JP2016224113A - 防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明基材10上の少なくとも一方の面に、第一の誘電体膜30と、第一の誘電体膜に比べて屈折率の低い第二の誘電体膜40が交互に4層以上積層され、最上層が第二の誘電体膜であり、第一の誘電体膜が光触媒反応を呈する無機化合物からなり、第二の誘電体膜が親水性の無機化合物からなり、反射防止膜の反射率は、400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長anmから、第二の指定波長a+200nmであるbnmまでの範囲の平均反射率が1%未満で、積層体表面における水の接触角が10度以下の防曇性反射防止膜である。
【選択図】図1
Description
親水性を持たせるために、基板上に光触媒機能を有するTi、Ta、Nb、Zr等の酸化物を形成、又は、光触媒粒子を含有させる方法や、基板上に光触媒機能を有する酸化物や光触媒粒子の混合物層を形成して、その上に親水層としてSiO2膜等を形成する方法が多数開示されている。
例えば、表面を超親水性に改質する方法として、非特許文献1には、親水性表面を粗化することにより、超親水性が発現することが記載されている。
しかし、表面を粗化することにより超親水性を付与した場合、環境への長期曝露により、大気中の有機化合物、窒素化合物等が表面に付着して、超親水性が低下し防曇性が失われることがあった。
以上のように、特許文献3乃至5には、光触媒反応による超親水性と防曇性を有する反射防止膜が記載されている。
また、鮮明な画像(視認性)を確保するには、検知波長領域において平常時はもちろん、光の有無、温度差の激しい場所や降雨、霧等の環境下においても、低反射率と防曇性を併せ持つことが望まれている。
また特許文献4に記載の反射防止膜では、最上層がフッ化物である非親水性無機化合物からなるため良好な超親水性は発現しないことが判明した。
さらに特許文献5に記載の反射防止膜では、最上層は酸化シリコンのような親水性無機化合物からなり、酸化チタン層と組み合わせることで超親水性と防曇性が発現することが判明したが、特許文献5に記載されている成膜時のスパッタ圧力範囲では、異常放電の発生や放電持続性の低下など管理すべき項目が多くなり安定した再現性に乏しい。
以上のような状況に鑑み、本発明は、特定波長で1%未満の反射率となる反射防止性と、光触媒反応による超親水性並びに防曇性とを備えた透明の防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、紫外線等の特別な励起を必要とせずに、非太陽光下においても、長期間安定して親水性効果を維持し、波長400〜1500nmの範囲のうちの任意の200nmの波長範囲での平均反射率が1%以下であり、霧、降雨、温度変化等の環境下でもクリアーな視界を確保できる防汚性を備えた防曇性反射防止膜、防曇性反射防止膜付きカバー基体及び防曇性反射防止膜の製造方法を提供することにある。
すなわち、前記課題は、請求項1の防曇性反射防止膜によれば、防曇性反射防止膜であって、透明基材上の少なくとも一方の面に、第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する第二の誘電体膜とが交互に少なくとも4層以上積層され、最上層が前記第二の誘電体膜であり、前記第一の誘電体膜が光触媒反応を呈する無機化合物からなり、前記第二の誘電体膜が親水性の無機化合物からなり、前記反射防止膜の反射率は、400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長a(nm)から、該第一の任意の指定波長a(nm)より200nm大きい第二の指定波長b(nm)までの範囲における平均反射率が1%未満であり、且つ、前記最上層側の表面における水の接触角が10度以下を呈すること、により解決される。
また、光触媒反応を呈する無機化合物膜と、親水性を呈する無機化合物膜を積層し、最表面層が親水性を呈する無機化合物膜とすることにより、暗所での保存時間が900時間経過後においても、積層膜最表面の水の接触角が10度以下を保持できる積層体を形成することが可能となる。
紫外線のない暗所、室温下において、水の接触角が成膜後から900時間経過後も10度以下に保持でき、かつ、400〜1500nmの範囲で、所望する波長帯200nmの平均反射率を1%以下に保持できるため、クリアーな視界を確保できる。
表層に触媒性の第一の誘電体膜と親水性の第二の誘電体膜を設け、さらに光学的要素を考慮した反射防止構成にすることで、触媒性、親水性、反射防止能という三つの効果を併せ持つ積層体が達成でき、より多元的な効果を得ることができる。
また、前記第二の誘電体膜は、酸化シリコンを主成分とする無機化合物膜からなると好適である。
第一の誘電体膜を構成する無機化合物は、アナターゼ型結晶構造の酸化チタンを主成分とし、光触媒反応を呈する。この無機化合物膜の屈折率は、n=2.2〜2.5であり、第二の誘電体膜である酸化シリコンを主成分とする親水性の無機化合物膜の屈折率は、n=1.4〜1.5であるので、これらの高屈折率と低屈折率の膜を交互に積層して、最表面層を低屈折率の膜で構成することにより、必要とされる任意の特定波長範囲、たとえば、下限が360〜400nm、上限が760〜830nmである可視域のうち450〜650nmや、800〜2500nmの近赤外域のうち900〜1100nmの範囲の任意特定波長の200nmの範囲において、平均反射率が1%未満である防曇性反射防止膜を形成することが出来る。
このように、最上層の第一の誘電体膜の膜厚を100nm以上とすることにより、結晶性を備えた第一の誘電体膜を達成できる。また、最上層の第二の誘電体膜の膜厚を5nm以上とすることにより、反射防止効果を達成できる。
また、暗所での保存時間が900時間経過後において、前記最上層側の表面の水の接触角が、10度以下を呈すると好適である。
このように構成しているため、紫外線等による特別な励起を必要とせず、長期間親水性を保持可能な機能膜が提供できる。
また、請求項1及至5のいずれかに記載の防曇性反射防止膜の製造方法であって、前記透明基材上の少なくとも一方の面に、前記第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する前記第二の誘電体膜とを、交互に、最上層が前記第二の誘電体膜となるように、少なくとも4層以上積層すると好適である。
また、光触媒反応を呈する無機化合物膜と、親水性を呈する無機化合物膜を積層し、最表面層が親水性を呈する無機化合物膜とすることにより、暗所での保存時間が900時間経過後においても、積層膜最表面の水の接触角が10度以下を保持できる積層体を形成することが可能となる。
本明細書において「光触媒」とは、光があたると触媒作用を発揮する材料をいう。光触媒の代表的なものとしては、酸化チタン光触媒がある。
酸化チタン光触媒は、光があたると、様々な有機物を分解する分解力と、表面が水にぬれやすくなる親水性の作用を発揮する。分解力によって、汚れや臭いの除去作用や抗菌作用を発揮し、親水性によって、雨水がかかると汚れの下に入り込み、汚れを浮き上がらせて流し落とす効果、曇り止め効果を発揮する。
本明細書において、「アナターゼ(鋭錐石)」及び「ルチル(金紅石)」とは、正方晶系の酸化チタンの結晶形態である。
X線回折像は各結晶固有のものであり、また、結晶系により格子定数、つまり、X線回折の干渉角度が異なるため、混合物系における酸化チタン結晶の有無及び酸化チタンの各結晶形態の含有率は、X線回折により検査、定量可能である。
本明細書において、「最上層」とは、基板から最も遠い側の層を意味する。
図1に示すように、本実施形態の防曇性の反射防止膜ARは、透明の基板10上の少なくとも一方の面に形成され、基板10側から、下地層20と、第一の誘電体膜である無機化合物層からなる高屈折率膜30と、前記第一の誘電体層にくらべ低い屈折率を有する第二の誘電体膜である無機化合物層からなる低屈折率膜40とが交互に積層された構造を有し、最上層が低屈折率膜40となるように構成されている。高屈折率膜30と低屈折率膜40は、それぞれ複数存在してよい。また、防曇性の反射防止膜ARは、基板10の少なくとも一方の面に形成されていればよく、基板10の全面に形成されていても、面の所定の部分に形成されていてもよい。
第一の誘電体膜としての高屈折率膜30は、低屈折率膜40にくらべて屈折率が高い層であり、屈折率は1.9〜2.5、より好ましくは2.2〜2.5である。高屈折率膜30には、光触媒反応を呈するチタン、ニオブ、ジルコン等の遷移金属の化合物である無機化合物が用いられる。例えばアナターゼ型結晶構造を有する酸化チタン膜が好適に用いられる。
基板10から最も遠い最上層の低屈折率膜40に接して形成される複数の高屈折率膜30のうち最上層の高屈折率膜30の膜厚は、100nm以上、好ましくは200nm以上である。
高屈折率膜30の形成方法については、特に限定されないが真空を利用する蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、CVD等、ドライ(乾式)プロセスによる成膜方法が可能である。
低屈折率膜40には、親水性を呈する無機化合物が用いられる。例えば酸化シリコン膜が好適に用いられる。
基板10から最も遠い最上層の低屈折率膜40の膜厚は、5nm以上、より好ましくは特定波長領域の中心波長をλnmとした場合に、中心波長(λ)の1/4以下である。
低屈折率膜40の形成方法については、特に限定されないが高屈折率膜30と同様に真空を利用する蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、CVD等、ドライ(乾式)プロセスによる成膜方法が可能である。
高屈折率膜30と低屈折率膜40それぞれの膜厚は、波長400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長a(nm)から、第一の任意の指定波長a(nm)よりも200nm大きい第二の任意の指定波長b(b=a+200)までの間の200nmの範囲での平均反射率が、1%未満となるように決定される。
なお、基板10直上に積層される高屈折率膜30と低屈折率膜40は、その直上に更に配置される高屈折率膜30と低屈折率膜40のそれぞれと同じ、又は、光学定数(屈折率や消衰係数)が対応する値を有する物質から形成すればよく、基板10直上に積層される高屈折率膜30と低屈折率膜40の材料の混合物を含めて、特に構成する物質を限定するものではない。
なお最上層の高屈折率膜30及び低屈折率膜40は、それぞれ、酸化チタン、酸化シリコンから形成されるが、それ以外の高屈折率膜30及び低屈折率膜40は、それぞれ、酸化チタン、酸化シリコン以外の無機誘電体から形成してもよい。最上層の高屈折率膜30以外の高屈折率膜30は、光触媒性のない酸化チタンでもよく、他の高屈折率材で構成してもよい。
更に、最表層の低屈折率膜40は、酸化シリコンを主成分とする無機化合物膜である親水性を呈する薄膜が形成される。
本実施形態の防曇性の反射防止膜ARが形成された基板10は、屋外用のカメラ、ライダー(LIDAR: Light Detection and Ranging、又は、Laser Imaging Detection and Ranging)また計器類のカバー基体として用いられる。
つまり、基板10が、予め計器等のカバー形状になるように切断、成形、接着等により加工され、この加工された基板10に、本実施形態の防曇性の反射防止膜ARが施されて、防曇性反射防止膜付き透過型カバー基体が製造される。
なお、基板10上に本実施形態の防曇性の反射防止膜ARが施された後で、計器等のカバー形状になるように切断、成形、接着等により加工されてもよい。
このように構成された本実施形態の防曇性反射防止膜付き透過型カバー基体は、計器等のフロントウインドウ等に用いられ、内部からの良好な視野並びに外部からの良好な視認性が保持される。200nmの特定波長範囲における平均反射率が1%以下であるため、計器の機能に応じて、赤外線ビームの透過や、外部からの計器の指示板の視認が好適に行われる。
本実施形態の防曇性の反射防止膜ARは、以下の工程で製造される。
透明な基板10を蒸着装置内にセットし、蒸発源に市販の酸化シリコン等の低屈折率膜40の材料等からなる下地層20の材料をセットして装置内真空度を1.5×10−3 Pa未満まで排気する。その後、基板温度を200〜300℃に保ちながら、電子銃を用いて材料を蒸発させ、基板10上に、下地層20として、5〜50nm形成する。このとき、必要により酸素またはアルゴン、またはそれらの混合ガスのイオン等でアシストする。
なお、この下地層20は、基板10にアルカリ金属類が含有されない場合は形成しなくてもよい。
つづいて、蒸発源に市販の酸化シリコン等の低屈折率膜40の材料をセットして、装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気し、基板温度を200〜300℃に保ちながら、電子銃を用いて第二の誘電体膜である低屈折率膜40の材料25〜100nmを、高屈折率膜30上に、低屈折率膜40として形成する。このとき、必要により酸素またはアルゴン、またはそれらの混合ガスのイオン等でアシストする。
その後、高屈折率膜30、低屈折率膜40を、順次、同様に形成する。但し、このとき、高屈折率膜30の膜厚は、100nm以上、好ましくは200nm以上、低屈折率膜40の膜厚は、5nm以上、より好ましくは中心波長(λ)の1/4以下とする。
高屈折率材料30と低屈折率材料40及びその他の材料のセットは、回転型蒸発源に初めからセットしておくと排気時間の短縮が図れる。以上で、本実施形態の防曇性の反射防止膜ARを完成する。
なお、本実施形態の防曇性の反射防止膜ARは、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD等の他の、ドライ(乾式)プロセスによっても製造可能である。
(試験例1〜8 2層構造の積層体A〜Hの作製)
透明な硝子基板を蒸着装置内にセットし、蒸発源に市販の酸化チタンをセットして装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した後、基板温度を300℃に保ちながら、電子銃を用いてイオンアシストを行いながら酸化チタンを蒸発させ、基板表面に第一の誘電体膜である酸化チタン膜20nm,50nm,100nm,200nmを酸素イオン照射(イオン電流1000mA)しながら形成した。
つづいて、回転型蒸発源の酸化シリコンをセットして電子銃を用いて第二の誘電体膜である酸化シリコン膜をそれぞれの酸化チタン膜上に20nm形成し、それぞれ試験例1〜4の積層体A〜Dを得た。
酸化チタン膜の膜厚が20nmの積層体A(試験例1)では結晶配向は認められず、膜厚50nmの積層体B(試験例2)では若干のアナターゼ(101)及びルチル(110)の配向が認められるものの顕著なピークにはいたらなかった。膜厚100nmの積層体C(試験例3)と200nmの積層体D(試験例4)で結晶に配向が認められた。酸化チタンの膜厚増加に伴って、結晶配向性は明確になってくると共にアナターゼ型の(200)方位が明確になることが分かった。アナターゼ型の(101)/(200)の比は、2.0以上であるが、アナターゼ(101)/ルチル(110)の比は、酸化チタン膜の膜厚増加に伴って大きくなり、2.0以上となるのは酸化チタンの膜厚が200nmのときであった。
イオン電流500mA,300mAのいずれでも、結晶配向は認められ、アナターゼ型の(101)/(200)の比は、2.0以上であり、アナターゼ(101)/ルチル(110)の比も、2.0以上となった。また、イオン電流300mAにおけるピーク強度はイオン電流500mAよりも低く、本成膜条件においてより良い結晶性成長には、少なくともイオン電流300mA以上が必要であることが分かった。
積層体Gの成膜においては、始めに、蒸発源に市販の酸化チタンをセットして、装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した後、基板温度を200℃に保ちながら、電子銃を用いて酸化チタンを蒸発させ、基板表面に第一の誘電体膜である酸化チタン膜100nmを、酸素イオン照射しながら形成した。つづいて、回転型蒸発源の酸化シリコンをセットして、電子銃を用いて酸化シリコンを蒸発させ、第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を酸化チタン膜上に70nm形成した。
基本構成である4層構成の積層体を得るため、透明な硝子基板10を蒸着装置内にセットし、蒸発源に市販の酸化チタンをセットして装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した後、基板温度を300℃に保ちながら、電子銃を用い、イオンアシストを行いながら酸化チタンを蒸発させ、基板10表面に、第一の誘電体膜である酸化チタン膜20nmを、高屈折率膜30として、酸素イオン照射(イオン電流1000mA)しながら形成した。
つづいて、酸素ガスの導入量を40sccmに変更して、回転型蒸発源の酸化シリコンをセットして、電子銃を用いて第二の誘電体膜である酸化シリコン膜からなる低屈折率膜40を酸化チタン膜の高屈折率膜30上に、25nm形成した。再び初めの酸化チタンの成膜条件にて第一の誘電体膜である酸化チタンの高屈折率膜30を膜厚240nm形成し、最後に第二の誘電体膜である酸化シリコン膜からなる低屈折率膜40を90nm形成して、実施例1の積層体Iを得た。
本例では、下地層20として、第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を形成した実施例2の積層体Jを作製した。
透明な硝子基板10を蒸着装置内にセットし、蒸発源に市販の酸化シリコンをセットして装置内真空度を1.5×10−3Pa未満まで排気した。その後、基板温度300℃に保ちながら、電子銃を用いて酸化シリコンを蒸発させ、基板10上に、第二の誘電体膜である酸化シリコン膜を、下地層20として、20nm形成した。
成膜サンプルは、紫外線の影響を極力避けるために、成膜直後からアルミ製のボックスでカバーしておき、測定するたびに取り出して水の接触角を測定した後速やかに同様の方法で保管した。接触角の測定は、協和界面科学社製のCA−X型装置を用いて、θ/2法により行った。測定結果を表2に、時間経過と接触角についてのグラフを図4〜図7に示す。
そして、水の接触角が10度以下となった試験例4の積層体D〜試験例6の積層体F,試験例8の積層体H,実施例1,2の積層体I,Jでは、アナターゼ型の(101)/(200)の比、およびアナターゼ(101)/ルチル(110)の比が、それぞれ、2.0以上であった。
また、水の接触角が10度以下となった試験例4の積層体D〜試験例6の積層体F,試験例8の積層体H,実施例1,2の積層体I,Jでは、第一の誘電体である酸化チタン膜のうち最表層の膜が、200nmであるか、下地層20として酸化シリコン層があり、かつ、第一の誘電体である酸化チタン膜のうち最表層の膜が、200nmであった。
この結果から、第一の誘電体である酸化チタン膜では、膜厚100nm以上、好ましくは200nm以上において、アナターゼ型の(101)/(200)の比、およびアナターゼ(101)/ルチル(110)の比が、それぞれ、2.0以上という、好適な結晶性が得られることが分かった。また、下地層20として酸化シリコン層がある場合は、酸化チタン膜の膜厚100nm以上で、好適な結晶性が得られることが分かった。更に、基板温度200℃では、結晶配向は起こらず、好適な結晶性を得るためには、基板温度300℃以上が必要であることが分かった。
試験例4では、図8に示すように、波長400〜700nmにおける反射率が、3〜33%であったのに対し、実施例1,2では、図9,図10に示すように、500〜700nmの特定波長範囲200nmの間の反射率が、1%以下であった。
また、これら実施例1,2の積層体I,Jの水の接触角は、1000時間経過しても10度以下を維持しており、実施例1では、1800時間経過後でも10度以下を維持することが確認できた。
本例のAFMでは、5μm×5μmの範囲を測定した。図11にその測定結果及び表面観察像を示す。
SPa(断面曲面内における平均粗さ)は、中心線(または中心面)からの距離の絶対値を合計し、平均した数値である。測定した線または面の平均的な粗さを表している。
