JP2016184630A - リアクトル、及びリアクトルの製造方法 - Google Patents

リアクトル、及びリアクトルの製造方法 Download PDF

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Shintaro Nanbara
慎太郎 南原
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浩平 吉川
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Abstract

【課題】良好な放熱性と騒音の低減とを両立できるリアクトル及びリアクトルの製造方法を提供する。
【解決手段】巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部を有するコイルと、前記巻回部内に配置される部分を有する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体の載置面を有する金属部材と、前記金属部材の載置面上に設けられて、前記巻回部と前記金属部材とを接合する絶縁層とを備え、前記絶縁層は、樹脂を含み、硬度が異なる複数の絶縁材料で構成されており、硬質な絶縁材料から構成される硬質領域と、前記硬質な絶縁材料よりも軟質な絶縁材料から構成される軟質領域とが前記巻回部の軸方向にみて交互に存在するリアクトル。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC−DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトル、及びその製造方法に関する。特に、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できるリアクトル及びその製造方法に関するものである。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。特許文献1,2は、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルとして、巻線を螺旋状に巻回してなる一対の巻回部(コイル素子)を有するコイルと環状の磁性コアとの組合体がケースに収納され、このケース内に封止樹脂が充填されたものを開示している。コイルの巻回部と金属製のケースの底板部とを絶縁性樹脂や接着剤からなる接合層によって固定している。
特開2014−096463号公報 特開2014−107294号公報
良好な放熱性と騒音の低減とを両立できるリアクトルが望まれている。
特許文献1,2に記載されるように、コイルの巻回部と金属製のケースの底板部とを絶縁性樹脂などの接合層で接合することで、巻回部と底板部との間の絶縁性を高められる上に、巻回部を底板部に近接配置した状態を維持できて放熱性に優れる。絶縁性樹脂などとして熱伝導率が高いセラミックスフィラーを含有するものを用いることで、放熱性に更に優れる。しかし、巻回部が底板部に近接されることで、磁歪などに起因する磁性コアの振動が巻回部及び接合層を介してケースに伝達して騒音が生じ得るという問題がある。特に、巻回部と底板部とをエポキシ樹脂などの比較的硬質な樹脂を含む材料で接合した場合には、上述の磁性コアの振動がケースに更に伝達し易い。また、接合層に何らかの応力が加わった場合には、上述の硬質な材料からなる接合層では、割れが生じたり、剥離したりする恐れがある。接合層の剥離などによって放熱性が低下したり、騒音が更に生じ易くなったりする。
上述のコイルと磁性コアとの組合体とケースの底板部との間に十分な隙間を設ければ、騒音を低減できるが、コイルと底板部との間の距離が大きくなり、放熱性の低下を招く。
上述の硬質な材料に代えて、例えば、シリコーン樹脂などの比較的軟質な樹脂を含む材料を用いれば、この軟質な材料が上述の磁性コアの振動などを吸収でき、騒音の低減を期待できる。しかし、軟質の材料からなる接合層では、温度変化などによって生じる内部応力、外部からの振動や衝撃などによって、変形が生じたり、大きな衝撃を受けた場合には破壊したりする恐れがある。接合層の変形や破壊などによって、放熱性が低下したり、騒音の低減効果が得られなくなったりする。そのため、内部・外部からの作用に対する耐久性を向上することが望まれる。
その他、接合層を、接着剤などを塗布した後固化することを繰り返して複数の接着剤層を積層させたり、特許文献1に記載される絶縁シートの両側に接着剤層を備えたりといったケースの深さ方向に積層された構造(以下、縦積み構造と呼ぶ)とすることがある。この場合、コイルの巻回部と金属製のケースの底板部との間の絶縁性を更に高められる上に、巻回部と底板部との間の距離の増大によって騒音の低減を期待できる。しかし、この場合には、上記距離の増大によって、放熱性の低下を招く。また、塗布及び固化を繰り返すことで製造工程数が多く、リアクトルの生産性の低下を招く。
そこで、本発明の目的の一つは、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できるリアクトルを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できるリアクトルを製造可能なリアクトルの製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係るリアクトルは、巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部を有するコイルと、前記巻回部内に配置される部分を有する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体の載置面を有する金属部材と、前記金属部材の載置面上に設けられて、前記巻回部と前記金属部材とを接合する絶縁層とを備える。前記絶縁層は、樹脂を含み、硬度が異なる複数の絶縁材料で構成されており、硬質な絶縁材料から構成される硬質領域と、前記硬質な絶縁材料よりも軟質な絶縁材料から構成される軟質領域とが前記巻回部の軸方向にみて交互に存在する。
本発明の一態様に係るリアクトルの製造方法は、以下の準備工程と、形成工程と、固化工程と、充填工程とを備える。
(準備工程) 巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部を有するコイルと前記巻回部内に少なくとも一部が配置された磁性コアとを含む組合体と、前記組合体の載置面を有する金属部材と、樹脂を含む絶縁材料とを準備する工程。
(形成工程) 前記絶縁材料を用いて、前記載置面上に未固化層を形成する工程。
(固化工程) 前記未固化層に前記組合体の巻回部を載置して、前記未固化層における前記載置面側の領域から前記巻回部側の領域に向かって順次固化されるように加熱して、前記巻回部を前記載置面に固定すると共に、開気孔を備える固化層を形成する工程。
(充填工程) 前記絶縁材料とは固化後の硬度が異なり、樹脂を含む絶縁材料を前記開気孔内に充填可能な低粘度状態にして充填した後固化し、前記巻回部と前記載置面との間に、硬度が異なる複数の絶縁材料を含む絶縁層を形成する工程。
上記のリアクトルは、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できる。上記のリアクトルの製造方法は、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できるリアクトルを製造できる。
実施形態1のリアクトルを示す概略斜視図である。 実施形態1のリアクトルを図1に示す(II)−(II)切断線で切断した状態を示す縦断面図であり、ケースの底部側のみを示す。 実施形態1のリアクトルを図1に示す(III)−(III)切断線で切断した状態を示す平断面図であり、コイルの巻回部のうち、一部のターンのみを拡大して示す。 実施形態1のリアクトルに備える組合体の分解斜視図である。 実施形態1のリアクトルの製造方法の一部を説明する工程説明図である。
[本発明の実施の形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
(1) 本発明の一態様に係るリアクトルは、巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部を有するコイルと、上記巻回部内に配置される部分を有する磁性コアと、上記コイルと上記磁性コアとを含む組合体の載置面を有する金属部材と、上記金属部材の載置面上に設けられて、上記巻回部と上記金属部材とを接合する絶縁層とを備える。上記絶縁層は、樹脂を含み、硬度が異なる複数の絶縁材料で構成されている。この絶縁層は、硬質な絶縁材料から構成される硬質領域と、上記硬質な絶縁材料よりも軟質な絶縁材料から構成される軟質領域とが上記巻回部の軸方向にみて交互に存在する。
上記のリアクトルは、コイルの巻回部と金属部材との間に絶縁層を備えるため、電気絶縁性に優れる上に、この絶縁層が硬質な絶縁材料と軟質な絶縁材料との双方を含むことで、以下の理由によって、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できる。
(放熱性)
・ 上記絶縁層は、複数の異種材料を含むものの、特許文献1に記載される縦積み構造になっていない。詳しくは、上記絶縁層と上記縦積み構造の接合層とのそれぞれについて、その厚さ方向に直交に切断した平断面をとり、この平断面をコイルの巻回部の軸方向にみたとき、上記縦積み構造の接合層では、巻回部の一端から他端に亘って一様な材料から構成される平断面をとるが、上記絶縁層では、異種材料から構成される領域が交互に並ぶという平断面を有する。このような絶縁層は、例えば、従来の縦積み構造の接合層を構成する一つの層の厚さと同様な厚さとした場合でも、この一層に硬質領域と軟質領域との双方を含有できる。そのため、上記絶縁層の平均厚さを上記縦積み構造と比較して薄くし易く、コイルの巻回部と金属部材との間の距離(以下、対向距離と呼ぶことがある)を小さくし易く、巻回部と金属部材とを近接配置できる。従って、巻回部から金属部材までの放熱経路が短くなり、熱抵抗を小さくできる。
・ 上記絶縁層が複数の異種材料を含むため、そのうちの少なくとも一つの絶縁材料を、セラミックスフィラーを含有するなどして熱伝導性に優れるものとすることができ、絶縁層自体の熱伝導性を高められる。
(騒音の低減)
・ 上記絶縁層が硬質領域と軟質領域とを含むため、磁性コアの振動や外部からの振動を受けた際には、軟質領域が変形するなどしてこの振動を吸収でき、金属部材への振動伝搬を低減できる。
