詳細な説明
本明細書中にさらに説明されるように、開示は、Smad7タンパク質ならびにその生物活性フラグメントおよび誘導体と、そのようなタンパク質をコードする核酸と、そのような核酸を含むベクターと、そのようなベクター、核酸、および/またはタンパク質を包含する細胞とを提供し、それらすべてが薬物の処方と、1または複数の疾患または障害の処置および/または予防とに、用いられる。1または複数の疾患または障害の処置および/または予防に有用な、Smad7タンパク質ならびにその生物活性フラグメントおよび誘導体を製造およびスクリーニングするための方法も提供する。Smad7への暴露に関連した1または複数のマーカーを用いて処置に対する応答を予測および/または評価する方法も提供する。そのようなマーカーとして、限定されるものではないが、細胞遊走用のRac1、炎症用のNF−κB、ならびに成長停止および炎症用のTGF−βを挙げることができる。
Smad7で処置可能な疾患および障害として、細胞増殖の減少、細胞遊走の減少、細胞死の増加、過度の炎症、および/またはDNAの損傷のうちの1または複数を含む疾患および障害を挙げることができる。Smad7で処置可能な疾患および障害として、限定されるものではないが、増殖を増加させること、細胞死を減らすか抑制すること、過度の炎症を減らすこと、DNA 損傷を予防すること、および/または細胞遊走を増加させることなどのうちの1または複数の活性を有するSmad7タンパク質ならびにその生物活性フラグメントおよび誘導体によって処置される疾患および障害を、挙げることができる。そのような疾患および/または障害は、限定されるものではないが、急性(例えば、外科手術、格闘、外傷による)および慢性創傷(例えば、糖尿病性、褥瘡性、静脈性の潰瘍)、瘢痕、線維症、および異常治癒、粘膜炎(例えば、口腔および/または胃腸)、口内炎、直腸炎、自己免疫疾患(例えば、乾癬、関節炎)、ならびに癌を挙げることができる。
広範囲なアポトーシスとケラチノサイト増殖鈍化による上皮剥離を克服することは、口腔粘膜炎の予防および処置にとって、重要である。Smad7の増殖促進効果および抗アポトーシス効果は、上皮細胞に対して強力な成長抑制物質およびアポトーシス誘導物質であるTGF−β1を増加させた場合、正常な口腔粘膜よりも口腔粘膜炎でより明確であった。
理論に束縛されることを望まないが、Rac1活性化の増大が、創傷閉鎖におけるSmad7媒介ケラチノサイト遊走の主な原因であると考えられる。Smad非依存的メカニズムを介した癌細胞におけるRho/Rac活性化においてTGF−βシグナル伝達が果たす役割が実証された(Dernyck et al, Nature 415:577-584, 2003)ことを考慮すると、この発見は予想外である。
口腔粘膜炎の間、Smadシグナル伝達の増加(pSmad2の増加により明らか)とSmad転写コリプレッサーCtBP1により、Smad依存的なRac1抑制がSmad非依存的なRac1活性化(存在するならば)を克服すると考えられる。この抑制がSmad7によって部分的に抑止されると、Rac1活性化に媒介されるケラチノサイト遊走が可能になる。しかしながら、口腔癌細胞では、シグナル伝達Smadが無くなるか不活性化され、または、他の機序が独立にRac1を活性化する。その結果、Smad7が媒介するRac1抑制の抑止は、もはや起こらないと思われる。
Rac1活性化もケラチノサイト増殖に寄与したにもかかわらず、部分的にRac1をノックダウンすることだけでSmad7の増殖促進効果が減弱された。したがって、増殖に対するRac1の貢献は制限されているように見え、TGF−β1によって誘発された成長停止を妨げることは、放射線誘発成長阻害効果を解決する上で必要である。
過度の炎症を弱めることは、口腔粘膜炎治癒のための微小環境を作り出す。TGF−βおよびNF−κBの両方のシグナル伝達に対するSmad7の拮抗作用は、Smad7を、NF−κBのみを標的とする他の薬剤よりも、より効果的な抗炎症性分子とする。炎症性細胞がTGF−βとNF−κBをさらに活性化するサイトカインを産生するので、照射後のK5.Smad7またはTat−Smad7処置口腔粘膜で見られたTGF−βおよびNF−κBのシグナル伝達の減少は、これら2つの経路に対するSmad7の直接的な拮抗作用と浸潤白血球からの炎症性サイトカインの減少による結果とを反映している。しかしながら、Smad7は、NF−κBまたはTGF−βのシグナル伝達を、それらの正常な生理学的条件よりも下に減らすことはなかった。このようなNF−κBまたはTGF−βのシグナル伝達の不完全な遮断は、いずれかの経路の完全な喪失が過度の炎症を誘発し得ることから、口腔粘膜炎治癒にとってはおそらく有益だろう。
癌患者の口腔粘膜炎を処置するために増殖因子を用いる上で最初に障害になることは、癌細胞増殖を促進する潜在的リスクである。ヒト口腔癌の大部分は、腫瘍上皮細胞でのTGF−βシグナル伝達を失う。したがって、Smad7による抗Smad関連細胞増殖および遊走は、癌細胞に影響がない。TGF−βシグナル伝達が損なわれていない腫瘍では、他の腫瘍形成経路の活性化が、TGF−βによって誘発される腫瘍抑制効果を上回る場合もある。これらの2つのシナリオによって、変異型または完全なTGF−βシグナル伝達コンポーネントを有する口腔癌細胞での増殖および遊走のSmad7による増加が観察されない理由が説明され得る。
さらに、TGF−βシグナル伝達は、TGF−βによって誘発された腫瘍抑制の消失の後に、主にSmad非依存的な機序を通して腫瘍浸潤を促進する。したがって、癌細胞においてSmad7によりTGF−βシグナル伝達を妨げることはTGF−β媒介腫瘍促進効果を抑止することができ、そのことは進行癌の臨床治験で目下使用されているTGF−β抑制因子に類似的にふるまう。さらに、Smad7の強力な抗炎症効果は、腫瘍進行のリスクを減らすことが可能である。したがって、長期のSmad7適用は、癌治療でも有効であると考えられる。
K5.Smad7マウスでは自然発生腫瘍形成は、観察されなかった。Smad7が分泌タンパク質ではないことから口腔粘膜炎処置における局所かつ短期のSmad7タンパク質送達は、全身作用をほとんど持つべきではない。口腔上皮に癌細胞が含まれない骨髄移植患者において、Smad7局所適用は、口腔粘膜炎の予防と処置に適し得る。
あらゆる理論に束縛されることを望まないが、Smad7媒介口腔粘膜炎治癒は1または複数の分子によって媒介される複数の病原性プロセスを標的とした結果と思われる(例えば、図14A〜Bを参照)。これらの分子(例えば、TGF−β、NF−κB、CtBP1、Rac1)の1または複数が患者の口腔粘膜炎の予測および治療応答マーカーとして有用であると考えられる。
A.核酸、ベクター、および宿主細胞
本開示は、別の実施形態において、Smad7をコードする遺伝子も提供する。野生型Smad7遺伝子(SEQ ID NO:12、22)および種々のコドン最適化バージョン(SEQ ID NO:9〜11、21、23〜41)に加えて、本技術が本明細書中に開示されている特定の核酸に限定されるものではないことが、明白でなければならない。後述するように、「Smad7遺伝子」は種々の異なる塩基を含んでもよく、その場合であっても、本明細書中に開示されたヒト遺伝子とは機能的に区別がつかず、かつ場合によっては構造的に同一である、対応するポリペプチドを産生する。
1.Smad7をコードする核酸
本技術による核酸は、Smad7遺伝子全体、トランケート部分、および/またはSmad7のフラグメントを示してもよく、それは、Smad7に関連した1または複数の活性、例えば、限定されるものではないが、増殖を増加させること、細胞死を減らすか抑制すること、過度の炎症を減らすこと、DNA損傷を防ぐこと、および/または細胞遊走を増加させること、さらに、そのような処置が本明細書中でのさらなる検討に有用である1または複数の疾患または障害を処置または予防すること、を有するポリペプチドを発現する。そのような活性は、1または複数のアッセイを用いて評価され得る。このようなアッセイには、限定されるものではないが、マウスにおいて、Smad2のリン酸化および/またはNF−κB p50サブユニットの核転座を阻害、細胞増殖を増加、アポトーシスおよび/または放射線誘発DNA損傷を減少、炎症および/または血管新生を減少、口腔粘膜炎、手術性創傷、糖尿病創傷、および/または慢性炎症に伴う創傷の治癒を促進する能力が含まれる。核酸は、ゲノムDNA(すなわち、特定の生物のゲノムから直接クローニングされたもの)に由来してもよい。しかしながら、特定の実施形態において、核酸は相補DNA(cDNA)を含むであろう。cDNAプラス本来の介在配列または別の遺伝子に由来するイントロンも提供される。そのような設計分子を、しばしば、「ミニ遺伝子」という。すくなくとも、本技術のこれらの核酸および他の核酸は、分子量基準、例えば、ゲル電気泳動法の分子量基準として、使用されてもよい。
用語「cDNA」は、テンプレートとしてメッセンジャーRNA(mRNA)を用いて調製されるDNAを指すことが意図されている。cDNAを用いることの利点は、ゲノムDNAや、ゲノムRNA、非処理RNA、または部分的処理RNAのテンプレートから重合されたDNAとは対照的に、cDNAには、対応するタンパク質のコード配列が主に含まれることである。完全または部分的ゲノム配列が好ましい場合、例えば、非コード領域が最適な発現に必要とされる場合、または、イントロンなどの非コード領域がアンチセンス戦略において標的とされる場合がある。
この出願で使用されるように、「Smad7をコードする核酸」は、細胞内の全核酸を伴わずに単離されている核酸のことを指してもよく、および/または、Smad7ポリペプチドをコードするcDNAを指してもよい。本明細書中に使用されるように、「細胞内の全核酸を伴わずに単離」という用語は、核酸分子が、おおよそ、または、少なくとも、標準的な生化学技術、限定されるものではないが、例えばアガロースゲル電気泳動法を用いて決定される他の細胞核酸分子の、約75%純、80%純、85%純、90%純、95%純、96%純、97%純、98%純、99%純、または100%純であることをいう。本明細書中に使用されるように、「細胞内の全タンパク質を伴わずに単離」という言葉は、タンパク質分子が、おおよそ、または、少なくとも、標準的な生化学技術、限定されるものではないが、例えばウェスタンブロットを用いて決定される他の細胞核酸分子の、約75%純、80%純、85%純、90%純、95%純、96%純、97%純、98%純、99%純、または100%純であることをいう。特定の実施形態において、本技術は、SEQ ID NO:9〜11、21、23〜41のいずれか1つに本質的に記載、および/または、含まれる、核酸配列に関する。
単離核酸分子は、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を用いて作られてもよい。単離核酸分子として、天然の核酸分子およびそのホモログが挙げられ、限定されるものではないが、天然の対立遺伝子変異体と改変核酸分子とが含まれ、この改変核酸分子では、そのような改変で所望の効果(例えば、非ヒト発現系のSmad7タンパク質の産生)が得られるように、ヌクレオチドの挿入、欠失、置換、および/または逆位がなされている。
「1または複数の核酸配列(例えば、SEQ ID NO:9〜11、21、23〜41)に本質的に記載された」という用語は、核酸配列が、1または複数の核酸配列(例えば、SEQ ID NO:9〜11、21、23〜41)の、少なくとも一部分、および、場合によっては、該配列の全体に実質的に対応することを意味する。いくつかの実施形態では、核酸配列の少なくとも一部分に実質的に対応する配列は、本明細書中に記載された配列の1または複数のおよそ/または少なくともおよそ50の核酸、75の核酸、150の核酸、200の核酸、250の核酸、300の核酸、350の核酸、400の核酸、450の核酸、500の核酸、550の核酸、600の核酸、650の核酸、700の核酸、750の核酸、800の核酸、900の核酸、1000の核酸、1100の核酸、1200の核酸、または1250の核酸に、対応し得る。いくつかの実施形態では、核酸配列の少なくとも一部分に実質的に対応する配列は、本明細書中に記載された配列の1または複数の、約50〜1250の核酸、75〜1250の核酸、150〜1250の核酸、200〜1250の核酸、250〜1250の核酸、300〜1250の核酸、350〜〜1250の核酸、400〜〜1250の核酸、450〜1250の核酸、500〜1250の核酸、550〜1250の核酸、600〜1250の核酸、650〜1250の核酸、700〜1250の核酸、750〜1250の核酸、800〜1250の核酸、900〜1250の核酸、1000〜1250の核酸、1100〜1250の核酸、1200〜1250の核酸、少なくとも約50〜75の核酸、75〜150の核酸、75〜200の核酸、75〜250の核酸、75〜300の核酸、75〜350の核酸、75〜400の核酸、75〜450の核酸、75〜500の核酸、75〜550の核酸、75〜600の核酸、75〜650の核酸、75〜700の核酸、75〜750の核酸、75〜800の核酸、75〜900の核酸、75〜1000の核酸、75〜1100の核酸、75〜1200の核酸、または75〜1250の核酸、あるいは1250の核酸の範囲の周辺に、対応し得る。
いくつかの実施形態において、少なくとも一部の核酸配列に実質的に対応する配列は、核酸配列のその部分に、同一の配列を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一部の核酸配列に実質的に対応する配列または核酸配列の全体は、1または複数の機能的に同等のコドンを含む可能性がある。「機能的に同等のコドン」という用語は、本明細書中で使用されて、同じアミノ酸をコードする1または複数のコドン、例えばアルギニンまたはセリンの6つのコドンのことをいい、いくつかの実施形態では、以下の頁で議論されるような生物学的に同等のアミノ酸をコードするコドンのことをいう。「生物学的に同等の」アミノ酸という用語は、本明細書中では、ヒトSmad7野生型タンパク質のアミノ酸配列に存在するアミノ酸から変更された場合に、本明細書に記載されたSmad7の生物活性、例えば、限定されるものではないが、増殖を増加させること、細胞死を減らすか抑制すること、過度の炎症を減らすこと、DNA損傷を防ぐこと、および/または細胞遊走を増加させること、ならびに、処置または予防を、そのような処置が本明細書中でさらに議論されるように有用であると思われる1または複数の疾患または障害に対して行うことのうちの1または複数(あるいは、いくつかの実施形態では、任意)を変えない、1または複数のアミノ酸のことをいう。
いくつかの実施形態では、遺伝コードの縮重を可能にすることで、コドン最適化核酸配列(例えば、SEQ ID NO:9〜11、21、23〜41)のいずれか1つのヌクレオチドと同一であるヌクレオチドの約または少なくとも約60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、および/または99%を有する配列は、実質的に対応する核酸配列であると考えられる。核酸配列(例えば、SEQ ID NO:9〜11、21、23〜41)のいずれか1つに記載の配列と本質的に同一の配列は、様々な標準条件下で、SEQ ID NO:9〜11、21、23〜41のコンポーネントを含む核酸セグメントとハイブリダイズ可能である配列としても、機能的に定義され得る。
高い選択性を必要としている用途にとって、ハイブリッドを形成するべく比較的高いストリンジェンシー条件を使用することが概して望まれる。例えば、相対的に低い塩および/または高い温度の条件、例えば約50℃〜約70℃の温度で約0.02M〜約0.10MのNaClによって提供される条件。そのようなストリジェンシー条件は、プローブまたはプライマーとテンプレートまたは標的鎖との間のミスマッチを、たとえあったとしてもほとんど許容せず、特定の遺伝子の単離または特定のmRNA転写物の検出に特に適しているであろう。ホルムアミド量の増加を加えることで条件をよりストリジェンシーの高いものとすることができると、一般に理解される。
特定の用途にとって、より低いストリンジェンシー条件が好ましいことが、理解される。このような条件下では、ハイブリダイズしている鎖の配列が完全には相補的ではなく1または複数の位置でミスマッチが起こるとしても、ハイブリダイゼーションが生ずる場合がある。塩濃度の上昇および/または温度の低下によって、条件をよりストリンジェンシーの低いものとしてもよい。例えば、中程度のストリジェンシー条件は、約37℃〜約55℃の温度で約0.1〜0.25MのNaClにより、提供され、一方で、低ストリンジェンシー条件は、約20℃〜約55℃の温度範囲で約0.15M〜約0.9Mの塩により、提供され得る。所望の結果に応じて、ハイブリダイゼーション条件に容易に手を加えることができる。
別の実施形態では、ハイブリダイゼーションは、例えば、約20℃〜約37℃の温度で、50mM Tris−HCl(pH8.3)、75mM KCl、3mM MgCl2、1.0mMジチオスレイトールの条件下で、達成され得る。利用される他のハイブリダイゼーション条件は、約40℃〜約72℃の温度で、約10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl2を含むこともできる。
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の相同性の割合を決定するために、比較を最適化することを目的として、配列をアライメントさせる(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列とのアライメントを最適化するために第1のアミノ酸または核酸配列の配列にギャップを導入する)。続いて、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較することができる。第2の配列の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドで第1の配列にある位置が占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間での相同性の割合は、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(%同一性=同一位置の数/位置(例えば、重複位置)の全数×100)。いくつかの実施形態では、それら2つの配列は同一の長さである。
2つの配列間の相同性の割合を決定するために、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877にあるように修正されたKarlinおよびAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムを用いることができる。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al. (1990) J. Mol Biol. 215:403-410のNBLASTおよびXBLASTに取り込まれる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12により実行し、本明細書中に記載または開示された核酸分子に対するホモログを得る。BLASTタンパク質検索をXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3により実行する。比較目的のためにギャップ付きアライメントを得るために、ギャップ付きBLASTを、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されているように、利用してもよい。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合、各々のプログラムのデフォルトパラメーター(例えば、XBLASTおよびNBLAST)が使用される。さらに詳しくは、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを参照せよ(ncbi.nlm.nih.govのワールドワイドウェブ上)。本明細書中に記載された方法での使用に適したタンパク質は、本明細書中に記載された任意のタンパク質のアミノ酸配列と比較して、1〜15の間のアミノ酸変化(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のアミノ酸の置換、欠失、または付加)を有するタンパク質も含む。別の実施形態では、改変アミノ酸配列は、本明細書中に記載された任意のタンパク質阻害因子のアミノ酸配列と、少なくとも75%同一、例えば、77%、80%、82%、85%、88%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である。そのような配列変異タンパク質は、改変アミノ酸配列が本明細書中に記載された組成物および方法で機能するのに十分な生物活性を保持している限り、本明細書中に記載された方法に適している。場合によっては、保存的アミノ酸置換が利用される。アミノ酸間の例示的な保存的置換は、以下の群、すなわち、(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(3)セリンおよびスレオニン、(4)アスパルテートおよびグルタミン酸塩、(5)グルタミンおよびアスパラギン、ならびに(6)リシン、アルギニン、およびヒスチジンの各々の中で行われる。BLOSUM62テーブルは、タンパク質配列セグメントの約2,000の局所多重アライメントから誘導されるアミノ酸置換マトリックスであり、関連タンパク質の500基を超える高度保存領域を表す(Henikoff et al. (1992), Proc. Natl Acad. Sci. USA、89:10915-10919)。BLOSUM62置換頻度は、いくつかの実施形態では本明細書中に記載または開示したアミノ酸配列の中に導入される保存的アミノ酸置換を定義するために、使用され得る。(上記のように)化学的性質のみに基づいてアミノ酸置換の設計が可能ではあるが、用語「保存的アミノ酸置換」は、好ましくは、−1を超えるBLOSUM62値により表される置換のことをいう。例えば、アミノ酸置換は、この置換が0、1、2、または3のBLOSUM62値によって特徴づけられる場合、保存的である。この系によれば、好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも1(例えば、1、2,または3)のBLOSUM62値によって、特徴づけられ、一方、より好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも2(例えば、2または3)のBLOSUM62値によって特徴づけられる。
本技術のDNAセグメントには、上記したように、生物学的に機能が等価なSmad7タンパク質およびペプチドをコードするものが含まれる。そのようなセグメントは、核酸配列およびそれによってコードされるタンパク質内で自然に生じることが知られているコドン冗長性およびアミノ酸機能的等価性の結果として、生じ得る。あるいは、機能的に等価なタンパク質またはペプチドは、組換えDNA技術の適用により作り出されてもよく、ここでタンパク質構造の変化は、交換されたアミノ酸の特性の考慮に基づいて操作されてもよい。人によって設計される変化は、他に記載されたように、部位特異的突然変異誘発技術の適用を介して導入可能であり、または、ランダムに導入されて、所望の機能について後でスクリーニングされてもよい。
より詳細に後述するように、Smad7核酸配列は、選択可能な宿主生物(例えば非ヒト)内での発現に最適化されてきた。上述したように、遺伝コードは縮退されるので、しばしば、1つのアミノ酸が2またはそれ以上のヌクレオチドコドンによってコードされる場合がある。したがって、多重核酸配列は1つのアミノ酸配列をコードし得る。このアミノ酸配列は同一のタンパク質を作るが、核酸自体は互いに異なり、異なった特性を持つことができる。本明細書中に述べたように、コドン使用頻度の選択に係る一態様は、(限定されるものではないが)外来細胞内でタンパク質(細菌または酵母内でヒトタンパク質)を発現する能力またはそのような細胞内での発現レベルであり得る。精製、試験、およびインビトロアッセイでの使用にとって十分なタンパク質を得るために、動物細胞において、そして最終的に臨床開発において、非ヒト系での十分なタンパク質発現が必要である。
AGG(1.7%コドン使用頻度;9残基)、AGA(2.8%コドン使用頻度;2残基)、CGA(3.5%コドン使用頻度;4残基)、またはCGG(5.4%コドン使用頻度;8残基)の1または複数によってコードされるヒトSmad7タンパク質配列にある一連の23個のアルギニンアミノ酸が同定されており、ヒト以外の出所、例えば、限定されるものではないが、細菌および/または酵母からの効率的なタンパク質発現を有するためには、この1または複数の、場合によっては全てのアルギニンコドンがCGT(20.6%コドン使用頻度)に改変されるべきであると判定されている。したがって、いくつかの実施形態では、Smad7コドン最適化核酸配列は、CGTに変えられている、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または23個の、アルギニンのコドンを含む。いくつかの実施形態では、Smad7コドン最適化核酸配列は、核酸配列位置の7〜9位、43〜45位、169〜171位、403〜405位、490〜492位、526〜528位、526〜528位、823〜825位、1057〜1059位、16〜18位、136〜138位、199〜201位、598〜600位、31〜33位、112〜114位、316〜318位、772〜774位、940〜942位、973〜975位、1135〜1137位、1276〜1278位、637〜639位、または814〜816位にある、1または複数あるいは全てのアルギニンコドンがCGTに変えられなければならない。
TCCまたはTCG(9%)によってコードされる、ヒトSmad7タンパク質配列にある一連の33個のセリン残基が同定されており、ヒト以外の出所、例えば、限定されるものではないが、細菌および/または酵母からの効率的なタンパク質発現および精製にとって、1または複数の、場合によっては全てのセリンコドンがAGC(15%コドン使用頻度)に改変されることが有益であり得ると判定されている。したがって、いくつかの実施形態では、Smad7コドン最適化核酸配列は、(AGC)に変えられている、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、または33個の、セリンのコドンを含む。いくつかの実施形態では、Smad7コドン最適化核酸配列は、核酸配列位置の19〜21位、46〜48位、133〜135位、292〜294位、349〜351位、451〜453位、454〜456位、460〜462位、511〜513位、514〜516位、544〜546位、595〜597位、616〜618位、634〜636位、691〜693位、694〜696位、739〜741位、745〜747位、775〜777位、847〜849位、907〜909位、919〜921位、943〜945位、1006〜1008位、1009〜1101位、1030〜1032位、1054〜1056位、1093〜1095位、1126〜1128位、1192〜1194位、1237〜1239位、1240〜1242位、1273〜1275位にある、1または複数あるいは全てのセリンコドンを含む。これらのうち、23個のコドン(19〜21、292〜294、349〜351、451〜453、454〜456、460〜462、511〜513、514〜516、544〜546、616〜618、634〜636、691〜693、694〜696、739〜741、745〜747、775〜777、847〜849、907〜909、919〜921、1009〜1101、1030〜1032、1054〜1056、1093〜1095)を、代わりとなり得る読み取り枠を導入することなしに、変更することができる。
CAC(9.6%コドン使用頻度)によってコードされる、ヒトSmad7タンパク質配列にある、一連の12個のヒスチジン残基も同定されており、それは、ヒト以外の出所、例えば、限定されるものではないが、細菌および/または酵母からの効率的なタンパク質発現および精製にとって、1または複数の、場合によっては全てのセリンコドンがCAT(必要に応じて、12.6%利用まで)に改変されることが有益であり得ると判定されている。したがって、いくつかの実施形態では、Smad7コドン最適化核酸配列は、(CAT)に変えられている、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、または12個の、ヒスチジンのコドンを含む。いくつかの実施形態では、Smad7コドン最適化核酸配列は、核酸配列位置の142〜144位、214〜216位、217〜219位、220〜222位、226〜228位、289〜291位、589〜591位、778〜780位、1072〜1074位、1147〜1149にある、1または複数あるいは全てのセリンコドンを含む。これらのうち、4個のコドン(217〜219位、220〜222位、589〜591位、778〜780位のヌクレオチド)を、代わりとなり得る読み取り枠を導入することなしに、変更することができる。
いくつかの実施形態では、1または複数のコドン最適化核酸は、少なくとも1つおよび最大で22個の任意の整数の、CGTに改変されたそのアルギニンコドン、少なくとも1つおよび最大で28個の任意の整数の、AGCに改変されたそのセリンコドン(任意に、導入読み取り枠により改変可能である)、あるいは、少なくとも1つおよび最大で12個の任意の整数の、CATに改変されたそのヒスチジンコドン(任意に、導入読み取り枠により改変可能である)の、1または複数を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1または複数のコドン最適化核酸は、少なくとも1つおよび最大で22個の任意の整数の、CGTに改変されたそのアルギニンコドン、少なくとも1つおよび最大で28個の任意の整数の、AGCに改変されたそのセリンコドン(任意に、導入読み取り枠により改変可能である)、ならびに、少なくとも1つおよび最大で12個の任意の整数の、CATに改変されたそのヒスチジンコドン(任意に、導入読み取り枠により改変可能である)を、含んでもよい。いくつかの実施形態では、1または複数のコドン最適化核酸は、CGTに改変されたそのアルギニンコドン22個、AGCに改変されたそのセリンコドン(任意に、導入読み取り枠により改変可能である)28個、およびCATに改変されたそのヒスチジンコドン12個を、含んでもよい。いくつかの実施形態では、1または複数のコドン最適化核酸は、さらに、Leu216(CTG)のコドンを形成するべくMet216(ATG)のコドン内のヌクレオチド置換を有してもよい。
