JP2016224113A - 防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法 - Google Patents

防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016224113A
JP2016224113A JP2015107538A JP2015107538A JP2016224113A JP 2016224113 A JP2016224113 A JP 2016224113A JP 2015107538 A JP2015107538 A JP 2015107538A JP 2015107538 A JP2015107538 A JP 2015107538A JP 2016224113 A JP2016224113 A JP 2016224113A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
dielectric film
refractive index
antifogging
dielectric
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015107538A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6513486B2 (ja
Inventor
中島 健太郎
Kentaro Nakajima
健太郎 中島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Geomatec Co Ltd
Original Assignee
Geomatec Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Geomatec Co Ltd filed Critical Geomatec Co Ltd
Priority to JP2015107538A priority Critical patent/JP6513486B2/ja
Publication of JP2016224113A publication Critical patent/JP2016224113A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6513486B2 publication Critical patent/JP6513486B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)

Abstract

【課題】紫外線等の特別な励起が不要で、非太陽光下においても、長期間安定して親水性効果を維持し、波長400〜1500nmの範囲のうち任意の200nmの波長範囲の平均反射率が1%以下で、霧、降雨、温度変化等の環境下でもクリアーな視界を確保できる防曇性反射防止膜を提供する。
【解決手段】透明基材10上の少なくとも一方の面に、第一の誘電体膜30と、第一の誘電体膜に比べて屈折率の低い第二の誘電体膜40が交互に4層以上積層され、最上層が第二の誘電体膜であり、第一の誘電体膜が光触媒反応を呈する無機化合物からなり、第二の誘電体膜が親水性の無機化合物からなり、反射防止膜の反射率は、400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長anmから、第二の指定波長a+200nmであるbnmまでの範囲の平均反射率が1%未満で、積層体表面における水の接触角が10度以下の防曇性反射防止膜である。
【選択図】図1

