JP2017036659A - 地盤への硫酸イオンの溶出が抑制された地盤注入工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する地盤注入用固結材を地盤に注入する地盤注入工法であって、地盤への硫酸イオンの溶出が抑制された地盤注入工法を提供する。【解決手段】少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する地盤注入用固結材を地盤に注入する地盤注入工法であって、前記地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入することを特徴とする地盤注入工法。【選択図】図1
Description
本発明は、地盤注入用固結材を使用した地盤注入工法に関し、特に硬化剤である硫酸に起因した地盤への硫酸イオンの溶出が抑制された地盤注入工法に関する。
従来、珪酸ソーダを必須成分として含有する地盤注入用固結材は知られている。例えば、特許文献1の請求項1には、「コロイダルシリカと、水ガラス(珪酸ソーダ)とを含み、地盤への注入前にはそれ自体でゲル化しないアルカリ性シリカ溶液からなる地盤注入用固結材。」が記載されている。
上記特許文献1には、コロイダルシリカと水ガラスの混合物(アルカリ性シリカ溶液)に反応剤(硬化剤)として硫酸、リン酸等を添加できることが記載されている。詳細には、特許文献1の[0029]段落には、「例えば、アルカリ性シリカ溶液に酸性反応剤を添加して該溶液を酸性〜中性領域に調整して所定のゲル化時間を有するグラウトとすることができる。」と記載されている。
そして、地盤注入用固結材は地盤やコンクリート構造物の空洞、間隙等を埋める用途、例えば、地盤改良、液状化防止、止水、補強等をはじめとして幅広く用いられている。
従来の地盤注入用固結材は、特に硬化剤として硫酸を用いる場合には、地盤注入後に硫酸イオン(いわゆる硫酸根)が地盤に溶出して地盤を汚染する問題や、溶出した硫酸イオンがコンクリート構造物などを侵食(劣化)する問題が指摘されている。
よって、周囲環境に配慮した地盤注入用固結材の開発が求められており、例えば、硬化剤として硫酸の代わりにリン酸や炭酸ガスを用いることにより硫酸イオンを発生させない手段が提案できるが、価格及び供給の容易性の観点では硫酸を用いることが望ましいため、硫酸を使用することを前提として上記問題を改善する工夫が求められている。
本発明は、少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する地盤注入用固結材を地盤に注入する地盤注入工法であって、地盤への硫酸イオンの溶出が抑制された地盤注入工法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、硫酸を含有する地盤注入用固結材の地盤への注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入する特定の地盤注入工法によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の地盤注入工法に関する。
1.少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する地盤注入用固結材を地盤に注入する地盤注入工法であって、前記地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入することを特徴とする地盤注入工法。
2.前記地盤注入用固結材に対する前記カルシウム含有水溶液の割合は、前記地盤注入用固結材1Lに対する前記カルシウム含有水溶液中のカルシウム成分の量で規定した場合に、酸化カルシウム換算で0.3g以上である、上記項1に記載の地盤注入工法。
3.前記カルシウム含有水溶液は、水酸化カルシウム水溶液である、上記項1又は2に記載の地盤注入工法。
4.前記地盤注入用固結材は、更にコロイダルシリカを含有する、上記項1〜3のいずれかに記載の地盤注入工法。
5.前記珪酸ソーダは、SiO2/Na2Oで表されるモル比が2.0〜5.2であり、且つ、SiO2濃度が17〜40質量%である、上記項1〜4のいずれかに記載の地盤注入工法。
