〜(3)のいずれか一つに記載の形成方法。
(5) 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である(1)〜(4)のいずれか一つに記載の形成方法。
(6) 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである(5)に記載の形成方法。
(7) 前記金属イオン源が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板である(1)〜(4)のいずれか一つに記載の形成方法。
(8) 前記金属イオン源が、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板である(7)に記載の形成方法。
(9) 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である(1)〜(4)のいずれか一つに記載の形成方法。
(10) 金属イオン源として金属板を用意し、
第1配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、第1配位子物質溶液を調製し、
第1配位子物質とは異なる第2配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、第2配位子物質溶液を調製し、
前記第1配位子物質溶液に前記金属板を投入して、
前記金属板と前記第1配位子物質とを反応させ、前記金属板上に
下記式(1)
[ML1xn (1)
(式中、Mは、前記金属イオン源由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、L1は、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子L1の負電荷が相殺する値であり、nは、[ML1x]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表される第1多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
前記金属板が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記反応を停止し、その後
前記金属板上に前記多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体を、洗浄し、
前記第2配位子物質溶液に前記複合体を投入して、
前記金属板と前記第2配位子物質とを反応させ、前記金属板上又は前記第1多孔性高分子金属錯体膜上に
下記式(2)
[ML2xn (2)
(式中、M、Xは、式(1)の場合と同じであり、L2は上記L1とは異なる、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、nは、[ML2x]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表される第2多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
前記金属板が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記金属板と前記第2配位子物質との反応を停止すること、
を含む、前記金属板上に2種の異なる多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の形成方法。
(11) 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である(10)に記載の形成方法。
(12) 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である(11)に記載の形成方法。
(13) 前記各反応が、温度−20〜150℃で行われる(10)〜(12)のいずれか一つに記載の形成方法。
(14) 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である(10)〜(13)のいずれか一つに記載の形成方法。
(15) 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである(14)に記載の形成方法。
(16) 前記金属イオン源が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板である(10)〜(13)のいずれか一つに記載の形成方法。
(17) 前記金属イオン源が、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板である(16)に記載の形成方法。
(18) 前記第1及び第2配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4‘−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である(10)〜(13)のいずれか一つに記載の形成方法。
(19) 基板上に金属イオン源として、順に金属板Aと金属板Bとを有する積層体を用意し、前記金属板A及びBは、それぞれ、純金属板、金属酸化物板、金属窒化物板から成る群より選ばれ、
配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、
前記配位子物質溶液に前記積層体を投入して、
前記金属板Bと前記配位子物質とを反応させ、前記金属板A上に
下記式(1)
[M1Lxn (1)
(式中、M1は、前記金属板B由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、M1に配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のM1と架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンM1の正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[M1Lx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表される第1多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
前記金属板Bが前記反応によりすべて消費されたことを確認し、その後
前記金属板Aと前記配位子物質とを反応させ、前記金属板A上又は前記第1多孔性高分子金属錯体膜上に
下記式(2)
[M2Lxn (2)
(式中、M2は、前記金属板A由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、X、Lは、式(1)の場合と同じであり、nは、[M2Lx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表される第2多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
前記金属板Aが前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記金属板Aと前記配位子物質との反応を停止すること、
を含む、前記金属板A上に2種の異なる多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の形成方法。
(20) 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である(19)に記載の形成方法。
(21) 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である(20)に記載の形成方法。
(22) 前記各反応が、温度−20〜150℃で行われる(19)〜(21)のいずれか一つに記載の形成方法。
(23) 前記M1及びM2が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上であるが、但しM1及びM2が異なる、(19)〜(22)のいずれか一つに記載の形成方法。
(24) 前記M1及びM2が、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンであるが、但しM1及びM2が異なる、(23)に記載の形成方法。
(25) 前記金属イオン源の金属板A及び金属板Bが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板であるが、但し金属板A及び金属板Bは異なる金属である(19)〜(22)のいずれか一つに記載の形成方法。
(26) 前記金属イオン源の金属板A及び金属板Bが、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板であるが、但し金属板A及び金属板Bは異なる金属である(25)に記載の形成方法。
(27) 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である(19)〜(22)のいずれか一つに記載の形成方法。
(28) 金属イオン源として、純金属、金属酸化物、金属窒化物から成る群より選ばれる金属粉末を用意し、
配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、
前記溶液に前記金属粉末を投入して、攪拌し、
前記金属粉末と前記配位子物質とを反応させ、
前記金属粉末がすべて消費されるまで反応を継続する、
下記式(1)
[MLxn (1)
(式中、Mは、前記金属イオン源由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[MLx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表される多孔性高分子金属錯体粉末の形成方法。