いくつかの実施形態では、1または複数のコドン最適化核酸は、ヒトSmad7野生型cDNA(SEQ ID NO:12、22)に対して約65%〜75%、約65%〜68%、約68%〜75%、または約68%〜71%の相同性を有してもよく、1または複数のコドン最適化核酸は、ヒトSmad7野生型cDNA(SEQ ID NO:12、22)に対して約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、または75%の相同性を有してもよい。いくつかの実施形態では、1または複数のコドン最適化核酸は、さらに、Leu216(CTG)のコドンを形成するべくMet216(ATG)のコドン内のヌクレオチド置換を有してもよい。
翻訳機構(例えば、限定されるものではないが、細菌または酵母など)によって代替の読み取り枠として認識される可能性があるメチオニンコドン(Met216;ATG)が、識別されている。理論に束縛されることを意図するものではないが、第2の潜在的な読み取り枠の存在がSmad7タンパク質の発現を減少させ得ると考えられている。いくつかの実施形態では、1または複数のSmad7核酸配列が、Met216(ATG)がLeu216(CTG)に改変されているヒトSmad7タンパク質をコードするように、ヌクレオチド位置(646〜648)で改変されている。
Smad7タンパク質の様々なトランケートされた形態およびフラグメントが完全長ヒトSmad7の活性の1つまたは複数を保つことも発見されており、そのような活性は、例えば、限定されるものではないが、増殖を増加させること、細胞死を減らすか抑制すること、過度の炎症を減らすこと、DNA損傷を防ぐこと、および/または細胞遊走を増加させること、さらには、処置または予防を、そのような処置が本明細書中でさらに議論されるように有用であると思われる1または複数の疾患または障害に対して行うこと、である。そのような活性を、1または複数のアッセイを用いて評価することができる。そのようなアッセイとして、限定されるものではないが、マウスにおいて、Smad2のリン酸化および/またはNF−κB p50サブユニットの核転座を阻害、細胞増殖を増加、アポトーシスおよび/または放射線誘発DNA損傷を減少、炎症および/または血管新生を減少、口腔粘膜炎、手術性創傷、糖尿病創傷、および/または慢性炎症に伴う創傷の治癒を促進する能力が含まれる。
さらに、Smad7タンパク質の様々なトランケートされた形態およびフラグメントは、完全長ヒトSmad7の1または複数の活性のサブセットのみを、保持する。例えば、Smad7のC末端MH2ドメインは、主に、Smad7の抗炎症効果を媒介し得る。この抗炎症効果を有するSmad7ペプチドは、慢性炎症関連症状、例えば、限定されるものではないが、数ある中でも、口腔粘膜炎、口内炎、関節炎、および乾癬の処置を、十分に、かつ任意に改善し得る。N末端NH1ドメインは、主に、細胞遊走の媒介ならびに/あるいはTGF−β誘導増殖抑制および/または線維化反応の阻害を行い得る。この細胞遊走および増殖機能を有するSmad7ペプチドは、過度の炎症を伴わない治癒の増進に十分であり、かつ任意に改善となり得る。この形態の処置から恩恵を受けると思われる創傷の種類として、数ある中でも、限定されるものではないが、手術性創傷、線維性瘢痕、および糖尿病創傷、欠損治癒、および/または 瘢痕が挙げられる。
いくつかの実施形態では、核酸分子(上記および本明細書中に記載されたように、任意にコドン最適化核酸分子)がSmad7タンパク質(任意に、Leu216を含む)のフラグメントまたはトランケートされた形態をコードする。いくつかの実施形態では、これらのSmad7タンパク質のフラグメントまたはトランケートされた形態は、1または複数あるいは全ての完全長ヒトSmad7の活性タンパク質を保持する。いくつかの実施形態では、そのようなトランケートされた核酸配列がSmad7タンパク質のN末端部分をコードする。いくつかの実施形態では、そのようなトランケートされた核酸配列がSmad7タンパク質のC末端部分をコードする。いくつかの実施形態では、そのようなトランケートされた核酸配列(ヌクレオチド位置4〜774)がヒトSmad7タンパク質のアミノ酸2〜258をコードする。いくつかの実施形態では、そのようなトランケートされた核酸配列(ヌクレオチド位置775〜1278)がヒトSmad7タンパク質のアミノ酸259〜426をコードする。いくつかの実施形態では、核酸配列(ヌクレオチド位置610〜774)のそのようなフラグメントがヒトSmad7タンパク質のアミノ酸204〜258をコードする。
核酸分子に関連して本明細書中で使用される「トランケートされた」という用語は、対応するタンパク質の本来のN末端をコードするヌクレオチド配列(開裂リーダー配列の有無にかかわらず)を含むがC末端コード部分から始まる1または複数のヌクレオチドが欠けている分子、または、対応するタンパク質のC末端をコードするヌクレオチド配列(開裂リーダー配列の有無にかかわらず)を含むがN末端コード部分から始まる1または複数のヌクレオチドが欠けている分子のことをいう。いくつかの実施形態では、一方または他方の末端からの少なくとも約25、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、または少なくとも約350、あるいは少なくとも約400個のアミノ酸をコードするヌクレオチドが欠けている分子が、とりわけ提供される。同様に、「トランケートされた」という用語は、トランケートされた核酸分子によってコードされたタンパク質分子に関連して使用され得る。いくつかの実施形態では、「トランケートされた」分子は、生物活性があり、本明細書中に記載されたSmad7活性の1または複数を有する(または有するポリペプチドをコードする)。
核酸分子に関連して本明細書で使用される「フラグメント」という用語は、完全長配列の連続した残基を含むが、この完全長配列の一部の5'および/または3'配列が欠けている分子のことをいう。いくつかの実施形態では、「フラグメント」には本明細書中に記載された完全長配列の1または複数の部分を含む。いくつかの実施形態では、「フラグメント」は、N末端またはC末端のいずれかをコードする配列を含まず、内側のフラグメントに限られている。いくつかの実施形態では、「フラグメント」は、本明細書中に記載されたSmad7活性の1または複数を有する、生物活性のあるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、核酸フラグメントは、少なくともおおよそ25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150個のアミノ酸を有するタンパク質をコードし得る。同様に、「フラグメント」は、Smad7核酸フラグメントによってコードされるタンパク質に関連しても用いられ得る。
本明細書中に使用される「N末端部分」という用語は、タンパク質のN末端を含むがC末端から内側残基までの全ての配列が欠けている、対応のタンパク質のフラグメントのことをいう。
本明細書中に使用される「C末端部分」という用語は、タンパク質のC末端を含むがN末端から内側残基までの全ての配列が欠けている、対応のタンパク質のフラグメントのことをいう。
理論に束縛されることを意図するものではないが、Smad7タンパク質活性は、細胞の細胞質および核の両方での相互作用の結果であろうと、一般に考えられている。とりわけこの理由により、Smad7タンパク質は治療的役割に関して候補にはならないと一般に信じられていた。しかし、タンパク質治療薬としてSmad7の開発を推進し、Smad7核酸配列(例えば、Smad7をコードする本明細書中に記載された核酸配列であって、ヒト野生型およびコドン最適化配列、完全長および生物活性フラグメントまたはトランケートされた部分の両方を含む)とインフレームのタンパク質導入ドメイン(PTD)をコードするべくSmad7核酸配列を改変する決定がなされた。いくつかの実施形態ではPTDがSmad7核酸配列の3'末端に位置し、いくつかの実施形態では、PTDがSmad7核酸配列の5'末端に位置している。いくつかの実施形態において、PTDとSmad7核酸配列とを接続する1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸をコードするリンカー配列がある。
いくつかの実施形態では、PTD核酸配列はTat核酸配列である。
をコードする
、
をコードする
、または
をコードする
。
いくつかの実施形態では、核酸配列は、さらに、1または複数のエピトープタグまたは精製タグをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、エピトープタグはV5である。いくつかの実施形態では、精製タグはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)または6−ヒスチジン(H6)の1または複数である。
核酸分子に関して本明細書中で使用される「エピトープタグ」という用語は、抗体またはフラグメントの可変領域が認識および結合するペプチド配列をコードするヌクレオチドのことをいう。いくつかの実施形態では、エピトープタグは、天然タンパク質の一部ではない。いくつかの実施形態では、エピトープタグは、除去可能である。いくつかの実施形態では、エピトープタグは、タンパク質の天然生物活性にとって内因性のものではない。エピトープタグの例として、限定されるものではないが、V5が挙げられる。
核酸分子に関して本明細書中で使用される「精製タグ」という用語は、タンパク質の精製を促進するがタンパク質の生物活性には概ね必要ではないペプチド配列をコードするヌクレオチドのことをいう。いくつかの実施形態では、タンパク質精製後に精製タグを除去することが可能である。精製タグの例として、限定されるものではないが、GSTおよびH−6が挙げられる。
2.クローニング、遺伝子導入、および発現用のベクター
いくつかの実施形態では、Smad7ポリペプチド産物を発現ベクターを用いて発現させ、これを次に、様々な用途のために精製することができる。別の実施形態では、発現ベクターを遺伝子治療に用いる。発現は、適当なシグナルがベクターに設けられることを必要とし、それは様々な調節エレメント、例えば、宿主細胞で目的の遺伝子の発現を駆動する哺乳動物源由来のエンハンサー/プロモーターを含む。宿主細胞でのメッセンジャーRNA安定性および翻訳性を最適化するように設計されたエレメントも定義される。産物を発現する永久かつ安定的な細胞クローンを確立するための、いくつかの優位な薬物選択マーカーを使用するための条件も提供され、これはそのまま、薬物選択マーカーの発現とポリペプチドの発現を連結させる要素となる。
この出願全体を通して、「発現コンストラクト」という用語は、核酸コード配列の一部または全部が転写されることができる遺伝子産物をコードする核酸を含む任意のタイプの遺伝子コンストラクトを包含することを、意図している。この転写産物をタンパク質に翻訳してもよいが、必要なことではない。いくつかの実施形態において、発現には、遺伝子の転写と遺伝子産物へのmRNAの翻訳との両方が含まれる。他の実施形態において、発現は、目的の遺伝子をコードする核酸の転写のみを含む。
「ベクター」という用語は、核酸配列が複製され得る細胞への導入のために核酸配列が挿入され得る担体核酸分子のことをいう。核酸配列は、「外因性」であり得、このことは、ベクターが導入される細胞に対してそれが外来であることを意味するか、または、該配列は細胞内の配列と相同であるが該配列が通常見られない宿主細胞核酸中の位置にあることを意味している。ベクターとして、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が挙げられる。当業者は、例えば、両方とも本明細書に参照により援用される、Sambrook et al., Molecular Cloning (Cold Spring Harbor Lab Press、1989)と、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Wiley、1994)とに記載された標準的な組換え技術を通して、ベクターを構築するのに十分な知識を備えているだろう。
「発現ベクター」という用語は、転写されることができる遺伝子産物の少なくとも一部分をコードする核酸配列を含むベクターのことをいう。いくつかの例では、次いでRNA分子が、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の例では、例えば、アンチセンス分子またはリボザイムの生成において、これらの配列は翻訳されない。発現ベクターは、様々な「制御配列」を含むことができ、この制御配列は、特定の宿主生物内での作動可能に連結したコード配列の転写または潜在的には翻訳に必要な核酸配列のことを指し、プロモーターおよびエンハンサーが含まれる。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能、例えば、転写終了シグナルおよびポリアデニル化部位の働きをする核酸配列を含んでもよい。
効率よく細胞に感染または侵入する、宿主ゲノムに組み込まれる、およびウイルス遺伝子を安定的に発現するという特定のウイルスベクターの能力は、いくつかの異なるウイルスベクター系の開発および適用をもたらした。Robbins et al., Pharmacol. Ther. 80:35-47 (1998)。ウイルス系は、現在、エクスビボおよびインビボの遺伝子導入のためのベクターとして使用されている。例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、およびアデノ随伴ウイルスベクターは、癌、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、腎臓病、関節炎などの疾患の処置について、現在評価されている。Robbins et al., Pharmacol. Ther. 80:35-47 (1998); Imaiら、Nephrologie 19:379-402 (1998); 米国特許第5,670,488号。特定の遺伝子治療用途に応じて、様々なウイルスベクターが特定の利点および不利な点を示す。
本技術とともに使用されるオルガネラ、細胞、組織、または生物の形質転換用の核酸送達のための適当な非ウイルス方法は、実質的には、本明細書中に記載されているように、または、当業者に知られているように、核酸(例えば、DNA)をオルガネラ、細胞、組織、または器官に導入することができる任意の方法を含むと考えられる。そのような方法として、限定されるものではないが、例えば、マイクロインジェクション(Harland and Weintraub, 1985; 米国特許第5,789,215号、本明細書に参照により援用)を含むインジェクション(米国特許第5,994,624号、同第5,981,274号、同第5,945,100号、同第5,780,448号、同第5,736,524号、同第5,702,932号、同第5,656,610号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号、各々を本明細書に参照により援用)によって、エレクトロポレーション(米国特許第5,384,253号、本明細書に参照により援用))によって、リン酸カルシウム沈殿(Graham et al., Virology 52:456-467 (1973); Chen, et al., Mol. Cell Biol. 7:2745-2752 (1987)によって、DEAEデキストランとそれに続くポリエチレングリコール(Gopal, Mol. Cell Biol. 5:1188-1190 (1985))とを用いることによって、ダイレクトソニックローディング(Fechheimer et al., PNAS 84:8463-8467 (1987))によって、リポソーム媒介トランスフェクション(Nicolau et al., Biochim. Biophys. Acta 721:185-190 (1982); Fraley et al., PNAS 76:3348-3352 (1979); Nicolau et al., Methods Enzymol. 149: 157-176 (1987); Wong et al., Gene 10:87-94 (1980); Kaneda et al., J. Biol. Chem. 264:12126-12129 (1989); Kato et al., J. Biol. Chem. 266:3361-3364 (1991))によって、微粒子銃(PCT出願番号第WO 94/09699号および同第95/06128号; 米国特許第5,610,042号、同第5,322,783号、同第5,563,055号、同第5,550,318号、同第5,538,877号、および同第5,538,880号、各々を本明細書に参照により援用)によって、炭化けい素繊維による撹拌によって(Kaepplerら、Plant Cell Rep. 9:415-418 (1990); 米国特許第5,302,523号および同第5,464,765号、各々を本明細書に参照により援用)によって、またはプロトプラストのPEG媒介形質転換(Omirulleh, et al., Plant Mol. Biol. 21:415-428 (1993); 米国特許第4,684,611号および同第4,952,500号、各々を本明細書に参照により援用)によって、乾燥/抑制媒介DNA取込み(Potrykusら、Mol. Gen. Genet. 199:169-177 (1985))によって、DNAを直接送達することが挙げられる。これらのような技術の適用を通して、オルガネラ(複数可)、細胞(複数可)、組織(複数可)、または生物(複数可)は、安定して、または、一時的に、形質転換され得る。
3.発現系
上述の組成物の少なくとも一部または全てを含む数多くの発現系が存在する。原核生物および/または真核生物をベースとした系を、本技術とともに使用して、核酸配列、またはその関連するポリペプチド、タンパク質、およびペプチドを作ることができる。多くのそのような系が市販されており、広く利用可能である。
昆虫細胞/バキュロウイルス系は、異種核酸セグメントの高レベルのタンパク質発現を生じることができ、例えば米国特許第5,871,986 号および同第4,879,236号(両方とも本明細書に参照により援用)に記載され、かつInvitrogen(登録商標)からMAXBAC(登録商標)2.0の名のもとで、CLONTECH(登録商標)からBACPACK(商標)バキュロウイルス発現系の名のもとで、購入することができる。
発現系の他の例には、STRATAGENE(登録商標)のCOMPLETE CONTROL(商標)誘導性哺乳類発現系が含まれ、この発現系は、合成エクジソン誘導受容体、またはそのpET発現系、大腸菌(E.coli)発現系を伴う。誘導性発現系の別の例は、Invitrogen(登録商標)から入手可能であり、これは完全長CMVプロモーターを用いる誘導性哺乳類発現系であるT−REX(商標)(テトラサイクリン調節発現)系を包含する。Invitrogen(登録商標)は、Pichia methanolica 発現系と呼ばれる酵母発現系も提供し、この系はメチロトローフ酵母Pichia methanolicaにおける組換えタンパク質の高レベル生産用に設計されている。当業者は、核酸配列またはその関連するポリペプチド、タンパク質、あるいはペプチドを生産するために発現コンストラクトなどのベクターをどのように発現させるかを理解している。
哺乳類細胞初代培養を様々なやり方で調製することが可能である。インビトロかつ発現コンストラクトと接触されている状態で細胞を生存可能に保つためには、細胞が正確な比率の酸素および二酸化炭素および栄養素との接触を保つが微生物汚染から保護されていることを確実にする必要がある。細胞培養技術は十分に実証されている。
前述の1つの実施形態は、タンパク産生用の細胞を不死化するために遺伝子導入の使用を伴う。目的のタンパク質の遺伝子を上記のように、適当な宿主細胞に導入し、それに続いて適当な条件下で細胞を培養してもよい。このようなやり方で、実質的に任意のポリペプチドの遺伝子を使用することが可能である。組換え発現ベクターとそれに含まれるエレメントは、前述している。あるいは、生じるタンパク質は、問題の細胞によって正常に合成された内因性タンパク質であってもよい。
有用な哺乳類宿主細胞系の例は、Vero細胞およびHeLa細胞、ならびに、チャイニーズハムスター卵巣細胞、W138細胞、BHK細胞、COS−7細胞、293細胞、HepG2細胞、NIH3T3細胞、RIN細胞、およびMDCK細胞の細胞系である。さらに、宿主細胞として、挿入配列の発現を調整するか、所望のやり方で遺伝子産物を改変および処理するものを選択してもよい。そのようなタンパク質産物の改変(例えば、グリコシル化)およびプロセッシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要であると思われる。様々な宿主細胞が、翻訳後プロセッシングおよびタンパク質改変にとって特徴的かつ具体的な機能を有する。発現した外来タンパク質の改変およびプロセッシングを保証するべく、適当な細胞系または宿主系を選択することができる。
いくつかの選択系を使用することが可能であり、限定されるものではないが、それぞれ、tk−、hgprt、またはaprt−細胞における、HSVチミジンキナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれる。また、 への耐性を与えるdhfr、ミコフェノール酸への耐性を与えるgpt、アミノグリコシドG418への耐性を与えるneo、およびハイグロマイシンへの耐性を与えるhygroを選択するための基礎として代謝拮抗物質耐性を用いることができる。
本明細書中で使用されるように、用語「細胞」、「細胞系」、および「細胞培養」は、互いに可換なものとして使うことができる。これらの用語の全てがそれらの子孫も含み、これは任意または全ての後に続く世代である。全ての子孫が計画的または偶然な突然変異により同一ではないものと理解される。異種の核酸配列を表す文脈では、「宿主細胞」は原核または真核細胞のことをいい、ベクターの複製および/またはベクターによってコードされた異種遺伝子の発現を行うことができる任意の形質転換可能な生物を含む。宿主細胞をベクターのレシピエントとして使用することができる(そして使用されてきた)。宿主細胞は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスのことをいう「形質移入された」または「形質導入された」ものであってもよい。形質導入細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。
宿主細胞は、所望の結果がベクターの複製であるかベクターがコードする核酸配列の一部または全ての発現であるかに応じて、原核生物または真核生物(例えば、細菌または酵母)に由来するものであってもよい。多数の細胞系および培養を宿主細胞として利用可能であり、それらは、生きた培養物および遺伝物質のアーカイブとしての役割を果たす組織であるAmerican Type Culture Collection(ATCC)を通して得ることができる(atcc.org)。適当な宿主は、ベクター主鎖と所望の結果に基づいて当業者により決定され得る。例えば、プラスミドまたはコスミドを、多くのベクターを複製させるために、原核宿主細胞に導入することができる。ベクター複製および/または発現の宿主細胞として使用される細菌細胞として、DH5α、JM109、およびKC8、さらには、SURE(登録商標)コンピテント細胞および SOLOPACK(登録商標)Gold Cells (STRATAGENE(登録商標)、La Jolla)などの多くの市販の細菌宿主が挙げられる。あるいは、大腸菌(E.coli)LE392などの細菌細胞をファージウイルスの宿主細胞として使うことができよう。
ベクターの複製および/または発現用の宿主細胞の例として、HeLa、NIH3T3、Jurkat、293、Cos、CHO、Saos、およびPC12が挙げられる。様々な細胞型および生物に由来する多くの宿主が利用可能であり、当業者に知られている。同様に、ウイルスベクターは、真核宿主細胞または原核宿主細胞のいずれか、より詳しくはベクターの複製または発現を許容するものと同時に使用され得る。
いくつかのベクターは、原核細胞および真核細胞の両方で複製および/または発現することを可能にする制御配列を使用することが可能である。当業者は、上記した宿主細胞をインキュベートして維持するとともにベクターの複製を可能にする条件を、さらに理解するだろう。また、理解されて知られているのは、ベクターによってコードされた核酸およびその関連するポリペプチド、タンパク質、またはペプチドの生産と同様に、ベクターの大規模生産を可能にする技術および条件である。
B.Smad7タンパク質およびタンパク質フラグメント
デカペンタプレジックホモログ7(Smad7)に対する上位要素は、以前に、(a)シグナル伝達SmadのTGF−β受容体媒介リン酸化と核転座の遮断、(b)特定のユビキチンプロテアソーム経路を介したTGF−β受容体とシグナル伝達Smadの分解増加、および(c)Smad結合エレメント(SBE)に対する結合のためのシグナル伝達Smadの抑制を含むいくつかのメカニズムによって、TGF−βシグナル伝達のアンタゴニストとして同定された。Smad7はまた、NF−κBのような他のシグナル伝達経路と拮抗する。
Smad7タンパク質は、上述のSMAD7遺伝子によってコードされる。多くの他のTGF−βファミリーのように、Smad7は細胞シグナル伝達に関係している。それは、TGF−β1型受容体拮抗薬である。それは、該受容体に関連しているTGF−β1とアクチビンを阻害し、Smad2へのアクセスを阻害する。それは抑制Smad(I−SMAD)であり、SMURF2によって増進される。Smad7は、筋分化も増進する。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」が、本明細書中では互いに可換なものとして使用され、アミノ酸残基のポリマーのことをいう。これらの用語は、天然のアミノ酸と、1または複数のアミノ酸残基が非天然のアミノ酸、例えばアミノ酸アナログであるアミノ酸ポリマーとに適用される。本明細書中で使用されるように、これらの用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、それにはアミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結される完全長タンパク質が含まれる。
一実施形態では、本技術は、Smad7タンパク質組成物に関連する。Smad7分子全体に加えて、本技術は、Smad7に関連した1または複数の活性、例えば、限定されるものではないが、増殖を増加させること、細胞死を減らすか抑制すること、過度の炎症を減らすこと、DNA損傷を防ぐこと、および/または 細胞遊走を増加させること、さらには、処置または予防を、そのような処置が本明細書中でさらに議論されるように有用であると思われる1または複数の疾患または障害に対して行うことを保持する、ポリペプチドのトランケートされた部分およびフラグメントにも関連する。そのような活性を1または複数のアッセイを用いて評価することができ、アッセイには、限定されるものではないが、マウスにおける、Smad2のリン酸化および/または NF−κBp50サブユニットの核転座を阻害する、細胞増殖を増加する、アポトーシスおよび/または放射線誘発DNA損傷を減らす、炎症および/または脈管形成を減らす、口腔粘膜炎、手術性創傷、糖尿病創傷、糖尿病創傷、および/または慢性炎症に関連した創傷の治癒を促進する能力の活性化が含まれる。
タンパク質フラグメントは、コード領域内の翻訳停止部位の遺伝子操作によって、生成可能である(後述)。あるいは、プロテアーゼとして知られているタンパク質分解酵素によりSmad7分子を処理することで、様々なN末端、C末端、および内部フラグメントを作ることができる。これらのフラグメントを、沈殿(例えば、硫酸アンモニウム)、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー(免疫親和性クロマトグラフィー)、または様々なサイズ分離(沈降、ゲル電気泳動、ゲル濾過)などの公知の方法に従って生成可能である。
本明細書中に使用されるように、本実施形態の単離されたタンパク質またはポリペプチドへの言及には、完全長タンパク質、融合タンパク質、キメラタンパク質、あるいはそのようなタンパク質の任意のフラグメント(トランケートされた形態、部分)またはホモログが含まれる。より詳しくは、単離タンパク質は、本来の環境(人為的操作を受けている)から取り出されたタンパク質(ポリペプチドまたはペプチドを含む)であり、限定されるものではないが、精製タンパク質、部分精製タンパク質、組換えにより作られたタンパク質、脂質と複合化されたタンパク質、可溶性タンパク質、合成されたタンパク質、および他のタンパク質を伴う単離タンパク質を含むことができる。このため、「単離」は、タンパク質が精製された程度を反映しない。好ましくは、単離タンパク質は、組換えによって生産される。
Smad7の変異体も提供され、これらは、置換、挿入、または欠失変異体であり得る。欠失変異体は、天然タンパク質の、活性に必須ではない1または複数の残基を欠いており、上記および本明細書中に記載のトランケーション変異体を含む。置換変異体は、概して、タンパク質内の1または複数の部位での1つのアミノ酸の別のものへの交換を含み、かつ、他の機能または特性を喪失することなく、タンパク質分解性開裂および/または翻訳および/または転写(タンパク質発現)に対する安定性などの、ポリペプチドの1または複数の特性を改変するように設計され得る。好ましくは、このような種類の置換は保存的である。すなわち、1つのアミノ酸が類似の形状および変化の1つにより置き換えられる。保存的置換は、当該技術分野で周知であり、例えば、各々のアミノ酸が変化しまたは異なるアミノ酸と置換され得ることが含まれる。置換変異体を作る際に、疎水性指標、親水性、荷電、および大きさは、通常考慮される。
具体的には、企図されたSmad7の欠失変異体は、トランケーションおよびフラグメントを含むもので、例えば、C末端配列を持たないがN末端配列を持つポリペプチド、N末端配列を持たないがC末端配列を持つポリペプチド、あるいはN末端配列もC末端配列も持たないが内部配列を持つポリペプチド、が含まれる。具体的には、企図されたSmad7ポリペプチドトランケーションまたはフラグメントは、限定されるものではないが、天然のヒトSmad7タンパク質範囲に対応するアミノ酸残基2〜258、259〜426、204〜258を含む分子が含まれる。