6.前記コロイダルシリカは、SiO2の平均粒子径が3〜30nmであり、且つ、SiO2濃度が20〜50質量%である、上記項4又は5に記載の地盤注入工法。
7.前記コロイダルシリカと前記珪酸ソーダの割合は、SiO2の質量比に換算して10:90〜60:40である、上記項3〜6のいずれかに記載の地盤注入工法。
8.コンクリートによって構築された構造物又はプレストレストコンクリート杭の近傍の地盤に施工する、上記項1〜7のいずれかに記載の地盤注入工法。
1.少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する地盤注入用固結材を地盤に注入する地盤注入工法であって、前記地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入することを特徴とする地盤注入工法。
2.前記地盤注入用固結材に対する前記カルシウム含有水溶液の割合は、前記地盤注入用固結材1Lに対する前記カルシウム含有水溶液中のカルシウム成分の量で規定した場合に、酸化カルシウム換算で0.3g以上である、上記項1に記載の地盤注入工法。
3.前記カルシウム含有水溶液は、水酸化カルシウム水溶液である、上記項1又は2に記載の地盤注入工法。
4.前記地盤注入用固結材は、更にコロイダルシリカを含有する、上記項1〜3のいずれかに記載の地盤注入工法。
5.前記珪酸ソーダは、SiO2/Na2Oで表されるモル比が2.0〜5.2であり、且つ、SiO2濃度が17〜40質量%である、上記項1〜4のいずれかに記載の地盤注入工法。
6.前記コロイダルシリカは、SiO2の平均粒子径が3〜30nmであり、且つ、SiO2濃度が20〜50質量%である、上記項4又は5に記載の地盤注入工法。
7.前記コロイダルシリカと前記珪酸ソーダの割合は、SiO2の質量比に換算して10:90〜60:40である、上記項3〜6のいずれかに記載の地盤注入工法。
8.コンクリートによって構築された構造物又はプレストレストコンクリート杭の近傍の地盤に施工する、上記項1〜7のいずれかに記載の地盤注入工法。
本発明の地盤注入工法は、地盤注入用固結材が硬化剤として硫酸を用いるものの、地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入する工程を有することにより、先に注入されたカルシウム含有水溶液と後に注入された地盤注入用固結材との接触部分で硫酸カルシウム・二水和物を主とする溶解性の低い石膏層又は石膏体を形成するため、地盤注入後に硫酸イオンの地盤への溶出が抑制され、周囲環境への影響が抑制されている。特に、硫酸イオンの地盤への溶出が抑制されているため、コンクリート構造物に対する侵食の問題を回避でき、コンクリートによって構築された構造物又はプレストレストコンクリート杭の近傍の地盤に施工する場合にも有効に利用できる。
以下、本発明の地盤注入工法について詳細に説明する。
本発明の地盤注入工法は、少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する地盤注入用固結材を地盤に注入する地盤注入工法であって、前記地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入することを特徴とする。
上記特徴を有する本発明の地盤注入工法は、地盤注入用固結材が硬化剤として硫酸を用いるものの、地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入する工程を有することにより、先に注入されたカルシウム含有水溶液と後に注入された地盤注入用固結材との接触部分で硫酸カルシウム・二水和物を主とする溶解性の低い石膏層又は石膏体を形成するため、地盤注入後に硫酸イオンの地盤への溶出が抑制され、周囲環境への影響が抑制されている。特に、硫酸イオンの地盤への溶出が抑制されているため、コンクリート構造物に対する侵食の問題を回避でき、コンクリートによって構築された構造物又はプレストレストコンクリート杭の近傍の地盤に施工する場合にも有効に利用できる。
地盤注入用固結材
本発明で使用する地盤注入用固結材は、少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する。