Description

本発明は、防曇性と反射防止能を併せて有する防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法に関する。
屋外に設置されるカメラ、ライダー(LIDAR: Light Detection and Ranging、又は、Laser Imaging Detection and Ranging)また計器類には、内部からの良好な視野並びに外部からの良好な視認性が求められる。通常これらの機器の光学系には、光を機器の内外に透過させるために、透明基材からなるフロントウインドウが設置されており、良好な視野、視認性を保つには、降雨時また寒冷時において、このフロントウインドウの表面が雨滴、結露などにより曇らないこと、すなわち防曇性が必要である。
ガラスなどの透明基材への防曇性付与は、一般に、基材表面を、水滴の接触角が10°以下である超親水性に改質することで行われる。
親水性を持たせるために、基板上に光触媒機能を有するTi、Ta、Nb、Zr等の酸化物を形成、又は、光触媒粒子を含有させる方法や、基板上に光触媒機能を有する酸化物や光触媒粒子の混合物層を形成して、その上に親水層としてSiO2膜等を形成する方法が多数開示されている。
例えば、表面を超親水性に改質する方法として、非特許文献1には、親水性表面を粗化することにより、超親水性が発現することが記載されている。
しかし、表面を粗化することにより超親水性を付与した場合、環境への長期曝露により、大気中の有機化合物、窒素化合物等が表面に付着して、超親水性が低下し防曇性が失われることがあった。
この課題に対して、特許文献1には、光触媒性半導体材料とシリカを含む光触媒性被膜を基材上に成膜する方法が記載されている。また、特許文献2には、基板部材の表面に、光触媒反応を呈する透明な光触媒膜を成膜した後、その上に透明で多孔質な無機酸化膜を最表面に成膜配置する方法が記載されている。特許文献1,2の方法によれば、表面に有機化合物、窒素化合物等が付着した場合であっても、光触媒膜の光触媒反応によりそれらが分解除去されるため、超親水性が保たれ防曇性が継続する。
周知のように、光触媒膜には酸化チタン薄膜が一般的に用いられる。酸化チタンは屈折率2.2〜2.4であり、ガラスのような透明基材に比べ屈折率が高い。そのため透明基材上に酸化チタンを形成すると、反射率が大きくなり、入射光の一部が反射して、カメラ映像にフレアやゴーストを生じさせる原因となる。またカメラに入射する透過光の光量が減少してしまう。さらに表面への映り込みやグレアの原因ともなる。
この課題に対して、特許文献3には、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層し、かつ最終層が酸化チタンである構造の反射防止膜が記載されている。また特許文献4には、フッ化物のような非親水性無機化合物からなる低屈折率層と、該低屈折率層の下層に設けられた酸化チタンからなる高屈折率層とからなる構造の反射防止膜が記載されている。さらに特許文献5には、最上層が親水性の低屈折率層であり、かつ該低屈折率層の下層に設けられた高屈折率層が酸化チタンである構造の反射防止膜が記載されている。
以上のように、特許文献3乃至5には、光触媒反応による超親水性と防曇性を有する反射防止膜が記載されている。
R. N. Wenzel, "Resistance of solid surfaces to wetting by water", Ind. Eng. Chem., 28, 988-94 (1936).
特許第2756474号公報 特許第2901550号公報 特表2004−510051号公報 特開2005−165014号公報 特開2008−3390号公報
光触媒反応を呈する光触媒膜により表面に付着した有機化合物や窒素化合物等を分解除去するとともに、セルフクリーニング効果によりフロントウインドウ表面の浄化と防曇性を確保するには、従来の光学設計のほかに触媒反応性と親水性をより促進させる必要がある。
また、鮮明な画像(視認性)を確保するには、検知波長領域において平常時はもちろん、光の有無、温度差の激しい場所や降雨、霧等の環境下においても、低反射率と防曇性を併せ持つことが望まれている。
しかし、本発明者らが特許文献3乃至5の実施の方法について検討したところ、特許文献3に記載の機能性反射防止膜では、最上層が酸化チタンであるため反射防止膜といえども十分な反射防止機能を得ることができないことが分かった。
また特許文献4に記載の反射防止膜では、最上層がフッ化物である非親水性無機化合物からなるため良好な超親水性は発現しないことが判明した。
さらに特許文献5に記載の反射防止膜では、最上層は酸化シリコンのような親水性無機化合物からなり、酸化チタン層と組み合わせることで超親水性と防曇性が発現することが判明したが、特許文献5に記載されている成膜時のスパッタ圧力範囲では、異常放電の発生や放電持続性の低下など管理すべき項目が多くなり安定した再現性に乏しい。
一般的に、現在のカメラ等を構成する光学系のフロントウインドウに用いられる透明基材は、1%未満の反射率が要求されている。また当該光学系の中心波長は、可視光(波長下限が360〜400nm,波長上限が780〜830nm)のみでなく近赤外(波長800〜2500nm)〜赤外(波長700nm〜1mm)となる場合もあり、透明基材には可視光〜近赤外光に及ぶ波長範囲のなかの特定波長において1%未満の反射率を持つことを要求されている。
以上のような状況に鑑み、本発明は、特定波長で1%未満の反射率となる反射防止性と、光触媒反応による超親水性並びに防曇性とを備えた透明の防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、紫外線等の特別な励起を必要とせずに、非太陽光下においても、長期間安定して親水性効果を維持し、波長400〜1500nmの範囲のうちの任意の200nmの波長範囲での平均反射率が1%以下であり、霧、降雨、温度変化等の環境下でもクリアーな視界を確保できる防汚性を備えた防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、透明基材上に、第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する第二の誘電体膜とを交互に少なくとも4層以上積層し、最上層が前記第二の誘電体膜である反射防止膜で構成し、前記第一の誘電体膜が光触媒反応を呈する無機化合物からなり、前記第二の誘電体膜が親水性の無機化合物からなることにより、反射防止性と光触媒反応による超親水性、防曇性を兼ね備えた透明基材が得られることを見出して、本発明をするに至った。
すなわち、前記課題は、請求項1の防曇性反射防止膜によれば、防曇性反射防止膜であって、透明基材上の少なくとも一方の面に、第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する第二の誘電体膜とが交互に少なくとも4層以上積層され、最上層が前記第二の誘電体膜であり、前記第一の誘電体膜が光触媒反応を呈する無機化合物からなり、前記第二の誘電体膜が親水性の無機化合物からなり、前記反射防止膜の反射率は、400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長a(nm)から、該第一の任意の指定波長a(nm)より200nm大きい第二の指定波長b(nm)までの範囲における平均反射率が1%未満であり、且つ、前記最上層側の表面における水の接触角が10度以下を呈すること、により解決される。
このように構成しているので、特定波長範囲で1%未満の反射率となる反射防止性、並びに光触媒反応性と親水性を有する薄膜による積層体であって、表面の水の接触角が、10度以下である超親水性並びに防曇性を備えた透明基材を提供することが出来る。
また、光触媒反応を呈する無機化合物膜と、親水性を呈する無機化合物膜を積層し、最表面層が親水性を呈する無機化合物膜とすることにより、暗所での保存時間が900時間経過後においても、積層膜最表面の水の接触角が10度以下を保持できる積層体を形成することが可能となる。