タンパク質配列に関連して本明細書中に使用される「トランケートされた」という用語は、対応するタンパク質(開裂リーダー配列の有無にかかわらず)の本来のN末端を含むが、C末端から始まる1または複数のアミノ酸が欠けている分子、あるいは、対応するタンパク質(開裂リーダー配列の有無にかかわらず)の本来のC末端を含むが、N末端から始まる1または複数のアミノ酸が欠けている分子のことをいう。いくつかの実施形態では、少なくとも約25、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、または少なくとも約350、あるいは少なくとも約400個のアミノ酸が一方または他方の末端から欠けている分子が、とりわけ提供される。いくつかの実施形態では、「トランケートされた」分子は、生物活性があり、本明細書中に記載された1または複数のSmad7活性を有する。
ポリペプチド配列に関連して本明細書中で使用される「フラグメント」という用語は、完全長配列の連続した残基を含むが、この完全長配列のN末端および/またはC末端側のいくつかの残基が欠けている分子のことをいう。いくつかの実施形態では、「フラグメント」は、本明細書中に記載された完全長配列の1または複数の部分を含む。いくつかの実施形態では、「フラグメント」は、N末端またはC末端のいずれかをコードする配列を含まないが、内部フラグメントをコードする配列のみを含む。いくつかの実施形態では、「フラグメント」は、本明細書中に記載されたSmad7活性の1または複数を有する、生物活性のあるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ポリペプチドフラグメントは、少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150個のアミノ酸を有する。
変異体の特化した種類が融合タンパクである。概して、この分子は天然分子の全てまたは実質的に一部分を有し、これが、NまたはC末端で第2のポリペプチドの全てまたは一部分に連結している。しかしながら、いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、本開示全体にわたって説明されるフラグメントおよび/またはトランケートされた(N末端、C末端)Smad7タンパク質のいずれか1つを含んでもよい。例えば、融合は、異種宿主でのタンパク質の組換え発現を可能にするために、他の種由来のリーダー配列を用いてもよい。別の有用な融合は、任意の機能的に活性なドメインの付加を含み、このドメインは、限定されるのものではないが、例えば、抗体エピトープおよび/または精製タグ
である。融合の別のタイプは、活性化または不活性化リガンドの標的として作用し得るドメインを付着することで、対象にひとたび送達された際に融合タンパク質の制御を可能にする。そのようなドメインは、例えば、ステロイドリガンド結合(例えば、ER、PR、GR)を含み、これは、4−ヒドロキシルタモキシフェンまたはRU486などの小分子によって活性化されることができ、該分子は、該ステロイドリガンド結合ドメインを独自に活性化でき、かつ/または、天然には存在せず、したがって該小分子の存在によりSmad7機能を完全に制御することが可能である。
本技術における特に有用である融合タンパク質の別の特定の形態は、細胞送達ドメインまたは細胞形質導入領域とも呼ばれる、タンパク質導入領域(PTD)を含む融合である。そのようなドメインは、当該技術分野において説明されており、通常、短い両親媒性またはカチオン性ペプチドおよびペプチド誘導体を特徴とし、しばしば、複数のリジンおよびアルギニン残基を含む(Fischer, Med. Res. Rev. 27:755-795 (2007))。いくつかの実施形態において、PTDはHIV
、あるいは代替的に、HSV VP16の1または複数の変異体である。Tatのほかの形態を用いることが可能である。いくつかの実施形態において、リンカーを、1または複数のPTDとSMad7とを接続するために用いてもよい。いくつかの実施形態において、PTD(任意にTat)が、インフレームで、本開示の全体にわたって記載されているSmad7の完全長、フラグメント、および/またはトランケートされた(N末端、C末端)タンパク質のいずれか1つのN末端および/またはC末端に、融合または連結される。本技術によって提供されるPTDの他の例を、表1に示す。
特定の実施形態において、本技術は、1または複数の残基が変えられたSmad7の配列変異体を提供する。例えば、一実施形態において、ヒトSmad7配列の216位にあるメチオニン残基がロイシン残基に改変されている(ATGからCTGへ)。
C.処置の方法
Smad7で処置可能な疾患および障害として、細胞増殖の減少、細胞遊走の減少、細胞死の増加、過度の炎症、および/またはDNA損傷のうちの1または複数を含むものが挙げられる。Smad7関連疾患および障害としては、限定されるものではないが、増殖を増加させること、細胞死を減らすか抑制すること、過度の炎症を減らすこと、DNA損傷を防ぐこと、および/または細胞遊走を増加させることを含む1または複数の活性を有するSmad7タンパク質ならびにその生物活性フラグメントおよび誘導体による処置が役立つものが挙げられる。そのような疾患および/または障害として、限定されるものではないが、急性(例えば、外科手術、格闘、外傷による)および慢性創傷(例えば、糖尿病性、褥瘡性、静脈性の潰瘍)、瘢痕、線維症、および異常治癒、粘膜炎(例えば、口腔および/または胃腸)、口内炎、直腸炎、自己免疫疾患(例えば、乾癬、関節炎)、ならびに癌が挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載した疾患および/または障害の1または複数を、そのような処置を必要としている対象に対して、本開示に記載した1または複数のSmad7タンパク質(例えば、完全長または生物活性のあるトランケートされたもの(例えば、N末端またはC末端)、あるいはそのフラグメント)を治療上有効量与えることによって、予防、処置、および/または改善することが可能である。いくつかの実施形態では、1または複数のSmad7タンパク質は、PTDドメインを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、1または複数のSmad7タンパク質は、Leu216を有する。いくつかの実施形態では、Smad7タンパク質は、1または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の一部をなす。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載した疾患および/または障害の1または複数が、そのような処置を必要としている対象に対して、本開示に記載した1または複数のSmad7タンパク質(例えば、完全長または生物活性のあるトランケートされたもの(例えば、N末端またはC末端)、あるいはそのフラグメント)をコードする1または複数の核酸分子を治療上有効量与えることによって、予防、処置、および/または改善することが可能である。いくつかの実施形態では、1または複数の核酸分子は、コドン最適化ヌクレオチド配列および/またはLeu216をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、1または複数のSmad7核酸分子は、発現ベクターを含むコンストラクトで対象に与えられる。いくつかの実施形態では、Smad7核酸分子(任意に、発現ベクターの一部分)は、1または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の一部をなす。
本明細書中に使用される「対象」または「患者」という用語は、本明細書中に記載された処置の1または複数を用いる処置および/または予防を必要としているヒトまたは非ヒト動物のことをいう。いくつかの実施形態では、非ヒト動物として、サル、マウス、ラット、およびウサギなどの実験動物、イヌおよびネコなどの家庭内ペット、ならびにウマ、ブタ、ヤギ、およびヒツジなどの家畜が挙げられる。
1.慢性創傷
慢性創傷は、大多数の創傷のように順序正しい段階を踏んで予測可能な時間内に癒える、ということはない創傷であり、3ヵ月以内に治癒しない創傷は、慢性的であるとしばしばみなされる。慢性創傷は、創傷治癒の段階の1または複数で引き止められるようである。例えば、慢性創傷はしばしば、あまりにも長い間、炎症期に残る。急性創傷において、コラーゲンなどの分子の産生と破壊との間には、正確なバランスがある。慢性創傷において、このバランスは失われて、破壊があまりにも大きな役割を担う。
本明細書中の他の場所でより詳細に説明されるように、PTD−Smad7は、マウスの皮膚モデルおよび粘膜モデルで創傷治癒を増強することが示された。PTD−Smad7の適用は、局所経路で効果的であり、このことは創傷処置にとって望ましい。理論に束縛されることを意図するものではないが、PTD−Smad7が複数の経路を介して慢性創傷を処置または改善するべく作用すると考えられ、このような経路として、炎症を減少させること、細胞増殖を増加すること (例えば、ケラチノサイト)、細胞遊走を増加させること (例えば、ケラチノサイト)、または 線維症を減少させること (例えば、コラーゲンの調節を介して)のうちの1または複数を挙げることが可能である。
慢性創傷は決して治癒する可能性がないか、または何年もかかる可能性がある。これらの創傷は、患者に重篤な精神的および肉体的ストレスを生じさせるとともに、患者および医療制度全体に著しい経済的負担をかける。急性創傷と慢性創傷は、創傷治癒タイプの範囲の両端にあり、異なる速度での治癒へ進む。大多数の慢性創傷は、3つのカテゴリーに分類され得る。すなわち、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、および圧迫潰瘍である。これらのカテゴリーに分類されない少数の創傷は、原因(例えば放射線障害または虚血)に起因する場合がある。
静脈および動脈潰瘍。通常脚に起こる静脈性潰瘍は、慢性創傷の約70%〜90%を占めて、大部分は年輩者に影響を及ぼす。それは、静脈に存在して血液の逆流を防ぐ弁の不適当な機能によって生ずる静脈高血圧によると考えられる。虚血は、機能不全から生じ、再灌流障害と組み合わさることで、創傷を導く組織損傷を引き起こす。
糖尿病潰瘍。慢性創傷の別の主な原因である糖尿病は、有病率が増加している。糖尿病は、慢性潰瘍により、一般集団よりも15%高い切断のリスクを有する。糖尿病によって神経障害が生じ、それにより痛覚および疼痛の認知が抑えられる。したがって、患者は下腿と足に対する小さい創傷に最初、気がつかない場合があり、そのため、感染または損傷繰り返しを防止できない場合がある。さらに、糖尿病によって免疫低下および小血管の損傷が生じ、組織の十分な酸素投与が妨げられ、このことにより慢性創傷が生じ得る。圧力も、糖尿病潰瘍の形成に一役担う。
圧迫潰瘍。もう一つの主要なタイプの慢性創傷は、一般に圧力がかかる身体部分、例えば踵、肩甲骨、および仙骨などの動きを抑制する麻痺などの症状のある人々に通常起こる、圧迫潰瘍である。圧迫潰瘍は、組織への圧迫が毛細管内の圧力よりも大きく、それによりこの領域への血流が制限される場合に生ずる、虚血に起因する。皮膚よりも多くの酸素と栄養分とを必要とする筋肉組織は、長期間にわたる圧力から受ける最悪な影響を示す。他の慢性潰瘍と同様に、再灌流障害は組織に損傷を与える。
慢性創傷は、表皮および真皮のみに影響を及ぼし得るか、または筋膜にまで及ぶ組織に影響を及ぼし得る。慢性創傷は、本来、急性創傷を引き起こすのと同じもの、例えば手術または偶発的な外傷によって、形成され得る。あるいは、全身感染の結果として、脈管、免疫、もしくは神経の不全、または腫瘍形成もしくは代謝疾患などの共存症を形成し得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、損傷が慢性的になる理由は、損傷に対処する体の能力が、例えば反復される外傷、持続的な圧力、虚血、または疾患などの因子によって、押さえ込まれることである。慢性創傷をもたらす主な要因のいくつかは、虚血、再灌流障害、および細菌コロニー形成を含むが、これに限定されるものではない。
虚血。虚血は、特に(通常そうであるように)それが反復して起こる場合または患者の高齢期と組み合わさった場合、創傷の形成および持続における重要な要素である。虚血は、組織に炎症を引き起こさせ、細胞に、インターロイキン、ケモカイン、ロイコトリエン、および補体因子などの好中球を引きつける因子を生じさせる。
病原体と戦う間、好中球は細胞に損傷を与える炎症性サイトカインと酵素も放出する。それらの重要な機能の1つは、細菌を殺菌するために活性酸素種(ROS)を生じることであり、そのためミエロペルオキシダーゼと呼ばれる酵素を使用する。好中球および他の白血球によって生成される酵素およびROSは、細胞に損傷を与えて、DNA、脂質、タンパク質、ECM、および治癒を促進するサイトカインに損害を与えることによって、細胞増殖および創傷閉鎖を妨げる。好中球は、急性損傷の場合よりも長期にわたって慢性創傷に残存し、慢性創傷がより高いレベルの炎症性サイトカインおよびROSを有するという事実に寄与する。慢性創傷からの創傷液がプロテアーゼおよびROSを過剰に持つので、その液体自体が、細胞成長を阻害して、ECMの増殖因子およびタンパク質を分解することによって、治癒を阻害する可能性がある。
細菌コロニー形成。創傷環境にあるより多くの酸素によって白血球がROSを生じて細菌を殺すので、組織酸素化が不十分な患者、例えば外科手術中に低体温症に罹患した患者は、感染のリスクが高い。細菌の存在に対する宿主の免疫応答は、炎症を長引かせて治癒を遅らせ、組織にダメージを与える。感染は、慢性創傷だけでなく、壊疽、感染した肢の喪失、および患者の死亡にもつながり得る。
虚血のように、細菌コロニー形成および感染は、より大きな数の好中球を創傷部位に侵入させることによって、組織に損傷を与える。慢性創傷を有する患者は、抗生物質に対する耐性を持つ細菌を生じさせる時間を持ち得る。さらに、薬剤耐性菌株、例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染している患者は、よりいっそう慢性的な創傷を呈する。
増殖因子とタンパク質分解酵素。慢性創傷は、エラスターゼとマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などのタンパク質分解酵素のレベルはより高いが血小板由来増殖因子およびケラチノサイト増殖因子などの増殖因子の濃度はより低いという点でも、急性創傷と性質が異なる。
増殖因子(GF)が適時な創傷治癒に不可避であることから、不十分なGFレベルは慢性創傷形成の重要な要素であり得る。慢性創傷において、増殖因子の形成および放出が妨げられる場合があり、そのような因子が隔離されて代謝的な役割を遂行できない場合または細胞もしくは細菌のプロテアーゼによって過剰に分解される場合がある。
糖尿病性および静脈性の潰瘍などの慢性創傷は、線維芽細胞の障害によっても生じ、十分なECMタンパク質を産生して、ケラチノサイトにより創傷を上皮化する。線維芽細胞遺伝子発現は、急性創傷と慢性創傷で異なる。
すべての創傷が適切に治癒されるには特定のレベルのエラスターゼとプロテアーゼとが必要であるにもかかわらず、あまりにも高い濃度は有害である。創傷部の白血球は、エラスターゼを放出し、それが炎症を増加させて、組織、プロテオグリカン、およびコラーゲンを破壊し、さらに、増殖因子、フィブロネクチン、およびプロテアーゼを阻害する因子に悪影響を及ぼす。エラスターゼの活性は、慢性創傷に見られる最も豊富なタンパク質であるヒト血清アルブミンによって、増加する。しかしながら、アルブミンが不十分である慢性創傷は特に治癒する可能性が低いので、創傷の該タンパク質レベルを調整することが慢性創傷を治癒させるのに役立つと今後証明されるであろう。
白血球によって放出される過剰なマトリックスメタロプロテイナーゼは、創傷が慢性的になる原因になり得る。MMPは、ECM分子、増殖因子、およびプロテアーゼ阻害因子を壊すので、分解を増やす一方で構造を縮小させ、これにより、産生と分解との間のデリケートな妥協点のバランスを崩してしまう。
口腔潰瘍。口腔内潰瘍(口腔潰瘍または粘膜潰瘍とも称される)は、口腔の粘膜に生じる潰瘍である。より簡潔に言えば、口腔内潰瘍は口内のただれすなわち露出した病変である。口腔内潰瘍は、かなり一般的なもので、多くの疾患に関連して、かつ多くの異なる機序によって起こるが、通常、深刻な基礎原因がない。口腔潰瘍化の2つの最も一般的な原因は、局所外傷(例えば、歯の詰め物の鋭い縁で擦られる)とアフタ性口内炎(「口内びらん」)であり、これは、大多数が未知の理由による口腔潰瘍の再発形成によって特徴づけられる状態である。 唇上または口周囲の皮膚上の潰瘍が一般的な用語である口腔潰瘍化に含まれると考えられることもある(例えば、***疱疹、すなわち口辺ヘルペスに起因する水疱の破裂が残す潰瘍)。口の中の潰瘍によって、多くの場合、痛みと不快感が起き、治癒が生じている間にその人の食べ物の好みが変わる可能性がある(例えば、酸性または辛い食品および飲料を避ける)。それらは、単独で起こる場合があり、あるいは、多数の潰瘍が同時に起こる場合がある(潰瘍の「集団」)。一旦形成されると、潰瘍は炎症および/または二次感染によって維持される可能性がある。まれに、何週間もの間治癒しない口腔内潰瘍は、口腔癌の徴候である場合がある。他の原因は、熱傷、化学損傷、または感染を含む。
粘膜潰瘍は、より詳しくは粘膜に生じる潰瘍である。潰瘍は、上皮結合組織辺縁を貫通した組織欠損であり、その基底は粘膜下組織の深いレベル、またはさらに、筋肉もしくは骨膜の中にある。潰瘍は、びらんまたは表皮剥離よりも深い上皮の破損であり、上皮と粘膜固有層への損傷を含む。びらんは、上皮の表面の破損であり、その下にある粘膜固有層に対する損傷はほとんどない。粘液性びらんは、特に粘膜に生じるびらんである。表皮または粘膜の表面の上皮細胞だけが失われ、病変は基底膜の深さに達する可能性がある。びらんは、瘢痕化なしで治癒する。表皮剥離は、びらんより深いが潰瘍より浅い上皮の破損を説明するのにしばしば用いられる用語である。この種の病変は、乳頭間突起にはほとんど関係なく、そして、露出した毛細血管ループに起因する点状出血(小さなピンヘッドスポット)を示す。
2.急性創傷/外傷
身体的外傷とは、足の切断など、重篤かつ身体に変化をもたらす身体的損傷である。鈍器外傷は、鈍器からまたはそれにより加えられた衝撃または他の力に起因する身体的外傷の一種であり、一方、穿通性外傷は、皮膚または組織に物体が突き通る身体的外傷の種類である。外傷は、事故などの計画されていないもの、または、外科手術の場合の計画されたものとしても、記述され得る。両方とも、軽度から重度の組織損傷、失血、および/またはショックによって特徴づけられることができ、両方とも敗血症を含む二次的な感染をもたらす場合がある。本技術は、前処理(医療処置の場合)および外傷性損傷が起こった後の処置を含む、外傷性障害の処置を提供する。
本明細書中のほかのところで述べられるように(そして簡単に上記したように)、PTD−Smad7は、マウス皮膚モデルと粘膜モデルとで創傷治癒を増強するということが知られている。PTD−Smad7の適用は局所経路を介すると効果的であった。このことは、創傷処置にとって望ましい。理論に束縛されることを意図するものではないが、PTD−Smad7は、数多くあるなかで、炎症を減少させること、細胞増殖(例えば、ケラチノサイト)を増加させること、細胞遊走(例えば、ケラチノサイト)を増加させること、または線維症(例えば、コラーゲンの調節を通して)を減少させることの1または複数を含み得る複数の経路を介して、創傷を処置または改善するように作用し得ると考えられている。以下に簡単に述べられるように、炎症の減少は、任意に、脈管形成およびコラーゲン産生の減少、ならびに/または、白血球浸潤の減少(それは、白血球によって通常放出される脈管形成性および線維形成誘導性であるサイトカインおよびケモカインの減少をもたらす)を介して、創傷治癒促進に著しく寄与し得る。Smad7による一時的治療により、創傷治癒に必要とされる初期脈管形成およびコラーゲン産生が可能になる一方で、長期の脈管形成とコラーゲン産生を防ぐことが可能である。これらの変化によって、潜在的に創傷間質再造形が加速され、未解決の炎症またはコラーゲン生産過剰による過剰な瘢痕が防止されよう。手術的処置(ならびに日常的な損傷)にとって、特に瘢痕の可能性が問題となる箇所で、Smad7による治療は有益であると思われる。
外科手術。外科手術は、患者に対する手術の手動技術および器械技術を、疾患または損傷などの病態を調査および/または処置するために、身体の機能または外見の改善を促すために、あるいはいくつかの他の理由のために、使用する。さらに以下で定義されるように、本技術は外科手術から生じている外傷に対処することができる。
一般に、手技が患者の組織の切断または以前より継続している創傷の閉鎖を伴うとき、その手技は外科的であるとみなされる。このような説明に必ずしも該当するというわけではない他の手技、例えば血管形成または内視鏡検査は、一般的な外科的処置またはセッティングを含む場合、例えば、無菌環境、麻酔、消毒的な条件、典型的外科器械、および縫合またはステープリングを伴う場合、外科手術と考えられる場合もある。外科手術のすべての形態は、侵襲性手技と考えられ、いわゆる非侵襲性外科手術とは、切除術(例えば、角膜のレーザアブレーション)または放射線外科手技(例えば、腫瘍の照射)のことをいう。外科手術は、数分から数時間かかり得る。
外科的処置は、緊急性、手技の種類、関係する体組織、侵襲性の程度、および特殊な器具使用で一般に分類される。待期的手術は、非致命的な状態を直すために行われ、患者の要請に応じて実施され、外科医と手術施設の空き状況とに影響される。救急手術は、生命、四肢、または機能を保つために迅速に行われなければならない外科手術である。診査手術は、診断を補助するか、確認するために実施される。治療的外科手術は、既に診断された症状を処置する。
切断は、身体部位、通常、四肢または指の切断が含まれる。再移植は、切断された部位を再び取り付けることを伴う。再建手術は、体の損傷、切断、または変形した部分の再建を伴う。美容手術は、それ以外は正常な構造の外観を改善するためになされる。切除術は、患者から器官、組織、または他の身体部位を切断することである。移植手術は、別のヒト(または動物)からのものを患者に挿入することによって行われる、器官または身体の部位の置換である。生きているヒトまたは動物から器官または部位を移植用に取り出すことも、一種の外科手術である。
外科手術が1つの臓器系または構造に対して実施される場合、それは器官、臓器系、または関係する組織によって分類可能である。例として、心臓外科手術(心臓に対して実施)、胃腸外科手術(消化管とその付属器の範囲内で実施)、ならびに整形外科手術(骨および/または筋肉に対して実施)が挙げられる。
腹腔鏡手術または血管形成の場合のように、低侵襲手術は、体腔または構造内に小型化された器具を挿入するために、外側に比較的小さな切開部(複数可)を必要とする。対照的に、開腹手技は、目的の領域に到達するために大きな切開部を必要とする。レーザー手術は、組織を切開するために、小刀または類似の外科器械の代わりにレーザー装置の使用を必要とする。マイクロサージェリーは、小さい構造を見るために、外科医用の手術用顕微鏡の使用を必要とする。ロボット外科手術は、外科医の指導のもと装置を制御するべく、手術ロボット(例えばDa VinciまたはZeus手術システム)を使用する。
3.自己免疫/炎症性疾患
本技術は、種々の自己免疫および/または炎症性疾患の症状、例えば、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、炎症性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、シェーグレン症候群、初期の関節炎、ウイルス性関節炎、多発性硬化症、または乾癬の処置を、企図する。これらの疾患の診断および処置は、文献において十分に実証されている。
一般に、自己免疫疾患は、身体に通常存在し、通常の免疫応答の対象ではない物質および組織に対する、身体の過敏性免疫応答に関連する。自己免疫疾患は80種類以上があり、そのいくつかは、類似の症状を呈し、さらに、類似の基礎原因から生ずる場合がある。自己免疫疾患の典型的な徴候は炎症であり、それは本明細書中に開示されているようにSmad7(任意にPTD−Smad7)組成物による処置の対象になる。
4.化学療法、放射線療法、およびサイトカイン療法の毒性
癌患者において、化学療法、放射線、およびサイトカインを含む癌治療の様々な形態は、毒性を伴い、これは時として重篤である。本技術は、この毒性を本技術の医薬組成物を用いて減少させることで、患者の身体部位の不快感を減らすとともに、高用量での治療ができるようにすることを、目指している。
この開示の全体を通じて詳細に述べられるように、マウスモデルにおいてPTD−Smad7が口腔粘膜炎を治癒させかつ防ぐことが明らかになった。直接比較において、PTD−Smad7が既存の口腔粘膜炎予防薬であるパリフェルミンよりも効果的であることが示された。
世界的に6番目に最も頻度の高い癌である口腔癌は、頭頸部癌の亜型であり、口腔に位置するあらゆる癌組織の増殖を含む。それは、口腔組織のいずれかに由来する原発病巣として、遠隔起源からの転移によって、または、鼻腔などの解剖学的隣接構造から広がることによって、生じ得る。あるいは、口腔癌は口の組織のいずれかから生じる場合があり、変化に富む組織型、すなわち奇形腫、大唾液腺または小唾液腺に由来する腺癌、扁桃または他のリンパ組織に由来するリンパ腫、あるいは口腔粘膜の色素産生細胞に由来する黒色腫であり得る。数種類の口腔癌があるが、およそ90%は扁平上皮癌であり、口および唇の内側を覆う組織から生じる。口腔または口の癌は、最も多くの場合、舌を侵す。それは、口腔底、頬内壁、歯肉(歯茎)、唇、または口蓋(口の頂部)に生ずる場合もある。大部分の口腔癌は顕微鏡下で非常に類似しているように見え、扁平上皮癌と呼ばれている。これらは悪性で、急速に広がる傾向がある。
口腔癌患者の80%以上は放射線治療で処置され、これらの人たちの少なくとも75%が口腔粘膜炎を発症する。口腔粘膜炎は、慢性の口腔潰瘍化である。この疾患は、臓器移植のため(移植の拒絶を排除するために)に放射線処置を受けている患者とルーチンの化学療法を受けている患者を含むがこれに限られない、すべての癌型の放射線治療患者に、しばしば起こる。重篤な口腔粘膜炎はかなりの痛みを伴い、食物/液体の摂取量が損なわれ、それゆえに、多くの場合、癌治療で最も重篤な合併症である。口腔粘膜炎は、頭頸部領域に対する放射線療法および化学療法で可能な最大量を決定する主要な要因である。それは、癌治療を著しく困難にして入院を延ばし、生活の質を減少させ、経費を上昇させる。
現在のところ、重篤な口腔粘膜炎を効果的に処置する確立された治療法はない。現在まで、ヒトケラチノサイト増殖因子(KGF)の組換えタンパク質であるパリフェルミン(KEPIVANCE(登録商標))が、骨髄移植患者の重篤な口腔粘膜炎に対する静脈注射(i.v.)用の唯一のFDA認可薬であり、癌患者におけるその使用は決定されないままである。それは、口腔粘膜炎の予防にも使用される。それ故、この薬が利用可能なのは、リスク集団のわずか4%である。これはまた、静脈(i.v.)投与経路のために、医療従事者を必要とする。可能性のある他の治療法には、粘着性のある2%リドカインリンス、または重曹および生理食塩水の溶液、またはカクテル溶液、例えばBAX(リドカイン、ジフェンヒラミン、ソルビトール、およびMYLANTA(登録商標))などの、局所的なリンスが含まれる。他の研究用または粘膜保護用のアジュバント療法として、限定されるものではないが、ベータカロチン、トコフェロール、レーザー照射、口腔粘膜への硝酸銀の予防的塗布、ミソプロストール、ロイコボリン、全身性KGF、ペントキシフィリン、アロプリノールうがい薬、全身性スクラルファート、グルコン酸クロルヘキシジンと寒冷療法が挙げられる。
化学療法および放射線によって誘発される腸粘膜炎は、急速に***する腸上皮細胞の急性死の結果として生ずる炎症症状である。単独または薬もしくは放射線との併用で充実性腫瘍の処置に使用される大部分の化学療法薬は、多数の腸上皮細胞の死をもたらす。引き続いて起こる粘膜炎の臨床症状は、悪心嘔吐、重篤な下痢、急性体重減少、および消耗などの消化器症状を含む。これは、多くの癌患者の化学療法を行う際の制限因子の1つに、急速になっている。化学療法薬、放射線、またはそれらの組合せから腸上皮細胞を保護するTat−Smad7の能力は、癌治療の望ましくない副作用を有意に減少させ、既存のツールを用いて疾患を処置するためのより積極的な方法を可能にする。
骨髄不全症候群は、造血幹細胞コンパートメントが損なわれて正常細胞型を生ずるのに失敗する場合に発症する一群の症状である。骨髄不全は、遺伝した遺伝学的異常の結果として、毒素、化学物質、またはウイルスなどの有害物質への暴露の結果として、起こる。後天性骨髄不全の発現をもたらし得る環境的要因の性質および独自性は、まだ完全に理解されていないが、マスタードガス、電離放射線、および感染因子(例えば内臓リーシュマニア症またはアフリカトリパノソーマ症)に晒された軍人の間で、いくつかの因子が後天性骨髄不全の発現との関連性があった。骨髄不全症候群の管理のための最善のアプローチは、残存している十分な数の常在性骨髄HSCがこれらのストレスから免れることができて、造血コンパートメントに再び住みつくように促すことができない限り、依然として、造血幹細胞(HSC)の移植である。ここで述べられるように、Smad 7の調節は、骨髄不全と一致した臨床徴候を示す患者に残っている常在HSCを周到に保護することを可能にしなければならない。
5.癌
TGF−βおよびNF−κBの活性化が癌浸潤および転移を促進させるということは、知られている。現在、TGF−β阻害因子は、転移性癌を処置することに関して臨床試験中であり、NF−κB阻害因子が癌予防で使用されている。TGF−βおよびNF−κBのシグナル伝達を遮断することに対して示されたSmad7の効果は、これが、これらの2つの経路のうちのわずか1つを阻害する他の阻害因子よりもさらに強い抗癌/抗転移剤である可能性を示す。Smad7は、脈管形成と線維発生とを妨げることが示されており、したがって、それは、腫瘍が血液供給および/または間質を発達させることを必要とする状況において、特に有用であると思われる。
癌は、脳、肺、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵臓、血球、結腸、胃、胸部、子宮内膜、前立腺、睾丸、頸部、子宮、卵巣、皮膚、頭頸部、食道、骨髄、および血液の癌からなる群から選択され得る。癌は、転移性または原発性、再発性、あるいは多薬剤耐性であり得る。いくつかの実施形態において、癌は充実性腫瘍(器官腫瘍)である。充実性腫瘍は、臓器系で増殖し、身体のどこにでも生じ得る細胞の塊のことをいう。2種類の充実性腫瘍には、器官の内側または外側にある上皮組織に生ずる上皮性腫瘍(癌腫)と、結合組織、例えば、限定されるものではないが、筋肉、腱、脂肪、神経、および身体の構造および器官を支持し、取り巻き、または接続する他の結合組織に生じる肉腫(結合織腫瘍)とが、含まれる。いくつかの実施形態において、癌は、液性腫瘍、または血液、骨髄もしくはリンパ節の癌である。これらの腫瘍には、白血病、リンパ腫、および骨髄腫が含まれるが、これらに限定されるものではない。