本発明で使用する地盤注入用固結材は、少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する。
上記珪酸ソーダとしては、市販品やそれに水を加えて希釈した希釈溶液を使用できる。
珪酸ソーダのモル比(SiO2/Na2O)は限定されないが、2.0〜5.2程度が好ましく、汎用の珪酸ソーダが使えるため3.1〜3.8程度がより好ましい。
珪酸ソーダに含まれるSiO2濃度としては、17〜40質量%程度が好ましい。
地盤注入用固結材に含まれる酸(硬化剤)としては硫酸を用いる。硫酸としてはH2SO4濃度が50〜80質量%の市販又は公知の濃硫酸若しくは希硫酸又はそれらを任意に水希釈したものを使用できる。硫酸の量は地盤注入用固結材の所望のゲルタイム(即ちpH)に応じて設定する。なお、本発明では、必要に応じて硫酸に加えてリン酸、塩酸等の無機酸を併用してもよい。
地盤注入用固結材はコロイダルシリカを含有してもよい。コロイダルシリカはコロイド状の性状を示し、それ単独では半永久的にゲル化しない安定な物質である。コロイダルシリカとしては、市販品やそれに水を加えて希釈した希釈溶液を使用できる。
コロイダルシリカに含まれるシリカ(SiO2)の平均粒子径としては、3〜30nm程度が好ましく、4〜15nm程度がより好ましい。なお、本明細書に記載の平均粒子径は窒素吸着によるBET法(但しBET法で測定困難な微粒子については動的光散乱法)により測定した値である。
コロイダルシリカに含まれるSiO2濃度としては、20〜50質量%程度が好ましい。
このようなコロイダルシリカは調製することもできる。例えば、珪酸ソーダの水希釈液をイオン交換により脱アルカリ処理し、次いで得られた活性珪酸にアルカリ剤を添加してpHを調整するとともに加熱により造粒することにより調製する。
コロイダルシリカを含有する場合のコロイダルシリカと珪酸ソーダの割合(混合割合)は限定されないが、SiO2の質量比に換算して10:90〜60:40程度が好ましい。かかる範囲の中でも、地盤注入用固結材中のSiO2(換算値)において、コロイダルシリカに由来するSiO2量が15〜55質量%となるように割合を調整することが好ましい。コロイダルシリカに由来するSiO2量が55質量%を超えると固結強度が低下するおそれがある。
地盤注入用固結材は上記成分以外に各成分の希釈用の水を含むことができる。そして、本発明の地盤注入用固結材のSiO2濃度は4〜10質量%程度が好ましい。水としては、純水又は工業用水が使用できる。
地盤注入用固結材の製造方法は、上記成分を含有する固結材が調製できる限り特に限定されないが、コロイダルシリカを含有する態様では、硫酸に珪酸ソーダを混合した後、コロイダルシリカを混合する順序で地盤注入用固結材を調製する場合には、部分ゲルの発生を抑制できるためより好ましい。
地盤注入工法
上記地盤注入用固結材を用いた本発明の地盤注入工法は、前記地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入する工程を有する。
上記地盤注入用固結材を用いた本発明の地盤注入工法は、前記地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入する工程を有する。
カルシウム含有水溶液は、カルシウムイオンを含有する水溶液であればよく、例えば、水酸化カルシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、乳酸カルシウム水溶液、クエン酸カルシウム水溶液、亜硝酸カルシウム水溶液等が挙げられる。これらの水溶液の溶質濃度としては、5mmol/L〜1.2mol/Lが好ましい。これらのカルシウム含有水溶液の中でも、本発明では、価格及び供給の容易性の観点から水酸化カルシウム、塩化カルシウム水溶液等の少なくとも一種を用いることが好ましい。
カルシウム含有水溶液の地盤への注入に際しては、通常の薬液注入で使用している施工設備を用いることができる。例えば、カルシウム含有水溶液をポンプでホースを介して圧送し、地中に配置したロッドを介して注入する方法が挙げられる。その際に使用するロッドは特に限定されるものではないが、単管ロッド、単管ストレーナロッド、二重管ロッド、二重管のダブルパッカー方式ロッドなどが使用できる。注入されたカルシウム含有水溶液はロッドの所定位置に設けられた注入口から地盤中に注入されて略放射状に拡散する。