・ 上記絶縁層が硬質領域と軟質領域とを含むため、応力を受けた際には、軟質領域が変形するなどして応力を緩和でき、硬質領域に負荷される応力を低減できると共に、外部から衝撃を受けた際には、変形し難い硬質領域が軟質領域への衝撃を低減できる。このような振動の吸収、応力緩和、衝撃の低減などによって、振動や衝撃、応力などに起因する絶縁層の割れ、破壊、剥離などを低減でき、長期に亘り、絶縁層を良好に維持できる。この点から、上記絶縁層は、外部からの作用に対する耐久性に優れるといえる。
(2) 上記のリアクトルの一例として、上記絶縁層が上記硬質な絶縁材料及び上記軟質な絶縁材料の一方から構成され、他方の絶縁材料によって囲まれる内包領域を備える形態が挙げられる。
内包領域が軟質な絶縁材料で構成される軟質領域である場合には、硬質領域中に適当な間隔で存在する軟質領域が磁性コアの振動や外部からの振動を吸収できて騒音を良好に低減できる。これらの軟質領域は応力を緩和して絶縁層の剥離などを低減できるため、コイルの巻回部と金属部材との固定状態を良好に維持でき、この形態は、放熱性に優れる上に絶縁も確保できる。硬質領域が後述する放熱性に優れる絶縁材料で構成される場合には、放熱性に更に優れる。
又は、内包領域が硬質な絶縁材料で構成される硬質領域である場合には、軟質領域による磁性コアの振動や外部からの振動の吸収、応力緩和を確実に行えて、騒音を低減できる上に放熱性に優れる。特に、この形態は、軟質領域に比較して剛性が高く変形し難い硬質領域が外部からの衝撃による軟質領域の変形や破壊などを低減できることで、軟質領域による振動の低減効果、応力緩和効果を良好に得られる。また、この形態も、コイルの巻回部と金属部材との固定状態を良好に維持できることから、放熱性に優れる上に絶縁も確保できる。この形態は、絶縁層が軟質領域を比較的多く備えながらも、外部からの作用に対する耐久性に優れ、長期に亘り、所望の特性を維持できる。
(3) 上記のリアクトルの一例として、上述の内包領域を備える(2)の場合に上記内包領域が上記巻回部を構成するターンの周回方向に沿って形成されて、隣り合うターン間に配置される棒状体を含む形態が挙げられる。
上記形態は、絶縁層における隣り合うターン間の近傍領域の少なくとも一つに、棒状の内包領域を備える。代表的な形態として、絶縁層をコイルの巻回部の軸方向にみたとき、複数の棒状の内包領域が上記軸方向に並列するように配置された形態、即ち複数の隣り合うターン間にそれぞれ棒状体を備える形態が挙げられる。上記形態は、ターン間に内包領域が存在するため、絶縁層を巻回部の軸方向にみたときの硬質領域と軟質領域とが交互に配置される間隔を、ターンを形成する巻線の大きさ(厚さ)程度とすることができる点、内包領域がターンの周回方向に沿ってある程度長く存在できる点から、硬質領域と軟質領域とをバランスよく備えるといえる。そのため、上記形態は、軟質領域による振動の吸収や応力緩和、硬質領域による剛性の向上などの効果を良好に得られて、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できる。また、上記形態は、内包領域が十分に存在するものの、絶縁層の厚さは内包領域を覆う外郭領域の厚さ程度にできる、いわば外郭領域がつくる一層分の厚さ程度にできるため、対向距離の増大を招くことが無く、放熱性に優れる。隣り合うターン間に棒状の内包領域を含む絶縁層を備える上記形態は、例えば、後述する実施形態のリアクトルの製造方法によって製造できる。
(4) 上記のリアクトルの一例として、上述の内包領域を備える(2)又は(3)の場合に上記絶縁層を上記巻回部の軸方向に平行な平面で切断した縦断面における上記内包領域の内包径が0.1mm以上2mm以下である形態が挙げられる。
上記内包領域の内包径とは、上記絶縁層の縦断面における内包領域の包絡円の直径とする。例えば、内包領域の縦断面形状が円形であれば、上記内包径はこの円の直径である。
上記形態は、内包領域と外郭領域とがバランスよく存在し、軟質領域による振動の吸収や応力緩和、硬質領域による剛性の向上などの効果を良好に得られて、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できる。また、内包領域が大き過ぎないため、対向距離の増大を招くことが無く、上記形態は放熱性に優れる。
(5) 上記のリアクトルの一例として、上述の内包領域を備える(2)〜(4)のいずれか一つの場合に上記内包領域を、上記巻回部を構成する隣り合うターンと上記金属部材の載置面とで挟まれる断面T字状の領域に備える形態が挙げられる。
上記断面T字状の領域は、その他の領域、具体的には巻回部における金属部材の載置面との対向面と金属部材の載置面とで挟まれる領域と比較して、断面積が大きい傾向にある。このような比較的大きな領域内に硬質領域と軟質領域との双方が存在することで、いずれか一方のみが存在する場合に比較して、上述の剛性の向上や、振動の吸収、応力緩和などの効果を得易い。
(6) 上記のリアクトルの一例として、上記金属部材が上記組合体を収納するケースであり、上記内包領域を構成する絶縁材料が上記ケース内に充填されて、上記組合体の少なくとも一部を埋設する封止樹脂である形態が挙げられる。
上記形態は、金属製のケースを備えるため放熱性に更に優れる上に、以下の理由により、製造性にも優れる。
上記形態は、絶縁層の一部が封止樹脂で構成されるため、絶縁層の内外に連続して封止樹脂が存在するといえる。このような上記形態は、絶縁層の他部を形成する絶縁材料によって開気孔を有する固化層(外郭領域)をまず形成し、封止樹脂の原料となる樹脂材料をケース内に充填して固化することで製造できる(後述の実施形態のリアクトルの製造方法も参照)。ケース内に上記樹脂材料を充填すると、開気孔にも上記樹脂材料が自動的に充填され、この状態で固化されて、封止樹脂で構成される内包領域を備える絶縁層を製造できる。従って、上記形態は、複数の異種材料を含む絶縁層を備えるものの、絶縁層の一部の形成と封止樹脂の充填・固化とを兼用して工程数を低減できる上に、容易に製造できる。
(7) 上記のリアクトルの一例として、上記硬質な絶縁材料のショアD硬度が50以上であり、上記軟質な絶縁材料のショアA硬度が80以下である形態が挙げられる。
上記形態は、硬質領域が十分に硬く剛性に優れる絶縁材料で構成され、軟質領域が十分に柔らかく柔軟性に優れる絶縁材料で構成されるため、上述の剛性の向上や、振動の吸収、応力緩和などの効果を得易い。
(8) 上記のリアクトルの一例として、上記硬質な絶縁材料の熱伝導率が2.0W/m・K以上及び上記軟質な絶縁材料の熱伝導率が0.1W/m・K以上5.0W/m・K以下の少なくとも一方を満たす形態が挙げられる。熱伝導率の測定は、絶縁層から試験片を切り出す、又は絶縁層を構成する絶縁材料の成分を分析し、分析結果に基づいて試験片を作製して行う。
熱伝導率が上記の特定の範囲を満たす高熱伝導性の絶縁材料から構成される硬質領域を有する場合には、放熱性に更に優れる。高熱伝導性の絶縁材料としては、例えば、樹脂と、熱伝導性に優れるセラミックスなどの絶縁体からなるフィラーとを含むものが利用できる(この点は、後述する軟質な絶縁材料も同様である)。
軟質な絶縁材料が特に高熱伝導性のものである場合、例えば、熱伝導率が1W/m・K以上である高熱伝導性の絶縁材料から構成される軟質領域を有する場合には、放熱性に更に優れる。一方、熱伝導率が1W/m・K未満の熱伝導性が比較的低い絶縁材料から構成される軟質領域を有する上記形態は、以下の理由により絶縁層を形成し易く、製造性に優れる。この軟質領域の原料には、上記フィラーを含まず実質的に樹脂からなる材料や、上記フィラーを含んでもその含有量が少ない材料を利用でき、このような絶縁材料は一般に未固化の状態では低粘度であり、塗布や充填などの作業を行い易いからである。
その他、上記形態は、一方の絶縁材料が上記の特定の範囲を満たす場合に他方の絶縁材料は種々のものが利用でき、材料選択の自由度が高い。
(9) 上記のリアクトルの一例として、上記絶縁層の耐電圧が1kV/mm以上である形態が挙げられる。
上記形態は、耐電圧が高く、コイルと金属部材との間の電気絶縁性に優れる。
(10) 本発明の一態様に係るリアクトルの製造方法は、以下の準備工程と、形成工程と、固化工程と、充填工程とを備える。
(準備工程) 巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部を有するコイルと上記巻回部内に少なくとも一部が配置された磁性コアとを含む組合体と、上記組合体の載置面を有する金属部材と、樹脂を含む絶縁材料とを準備する工程。
(形成工程) 上記絶縁材料を用いて、上記載置面上に未固化層を形成する工程。
(固化工程) 上記未固化層に上記組合体の巻回部を載置して、上記未固化層における上記載置面側の領域から上記巻回部側の領域に向かって順次固化されるように加熱して、上記巻回部を上記載置面に固定すると共に、開気孔を備える固化層を形成する工程。
(充填工程) 上記絶縁材料とは固化後の硬度が異なり、樹脂を含む絶縁材料を上記開気孔内に充填可能な低粘度状態にして充填した後固化し、上記巻回部と上記載置面との間に、硬度が異なる複数の絶縁材料を含む絶縁層を形成する工程。
本発明者らは、コイルの巻回部と金属部材との間に介在させる絶縁層を種々の条件で製造して、巻回部を金属部材に強固に固定して巻回部から金属部材への熱伝導を効率よく行えると共に騒音を低減できる構成を検討した。その結果、金属部材上に樹脂を含む絶縁材料からなる未固化層を形成し、この未固化層を、金属部材側から巻回部側に向かって固化されるように未固化層の加熱状態を制御すると、固化層に開気孔を形成できる、との知見を得た。固化層の平均厚さが1mm以下といった極薄い層であっても、開気孔を形成できた。開気孔の形成メカニズムは定かではないが、以下のように考えられる。
金属部材上に未固化層を形成し、この未固化層上にコイルと磁性コアとを含む組合体を配置すると、未固化層は、組合体と金属部材とに挟まれた状態にあるといえる。このように未固化層を挟持する組合体と金属部材との組物を例えば加熱炉などに装入したり、金属部材に近接して加熱源を配置したりして、挟持された未固化層を加熱する。すると、組合体の熱容量は、通常、金属部材よりも十分に大きいため、未固化層は、その厚さ方向にみて金属部材側から巻回部側に向かって加熱され易く、未固化層における金属部材側の領域は、固化温度に維持され易くなって、固化され易くなる。未固化層における巻回部側の領域は、上記組物に脱熱されて金属部材側の領域に比較して加熱され難く、金属部材の載置面側の領域から遅れて固化することになる。未固化層における巻回部側の領域が固化温度に達するまでの間に、加熱によって絶縁材料の粘度がある程度低くなっていると、毛管現象によって隣り合うターン間に絶縁材料が侵入し得る。ターン間への絶縁材料の移動と、金属部材側の領域の順次の固化とによって、未固化層における巻回部と金属部材との間の絶縁材料が徐々に枯渇する。そのため、絶縁材料に代えて、上記組物の周囲の雰囲気ガスを未固化層の側面などから吸い込んだ結果、固化層の側面などに開口した開気孔が生じる、と考えられる。また、上述のように隣り合うターン間に絶縁材料が流動することで、隣り合うターンと金属部材の載置面とで挟まれる断面T字状の領域に、ターンの周回方向に沿った筒状の開気孔が形成されると考えられる。
