JP2016205984A - 磁気計測装置、磁気計測装置の製造方法、ガスセル、およびガスセルの製造方法 - Google Patents

磁気計測装置、磁気計測装置の製造方法、ガスセル、およびガスセルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】小型かつ長寿命で安定的に製造することができるガスセルおよびガスセルを備えた磁気計測装置、ガスセルおよび磁気計測装置の製造方法を提供する。【解決手段】磁気計測装置100は、セル部12を構成する壁11と、壁11の一部に開口された開口部18と、開口部18を封止する封止材30と、セル部12の内側で封止材30を覆うコーティング層32と、セル部12に封入されたアルカリ金属ガス13と、を備えたことを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、磁気計測装置、磁気計測装置の製造方法、ガスセル、およびガスセルの製造方法に関する。
アルカリ金属ガスが封入されたガスセルに直線偏光を照射し、偏光面の回転角に応じて磁場を測定する光ポンピング式の磁気計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、アルカリ金属が封入されたアンプルをセル内に収容してセルを封止し、アンプルにレーザー光を照射することによりアンプルのガラス管に貫通孔を形成し、アンプル内のアルカリ金属を蒸発させて、その蒸気(ガス)をセル内部に充満させたガスセルの構成が開示されている。
特許文献1の記載によれば、セルはガラスからなるパッケージ(容器)およびリッド(蓋部)を低融点ガラスなどの封止材を用いて接合して形成される。セルの内壁には、非緩和特性を高めるため、鎖式飽和炭化水素(パラフィンなど)からなるコーティング材を流路からセル内に流し込むことによりコーティング層が形成される。そして、アルカリ金属の蒸気(ガス)をセル内に拡散させた後、コーティング材の流路が低融点ガラスなどの封止材で封止される。
特開2012−183290号公報
ところで、アルカリ金属は反応性が高く、低融点ガラスは一般的に耐薬品性が低い。そのため、ガスセル内にアルカリ金属のガスを充満させると、アルカリ金属と低融点ガラスとが化学反応を起こす場合がある。アルカリ金属と低融点ガラスとが化学反応を起こすと、アルカリ金属の化学変化によりガスセル内のアルカリ金属のガスが減少するとともに、封止材(低融点ガラス)の化学変化に伴う封止の劣化によりアルカリ金属のガスがガスセル外へ漏出する。その結果、ガスセルおよび磁気計測装置の製造歩留まりの低下を招くおそれや、ガスセルの寿命の低下により磁気計測装置の感度を長期間維持することができなくなってしまうおそれがあるという課題がある。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る磁気計測装置は、閉容器を構成する壁と、前記壁の一部に開口された第1孔と、前記第1孔を封止する封止材と、前記閉容器の内側で前記封止材を覆う鎖式飽和炭化水素と、前記閉容器に封入されたアルカリ金属ガスと、を備えたことを特徴とする。
本適用例の構成によれば、磁気計測装置において、閉容器を構成する壁の一部に開口された第1孔は封止材で封止され、閉容器の内側で封止材が鎖式飽和炭化水素で覆われている。そのため、閉容器に封入されたアルカリ金属ガスと封止材とが接触しないので、反応性が高いアルカリ金属と封止材との化学反応を抑止できる。これにより、アルカリ金属の化学変化によるアルカリ金属ガスの減少や、封止材の化学変化に伴う封止の劣化によるアルカリ金属ガスの漏出が抑えられるので、磁気計測装置の感度を長期間維持することができる。
[適用例2]上記適用例に係る磁気計測装置であって、前記第1孔を覆う蓋をさらに備え、前記封止材は、前記蓋と前記壁との間に前記第1孔を囲むように配置されていることが好ましい。
本適用例の構成によれば、第1孔が蓋で塞がれ、蓋と閉容器の壁とが封止材を介して固定されるので、封止材のみで第1孔を封止する場合よりも閉容器をより強固に封止できる。また、封止材が蓋と壁との間、すなわち、閉容器の外部に第1孔を囲むように配置されるので、封止材のみで第1孔を封止する場合よりも封止材とアルカリ金属ガスとの距離をより長くすることが可能となる。これにより、アルカリ金属と封止材との化学反応をより効果的に抑止することができる。
[適用例3]上記適用例に係る磁気計測装置であって、前記閉容器は、第1室と、前記第1室と第2孔を介してつながる第2室と、を備え、前記第1孔は、前記第2室の前記壁に形成されていることが好ましい。
本適用例の構成によれば、閉容器は第2孔を介してつながる第1室と第2室とを備え、第1孔は第2室の壁に形成されている。そのため、閉容器を加熱し鎖式飽和炭化水素を気体にして第1室と第2室との内側に析出させる際に、第2室側の温度が第1室側の温度よりも低くなるようにすれば、第1孔が設けられた第2室側に析出する鎖式飽和炭化水素の量を第1室側よりも多くできる。これにより、第1孔を封止する封止材を覆う鎖式飽和炭化水素の量をより多くできるので、アルカリ金属と封止材との化学反応をより確実に抑止することができる。
[適用例4]上記適用例に係る磁気計測装置であって、前記第1孔は、前記第2室の前記第1室とは反対側に位置する前記壁に形成されていることが好ましい。
本適用例の構成によれば、第1孔は、第2室の第1室とは反対側、すなわち、第2室を構成する壁のうち第1室から離れた位置にある壁に形成されている。そのため、第2室側の温度が第1室側の温度よりも低くなるようにすれば、第1孔が設けられた位置に析出する鎖式飽和炭化水素の量を第1室側よりもさらに多くできる。
[適用例5]本適用例に係る磁気計測装置の製造方法は、壁で構成され、前記壁の一部に開口された第1孔を有し、アルカリ金属原子材料が密封されたアンプルと鎖式飽和炭化水素とが配置された容器を形成する形成工程と、封止材を用いて前記第1孔を封止する封止工程と、前記封止材で密閉された前記容器を第1温度にする加熱工程と、前記封止材で密閉された前記容器を前記第1温度よりも低い第2温度にする冷却工程と、を含むことを特徴とする。
本適用例の製造方法によれば、形成工程で壁で構成され鎖式飽和炭化水素が配置された容器を形成し、封止工程で封止材を用いて壁の一部に開口された第1孔を封止して容器を密閉する。その後、密閉した容器を加熱工程で第1温度に加熱するので、容器内で鎖式飽和炭化水素を気化させることが可能となる。そして、冷却工程で容器を第1温度よりも低い第2温度に冷却するので、容器内で気化した鎖式飽和炭化水素を析出させて封止材を覆い、封止材を保護することができる。そのため、封止材の化学変化などに伴う封止の劣化が抑えられるので、感度を長期間維持することが可能な磁気計測装置を製造することができる。
[適用例6]上記適用例に係る磁気計測装置の製造方法であって、前記冷却工程の後に前記アンプルを破壊する工程をさらに含んでいることが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、冷却工程の後にアンプルを破壊するため、アンプル内のアルカリ金属原子材料が容器内に放出されてガス化し、容器内にアルカリ金属ガスが充填される。ここで、封止材は、鎖式飽和炭化水素で覆われているため、アルカリ金属ガスと接触しないので、反応性が高いアルカリ金属と封止材との化学反応を抑止できる。これにより、アルカリ金属の化学変化によるアルカリ金属ガスの減少や、封止材の化学変化に伴う封止の劣化によるアルカリ金属ガスの漏出が抑えられるので、感度を長期間維持することが可能な磁気計測装置を安定的に製造することができる。