6.瘢痕、線維症、および異常治癒
再上皮形成の促進(例えば、細胞増殖を増加すること、および/または、細胞遊走を増加させることを介して)に加えて、創傷間質に対するSmad7効果は、中でも、炎症、脈管形成またはコラーゲン産生を減少させることの1または複数を含む。理論に束縛されることを意図するものではないが、これらの効果は、NF−κBシグナル伝達の減少(p50の減少で立証)とTGF−βシグナル伝達の阻害(pSmad2の減少で立証)を介して、媒介され得る。その結果、炎症の減少は、任意に、脈管形成およびコラーゲン産生の減少、ならびに/または、白血球浸潤の減少(それは、白血球によって通常放出される脈管形成性および線維形成誘導性であるサイトカインおよびケモカインの減少をもたらす)を介して、創傷治癒促進に著しく寄与し得る。Smad7による一時的処置は、長期の脈管形成およびコラーゲン産生を防ぐ一方で、創傷治癒にとって必要な初期脈管形成およびコラーゲン産生を可能にし得る。これらの変化は、潜在的に創傷間質再造形を加速することができて、未解決の炎症またはコラーゲン生産過剰に起因する過剰な瘢痕を予防すると思われる。
7.口内炎
口内炎は口の構造のいずれかの粘液ライニングの炎症であり、それは頬部、歯茎、舌、唇、咽頭、口蓋、または口底を含む場合がある。炎症は、例えば口腔清掃不良、食事のタンパク欠乏、十分に適合していない義歯による、または、熱い食物または飲物に起因した口熱傷、有毒植物に起因する、口自体の状態によって、あるいは、全身に影響を及ぼす状態、例えば薬物、アレルギー反応、放射線治療、または感染症によって、引き起こされ得る。重篤な鉄欠乏性貧血は、口内炎をもたらし得る。鉄は、細胞複製および修復のための転写要素のアップレギュレーションに必須である。鉄の欠乏は、これらの要素の遺伝学的ダウンレギュレーションを生じ得るので、上皮細胞の修復および再生が、特に口および唇において、無効になり得る。この状態は、ビタミンB2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B6(ピリドキシン)、B9(葉酸)、またはB12(コバラミン)の欠乏を持つ人々でも、一般的である。歯肉(歯茎)の炎症も伴う時、それは口内炎と呼ばれている。それは、リボフラビン欠乏症(リボフラビン欠乏症)または好中球減少で見られる場合もある。
唇の角が過敏になったり亀裂が生じたりすることは、口角びらん症または口角炎と呼ばれる。小児において、口角びらん症は、繰り返して唇をなめることが頻繁な原因である。成人において、それは潜在的な鉄欠乏性貧血の徴候、またはビタミンB(例えば、B2−リボフラビン、B9−葉酸、もしくはB12コバラミン)の欠乏であり、そのことは、質の悪い食生活または栄養失調(例えば、セリアック病)の証拠になり得る。また、口角炎は、患者の顎が、安静時に、無歯性または歯牙摩耗により、完全な/無影響の歯列が存在する場合よりも上顎と下顎とが近接して静止するようになる、「過蓋咬合(overclosed)」状態にあることに、起因し得る。このことによって、唾液により湿り気が保たれて感染にとっては好ましい皮膚のひだが、口角の周りに生じる。感染の大部分はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)または類似の種による。処置は、通常局所ナイスタチンまたは類似の抗真菌剤の投与を必要とする。別の処置は、歯科治療(例えば、義歯または咬合調整)により顎関係を修正することである。
遊走性の口内炎は、口腔粘膜の広い領域が薄い白い縁に囲まれている輪状で萎縮性の赤い病変に影響を受けている状態である。これは、地図状舌状態の比較的まれな形態であり、遊走性の口内炎と対照的に、それは、舌粘膜の背面および側面のみに限定される。
8.直腸炎
直腸炎は、肛門に至る大腸の下端部である直腸ライニングの炎症である。直腸炎で、直腸粘膜と呼ばれる直腸ライニングの炎症は、不快であり、時々痛みを伴う。他の症状の中でも、その症状は出血または直腸からの粘液分泌物をもたらす場合がある。直腸炎のいくつかの原因として、限定されるものではないが、肛門***中に伝染するもの(例えば、淋疾、クラミジア、梅毒、およびヘルペス)などの性感染病(STD)と、食品由来細菌(例えば、サルモネラおよび赤痢菌)などによる非STD感染症と、肛門***または直腸への物体または物質の挿入(例えば、浣腸による化学物質)による肛門直腸外傷と、結腸および直腸の内側ライニングで潰瘍(例えば、ただれ)を引き起こし得る、潰瘍大腸炎およびクローン病または他の炎症性腸疾患と、直腸出血に至る可能性がある、特に骨盤領域(例えば、直腸、卵巣、または前立腺癌)の、放射線治療と、有害な細菌(例えば、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile))に疾患を引き起こさせる、片利共生細菌の喪失をもたらす抗生物質とが挙げられる。
9.製剤および投与経路
臨床応用が企図される場合、意図された適用に適した形状で医薬組成物(タンパク質、発現ベクター、ウイルスストック、タンパク質および薬)を調製することが必要である。通常、これは、発熱物質、およびヒトまたは動物に有害であり得る他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することを必要とする。
PTD−Smad7(およびトランケートされた変異体)は、動物モデルで使用される前に、徹底的に精製された。PTD−Smad7(およびトランケートされたバージョン)は、グリセロールとPBSとの混合物を用いた局所および経粘膜適用を目的として調製された。
ベクターが安定になるように、かつ標的細胞による取り込みが可能になるように、適当な塩類および緩衝液を使用することが、一般に望まれる。組換え細胞が患者に導入される場合に、緩衝液も使用される。本技術の水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散された、細胞にとって有効な量のベクターを、含む。そのような組成物も、接種材料と呼ばれる。「薬学的にまたは薬理学的に許容される」という言い回しは、動物またはヒトに投与された際に有害反応、アレルギー反応、または他の副作用を生じない分子的実体および組成物のことをいう。本明細書中に使用される「薬学的に許容される担体」には、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌物質、抗真菌剤、等張性薬剤、および吸収遅延剤のいずれかおよびすべてが包含される。このような媒体及び薬剤を薬学的に活性な物質に使用することは、当該技術分野において周知である。いかなる慣用の媒体および薬剤も本技術のベクターまたは細胞と不適合でない限りは、治療用組成物に使用することが企図されている。補助活性成分も、組成物に包含することができる。
本技術の活性組成物は、典型的な製剤を含んでもよい。本技術によるこれらの組成物の投与は、経路が標的組織に利用可能である限り、任意の一般的な経路を介して行われる。そのような投与経路として、経口投与(静脈、筋肉内の、皮下、皮内、関節内、滑液包内、鞘内、動脈内、心臓内、皮下、眼窩内、包内、脊椎内、間質内、および経皮を含む)、経鼻、経頬、経尿道、経直腸、経膣、経粘膜、経皮、および局所(皮膚、頬、および舌下)を挙げることが可能である。あるいは、投与は同所、皮内で、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈内注射によるものであってもよい。そのような組成物は、通常、上記された薬学的に許容される組成物として、投与される。特に関心対象となるのは、直接腫瘍内投与、腫瘍の灌流、または、例えば、局所的もしくは部位的な脈管構造もしくはリンパ系における、あるいは切除された腫瘍床における、腫瘍に対する局所的または部位的な投与である。投与は、鼻噴霧、外科的インプラント、外科的体内ペイント、注入ポンプを介して、または、カテーテル、ステント、バルーン、もしくは他の送達装置を介して、行い得る。最も有用な、および/または有益な投与様式は、特にレシピエントの状態と処置している疾患とに応じて、変化し得る。
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての有効化合物の溶液は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と水中で適当に混合されて調製され得る。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれら混合物中、および油中で分散液を調製することもできる。通常の貯蔵及び使用の条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐための保存剤を含む。
注射用途に適した薬学的形態として、滅菌水溶液または分散液、および、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末があげられる。すべての場合において、形態は無菌でなければならず、かつ容易に注射器に流入できる程度に流体でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下に安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して、保護されていなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グルリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、およびその他)、それらの適当な混合物、ならびに植物油を含む、溶媒または分散媒であり得る。適する流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とする粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、保持し得る。微生物作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの種々の抗細菌剤および抗菌類剤によって、なされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期間にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中で使用することによって、行うことができる。
滅菌注射液は、必要量の活性化合物を、前述の様々な他の成分を含む適当な溶媒に取り込み、その後、必要に応じてろ過滅菌して調製される。一般的には、分散液は、様々な滅菌された活性化合物を、基礎分散媒と前述の所望の他の成分のうちの必要とされるものとを含む滅菌ビヒクルに取り込むことにより、調製される。滅菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめろ過滅菌した溶液から活性成分およびいずれかの所望の追加成分の粉末を得る真空乾燥法及び凍結乾燥法である。
本明細書中で使用される「薬学的に許容される担体」には、分散媒、コーティング、抗菌剤、および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、およびその他のいずれか、または、すべてが含まれる。医薬活性物質にそのような媒体および薬剤を用いることは、当該技術分野において周知である。いかなる従来の媒体および作用物質も活性成分と不適合でない限りは、治療用組成物に使用することが企図される。補助活性成分は、組成物に包含される。
本技術の組成物は、中性のまたは塩の形態で処方されてもよい。薬学的に許容される塩類は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)を含み、塩酸またはリン酸などの無機酸、あるいは、酢酸、酒石酸、マンデル酸、およびその他のような有機酸により、形成される。遊離のカルボキシル基と共に形成される塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から、誘導され得る。
製剤は、種々の剤形で容易に投与される。投薬量のある程度の変動は、処置されている対象の状態によって、必然的に起こる。投与に対して責任がある人は、いずれにしても、個々の対象のために適当な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与のために、製剤は、 FDA OfficeのBiologics規格によって、必要に応じて、滅菌、発熱原性、一般安全性、および純度標準を満たさなければならない。
経口投薬のために、本技術のポリペプチドが、賦形剤とともに取り込まれてもよく、摂取不可なうがい薬および歯みがき剤の形態で使用されてもよい。当業者に既知の、例えばコーティング、時間遅延、徐放、その他を含む、実質的に任意の丸薬またはカプセルを、本技術とともに使用し得ると、考えられる。うがい薬は、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)などの適当な溶媒に必要量の活性成分を取り入れて調製され得る。あるいは、活性成分を、ホウ酸ナトリウム、グリセリン、および炭酸水素カリウムを含む消毒洗浄液に取り込ませてもよい。活性成分を、ゲル類、ペースト、クリーム、粉末、およびスラリーを含む歯みがき剤に分散させてもよい。活性成分は、治療上有効量で、水、結合剤、研磨材、香味物質、発泡剤、および湿潤剤を含み得るペースト歯みがき剤に、添加可能である。
経口投薬にふさわしい医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル、カプレット、およびウエハー(急速溶解性または泡立ち作用を含む)などの様々な形態をとってもよく、各々が所定量の活性薬剤を含む。また、組成物は、粉体または顆粒、水溶液または非水溶液中の溶液または懸濁液、あるいは液体エマルジョン(水中油型または油中水型)としての形態であってもよい。活性薬剤はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとしても送達され得る。上記の剤形の製剤の方法が通常、当該技術分野で知られており、任意のそのような方法が、組成物の送達での使用のための各々の剤形の調製に適していると、一般に理解される。
一実施形態では、活性薬剤化合物は、薬学的に許容されるビヒクル(例えば、不活性希釈剤または食用の担体)と組み合わせて経口投与され得る。経口組成物は、硬質または軟質シェルゼラチンカプセルに入れてもよく、あるいは錠剤に取り込まれてもよく、あるいは患者の食事の食物に直接取り込まれてもよい。組成物と製剤との割合を変化させてもよい。しかし、そのような治療的に有効な組成物中の物質の量は、好ましくは、有効投与量レベルが得られる量である。
活性薬剤化合物を含んでいる硬カプセルは、生理学的に分解可能な組成物(例えばゼラチン)を使用して作られてもよい。そのような硬カプセルは該化合物を含み、例えば、不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリン)を含んでいる添加成分を、さらに含んでもよい。該化合物を含む軟ゼラチンカプセルは、生理学的に分解可能な組成物(例えばゼラチン)を使用して作られてもよい。そのような軟カプセル剤は、該化合物を含み、これを、水または油媒体(例えば落花生油、流動パラフィン、またはオリーブ油)と混ぜ合わせてもよい。
舌下錠は、非常に急速に溶解するように設計されている。そのような組成物の例は、酒石酸エルゴタミン、イソソルビドジニトレート、およびイソプロテレノールHCLを含む。これらの錠剤の組成物は、本剤に加えて、様々な可溶性賦形剤、例えば乳糖、粉末状のショ糖、ブドウ糖、およびマンニトールを含む。本技術の固形剤形は、必要に応じて、被覆されてもよい。適当な被覆材料の例として、限定されるものではないが、セルロースポリマー(例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸ポリマー、および共重合体、ならびにメタクリル樹脂(商品名EUDRAGIT(登録商標)で市販されているもの)、ゼイン、シェラック、ならびに多糖類が挙げられる。
医薬製剤の粉末状および顆粒状の組成物は、既知の方法を使用して調製されてもよい。そのような組成物が直接患者に投与されてもよく、あるいは、例えば、錠剤を形成するため、カプセルを充填するため、あるいは、水性または油性のビヒクルを添加することで水性または油性の懸濁液または溶液を調製するための、さらなる剤形の調製に用いられてもよい。これらの組成物の各々は、1または複数の添加剤、例えば分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、および防腐剤を、さらに含んでもよい。さらなる添加剤(例えば、充填剤、甘味料、調味料または着色料)もこれらの組成物に含ませてもよい。
経口投薬に適した医薬組成物の液体組成物を調製し、包装し、および、液体形態、または、使用前に水もしくは他の適当なビヒクルで再構成することを意図した乾燥製品形態で販売してもよい。
本明細書中に記載された1または複数の活性薬剤化合物を含有する錠剤は、当業者に容易に知られる任意の標準的なプロセスによって、例えば圧縮または成形によって、必要に応じて1または複数のアジュバントまたはアクセサリ成分とともに、製造され得る。錠剤は、必要に応じてコーティングまたはスコアリングされてもよく、活性薬剤の徐放または制御放出を提供するように製剤化されてもよい。
例えばコーティングの塗布によって、固形剤形は、活性薬剤の遅延放出を提供するように製剤化されてもよい。遅延放出コーティングは当該技術分野で公知であり、それを含んでいる剤形は任意の既知の適当な方法により調製されてもよい。そのような方法は、固形剤形(例えば、錠剤またはカプレット)の調製後、遅延放出コーティング組成物が塗布されることを、一般に含む。塗布は、例えば、エアレス吹付け、流動浸漬塗装、糖衣器の使用、またはその他の方法によってなし得る。遅延放出コーティングとして使用する材料は、事実上、セルロース系材料(例えば、セルロースブチレートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびカルボキシメチルエチルセルロース)、ならびに、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらのエステルのポリマーの共重合体などの、重合体であり得る。
本技術による固形剤形はまた、徐放性であっても(すなわち、長期間にわたって活性薬剤を放出しても)よく、さらに、遅延放出であっても、そうでなくてもよい。徐放性組成物は、当該技術分野で知られており、徐々に分解可能または加水分解可能な材料、例えば、不溶性プラスチック、親水性ポリマー、または脂肪族化合物のマトリックス内に、薬物を分散することによって、一般に調製される。あるいは、固形剤形はそのような材料で被覆されてもよい。
非経口投与用の組成物は、抗酸化物質、緩衝剤、静菌薬、および溶質などの追加の薬剤をさらに含み得る水性および非水性の滅菌注射溶液を含み、それは、意図されたレシピエントの血液と等張である。組成物は、懸濁化剤および粘稠化剤を含有する水性および非水性の滅菌懸濁液を含んでよい。非経口投与用のそのような組成物は、例えば密閉アンプルおよびバイアルなどの単位投与量または複数回投与量の容器で提供されてもよく、使用直前に、無菌液体担体、例えば水(注射用)の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で貯蔵され得る。即席注射溶液および懸濁液を、既に記載した種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から、調製してもよい。
直腸送達のための組成物は、肛門坐剤、クリーム、軟膏、および液体を含む。坐剤は、通常、当該技術分野で一般に知られている担体、例えばポリエチレングリコールと併用される活性薬剤として、提供されてもよい。そのような剤形は、急速に崩壊、または、長期にわたって崩壊するように、設計されてよく、崩壊を完了する時間は、短時間(例えば約10分)から長期間(例えば約6時間)にわたることができる。
局所組成物は、体表面に活性薬剤を送達するために適したかつ当該技術分野で容易に知られる任意の形態であってもよく、経皮、頬側、および舌下が含まれる。局所組成物の典型的な例として、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、および溶液が挙げられる。口内投与用の組成物には、ロゼンジが含まれる。
これらの実施形態に従って、経口(局所、粘膜および/または皮膚)送達材料として、本明細書中に開示されている状態の処置および/または予防のための、クリーム、膏薬、軟膏剤、パッチ、リポソーム、ナノパーティクル、微粒子、徐放性の製剤、ならびに、対象の口腔、粘膜、および/または皮膚への送達用の当該技術分野で知られている他の材料も、挙げることができる。特定の実施形態では、生分解性の経口(局所、粘膜および/または皮膚)パッチ送達系またはゼラチン材料の使用に関係する。これらの組成物は、液状製剤またはこれらの組成物の処方により処置される薬学的に許容される送達系であり得るとともに、アクチベーター/インデューサーも含むことができる。
本技術の方法での使用のための組成物は、経皮的に投与されてもよく、ここで、活性薬剤が積層構造(一般に「パッチ」と呼ばれる)に組み込まれる。この積層構造は、長期間にわたってレシピエントの表皮に密着して残存するのに適している。概して、そのようなパッチは、単層の「薬物含有接着剤(drug-in-adhesive)」パッチとして、または、多層のパッチとして用いられる。ここで、活性薬剤は、接着剤層とは離れた層に含まれる。どちらのタイプのパッチも、裏層およびレシピエントの皮膚に付着する前に取り除かれるライナを概ね含む。また、経皮的薬物送達パッチは、半透膜と接着剤層とによってレシピエントの皮膚から離れている裏層の下にあるリザーバーから構成されてもよい。経皮的薬物送達は、受動拡散、エレクトロトランスポート、またはイオン導入を介して、生じてもよい。
特定の実施形態において、本明細書中で企図されるパッチは、徐々に溶解するパッチまたは徐放性のパッチであってもよい。これらの実施形態によれば、ゆっくり溶解するパッチは、アルギン酸塩パッチであり得る。特定の例において、パッチは蛍光剤のような検出可能な指標染料または薬剤を含んでもよい。他の実施形態において、タグ(例えば、検出可能なタグ、例えばビオチンまたは蛍光性のタグが付けられた薬剤)は、対象に送達した後に分子を検出するために処置分子と結合することができる。特定の実施形態において、本明細書中で企図される1または複数の経口送達パッチまたは他の処置は、医療専門家によって評価されるように対象の要求に応じて、1日に3回、1日に2回、1日に1回、1日おき、週に1回などで、投与してもよい。本明細書中で企図されるパッチは、経口生分解性パッチ、または、分解性または非分解性の外用パッチであってもよい。本明細書中で企図されるパッチは、1mm、2mm、3mm、4mm〜5mmの大きさ、または必要に応じてそれ以上の大きさであってもよい。加えて、例えば、皮膚パッチは、乾癬を患っている対象での使用のために本明細書中で企図される。乾癬および慢性創傷を処置する際に、ビヒクル(例えばグリセロール、カルボキシメチルセルロース)を使用して、Smad7を局所送達することができる。それは、送達用の経皮系(例えば、3Mから商業的に入手可能)を使用することもできる。病変への皮下注射(生理食塩水またはPBS中)を用いることもできる。
いくつかの実施形態において、本明細書中で述べられるように、組成物が化合物の投与を達成するという条件で、組成物は短期性、即効性、急速消失性、制御放出性、徐放性、遅延放出性、およびパルス放出性の組成物を含んでもよい。全体が本明細書中に援用されるRemington's Pharmaceutical Sciences (18th ed.; Mack Publishing Company, Eaton, Pennsylvania, 1990)を参照のこと。
特定の実施形態において、本明細書中で開示される化合物および組成物は、医用機器を介して送達され得る。そのような送達は、通常、挿入可能または移植可能な医用機器を介することができ、例えば、限定されるものではないが、ステント、カテーテル、バルーンカテーテル、シャント、またはコイルが挙げられる。1つの実施形態において、本技術は、本明細書に記載された化合物または組成物により表面が被覆されている、ステントなどの医用機器を提供する。この技術の医用機器は、本明細書に開示したようなものなどの疾患または状態の経過を処置、予防、またはさもなければそれらに影響を及ぼすための、いかなる用途にも使用され得る。
当該技術分野で知られているあらゆる分子生物学、細胞生物学、または生化学の技術が本明細書中に提供される処置の生成および/または検証に用いられ得ると考えられる。加えて、タンパク質化学技術は、本明細書中で開発されるモデル系(例えば、マウスモデル系)での処置の有用性を評価するために企図される。
10.併用療法
多くの医学分野で、しばしば「併用療法」と呼ばれる複数の治療法により疾患を処置することは、一般的である。本明細書中に記載された疾患(例えば、炎症性疾患および癌)の多くも例外ではない。いくつかの実施形態において、本技術の方法および組成物を用いて炎症性疾患を処置するために、標的細胞、器官、または対象をSmad7タンパク質、発現コンストラクトまたはアクチベーターと、および少なくとも1種類の他の療法と接触させることが考えられる。これらの治療法は、1または複数の疾患パラメーターの減少を達成するのに有効な合計量で、提供される。このプロセスは、細胞/対象を両方の薬剤/療法に同時に、例えば両方の薬剤を含む単一組成物または薬理学的製剤を用いて、または、細胞/対象を2つの異なる組成物または製剤に同時に接触させることによって、接触させることを伴ってもよく、ここで一方の組成物がSmad7薬剤を含み、他方が他の薬剤を含む。
あるいは、Smad7薬剤は、数分間から数週間の範囲の間隔で、他の治療に先行しても、後続してもよい。治療が有利な複合効果を細胞/対象に対して及ぼし続けることが可能であるように、有効な期間が各送達時間の間で期限切れにならないことが、通常保証されるであろう。このような場合には、細胞を両方の治療法に、互いの約12〜24時間以内に、互いの約6〜12時間以内に、または、単に約12時間の遅延時間で、接触させることが意図される。いくつかの状況では、しかしながら、有意に治療期間を延長することが望ましい場合があり、ここではそれぞれの投与の間で、数日(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)が経過する。
また、Smad7薬剤または他の治療のいずれかを複数回投与することが求められると、考えられる。以下に説明されるように、様々な組合せを用いることが可能であり、Smad7薬剤が「A」であり、他の治療法が「B」である。
他の併用が提供される。炎症性疾患に対する併用療法での使用に適している他の薬剤として、ステロイド、糖質コルチコイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS;COX−1およびCOX−2阻害薬を含む)、アスピリン、イブプロフェン、およびナプロキセンが挙げられる。鎮痛薬は抗炎症薬を一般的に連想させるが、これは抗炎症効果を持たない。一例は、パラセタモールであり、米国ではアセトアミノフェンと呼ばれ、Tylenolという製品名で販売された。COX酵素を阻害することで痛みと炎症とを少なくするNSAIDSとは対照的に、パラセタモールはエンドカンナビノイドの再取り込みを遮断することが最近になって示されており、これにより痛みのみを減らし、このことが、炎症に対して最小限の影響しか有さない理由をおそらく説明している。併用して使用するための特定の薬剤は、抗TGF−β抗体である。
当業者は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、第33章、特に頁624〜652、1990年に注目する。投薬量のある程度の変動は、処置されている対象の状態によって、必然的に起こる。投与に対して責任がある人は、いずれにしても、個々の対象のために適当な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与のために、製剤は、 FDA OfficeのBiologics規格によって、必要に応じて、滅菌、発熱原性、一般安全性、および純度標準を満たさなければならない。
また、前述の治療法のいずれかが炎症を処置する際に単独で役立つ可能性があると指摘されなければならない。
上記のように、本技術は、特定の抗癌治療に起因する、または癌の処置のための、DNA損傷および/または炎症の処置に対して、特定の関連性がある。したがって、より具体的には、本技術は、癌治療との併用として適用され得る。このプロセスは、細胞、器官、または患者を、同時に薬剤/治療と接触させることを伴い、それには、細胞、組織、または患者を両方の薬剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤と、あるいは、2つの異なる組成物または製剤と同時に接触させることが含まれ、一方の組成物がSmad7薬剤を含み、他方が他の薬剤を含む。あるいは、上記のチャートに類似して、組成物を異なる時間で送達することができ、一方または両方の薬剤の反復投与が含まれる。
併用療法の使用に適している薬剤または因子は、細胞に適用されるとDNA損傷を誘発する任意の化学物質または処置方法を含む。そのような薬剤および因子は、DNA損傷を誘発する放射線および波、例えば照射、マイクロ波、電子放出、およびその他を含む。「化学療法薬」または「遺伝子毒性薬剤」ともいう種々の化学物質は、本明細書中で開示される併用処置方法で有用であることを意図している。本技術によって癌を処置する際に、発現コンストラクトに加えて薬剤を腫瘍細胞に接触させることが考えられる。これは、局在性腫瘍部位を放射線で治療することによって達成され得る。あるいは、腫瘍細胞は、対象に医薬組成物の治療上有効量を投与することで、薬剤と接触され得る。
様々な種類の化学療法薬は、本技術のペプチドと併用させての使用に提供される。例えば、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン(Afimoxfene)、フェソロデックス、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、クロミフェン、フェマレル(Femarelle)、ラソフォキシフェン、オルメロキシフェン、およびトレミフェンなどの選択的なエストロゲン受容体拮抗薬(「SERM」)である。
