JP2017042796A - Ni基合金溶接金属 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接金属に水素が多量に含有される場合であっても良好な引張延性を得ることができるNi基合金溶接金属を提供する。【解決手段】本発明に係るNi基合金溶接金属は、C:0.01〜0.05%(%は質量%を意味する。以下、化学成分について同じ。)、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.5〜3.5%、Cr:0.5〜5.0%、Mo:13.0〜20.0%、W:1.0〜4.0%、Fe:5.0〜12.0%、B:0.0005〜0.0050%、S:0.005%以下(0%を含まない)、P:0.005%以下(0%を含まない)、O:0.060%以下(0%を含まない)含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる溶接金属であり、当該溶接金属中の結晶粒界に偏析しているB濃度が20〜200ppmとしている。【選択図】なし

Description

本発明は、Ni基合金溶接金属に関する。
LNG(Liquefied Natural Gas)貯蔵用のタンクには、一般的に、低温靱性に優れる9%Ni鋼の厚鋼板が用いられている。LNG貯蔵用のタンクは、前記厚鋼板をサブマージアーク溶接などで接合して組み立てられている。サブマージアーク溶接は、被施工物を覆ったフラックスに電流電圧を連続的に供給し、フラックス中でアークを発生させる溶接方法である。9%Ni鋼の溶接には、低温靱性に優れたNi基合金が溶接材料として用いられている。Ni基合金を溶接材料として得られたNi基合金溶接金属は、溶接後に熱処理を経ることなく、溶接したままの状態で高い低温靱性が求められる。
なお、本明細書において「Ni基合金」とは、主成分(最も含有量の多い成分)がNiである合金をいう。
また、本明細書において「溶接金属」とは、溶接を施した際に溶接中に溶着金属と溶融母材とが溶融して凝固した金属をいう。
本明細書において「溶着金属」とは、溶接中に付加される溶接材料(例えば、溶加材、ワイヤなど)から、溶接部に移行した金属をいう。
また、「溶加材」とは、溶接中に付加される金属(材料)をいう。
一般的に、サブマージアーク溶接で用いられるフラックスは吸湿性があるため、施工前に乾燥処理をしてから使用される。しかしながら、実際の施工環境は湿度、気温など多様であり、乾燥処理から施工までの時間も異なるため、幾らかフラックスが吸湿しているのが通常である。このような背景から、極端に好ましくない施工環境においては形成された溶接金属に多量の水素が含まれてしまい、溶接金属の引張破断伸び(引張延性)が不足するという問題がある。溶接金属の引張延性が乏しいことは、被施工物であるタンクの機械的な損傷の可能性が高まることに繋がってしまう。
このような状況下、例えば、特許文献1には、高い引張強さと靭性が得られ、引張延性に優れた溶接継手が得られる低温用鋼のサブマージアーク溶接方法に関する発明が提案されている。
この特許文献1には、具体的に、Ni基合金ワイヤ及び焼成型フラックスのいずれか一方または両方の、所定の式から求められる各金属成分のM含有量を、質量%で、C:0.03〜0.12%、Mn:0.5〜2%、但し、10×C/Mn:1.5以下、Ni:60%以上、Mo及びWのいずれか一方または両方の合計:19〜27%、Al及びTiのいずれか一方または両方の合計:0.3〜3%とし、Si、Cr及びCuの合計:1%以下で、上記Ni基合金ワイヤの残部を不可避不純物とし、上記焼成型フラックスの残部を不可避不純物等としたことを特徴とする低温用鋼のサブマージアーク溶接方法が提案されている。
つまり、特許文献1には、サブマージアーク溶接用の溶接材料及びフラックスの組成に着目し、溶接金属中に形成される炭化物を制御することで、溶接金属の靱性を改善する発明が提案されている。
特開2011−56562号公報
しかしながら、特許文献1で提案されている発明は、溶接金属に水素(H)が多量に含有されることによって生じる引張延性の不足を改善するものではない。
