JP2016533353A - ヘモフィルス・パラスイスワクチン血清型4型 - Google Patents

ヘモフィルス・パラスイスワクチン血清型4型 Download PDF

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Abstract

本発明は、不活化ワクチンとして豚に投与したとき防御免疫応答を引き起こすことができる、血清型4型に対するヘモフィルス・パラスイスワクチンである。本発明はまた、a)ヘモフィルス・パラスイス感染症から豚を守る、ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対する免疫応答を引き起こすことができる1以上の細胞をクローン増殖させ、b)ワクチンとしての豚への投与に適した形態に前記細胞の免疫学的有効量と獣医学的に許容される担体とを組み合わせ、c)不活化ワクチンとして投与することによって、ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対してブタ(イノシシ科動物)にワクチン接種する方法である。細胞培養物は病原性親株由来である。

Description

本発明はヘモフィルス・パラスイスワクチンに関する。
ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)は、γ−プロテオバクテリアの1つであり、パスツレラ科(Pasteurellaceae)に分類される。H.パラスイス(H. parasuis)は、非溶血性ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性グラム陰性桿菌である(Biberstenia and White, 1969; Nicolet 1992)。H.パラスイスは、健康な豚の上気道の片利共生生物である。これはまた重要な病原体であり、グレーサー病の原因菌でもある。この疾患は、一般的に、線維性多発性漿膜炎、多発性関節炎、髄膜炎を特徴とし、時には急性肺炎および敗血症を引き起こす(Amano et al., 1994; Peet et al., 1983; Little, 1970)。この疾患は、米国および世界中のブタ(イノシシ科動物)産業においてブタの大量死を引き起こす主な原因の1つであり、大きな経済的損失を生じている。
非毒性株は、上気道において毒性株よりもより優勢であることが最近の研究によって明らかにされた。しかしながら、毒性株による全身性感染症に対しては保護されていない。
これまでに、熱安定抗原およびゲル拡散の試験データに基づいて、H.パラスイスの15の血清型が同定されている。しかしながら、野外分離株は高い割合で分類不能型(non-typable)である(Kielstein and Rapp-Gabrielson, 1992)。種々の血清型のH.パラスイスは、高毒性から無毒性までの種々の毒性を示す。確認されている15の血清型の内、血清型5型株は、他の血清型株よりも世界中でより頻繁に単離されている。血清型5型株はまた、豚における呼吸器感染症および全身性感染症からもしばしば単離されている(Rapp-Gabrielson and Gabrielson, 1992; Blackall et al., 1996; Oliveira, 2003)。さらにまた、最近、この株は、世界の豚産業における新生児死亡の主な原因の1つとしても明らかになっている。
ニューポート・ラボラトリーズ(Newport Laboratories)は、高毒性血清型5型北米野外分離株を用いて、H.パラスイス感染症に対する市販ワクチン(ParaSail)を開発した。このワクチンは、ブタ生産者の推奨に従って使用するとき、アメリカ合衆国内のH.パラスイス感染症を軽減するのに極めて有効である。しかしながら、最近、このワクチンを用いた米国中西部のいくつかの飼育場で重篤な肺炎の集団発生が報告された。2011年〜2012年の集団発生中にニューポート・ラボラトリーズが採取した組織試料からH.パラスイス血清型4型株の高毒性分離株が得られた。その時点では、集団発生の理由は知られていなかったが、内部チャレンジ(internal challenge)試験では、ParaSailワクチンは、1用量当たり109CFUを用いるとき、H.パラスイス血清型4型株から豚を守ることが示されていた。
パスツレラ科のその他のメンバーと同様に、H.パラスイスは、多数の毒性および毒性関連遺伝子を有している。これらには、リポ多糖(LPS)、莢膜多糖、アドヘジン/フィムブリエ、外膜タンパク質、ノイラミニダーゼ、鉄および重金属の取り込みおよび輸送システムが含まれる(Amano et al., 1994; Biberstein, 1990; Munch et al., 1992; Zucker et al.,1996; Morozumi and Nicolet, 1986)。これらの候補毒性因子の基礎をなす分子的基盤はいまだに十分には解明されていない。しかしながら、複雑な遺伝子制御機構が関与していると考えられる。H.パラスイス株は、主として組換えまたは遺伝子の水平伝播による分子レベルでの高い不均一性を示す。2011年〜2012年中西部大発生の背後における分子レベルでの考えられる理由を解明するために、我々は、2つのH.パラスイス血清型4型分離株のゲノムを配列決定し、我々のParasailワクチン株(参照として使用;配列番号1)に対する三元(3-way)比較ゲノム解析を行った。2つのH.パラスイス血清型4型分離株は、ニューポート・ラボラトリーズケースナンバー12-1322(配列番号2; GenBankアクセッション番号JJNQ00000000; ST4-1)および11-1398-2(配列番号3; GenBankアクセッション番号JJNR00000000; ST4-2)から入手した。
制御された暴露後の感染防御免疫に関与する機構も感染防御免疫を付与する抗原の実体も現時点では明らかではないが、このような暴露によって感染防御免疫を誘導しうることが知られている。
豚肉産業において、疾患、特にヘモフィルス・パラスイス血清型4型の予防に役立つことができる安全かつ有効な製品が緊急に求められている。
一側面において、本発明は、ヘモフィルス・パラスイス(血清型4型)に対するワクチンであって、獣医学的に許容される担体および、ヘモフィルス・パラスイス感染症から豚を守る免疫応答を引き起こすことができる死滅したバクテリンまたは細菌細胞培養物の免疫学的有効量を含む前記ワクチンである。他の側面において、本発明は、バクテリンまたは細菌細胞培養物のDNA配列が配列番号2を含むワクチンである。他の側面において、本発明は、バクテリンまたは細菌細胞培養物のDNA配列が配列番号3を含むワクチンである。他の側面において、本発明のワクチンは、ヘモフィルス・パラスイス(血清型5型)に対するParaSailワクチンを含む。
他の実施形態において、本発明は、ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対してブタにワクチン接種する方法であって、a)ヘモフィルス・パラスイス感染症から豚を守る、ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対する免疫応答を引き起こすことができる1以上の細胞をクローン増殖させ、b)ワクチンとしての豚への投与に適した形態に前記細胞の免疫学的有効量と獣医学的に許容される担体とを組み合わせ、c)死滅ワクチンとして投与する段階を含む前記方法である。一側面において、死滅ワクチンでブタにワクチン接種する方法は、配列番号2のDNA配列を含む。他の側面において、死滅ワクチンでブタにワクチン接種する方法は、配列番号3のDNA配列を含む。さらに他の側面において、ブタにワクチン接種する方法は、ヘモフィルス・パラスイス(血清型5型)に対するParasailワクチンの投与を含む。
ParaSailワクチン(配列番号1)と比較した、H.パラスイスST4分離株12-1322(すなわちST4-1;配列番号2)および11-1398-2(すなわちST4-2;配列番号3)に特有な遺伝子の数を示すベン図である。
発明の詳細な説明
出願人は、ヘモフィルス・パラスイス(血清型5型)に対する市販Parasailワクチンが、ヘモフィルス・パラスイス血清型4型(すなわちST4)の変異株に対してブタを十分にワクチン接種することができないことを見出した。本明細書において、ヘモフィルス・パラスイスST4感染症から豚を守る免疫応答を引き起こすことができる不活化ワクチンが提供される。
本発明はさらに、ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)から豚を守るワクチンを製造する方法であって、死滅ワクチンとして投与するときヘモフィルス・パラスイス感染症から豚を守る、ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対する免疫応答を引き起こすことができる1以上の細胞を選択し、それをクローン増殖させ、生ワクチンとしての豚への投与に適した形態に前記細胞の免疫学的有効量と獣医学的に許容される担体とを組み合わせることを含む前記方法を提供する。
ParaSail単独で、または自家バクテリンと組み合わせてワクチン接種された豚が、ヘモフィルス・パラスイス(H.パラスイス)4型(11-1398-2;配列番号3)に関連する疾患から守られるかどうかを決定することを本研究の目的とした。本研究には、3つの群が含まれた;群A(n=15)には、ラベル指示のParaSail 1mLおよび自家4型バクテリンを投与し、群B(n=15)には、ラベル指示のParaSail 1mLを投与し、次いで2週間後に自家4型バクテリン1mLを投与し、群C(n=14)には、ラベル指示のParaSail 1mL(QuilおよびTrigenをアジュバントとして含む)を投与した。最終群(D)(n=13)は、非ワクチン接種対照群とした。最初のワクチン接種後40日目に、すべての登録豚にH.パラスイス4型野外種(11-1398-2;配列番号3)をチャレンジした。チャレンジした動物を疾患の臨床徴候および死に関して毎日観察した。チャレンジ後5日目に、すべての生存動物を犠牲にし、剖検した。H.パラスイスに特有の病変を有する動物を記録した。
ParaSailは、自家4型と組み合わせたとき、ParaSail単独で投与したときよりもより効果的に守った。さらにまた、同日に投与したParasailおよびH.パラスイス4型バクテリンは、2週間後と比較して、より効果的な保護を提供した。
目的
ラベル指示に従って投与したParaSailおよび/または、自家バクテリンと組み合わせて投与したParaSailが、H.パラスイス4型野外分離株(11-1398-2;配列番号3)に関連する疾患から守るかどうかを決定することを本研究の目的とした。