太陽光、蛍光灯等の紫外光による紫外線が無い暗い所、また室温でも親水性を確保可能であることから、太陽光下、非太陽光下を問わず、霧、降雨、温度変化等の環境下でも、長期間安定して親水性効果を維持し、防汚性、防曇性を確保できる。また、触媒性を有することにより、抗菌性、抗ウィルス性の効果も得られる。
紫外線のない暗所、室温下において、水の接触角が成膜後から900時間経過後も10度以下に保持でき、かつ、400〜1500nmの範囲で、所望する波長帯200nmの平均反射率を1%以下に保持できるため、クリアーな視界を確保できる。
表層に触媒性の第一の誘電体膜と親水性の第二の誘電体膜を設け、さらに光学的要素を考慮した反射防止構成にすることで、触媒性、親水性、反射防止能という三つの効果を併せ持つ積層体が達成でき、より多元的な効果を得ることができる。
このとき、前記第一の誘電体膜は、X線回折でのルチル(110)ピークに対するアナターゼ(101)ピークの強度比アナターゼ(101)/ルチル(110)が、2.0以上であり、アナターゼ(200)ピークに対するアナターゼ(101)ピークの強度比アナターゼ(101)/アナターゼ(200)が、2.0以上であって、アナターゼとルチルの混晶である酸化チタンを主成分とする無機化合物からなると好適である。
また、前記第二の誘電体膜は、酸化シリコンを主成分とする無機化合物膜からなると好適である。
第一の誘電体膜を構成する無機化合物は、アナターゼ型結晶構造の酸化チタンを主成分とし、光触媒反応を呈する。この無機化合物膜の屈折率は、n=2.2〜2.5であり、第二の誘電体膜である酸化シリコンを主成分とする親水性の無機化合物膜の屈折率は、n=1.4〜1.5であるので、これらの高屈折率と低屈折率の膜を交互に積層して、最表面層を低屈折率の膜で構成することにより、必要とされる任意の特定波長範囲、たとえば、下限が360〜400nm、上限が760〜830nmである可視域のうち450〜650nmや、800〜2500nmの近赤外域のうち900〜1100nmの範囲の任意特定波長の200nmの範囲において、平均反射率が1%未満である防曇性反射防止膜を形成することが出来る。
このとき、複数の前記第一の誘電体膜のうち、最上層の前記第一の誘電体膜の膜厚は、100nm以上であり、複数の前記前記第二の誘電体膜のうち、最上層の前記第二の誘電体膜の膜厚は、5nm以上であると好適である。
このように、最上層の第一の誘電体膜の膜厚を100nm以上とすることにより、結晶性を備えた第一の誘電体膜を達成できる。また、最上層の第二の誘電体膜の膜厚を5nm以上とすることにより、反射防止効果を達成できる。
また、暗所での保存時間が900時間経過後において、前記最上層側の表面の水の接触角が、10度以下を呈すると好適である。
このように構成しているため、紫外線等による特別な励起を必要とせず、長期間親水性を保持可能な機能膜が提供できる。
また、請求項1及至5のいずれかに記載の防曇性反射防止膜付き透過型カバー基体であると好適である。
また、請求項1及至5のいずれかに記載の防曇性反射防止膜の製造方法であって、前記透明基材上の少なくとも一方の面に、前記第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する前記第二の誘電体膜とを、交互に、最上層が前記第二の誘電体膜となるように、少なくとも4層以上積層すると好適である。
本発明によれば、特定波長範囲で1%未満の反射率となる反射防止性、並びに光触媒反応性と親水性を有する薄膜による積層体であって、表面の水の接触角が、10度以下である超親水性並びに防曇性を備えた透明基材を提供することが出来る。
また、光触媒反応を呈する無機化合物膜と、親水性を呈する無機化合物膜を積層し、最表面層が親水性を呈する無機化合物膜とすることにより、暗所での保存時間が900時間経過後においても、積層膜最表面の水の接触角が10度以下を保持できる積層体を形成することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る防曇性反射防止膜の構造を示す概略説明図である。 試験例1〜6の積層体A〜FのX線回折結果を示すグラフである。 試験例7,8の積層体G,H及び本発明の実施例1,2の積層体I,JのX線回折を示すグラフである。 試験例1〜4,6の積層体A〜D,Fの水の接触角の測定結果を示すグラフである。 試験例4〜6の積層体D〜Fの水の接触角の測定結果を示すグラフである。 試験例8,実施例1,2の積層体H〜Jの水の接触角の測定結果を示すグラフである。 試験例7,SiOのみの積層体G,Kの水の接触角の測定結果を示すグラフである。 試験例4の積層体Dの波長400〜700nmにおける分光反射率を示すグラフである。 実施例1の積層体Iの波長400〜700nmにおける分光反射率を示すグラフである。 実施例2の積層体Jの波長400〜700nmにおける分光反射率を示すグラフである。 実施例1の積層体Iの表面観察像を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る防曇性の反射防止膜ARについて図面を用いて詳細に説明する。以下の説明は非限定的な例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
本明細書において「光触媒」とは、光があたると触媒作用を発揮する材料をいう。光触媒の代表的なものとしては、酸化チタン光触媒がある。
酸化チタン光触媒は、光があたると、様々な有機物を分解する分解力と、表面が水にぬれやすくなる親水性の作用を発揮する。分解力によって、汚れや臭いの除去作用や抗菌作用を発揮し、親水性によって、雨水がかかると汚れの下に入り込み、汚れを浮き上がらせて流し落とす効果、曇り止め効果を発揮する。
本明細書において、「アナターゼ(鋭錐石)」及び「ルチル(金紅石)」とは、正方晶系の酸化チタンの結晶形態である。
X線回折像は各結晶固有のものであり、また、結晶系により格子定数、つまり、X線回折の干渉角度が異なるため、混合物系における酸化チタン結晶の有無及び酸化チタンの各結晶形態の含有率は、X線回折により検査、定量可能である。
また、本明細書において、「水の接触角」(θ:contact angle)とは、水によるぬれの程度を定量化する値であって、固体表面が液体及び気体と接触しているとき、この3相の接触する境界線において液体面が固体面と成す角度をいう。接触角が小さくなるほど、親水性の性質が高いことを示す。
本明細書において、「最上層」とは、基板から最も遠い側の層を意味する。
(防曇性反射防止膜)
図1に示すように、本実施形態の防曇性の反射防止膜ARは、透明の基板10上の少なくとも一方の面に形成され、基板10側から、下地層20と、第一の誘電体膜である無機化合物層からなる高屈折率膜30と、前記第一の誘電体層にくらべ低い屈折率を有する第二の誘電体膜である無機化合物層からなる低屈折率膜40とが交互に積層された構造を有し、最上層が低屈折率膜40となるように構成されている。高屈折率膜30と低屈折率膜40は、それぞれ複数存在してよい。また、防曇性の反射防止膜ARは、基板10の少なくとも一方の面に形成されていればよく、基板10の全面に形成されていても、面の所定の部分に形成されていてもよい。
基板10は、硝子、樹脂(フィルムを含む)、セラミックス、その他のいずれでもよく、屈折率が略1.4〜1.7程度の公知の透明基材である。
下地層20は、基板10に接触するよう、基板10に最も隣接して設けられた層であり、後述する高屈折率膜30と同じ材料又は低屈折率膜40と同じ材料で形成しても良く、また密着性の向上、屈折率調整また基板10からの原子拡散防止などの目的で高屈折率膜30、低屈折率膜40以外の第三の屈折率を有する誘電体膜、例えば、高屈折率膜30の材料と低屈折率膜40の材料との混合物により形成される薄膜、その他の、高屈折率膜30と低屈折率膜40の中間の屈折率を有する膜であっても良い。
第一の誘電体膜としての高屈折率膜30は、低屈折率膜40にくらべて屈折率が高い層であり、屈折率は1.9〜2.5、より好ましくは2.2〜2.5である。高屈折率膜30には、光触媒反応を呈するチタン、ニオブ、ジルコン等の遷移金属の化合物である無機化合物が用いられる。例えばアナターゼ型結晶構造を有する酸化チタン膜が好適に用いられる。