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、溶接金属に水素が多量に含有される場合であっても良好な引張延性を得ることができるNi基合金溶接金属を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明に係るNi基合金溶接金属は、C:0.01〜0.05%(%は質量%を意味する。以下、化学成分について同じ。)、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.5〜3.5%、Cr:0.5〜5.0%、Mo:13.0〜20.0%、W:1.0〜4.0%、Fe:5.0〜12.0%、B:0.0005〜0.0050%、S:0.005%以下(0%を含まない)、P:0.005%以下(0%を含まない)、O:0.060%以下(0%を含まない)含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる溶接金属であり、当該溶接金属中の結晶粒界に偏析しているB濃度が20〜200ppmであることとした。ここで、「偏析」とは、合金の凝固固体の内部で、溶質濃度が不均質になっていることをいう。
このように、本発明に係るNi基合金溶接金属は、C、Si、Mn、Cr、Mo、W、Fe、B、Oを夫々所定量含有しているので、溶接金属の強度や耐食性を確保することができる。また、本発明に係るNi基合金溶接金属は、S、Pを所定量以下としているので、高温割れ性を確保することができる。そして、本発明に係るNi基合金溶接金属は、溶接金属中の結晶粒界に偏析しているB濃度を所定の範囲としているので、当該結晶粒界近傍のH濃度を低減することができる。その結果、結晶粒界が溶接金属に含有されるHとOの影響を受けて粒界強度が低下するのを防ぐことができ、良好な引張延性を得ることができる。
本発明に係るNi基合金溶接金属は、溶接金属にHが多量に含有される場合であっても良好な引張延性を得ることができる。
溶着金属の室温引張試験で用いた引張試験片の採取位置を示す断面図である。 粒界B濃度と引張破断伸びの関係を示すグラフである。横軸は粒界B濃度(ppm)であり、縦軸は引張破断伸び(%)である。
(Ni基合金溶接金属)
以下、本発明に係るNi基合金溶接金属(以下、単に「溶接金属」ということもある。)を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明に係る溶接金属は、ハステロイ系Ni基合金溶接金属で生じる破断伸び低下の原因が、溶接金属に含有されるHとOの影響による粒界強度の低下であること、及び、Bを結晶粒界に一定濃度以上に偏析させることによって結晶粒界近傍のH濃度が低減され、粒界強度の低下を回避できるという新たな技術知見に基づいている。
すなわち、Ni基合金溶接金属中の固溶BとHは格子中の同じ位置で共に固溶することができず、先にBが分布した領域にはHが容易に侵入することができない。このため、BがHに対して優先的に結晶粒界へ偏析した状態とすることで、結晶粒界のH濃度を低下させることができ、引張破断伸びを低下させる粒界破壊を抑制することができる。
本発明に係る溶接金属の効果は、溶接金属の化学組成を所定の範囲としたうえで、さらに、結晶粒界に偏析しているB濃度(以下、「粒界B濃度」と記載することもある。)を一定以上に制御することによって得ることができる。
溶接金属の化学組成は、狙い成分に相当する溶接材料を用いることで所定の範囲内とすることができる。サブマージアーク溶接においては、フラックスの化学組成を変えることによって溶接金属の化学組成を調整することも可能である。なお、溶接金属の化学組成の制御は、被施工物の化学組成を把握した上で、溶接後の溶接金属の化学組成が後記する範囲となる溶接材料(ワイヤ、溶加材、溶接棒)を選択し、溶接するのがより好ましい。どのような被施工物の化学組成の場合にどのような溶接材料を選択すれば良いかは、予め実験等して確認しておくことが好ましい。
本発明で規定する粒界B濃度を得るためには、Hに対して結晶粒界へのBの偏析を優先的に促進させる必要がある。このようにするためには、溶接金属中の平均的な(全体的な)Bの含有量(平均B濃度)を所定の範囲としたうえで、溶接施工時の溶接金属の冷却速度を遅くし、所定の冷却速度とする必要がある。すなわち、Bは、溶接金属中において高温の環境でのみHよりも拡散することができるため、Bが結晶粒界に偏析するのに十分な時間が必要である。従って、この観点から溶接施工後の冷却速度を遅くすることが必要となる。冷却速度を遅くする必要のある主な温度域は800〜500℃である。冷却速度は被施工物の厚さなどの寸法や熱伝導性によっても種々変化するので、所定の冷却速度を得るためには、適宜、入熱量を増加させたり、パス間温度や予熱温度を高温化させたりするとよい。これらの条件や操作と、所定の冷却速度との関係は、予め実験等して確認しておくことが好ましい。
