JP2016210750A - フラーレン化合物、半導体デバイス、太陽電池及び太陽電池モジュール - Google Patents

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Eiichi Nakamura
栄一 中村
詠子 武田
Eiko Takeda
詠子 武田
幸治 原野
Koji Harano
幸治 原野
荒牧 晋司
Shinji Aramaki
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Abstract

【課題】新たな半導体材料を提供する。【解決手段】式(I)で表される構造を有するフラーレン化合物。式(I)で表される構造を1〜5個有するフラーレン化合物。(Cfはフラーレン環を構成する炭素原子;R1〜R6は各々独立にH又は1価の有機基;R1〜R6は互いに結合して環を形成していてもよい;a及びbは各々独立に1以上の整数)【選択図】なし

Description

本発明は、フラーレン化合物、半導体デバイス、太陽電池及び太陽電池モジュール
修飾フラーレンは半導体材料として知られており、電界効果トランジスタ、電界発光素子(LED)、及び光電変換素子のような様々な半導体デバイスにおいて用いられている。例えば特許文献1及び特許文献2には、シリルメチル基を置換基として有するフラーレン化合物が記載されている。
特開2009−206470号公報 特開2011−184326号公報
半導体デバイスの性能を向上させるため、また半導体デバイスの用途を広げるために、選択可能な半導体材料の幅を広げることが求められている。
本発明は、新たな半導体材料を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下に存する。
[1]下記式(I)に表される構造を有するフラーレン化合物。
Figure 2016210750
(式(I)中、Cはフラーレン環を構成する炭素原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基を表し、R〜Rは互いに結合して環を形成していてもよく、a及びbはそれぞれ1以上の整数を表す。)
[2]前記式(I)で表わされる構造を1以上5以下有する、[1]に記載のフラーレン化合物。
[3]前記式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアリールオキシ基であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のフラーレン化合物。
[4]前記式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基であることを特徴とする、[1]から[3]の何れかに記載のフラーレン化合物。
[5]aとbとの和が2以上3以下であることを特徴とする、[1]から[4]の何れかに記載のフラーレン化合物。
[6][1]から[5]の何れかに記載のフラーレン化合物を含有する半導体デバイス。
[7]光電変換素子、電界効果トランジスタ又は電界発光素子であることを特徴とする[6]に記載の半導体デバイス。
[8]光電変換素子である[7]に記載の半導体デバイスを備える太陽電池。
[9][8]に記載の太陽電池を備える太陽電池モジュール。
本発明によれば、新たな半導体材料を提供することができる。
一実施形態に係る電界効果トランジスタ素子を模式的に表す断面図である。 一実施形態に係る電界発光素子を模式的に表す断面図である。 一実施形態としての光電変換素子を模式的に表す断面図である。 一実施形態としての太陽電池を模式的に表す断面図である。 一実施形態としての太陽電池モジュールを模式的に表す断面図である。
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
<1.フラーレン化合物>
本発明に係るフラーレン化合物は、一般式(I)に表される構造を有する。
Figure 2016210750
フラーレン化合物とは、フラーレン環を含む化合物のことを指し、フラーレン環とは、主に炭素原子で構成される閉殻構造クラスターであるフラーレンにおいて、閉殻構造を構成する縮合環構造のことを指す。フラーレンを構成する原子数は特に制限されず、一般的には60〜130の間の偶数であることが多い。炭素原子で構成されるフラーレンの例としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94又はC96が挙げられる。本実施形態においてフラーレンは、さらに多くの原子を有する高次クラスターであってもよい。また、フラーレンは、炭素原子以外の原子、例えばホウ素原子又は窒素原子等を閉殻構造を構成する原子として有する、ヘテロフラーレンであってもよい。これらの中でも、フラーレンはC60又はC70であることが好ましい。C60は、入手が容易である点及び好適な電子受容性を示しうる点でさらに好ましい。C70もまた、好適な電子受容性を示しうる点で好ましい。
上記の通り、本発明に係るフラーレン化合物は、一般式(I)で表される構造を有する。式(I)において、Cはフラーレン環を構成する炭素原子を表す。すなわち、本発明に係るフラーレン化合物は、一般式(I)中の置換基(−[CR−SiR−[CR−)をフラーレン環上に有する。具体的には、本発明に係るフラーレン化合物においては、一般式(I)中の2価の置換基(−[CR−SiR−[CR−)の両端が、フラーレン環の閉殻構造を構成する原子に直接結合している。
式(I)において、a及びbはそれぞれ1以上の整数を表す。aとbとの和は2以上であり、一方、12以下であることが好ましく、8以下であることがさらに好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが特に好ましい。aは2以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。また、bは2以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。
式(I)において、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基を表す。フラーレン化合物がRを2つ以上有する場合、それぞれのRは互いに異なっていてもよい。R〜Rについても同様である。また、R〜Rは互いに結合して環を形成していてもよい。
1価の有機基としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアリールオキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子等が挙げられ、フッ素原子であることがより好ましい。
脂肪族基としては、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数2〜20の脂肪族複素環基が好ましく、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基がさらに好ましい。脂肪族炭化水素基として、具体的には、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基又はオクチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、又はブテニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、又はブチニル基等が挙げられる。
芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜10の芳香族複素環基がさらに好ましい。芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、ナフチル基又はアントラセニル基等が挙げられ、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。芳香族複素環基の例としては、ピリジル基、チエニル基、フリル基又はピロリル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜14のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がさらに好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、又は2−エチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基の例としては、炭素数2〜20のアリールオキシ基が好ましく、炭素数2〜10のアリールオキシ基がさらに好ましい。アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基又はナフトキシ基等が挙げられる。
これらの置換基が有してもよい置換基として特に限定は無いが、ハロゲン原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基が好ましい。置換基としてより好ましくはフッ素原子又は炭素数1〜14のアルコキシ基である。炭素数1〜14のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、又は2−エチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。また、置換基を有していてもよい芳香族基の具体的な例としては、2−(2’−エチルヘキシルオキシ)フェニル基等が挙げられる。有していてもよい置換基の数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。複数の置換基を有する場合、それぞれの置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
式(I)において、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアリールオキシ基であることが好ましく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族基であることがさらに好ましい。R及びRは同一の置換基であってもよい。
式(I)において、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましく、水素原子又はハロゲン原子であることがより好ましい。R〜Rは同一の置換基であってもよい。
本発明に係るフラーレン化合物が有する式(I)に表される構造の数は特に限定されないが、1以上5以下であることが好ましく、特に好ましくは、フラーレン化合物は式(I)に表される構造を1つだけ有している。