材料および方法
Parasailワクチンには、発売されているParaSailロット(15B030710)を用いた。このロットは、ニューポート・ラボラトリーズの品質管理施設においてUSDAの要求するすべての試験を通過した。このロットの効力は、1用量当たり8.17logであった。
自家ワクチン:分離株11-1398-2(配列番号3)の生培養物を増殖させ、ヘモフィルス・パラスイス抗原製造のためのニューポート・ラボラトリーズの標準業務手順書(Standard Operating Procedures)に従ってこの培養物を不活化することによって同種の死滅ワクチンを作成した。この効力は、1用量当たりおおよそ8.4logであった。
動物:Midwest Research Swine(プリンストン)から、17〜21日齢の豚67頭を購入した。ワクチン接種時点ですべての豚が健康で正常であった。
前チャレンジ:一群10頭の豚を別の部屋に収容し、試験チャレンジの1週間前にチャレンジした。この群は、適切なチャレンジ力価の決定を補助するために用いた。豚5頭には、IP 1mLおよびIV 1mL(培養物2.45log)を投与した。さらに豚5頭には、IP 1mLおよびIV 1mL(培養物3.4log)を投与した。疾患の臨床徴候および死に関して動物を5日間観察した。結果を表1にまとめる。
表1
Figure 2016533353
前チャレンジの結果に基づいて、おおよそ2.45logのチャレンジ力価が選択された。
チャレンジ:チャレンジ株には、Prestage Farmsから得た野外分離株を用いた。この株は、MVP Lavoratoriesにおいてブタの肺組織から単離され、H.パラスイス4型であることが決定された。チャレンジ日に、すべての豚にIV 1mLおよびIP 1mL(培養物2.78log)を投与した。表2にこのイベントのスケジュールをまとめた。
表2
Figure 2016533353
処置群:
A.ParaSail+自家4型:頸部の両側に1mLを同時に投与する(n=15)
B.ParaSail+自家4型:0日目にParaSailを投与し、12日目に自家を投与する(n=15)
C.ParaSailのみ(QuilおよびTrigenをアジュバントとして含む)(1用量)(n=14)
D.対照(n=13)。
観察:
跛行、努力呼吸、嘔吐および突然死を含むH.パラスイスに関連する疾患の臨床徴候に関して、チャレンジ後に豚を毎日観察した。処置群の割り付けを盲検化された研究員がすべての観察を行ない、記録した。人道上の理由から、起き上がることのできない豚はすべて安楽死させた。

剖検:
試験観察期間中に死亡が認められたかまたは安楽死させたすべての豚は、腹膜炎、胸膜炎、および/または心膜炎を含む体内病変を有していることが想定された。チャレンジ後5日目に、すべての生存豚を安楽死させ、剖検した。腹膜炎、胸膜炎、心膜炎および腫脹関節を含む肉眼的病変の存在を記録した。

解析
SASソフトウェアを用い、Tammy Kolanderによって統計解析を行った。
ワクチン接種群と対照群との間で、臨床徴候、死亡および病変の存在に関してt検定およびTukeyのHSD検定(全対多重比較)を用いて比較した。表3に臨床徴候、死亡および視覚的病変に関して採取した生データをまとめる。
表3
Figure 2016533353
統計解析によって、ワクチン接種された豚と対照との間に下記の事項が結論された:
臨床徴候(死を含む):t検定によって、対照は、すべての他の処置とは大きく異なっているが、他の処置(A〜D)のどちらも、互いに大きくは異なっていないことが見いだされた。Tukeyの全対多重比較によって、対照と群Aだけが互いに大きく異なっているが、任意の他の組み合わせの間には違いがないことが見いだされた。
観察中の死亡:t検定によって、対照(群D)と群Bの間および対照(群D)と群Aの間に有意差が認められた。他の群のいずれの間にも有意差は認められなかった。Tukeyの全対多重比較によって、群Aと対照との間に有意差が認められた。任意の他の群の間に違いは認められなかった。
剖検時の病変(および観察中の死亡):t検定によって、対照と群A〜Cの間に有意差が認められたが、群A〜Cの間では有意差は認められなかった。Tukeyの全対多重比較によって、対照と群Aの間および対照と群Bの間に有意差が認められた。
H.パラスイスによって引き起こされる疾患の存在に関する3つのパラメータ(観察中の臨床徴候、観察中の死亡および剖検時の病変の存在)を調査した。各郡間の各パラメータを比較するために、2つの異なる統計的検定を行った。これらの結果は、Parasil製剤に加えてH.パラスイス4型バクテリンを投与することの利点を明確に示している。H.パラスイス4型バクテリンを加えることによって、肺病変、臨床徴候は顕著に減少し、死亡による喪失もまた減少している。
ゲノムDNA配列決定
細菌ゲノムDNAの単離キット(Edge Biosystems社)を用いて、2つのH.パラスイスST4野外種(12-1322;配列番号2および11-1398-2;配列番号3)ならびにParaSailワクチン(血清型5、ST5;配列番号1)からのゲノムDNAを単離し、Illumina HiSeqペアエンド50(PE50)によって配列決定した。