特に、高屈折率膜30は、光触媒性薄膜である酸化チタンを主成分とする無機化合物薄膜で、アナターゼ型とルチル型の混晶であり、アナターゼ(101)/ルチル(110)のピーク強度比が2.0以上、好ましくは3.0以上であり、アナターゼ型酸化チタンの結晶性は、アナターゼ(101)/アナターゼ(200)のピーク強度比が2.0以上、より好ましくは3.0以上であるとよい。
基板10から最も遠い最上層の低屈折率膜40に接して形成される複数の高屈折率膜30のうち最上層の高屈折率膜30の膜厚は、100nm以上、好ましくは200nm以上である。
高屈折率膜30の形成方法については、特に限定されないが真空を利用する蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、CVD等、ドライ(乾式)プロセスによる成膜方法が可能である。
第二の誘電体膜としての低屈折率膜40は、高屈折率膜30にくらべ屈折率が低い層であり、屈折率1.35〜1.55程度の薄膜である。
低屈折率膜40には、親水性を呈する無機化合物が用いられる。例えば酸化シリコン膜が好適に用いられる。
基板10から最も遠い最上層の低屈折率膜40の膜厚は、5nm以上、より好ましくは特定波長領域の中心波長をλnmとした場合に、中心波長(λ)の1/4以下である。
低屈折率膜40の形成方法については、特に限定されないが高屈折率膜30と同様に真空を利用する蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、CVD等、ドライ(乾式)プロセスによる成膜方法が可能である。
高屈折率膜30と低屈折率膜40それぞれの膜厚は、波長400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長a(nm)から、第一の任意の指定波長a(nm)よりも200nm大きい第二の任意の指定波長b(b=a+200)までの間の200nmの範囲での平均反射率が、1%未満となるように決定される。
高屈折率膜30、低屈折率膜40において、膜厚に各層の屈折率を乗じた光学膜厚は、特定波長領域の中心波長をλnmとした場合に、概ね、λ/20〜1.1λの範囲である。なお、この特定波長領域は、第一の任意の指定波長aから第二の任意の指定波長bまでの200nmの範囲であってもよい。
なお、基板10直上に積層される高屈折率膜30と低屈折率膜40は、その直上に更に配置される高屈折率膜30と低屈折率膜40のそれぞれと同じ、又は、光学定数(屈折率や消衰係数)が対応する値を有する物質から形成すればよく、基板10直上に積層される高屈折率膜30と低屈折率膜40の材料の混合物を含めて、特に構成する物質を限定するものではない。
なお最上層の高屈折率膜30及び低屈折率膜40は、それぞれ、酸化チタン、酸化シリコンから形成されるが、それ以外の高屈折率膜30及び低屈折率膜40は、それぞれ、酸化チタン、酸化シリコン以外の無機誘電体から形成してもよい。最上層の高屈折率膜30以外の高屈折率膜30は、光触媒性のない酸化チタンでもよく、他の高屈折率材で構成してもよい。
本実施形態において、特定波長領域での平均反射率が1%未満となるようにそれぞれ決定された膜厚で、光触媒反応を呈する無機化合物からなる高屈折率膜30と親水性の低屈折率膜40を図1に示すように交互に積層することで、超親水性及び防曇性を有する反射防止膜ARを得ることが出来る。
更に、最表層の低屈折率膜40は、酸化シリコンを主成分とする無機化合物膜である親水性を呈する薄膜が形成される。
これにより、透明基板上に形成された積層体は、光触媒機能を呈し、親水機能を有し、400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長aから、第一の任意の指定波長よりも200nm大きい第二の任意の指定波長bまでの波長範囲200nmにおける平均反射率が1%未満であり、且つ、表面の水の接触角が、暗い所で少なくとも700時間以上900時間、長いもので1800時間保管した後であっても10度以下である良好な防曇性反射防止膜を形成することが出来る。
本実施形態の方法では、高屈折率膜30と低屈折率膜40の積層構造を、蒸着、スパッタといった物理的気相成長法で一貫して成膜することが出来るため、数nm以下の膜厚制御が可能であり、塗布や浸漬等の他の方法を併用した場合にくらべより良好な低い反射率を得ることが出来る。
(防曇性反射防止膜付き透過型カバー基体)
本実施形態の防曇性の反射防止膜ARが形成された基板10は、屋外用のカメラ、ライダー(LIDAR: Light Detection and Ranging、又は、Laser Imaging Detection and Ranging)また計器類のカバー基体として用いられる。
つまり、基板10が、予め計器等のカバー形状になるように切断、成形、接着等により加工され、この加工された基板10に、本実施形態の防曇性の反射防止膜ARが施されて、防曇性反射防止膜付き透過型カバー基体が製造される。
なお、基板10上に本実施形態の防曇性の反射防止膜ARが施された後で、計器等のカバー形状になるように切断、成形、接着等により加工されてもよい。
このように構成された本実施形態の防曇性反射防止膜付き透過型カバー基体は、計器等のフロントウインドウ等に用いられ、内部からの良好な視野並びに外部からの良好な視認性が保持される。200nmの特定波長範囲における平均反射率が1%以下であるため、計器の機能に応じて、赤外線ビームの透過や、外部からの計器の指示板の視認が好適に行われる。
(防曇性反射防止膜の製造方法)
本実施形態の防曇性の反射防止膜ARは、以下の工程で製造される。
透明な基板10を蒸着装置内にセットし、蒸発源に市販の酸化シリコン等の低屈折率膜40の材料等からなる下地層20の材料をセットして装置内真空度を1.5×10−3 Pa未満まで排気する。その後、基板温度を200〜300℃に保ちながら、電子銃を用いて材料を蒸発させ、基板10上に、下地層20として、5〜50nm形成する。このとき、必要により酸素またはアルゴン、またはそれらの混合ガスのイオン等でアシストする。
なお、この下地層20は、基板10にアルカリ金属類が含有されない場合は形成しなくてもよい。
その後、蒸発源に、市販の酸化チタン等の高屈折率膜30の材料をセットして、装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気し、基板温度を200〜300℃に保ちながら、電子銃を用いて高屈折率30の材料を蒸発させ、下地層20上に、第一の誘電体膜である高屈折率膜30の材料20〜50nmを、酸素またはアルゴン、またはそれらの混合ガスでイオン照射(イオン電流300〜1000mA)しながら、高屈折率膜30として形成する。
つづいて、蒸発源に市販の酸化シリコン等の低屈折率膜40の材料をセットして、装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気し、基板温度を200〜300℃に保ちながら、電子銃を用いて第二の誘電体膜である低屈折率膜40の材料25〜100nmを、高屈折率膜30上に、低屈折率膜40として形成する。このとき、必要により酸素またはアルゴン、またはそれらの混合ガスのイオン等でアシストする。
その後、高屈折率膜30、低屈折率膜40を、順次、同様に形成する。但し、このとき、高屈折率膜30の膜厚は、100nm以上、好ましくは200nm以上、低屈折率膜40の膜厚は、5nm以上、より好ましくは中心波長(λ)の1/4以下とする。
高屈折率材料30と低屈折率材料40及びその他の材料のセットは、回転型蒸発源に初めからセットしておくと排気時間の短縮が図れる。以上で、本実施形態の防曇性の反射防止膜ARを完成する。
なお、本実施形態の防曇性の反射防止膜ARは、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD等の他の、ドライ(乾式)プロセスによっても製造可能である。
以下、本発明を、具体的実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(試験例1〜8 2層構造の積層体A〜Hの作製)