使用が企図される化学療法薬は、例えば、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンCを含む。また、本技術は、放射線ベースまたは実際の化合物のいずれかの1または複数のDNA損傷剤の併用も含み、例えばシスプラチンとX線の使用またはエトポシドとシスプラチンの使用であってよい。薬剤は、上記したように、それとMUC1ペプチドとを組み合わせることによる、複合治療用組成物、またはキットとして、調製かつ使用されてもよい。
熱ショックタンパク質90(Heat shock protein 90)は、多くの真核細胞で見つかる調節タンパク質である。HSP90阻害因子は、癌の処置に役立つことが示された。そのような阻害因子として、ゲルダナマイシン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、PU−H71、およびリファブチンが挙げられる。
直接DNAを架橋するか、または付加生成物を形成する薬剤も、想定される。シスプラチンおよび他のDNAアルキル化剤も使用されてもよい。シスプラチンは、合計3クールで3週ごとに5日間、20mg/m2の臨床適用で使用される有効用量で、癌を処置するために広く使われていた。シスプラチンは経口吸収されないので、静脈内に、皮下、腫瘍内、または腹膜内注入を介して送達されなければならない。
DNAにも損害を与える薬剤は、DNA複製、有糸***、および染色体分離を邪魔する化合物を含む。そのような化学療法化合物として、アドリアマイシン(別名ドキソルビシン、エトポシド、ベラパミル、ポドフィロトキシンなど)が挙げられる。これらの化合物は、新生物の処置のための臨床設定で幅広く使われており、ボーラス注入により投与され、ドキソルビシンの場合は21日間隔、25〜75mg/m2の範囲の用量で静注、エトポシドの場合は35〜50mg/m2の用量で静注または静注の用量を倍にして経口投与される。また、微小管阻害因子(例えばタキサン類)も企図される。これらの分子はイチイ属植物によって作られるジテルペンであり、パクリタキセルおよびドセタキセルを含む。
イレッサなどの上皮成長因子受容体阻害因子、mTOR(ラパマイシンの哺乳類標的)は、FK506結合タンパク質12−ラパマイシン結合タンパク質1(FRAP1)として知られており、細胞成長、細胞増殖、細胞運動、細胞生存、タンパク質合成、および転写を調節するセリン/トレオニン・プロテインキナーゼである。ラパマイシンとそのアナログ(「ラプログ」)は、本技術に従って癌治療との併用用に提供される。
本明細書中で特許請求されるペプチドによるもう一つの可能性がある併用療法は、TNF−α(腫瘍壊死因子アルファ)であり、これは、全身性炎症に関与するサイトカインであり、かつ急性期反応を刺激する一群のサイトカインのメンバーでもある。TNFの当初の役割は、免疫細胞の調節である。また、TNFは、アポトーシス性細胞死の誘発、炎症の誘発、ならびに腫瘍形成およびウイルス複製の阻害を行うことも可能である。
核酸前駆体およびサブユニットの合成および正確さを破壊する薬剤も、DNA損傷をもたらす。このように、多くの核酸前駆物質が開発された。特に役立つのは、広範囲にわたる試験を受けて直ちに利用可能な薬剤である。このように、5フルオロウラシル(5−FU)などの薬剤が新生物組織によって優先的に使われ、この薬剤が新生物細胞のターゲッティングに特に有用となる。かなり有毒であるにもかかわらず、5−FUは広範囲にわたるキャリアに適用でき、局所投与が含まれるが、一般に使用されている静脈内投与の用量範囲は、3〜15mg/kg/日である。
DNA損傷を引き起こすとともに広範囲に使われている他の因子には、γ線、X線、および/または腫瘍細胞に対する放射性同位元素の直接送達として一般に知られているものが含まれる。DNA損傷因子の他の形態は、マイクロ波とUV照射なども企図される。これらの因子の全てが、広範囲の損傷DNAを生じ、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体のアセンブリおよびメインテナンスに影響を及ぼす可能性が高い。X線の照射量は、長期間(3〜4週間)にわたる1日線量の50〜200レントゲンから単回照射量の2000〜6000レントゲンまでの範囲である。放射性同位元素の用量は、幅広く変動し、同位元素の半減期、照射される放射線の強度および種類、ならびに新生細胞による取り込みに依存する。
当業者は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、第33章、特に頁624〜652に注目する。投薬量のある程度の変動は、処置されている対象の状態によって、必然的に起こる。投与に対して責任がある人は、いずれにしても、個々の対象のために適当な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与のために、製剤は、 FDA OfficeのBiologics規格によって、必要に応じて、滅菌、発熱原性、一般安全性、および純度標準を満たさなければならない。
Smad7療法を化学および放射線療法と併用することに加えて、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、および外科手術との併用も考えられる。具体的には、AVASTIN(登録商標)、ERBITUX(登録商標)、GLEEVEC(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、およびRITUXAN(登録商標)、などの標的療法を用いることが可能である。
他の実施形態において、口腔粘膜炎という状況のなかで、Smad7の役割および機序を評価するために、「遺伝子スイッチ」トランスジェニックマウスモデルが、特に口腔上皮でのSmad7導入遺伝子発現のレベルおよび期間の制御を可能にするために開発された。これらの実施形態に従って、これらのモデルは、他の遺伝子または下流分子について口腔上皮および口腔粘膜に対するそれらの効果を試験するために、用いられ得る。このように、これらのモデルは、限定されるものではないが、口腔創傷治癒生物学のさらなる分析と口腔創傷を治癒するための治療的なアプローチの試験に、使用することができる。これらの研究で特定される分子Smad7標的は、口腔粘膜炎を罹患している対象に、さらなる治療標的を提供することができる。本明細書中で開発されるモデルおよびリソースは、Smad7過剰発現に関連するバイオマーカーおよび治療標的を同定するための分析研究用の独特なツールを提供することができ、さらには、制御、例えば、Smad7によってオンになるまたはSmad7によって結合される下流分子を、TGF−β活性とNF−κB活性とによって悪化する、例えば、口腔粘膜炎、乾癬、および他の症状を処置するための、さらなる治療標的として同定することができる。
D.キット
特定の実施形態において、本明細書中に提供されるキットは、本明細書中に示される症状、例えば、限定されるものではないが、口腔粘膜炎、乾癬、または創傷治癒を有する患者を処置するための上述の組成物を含み得る。キットは、本技術に係る治療用Smad7組成物が入った1または複数の容器を含むことができる。いずれのキットも概ね、少なくとも1本のバイアル、試験管、フラスコ、ビン、シリンジ、または他の容器を含み、その中に、組成物が好ましくは、および/または、適切に等分されてもよい。また、本明細書中のキットは、本明細書中に定める状態の一因となる生物学的標的を評価するためのキットも含み得る。
E.反応を予測または評価する方法
Smad7への暴露と関連した1または複数のマーカーの発現のレベルを評価することを用いて、Smad7による処置に対する応答を予測および/または評価するための方法も、提供される。そのようなマーカーとして、限定されるものではないが、細胞移動用のRac1、炎症用のNF−κB、ならびに成長停止および炎症用のTGF−βを含む。実施例で検討されるように、Smad7活性に関連した1または複数のマーカーのレベルの検出および/または変更の方法が当該技術分野で提供および/または公知である。いくつかの実施形態では、Smad7マーカーの1または複数が対象内で発現するレベルを評価することが可能であり、検出されたレベルに基づいて、Smad7による処置を行うこと(または処置の継続または中断)あるいは代わりの処置を使用することを決定することが可能である。
本明細書中で使用される「の検出」という用語は、ある反復可能かつ制御されたレベルで、マーカーの有無を測定する能力のことをいう。概して、検出は、試験系に固有のノイズ(または検出限界)が含まれ得るバックグラウンド値よりも上で実施される。このように、例えば、アッセイに関連した検出の「下限」があり、検出されるためには、変化が特定の限界レベルを上回る必要があると考えられる。そのような限度の決定は、周知の技術である。
いくつかの実施形態において、検出は対照と比較して実施され、これは、限定されるものではないが、正常対象由来の、および/または、対象に存在する疾患または障害をもたない(同一または異なる対象の)比較可能な正常組織(または試験した対象の特定の組織)由来のデータとの比較を含み得る。いくつかの実施形態において、比較は、患者において様々な時間間隔(および/または位置)で検出されるレベルの間であってもよい。いくつかの実施形態において、検出はバックグラウンドまたは対照レベルと比較して統計的に有意な必要がある。有意性を評価する能力は、周知の技術であり、実施例で例証される。
本明細書中に用いられる「レベルの変化」は、対照またはバックグラウンドのレベルおよびまたは、以前の検出されたレベルからの、検出可能な変化のことをいう。いくつかの実施形態において、変化は別のレベルと比較した増加であり、いくつかの実施形態において、変化は別のレベルと比較した減少である。いくつかの実施形態において、検出可能な変化(増加または減少)は、統計的に有意である。いくつかの実施形態において、そのような変化は、少なくとも約5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、またはより大きな変化、および/または、約5〜10%、10〜25%、10〜50%、25〜50%、50〜75%、50〜100%、100〜150%、100〜200%、200〜300%、300〜500%、もしくは500〜1000%変化として、定量的に評価され得る。
F.付加的生物活性フラグメントをスクリーニングするための方法
別の態様では、Smad7の付加的生物活性フラグメント(限定されるものではないが、トランケーション)をスクリーニングするための方法が企図される。いくつかの実施形態では、生物活性は本明細書に記載された方法の1つを用いて評価されてもよく、以下の実施例5および8に記載されている方法が含まれる。評価されることができる生物活性のいくつかには、限定されるものではないが、細胞増殖を高めること、細胞死を減らすか抑制すること、過度の炎症を減らすこと、DNA損傷を防ぐこと、および/または 細胞遊走を増加させること、ならびに、処置が本明細書中でさらに議論されるように有用であると思われる1または複数の疾患または障害に対して動物モデルの処置または予防を行うこと、が含まれる。そのような活性は、限定されるものではないが、以下を含む1または複数のアッセイを用いて評価され得る:マウスおよび他のラボモデルにおいて、Smad2のリン酸化および/またはNF−κB p50サブユニットの核転座を妨げる能力、細胞増殖を増加させる能力と、アポトーシスおよび/または放射線誘発DNA損傷を減らす能力と、炎症および/または血管新生を減らす能力と、口腔粘膜炎、手術性創傷、糖尿病創傷および/または慢性炎症を伴う創傷で治癒を促進する能力。いくつかの具体例は、限定されるものではないが、アポトーシスの免疫蛍光アッセイ(IF)、免疫組織化学(IHC)、およびTUNELアッセイを含む。
いくつかの実施形態において、生物活性フラグメントは、本明細書中に記載された活性の1または複数を含むべく選択されるものである。いくつかの実施形態では、生物活性フラグメントは、本明細書中に記載された活性のわずかまたは主に1つ、わずかまたは主に2つ、わずかまたは主に3つ、わずかまたは主に4つ、あるいはわずかまたは主に5つを含むべく選択されるものである。いくつかの実施形態では、生物活性フラグメントは、本明細書中に記載された活性のわずかまたは主に1つ、わずかまたは主に2つ、わずかまたは主に3つ、わずかまたは主に4つ、あるいはわずかまたは主に5つを含むべく選択されるものである。いくつかの実施形態において、生物活性フラグメントは、本明細書中に記載された活性のうち特定のサブセットを除外するべく、選択される。例えば、増殖および遊走の増加は、糖尿病性創傷を処置する上で十分であると思われるが、慢性炎症性創傷には抗炎症性が必要である。アポトーシスおよびDNA損傷活性の減少は、口腔粘膜炎を処置する上で必要であるが、手術性創傷の処置には必要ではない。
本明細書中で使用される「主に含む」という用語は、「主に」とみなされた活性が、完全長の天然タンパク質で観察されるのとほぼ同一または増加したレベルのままである一方で、他の生物活性はあるレベルのままであってもよいが完全長フラグメントと比較して減少している、フラグメントをいう。同様に、本明細書中で使用される「主に除外する」という用語は、特定の生物活性はあるレベルのままであってもよいが該レベルは完全長フラグメントと比較して減少(任意で有意におよび/または統計学的に有意に減少)している一方で、他の生物活性の1または複数は、完全長の天然タンパク質で観察されるレベルとほぼ同一または増加したレベルのままである、フラグメントをいう。
生物活性フラグメントの選択を伴ういくつかの実施形態では、方法は、1または複数の生物活性の発現のレベルの変化を評価することを含み、それには、選択されたフラグメントの1または複数の活性の増加および減少が完全長タンパク質で観察された活性を基準とした変化として評価されることが、含まれる。いくつかの実施形態では、1または複数の生物活性は、他の活性が増加または減少、あるいは除去されている可能性もある(例えば、そのようなフラグメントが、議論した活性の1または複数を欠いている)一方で、完全長フラグメントで観察されるものと同様のままであるように選択されている。いくつかの実施形態では、別のレベルと比較した変化が増加であり、いくつかの実施形態では、別のレベルと比較した変化が減少である。いくつかの実施形態では、検出可能な変化(増加または減少)は、統計的に有意である。いくつかの実施形態において、そのような変化は、少なくとも約5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、またはより大きな変化、および/または、約5〜10%、10〜25%、10〜50%、25〜50%、50〜75%、50〜100%、100〜150%、100〜200%、200〜300%、300〜500%、もしくは500〜1000%変化として、定量的に評価され得る。いくつかの実施形態では、「同様のまま」は、完全長タンパク質の活性からいくらか変化があることがまだ観察され得るが、そのような変化は、例えば、約1%、2%、5%、10%、または20%変化またはそれ以下に制限され得る。
非限定的な例において、目的のフラグメントは、Smad7の抗炎症効果を主に媒介するものを含み得る。この抗炎症性の機能があるSmad7ペプチドは、限定されるものではないが、数あるなかでも、口腔粘膜炎、口内炎、および乾癬などの慢性炎症関連症状の処置に十分であり、かつ任意で、そのような処置の改善にもなり得る。別の非限定的な例では、目的のフラグメントは、細胞遊走ならびに/または、TGF−β誘発増殖停止および/もしくは線維化反応の遮断を主に媒介するものを、含み得る。この細胞遊走および増殖の機能を有するSmad7ペプチドは、過剰な炎症を伴わない治癒の増強十分であり、かつ任意でそのような増強の改善であり得る。この形態の処置から利益が得られるかもしれない創傷の種類には、限定されるものではないが、手術性創傷、線維症瘢痕、および糖尿病創傷、不完全な治癒、および/または瘢痕が含まれる。
G.Smad7タンパク質を生産するための方法
別の態様において、Smad7タンパク質を生産するための方法は、本明細書中に記載されたSmad7変異体、フラグメント、トランケート、融合タンパク質(例えば、PTD−Smad7)が企図される。本発明者らは、核酸コドンの最適化を伴う研究、開発、または商業化に十分なレベルおよび純度で、Smad7タンパク質を生産する方法を発見した。その結果、本明細書中(例えば、実施例内)に記載されたコドン最適化Smad7核酸分子および分子の1または複数の使用が含まれるSmad7を生産するための方法がはっきりと企図される。
以下の実施例は、様々な実施形態を例証するべく、挙げられる。当業者は、以下の実施例に開示された技術が、特許請求された方法、組成物、および装置を具体化する際に十分に機能することがわかった技術を表すことを、理解するべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、本技術の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えることができること、さらに同様の結果または類似の結果も得られることを、理解すべきである。
実施例1:K5.Smad7マウスは、口腔粘膜炎に対して抵抗力がある
ヒトSmad7タンパク質をケラチノサイトで発現するトランスジェニックマウスモデル(K5.Smad7)を、以前の記述通りに作った(Han et al., Dev. Cell, 11:301-312, 2006)。口腔上皮での導入遺伝子発現が確認された(図7A〜B)。マウスを、C57BL/6の遺伝学的背景で交配させ、8〜10週齢のオスおよびメスのトランスジェニックマウスと野生型の同腹仔とを研究に用いた。これらのマウスでは、治癒改善が皮膚切除創傷(Han et al., Am. J. Pathol., 179:1768-1779, 2011)と放射線誘発粘膜炎とで見られた。
K5.Smad7マウスと野生型の同腹仔とを頭蓋照射に曝して、マウスの口腔粘膜炎を誘発するのに必要な生物学的等価線量(BED)を決定した。8Gyx3(BED=43.2)(クリニックでの少分割放射線療法に関連したレジメン)が口腔粘膜炎を誘発するのに最小限の線量であったと決定した(図1A〜B)。Smad7効果の作用強度を評価するために、それらを頭蓋照射の単一の線量についても調べ、口腔粘膜炎重症度が18Gy(BED=50.4)と22Gy(BED=70.4)との間のBED値と相関していることがわかった(図1A〜B、図7C)。照射開始後の9日目までに、野生型マウスは口腔潰瘍を発症した(図1A〜B)。
照射前のK5.Smad7口腔粘膜は、野生型マウスと類似した形態を有していたが、 放射線誘発粘膜炎に対して抵抗力を示した(図1A〜B)。組織学的分析により、ヒトの場合(図1C)と同様に野生型マウスが口腔粘膜炎を発症(図1A)したことが明らかになった。中国の昆明医科大学第一付属病院(First Affiliated Hospital of Kunming Medical University)は、匿名保管された組織パラフィン切片を提供し、ヒト対象を適用外として研究を承認した。口腔粘膜炎病変は、放射線治療を受けた再発性口腔癌に隣接した舌、頬、または口腔咽頭粘膜に由来した。非照射口腔粘膜切片は、嚢胞(粘液嚢腫)に隣接して、外科的に取り出された睡眠無呼吸口腔組織および舌生検に由来した。
K5.Smad7口腔上皮は、概して、照射線量依存的損傷を示した。すなわち、8Gyx3照射後では上皮の菲薄化および舌乳頭の平坦化を示し、ならびに18Gyおよび22Gy照射後ではよりいっそう損傷を受けた(不良または肥大化)上皮細胞を示した(図1A)。ヒト口腔粘膜炎病変の白血球浸潤の増加(図1C)と矛盾することなく、野生型マウスの病変は、好中球、マクロファージ、および白血球(図7D)からなる多数の浸潤白血球(図1D〜E)を包含し、すべてがK5.Smad7口腔粘膜で実質的に減少した(図1D〜Eおよび7D)。
急性相でヒトの口腔粘膜炎の病態を捕らえることが難しいので、潰瘍が実際に形成された時の増殖およびアポトーシスを評価するべく、マウスモデルが利用された。以前の報告と同様に、増殖細胞は照射を受けた野生型口腔上皮では乏しかったが、照射を受けたK5.Smad7口腔上皮(図1Dおよび1F)では、より多く見られた。反対に、アポトーシス細胞は、野生型マウス(図1Dおよび1G)と比較して、照射を受けたK5.Smad7口腔粘膜で有意に減少した。
予想されるように、核NF−κB p50サブユニットを有する細胞は非照射の野生型口腔粘膜(図2A〜B)と比較して口腔粘膜炎で有意に増加した。興味深いことには、活性シグナル伝達メディエーター(リン酸化(p)Smad2)と一緒のTGF−β1(内臓の免疫抑制剤ではあるが、口腔粘膜では炎症誘発性)もまた、野生型マウスで、非照射の口腔粘膜と比較して経口粘膜炎において増加した(図2A〜B)。類似の変化は、ヒト経口粘膜炎病変(図2A〜B)でも検出された。
照射を受けたK5.Smad7口腔上皮は、核NF−κB p50およびpSmad2に陽性の細胞を有意に減少させても、大量のTGF−β1タンパク質を有した(図2A〜B)。照射を受けた野生型口腔粘膜のTGF−β1 mRNAは、9日目と10日目とに有意に増加した(図2C)。K5.Smad7粘膜のTGF−β1 mRNAレベルは、初期の時点に野生型粘膜と類似していたが、10日目で正常に戻った(図2C)。あらゆる理論に束縛されることを望まないにもかかわらず、これらのデータは、TGF−β1転写はSmad7によって抑制されないが、K5.Smad7粘膜でのより急速なその低下が治癒促進の結果であることを示唆する。
活性BMPシグナル伝達のマーカーであるリン酸−Smad1/5/8は、照射の前後に、Smad7の影響を受けなかった(図7E)。この結果は、TGF−βシグナル伝達を優先的に阻害するSmad7の能力と一致している。
実施例2:Rac1は、Smad7によって媒介されるケラチノサイト移動に関与する
Smad7がヒト口腔ケラチノサイトにおける治癒の一因となるかどうか決定するために、Smad7が、自然発生的に不死化したヒト口腔ケラチノサイト(NOK−SI)においてノックダウンされ、Smad−7ノックダウンは創傷後にケラチノサイト遊走を鈍化させた(図2Dおよび図8A)。反対に、TGF−β1をノックダウンすることはケラチノサイト遊走を加速し(図8B〜8D)、TGF−β1またはSmad3を欠損しているマウスで見られる創傷治癒促進と矛盾しなかった。
Smad7媒介ケラチノサイト遊走に関連した分子機序を見つけるために、口腔創傷治癒に欠くことのできないタンパク質であるRac1を調べた。Rac1は、Smad7ノックダウン後に減少した(図2E)。口腔粘膜炎におけるTGF−β1過剰発現がSmad非依存機序を介してRac1を活性化させると予想した。しかしながら、Rac1タンパク質全体が照射後に2倍になったにもかかわらず、活性化Rac1タンパク質は野生型の舌では顕著な変化はなかった(図2F)。
K5.Smad7口腔粘膜では、全Rac1および活性Rac1は、野生型口腔粘膜と比較して、それぞれ4倍および8倍まで、顕著に増加した(図2F)。Smad7誘発Rac1活性化の機能的有意性を決定するために、野生型およびSmad7トランスジェニック新生仔皮膚から単離した初代ケラチノサイトにおいて、Rac1をノックダウンし、細胞増殖および遊走についてのアッセイを行った。Rac1ノックダウンは、野生型およびSmad7のケラチノサイトで穏やかな増殖の減少を示した(図9A〜9C)。しかし、Smad7誘発誘発遊走がほぼ完全に抑制された(図2Gおよび図9D)。このことは、Rac1の増加がSmad7媒介細胞遊走に寄与することを示唆した。
Smad7トランスジェニックケラチノサイトのRac1mRNAレベルの増加が全Rac1および活性Rac1タンパク質レベルと相関することが観察された(図3A〜Bおよび図10A〜B)。このことは、Smad7ケラチノサイトでのRac1活性化の増加が、少なくとも部分的に、Rac1転写産物の増加の結果であることを示唆した。さらに、NOK−SI細胞における個々のSmadのノックダウン(図10C〜10E)の後に、Rac1タンパク質が約3倍に増加した(図3C)。これらのデータは、正常Smadシグナル伝達がRac1転写を抑制することを示唆する。
マウスRac1プロモーター(コード配列の−2.1Kbおよび−1.5Kb上流)の、ヒトRac1プロモーターの類似領域にある2つの推定Smad結合エレメント(SBE)の間で、クロマチン免疫沈降(ChIP)は、−1.5Kb部位(図3D)に結合するSmad−2、−3、−4、および−7を特定したが、野生型ケラチノサイトの−2.1kb部位は特定せず、Smad7トランスジェニックケラチノサイトではSmad−2、−3、および−4の結合が著しく減少した(図3D)。
SBE含有Rac1−Lucコンストラクトを用いたルシフェラーゼレポーターアッセイは、野生型ケラチノサイトのSmad7のノックダウンがルシフェラーゼ活性を著しく減少させることを示す(図3E)。これとは反対に、Smad7トランスジェニック細胞は野生型細胞と比較してルシフェラーゼ活性を増加させ、SBEを変異させることでこの増加を減衰させた(図3F)。このように、SBEと結合しているSmad7は、Rac1抑制を取り消すべくシグナル伝達Smadを駆逐するのに必要に見える。
既知のSmad転写コリプレッサーのなかでも、CtBP1が野生型ケラチノサイトのRac1プロモーターSBE−1.5Kb部位と結合したこと(図3G)、および、Smad7導入遺伝子発現がSBEへのCtBP1の結合を著しく減少させたこと(図3G〜H)が示された。CtBP1がNOK−SI細胞でノックダウンされた場合、Rac1タンパク質およびRac1−Luc活性が、スクランブルされたsiRNAでトランスフェクションされたケラチノサイトに比べて増加した(図4A〜B)。このことは、SBE−1.5Kbと結合しているCtBP1がRac1発現を抑制することを示唆した。さらに、NOK−SI細胞でCtBP1をノックダウンすることは、それらの遊走を増加させた(図4Cおよび図10F)。
放射線誘発口腔粘膜炎のCtBP1タンパク質の試験に基づいて、CtBP1が非照射のマウスおよびヒトの口腔粘膜でかろうじて検出可能であることが判明した(図4D〜4F)。しかしながら、CtBP1陽性の細胞は、ヒト口腔粘膜炎と同様に野生型およびK5.Smad7マウスの照射口腔粘膜で著しく増加した(図4D〜4F)。その上、照射を受けた野生型口腔粘膜のCtBP1 mRNAは、9日目と10日目とに、著しく増加した(図4G)。K5.Smad7粘膜のCtBP1 mRNAレベルは、初期の時点に野生型粘膜と類似していたが、10日目までに正常まで減少した(図4G)。これらの結果は、Smad7はCtBP1 mRNAを減少させないが、その代わりに、SBE結合部位からSmad/CtBP1複合体を退けることによって、Rac1プロモーターに対するCtBP1の結合を阻害することを示している。さらに、K5.Smad7粘膜のより急速なCtBP1減少は、治癒のマーカーとして用いられる。
実施例3:Tat−Smad7は、放射線誘発口腔粘膜炎を軽減する
Smad7導入遺伝子が口腔粘膜炎の複数の病理学的プロセスを妨害する能力を有することから、限局性のSmad7送達が口腔粘膜炎の予防および処置に用いられ得るかどうか、迅速な調査が求められた。Smad7が核タンパクであるので、唾液がタンパク質を洗い落とす前に、局所Smad7送達によってSmad7を急速に細胞に入れることが必要である。したがって、タンパク質が迅速に細胞膜を透過して核に入れるのを可能にするN末端Tat−タグを有する組換えヒトSmad7タンパク質を作製した。V5エピトープは、Tat−Smad7の細胞透過を追跡するべく、Tat−Smad7タンパク質のC末端端部に加えられた(図11A〜11D)。
Smad2リン酸化を妨げるその能力を使用して、Tat−Smad7の生物活性を調べた(図11C)。対照(図11E〜F)と同じタグを有するTat−Cre組換えタンパク質を作り、C末端6XHisをコードする配列を含むpET101−Topoタンパク質発現ベクター(Invitrogen)にクローニングした。Tat−CreによりBL−21 STAR(商標)大腸菌(E. coli)(Invitrogen)を形質転換させてTat−Creタンパク質を産生させ、Ni−NTAカラムで精製した。
両タンパク質の純度および大きさは、SDS−PAGE電気泳動を使用して調べた。Tat−Smad7をマウス初代ケラチノサイトに加えて、インビトロでのTat−Smad7タンパク質の形質導入および活性を評価した。スライドを5分間、冷メタノールで固定し、V5およびpSmad2の染色を行った。Tat−Cre活性は、7,650bpベクターpLL3.7(Addgene)からの1,460bpフロックスフラグメントを消化することによって調べた。インビボでの処置のために、30μLの50%グリセロール/PBSをビヒクル対照として、かつTat−Creを非無関係(non-irrelevant)なタンパク質対照として、使用した。Tat−Smad7またはTat−Cre(30μLの50%グリセロール/PBSにおいて、用量およびレジメンを各々の図において特定)をマウス口腔に局所適用し、マウスが経口摂取するのを1時間制限した。
口腔粘膜炎予防のために、Tat−Smad7とTat−Cre(50%グリセロール/PBS中)とを8〜10週齢のC3Hメス(Jackson Laboratory)またはC57BL/6マウスの口腔に、照射24時間前から開始し照射開始後8日目まで、毎日、局所適用した。処理した組織を9日目に調べた。マウス舌を収集し、10%ホルマリンで固定し、パラフィン包埋し、そして5μmの切片に切断した。組織学的変化を分析し、H&E染色スライドを使用して潰瘍を測定した。追加のグループに対して、照射に先だって3日間毎日、そして最後の照射量の24時間後3日間にわたって毎日、臨床レジメン(すなわち、6.25mgkg−1(i.p.))でパリフェルミン処置を施した。
Tat−Creは、ビヒクル対照(図5A〜B)と比較して、効果を示さなかった。Tat−Smad7処置は、パリフェルミン(図5A)と類似した潰瘍形成に対する予防的効果を示した。分割放射線照射(図11G)よりも大きい口腔潰瘍を誘発した単回線量20Gy(BED=60)が与えられた動物で使用された場合に、Tat−Smad7の用量依存効果はより明らかだった。顕微鏡によって、パリフェルミン処置およびTat−Smad7処置の口腔粘膜はどちらも、大多数の症例で、開放性潰瘍化を防止した(図5B)。パリフェルミン処置粘膜は、Tat−Smad7処置粘膜と比べて、より多くのケラチノサイトが下方増殖を示したが、より多くの損傷ケラチノサイトも示した(凝縮または炭様の核、膨潤単核または多核細胞、および角化層内の粉々にされた核粒子)(図5B)。免疫染色で、パリフェルミンがTat−Smad7よりも著しく増殖を増加させることが分かった。Tat−Smad7はアポトーシス、白血球浸潤、核pSmad2およびNF−κB p50を減少させたが、パリフェルミンは減少させなかった(図5B〜5G)。