配列解析
H.パラスイスParaSailワクチンおよびGenbank ST5分離株SH0165(アクセッション番号CP001321.1)を参照ゲノムとして用いた。GenBank分離株のゲノム配列をダウンロードし、ABACAS(http://abacas.sourceforge.net/)を用いて、SH0165のコンティグをアラインメントし、コンティグの推定上のギャップサイズ、向きおよび順番を同定した。次いで、カスタムPythonスクリプトを用いてコンティグをつなぎ合わせ、ギャップを複数のNで埋め、アノテーションをつけた。得られた配列にさらなるアノテーションをつけてギャップを示し、もともとのコンティグにラベル付けした。参照に対してアラインメントすることができなかったコンティグは、つなげた配列の末端に含めた。
カスタムPythonスクリプトを用いて、読み取り値のクオリティ値によるフィルタリングを行った。低クオリティの読み取り値を除去した(5以上の塩基を含み、PHREDクオリティが20未満の任意の読み取り値を低クオリティとみなした)。カバレッジが大変高いため、重複読み取り値(duplicate read)が予想され、重複が少なくとも2つある場合にのみ読み取り値を残した。各読み取り値に関して、最大10の重複を残した。クオリティフィルタリングに続いて、SH0165に対して読み取り値をマッピングし、つなぎ合わせたコンティグのセットをアラインメントし、SH0165を参照に用いて方向付けした。Bowtie2 v 2.0.6を用いて読み取り値をマッピングした。各分離株の読み取り値を、bowtie2を用い、デフォルトパラメータによってH.パラスイスParaSailワクチン(HSP_ref)に対してマッピングした。次いで、カスタムスクリプトを用い、多様にマッピングされ、MAPQが10未満である読み取り値を除去した。
次いで、バリアントをコールするために、Bowtie2からの配列のアラインメント/マップ(SAM)出力を、SAMtoolsパッケージを用いてさらに解析した。次いで、さらに、バリアントがゲノム内のそれらの位置に基づいてアノテーションされた、Rで書かれたカスタムスクリプトを用いて得られたバリアントコールを解析した。また、カバレッジの深さに基づいてバリアントをフィルタリングし、SAMtoolsによってその遺伝子型クオリティを記録した。また、マッピング結果に基づいてコンセンサス配列を作成するためにもSAMtoolsを用いた。この配列は参照配列を用いてアノテーションされ、カスタムスクリプトおよびBioPythonを用いて、Artemis適合性に関してGenbankファイルとしてフォーマットされた。
Bowtie2によって参照に対してマッピングされることができなかった読み取り値(読み取り値の〜10%からなる)を同定し、Roche GsAssembler(Newbler)v2.6を用いてアセンブルした。アセンブリは、S1322およびS1398のそれぞれに関して150および190Kbの全長を有しており、149および194コンティグからなっていた。アセンブルしたコンティグにおける遺伝子を予測するために遺伝子予測プログラムProdigal v2.6を用いた。次いで、これらの遺伝子に、ソフトウェアツールBLANNOTATORを用いて推定のアノテーションを付与した。
一塩基多型(SNP)およびコンセンサスコール
“SAMTools mpileup”パイプラインを用いてSNPを同定し、次いでカスタムRスクリプトを用いてフィルタリングおよびアノテーションを行った。前記3株にわたってSNPを同定した。

遺伝子カバレッジ
samtoolsを用いて、参照における各位置に関してマッピングカバレッジを算出した。次いで、遺伝子アノテーション情報を用いて、各遺伝子に関してカバレッジを有する塩基の百分率を算出した。塩基の80%未満しかカバレッジを有しない遺伝子は、アブセント(absent)とコールした。

遺伝子カバレッジおよび全体マッピング
3つすべての分離株に対して約2328の遺伝子が共通であった。83遺伝子がparasailワクチン(配列番号1)に特有であり、48遺伝子が12-1322(配列番号2)に特有であり、26遺伝子が11-1398-2(配列番号3)に特有であった。図1を参照のこと。
5以上の塩基が20未満のQ値を有する読み取り値を除去するインハウスのスクリプトを用いて、クオリティおよびIllumina TruSeqアダプターに関して読み取り値をフィルタリングした。我々は、それぞれ、分離株11-1398-2に関して255xカバレッジ、12-1322に関して300xカバレッジを得た。両方のH.パラスイスST4分離株を参照Parasailワクチンに対して〜90%マッピングした。
H.パラスイスST4株は、UDP-グルコース-4-エピメラーゼなどの酵素、毒素抗毒素系および多数の仮想タンパク質を欠いている。
外膜タンパク質(OMP)およびリポオリゴ糖(LOS)構造を変化させる注目すべき酵素は、シアリルトランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、多糖生合成タンパク質capD、スポアコート多糖生合成タンパク質Cおよび多糖輸送(polysaccharide export)タンパク質である。これらのタンパク質は血清型決定、免疫回避に関与し、毒性因子として作用する。さらに、H.パラスイスST4-1(すなわち配列番号2)およびST4-2(すなわち配列番号3)は、ニューポート・ラボラトリーズH.パラスイスST5野生型において見いだされた他の毒性および関連遺伝子をコードする。H.パラスイスST5および他の病原菌と比較したこれらのタンパク質および遺伝子のそれぞれの機能的意義を以下に述べる。