なお、溶接金属中の平均B濃度を増加させると粒界B濃度を増加させることができるものの、最終凝固部における溶接金属の高温割れを誘発してしまう。そのため、溶接金属全体のB濃度を所定の範囲に留め、所定の冷却速度とすることによって結晶粒界にBを偏析させることが好ましい。
前記知見に基づいて成された本発明に係る溶接金属は、C:0.01〜0.05%(%は質量%を意味する。以下、化学成分について同じ。)、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.5〜3.5%、Cr:0.5〜5.0%、Mo:13.0〜20.0%、W:1.0〜4.0%、Fe:5.0〜12.0%、B:0.0005〜0.0050%、S:0.005%以下(0%を含まない)、P:0.005%以下(0%を含まない)、O:0.060%以下(0%を含まない)含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる溶接金属であり、当該溶接金属中の結晶粒界に偏析しているB濃度が20〜200ppm(質量ppm)である。
本発明に係る溶接金属の化学組成をこのように限定した理由は以下のとおりである。
(C:0.01〜0.05%)
Cは、溶接金属の強度を確保するために必要な元素である。この効果を発揮させるためにはCを0.01%以上含有させる必要があり、好ましくは0.02%以上である。その一方で、Cの含有量が過剰になると粗大な炭化物が形成され靱性が低下するため、その含有量は0.05%以下とし、好ましくは0.03%以下とする。
(Si:0.01〜1.0%)
Siには溶鋼中で脱酸作用を有し、ブローホールの形成を抑制する働きがある。この効果を発揮させるためにはSiを0.01%以上含有する必要があり、好ましくは0.1%以上である。その一方で、Siの含有量が過剰になると靱性が低下するため、その含有量は1.0%以下とし、好ましくは0.5%以下とする。
(Mn:1.5〜3.5%)
Mnには溶鋼中で脱酸作用を有し、ブローホールの形成を抑制する働きがあると共に、強度を向上させる働きがある。これらの効果を発揮させるためにはMnを1.5%以上含有させる必要があり、好ましくは2.0%以上である。その一方で、Mnの含有量が過剰になると靱性が劣化するため、その含有量は3.5%以下とし、好ましくは3.0%以下とする。
(Cr:0.5〜5.0%)
Crには溶接金属の耐食性を向上させる働きがある。この効果を発揮させるためにはCrを0.5%以上含有させる必要があり、好ましくは1.5%以上である。その一方で、Crの含有量が過剰になるとその効果が飽和し、コストの観点で好ましくないため、その含有量は5.0%以下とし、好ましくは3.0%以下とする。
(Mo:13.0〜20.0%)
Moは、溶接金属の耐食性や強度を確保するために必要な元素である。この効果を発揮させるためにはMoを13.0%以上含有させる必要があり、好ましくは15.0%以上である。その一方で、Moの含有量が過剰になると析出物が過剰となり靱性が低下するため、その含有量は20.0%以下とし、好ましくは18.0%以下とする。
(W:1.0〜4.0%)
Wには溶接金属の強度を向上させる働きがある。この効果を得るためにはWを1.0%以上含有させる必要があり、好ましくは2.0%以上である。その一方で、Wの含有量が過剰になると靱性が低下するため、その含有量は4.0%以下とし、好ましくは3.0%以下とする。
(Fe:5.0〜12.0%)
Feを含有させることによって、溶接金属の合金コストを低下させることが可能である。コストの観点からFeを5.0%以上含有することが好ましく、より好ましくは7.0%以上である。その一方で、Feの含有量が過剰になるとμ相という析出物が増加して靱性が低下するため、その含有量は12.0%以下とし、好ましくは10.0%以下とする。
(B:0.0005〜0.0050%)