透明な硝子基板を蒸着装置内にセットし、蒸発源に市販の酸化チタンをセットして装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した後、基板温度を300℃に保ちながら、電子銃を用いてイオンアシストを行いながら酸化チタンを蒸発させ、基板表面に第一の誘電体膜である酸化チタン膜20nm,50nm,100nm,200nmを酸素イオン照射(イオン電流1000mA)しながら形成した。
つづいて、回転型蒸発源の酸化シリコンをセットして電子銃を用いて第二の誘電体膜である酸化シリコン膜をそれぞれの酸化チタン膜上に20nm形成し、それぞれ試験例1〜4の積層体A〜Dを得た。
成膜した試験例1〜4の積層体A〜Dの4種類のそれぞれについて、X線回析装置(日本電子製,XRD-H250315-1974)を用いて結晶性を調査した。試験例1〜4の積層体A〜DのX線回折を、図2に示す。
酸化チタン膜の膜厚が20nmの積層体A(試験例1)では結晶配向は認められず、膜厚50nmの積層体B(試験例2)では若干のアナターゼ(101)及びルチル(110)の配向が認められるものの顕著なピークにはいたらなかった。膜厚100nmの積層体C(試験例3)と200nmの積層体D(試験例4)で結晶に配向が認められた。酸化チタンの膜厚増加に伴って、結晶配向性は明確になってくると共にアナターゼ型の(200)方位が明確になることが分かった。アナターゼ型の(101)/(200)の比は、2.0以上であるが、アナターゼ(101)/ルチル(110)の比は、酸化チタン膜の膜厚増加に伴って大きくなり、2.0以上となるのは酸化チタンの膜厚が200nmのときであった。
次に、イオンアシスト効果を検証するために、酸化チタン膜200nmを形成時に酸素イオンのイオン電流を500mA,300mAでそれぞれイオンアシストを行い、その後、それぞれの酸化チタン膜に対して酸化シリコン膜20nmを成膜して、それぞれ試験例5,6の積層体E,Fを得た。
成膜した2種類の積層体E,F(試験例5,6)のそれぞれについて、試験例1〜4の積層体A,B,C,Dと同様にX線回析装置を用いて結晶性を調査した。積層体E,F(試験例5,6)のX線回折を、図2に示す。図2,図3のX線回折チャートは、成膜時要件の違いを対比しやすくするため、重ね書きして示している。
イオン電流500mA,300mAのいずれでも、結晶配向は認められ、アナターゼ型の(101)/(200)の比は、2.0以上であり、アナターゼ(101)/ルチル(110)の比も、2.0以上となった。また、イオン電流300mAにおけるピーク強度はイオン電流500mAよりも低く、本成膜条件においてより良い結晶性成長には、少なくともイオン電流300mA以上が必要であることが分かった。
次に、第一の誘電体膜である酸化チタン膜の膜厚を100nmとして、酸化チタン膜及び酸化シリコン膜の成膜時の基板温度を低く設定し、第二の誘電体膜である酸化シリコン膜の膜厚を厚くした場合(積層体G)と、通常温度にて下地層に酸化シリコン膜を形成した場合(積層体H)について確認した。
積層体Gの成膜においては、始めに、蒸発源に市販の酸化チタンをセットして、装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した後、基板温度を200℃に保ちながら、電子銃を用いて酸化チタンを蒸発させ、基板表面に第一の誘電体膜である酸化チタン膜100nmを、酸素イオン照射しながら形成した。つづいて、回転型蒸発源の酸化シリコンをセットして、電子銃を用いて酸化シリコンを蒸発させ、第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を酸化チタン膜上に70nm形成した。
積層体Hの成膜においては、装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した後、板温度を300℃に保ちながら、下層として第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を20nm形成した。その後、つづけて、第一の誘電体膜である酸化チタン膜100nmを酸素イオン照射しながら形成した。さらに、その上に第二の誘電体膜である酸化シリコン膜20nmを形成した。
(実施例1 4層構造の積層体Iの作製)
基本構成である4層構成の積層体を得るため、透明な硝子基板10を蒸着装置内にセットし、蒸発源に市販の酸化チタンをセットして装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した後、基板温度を300℃に保ちながら、電子銃を用い、イオンアシストを行いながら酸化チタンを蒸発させ、基板10表面に、第一の誘電体膜である酸化チタン膜20nmを、高屈折率膜30として、酸素イオン照射(イオン電流1000mA)しながら形成した。
つづいて、酸素ガスの導入量を40sccmに変更して、回転型蒸発源の酸化シリコンをセットして、電子銃を用いて第二の誘電体膜である酸化シリコン膜からなる低屈折率膜40を酸化チタン膜の高屈折率膜30上に、25nm形成した。再び初めの酸化チタンの成膜条件にて第一の誘電体膜である酸化チタンの高屈折率膜30を膜厚240nm形成し、最後に第二の誘電体膜である酸化シリコン膜からなる低屈折率膜40を90nm形成して、実施例1の積層体Iを得た。
(実施例2 下地層20+4層構造の積層体Jの作製)
本例では、下地層20として、第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を形成した実施例2の積層体Jを作製した。
透明な硝子基板10を蒸着装置内にセットし、蒸発源に市販の酸化シリコンをセットして装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した。その後、基板温度300℃に保ちながら、電子銃を用いて酸化シリコンを蒸発させ、基板10上に、第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を、下地層20として、20nm形成した。
その後、実施例1同様に、蒸発源に市販の酸化チタンをセットして、基板温度を300℃に保ちながら、電子銃を用い、イオンアシストを行いながら、酸化チタンを蒸発させ、下地層20の酸化シリコン膜上に、第一の誘電体膜である酸化チタン膜20nmを、イオン照射(イオン電流1000mA)しながら、高屈折率膜30として形成した。つづいて、蒸発源に市販の酸化シリコンをセットして、電子銃を用いて第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を、酸化チタンの高屈折率膜30上に、低屈折率膜40として、33nm形成した。再び初めの酸化チタンの成膜条件にて第一の誘電体膜である酸化チタン膜厚270nmを、高屈折率膜30として形成し、最後に第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を低屈折率膜40として、98nm形成し、実施例2の積層体Jを得た。
試験例1〜8及び実施例1,2の一連の成膜条件で作製した積層体A〜Jと、試験例1の酸化シリコン膜成膜と同様の工程で酸化シリコン膜のみを成膜した積層体Kについて、成膜時の基板温度、各層の膜厚、成膜時のイオンアシスト電流、X線解析によるアナターゼ型の(101)/(200)の比、およびアナターゼ(101)/ルチル(110)の比の一覧を、表1に示す。
また、試験例1〜8及び実施例1,2の一連の成膜条件で作製した積層体A〜Jと、試験例1の酸化シリコン膜成膜と同様の工程で酸化シリコン膜のみを成膜した積層体Kについて、成膜直後(0時間)、成膜後48〜1800時間経過後に、積層体表面における水の接触角の測定を行った。
成膜サンプルは、紫外線の影響を極力避けるために、成膜直後からアルミ製のボックスでカバーしておき、測定するたびに取り出して水の接触角を測定した後速やかに同様の方法で保管した。接触角の測定は、協和界面科学社製のCA−X型装置を用いて、θ/2法により行った。測定結果を表2に、時間経過と接触角についてのグラフを図4〜図7に示す。
表2及び図4〜図7の結果より、試験例4の積層体D〜試験例6の積層体F,試験例8の積層体H,実施例1,2の積層体I,Jにおいて、水の接触角が10度以下を保持していた。
