JP2017008387A - めっき鋼材、フラックス及びめっき鋼材の製造方法 - Google Patents

めっき鋼材、フラックス及びめっき鋼材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Al濃度が15%以下の溶融Zn−Al系めっき層を備え、外観、耐食性及び加工性に優れためっき鋼材を提供することを課題とする。【解決手段】鋼材の表面に、Al:2〜15質量%、Si:0.01〜1.0質量%を含み、残部がZn及び不純物よりなる溶融めっき層と、前記溶融めっき層と前記鋼材の表面との界面に、微量成分として2質量%以下のSnを含み、Al、Si、Feを主成分とする厚さ2μm以下の合金層と、を有し、界面におけるSnの付着量が0.12〜240mg/m2の範囲であることを特徴とするめっき鋼材を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた耐食性を有し、主に土木、建材用に用いられるめっき鋼材、フラックス及びめっき鋼材の製造方法に関する。
耐食性に優れることが知られている浸漬溶融めっき鋼材として、亜鉛系めっき鋼材がある。この亜鉛系めっき鋼材は広い用途で用いられており、その中でも純亜鉛めっきが最も多く使用されている。しかし耐食性に関する要求は高まる傾向にあり、従来の純亜鉛めっき鋼材ではその要求を満たすことが困難となっている。
このため、Zn−Al系合金をベースとする種々の組成の合金めっきが開発されている。このZn−Al系合金めっき鋼材は耐食性に優れており、鋼帯を連続溶融めっきすることにより、鋼板として大量に生産されている。
Zn−Al系合金めっきは、水素還元法を併用して連続的にめっきするのは容易であるが、例えばボルト・ナット、H形鋼などの形鋼、溶接構造物等といった、連続めっきが不可能な鋼材にめっきすることは、めっき反応の制御が困難という問題があり、容易ではない。その理由の一つとして、めっき浴への浸漬時間が長引くとフラックスの効果が薄れることが挙げられる。例えば、Al濃度が10%で浴温度が470℃のめっき浴を用いる場合を考える。Al濃度が10%の場合に鋼材をめっき浴に100秒以上浸漬すると、鋼とAlの反応が良好であるため、特許文献1に報告されているような、NaF、SnCl等を含むフラックスであっても、めっきの初期の段階では特に問題はない。しかし、高温での鋼とAlとの反応は激しすぎるため、100秒以上の浸漬ではFeAl合金が大量生成し、めっき表面が平滑にならず、また、FeAl合金が表面に露出して灰色を呈するなど外観が悪化する。更に、めっき浴に多量のFeが溶出するためいわゆるドロスが生成する等の問題が生じる。
また、長さが数m、重さが数トンにもなる大きな被めっき物は、起重機で吊ってめっき浴に浸漬・引き上げるが、浸漬時間を秒単位で制御することは事実上不可能である。
更に、鋼中のFeとめっき浴のAlとの反応を抑制するには、めっき浴に微量のSiを添加することが効果的である。しかし、Si添加によりFeAlの反応性が低下するため、めっき初期反応が起きにくくなり、不めっきが発生しやすくなるという問題がある。
また、耐食性改善に顕著な効果があるMgも、同様にめっきを阻害して不めっきを生じやすくする。
特許文献2では、基材をフラックスで処理してめっき浴に浸漬する際に、めっき浸漬前の鋼材の予熱温度を300〜700℃と高く設定することで、ZnAl合金浸漬めっきを一段でめっきすることが記されている。
また、一段での溶融Zn−Al合金めっき方法としては、特許文献3に溶融塩フラックスを用いる方法が開示されており、40〜80%の高Al濃度の浴に限定して適用されている。
また、Alの含有率が4〜20質量%程度のZn−Al系合金めっきを行う場合には、例えば特許文献4に示される、一般に二段めっきと呼ばれている方法が実用化されている。二段めっきは、通常、鋼材に対して一段目の純Znめっきを行い、Znめっきの冷却後、あるいはZnめっき後直ちに、鋼材を二段目のZnAl合金浴に浸漬する。一段目のZnめっきで生成したFeZn合金は、二段目のめっきでFeZnAl合金に改質される。これにより合金層の耐食性が向上する。また、一段目のめっきでFeZn合金上に存在した純Znめっき層は、二段めっきの浴組成である耐食性に優れたZnAl合金に置き換えられる。このように、二段目のめっきによりめっき層は全体がAlを含む合金に変換され、めっき層の耐食性が向上する。
特許文献5,6には、めっき層にSiを含むAl−Zn系めっき鋼材を二段めっき法により製造する技術が開示されている。また、特許文献5、6には、鋼材のめっきの平均組成が開示されている。しかし、鋼板とめっきとの界面における合金層の有無については触れられていない。なお、特許文献5,6では、一段目のめっきがSiを含まないめっきであることから、鋼材とめっき層との間には、Siを含まない界面合金層の生成が予測される。
特許文献7には、高耐食性を有し、二段めっき法により製造する、加工性に優れためっき鋼材が記載されている。また、特許文献7には、鋼材のめっきの平均組成と、界面合金層の組成とが記載されている。特許文献7の界面合金層は二層構造であり、各々厚みが5μm以下、30μm以下と厚いものである。