カルシウム含有水溶液の注入に続いて、地盤注入用固結材を地盤に注入する。
地盤注入用固結材の地盤への注入に際しては、通常の薬液注入で使用している施工設備を用いることができる。例えば、ミキサーで調製した地盤注入用固結材をポンプでホースを介して圧送し、地中に配置したロッドを介して注入材を注入する方法が挙げられる。その際に使用するロッドは特に限定されるものではないが、単管ロッド、単管ストレーナロッド、二重管ロッド、二重管のダブルパッカー方式ロッドなどが使用できる。
本発明では、地盤注入用固結材は先に注入したカルシウム含有水溶液の拡散を追うように注入することが好ましく、図1(b)に示すようにカルシウム含有水溶液を注入したロッドの同じ注入口から注ぎ足す形で地盤注入用固結材を注入する態様が挙げられる。
図1(b)によれば、先に注入したカルシウム含有水溶液が略放射状に拡散するのを追うように地盤注入用固結材が注入されて地盤に拡散し、地盤注入用固結材とカルシウム含有水溶液との接触部分で硫酸カルシウム・二水和物を主とする溶解性の低い石膏層が形成されて、地盤注入後に硫酸イオンの地盤への溶出を抑制することができる。これに対して、カルシウム含有水溶液を先に注入しない従来の地盤注入工法では、図1(a)に示すように固結体と周辺地盤とが直接接触することで硫酸イオンの地盤への溶出が危惧される。
本発明の地盤注入工法は、特にコンクリート構造物及びプレストレストコンクリート杭の近傍の地盤に施工する用途に適しており、図2に示すように、コンクリート構造物の近傍の地盤に20ポイントに分けて地盤注入用固結材を注入するに際し、コンクリート構造物と直接接する固結体(コンクリート構造物と直接接する4ポイント)の形成に際して本発明の地盤注入工法(図1(b)の地盤注入工法)を適用することにより、硫酸イオンの地盤への溶出が抑制し、コンクリート構造物などに対する侵食の問題を回避できる。
また、別の態様として、図3に示すように、コンクリート構造物の近傍の地盤に20ポイントに分けて地盤注入用固結材を注入するに際し、コンクリート構造物と直接接する固結体(コンクリート構造物と直接接する4ポイント)の形成に際して先ずカルシウム含有水溶液を注入し、次に注入管の位置を調整し、先に注入したCa含有水溶液の一部又は全部がコンクリート構造物を被覆する石膏体となるように地盤注入用固結材を注入する本発明の地盤注入工法を適用することにより、前記同様に硫酸イオンの地盤への溶出を抑制することができる。なお、図3にはCa含有水溶液の全部がコンクリート構造物を被覆する石膏体となった場合の模式図を示している。
本発明では、地盤注入用固結材に対するカルシウム含有水溶液の割合は、地盤注入用固結材1Lに対するカルシウム含有水溶液中のカルシウム成分の量で規定した場合に、酸化カルシウム換算で0.3g以上が好ましい。かかる割合であれば、先に注入されたカルシウム含有水溶液と後に注入された地盤注入用固結材との接触部分で硫酸カルシウム・二水和物を主とする溶解性の低い石膏層又は石膏体が効率的に形成されて、地盤注入後に硫酸イオンの地盤への溶出を抑制することができる。
本発明の地盤注入工法は、硫酸イオンの地盤への溶出が抑制されているため、周囲環境への影響が抑制されている。特にコンクリート構造物及びプレストレストコンクリート杭に対する侵食の問題が回避されているため、コンクリートによって構築された構造物又はプレストレストコンクリート杭の近傍の地盤に施工する場合に有効に利用することができる。また、本発明の地盤注入工法は、地盤に注入する用途のみならず、コンクリート構造物自体の空洞、間隙等を埋める用途にも用いることができる。
上記において、コンクリートによって構築された構造物の近傍の地盤としては、例えば、コンクリートケーソンにより構築された護岸又は岸壁の近傍の地盤が挙げられる。また、プレストレストコンクリート杭の近傍の地盤としては、矢板式護岸又は岸壁の控え杭近傍の地盤が挙げられる。つまり、本発明の地盤注入用固結材は、既存の岸壁又は護岸の補強;岸壁増深時の岸壁前面の地盤改良;岸壁背面の地盤の土圧低減及び吸出防止;既存の構造物の下部地盤の支持力増加などの用途に優れた効果を発揮する。その他、空港等の構造物、地盤の悪い都市部や山間部等の各種構造物が立地している地盤に適用できる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例及び比較例で用いた地盤注入用固結材の配合及びpHを下記表1に示す。