フラーレン環には、式(I)中の置換基以外の置換基が結合していてもよい。フラーレン環にさらに結合していてもよい置換基の例としては、置換基を有していてもよいメタノ基、置換基を有していてもよいインダンジイル基、又は置換基を有していてもよいシリルメチル基等が挙げられる。メタノ基を有するフラーレン環の例としては、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)及びジヒドロメタノフラーレン等が知られている。インダンジイル基を有するフラーレン環の例としては、フラーレンインデンビス付加体(ICBA)等が知られている。また、シリルメチル基を有するフラーレン環の例としては、ジメチルフェニルシリルメチルフラーレン(SIMEF)等が知られている。
本発明に係るフラーレン化合物のより具体的な例は、下記式(II)で表されるフラーレン化合物である。
Figure 2016210750
式(II)において、R〜R、a及びbは式(I)と同様である。式(II)において、FLNは式(I)で表される構造中の置換基以外の置換基を有していてもよいフラーレンを表す。フラーレンの例及び有していてもよい置換基の例は、上述の通りである。
式(II)において、nは、特段の制限はないが、1以上5以下の整数であることが好ましく、フラーレン化合物のLUMOエネルギー準位が適切に調整されうる点で、nは1であることが好ましい。
本発明に係るフラーレン化合物は、既知のフラーレン化合物の代わりに用いることが可能である。例えば、一実施形態に係るフラーレン化合物を用いて形成した層は、n型半導体特性を示す。このため、このようなフラーレン化合物は、半導体デバイスが備える半導体層の材料として使用することができる。例えば、一実施形態に係るフラーレン化合物は、光電変換素子が備える活性層用のn型半導体材料として用いることができる。また、一実施形態に係るフラーレン化合物は、光電変換素子が備える電子取り出し層用の材料として用いることができる。
本発明に係るフラーレン化合物を用いることにより良好な電気特性を有する半導体デバイスを作製することができる。その理由としては、ケイ素原子を含む環状の置換基を有することにより本発明に係るフラーレン化合物の溶解性が向上し、その結果本発明に係るフラーレン化合物を含有する良質な膜を形成できることが考えられる。また、シリルメチル基を有するフラーレン化合物(例えば1,4−ビス(トリメチルシリルメチル)[60]フラーレン)の結晶は、フラーレン部位とシリルメチル基とがそれぞれ集合している電荷輸送に有利な構造をとることが知られている。本発明に係るフラーレン化合物は、このような従来の化合物と比較してケイ素原子を含む置換基が環状構造を有するために、立体障害が小さくなり、このような電荷輸送に有利な構造をよりとりやすくなるものと考えられる。
(フラーレン化合物含有層形成用組成物)
本発明に係るフラーレン化合物と溶媒とを含有する組成物は、本発明に係るフラーレン化合物を含有する層を形成するための組成物として利用することができる。具体的には、このような組成物を塗布及び乾燥することにより、本発明に係るフラーレン化合物を含有する層を形成することができる。この組成物はさらに添加剤を含有していてもよいが、好ましくは組成物の主成分は本発明に係るフラーレン化合物及び溶媒である。
溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。また、二硫化炭素を使用することもできる。
組成物中に含まれるフラーレン化合物の濃度は特に限定されず、適切な厚さの層が形成されるように適宜選択することができる。塗布成膜が円滑に進むように、フラーレン化合物の濃度は好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは0.5重量%以上であり、一方で好ましくは60重量%以下であり、さらに好ましくは45重量%以下である。
<2.フラーレン化合物の製造方法>
本発明に係るフラーレン化合物の製造方法は特に限定されないが、以下のように、一般式(Ia)で表される構造を有する化合物を用いて本発明に係るフラーレン化合物を製造することができる。すなわち、式(Ia)で表される構造を転移反応により式(I)で表される構造へと変換することにより、本発明に係るフラーレン化合物を製造することが可能である。
Figure 2016210750
式(I)と同様にCはフラーレン環を構成する炭素原子を表す。式(Ia)においてXは任意の脱離基であり、例えばシリルメチル基でありうる。一例において、式(Ia)に表される置換基のうち一方はフラーレン環を構成する六員環の1位に結合し、他方は同一の六員環の2位又は4位に結合する。なお、aが1の場合には−[CRa−1−は直接結合を表し、bが1の場合には−[CRb−1−は直接結合を表す。
例えば、式(Ia)で表される構造を有する化合物を加熱することにより、式(I)で表される構造を有する化合物を製造することができる。より具体的には、式(IIa)で表されるフラーレン化合物を加熱することにより、式(II)で表されるフラーレン化合物を製造することができる。
Figure 2016210750
式(IIa)において、R及びRは水素原子又は1価の有機基であり、具体例としては、R及びRについて上述したものと同様の置換基が挙げられる。R〜R12も水素原子又は1価の有機基であり、具体例としては、R〜Rについて上述したものと同様の置換基が挙げられる。また、R〜R12は互いに結合して環を形成していてもよい。a及びbは式(I)と同様である。
式(IIa)において、一方の置換基−[CRa−1CRSiRCHRはフラーレン環を構成する六員環の1位に結合し、他方の置換基−[CRb−1CR10SiRCHR1112は同一の六員環の2位又は4位に結合する。
このような化合物は、特開2009−206470号公報に従って製造可能である。具体的な製法の一例としては、フラーレンにClMg[CRa−1CRSiRCHR等の求核試薬を作用させた後、カリウムt−ブトキシド等の塩基で処理し、Cl[CRb−1CR10SiRCHR1112等の求電子試薬を作用させる方法が挙げられる。精製を容易とする観点から、置換基−[CRa−1CRSiRCHRは、置換基−[CRb−1CR10SiRCHR1112と同じ置換基であることが好ましい。
式(Ia)又は式(IIa)で表される置換基をフラーレン環上に有する化合物を加熱する際の加熱温度は、特段の制限はないが、環化反応の促進のために200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがさらに好ましく、300℃以上であることが特に好ましく、一方、分解反応の抑制のために500℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがさらに好ましく、350℃以下であることが特に好ましい。
加熱時間は、環化反応の促進のために1分以上であることが好ましく、5分以上であることがさらに好ましく、10分以上であることが特に好ましく、一方、分解反応の抑制のために24時間以下であることが好ましく、12時間以下であることがさらに好ましく、6時間以下であることが特に好ましい。
また、本発明に係るフラーレン化合物は、上記以外の方法により製造することもできる。例えば、式(III)で表される化合物とフラーレンとの反応により、本発明に係るフラーレン化合物を製造することができる。
Figure 2016210750
本発明に係るフラーレン化合物は、例えば、式(III)で表される化合物に対するフラーレンの求核置換反応により製造することができる。具体例としては、式(III)で表わされる化合物、フラーレン、及び塩基を反応させる方法が挙げられる。例えば、溶媒中でフラーレンと塩基とを攪拌し(第1の攪拌)、その後、式(III)で表される化合物を追加してさらに攪拌(第2の攪拌)することによって、本発明に係るフラーレン化合物を製造することができる。
式(III)において、R〜R、a及びbは、式(I)中のR〜R、a及びbと同義である。また、式(III)において、X及びXは脱離基を表す。脱離基に特段の制限はなく、例えば求核置換反応で通常用いられる脱離基を用いることができる。脱離基の好ましい例としてはハロゲン原子が挙げられ、なかでも脱離基がヨウ素原子であることは特に好ましい。
この反応で用いられる塩基に特段の制限はないが、例えば炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド又はナトリウムチオメトキシド等が挙げられる。また、この反応で用いられる溶媒にも特段の制限はない。溶解性の観点から溶媒は極性溶媒であることが好ましく。例えば、アセトニトリル、ジメチルフラン、ジメチルスルホキシド又はN−メチルピロリドン等が挙げられる。
この反応は、室温で行ってもよいし、加熱して行ってもよい。第1の攪拌を行う時間及び第2の攪拌を行う時間に特段の制限はないが、それぞれ1日間以上であることが好ましく、2日間以上であることが特に好ましい。
<3.半導体デバイス>
以下に、本発明に係るフラーレン化合物を用いた半導体デバイスについて説明する。本発明に係る半導体デバイスは、本発明に係るフラーレン化合物を含有しており、より具体的には、本発明に係るフラーレン化合物を含有する構成要素、例えば本発明に係るフラーレン化合物を含有する層を有している。一実施形態に係る半導体デバイスは、一対の電極と、一対の電極間に配置された半導体層と、を有している。この半導体デバイスにおいては、半導体層が本発明に係るフラーレン化合物を含んでいるか、又は本発明に係るフラーレン化合物を含むさらなる層が設けられている。
本明細書において半導体デバイスとは、半導体化合物を含有する半導体層を備える電子デバイスのことを指す。電子デバイスとは、2個以上の電極とを有し、その電極間に流れる電流若しくは生じる電圧を、電気、光、磁気若しくは化学物質等により制御するデバイス、又は、その電極間に印加した電圧若しくは電流により、光、電場若しくは磁場等を発生させるデバイスのことを指す。具体例としては、電圧若しくは電流の印加により電流若しくは電圧を制御する素子、磁場の印加により電圧若しくは電流を制御する素子、又は化学物質を作用させて電圧若しくは電流を制御する素子等が挙げられる。制御の具体例としては、整流、スイッチング、増幅又は発振等が挙げられる。
なお、本明細書において「半導体」とは、固体状態におけるキャリア移動度の大きさによって定義される。キャリア移動度とは、周知であるように、電荷(電子又は正孔)がどれだけ速く(又は多く)移動されうるかを示す指標となるものである。具体的には、本明細書における「半導体」は、室温におけるキャリア移動度が好ましくは1.0x10−6cm/V・s以上、より好ましくは1.0x10−5cm/V・s以上、さらに好ましくは5.0x10−5cm/V・s以上、特に好ましくは1.0x10−4cm/V・s以上である。なお、キャリア移動度は、例えば電界効果トランジスタのIV特性の測定、又はタイムオブフライト法等により測定できる。