特許文献4〜7に記載されているように、現在普及している二段めっき方法は、2種類の溶融めっき浴設備を用いて一つのめっき製品を作るという、設備効率が非常に悪い製造方法となっている。効率、コストの面からは、一段でのめっきが望ましいことは言うまでもない。
一段の溶融めっきにおいて溶融塩フラックス処理を実施する場合は、めっき組成が高Al濃度のめっきに限定されるため、めっき浴の融点が高くなり、鋼材、構造物が変形したり、また材質に影響する問題がある。また、高Al濃度のZnAl合金はめっき層そのものの耐食性には優れるが、めっきの犠牲防食性能は低いため赤錆が発生しやすい。このため、腐食環境を選ぶめっきであり、用途は限定される。
また、めっき浸漬前に予熱温度を高くする方法は、めっきの組成は選ばないと考えられる。しかし、浸漬めっきでは様々な形態の鋼構造物を対象とするため、長大な被めっき材や、複雑な形状の被めっき材の予熱温度を高くする場合は、均一な予熱が難しい、熱効率が悪く予熱に長時間必要という問題がある。また、極端に高温で長時間加熱した場合、鋼材表面に酸化物が生成してめっきに影響する可能性もある。この問題の解消のために非酸化雰囲気で加熱することが考えられるが、加熱処理設備が必要になり、設備効率が低下する。更に、鋼材温度の不均一は、高温部と低温部のめっき反応を異なるものにし、結果として部分的な外観や耐食性の低下を招く可能性がある。このため、特許文献3に記載された方法は、非めっき物が小さい場合、形状が単純な場合には有効であるが、被めっき物が長大、あるいは形状が複雑な場合などでは適用が難しく、めっきの対象を選ぶという問題がある。
特許第3588452号公報 特開2012−241277号公報 特開平4−323356号公報 特開2010−70810号公報 特開2002−47548号公報 特開2002−47521号公報 特開2002−47549号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、Al濃度が15%以下の溶融Zn−Al系めっき層を備え、外観及び耐食性に優れためっき鋼材を提供することを課題とする。また、本発明は、Al濃度が15%以下の溶融Zn−Al系めっき層を得る際に、一段の浸漬めっき法を適用可能なめっき鋼材の製造方法及びこの製造方法に用いられるフラックスを提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、発明者らがフラックスの条件、めっき浴の条件を検討した結果、めっき浴に0.01〜1.0質量%のSiを添加し、フラックスにSnClまたはSnOを加えることにより、めっき反応を安定化させて外観良好なめっきを得ることができことを見出し、Al濃度が15%以下の溶融Zn−Al系合金めっきの一段浸漬めっき方法を完成させた。また、この方法でめっきする場合、めっき浴浸漬時の反応性が良好であるため、めっき反応を阻害する元素であるMgを最大3%含むめっき浴でめっきが可能となる。
すなわち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1) 鋼材の表面に、
Al:2〜15質量%、
Si:0.01〜1.0質量%
を含み、残部がZn及び不純物よりなる溶融めっき層と、
前記溶融めっき層と前記鋼材の表面との界面に、微量成分として2質量%以下のSnを含み、Al、Si、Feを主成分とする厚さ2μm以下の合金層と、を有し、
前記界面におけるSnの付着量が0.12〜240mg/mの範囲であることを特徴とするめっき鋼材。
(2) 前記溶融めっき層中に、Al、Si及びFeを含み、かつ断面視で針状あるいは塊状の化合物が分散していることを特徴とする(1)記載のめっき鋼材。
(3) 前記溶融めっき層に更に、Mgが0.01〜3質量%の範囲で含有されることを特徴とする(1)または(2)に記載のめっき鋼材。
(4) NaClを5〜14質量%、SnClを1.2〜5質量%、SnClまたはSnOの何れか一方または両方を合計で0.1〜1.5質量%、残部がZnClの組成からなるフラックス成分が、150〜300g/Lの濃度で水に溶解され、pHが2.0以下に調整されていることを特徴とするフラックス。
(5) 前記フラックス成分が更に、NaF、KFの何れか一方または両方を合計で0質量%超2.0質量%以下の割合で含むことを特徴とする(4)に記載のフラックス。
(6) 前記フラックス成分が更に、界面活性剤を0質量%超1.0質量%以下の割合で含む(4)または(5)に記載のフラックス。
(7) (4)乃至(6)の何れか一項に記載のフラックスを鋼材に塗布して乾燥させ、
次いで、前記鋼材を、Al:2〜15質量%、Si:0.01〜1.0質量%を含み、残部がZnよりなる溶融めっき浴に浸漬して引き上げることを特徴とする、めっき鋼材の製造方法。
(8) 前記溶融めっき浴に更に、Mgが0.01〜3質量%の範囲で含有されることを特徴とする(7)に記載のめっき鋼材の製造方法。