SPq(断面曲面内における二乗平均平方根)は、中心線(または中心面)からの距離を二乗し、その合計を平均した数値の平方根をとったものである。粗さのばらつきを表している。
SPp(断面曲面内における山頂と中心面との最大間隔)は、中心線(または中心面)と、中心線から最も離れている山との距離である。
SPv(断面曲面内における谷底と中心面との最大間隔)は、中心線(または中心面)と、中心線から最も離れている谷との距離である。
SRa(粗さ曲面内における平均粗さ)は、中心線(または中心面)からの距離の絶対値を合計し、平均した数値であり、測定した線または面の平均的な粗さを表している。SRaは、JIS(日本工業規格)では、Raと表記されている。
SRq(粗さ曲面内における二乗平均平方根)は、中心線(または中心面)からの距離を二乗し、その合計を平均した数値の平方根をとったものである。粗さのばらつきを表している。SRqは、JIS(日本工業規格)では、RMSと表記されている。
SRp(粗さ曲面内における山頂と中心面との最大間隔)は、中心線(または中心面)と、中心線から最も離れている山との距離である。
SRv(粗さ曲面内における谷底と中心面との最大間隔)は、中心線(または中心面)と、中心線から最も離れている谷との距離である。
本例では、測定範囲の1辺の長さの1/3をうねりのカットオフ値としたため、Roughness Curveの各粗さパラメータでは、1.667E+03nm以上の波長のうねりを除去している。
本例の平均面粗さRaは3〜4nmの範囲内、面内最大高低差Rmaxは20〜40nmの範囲内であった。
10 基板
20 下地層
30 高屈折率膜
40 低屈折率膜
Claims (7)
- 防曇性反射防止膜であって、
透明基材上の少なくとも一方の面に、第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する第二の誘電体膜とが交互に少なくとも4層以上積層され、最上層が前記第二の誘電体膜であり、
前記第一の誘電体膜が光触媒反応を呈する無機化合物からなり、
前記第二の誘電体膜が親水性の無機化合物からなり、
前記反射防止膜の反射率は、400〜1500nmの波長範囲内における第一の任意の指定波長a(nm)から、該第一の任意の指定波長より200nm大きい第二の指定波長b(nm)までの範囲における平均反射率が1%未満であり、且つ、前記最上層側の表面における水の接触角が10度以下を呈することを特徴とする防曇性反射防止膜。 - 前記第一の誘電体膜は、X線回折でのルチル(110)ピークに対するアナターゼ(101)ピークの強度比アナターゼ(101)/ルチル(110)が、2.0以上であり、アナターゼ(200)ピークに対するアナターゼ(101)ピークの強度比アナターゼ(101)/アナターゼ(200)が、2.0以上であって、アナターゼとルチルの混晶である酸化チタンを主成分とする無機化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の防曇性反射防止膜。
- 前記第二の誘電体膜は、酸化シリコンを主成分とする無機化合物膜からなることを特徴とする請求項1又2に記載の防曇性反射防止膜。
- 複数の前記第一の誘電体膜のうち、最上層の前記第一の誘電体膜の膜厚は、100nm以上であり、複数の前記前記第二の誘電体膜のうち、最上層の前記第二の誘電体膜の膜厚は、5nm以上である請求項3に記載の防曇性反射防止膜。
- 暗所での保存時間が900時間経過後において、前記最上層側の表面の水の接触角が、10度以下を呈する請求項1及至4に記載のいずれか1項であることを特徴とする防曇性反射防止膜。
- 請求項1及至5のいずれか1項に記載の防曇性反射防止膜付きカバー基体。
- 請求項1及至5のいずれか1項に記載の防曇性反射防止膜の製造方法であって、
前記透明基材上の少なくとも一方の面に、前記第一の誘電体膜と、該第一の誘電体膜にくらべて低い屈折率を有する前記第二の誘電体膜とを、交互に、最上層が前記第二の誘電体膜となるように、少なくとも4層以上積層することを特徴とする防曇性反射防止膜の製造方法。
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