[適用例7]上記適用例に係る磁気計測装置の製造方法であって、前記第1温度は、前記鎖式飽和炭化水素の融点よりも高く、前記第2温度は前記鎖式飽和炭化水素の融点よりも低いことが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、加熱工程で鎖式飽和炭化水素の融点よりも高い第1温度に加熱するので、容器内で鎖式飽和炭化水素を気化させることができる。そして、冷却工程で鎖式飽和炭化水素の融点よりも低い第2温度に冷却するので、気化した鎖式飽和炭化水素を封止材の表面に析出させて封止材を覆うことができる。
[適用例8]上記適用例に係る磁気計測装置の製造方法であって、前記冷却工程では、前記容器における前記第1孔が位置する部位の温度がその他の部位の温度よりも低い期間があることが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、冷却工程で第1孔が位置する部位の温度がその他の部位の温度よりも低い期間があるので、第1孔の周辺ではその他の部位よりも鎖式飽和炭化水素が析出し易くなる。そのため、封止材で封止された第1孔の周辺を覆う鎖式飽和炭化水素の膜厚を、その他の部位を覆う鎖式飽和炭化水素の膜厚よりも厚くすることが可能となる。これにより、アルカリ金属と封止材との化学反応を効果的に抑止することができる。
[適用例9]上記適用例に係る磁気計測装置の製造方法であって、前記冷却工程では、前記容器における前記第1孔が位置する部位はその他の部位よりも先に前記第2温度に達することが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、冷却工程で第1孔が位置する部位がその他の部位よりも先に第2温度に達するので、第1孔の周辺ではその他の部位よりも早く鎖式飽和炭化水素の析出が始まる。そのため、封止材で封止された第1孔の周辺において、その他の部位よりも析出する鎖式飽和炭化水素の量を多くして膜厚を厚くすることができる。
[適用例10]上記適用例に係る磁気計測装置の製造方法であって、前記容器は、前記壁で構成され、前記壁の一部に開口された前記第1孔を有する閉容器であり、前記形成工程は、前記第1孔から前記容器内に前記アンプルと前記鎖式飽和炭化水素とを配置する工程と、前記第1孔を介して、前記容器内から排気する工程と、を含むことが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、形成工程では、壁の一部に開口された第1孔から容器内にアンプルと鎖式飽和炭化水素とを配置し、第1孔を介して容器内から排気する。その後、封止工程で封止材を用いて第1孔を封止するので、アンプルと鎖式飽和炭化水素とが封入された状態で容器を密封できる。
[適用例11]上記適用例に係る磁気計測装置の製造方法であって、前記容器は、前記壁で構成され前記第1孔を有する凹状の容器本体と、前記容器本体の上方側に配置される上蓋と、を含み、前記形成工程は、前記容器本体内に前記アンプルと前記鎖式飽和炭化水素とを配置する工程と、前記容器本体の上方側に前記上蓋を固定して前記容器を閉容器とする工程と、前記第1孔を介して、前記容器内から排気する工程と、を含むことが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、形成工程では、凹状の容器本体内にアンプルと鎖式飽和炭化水素とを配置し、容器本体の上方側に上蓋を固定して閉容器とし、第1孔を介して容器内から排気する。その後、封止工程で封止材を用いて第1孔を封止するので、アンプルと鎖式飽和炭化水素とが封入された状態で容器を密封できる。
[適用例12]本適用例に係るガスセルは、閉容器を構成する壁と、前記壁の一部に開口された第1孔と、前記第1孔を封止する封止材と、前記閉容器の内側で前記封止材を覆う鎖式飽和炭化水素と、前記閉容器に封入されたアルカリ金属ガスと、を備えたことを特徴とする。
本適用例の構成によれば、閉容器を構成する壁の一部に開口された第1孔は封止材で封止され、閉容器の内側で封止材が鎖式飽和炭化水素で覆われている。そのため、封止材がアルカリ金属ガスと接触しないので、反応性が高いアルカリ金属ガスと封止材との化学反応を抑止できる。これにより、アルカリ金属の化学変化によるアルカリ金属ガスの減少や、封止材の化学変化に伴う封止の劣化によるアルカリ金属ガスの漏出が抑えられるので、ガスセルの寿命を向上させることができる。この結果、ガスセルを備えた磁気計測装置の感度を長期間維持することができる。
[適用例13]本適用例に係るガスセルの製造方法は、壁で構成され、前記壁の一部に開口された第1孔を有し、アルカリ金属原子材料が密封されたアンプルと鎖式飽和炭化水素とが配置された容器を形成する形成工程と、封止材を用いて前記第1孔を封止する封止工程と、前記封止材で密閉された前記容器を第1温度にする加熱工程と、前記封止材で密閉された前記容器を前記第1温度よりも低い第2温度にする冷却工程と、を含むことを特徴とする。
本適用例の製造方法によれば、壁で構成され鎖式飽和炭化水素が配置された容器を形成し、封止材を用いて壁の一部に開口された第1孔を封止して容器を密閉した後、加熱工程で容器を第1温度に加熱するので、容器内で鎖式飽和炭化水素を気化させることができる。そして、冷却工程で容器を第1温度よりも低い第2温度に冷却するので、気化した鎖式飽和炭化水素を析出させて封止材を覆うことができる。これにより、アルカリ金属と封止材との化学反応を抑止できるので、長寿命のガスセルを安定的に製造することができる。
第1の実施形態に係る磁気計測装置の構成を示すブロック図。 第1の実施形態に係るガスセルおよびアンプルの構成を示す概略断面図。 第1の実施形態に係るガスセルの開口部の周辺の構成を示す概略図。 第1の実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 第1の実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 第1の実施形態に係る加熱工程および冷却工程を説明する図。 第1の実施形態に係る冷却工程における温度変化の一例を示す図。 第2の実施形態に係る加熱工程および冷却工程を説明する図。 第2の実施形態に係る冷却工程における温度変化の一例を示す図。 第3の実施形態に係る形成工程を説明する図。 第4の実施形態に係る形成工程を説明する図。 変形例1に係るガスセルの構成を示す概略断面図。 変形例2に係る原子発振器の構成を示す概略図。 変形例2に係る原子発振器の動作を説明する図。 比較例としてのガスセルの蓋部の構成を示す概略図。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大、縮小、あるいは誇張して表示している。また、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
(第1の実施形態)
<磁気計測装置の構成>
第1の実施形態に係る磁気計測装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る磁気計測装置の構成を示すブロック図である。第1の実施形態に係る磁気計測装置100は、非線形光学回転(Nonlinear Magneto-Optical Rotation:NMOR)を用いた磁気計測装置である。磁気計測装置100は、例えば、心臓からの磁場(心磁)や脳からの磁場(脳磁)などの生体から発生される微小な磁場を測定する生体状態測定装置(心磁計または脳磁計など)に用いられる。磁気計測装置100は、金属探知機などにも用いることができる。
図1に示すように、磁気計測装置100は、光源1と、光ファイバー2と、コネクター3と、偏光板4と、ガスセル10と、偏光分離器5と、光検出器(Photo Detector:PD)6と、光検出器7と、信号処理回路8と、表示装置9とを備えている。ガスセル10内には、アルカリ金属ガス(気体の状態のアルカリ金属)が封入されている。アルカリ金属としては、例えば、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)などを用いることができる。以下では、アルカリ金属としてセシウムを用いる場合を例に取り説明する。
光源1は、セシウムの吸収線に応じた波長(例えばD1線に相当する894nm)のレーザービームを出力する装置、例えばチューナブルレーザーである。光源1から出力されるレーザービームは、連続的に一定の光量を有する、いわゆるCW(Continuous Wave)光である。
偏光板4は、レーザービームを特定方向に偏光させ、直線偏光にする素子である。光ファイバー2は、光源1により出力されたレーザービームを、ガスセル10側に導く部材である。光ファイバー2には、例えば、基本モードのみを伝播するシングルモードの光ファイバーが用いられる。コネクター3は、光ファイバー2を偏光板4に接続するための部材である。コネクター3は、ねじ込み式で、光ファイバー2を偏光板4に接続する。
ガスセル10は、内部に空隙を有する箱(セル)であり、この空隙にはアルカリ金属(この例ではセシウム)のガスが封入されている。ガスセル10の構成については、後述する。
偏光分離器5は、入射したレーザービームを、互いに直交する2つの偏光成分のビームに分離する素子である。偏光分離器5は、例えば、ウォラストンプリズムまたは偏光ビームスプリッターである。光検出器6および光検出器7は、レーザービームの波長に感度を有する検出器であり、入射光の光量に応じた電流を信号処理回路8に出力する。光検出器6および光検出器7は、それ自体が磁場を発生すると測定に影響を与える可能性があるので、非磁性の材料で構成されることが望ましい。光検出器6および光検出器7は、ガスセル10からみて偏光分離器5と同じ側(下流側)に配置される。
磁気計測装置100における各部の配置を、レーザービームの経路に沿って説明すると、レーザービームの経路の最上流には光源1が位置し、以下、上流側から、光ファイバー2、コネクター3、偏光板4、ガスセル10、偏光分離器5、および光検出器6,7の順で配置されている。
磁気計測装置100における各部の動作を、レーザービームの進行に沿って説明する。光源1から出力されたレーザービームは、光ファイバー2に導かれて偏光板4に到達する。偏光板4に到達したレーザービームは、偏光度がより高い直線偏光になる。ガスセル10を透過しているレーザービームは、ガスセル10に封入されているアルカリ金属原子を励起(光ポンピング)する。このとき、レーザービームは、磁場の強さに応じた偏光面回転作用を受けて偏光面が回転する。ガスセル10を透過したレーザービームは偏光分離器5により2つの偏光成分のビームに分離される。2つの偏光成分のビームの光量は、光検出器6および光検出器7で計測(プロービング)される。
信号処理回路8は、光検出器6および光検出器7により計測されたビームの光量を示す信号をそれぞれから受け取る。信号処理回路8は、受け取った各信号に基づいて、レーザービームの偏光面の回転角を計測する。偏光面の回転角は、レーザービームの伝播方向の磁場の強さに基づく関数で表される(例えば、D.バドカー、外5名,「原子の共鳴非線形磁気光学回転効果」,レビュー・オブ・モダン・フィジクス誌,米国,米国物理学会,2002年10月,第74巻,第4号,p.1153−1201の数式(2)を参照。数式(2)は線形光学回転に関するものであるが、NMORの場合もほぼ同様の式を用いることができる)。信号処理回路8は、偏光面の回転角からレーザービームの伝播方向における磁場の強さを測定する。表示装置9は、信号処理回路8により測定された磁場の強さを表示する。
続いて、第1の実施形態に係るガスセルとガスセルに用いられるアンプルとについて、図2を参照して説明する。図2は、第1の実施形態に係るガスセルおよびアンプルの構成を示す概略断面図である。詳しくは、図2(a)はガスセルの概略断面図であり、図2(b)はアンプルの概略断面図であり、図2(c)は図2(b)のB−B’線に沿った概略断面図である。
<ガスセルの構成>
図2(a)に、第1の実施形態に係るガスセル10の概略断面を示す。図2(a)において、ガスセル10の高さ方向をZ軸とし、上方側を+Z方向とする。Z軸と交差する方向であって、ガスセル10の長さ方向をX軸とし、図2(a)における右側を+X方向とする。そして、Z軸およびX軸と交差する方向であって、ガスセル10の幅方向をY軸とし、図2(a)の紙面における手前から奥へ向う側を+Y方向とする。
図2(a)に示すように、第1の実施形態に係るガスセル10は、閉容器としてのセル部12と蓋部19とで構成される。セル部12は、石英ガラスにより形成された複数の壁11で構成され、内部に空隙を有する箱(セル)である。蓋部19は、石英ガラスにより板状に形成されている。このように、セル部12と蓋部19とは同じ材料にて構成されることが好ましい。セル部12と蓋部19との間には、後述する封止材30が配置されている。セル部12と蓋部19とが同じ材料であると、両者の熱膨張係数も当然同じとなるので、セル部12と蓋部19との熱膨張係数の相違に起因する封止材30の割れを抑制できるからである。
セル部12を構成する各壁11の厚さは、例えば、1.5mm程度である。セル部12は、内部の空隙として、第1室としての主室14と、第2室としてのリザーバー16とを有している。主室14とリザーバー16とは、第2孔としての連通孔15を介して連通している。連通孔15の内径は、例えば、0.4mm〜1mm程度である。
セル部12(主室14およびリザーバー16)を構成する各壁11の内面には、非緩和特性を高めるためのコーティング層32が形成されている。コーティング層32は、主室14およびリザーバー16の壁11の内面と、蓋部19の内面とを覆っている。コーティング層32は、パラフィンなどの鎖式飽和炭化水素で形成されている。パラフィンの一例として、例えば、化学式(CH3(CH248CH3)で示されるペンタコンタンを用いることができる。
セル部12のリザーバー16の壁11の一部には、第1孔としての開口部18が設けられている。開口部18は、リザーバー16における主室14とは反対側の先端部に設けられている。換言すれば、開口部18は、X軸方向において、主室14から最も離れた位置に設けられている。開口部18は、蓋部19で覆われている。
開口部18が設けられたセル部12の壁11の外面と蓋部19との間には、封止材30が配置されている。開口部18は封止材30を介して蓋部19により封止されており、これにより、セル部12が密封されている。封止材30の材料としては、例えば、低融点ガラスフリットが用いられる。蓋部19の周辺(図2(a)に示すA部)の構成については後で詳述する。
また、本実施形態のように開口部18を蓋部19と封止材30とで封止する方法は、開口部18を封止材30単独で埋め込んで封止する方法(後述する変形例1)に比べて、封止材30を薄くできるので、封止材30の熱膨張係数がセル部12や蓋部19の熱膨張係数と相違することに起因する封止材30の割れを抑制できる。
さらに、本実施形態のように蓋部19を有する構成では、封止材30が蓋部19と開口部18周辺(周囲)の壁11との間、すなわち、セル部12(リザーバー16)の外部に配置されるので、封止材30をアルカリ金属ガス13からより遠くに離間することが可能となる。また、封止材30の外側に蓋部19が配置されて開口部18が塞がれるので、セル部12をより強固に封止できる。したがって、本実施形態のように蓋部19を有する構成の方が、アルカリ金属と封止材30との化学反応をより確実に抑止できるので、ガスセル10の寿命をより向上させることができる。
セル部12の主室14およびリザーバー16内には、アルカリ金属ガス13が封入されている。セル部12の主室14およびリザーバー16内には、アルカリ金属ガス13の他に、希ガスなどの不活性ガスが存在していてもよい。リザーバー16には、アンプル20が配置されている。アルカリ金属ガス13は、アンプル20内のアルカリ金属固体24(図2(b)参照)が蒸発(ガス化)したものである。
<アンプルの構成>
図2(b)にアンプル20のX−Z断面を示す。図2(b)に示すように、アンプル20は、中空状のガラス管22で構成される。ガラス管22は、ホウ珪酸ガラスにより形成されている。
ガラス管22は、一方向(図2(b)ではX軸)に沿って延在しており、その両端部が溶着されている。これにより、内部が中空状のガラス管22は密封されている。なお、ガラス管22の両端部の形状は、図2(b)に示すような丸い形状に限定されず、平面に近い形状や一部が尖った形状などであってもよい。
ガラス管22の中空部には、アルカリ金属固体(粒状や粉末状のアルカリ金属原子材料)24が充填されている。アルカリ金属固体24としては、上述したように、セシウムの他に、ルビジウム、カリウム、ナトリウムを用いることができる。図2(b)は、アンプル20(ガラス管22)が密封された状態を示している。アルカリ金属は反応性が高いため、アンプル20が製造された段階では、内部にアルカリ金属固体24が充填され、ガラス管22が密封された状態となっている。
図2(a)に示すガスセル10が完成した段階では、ガスセル10内に配置されたアンプル20は、ガラス管22に貫通孔21が形成され密封が破られた状態となる。これにより、アンプル20内のアルカリ金属固体24が蒸発してガスセル10内に流出し、セル部12の主室14およびリザーバー16内がアルカリ金属ガス13で満たされる。なお、アンプル20内からアルカリ金属固体24が蒸発して流出し易くなるように、アンプル20の上面とセル部12の内面との間には、例えば1.5mm程度の隙間が設けられている。
図2(c)に、アンプル20のY−Z断面を示す。図2(c)に示すように、ガラス管22のY−Z断面形状は、例えば略円形であるが、他の形状であってもよい。ガラス管22の外径φは、0.2mm≦φ≦1.2mmである。ガラス管22の肉厚tは、0.1mm≦t≦0.5mmであり、概ね外径φの20%程度であることが好ましい。ガラス管22の肉厚tが0.1mm未満であるとガラス管22が破損し易くなり、ガラス管22の肉厚tが0.5mmを超えると、ガラス管22に貫通孔21を形成する深さ方向の加工が困難となる。
<開口部の周辺の構成>
続いて、開口部18の周辺の構成を説明する。図3は、第1の実施形態に係るガスセルの開口部の周辺の構成を示す概略図である。詳しくは、図3(a)は、図2(a)中のA部を拡大した断面図であり、図3(a)のD−D’線に沿った断面図に相当する。図3(b)は、図3(a)における側方(−X方向)から平面視した図である。図15は、比較例としてのガスセルの蓋部の構成を示す概略図である。
図3(a)に示すように、開口部18が設けられたセル部12(リザーバー16)の壁11の外面と蓋部19との間には、封止材30が配置されている。図3(b)に示すように、開口部18は、−X方向から見た平面視で略円形である。蓋部19は、平面視で略矩形である。封止材30は、開口部18を囲むように環状に配置されている。封止材30の内径は開口部18の外径よりも大きく、封止材30の外径は蓋部19の外形よりも小さい。環状に配置された封止材30の内側には、コーティング層32(コーティング材32a)が配置されている。
図3(a)に示すように、コーティング層32(コーティング材32a)は、セル部12(リザーバー16側)の壁11の内面から壁11の外面と蓋部19との間に入り込むように配置され、封止材30の内側の表面を覆っている(図3(a)にC部で示す)。コーティング層32は、上述したセル部12の非緩和特性を高める機能とともに、封止材30がアルカリ金属ガス13と接触しないようにして、反応性が高いアルカリ金属と封止材30との化学反応を抑止する機能を有している。
仮に、図15に比較例として示すガスセル60のように、コーティング層32がセル部12の壁11の内面のみに配置され、封止材30の内側の表面を覆っていない場合、アルカリ金属ガス13(アルカリ金属)と封止材30の材料(低融点ガラスフリット)とが接触するため、両者が化学反応を起こすおそれがある。
アルカリ金属ガス13(アルカリ金属)と、封止材30の材料とが化学反応を起こすと、アルカリ金属の化学変化によりセル部12内のアルカリ金属ガス13が減少するとともに、封止材30の化学変化に伴う封止の劣化によりアルカリ金属ガス13がセル部12外へ漏出する。その結果、ガスセル60およびガスセル60を備えた磁気計測装置100の製造歩留まりの低下を招くおそれや、ガスセル60の寿命の低下により磁気計測装置100の感度を長期間維持することができなくなってしまうおそれがある。
これに対して、第1の実施形態に係るガスセル10では、図3(a)に示すように、封止材30の内側の表面をコーティング層32で覆うことにより、セル部12の内部に封入されたアルカリ金属ガス13から封止材30を保護している。そのため、封止材30がアルカリ金属ガス13と接触しないので、アルカリ金属と封止材30との化学反応を抑止できる。これにより、アルカリ金属の化学変化によるアルカリ金属ガス13の減少や、封止材30の化学変化に伴う封止の劣化によるアルカリ金属ガス13の漏出が抑えられるので、ガスセル10を備えた磁気計測装置100の感度を長期間維持することができる。
図3(a)において、封止材30のX軸方向の厚さをT1とすると、3μm≦T1≦20μmであることが好ましく、T1=5μm〜6μmであることがより好ましい。封止材30の厚さT1が3μm以上であれば、セル部12の壁11の外面と蓋部19との間に、平面視で環状の形状の各部において略均一に配置できるので、セル部12と蓋部19とを良好に接着することができる。一方、封止材30の厚さT1が20μm以下であれば、温度変化に伴う石英ガラス(セル部12および蓋部19)と低融点ガラスフリット(封止材30)の熱膨張に差があっても、封止材30の破損(割れなど)が抑えられる。
図3(a)のC部におけるコーティング層32のX軸方向の厚さをT2とすると、厚さT2は、100μm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。コーティング層32の厚さT2を封止材30の厚さT1よりも厚い100μm以上とすることにより、封止材30の内側の表面をコーティング層32で確実に覆ってアルカリ金属ガス13から保護することができる。また、コーティング層32の厚さT2が厚いほど、アルカリ金属ガス13から封止材30までの距離を長くできるので、コーティング層32内でアルカリ金属ガス13の金属原子(セシウムなど)が封止材30側へ拡散することを効果的に抑制できる。
なお、セル部12(主室14およびリザーバー16)を構成する壁11の内面に配置されるコーティング層32の厚さは、例えば、100nm以下程度であればよい。したがって、第1の実施形態では、セル部12を構成する壁11の内面に配置されるコーティング層32の厚さに対して、図3(a)のC部に配置されるコーティング層32の厚さT2は格段に厚く設定されている。
<ガスセルの製造方法>
次に、第1の実施形態に係るガスセルの製造方法を図4〜図7を参照して説明する。第1の実施形態に係るガスセルの製造方法は、形成工程と、封止工程と、加熱工程と、冷却工程とを含む。図4および図5は、第1の実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図である。図6は、第1の実施形態に係る加熱工程および冷却工程を説明する図である。図7は、第1の実施形態に係る冷却工程における温度変化の一例を示す図である。
図4(a),(b),(c)に形成工程を示す。形成工程では、まず、図4(a)に示すセル部12を形成する。図示を省略するが、例えば、石英ガラスからなるガラス板を切断して、セル部12を構成する壁11に対応する複数のガラス板部材を準備する。そして、これらのガラス板部材を組立て、ガラス板部材同士を接着剤または溶着により接合して、主室14とリザーバー16とを有するセル部12を形成する。形成したセル部12におけるリザーバー16の主室14とは反対側の壁11の一部に開口部18を形成する。この段階では、開口部18は開放されている。
続いて、セル部12(主室14およびリザーバー16)を構成する各壁11の内面にコーティング層32を形成する。予めセル部12内の脱気を十分に行い、セル部12内およびセル部12の周囲の環境に不純物が極力少ない状態において、図4(b)に示すように、コーティング層32の材料であるコーティング材32a(鎖式飽和炭化水素)をセル部12内に配置する。コーティング材32aは、例えば、ニードルなどを用いて、開口部18からセル部12内の主室14およびリザーバー16に配置する。この他にも、セル部12内を真空とし、コーティング材32a(鎖式飽和炭化水素)を加熱して気相又は液相の状態で、開口部18を介してセル部12に導入してもよい。
そして、図4(c)に示すように、仮の蓋34で開口部18を塞ぎ、セル部12を内部に配置されたコーティング材32aとともに第1温度に加熱する。第1温度については、後の加熱工程で詳述する。加熱することにより、コーティング材32a(鎖式飽和炭化水素)が溶解し、セル部12(主室14およびリザーバー16)を構成する各壁11の内面に、コーティング材32a(鎖式飽和炭化水素)の膜であるコーティング層32が形成される。
続いて、図5(a)に示すように、内面にコーティング層32が形成されたセル部12のリザーバー16内にアンプル20を収納する。アンプル20は、セル部12のリザーバー16側に設けられた開口部18から挿入され、リザーバー16内に配置される。この段階では、アンプル20は、図2(b)に示すように、中空状のガラス管22の内部にアルカリ金属固体24が充填され密封された状態となっている。
なお、アンプル20は、真空に近い低圧環境下(理想的には真空中)において、管状のガラス管22の中空部にアルカリ金属固体24を充填し、ガラス管22の両端部をそれぞれ溶着し密封して形成する。アルカリ金属固体24として用いられるセシウムなどのアルカリ金属は、反応性に富み大気中で取り扱うことができないため、低圧環境下でアンプル20内に密封された状態でセル部12に収納される。
図5(b)は、封止工程を示す図である。図5(a)に示すセル部12内からの排気を十分に行い、主室14およびリザーバー16内に不純物が極めて少ない状態で、図5(b)に示すように、セル部12を封止する。例えば、真空に近い低圧環境下(理想的には真空中)または不活性気体中において、セル部12の開口部18を、封止材30(低融点ガラスフリット)を用いて蓋部19で封止する。これにより、内部にアンプル20が収納された状態で、セル部12が密封される。
続いて、封止材30を用いて蓋部19で密閉されたセル部12を加熱する加熱工程と、加熱工程の後、セル部12の温度を低下させる冷却工程とを行う。加熱工程は、コーティング層32の材料(鎖式飽和炭化水素)を再び溶解させて、セル部12の内面のコーティング層32の膜厚を均一にさせることを目的とする。そして、冷却工程は、コーティング層32をセル部12の内面に定着させるとともに、図3(a)に示すC部にコーティング層32の材料を析出させることを目的とする。
加熱工程および冷却工程では、図6に示すように、密封されたセル部12を、本体201と扉204とを有するオーブン200の室内202に配置する。セル部12は、主室14が室内202の奥側(図6の+X方向側)に位置し、リザーバー16が扉204側(図6の−X方向側)に位置するように配置する。
加熱工程では、セル部12が配置されたオーブン200の室内202を、コーティング層32の材料(鎖式飽和炭化水素)の融点以上、かつ、熱分解温度以下のできる限り高い第1温度まで加熱する。この第1温度が高い程、気相における単位体積当たりの鎖式飽和炭化水素の量が増えるため、後の冷却工程で第1温度よりも低い第2温度以下とした際に、開口部18の周辺に多量のコーティング層32の材料が析出するので好ましい。
酸素や水蒸気が微量な不活性雰囲気(例えば、窒素やアルゴン雰囲気)で、炭化水素は、一般には300℃程度の温度から熱分解を始める。具体的には、鎖式飽和炭化水素は、不活性雰囲気での加熱処理時間が数分であれば、400℃程度の温度からの熱分解が顕著になるが、350℃程度の温度であればほとんど熱分解は認められない。もちろん、350℃の温度であっても、加熱処理時間が長くなると熱分解が認められるようになる。
本実施形態では、セル部12にアルカリ金属気体単独、あるいは、アルカリ金属気体と不活性ガスとの混合気体が封入され、加熱処理時間は数分から数時間程度である。アルカリ金属気体はパラフィンと殆ど相互作用を行わないので、パラフィンにとっては不活性気体として作用する。したがって、不活性気体中で加熱処理時間がこの程度の範囲であって、第1温度を350℃以下とすれば、鎖式飽和炭化水素の熱分解は理論上ほとんど問題にならない。
ただし、鎖式飽和炭化水素は分子量分布を有し、それ故に鎖式飽和炭化水素の熱分解開始温度も分布を有する。したがって、こうした熱分解開始温度の分布を考慮して、安定的な製造との視点からは、第1温度は250℃以下であることが好ましい。本実施形態の場合、鎖式飽和炭化水素としてペンタコンタンを用いるので、第1温度は、ペンタコンタンの融点である91℃以上であって、かつ、350℃以下のできる限り高い温度が好ましい。本実施形態では、加熱処理における第1温度を200℃とした。
ここで、ペンタコンタンの1気圧での沸点は575℃であるが、融点は圧力依存性を有するため、1Torr(133Pa)程度の真空下でのペンタコンタンの沸点は320℃程度となり、10mTorr(1.33Pa)程度の真空下でのペンタコンタンの沸点は230℃程度となる。本実施形態では、1Torr(133Pa)程度以下の減圧下で加熱処理を施したため、ペンタコンタンの沸点は320℃程度以下に下がっている。したがって、第1温度が200℃であると、ペンタコンタンの沸点近くの温度となり、効率的に短時間で加熱処理を完了させることができる。
なお、先に述べたコーティング層32を形成する工程(図4(c)参照)における第1温度も、上述の加熱工程における第1温度に準ずるものとする。
続く冷却工程では、セル部12が配置されたオーブン200の室内202を、第1温度よりも低い第2温度に低下させる。第2温度は、鎖式飽和炭化水素の融点未満の温度であればよい。本実施形態の場合、鎖式飽和炭化水素としてペンタコンタンを用いるので、第2温度は91℃未満であればよい。
一般に、加熱工程におけるオーブン200の室内202の温度は奥側よりも扉204の方において低い傾向があり、冷却工程においても室内202の温度は奥側よりも扉204の方が低下し易い。また、リザーバー16のY−Z平面における断面積は、主室14のY−Z平面における断面積よりも小さい。すなわち、セル部12において、扉204側に位置するリザーバー16の断面積は、室内202の奥側に位置する主室14のY−Z平面における断面積よりも小さい。
そのため、室内202の温度を低下させると、図7に示す例のように、室内202の奥側に位置する主室14の温度よりも扉204側に位置するリザーバー16の温度の方が早く低下する。また、リザーバー16においても、最も扉204側の先端部に位置する蓋部19(開口部18)の周辺の温度は、その他の部位の温度よりも低下し易い。
したがって、冷却工程において、蓋部19(開口部18)の周辺の温度はその他の部位の温度よりも先に鎖式飽和炭化水素の融点未満の温度に到達するので、溶解したコーティング層32の材料(鎖式飽和炭化水素)は、蓋部19(開口部18)の周辺から析出し始める。この結果、図3(a)に示すC部におけるコーティング層32の材料の析出量がその他の部位よりも多くなるので、コーティング層32をセル部12の壁11の外面と蓋部19との間に入り込ませて封止材30の内側の表面を覆うように配置させることができる。
続いて、図5(c)に示すように、アンプル20(ガラス管22)に貫通孔21を形成する。この工程では、パルスレーザー光40を、集光レンズ42で集光して、上方(+Z方向)側からセル部12を間に介してアンプル20のガラス管22に照射する。レーザー光は指向性や収束性に優れているので、ガラス管22を容易に加工することができる。パルスレーザー光40を照射することにより、ガラス管22の上面(表面)から深さ方向(−Z方向)に加工が進む。そして、ガラス管22に貫通孔21が形成されると、アンプル20の中空部がリザーバー16と連通してアンプル20の密封が破られる。
ガラス管22に貫通孔21を形成することにより、アンプル20内のアルカリ金属固体24(図2(b)参照)が蒸発し、アルカリ金属ガス13となってリザーバー16内に流出する。リザーバー16内に流出したアルカリ金属ガス13は、連通孔15を通ってセル部12の主室14に流入し拡散する。この結果、図2(a)に示すように、セル部12の主室14内がアルカリ金属ガス13で満たされる。以上の工程により、ガスセル10を製造できる。
以上述べたように、第1の実施形態では、冷却工程で蓋部19(開口部18)の周辺の温度をその他の部位の温度よりも早く低下させることにより、開口部18周辺におけるコーティング層32の材料(鎖式飽和炭化水素)の析出量をその他の部位よりも多くする。そして、このコーティング層32で封止材30の内側の表面を覆うことで、アルカリ金属(アルカリ金属ガス13)と封止材30との化学反応を抑止している。
したがって、第1の実施形態に係るガスセルの構成およびガスセルの製造方法によれば、ガスセル10の製造歩留まりを向上でき、ガスセル10の寿命を長期化できる。また、封止材30の保護にセル部12の非緩和特性を高めるためのコーティング層32を用いるため、封止材30の表面を覆うための材料や工程を別途必要としないので、生産性を低下させたり生産コストを上昇させたりすることなく、小型で長寿命のガスセル10を安定的に製造することができる。
第1の実施形態に係る磁気計測装置の製造方法は、上述したガスセルの製造方法を含んでいる。したがって、感度を長期間維持することが可能な磁気計測装置100を安定的に製造することができる。なお、第1の実施形態に係る磁気計測装置100を製造する工程は、ガスセル10を製造する工程以外の工程では公知の方法を用いることができるため、その説明を省略する。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態に対して、ガスセルの構成は同じであるが、ガスセルの製造方法が一部異なっている。より具体的には、ガスセルを製造する冷却工程において、仕切り板を用いる点が異なる。ここでは、冷却工程における第1の実施形態との相違点を説明する。
<ガスセルの製造方法>
図8は、第2の実施形態に係るガスセルの製造方法における加熱工程および冷却工程を説明する図である。第2の実施形態に係る加熱工程および冷却工程では、図8に示すように、オーブン200の室内202を奥側(図8の+X方向側)の第1部分202aと扉204側の第2部分202bとに区画する仕切り板206を配置する点が第1の実施形態と異なる。
仕切り板206は、板状の部材で構成される。仕切り板206は、加熱工程および冷却工程において、オーブン200の室内202における第1部分202aと第2部分202bとの間の空気の流れを抑制して、両者の間に温度差を設けることを目的とする。したがって、第1部分202aと第2部分202bとの間の空気の流れを抑制できればよいので、仕切り板206の外径は室内202の内径より小さくてよい。仕切り板206の材料は、加熱工程における高温(350℃程度)に耐えられる材料であれば限定されない。
仕切り板206には、セル部12を室内202に配置したときにリザーバー16が位置する部分に、リザーバー16の外径よりも大きな径を有する貫通孔205が設けられている。加熱工程および冷却工程において、セル部12は、主室14が仕切り板206よりも奥側の第1部分202aに位置し、リザーバー16の先端側が貫通孔205を通って仕切り板206よりも扉204側の第2部分202bに位置するように配置される。
図9は、第2の実施形態に係る冷却工程における温度変化の一例を示す図である。図9に示す例のように、加熱工程においてオーブン200の室内202を加熱して、奥側の第1部分202aに位置する主室14の温度が200℃まで上昇しても、扉204側の第2部分202bに位置するリザーバー16の温度は200℃よりも低い。
冷却工程では、第1部分202aと第2部分202bとの間に温度差がある状態から室内202の温度を低下させるので、第1の実施形態と比べて、室内202の奥側に位置する主室14の温度よりも扉204側に位置するリザーバー16の温度の方がより早く低下する。そして、リザーバー16の先端側の蓋部19(開口部18)の周辺の温度が鎖式飽和炭化水素の融点未満の温度により早く到達する。
この結果、図3(a)に示すC部におけるコーティング層32の材料の析出量がより多くなるので、より確実に封止材30の内側の表面を覆うようにコーティング層32を形成することができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、上記実施形態に対して、ガスセルの構成が一部異なっており、それに伴って、ガスセルの製造方法における形成工程が異なっている。ここでは、ガスセルの構成および形成工程における上記実施形態との相違点を説明する。図10は、第3の実施形態に係る形成工程を説明する図である。
<ガスセルの構成>
図10(c)には、第3の実施形態に係る形成工程が終了したときのガスセル10Aを示している。図10(c)に示すように、第3の実施形態に係るガスセル10Aは、閉容器としてのセル部12Aと、上記実施形態と同様の蓋部19(図2(a)参照)とで構成される。セル部12Aは、凹状の容器本体12aと、容器本体12aの上方側に配置される上蓋12bとを含む。容器本体12aは、主室14となる凹部と、リザーバー16となる凹部とを有している。容器本体12aのリザーバー16となる凹部の壁11の一部には、第1孔としての開口部18が設けられている。
<ガスセルの製造方法>
第3の実施形態に係るガスセルの形成工程では、図10(a)に示すように、セル部12A(容器本体12aおよび上蓋12)を構成する壁11に対応する複数のガラス板部材を準備する。これらのガラス板部材を組立て、ガラス板部材同士を接着剤または溶着により接合して、容器本体12aを形成する。そして、主室14となる凹部とリザーバー16となる凹部とに、コーティング層32の材料(鎖式飽和炭化水素)であるコーティング材32aを配置する。
続いて、図10(b)に示すように、リザーバー16となる凹部にアンプル20を収納する。そして、容器本体12aの上方側に上蓋12bを、接着剤または溶着により接合する。これにより、主室14とリザーバー16とを有するセル部12Aが構成される。
続いて、上記実施形態と同様に、仮の蓋34(図4(c)参照)で開口部18を塞ぎ、セル部12Aを、内部に配置されたコーティング材32aとともに第1温度に加熱する。これにより、図10(c)に示すように、セル部12A(主室14およびリザーバー16)を構成する各壁11の内面に、コーティング材32a(鎖式飽和炭化水素)の膜であるコーティング層32が形成される。
以降は、上記実施形態と同様に、セル部12A内からの排気を十分に行い、図5(b)に示す封止工程と、図6または図8に示す加熱工程および冷却工程と、図5(c)に示すアンプル20に貫通孔21を形成する工程とを行う。これにより、封止材30の内側の表面を覆うようにコーティング層32を配置したセル部12Aを有するガスセル10Aを製造できる。
第3の実施形態では、凹状の容器本体12aの上方側が開放された状態でコーティング材32aを配置しアンプル20を収納するので、コーティング材32aの配置とアンプル20収納とを容易に行うことができる。また、第3の実施形態では、上記実施形態のアンプル20を開口部18から挿入する方法と比べて、アンプル20をリザーバー16内の所望の位置に容易に配置することができる。
なお、図10(b)に示す容器本体12aの上方側に上蓋12bを接合する際の接合方法は、接着剤や溶着に限定されるものではなく、両者の間に封止材30を配置して接合することとしてもよい。容器本体12aと上蓋12bとを封止材30で接合する場合、セル部12Aを構成する各壁11の内面に形成されるコーティング層32で封止材30の表面も覆われる。これにより、容器本体12aと上蓋12bとを接合する封止材30を、アルカリ金属ガス13から保護することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、上記実施形態に対して、ガスセルの構成が一部異なっており、それに伴って、ガスセルの製造方法における形成工程が異なっている。ここでは、ガスセルの構成および形成工程における上記実施形態との相違点を説明する。図11は、第4の実施形態に係る形成工程を説明する図である。
<ガスセルの構成>
図11(c)には、第4の実施形態に係る形成工程が終了したときのガスセル10Bを示している。図11(c)に示すように、第4の実施形態に係るガスセル10Bは、上記実施形態のように蓋部19を有しておらず、開口部18を有していない凹状の容器本体12cと上蓋12bとを含む閉容器としてのセル部12Bで構成される。
<ガスセルの製造方法>
第4の実施形態に係るガスセルの形成工程では、図11(a)に示すように、ガラス板部材を組立てて接合し、主室14となる凹部とリザーバー16となる凹部とを有する容器本体12cを形成する。そして、主室14となる凹部とリザーバー16となる凹部とに、コーティング層32の材料(鎖式飽和炭化水素)であるコーティング材32aを配置する。
続いて、図11(b)に示すように、リザーバー16となる凹部にアンプル20を収納する。そして、容器本体12cの上方側に封止材30(低融点ガラスフリット)を配置し、真空に近い低圧環境下または不活性気体中において、容器本体12cの上方側に上蓋12bを配置して、封止材30により両者を接合する。これにより、セル部12Bが構成される。
続いて、セル部12Bを内部に配置されたコーティング材32aとともに第1温度に加熱した後第2温度に低下させる。これにより、図11(c)に示すように、セル部12B(主室14およびリザーバー16)を構成する各壁11の内面と、封止材30の表面とに、コーティング材32a(鎖式飽和炭化水素)の膜であるコーティング層32が形成される。
セル部12Bを第1温度に加熱した後第2温度に低下させる際は、セル部12Bの上蓋12b側、すなわち封止材30が配置された側がその他の部位よりも先に第2温度に到達するようにすることが好ましい。このようにすることにより、封止材30が配置された側でコーティング層32の材料の析出量がより多くなるので、確実に封止材30の内側の表面を覆うようにコーティング層32を形成することができる。
第4の実施形態では、第3の実施形態と同様に、コーティング材32aの配置とアンプル20収納とを容易に行うことができ、アンプル20をリザーバー16内の所望の位置に容易に配置することができる。
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
(変形例1)
上記実施形態に係るガスセル10は、開口部18を覆う蓋部19を有していたが、本発明を適用可能なガスセルはこのような構成に限定されない。図12は、変形例1に係るガスセルの構成を示す概略断面図である。図12は、開口部18の周辺の拡大断面図であり、第1の実施形態の図3(a)に対応する。変形例1に係るガスセル10Cは、開口部18が封止材30で封止されており、蓋部19(図3(a)参照)を有していない点が第1の実施形態と異なる。
図12に示すように、変形例1に係るガスセル10Cは、蓋部19を有しておらず、開口部18が封止材30のみで封止されている。封止材30のリザーバー16側の表面は、セル部12の壁11の内面に形成されたコーティング層32(コーティング材32a)で覆われているので、上記実施形態と同様に、アルカリ金属と封止材30との化学反応を抑止し、セル部12内のアルカリ金属ガス13の減少や、封止の劣化によるセル部12外へのアルカリ金属ガス13の漏出を抑制できる。
変形例1の構成では、蓋部19を有していないため、簡易な工程にてガスセルを製造できるという利点がある。また、第1の実施形態の構成では、蓋部19をセル部12に押し付けながら加熱する加熱加圧工程が適用されるが、本変形例では加圧工程が不要になるため、安定的にガスセルを製造でき、歩留まりを向上させることができる。
(変形例2)
上記実施形態に係るガスセル10を適用可能な装置は、磁気計測装置100に限定されない。ガスセル10は、例えば、原子時計などの原子発振器にも適用できる。図13は、変形例2に係る原子発振器の構成を示す概略図である。また、図14は、変形例2に係る原子発振器の動作を説明する図である。
図13に示す変形例2に係る原子発振器(量子干渉装置)101は、量子干渉効果を利用した原子発振器である。図13に示すように、原子発振器101は、上記実施形態に係るガスセル10(または、ガスセル10A,10B,10Cのいずれか)と、光源71と、光学部品72,73,74,75と、光検出部76と、ヒーター77と、温度センサー78と、磁場発生部79と、制御部80とを備えている。
光源71は、ガスセル10内のアルカリ金属原子を励起する励起光LLとして、後述する周波数の異なる2種の光(図14(a)に示す共鳴光L1および共鳴光L2)を射出する。光源71は、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)などの半導体レーザーなどで構成される。光学部品72,73,74,75は、それぞれ、光源71とガスセル10との間における励起光LLの光路上に設けられ、光源71側からガスセル10側へ、光学部品72(レンズ)、光学部品73(偏光板)、光学部品74(減光フィルター)、光学部品75(λ/4波長板)の順に配置されている。
光検出部76は、ガスセル10内を透過した励起光LL(共鳴光L1,L2)の強度を検出する。光検出部76は、例えば、太陽電池、フォトダイオードなどで構成されており、後述する制御部80の励起光制御部82に接続されている。ヒーター77(加熱部)は、ガスセル10内のアルカリ金属をガス状に(アルカリ金属ガス13として)維持するために、ガスセル10を加熱する。ヒーター77(加熱部)は、例えば、発熱抵抗体などで構成される。
温度センサー78は、ヒーター77の発熱量を制御するために、ヒーター77またはガスセル10の温度を検出する。温度センサー78は、サーミスター、熱電対などの公知の各種温度センサーで構成される。磁場発生部79は、ガスセル10内のアルカリ金属の縮退した複数のエネルギー準位をゼーマン***させる磁場を発生させる。ゼーマン***により、アルカリ金属の縮退している異なるエネルギー準位間のギャップを拡げて、分解能を向上させることができる。その結果、原子発振器101の発振周波数の精度を高めることができる。磁場発生部79は、例えば、ヘルムホルツコイルやソレノイドコイルなどで構成される。
制御部80は、光源71が射出する励起光LL(共鳴光L1,L2)の周波数を制御する励起光制御部82と、温度センサー78の検出結果に基づいてヒーター77への通電を制御する温度制御部81と、磁場発生部79から発生する磁場が一定となるように制御する磁場制御部83とを有する。制御部80は、例えば、基板上に実装されたICチップに設けられている。
原子発振器101の原理を簡単に説明する。図14(a)は原子発振器101のガスセル10内におけるアルカリ金属のエネルギー状態を説明する図であり、図14(b)は原子発振器101の光源71からの2つの光の周波数差と光検出部76での検出強度との関係を示すグラフである。図14(a)に示すように、ガスセル10内に封入されているアルカリ金属(アルカリ金属ガス13)は、3準位系のエネルギー準位を有しており、エネルギー準位の異なる2つの基底状態(基底状態S1、基底状態S2)と、励起状態との3つの状態をとり得る。ここで、基底状態S1は、基底状態S2よりも低いエネルギー状態である。
このようなアルカリ金属ガス13に対して周波数の異なる2種の共鳴光L1,L2を照射すると、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)に応じて、共鳴光L1,L2のアルカリ金属ガス13における光吸収率(光透過率)が変化する。そして、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)が基底状態S1と基底状態S2とのエネルギー差に相当する周波数と一致したとき、基底状態S1,S2から励起状態への励起がそれぞれ停止する。このとき、共鳴光L1,L2は、いずれも、アルカリ金属ガス13に吸収されずに透過する。このような現象をCPT現象または電磁誘起透明化現象(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)と呼ぶ。
光源71は、ガスセル10に向けて、上述したような周波数の異なる2種の光(共鳴光L1および共鳴光L2)を射出する。ここで、例えば、共鳴光L1の周波数ω1を固定し、共鳴光L2の周波数ω2を変化させていくと、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)が基底状態S1と基底状態S2とのエネルギー差に相当する周波数ω0に一致したとき、光検出部76の検出強度は、図14(b)に示すように急峻に上昇する。このような急峻な信号をEIT信号と呼ぶ。このEIT信号は、アルカリ金属の種類によって決まった固有値をもっている。したがって、このようなEIT信号を基準として用いることにより、高精度な原子発振器101を実現することができる。
原子発振器101に用いられるガスセル10には小型であり、かつ、長寿命であることが要求されるが、上記実施形態のガスセルの構成およびその製造方法によれば、小型で長寿命のガスセル10を安定的に製造できるので、小型で精度が高く長寿命の原子発振器101に好適に用いることができる。
10,10A,10B,10C…ガスセル、11…壁、12,12A,12B…セル部(閉容器)、12a,12c…容器本体、12b…上蓋、13…アルカリ金属ガス、14…主室(第1室)、15…連通孔(第2孔)、16…リザーバー(第2室)、18…開口部(第1孔)、19…蓋部(蓋)、20…アンプル、24…アルカリ金属固体(アルカリ金属原子材料)、30…封止材、32…コーティング層(鎖式飽和炭化水素)、32a…コーティング材(鎖式飽和炭化水素)、100…磁気計測装置。

Claims (13)

  1. 閉容器を構成する壁と、前記壁の一部に開口された第1孔と、前記第1孔を封止する封止材と、前記閉容器の内側で前記封止材を覆う鎖式飽和炭化水素と、前記閉容器に封入されたアルカリ金属ガスと、を備えたことを特徴とする磁気計測装置。
  2. 請求項1に記載の磁気計測装置であって、
    前記第1孔を覆う蓋をさらに備え、
    前記封止材は、前記蓋と前記壁との間に前記第1孔を囲むように配置されていることを特徴とする磁気計測装置。
  3. 請求項1または2に記載の磁気計測装置であって、
    前記閉容器は、第1室と、前記第1室と第2孔を介してつながる第2室と、を備え、
    前記第1孔は、前記第2室の前記壁に形成されていることを特徴とする磁気計測装置。
  4. 請求項3に記載の磁気計測装置であって、
    前記第1孔は、前記第2室の前記第1室とは反対側に位置する前記壁に形成されていることを特徴とする磁気計測装置。
  5. 壁で構成され、前記壁の一部に開口された第1孔を有し、アルカリ金属原子材料が密封されたアンプルと鎖式飽和炭化水素とが配置された容器を形成する形成工程と、
    封止材を用いて前記第1孔を封止する封止工程と、
    前記封止材で密閉された前記容器を第1温度にする加熱工程と、
    前記封止材で密閉された前記容器を前記第1温度よりも低い第2温度にする冷却工程と、を含むことを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
  6. 請求項5に記載の磁気計測装置の製造方法であって、
    前記冷却工程の後に前記アンプルを破壊する工程をさらに含むことを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載の磁気計測装置の製造方法であって、
    前記第1温度は、前記鎖式飽和炭化水素の融点よりも高く、前記第2温度は前記鎖式飽和炭化水素の融点よりも低いことを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
  8. 請求項5から7のいずれか一項に記載の磁気計測装置の製造方法であって、
    前記冷却工程では、前記容器における前記第1孔が位置する部位の温度がその他の部位の温度よりも低い期間があることを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
  9. 請求項5から8のいずれか一項に記載の磁気計測装置の製造方法であって、
    前記冷却工程では、前記容器における前記第1孔が位置する部位はその他の部位よりも先に前記第2温度に達することを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
  10. 請求項5から9のいずれか一項に記載の磁気計測装置の製造方法であって、
    前記容器は、前記壁で構成され、前記壁の一部に開口された前記第1孔を有する閉容器であり、
    前記形成工程は、
    前記第1孔から前記容器内に前記アンプルと前記鎖式飽和炭化水素とを配置する工程と、
    前記第1孔を介して、前記容器内から排気する工程と、を含むことを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
  11. 請求項5から9のいずれか一項に記載の磁気計測装置の製造方法であって、
    前記容器は、前記壁で構成され前記第1孔を有する凹状の容器本体と、前記容器本体の上方側に配置される上蓋と、を含み、
    前記形成工程は、
    前記容器本体内に前記アンプルと前記鎖式飽和炭化水素とを配置する工程と、
    前記容器本体の上方側に前記上蓋を固定して前記容器を閉容器とする工程と、
    前記第1孔を介して、前記容器内から排気する工程と、を含むことを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
  12. 閉容器を構成する壁と、前記壁の一部に開口された第1孔と、前記第1孔を封止する封止材と、前記閉容器の内側で前記封止材を覆う鎖式飽和炭化水素と、前記閉容器に封入されたアルカリ金属ガスと、を備えたことを特徴とするガスセル。
  13. 壁で構成され、前記壁の一部に開口された第1孔を有し、アルカリ金属原子材料が密封されたアンプルと鎖式飽和炭化水素とが配置された容器を形成する形成工程と、
    封止材を用いて前記第1孔を封止する封止工程と、
    前記封止材で密閉された前記容器を第1温度にする加熱工程と、
    前記封止材で密閉された前記容器を前記第1温度よりも低い第2温度にする冷却工程と、を含むことを特徴とするガスセルの製造方法。
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