半導体デバイスの例としては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子若しくは化学センサー等、又はこれらの素子を組み合わせ若しくは集積化して得られたデバイスが挙げられる。また、半導体デバイスのさらなる例としては光素子が挙げられ、光素子には光電流を生じるフォトダイオード若しくはフォトトランジスタ、電界を印加することにより発光する電界発光素子、又は光により起電力を生じる光電変換素子若しくは太陽電池等が含まれる。
半導体デバイスのより具体的な例としては、S.M.Sze著、Physics of Semiconductor Devices、2nd Edition(Wiley Interscience 1981)に記載されているものを挙げることができる。なかでも、一実施形態に係る半導体デバイスの好ましい例としては、電界効果トランジスタ素子(FET)、電界発光素子(LED)、光電変換素子又は太陽電池が挙げられる。
電極の種類は特に限定さない。半導体デバイスの種類に応じて、適切な材料を用いて電極を作製することができる。電極の具体例は、いくつかの半導体デバイスに関して後に説明する。
半導体化合物とは、半導体の材料となる化合物のことを指す。半導体化合物の種類も特に限定されない。例えば、半導体層は、半導体化合物として本発明に係るフラーレン化合物を含有していてもよい。また、半導体層は、p型半導体化合物を含有していてもよいし、n型半導体化合物を含有していてもよいし、これらの双方を含有していてもよい。また、半導体層は、ペロブスカイト半導体化合物を含有していてもよい。
p型半導体化合物としては、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役コポリマー半導体のような高分子半導体化合物が挙げられる。また、p型半導体化合物として、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等のような低分子半導体化合物も挙げられる。また、単層カーボンナノチューブ又はグラフェン等もp型半導体化合物として使用することができる。
n型半導体化合物としては、本発明に係るフラーレン化合物を用いることができる。その他のn型半導体化合物の例としては、フラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム等のキノリノール誘導体金属錯体、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド若しくはペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン若しくはペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物、グラフェン又はn型ポリマー等が挙げられる。
ペロブスカイト半導体化合物とは、ペロブスカイト構造を有する半導体化合物のことを指す。ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al. Structure and Properties of Inorganic Solids, Chapter 7 - Perovskite type and related structuresで挙げられているものから選ぶことができる。例えば、ペロブスカイト化合物としては、一般式AMXで表されるもの又は一般式AMXで表されるものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。
半導体層に含まれる半導体化合物としては、半導体デバイスの種類に応じて適切なものを選択することができる。半導体化合物の具体例は、いくつかの半導体デバイスに関して後に説明する。
半導体層の厚さは特に限定されず、半導体層の用途に応じて適宜選択することができる。一例としては、半導体層の厚さは0.5nm以上500nm以下であってもよい。
半導体層には、半導体化合物以外に、他の化合物が添加されていてもよい。この場合、半導体層の半導体特性がよく発揮されるように、半導体層中の半導体化合物の割合は、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。また半導体層は、異なる材料を含み又は異なる成分を有する複数の層で形成される積層構造を有していてもよい。
半導体層の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。具体例としては、半導体化合物又は半導体化合物前駆体を含有する塗布液を塗布することにより半導体層を形成する塗布法、並びに半導体化合物を蒸着させる蒸着法等が挙げられる。簡易に半導体層を形成できる点で、塗布法を用いることは好ましい。
半導体化合物前駆体とは、塗布液を塗布した後に半導体化合物へと変換可能な材料のことを指す。具体的な例としては、加熱することにより半導体化合物へと変換可能な半導体化合物前駆体がある。例えば、塗布液を塗布することにより得られた膜を加熱することにより、半導体化合物前駆体を半導体化合物へと変換して半導体化合物を含有する半導体層を形成することができる。
半導体化合物前駆体の具体例としては、加熱により後述する式(1)で表されるペロブスカイト半導体化合物へと変換可能である、後述する式(2)で表される化合物及び/又は後述する式(3)で表される化合物が挙げられ、具体的には金属ハロゲン化物及びアルキルアンモニウム塩ハロゲン化物が挙げられる。また、加熱によりp型半導体化合物であるポルフィリン化合物へと変換可能なビシクロポルフィリン化合物等も挙げられる。
塗布法に用いられる塗布液は、半導体化合物又は半導体化合物前駆体を溶媒に溶解させることにより作製することができる。溶媒としては、半導体化合物又は半導体化合物前駆体が溶解するのであれば特に限定されない。溶媒としては、本発明に係るフラーレン化合物を含有する層を形成するための組成物が含有する溶媒として上述したものと同様のものを用いることができる。
ペロブスカイト半導体化合物を使用する場合、塗布液の溶媒としては、Brandrup,J.ら編「Polymer Handbook, 4th Ed.」に記載の溶解度パラメータ(SP値)が、9以上であるものが好ましく、10以上であるものが特に好ましい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合溶媒を用いてもよい。なお、混合溶媒を用いる場合も、混合溶媒のうち少なくとも1種の溶媒の溶解度パラメータは10以上であることが好ましい。
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
塗布液を塗布した後に乾燥を行うとともに、必要に応じて半導体化合物前駆体を半導体化合物へと変換する処理を行うことにより、半導体層を形成することができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば加熱乾燥を行ってもよい。
以下、本発明に係る半導体デバイスの例として、電界効果トランジスタ素子、電界発光素子、光電変換素子、及び太陽電池について詳細に説明する。
<4.電界効果トランジスタ(FET)>
本発明に係る電界効果トランジスタ(FET)素子は、半導体層と、一対の電極であるソース電極及びドレイン電極と、ゲート電極とを有する。
以下、一実施形態に係るFET素子について詳細に説明する。図1は、本発明に係るFET素子の構造例を模式的に表す図である。図1において、51が半導体層、52が絶縁体層、53及び54がソース電極及びドレイン電極、55がゲート電極、56が基材をそれぞれ示す。半導体層51は、半導体化合物として本発明に係るフラーレン化合物を含有している。もっとも、別の実施形態において、FET素子は、ソース電極53とドレイン電極54との間のチャネルとして働く半導体層51とは異なる、本発明に係るフラーレン化合物を含有する層を有していてもよい。
図1(A)〜(D)にはそれぞれ異なる構造のFET素子が記載されているが、どれも本発明に係るFET素子の構造例を示している。FET素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/180230号等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
一実施形態に係るFET素子において、半導体層51は、基材56上に直接又は他の層を介して半導体を膜状に形成することにより作製される。半導体層51の膜厚に制限は無く、例えば横型の電界効果トランジスタ素子の場合、所定の膜厚以上であれば素子の特性は半導体層51の膜厚には依存しない。ただし、膜厚が厚くなりすぎると漏れ電流が増加してくることが多いため、半導体層の膜厚は、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、コストの観点から好ましくは1μm以下、さらに好ましくは200nm以下である。
半導体層51の特性としては、室温におけるキャリア移動度が好ましくは1.0x10−6cm/V・s以上、さらに好ましくは1.0x10−5cm/V・s以上、より好ましくは5.0x10−5cm/V・s以上、特に好ましくは1.0x10−4cm/V・s以上である。
<5.電界発光素子(LED)>
本発明に係る電界発光素子(LED)は、一対の電極である陽極及び陰極と、電極間に配置された発光層と、を有する。電界発光素子は、電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子との再結合エネルギーによって蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。一実施形態において、発光層は、本発明に係るフラーレン化合物を含有している。しかしながら、別の実施形態において、本発明に係る電界発光素子は、発光層とは異なる、本発明に係るフラーレン化合物を含有する層を有していてもよい。例えば、電子注入層又は電子輸送層等が、本発明に係るフラーレン化合物を含有する層であってもよい。
図2は、本発明に係る電界発光素子の一実施形態を模式的に示す断面図である。図2において、符号31は基材、32は陽極、33は正孔注入層、34は正孔輸送層、35は発光層、36は電子輸送層、37は電子注入層、38は陰極、39は電界発光素子を示している。なお、電界発光素子がこれらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。例えば、必ずしも、正孔注入層33、正孔輸送層34、電子輸送層36、及び電子注入層37を設ける必要はない。電界発光素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、特開2015−032606号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