(29) 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である(28)に記載の形成方法。
(30) 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である(29)に記載の形成方法。
(31) 前記反応が、温度−20〜150℃で行われる(28)〜(30)のいずれか一つに記載の形成方法。
(32) 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である(28)〜(31)のいずれか一つに記載の形成方法。
(33) 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである(32)に記載の形成方法。
(34) 前記金属イオン源が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上である(28)〜(31)のいずれか一つに記載の形成方法。
(35) 前記金属イオン源が、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上である(34)に記載の形成方法。
(36) 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である(28)〜(31)のいずれか一つに記載の形成方法。
(37) 金属イオン源として、純金属、金属酸化物、金属窒化物から成る群より選ばれる金属粉末を用意し、
配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、
前記溶液に前記金属粉末を投入して、攪拌し、
前記金属粉末と前記配位子物質とを反応させ、
下記式(1)
[MLxn (1)
(式中、Mは、前記金属イオン源由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[MLx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表される多孔性高分子金属錯体を形成し、
前記金属粉末が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記反応を停止すること
を含む、
前記金属粉末粒子の周囲に前記多孔性高分子金属錯体を有するコア−シェル型複合粒子の形成方法。
(38) 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である(37)に記載の形成方法。
(39) 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である(38)に記載の形成方法。
(40) 前記反応が、温度−20〜150℃で行われる(37)〜(39)のいずれか一つに記載の形成方法。
(41) 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である(37)〜(40)のいずれか一つに記載の形成方法。
(42) 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである(41)に記載の形成方法。
(43) 前記金属イオン源が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上である(37)〜(40)のいずれか一つに記載の形成方法。
(44) 前記金属イオン源が、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上である(43)に記載の形成方法。
(45) 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である(37)〜(40)のいずれか一つに記載の形成方法。
(46) 純金属板、金属酸化物板、金属窒化物板から成る群より選ばれる金属板及び該金属板の片面又は両面上にある多孔性高分子金属錯体膜から成る複合体であって、
前記多孔性高分子金属錯体膜が、
下記式(1)
[MLxn (1)
(式中、Mは、前記金属板由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[MLx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表され、
前記金属板は、前記多孔性高分子金属錯体の金属イオンMの金属であり、
前記多孔性高分子金属錯体膜の二乗平均表面粗さRq(RMS)が、膜厚に対し、25%未満であり、そして
絶縁破壊耐電圧が0.1V以上である、
複合体。
(47) 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である(46)に記載の複合体。
(48) 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである(47)に記載の複合体。
(49) 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である(46)〜(48)のいずれか一つに記載の複合体。
本発明の方法により、多孔性高分子金属錯体を形成することができ、多孔性高分子金属錯体粉末、金属と多孔性高分子金属錯体との複合体の粒子、板状物等を製造することができる。本方法で製造される多孔性高分子金属錯体の粉末、金属と多孔性高分子金属錯体複合体の粒子、板状物は、センサー、導電性材料等として利用が可能である。
本発明の方法で製造される多孔性高分子金属錯体の粉末は、高温での前処理をする事無く、細孔内に残存している溶媒を除去することができるため、高温処理での材料劣化が起こりにくく、ガス貯蔵、分離材料、触媒等として優れた特性を発現する。
本発明の方法で製造される多孔性高分子金属錯体と金属板との複合体は、多孔性高分子金属錯体膜が緻密であるため、ガス分離貯蔵材料、電子デバイス、触媒等として利用した際に優れた特性を発現する。
本発明の多孔性高分子金属錯体を形成する方法によって、多孔性高分子金属錯体膜を形成する際の時間と膜厚の関係を示すグラフ。 実施例1で形成されたPCP薄膜の表面及び断面を表したSEM写真。
本発明方法によって得られる多孔性高分子金属錯体は、下記式(1)
[ML (1)
(式中、Mは元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[ML]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
で表される。
本発明の多孔性高分子金属錯体は多孔体であるため、水やアルコールやアルコールなどの有機分子に触れると孔内に水や有機溶媒を含有し、たとえば式(2)
[MLn(G)y (2)
(式中、Mは元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[ML]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。Gは水やアルコール等の分子で、yは0.01〜8である)であるような複合材料に変化する場合がある。
しかし、これらの複合材料中の上記Gで表されるゲスト分子は、多孔性高分子金属錯体に弱く結合しているだけであり、減圧乾燥などで容易に除かれ、元の式(1)で表される材料に戻る。そのため、式(2)で表されるような形態であっても、本質的には本発明の(1)の多孔性高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。また、Gが目的とする材料の物性に影響を及ぼさない量、物質である場合は、Gを含有したまま使用することができる。
本発明の方法で使用される金属イオン源は、元素の周期表の2〜15族から選ばれる金属イオンを提供できる、純金属、又は金属化合物、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物等である。多孔性高分子金属錯体を形成しやすい点で、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、希土類、銀が好ましい。基板との密着性が高い多孔性高分子金属錯体が形成されやすい点で鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀が、好ましい。平滑性が高い点では、銅、銀が好ましく、膜の緻密性が高い点で、さらに好ましくは銅である。イオン化傾向が大きい金属は容易にイオン化するため、容易に多孔性高分子金属錯体膜を形成することができるが、得られる膜が粗になりやすい。イオン化傾向が小さい金属の方が、膜の粗度、密度の点で優れた膜ができる。特にHよりもイオン化傾向が小さい金属、たとえば、銅、銀は優れた膜を与える。
本発明の方法で使用される金属イオン源となることができる金属酸化物は、元素の周期表の2〜15族から選ばれる金属の酸化物である。多孔性高分子金属錯体を形成しやすい点で、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、希土類、銀の酸化物が好ましい。純度が高い多孔性高分子金属錯体が形成されやすい点で鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀の酸化物が好ましい。平滑性が高い点では、銅、銀の酸化物が好ましく、膜の緻密性が高い点でさらに好ましくは銅酸化物である。また、金属窒化物も金属イオン源と成ることができる。用いることができる金属窒化物は、元素の周期表の2〜15族から選ばれる金属の窒化物である。金属窒化物は、金属より腐食や酸化に強い特性を有する。このため、電気電極として用いるのに適しており、また長期間安定である。また金属よりも硬度が高い特性を有する。このため、機械的に強い強度を得ることができる。金属窒化物の例としては、窒化ニッケル、窒化銅が好ましい。