そして、水の接触角が10度以下となった試験例4の積層体D〜試験例6の積層体F,試験例8の積層体H,実施例1,2の積層体I,Jでは、アナターゼ型の(101)/(200)の比、およびアナターゼ(101)/ルチル(110)の比が、それぞれ、2.0以上であった。
また、水の接触角が10度以下となった試験例4の積層体D〜試験例6の積層体F,試験例8の積層体H,実施例1,2の積層体I,Jでは、第一の誘電体である酸化チタン膜のうち最表層の膜が、200nmであるか、下地層20として酸化シリコン層があり、かつ、第一の誘電体である酸化チタン膜のうち最表層の膜が、200nmであった。
この結果から、第一の誘電体である酸化チタン膜では、膜厚100nm以上、好ましくは200nm以上において、アナターゼ型の(101)/(200)の比、およびアナターゼ(101)/ルチル(110)の比が、それぞれ、2.0以上という、好適な結晶性が得られることが分かった。また、下地層20として酸化シリコン層がある場合は、酸化チタン膜の膜厚100nm以上で、好適な結晶性が得られることが分かった。更に、基板温度200℃では、結晶配向は起こらず、好適な結晶性を得るためには、基板温度300℃以上が必要であることが分かった。
第一の誘電体膜である光触媒反応を呈する無機化合物である酸化チタン膜の結晶性は、下層に酸化シリコンの薄膜を介在させること、成膜時にイオンアシストすることや、成膜時の温度を変化させることによってその様態を変えることができ、これらの条件を適正に組み合わせることにより、酸化チタン膜が結晶性を得ることが可能であることが分かった。
また、表2の結果において、水の接触角が10度以下となった試験例4の積層体D〜試験例6の積層体F,試験例8の積層体H,実施例1,2の積層体I,Jでは、最表層に形成される第二の誘電体である酸化シリコンの膜が少なくとも20nm以上であった。
以上より、第一の誘電体膜である光触媒反応を呈する無機化合物の酸化チタンの結晶性、特に、アナターゼ型の(101)/(200)の比、およびアナターゼ(101)/ルチル(110)の比がそれぞれ2.0以上であり、かつ、第二の誘電体膜である親水性の無機化合物の膜が20nm以上であるときに、水の接触角が暗所でも長時間にわたって10度以下に保持できることが、本例の測定結果より明確になった。
また、反射率について、酸化チタン200nmと酸化シリコン20nmの二層積層構成からなる試験例4の積層体Dの分光反射率を図8に、4層積層標準構成からなる実施例1の積層体Iの分光反射率を図9に、20nmの下地層20を備えた実施例2の積層体Jの分光反射率を図10に示す。
試験例4では、図8に示すように、波長400〜700nmにおける反射率が、3〜33%であったのに対し、実施例1,2では、図9,図10に示すように、500〜700nmの特定波長範囲200nmの間の反射率が、1%以下であった。
なお、550nmでの光学膜厚nは、試験例4の1層目(酸化チタン膜)では、460、2層目(酸化シリコン膜)では、29.2、実施例1の1層目高屈折率膜30(酸化チタン膜)では、46、2層目低屈折率膜40(酸化シリコン膜)では、36.5、3層目高屈折率膜30(酸化チタン膜)では、552、4層目低屈折率膜40(酸化シリコン膜)では、131.4、実施例2の下地層20(酸化シリコン膜)では、29.2、1層目高屈折率膜30(酸化チタン膜)では、46、2層目低屈折率膜40(酸化シリコン膜)では、48.18、3層目高屈折率膜30(酸化チタン膜)では、621、4層目低屈折率膜40(酸化シリコン膜)では、143.08であった。
また、これら実施例1,2の積層体I,Jの水の接触角は、1000時間経過しても10度以下を維持しており、実施例1では、1800時間経過後でも10度以下を維持することが確認できた。
また、実施例1の積層体表面を原子間力顕微鏡(AFM, Atomic Force Microscope, オリンパス製,NV2000)で測定した。AFMとは、SPM(走査プローブ顕微鏡)の一種である。SPMとは、プローブ(探針)で試料表面を走査して、その表面形状や物性を知る顕微鏡の総称であり、AFMでは、プローブ先端の原子と試料表面に存在する原子との間に発生する原子間力(引力、斥力)を利用して測定する。
本例のAFMでは、5μm×5μmの範囲を測定した。図11にその測定結果及び表面観察像を示す。
図11の左欄中ほどのProfile Curve(断面曲面)は、AFMの測定生データからノイズだけを除去した断面曲面から求めた数値である。その粗さパラメータには、SPa、SPq、SRmax、SPp、SPvがあり、本例におけるこれらの粗さパラメータの測定値は、図11左欄中ほどに示す。また、これらの粗さパラメータの定義は、以下の通りである。
SPa(断面曲面内における平均粗さ)は、中心線(または中心面)からの距離の絶対値を合計し、平均した数値である。測定した線または面の平均的な粗さを表している。
SPq(断面曲面内における二乗平均平方根)は、中心線(または中心面)からの距離を二乗し、その合計を平均した数値の平方根をとったものである。粗さのばらつきを表している。
SRmax(断面曲面における最大高さ)は、中心線(または中心面)から最も離れている山と、最も離れている谷の合計であり、測定した面内における粗さの最大値となる。異常粒子のような突起があれば山高さが大きくなり、キズがあれば谷深さが大きくなるため、これら表面の異常はこの数値に影響を及ぼす。
SPp(断面曲面内における山頂と中心面との最大間隔)は、中心線(または中心面)と、中心線から最も離れている山との距離である。
SPv(断面曲面内における谷底と中心面との最大間隔)は、中心線(または中心面)と、中心線から最も離れている谷との距離である。
一方、Roughness Curve(粗さ曲面)は、AFMの測定生データからノイズとうねりを除去した粗さ曲面から求めた数値である。その粗さパラメータには、SRa、SRq、SRy、SRp、SRvがあり、本例におけるこれらの粗さパラメータの測定値は、図11左欄下部に示す。また、これらの粗さパラメータの定義は、以下の通りである。
SRa(粗さ曲面内における平均粗さ)は、中心線(または中心面)からの距離の絶対値を合計し、平均した数値であり、測定した線または面の平均的な粗さを表している。SRaは、JIS(日本工業規格)では、Raと表記されている。
SRq(粗さ曲面内における二乗平均平方根)は、中心線(または中心面)からの距離を二乗し、その合計を平均した数値の平方根をとったものである。粗さのばらつきを表している。SRqは、JIS(日本工業規格)では、RMSと表記されている。
SRy(粗さ曲面における最大高さ)は、中心線(または中心面)から最も離れている山と、最も離れている谷の合計であり、測定した面内における粗さの最大値となる。異常粒子のような突起があれば山高さが大きくなり、キズがあれば谷深さが大きくなるため、これら表面の異常はこの数値に影響を及ぼす。SRyは、JIS(日本工業規格)では、Rz(又はP-V)と表記されている。
SRp(粗さ曲面内における山頂と中心面との最大間隔)は、中心線(または中心面)と、中心線から最も離れている山との距離である。
SRv(粗さ曲面内における谷底と中心面との最大間隔)は、中心線(または中心面)と、中心線から最も離れている谷との距離である。
本例では、測定範囲の1辺の長さの1/3をうねりのカットオフ値としたため、Roughness Curveの各粗さパラメータでは、1.667E+03nm以上の波長のうねりを除去している。
本例の平均面粗さRaは3〜4nmの範囲内、面内最大高低差Rmaxは20〜40nmの範囲内であった。
上記各試験例及び実施例より、下地層20を含めるか否かの構成、膜厚100nm以上の範囲内で選択される最表層から2層目の第一の誘電体膜である酸化チタン膜の構成、近赤外域での分光特性等は、第一の誘電体膜が光触媒反応を呈する無機化合物からなり、第二の誘電体膜が親水性の無機化合物からなることを条件に、光学設計の範囲内で自由に設計可能であることが分かった。
AR 反射防止膜
10 基板
20 下地層
30 高屈折率膜
40 低屈折率膜