発光層35の形成方法に制限はない。例えば、湿式成膜法又は乾式成膜法を用いることができる。また、素子の発光効率を向上させる目的、発光色を変える目的、及び素子の駆動寿命を改善する目的等で、ホスト材料に蛍光色素や燐光性金属錯体等の別の化合物をドープすることにより発光層35を作製してもよい。例えば、蛍光色素をドープすることで、
1)高効率の蛍光色素による発光効率の向上
2)蛍光色素の選択による発光波長の可変化
3)濃度消光を起こす蛍光色素が使用可能となる
4)薄膜性の悪い蛍光色素も使用可能となる
5)電荷トラップ解消により駆動安定性が向上する、等の効果が期待される。
また、発光層35中に正孔輸送材料を混合することも、特に素子の駆動安定性を向上させる目的のために有効である。発光層35中に混合される正孔輸送材料の量は、5〜50質量%の範囲であることが好ましい。
発光層35の膜厚に制限はなく、発光層35に望まれる条件を満たしながら発光量を確保できるように、好ましくは3nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
なお、図2は本発明に係る電界発光素子の一実施形態を示すものにすぎず、本発明に係る電界発光素子が図示された構成に限定されるわけではない。例えば、図2とは逆の積層構造とすること、すなわち、基板31上に陰極38、電子注入層37、電子輸送層36、発光層35、正孔輸送層34、正孔注入層33及び陽極32をこの順に積層することも可能である。
本発明に係る電界発光素子の構成は特に限定されず、単一の素子であっても、アレイ状に配置された構造からなる素子であっても、陽極と陰極とがX−Yマトリックス状に配置された構造の素子であってもよい。
<6.光電変換素子>
本発明に係る光電変換素子は、一対の電極であるカソード及びアノードと、電極間に配置された半導体層である活性層と、を有する。また、一実施形態に係る光電変換素子は、基材、電子取り出し層、及び正孔取り出し層を含むその他の構成要素を有していてもよい。一実施形態において、活性層は、本発明に係るフラーレン化合物を含有している。しかしながら、別の実施形態において、光電変換素子が、活性層とは異なる、本発明に係るフラーレン化合物を含有する層を有していてもよい。例えば、電子取り出し層等が、本発明に係るフラーレン化合物を含有していてもよい。
図3は、本発明に係る光電変換素子の一実施形態を模式的に表す断面図である。図3に示される光電変換素子は、一般的な薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子であるが、本発明に係る光電変換素子が図3に示されるものに限られるわけではない。本発明の一実施形態に係る光電変換素子100は、基材107、カソード(電極)101、電子取り出し層(バッファ層)102、活性層103、正孔取り出し層(バッファ層)104及びアノード(電極)106がこの順に形成された層構造を有する。なお、必ずしも電子取り出し層102及び正孔取り出し層104を設ける必要はない。また、仕事関数チューニング層がカソード101と電子取り出し層102との間に存在してもよい。
<6−1.活性層(103)>
活性層103は光電変換が行われる層である。光電変換素子100が光を受けると、光が活性層103に吸収されてキャリアが発生し、発生したキャリアはカソード101及びアノード106から取り出される。
活性層103の構造は特に限定されない。例えば、活性層103はp型半導体化合物を含有するp層とn型半導体化合物を含有するn層とを含むヘテロ接合型の活性層であってもよい。このような活性層103に光が入射すると、層界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔及び電子)がカソード101及びアノード106へと輸送される。一実施形態において、n層はn型半導体材料として本発明に係るフラーレン化合物を含有している。
一実施形態において、活性層103は、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層(i層)を有するバルクヘテロ型の活性層である。i層においては、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが相分離している。i層に光が入射すると、相界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔及び電子)がカソード101及びアノード106へと輸送される。i層には、p型半導体化合物を含有するp層と、n型半導体化合物を含有するn層との少なくとも一方が積層されていてもよい。一実施形態において、i層とn層との少なくとも一方はn型半導体材料として本発明に係るフラーレン化合物を含有している。
他の実施形態において、活性層103は、ペロブスカイト半導体化合物を含有する層であり、このような活性層103を有する太陽電池はペロブスカイト太陽電池として知られている。ペロブスカイト半導体においては、ペロブスカイト構造を有するペロブスカイト半導体化合物が結晶を形成している。このような結晶においては速い電荷分離が起こるとともに正孔及び電子の拡散距離が長いため、効率のよい電荷分離が起こる。
活性層103の厚さに特段の制限はない。より多くの光を吸収できる点で、活性層103の厚さは、好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、特に好ましくは120nm以上である。一方で、直列抵抗が下がる点で、活性層103の厚さは、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下である。
(ヘテロ接合型の活性層及びバルクヘテロ型の活性層)
ヘテロ接合型又はバルクヘテロ型の活性層103が含有するp型半導体化合物に特段の制限はなく、例えば、半導体層が含んでいてもよいp型半導体化合物として例示したものを用いることができる。p型の高分子半導体化合物としては、二種以上のモノマー単位の共重合体である高分子半導体化合物を用いることが好ましい。このような光電子半導体化合物の例としては、Accounts of Chemical Research, 2012, 45, 723-733、Macromolecules, 2012, 45, 607-632、Chemistry of Materials, 2011, 23, 456-469、Energy & Environmental Science, 2011, 4, 1225-1237、Progress in Polymer Science, 2011, 36, 1326-1414、Journal of Materials Chemistry, 2012, 22, 10416-10434、及びProgress in Polymer Science, 2012, 37, 1292-1331に記載されるものが挙げられる。また、これらの高分子半導体化合物の誘導体を用いることもできるし、上記の文献に記載されたモノマーの共重合により得られる高分子半導体化合物を用いることもできる。さらには、溶解性、結晶性、成膜性、HOMOエネルギー準位、及びLUMOエネルギー準位等を制御するために、これらの高分子半導体化合物に対して置換基を導入してもよい。
p型半導体化合物として、2種以上のp型半導体化合物を用いてもよい。電荷分離を促進する観点から、1.0eV以上1.8eV以下のエネルギーバンドギャップを有するp型半導体化合物を用いることは好ましい。また、簡易な塗布プロセスを用いて活性層103を形成できる点で、溶媒に溶解可能な高分子半導体化合物を用いることは好ましい。
ヘテロ接合型又はバルクヘテロ型の活性層103が含有するn型半導体化合物に特段の制限はなく、例えば、半導体層が含んでいてもよいn型半導体化合物として例示したものを用いることができる。
これらの中でも、n型半導体化合物として本発明に係るフラーレン化合物を用いることは好ましい。その他のn型半導体化合物としては、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はn型ポリマーがより好ましい。また、2種以上のn型半導体化合物を用いてもよい。
バルクヘテロ型の活性層103において、i層におけるn型半導体化合物に対するp型半導体化合物の質量比率(p型半導体化合物/n型半導体化合物)は、特段の制限はないが、良好な相分離構造を得ることにより光電変換効率を向上させる点で、0.15以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、一方、4以下であることが好ましく、2以下であることがさらに好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。
(ペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層)
ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はなく、上述したものを用いることができる。好ましいペロブスカイト化合物の構造としては、一般式AMXで表されるものと一般式AMXで表されるものとが挙げられる。
1価のカチオンAに特段の制限はないが、例えば、上記Galassoの著書に記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、周期表第1族及び第13族〜第16族元素を含むカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
1価のカチオンAの具体例としては、メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n−プロピルアンモニウムイオンイソブチルアンモニウムイオン、n−ブチルアンモニウムイオン、t−ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン又はイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
2価のカチオンMにも特段の制限はないが、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましい。具体的な例としては周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。なお、安定な光電変換素子を得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。