金属イオン源となることができる金属は合金であっても良い。この場合は、複数種の金属イオンを含有する多孔性高分子金属錯体が形成される。多孔性高分子金属錯体を形成しやすい点で、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、希土類を50%以上の純度で含有する合金が好ましい。純度が高い多孔性高分子金属錯体が形成されやすい点で鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛を50%以上の純度で含有する合金が好ましい。さらに好ましくは銅を50%以上の純度で含有する合金である。また、二種金属貼り合わせの板を使用する事も可能である。
粉末状の多孔性高分子金属錯体を製造する場合は、金属イオン源として金属粉末または金属箔を用いることが好ましい。金属粉末の平均粒径は、50nm〜2mmである。50nm以下では取り扱いが難しく、2mm以上では反応が遅い。純度が高い多孔性高分子金属錯体が得られる点で、100nm以上、1mm以下の粒径が好ましい。金属箔を用いる場合は、金属箔の厚さは、2nm以上1mm以下である。金属粒子と多孔性高分子金属錯体の複合粒子を製造する場合は、目的とする粒子の大きさに合わせて、金属粒子の大きさを選択することができる。
膜状の多孔性高分子金属錯体を製造する場合は、金属イオン源として金属板を使用すれば良い。金属板の厚さは、目的に応じて選択することができる。
金属イオン源として、純金属、又は金属化合物を用いる場合、金属イオンは、酸性配位子のプロトンにより溶解して生成する。一般にイオン化傾向がHよりも小さい銀や銅は、プロトン酸では溶解しづらいが、酸素が存在する場合は溶解現象が生じるため、本反応により、多孔性高分子金属錯体調製の原料として使用することが可能である。
本発明の多孔性高分子金属錯体を形成する方法では、酸性配位子を使用する事が必須である。ここで用いる「酸性配位子」とは、カルボキシル基、スルホン酸基、りん酸基のいずれか1種以上を、最低2個含有する、脂肪族または芳香族化合物由来の有機性配位子のことをいう。具体的には、脂肪族配位子としては、1,4ブタンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、くえん酸、フマル酸、酒石酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、デカヒドロ−1,4−ナフタレンジカルボン酸、こはく酸等を例示できる。好ましくはくえん酸、フマル酸である。
芳香族化合物由来の配位子に含まれる芳香環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン、ビフェニル等が挙げられる。具体的には置換または非置換のテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸である。さらに具体的には、ヒドロキシル基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキル基、アミド基、アルコキシ基、ハロゲン、フルオロアルキル基が1個または2個置換したテレフタル酸類およびイソフタル酸類である。中でも好ましいのは置換位置が2位置換または2位、5位に2置換のテレフタル酸および5位置換のイソフタル酸である。
有機性配位子が得られるその他の好ましい芳香族化合物は、置換、非置換のトリメシン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4’−カルボキシ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゼン、ビフェニル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸、9,10−アントラセンジカルボン酸、3,3’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ピロメリット酸(1,2,4,5−テトラカルボン酸、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、1,3,5−トリス(4’−カルボキシ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゼン、1,3,5−トリスカルボキシフェニルエチニルベンゼン、3,3’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン、[1,1’:4’,1’’]テトラフェニル−3,3’’,5,5’’−テトラカルボン酸、9,10−アントラセンジカルボン酸、ビフェニル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸3,4−プロピレンジオキシチオフェン−2,5−ジカルボン酸、1,2,4,5−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ベンゼン、4,4’,4’’−s−トリアジン−2,4,6−トリイル−三安息香酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−オキシビス(安息香酸)、4,4’−スルホニル二安息香酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、ピリミジン−5−カルボン酸、5−メチルピラジン−2−カルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸である。
これらの配位子物質は複数種を混合して使用する事ができる。使用割合は、目的とする多孔性高分子金属錯体に含まれる配位子の比率に応じて決める事ができる。
上記の酸性配位子に加えて、塩基性配位子を混合使用する事ができる。ここで用いる「塩基性配位子」とは、ピリジル基、イミダゾリル基等の芳香族性窒素原子を含有する有機化合物由来の配位子であり、具体的には、置換または非置換の4,4’−ビピリジン類、置換または非置換のイミダゾール類、およびピリジル基、イミダゾリル基を含有する有機化合物由来の各種配位子が例示できる。具体的な化合物は、2,4,6−トリ(4−ピリジル)−1,3,5−トリアジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)−エチレン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ジピリジルアミン (dpa)、亜鉛5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン、1,10−フェナントロリン、1,3,5−トリアジン、4,4’−ビピリジル、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン (dabco)、ピラジンである。
本発明の多孔性高分子金属錯体を形成する方法では、溶媒は1価〜3価のアルコール類である。アルコール類は、極性を有するため、ヘテロ原子を含有する配位子物質の溶解性に優れている。また、金属イオン源の溶解性にも優れている。ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等も金属イオン源の溶解能が高いが、過剰な溶解性を有する溶媒の使用は、過度に多孔性高分子金属錯体の形成を促進し、得られる膜の平滑性の低下、膜密度の低下の原因となるので好ましくない。
1価のアルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノールが挙げられる。2価のアルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。3価のアルコールとしてはグリセリンが挙げられる。多孔性高分子金属錯体の収率が高い点で、メタノール、エタノールが好ましい。得られた多孔性高分子金属錯体の純度が高い点でエタノールが特に好ましい。これらの溶媒を混合して使用する事ができる。得られた多孔性高分子金属錯体の純度が高い点でエタノールを70%以上含有していることが好ましい。
上記アルコール類に、アルコール類以外の溶媒を混合して使用する事ができる。混合使用可能な溶媒の例として、ヘキサン等のアルカン類、ベンゼン等の芳香族類、ジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類。ジメチルホルムアミド等のホルムアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。アルコール類以外の溶媒の混合比は50体積%未満が好ましい。
水は上記の通り、過剰に存在していると得られる膜の平滑性の低下、膜密度の低下の原因となるので好ましくない。全溶媒質量の含水量は、0〜12質量%、平滑性が高くなる観点から0.00001〜7質量%、膜密度が高くなる点で0.001〜4質量%、電気特性が向上する観点から、0.05〜質量1%である。
金属イオン源と配位子物質の反応時の反応温度は−20℃〜150℃が好ましい。反応が速やかに進む点から0℃〜140℃が好ましい。膜の平滑性が向上する点からさらに好ましくは20℃〜120℃である。膜の緻密性が向上する観点からさらに好ましくは40℃〜90℃である。過剰に高い温度は、多孔性高分子金属錯体の成長を過度に促進し、結晶粒径が粗大化するため、得られる膜の平滑性が失われる。低温の場合は結晶成長点の数が少なくなり、膜の密度が低下し、クラック等の発生原因となる。
反応に用いられる配位子物質の濃度は、提供される配位子換算で0.001mM〜配位子の飽和濃度である。反応が迅速に進む点で、0.01mM〜飽和濃度が好ましい。
金属イオン源と配位子物質の反応時間は、使用する金属粉末、金属板の、粒径や板厚、目的とする多孔性高分子金属錯体の量(厚み)で変化するために一義的に決められないが、1秒〜180時間である。時間を長くすることで、原料の金属イオン源をより消費させ、多孔性高分子金属錯体の量(膜の場合は厚さ)を増加させることができる。