本発明によれば、Al濃度が15%以下の溶融めっき層を備え、外観性及び耐食性に優れためっき鋼材を提供できる。
また、本発明によれば、Al濃度が15%以下の溶融めっき層を得る際に、一段の浸漬めっき法を適用可能なめっき鋼材の製造方法及びこの製造方法に用いられるフラックスを提供できる。
本発明のめっき鋼材のめっき層の一例を示す断面SEM写真。 本発明のめっき鋼材のめっき層の別の例を示す断面SEM写真。 本発明のめっき鋼材のめっき層の深さ方向分析の結果の一例を示すグラフ。 本発明のめっき鋼材のめっき層の深さ方向分析の結果の別の例を示すグラフ。
本発明に係る溶融めっき層を得るための溶融めっき浴においては、鋼材のFeと反応し得るAl量が15質量%以下と低い。また、溶融めっき浴自体の温度が500℃以下の比較的低温になる。更に、FeAl合金の成長を抑制するSiをめっき浴中に含む。従って、鋼材とめっき浴との反応性が比較的穏やかになり、鋼材表面の合金層が比較的形成されにくくなる。よって、不めっきが生じやすい。そこで本発明者が鋭意検討し、フラックス成分として4価の錫化合物を加えたところ、不めっきが起こりにくくなることを見出した。
また、Alが15質量%以下、Siが1.0質量%以下を含む溶融めっき層を形成する際、本発明では、フラックス処理後の鋼材を溶融めっき浴に浸漬させて引き上げる所謂浸漬めっき法で形成する。これにより本発明では、溶融めっき浴への浸漬時に鋼材表面にフラックス由来のSnを含む合金層が形成される。このような合金層が形成されることで、不めっきが生じにくくなる。また、本発明では、溶融めっき浴への浸漬時間が連続めっき法の場合に比べて比較的長いため、形成した合金層がめっき浴中で部分的に破壊されて地鉄が露出し、この地鉄と溶融めっき浴中のAlとの間で反応が起きると考えられる。その結果、溶融めっき層中にAlとSiとFeを含む針状または塊状の化合物相が形成される場合がある。なお、化合物相の形状は、めっき層を断面視したときに現れる形状である。溶融めっき層の成長時にこれらの化合物相がめっき層中に分散して存在することにより、めっき層の厚みがより大きくなるものと推測される。以上により、めっき鋼材の耐食性が向上する。また、鋼材表面が予め4価の錫化合物を含むフラックスで処理されることで、鋼材表面に薄い合金層が均一に形成される。このため、比較的脆い合金層が過剰に厚くなることがなく、めっき層の剥離が起きにくくなり、めっき鋼材の加工性が向上する。
ちなみに、連続めっき法では、フラックス処理に代えて鋼材表面の水素還元処理を行い、さらにめっき浴へ浸漬時間が短いため、脆性が高いFeAl合金の成長を抑制している。このため、連続めっき法では、本発明のようなSnを含む合金層組織は得られない。また通常の浸漬めっきでは、合金層が厚く成長し、さらに初期に生成したSnを含む合金の一部はめっき浴に溶解してしまうため、SnClを含むフラックスを用いても本発明のようなSnを含む合金層組織は観察されない。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のめっき鋼材は、鋼材と、鋼材の表面に形成された溶融めっき層と、溶融めっき層と鋼材との界面に形成された合金層と、が備えられている。
本実施形態のめっきの対象物となる鋼材は、形状に特に制限はなく、鋼線等の線状、鋼板等の板状、ネット状、鋼管等の筒状、棒状等の三次元形状等、種々の形状を使用できる。例えば、ボルト、ナット、送電金具等の小型の基材から、高欄、親柱、橋梁用防護柵、道路標識、道路用カードフェンス、河川用フェンス、落石防止網、鋼管等の大型の基材まで使用できる。また、鋼材の材質は普通鋼であれば特に制限されない。
溶融めっき層は、Al:2〜15質量%、Si:0.01〜1.0質量%を含み、残部がZn及び不純物よりなる。溶融めっき層には、Mgが0.01〜3質量%の範囲で含まれていてもよい。また、本実施形態では、溶融めっき層を形成するための溶融めっき浴として、上記の組成と同一組成の浴を用いる。
溶融めっき層及び溶融めっき浴のAlの含有量を2〜15質量%に限定した理由は、2質量%未満では、溶融めっき層の耐食性を向上させる効果が不十分になるためであり、15質量%を超えると、耐食性を向上させる効果が飽和するためである。また、Alは、めっき浴中のMgの酸化を防止するためにも、2質量%以上添加する必要がある。
また、後述するように、めっき浴は最高でも500℃程度にすることが望ましいことから、溶融めっき浴中のAl濃度は最大で15質量%以下に限定される。現実には、鋼材浸漬時の浴温低下を考慮すると、浴温を融点直上に設定することは望ましくないため、Al濃度は13質量%以下にすることが望ましい。下限は、溶融Znめっきよりも明確に耐食性を改善させるためには、3質量%以上が望ましい。浸漬めっきにおいて濃度を一定に維持することを考慮すると、4質量%以上がより好ましい。
溶融めっき層及び溶融めっき浴のSiの含有量を0.01〜1.0質量%に限定した理由は、0.01質量%未満では地鉄とAlとの反応抑制が不十分になるためであり、また、めっき浴中のSi濃度管理が難しくなる。Siが1.0質量%を超えると、不めっき等のめっき欠陥を生じやすくなる。Si量は望ましくは0.05〜0.5質量%である。