上記のリアクトルの製造方法は、未固化層を固化すると同時に開気孔を形成し、この開気孔に粘度を調整した絶縁材料を充填することで、コイルの巻回部と金属部材との間に硬質な絶縁材料から構成される硬質領域と軟質な絶縁材料から構成される軟質領域とを含む絶縁層を備えるリアクトルを製造できる。即ち、上記のリアクトルの製造方法は、絶縁性に優れる上に、良好な放熱性と騒音の低減とを両立できる上記の実施形態のリアクトルを製造できる。
また、上記のリアクトルの製造方法は、以下の理由により、上記の特定の構造の絶縁層を備えるリアクトルを生産性よく製造できる。
・ 固化層の平均厚さが1mm以下といった極薄い層であっても、開気孔を自動的に形成できる。
・ 軟質の絶縁材料として上述のフィラーを含まず実質的に樹脂からなる材料や少量のフィラーを含む材料を利用すると未固化の状態では低粘度であるため、未固化層を形成し易かったり、開気孔内に充填し易かったりなどする。
特に、金属部材を、組合体を収納する金属製のケースとし、このケースと、このケース内に充填される封止樹脂とを備えるリアクトルとし、開気孔に充填する絶縁材料を封止樹脂とする場合には、以下の理由により、生産性にも優れる。上述の縦積み構造の接合層と封止樹脂とを備えるリアクトルを製造する場合、上述のように未固化層の形成及び固化を複数回繰り返し、更に封止樹脂の充填及び固化という工程を備える。これに対し、上記のリアクトルの製造方法では、未固化層の形成及び固化が1回でよく、その後の封止樹脂の充填及び固化という工程で上記の特定の構造の絶縁層を備えるリアクトルを製造できるため、上記縦積み構造の場合と比較して、工程数が少ないからである。更に、上記の特定の構造の絶縁層を備えることで放熱性に優れることから、封止樹脂としてフィラーの含有量が少なく、未固化の状態で低粘度な絶縁材料を利用した場合には、流動性に優れてケース内に充填し易く、充填時間を短縮できるからである。
(11) 上記のリアクトルの製造方法の一例として、上記固化工程では、上記未固化層における上記金属部材側の領域の温度が上記巻回部側の領域の温度よりも高くなるように温度差を設けて上記固化層を形成する形態が挙げられる。
上記形態は、未固化層における金属部材側の領域を巻回部側よりも高温とするため、未固化層を金属部材側から巻回部側に向かって固化し易く、上述の毛管現象による開気孔の形成を十分にかつ確実に行える。その結果、上記の形態は、固化層の開気孔に、固化層とは固化後の硬度が異なる絶縁材料が詰まった絶縁層を備えるリアクトルを製造し易い。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
[実施形態1]
まず、図1〜図4を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明し、次に、図5を主に参照して、実施形態1のリアクトルの製造方法を工程ごとに説明する。図1〜図3,図5において、絶縁層6や未固化層610、固化層600の厚さt600、開気孔6pの大きさ(内包径D、後述の棒長さLなど)、隣り合うターン2t,2t間の間隔(特に図3)などは、分かり易いように誇張して又は模式的に示す。
(リアクトル)
・全体構成
実施形態1のリアクトル1は、図1に示すように、巻線2wを螺旋状に巻回してなる巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内に配置される部分を有する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3とを含む組合体10が載置される載置面を有する金属部材と、金属部材の載置面上に設けられて、コイル2と金属部材とを接合する絶縁層6とを備える。図1のリアクトル1は、組合体10を収納する金属製のケース4と、ケース4内に充填されて、組合体10の少なくとも一部(ここでは巻線2wの端部を除く実質的に全部)を埋設する封止樹脂100とを備える例を示す。この例の金属部材はケース4であり、載置面はケース4の底部40の内底面40iの一部である。リアクトル1は、ケース4がコンバータケースなどの設置対象(図示せず)に取り付けられて使用される。設置対象が冷却構造(図示せず)を備えている場合には、リアクトル1は設置対象によって冷却される。特にコイル2の巻回部2a,2bの熱や磁性コア3の熱は、絶縁層6を介して底部40に伝えられ、底部40を介してケース4外の設置対象に伝えられる。
実施形態1のリアクトル1は、絶縁層6が、樹脂を含み、硬度が異なる複数の絶縁材料で構成されており、図2の破線円内に示すように絶縁層6を巻回部2a,2bの軸方向(図2では左右方向)にみると、ある硬度の絶縁材料から構成される領域に対して、この絶縁材料よりも高硬度又は低硬度の絶縁材料から構成される領域が間欠的に並ぶように存在する点を特徴の一つとする。図2では、絶縁層6として、一方の領域が硬質な絶縁材料及び軟質な絶縁材料の一方から構成され、他方の絶縁材料を囲む外郭領域60であり、他方の領域が外郭領域60の構成材料に囲まれた内包領域61であり、かつ内包領域61の構成材料が封止樹脂100である例を示す。以下、実施形態1のリアクトル1の主要部材であるコイル2、磁性コア3、金属部材の一例であるケース4の概要と、特徴点である絶縁層6及び封止樹脂100の詳細とをまず説明し、次に、リアクトル1を製造できる実施形態1に係るリアクトルの製造方法を説明する。その後にリアクトル1の主要部材の詳細や変形例、その他の構成部材などを説明する。
・コイル
コイル2は、図4に示すように1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回して形成された一対の筒状の巻回部2a,2bと、巻線2wの一部から形成されて両巻回部2a,2bを接続する連結部2rとを備える。各巻回部2a,2bは、互いの軸が平行するように並列(横並び)に配置されている。この例の巻線2wは、断面が矩形状である平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(いわゆるエナメル線)である。図4に示す各巻回部2a,2bは、角部を丸めた四角筒状のエッジワイズコイルである。巻回部2a,2bの外形はいずれも、四つの平面と、隣り合う平面を繋ぐ湾曲面とで構成され、四つの平面のうちの一面が金属部材の載置面(ここではケース4の内底面40i。以下、実施形態1において同様)に対向配置される。
巻線2wの両端部はいずれも、巻回部2a,2bから適宜な方向に引き出され、その先端の絶縁被覆が剥されて、導体に端子金具(図示せず)が接続される。コイル2は、この端子金具を介して電源などの外部装置(図示せず)と電気的に接続される。
・磁性コア
磁性コア3は、図4に示すように複数の柱状のコア片31m,32mと、代表的にはコア片31m,31m間に介在される複数のギャップ材31gとを備え、環状に組み付けられる。この例では、図4の上方から見てU字状であるコア片32m,32mが、そのU字の開口部が向かい合うように配置される。これらコア片32m,32m間に、コア片31mとギャップ材31gとを積層した一対の積層物が横並び(並列)に配置される。この配置によって、磁性コア3は環状に組み付けられ、コイル2を励磁したときに閉磁路を形成する。磁性コア3におけるコア片31m及びギャップ材31gとU字状のコア片32mの一部(後述の突出部分)は、図2に示すようにコイル2の巻回部2a,2b内に配置される部分を構成し、U字状のコア片32mの残部(後述のブロック)は、巻回部2a,2bが配置されず、コイル2から突出した部分を構成する。
コア片31m,32mは、主として軟磁性材料から構成される。コア片31m,32mは、鉄や鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)といった軟磁性金属粉末や更に絶縁被覆を備える被覆粉末などを圧縮成形した圧粉成形体、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料などが利用できる。この例では、圧粉成形体としている。ギャップ材31gは、代表的にはコア片31m,32mよりも比透磁率が小さい材料、例えばアルミナなどの非磁性材から構成される。
・金属部材
リアクトル1は、組合体10が載置される金属部材として、組合体10を収納可能な金属製のケース4を備える。ケース4は、組合体10の機械的保護、外部環境からの保護(腐食ガスなどからの保護など)などの機能を有する他、その全体が金属で構成されることで一般に樹脂と比較して熱伝導性に優れることから、組合体10から設置対象への放熱経路としての機能も奏する。ケース4は、設置対象に直接取り付けられる部材でもある。
このようなケース4は、代表的には、組合体10の載置領域が設けられる内底面40iを備える底部40と、底部40から立設されて組合体10の周囲を囲む側壁部41とを備え、底部40に対向する側(図1では上側)が開口した箱体が挙げられる。この例のケース4は、底部40と側壁部41とが一体に成形された金属製の箱である。図1では、矩形平板状の底部40と、矩形枠状の側壁部41とを備えるケース4を示す。
内底面40iのうち、少なくとも組合体10の載置領域が図2に示すような平坦な平面であると、コイル2の巻回部2a,2bの一面(内底面40iとの対向面、図2では下面)を内底面40iに平行に配置できる。この場合、巻回部2a,2bの一面(下面)における内底面40iとの近接領域を十分に広く設けられて、組合体10の載置の安定化、良好な放熱性などを図ることができる。また、内底面40iにおける組合体10の載置領域が平坦な平面であれば、絶縁層6の形成作業や組合体10の載置作業が行い易く、リアクトル1の製造性に優れる。
金属製のケース4の構成材料は、例えば、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、鉄やオーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。アルミニウムやマグネシウム、これらの合金で形成すると、ケース4を軽量にできる。特にアルミニウムやアルミニウム合金は熱伝導率が高く、設置対象への熱伝導性に優れるケース4になって好ましい。更に、一体成形された金属製のケース4は、剛性、強度に優れ、リアクトル1全体の強度を高められる。
・絶縁層
絶縁層6は、主に図2を参照して説明する。図2は、リアクトル1をコイル2の巻回部2aの軸方向に平行な平面で切断した縦断面図であり、絶縁層6及びその近傍を示す。図2の破線円内は、巻回部2aとケース4の底部40との間の介在領域を拡大して示す。