金属イオン源として金属粉末を用いる場合、金属がすべて消費されてしまう前に反応を停止させることによって、コアと成る金属粒子の周囲にシェルと成る多孔性高分子金属錯体を形成させたコア−シェル型複合粒子を形成する事が可能である。得られた複合材料の金属粒子径、多孔性高分子金属錯体の厚みは、目的に応じて、使用する金属粒子径、反応時間で制御する事が可能である。長時間反応させることでコアと成る金属粒子の大きさは小さく、シェルと成る多孔性高分子金属錯体の厚みは大きくなる。
金属/多孔性高分子金属錯体(A)/多孔性高分子金属錯体(B)タイプの複合材を形成することができる。上記方法によって形成されたコア−シェル複合粒子を、さらに別種の配位子を含有した溶媒に浸漬し、再反応させる事で、複合粒子の上にさらに別種の配位子から形成される多孔性高分子金属錯体(B)層を形成する事が可能である。
金属イオン源と成る金属板の上に多孔性高分子金属錯体膜を形成することができる。金属板を配位子と反応させる際に、金属板がすべて消費されてしまう前に反応を停止させることで、金属板の上に多孔性高分子金属錯体の層を形成する事が可能である。得られた複合体の金属板の厚み、多孔性高分子金属錯体の厚みは、使用する金属板の厚みと反応時間を制御することで設定可能である。
金属イオン源と成る金属板の上に複数種の多孔性高分子金属錯体膜を形成することができる。上記の金属板の上に多孔性高分子金属錯体の層が形成された複合材料を、さらに別種の配位子物質を含有した溶液に浸漬する事で、さらに別種の配位子からなる多孔性高分子金属錯体の層を積層する事が可能である。
金属イオン源と成る金属板としてめっき金属板を使用した場合、たとえば銅板の上に亜鉛めっきが形成されている板を用いた場合、銅/亜鉛/亜鉛含有多孔性高分子金属錯体の積層体を形成する事が可能である。
さらに上記方法において、亜鉛が消費された後にも反応を継続する事で、銅/亜鉛/亜鉛含有多孔性高分子金属錯体の積層体/銅含有多孔性高分子金属錯体の複合材料を形成する事が可能である。
金属イオン源として、板状物を用いて、板状物の上に多孔性高分子金属錯体を形成できるのと同じ原理に基づき、金属イオン源として線状物を用いる事で、線状物に多孔性高分子金属錯体をコートした複合材料を調製可能である。また、金属イオン源として排ガス浄化触媒の担体として利用されるハニカム構造体を用いる事で、ハニカム構造体に多孔性高分子金属錯体をコートした複合材料を調製可能である。これらの金属イオン源として用いる材料の形状は、目的に応じて適切な物を選択すればよい。
本発明の多孔性高分子金属錯体を形成する方法を用いて回路を形成することができる。金属イオ源と成る金属板の上に、多孔性高分子金属錯体と金属が反応しないように樹脂等でマスキングし、当該材料を配位子と反応させることで、金属板の上に多孔性高分子金属錯体の回路等を形成する事が可能である。
また別の手法として、配位子と反応しない金属(たとえばプラチナ)上に配位子と反応する金属(たとえば銅)にてあらかじめ回路を形成し、当該材料を配位子との反応に使用する事で、多孔性高分子金属錯体の回路を形成することが可能である。
従来技術の多孔性高分子金属錯体膜を形成する方法は、配位子と金属イオンの両方の原料を含有する溶液に基板を浸漬するのが主流であった。しかしこの方法では、原料濃度が低い場合は多孔性高分子金属錯体の生成が起こりにくく、基板上の多孔性高分子金属錯体の発生点が少なく、その少ない発生点を起点として多孔性高分子金属錯体膜が成長するため、粗な膜となりやすい欠点があった。一方で濃度が高い場合は、発生点が増えるが、多孔性高分子金属錯体の成長速度が多く、粒径が大きくなり、平坦性が失われる。いずれにせよ、溶液中に、原料の双方を溶解させている点で濃度制御が困難であるという本質的な欠点があった。
上記従来方法の改良として、基板を金属塩溶液、配位子溶液に交互に浸漬するステップバイステップ法も提案されている。この方法によれば、上記の濃度制御の問題が解決されるが、1セット(金属塩溶液、配位子溶液それぞれ1回ずつ)の浸漬で1分子分の膜しか成長しない為、100分子分の膜(およそ100ナノの超薄膜)を形成させるためにも100セットの浸漬が必要であり、極めて煩雑である。
本願発明により、緻密で平滑な膜が形成される理由は、以下の様に推定出来る。すなわち、多孔性高分子金属錯体のナノレベルの細孔を通じて多孔性高分子金属錯体膜表面に金属イオンを徐々に供給して、多孔性高分子金属錯体膜表面で溶液中の配位子と反応させることで、極めて高精度に多孔性高分子金属錯体の生成の制御が行える事である。図1に、金属として銅を用いて反応を行った時の時間と膜厚の関係を示す。d=log(t+1)+fT(式中、dは膜厚を表し、tは反応時間(h)であり、fはTの関数を意味し、Tは温度(K)である)の関係で薄膜成長していることが分かる。これはイオン化したCuが多孔性高分子金属錯体細孔内を拡散し[dM/dt=αe−d(薄膜内に含まれる金属イオンの個数M∝d)]、多孔性高分子金属錯体/溶媒界面に到達することで多孔性高分子金属錯体の成長が進むことを意味する。すなわち、細孔を通じて徐放された金属イオンが膜表面でのみ反応するため、緻密かつ平坦な膜が形成される。緻密膜であるため、ガス分離膜や、電子デバイスに使用した場合には、リークパスが少ない特性に優れた材料が得られる。平滑性が高いため、電子デバイスに使用した場合には、材料均一性による性能ばらつき抑制が可能であり、触媒に使用した場合には、表面不均一に由来する副反応等の抑制が行える。
また、金属イオンが細孔の中を拡散する代わりに、配位子が細孔内を拡散し、基板表面で金属イオンと反応することで多孔性高分子金属錯体が形成される場合もある。この場合も、溶液内に金属イオンと配位子双方が存在して基板上で反応が生じる場合と比べて、原料である配位子の供給が細孔により制御されるため、緻密で平滑な膜が得られやすくなる。本理論は推測であり、本理論により本願発明の内容が限定されるわけでは無い。
多孔性高分子金属錯体の形成反応は、多孔性高分子金属錯体を反応溶液から取り出すことで終結させることができる。多孔性高分子金属錯体が基板上に形成された薄膜である場合は、基板を反応溶液から取り出せばよく、多孔性高分子金属錯体が粉末である場合は、濾過や、遠心分離等で溶液から粉末を分離すれば良い。配位子物質の濃度が低い場合は、溶液から取り出した状態で多孔性高分子金属錯体の膜、粉末を風乾、真空減圧乾燥、加熱減圧乾燥等で乾燥する事で、センサー、導電性材料、ガス分離材料として利用する事ができる。また、多孔性高分子金属錯体に微量残存している金属イオンや配位子物質の除去が必要な場合は、多孔性高分子金属錯体の膜や粉末を、アルコール系溶媒等を用いて洗浄した後、前記の様に乾燥すればよい。
上述の通り、多孔性高分子金属錯体の形成反応は、多孔性高分子金属錯体を反応溶液から取り出すことで終結させることができるため、形成される多孔性高分子金属錯体の膜厚は、反応時間で制御できる。反応溶液中の配位子物質の濃度を上げることで、反応を加速し、膜厚を厚くすること、あるいはその逆に薄くすること、反応温度を上げて反応を加速し、膜厚を厚くすること、あるいはその逆に薄くすることも可能であるが、これらの場合においても、反応時間で膜厚を制御することが可能である。本方法で製造できる多孔性高分子金属錯体の膜の厚さは2Å〜100ミクロンである。これよりも薄い膜も成膜可能であるが、欠陥が多くなる。これよりも厚い膜も成膜可能であるが、緻密性が低下する。
<PCPの分析>
粉末X線回折測定には、株式会社リガク製X線回折装置SmartLab(商品名)を用いた。TG(Thermo Gravimetry)測定には株式会社リガク製示差熱天秤分析装置TG8120(商品名)を用いた。ガス吸着特性評価にはマイクロトラックベル社製ベルソープミニIIを用いた。金属板、多孔性高分子金属錯体の厚みや形成観察にはSEM(走査型電子顕微鏡)を用いた。多孔性高分子金属錯体膜の組成分析には、斜入射X線回折測定(2θ測定)を行った。装置は、株式会社リガク製X線回折装置SmartLab(商品名)を利用し、測定条件はX線入射角ω=1.0である。
多孔性高分子金属錯体膜の平滑性は、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて測定した。緻密性は、多孔性高分子金属錯体膜の絶縁破壊電圧を用いて評価した。多孔性の確認は、市販のガス吸着装置、マイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIを用いて評価した。
多孔性高分子金属錯体膜の平滑性は、形成される膜厚に大きく依存するので、薄い膜厚の平滑性を表す二乗平均粗さRq(RMS)の値と厚い膜厚の平滑性を表す二乗平均粗さRq(RMS)の値とを同列に比較することはできない。したがって、多孔性高分子金属錯体膜の平滑性の評価は、膜厚に対する二乗平均粗さRq(RMS)の比率(%)を平滑性の指標と定義し、以下の通りに評価した。作成された多孔性高分子金属錯体膜の表面上の任意の部分をAFM((SIIナノテクノロジー社製、SPI3800N/SPA400、探針SI−DF3−R(100)(尖端径100nm))にかけて、粗さRq(RMS)の値を読み取り、膜厚に対する得られた二乗平均平方根粗さRq(RMS)の値の比率を用いて、以下の基準により評価した。
平滑性の評価(◎、○、△を効果有りと判定した)。

◎:Rq(RMS)の膜厚に対する比率(%):10%未満
○:10%以上、18%未満
△:18%以上〜25%未満
×:25%以上
金属錯体膜の緻密性は、多孔性高分子金属錯体膜の絶縁破壊電圧を用いて評価した評価した。絶縁破壊電圧は、より均質で強固な膜が形成されている場合高い値が得られるので、得られた多孔性高分子金属錯体膜の緻密性の指標として用いた。値が大きいほど緻密な膜が形成されていると言える。本指標は電圧掃引−電流測定によって測定した。実施例、比較例の評価に、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー株式会社製、Agilent 4155C)を用いた。