既存の口腔粘膜炎の処置にTat−Smad7を用いることができるかどうかを調べるために、マウスを分割(8Gyx3)頭蓋照射に曝し、Tat−Smad7(局所)またはパリフェルミン(6.25mg・kg−1、i.p.)を照射開始後(粘膜損傷が明白だった場合)6日目から9日目まで毎日適用した。処置した組織は、10日目に調べた。現行のプロトコールがマウスの口腔粘膜炎を減少させた時点よりも早くパリフェルミンの照射後投与を開始するにもかかわらず、現行のプロトコールによるパリフェルミン投与は、全ての口腔粘膜に対するその過剰増殖効果(図6B)と関係なく、潰瘍閉鎖を加速しなかった(図6A)。パリフェルミンは口腔粘膜炎を予防することは認められているが、口腔粘膜炎を処置することは認められていないため、これは驚くべきでことではない。
分割線量照射および単回線量照射の両方の後、Tat−Smad7処置口腔粘膜炎は、潰瘍サイズおよび病理学的変化が減少した(図6A〜Bおよび図12A〜12G)。潰瘍から離れたところでは、Tat−Smad7処置口腔粘膜は、パリフェルミン処置口腔粘膜よりも、より少ない過形成とより多くの分化上皮とを示した(図6B)。分割放射線照射よりも治癒が遅くなる20Gy単回線量照射により、創傷閉鎖後の回復に対するTat−Smad7の効果がより明らかになった。ビヒクル処置潰瘍がちょうど再上皮化した時、Tat−Smad7処置粘膜は正常な形態にほぼ回復していた(図6C)。
K5.Smad7マウスにおける観察と矛盾することなく、Tat−Smad7は、Rac1プロモーター作用を増加させるとともに、マウスRac1プロモーター(図12Gおよび12I)のSBEに対するCtBP1の結合を減少させ、さらに、マウス口腔粘膜炎およびヒト口腔ケラチノサイト(図6D〜E)でRac1タンパク質を増加させた。
掻創傷の後のTat−Smad7処置ヒト口腔ケラチノサイトは、創傷閉鎖を加速した(図6Fおよび図13A)。さらに、照射を受けたヒト口腔ケラチノサイトは核pSmad2およびNF−κB p50を増加させ、このような増加はTat−Smad7処置(図13B)によって減衰した。対照的に、Tat−Smad7は効率的に口腔癌細胞を透過した(図13C)ものの、癌細胞では既に豊富であるRac1タンパク質レベルをさらに上昇させることはなかった(図13D)。この結果は、正常ケラチノサイトよりも速い癌細胞の遊走(図6Fおよび図13A、13E〜13H)と、TGF−βシグナル伝達成分の遺伝損失を含まないMSK921および突然変異したSmad4を持つCal27という2つの口腔癌細胞系における遊走に対するTat−Smad7の効果の欠如(図13E〜13H)とを、説明することができた。
コロニー定量法は、ヒト口腔ケラチノサイトの残存が放射線の有無にかかわらずTat−Smad7処置によってわずかに増加したことを示す(図6G)。照射後の生存の減少が正常細胞より癌細胞で顕著であるという認識と矛盾することなく、SCC細胞は、照射後の細胞生存の実質的な減少を示した。Tat−Smad7による処置は、放射線の有無にかかわらず、SCC細胞で生存に影響を及ぼさなかった(図6G)。
実施例4:細胞透過性Smad7タンパク質の設計
療法として効果的にするために、SMAD7は効率的に細胞を透過可能であることが求められると仮定した。これを達成するために、Smad7配列を改変してタンパク質形質導入ドメインを含むようにした。
HIV由来のTat配列を選択し、タンパク質形質導入ドメインとしてSmad7による試験を行った。Smad7およびSmad7フラグメントとの融合タンパク質で使われたTatのヌクレオチドおよびタンパク質配列は、Cardarelli et al., Traffic Apr 9(4):528-39 (2008).に由来する。Tatヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、以下に提供される。
以下に示すように、Smad7の5'末端と3'末端のいずれかでヒトSmad7相補DNA(cDNA)とインフレームで直接連結したTatを有する融合タンパク質を調製した。
5′Tat−Smad7コンストラクトに3′V5タグ配列を含ませ、pGEX−6p−1タンパク質発現ベクター(New England Biolabs)にクローニングして、GST-Tat−Smad7 融合タンパク質を作った。Tat−Smad7遺伝子によりBL−21Star大腸菌(Escherichia coli)(Invitrogen) を形質転換させてTat−Smad7タンパク質を産生させた。このタンパク質を、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合からの酵素的開裂(高精度酵素(Precision enzyme)、GE Life Sciences)によるグルタチオンカラム精製および溶出によって、精製した。
PTD−Smad7融合タンパク質を生成する一方で、3′末端のV5タグを含ませて、V5抗体を用いた免疫染色によりTat−Smad7の細胞透過をモニタリングした。適当である場合、このエピトープタグは、クリニックでの使用のために除去することができる(例えば、V5タグがない状態での配列の再クローニングによって)。
また、タンパク質精製のための6−ヒスチジン(6−H)タグを有するPTD−Smad7融合タンパク質(Tat−Smad7−V5−6H)も作成した。これを以下に示す。Tat−Smad7−V5−6Hは、以下のヌクレオチド配列を持つ。すなわち、1〜53はpET−TOPOの5′配列を含み、54〜1365はTat−Smad7を含み、1366〜1497はV5エピトープ含有3′pET−TOPOおよび6xHisタグ(V5は1393〜1434を含み、Hisタグは1444〜1461、そして終止は1462〜1464を含む)。
タンパク質産生のためにコドンが最適化されてpET101/D−TopoベクターにクローニングされたTat−ヒトSmad7を、以下に示す。
Tat−Smad7−v5とSmad7とのタンパク質配列の比較を以下に提供する。Tat−Smad7におけるSmad7の最初のアミノ酸は、Mではない(Smad7とは異なる)。なぜなら、Tat−Smad7は、Tatおよび/またはGSTとインフレームになってGST融合タンパク質を形成するように、設計されている。次に、Tat−Smad7は精製後、GST融合タンパク質から切断される。大文字のヌクレオチドは、V5タグを特定する。下線が引かれたイタリック文字は、任意のpET101−Topo主鎖ベクターに由来するアミノ酸を示す。
以下にTat−Smad7−v5とSmad7との比較を示す。
実施例5:PTD−Smad7タンパク質活性の追加アッセイ
アポトーシスに関する免疫蛍光抗体法(IF)、免疫組織化学(IHC)、およびTUNELアッセイ。IFおよびIHCは、以前の記載のとおりに実行した(Han, G., Li, F., Ten Dijke, P. & Wang, X.J. Temporal smad7 transgene induction in mouse epidermis accelerates skin wound healing. Am J Pathol 179, 1768-1779 (2011))。使用した一次抗体は、K14(1:400、Fitzgerald、20R-CP200)に対するモルモット抗体、CD4(1:20、BD Bioscience、550278)に対するラット抗体、Ly−6G(1:20、BD Bioscience、550291)、BM8(F4/80に対する抗体、1:20、Invitrogen、MF48000)、BrdU(BD Bioscience、347583)に対するFITC標識抗体、マウス試料用のCD45(1:50、BD Bioscience、550539)に対するラット抗体、ヒト試料用のCD45(1:50、Abcam、Ab781)に対するマウス抗体、TGF−β1(1:50、R&D、AF-101-NA)に対するニワトリ抗体、CtBP1(1:100、Millipore、07-306)に対するウサギ抗体、NF−κB p50(1:200、Santa Cruz Biotechnology、SC-7178)に対するウサギ抗体、PCNA(1:200、Santa Cruz Biotechnology、SC-7907)に対するウサギ抗体、pSmad2(1:100、Cell Signaling Technology、3101)に対するウサギ抗体、およびV5(1:500、Invitrogen、460705)に対するマウス抗体であった。IFに関して、異なる種のIgGに対する二次抗体は、Alexa Fluor(登録商標)594(赤色)または488(緑色)コンジュゲート (全てに対して1:200、Invitrogen)であった。IHCに関しては、異なる種に対する二次ビオチン化抗体IgG(1:300、Vector Labs)を使用し、 Vectastain ABCキット(Vector Labs)を用いて発色させた。末端デオキシヌクレオチド転移酵素ウリジンニック末端標識(TUNEL、G3250)キット(Promega)をホルマリン固定組織切片に用いて、アポトーシス細胞を検出した。インビボBrdU標識は、安楽死の1時間前に、0.125mg・g−1のBrdUを腹腔内(i.p)注射することによって行った。PCNAまたはBrdUの定量は、上皮細胞全てを含む上皮の長さ1mmあたりの細胞数(cells mm-1)、TUNELまたはCD45陽性細胞の定量は、筋肉層の上の上皮層および間質全てを含む上皮の長さ1mmあたりの細胞数(cells mm-1)、核pSmad2またはNF−κB p50陽性細胞は、陽性細胞数/全残存上皮細胞 (すなわち、照射によって誘発された脱落上皮細胞を除く)とした。スライドの連続的なフィールドを使用して、MetaMorphソフトにより、BrdU標識細胞を計数した。
細胞培養。Smad7トランスジェニックおよび野生型の初代ケラチノサイトは、以前の記載のとおり、新生仔マウス皮膚から調製し(Han, G., Li, F., Ten Dijke, P. & Wang, X.J. Temporal smad7 transgene induction in mouse epidermis accelerates skin wound healing. Am J Pathol 179, 1768-1779 (2011))、PCT培地(CELLnTEC)で培養した。健常ボランティアの歯肉組織に由来する自然発生的に不死化されたヒト口腔ケラチノサイト(NOK−SI)をケラチノサイト合成培地で培養して維持した(Castilho, R.M., et al. Rac1 is required for epithelial stem cell function during dermal and oral mucosal wound healing but not for tissue homeostasis in mice. PloS one 5, e10503 (2010))。口腔癌細胞Cal27(ATCC)およびMSK921は、10%ウシ胎児血清添加ダルベッコ改変イーグル培地で培養した(D. Rabenの研究室、University of Colorado Cancer Center Tissue Culture Coreによってフィンガープリント)(GIBCO(登録商標)、Invitrogen)。照射細胞でTat−Smad7の効果を評価するために、上記のヒト細胞系をチャンバースライド(BD Bioscience、354108)で培養し、3Gyで照射し、さらに照射直後に、Tat−Smad7(1μg・mL−1)を培地に添加した。pSmad2、NF−κB p50、およびV5の免疫染色のためのTat−Smad7処置から4時間後に、細胞を100%冷メタノールで固定した。
siRNAによるトランスフェクション。培養ケラチノサイトが70%コンフルエントに達したら、LIPOFECTAMINE(登録商標)2000 (Invitrogen)を用いて100nMの標的siRNAまたはスクランブルsiRNA(Dharmacon)をトランスフェクションした。トランスフェクション48〜72時間後に細胞を収集し、ウェスタン分析にかけてノックダウン効率を決定した。遊走アッセイのために、細胞を播種した際にsiRNAをトランスフェクションした。本研究に含まれる標的siRNAは、以下の通りである。すなわち、マウスsiRac1−1(Invitrogen、MSS237708)およびsiRac1−2(IDT、MMC.RNAI.N009007.12.3);ヒトsiSmad2(Dharmacon、L-003561-00-0005)、siSmad3(Invitrogen、HSS106252)、およびsiSmad4(Invitrogen、HSS118066);ヒトsiCtBP1−1およびsiCtBP1−2;ヒトsiSmad7−1およびsiSmad7−2;ヒトTGF−β1(Dharmacon、J-012562-08-0005);マウスsiSmad7である。
インビトロケラチノサイト増殖アッセイ。インビトロケラチノサイト増殖は野生型およびSmad7トランスジェニックのケラチノサイトのBrdU取り込みによって決定した。70%コンフルエントの細胞をRac1 siRNAでトランスフェクションして、24時間後に通常の培地に変えた。インサイツ細胞増殖キット(Roche Applied Science)を用いてインビトロBrdU標識および検出を実施し、さらにMetaMorphソフトウェアを用いてBrdU標識細胞を計数した。
インビトロ細胞遊走アッセイ。細胞が100%コンフルエントに達したら、細胞を10μg・mL−1のマイトマイシンC(Sigma)で2時間処理して細胞増殖を抑制し、Fisherbrand ピペットチップにより掻創を生じさせた。細胞遊走を毎日撮影した。siRNAトランスフェクションの24〜36時間後に細胞がコンフルエントに達したとき、Image−Jソフトウェアを使用して、遊走細胞が占める創傷部として細胞遊走を記録した。Tat−Smad7処置のために、掻創傷の後に1μg・mL−1のTat−Smad7タンパク質またはビヒクル対照(PBS)を含む培地に細胞を曝し、遊走細胞が完全に掻創を覆うまで、新しく加えられるTat−Smad7を伴って1日おきに培地を変えた。
細胞生存アッセイ。細胞生存アッセイを、僅かな改変を加えた上で以前の記載のとおりに実施した(Munshi, A., Hobbs, M. & Meyn, R.E. Clonogenic cell survival assay. Methods in molecular medicine 110, 21-28 (2005))。手短に言うと、細胞を12ウェルプレートに播種し、非照射用ウェルには500細胞・ウェル−1とし、照射線量にとともに最高1,500細胞・ウェル−1まで増加させた。細胞の播種24時間後に、細胞に対して照射を行った。照射細胞および非照射細胞の培地に対して、Tat−Smad7を1μg・mL−1で添加し、またはTat−Smad7を溶解に用いた同量のPBS(対照)を添加した。新たに添加されたTat−Smad7またはPBSによる培地の交換を1日おきに、10〜14日間にわたって行った。クローンをメタノールで固定し、0.5%クリスタルバイオレット溶液(25%メタノール含有)で染色して計数し、さらに、実験ごとに4つのウェルの平均を算出した。各細胞系に対して、2〜3回の別々の実験を実施した。相対的な生存率を以前の記載のとおりに、すなわち照射線量ごとの絶対生存率(コロニー数/全播種細胞)を非照射細胞の絶対生存率で除算して、算出した。
ウェスタン分析。タンパク質抽出およびウェスタン分析を以前の記載のとおりに実施した(Li, A.G., Lu, S.L., Zhang, M.X., Deng, C. & Wang, X.J. Smad3 knockout mice exhibit a resistance to skin chemical carcinogenesis. Cancer Res 64, 7836-7845 (2004))。本研究で用いた抗体は、Smad7に対するウサギ抗体(1:500)、Smad2(1:300、Zymed、51-1300)およびSmad4(1:300、Epitomics、1676-1)に対するウサギ抗体、Smad3に対するウサギ抗体(1:300、Cell Signaling Technology、9513)、Rac1に対するマウス抗体(1:500、BD Biosciences、610651)、CtBP1に対するウサギ抗体(1:500、Millipore、 07-306)、チューブリンに対するマウス抗体(1:3000、シグマ、T5168)、GAPDHに対するマウス抗体(1:5000、Abcam、Ab8245)、ならびにアクチンに対するヤギ抗体(1:1000、サンタクルスBiotechnology、SC1616)を含んだ。グレースケール像は、ODYSSEY(登録商標)v.1.2ソフトウェア(LI-COR Biosciences)を使用して得られた。
Rac1活性化アッセイ。活性GTP結合Rac1を、Rac1活性化用のBIOCHEM(商標)キット(Cytoskeleton Inc、BK035)を使用して試験した。野生型およびSmad7トランスジェニックのケラチノサイトを15cmの直径組織培養平板で培養し、提供された溶解緩衝剤を使用してタンパク質溶解産物を調製した。Rac1活性のアッセイには、1mgの細胞ライセートを用いた。全Rac1およびSmad7タンパク質のアッセイには、50μgのライセートを用いた。マウス舌でGTP結合性のRac1を測定するために、舌の半分を液体窒素中で粉砕して粉体にし、溶解緩衝液に溶解してタンパク質を抽出し、GTP結合Rac1を1試料あたり2mgタンパク質ライセートでアッセイを行い、全Rac1タンパク質ウェスタンブロットに50μgのタンパク質ライセートをロードした。
ChIPアッセイ。ChIPアッセイは、ChIP−IT発現キット(Active Motive、53009)を使用して、以前の記載のとおり実施した(Hoot, K.E., et al. HGF upregulation contributes to angiogenesis in mice with keratinocyte-specific Smad2 deletion. J Clin Invest 120, 3606-3616 (2010); Hoot, K.E., et al.. Keratinocyte-specific Smad2 ablation results in increased epithelial-mesenchymal transition during skin cancer formation and progression. Owens, et al., J.Clin.Invest 118, 2722-2732 (2008). Smad4-dependent desmoglein-4 expression contributes to hair follicle integrity. Owens, et al., Dev. Biol. 322:156-166 (2008)。DNAタンパク質複合体をマウス一次ケラチノサイトから分離した。ChIP用に、6.3μgの剪断クロマチンは、Gタンパク質磁気ビーズと、Smad2(Cell Signaling Technology、3122)、Smad3(Cell Signaling Technology、9523)、Smad4(Cell Signaling Technology、9515)に対するウサギ抗体、Smad7に対する抗体(Santa Cruz Biotechnology、SC-11392)、CtBP1(Millipore)または陰性対照ウサギIgG(Santa Cruz Biotechnology、SC-2027)の各々の2μgとを、インキュベートした。タンパク質−DNA複合体からの溶出DNAをPCR分析に用いた。Rac1プロモーターに結合するCtBP1をゲル像のChIPバンド強度によって、または、Power SYBR Green Master Mix(Applied Biosystems)を使用した定量的PCRによって、野生型およびSmad7トランスジェニックのケラチノサイトにおいて比較した。プライマー使用して、Rac1 SBE−1.5Kbプロモーター域を増幅した。
Rac1プロモータールシフェラーゼリポーターコンストラクト、部位特異的突然変異誘発、およびルシフェラーゼアッセイ。SBE−1.5kb部位を包含するRac1プロモーターの−1671bpから−789bpの883bpフラグメントを、5′XhoIおよび3′HindIIIタグプライマーを用いて野生型マウスDNAから増幅した。このRac1プロモーターフラグメントをpGL4.26ベクター(Promega)にクローニングし、Rac1プロモーターpGL4.26ルシフェラーゼレポーター(Rac1−Luc)コンストラクトを作成した。部位特異的突然変異誘発として、SBE配列5′−TGTCTGTGCT−3′を5′−TGATAGAGCT−3′に変異させた。Rac1−LucおよびpGL4.74(1:20)を、Smad7 siRNA、CtBP1 siRNA、またはスクランブルsiRNAとともに、マウス一次ケラチノサイトまたはTat−Smad7処理(1μg・mL
−1)されたマウス一次ケラチノサイトに対して、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、同時トランスフェクションした。細胞ライセートを回収し、DUAL−LUCIFERASE(登録商標)レポーターアッセイキット(Promega)を製造元の指示に従って用いて、ルシフェラーゼアッセイを、トランスフェクションまたはTat−Smad7処理の後、48時間実行した。Rac1−ルシフェラーゼ活性はGlomax装置(Promega)で測定し、Renilla活性に対するホタル活性のレシオによって表された。Rac1プロモータ配列の増幅に用いたプライマーは、以下の通りであった。
統計的分析。分子分析および口腔粘膜炎潰瘍サイズにおける統計学的差は、スチューデントt検定を使用して分析し、すべてのデータを、平均±s.d.で表し、例外として潰瘍サイズは平均±s.e.m.によって表した。口腔粘膜炎発生率は、フィッシャーの正確確率検定によって分析した。
実施例6:E.coliまたは酵母におけるSmad7タンパク質産生のためのコドン最適化
多くの哺乳類のタンパク質がヌクレオチド配列を改変することなく細菌で産生されるが、分析は、Smad7ヌクレオチド配列が細菌でタンパク質発現可能になるには改変が必要であることを示した。
Smad7 cDNA哺乳類コドン分析は、以下のヌクレオチドによってコードされる9つの関連アルギニンアミノ酸を用いる。7〜9、43〜45、169〜171、403〜405、490〜492、526〜528、526〜528、823〜825、1057〜1059は、レアコドン(AGG、コドン使用頻度1.7%)である。これらのコドンは細菌のレアコドンであるので、それらが細菌でタンパク質翻訳および/または産生を停止または減少させることが可能であると期待される。レアなアルギニンコドンによって遺伝暗号が指定されているアミノ酸は、3位、15位、57位、135位、164位、169位、176位、275位、および353位にアルギニンを含む例示のヒトSmad7タンパク質であり、それらは下記に太字で示される。さらに、以下のアルギニンコドンも、低頻度で使用される。CGA(コドン使用頻度3.5%):ヌクレオチド16〜18、136〜138、199〜201、598〜600、それらは6位、46位、67位、200位でアルギニンをコードする。CGG(コドン使用頻度5.4%):ヌクレオチド31〜33、112〜114、316〜318、772〜774、940〜942、973〜975、1135〜1137、1276〜1278、それらは11位、38位、106位、258位、314位、325位、379位、426位でアルギニンをコードする。AGA(コドン使用頻度2.8%):ヌクレオチド637〜639、814〜816、それらは213位、272位でアルギニンをコードする。これらのアルギニン残基は、下記の太い大文字のRで強調されるとともに、それらはコドン最適化核酸配列(コドン使用頻度20.6%)の少なくとも1つでCGCに変えられる。
この分析に基づいて、E.coliまたは酵母でTat−Smad7タンパク質産生の増加を可能にすると考えられるコドンに対してSmad7ヌクレオチド配列を最適化することを決定した。Genscriptによって作られた最適化核酸コドン配列を以下に示す。手短に言うと、配列は以下の組成を有する。ヌクレオチド1〜6は、BamHIのための制限認識部位を含む。ヌクレオチド7〜36は、Tat配列を含む。ヌクレオチド37〜1314は、コドン最適化ヒトSmad7 cDNAを含む。ヌクレオチド1342〜1383は、V5エピトープを含む。ヌクレオチド1384〜1386は、終止コドンである。さらに、ヌクレオチド1387〜1392は、SalIの制限認識部位を含む。この配列において、ATGは、GSTが使われるために除かれる。全ての設計された配列を、「Codon-Usage Database」に基づいてE.coliコドンに変換した。初期最適化Smad7配列(SEQ ID NO:26)を以下に示す。
Tat−Smad7−V5とヒトSmad7 cDNAとの間のヌクレオチド配列比較を以下に示す。ヒトSmad7とコドン最適化Tat−Smad7−V5とは、68%のコドン相同性を共有する。ヒトSmad7とコドン最適化Tat−Smad7とは、71%のコドン相同性を共有する。ヒトSmad7とコドン最適化Smad7とは、73%のコドン相同性を共有する。
この最適化において、可能ならば、Smad7のアミノ酸配列を保存するように望まれることから、別のオープンリーディングフレームを形成する可能性があるMet216に変更を加えなかった。将来のコドン最適化においては、インビトロおよびインビボで機能に影響を与えることなくタンパク質産生を改善するべく、Met216をLeu216に変異させる。
実施例7:トランケートSmad7タンパク質の産生
Smad7は、限定されるものではないが、細胞増殖を高めること、細胞遊走を高めること、DNA損傷を減らすこと、細胞アポトーシスを減らすこと、および炎症を減らすことの1または複数が含まれる、インビボでの活性をいくつか含むと、考えられる。これらのプロセスに対するSmad7の効果は、TGF−βシグナル伝達の阻害、NF−κBシグナル伝達の阻害、CtBP1活性の阻害、ならびに/あるいはRac1発現および/または活性の増加の1または複数に起因する。Ptd−Smad7のより小さい機能ドメインが治療効果を提供するのに十分である場合があると考えられる(図15参照)。加えて、結果として生じるより短いタンパク質配列は、タンパク質産生を強化すると思われる。さらに、部分的Smad7配列を含む異なるトランケートTat−Smad7タンパク質が異なる処置に有用である場合があると考えられる。
例えば、Smad7のC末端MH2ドメイン(Smad7タンパク質の約半分の長さ(例えば、208〜426aa))がSmad7の抗炎症効果を主に媒介し得ると考えられる(Hong et al., Nat Immunology, 8, 504-513, 2007)。この抗炎症性の機能を有するSmad7ペプチドは、数ある中で、限定されるものではないが、口腔粘膜炎、口内炎、および乾癬などの慢性炎症に関連する状態の処置に十分であり、かつ任意で、そのような処置の改善にもなり得る。
Smad7のN末端MH1ドメイン+リンカー領域(このタンパク質の約半分、例えば2〜208aa)は、活性MAPKとして知られており、TGF−βレセプターを分解するユビキチンE3リガーゼであるSmurfに結合する(Aragon, et al., Structure 20:1726-1736 (2012))。それが主に細胞遊走の媒介ならびに/あるいはTGF−β誘導増殖および/または線維化反応の阻害を行い得ると考えられる。この細胞遊走と増殖機能とがあるSmad7ペプチドは、過剰な炎症を伴わない治癒を強化する上で十分であり、必要に応じて、そのような治癒の改善になり得る。この形態の処置から恩恵を受けると思われる創傷の種類として、数ある中でも、手術性創傷、線維性瘢痕、および糖尿病創傷、欠損治癒、および/または瘢痕が挙げられる。
トランケートSmad7 N末端およびC末端PTD融合タンパク質を設計した。Tat−Smad7−C末端コドン最適化ヌクレオチドおよびタンパク質配列の一例を以下に示す。核酸配列において、ヌクレオチド1〜6はBamHIの制限認識部位を含む。ヌクレオチド7〜36は、Tat PTD配列を含む。ヌクレオチド37〜810は、ヒトSmad7のC末端アミノ酸258〜426に最適化されたコドンを含む。ヌクレオチド568〜609は、V5エピトープ配列を含む。ヌクレオチド610〜612は、終止配列を含む。さらに、ヌクレオチド613〜618は、SalIの制限認識部位を含む。
核酸配列において、ヌクレオチド1〜6はBamHIの制限認識部位を含む。ヌクレオチド7〜36は、Tat PTD配列を含む。ヌクレオチド37〜810は、ヒトSmad7のN末端アミノ酸1〜258に最適化されたコドンを含む。ヌクレオチド811〜852は、V5エピトープ配列(太字で表した対応のアミノ酸配列)を含む。ヌクレオチド853〜855は、終止配列を含む。さらに、ヌクレオチド856〜861は、SalIの制限認識部位を含む。ATGは、GSTとの融合を可能にするために取り除かれる。
実施例8:トランケートSmad7タンパク質の試験
他のアッセイの中でも特に、上記の完全長Smad7を調べるために、インビトロおよびインビボでのアッセイを使用してトランケートSmad7タンパク質の活性を調べた。そのようなアッセイには、限定されるものではないが、マウスにおいて、Smad2のリン酸化および/またはNF−κB p50サブユニットの核転座を妨げる能力と、細胞増殖を増加させる能力と、アポトーシスおよび/または放射線誘発DNA損傷を減らす能力と、炎症および/または血管新生を減らす能力と、口腔粘膜炎、手術性創傷、糖尿病創傷および/または慢性炎症を伴う創傷で治癒を促進する能力と、が含まれる。
創傷治癒アッセイにおいて、野生型マウスに6mmのパンチ生検を実施し、その後、C末端またはN末端Tat−Smad7を日々局所適用した。総創傷閉鎖を測定することによって、上記の両方のトランケートSmad7タンパク質(例えば、Tat−Smad7 C末端タンパク質およびN末端タンパク質)が、完全長Tat−Smad7と類似の創傷治癒の促進を有することが見い出された。
実施例9:トランケートSmad7タンパク質は、創傷治癒を加速する
創傷治癒を加速するトランケートSmad7タンパク質の能力を、野生型マウスで試験した。図16Aは、マウス創傷治癒モデルに対するC末端トランケート(259〜426aa)Tat−C−Smad7の効果を示す。野生型C57BL/6マウスを麻酔して、6mm皮膚パンチ生検により背面を傷つけ、一日おきに、PBS(対照,マウス3匹、創傷4箇所/マウス)、全長Tat−Smad7(0.4μg/10μL PBS/創傷、マウス3匹、創傷4箇所/マウス)またはTat−C−Smad7(0.4μg/10μL/創傷PBS、マウス3匹、創傷4箇所/マウス、全部で12箇所の創傷を処理)の局所適用による処置を行った。創傷後1、2、4、および5日目で創傷部をCanonデジタルカメラで撮影し、正規化のために写真内部の6mmの円を用いてImage Jソフトウェアによる画像分析を行って、創傷面積を測定した。さらに、平均%残存創傷面積を処置群ごとに算出した。創傷治癒を加速するTat−C−Smad7の能力は、完全長Smad7のそれと類似していた(図16A)。