Claims (7)

  1. 防曇性反射防止膜であって、
    透明基材上の少なくとも一方の面に、第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する第二の誘電体膜とが交互に少なくとも4層以上積層され、最上層が前記第二の誘電体膜であり、
    前記第一の誘電体膜が光触媒反応を呈する無機化合物からなり、
    前記第二の誘電体膜が親水性の無機化合物からなり、
    前記反射防止膜の反射率は、400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長a(nm)から、該第一の任意の指定波長より200nm大きい第二の指定波長b(nm)までの範囲における平均反射率が1%未満であり、且つ、前記最上層側の表面における水の接触角が10度以下を呈することを特徴とする防曇性反射防止膜。
  2. 前記第一の誘電体膜は、X線回折でのルチル(110)ピークに対するアナターゼ(101)ピークの強度比アナターゼ(101)/ルチル(110)が、2.0以上であり、アナターゼ(200)ピークに対するアナターゼ(101)ピークの強度比アナターゼ(101)/アナターゼ(200)が、2.0以上であって、アナターゼとルチルの混晶である酸化チタンを主成分とする無機化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の防曇性反射防止膜。
  3. 前記第二の誘電体膜は、酸化シリコンを主成分とする無機化合物膜からなることを特徴とする請求項1又2に記載の防曇性反射防止膜。
  4. 複数の前記第一の誘電体膜のうち、最上層の前記第一の誘電体膜の膜厚は、100nm以上であり、複数の前記前記第二の誘電体膜のうち、最上層の前記第二の誘電体膜の膜厚は、5nm以上である請求項3に記載の防曇性反射防止膜。
  5. 暗所での保存時間が900時間経過後において、前記最上層側の表面の水の接触角が、10度以下を呈する請求項1及至4に記載のいずれか1項であることを特徴とする防曇性反射防止膜。
  6. 請求項1及至5のいずれか1項に記載の防曇性反射防止膜付きカバー基体。
  7. 請求項1及至5のいずれか1項に記載の防曇性反射防止膜の製造方法であって、
    前記透明基材上の少なくとも一方の面に、前記第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する前記第二の誘電体膜とを、交互に、最上層が前記第二の誘電体膜となるように、少なくとも4層以上積層することを特徴とする防曇性反射防止膜の製造方法。
JP2015107538A 2015-05-27 2015-05-27 防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法 Expired - Fee Related JP6513486B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015107538A JP6513486B2 (ja) 2015-05-27 2015-05-27 防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015107538A JP6513486B2 (ja) 2015-05-27 2015-05-27 防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016224113A true JP2016224113A (ja) 2016-12-28
JP6513486B2 JP6513486B2 (ja) 2019-05-15