1価のアニオンXの例としては、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4−ペンタンジオナトイオン又はケイフッ素イオン等が挙げられる。バンドギャップを調整するためには、Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。なかでも、Xとしてはハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせを用いることが好ましい。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン等が挙げられる。半導体のバンドギャップを広げすぎない観点から、ヨウ化物イオンを用いることが好ましい。
ペロブスカイト半導体化合物の好ましい例としては、有機−無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられ、特にハライド系有機−無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられる。ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、CHNHPbI、CHNHPbBr、CHNHPbCl、CHNHSnI、CHNHSnBr、CHNHSnCl、CHNHPbI(3−x)Cl、CHNHPbI(3−x)Br、CHNHPbBr(3−x)Cl、CHNHPb(1−y)Sn、CHNHPb(1−y)SnBr、CHNHPb(1−y)SnCl、CHNHPb(1−y)Sn(3−x)Cl、CHNHPb(1−y)Sn(3−x)Br、CHNHPb(1−y)SnBr(3−x)Cl、等が挙げられる。なお、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
光電変換効率を向上させる観点から、ペロブスカイト半導体化合物としては、1.0eV以上3.5eV以下のエネルギーバンドギャップを有する半導体化合物を用いることが好ましい。
活性層103は、2種類以上のペロブスカイト半導体化合物を含有していてもよい。例えば、A、M及びXのうちの少なくとも1つが異なる2種類以上のペロブスカイト半導体化合物が活性層103に含まれていてもよい。
活性層103に含まれるペロブスカイト半導体化合物の量は、良好な光電変換特性が得られるように、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限に制限はなく、100質量%以下である。
また、活性層103は、ペロブスカイト半導体化合物に加えて、添加物を含有していてもよい。添加物は特に限定されないが、添加物としては、例えばハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物が挙げられる。活性層103中の添加剤の量は、良好な光電変換特性が得られるように、好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。下限に制限はなく、0質量%以上である。
(活性層の形成方法)
活性層103の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。具体例としては、塗布法及び蒸着法(又は共蒸着法)が挙げられる。簡易に活性層103を形成できる点で、塗布法を用いることは好ましい。以下に、塗布法により活性層103を形成する方法について説明する。
バルクヘテロ型の活性層103は、p型半導体化合物と、n型半導体化合物と、溶媒と、を含む塗布液を調製し、この塗布液を塗布することにより形成することができる。この塗布液は、さらに添加剤を含有していてもよい。また、溶媒として、高沸点溶媒と低沸点溶媒との混合溶媒を用いてもよい。このような添加剤又は混合溶媒を用いることにより、溶媒の揮発速度を調整することができ、半導体化合物の組織化を促進して相分離構造を最適化することができる。
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
塗布液を塗布した後に、加熱乾燥を行ってもよい。バルクヘテロ型の活性層103に対して加熱を行うことにより、活性層の自己組織化を促進することができる。加熱温度は、自己組織化の効果が得られるように、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、一方、熱による損傷が生じないように、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下である。加熱する時間としては、自己組織化の効果が得られるように、好ましくは1分以上、さらに好ましくは3分以上であり、一方、処理効率を向上させる観点から、好ましくは3時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。
塗布液の溶媒としては、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を均一に溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、半導体層を塗布法により形成する際に用いることができる溶媒として挙げたものを用いることができる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等のケトン類;又は、エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類である。一方で環境負荷の観点からは、非ハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。
より好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン若しくはシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;テトラヒドロフラン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の非ハロゲン系脂環式炭化水素類;又は、1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。溶媒としては1種の溶媒を単独で用いてもよいし、任意の2種以上の溶媒を任意の比率で併用してもよい。
高沸点溶媒としては、常圧下での沸点が180℃以上250℃以下である溶媒を用いることが好ましく、具体例としてはテトラリン、デカリン又はアセトフェノン等が挙げられる。低沸点溶媒としては、常圧下での沸点が60℃以上150℃以下である溶媒を用いることが好ましく、具体例としては、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン又はエチルメチルケトン等が挙げられる。このような沸点の溶媒を組み合わせることにより、半導体化合物の組織化を促進することができる。環境負荷の観点から、これらの高沸点溶媒及び低沸点溶媒は非ハロゲン系溶媒であることが好ましい。
高沸点溶媒と低沸点溶媒との比率は、特に制限されない。半導体化合物の組織化を促進しやすい点で、重量比(高沸点溶媒/低沸点溶媒)が1/20以上であることが好ましく、1/15以上であることがさらに好ましく、1/10以上であることがより好ましい。一方、重量比(高沸点溶媒/低沸点溶媒)が10/1以下であることが好ましく、2/1以下であることがさらに好ましく、1/1以下であることがより好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。
低沸点溶媒と高沸点溶媒との組み合わせの例としては、非ハロゲン芳香族炭化水素類と脂環式炭化水素類、非ハロゲン芳香族炭化水素類と芳香族ケトン類、エーテル類と脂環式炭化水素類、エーテル類と芳香族ケトン類、脂肪族ケトン類と脂環式炭化水素類、又は脂肪族ケトン類と芳香族ケトン類、等が挙げられる。好ましい組み合わせの具体例としては、トルエンとテトラリン、キシレンとテトラリン、トルエンとアセトフェノン、キシレンとアセトフェノン、テトラヒドロフランとテトラリン、テトラヒドロフランとアセトフェノン、メチルエチルケトンとテトラリン、メチルエチルケトンとアセトフェノン等が挙げられる。
塗布液が添加剤を含む場合、塗布液全体に対する添加剤の量は、半導体化合物の組織化を促進しやすい点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、一方、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
塗布液は、p型半導体化合物の溶液とn型半導体化合物の溶液とをそれぞれ調製した後に、これらの溶液を混合することにより作製することができる。また、塗布液は、溶媒にp型半導体化合物及びn型半導体化合物を溶解させることによっても作製することができる。
塗布液中のp型半導体化合物とn型半導体化合物との合計濃度は、特に限定されない。十分な厚さの活性層を形成する観点から、合計濃度は塗布液全体に対して0.3質量%以上であることが好ましい。また、半導体化合物を十分に溶解させる観点から、合計濃度は塗布液全体に対して20質量%以下であることが好ましい。
さらに、半導体化合物前駆体を用いてバルクヘテロ型の活性層(i層)を形成する場合、以下の方法を用いることもできる。まず、半導体化合物前駆体と易溶性化合物とを含有する塗布液を塗布して層を形成した後で、半導体化合物前駆体を第1の半導体化合物(例えばp型半導体化合物)へと変換する。次に、得られた層に第2の半導体化合物(例えばn型半導体化合物)を含有する塗布液を塗布することにより、易溶性化合物を第2の半導体化合物で置換する。このような方法により、第1の半導体化合物と第2の半導体化合物とが好適に相分離しているバルクヘテロ型の活性層を得ることができる。易溶性化合物は特に限定されず、例えば特開2013−254949号公報に記載されているものを用いることができる。易溶性化合物の具体例としては、4’,4’’−トリ−9−カルバゾリルトリフェニルアミン(TCTA)等が挙げられる。
ヘテロ接合型の活性層103は、p型半導体化合物と溶媒とを含む塗布液と、n型半導体化合物と溶媒とを含む塗布液をそれぞれ調製し、これらの塗布液を順番に塗布することにより形成することができる。溶媒及び塗布方法に特段の制限はなく、バルクヘテロ型の活性層の形成方法において説明した溶媒及び塗布方法を使用することができる。バルクヘテロ型の活性層を作製する場合と同様、それぞれの塗布液を塗布した後に加熱乾燥を行うことが好ましい。また、バルクヘテロ型の活性層を作製する場合と同様、それぞれの塗布液は添加剤を含んでいてもよい。
ペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層103を形成する場合にも、活性層103の形成方法に特段の制限はない。一例としては、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表わされる化合物と溶媒とを含有する塗布液を作製し、この塗布液を塗布する方法が挙げられる。このような塗布液は、化合物を溶液中で加熱攪拌することにより作製することができる。この方法によれば、下記式(1)で表される化合物を含有する活性層103を作製することができる。
別の例としては、下記式(3)で表される化合物と溶媒とを含有する塗布液を塗布した後、下記式(2)で表される化合物と溶媒とを含有する塗布液を塗布し、加熱アニールする方法が挙げられる。この方法によっても、下記式(1)で表される化合物を含有する活性層103を作製することができる。
AMX ・・・(1)
AX ・・・(2)
MX ・・・(3)
A、M及びXの定義は上述の通りである。AXの具体例としてはアルキルアンモニウム塩ハロゲン化物が挙げられ、MXの具体例としては金属ハロゲン化物が挙げられる。AX及びMXは、ベロブスカイト半導体化合物AMXの前駆体である。
加熱攪拌又は加熱アニールの際の加熱温度は、化合物の反応を十分に促進する観点から、60℃以上であることが好ましく、一方、副反応を避ける観点から、150℃以下であることが好ましい。また、加熱攪拌時間は、化合物の反応を十分に促進する観点から、2時間以上であることが好ましく、生産効率を向上させる観点から、24時間以下であることが好ましい。なお、アニールの方法は、特段の制限はなく、ホットプレートにより行ってもよいし、近赤外線加熱装置(NIR)により行ってもよい。
式(3)で表される化合物に対する式(2)で表される化合物のモル分率(2/3)は、特段の制限はない。しかしながら、活性層中にMXが残存すると光電変換素子の変換効率が低下する傾向がある。また、後述する加熱処理により式(2)で表される化合物を除去できても、式(3)で表される化合物は加熱により除去することが困難であることが多い。そのため、式(3)で表される化合物が層中に残存しないように活性層103を形成することが好ましい。この点から、式(3)で表される化合物に対する式(2)で表される化合物のモル分率(2/3)は100モル%以上であることが好ましく、一方、600モル%以下であることが好ましく、400モル%以下であることが特に好ましい。
また、塗布液全量に対する式(2)で表される化合物及び/又は式(3)で表される化合物の合計量は、十分な厚さの活性層103を作製するために、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。一方で、溶媒中での析出を避けるために、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
また、結晶形成を促進するために、塗布液がさらに添加物を含んでいてもよい。この場合、添加物の量は、良好な光電変換性能が得られるように、式(2)で表される化合物及び/又は(3)で表される化合物の合計量に対して、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
ペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層103を形成する場合も、塗布液を塗布した後に加熱乾燥を行うことが好ましい。加熱により配位している溶媒及び残存する式(2)で表わされる化合物が層中から除去されて結晶化が促進され、光電変換効率が向上する傾向にある。結晶化の進行は塗布液の濃度に依存するため、塗布液の濃度が薄い場合又は溶媒の含有量が少ない場合には、加熱時間を短くすることが好ましい。
この際の加熱温度は、特段の制限はないが、十分に結晶化を促進する観点から、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、一方、ペロブスカイト半導体化合物の分解及び副反応を抑制するために、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。加熱する時間にも特段の制限はないが、十分に結晶化を促進する観点から、好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、一方、生産効率を向上させる観点から、好ましくは3時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。
<6−2.バッファ層(102,104)>
バッファ層は通常、電子取り出し層と正孔取り出し層とに分類することができる。一実施形態において、光電変換素子100は、カソード101と活性層103との間に電子取り出し層102を有し、活性層103とアノード106との間に正孔取り出し層104を有する。もっとも、光電変換素子100は、電子取り出し層102と正孔取り出し層104との一方のみを有していてもよいし、電子取り出し層102と正孔取り出し層104とのどちらも有さなくてもよい。
電子取り出し層102と正孔取り出し層104とは、一対の電極(101,106)間に、活性層103を挟むように配置されることが好ましい。すなわち、光電変換素子100が電子取り出し層102と正孔取り出し層104の両者を含む場合、アノード(電極)106、正孔取り出し層104、活性層103、電子取り出し層102、及びカソード(電極)101をこの順に配置することができる。光電変換素子100が電子取り出し層102を含み正孔取り出し層104を含まない場合は、アノード(電極)106、活性層103、電子取り出し層102、及びカソード(電極)101をこの順に配置することができる。電子取り出し層102と正孔取り出し層104とは積層順序が逆であってもよい。また、電子取り出し層102と正孔取り出し層104の少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。
(電子取り出し層)
電子取り出し層102の材料に特に限定は無く、活性層103からカソード101への電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。電子取り出し層102の材料としては、本発明に係るフラーレン化合物を用いることができる。一実施形態において、電子取り出し層102は、本発明に係るフラーレン化合物を主成分として含有しているが、その他の電子取り出し層材料又は添加剤をさらに含んでいてもよい。
その他の電子取り出し層102の材料の例としては、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のアルカリ金属の塩、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化インジウム等の金属酸化物が挙げられる。有機化合物としては、バソクプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、フラーレン化合物、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の周期表第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。
電子取り出し層102の形成方法に特に制限はない。昇華性を有する化合物を材料として用いる場合は、真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。また、溶媒に可溶な化合物を材料として用いる場合は、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法により形成することができる。なお、溶媒としては、活性層103の形成方法の説明において挙げた溶媒を用いることができる。湿式成膜法を用いる場合の、電子取り出し層102の材料を含有する塗布液の塗布方法としては、任意の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法及びカーテンコート法が挙げられる。また、塗布法として1種の方法のみを用いてもよいし、2種以上の方法を組み合わせて用いることもできる。
電子取り出し層102の全体の膜厚に特に限定はないが、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。一方、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは700nm以下、より好ましくは400nm以下、特に好ましくは200nm以下である。電子取り出し層102の膜厚が上記の範囲内にあることで、均一な塗布が容易となり、電子取り出し機能もよく発揮されうる。
(正孔取り出し層)
正孔取り出し層104の材料に特に限定は無く、活性層103からアノード106への正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物が挙げられる。また、有機化合物としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及びヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー(例えば、PEDOT:PSS又はドーピングされたP3HT)、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、ナフィオン、又はリチウムドーピングされたspiro−OMeTADが挙げられる。
正孔取り出し層104の全体の膜厚に特に限定はないが、好ましくは0.5nm以上である。一方、好ましくは400nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。正孔取り出し層104の膜厚が0.5nm以上であることでバッファ材料としての機能をよく果たすことになり、正孔取り出し層104の膜厚が400nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上しうる。
正孔取り出し層104の形成方法に制限はない。昇華性を有する化合物を用いる場合は真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。また、溶媒に可溶な化合物を用いる場合は、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法により形成することができる。なお、溶媒としては、活性層103の形成方法の説明において挙げた溶媒を用いることができる。
<6−3.電極(101,106)>