リアクトル1には、コイル2の巻回部2a,2bとケース4の底部40との間に絶縁材料から構成される絶縁層6が介在する。この例の絶縁層6は、磁性コア3におけるコイル2から突出した部分(コア片32mの一部)とケース4の底部40との間にも介在する。絶縁層6は、巻回部2a,2b及び磁性コア3のコア片32mと底部40とを接合する。
実施形態1のリアクトル1では、絶縁層6は、異種の絶縁材料、特に硬度が異なる複数の絶縁材料によって構成されて、硬度が異なる複数の領域を備える。詳しくは、絶縁層6は、樹脂を含み、硬質な絶縁材料によって構成される硬質領域(例えば外郭領域60)と、樹脂を含み、上記硬質な絶縁材料よりも軟質な絶縁材料によって構成される軟質領域(例えば内包領域61)とを備える。図2の破線円内に示すように、絶縁層6を巻回部2a,2bの軸方向にみると、硬質領域と軟質領域とが交互に存在する。
・・絶縁特性
絶縁層6は、コイル2の巻回部2a,2bとケース4の底部40との間を絶縁する目的から、耐電圧が高いほど好ましい。具体的には、絶縁層6の耐電圧は1kV/mm以上が好ましく、3kV/mm以上、5kV/mm以上、7kV/mm以上がより好ましい。絶縁層6の構成材料として、電気絶縁性に優れる材料、例えば、後述するセラミックスなどからなるフィラーを含むと、特に含有量が多いほど、耐電圧を高められる傾向にある。
・・厚さ
絶縁層6の平均厚さt(図2の破線円内参照)は、コイル2の巻回部2a,2bにおける底部40との対向面(図2では下面)とケース4の内底面40iとの間の対向距離に等しく、コイル2の巻回部2a,2bからケース4の底部40への熱伝導を効率よく行う目的から、薄いほど好ましい。絶縁層6は複数の異種の絶縁材料によって構成されるものの、上述の縦積み構造の接合層と異なり、その平均厚さtは、1種の絶縁材料からなる単層の厚さ(図2では外郭領域60の厚さ)に実質的に等しく、上述の縦積み構造の接合層と比較して薄い傾向にある。例えば、絶縁層6の平均厚さtは、2mm以下、更に1mm以下、0.8mm以下、0.5mm以下、0.1mm(100μm)以下が挙げられる。絶縁層6の平均厚さtが薄過ぎると(上記対向距離が小さ過ぎると)、巻回部2a,2bと底部40との間の絶縁性の低下を招くことから、30μm(0.03mm)以上、更に50μm以上、70μm以上が好ましい。絶縁層6の平均厚さtが上述の範囲を満たすように製造過程で未固化層610の厚さt610(図5、後述)、組合体10の押付力、固化条件などを調整するとよい。
絶縁層6の平均厚さtは、絶縁層6の縦断面をとり、絶縁層6のうち、コイル2の巻回部2a,2bにおける金属部材の載置面(ケース4の内底面40i)との対向面と上記載置面との間に存在する領域の厚さを複数点測定し(例えば、n≧3)、その平均とする。
なお、コイル2の巻回部2a,2bをそれぞれ構成する複数のターン2tのうち、隣り合うターン2t,2t間に絶縁層6の構成材料の一部が充填されて、ターン2tの少なくとも一部が上記構成材料に埋設された状態になることがある。図2の破線円内では、ターン2t,2t間のうち、ケース4の底部40近傍の領域に上記構成材料が充填された状態を例示する。ターン2tの少なくとも一部が絶縁層6に埋設されると、巻回部2a,2bと絶縁層6との接触面積を増大でき、絶縁層6によって、コイル2と金属部材(ここではケース4の底部40。以下、実施形態1において同様)とを強固に固定できる。上述の絶縁層6の平均厚さtの測定は、隣り合うターン2t,2t間に充填された部分を除いて行う。
・・構成材料
絶縁層6を構成する硬質な絶縁材料及び軟質な絶縁材料はいずれも、樹脂を含む。樹脂は、一般に電気絶縁材料であり、絶縁層6の構成材料に好適に利用できる。また、樹脂は、未固化の状態では粘着性をある程度有するものがあり、固化後にコイル2と金属部材(ケース4の底部40)とを固定できる。接着剤を含む樹脂であれば、より強固な固定が期待できる。接着剤は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を主体とするものが挙げられる。その他、樹脂は、リアクトル1の使用時の最高到達温度に対して過度に軟化しない程度の耐熱性を有することが好ましい。
・・・硬質な絶縁材料
・・・・成分
硬質な絶縁材料は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、湿気硬化性樹脂、常温硬化性樹脂などの種々の樹脂のうち、固化後の硬度がある程度高い樹脂が挙げられる。具体的な硬度は後述する。又は、硬質な絶縁材料は、任意の硬度の樹脂と、電気絶縁性に優れる上に樹脂よりも高硬度な硬質粉末とを含むものが挙げられる。この絶縁層6は、樹脂の硬度によらず、硬質粉末によって十分に高硬度な硬質領域を備えることができる。
熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド(PA)樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
硬質粉末は、例えば、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウムなどの酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ほう素などの窒化物、炭化珪素などの炭化物などといったセラミックスに代表される非金属無機材料から構成されるものが挙げられる。セラミックスは、一般に、樹脂よりも硬度が高い、電気絶縁性に優れる、熱伝導性に優れる点から、セラミックスからなる硬質粉末(以下、セラミックスフィラーと呼ぶことがある)は、硬質な絶縁材料の添加剤に好適である。単一種の硬質粉末を含む形態、複数種の硬質粉末を含む形態のいずれも利用できる。
・・・・硬度
硬質な絶縁材料の具体的な硬度は、ショアD硬度で50以上が挙げられる。硬質な絶縁材料の硬度が高いほど、硬質領域が高硬度になり、絶縁層6の剛性を高められ、外部からの振動や衝撃に強く、耐振性、耐衝撃性に優れる絶縁層6とすることができる。耐衝撃性などを考慮すると、硬質な絶縁材料のショアD硬度は、60以上、更に70以上、80以上が好ましい。硬質な絶縁材料として、実質的に樹脂のみから構成されるものを利用する場合、ショアD硬度が50以上を満たす樹脂を利用すればよい。又は、ショアD硬度が50以上を満たすように、上述の硬質粉末の材質、含有量などを調整するとよい。
・・・・熱伝導性
硬質な絶縁材料が実質的に樹脂のみで構成される場合、その熱伝導率は、代表的には0.1W/m・K以上0.5W/m・K以下程度であり、1.0W/m・K未満である。上述のセラミックスフィラーを含む場合には、硬質な絶縁材料の熱伝導率がより高くなり、例えば、1W/m・K以上を満たす。セラミックスフィラーの材質や含有量によっては、硬質な絶縁材料の熱伝導率は、1.5W/m・K以上、更に2.0W/m・K以上、3.0W/m・K以上、5.0W/m・K以上を満たすことができる。この熱伝導率は、セラミックスフィラーの含有量が多いほど高くなる傾向にあるが、多過ぎると、原料の混合物の粘度が高くなり、硬質領域を形成し難くなる。そのため、製造性を考慮すると、熱伝導率が10W/m・K以下程度の材料が硬質な絶縁材料に利用し易いと考えられる。
・・・軟質な絶縁材料
・・・・成分
軟質な絶縁材料は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、湿気硬化性樹脂、常温硬化性樹脂などの種々の樹脂のうち、固化後の硬度が上述の硬質な絶縁材料よりも低い樹脂が挙げられる。具体的な硬度は後述する。又は、軟質な絶縁材料は、上述の硬質な絶縁材料よりも低硬度になる範囲で、好ましくは後述する硬度を満たす範囲で、樹脂と、上述の硬質粉末とを含むものとすることができる。上述のセラミックスフィラーを含有することで、放熱性を高められる。樹脂の具体例、硬質粉末の具体例は、上述の通りである。
・・・・硬度
軟質な絶縁材料の具体的な硬度は、ショアD硬度で50未満が挙げられる。更に軟質な絶縁材料の硬度は、ショアA硬度で80以下が挙げられる。軟質な絶縁材料の硬度が低いほど、又は硬質な絶縁材料との硬度差が大きいほど、軟質領域が相対的に低硬度になり、軟質領域の柔軟性を高められる。そのため、磁性コア3の振動、外部からの振動の吸収や応力緩和を行い易い絶縁層6とすることができる。柔軟性などを考慮すると、軟質な絶縁材料のショアA硬度は、70以下、更に60以下が好ましい。軟質な絶縁材料が柔らか過ぎると、外部から衝撃などを受けたときに割れや破壊などし易く、耐衝撃性などに劣るため、軟質な絶縁材料のショアA硬度は、30以上、更に40以上が好ましい。ショアA硬度が80以下を満たす樹脂は、例えば、シリコーン樹脂、軟質エポキシ樹脂、軟質ウレタン樹脂などが挙げられる。上述の硬質粉末を含有する場合には、ショアA硬度が80以下を満たすように硬質粉末の材質、含有量などを調整するとよい。単一種の硬質粉末を含む形態、複数種の硬質粉末を含む形態のいずれも利用できる。
・・・・熱伝導性
軟質な絶縁材料が実質的に樹脂のみで構成される場合、その熱伝導率は、代表的には0.1W/m・K以上0.5W/m・K以下程度であり、1.0W/m・K未満である。上述のセラミックスフィラーを含む場合には、その材質や含有量によって、軟質な絶縁材料の熱伝導率は、1.0W/m・K以上、更に1.5W/m・K以上を満たすことができる。軟質な絶縁材料の熱伝導率も、セラミックスフィラーの含有量が多いほど高くなる傾向にあるが、固化後の軟質領域の硬度が高くなり過ぎて、ショアA硬度が80超となり得る。軟質領域の硬度を考慮すると、軟質な絶縁材料の熱伝導率は、5.0W/m・K以下、更に3.0W/m・K以下、2.0W/m・K未満が好ましいと考えられる。
・・・硬質な絶縁材料及び軟質な絶縁材料の熱伝導性
硬質な絶縁材料の熱伝導率が2.0W/m・K以上、及び軟質な絶縁材料の熱伝導率が1.0W/m・K以上の少なくとも一方を満たせば放熱性に優れ、双方を満たせば放熱性に更に優れる絶縁層6とすることができる。硬質な絶縁材料の熱伝導率が2.0W/m・K以上、及び軟質な絶縁材料の熱伝導率が1.0W/m・K未満の少なくとも一方を満たせば、高熱伝導性の硬質領域による優れた放熱性が得られること、及び軟質な絶縁材料が未固化の状態では低粘度になり易く軟質領域を形成し易いため製造性に優れることの少なくとも一方の効果を奏する。
・・・硬質領域及び軟質領域の存在状態
絶縁層6のうち、コイル2の巻回部2a,2bと金属部材の載置面(ケース4の内底面40i)とで挟まれる領域を巻回部2a,2bの軸方向にみると、図2の破線円内に示すように、この領域全体に亘って硬質領域と軟質領域とが交互に存在する。図2では外郭領域60内に複数の内包領域61が所定の間隔をあけて並列された例を示し、外郭領域60が硬質領域、内包領域61が軟質領域、又は外郭領域60が軟質領域、内包領域61が硬質領域である。詳しくは、内包領域61は、縦断面円形状であり、その内包径Dが0.1mm以上2mm以下であり、巻回部2a(2b)を構成する隣り合うターン2t,2tと金属部材の載置面(ケース4の内底面40i)とで挟まれる断面T字状の領域Taに備える。更に、この例の絶縁層6の内包領域61は、巻回部2a,2bを構成するターン2tの周回方向に沿って形成されて、隣り合うターン2t、2t間に配置される棒状体、例えば丸棒体を含む。