本実施形態では、溶融めっき層及び溶融めっき浴にMgを添加してもよい。Mgの含有量を0.01〜3質量%に限定した理由は、0.01%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、3質量%を超えると、Mg添加の効果が飽和し、更に、めっき浴中のドロス量が増えるなど操業に問題が生じるためである。Mgは、MgZn相として、めっき層中に微細に分散することにより、耐食性向上に寄与する。また、Mgは、ZnCl・4Zn(OH)の生成を促進するため、めっき層中に、微細にMgZn相を分散させることにより、腐食時の亜鉛の腐食生成物が保護性の皮膜となり耐食性を向上させることが可能となる。
Mgは、耐食性を向上させるために連続めっきではよく添加される合金元素である。しかし、浸漬めっきではめっき性を明らかに低下させ不めっき等のめっき欠陥を生じやすい。本実施形態では、Siを添加してめっき反応を抑制しているため、さらに問題が生じやすくい。このため、これまではフラックス式浸漬めっきでは、2段めっきでのみMg添加が可能であった。しかし、後述するように、めっきの初期反応性が高い本発明に係るフラックスを用いることで、3質量%以下のMg添加が可能となる。浴組成の管理からは2.5質量%以下が望ましい。
溶融めっき層中には、Al、Si及びFeを含む針状あるいは塊状の化合物が分散する場合がある。このような化合物相の形状は、溶融めっき層を断面視した際に観察される形状である。このような化合物相が存在することで、溶融めっき層の厚みを厚くできるものと推測される。こうした化合物相は、めっき浴中のAl量にもよるが、鋼材のめっき浴への浸漬時間が100秒以上、より好ましくは300秒以上にすることで得ることができる。
化合物相は、溶融めっき層の厚み方向の合金層側に比較的多く分布し、溶融めっき層の表面側には比較的少なく分布する。このような分布形態となる理由は、溶融めっき層の形成時に、合金層が破壊された箇所から化合物相が成長するためと推定される。
また、化合物相の組成は、一例として、Al:50〜70質量%、Si:10〜20質量%、Fe:10〜30%、残部はZnである。また、合金層側に分布する化合物相には、微量のSnが含まれる場合がある。化合物相の化学組成は、めっき層の断面に露出させた化合物相を電子線マイクロアナライザ(EPMA)等の分析装置で元素分析して求めればよい。
塊状の化合物相の大きさは特に制限はないが、一例として、円平均相当径で0.5〜80μm程度のものであってもよい。また、針状の化合物相の長さは、10〜100μm程度であってもよい。化合物相のサイズが上記の範囲であれば、溶融めっき層を厚くする効果が充分になる。化合物相のサイズは、めっき層の断面を電子顕微鏡で観察して30個以上の化合物の円相当径または長さを測定し、その平均値を採用すればよい。厚いめっき層が得られるのであれば化合物相のサイズが上記の範囲から外れても差し支えない。
次に、合金層は、鋼材表面と溶融めっき層との間に形成される。合金層は、Al、Si、Feを主成分とし、Snを微量成分として含む。合金層は、厚さ、組成ともに均一であることが望ましいが、厚さや組成が場所によって異なっていてもよい。目安としては合金層中のSn濃度は0質量%超2質量%以下である。また、合金層の厚みは2μm以下である。このような合金層が形成されることで、溶融めっき層の密着性が向上する。合金層中のSn量が2質量%を超えると、合金層の強度が低下して溶融めっき層の密着性が低下するので好ましくない。本実施形態では鋼材に塗布するフラックス中に4価の錫化合物が含まれるため、鋼材表面の合金層には微量のSnが含まれることになる。よってSn量は0質量%超である。また、合金層の厚みが2μmを超えると、合金層が剥離しやすくなり、溶融めっき層の密着性が低下するので好ましくない。
また、鋼材表面と溶融めっき層との界面におけるSnの付着量は、0.12〜240mg/mの範囲であることが好ましい。界面におけるSnの付着量が0.12〜240mg/mの範囲にあることで、不めっきが発生しにくくなり、また、ピンホール等の欠陥が発生しにくくなる。Snの付着量は、10〜240mg/mの範囲がより好ましく、30〜150mg/mの範囲が更に好ましい。
合金層は、溶融めっき層と鋼材との界面近傍の断面を電子線マイクロアナライザ(EPMA)、グロー放電発光分析(GDS)等の分析装置で分析することで、AlとSiとSnの濃化層を特定することにより、合金層に含まれる元素の種類、Snの濃度及び厚みを計測することができる。
次に、本実施形態のめっき鋼材の製造に供されるフラックスについて説明する。
本実施形態では、フラックス成分が150〜300g/Lの濃度で水に溶解され、pHが2.0以下に調整されているフラックスを用いる。フラックス成分には、ZnCl、NaCl及びSnClと、SnClまたはSnOの何れか一方または両方と、が含有される。以下、フラックス成分について説明する。
本発明のフラックスの主成分は、ZnClである。ZnClは、鋼材表面の酸化皮膜をめっき浴中で除去するフラックスの基本成分である。フラックス成分におけるZnClの含有量は特に規定されず、他の添加成分の残部である。ただし、相対的にZnClが少ないと、酸化皮膜をめっき浴中で除去する機能が低下するので好ましくない。また、相対的にZnClが過剰だと、効果が飽和する。
NaClは、フラックスの融点を下げてめっき時の反応均一性を向上させる。フラックス成分におけるNaClの含有量は含有量は5〜14質量%である。5質量%未満では効果が充分に得られず、14質量%を超えると効果が飽和する。
SnClは、ZnClとの共存下においてめっき性を大幅に改善する効果がある。原因は明確ではないが、酸性かつ60〜80℃程度のフラックスに鋼材を浸漬した場合、鋼材表面に置換めっきして金属Snが析出することが確認されており、これがめっき反応を向上させていると考えている。フラックス成分における含有量は、1.2〜5質量%が適当である。1.2質量%未満ではSnClの添加効果が十分ではなく、また効果も不安定になる。また、5質量%を超えると効果が飽和するのみならず、不めっきが出ることもある。
SnCl及びSnOは、SnClと同様に、ZnClとの共存下で、めっき性を大幅に改善する効果がある。フラックス成分におけるSnCl及びSnOの合計量は、0.1〜1.5質量%が適当である。0.1質量%以上の添加でめっき性が大幅に改善する。1.5質量%を超えた場合も必ずしも大きな問題は発生しないが、効果は飽和しまたは低下することもあり、コスト的にも不利になる。SnClまたはSnOの一方または両方を添加することでめっき性が改善される理由は定かでないが、SnClまたはSnOの存在下で鋼材の表面がめっきされやすい状態になって、15質量%以下のAlとSiを含むような比較的反応性が穏やかなめっき浴に浸漬した場合であっても、不めっきが生じないものと推測される。
なお、SnCl、SnO以外でも、Sn(IV)化合物であれば添加することによる改善効果は予想される。例えば、塩化物以外のSn(IV)のハロゲン化塩も使用可能と考えられる。しかし、SnBrは高価であり入手性にも問題がある。このため、消耗品であるフラックスに使用する薬剤としては、コスト、入手性の点から、事実上、SnClまたはSnOに限定される。
また、フラックス成分には、NaF、KFの何れか一方または両方を合計で0質量%超2.0質量%以下の割合で含んでもよい。本実施形態の溶融めっき浴においては、めっき浴表面に薄く生成している酸化Al皮膜を除去することが有効であり、このためにはF化合物の添加が効果的である。このため、NaFまたはKFを添加してもよい。水溶液にした場合にFイオンを形成する化合物であれば他にも利用可能と考えられるが、コスト、入手性の点から事実上この2つの化合物に限定される。コスト的にも、また吸湿性が低いという点からも、NaFが有利であるが、効果としてはNaF、KFのいずれでも問題ない。
フラックス成分におけるNaF及びKFの含有量は、その一方または混合物として、0質量%超2.0質量%以下である。Fの効果が発現されるには、0.5質量%以上が好ましい。また、2.0質量%を超えてもその効果はほぼ飽和する。しかし、溶融めっき浴中のAl濃度が5%以下の場合には、Fの効果は必ずしも明確ではなく、浴組成によっては不要な場合もある。また、フラックスは塩酸酸性であるため、NaF、KFを添加したフラックスは希薄濃度の弗酸となるため、濃度は低めに設定することが操業上は望ましい。また、フラックスにFイオンを含む場合には、フラックスの腐食性が強くなるため、フラックスの容器の材質を考慮する必要もある。特にフラックスが乾燥しやすくするために、フラックスの浴温度を高く設定する場合には、フッ素樹脂等を用いる必要もある。このため、Al濃度が低い場合など状況によっては必ずしも必要でないことも考慮し、NaF、KFの添加量は0%でもよい。
また、界面活性剤を添加することにより、鋼材の前処理が完全でない場合においても、フラックスの濡れ性がよくなり、めっき性が若干ではあるが改善される。このため、反応の点からはフラックスとしては必須ではないが、安定生産の面からは必要に応じて0〜1.0%の範囲で界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、pHに影響を受けないことから非イオン性界面活性剤が望ましい。
以上の薬品を、合計量で150〜350g/Lになるように水に溶解してフラックスとして用いる。100g/L以下ではフラックスとしての効果が十分ではない。より好ましくは150g/L以上がよい。150g/L以上とすることで、フラックスの効果が安定する。また、350g/Lを超えても効果は飽和する。また、Sn化合物は高価であり、更にF濃度が高くなると環境、設備に問題が生じる可能性もあるため、必要以上の高濃度化は無意味である。上限は300g/L以下にすることをより好ましい。現実のめっき作業においては、被めっき物による水の持ち込みによりフラックス濃度は徐々に低下する傾向にあるため、フラックス成分の濃度には余裕を持たせるべきであり、250g/L以上300g/L以下の濃度が望ましい。
SnClまたはSnClを含むフラックスの水溶液は白濁するため、これを完全に溶解するにはpHを2.0以下程度にする必要がある。pHは塩酸により調整すればよい。
次に、本実施形態のめっき鋼材の製造方法について説明する。
本実施形態のめっき鋼材の製造方法は、上記のフラックスを鋼材に塗布して乾燥させ、次いで、鋼材を溶融めっき浴に浸漬して引き上げる。本実施形態のめっき鋼材の製造方法は、フラックスを用いた一段めっき法を採用する。
フラックスを塗布する前の鋼材表面は、脱脂、酸洗によって表面清浄化させることが好ましい。必要に応じて、ショットブラスト処理、サンドブラスト処理などを組み合わせてもよい。
酸洗後の鋼材は、フラックスと同等温度の熱水により洗浄された後、フラックス浴に浸漬される。フラックス浴の温度は、40℃以上が必要なことが実験的に確認されている。これは、Snの置換めっきに必要なためと考えている。また、容器の材質、HCl蒸気の発生などの設備上の問題があるため、90℃程度がフラックス浴の温度の事実上の上限となる。フラックスを乾燥させるために鋼材を加温することを考慮すると、60〜80℃程度が望ましい。浸漬時間は、浸漬する鋼材の熱容量、温度等にも影響されるが、通常は数秒から最大60秒でよい。
鋼材は、フラックス浴から引き上げられた後に、乾燥炉、必要に応じて誘導加熱等も用いて加熱し、付着したフラックスを十分に乾燥させる。この際、鋼材表面が酸化しないように、加熱温度は最大でも250℃程度にすることが望ましい。
このようにしてフラックス処理をした鋼材を、溶融めっき浴に浸漬する。溶融めっき浴の組成は、Al:2〜15質量%、Si:0.01〜1.0質量%を含み、残部がZn及び不純物よりなる。溶融めっき浴にはMgを0.01〜3質量%の範囲で添加してもよい。めっき浴温度、浸漬速度、浸漬時間、引き上げ速度等は、鋼材の形状や鋼材を持ち上げる起重機等の設備制約により半ば自動的に決定される要素が大きい。
例えば、厚さ10mm以上の鋼板から構成され、熱容量が大きな鋼材にめっきをする場合、浴温は高めに設定し、浸漬速度は小さいほうが望ましい。このため、起重機等によっては鋼材を溶融めっき浴に断続的に下降・浸漬させることで、長時間浸漬することになる。このため、吊り下げた際の最下部と最上部では場合によっては分単位の浸漬時間の差異が生じることもありうる。また、鋼材とめっき浴の熱容量によっては、浴温度は大きく低下する。このように、めっき浴に浸漬する条件を反応の都合から厳密に設定することは事実上不可能であるため、特に規定しない。
ただし、めっき浴の温度は、前述のように鋼材の形状、材質に影響しないことを条件とすると、浸漬Znめっきの実績から浴温は最高でも500℃程度にすることが望ましい。
また、めっき浴への鋼材の浸漬時間は、少なくとも100秒以上、より好ましくは300秒以上とする。浸漬時間を100秒以上にすることで、合金層の一部が破壊されて化合物相が成長し、めっき付着量を大きくすることができる。浸漬時間の上限は1500秒以下がよい。浸漬時間が長すぎると、反応が制御できなくなり所望のめっき層を得ることが困難になる。
なお、めっき浴中のSi濃度が適切に設定されていれば、めっき終了後の冷却〜凝固の過程で合金化反応が抑制され、所謂めっき焼けが生じる心配はない。このため、特に冷却については規定しない。従って、表面外観が劣化しない範囲で、ハンドリング等の生産性向上の観点から、ミスト等により冷却し凝固を促進することや、めっき後の鋼材を水没して冷却しても差し支えない。
ZnAl合金の浸漬めっきでは、鋼材の性状が様々であるため、反応温度や時間を厳格に制御してZn及びAlの反応を制御することは容易ではない。このため、一般に激しいとされるFeとAlの反応を抑制して平滑で光沢あるめっきを得るたには、Siを添加して反応を抑制することが必須である。添加されたSiは、めっき直後に鋼板表面に生成したFeAl合金層中に拡散侵入し、FeAl反応の進行を抑制する。これにより、Fe、Al及びSiを主体とする、2μm以下の極薄い合金層が表層めっき層と鋼材の界面に生成する。しかし、Si添加は反応性を低下させるものであり、不めっきなどのトラフルが生じやすいため、必要最小限にすることが求められる。
更に、本実施形態のフラックスを用いて鋼材のめっき前処理を行った場合、鋼材表面には微量のSnが付着する。更にこのフラックス処理後の鋼材を、Siを含むめっき浴で浸漬めっきすると、一般の浸漬めっきと異なり、鋼材表面には薄い合金層が形成されるため、Snはほとんど溶出することなくAl、Si、Feを主成分とする合金層中に閉じ込められた状態となる。この合金層は薄く、長時間の浸漬では部分的に破壊されることがあり、この場合はFeが溶出してめっき浴中でAl、Siと反応して針状または塊状のAl、Si、Feを主成分とする化合物相を生成する。この化合物相の生成によって、溶融めっき層をより厚くすることができる。
以上のようにして、本実施形態のめっき鋼材を製造する。
本実施形態のめっき鋼材によれば、鋼材の表面に、Al:2〜15質量%、Si:0.01〜1.0質量%を含み、残部がZn及び不純物よりなる溶融めっき層と、微量成分として2質量%以下のSnを含み、Al、Si、Feを主成分とする厚さ2μm以下の合金層とを有し、かつ界面におけるSnの付着量が0.12〜240mg/mの範囲なので、外観性、耐食性及び加工性を向上できる。
また、溶融めっき層中に、Al、Si及びFeを含み、かつ断面視で針状あるいは塊状の化合物が分散することで、溶融めっき層を厚くすることができ、耐食性をより向上できる。
また、本実施形態のフラックスによれば、ZnCl、NaCl、SnClを含み、更に、SnClまたはSnOの何れか一方または両方を含むので、めっき前の鋼材の表面状態を最適な状態にすることができる。
更に、本実施形態のめっき鋼材の製造方法によれば、フラックスを鋼材に塗布して乾燥させ、次いで、鋼材を、Al:2〜15質量%、Si:0.01〜1.0質量%を含み、残部がZnよりなる溶融めっき浴に浸漬して引き上げるので、外観性、耐食性及び加工性に優れためっき鋼材を製造できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(実験例1)
鋼材は、200mm×100mm×1.6mmの熱延鋼板の酸洗板、または黒皮付鋼板を用いた。酸洗板は、市販のアルカリ性脱脂剤により表面洗浄後、50℃の10%HCl水溶液に約1分間浸漬して酸洗した。黒皮付鋼板は、市販のアルカリ性脱脂剤により表面洗浄後、50℃の10%HCl水溶液に約10分間浸漬して表面のスケールを除去した。これらの鋼板を、60℃の熱水で洗浄後、表1に示す組成の全濃度250g/L、60℃のフラックスに約1分間浸漬し、200℃の加熱炉で大気雰囲気下5分間加熱乾燥した。この鋼板を、Zn−Al浴をベースとする480℃のめっき浴に、300秒浸漬してめっきした後、引き上げ、自然放冷し、めっきが完全に凝固した後に水冷した。このようにして、各種のめっき鋼材を製造した。
めっき層の外観は、めっき欠陥の有無・光沢・凹凸・模様等を目視で判定した。なお、めっき欠陥がある試験片は耐食性・加工性の評価を実施しなかった。合金層の厚さ、組成はグロー放電発光分析で調べた。Snの付着量は、めっき層・合金層をすべて塩酸で溶解し、溶液をプラズマ分光分析することで調べた。
めっき層の耐食性は、耐食性試験は、M609−61で規定される乾湿繰り返し腐食促進試験(通称JASO試験)で行った。6日間(18サイクル)の試験−観察を繰り返し、赤錆発生までの期間で評価した。
めっき層の加工性は、薄板用の曲げ試験機で180度曲げた後、元の状態に戻し、曲げ部の表裏の状態を観察した。
作成しためっき鋼材の外観、耐食性及び加工性を評価した結果を表2に示す。また、化合物相の一例を図1及び図2に示す。図1における符号Aは鋼材であり、符号Bは溶融めっき層であり、符号Cは界面合金層である。図1及び図2の写真では界面合金層が確認しにくいが、後述するようにGDS分析によって容易に確認可能である。図1においては、針状の化合物相1が観察されている。図1には塊状の化合物相も確認できる。また、図2では、塊状の化合物相2が確認可能である。これらの化合物相は、Al:50〜70質量%、Si:10〜20質量%、Fe:10〜30%、残部Znの組成を有していた。
また、表2から、めっき浴の組成が本発明の範囲において良好なめっきが得られることが確認された。
次に、プラズマ分光分析によってめっき層中にSnが検出されためっき鋼材について、GDSによるめっき層の深さ方向の元素分析を行った。結果を図3〜4に示す。図3〜4において、Zn強度を示す曲線は、めっき層中のZnに対応するものであり、Fe強度を示す曲線は、鋼材を構成するFeに対応するものである。Znの曲線とFeの曲線が交差するあたりがめっき層と鋼材との界面であり、この界面近傍においてSn強度がピークを示していることがわかる。したがって、Snは界面合金層に含まれていることがわかる。めっき層からSnが検出された本発明例のめっき鋼材はいずれも、図3、図4と同様の結果になる。実験例2、3でも同様である。
一方、No.6は、Si量が少なく、AlとFeとの反応を抑制できずにAlFe合金層が成長し、めっきの外観及び加工性が低下し、耐食性も低下した。
No.7は、Si量が過剰なため、不めっきが起きて明らかに外観性が低下した。そのため、合金層、Sn付着量及び耐食性の評価は実施しなかった。
No.8は、Mg量が過剰なため、不めっきが多発してめっき明らかに外観が悪化した。そのため、合金層、Sn付着量及び耐食性の評価は実施しなかった。
No.9は、Al量が少ないため、FeZn合金が生成し、耐食性が低下した。また、加工性、外観性にも問題があった。そのため、合金層中のSn濃度及びSn付着量の評価は実施しなかった。
No.10は、Al量が少ない従来の浸漬亜鉛めっきであり、加工性及び耐食性がともに実施例に比べて劣っていた。
(実験例2)
