JP2016182812A - 共押出多層フィルムおよび液体飲料包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、そのようなフィルムは、包装機における滑り性を満たすことは出来るものの、液体を充填した包装袋(パウチ)を段ボール箱内に段積みで梱包し輸送する際には、パウチ同士が圧着して擦れ合い、パウチ表面に傷が入ってしまう問題がある。
本発明のフィルムの最外層は、密度935kg/m3以上950kg/m3以下、重量平均分子量5万以上、分子量分散度(Mw/Mn)3.0以上6.0以下のポリエチレン樹脂によって構成される。
最外層に用いるポリエチレン樹脂としては、エチレンホモポリマー、またはエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体のエチレン−α−オレフィンコポリマーを用いることができる。また、炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、1種あるいは2種以上を組み合わせることができる。中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
ポリエチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、6万以上がより好ましく、7万以上が更に好ましい。上限は特に制限はないが、一般に50万以下であり、25万以下が好ましい。
分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量、Mw/Mn)の下限は、3.5以上がより好ましく、4.0以上が更に好ましい。上限は5.5以下がより好ましい。代表的なシングルサイト触媒であるメタロセン触媒で製造される場合の分子量分散度は、一般的に2〜3であり、チーグラー・ナッタ系触媒で製造される場合の分子量分散度は一般的に6以上であるので、本発明のフィルムに用いるポリエチレンの好ましい分子量分散度は、その両者間に位置する。
Mw/Mnが3.0以上であることにより、ポリエチレン密度が高くなり剛性が得られ、Mw/Mnが6.0以下で小さいほど、耐衝撃性が良好となるので、製袋、梱包、輸送時などに液体内容物による包装体の圧迫や揺れが強く起こって袋同士が擦れ合っても、袋表面に傷が生じ難くなる。
それらの最外層における添加濃度は、10000ppm以上30000ppm以下が好ましい。
また、天然シリカ、合成ゼオライトの粒子径は、2μm以上であることが好ましい。2μm未満では、耐ブロッキング効果を発現することが難しい。
一般的に、包装フィルムには脂肪酸アミド等が多用されるが、臭気性やブリードアウトによるフィルム加工機のロール汚染の点から、本発明のフィルムの最外層には有機化合物滑材を添加しない。
本発明のフィルムの中間層には、フィルムに強度、特に耐ピンホール性を付与する目的で、ポリアミド樹脂層を少なくとも1層配する。
ポリアミド樹脂層を2層以上設ける場合は、各層が異なる種類のポリアミド樹脂で構成されてもよい。
下限を10%以上とすることにより、フィルムに十分な耐ピンホール性を付与することができ、また上限を50%以下とすることにより、製造コストを抑制することができる。
本発明のフィルムは、酸素バリア性を向上させる目的で、中間層にエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(EVOH)層を備えてもよい。
また、EVOHのケン化度は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
下限を3%以上とすることにより、フィルムに十分な酸素バリア性を付与することができ、また、上限を20%以下とすることにより、フィルムの耐ピンホール性の低下や製造コストを抑制することができる。
本発明のフィルムの最内層の隣接層は、ポリエチレン樹脂で構成される。
ポリエチレン樹脂としては、種類は特に限定されないが、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)であることが好ましい。LLDPEは、引張強度、伸び、耐ピンホール強度、剛性等の物性強度が強いという特徴がある。
また、中でも、より臭気の少ない利点から、メタロセン系触媒を使用して製造した分子量分散度が3以下のLLDPEが好ましい。
下限を20%以上とすることにより、フィルムに適度な柔軟性をもたせることができ、上限を70%以下とすることにより、製膜適性が向上する。
本発明のフィルムの最内層は、密度900kg/m3以上930kg/m3以下のポリエチレン樹脂からなり、ヒートシール性を有する。
最内層のポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー樹脂等が挙げられるが、樹脂の臭気の少なさを考慮するとLDPEやLLDPEが好ましく、さらに、シール強度、シール部の耐熱性を考慮するとLLDPEが好ましい。
密度900kg/m3以上では、フィルム表面の滑り性が良好であり、且つ、内容物充填時にフィルムが伸び過ぎることなく内容物の計量が行い易い。
密度930kg/m3以下では、適度な結晶化度により、フィルムの柔軟となり屈曲疲労によるピンホールが発生し難い。
また、包装フィルムには、スリップ剤として脂肪酸アミド等の添加が一般医に多用されるが、フィルム加工機のロール汚染の点と、有機物添加剤であるが故の臭気、および内容物の液体へ移行が起きる点などから、本発明のフィルムの最内層には有機化合物滑材を添加しない。