図3は、図1に示すリアクトル1において、絶縁層6をその平均厚さtの半分程度の位置(巻回部2a,2bと金属部材の載置面(ケース4の内底面4i)との間の対向距離の半分程度の位置)で、絶縁層6の厚さ方向に直交する平面で切断した平断面図であり、各巻回部2a,2bを構成する複数のターン2tのうち、一部のターン2t群のみを示す。図3に示すように、一方の巻回部2aに着目すると、隣り合うターン2t,2t間に棒状の内包領域61が並列している。他方の巻回部2bに着目すると、同様に、隣り合うターン2t,2t間に棒状の内包領域61が並列している。図3の平断面において、隣り合うターン2t,2tに挟まれる領域に着目すると、この領域の概ね中心にターン2tの周回方向に沿って、棒状の内包領域61が存在し、棒状の内包領域61を挟むようにその両側に外郭領域60,60が存在する。更に、図3の平断面を巻回部2a,2bの並列方向(図3では上下方向)にみると、一方の巻回部2aから、両巻回部2a,2b間を経て他方の巻回部2bに向かって連続して封止樹脂100が存在し、封止樹脂100のうち、隣り合うターン2t,2t間に介在される絶縁材料が内包領域61を形成する。なお、巻回部2a,2bがいずれも、角部を丸めた角筒状であるため、両巻回部2a,2b間には、比較的多くの封止樹脂100が存在する。
このような複数の棒状の内包領域61と、これら棒状の内包領域61を並列状態で保持する外郭領域60とを含む絶縁層6を備えるリアクトル1は、例えば、後述する実施形態1のリアクトルの製造方法を利用することで製造できる。
硬質領域と軟質領域との存在状態は、適宜変更できる。
図2に示す内包領域61はコイル2の巻回部2a,2b及び金属部材(ケース4の底部40)の双方に接触しない領域、外郭領域60は双方に接触する領域といえる。従って、例えば、内包領域61を軟質領域とすれば、軟質領域は、コイル2及び金属部材の双方に接触せず、外郭領域60を軟質領域とすれば、軟質領域は、コイル2及び金属部材の双方に接する形態とすることができる。
また、図2に示す例では、断面T字状の領域Taに外郭領域60の一部と内包領域61とを備え、それ以外の領域は外郭領域60の他部のみが存在する。従って、例えば、外郭領域60を軟質領域とすれば、コイル2と金属部材(ケース4の底部40)とで挟まれる区間に軟質領域のみが存在する部分を含む形態とすることができる。外郭領域60を硬質領域とすれば、その逆に硬質領域のみが存在する部分を含む形態とすることができる。
・・・・内包領域
内包領域61を備える場合、その個数は一つでもよいが複数であると、好ましくは(ターン数−1)などのターン数と同等程度といった多数であると、絶縁層6における内包領域61の占有割合を高められる。その結果、外郭領域60及び内包領域61の一方である硬質領域と、他方である軟質領域との双方の領域が有する効果をバランスよく備えられる。
内包領域61の形状に着目すると、例えば、その縦断面形状又は絶縁層6の側面に見える端面形状(開口部の形状)は、円形状の他、楕円状などの曲面形状、三角形状、矩形状などの多角形状に代表される平面形状などとすることができる。棒状の内包領域61は、丸棒の他、多角柱状などの非円柱状とすることができる。
内包領域61の大きさに着目すると、絶縁層6におけるコイル2の巻回部2a,2bの軸方向に平行な平面で切断した縦断面において、各内包領域61の包絡円の直径を各内包領域61の内包径Dとするとき、内包径Dは、巻線2wの厚さ(丸線であれば直径)の1/2以下程度が挙げられる。また、内包径Dは、隣り合うターン2t,2t間の間隔よりも大きく、断面T字状の領域Taに収納可能な程度に小さいことが挙げられる。内包径Dが大きいほど絶縁層6における内包領域61の占有割合を高められて、上述のように硬質領域と軟質領域との双方が奏する効果をバランスよく備えられる。巻線2wの厚さなどにもよるが、内包径Dは、例えば0.1mm以上、更に0.3mm以上が挙げられる。内包径Dが大き過ぎると、絶縁層6を形成し難くなると考えられることから、2mm以下、更に1.5mm以下、1mm以下が好ましい。
棒状の内包領域61におけるターン2tの周回方向に沿った長さ(以下、棒長さLと呼ぶ、図3)は、各巻回部2a,2bにおける横並び方向(並列方向)に沿った長さ(以下、巻回部の幅W(図4)と呼ぶ)と同等以下が挙げられる。図3では、棒長さLが巻回部の幅Wから丸められた角部を除いた部分の幅W(図4)と同等の場合を示す。棒長さLが大きいほど絶縁層6における内包領域61の占有割合を高められて、上述のように硬質領域と軟質領域との双方が奏する効果をバランスよく備えられる。そのため、棒長さLは、巻回部の幅Wの1/5以上、更に1/4以上、1/3以上、1/2以上が好ましい。棒長さLが長過ぎると絶縁層6を形成し難くなると考えられることから、巻回部の幅Wと同等以下、更に4/5以下程度が好ましいと考えられる。
後述する実施形態1のリアクトルの製造方法を利用する場合には、内包領域61の形状、大きさ(内包径D、棒長さLなど)を高精度に制御することが難しいと考えられる。しかし、硬質の絶縁材料又は軟質の絶縁材料で形成した固化層に、ドリルなどの切削工具を用いて、適宜な形状、大きさの開気孔を形成する場合には、所望の形状、大きさの内包領域61を精度よく形成できると期待される。
その他、内包領域61を備えると共に、又は内包領域61を備えておらず、硬質領域及び軟質領域の双方がコイル2の巻回部2a,2b及び金属部材(ケース4の底部40)の少なくとも一方に接触する形態とすることができる。この形態は、いわば、内包領域61が絶縁層6の側面に開口することに加えて、又は側面に開口せず、金属部材及びターン2tの少なくも一方に対して開口して、硬質又は軟質な絶縁材料が充填された領域を含む状態である。後述する実施形態1のリアクトルの製造方法を利用する場合には、このような領域が形成される場合がある。
・封止樹脂
図1に示すリアクトル1では、ケース4内に収納された組合体10は、コイル2の巻線2wの端部を除き、その実質的に全体がケース4内に充填された封止樹脂100に埋設されている。従って、封止樹脂100は、ケース4の内底面40iからケース4の開口部に向かって連続的に存在する。封止樹脂100は、樹脂を含む絶縁材料で構成されている。そのため、リアクトル1は、封止樹脂100によって、組合体10の実質的に全体と外部環境の雰囲気との接触を防止して耐食性に優れる、組合体10を機械的に保護できる、組合体10と外部部品との接触を防止して電気絶縁性に優れるといった効果が得られる。
この例では、封止樹脂100の一部を絶縁層6の構成材料とする。図2,図3では、絶縁層6のうち、内包領域61が封止樹脂100で構成された例を示す。封止樹脂100の一部が絶縁層6の一部を構成する場合には、封止樹脂100の構成材料には、上述の硬質な絶縁材料、又は軟質な絶縁材料を利用できる。具体的な成分は、上述の通りである。また、この場合、絶縁層6の内外に封止樹脂100が連続して存在する。そのため、絶縁層6を介したコイル2とケース4との一体化、封止樹脂100を介したコイル2及び磁性コア3(特にコア片32m)とケース4との一体化に加えて、絶縁層6と封止樹脂100との一体化がなされて、コイル2と磁性コア3とケース4とを絶縁層6及び封止樹脂100とによって強固に一体化できる。
封止樹脂100は、組合体10の少なくとも一部を埋設すればよく、組合体10に対する封止樹脂100の埋設領域は適宜選択できる。図1に示すように組合体10の実質的に全体を封止樹脂100で埋設すると、上述のように外部環境からの保護、機械的保護、電気絶縁の確保を良好に図ることができる。組合体10の一部のみ、例えば、ケース4の底部40近傍のみを埋設する形態とすることができる。この形態は、封止樹脂100の使用量を低減でき、充填時間・固化時間を短縮でき、製造性に優れる。また、ケース4の深さ(高さ)も低くでき、小型なケースを利用できたり、軽量化を図ったりすることができる。封止樹脂100が少ない場合でも、特定の構造の絶縁層6を備えることで、リアクトル1は、良好な放熱性を有することができる。
(リアクトルの製造方法)
上述の特定の構造の絶縁層6を備えるリアクトル1は、特に、固化後の硬度が異なる複数の絶縁材料を用いて、ある絶縁材料によって開気孔を有する固化層を形成した後、別の絶縁材料を開気孔に充填して固化することで製造できる。図2では、開気孔に充填する絶縁材料を封止樹脂100とする例を示す。リアクトル1は、例えば、以下の準備工程、形成工程、固化工程、充填工程を備える実施形態1のリアクトルの製造方法によって製造できる。
・準備工程
この工程では、コイル2と磁性コア3とを含む組合体10と、金属部材と、樹脂を含む絶縁材料とを準備する。この例の組合体10は、巻線2wを螺旋状に巻回してなる巻回部2a,2bを有するコイル2と、コア片31m及びギャップ材31gを交互に積層した積層物(図4)と、一対のコア片32m,32mと、介在部材5(後述)とを用意して、巻回部2a,2b内に各積層物を配置して、両積層物とコア片32m,32mと介在部材5とを組み付けることで得られる(図4,図5の上図参照)。この例の金属部材は、組合体10の載置面である内底面40iを有する金属製のケース4とする。
この例では、絶縁層6の外郭領域60を形成する硬質な絶縁材料及び軟質な絶縁材料の一方と、絶縁層6の内包領域61及び封止樹脂100を形成する他方の絶縁材料とを用意する。特に、内包領域61に充填する他方の絶縁材料は、所定の温度での粘度が十分に低いもの、好ましくは、後述するような小さく、細長いといった開気孔6p(図5)に容易に充填可能な程度に低粘度となるものを利用すると、充填作業性に優れる。更にこの低粘度となる温度が所定の固化温度までの昇温過程の温度域に含まれると、別途、低粘度として充填するための加熱工程を不要にできて製造性に優れて好ましい。このような低粘度とは、例えば、10Pa・s以下程度が挙げられる。
・形成工程
この工程では、図5の上段に示すように、用意した金属部材の載置面(ケース4の内底面40i、図5では上面)上に、用意した絶縁材料を用いて、未固化層610を形成する。未固化層610の形成には、刷毛やロール、ノズルなどによる塗布、スクリーン印刷などが利用できる。未固化層610の形成には、例えば、上述の樹脂とセラミックスフィラーなどの硬質粉末とを含み、熱伝導率が2.0W/m・K以上である硬質な絶縁材料やショアA硬度が70〜80程度の軟質な絶縁材料を用いる。