図16Bは、創傷治癒に対するN末端トランケート(1〜258aa)Tat−N−Smad7の効果を示す。野生型C57BL/6マウスを麻酔して、6mm皮膚パンチ生検により皮膚を傷つけ、一日おきに、PBS(対照,マウス6匹、創傷4箇所/マウス)、全長Tat−Smad7(0.4μg/10μL PBS、マウス6匹、創傷4箇所/マウス)またはTat−N−Smad7(0.4μg/10μL PBS、マウス6匹、創傷4箇所/マウス)の局所適用による処置を行った。創傷後1、2、および4日目で、正規化のために写真内部の6mmの円を用いてImage Jソフトウェアによる画像分析を行い、創傷面積を測定した。さらに、平均%残存創傷面積を処置群ごとに算出した。対照と2日後にTat−Smad7処置されたマウスとの間に有意な創傷治癒の差があり、後者は治癒がより早かった(図16B、p<0.05)。Tat−N−Smad7を陰性対照として調べたが、わずか1日後でも対照マウスと比べて著しい創傷治癒の加速が予想外にも促され、また、2日後の完全長Tat−Smad7処置マウスに比べて著しい創傷治癒の加速が予想外にも促された(図16B、p<0.05)。Tat−Creは、対照処置(データ示さず)と比較して、創傷閉鎖に影響を及ぼさなかった。
これらの結果は、完全長Tat−Smad7およびトランケートTat−Smad7タンパク質(Tat−C−Smad7およびTat−N−Smad7)が創傷治癒を促進することを証明する。さらに、これらの結果は、特定のトランケートTat−Smad7タンパク質が完全長Tat−Smad7よりも、創傷治癒を加速することに効果的なことを証明する。
したがって、トランケートTat−Smad7タンパク質を含んでいる組成物は、処置している創傷で有用であり、また創傷治癒を加速する際に有用である。
実施例10:Smad7は、十分に機能を果たさない創傷治癒モデルで創傷治癒を加速する
糖尿病(db/db)マウスは、実施例9に記載されたように、6mm皮膚パンチ生検により背部を傷つけられ、創傷が完全には痂皮によって覆われていない8日目前の創傷に対して、PBS(対照、マウス6匹、創傷4箇所/マウス)、完全長Tat−Smad7(0.4μg/10μL PBS、マウス6匹、創傷4箇所/マウス)、またはREGRANEX(登録商標)クリーム(綿スワブによるスメア、マウス6匹、創傷4箇所/マウス)を、1日おきに、局所適用することによって、処置された。10日目後に、痂皮と創傷周囲との間のギャップに処置を局所適用して、堅い痂皮と傷つけられていない角質層とからなるバリアを回避した。組換えヒト血小板由来増殖因子(PDGF)を含むREGRANEX(登録商標)は、糖尿病性潰瘍への局所投与について承認されている。
創傷後1、2、4、6、8、9、10、11、12、および13日目に、創傷閉鎖を視覚的に評価をした(図17A)。各時点で、創傷をCanonデジタルカメラで撮影した。8日目後に、対照と比較してTat−Smad7処置マウスにおいて視覚的に顕著な改善が創傷にあった(図17A)。
創傷後1、2、3、4、7,9、および11日目で、正規化のために写真内部の6mmの円を用いてImage Jソフトウェアによる画像分析法を行うことで、創傷の大きさを測定した。さらに、平均%残存創傷面積を処置群ごとに算出した。創傷治癒を加速するTat−Smad7の能力は、REGRANEX(登録商標)のそれと類似していた(図17B)。7日目に、画像分析の結果は、対照と比べて、創傷閉鎖がTat−Smad7処置マウスで有意に加速されたことを示した(図17B、p<0.05)。これらの結果は、REGRANEX(登録商標)で達成されるものと類似した。
創傷8日目の試料から得たホルマリン固定パラフィン背側創傷切片(1mm)を、ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)を用いて染色した。創傷8日目試料の組織学的比較は、対照に比べて、Smad7処理db/dbマウスで再上皮形成が完了して創傷閉鎖が加速されることを明らかにした(図17C)。
全体として、これらの結果は、Tat−Smad7が治癒不十分な糖尿病性創傷での創傷閉鎖を加速するのに有用であること、およびREGRANEX(登録商標)による処置の代わりを提供することを示している。
実施例11:Smad7タンパク質産生のための付加的なコドン最適化
Smad7核酸分子は、タンパク質産生を増加させるように選択される付加的なヌクレオチドの変更で設計される。例えば、アミノ酸SerおよびHisをコードするコドンの利用が操作される。上記の実施例におけるコドン最適化ヒトSmad7では、Serコドン(TCCまたはTCG)は約9%のコドン使用頻度のアミノ酸頻度を有する。SerのコドンをAGCに変えることで、Smad7タンパク質の産生が増加すると考えられる。なぜなら少なくとも一部には、これによってコドン使用頻度を任意で15%まで高めることができるからである。Smad7タンパク質には33個のSerアミノ酸がある(ヌクレオチドの位置19-21、46-48、133-135、292-294、349-351、451-453、454-456、460-462、511-513、514-516、544-546、595-597、616-618、634-636、691-693、694-696、739-741、745-747、775-777、847-849、907-909、919-921、943-945、1006-1008、1009-1101、1030-1032、1054-1056、1093-1095、1126-1128、1192-1194、1237-1239、1240-1242、1273-1275;対応するセリンアミノ酸の位置7、16、45、98、117、151、152、154、171、172、182、199、206、212、231、232、247、249、259、283、303、307、315、336、337、344、352、365、376、398、413、414、425)。これらのうち、23個(ヌクレオチド19-21、292-294、349-351、451-453、454-456、460-462、511-513、514-516、544-546、616-618、634-636、691-693、694-696、739-741、745-747、775-777、847-849、907-909、919-921、1009-1101、1030-1032、1054-1056、1093-1095;対応するセリンアミノ酸の位置7、98、117、151、152、154、171、172、182、206、212、231、232、247、249、259、283、303、307、337、344、352、365 )を、潜在的に代わりになり得るオープンリーディングフレームを導入することなしに、変えることができる。
同様に、上記の例のコドン最適化ヒトSmad7において、Hisコドン(CAC)は、コドン使用頻度が9.6%である。HisコドンをCAT(必要に応じて12.6%使用頻度)に変えることがSmad7タンパク質産生を増加させると考えられる。Smad7タンパク質では12個のHisがある(ヌクレオチド142-144、214-216、217-219、220-222、226-228、289-291、589-591、778-780、1072-1074、1147-1149; 対応するヒスチジンアミノ酸の位置48、72、73、74、76、97、170、196、197、260、358、383)。これらのうち、4つ(ヌクレオチド217-219. 220-222、589-591、778-780、ヒスチジン残基73、76、197、260)を、潜在的に代わりになり得るオープンリーディングフレームを導入することなしに、変えることができる。
加えて、野生型ヒトSmad7は、アミノ酸216として、Metアミノ酸を含む(Met216)。これは、例えば、細菌性機構による代わりのオープンリーディングフレームとして認識され得るものであって、タンパク質産生を減少させることが可能である。Met216をLeu216(ATGをCTG)に変えることにより(このアミノ酸は、生化学的性質がMetに最も近く、タンパク質の三次元構造を変えるとは思われない)、タンパク質産生を増加させる。
最初のコドン最適化Tat−Smad7−V5とさらなる変化との間の比較を以下に示す。
上の鎖:Tat−Smad7−V5;下の鎖:最適化されたSer、HisおよびM216L変異の後。
すべてのこれらの変化を含む核酸配列とそれらの対応するアミノ酸配列とを以下に示す。アミノ酸配列は、太字で示されるV5エピトープを含み、pET101−Topo主鎖はイタリックとアンダーラインによって示す。Tat−Smad7
M216L完全最適化完全長ヌクレオチドおよびタンパク質配列を以下に示す。
最適化されたヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、種々のN末端およびC末端Tat−Smad7フラグメントを作るのにも用いられる。代表的な例を以下に示す。
Tat−N−Smad7−V5最大最適化ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供する。タンパク質配列はV5エピトープを含み、それは太い大文字で示されている。
Tat−C−Smad7−V5最大最適化ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供する。
タンパク質配列は、V5エピトープ(太い大文字で示される)とpET101−Topo主鎖(下線が引かれたイタリックで示される)とを含む。
上記の最適化の前後の比較を以下に示す。C末端最適化(上の鎖):
N末端最適化(上の鎖):
さらに、他のコドン最適化核酸もまた、1または複数の発現系においてSmad7タンパク質を産生するそれらの能力に関連している。そのような配列の別の例を以下に示す。
最適化プログラムによって最適化されるTat−Smad7
M7216L−V5:
ヌクレオチド配列:
1〜6:BamHI;7−36:Tat;37〜1314:コドン最適化ヒトSmad7;1315〜1356:V5;137〜1359:終止;1360〜1365 SalI
ATGは、GSTが使用されるために除去される。682ATGからCTG(M216からL)
実施例4に記載されたTat−Smad7
M7216L−V5との配列比較:
下記の配列を使用するタンパク質産生は、哺乳類発現ベクター(例えば、pCMV−6−Entry)をHEK293またはCHO細胞にトランスフェクションさせることによって実施される。
pCMV6−Entryプラスミドにクローニングされた最適化GST−Tat−Smad7−myc−ヌクレオチド配列:
全配列(NotI部位まで)は、GenScriptのOPTIMUMGENE(商標)プログラムを用いて、哺乳類発現に最適化されたコドンである。
1790〜1792:GATをGACに変えて(Aspを維持)、オルターナティブORF(強調表示)を避ける。
1〜82:pCMV6−Entry内のクローニング部位+kozac配列
83〜777:GST+高精度酵素部位;776〜805:Tat;
806〜2086:完全長ヒトSmad7
2087〜2107:MluI、NotI、XhoI
2108〜2182:pCMV6−Entry由来のmyc−flag
太字下線:ユニークNotI部位
上記のヌクレオチド配列は、本来のヒトSmad7に79%相同性である。
上記ヌクレオチド配列由来の最適化GST−Tat−Smad7−myc−flagタンパク質配列:
1〜229:GST+高精度部位
232〜668 Tat−Smad7
671〜699:制限部位+myc−Flag
pCMV6−Entryプラスミドにクローニングされた最適化GST−Tat−N−Smad7−myc−flagヌクレオチド配列:
全配列(NotI部位まで)は、GenScriptのOPTIMUMGENE(商標)プログラムを用いて、哺乳類発現に最適化されたコドンである。
1〜50:pCMV6−Entry内のクローニング部位+kozac配列
51〜743:GST+高精度酵素部位
744〜773−:Tat;
774〜1549−:N末端1〜258aaをコードするヒトSmad7
1550〜1563:NotI、XhoI、太字下線:ユニークNotI部位
1564〜1637:pCMV6−Entry由来のmyc−flag
上記ヌクレオチド配列由来の最適化GST−Tat−N−Smad7−myc−flagタンパク質配列:
1〜241:GST−Tat
244〜500:N−Smad7 2−258
501〜528:制限部位+myc−Flag
pCMV6−Entryプラスミドにクローニングされた最適化GST−Tat−C−Smad7−myc−flagヌクレオチド配列:
全配列(NotI部位まで)は、GenScriptのOPTIMUMGENE(商標)プログラムを用いて、哺乳類発現に最適化されたコドンである。
1〜50:pCMV6−Entry内のクローニング部位+kozac配列
51〜743:GST+高精度酵素部位
744〜773:Tat
774〜1274:C末端 Smad7
1275:Mlu
1283:NotI
1275〜1370:mluI、NotI、XhoI、myc+flag
上記ヌクレオチド配列由来の最適化GST−Tat−C−Smad7−myc−flagタンパク質配列:
1〜241:GST+高精度+Tat
242〜409:c−Smad7(259〜426aa)
410〜440:Mlu+Not+myc+flag:制限部位+myc−Flag
Smad7構造に基づいて、PYドメイン(203〜217aa)を含むリンカー(203〜258aa)は、TGF−β誘発性炎症の阻止または増殖阻害による治療効果を有することが予想される(図15)。
Tat−Smad7−リンカーペプチド(203〜258aa)のアミノ酸配列を以下に示す。
1〜10:Tat
細菌産物内の上記ペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列を以下に示す。
1〜30:Tat
31〜198:Smad7リンカー
199〜249:V5
哺乳類細胞産物内の上記ペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列を以下に示す。
1〜30:哺乳類コドン最適化Tat
31〜198:Smad7リンカー
199〜285:NotI、Mycタグ、Flagタグ
Tat−Smad7−PYペプチド(203〜217aa)のアミノ酸配列を以下に示す。
1〜10:Tat
細菌産物内の上記ペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列を以下に示す。
1〜30:Tat
31〜75:Smad7−PY
76〜126:V5
哺乳類細胞産物内の上記ペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列を以下に示す。
1〜30:哺乳類コドン最適化Tat
31〜75:Smad7 PY
76〜162:NotI、Mycタグ、Flagタグ
本技術の前述の説明は、例示および説明のために提示されている。前述は、本技術を本明細書中で開示される1つの形態または複数の形態に制限することを意図していない。本技術の説明は、1つまたは複数の実施形態および特定の変形および変更の記述を含んでいるが、その他の変形および変更が、例えば、本開示を理解した後では、当業者の技術および知識の範囲内であり得るように、本発明の技術の範囲内である。それは、許容される範囲内で、特許請求の範囲に記載されたものの代替の、交換可能なおよび/もしくは等価な構造、機能、範囲、またはステップを含む他の実施形態を含む権利を、そのような代替の、交換可能なおよび/もしくは等価な構造、機能、範囲、またはステップが本明細書中に開示されているかどうかにかかわりなく取得することを目的とするもので、公的にあらゆる特許性のある内容を献呈することを意図しているものではない。
一態様では、位置216でロイシンを有しているヒトSmad7タンパク質を含むタンパク分子が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトSmad7タンパク質は、C末端でトランケートされてもよく、または、N末端でトランケートされてもよい。いくつかの実施形態において、トランケートされたヒトSmad7タンパク質は、完全長Smad7配列の約50%を含んでもよく、または、完全長Smad7配列の約13%を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ヒトSmad7タンパク質は、ヒトSmad7タンパク質のアミノ酸2〜258、アミノ酸204〜258、またはアミノ酸259〜426を含むか、あるいは、それらからなってもよい。いくつかの実施形態において、そのタンパク質分子は、Smad2のリン酸化の減少または除去、NF−κBp50サブユニットの核転座の減少または除去、細胞増殖の増加、アポトーシスの減少、放射線誘発DNA損傷の減少、炎症の減少、脈管形成の減少、口腔粘膜炎治癒の促進、創傷治癒の促進、および自己免疫疾患の処置からなる群から選択される1または複数の生物活性を有してもよい。いくつかの実施形態において、上記のいずれかは、タンパク質導入ドメイン(例えばTat)を、さらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、上記のいずれかは、エピトープタグまたは精製タグ(例えばV5、グルタチオン−S−トランスフェラーゼまたは6−ヒスチジン(SEQ ID NO:40))の1または複数を、さらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、上記のいずれかと、タンパク分子と、1または複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
以下の図面は、本明細書の一部をなし、本技術の特定の実施形態を示すために含まれる。実施形態は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書中に示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、理解され得る。
K5.Smad7マウスが放射線誘発口腔粘膜炎に対して耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。非照射のおよび照射を受けた(照射開始後9日目)野生型(WT)およびK5.Smad7の舌でのH&E染色の例示的な実施形態を提供する。WTマウス由来の舌の画像にある縦方向の線は、潰瘍境界線を強調し、画像にある点線は上皮と間質との境界線を示す(スケールバー、50μm)。点線は、基底膜を強調する。スケールバー:全てのパネルで50μmである。
K5.Smad7マウスが放射線誘発口腔粘膜炎に対して耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。舌潰瘍の大きさ(平均±s.e.m)の定量化のグラフ表示を提供する。8Gyx3照射において、WTマウスがn=8およびK5.Smad7マウスがn=7であり;18Gy照射において、WTマウスがn=5およびK5.Smad7マウスがn=4であり;22−Gy照射において、WTおよびK5.Smad7マウスが1群あたりn=5である。データを平均±s.e.mとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。
K5.Smad7マウスが放射線誘発口腔粘膜炎に対して耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。H&E染色(左側)およびCD45染色(右側)を用いて視覚化した、ヒトの舌の咽頭室後方(上側)および放射線誘発舌粘膜炎(下側)の例示的な実施形態を提供する。実線は潰瘍境界線を示し、点線は基底膜を示す(スケールバー、25μm)。点線は、基底膜を強調する。スケールバー:全てのパネルで50μmである。
K5.Smad7マウスが放射線誘発口腔粘膜炎に対して耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。WTマウス由来の潰瘍に隣接した照射切片およびK5.Smad7マウス由来の障害領域(PI、ヨウ化プロピジウム)におけるCD45免疫染色、増殖細胞核抗原(PCNA)、およびTUNELアッセイの例示的な実施形態を提供する。点線は、基底膜を示す(スケールバー、25μm)。点線は、基底膜を強調する。スケールバー:全てのパネルで25μmである。
K5.Smad7マウスが放射線誘発口腔粘膜炎に対して耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図1Dの染色の定量化のグラフ表示を提供する(1群あたりn=3または4)。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。
K5.Smad7マウスが放射線誘発口腔粘膜炎に対して耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図1Dの染色の定量化のグラフ表示を提供する(1群あたりn=3または4)。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。NS、両側スチューデントt検定では有意差は認められなかった。
K5.Smad7マウスが放射線誘発口腔粘膜炎に対して耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図1Dの染色の定量化のグラフ表示を提供する(1群あたりn=3または4)。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
Smad7によって減弱される分子異常を示しているデータの例示的な実施形態を提供する。NF−κBp50、TGF−β1、およびpSmad2の免疫染色の例示的な実施形態を提供する。野生型(WT)の照射舌切片を潰瘍に隣接させ、K5.Smad7の切片を障害領域から得た。ヒト試料は、非照射口腔粘膜および放射線誘発粘膜炎から得た。点線は、上皮と間質との境界線を線引きする。スケールバーは、全てのパネルで25μmである。
Smad7によって減弱される分子異常を示しているデータの例示的な実施形態を提供する。(図2A)に示すNF−κBp50およびpSmad2の免疫染色の定量化のグラフ表示を提供する。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いて、P値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。NS、有意性無し。
Smad7によって減弱される分子異常を示しているデータの例示的な実施形態を提供する。TGF−β1のqRT−PCRの例示的な実施形態を提供する(Keratin 5により正規化)、0日目に1群あたりn=6、7日目および9日目にn=4、ならびに10日目にn=7)。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いて、P値を求めた。*P<0.05。
Smad7によって減弱される分子異常を示しているデータの例示的な実施形態を提供する。ヒト口腔ケラチノサイト遊走(図8の画像を参照)の定量化のグラフ表示を提供する。スクランブル、スクランブルsiRNA。1群あたりn=3。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いて、P値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。
Smad7によって減弱される分子異常を示しているデータの例示的な実施形態を提供する。Smad7ノックダウンの72時間後に、Smad7およびRac1についてのsiSmad7−1およびsiSmad7−2のノックダウン効率のウェスタン分析の例示的な実施形態を提供する。M、分子マーカー。
Smad7によって減弱される分子異常を示しているデータの例示的な実施形態を提供する。全ておよび活性化された(GTP結合)Rac1タンパク質のウェスタン分析の例示的な実施形態を提供する。M:分子マーカー。
Smad7によって減弱される分子異常を示しているデータの例示的な実施形態を提供する。Smad7媒介ケラチノサイト遊走に対するRac1ノックダウンの効果の定量化を示すグラフを提供する(図9Aのノックダウン効率と図9Dの画像とを参照)。1群あたりn=3。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いて、P値を求めた。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
Rac1プロモーターのSBEに対する個々のSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによって、Smad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。野生型(WT)およびSmad7トランスジェニックケラチノサイトに含まれるRac1mRNAの定量化を示すグラフを提供する。1群あたりn=4。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05。
Rac1プロモーターのSBEに対する個々のSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによって、Smad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。WTおよびSmad7ケラチノサイトにおけるGTP−Rac1および総Rac1のウェスタン分析の例示的な実施形態を提供する。WTおよびSmad7ケラチノサイトのSmad7タンパク質レベルを、Smad7に対する抗体を用いたチューブリンウェスタンブロットによって決定した(図10A〜Bの追加のウェスタンブロットおよび定量化を参照)。
Rac1プロモーターのSBEに対する個々のSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによって、Smad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。ヒトケラチノサイトの個々のSmad2、Smad3、またはSmad4をノックダウンした後のRac1タンパク質レベルのウェスタン分析の例示的な実施形態を提供する(Smadノックダウン効率については図10C〜10Eを参照)。
Rac1プロモーターのSBEに対する個々のSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによって、Smad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。WTおよびSmad7トランスジェニックケラチノサイトのRac1プロモーターの−1.5kbSBE部位に対するSmad−2、−3、−4、および−7の結合についてのChIPアッセイの例示的な実施形態を提供する。
Rac1プロモーターのSBEに対する個々のSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによって、Smad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。マウスケラチノサイトにおけるRac1ルシフェラーゼレポーターアッセイを示すグラフを提供する。スクランブル、スクランブルsiRNA。n=6。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05。
Rac1プロモーターのSBEに対する個々のSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによって、Smad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。WTまたはSmad7トランスジェニックケラチノサイトにおいてSBEまたは変異型(mut)SBEを含むRac1ルシフェラーゼレポーターの活性の定量を示すグラフを提供する。n=6。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。
Rac1プロモーターのSBEに対する個々のSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによって、Smad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。WTまたはK5.Smad7ケラチノサイトにおけるRac1プロモーターのSBE−1.5Kb部位に対するCtBP1結合についてのChIPアッセイの画像の例示的な実施形態を提供する。
Rac1プロモーターのSBEに対する個々のSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによって、Smad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。WTおよびSmad7トランスジェニックケラチノサイトにおいて、図3Gに示すSBEに対するCtBP1結合についてのChIP−qPCR定量を示すグラフを提供する。n=4。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01。
ケラチノサイト遊走の阻害に貢献するCtBP1関連Rac1抑制を示すデータの例示的な実施形態を提供する。ヒト口腔ケラチノサイトにおけるCtBP1ノックダウン後のRac1タンパク質についてのウェスタン分析の例示的な実施形態を提供する。
ケラチノサイト遊走の阻害に貢献するCtBP1関連Rac1抑制を示すデータの例示的な実施形態を提供する。SBE含有Rac1 lucレポーター活性の定量を示すグラフを提供する。n=6。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。
ケラチノサイト遊走の阻害に貢献するCtBP1関連Rac1抑制を示すデータの例示的な実施形態を提供する。ヒト口腔ケラチノサイト遊走に対するCtBP1ノックダウンの効果の定量を示すグラフを提供する。1群あたりn=3。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
ケラチノサイト遊走の阻害に貢献するCtBP1関連Rac1抑制を示すデータの例示的な実施形態を提供する。CtBP1の免疫染色の例示的な実施形態を提供する。照射切片を潰瘍(WT)または障害領域(K5.Smad7)に隣接させた。点線は基底膜を示す。スケールバーは、全てのパネルで50μmである。
ケラチノサイト遊走の阻害に貢献するCtBP1関連Rac1抑制を示すデータの例示的な実施形態を提供する。ヒト試料の非照射口腔粘膜および放射線誘発粘膜炎におけるCtBP1の免疫染色の例示的な実施形態を提供する。点線は基底膜を示す。スケールバーは、両パネルとも50μmである。