シアリルトランスフェラーゼ
LOSのシアリル化は、抗体結合を阻害し、細菌の血清耐性を高めることによる細菌毒性因子としての関与が示唆されている。α-2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、パスツレラ科に属するナイセリア・ゴノローエ(Neisseria gonorrhoeae)、ヘモフイルス・デュクレイイ(Haemophilus ducreyi)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophillus influenzae)およびヒストフィルス・ソムニ(Histophilus somni)などの病原菌のメンバーにおけるLOS生合成に関与している(Vimr and Lichtensteiger 2002; Inzana et al., 2002)。シアリル化LOSは、その分子模倣によって宿主の免疫回避に働く。さらにまた、病原菌は、宿主生来の防御機構を避けるために、ガラクトースへのα-2,3結合または、ガラクトースへのα-2,6結合またはN-アセチルガラクトサミンなどの結合特異的シアリルトランスフェラーゼを、そのLOSをシアリル化するために用いる(Inzana et al., 2002)。シアリル化LOSは、TLR-4シグナル伝達経路を阻害することによって、マクロファージからのサイトカイン応答の誘導を顕著に抑制し、それがまた、脱シアリル化LOSよりも転写因子NF-κBの誘導を顕著に抑制することが推定されている(Vimr et al., 2000; Severi et al., 2007)。
以前の報告書は、シアリルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(lsgB)が毒性H.パラスイス株においてのみ存在することを指摘しているが、この遺伝子もまた、lsgBを欠く株よりも血清による致死および肺胞マクロファージによる食作用に対して高い耐性を示す(ref)。しかしながら、変異株H.パラスイスST4に感染した豚は、感染症の結果として、“サイトカインストーム”を示唆する急性肺炎および敗血症の徴候を示した。さらにまた、組織試料から純粋なH.パラスイスST4培養物が得られた。マウスに脱シアリル化P.ムルトシダ(P. multocida)変異株を注入したとき、すべてのマウスは、活発な免疫応答を示唆する敗血症によって48時間以内に死亡した。他方では、シアリル化(野生型)P.ムルトシダを注入されたマウスは死亡せず、注射部位に腫れを認めたのみであった(ニューポート・ラボラトリーズ内部報告書)。
H.パラスイスST4およびST5は、シアル酸のデノボ生合成を欠いているが、そのゲノムは、2つのトリパタイトATP非依存ペリプラズムトランスポーター、Neu5Ac TARP(HPM_1229、HPM_0026)、TRAP透過酵素(HPM_0027)ならびにCMP-Neu5Ac合成酵素遺伝子(HPM_0608)およびアシルノイラミン酸シチジリルトランスフェラーゼ(HPM_1673)をコードし、これは、H.インフルエンザ(H. influenza)に類似したシアル酸スカベンジ機構およびCMP-Neu5Acの合成を示唆している。
変異株H.パラスイスST4は、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼを欠いているため、LOSに結合されたシアル酸の量は、ST5のそれよりは少ないであろうと我々は仮定した。細胞をノイラミニダーゼで処理した後、LOSに結合されたシアル酸の量を測定した。変異株H.パラスイスST4株は、ST5野生型と比較して、LOSに結合したシアル酸残基が顕著に少なかった(データは示さず)。これらの結果は、H.パラスイスの毒性にシアル酸が必要であるという現行のドグマと矛盾する。チャレンジ試験(15,3週齢子豚)に変異株ST4-1(すなわち配列番号2)を用いたとき、0%の死亡率を示した対照と比較して、54%が臨床徴候を示し、死亡したが、このことは、LOSのシアリル化が、毒性に必要ではないことを明確に示唆している。変異株H.パラスイスST4株は、宿主の免疫応答を破壊し、病因を促進する他の毒性因子を有している。これらの毒性および毒性関連因子に関して以下で議論する。
グリコシルトランスフェラーゼ
変異株H.パラスイスST4株は、4つのグリコシルトランスフェラーゼ(HPM_1373、HPM_1372およびHPM_1370およびHPM_1371)を欠く。グリコシルトランスフェラーゼは、タンパク質または脂質分子への炭水化物側基の付加を含む反応を触媒する。タンパク質への炭水化物残基の付加によって、溶解度指数、プロテアーゼへの耐性、安定性、他のタンパク質との相互作用および、最も重要なことには病原菌の免疫原性などのその生物物理学的および構造的特性が顕著に変化する(Lairson et al., 2008)。タンパク質グリコシル化の2つの重要で一般的なタイプは、N−結合型およびO-結合型である。N−結合型グリコシル化は、シークオンAsn-X-Ser/Thr(N-X-S/T)(式中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)におけるアスパラギン残基への前駆体オリゴ糖の導入を含む翻訳と同時のプロセスである(Yan and Lennarz, 2005)。対照的に、O-結合型グリコシル化は、セリンまたはトレオニン残基へのオリゴ糖の翻訳後導入を含む(Van den Steen et al., 1998)。表面および分泌タンパク質の多くはグリコシル化によって改変され、それが次に、細菌が、その環境および宿主免疫系とどのように相互作用するかに影響を及ぼす(Szymanski and Wren, 2005; Schmidt et al., 2003)。グリコシルトランスフェラーゼの種々の群はオーバーラップする機能を有しているため、変異株H.パラスイスST4株におけるグリコシルトランスフェラーゼの欠如は、グリコシル化の代わりの経路を示唆している。しかしながら、存在するN−アセチルムラミルトリペプチド合成酵素タンパク質(HPM_1513)、MurNAcペンタペプチド合成酵素(HPM_1514)、ホスホ-N-アセチルムラモイルベンタペプチドトランスフェラーゼ(HPM_1515)、UDP-N-アセチルムラモイルアラニル-D-グルタミン酸合成酵素(HPM_1945)、D-アラニン-D-アラニンリガーゼ(HPM_2304)、UDP-3-O-アシル-N-アセチルグルコサミンデアセチラーゼ(HPM_2413)およびエキソポリサッカライド生合成タンパク質(HPM_0770)などの細胞壁生合成に関与する多くの酵素は、3つすべての分離株を通じて同一である(データは示さず)。変異株H.パラスイスST4株の修飾LOSおよびOMPグリコシル化パターンは、恐らく食作用を避けるのに役立つであろう。
多糖輸送タンパク質および多糖生合成タンパク質CapD
多糖輸送タンパク質および多糖生合成タンパク質は、H.パラスイスST4およびST5株における隣接ORFとして位置する。細菌は、複合輸送システムを介して細胞外多糖(EPS)および莢膜多糖(CPS)を輸送する(Cuthbertson et al, 2009)。これらの生体高分子は、貯蔵物質の提供のためまたは保護構造の一部としてなどの様々な生物学的機能を果たし、特定の環境条件下で病原菌に実質的利点を提供することができる。病原菌において、EPSおよびCPSの産生および輸送は、これらの高分子量親水性ポリマーがアセンブルされ、エンベロープの本質的な機能的特性を損なうことなくエンベロープを横切って輸送されなければならないので、大きな課題を提起する(Cuthbertson et al, 2009)。大部分のEPS/CPSのアセンブリにおいて、細菌によって、異なるポリマー生合成戦略による2つの主要経路:Wzy依存性経路およびATP結合カセット(ABC)トランスポーター依存性経路が用いられる(Larue et al., 2011)。これらのポリマーは、外膜補助(OMA)タンパク質ファミリーのメンバーの1つによって仲介される外膜輸送ステップにおいて互いに近づき合う。OMAタンパク質は、生体高分子の外膜排出チャンネルを形成する(ref)。酵素の多糖類コポリメラーゼ(PCP)ファミリーは、OMAタンパク質と相互作用して、ポリマー輸送のためのエンベロープ貫通足場を形成する(Larue et al., 2011)。変異株H.パラスイスST4株は、毒性H.パラスイスST5と類似する多数のABCトランスポーターシステムを有するが、多糖輸送タンパク質(HPM_0299)wzaを欠く。これは、複合炭水化物および生体高分子の輸送におけるABCトランスポーター間の機能的重複を示している。