Family

ID=57745733

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015107538A Expired - Fee Related JP6513486B2 (ja) 2015-05-27 2015-05-27 防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6513486B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109760372A (zh) * 2018-12-21 2019-05-17 广东国伟兴塑胶科技股份有限公司 一种防雾滴阳光板及其制备方法
JP2019133153A (ja) * 2018-01-30 2019-08-08 ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッドViavi Solutions Inc. 光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス
CN113311667A (zh) * 2020-02-07 2021-08-27 佳能株式会社 光学装置、物品制造方法以及光学部件制造方法
US11703614B2 (en) 2017-04-12 2023-07-18 Fujifilm Corporation Antireflection film and optical member

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000053449A (ja) * 1998-08-06 2000-02-22 Murakami Corp 防曇鏡およびその製造方法
JP2000119846A (ja) * 1998-10-13 2000-04-25 Nikon Corp 薄膜の製造方法
JP2001228304A (ja) * 2000-02-17 2001-08-24 Nikon Corp 防曇性薄膜を具えた成形体及びその製造方法
JP2004255332A (ja) * 2003-02-27 2004-09-16 Ichikoh Ind Ltd 可視光線応答型光触媒
JP2005099513A (ja) * 2003-09-25 2005-04-14 Sekisui Chem Co Ltd 反射防止フィルム
JP3699877B2 (ja) * 1999-03-23 2005-09-28 大日本印刷株式会社 積層フィルムの製造方法
JP2008003390A (ja) * 2006-06-23 2008-01-10 Bridgestone Corp 反射防止膜及び光学フィルター
JP2010529290A (ja) * 2007-06-01 2010-08-26 フラウンホッファー−ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ. 高光触媒活性を有する酸化チタン層の製造方法およびこの方法により製造された酸化チタン層

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000053449A (ja) * 1998-08-06 2000-02-22 Murakami Corp 防曇鏡およびその製造方法
JP2000119846A (ja) * 1998-10-13 2000-04-25 Nikon Corp 薄膜の製造方法
JP3699877B2 (ja) * 1999-03-23 2005-09-28 大日本印刷株式会社 積層フィルムの製造方法
JP2001228304A (ja) * 2000-02-17 2001-08-24 Nikon Corp 防曇性薄膜を具えた成形体及びその製造方法
JP2004255332A (ja) * 2003-02-27 2004-09-16 Ichikoh Ind Ltd 可視光線応答型光触媒
JP2005099513A (ja) * 2003-09-25 2005-04-14 Sekisui Chem Co Ltd 反射防止フィルム
JP2008003390A (ja) * 2006-06-23 2008-01-10 Bridgestone Corp 反射防止膜及び光学フィルター
JP2010529290A (ja) * 2007-06-01 2010-08-26 フラウンホッファー−ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ. 高光触媒活性を有する酸化チタン層の製造方法およびこの方法により製造された酸化チタン層

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11703614B2 (en) 2017-04-12 2023-07-18 Fujifilm Corporation Antireflection film and optical member
JP2019133153A (ja) * 2018-01-30 2019-08-08 ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッドViavi Solutions Inc. 光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス
JP2021177240A (ja) * 2018-01-30 2021-11-11 ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッドViavi Solutions Inc. 光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス
US11360242B2 (en) 2018-01-30 2022-06-14 Viavi Solutions Inc. Optical device having optical and mechanical properties
JP7268086B2 (ja) 2018-01-30 2023-05-02 ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド 光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス
CN109760372A (zh) * 2018-12-21 2019-05-17 广东国伟兴塑胶科技股份有限公司 一种防雾滴阳光板及其制备方法
CN113311667A (zh) * 2020-02-07 2021-08-27 佳能株式会社 光学装置、物品制造方法以及光学部件制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6513486B2 (ja) 2019-05-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6255541B2 (ja) 親水性多層膜及びその製造方法、並びに、撮像システム
JP6513486B2 (ja) 防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法
JP2015200888A (ja) 硬質反射防止膜並びにその製造及びその使用
JP6255531B2 (ja) 反射防止膜及びその製造方法
JP6152761B2 (ja) 膜付部材及びその製造方法
JP6918208B2 (ja) 反射防止膜および光学部材
DE102011076754A1 (de) Substratelement für die Beschichtung mit einer Easy-to-clean Beschichtung
CN1989427A (zh) 具有非晶质氧化硅结合剂的MgF2光学薄膜与具备该薄膜的光学组件,及该MgF2光学薄膜的制造方法
JPWO2016199676A1 (ja) 膜積層体および合わせガラス
JP6954754B2 (ja) 撥水性反射防止膜付きレンズ及びその製造方法
JP2013242541A (ja) 反射低減干渉層システムを作製する方法及び反射低減干渉層システム
JP2020024237A (ja) 光学製品
CN113167928A (zh) 电介质多层膜、其制造方法和使用其的光学构件
JP2006119525A (ja) 反射防止膜
US11703614B2 (en) Antireflection film and optical member
CN102520470B (zh) 一种硬铝/碳化硅极紫外多层膜反射镜及其制备方法
JP7216471B2 (ja) 車載レンズ用のプラスチックレンズ及びその製造方法
JP2007241177A (ja) 反射防止構造及び構造体
JPWO2016167127A1 (ja) 反射防止膜付きガラス
CN103048712B (zh) 一种极紫外多层膜反射镜及其制作方法
JP6989289B2 (ja) 親水性反射防止膜付きレンズ及びその製造方法
JP2008162181A (ja) 積層膜、その積層膜を有する光学素子、および積層膜の製造方法
JP2014002270A (ja) カメラ用ndフィルタ及びその製造方法
RU126149U1 (ru) Светопоглощающее покрытие
WO2019240040A1 (ja) 光学素子の製造方法及び光学素子

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180510

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190117

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190122

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190215

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190305

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190308

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190319

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190410

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6513486

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees