JP2016172658A - 酸化ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 不純物含有量、特に塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量が少なく、粒径が微細な酸化ニッケル粉末を提供する。
【解決手段】硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において200℃以上、800℃以下の温度で仮焼する仮焼工程と、仮焼後に800℃を超え、980℃以下の温度で焙焼する焙焼工程を含む熱処理することにより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において200℃以上、800℃以下の温度で仮焼する仮焼工程と、仮焼後に800℃を超え、980℃以下の温度で焙焼する焙焼工程を含む熱処理することにより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、酸化ニッケル粉の製造方法に関する。
一般に、酸化ニッケル粉末は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等のニッケル塩類又はニッケルメタル粉を、ロータリーキルン等の転動炉、プッシャー炉等のような連続炉、あるいはバーナー炉のようなバッチ炉を用いて、酸化性雰囲気下で焼成することによって製造される。これらの酸化ニッケル粉末は多様な用途に用いられており、例えば、電子部品材料としての用途では、酸化鉄、酸化亜鉛等の他の材料と混合された後、焼結されることによりフェライト部品等として広く用いられている。
上記フェライト部品のように、複数の材料を混合して焼成することにより、これらを反応させて複合金属酸化物を製造する場合には、生成反応は固相の拡散反応で律速されるので、一般に使用する原料としては微細なものが用いられる。これにより、他材料との接触確率が高くなると共に粒子の活性が高くなるため、低温度且つ短時間の処理で反応が均一に進むことが知られている。従って、このような複合金属酸化物を製造する方法においては、原料の粒径を小さくすることが効率向上の重要な要素となる。
また、粉体が微細であることを測る指標としては、粒径以外に比表面積も用いられている。粒径と比表面積には、粒径=6/(密度×比表面積)の計算式で表される関係があり、比表面積が大きいほど粒径が小さくなることが分かる。ただし、上記計算式で表される関係は粒子が真球状であると仮定して導き出されたものであるため、計算式から得られる粒径と実際の粒径との間にはいくらかの誤差を含むことになる。
近年においては、フェライト部品の高機能化、並びに酸化ニッケル粉末のフェライト部品以外の電子部品等への用途の広がりに伴い、酸化ニッケル粉末に含有される不純物元素の低減が求められている。これら不純物元素の中でも特に硫黄、塩素とアルカリ金属は、電極に利用されている銀、ニッケル、銅と反応して電極劣化を生じさせたり、焼成炉を腐食させたりすることから、できるだけ低減することが望ましい。
従来、酸化ニッケル粉末の製造方法としては、原料として硫酸ニッケルを用い、これを焙焼する方法が提案されている。例えば、特許文献1(特開2001−32002号公報)に記載されているように、硫酸ニッケルを原料として、キルンなどを用いて酸化雰囲気中で焙焼温度を950〜1000℃未満とする第1段焙焼と、焙焼温度を1000〜1200℃とする第2段焙焼とを行う酸化ニッケル粉末の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、平均粒径が制御され、且つ硫黄品位が50質量ppm以下である酸化ニッケル微粉末が得られるとしている。
また、特許文献2(特開2004−123488号公報)には、450〜600℃の仮焼による脱水工程と、1000〜1200℃の焙焼による硫酸ニッケルの分解工程とを明確に分離した酸化ニッケル粉末の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、硫黄品位が低く且つ平均粒径が小さい酸化ニッケル粉末を安定して製造できるとしている。
更に、特許文献3(特開2004−189530号公報)には、横型回転式製造炉を用いて、強制的に空気を導入しながら、最高温度を900〜1250℃として焙焼する方法が提案されている。この製造方法によっても、不純物が少なく、硫黄品位が500質量ppm以下の酸化ニッケル粉末が得られるとしている。
また、特許文献2(特開2004−123488号公報)には、450〜600℃の仮焼による脱水工程と、1000〜1200℃の焙焼による硫酸ニッケルの分解工程とを明確に分離した酸化ニッケル粉末の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、硫黄品位が低く且つ平均粒径が小さい酸化ニッケル粉末を安定して製造できるとしている。
更に、特許文献3(特開2004−189530号公報)には、横型回転式製造炉を用いて、強制的に空気を導入しながら、最高温度を900〜1250℃として焙焼する方法が提案されている。この製造方法によっても、不純物が少なく、硫黄品位が500質量ppm以下の酸化ニッケル粉末が得られるとしている。
しかしながら、上記特許文献1〜3のいずれの方法においても、硫黄含有量を低減するために焙焼温度を高くすると酸化ニッケル粉末の粒径が粗大になり、また粒子を微細にするために焙焼温度を下げると硫黄含有量が多くなるという欠点があり、酸化ニッケル粉末の粒径と硫黄含有量を同時に最適値に制御することは困難であった。また、原料として硫酸ニッケルを用いるため、加熱する際に大量のSOxを含む有害ガスが発生し、これを除害処理するために高価な設備が必要になるという問題を有していた。
上記SOxを含む有害ガス発生の対策として、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等のニッケル塩を含む水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリで中和して水酸化ニッケルを晶析させ、これを焙焼して酸化ニッケルを合成する方法も考えられる。この水酸化ニッケルを焙焼する方法では、SOxを含む有害ガスの発生がないため、低コストでの製造が可能であると考えられる。
例えば、特許文献4(特開2005−002395号公報)には、ニッケル粉を製造する際の中間物ではあるが、水酸化ニッケルを酸化性雰囲気下で加熱処理することによって、酸化ニッケル微粉末が得られることが開示されている。しかしながら、このような水酸化ニッケルにおいては、中和用のアルカリから混入するアルカリ金属、例えばナトリウムやカリウムが、一般的に100質量ppm以上含有されている。また、ここでの酸化ニッケルは中間物であるため粒径等については何等考慮されておらず、微細な酸化ニッケル微粉末が得られたとする報告はなされていない。
例えば、特許文献4(特開2005−002395号公報)には、ニッケル粉を製造する際の中間物ではあるが、水酸化ニッケルを酸化性雰囲気下で加熱処理することによって、酸化ニッケル微粉末が得られることが開示されている。しかしながら、このような水酸化ニッケルにおいては、中和用のアルカリから混入するアルカリ金属、例えばナトリウムやカリウムが、一般的に100質量ppm以上含有されている。また、ここでの酸化ニッケルは中間物であるため粒径等については何等考慮されておらず、微細な酸化ニッケル微粉末が得られたとする報告はなされていない。
また、特許文献5(特開2009−196870号公報)には、マグネシウムを含む塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和し、得られた水酸化ニッケルを洗浄した後、450〜650℃の温度で焙焼して酸化ニッケルとし、有機酸の水溶液で洗浄するか、洗浄と解砕を同時に行うことにより塩素を除去する酸化ニッケルの製造方法が開示されている。
この方法で得られる酸化ニッケル粉末は、塩素品位が300質量ppm以下で且つ比表面積が6〜12m2/gであるとされているが、粗大化抑制を意図して添加したマグネシウムが酸化ニッケル粉末に混入するという問題点があった。そのため、この方法で得られた酸化ニッケル粉末は、フェライト等の原料として用いたとき十分な焼結性が得られない場合があり、必ずしも電子部品材料として好適なものとは言えなかった。
さらに、特許文献6(特開2013−035738号公報)には、硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを晶析させ、得られた水酸化ニッケルを順に30℃未満の水と30℃以上の水で洗浄した後、得られた水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中にて700〜980℃の温度で熱処理する酸化ニッケル粉末の製造方法が開示されている。
しかしながら、特許文献6では、粒径が微細な酸化ニッケル粉末が得られるとされているが、更なる粒径の微細化が要求されている。
特開2001−32002号公報
特開2004−123488号公報
特開2004−189530号公報
特開2005−002395号公報
特開2009−196870号公報
特開2013−035738号公報
しかしながら、特許文献6では、粒径が微細な酸化ニッケル粉末が得られるとされているが、更なる粒径の微細化が要求されている。
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、不純物含有量、特に塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量が少なく、粒径が微細な酸化ニッケル粉末を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため、ニッケル塩水溶液を中和して得た水酸化ニッケルを熱処理して得られる酸化ニッケル粉末の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、硫酸ニッケルと塩化ニッケルを溶解したニッケル塩混合水溶液を中和して水酸化ニッケルを晶析させ、得られた水酸化ニッケルを仮焼した後、焙焼することで、塩素、硫黄およびアルカリ金属の含有量が低く、且つ微細な酸化ニッケル粉末を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法は、硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において熱処理することにより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備え、前記熱処理工程は、200℃以上、800℃以下の温度で仮焼する仮焼工程と、仮焼後に800℃を超え、980℃以下の温度で焙焼する焙焼工程を含むことを特徴とする。
前記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液中の全ニッケル塩の量に対する硫酸ニッケルの量の割合が10〜60質量%であることが好ましく、前記ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度が50〜130g/Lであることが好ましい。
また、前記晶析工程で用いるアルカリが、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムであることが好ましい。
また、前記仮焼工程において、仮焼温度が200℃以上、600℃以下であることが好ましい。
また、前記仮焼工程において、仮焼温度が200℃以上、600℃以下であることが好ましい。
上記製造方法で得られるニッケル粉末は、比表面積が5.5m2/g以上、硫黄、塩素およびアルカリ金属の含有量がいずれも50質量ppm以下であることが好ましい。
また、得られるニッケル粉末のレーザー回折散乱法で測定したD90は、1μm以下であることが好ましい。
また、得られるニッケル粉末のレーザー回折散乱法で測定したD90は、1μm以下であることが好ましい。
本発明によれば、不純物品位、特に塩素、硫黄およびアルカリ金属の含有量が低く、且つ微細な酸化ニッケル粉末が得られる。更に、本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法は、工業的規模においても高い生産性で実施が可能であることから、その工業的価値は極めて大きい。
本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法は、硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において熱処理することにより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備え、前記熱処理工程は、200℃以上、800℃以下の温度で仮焼する仮焼工程と、仮焼後に800℃を超え、980℃以下の温度で焙焼する焙焼工程を含むものである。
上記酸化ニッケル粉末の製造方法(以下、単に「製造方法」という。)においては、晶析工程において硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液を用いること、並びに、晶析工程で得られた水酸化ニッケルを仮焼することが重要である。
前記晶析工程においては、塩化ニッケルと硫酸ニッケルのニッケル塩混合水溶液を用いることによって、アルカリで中和して得られた水酸化ニッケル中に残留イオンとして微量の塩素イオンと硫酸イオンが含有され、これらが後の仮焼工程および焙焼工程において生成した酸化ニッケル粒子の結晶方向による成長を制御し、微細で高比表面積の酸化ニッケル粉末を得ることができる。すなわち、従来の熱処理工程に仮焼工程をさらに加えることにより、仮焼において水酸化物から酸化物の構造変化における結晶径や粒径を制御することができ、次いで焙焼においても結晶方向による成長や焼結を制御するとともに塩素イオンと硫酸イオンを除去することが可能となり、塩素および硫黄の含有量が低く、且つ微細で高比表面積の酸化ニッケル粉末を得ることができる。
上記残留イオンの中でも硫酸イオン(SO4 2−)、すなわちオキソ酸型の陰イオンが重要と推察される。詳細な理由は不明であるが、アルカリによる加水分解・中和反応の際に、オキソ酸型陰イオンの水酸化ニッケルへの配位がcis構造体として結合し、生成した水酸化ニッケル粒子を微細化するとともに、熱処理工程において酸化ニッケル粒子のC軸方向の結晶粗大粒化を阻害することで、結晶成長を制御していると考えられる。このような熱処理における酸化ニッケル粒子の粗大化の抑制により、結果として微細化された電子材料に好適な酸化ニッケル粉末を他の特性を損なうことなく得ることができる。
一方、塩化ニッケルから晶析した水酸化ニッケル粒子は、熱処理工程において比較的低温から微細で低塩素の酸化ニッケル粒子を生成しやすいため、塩化ニッケルを含むニッケル塩混合水溶液を用いる利点がある。その理由は明確ではないが、残留する塩素イオンが脱離・ガス化しやすいこと、アルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合に中和により易水溶性のNaClを作るため、洗浄による除去が容易であり、水酸化ニッケル中に焼結を阻害するNa化合物が残留し難いことなどが考えられる。
このように、晶析工程において塩化ニッケルと硫酸ニッケルからなるニッケル塩混合水溶液を用いることによって、熱処理時における酸化ニッケル粒子の粗大化の抑制することができると同時に、得られる水酸化ニッケル粉末中の不純物含有量の低減を図ることができる。
以下、本発明の製造方法を工程毎に詳細に説明する。
晶析工程は、硫酸ニッケルと塩化ニッケルとを混合したニッケル塩混合水溶液をアルカリによってpHを8.3〜9.0に中和して、水酸化ニッケルを得る工程である。
晶析工程は、硫酸ニッケルと塩化ニッケルとを混合したニッケル塩混合水溶液をアルカリによってpHを8.3〜9.0に中和して、水酸化ニッケルを得る工程である。
上記ニッケル塩混合水溶液に含有される塩化ニッケルと硫酸ニッケルの混合割合は、特に制限されるものではないが、全ニッケル塩の量に対する硫酸ニッケルの量の割合が10〜60質量%となるように混合することが好ましい。硫酸ニッケルの量の割合が10質量%未満であると、上記粒子粗大化の抑制効果が十分に得られないことがある。一方、60質量%を超えると、アルカリでの中和において難溶性のNa2SO4あるいはK2SO4の生成量が増加して、洗浄での除去が十分にできず、最終的に得られる酸化ニッケル粉末中に残留する硫黄含有量が多くなり過ぎる虞がある。
中和に用いるアルカリとしては、特に限定されるものではないが、反応液中に残留するニッケルの量を考慮すると、ニッケルと錯体を形成しない水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、コストを考慮すると水酸化ナトリウムが特に好ましい。また、アルカリは固体又は液体のいずれの状態でニッケル塩混合水溶液に添加してもよいが、取扱いの容易さから水溶液として添加することが好ましい。均一な特性の水酸化ニッケルを得るためには、十分に撹拌されている反応槽内にニッケル塩混合水溶液とアルカリ水溶液をダブルジェット方式で添加することが有効である。その際、反応槽内に予め入れておく液は純水にアルカリを添加した液とし、所定のpHに調整しておくことが好ましい。