ケラチノサイト遊走の阻害に貢献するCtBP1関連Rac1抑制を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図4D〜EにおけるCtBP1核陽性細胞の定量を示すグラフを提供する。1群あたりn=3または4。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。
ケラチノサイト遊走の阻害に貢献するCtBP1関連Rac1抑制を示すデータの例示的な実施形態を提供する。CtBP1のqRT−PCRの定量を示すグラフを提供する(Keratin K5により正規化)。0日目に1群あたりn=6、7日目および9日目にn=4、ならびに10日目にn=7。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05、**P<0.01。
経口Tat−Smad7投与がマウスの放射線誘発口腔粘膜炎を予防したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。8Gyx3照射の開始後、9日目での口腔粘膜炎潰瘍の大きさの定量を示すグラフを提供する。ビヒクル=生理的食塩水または50%グリセロール/PBS。データを平均±s.e.mとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05、**P<0.01。
経口Tat−Smad7投与がマウスの放射線誘発口腔粘膜炎を予防したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。8Gyx3照射の開始から9日目における病理学的変化の例示的な実施形態を提供する。ビヒクル=生理的食塩水または50%グリセロール/PBS。スケールバーは、H&Eパネルについては50μm、残りのパネルについては25μm。点線は上皮と間質との境界線を線引きし、実線は潰瘍境界線を強調する。
経口Tat−Smad7投与がマウスの放射線誘発口腔粘膜炎を予防したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図5Bに示す免疫染色の定量を示すグラフを提供する。1群あたりn=3または4。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。
経口Tat−Smad7投与がマウスの放射線誘発口腔粘膜炎を予防したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図5Bに示す免疫染色の定量を示すグラフを提供する。1群あたりn=3または4。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。NS、有意差無し。
経口Tat−Smad7投与がマウスの放射線誘発口腔粘膜炎を予防したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図5Bに示す免疫染色の定量を示すグラフを提供する。1群あたりn=3または4。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05、***P<0.001。NS、有意差無し。
経口Tat−Smad7投与がマウスの放射線誘発口腔粘膜炎を予防したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図5Bに示す免疫染色の定量を示すグラフを提供する。1群あたりn=3または4。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。NS、有意差無し。
経口Tat−Smad7投与がマウスの放射線誘発口腔粘膜炎を予防したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図5Bに示す免疫染色の定量を示すグラフを提供する。1群あたりn=3または4。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01。NS、有意差無し。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置を示すデータの例示的な実施形態を示す。8Gyx3照射の開始後、10日目に測定した潰瘍の大きさの定量を示すグラフを提供する。グリセロール=50%グリセロール/PBS。データは、平均±s.e.mとして表され、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。NS、有意差無し。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置を示すデータの例示的な実施形態を示す。口腔粘膜のH&E染色の例示的な実施形態を提供する。上側パネル:パリフェルミン処置粘膜に開放性潰瘍あり、Tat−Smad7処置粘膜に開放性潰瘍なし。下側パネル:パリフェルミン処置粘膜とTat−Smad7処置粘膜との間における上皮の厚さの比較。点線は、基底膜を線引きする。縦方向の線は、潰瘍境界線を強調する。スケールバーは、全てのパネルで50μmである。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置を示すデータの例示的な実施形態を示す。潰瘍が治癒した後の20Gy誘発口腔粘膜炎におけるTat−Smad7処置の免疫染色の例示的な実施形態を提供する。V5免疫染色は、口腔上皮(切片は障害領域から離れている)のTat−Smad7を視覚化する。K14免疫染色を対比染色として用いた。点線は、基底膜を線引きする。スケールバーは、全てのパネルで25μmである。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置を示すデータの例示的な実施形態を示す。8Gyx3照射開始後10日目のTat−Smad7処置マウス舌のRac1ウェスタン分析の例示的な実施形態を提供する。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置を示すデータの例示的な実施形態を示す。処置後48時間のTat−Smad7処置正常ヒト口腔ケラチノサイトに対するRac1ウェスタン分析の例示的な実施形態を提供する。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置を示すデータの例示的な実施形態を示す。ヒト口腔ケラチノサイト遊走に対するTat−Smad7処置の効果の例示的な実施形態を提供する(NOK−SI、図13Aの画像を参照)。1群あたりn=4。データは、平均±s.d.として表され、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置を示すデータの例示的な実施形態を示す。Tat−Smad7処置の有無によるNOK−SIケラチノサイトならびにSCC株(Cal27およびMSK921)の生存曲線の定量を示すグラフである。各照射線量につき1群あたりn=4。データは、平均±s.d.として表され、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05。
K5.Smad7口腔粘膜組織が放射線誘発口腔粘膜炎耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。Smad7ウェスタンブロットの例示的な実施形態を提供する:非照射野生型(WT)舌では検出不能で、照射後にわずかに検出可能であった。K5.Smad7舌は、照射前後で比較可能なSmad7タンパク質レベルを有する。M:分子マーカー。
K5.Smad7口腔粘膜組織が放射線誘発口腔粘膜炎耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。Smad7免疫染色の例示的な実施形態を提供する。一部の照射上皮細胞の核が肥大していることに留意すべきである。点線は、上皮と間質との境界線を線引きする。スケールバーは、すべてのパネルについて50μmである。
K5.Smad7口腔粘膜組織が放射線誘発口腔粘膜炎耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。K5.Smad7マウスにおける口腔粘膜炎誘発病的状態の発生率減少の定量を示すグラフを提供する。フィッシャーの正確確率アッセイを用いてp値を計算する。**P=0.007。
K5.Smad7口腔粘膜組織が放射線誘発口腔粘膜炎耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。WT口腔粘膜炎と比較して、好中球(Ly−6G)、マクロファージ(BM8)、および活性化T細胞(CD4)の浸潤減少を示すK5.Smad7舌の免疫染色の例示的な実施形態を提供する。点線は、上皮と間質との境界線を線引きする。スケールバーは、すべてのパネルについて50μmである。
K5.Smad7口腔粘膜組織が放射線誘発口腔粘膜炎耐性であったことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。照射前後のWT口腔粘膜とK5.Smad7口腔粘膜との間でpSmad1/5/8核陽性細胞(緑色)の有意な差がないことを示す免疫染色の例示的な実施形態を提供する。ケラチン(K14)免疫染色(赤色)は、上皮区画を強調する。照射上皮細胞の核が肥大していることに留意すべきである。スケールバーは、すべてのパネルについて50μmである。
自然発生的に不死化されたヒト口腔上皮細胞(NOK−SI)の遊走はSmad7をノックダウンすることにより遅れたがTGF−β1をノックダウンすることにより加速されたことを示すデータの、例示的な実施形態を提供する。細胞遊走の典型的な画像の例示的な実施形態を提供する。点線の対は、掻創を線引きする。Smad7ノックダウンの細胞遊走および効率の定量は、図2Dおよび図2E(上記)に示される。スクランブル、スクランブルsiRNA。
自然発生的に不死化されたヒト口腔上皮細胞(NOK−SI)の遊走はSmad7をノックダウンすることにより遅れたがTGF−β1をノックダウンすることにより加速されたことを示すデータの、例示的な実施形態を提供する。細胞遊走の典型的な画像の例示的な実施形態を提供する。点線の対は、掻創を線引きする。Smad7ノックダウンの細胞遊走および効率の定量は、図2Dおよび図2E(上記)に示される。スクランブル、スクランブルsiRNA。
自然発生的に不死化されたヒト口腔上皮細胞(NOK−SI)の遊走はSmad7をノックダウンすることにより遅れたがTGF−β1をノックダウンすることにより加速されたことを示すデータの、例示的な実施形態を提供する。3回の別々の実験からのTGF−β1ノックダウン後の細胞遊走の定量を示すグラフを提供する。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05、**P<0.01。NS、有意差無し。
自然発生的に不死化されたヒト口腔上皮細胞(NOK−SI)の遊走はSmad7をノックダウンすることにより遅れたがTGF−β1をノックダウンすることにより加速されたことを示すデータの、例示的な実施形態を提供する。TGF−β1ノックダウン効率を示すqRT−PCRを示すグラフを提供する。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05。
Rac1をノックダウンすることで野生型(WT)およびSmad7トランスジェニックケラチノサイトの増殖および遊走が減少したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。Rac1siRNA(siRac1−1、siRac1−2)トランスフェクションの48時間後にRac1のウェスタンブロット分析の例示的な実施形態を提供する。対照、スクランブルsiRNA。
Rac1をノックダウンすることで野生型(WT)およびSmad7トランスジェニックケラチノサイトの増殖および遊走が減少したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。Rac1ノックダウン有りまたは無しでのBrdU取り込みアッセイにおいてWTおよびSmad7培養細胞のうちのBrdU標識細胞の割合を示すグラフを提供する。3回の別々の実験からのデータを平均±s.d.として表した。***P<0.001。
Rac1をノックダウンすることで野生型(WT)およびSmad7トランスジェニックケラチノサイトの増殖および遊走が減少したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。(図9B)に存在するBrdU陽性細胞の典型的な免疫蛍光法の例示的な実施形態を提供する。ケラチン14(K14、赤色)に対する抗体を対比染色に用いた。
Rac1をノックダウンすることで野生型(WT)およびSmad7トランスジェニックケラチノサイトの増殖および遊走が減少したことを示すデータの例示的な実施形態を提供する。Rac1ノックダウン後のSmad7トランスジェニックおよびWTケラチノサイトのインビトロ細胞遊走アッセイの例示的な実施形態を提供する。点線の対は、掻創を線引きする。細胞の定量を図2Gに示す。
Rac1プロモーターのSBEに対するSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによるSmad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。Smad7トランスジェニックケラチノサイトのGTP−Rac1および総Rac1のウェスタンブロット分析の例示的な実施形態を提供する。追加の試料を図3Bに示す。M:分子マーカー。
Rac1プロモーターのSBEに対するSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによるSmad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図10Aおよび図3Bに示すWTおよびK5.Smad7ケラチノサイトのGTP−Rac1、総Rac1、およびSmad7の定量を示すグラフを提供する。WTケラチノサイトのタンパク質レベルについての各ブロットを「1」として正規化した。データを平均±s.d.として表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。**P<0.01、***P<0.001。
Rac1プロモーターのSBEに対するSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによるSmad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。NOK−SI細胞でのSmad2ノックダウンのウェスタンブロット分析の例示的な実施形態を提供する。Rac1発現に対するその効果を図3Cに示す。M:分子マーカー。GAPDH、同じブロットの再探索による内部タンパク質対照。
Rac1プロモーターのSBEに対するSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによるSmad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。NOK−SI細胞でのSmad3ノックダウンのウェスタンブロット分析の例示的な実施形態を提供する。Rac1発現に対するその効果を図3Cに示す。M:分子マーカー。GAPDH、同じブロットの再探索による内部タンパク質対照。
Rac1プロモーターのSBEに対するSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによるSmad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。NOK−SI細胞でのSmad4ノックダウンのウェスタンブロット分析の例示的な実施形態を提供する。Rac1発現に対するその効果を図3Cに示す。M:分子マーカー。GAPDH、同じブロットの再探索による内部タンパク質対照。
Rac1プロモーターのSBEに対するSmadおよびCtBP1の結合を抑制することによるSmad7増加Rac1発現を示すデータの例示的な実施形態を提供する。CtBP1ノックダウンがNOK−SI細胞遊走を促進することを示す例示的な実施形態を提供する。点線の対は、掻創を線引きする。CtBP1ノックダウンの細胞遊走および効率の定量を図4Aおよび図4Cに示す。
Tat−Smad7およびTat−Creタンパク質の精製および特徴づけを示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Smad7タンパク質の例示的な実施形態を示す模式図である。記載順にそれぞれSEQ ID NO:49および101を開示する。
Tat−Smad7およびTat−Creタンパク質の精製および特徴づけを示すデータの例示的な実施形態を提供する。精製Tat−Smad7タンパク質のウェスタンブロットの例示的な実施形態を提供する。
Tat−Smad7およびTat−Creタンパク質の精製および特徴づけを示すデータの例示的な実施形態を提供する。ケラチノサイトにおけるTat−Smad7タンパク質導入の免疫染色の例示的な実施形態を提供する。左側および中央のパネル:V5抗体を用いたTat−Smad7染色(緑色)、K14抗体により対比染色(赤色)。細胞は、導入5分後に核内に、導入12時間後に核内および細胞質内に、Tat−Smad7を示した。右側のパネル:Tat−Smad7はSmad2リン酸化を抑止した(pSmad2、緑色)。V5(赤色)対比染色は、Tat−Smad7導入細胞を視覚化する。
Tat−Smad7およびTat−Creタンパク質の精製および特徴づけを示すデータの例示的な実施形態を提供する。V5抗体染色がTat−Smad7局所適用の12時間後に、頬粘膜でのTat−Smad7 導入を検出することを示す、免疫染色の例示的な実施形態を提供する。K14抗体を対比染色に用いた。スケールバー、両パネルとも50μmである。
Tat−Smad7およびTat−Creタンパク質の精製および特徴づけを示すデータの例示的な実施形態を提供する。図11Aに示す同一のTatおよびV5タグを有する精製Tat−Creタンパク質のウェスタンブロットの例示的な実施形態を提供する。
Tat−Smad7およびTat−Creタンパク質の精製および特徴づけを示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Creの活性を示すアガロースゲルの例示的な実施形態を提供する。Tat−Creは、7650bpベクターpLL3.7から1,460bpのフロックスド(floxed)フラグメントを切り出す。
Tat−Smad7およびTat−Creタンパク質の精製および特徴づけを示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Smad7タンパク質予防的処置が20Gy放射線誘発口腔潰瘍を減少させたことを示すグラフを提供する。データを平均±s.e.mとして表す。両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05、***P<0.001。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Smad7(毎日0.8μg、6日目から9日目)処置口腔粘膜における潰瘍の大きさの減少についての定量を示すグラフを提供する。試料を10日目に回収した。1群あたりn=8。データを平均±s.e.mで表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05、**P<0.01。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図12Aからの試料に対する分子マーカーの免疫染色の例示的な実施形態を提供する。スケールバーは、上側の2つのパネルで50μmであり、他のパネルで25μmである。ヨウ化プロピジウム(PI)およびK14を対比染色として用いた。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図12Cに示す免疫染色の定量を示すグラフである。3〜4つの試料を使用した。データを平均±s.dで表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*P<0.05。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図12Cに示す免疫染色の定量を示すグラフである。3〜4つの試料を使用した。データを平均±s.dで表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図12Cに示す免疫染色の定量を示すグラフである。3〜4つの試料を使用した。データを平均±s.dで表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図12Cに示す免疫染色の定量を示すグラフである。3〜4つの試料を使用した。データを平均±s.dで表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図12Cに示す免疫染色の定量を示すグラフである。3〜4つの試料を使用した。データを平均±s.dで表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。ルシフェラーゼアッセイの定量を示すグラフである。Tat−Smad7処置は、マウスケラチノサイトにおいて、SBEを有するRac1プロモーターの活性を高めるが、変異型SBEを有するものでは高めない。データを平均±s.dで表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。***P<0.001。NS、有意差無し。
口腔粘膜炎に対するTat−Smad7処置の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Smad7処理マウスケラチノサイトにおいてマウスRac1プロモーターのSBEに対するCtBP1結合のChIPアッセイの例示的な実施形態を提供する。
ヒトケラチノサイトおよび腫瘍細胞株の遊走に対するTat−Smad7処理の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Smad7がNOK−SI細胞遊走を加速することを示す例示的な実施形態を提供する。4つの別々の実験からの定量を図6F(上記)に示す。点線の対は、初期創傷を線引きする。
ヒトケラチノサイトおよび腫瘍細胞株の遊走に対するTat−Smad7処理の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。減衰放射線誘発pSmad2およびNF−κBp50核局在化を示すNOK−SI細胞におけるTat−Smad7処置の免疫染色の例示的な実施形態を提供する。
ヒトケラチノサイトおよび腫瘍細胞株の遊走に対するTat−Smad7処理の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Smad7処置2時間後のMSK921細胞のV5染色を示す例示的な実施形態を提供する。K14染色を対比染色として用いた。
ヒトケラチノサイトおよび腫瘍細胞株の遊走に対するTat−Smad7処理の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Smad7処置後60時間のMSK921におけるRac1ウェスタン分析の例示的な実施形態を提供する。M:分子マーカー。
ヒトケラチノサイトおよび腫瘍細胞株の遊走に対するTat−Smad7処理の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。3回の別々の実験からのMSK921細胞遊走の定量を示すグラフを提供する。データを平均±s.d.で表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。NS、有意差無し。
ヒトケラチノサイトおよび腫瘍細胞株の遊走に対するTat−Smad7処理の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。Tat−Smad7およびPBSにより処理された典型的なMSK921細胞遊走を示す例示的な実験を提供する。実線の対は、初期創傷を線引きする。点線は、遊走細胞の最前部を強調する。
ヒトケラチノサイトおよび腫瘍細胞株の遊走に対するTat−Smad7処理の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。3回の別々の実験からのCal27細胞遊走の定量を示すグラフを提供する。データを平均±s.d.で表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。NS、有意差無し。
ヒトケラチノサイトおよび腫瘍細胞株の遊走に対するTat−Smad7処理の効果を示すデータの例示的な実施形態を提供する。図13Gに関する典型的な画像を示す例示的な実施形態を提供する。実線の対は、初期創傷を線引きする。点線は、遊走細胞の最前部を強調する。
口腔粘膜炎のSmad7媒介防護および治癒の潜在的機序の概要を説明する模式図を示す。放射線がどのようにNF−κBを活性化させ、TGF−β1およびCtBP1を増加させるかを説明する模式図を示す。NF−κBおよびTGF−β1は、炎症を誘発する。TGF−β1は、アポトーシス、成長停止を誘発するとともに、Smad−2、−3、および−4を活性化し、それらがRac1プロモーターにCtBP1を動員してRac1転写を抑制することで再上皮形成の鈍化をもたらす。
口腔粘膜炎のSmad7媒介防護および治癒の潜在的機序の概要を説明する模式図を示す。Smad7がどのように、NF−κBとTGF−β1とによって誘発された炎症を妨げて、TGF−β1によって誘発されたアポトーシスおよび成長停止を妨げるかということを説明する模式図を表す。Smad7は、TGF−β1媒介Smad活性化(リン酸化)を防止することまたはRac1プロモーターと結合する際にシグナル伝達Smad/CtBP1転写抑制複合体と競合することのいずれかによって、Rac1転写抑制を軽減する。Smad7によって誘発されるRac1の増加は、再上皮形成の間、ケラチノサイト遊走に寄与する。
タンパク質パートナー、潜在的標的効果、および潜在的生理作用に関連したSmad7ドメインを説明する模式図である。
図16A〜Bは、マウス創傷治癒モデルで創傷治癒を加速するトランケートSmad7タンパク質の能力を示すグラフである。図16Aは、完全長Tat−Smad7と対照(PBS)と比較した、経時的な平均創傷治癒率に対するC末端トランケート(259〜426aa)Tat−C−Smad7の効果を示すグラフである。各々の群についてn=3。図16Bは、完全長Tat−Smad7と対照(PBS)と比較した、経時的な平均創傷治癒率に対するTat−N−Smad7(1〜258aa)の効果を示すグラフである。各々の群についてn=6。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*p<0.05 対照(PBS)と比較、#p<0.05 Tat−Smad7と比較。
図17A〜Cは、Smad7が障害性創傷治癒モデルで創傷治癒を加速することを示す写真およびグラフである。図17Aは、13日間にわたってPBSまたはTat−Smad7で処置した糖尿病(db/db)マウスにおける創傷の肉眼的外観を示すデジタル写真である。図17Bは、REGRANEX(登録商標)および対照(PBS)と比較した、経時的な平均創傷治癒率に対するTat−Smad7の効果を示すグラフである。各々の群についてn=6。データを平均±s.dとして表し、両側スチューデントt検定を用いてP値を求めた。*p<0.05 対照(PBS)と比較。図17Cは、創傷後8日目で採取した創傷試料の組織学的比較である。対照(PBS)db/dbマウス(上側パネル)の画像中の垂直方向の点線は、創傷境界を強調する。
この出願で使用されるように、「Smad7をコードする核酸」は、細胞内の全核酸を伴わずに単離されている核酸のことを指してもよく、および/または、Smad7ポリペプチドをコードするcDNAを指してもよい。本明細書中に使用されるように、「細胞内の全核酸を伴わずに単離」という用語は、核酸分子が、おおよそ、または、少なくとも、標準的な生化学技術、限定されるものではないが、例えばアガロースゲル電気泳動法を用いて決定される他の細胞核酸分子の、約75%純、80%純、85%純、90%純、95%純、96%純、97%純、98%純、99%純、または100%純であることをいう。本明細書中に使用されるように、「細胞内の全タンパク質を伴わずに単離」という言葉は、タンパク質分子が、おおよそ、または、少なくとも、標準的な生化学技術、限定されるものではないが、例えばウェスタンブロットを用いて決定される他の細胞核酸分子の、約75%純、80%純、85%純、90%純、95%純、96%純、97%純、98%純、99%純、または100%純であることをいう。特定の実施形態において、本技術は、SEQ ID NO:9、21、23、24、26、28、30、32〜34、36、38、39、87、89、91、93、96、97、99、および100のいずれか1つに本質的に記載、および/または、含まれる、核酸配列に関する。
いくつかの実施形態では、核酸配列は、さらに、1または複数のエピトープタグまたは精製タグをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、エピトープタグはV5である。いくつかの実施形態では、精製タグはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)または6−ヒスチジン(H6)(SEQ ID NO:40)の1または複数である。
核酸分子に関して本明細書中で使用される「精製タグ」という用語は、タンパク質の精製を促進するがタンパク質の生物活性には概ね必要ではないペプチド配列をコードするヌクレオチドのことをいう。いくつかの実施形態では、タンパク質精製後に精製タグを除去することが可能である。精製タグの例として、限定されるものではないが、GSTおよびH−6(SEQ ID NO:40)が挙げられる。
Smad2リン酸化を妨げるその能力を使用して、Tat−Smad7の生物活性を調べた(図11C)。対照(図11E〜F)と同じタグを有するTat−Cre組換えタンパク質を作り、C末端6XHis(SEQ ID NO:40)をコードする配列を含むpET101−Topoタンパク質発現ベクター(Invitrogen)にクローニングした。Tat−CreによりBL−21 STAR(商標)大腸菌(E. coli)(Invitrogen)を形質転換させてTat−Creタンパク質を産生させ、Ni−NTAカラムで精製した。