未固化層610の形成厚さt610は、適宜選択できるが、厚過ぎると固化後の固化層600の平均厚さt600が大きくなり易く、コイル2の巻回部2a,2bと金属部材の載置面(ケース4の内底面40i)との間の対向距離が増大して、放熱性の低下を招く。従って、固化後の固化層600の平均厚さt600が所望の大きさとなるように、未固化層610の形成厚さt610を調整する。未固化層610の形成厚さt610は、例えば、平均で50μm以上5mm以下、更に100μm以上3mm以下程度が挙げられる。
・固化工程
この工程では、図5の中段に示すように、未固化層610に組合体10の巻回部2a,2bを載置して加熱して、巻回部2a,2bを金属部材の載置面(ケース4の内底面40i)に固定すると共に、固化層600を形成する。特に、実施形態1のリアクトルの製造方法では、加熱条件に特徴の一つがあり、未固化層610における載置面(内底面40i)側の領域から巻回部2a,2b側の領域に向かって順次固化されるように未固化層610を加熱する。
金属部材の載置面側からコイル2側への加熱方法として、例えば、図5の中段に示すように、金属部材において未固化層610が形成されている載置面近傍の領域を主として加熱する方法が挙げられる。具体的には、常温(例えば20℃〜25℃程度)としている組合体10と金属部材との組物を恒温槽(図示せず)に装入し、金属部材に接するように又は近接するようにヒータなどの加熱源200を配置して、金属部材を主として加熱する。図5では、ケース4の底部40の外底面に加熱源200を接して配置した状態を示す。この状態で加熱すると、金属部材(ケース4の底部40)は、速やかに、加熱源200の設定温度に加熱される。しかし、組合体10は、金属部材(主として底部40)と比較して熱容量が大きく、上記設定温度に加熱されるまでの時間が長い。このような温度差がある二つの部材、即ち高温の金属部材(底部40)と低温の組合体10とに挟まれた未固化層610には、その金属部材(底部40)側の領域の温度がコイル2の巻回部2a,2b側の領域の温度よりも高いという温度差が生じる。このような温度差を未固化層610に積極的に設けることで、未固化層610を、載置面(ケース4の内底面40i)側の領域から巻回部2a,2b側の領域に向かって順次固化できる。
その他の加熱方法として、例えば、常温(例えば20℃〜25℃程度)としている組合体10と金属部材との組物を雰囲気炉などの加熱炉(図示せず)に装入して加熱する方法が挙げられる。この方法でも、金属部材は、速やかに、加熱炉の雰囲気温度に加熱されるが、熱容量が大きい組合体10は、その全体が上記雰囲気温度に加熱されるまでの時間が長い。そのため、上述のように未固化層610における金属部材(ここではケース4の底部40)側の領域の温度がコイル2の巻回部2a,2b側の領域の温度よりも高くなる温度差を設けられて、未固化層610を載置面(ケース4の内底面40i)側の領域から巻回部2a,2b側の領域に向かって順次固化できる。
上述の設定温度や雰囲気温度は、未固化層610を構成する絶縁材料、特に樹脂に応じて適宜選択するとよい。
上述のように未固化層610を金属部材の載置面側の領域から順次固化することで、コイル2の巻回部2a,2bを金属部材の載置面(ケース4の内底面40i)に固定できる。かつ、図5の下段に示すように巻回部2a,2bと金属部材(内底面40i)との間に、少なくとも一つの開気孔6pを有する固化層600を形成できる。開気孔6pを形成する固化層600の内周面は、上述の絶縁層6の外郭領域60の内周面を形成する。
開気孔6pは、代表的には、コイル2の巻回部2a,2bを構成する隣り合うターン2t,2tと金属部材の載置面(ケース4の内底面40i)とで挟まれる断面T字状の領域Taに形成される。この理由は定かではないが、上述のように未固化層610を固化する際に、未固化層610を構成する絶縁材料の一部が毛管現象によって隣り合うターン2t,2t間に侵入し、断面T字状の領域Ta近傍の絶縁材料が枯渇するために雰囲気ガスを吸い込んだことが考えられる。この考察を裏付ける一つの理由として、固化後に固化層600を観察すると、隣り合うターン2t,2t間に絶縁材料の一部が充填されていることが挙げられる。
開気孔6pは、代表的には、固化層600の側面からコイル2のターン2tの周回方向に沿って設けられる細長い孔である。開気孔6pの開口部の形状又は縦断面形状は、図2の破線円内や図5の下段に示すように円形状又は円形に近いような曲面形状である。開気孔6pは、上述のように固化時に自動的に形成されるため、その形状や大きさなどを高精度に制御することが難しいが、断面円形状で細長くなる傾向を有することを確認している。
開気孔6pは、代表的には、図5の下段に示すように複数形成される。各開気孔6pは、代表的には、上述のようにコイル2のターン2tの周回方向に沿って細長くなっており、隣り合うターン2t,2t間に配置され、複数の細長い開気孔6はコイル2の巻回部2a,2bの軸方向に並列するように形成される(図3の内包領域61も参照)。
開気孔6pの大きさについて述べると、固化層600の側面に設けられる開口部の包絡円の直径、又は固化層600の縦断面の包絡円の直径を内包径D6pとすると、内包径D6pは例えば2mm以下が挙げられる。未固化層610や固化層600を構成する絶縁材料や形成厚さt610、固化条件などにもよるが、内包径D6pの下限は0.1mm、更に0.3mm、上限は1.5mm、更に1mmが挙げられる。固化層600の開気孔6pの内包径D6pは、上述の絶縁層6に備える内包領域61の内包径D(図2)に実質的に等しい。
細長い開気孔6pにおけるターン2tの周回方向に沿った長さ(以下、孔長さと呼ぶ)は、未固化層610や固化層600を構成する絶縁材料や形成厚さt610、固化条件などにもよるが、例えば、上述したコイル2の巻回部の幅Wを基準として、巻回部の幅Wの1/5以上、更に1/4以上、1/3以上、1/2以上が挙げられ、巻回部の幅Wと同等以下、更に4/5以下が挙げられる。固化層600の開気孔6pの孔長さは、上述の絶縁層6に備える棒状の内包領域の棒長さL(図3)に実質的に等しい。
上述の組合体10の載置では、未固化層610がある程度柔らかいため、未固化層610の上から組合体10を押し付けることで、コイル2の巻回部2a,2bの一部を未固化層610に埋設できる。この埋設状態で固化すると、巻回部2a,2bと固化層600との接触面積が増大し、固化層600は巻回部2a,2bを強固に固定できる。なお、この押し付けや、組合体10の自重によって、固化層600の平均厚さt600が未固化層610の形成厚さt610よりも薄くなることがある。固化層600の平均厚さt600が所望の範囲となるように組合体10の重量などを考慮して上記の押し付けを調整する。この押し付けによっても、隣り合うターン2t,2t間に未固化層610を構成する絶縁材料を充填できる場合がある。
・充填工程
この工程では、固化層600に有する開気孔6p内に、固化層600を構成する絶縁材料とは固化後の硬度が異なる絶縁材料を充填した後固化し、コイル2の巻回部2a,2bと金属部材の載置面(ケース4の内底面40i)との間に、硬度が異なる複数の絶縁材料を含む絶縁層6を形成する。特に、開気孔6pは上述のように小さく、細長い場合が多い。このような開気孔6p内に隙間なく、用意した樹脂を含む絶縁材料を充填できるように、この樹脂を含む絶縁材料を開気孔6p内に充填可能な低粘度状態とする。
例えば、低粘度になっている絶縁材料を開気孔6pごとに充填して固化することで、内包領域61を有する絶縁層6を形成できる。封止樹脂100を備えていないリアクトルとする場合には、この方法を利用するとよい。この場合、固化層600が外郭領域60を形成し、外郭領域60を構成する絶縁材料と、内包領域61を構成する絶縁材料とは、(固化後の)硬度が異なる。
更に、封止樹脂100を備えるリアクトルとする場合には、上述のように絶縁層6の形成後に、ケース4内に封止樹脂100の原料となる樹脂を含む絶縁材料をケース4内に充填した後、固化するとよい。開気孔6pごとに絶縁材料を充填する方法を利用することで、外郭領域60を構成する絶縁材料と、内包領域61を構成する絶縁材料と、封止樹脂100を構成する絶縁材料との三者について、(固化後の)硬度を異ならせることができる。又は、外郭領域60の絶縁材料と封止樹脂100の絶縁材料とを同じ絶縁材料として同じ硬度としたり、内包領域61の絶縁材料と、封止樹脂100の絶縁材料とを同じ絶縁材料として同じ硬度としたりすることができる。
封止樹脂100を備えるリアクトルとして、実施形態1のリアクトル1のように、絶縁層6の内包領域61の構成材料と封止樹脂100の構成材料とを同一とする場合には、上述のように開気孔6pを有する固化層600を形成し、充填工程では、ケース4内に封止樹脂100の原料を充填した後、固化するとよい。ケース4に封止樹脂100の原料を充填すると同時に、複数の開気孔6p内に樹脂を含む絶縁材料を充填できる。この絶縁材料を固化することで、開気孔6p内に封止樹脂100の一部が充填された絶縁層6を形成できると共に、封止樹脂100を備えるリアクトル1を同時に形成できる。封止樹脂100の原料とする樹脂を含む絶縁材料には、上述のように固化温度までの昇温過程の温度域に加熱されることで例えば10Pa・s以下程度といった低粘度になるものを利用すると、小さく細長い開気孔6pを複数備えていても、各開気孔6p内に容易に充填できて好ましい。原料とする絶縁材料について、予め、昇温過程での粘度を調べておくと利用し易い。
(主要な効果)
実施形態1のリアクトル1は、コイル2の巻回部2a,2bと金属部材の載置面(例えばケース4の内底面40i)との間に絶縁層6を備えるため、コイル2と金属部材との間の絶縁性を高められる。この絶縁層6が、硬質な絶縁材料からなる硬質領域(例えば外郭領域60)と軟質な絶縁材料からなる軟質領域(例えば内包領域61)との双方を含むことで、以下の理由(1)〜(3)によって放熱性に優れ、以下の理由(4)、(5)によって騒音を低減できる。
(1) 絶縁層6を、ケースの深さ方向に積層した縦積み構造のように厚くする必要がなく、縦積み構造に比較して薄くできる。その結果、巻回部2a,2bと金属部材の載置面との間の対向距離を短くできる。
(2) 絶縁層6によって、コイル2の巻回部2a,2bと金属部材とを接合している。
(3) 硬質な絶縁材料に、樹脂とセラミックスフィラーなどの硬質粉末とを含有して、熱伝導率が高いものを利用できる。
(4) 軟質領域の変形によって磁性コア3の振動や外部からの振動を吸収でき、磁性コア3の振動や外部からの振動が金属部材に伝達されることを低減できる。
(5) 軟質領域が応力緩和を行えて、硬質領域に負荷される応力を低減できると共に、剛性が高く変形し難い硬質領域によって軟質領域への衝撃伝搬などを低減でき、振動や衝撃、応力などに起因する絶縁層6の割れや剥離、変形などを低減できる。
特に、この例のリアクトル1では、以下の理由(6)〜(8)によって放熱性に更に優れると共に、騒音を更に低減できる。
(6) コイル2の巻回部2a,2bの軸方向の全長に亘って、硬質領域と軟質領域とが交互に並ぶため、両領域をバランスよく備えられ、両領域を具備する効果を良好に得られる。
(7) 隣り合うターン2t,2t間に絶縁層6の構成材料の一部が充填されて、巻回部2a,2bと絶縁層6との接触面積が大きく、両者が強固に固定される。
(8) 金属製のケース4の全体を放熱経路に利用できる。
実施形態1のリアクトルの製造方法は、硬質な絶縁材料及び軟質な絶縁材料の一方の絶縁材料で形成した未固化層610を特定の加熱条件で固化することで開気孔6pを自動的に形成でき、開気孔6pに特定の粘度条件で他方の絶縁材料を充填することで、特定の構造の絶縁層6を備えるリアクトル1を製造できる。即ち、実施形態1のリアクトルの製造方法は、上述の良好な放熱性と騒音の低減とを両立できる実施形態1のリアクトル1を製造できる。開気孔6pが上述のように小さく、細長いものであっても、固化時の条件を調整することで容易に形成できる。また、充填時の条件を調整することで、このような小さく細長い開気孔6pに絶縁材料を容易に充填できる。そのため、実施形態1のリアクトルの製造方法は、実施形態1のリアクトル1を生産性よく製造できる。
更に、実施形態1のリアクトルの製造方法は、以下の理由(α)〜(γ)によって、実施形態1のリアクトル1を生産性よく製造できる。
(α) 上述の縦積み構造のリアクトルを製造する場合と比較して、固化層600の固化工程数を低減できる。
(β) 軟質な絶縁材料として、上述のセラミックスフィラーなどの硬質粉末を実質的に含まないもの、又は硬質粉末の含有量が少ないものなどといった未固化の状態で比較的低粘度なものを利用でき、未固化層610の形成を行い易い。
(γ) 封止樹脂100を備える場合に、上述の硬質粉末を実質的に含まないもの、又は硬質粉末の含有量が少ないものなどを利用でき、ケース4への充填を行い易い。
・主要部材の詳細、変形例、その他の構成部材
・・コイル
この例では、一対の巻回部2a,2bを備える形態を説明したが、巻回部を一つのみ備える形態とすることができる。この場合、磁性コア3は、EEコアやEIコア、ERコアなどと呼ばれる公知の形状とすることが挙げられる。巻線2wとして、丸線の導体と絶縁被覆とを備える被覆丸線などを利用できる。巻回部を円筒状などとすることができる。
・・磁性コア
この例のコア片31mは、図4に示すように角部を丸めた直方体状であり、ギャップ材31gは、角部を丸めた矩形状の平板である。この例のコア片32mは、角部を丸めた直方体状のブロックと、このブロックから突出する一対の突出部分とを有する。突出部分は、ブロックにおけるコイル2の巻回部2a,2bの端面に対向する内端面32eからコイル2側に向かって突出する。各突出部分は、コア片31mと同様に角部を丸めた直方体状である。ブロックにおける内端面32eに対向する外表面は、平坦面であるが、湾曲面などとすることができる。
更に、U字状のコア片32mにおける上記ブロックは、図2に示すようにケース4の内底面40iとの対向面(下面)が、コア片31mを含む積層物における内底面40iとの対向面(下面)よりも突出して形成されている。この例では、コイル2と磁性コア3とを組み付けたとき、上記ブロックにおける上記対向面(下面)がコイル2の巻回部2a,2bにおける内底面40iとの対向面(下面)よりも突出するように、上記ブロックが形成されている。こうすることで、上述のように巻回部2a,2bにおける上記対向面(下面)と内底面40iとの間に若干の隙間を設けられて、この隙間に封止樹脂100の一部を充填できる。また、上記ブロックにおける上記対向面(下面)が内底面40iに支持されることで、組合体10は、ケース4内での収納状態が安定する。更に、磁性コア3は、上記ブロックから内底面40iに熱を伝えられる。
コア片31m,32m及びギャップ材31gの個数、形状、大きさ、組成などは適宜変更できる。例えば、コア片32mを直方体状とし、上述の突出部分をコア片31mとすることができる。ギャップ材31gに代えてエアギャップとしたり、ギャップ材31gを省略したりすることもできる。コア片とギャップ材とは、接着剤などで固定すると、組付け易い。
・・金属部材
金属部材をケース4とする場合、ケース4は上述の一様な構成材料からなる一体成形品の他、底部40と側壁部41とが別体であり、組み合わせて一体となる形態とすることができる。
又は、特許文献1に記載されるように、組合体10を載置する底部40が金属板(底板部)から構成され、組合体10の周囲を囲む側壁部41が樹脂などの絶縁材料の成形品(壁枠部)から構成され、これらを組合せた形態とすることができる。この組合せのケースは、底板部と壁枠部とが着脱可能な独立部材である。そのため、製造過程では、壁枠部を取り外して底板部のみとし、内底面40iとなる底板部の一面(載置面)を露出した状態で組合体10の載置や未固化層610の形成などを行えて作業性に優れる。ひいてはリアクトル1の製造性に優れる。また、壁枠部が樹脂の成形品である場合には、コイル2と側壁部41との間の絶縁性にも優れる上に、軽量なリアクトルとすることができる。一方、底板部が金属製であることで熱伝導性に優れるため、底板部を介して、コイル2の巻回部2a,2bの熱をケース4外の設置対象に良好に伝えられる。
上記底板部の構成材料には、金属製のケースの項で説明した上述の金属を利用できる。上記壁枠部の構成材料には、絶縁材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などの樹脂材料などが挙げられる。壁枠部は、上記の樹脂を射出成形するなど、公知の成形方法によって容易に製造できる。
又は、上記底板部を、組合体10の載置領域のみが金属で構成され、その他の領域が非金属で構成された複合部材とすることができる。金属部分の構成材料は、金属製のケースの項で説明した上述の金属を利用できる。非金属部分の構成材料は、上記壁枠部を構成する樹脂材料やセラミックスなどの非金属無機材料などが挙げられる。
別の金属部材として、例えば、組合体10を載置した状態で設置対象に取り付けられる金属板である形態が挙げられる。この金属板は、例えば、放熱部材や、設置対象への固定部材などに利用される。この形態は、組合体10の周囲が上述のケース4の側壁部41や封止樹脂100に覆われず、露出した状態で設置対象に取り付けられる。例えば、この金属板は、組合体10が液体冷媒に直接曝される箇所などに取り付けられる。
金属板の構成材料には、金属製のケースの項で説明した上述の金属を利用できる。金属板は、その表裏面が通常平面であるため、絶縁層6の形成作業性、組合体10の載置作業性などに優れる。この形態は、上述のケースを備える形態に比較して、側壁部が無いため、更なる軽量化を図れる。
上記金属板に代えて、リアクトル1の組合体10が載置される部材を、例えば、組合体10の載置領域のみが金属で構成され、その他の領域が非金属で構成された複合部材とし、この複合部材の金属部分を金属部材とすることができる。金属部分の構成材料は、金属製のケースの項で説明した上述の金属を利用できる。非金属部分の構成材料は、例えばセラミックスなどの非金属無機材料などとすると高い放熱性と絶縁性とを期待でき、樹脂などとするとインサート成形などで複合部材を容易に製造できる。
・・封止樹脂
封止樹脂100を備える場合、上述のように封止樹脂100の構成材料と絶縁層6の構成材料の一部とが共通する形態の他、両者が全く異なる形態とすることができる。この場合、封止樹脂100の選択の自由度を高められる。例えば、封止樹脂100の構成材料は、硬質な絶縁材料や高熱伝導率の軟質な絶縁材料よりも熱伝導率が高いものなどとすることができる。具体的な樹脂、熱伝導性を高めるための添加剤(上述のセラミックスフィラーなど)は、上述の絶縁層6の構成材料の項を参照するとよい。
・・介在部材
この例のリアクトル1(組合体10)は、図4に示すようにコイル2と磁性コア3との間に介在される介在部材5を備える。介在部材5は、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁性を高める機能を有しており、この機能のために絶縁材料から構成される。
この例の介在部材5は、コイル2の巻回部2a,2bの軸方向に分割される一対の分割材50a,50bを組み合わせて形成される。各分割材50a,50bは、磁性コア3のうち、巻回部2a,2b内に収納される部分との間に介在される内側介在部51と、巻回部2a,2bの端面とコア片32mの内端面32eとの間に介在される端面介在部52とを備える。内側介在部51は、巻回部2a,2bにおける丸められた角部に沿って配置される複数の湾曲した板片から構成される。各分割材50a,50bの内側介在部51,51の端部はそれぞれ、係合するように形成されている。内側介在部51を板片などとすることで、製造時、封止樹脂100の原料(未固化の絶縁材料)を充填し易い、隣り合うターン2t,2tから脱気し易いなどの効果が期待できる。端面介在部52は、コア片32mに備える一対の突出部分がそれぞれ挿通される二つの貫通孔52h,52hを有する枠状の平板部分である。介在部材5の形状は例示であり、適宜変更できる。例えば、両分割材50a,50bにおける内側介在部51の長さを異ならせた形態(この例では実質的に等しい)、内側介在部51の端部に係合箇所を有さない形態、内側介在部51と端面介在部52とが一体ではなく、それぞれが独立した別部材である形態などとすることができる。
介在部材5の構成材料は、例えば、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂、PBT樹脂などの熱可塑性樹脂などといった樹脂が挙げられる。介在部材5は、上記の樹脂を射出成形するなど、公知の成形法によって容易に作製できる。介在部材5には、公知の形状、組成の部材(ボビン、インシュレータと呼ばれることもある)を利用できる。
・・・コア被覆材
上述の介在部材5に代えて、磁性コア3のコア片31m,32mや、コア片31mとギャップ材31gとの積層物などを上述の熱可塑性樹脂などの絶縁材料で覆ったコア被覆材とすることができる。介在部材5を省略することで、組合体10の組み付け部品点数を低減でき、組立作業性に優れる。また、複数のコア片などを一体物とすることで組み付け部品を取り扱い易く、リアクトル1の製造性に優れる。コア被覆材や上述の介在部材5を省略してもよいが、これらを備えることで、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高められる。
・・・センサ
温度センサ、電流センサ、電圧センサ、磁束センサなどのリアクトル1の物理量を測定するセンサ(図示せず)を備えることができる。
・・・放熱板
コイル2の巻回部2a,2bの外周面のうち、金属部材の載置面に固定される面を除く任意の箇所に放熱板(図示せず)を備えることができる。例えば、ケース4を備える場合には、巻回部2a,2bの外周面のうち、側壁部41の内周面に対向する任意の箇所やケース4の開口部側に配置される面(図2では上面)に放熱板を配置できる。放熱板の構成材料は、金属製のケースの項で説明した上述の金属や上述のセラミックスなどの非金属無機材料などが利用できる。放熱板は、例えば、接着剤などによって固定するとよい。