Bは本発明において最も重要な元素であり、粒界B濃度を20〜200ppmとするためには溶接金属にBを一定濃度含有している必要がある。具体的に、Bは少なくとも0.0005%以上含有している必要があり、好ましくは0.0010%以上である。その一方で、Bの含有量が過剰になると高温割れを引き起こすため、その含有量は0.0050%以下とし、より好ましくは0.0040%以下とする。また、添加したBの一部は粒界での炭化物の析出を促進して高温環境中での粒界すべり変形を抑制し、例えば900℃を超えるような高温環境において溶接金属の強度を改善する作用を有している。このような効果を得る場合は、Bを0.003%以上とし、より好ましくは0.0035%以上とする。
(S:0.005%以下(0%を含まない))
Sは不可避的不純物であり、その含有量が増加すると溶接施工後に高温割れを引き起こし、本発明の作用が得られないだけでなく健全な溶接金属が得られない。そのため、Sの含有量は0.005%以下とする必要があり、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.002%以下とする。
(P:0.005%以下(0%を含まない))
Pは不可避的不純物であり、その含有量が増加すると溶接施工後の高温割れが発生し易くなり、本発明の作用が得られないだけでなく健全な溶接金属が得られない。そのため、Pの含有量は0.005%以下とする必要があり、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下とする。
(O:0.060%以下(0%を含まない))
Oは酸化介在物の形態で含まれる不可避的不純物であり、Oが過剰になると水素の影響とは無関係に引張延性が低下するため、本発明の作用が十分に得られない。そのため、Oの含有量は0.060%以下とする必要があり、好ましくは0.055%以下、より好ましくは0.050%以下とする。
(結晶粒界に偏析しているB濃度が20〜200ppm)
Bは本発明において最も重要な元素であり、粒界にBが偏析することによって粒界の水素濃度を低下させることができ、溶接金属の水素の含有による延性低下を抑制することができる。このような効果を得るためには粒界に偏析しているB濃度を20ppm以上とする必要があり、好ましくは40ppm以上、より好ましくは60ppm以上とする。しかしながら、濃度が過剰になると溶接割れが生じるため、結晶粒界に偏析しているB濃度は200ppm以下とし、好ましくは170ppm以下、より好ましくは140ppm以下とする。
本発明で規定する粒界B濃度は微量であり、その定量評価には高い精度が求められるが、本発明の所期の作用・効果を得るという目的を達成する場合、以下の方法で算出された値を粒界B濃度として扱うことができる。
まず、2次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)を用いて溶接金属ビード中央部(後記する実施例の図1の符号3参照)の結晶粒界を含む100μm四方を分析し、Bの分布に関してマッピングデータを入手する。
マッピングデータの1点1点の強度(数値)を100μm四方で合計して累積強度を測定しておき、別途、化学分析で測定した溶接金属のB濃度を累積強度で除して単位強度当りのB濃度を算出する。
そして、結晶粒界を跨ぐように抜き出したBのデータ群からガウス関数でピークを近似し、ピークトップの強度と単位強度当りのB濃度を掛け合わせて粒界B濃度を算出する。
なお、SIMSによる分析の際にArイオンによって試料から放出されたBが装置内のOと結びついて化合物を形成するため、粒界B濃度の測定においては感度が高く検出される化合物を検出対象として選ぶことが好ましい。例えば、本発明におけるSIMSによる分析では、Bを43BO2 -などの化合物として検出すると強度が高く得られ、検出感度が改善される場合があるので好ましい。
(残部)
本発明に係る溶接金属を構成する化学組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はNi及びその他の不可避的不純物、つまり、S、P、O以外の不可避的不純物である。当該その他の不可避的不純物としては、例えば、Al、Ti、V、N、Nb、Cu、Sn、Zn、Pb、Bi、Sb、Mg、Caなどが挙げられる。本発明では、本発明の効果を奏する限り前記したその他の不可避的不純物や、本明細書で説明した元素以外の元素を積極的に含有させることができる(そのような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。)。