アルカリによる中和反応では、pHを8.3〜9.0の範囲内で一定とすることが必要である。pHを8.3〜9.0の範囲内で一定とすることにより、微細で結晶性の高い板状結晶の水酸化ニッケル粒子を得ることができる。pHが8.3未満では、水酸化ニッケル中に残存する塩素イオンや硫酸イオンといった陰イオン成分が増大し、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末中の塩素及び硫黄の含有量を十分に低減させることが困難になる。また、pHが9.0を超えて高くなると、得られる水酸化ニッケル粒子が微細になりすぎるため、不純物の巻き込みが増加すると共に濾過が困難になる。
また、上記中和反応時のpHは、変動幅が8.3〜9.0の範囲内の設定値から±0.2以内となるように制御することが好ましい。pHの変動幅がこれより大きくなると、不純物の増大や酸化ニッケル粉末の粒径が大きくなり、低比表面積化を招く虞がある。尚、上記中和条件では水溶液中に僅かにニッケル成分が残存することがあるが、この場合には中和晶析後にpHを10程度まで上げ、濾液中のニッケルを低減させることが好ましい。
また、上記ニッケル塩混合水溶液において、ニッケル塩の合計濃度は、特に限定されないが、ニッケル濃度として50〜130g/Lの範囲が好ましい。ニッケル濃度が50g/L未満では晶析工程での生産性が悪くなり、130g/Lを超えると水溶液中の陰イオン濃度が高くなり、生成した水酸化ニッケル中の塩素や硫黄の含有量が多くなるため、最終的に得られる酸化ニッケル粉末中の塩素及び硫黄の含有量を十分に低減できない場合がある。
中和反応時の液温は、通常の条件で特に問題なく、室温で行うことも可能であるが、水酸化ニッケル粒子を十分に成長させるためには50〜70℃の範囲とすることが好ましい。水酸化ニッケル粒子を十分に成長させることで、水酸化ニッケル中への塩素、硫黄及びナトリウムなどの不純物の巻き込みを抑制し、最終的に酸化ニッケル粉末中の不純物を低減させることができる。液温が50℃未満では、水酸化ニッケル粒子の成長が十分ではなく、また水酸化ニッケル中への不純物の巻き込みが多くなりやすい。また、液温が70℃を超えると、水の蒸発が激しくなり、水溶液中の不純物濃度が高くなるため、生成した水酸化ニッケル中の不純物含有量が多くなることがある。
中和により生成した水酸化ニッケルは、ニッケル塩混合水溶液が塩化ニッケルと硫酸ニッケルからなる混合物の水溶液であることから、塩化物イオンと硫酸イオンによって微細粒径と結晶性を兼ね備えた構造となる。したがって、中和反応時における結晶内への不純物混入が抑制でき、特に塩素や硫黄成分の洗浄効果が得られる。すなわち、水酸化物は結晶性の高い微細な粒径であり、結晶内に不純物が取り込まれにくく、表面付着したイオン性不純物は洗浄しやすいこと、アルカリ水溶液中で水酸化ニッケル中の結晶水が離脱して結晶構造が変化するため結晶間に巻き込んだ塩素や硫黄を放出することなどから、洗浄により不純物の除去が容易となると考えられる。
中和により生成した水酸化ニッケルは、固液分離した後、不純物除去のために洗浄される。洗浄は、水酸化ニッケルに対する洗浄における公知の技術を用いることができる。
洗浄は不純物が除去できる回数とすればよいが、不純物の含有量をより低くまで低減するためには、複数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いる洗浄液は、特に制限がなく、水又は水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液などが用いられる。洗浄液としてアルカリ水溶液を用いた場合には、アルカリ水溶液による洗浄後、水洗することが好ましい。
水酸化ニッケルに対する洗浄液(水又はアルカリ水溶液)の量は、特に限定されるものではなく、不純物が十分に低減できる量とすればよいが、水酸化ニッケルを良好に分散させるためには、水酸化ニッケル/洗浄液の混合比を80〜150g/Lとすることが好ましく、90〜110g/Lとすることが更に好ましい。また、処理時間についても特に限定されるものではなく、処理条件により残留する不純物の濃度が十分に低減される洗浄条件(洗浄液温度、洗浄時間、水酸化物濃度の組み合わせ)とすればよい。不純物濃度が十分に低減できる洗浄条件とすることで、微量に残留するオキソ酸(SO4 2−)による効果で酸化ニッケルの微細化効果も十分に得られる。
上記洗浄の方法は、特に限定されるものではなく、ミキサー等による洗浄液との混合撹拌以外に、濾過物に洗浄液を通過させて塩を溶解除去するフィルタープレスによる洗浄濾過も有効である。水による洗浄では、不純物混入の恐れがない純水を用いることが好ましい。また、洗浄に用いる装置としては、通常の湿式反応槽やフィルタープレスなどがある。また、洗浄液を30℃以上に加熱して洗浄する場合、加温可能な通常の湿式反応槽を用いることができる。湿式反応槽を用いた洗浄においては、洗浄中は水酸化ニッケルを含むスラリーを撹拌することが好ましく、例えば超音波撹拌や機械式撹拌を用いることができる。
洗浄後の水酸化ニッケルは濾過して濾過ケーキとして回収するが、濾過ケーキの含水率は10〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%とすることが更に好ましい。含水率が10質量%未満であると、更に洗浄する場合に濾過ケーキが均一に洗浄液中に分散しにくいため洗浄処理の効率が悪くなることや、濾過ケーキの含水率を下げるため厳しい脱水処理が必要となるなどの制約があり好ましくない。含水率が40質量%よりも高い場合には、水酸化ニッケルのハンドリング性が悪く、均一な処理を妨げる場合があるうえ、一定量の水酸化ニッケルを得るために必要な処理量が増加してしまうなどの不都合が生じる場合がある。
熱処理工程は、得られた水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において熱処理することにより、酸化ニッケルを得る工程であり、200℃以上、800℃以下、好ましくは200℃以上、600℃以下の温度で仮焼する仮焼工程と、仮焼後に800℃を超え、980℃以下の温度で焙焼する焙焼工程を含むものである。この熱処理により水酸化ニッケル結晶内の水酸基が脱離して酸化ニッケルの微細粒子が形成されるが、その際の仮焼工程を設定することによって、粒径の微細化と結晶性の制御が可能であるとともに、洗処理後に残存した塩素と硫黄の多くの部分を揮発させることができる。熱処理には、一般的な焙焼炉を使用することができ、ムライトやジルコニア内壁のレトルト炉等を使用することができる。
仮焼工程では、脱水と結晶構造変化により微細で結晶性の高い酸化ニッケルに転換することができる。すなわち、微量に含有する硫酸イオン(SO4 2−)により、晶析工程で得られた微細で結晶性が高い板状結晶の水酸化ニッケル粒子の特徴を維持したまま酸化ニッケルに転換することができる。仮焼温度が200℃以下では、水分脱離が不十分となり、微細な酸化ニッケル粒子が得られない。800℃以上では、塩素や硫黄の揮発とともに酸化ニッケルへの転換が進むため、酸化ニッケルの結晶が成長して粒子が粗大化する。
仮焼温度を200℃以上、600℃以下の温度とすることで、塩素の揮発を抑制して粒子中に残存させることができる。残存した塩素は、後の焙焼工程で作用し、塩素と硫黄(硫酸イオン)のバランスにより粒子の構造変化と成長抑制がより容易に制御可能となる。結果として粒径、比表面積と低不純物を両立させた酸化ニッケル粉末を得ることが容易になる。
一方、焙焼工程では、仮焼工程で得られた微細で結晶性の高い酸化ニッケル粒子に残存する塩素と硫黄を揮発させるとともに、球状化を進めて微細化させる。すなわち、水酸化ニッケルの一次粒子は板状結晶であり、この特徴を残した酸化ニッケルが球状化することによりさらに微細化させることができる。また、焙焼中は残存する硫黄により、結晶成長が抑制され、さらに微細な粒子が得られる。仮焼工程がない場合、塩素や硫黄の揮発とともに酸化ニッケルへの転換が進むため、酸化ニッケルの生成に伴う一次粒子の球状化と成長が抑制されず、粒子の成長が急激に進み、粗大化する。
焙焼温度が800℃以下では、残留する塩素や硫黄の揮発が不十分であり、最終的に得られる酸化ニッケル粉末中の塩素と硫黄の含有量を十分に低くすることができない。また、球状化が進まず、酸化ニッケル粒子の微細化も十分に起こらない。一方、980℃以上では、酸化ニッケル粒子同士の焼結が顕著になり、機械的な粉砕が必要になる。さらには機械的粉砕でも必要な比表面積を得ることが困難になる。
熱処理の雰囲気は、非還元性雰囲気であれば特に限定されないが、経済性を考慮して大気雰囲気とすることが好ましい。また、熱処理の際に水酸基の脱離により発生する水蒸気揮発する塩素と硫黄を排出するため、十分な流速を持った気流中で行うことが好ましい。
仮焼時間は、処理温度及び処理量に応じて適宜設定することができるが、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末の比表面積が5.5m2/g以上となるように設定すればよい。熱処理工程後に酸化ニッケルを解砕した場合、得られる酸化ニッケル微粉末の比表面積は、熱処理後の酸化ニッケルの比表面積に対して0.5m2/g程度増加するため、熱処理後の酸化ニッケルの比表面積で判断して処理条件を設定することができる。
熱処理の雰囲気は非還元性雰囲気であれば特に限定されないが、経済性を考慮して大気雰囲気とすることが好ましい。また、熱処理の際に水酸基の脱離により発生する水蒸気と揮発する塩素と硫黄を排出するため、十分な流速を持った気流中で行うことが好ましい。
上記熱処理工程の後に、得られた酸化ニッケル粉末を機械的に解砕する工程を追加することもできる。解砕により増加する比表面積は上述のとおり0.5m2/g程度と小さいが、解砕により凝集をほぐすことで、酸化ニッケル粉末を電子材料などとして一層好適な材料とすることができ、例えば、フェライト材料を製造する際により均一な組成にすることが期待できる。また、晶析工程に用いられるニッケル塩水溶液が塩化ニッケルと硫酸ニッケルの混合物の水溶液であること、熱処理工程において仮焼工程が加えられていることにより、酸化ニッケル粒子の微細化が促進されるが、不純物除去のために高温で熱処理した場合、酸化ニッケル粒子同士の焼結が進行する場合がある。このような場合には、焼結部を破壊して酸化ニッケルを微細化し、得られる酸化ニッケル粉末の比表面積を十分に高めることが可能である。
酸化ニッケルの解砕方法としては、乳鉢等による機械式解砕、特に工業的規模においてはビーズミルやボールミル等の解砕メディアを用いたものやジェットミル等の解砕メディアを用いないものが一般的な方法として用いられているが、ジルコニア等の解砕メディアを構成している成分が不純物として混入することを防止するため、解砕メディアを用いることなく解砕を行うことが好ましい。
解砕メディアを用いることなく解砕する方法としては、粉体同士を衝突させる方法や、液体などの媒体により粉体にせん断力をかける方法等がある。前者を用いた解砕装置としては、例えば、ジェットミル、アルティマイザー(登録商標)等が挙げられる。また、後者を用いた解砕装置としては、例えば、ナノマイザー(登録商標)等が挙げられる。これらの解砕方法のうち、不純物混入の恐れが少なく且つ比較的大きな解砕力が得られることから、粉体同士を衝突させる方法が特に好ましい。また、解砕条件には、特に制限がなく、通常の条件の範囲内での調整により容易に目的とする粒度分布の酸化ニッケル微粉末を得ることができる。
以上のような本発明の製造方法により得られる酸化ニッケル粉末は、不純物含有量、特に塩素、硫黄、アルカリ金属の含有量が少なく、比表面積も大きいので、電子部品用、例えば、フェライト部品用などの材料として好適な酸化ニッケル粉末である。具体的には、酸化ニッケル粉末の比表面積が5.5m2/g以上、塩素、硫黄およびアルカリ金属品の含有量がともに50質量ppm以下である。
また、本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法においては、マグネシウム等の第2族元素を添加する工程を含まないので、これらの元素が不純物として酸化ニッケル粉末に含まれることは実質的にありえない。更に解砕メディアを使用せず解砕する場合、ジルコニアなどの解砕メディアの構成成分も含まれなくなるので、ジルコニア及び第2族元素の含有量を30質量ppm以下にすることができる。
更に、本発明により得られる酸化ニッケル粉末は、レーザー回折散乱法で測定したD90(粒度分布曲線における粒子量の体積積算90%での粒径)が1μm以下であることが好ましい。尚、レーザー回折散乱法で測定したD90は電子部品等の製造時に他の材料と混合されるときに解砕されて小さくなるが、この解砕によって比表面積が大きくなる可能性は低いため、酸化ニッケル粉末自体の比表面積が大きいことがより重要である。
また、本発明の製造方法においては、湿式法により製造した水酸化ニッケルを熱処理するため、熱処理においてもSOxがほとんど発生せず、これを除害処理するための高価な設備も不要であることから、その製造コストも低く抑えることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例において、酸化ニッケル粉末の比表面積の分析は、窒素ガス吸着によるBET法により求めた。また、酸化ニッケル粉末の粒径はレーザー回折散乱法により測定し、その粒度分布から体積積算90%での粒径D90を求めた。
塩素含有量は、塩素の揮発を抑制できる密閉容器内にてマイクロ波照射下で酸化ニッケル微粉末を硝酸に溶解し、硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を蛍光X線定量分析装置(PANalytical社製 Magix)を用いて検量線法により分析した。アルカリ金属含有量も酸化ニッケル微粉末を硝酸に溶解した後、蛍光X線定量分析装置によって分析した。また、硫黄含有量は、酸化ニッケル微粉末を硝酸に溶解した後、ICP発光分光分析装置(セイコー社製、SPS−3000)によって分析した。
塩素含有量は、塩素の揮発を抑制できる密閉容器内にてマイクロ波照射下で酸化ニッケル微粉末を硝酸に溶解し、硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を蛍光X線定量分析装置(PANalytical社製 Magix)を用いて検量線法により分析した。アルカリ金属含有量も酸化ニッケル微粉末を硝酸に溶解した後、蛍光X線定量分析装置によって分析した。また、硫黄含有量は、酸化ニッケル微粉末を硝酸に溶解した後、ICP発光分光分析装置(セイコー社製、SPS−3000)によって分析した。
[実施例1]
3Lのビーカー内に、純水と水酸化ナトリウムを溶解してpH8.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液500mLを準備した。この水溶液に、塩化ニッケルと硫酸ニッケルを混合比1:1(硫酸ニッケル50質量%)で混合して水に溶解したニッケル塩混合水溶液(ニッケル濃度100g/L)と、12.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、pH8.5にて変動幅±0.2以内となるように調整しながら連続的に添加混合して、水酸化ニッケルの沈殿を生成させた。
その際、ニッケル塩混合水溶液は6mL/分の速度で添加した。また、液温は60℃とし、攪拌羽を200rpmで回転させてビーカー内の溶液を撹拌した。1Lのニッケル塩水溶液を添加した後、3時間攪拌を続けて水酸化ニッケルを熟成させた。
その後、水酸化ニッケルの沈殿を濾過し、20℃の純水中で30分間撹拌するレパルプ洗浄と濾過を4回繰り返して水酸化ニッケルの濾過ケーキを得た。洗浄後、得られた濾過ケーキの含水率は25〜35質量%であった。この濾過ケーキを送風乾燥機を用いて大気雰囲気中にて110℃で24時間乾燥し、水酸化ニッケルを得た(晶析工程)。
3Lのビーカー内に、純水と水酸化ナトリウムを溶解してpH8.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液500mLを準備した。この水溶液に、塩化ニッケルと硫酸ニッケルを混合比1:1(硫酸ニッケル50質量%)で混合して水に溶解したニッケル塩混合水溶液(ニッケル濃度100g/L)と、12.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、pH8.5にて変動幅±0.2以内となるように調整しながら連続的に添加混合して、水酸化ニッケルの沈殿を生成させた。
その際、ニッケル塩混合水溶液は6mL/分の速度で添加した。また、液温は60℃とし、攪拌羽を200rpmで回転させてビーカー内の溶液を撹拌した。1Lのニッケル塩水溶液を添加した後、3時間攪拌を続けて水酸化ニッケルを熟成させた。
その後、水酸化ニッケルの沈殿を濾過し、20℃の純水中で30分間撹拌するレパルプ洗浄と濾過を4回繰り返して水酸化ニッケルの濾過ケーキを得た。洗浄後、得られた濾過ケーキの含水率は25〜35質量%であった。この濾過ケーキを送風乾燥機を用いて大気雰囲気中にて110℃で24時間乾燥し、水酸化ニッケルを得た(晶析工程)。
得られた水酸化ニッケル10gを、大気焼成炉により大気雰囲気中にて500℃で2時間仮焼し(仮焼工程)、次いで900℃で3時間焙焼(焙焼工程)して酸化ニッケルを得た(熱処理工程)。
次に、熱処理によって得られた酸化ニッケルを、乳鉢で解砕して酸化ニッケル粉末を得た。
次に、熱処理によって得られた酸化ニッケルを、乳鉢で解砕して酸化ニッケル粉末を得た。
得られた酸化ニッケル微粉末は、塩素含有量が20質量ppm以下、硫黄含有量は35質量ppm、ナトリウム含有量も33質量ppmであり、比表面積は5.8m2/g、D90は0.8μmであった。
引き続き、以下の実施例2〜8及び比較例1〜7を実施したが、これらについては上記実施例1と異なる条件のみを記載した。また、実施例1〜8及び比較例1〜7について、中和に用いたアルカリの種類、中和時のpH、ニッケル塩の混合比(Ni2SO4濃度及びNi濃度)、洗浄条件(温度、回数)及び熱処理条件を下記表1に、得られた酸化ニッケル粉末の比表面積、不純物含有量(塩素、硫黄、アルカリ金属)、及びD90を下記表2に、それぞれまとめて示した。
[実施例2]
晶析工程において、ニッケル塩混合溶液の塩化ニッケルと硫酸ニッケルの混合比を、塩化ニッケル70質量%及び硫酸ニッケルが30質量%とした以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例3]
晶析工程において、水酸化ナトリウム水溶液に代えて水酸化カリウムを用いて中和した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例4]
焙焼工程において、800℃で3時間焙焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。。
[実施例5]
焙焼工程において、980℃で3時間焙焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例6]
晶析工程において、pHを9.0に調整した以外は上記実施例1と同様にして、酸
化ニッケル粉末を得た。
[実施例7]
晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度を80g/lに変更したこと、20℃の純水でのレパルプ洗浄を2回、60℃の純水でのレパルプ洗浄を2回行ったこと以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例8]
仮焼工程において、600℃で2時間仮焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
晶析工程において、ニッケル塩混合溶液の塩化ニッケルと硫酸ニッケルの混合比を、塩化ニッケル70質量%及び硫酸ニッケルが30質量%とした以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例3]
晶析工程において、水酸化ナトリウム水溶液に代えて水酸化カリウムを用いて中和した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例4]
焙焼工程において、800℃で3時間焙焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。。
[実施例5]
焙焼工程において、980℃で3時間焙焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例6]
晶析工程において、pHを9.0に調整した以外は上記実施例1と同様にして、酸
化ニッケル粉末を得た。
[実施例7]
晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度を80g/lに変更したこと、20℃の純水でのレパルプ洗浄を2回、60℃の純水でのレパルプ洗浄を2回行ったこと以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例8]
仮焼工程において、600℃で2時間仮焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例1]
晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の代わりに塩化ニッケル水溶液を用いた以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例2]
晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の代わりに硫酸ニッケル水溶液を用いた以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例3]
焙焼工程において、780℃で3時間焙焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例4]
焙焼工程において、1000℃で3時間焙焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例5]
晶析工程において、pHを7.9に調整した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例6]
晶析工程において、pHを9.5に調整したところ、生成した水酸化ニッケルは粒子が微細であり、吸引や遠心分離による濾過が困難であった。後工程に必要な最小量を回収物の含水量が50質量%を超える状態で回収し、乾燥後、以降の工程を上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例7]
晶析後の乾燥を長時間として仮焼に替えた例として、晶析工程において、110℃で2日間乾燥し、仮焼しなかった以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の代わりに塩化ニッケル水溶液を用いた以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例2]
晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の代わりに硫酸ニッケル水溶液を用いた以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例3]
焙焼工程において、780℃で3時間焙焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例4]
焙焼工程において、1000℃で3時間焙焼した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例5]
晶析工程において、pHを7.9に調整した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例6]
晶析工程において、pHを9.5に調整したところ、生成した水酸化ニッケルは粒子が微細であり、吸引や遠心分離による濾過が困難であった。後工程に必要な最小量を回収物の含水量が50質量%を超える状態で回収し、乾燥後、以降の工程を上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例7]
晶析後の乾燥を長時間として仮焼に替えた例として、晶析工程において、110℃で2日間乾燥し、仮焼しなかった以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
上記の結果から分るように、実施例1〜8において、塩素、硫黄およびアルカリ金属の含有量は全て50質量ppm以下となっている。また、比表面積は5.5m2/g以上と非常に大きく、D90値も1μm以下の微細な酸化ニッケル粉末が得られていることが分る。
一方、比較例1及び2では、塩化ニッケルと硫酸ニッケルのニッケル塩混合水溶液を用いなかったため、塩素あるいは硫黄の含有率が50質量ppmを超えており、比較例2では、比表面積が小さくD90値も1μmを超えている。また、比較例3では、焙焼理温度が低いため、塩素と硫黄の揮発が十分でなく、いずれの含有量も50質量ppmを超えている。更に、比較例4では、焙焼温度が高いため、比表面積が小さくD90値も1μmを超えている。
比較例5では、晶析時のpHが低いため、水酸化ニッケル中に残存する塩素イオンや硫酸イオンが増加したため、比較例6では、晶析時のpHが高いため、水酸化ニッケル微細になり過ぎ、塩素と硫黄のいずれの含有量も50質量ppmを超えている。
比較例7では、仮焼工程がないため、塩素と硫黄のいずれの含有量も50質量ppmを超えており、同条件で焙焼した実施例より比表面積が小さくなっている。
比較例7では、仮焼工程がないため、塩素と硫黄のいずれの含有量も50質量ppmを超えており、同条件で焙焼した実施例より比表面積が小さくなっている。
本発明により得られる酸化ニッケル粉末は、不純物の含有量、特に塩素、硫黄およびアルカリ金属の含有量が低く、且つ微細であり、フェライト部品などの電子部品材料として好適である。また、固体酸化物形燃料電池で利用される燃料極材料用としても好適であり、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
Claims (7)
- 硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において熱処理することにより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備え、
前記熱処理工程は、200℃以上、800℃以下の温度で仮焼する仮焼工程と、仮焼後に800℃を超え、980℃以下の温度で焙焼する焙焼工程を含むことを特徴とする酸化ニッケル粉末の製造方法 - 前記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液中の全ニッケル塩の量に対する硫酸ニッケルの量の割合が10〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
- 前記晶析工程で用いるアルカリが、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法
- 前記ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度が50〜130g/Lであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
- 前記仮焼工程において、仮焼する温度が200℃以上、600℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
- 得られるニッケル粉末の比表面積が5.5m2/g以上、硫黄、塩素およびアルカリ金属の含有量がいずれも50質量ppm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
- 得られるニッケル粉末のレーザー回折散乱法で測定したD90が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
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WO2023060991A1 (zh) * | 2021-10-12 | 2023-04-20 | 广东邦普循环科技有限公司 | 一种利用水淬镍制备氧化镍的方法 |
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