[試験例]
金属製のケースの内底面上に樹脂を含む絶縁材料を用いて未固化層を形成して、コイルと磁性コアとを含む組合体を載置した後、未固化層に用いた絶縁材料とは別の樹脂を含む絶縁材料をケース内に充填及び固化して、コイルの巻回部とケースの内底面とが、樹脂を含む絶縁材料よって接合されたリアクトルを作製した。詳細は以下の通りである。
この試験で作製したリアクトルは、実施形態1で説明した構成、即ち角部を丸めた角筒状の一対の巻回部を有するコイルと、環状に組み付けられる磁性コアと、矩形箱状のケースと、封止樹脂と、特定の構造の絶縁層とを備えるものである。コイルはエッジワイズコイル、コア片は圧粉成形体、ケースはアルミニウム合金製である。ここでは、一般的に自動車用途のリアクトル程度の大きさのものを作製した。
絶縁層は、硬質な絶縁材料から構成される外郭領域(硬質領域)と、軟質な絶縁材料から構成される内包領域(軟質領域)とを備えるものである。各絶縁材料の仕様を表1に示す。各絶縁材料は市販品、又は、市販の樹脂やフィラーを配合したものである。表1に示す粘度は、予め測定した。この試験では、熱伝導率、硬度はいずれも、各絶縁材料から試験片を作製して測定した。熱伝導率は、レーザフラッシュ法によって測定した。硬度は、市販のショア硬度計を用いて測定した。
Figure 2016184630
この試験では、形成厚さが異なる未固化層を形成した3つのリアクトルを作製した。具体的には、表1に示す硬質な絶縁材料を用いて、ケースの底部の内底面に、表1に示すように形成厚さが1mm,2mm,3mmの未固化層をそれぞれ形成する。この試験では、コイルと磁性コアとを備える組合体のうち、ケースの内底面に平行に配置される部分に対応するように未固化層を形成した。詳しくは、コイルの巻回部の外周面のうち、角部を丸めた角筒状の四つの平面のうちの一平面と、磁性コアのコア片のうち、巻回部から露出されるコア片の一面とが接するように、未固化層を形成した。
未固化層の上に組合体を載置したケース(いずれも常温、20℃〜25℃程度)を恒温槽に装入して、未固化層を固化した。恒温槽の設定温度は140℃とし、所定の時間保持した。
所定時間経過後、固化層の縦断面をとると、いずれの試料も、コイルの巻回部とケースの内底面とで挟まれる領域に固化層が形成されており、かつ隣り合うターンと内底面とで挟まれる縦断面T字状の領域に開気孔が設けられていることが確認できた。固化層の平均厚さは、表1に示す範囲を満たように調整した。固化層の厚さは、例えば、組合体とケースの底部との間にスペーサを介在させたり、介在部材に脚片を設けたりするなどして調整すると、粘度が低いものを用いていても所望の厚さにできる。
固化層の形成後、ケース内に表1に示す軟質な絶縁材料を充填した後、表1に示す固化温度まで昇温した後、固化温度を所定時間保持し、軟質な絶縁材料を固化した。この試験では、充填時、軟質な絶縁材料を50℃〜100℃の範囲から選択した温度に保持して、粘度が十分に低い状態で充填した。この工程により、ケースと封止樹脂とを備えるリアクトルが得られた。
得られた三つの試料のリアクトルをそれぞれ、コイルの巻回部の軸方向に平行な平面で切断した縦断面をとり、縦断面観察を行った。その結果、いずれの試料のリアクトルも、コイルの巻回部とケースの内底面との間に絶縁材料から構成される絶縁層が介在し、巻回部と内底面とがこの絶縁層によって接合されていることが確認できた。また、以下を確認した。
・ いずれの試料の絶縁層も、硬質な絶縁材料からなる硬質領域と、この硬質な絶縁材料よりも軟質な絶縁材料から構成される軟質領域とを備える。
・ いずれの試料の絶縁層も、その縦断面を上記巻回部の軸方向にみると、硬質領域と軟質領域とが交互に存在している。
・ いずれの試料の絶縁層も、軟質領域は封止樹脂の一部によって構成されている。
・ いずれの試料の絶縁層も、軟質領域は硬質な絶縁材料によって囲まれた内包領域であり、硬質領域は外郭領域を形成している。
・ いずれの試料の絶縁層も、内包領域は、隣り合うターンとケースの内底面とで挟まれる断面T字状の領域に備える。
・ いずれの試料の絶縁層も、内包領域の内包径Dは、0.1mm以上2mm以下である。
得られた三つの試料のリアクトルをそれぞれ、絶縁層の厚さ方向に直交する平面で切断した平断面をとり、平断面観察を行ったところ、いずれの試料の絶縁層も、複数の内包領域を備えており、概ねの内包領域は、ターンの周回方向に沿って形成され、かつ隣り合うターン間にそれぞれ配置される棒状であった。
上述のようにコイルの巻回部と金属部材の載置面とを絶縁層で接合したリアクトルとして、絶縁層を、固化後の硬度が異なる複数の絶縁材料で構成すると共に、硬質領域と軟質領域とが巻回部の軸方向にみたときに交互に並ぶといった特定の構造の絶縁層を備えることで、上述のように良好な放熱性と騒音の低減とを両立できると期待される。硬質領域を備える効果(剛性の向上による衝撃の低減など)と、軟質領域を備える効果(振動吸収、応力緩和など)とをバランスよく備えることができるからである。
なお、140℃の恒温槽に装入することに代えて、設定温度を140℃としたホットプレートを利用した。詳しくは、組合体と未固化層とを備えるケースをホットプレート上に配置して恒温槽に装入した場合も、同様のリアクトルが作製できることを確認している。
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明のリアクトルは、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC−DCコンバータ)や空調機のコンバータなどの種々のコンバータ、電力変換装置の構成部品に利用することができる。本発明のリアクトルの製造方法は、上述のリアクトルの製造に利用することができる。
1 リアクトル 10 組合体 100 封止樹脂
2 コイル 2a,2b 巻回部 2r 連結部 2t ターン 2w 巻線
3 磁性コア 31m,32m コア片 31g ギャップ材 32e 内端面
4 ケース 40 底部 40i 内底面 41 側壁部
5 介在部材 50a,50b 分割材 51 内側介在部 52 端面介在部
52h 貫通孔
6 絶縁層 60 外郭領域 61 内包領域
600 固化層 6p 開気孔 610 未固化層
Ta 断面T字状の領域 200 加熱源

Claims (11)

  1. 巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部を有するコイルと、
    前記巻回部内に配置される部分を有する磁性コアと、
    前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体の載置面を有する金属部材と、
    前記金属部材の載置面上に設けられて、前記巻回部と前記金属部材とを接合する絶縁層とを備え、
    前記絶縁層は、樹脂を含み、硬度が異なる複数の絶縁材料で構成されており、硬質な絶縁材料から構成される硬質領域と、前記硬質な絶縁材料よりも軟質な絶縁材料から構成される軟質領域とが前記巻回部の軸方向にみて交互に存在するリアクトル。
  2. 前記絶縁層は、前記硬質な絶縁材料及び前記軟質な絶縁材料の一方から構成され、他方の絶縁材料によって囲まれる内包領域を備える請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記内包領域は、前記巻回部を構成するターンの周回方向に沿って形成されて、隣り合うターン間に配置される棒状体を含む請求項2に記載のリアクトル。
  4. 前記絶縁層を前記巻回部の軸方向に平行な平面で切断した縦断面における前記内包領域の内包径が0.1mm以上2mm以下である請求項2又は請求項3に記載のリアクトル。
  5. 前記内包領域は、前記巻回部を構成する隣り合うターンと前記金属部材の載置面とで挟まれる断面T字状の領域に備える請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
  6. 前記金属部材は、前記組合体を収納するケースであり、
    前記内包領域を構成する絶縁材料は、前記ケース内に充填されて、前記組合体の少なくとも一部を埋設する封止樹脂である請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
  7. 前記硬質な絶縁材料のショアD硬度は50以上であり、
    前記軟質な絶縁材料のショアA硬度は80以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のリアクトル。
  8. 前記硬質な絶縁材料の熱伝導率が2.0W/m・K以上及び前記軟質な絶縁材料の熱伝導率が0.1W/m・K以上5.0W/m・K以下の少なくとも一方を満たす請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のリアクトル。
  9. 前記絶縁層の耐電圧が1kV/mm以上である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のリアクトル。
  10. 巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部を有するコイルと前記巻回部内に少なくとも一部が配置された磁性コアとを含む組合体と、前記組合体の載置面を有する金属部材と、樹脂を含む絶縁材料とを準備する準備工程と、
    前記絶縁材料を用いて、前記載置面上に未固化層を形成する形成工程と、
    前記未固化層に前記組合体の巻回部を載置して、前記未固化層における前記載置面側の領域から前記巻回部側の領域に向かって順次固化されるように加熱して、前記巻回部を前記載置面に固定すると共に、開気孔を備える固化層を形成する固化工程と、
    前記絶縁材料とは固化後の硬度が異なり、樹脂を含む絶縁材料を前記開気孔内に充填可能な低粘度状態にして充填した後固化し、前記巻回部と前記載置面との間に、硬度が異なる複数の絶縁材料を含む絶縁層を形成する充填工程とを備えるリアクトルの製造方法。
  11. 前記固化工程では、前記未固化層における前記金属部材側の領域の温度が前記巻回部側の領域の温度よりも高くなるように温度差を設けて前記固化層を形成する請求項10に記載のリアクトルの製造方法。
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JP2021015932A (ja) * 2019-07-16 2021-02-12 住友ベークライト株式会社 封止樹脂組成物およびモールドコイル

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