※1:SiO2濃度40質量%、日産化学工業(株)製
※2:SiO2濃度25.7質量%、Na2O濃度7.0質量%、富士化学(株)製
※3:工業用硫酸
※2:SiO2濃度25.7質量%、Na2O濃度7.0質量%、富士化学(株)製
※3:工業用硫酸
比較例
直径5cm、高さ120cmのモールド(カラム)にケイ砂7号を相対密度50%、高さ100cmとなるように空中落下で投入し、間隙を二酸化炭素で置換後、モールド底部からイオン交換水を通水した。
直径5cm、高さ120cmのモールド(カラム)にケイ砂7号を相対密度50%、高さ100cmとなるように空中落下で投入し、間隙を二酸化炭素で置換後、モールド底部からイオン交換水を通水した。
次いで、モールド底部から地盤注入用固結材(注入剤ともいう)1.5Lを注入圧力1.5kN/m2以下でゆっくりと注入した。これにより、高さ120cmのモールド中で高さ100cmの改良体を作製した。
モールド上部から排出される排出液を100ml毎に分取し、pHを測定した。排出液を真空凍結乾燥し、XRD(SmartLab、(株)リガク製)により乾燥物中に含有している塩の同定を行った。便宜のため、地盤注入用固結材を注入し始めた時に排出された排出液を比較例−1とし、以降100ml注入ごとに分取された排出液をそれぞれ比較例−2、−3…と称する。
実施例
直径5cm、高さ120cmのモールド(カラム)にケイ砂7号を相対密度50%、高さ100cmとなるように空中落下で投入し、間隙を二酸化炭素で置換後、モールド底部からイオン交換水を通水した。
直径5cm、高さ120cmのモールド(カラム)にケイ砂7号を相対密度50%、高さ100cmとなるように空中落下で投入し、間隙を二酸化炭素で置換後、モールド底部からイオン交換水を通水した。
次いで、モールド底部から20℃飽和水酸化カルシウム水溶液を3L通液した後、200mlの水を通水し、更に地盤注入用固結材(注入剤ともいう)1.5Lを注入圧力1.5kN/m2以下でゆっくりと注入した。飽和水酸化カルシウム水溶液は、水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶解して用いた。これにより、高さ120cmのモールド中で高さ100cmの改良体を作製した。
モールド上部から排出される排出液を100ml毎に分取し、pHを測定した。排出液を真空凍結乾燥し、XRD(SmartLab、(株)リガク製)により乾燥物中に含有している塩の同定を行った。便宜のため、地盤注入用固結材を注入し始めた時に分取された排出液を実施例−1とし、以降100ml注入ごとに分取された排出液をそれぞれ実施例−2、−3…と称する。
図4に地盤注入用固結材の注入量(横軸)とその時点での排出液pH(縦軸)との関係を示す。比較例では先ず中性付近の液が排出し、1000ml以降では酸性の液が排出したことが分かる。つまり、中性の水が排出した後、酸性の注入剤が排出したことが確認された。同様に実施例では先ずアルカリ性の水酸化カルシウム水溶液が排出し、800ml以降で酸性の注入剤の排出が確認された。
図5に注入剤の乾燥物及び排出液(実施例−8、−12、比較例−11、−15)の乾燥物のXRDプロファイルを示す。注入剤の乾燥物の回折パターンは硫酸ナトリウムに帰属することができた。比較例−11及び−15の排出液の乾燥物からは硫酸ナトリウムが検出された。他方、実施例では水酸化カルシウム水溶液と注入剤とが接触する界面(実施例−8)の排出液の乾燥物からは硫酸カルシウム・二水和物(石膏)の存在が検出され、実施例−12の排出液の乾燥物からは硫酸ナトリウムが検出された。
以上より、本発明の地盤注入工法では、先に注入されたカルシウム含有水溶液と後に注入された地盤注入用固結材との接触部分で硫酸カルシウム・二水和物を主とする溶解性の低い石膏層又は石膏体を形成することにより、地盤注入後に硫酸イオンの地盤への溶出が抑制され、周囲環境への影響が抑制できることが分かる。