本発明のフィルムは、各層の層間剥離強度を高める目的で、接着樹脂層を設けることができる。接着層は1層であってもよいし、複数であってもよい。
接着樹脂層がポリエチレン樹脂を含む層に隣接する場合は、ポリエチレン系接着樹脂を用いると好適である。
下限が3μm以上であれば、層間剥離強度を向上させることができる。また接着層が厚過ぎると、透明性の悪化やフィルムの総厚みが厚くなってしまう他、製造コストもかさむため上限は30μm以下であることが望ましい。
本発明のフィルムの総厚は、60〜250μmであり、包装袋に収容する液体の重量やその衝撃性とコストとの案配を鑑みて、総厚を加減選定して好適に使用できる。
フィルム総厚の下限は、80μm以上が好ましく、100μm以上が好ましく、上限は、240μm以下がより好ましい。フィルム総厚が60μm以上によって、フィルムの耐衝撃性が良好となる。また、250μm以下により、必要十分なフィルム特性を得ると共に包材コストを抑制できる。
測定は、ISO14577に準拠して行うことができる。
本発明のフィルムは、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、押出ラミネーション法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等を用いることができ、特に、フィルムの層数が多い場合でも製膜工程は変わらない点や厚み制御が比較的容易である点で共押出Tダイ法を用いることが好ましい。
(多層フィルムの作製)
下記に記載の原材料を用い、共押出Tダイ法により、各例に記した層構成で無延伸多層フィルムを作製した。
(密度)
JIS K 7112に準拠して測定した。
(メルトフローレート)
JIS K 7210に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
(重量平均分子量、分子量分散度(Mw/Mn))
ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析装置を用い、カラムにShodex製AT−807Sと東ソー製TSK−gelGMH−H6を直列にして用い、溶媒にイルガノックス10ppm添加のトリクロロベンゼンを用い、単分散ポリスチレンによる検量線を作成し、140℃で分析した。
PE1: 高密度ポリエチレン(メタロセン触媒、スラリー重合法、密度941kg/m3、重量平均分子量7.7万、分子量分散度5.0)
PE2: 直鎖状低密度ポリエチレン(チーグラー・ナッタ触媒、溶液重合法、密度931kg/m3、重量平均分子量4.5万、分子量分散度2〜3)
PE3: 直鎖状低密度ポリエチレン(チーグラー・ナッタ触媒、溶液重合法、密度0.918kg/m3)
PE4: 直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン触媒、高圧重合法、密度0.901kg/m3)
PE5: 高密度ポリエチレン(チーグラー・ナッタ触媒、スラリー重合法、密度951kg/m3、重量平均分子量4.7万、分子量分散度6以上)
PP1: ポリプロピレンランダムコポリマー、(蜜度0.900kg/m3)
Ny1: 6ナイロン
Ny2: 6/66共重合ナイロン
EVOH: エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(エチレン含有率32mol%)
添加2: オレイン酸アミド、層中濃度2万ppmで配合した。
以下、層構成を各層組成(層厚)の表記で、外層側からの順で記す。「/」は層界面を意味し、「+」は層中の配合を意味する。
PE1+添加1(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny1(28μm)/接着樹脂1(10μm)/PE4(52μm)/PE3+添加1(10μm)
実施例1において、3層目のNy1をNy2に変更した。
PE1+添加1(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny2(28μm)/接着樹脂1(10μm)/PE4(52μm)/PE3+添加1(10μm)
実施例1において、EVOH層を追加配設した。
PE1+添加1(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny1(28μm)/EVOH(8μm)/接着樹脂1(10μm)/PE4(44μm)/PE3+添加1(10μm)
実施例1において、1層目(外層)の樹脂をPE2に変更した。
PE2+添加1(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny1(28μm)/接着樹脂1(10μm)/PE4(52μm)/PE3+添加1(10μm)
実施例1において、1層目(外層)を添加剤配合なしのPP1に変更した。
PP1(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny1(28μm)/接着樹脂1(10μm)/PE4(52μm)/PE3+添加1(10μm)
実施例1において、1層目(外層)の樹脂をPE2、添加剤を添加2に変更した。
PE2+添加2(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny1(28μm)/接着樹脂1(10μm)/PE4(52μm)/PE3+添加1(10μm)
実施例1において、1層目(外層)の樹脂をPE5に変更した。
PE5+添加1(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny1(28μm)/接着樹脂1(10μm)/PE2(52μm)/PE3+添加1(10μm)
実施例1において、5層目(最内層の隣接層)をPE2に変更した。
PE1+添加1(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny1(28μm)/接着樹脂1(10μm)/PE2(52μm)/PE3+添加1(10μm)
各例で得られたフィルムについて、下記の評価を行い、結果を表1に記す。
<耐屈曲疲労性(ピンホール数)評価>
各例で得られたフィルム(長さ180mm、幅280mm)の幅方向を直径90mmのヘッドに巻き付け、ゲルボフレックス測定を実施した。
23℃、湿度50%の環境下において、フィルムを440度回転しながらフィルム長さ180mmを距離89mm潰し、更に、440度回転したままの状態で距離63.5mm潰す。この試験を500回繰り返した後、0.05m2(180mm×280mm)中のピンホールの数を計測した。
各例で得られたフィルムを用いて、大栄科学精器製作所製染色物摩擦堅牢度試験機を用い、ステンレス製試験台にフィルム(幅3cm、長さ15cm)外層を摩擦子側へ向けて固定し、また、摩擦子にもフィルム外層を試験台側へ向けて取り付け、試験台上のフィルムと摩擦子のフィルムとの外層同士を、摩擦子面積2cm角、荷重2.5N、移動距離60mm、30往復/分、往復回数100回、室温下の条件で擦り合わせ、摩擦堅牢度試験を行った。
試験台側に取り付けたフィルムの摩擦箇所(幅2cm、長さ6cm)について、傷または圧着痕の数を計測した。
各例で得られたフィルムを用いて、落袋テストを実施した。
フィルム35cm×35cmを2枚用い、最内層同士を合わせた四方ヒートシール縦ピローで、水7リットルを充填した袋を作製した。袋の四辺を水平にして1.0mの高さからコンクリートの床に落下させた。
落下を5回行い、ピンホールが発生しなかった場合を「○」、ピンホールが発生した場合を「×」と評価した。
各例で得られたフィルムを用いて、縦ピロー包装機で製袋した。
幅750mmのフィルム長さ500m程度を包装機で走行させ、ロールに異物が付着するかどうかを観察した。
異物付着がない場合を「〇」、異物が付着した場合を「×」と評価した。
各例で得られたフィルムについて、島津製作所製ダイナミック超微小硬度計DUH−W201を用い、稜間角115°の三角錐状圧子をフィルムの外層表面に当てて圧子押し込み試験を行い、ステップ的に荷重を加えながら、フィルム外層面から深さ1.5μmまで押し込んだ際の荷重を計測し、フィルムのユニバーサル硬さを求めた。
<耐屈曲疲労性(ピンホール数)評価>
実施例1〜実施例3、比較例1、比較例3は、結果良好であった。
比較例2は、外層樹脂にポリプロピレンを用いたのでフィルム表面が硬質になり、ピンホールが発生した。
比較例4は、外層にチーグラー・ナッタ触媒で製造した高密度ポリエチレン樹脂を用いたため、フィルム強度が低下し、ピンホールが発生した。
参考例1は、最内層の隣接層に密度の高い直鎖状低密度ポリエチレンを用いたため、フィルムが若干硬くなりピンホールが発生した。
実施例1〜実施例3、比較例2〜比較例4、参考例1は、フィルム傷つき評価の傷または圧着痕の数が15箇所以下であった。
比較例1は、外層ポリエチレン樹脂を、密度が低い樹脂に変更したため、硬度が20.3MPaと低く、傷・圧着痕が多く入った。
比較例3は、硬度は19.8MPaと低いものの、滑材として脂肪酸アミドを添加していたため、傷・圧着痕が入りにくかった。
実施例1〜実施例3、比較例1、比較例3、参考例1は、結果良好であった。
比較例2は、外層樹脂をポリプロピレンにしたことで、耐衝撃性が低下した。
比較例4は、外層LLDPE樹脂をチーグラー・ナッタ触媒で製造したHDPEとしたことで強度が低下し、ピンホールが発生した。
比較例3以外で結果良好であった。
比較例3は、外層ポリエチレン樹脂層に添加した脂肪酸アミドを添加がフィルム表面にブリードアウトし、包装機のロールに付着した。
Claims (3)
- ポリエチレン樹脂からなる最外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、ポリエチレン樹脂からなる最内層を有し、総厚が60〜250μmである共押出多層フィルムであって、最外層と最内層が共に有機系滑剤を含有せず、最外層のポリエチレン樹脂が密度935kg/m3以上950kg/m3以下、重量平均分子量5万以上、分子量分散度(Mw/Mn)3.0以上6.0以下であり、最内層のポリエチレン樹脂が密度900kg/m3以上930kg/m3以下であり、最外層表面から測定したユニバーサル硬さが25MPa以上であることを特徴とする共押出多層フィルム。
- 前記最内層が、密度0.925kg/m3以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂で構成される隣接層を有する、請求項1に記載の共押出多層フィルム。
- 請求項1又は2に記載の共押出多層フィルムを用い成形した液体飲料包装体。
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