(◎、○、△を効果有りと判定した)。
得られた絶縁破壊電圧値から金属錯体膜の緻密性を以下の基準により評価した。
◎:絶縁破壊耐電圧10V以上
○:絶縁破壊耐電圧0.1V以上、10V未満
△:絶縁破壊耐電圧0.1V以上、1V未満
×:絶縁破壊耐電圧0.1V未満、又は絶縁性を有さない(電流リーク状態)
溶媒として、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノンは関東化学株式会社製の脱水グレードを各例で使用した。脱水メタノール水分量は0.025%未満(カタログ値)、脱水エタノール水分量は0.005%未満、脱水ジメチルホルムアミドの水分量は0.001%未満、N−メチルピロリジノンの水分量は0.005%未満である。各例で用いた配位子物質は東京化成工業株式会社から購入し、精製せずに使用した。銅粉末は、関東化学株式会社製の75μm〜150μm粒径の物を用いた。酸化銅粉末は、関東化学株式会社製の3.3μm粒径の物を用いた。亜鉛粉末は、関東化学株式会社製の特級を用いた。コバルト粉末は、関東化学株式会社製の粒径3μm〜7μmの物を用いた。硝酸銅塩、硝酸亜鉛塩、硝酸コバルト塩、水酸化銅(II)はいずれも関東化学株式会社製の特級品を使用した。
金属銅板としては以下の二種類を使用した。
金属銅板A:信越半導体株式会社のSiO−Si基板(6インチ熱酸化膜1000Å製膜加工品)の上に、反応性スパッタリング法にて、銅を成膜したもの(サイズ10×15mm)。このときのスパッタリング条件は、Cuターゲット純度4N、スパッタ出力800W、製膜温度:室温、到達真空圧1×10−4Pa、スパッタ真空圧0.40Pa、Ar流量800sccm、製膜時間600sである。
金属銅板B:株式会社ニラコ製CU−113513(約1.0×10×10mm、純度99.99%)
酸化銅板としてはスパッタリング時の酸素の導入量を制御することで酸化度を制御した、以下の二種類を使用した。
酸化銅板A:上述のSiO−Si基板の上に、反応性スパッタリング法でCuOを成膜した物。このときのスパッタリング条件は、Cuターゲット純度4N、スパッタ出力800W、製膜温度:室温、到達真空圧1×10−4Pa、スパッタ真空圧0.25Pa、Ar流量900sccm、製膜時間600sである。
酸化銅板B:上述のSiO−Si基板の上に、反応性スパッタリング法でCuOを成膜した物。このときのスパッタリング条件は、Cuターゲット純度4N、スパッタ出力800W、製膜温度:室温、到達真空圧1×10−4Pa、スパッタ真空圧0.25Pa、Ar流量400sccm、O流量800sccm、製膜時間600sである。
反応容器は、溶媒の沸点以下で反応を行う場合は、フラスコやビーカー等を使用し、水が入らないようにプラスチックパラフィンフィルム(商品名、パラフィルム)、ガラス活栓等で蓋をした。沸点以上で反応させる場合はオートクレーブを使用した。
<薄膜PCPの合成>
実施例1
金属銅板Aを、配位子物質溶液である0.1mM濃度のトリメシン酸エタノール溶液50mLに浸漬し、20℃で2時間反応させた後、銅板を溶液からピンセットで取り出し、無水エタノール溶液に3回、10秒ずつ浸漬して洗浄し、室温で減圧乾燥した後、SEMで表面、断面観察を行った。断面観察の写真を図2に示す。左が表面、右が断面で、美麗な膜が得られている。
実施例2-30
表1に示す金属板及び配位子を用いて実施例1と同様の操作をして、両者を反応させ、得られた多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の分析を行った。
比較例1〜20
配位子物質溶液として、アルコール系溶媒以外の溶媒を用い、表2に示す金属板及び配位子物質を用いて実施例1と同様の操作をして実験を行った。水が含まれていない場合は膜形成反応が進行しなかった。水が含まれている場合には、SEMで表面、断面観察を行った結果、平滑性が低く、緻密性が低い膜しか得られなかった。
<粉末PCPの合成>
実施例31
銅粉末0.6mMolおよびテレフタル酸0.6mMolを脱水エタノール20mLに分散させ50℃でマグネティックスターラーを使用して撹拌しながら、3日間反応させた。得られた粉末を遠心分離し、沈殿した粉末をエタノールに分散し、再度遠心分離し、エタノールをデカンテーションで除き、得られた粉末を室温で真空乾燥した。得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、非特許文献14に記載の化合物(Cu2+イオン、テレフタル酸、およびゲスト分子のDMFから構成されたCu(tpa)・(dmf)と表記されている多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、100℃で3時間減圧真空前処理後、77Kにおける窒素ガス吸着の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認し、100℃までで溶媒のエタノールが除去できる事を確認した。
実施例32
実施例31と同様に、テレフタル酸の代わりにトリメシン酸を用いて反応を行った。
得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、非特許文献15に記載の化合物(Cu2+イオン、トリメシン酸、およびゲスト分子の水から構成された[Cu(TMA)(HO)]nと表記されている多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。
本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、100℃で3時間減圧真空前処理後、77Kにおける窒素ガス吸着の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認し、100℃までで溶媒のエタノールが除去できる事を確認した。
実施例33
実施例31と同様に、テレフタル酸の代わりにイソフタル酸を用いて反応を行った。
得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、非特許文献16に記載の化合物(CU2+イオン、およびイソフタル酸から構成されたCu(1,3−bdc)と表記された多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。
本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、100℃で3時間減圧真空前処理後、77Kにおける窒素ガス吸着の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認し、100℃までで溶媒のエタノールが除去できる事を確認した。
実施例34
実施例31と同様に、亜鉛粉末を用い、またテレフタル酸の代わりに2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を用いて反応を行った。得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、得られた化合物は、非特許文献11に記載及び非特許文献12に記載の化合物(Zn2+イオン、および2,5-ジヒドロキシテレフタル酸から構成された多孔性高分子金属錯体「MOF−74」)であることを確認した。本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、100℃で3時間減圧真空前処理後、77Kにおける窒素ガス吸着の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認し、100℃までで溶媒のエタノールが除去できる事を確認した。
実施例35
実施例31と同様にコバルト粉末を用い、またテレフタル酸の代わりに2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を用いて反応を行った。
得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、得られた化合物は、非特許文献11に記載及び非特許文献17に記載の化合物(Co2+イオン、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、ゲストとしての水から構成された[Co(C)(HO)]・8HOと記載された多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、100℃で3時間減圧真空前処理後、77Kにおける窒素ガス吸着の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認し、100℃までで溶媒のエタノールが除去できる事を確認した。
実施例36
実施例31と同様に、銅粉末と、テレフタル酸の代わりにイソフタル酸と4,4’−ビピリジルを用いて反応を行った。得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、非特許文献13に記載の化合物IV(Cu2+イオン、イソフタル酸、4,4’−ビピリジルから構成されたCu(HIP)(bipy)と表記された多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、100℃で3時間減圧真空前処理後、77Kにおける窒素ガス吸着の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認し、100℃までで溶媒のエタノールが除去できる事を確認した。
比較例21