実施例及び比較例で作製した各改良体の一軸圧縮強さ
実施例及び比較例で作製した各改良体(直径5cm×高さ100cm)を高さ方向に均等に8等分して供試体1〜8(供試体1がモールド上部側、供試体8がモールド底部側に対応する)とし、各供試体の一軸圧縮強さ(28日)及びそれらの平均値を測定及び算出した。その結果を下記表2に示す。
実施例及び比較例で作製した各改良体(直径5cm×高さ100cm)を高さ方向に均等に8等分して供試体1〜8(供試体1がモールド上部側、供試体8がモールド底部側に対応する)とし、各供試体の一軸圧縮強さ(28日)及びそれらの平均値を測定及び算出した。その結果を下記表2に示す。
表2の結果から明らかな通り、実施例で得られた改良体は、比較例で得られた改良体と比較すると一軸圧縮強さは相対的には小さくなるものの、平均値で200kN/m2を超えている点で地盤やコンクリート構造物の空洞、間隙等を埋める用途、例えば、地盤改良、液状化防止、止水、補強等をはじめとして幅広く用いることができる。例えば、既存の岸壁又は護岸の補強;岸壁増深時の岸壁前面の地盤改良;岸壁背面の地盤の土圧低減及び吸出防止;既存の構造物の下部地盤の支持力増加などの用途に用いることができる。また、空港等の構造物、地盤の悪い都市部や山間部等の各種構造物が立地している地盤に適用することができる。
なお、実施例ではCa2+源として水酸化カルシウムを用いたが、水酸化カルシウムに代えて塩化カルシウムを用いた場合でも、以下に説明する通り、同様の一軸圧縮強さが得られると推察される。
珪酸は下記式(1)の重合反応によりゲル化する。よって、ケイ砂と注入剤とを混合するとケイ砂の粒子間にシリカゲルが生成して固化体となる。
2≡Si−OH → ≡Si−O−Si≡ + H2O (1)
2≡Si−OH → ≡Si−O−Si≡ + H2O (1)
他方、水酸化カルシウム、塩化カルシウムはそれぞれ注入剤中の硫酸、アルカリ分と式(2),(3)のように反応する。
Ca(OH)2+2H2SO4+2Na(OH) → CaSO4+Na2SO4+4H2O (2)
CaCl2 + H2SO4 + 2Na(OH) → CaSO4 + 2NaCl + 2H2O (3)
Ca(OH)2+2H2SO4+2Na(OH) → CaSO4+Na2SO4+4H2O (2)
CaCl2 + H2SO4 + 2Na(OH) → CaSO4 + 2NaCl + 2H2O (3)
このとき生成するNa2SO4やNaClのような塩は、シリカ中のシラノール基(Si−OH)と結合することが知られている(例えば、R. K. Iler, Chemistry of silica, Wiley Interscience, New York, 1979, p.659.)。
よって、同じpH条件下において水酸化カルシウムと塩化カルシウムとは類似した反応経路となり生成するゲルも類似した構造であると考えられるため、固化体の強度も同程度であると推察される。
試験例1〜3及び比較試験例1
≪試験の目的≫
本発明の効果を多面的に検証するために、カルシウム含有水溶液と地盤注入用固結材との接触により形成される硫酸カルシウム・二水和物を主とする溶解性の低い石膏体を作製し、当該石膏体の破砕物を養生水(工業用水)に浸漬した際に破砕物から硫酸イオン(SO4 2−)の溶出が抑制できることを確認する。
≪試験の目的≫
本発明の効果を多面的に検証するために、カルシウム含有水溶液と地盤注入用固結材との接触により形成される硫酸カルシウム・二水和物を主とする溶解性の低い石膏体を作製し、当該石膏体の破砕物を養生水(工業用水)に浸漬した際に破砕物から硫酸イオン(SO4 2−)の溶出が抑制できることを確認する。
≪試験の手順≫
(1)750mLのポリプロピレン容器内で、カルシウムを実質的に含まない豊浦砂145.2g(55mL)とCaCl2水溶液13.5mLを混合し、そこに前述の実施例で用いた地盤注入用固結材を31.5mL(34.24g)加えて混合した。前記CaCl2水溶液のCaO濃度(試験例により異なる)を下記表3に示す。
(2)前記混合物を24時間養生して改良体を得た後、当該改良体を破砕した。
(3)改良体の破砕物に養生水100mLを投入し、25℃の恒温に保持しながら振とう撹拌した。養生時には水が蒸発しないように密閉した。
(4)一定時間毎に1〜2mL採水し、希釈後イオンクロマトグラフィーにより硫酸イオン濃度を定量した。この定量結果を図6に示す。
(1)750mLのポリプロピレン容器内で、カルシウムを実質的に含まない豊浦砂145.2g(55mL)とCaCl2水溶液13.5mLを混合し、そこに前述の実施例で用いた地盤注入用固結材を31.5mL(34.24g)加えて混合した。前記CaCl2水溶液のCaO濃度(試験例により異なる)を下記表3に示す。
(2)前記混合物を24時間養生して改良体を得た後、当該改良体を破砕した。
(3)改良体の破砕物に養生水100mLを投入し、25℃の恒温に保持しながら振とう撹拌した。養生時には水が蒸発しないように密閉した。
(4)一定時間毎に1〜2mL採水し、希釈後イオンクロマトグラフィーにより硫酸イオン濃度を定量した。この定量結果を図6に示す。
≪試験結果(図6)の考察≫
養生水を100mL投入したときに破砕物から溶出されるSO4 2−濃度は最大で6778ppm(SO4 2−溶出上限値)である。養生4日後において、比較試験例1では破砕物に含まれる殆ど全てのSO4 2−が溶出していることが分かった。それに対して、試験例1ではSO4 2−溶出上限値に対して約50%のSO4 2−が保持されていた。また、試験例2では約78%、試験例3では約86%のSO4 2−が保持されていた。
養生水を100mL投入したときに破砕物から溶出されるSO4 2−濃度は最大で6778ppm(SO4 2−溶出上限値)である。養生4日後において、比較試験例1では破砕物に含まれる殆ど全てのSO4 2−が溶出していることが分かった。それに対して、試験例1ではSO4 2−溶出上限値に対して約50%のSO4 2−が保持されていた。また、試験例2では約78%、試験例3では約86%のSO4 2−が保持されていた。
試験例2及び試験例3ではCaSO4の水中での飽和濃度(2100ppm)を超えるSO4 2−濃度は検出されなかった。このことからCa2+を含む改良体において、Ca2++SO4 2−+2H2O→CaSO4・2H2Oの反応が十分に行われていることが分かった。一方、試験例1ではCaSO4の飽和濃度を超えるSO4 2−濃度が検出された。これは、Ca2+により固定化できなかったSO4 2−が養生水に溶出しているためと推察される。
よって、図6の結果からCaCl2添加とSO4 2−の溶出低減との関係が明らかになり、改良体からのSO4 2−溶出量を低減させるためには、Ca2+源を多く添加すればよいことが分かる。
Claims (8)
- 少なくとも珪酸ソーダ及び硫酸を含有する地盤注入用固結材を地盤に注入する地盤注入工法であって、前記地盤注入用固結材の注入に先立ち、カルシウム含有水溶液を注入することを特徴とする地盤注入工法。
- 前記地盤注入用固結材に対する前記カルシウム含有水溶液の割合は、前記地盤注入用固結材1Lに対する前記カルシウム含有水溶液中のカルシウム成分の量で規定した場合に、酸化カルシウム換算で0.3g以上である、請求項1に記載の地盤注入工法。
- 前記カルシウム含有水溶液は、水酸化カルシウム水溶液である、請求項1又は2に記載の地盤注入工法。
- 前記地盤注入用固結材は、更にコロイダルシリカを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の地盤注入工法。
- 前記珪酸ソーダは、SiO2/Na2Oで表されるモル比が2.0〜5.2であり、且つ、SiO2濃度が17〜40質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の地盤注入工法。
- 前記コロイダルシリカは、SiO2の平均粒子径が3〜30nmであり、且つ、SiO2濃度が20〜50質量%である、請求項4又は5に記載の地盤注入工法。
- 前記コロイダルシリカと前記珪酸ソーダの割合は、SiO2の質量比に換算して10:90〜60:40である、請求項3〜6のいずれかに記載の地盤注入工法。
- コンクリートによって構築された構造物又はプレストレストコンクリート杭の近傍の地盤に施工する、請求項1〜7のいずれかに記載の地盤注入工法。
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