capD遺伝子(HPM_0300)は、多糖生合成タンパク質をコードする。このタンパク質は、H.パラスイスの毒性への関与が示唆されてきた。しかしながら、H.パラスイスの病原性に関連するこの遺伝子の特性は詳細には述べられてこなかった。このドメインは、壁タンパク質、マンノシルトランスフェラーゼおよびエピメラーゼを含む種々の細菌多糖生合成タンパク質において見いだされる(Whitfield, 2006)。CapDタンパク質は、スタフィロコッカス種(Staphylococcus spp.)において、1型莢膜多糖の生合成に必要である(Lin et al., 1994)。H.パラスイスにおいて、capDタンパク質は血清耐性への関与が示唆されている。しかしながら、変異株H.パラスイスST4-1株(すなわち配列番号2)およびST4-2株(すなわち配列番号3)は、このドメインを欠くが高毒性であり、死亡豚から純粋な培養物として回収され、capDタンパク質なしで血清耐性であることが判明した。以前の報告書は、capD遺伝子の欠失が、SH0165病原性を顕著に弱毒化することを示唆しているが、この遺伝子の相補性によって、主として子豚においてその病原性が回復した(Wang et al., 2013)。さらにまた、capDが欠失したSH0165株は、チャレンジ後に子豚から回収されなかったが、大部分の全身部位からSH0165野生型株および相補性capD株の両方が回収された(Wang et al., 2013)。SH1065毒性株と対照的に、変異株H.パラスイスST4分離株は、臨床徴候の急速な発症を引き起こし、4頭の豚のうち2頭が我々の研究中に死亡した。これらの豚を剖検したとき、H.パラスイス感染症に典型的な病変が見いだされ、元のチャレンジ株である毒性H.パラスイスST4が単離された。
毒性遺伝子のPCR分析
我々がin silicoベースで解析を繰り返した結果では、変異株H.パラスイスST4-1株(すなわち配列番号2)およびST4-2株(すなわち配列番号3)は、ORFのHPM_1370、HPM_1371、HPM_1372、HPM_1373、HPM_0299およびHPM_0300を欠いている。他方では、H.パラスイス変異株ST4株は、毒性H.パラスイスST5に類似した毒性関連三量体型オートトランスポーター(vtaA)ドメインを3つすべて有している。比較ゲノム解析によって、グループ3vtaAは侵襲性株および非侵襲性株の両方に高度に保存されているが、グループ1およびグループ2vtaAは、毒性株においてのみ検出されたことが指摘されている(Pina et al., 2009)。しかしながら、我々は、非病原性ST5株におけると同様に、高毒性ST4-1(すなわち配列番号2)、ST4-2(すなわち配列番号3)およびST5においても3つすべてのドメインを検出した(ニューポート・ラボラトリーズ内部報告書)。複雑な遺伝子制御機構によってH.パラスイスの毒性が決定されている場合は、vtaAドメインに基づく非病原性および毒性H.パラスイス株の解析は信頼性のあるアプローチではない可能性があると我々は推測する。
他の毒性および毒性関連遺伝子
既知の毒性遺伝子以外に、H.パラスイスST4およびST5ゲノムは、多数の他の毒性および毒性関連遺伝子をコードする。これらには、金属イオン取り込みの制御、MerRファミリーの転写制御因子、マクロファージ感染増強因子(macrophage infectivity potentiator)関連タンパク質、ヘモリシン、混濁関連タンパク質(opacity-associated protein)、毒素抗毒素系、毒性関連タンパク質D、コリシンおよび細胞致死性膨張性毒素(cytolethal distending toxin)が含まれる。
金属イオン取り込みの制御
多くの病原菌と同様に、変異株H.パラスイスST4-1株(すなわち配列番号2)、ST4-2株(すなわち配列番号3)およびST5は、生物学的に必要な金属イオンのホメオスタシスの維持にもっぱら向けられる多数の制御機構およびタンパク質コード機構を有する。これらの金属イオンの大部分は、その環境から取得しなければならない。これらの金属イオンの中で、鉄は多くの毒性遺伝子の主要な制御因子であり、変異株H.パラスイスST4-1(すなわち配列番号2)、ST4-2(すなわち配列番号3)およびST5は、鉄を制御するための多数のタンパク質ネットワークを有する。鉄は、一般に、中性pHでのFe(III)の水への低溶解性のために、病原菌の増殖制限因子であるが、シトクロム、リボヌクレオチドレダクターゼ、Fe-Sクラスター生合成および毒性遺伝子の活性化/制御を含む多くの必須代謝酵素に必要である(Laham and Ehrlich 2004)。哺乳動物宿主の大部分は、遊離鉄の取り込みを欠いている。なぜなら、鉄の大部分は、トランスフェリン、ラクトフェリン、ヘモペキシンおよびハプトグロビンなどの堅く結合した形態で細胞内または細胞外に保存されているからである(Litwin and Calderwood 1993)。フェロキサミン(HPM_2297)などの多くの外膜(OM)受容体タンパク質は、最初にラクトフェリンまたはフェリチンに結合し、その輸送を仲介する。これらの受容体は、通例、基質に結合する細胞外ループおよび、ペリプラズム表面付近のバレル中に折りたたまれたN末端領域またはプラグを含む22ストランドのβバレルタンパク質である(Ferguson et al., 2002)。この輸送を推進するイオン勾配が存在しないため、OMを貫通する輸送は、TonB(HPM_0089およびHPM_0090)、ExbB(HPM_0091)ならびにExbD(HPM_0092)で構成されるペリプラズム貫通型複合体による細胞質膜のプロトン駆動力に結び付けられている(Braun et al., 1996)。ひとたびペリプラズム内に取り込まれれば、細胞膜において見られるATP結合カセット(ABC)トランスポーター(Davidson et al., 2008)の膜貫通チャネルを介してFe(III)またはFe(III)-キレートの取り込みが行われる。このプロセスはATP加水分解によって仲介される。H.パラスイスST4およびST5もまた、ヘムおよびヘミンに結合し、ヘムの取り込みに関与する3つのヘム結合タンパク質(HPM_0689、HPM_2386およびHPM_0785)を有する。変異株H.パラスイスST4もまた、細胞内の遊離鉄を、例えば、アポフェレドキシン、鉄利用タンパク質hugX(HPM_0784)、三価鉄レダクターゼ(HPM_1543、ヒドロキシム酸第二鉄の輸送に関与する)、高親和性鉄補足タンパク質ヘモペキシンBおよびA(HPM_1235およびHPM_1236)、2つのペリプラズム鉄取り込みおよび結合タンパク質(HPM_1161およびHPM_1150)、二価鉄トランスポーターATP結合サブユニット(HPM_1466)ならびに高親和性ヘム/ヘモペキシン利用タンパク質C/外膜受容体タンパク質(HPM_1031;Feイオンを輸送する)および二価鉄取り込み制御タンパク質(HPM_1051)に運ぶ鉄結合タンパク質IscA(HPM_1829)をコードする。c型シトクロムの生合成のためにペリプラズムにヘムを輸送するヘム輸送(heme exporter)タンパク質B(HPM_2191)は、シトクロムc生合成ATP結合輸送タンパク質CcmA(HPM_2192)に隣接している。H.パラスイスST4およびST5は、外膜の2つのTonB依存性受容体または鉄調節外膜タンパク質IROMP(HPM_0168およびHPM_0415)をコードする。H.パラスイスST5およびST4はまた、3つの小さな多機能性タンパク質、フラタキシン(HPM_1028)、フェレドキシン(HPM_0902)およびフェリチン/DNA結合ストレスタンパク質(HPM_2074)をコードする。フラタキシンは、細胞質ヘムおよび鉄-硫黄(Fe-S)クラスター産生の鉄シャペロンとして機能し、鉄を補足し、鉄過剰症の間鉄を保存し、酸化的に損傷したアコニターゼFe-Sクラスターを修復し、反応性酸素種(ROS)の濃度を抑えることによって酸化ストレスを抑制し、エネルギー変換および酸化的リン酸化に関与する。フェレドキシンは、鉄-硫黄クラスター(4Fe-4S)として構造を与えられた鉄および硫黄原子を含むタンパク質であり、生物学的レドックス反応において電子移動に関与する(Carvajal et al., 1996)。フェレドキシンの機能は、ギ酸デヒドロゲナーゼの鉄-硫黄サブユニットと部分的に一致する。フェレドキシンは、好気呼吸中に主要な電子ドナーとしてギ酸の使用に関与するヒドロゲナーゼ成分1(HPM_1699)を含む。フェリチンは、鉄に結合し、マスクし、それを制御された方法で放出するもう1つの細胞質タンパク質である。さらに、フェリチンは、DNAに結合し、鉄依存性酵素または転写因子のために核に鉄を送達する(Prince and Grossman, 1993; Demple et al., 1999; Khoroshilova et al., 1997)。従って、H.パラスイスST4-1(すなわち配列番号2)、ST4-2(すなわち配列番号3)およびST5ゲノムは、鉄のホメオスタシスの維持に関与するオーバーラップする機能を有する多数のタンパク質をコードしており、これはH.パラスイスの病因における鉄の重要な役割を示唆している。これらのタンパク質はまた、汎用ワクチンの開発の標的とすることもできるし、株同定の標的とすることもできる。