金属イオン源として硝酸銅(II)・3水和物、配位子物質としてテレフタル酸、溶媒としてDMFを用いる非特許文献14に記載の方法で、粉末試料を得た。得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、上記文献に記載の化合物(Cu2+イオン、テレフタル酸、およびゲスト分子のDMFから構成されたCu(tpa)・(dmf)と表記されている多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。
本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、ガス吸着量の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認した。実施例31と比較して、TG評価により、140℃での重量減少が観測され、溶媒として使用したDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)の残存が確認され、100℃まででは溶媒除去ができない事が確認できた。77Kにおける窒素ガス吸着は、実施例31よりも少なく、DMFの残存の影響と考えられる。
比較例22
金属イオン源として硝酸銅(II)・3水和物、配位子物質としてトリメシン酸、溶媒として水−DMFを用いる非特許文献15に記載の方法で、粉末試料を得た。得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、上記文献に記載の化合物(Cu2+イオン、トリメシン酸、およびゲスト分子の水から構成された[Cu(TMA)(HO)]nと表記されている多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、ガス吸着量の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認した。実施例31と比較して、TG評価により、140℃での重量減少が観測され、溶媒として使用したDMFの残存が確認され、100℃まででは溶媒除去ができない事が確認できた。77Kにおける窒素ガス吸着は、実施例32よりも少なく、DMFの残存の影響と考えられる。
比較例23
金属イオン源として水酸化銅、配位子物質としてイソフタル酸、溶媒として水を用いる非特許文献16に記載の方法で、粉末試料を得た。得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、上記文献に記載の化合物(Cu2+イオン、およびイソフタル酸から構成されたCu(1,3−bdc)と表記された多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、ガス吸着量の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認した。実施例33と比較して、TG評価により、110℃での重量減少が観測され、添加剤として使用した水の残存が確認され、100℃まででは溶媒除去ができない事が確認できた。77Kにおける窒素ガス吸着は、実施例33よりも少なく、水の残存の影響と考えられる。
比較例24
金属イオン源として硝酸亜鉛(II)・6水和物、配位子物質として2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、溶媒としてDMFを用いる非特許文献11に記載及び非特許文献12に記載の化合物(MOF−74)を論文の方法により合成した。得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、上記文献に記載の化合物Zn2+イオン、および2,5-ジヒドロキシテレフタル酸から構成された多孔性高分子金属錯体「MOF−74」)であることを確認した。実施例34と比較して、TG評価により、140℃での重量減少が観測され、溶媒として使用したDMFの残存が確認され、100℃まででは溶媒除去ができない事が確認できた。77Kにおける窒素ガス吸着は、実施例34よりも少なく、DMFの残存の影響と考えられる。
比較例25
金属イオン源として硝酸コバルト・6水和物、配位子物質として2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる非特許文献11に記載及び非特許文献17に記載の化合物(Co2+イオン、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、ゲストとしての水から構成された[Co(C)(HO)]・8HOと記載された多孔性高分子金属錯体)を論文の方法で合成し、得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、上記文献に記載の化合物であることを確認した。実施例35と比較して、TG評価により、100℃での重量減少が観測され、溶媒として使用したTHFの残存が確認され、100℃まででは溶媒除去は完全にはできない事が確認できた。77Kにおける窒素ガス吸着は、実施例35よりも少なく、THFの残存の影響と考えられる。
比較例26
金属イオン源として硝酸銅(II)・3水和物、配位子物質としてイソフタル酸及び4,4’−ビピリジン、溶媒として水を用いる非特許文献13に記載の化合物(IVと記載)を論文の方法で合成し、得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、上記文献に記載の化合物(Cu2+イオン、イソフタル酸、4,4’−ビピリジルから構成されたCu(HIP)(bipy)であることを確認した。実施例36と比較して、TG評価により、100℃での重量減少が観測され、溶媒として使用した水の残存が確認され、100℃まででは溶媒除去は完全にはできない事が確認できた。77Kにおける窒素ガス吸着は、実施例36よりも少なく、水の残存の影響と考えられる。
上記実施例31〜36、比較例21〜26のガス吸着量を表3、4に示す。
<コア−シェル型複合粒子の形成>
実施例37
銅粉末0.6mMolおよびテレフタル酸0.6mMolを脱水エタノール20mLに分散させ50℃でマグネティックスターラーを使用して撹拌しながら、実施例31の場合は72時間であったのに対して、12時間反応させた。得られた粉末を遠心分離し、沈殿した粉末をエタノールに分散し、再度遠心分離し、エタノールをデカンテーションで除き、得られた粉末を室温で真空乾燥した。得られた粉末を粉末X線構造回折装置により解析し、非特許文献14に記載の化合物(Cu2+イオン、テレフタル酸、およびゲスト分子のDMFから構成されたCu(tpa)・(dmf)と表記されている多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。また、顕微鏡観察により、本方法で得られる粉末は空色で、褐色の銅の色は粒子の外側に露出していない事を確認した。本粉末を、濃アンモニア水50mLに分散した後、溶液を濾過し、濾紙上に銅粉末が残るのを確認した。すなわち本粉末は銅粉末がコア、多孔性高分子金属錯体がシェルとなった複合粒子であることを確認した。本粉末30mgをマイクロトラックベル社製ガス吸着評価装置ベルソープミニIIにて、100℃で3時間減圧真空前処理後、77Kにおける窒素ガス吸着の評価を行った。またTG測定により、脱溶媒特性を確認し、100℃までで溶媒のエタノールが除去できる事を確認した。
<金属板/PCP−B膜/PCP−A膜から成る複合体の形成>
実施例38
信越半導体株式会社のSiO−Si基板(6インチ熱酸化膜1000Å製膜加工品)の上に、反応性スパッタリング法にて、銅を成膜した金属板(サイズ10×15mm)を、第1配位子物質溶液Aとして、0.1mM濃度のトリメシン酸エタノール溶液50mLに浸漬し、20℃で1時間反応させた。その後、銅板を溶液からピンセットで取り出し、無水エタノール溶液に3回、10秒ずつ浸漬して洗浄した。次にこの材料を、今度は、第2配位子物質溶液Bとして、0.1mM濃度のテレフタル酸エタノール溶液50mLに浸漬し、20℃で4時間反応させた。その後、銅板を溶液からピンセットで取り出し、無水エタノール溶液に3回、10秒ずつ浸漬して洗浄し、室温で減圧乾燥した。反応時間がそれぞれ1時間、4時間と短かったので、銅板が支持体として残存していた。
得られた銅板を、SEMで表面、断面観察を行った。最表層には、トリメシン酸エタノール液に浸漬した際に得られる結晶構造、その下と銅板の間には、テレフタル酸エタノール液に浸漬した際に得られる結晶構造が形成されていた。また粉末X線により、最表層には、トリメシン酸エタノール液に浸漬した際に得られる多孔性高分子金属錯体の結晶、その下と銅板の間には、テレフタル酸エタノール液に浸漬した際に得られる多孔性高分子金属錯体の結晶が形成されていたことを確認した。すなわち、本材料は、銅板上にテレフタル酸からなる多孔性高分子金属錯体膜(PCP−B)、さらにその上にトリメシン酸からなる多孔性高分子金属錯体膜(PCP−A)が形成された複合材料であることを確認した。
この例では、得られた2種の異なる多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体は、銅板上に第2配位子物質溶液由来のテレフタル酸からなる多孔性高分子金属錯体膜(PCP−B)が形成され、最上層に第1配位子物質溶液由来のトリメシン酸からなる多孔性高分子金属錯体膜(PCP−A)が形成されている。この理由は、最初に作成されたPCP−Aの細孔の大きさが、テレフタル酸由来の配位子Bの大きさよりも大きいため、配位子BがPCP−Aの細孔を通り、銅板上で、溶出した銅イオンとテレフタル酸由来の配位子Bが反応して、PCP−A膜の下にPCP−B膜が形成されたと考えられる。
銅板/PCP−B膜/PCP−A膜から成る複合体について、最上面のPCP−A膜の平滑性ならびに、PCP−B膜及びPCP−A膜の緻密性を、上述した基準で評価した。
<金属板A/A−PCP膜/B−PCP膜から成る複合体の形成>
実施例39