(溶接金属の形成方法)
次に、本発明に係る溶接金属の形成方法について説明する。
本発明に係る溶接金属は、例えば、サブマージアーク溶接(Submerged Arc Welding;SAW)や、被覆アーク溶接(Shielded Metal Arc Welding;SMAW)、フラックスコアードアーク溶接(Flux Cored Arc Welding;FCAW)により形成することができるが、これらに限定されるものではない。後述の溶接施工条件を調整することによって前述した化学組成の溶接金属を得ることができればどのような溶接方法も適用することができる。
溶接材料については、溶接金属の化学組成に相当する組成とすることができるが、Crなどの溶接中に酸化して消費され易い成分(蒸発等して溶接金属中から減じ易い成分)は、溶接材料における濃度を予め高くしておくと、前記した化学組成とすることが容易となる。
なお、本発明に係る溶接金属は、Bを所定量含有させるものであるが、溶接金属へのBの添加は、溶接材料の製造段階でBを含有させた金属ワイヤを用いればよい。また、施工時に使用するフラックス中にボロン酸化物(B23)などのBを含む化合物(B化合物)を含有させておき、施工段階で溶接金属に添加させることもできる。例えば、SAWでB23を含有するフラックスから溶接金属にBを添加する場合は、B換算濃度で0.1%前後フラックスに含有させておくと、本発明に規定のB濃度(平均B濃度)とすることができる。なお、前記した溶接金属の化学組成を得ることができればB化合物の種類は特に制限されるものではなく、また、B化合物の種類に応じてフラックス中のB含有量を適宜調整することも可能である。
なお、本発明の効果を十分に得るためには、Bを溶接金属に添加しただけでは足りず、本発明で規定する粒界B濃度を有する必要がある。そのため、本発明に係る溶接金属を形成するためには、前記したようにB化合物を含有する金属ワイヤやフラックスなどの溶接材料を使用すると共に、結晶粒界にBが偏析(濃化)する条件で溶接施工を行う必要がある。
そのような溶接施工条件としては、入熱量とパス間温度を管理することが挙げられる。なお、「入熱量」とは、溶接の際に外部から溶接部に与えられる熱量をいう。「パス間温度」とは、多パス溶接において、次のパスを始める前のパスの最低温度をいう。
本発明で規定する粒界B濃度とするためには、SAWによる肉盛溶接の場合、例えば、入熱量は16.0kJ/cm以上とし、パス間温度は100℃以上とすることが挙げられる。このようにすると、溶接金属の冷却過程でBを効率的に結晶粒界に偏析させることができる。なお、最適な溶接施工条件は被施行物の肉厚や外気温、開先形状などに応じて変動するため、適宜調節することが好ましい。
以下、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを比較して、本発明に係る溶接金属について具体的に説明する。
まず、SAWによって炭素鋼板の上にビードを複数回形成し、外形がおよそ幅20mm×長さ400mm×高さ25mmとなる溶接金属(表1のNo.1〜13)を形成させた。これらの溶接金属中にBを含有させるため、フラックスにB23酸化物を添加した。なお、フラックス中のB23酸化物の換算B濃度は0.005〜0.2%の範囲とした。また、No.1〜12については、溶接施工環境に由来した水素の含有を模擬するため、施工直前に2.5質量%の割合でフラックスに水を吸収させ、No.13についてはフラックスに水を吸収させなかった。この吸湿によっておよそ10ppm前後の水素濃度を模擬的に試作することができる。なお、粒界B濃度の偏析状態を変えるため、表1に示すように、一部の溶接金属で入熱量とパス間温度の管理条件を変更した。このようにして得られた溶接金属の化学組成(質量%)を表1に示す。
表1に示す溶接金属のうちNo.1〜9が本発明の規定に該当する実施例であり、No.10〜12が本発明の規定を外れる比較例である。No.12は溶接金属のB濃度及び粒界B濃度が本発明の規定を外れ不足した比較例を示している。No.13は、溶接金属中のH濃度が低く、従来、良好な特性が得られているとされる従来例(比較例)である。なお、表1には、引張延性の指標となる引張破断伸び(%)を示すと共に、H濃度(ppm)、粒界B濃度(ppm)、入熱量(kJ/cm)、パス間温度(℃)を示す。引張破断伸び、粒界B濃度及びH濃度は以下のようにして測定した。