鉄に加えて、H.パラスイスはまた、多くのメタロプロテアーゼ、代謝酵素およびDNアーゼの活性化のためのモリブデン、亜鉛、銅、ニッケル、マグネシウムなどの金属イオンを必要とする。H.パラスイスST4-1(すなわち配列番号2)、ST4-2(すなわち配列番号3)およびST5は、モリブデン補因子生合成(HPM_0200)、モリブドプロテイン(molybdoprotein)生合成タンパク質、モリブドプロテイン生合成MoeBおよび2つのMoeA(それぞれHPM_0201、HPM_1239およびHPM_1012)、モリブデン酸ATPトランスポーター(HPM_1718)、モリブデン酸ABCトランスポーター(HPM_1719)、モリブデン輸送タンパク質(HPM_0692)、モリブデン酸結合ペリプラズムタンパク質(HPM_0693)、モリブデン補因子生合成タンパク質C'(HPM_0289)、モリブドプテリン変換因子(HPM_0290)、亜鉛ABCトランスポーター(HPM_0361、HPM_1198)、高親和性亜鉛輸送体ペリプラズム成分(HPM_0485)、亜鉛/銅ディスムターゼ(HPM_0873)、銅ホメオスタシス(HPM_1035)、ニッケル輸送透過酵素(HPM_2246)、ニッケル結合ペリプラズム前駆体タンパク質、nikA(HPM_0691)、ABC型ニッケル/コバルト排出系、透過酵素成分(HPM_2454)、Mg2+/Co2+トランスポーター(HPM_2352)、マグネシウムディスムターゼ(HPM_1717)およびマグネシウム輸送corAタンパク質(HPM_0841)を含む、これらの金属を得るためのタンパク質の多数のネットワークを有する。
MerRファミリー転写制御因子
金属イオンホメオスタシスの制御は、転写制御因子のMerRファミリーによってのみ調節されている。制御因子のMerRファミリーは、広範囲の細菌において見出されているが、古細菌または真核生物において同定されているものはない。MerR転写制御因子は、主に金属の排出または解毒に必要な遺伝子の発現の転写活性化因子として機能し、酸化ストレス、生物的ストレスまたは非生物的ストレスを防御し、薬剤耐性を付与する(Lund et al., 1986)。H.パラスイスST4およびST5のMerR制御因子(HPM_1347)は15.7KDaのタンパク質であり、ヘリックスターンヘリックス(HTH)MerR-SFスーパーファミリーに属する。H.パラスイスのMerRは他の細菌のMerR制御タンパク質に類似しており、約40アミノ酸の標準(canonical)N末端HTH-DNA結合ドメインに続く。これはさらに、認識されるエフェクター(金属イオン)に特異的な80〜30アミノ酸のC末端金属配位ドメインを含む(O’Halloran et al., 1989; Ma et al., 2009)。金属に結合する金属応答タンパク質のMerRファミリーは、それらが-35〜-10配列間の19塩基対の大きなスペースを有する異常なプロモーターからの転写を活性化するという点で特有である(O’Halloran et al., 1989)。これらの細胞質転写因子は、システインまたはヒスチジン残基を介して金属に配位(結合)する(Ma et al., 2009)。種々の細菌が共通の設計(すなわち保存された一次構造)を有しているが、それらはin vivoで効果的に金属を区別することができる(Brown et al., 2003)。NCBI解析(E値:7.89e-39)に基づいて、H.パラスイスMer R制御因子は、重金属(銅、カドミウム、鉛、亜鉛)耐性転写制御因子であると推定される。
総合すれば、特定の転写制御因子に加えて広範な金属取り込み遺伝子が存在することは、H.パラスイス毒性遺伝子の発現に関与する大変複雑な遺伝子制御機構を示している。
マクロファージ感染増強因子関連タンパク質
マクロファージ感染増強因子(MIP)関連タンパク質は、ナイセリア(Neisseria)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、レジオネラ(Legionella)およびクラミジア(Chlamydia)などの多くの病原菌において同定されている。これはまた、細胞内病原体コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)および寄生原虫トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)においても同定されている(Lundemose et al., 1993; Masuzawa et al., 1997; Norville et al., 2011; Pereira et al., 2002)。変異株H.パラスイスST4およびST5のゲノムは、推定上のマクロファージ感染増強因子関連タンパク質(HPM_0216)(20Kdaの外膜タンパク質である)をコードする。H.パラスイスST4およびST5のMIPは、マルチドメイン構造を示すカルボキシムコノラクトンデカルボキシラーゼスーパーファミリー(CMDスーパーファミリー; COG2128)に属していることを解析は示している。H.パラスイスST5およびST4のMIPは、オーバーラップするアルキルヒドロペルオキシダーゼAhpDファミリーコアドメイン、アルキルヒドロペルオキシダーゼドメインタンパク質(Avi_7169ファミリー)およびγ-カルボキシムコノラクトンデカルボキシラーゼを含む。原核MIP様タンパク質の残りの部分と同様に、H.パラスイスST4およびST5のMIPの予測N末端構造は、3つの大きなαへリックスとそれに続く短いβシートを含む。
B.シュードマレイ(B. pseudomallei)のMIP様タンパク質は、そのペプチジルプロリル異性化酵素活性を失わせるFK506およびラパマイシンなどの免疫抑制剤に対して感受性が高い。MIPを欠くB.シュードマレイ変異株は、細胞内で生存能力の低下を示し、in vivoで顕著に弱毒化されている(Norville et al., 2011)。さらに、MIPは、McCoy細胞へのクラミジアの侵入に関与することが示唆されている(Lundemorse et al., 1993)。H.パラスイスのMIPの同様な機能は無視できず、細胞内侵入およびその細菌の生存を助ける可能性がある。MIP様タンパク質は、汎用ワクチンの標的として潜在的に役立つ可能性がある。
ヘモリシン
ヘモリシンは赤血球に対して毒性を示すが、白血球を溶解するヘモリシンを産生する細菌種もある(Cavalieri et al., 1984; Forestier and Welch 1991; Gadebeerg et al., 1983; Keane et al., 1987; Wiles et al., 2008)。変異株H.パラスイスST4-1(すなわち配列番号2)、ST4-2(すなわち配列番号3)およびST5は、2つのヘモリシン活性化/分泌タンパク質(HPM_2302およびHPM_1788)ならびに2つのヘモリシン構造タンパク質(HPM_1789およびHPM_2290)を有する。H.デュクレイイ(H. ducreyi)(hhdBおよびhhdA)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)(shlBおよびshlA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(hpmAおよびhpmB)ならびにエドワジエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)と同様に、ORFのHPM_1788とHPM_1789は互いに隣接している。しかしながら、ORFのHPM_2302とHPM_2290は隣接していない。さらに、H.パラスイスST4およびST5ゲノムはまた、ヘモリシン発現に影響を及ぼすAphA様タンパク質/膜タンパク質(HPM_2138)、21kDaヘモリシン前駆体タンパク質(HPM_0599)および他の可能なヘモリシン構造タンパク質(HPM_0082)をコードする。以前の研究によって、S.マルセッセンス(S. marcescens)のShlBタンパク質は外膜タンパク質であり、ヘモリシン構造タンパク質ShlAの分泌および活性化に必要であることが示されている(Konninger et al., 1999)。ひとたび分泌されれば、ShlAは標的細胞膜と相互作用し、オリゴマーを形成し、細胞膜に穴を開け、“RTX”毒素ファミリーの他のメンバーと同様に標的細胞の溶解をもたらす(Schonherr et al., 1994)。
クローニングしたヘモリシン遺伝子を発現するH.デュクレイイ株は、対照株と比較して10倍のヒト上皮細胞への侵入を示した(Wood et al., 1999)。H.デュクレイイのヘモリシンの標的細胞の範囲は、T細胞、マクロファージ、ヒト***線維芽細胞、ヒト***上皮細胞およびB細胞を含む。PMNは、ヘモリシンによる溶解に対して比較的非感受性であった(Wood et al., 1999)。病原菌によるヘモリシンの分泌および活性化は、鉄によって厳密に制御される。
混濁関連タンパク質
混濁関連タンパク質(OapAおよびOapB)は、H.インフルエンザおよびナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrae)において、相変異(phase variation)、最初のコロニー形成における上皮細胞への接着および細胞侵入への関与が示唆されている(Weiser et al., 1995; Blake and Gotschich 1984)。H.パラスイスST5および変異株ST4分離株は、フィムブリエ/アドヘジンおよびpili複合遺伝子座(HPM_0366、(HPM_0367、HPM_0368、HPM_0371、HPM_1452、HPM_1455およびHPM_1637)に加えて、最初のコロニー形成および接着を助ける2つのOapAおよびOapBタンパク質(HPM_0924およびHPM_0925)をコードする。