信越半導体株式会社のSiO−Si基板(6インチ熱酸化膜1000Å製膜加工品)の上に、反応性スパッタリング法にて、銅(金属板A)を成膜し、さらにその上に、同法にて亜鉛膜(金属板B)を形成した。この複層金属板(サイズ10×15mm)を、0.1mM濃度のトリメシン酸エタノール溶液50mLに浸漬し、20℃で24時間反応させた。その後、この複合体を溶液からピンセットで取り出し、無水エタノール溶液に3回、10秒ずつ浸漬して洗浄した。
得られた複合体を、SEMで表面、断面観察を行った。最表層には、トリメシン酸と亜鉛から得られる多孔性高分子金属錯体膜(B−PCP)、その下には銅とトリメシン酸から得られる多孔性高分子金属錯体膜(A−PCP)が形成されていたことを確認した。すなわち、本材料は、銅板上に銅とトリメシン酸からなる多孔性高分子金属錯体膜、さらにその上に亜鉛とトリメシン酸からなる多孔性高分子金属錯体膜が形成された複合材料であることを確認した。
このような複合体が形成された理由は、先ず複層金属板の亜鉛板(金属B)がトリメシン酸と反応して、多孔性高分子金属錯体膜(B−PCP)を形成し、この反応で亜鉛板(金属B)が消費され尽した後に、銅板(金属A)がトリメシン酸と反応する。この銅板(金属A)とトリメシン酸との反応は、既に形成された多孔性高分子金属錯体膜(B−PCP)の下で進行して、多孔性高分子金属錯体膜(A−PCP)を形成するため、銅板A/A−PCP膜/B−PCP膜から成る複合体形成されたと考えられる。
銅板A/A−PCP膜/B−PCP膜から成る複合体について、最上面のB−PCP膜の平滑性ならびに、B−PCP膜及びA−PCP膜の緻密性を、上述した基準で評価した。
本発明の方法で得られた多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の多孔性高分子金属錯体膜は、金属イオンと配位子物質との反応が高度に制御されて行われるため、平滑性の高い緻密な膜が形成されている。この複合体は触媒、ガス貯蔵/分離材料、センサー、電子デバイス等に好適に使用可能である。

Claims (49)

  1. 金属イオン源として、純金属板、金属酸化物板、金属窒化物板から成る群より選ばれる金属板を用意し、
    配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、
    前記溶液に前記金属板を投入して、
    前記金属板と前記配位子物質とを反応させ、前記金属板上に
    下記式(1)
    [MLxn (1)
    (式中、Mは、前記金属イオン源由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[MLx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
    で表される多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
    前記金属板が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記反応を停止すること
    を含む、
    前記金属板上に前記多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の形成方法。
  2. 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である請求項1に記載の形成方法。
  3. 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である請求項2に記載の形成方法。
  4. 前記反応が、温度−20〜150℃で行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載の形成方法。
  5. 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の形成方法。
  6. 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである請求項5に記載の形成方法。
  7. 前記金属イオン源が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板である請求項1〜4のいずれか一項に記載の形成方法。
  8. 前記金属イオン源が、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板である請求項7に記載の形成方法。
  9. 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の形成方法。
  10. 金属イオン源として、純金属板、金属酸化物板、金属窒化物板から成る群より選ばれる金属板を用意し、
    第1配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、第1配位子物質溶液を調製し、
    第1配位子物質とは異なる第2配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、第2配位子物質溶液を調製し、
    前記第1配位子物質溶液に前記金属板を投入して、
    前記金属板と前記第1配位子物質とを反応させ、前記金属板上に
    下記式(1)
    [ML1xn (1)
    (式中、Mは、前記金属イオン源由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、L1は、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子L1の負電荷が相殺する値であり、nは、[ML1x]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
    で表される第1多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
    前記金属板が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記反応を停止し、その後
    前記金属板上に前記多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体を、洗浄し、
    前記第2配位子物質溶液に前記複合体を投入して、
    前記金属板と前記第2配位子物質とを反応させ、前記金属板上又は前記第1多孔性高分子金属錯体膜上に
    下記式(2)
    [ML2xn (2)
    (式中、M、Xは、式(1)の場合と同じであり、L2は上記L1とは異なる、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、nは、[ML2x]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
    で表される第2多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
    前記金属板が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記金属板と前記第2配位子物質との反応を停止すること、
    を含む、前記金属板上に2種の異なる多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の形成方法。
  11. 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である請求項10に記載の形成方法。
  12. 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である請求項11に記載の形成方法。
  13. 前記各反応が、温度−20〜150℃で行われる請求項10〜12のいずれか一項に記載の形成方法。
  14. 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項10〜13のいずれか一項に記載の形成方法。
  15. 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである請求項14に記載の形成方法。
  16. 前記金属イオン源が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板である請求項10〜13のいずれか一項に記載の形成方法。
  17. 前記金属イオン源が、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板である請求項16に記載の形成方法。
  18. 前記第1及び第2配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4‘−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である請求項10〜13のいずれか一項に記載の形成方法。
  19. 基板上に金属イオン源として、順に金属板Aと金属板Bとを有する積層体を用意し、前記金属板A及びBは、それぞれ、純金属板、金属酸化物板、金属窒化物板から成る群より選ばれ、
    配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、
    前記配位子物質溶液に前記積層体を投入して、
    前記金属板Bと前記配位子物質とを反応させ、前記金属板A上に
    下記式(1)
    [M1Lxn (1)
    (式中、M1は、前記金属板B由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、M1に配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のM1と架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンM1の正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[M1Lx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