電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。したがって、一対の電極としては、正孔の捕集に適したアノード106と、電子の捕集に適したカソード101とを用いることが好ましい。一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、より多くの光が透明電極を透過して活性層103に到達するために好ましい。光の透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U−4100)で測定できる。
カソード101及びアノード106の構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の部材及びその製造方法を使用することができる。
<6−4.基材(107)>
光電変換素子100は、通常は支持体となる基材107を有する。もっとも、本発明に係る光電変換素子は基材107を有さなくてもよい。基材107の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されず、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の材料を使用することができる。
<6−5.光電変換素子の作製方法>
上述の方法に従って、光電変換素子100を構成する各層を形成することにより、光電変換素子100を作製することができる。光電変換素子100を構成する各層の形成方法に特段の制限はなく、シートツゥーシート(万葉)方式、又はロールツゥーロール方式で形成することができる。
なお、ロールツゥーロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロールツゥーロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、ロールツゥーロール方式はシートツゥーシート方式に比べて量産化に適している。一方、ロールツゥーロール方式で各層を成膜しようとすると、その構造上、成膜面とロールとが接触することにより膜に傷がついたり、部分的に剥がれてしまったりする場合がある。
ロールツゥーロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロールツゥーロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径の上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下である。一方、下限は好ましくは10cm以上、さらに好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径の上限は、好ましくは4m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下である。一方、下限は好ましくは1cm以上、さらに好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは各工程で成膜される層が曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅の下限は、好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上である。一方、上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは光電変換素子100の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
また、カソード101又はアノード106を積層した後に、光電変換素子100を好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上、一方、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことにより、光電変換素子100の各層間の密着性、例えば電子取り出し層102とカソード101、電子取り出し層102と活性層103等の層間の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、光電変換素子100に含まれる有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内において異なる温度を用いた段階的な加熱を行ってもよい。
加熱時間としては、熱分解を抑えながら密着性を向上させるために、好ましくは1分以上、さらに好ましくは3分以上、一方、好ましくは180分以下、さらに好ましくは60分以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、構成材料の熱酸化を防ぐ上でも、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。加熱方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
<6−6.光電変換特性>
光電変換素子100の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子100にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cmで照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
光電変換素子100の光電変換効率は、特段の制限はないが、好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。また、光電変換素子100のフィルファクターは、特段の制限はないが、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
<7.太陽電池>
本発明に係る光電変換素子100は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。図4は本発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を模式的に表す断面図であり、図4には本発明の一実施形態に係る太陽電池である薄膜太陽電池が示されている。図4に表すように、本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10と、をこの順に備える。本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、太陽電池素子6として、本発明に係る光電変換素子を有している。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図4中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、薄膜太陽電池14は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。
薄膜太陽電池を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、一実施形態に係る太陽電池は、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池として用いることができる。
本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14はそのまま用いてもよいし、太陽電池モジュールの構成要素として用いられてもよい。例えば、図5に示すように、本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14を基材12上に備える太陽電池モジュール13を作製し、この太陽電池モジュール13を使用場所に設置して用いることができる。基材12としては周知技術を用いることができ、例えば、基材12の材料としては国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等に記載の材料を用いることができる。例えば、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けることにより、太陽電池モジュール13として、建物の外壁用太陽電池パネルを作製することができる。
以下に、実施例により本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例には限定されない。
[合成例1−1]
<フラーレン化合物(S1)及び(P1)の合成>
Figure 2016210750
フラーレン化合物である1,4−ビス(トリメチルシリルメチル)[60]フラーレン(S1)は、特開2009−206470号公報の記載を参考にして合成した。
耐熱ガラス管に1,4−ビス(トリメチルシリルメチル)[60]フラーレン(S1)(210mg,0.235mmol)を入れ、減圧下、電気炉にて350℃で30分間加熱した。放冷後、ゲル濾過クロマトグラフィー(トルエン)で精製し、減圧乾燥することにより、目的とするフラーレン化合物である2’,2’−ジメチル−2’−シラプロパノ[60]フラーレン(P1)を、黒茶色固体として得た。
[合成例1−2]
<フラーレン化合物(S2)及び(P2)の合成>
Figure 2016210750
フラーレン化合物である1,4−ビス(ジメチルフェニルシリルメチル)[60]フラーレン(S2)は、特開2009−206470号公報の記載を参考にして合成した。
耐熱ガラス管に1,4−ビス(ジメチルフェニルシリルメチル)[60]フラーレン(S2)(144mg,0.141mmol)を入れ、減圧下、電気炉にて350℃で30分間加熱した。放冷後、ゲル濾過クロマトグラフィー(トルエン)で精製し、減圧乾燥することにより、目的とするフラーレン化合物である2’−メチル−2’−フェニル−2’−シラプロパノ[60]フラーレン(P2)を、黒茶色固体として得た。
[合成例2]
<ポルフィリン化合物(CP)の合成>
テトラキス(ビシクロ[2.2.2]オクタジエン)ポルフィリン(CP)は、特開2003−304014号公報の記載を参考にして合成した。
[合成例3]
<ホスフィンオキシド化合物(POPy)の合成>
ホスフィンオキシド化合物であるフェニルジピレニルホスフィンオキシド(POPy)は、国際公開第2011/016430号の記載を参考にして合成した。
[実施例1−1]
図4に示す構造を有する光電変換素子を以下の方法で作製した。下部電極として用いられるインジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜(145nm)を堆積したガラス基板を、界面活性剤による超音波洗浄、超純水による水洗、及び超純水による超音波洗浄の順で洗浄した後に、窒素ブローで乾燥させ、紫外線オゾン洗浄を行った。