鋼材として、200mm×100mm×1.6mmの熱延鋼板(黒皮付鋼板)を用いた。熱延鋼板を市販のアルカリ性脱脂剤により表面洗浄後、50℃の10%HCl水溶液に約10分間浸漬して表面のスケールを除去した。酸洗後、この鋼板を、60℃の熱水で洗浄後、所定の組成に調整した60℃のフラックスに約1分間浸漬し、200℃の加熱炉で大気雰囲気下5分間加熱乾燥した。この鋼板を、Zn−11%Al−0.3%Si−0.5%Mg組成の470℃のめっき浴に、100秒〜600秒浸漬してめっきした後、引き上げ、自然放冷し、めっきが完全に凝固した後に水冷した。このようにして、各種のめっき鋼材を製造した。
このようにして作成しためっき鋼材の外観、耐食性及び加工性を評価した結果を表3に示す。評価方法は実験例1と同じである。この表3から、フラックスの組成、めっき浴の組成が本発明の範囲にある場合に、良好なめっきが得られることが確認された。
No.24は、フラックスの濃度が低すぎたため、Snを含む合金層が形成されず、ピンホールが多数発生し、外観が大幅に低下した。このため、耐食性及び加工性の評価は実施しなかった。
No.25は、フラックスにSnCl及びSnOが含まれなかったため、Snを含む合金層が形成されず、不めっきが多数発生し、外観が大幅に低下した。このため、耐食性及び加工性の評価は実施しなかった。
No.26は、フラックス中のSnO量が過剰のため、めっき外観が悪化し、耐食性及び加工性も低下した。
No.27は、フラックス中のSnCl量が過剰のため、鋼材にSnが過剰に付着し、めっき外観が悪化し、耐食性及び加工性も低下した。
No.28〜31は、フラックス中にSnClを含まないために、めっき外観が大幅に悪化した。このため、合金層、Sn付着量、耐食性及び加工性の評価は実施しなかった。
No.32は、NaCl量が過剰のため、めっき外観が悪化した。また、鋼材に対するSnの付着量も増大した。
(実験例3)
鋼材として、200mm×100mm×4.2mmの熱延鋼板(黒皮付鋼板)を用いた。熱延鋼板を市販のアルカリ性脱脂剤により表面洗浄後、50℃の10%HCl水溶液に約10分間浸漬して表面のスケールを除去した。酸洗後、この鋼板を、60℃の熱水で洗浄後、所定の組成に調整した60℃のフラックスに約1分間浸漬し、200℃の加熱炉で大気雰囲気下4分間加熱乾燥した。この鋼板を、Zn−4.5%Al−0.1%Si−1%Mg組成の450℃のめっき浴に、300秒浸漬してめっきした後、引き上げ、自然放冷し、めっきが完全に凝固した後に水冷した。フラックスの界面活性剤は、ポリオキシエチレン型の非イオン性界面活性剤を用いた。このようにして、各種のめっき鋼材を製造した。
このようにして作成しためっき鋼材の外観、耐食性及び加工性を評価した結果を表4に示す。評価方法は実験例1と同じである。この表4から、NaFがこのめっき条件では任意の添加成分であること、SnClまたはSnOがめっき性の改善に必須であることがわかる。SnClまたはSnOが含まれない比較例は、Snを含む合金層が形成されず、ピンホールや不めっきが発生してめっき外観が大幅に低下した。
1…針状の化合物相、2…塊状の化合物相、A…鋼材、B…溶融めっき層、C…界面合金層。

Claims (8)

  1. 鋼材の表面に、
    Al:2〜15質量%、
    Si:0.01〜1.0質量%
    を含み、残部がZn及び不純物よりなる溶融めっき層と、
    前記溶融めっき層と前記鋼材の表面との界面に、微量成分として2質量%以下のSnを含み、Al、Si、Feを主成分とする厚さ2μm以下の合金層と、を有し、
    前記界面におけるSnの付着量が0.12〜240mg/mの範囲であることを特徴とするめっき鋼材。
  2. 前記溶融めっき層中に、Al、Si及びFeを含み、かつ断面視で針状あるいは塊状の化合物が分散していることを特徴とする請求項1記載のめっき鋼材。
  3. 前記溶融めっき層に更に、Mgが0.01〜3質量%の範囲で含有されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のめっき鋼材。
  4. NaClを5〜14質量%、SnClを1.2〜5質量%、SnClまたはSnOの何れか一方または両方を合計で0.1〜1.5質量%、残部がZnClの組成からなるフラックス成分が、150〜300g/Lの濃度で水に溶解され、pHが2.0以下に調整されていることを特徴とするフラックス。
  5. 前記フラックス成分が更に、NaF、KFの何れか一方または両方を合計で0質量%超2.0質量%以下の割合で含むことを特徴とする請求項4に記載のフラックス。
  6. 前記フラックス成分が更に、界面活性剤を0質量%超1.0質量%以下の割合で含む請求項4または請求項5に記載のフラックス。
  7. 請求項4乃至請求項6の何れか一項に記載のフラックスを鋼材に塗布して乾燥させ、
    次いで、前記鋼材を、Al:2〜15質量%、Si:0.01〜1.0質量%を含み、残部がZnよりなる溶融めっき浴に浸漬して引き上げることを特徴とする、めっき鋼材の製造方法。
  8. 前記溶融めっき浴に更に、Mgが0.01〜3質量%の範囲で含有されることを特徴とする請求項7に記載のめっき鋼材の製造方法。
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