    で表される第1多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
    前記金属板Bが前記反応によりすべて消費されたことを確認し、その後
    前記金属板Aと前記配位子物質とを反応させ、前記金属板A上又は前記第1多孔性高分子金属錯体膜上に
    下記式(2)
    [M2Lxn (2)
    (式中、M2は、前記金属板A由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、X、Lは、式(1)の場合と同じであり、nは、[M2Lx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
    で表される第2多孔性高分子金属錯体膜を形成し、
    前記金属板Aが前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記金属板Aと前記配位子物質との反応を停止すること、
    を含む、前記金属板A上に2種の異なる多孔性高分子金属錯体膜を有する複合体の形成方法。
  20. 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である請求項19に記載の形成方法。
  21. 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である請求項20に記載の形成方法。
  22. 前記各反応が、温度−20〜150℃で行われる請求項19〜21のいずれか一項に記載の形成方法。
  23. 前記M1及びM2が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上であるが、但しM1及びM2が異なる、請求項19〜22のいずれか一項に記載の形成方法。
  24. 前記M1及びM2が、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンであるが、但しM1及びM2が異なる、請求項23に記載の形成方法。
  25. 前記金属イオン源の金属板A及び金属板Bが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板であるが、但し金属板A及び金属板Bは異なる金属である請求項19〜22のいずれか一項に記載の形成方法。
  26. 前記金属イオン源の金属板A及び金属板Bが、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上から成る金属板であるが、但し金属板A及び金属板Bは異なる金属である請求項25に記載の形成方法。
  27. 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である請求項19〜22のいずれか一項に記載の形成方法。
  28. 金属イオン源として、純金属、金属酸化物、金属窒化物から成る群より選ばれる金属粉末を用意し、
    配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、
    前記溶液に前記金属粉末を投入して、攪拌し、
    前記金属粉末と前記配位子物質とを反応させ、
    前記金属粉末がすべて消費されるまで反応を継続する、
    下記式(1)
    [MLxn (1)
    (式中、Mは、前記金属イオン源由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[MLx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
    で表される多孔性高分子金属錯体粉末の形成方法。
  29. 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である請求項28に記載の形成方法。
  30. 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である請求項29に記載の形成方法。
  31. 前記反応が、温度−20〜150℃で行われる請求項28〜30のいずれか一項に記載の形成方法。
  32. 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項28〜31のいずれか一項に記載の形成方法。
  33. 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである請求項32に記載の形成方法。
  34. 前記金属イオン源が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項28〜31のいずれか一項に記載の形成方法。
  35. 前記金属イオン源が、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項34に記載の形成方法。
  36. 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である請求項28〜31のいずれか一項に記載の形成方法。
  37. 金属イオン源として、純金属、金属酸化物、金属窒化物から成る群より選ばれる金属粉末を用意し、
    配位子物質をアルコール系溶媒に溶解し、配位子物質溶液を調製し、
    前記溶液に前記金属粉末を投入して、攪拌し、
    前記金属粉末と前記配位子物質とを反応させ、
    下記式(1)
    [MLxn (1)
    (式中、Mは、前記金属イオン源由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[MLx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上である。)
    で表される多孔性高分子金属錯体を形成し、
    前記金属粉末が前記反応によりすべて消費されてしまう前に前記反応を停止すること
    を含む、
    前記金属粉末粒子の周囲に前記多孔性高分子金属錯体を有するコア−シェル型複合粒子の形成方法。
  38. 前記アルコール系溶媒の含水量が0〜12質量%である請求項37に記載の形成方法。
  39. 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれかまたはこれらの混合溶媒である請求項38に記載の形成方法。
  40. 前記反応が、温度−20〜150℃で行われる請求項37〜39のいずれか一項に記載の形成方法。
  41. 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項37〜40のいずれか一項に記載の形成方法。
  42. 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである請求項41に記載の形成方法。
  43. 前記金属イオン源が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項37〜40のいずれか一項に記載の形成方法。
  44. 前記金属イオン源が、銅、銀のいずれかの金属、およびそれらの金属酸化物又は金属窒化物から成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項43に記載の形成方法。
  45. 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である請求項37〜40のいずれか一項に記載の形成方法。
  46. 純金属板、金属酸化物板、金属窒化物板から成る群より選ばれる金属板及び該金属板の片面又は両面上にある多孔性高分子金属錯体膜から成る複合体であって、
    前記多孔性高分子金属錯体膜が、
    下記式(1)
    [MLxn (1)
    (式中、Mは、前記金属板由来の、元素の周期表の2A〜3B族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Xは金属イオンMの正電荷と配位子Lの負電荷が相殺する値であり、nは、[MLx]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nは5以上5以上である。)
    で表され、
    前記金属板は、前記多孔性高分子金属錯体の金属イオンMの金属であり、
    前記多孔性高分子金属錯体膜の二乗平均表面粗さRq(RMS)が、膜厚に対し、25%未満であり、そして
    絶縁破壊耐電圧が0.1V以上である、
    複合体。
  47. 前記Mが、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛のいずれかのイオン、およびそれらの混合イオンから成る群より選ばれる1種又は2種以上である請求項46に記載の複合体。
  48. 前記Mが、銅もしくは銀のいずれかのイオンまたはそれらの混合イオンである請求項47に記載の複合体。
  49. 前記配位子物質が、テレフタル酸、置換テレフタル酸類、イソフタル酸、置換イソフタル酸類、トリメシン酸、置換トリメシン酸、ビフェニルカルボン酸、置換ビフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、非置換の2,7−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、置換フマル酸、くえん酸、4,4’−ビピリジン、置換4,4’−ビピリジン、置換及び非置換のイミダゾール類から選ばれる1種またはそれらの混合物である請求項46〜48のいずれか一項に記載の複合体。
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