毒素抗毒素系
H.パラスイス(H. parsuis)ST4およびST5のゲノムは、豊富で、多様で、水平伝播を受ける可動性遺伝因子である多数の毒素抗毒素系(TAS)をコードする(Arcus et al., 2004; Buts et al., 2005; Zielenkiewicz and Ceglowski 2001)。TASは、主として細菌および古細菌ゲノムに限定され、プラスミド安定化、転写制御、耐性機構の強化およびRNA干渉を含む種々の機能に関与する(Pandey et al., 2005; Buts et al., 2005; Zielenkiewicz and Ceglowski 2001)。H.パラスイスST4およびST5のTASモジュールは、宿主死予防ファミリータンパク質/毒素抗毒素安定性系の抗毒素(HPM_1007)、抗毒素/毒素系ゼータ毒素、シグナル認識粒子GTPアーゼタンパク質(HPM_1145)、ficファミリー毒素抗毒素(HPM_1182)、アディクションモジュールの抗毒素/推定上のRelE毒素様タンパク質、プラスミド安定化系(HPM_1184)、毒素成分RelEファミリー(HPM_0312)、転写制御因子/抗毒素、MazEタンパク質(HPM_1226)、抗毒素ChpS/転写制御因子/抗毒素、MazE/推定上のプラスミド安定保持タンパク質(HPM_1862)、増殖抑制剤、MazE/毒素のPemK様自己制御/転写モジュレーター、MazF、プラスミド安定保持タンパク質Kタンパク質(HPM_1863)、プラスミド安定性タンパク質StbD(HPM_2272)、HicAおよびB(HPM_2185、HPM_0011およびHPM_0012)を含む。TASにおけるモジュールの数は1から8までの範囲が考えられる(Mittenhuber 1999; Gerdes 2000)。制御されるTSSの大部分は2成分系であり、HicAおよびHicBと同様に機能する。ORFのHicAおよびB(HPM_0011およびHPM_0012)は隣接しており、competence protein comM(HPM_0013)に結合しているが、他のHicA(HPM_2185)は、エンドヌクレアーゼ(HPM_2184)と結合している。HicBタンパク質は、部分的に劣化したリボヌクレアーゼHフォールドを有するが、HicAは二本鎖RNA結合ドメインを含む(Markarova et al., 2006)。これら2つのドメインの安定な組み合わせは、恐らくはRNA結合-分解(すなわちRNA干渉)機構によるRNAを介した転写制御を明確に示唆している。大部分のHicBタンパク質において、リボヌクレアーゼH様ドメインは、リボンヘリックスヘリックスまたはヘリックスターンヘリックスモチーフのDNA結合ドメインに融合されている。これらのDNA結合ドメインを含むTASタンパク質は抗毒素として機能する(Markarova et al., 2006)。H.パラスイスST4およびST5の分離株は、水平伝播を受けやすく、主要な毒性遺伝子の付属として機能する、それらの病原性アイランド(PAI)内に位置する多数のTAS遺伝子を有する。
毒性関連タンパク質D
H.パラスイスST4およびST5のゲノムは、H.パラスイスSH0165(YP_002476324)、H.パラスイスZJ0906(YP_008124455)およびH.パラスイスSW114(EQA00157.1)のVapDに対して100%同一であるが、アクチノバチルス・ミノー(Actinobacillus minor)(WP_005826028)に対して90%しか同一ではなく、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)(WP_003711106.1)に対しては64%しか同一ではなく、N.メニンギティディス(N. meningitides)(WP_002238271.1)に対しては63%しか同一でなく、N.メニンギティディスのCRISPR関連Cas2ファミリータンパク質(WP_002251489)に対しては62%しか同一ではない毒性関連タンパク質D(VapD; HPM_1572)をコードする。子馬から単離されたロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)は、80〜90kbの毒性プラスミド上に十分に特性決定されたvapD遺伝子を含む(Giguere et al., 1999)。R.エクイ(R. equi)の毒性プラスミドは、VapA〜Gを含む7つのVapタンパク質のファミリーをコードする27.5kbの病原性アイランドを含む(Jain et al., 2003)。5つのvap遺伝子(vapA、-C、-D、-Eおよび-F)にまたがる7.9kbのDNA領域を欠くR.エクイ変異株は非病原性であり、野生型と比較してマウス免疫系によって急速に除去される(Jain et al., 2003)。さらにまた、R.エクイ株の同質遺伝子的プラスミド除去変異株は、肺胞マクロファージでその生存能力を失い、子馬において肺炎を誘発することができない(Hondalus and Mosser, 1994; Hondalus 1997)。vap遺伝子はまた、H2O2によっても誘導される(Benoit et al., 2002)。マクロファージ感染増強因子に加えてVapDタンパク質は、H.パラスイスの細胞内感染、特にマクロファージ内感染の開始および維持に関与することができる。従って、これらの抗原は、新規ワクチン開発戦略に組み込むことができる。
コリシン
コリシンは、コリシン生産性プラスミドを1つ含むエシェリキア・コリ(Escherichia coli)の特定の株において最初に同定された熱不安定性タンパク質である(Feldgarden and Riley, 1999)。それ以来、他の密接に関連した株とは反対に、コリシンは多くの細菌株において同定されてきた。病原菌のコリシン生産性株は自然界に広く分布し、特に動物の消化管に豊富である(Cascales et al., 2007)。H.パラスイスST4およびST5のコリシンは、コリシンオペロンがLexAタンパク質(HPM_1027)によって抑制されるため、通常条件下では合成されない。H.パラスイスST4およびST5はコリシンV(HPM_1084)およびコリシン輸送タンパク質TolQ(HPM_1307)をコードするが、このことは、これらの株に、豚の鼻腔および上気道を占める上で競争的利点を付与する。
細胞致死性膨張性毒素(CTD)
細胞致死性膨張性毒素は、カンピロバクター種(Campylobacter spp.)(ref)、E.コリ(E. coli)(ref)、ヘモフイルス・デュクレイイ(ref)、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)(ref)、シゲラ・ディゼンテリエ(Shigella dysenteriae)(ref)およびヘリコバクター種(Helicobacter spp.)(ref)を含む様々なグラム陰性菌において同定されている。CDTは、ヘテロ三量体毒素である(Johnson et al., 1988; Picket tet al., 1994; Cope et al., 1997; Mayer et al., 1999; Okuda et al., 1995; Young et al., 2000)。ひとたびCDTが標的細胞に侵入すれば、CTDはランダムに細胞内DNAにニックを入れ、アポトーシスを引き起こす(Jinadasa et al., 2011)。これらの毒素はまた、特定の哺乳動物細胞株においてG2/M細胞周期停止を引き起こし、拡大細胞または膨張細胞を生じ、壊死を引き起こす(Elwell and Dreyfus 2000)。この毒素はゴルジ複合体によって取り込まれ、コレラ毒素A1と同様に逆行性に小胞体まで輸送される(Teter et al., 2002)。CDT産生は、オペロン中の3つの隣接遺伝子(cdtA、cdtBおよびcdtC)の発現に左右される(Matsuda et al., 2008; Dreyfus 2003)。しかしながら、H.パラスイスST4およびST5のゲノムは、CTD内部移行化タンパク質(internalizing protein)(cdtA; HPA_2217)をコードする遺伝子を1つのみ含むが、活性毒素cdtBおよび内部移行化タンパク質cdtCを欠く。cdtBおよびcdtC遺伝子を失う理由には、マップベースのアセンブリにおけるギャップを含むことが考えられるが、それらが機能性CTDオペロンを欠く可能性もある。ヒト感染症において、腸疾患を患う患者からCDT陰性カンピロバクター株が単離されているが、これは、毒性H.パラスイスST4株と同様に、CDT発現が毒性には重要ではない可能性を示唆している(Abuoun et al., 2005)。
マッピングされなかった遺伝子
解析によって、ST4-1(すなわち配列番号2)に関しては263遺伝子、ST4-2(すなわち配列番号3)に関しては323遺伝子がマッピングされなかった領域であった(データは示さず)。300塩基対未満のORFは通例反復配列であり、多くの場合、機能性タンパク質をコードしない。従って、300塩基対のカットオフ値を設定し、300塩基対以上のORFをマッピングし、アノテーションした。これによって、ST4-1(すなわち配列番号2)に関しては190ORF、ST4-2(すなわち配列番号3)に関しては237ORFが得られた。ST4-1(すなわち配列番号2)およびST4-2(すなわち配列番号3)のマッピングされなかった領域は、遺伝子水平伝播エレメント、仮想タンパク質、転写因子、ファージゲノム、トランスポーター、ハウスキーピング遺伝子(細胞壁/LPS生合成)および毒素抗毒素タンパク質ゼータ毒素を含む。各株に対するこれらの遺伝子の独自性は、これがドラフトゲノムに関するマップベースのアセンブリであったため、検証できなかった。
一塩基多型(SNP)
我々は、3つの分離株すべてにわたって、40,000+の同義置換一塩基多型(synonymous SNP)および非同義置換一塩基多型(nonsynonymous SNP)を同定した。これらのSNPは、既知の毒性遺伝子、毒性関連遺伝子およびハウスキーピング遺伝子に及んでいる。このデータは、株にまたがる変異の研究において助けとなるSNPアレイの設計に用いられるだろうし、遺伝子制御および種々の毒性因子の作用機序の理解の潜在的な助けとなるであろう。
総合すれば、比較ゲノム解析は、変異株H.パラスイスST4-1(すなわち配列番号2)およびST4-2(すなわち配列番号3)株は、鼻腔内コロニー形成、宿主の免疫回避の助けとなり、おそらくは血清耐性を付与するLOSおよびOMP構造の広範な改変を有していることを示唆している。さらにまた、OMPおよびLOS上のシアル酸残基の欠損は、制御されないサイトカイン放出を引き起こし、肺の病状によって示される敗血症、肺水腫および重篤な肺炎を生じる。変異株H.パラスイスST4で子豚をチャレンジしたとき、48時間以内にその50%が死亡した。明らかに、変異株ST4株は高毒性である。変異株H.パラスイスST4はまた、前述のもの以上に毒性および毒性関連遺伝子の広範なレパートリーを有する。莢膜の修飾およびLOS置換による相変異の組み合わせは、変異株H.パラスイスST4が宿主の免疫系をのがれ、集団発生をもたらす恐れのある致命的な病原体に変形するのを助けるだろう。
本発明は、それらの精神または本質的属性から逸脱することなく他の特定の形態で実施することが可能である。従って、全ての点において、本実施形態は例示であって、限定するものではないと考えることが望ましい。すなわち、本発明の範囲を示すためには、前述の説明よりはむしろ添付の特許請求の範囲を参照すべきである。