次に、下部電極上に、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOUS(TM) PVP AI4083」)をスピンコートした後、大気雰囲気下で、120℃、10分間加熱乾燥した。その後、窒素雰囲気下で180℃、3分間の加熱処理を施した。こうして、正孔取り出し層を形成した。
次に、合成例2で得られたビシクロポルフィリン化合物(CP)を、クロロベンゼンとクロロホルムの混合溶媒(質量比で2:1)に0.5質量%となるように溶かした溶液を、正孔取り出し層上にスピンコートした(回転数1500rpm)。塗布後、ホットプレート上、180℃で20分間加熱処理を行った。この加熱処理により、褐色のビシクロポルフィリン化合物(CP)膜は、緑色のテトラベンゾポルフィリン(BP)膜へと熱転換された。こうして、25nmの平均膜厚を有する結晶性のp層が得られた。
Figure 2016210750
引き続き、合成例2で得られたビシクロポルフィリン化合物(CP)と、化合物(TCTA)(4,4’,4’’−トリ−9−カルバゾリルトリフェニルアミン,Lumtec社製)とを、それぞれ0.6質量%と1.4質量%となるように、クロロベンゼンとクロロホルムの混合溶媒(質量比1:1)に溶かした溶液を、p層の上にスピンコートした(回転数1500rpm)。塗布後、190℃で20分間加熱処理を行い、ビシクロポルフィリン化合物(CP)をテトラベンゾポルフィリン(BP)へと熱転換した。
上記加熱処理後、テトラベンゾポルフィリン(BP)と化合物(TCTA)とを含む膜の上に、合成例1−1で得られたフラーレン化合物(P1)のトルエン溶液(0.6質量%)をスピンコートした(0.3mL,回転数1500rpm)。こうして、化合物(TCTA)がフラーレン化合物(P1)で置換されることにより、テトラベンゾポルフィリン(BP)と化合物(TCTA)とを含む膜が、テトラベンゾポルフィリン(BP)とフラーレン化合物(P1)とを含むi層へと変換された。また、i層上には、フラーレン化合物(P1)を含むn層が形成された。
次に、p層、i層、及びn層で構成される活性層上に、電子取り出し層として、膜厚7nmのホスフィンオキシド化合物(POPy)層を抵抗加熱型真空蒸着法により形成した。
さらに、上部電極として用いられる膜厚100nmのアルミニウム層を、抵抗加熱型真空蒸着法により電子取り出し層上に形成した。こうして、光電変換素子を作製した。
こうして得られた素子をグローブボックス中に取り出した後、上部電極側に配置された背面ガラス板とガラス基板とを光硬化樹脂により貼り合わせることにより、素子を封止した。以上のようにして、4mmx4mmのサイズの受光面積部分を有する光電変換素子が得られた。
[実施例1−2]
i層及びn層を形成する際に、フラーレン化合物(P1)の代わりに合成例1−2で得られたフラーレン化合物(P2)を用いたことを除き、実施例1−1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例1−3]
電子取り出し層の材料としてホスフィンオキシド化合物(POPy)の代わりにフェナントロリン化合物(NBPhen,2,9−ビス(2−ナフチル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン,Lumtec社製)を用いたことを除き、実施例1−2と同様に光電変換素子を作製した。
[比較例1−1]
i層及びn層を形成する際に、フラーレン化合物(P1)の代わりに合成例1−1で得られたフラーレン化合物(S1)を用いたことを除き、実施例1−1と同様に光電変換素子を作製した。
[比較例1−2]
i層及びn層を形成する際に、フラーレン化合物(P2)の代わりに合成例1−2で得られたフラーレン化合物(S2)を用いたことを除き、実施例1−2と同様に光電変換素子を作製した。
[比較例1−3]
i層及びn層を形成する際に、フラーレン化合物(P2)の代わりに下記のフラーレン化合物(C60インデンモノ付加体,ICMA)(S3)を用いたことを除き、実施例1−2と同様に光電変換素子を作製した。
Figure 2016210750
実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−3により得られた光電変換素子のそれぞれについて、4mm角のメタルマスクを付け、エアマス(AM)1.5、放射照度100mW/cmのソーラシミュレータを用い、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)により電流電圧特性を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2016210750
表1に示すように、本発明に係るフラーレン化合物を活性層材料として用いた実施例においては、比較例よりも高い光電変換効率が得られた。
[実施例2−1]
溶液中の濃度がそれぞれ4.8mol/Lとなるように、ヨウ化鉛(II)及びヨウ化メチルアンモニウムを、ジメチルスルホキシドとγ−ブチロラクトンとの混合溶媒(体積比7:3)に溶解させた。得られた溶液を、窒素雰囲気下において、60℃で12時間、スターラーにより攪拌混合した。その後、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで溶液を濾過し、ペロブスカイト半導体塗布液を作製した。
下部電極として用いられるインジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜を堆積したガラス基板を、界面活性剤による超音波洗浄、超純水による水洗、及び超純水による超音波洗浄の順で洗浄した後に、窒素ブローで乾燥させ、紫外線オゾン洗浄を行った。
次に、下部電極上に、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOUSTM PVP AI4083」)をスピンコートした後、大気雰囲気下で、105℃、30分間加熱乾燥した。その後、窒素雰囲気下で105℃、15分間の加熱処理を施した。こうして、正孔取り出し層を形成した。
次に、窒素雰囲気下において、上記の通り作製したペロブスカイト半導体塗布液をスピンコートにより正孔取り出し層上に塗布し、窒素雰囲気下において、105℃、20分間の加熱処理を行うことにより、活性層としてペロブスカイト半導体層を形成した。
その後、合成例1−1で得られたフラーレン化合物(P1)を溶解したクロロベンゼン溶液(20mg/mL)をスピンコートにより活性層上に塗布した。さらに、膜厚が20nmのC60層と、膜厚が8nmのバソクプロイン(BCP)層と、を抵抗加熱型真空蒸着法により順次形成した。こうして、3層構造を有する電子取り出し層を形成した。
さらに、上部電極として用いられる膜厚が120nmのアルミニウム層を、抵抗加熱型真空蒸着法により電子取り出し層上に形成し、2mm角の光電変換素子を作製した。
[実施例2−2]
フラーレン化合物(P1)の代わりに、合成例1−2で作製したフラーレン化合物(P2)を用いたことを除き、実施例2−1と同様の方法により光電変換素子を作製した。
[実施例2−3]
電子取り出し層を形成する際に用いたフラーレン化合物(P2)溶液を、クロロベンゼンの代わりにトルエンを用いて調製したことを除き、実施例2−2と同様の方法により光電変換素子を作製した。
[比較例2−1]
フラーレン化合物(P1)の代わりにフラーレン化合物(S1)を用いたことを除き、実施例2−1と同様の方法により光電変換素子を作製した。
[比較例2−2]
フラーレン化合物(P2)の代わりにフラーレン化合物(S2)を用いたことを除き、実施例2−2と同様の方法により光電変換素子を作製した。
[比較例2−3]
フラーレン化合物(P2)の代わりにフラーレン化合物(S2)を用いたことを除き、実施例2−3と同様の方法により光電変換素子を作製した。
実施例2−1〜2−3及び比較例2−1〜2−3により得られた光電変換素子のそれぞれについて、1mm角のメタルマスクを付け、エアマス(AM)1.5、放射照度100mW/cmのソーラシミュレータを用い、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)により電流電圧特性を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 2016210750
表2に示すように、本発明に係るフラーレン化合物を電子取り出し層材料として用いた実施例においては、比較例よりも高い光電変換効率が得られた。
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
31 基材
32 陽極
33 正孔注入層
34 正孔輸送層
35 発光層
36 電子輸送層
37 電子注入層
38 陰極
39 電界発光素子
51 半導体層
52 絶縁体層
53,54 ソース電極及びドレイン電極
55 ゲート電極
56 基材
100 光電変換素子
101 カソード
102 電子取り出し層
103 活性層
104 正孔取り出し層
106 アノード
107 基材

Claims (9)

  1. 下記式(I)で表される構造を有するフラーレン化合物。
    Figure 2016210750
    (式(I)中、Cはフラーレン環を構成する炭素原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基を表し、R〜Rは互いに結合して環を形成していてもよく、a及びbはそれぞれ1以上の整数を表す。)
  2. 前記式(I)で表わされる構造を1以上5以下有する、請求項1に記載のフラーレン化合物。
  3. 前記式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアリールオキシ基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフラーレン化合物。
  4. 前記式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のフラーレン化合物。
  5. aとbとの和が2以上3以下であることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載のフラーレン化合物。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載のフラーレン化合物を含有する半導体デバイス。
  7. 光電変換素子、電界効果トランジスタ又は電界発光素子であることを特徴とする請求項6に記載の半導体デバイス。
  8. 光電変換素子である請求項7に記載の半導体デバイスを備える太陽電池。
  9. 請求項8に記載の太陽電池を備える太陽電池モジュール。
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