(引張破断伸び)
得られた溶接金属から図1に示す要領で引張試験片(JIS Z 3111:2005のゲージ部直径がφ6mmのA0号試験片に相当)を採取し、JIS Z 3111:2005「溶着金属の引張及び衝撃試験方法」に準じて引張試験を実施した。引張破断伸びが35%以上のものを合格とし、35%未満のものを不合格とした。なお、図1において符号1は炭素鋼板(母材)を表し、符号2は溶接金属を表し、符号3は引張試験片の採取位置を表す。
(粒界B濃度)
粒界B濃度の測定はSIMSを用いて次のようにして行った。なお、Bの検出は43BO2 -のシグナルで行った。
まず、SIMSを用いて溶接金属ビード中央部(図1の符号3参照)の結晶粒界を含む100μm四方を分析し、Bの分布に関してマッピングデータを入手した。
次いで、マッピングデータの1点1点の強度(数値)を100μm四方で合計して累積強度を測定し、別途、化学分析(ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析)で測定した溶接金属のB濃度を累積強度で除して単位強度当りのB濃度を算出した。
そして、結晶粒界を跨ぐように抜き出したBのデータ群からガウス関数でピークを近似し、ピークトップの強度と単位強度当りのB濃度を掛け合わせて粒界B濃度を算出した。
(H濃度)
H濃度は、昇温脱離分析で評価した。
Figure 2017042796
表1に示すように、No.1〜9に係る溶接金属は、本発明の要件を満たしていたので、引張破断伸びが35%以上(合格)となった。
これに対し、No.10〜12に係る溶接金属は、粒界B濃度が低過ぎたので、引張破断伸びが35%未満(不合格)となった。
なお、No.13に係る溶接金属の結果から、H濃度が低ければ、粒界B濃度が低くても良好な引張破断伸びが得られることが分かる。
つまり、この結果から、H濃度が5〜13ppmである溶接金属では、粒界B濃度が20ppmに満たない場合は35%未満しか引張破断伸びが得られない(No.10〜12)のに対し、粒界B濃度が20ppm以上の場合は35%以上の良好な引張破断伸びが得られる(No.1〜9)ことが確認された。
図2に粒界B濃度と引張破断伸びの関係を示す。表1及び図2に示すように、No.2とNo.3に係る溶接金属、及び、No.7とNo.8に係る溶接金属を比較すると、溶接金属中のB濃度の大小関係が必ずしも粒界B濃度と相関するわけではなく、溶接施工時の外気温度、板厚などに応じて入熱量及びパス間温度を調節し、溶接金属の冷却速度を低下させることで本発明に規定する粒界B濃度が得られることが分かる。
以上の結果から、本発明が規定する粒界B濃度の高い溶接金属とすることで、溶接施工環境に由来して高濃度に水素を含有したとしても、引張破断伸び(つまり、引張延性)が低下しないことが確認された。従って、本発明の要件を満たすものは、被施工物が受ける応力による損傷を未然に防ぐことができる。
以上、発明を実施する形態及び実施例により本発明に係るNi基合金溶接金属を詳細に説明したが、本発明の趣旨はこれらの内容に限定されることなく、その権利範囲(技術的範囲)は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。
1 炭素鋼板(母材)
2 溶接金属
3 引張試験片の採取位置

Claims (1)

  1. C:0.01〜0.05%(%は質量%を意味する。以下、化学成分について同じ。)、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:1.5〜3.5%、
    Cr:0.5〜5.0%、
    Mo:13.0〜20.0%、
    W:1.0〜4.0%、
    Fe:5.0〜12.0%、
    B:0.0005〜0.0050%、
    S:0.005%以下(0%を含まない)、
    P:0.005%以下(0%を含まない)、
    O:0.060%以下(0%を含まない)含有し、
    残部がNi及び不可避的不純物からなる溶接金属であり、
    当該溶接金属中の結晶粒界に偏析しているB濃度が20〜200ppmであることを特徴とするNi基合金溶接金属。
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