Claims (8)

  1. ヘモフィルス・パラスイス(血清型4型)に対するワクチンであって、獣医学的に許容される担体および、ヘモフィルス・パラスイス感染症から豚を守る免疫応答を引き起こすことができる不活化させたバクテリンまたは細菌細胞培養物の免疫学的有効量を含む前記ワクチン。
  2. バクテリンまたは細菌細胞培養物のDNA配列が配列番号2を含む、請求項1に記載のワクチン。
  3. バクテリンまたは細菌細胞培養物のDNA配列が配列番号3を含む、請求項1に記載のワクチン。
  4. ヘモフィルス・パラスイス(血清型5型)に対するParaSailワクチンを含む、請求項1に記載のワクチン。
  5. ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対してイノシシ科動物にワクチン接種する方法であって、a)ヘモフィルス・パラスイス感染症から豚を守る、ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対する免疫応答を引き起こすことができる1以上の細胞をクローン増殖させ、b)ワクチンとしての豚への投与に適した形態に前記細胞の免疫学的有効量と獣医学的に許容される担体とを組み合わせ、c)死滅ワクチンとして投与する段階を含む前記方法。
  6. ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対する免疫応答を引き起こすことができる1以上の細胞が配列番号2のDNA配列を含む、請求項5に記載の方法。
  7. ヘモフィルス・パラスイス感染症(血清型4型)に対する免疫応答を引き起こすことができる1以上の細胞が配列番号3のDNA配列を含む、請求項5に記載の方法。
  8. 死滅ワクチンを投与する段階がヘモフィルス・パラスイス(血清型5型)に対するParaSailワクチンを含む、請求項5に記載の方法。
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