JP2013035738A - 酸化ニッケル粉末及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 不純物含有量が少なく且つ微細で、電子部品材料として好適な酸化ニッケル粉末、及びその工業的に安定な製造方法を提供する。
【解決手段】硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを晶析させ、得られた水酸化ニッケルを順に30℃未満の水と30℃以上の水で洗浄した後、得られた水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中にて700〜980℃の温度で熱処理することにより酸化ニッケル粉末を製造する。得られる酸化ニッケル粉末は、塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量が50質量ppm以下であり、且つ比表面積が5.5m/g以上である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、酸化ニッケル粉末とその製造方法に関し、更に詳しくは、不純物含有量、特に硫黄、塩素、アルカリ金属の含有量が少なく且つ微細であって、電子部品材料として好適な酸化ニッケル粉末及びその製造方法に関する。
一般に、酸化ニッケル粉末は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等のニッケル塩類又はニッケルメタル粉を、ロータリーキルン等の転動炉、プッシャー炉等の連続炉、あるいはバーナー炉等のバッチ炉を用いて、酸化性雰囲気下で焼成することによって製造される。これらの酸化ニッケル粉末は多様な用途に用いられており、例えば電子部品材料としての用途では、酸化鉄、酸化亜鉛等の他の材料と混合した後、焼結することにより製造されるフェライト部品等として広く用いられている。
上記フェライト部品のように、複数の材料を混合して焼成することにより、これらを反応させて複合金属酸化物を製造する場合には、生成反応は固相の拡散反応で律速されるので、一般に原料として微細なものが用いられる。これにより、他材料との接触確率が高くなると共に粒子の活性が高くなるため、低温度且つ短時間の処理で反応が均一に進むことが知られている。従って、このような複合金属酸化物を製造する方法においては、原料の粒径を小さくすることが効率向上の重要な要素となる。
尚、粉体が微細であることを測る指標としては、粒径以外に比表面積も用いられている。粒径と比表面積には、粒径=6/(密度×比表面積)の計算式で表される関係があり、比表面積が大きいほど粒径が小さくなることが分かる。ただし、上記計算式で表される関係は粒子が真球状であると仮定して導き出されたものであるため、計算式から得られる粒径と実際の粒径との間にはいくらかの誤差を含むことになる。
また、近年においては、フェライト部品の高機能化、並びに酸化ニッケル粉末のフェライト部品以外の電子部品等への用途の広がりに伴い、酸化ニッケル粉末に含有される不純物元素の低減が求められている。これら不純物元素の中でも、特に硫黄、塩素及びアルカリ金属は、電極に利用されている銀、ニッケル、銅と反応して電極劣化を生じさせたり、焼成炉を腐食させたりすることから、できるだけ低減することが望ましい。
上記酸化ニッケル粉末の製造方法としては、原料として硫酸ニッケルを用い、これを焙焼する方法が知られている。例えば、特開2001−032002号公報(特許文献1)には、硫酸ニッケルを原料とし、キルンなどを用いて酸化雰囲気中にて焙焼温度を950〜1000℃とする第1段焙焼と、焙焼温度を1000〜1200℃とする第2段焙焼とを行う方法が記載されている。この製造方法によれば、平均粒径が制御され、且つ硫黄品位が50質量ppm以下である酸化ニッケル微粉末が得られるとしている。
また、特開2004−123488号公報(特許文献2)には、450〜600℃での仮焼による脱水工程と、1000〜1200℃での焙焼による硫酸ニッケルの分解工程とを明確に分離した酸化ニッケル粉末の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、硫黄品位が低く且つ平均粒径が小さい酸化ニッケル粉末を安定して製造できるとしている。
更に、特開2004−189530号公報(特許文献3)には、横型回転式製造炉を用いて、強制的に空気を導入しながら、最高温度を900〜1250℃として硫酸ニッケルを焙焼する酸化ニッケル粉末の製造方法が提案されている。この製造方法によっても、不純物が少なく、硫黄品位が500質量ppm以下の酸化ニッケル粉末が得られるとしている。
しかしながら、上記特許文献1〜3のいずれの方法においても、硫黄含有量を低減するために焙焼温度を高くすると酸化ニッケル粉末の粒径が粗大になり、また粒子を微細にするために焙焼温度を下げると硫黄含有量が多くなるという欠点があり、酸化ニッケル粉末の粒径と硫黄含有量を同時に最適値に制御することは困難であった。また、原料として硫酸ニッケルを用いるため、加熱する際に大量のSOxを含む有害ガスが発生し、これを除害処理するために高価な設備が必要になるという問題を有していた。
上記SOxを含む有害ガス発生の対策として、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等のニッケル塩を含む水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリで中和して水酸化ニッケルを晶析させ、これを焙焼して酸化ニッケルを合成する方法も考えられる。この水酸化ニッケルを焙焼する方法では、SOxを含む有害ガスの発生がないため、低コストでの製造が可能であると考えられる。
例えば、特開2005−002395号公報(特許文献4)には、ニッケル粉を製造する際の中間物ではあるが、水酸化ニッケルを酸化性雰囲気下で加熱処理することによって、酸化ニッケル微粉末が得られることが開示されている。しかしながら、このような水酸化ニッケルにおいては、中和用のアルカリから混入するアルカリ金属、例えばナトリウムやカリウムが、一般的に100質量ppm以上含有されている。また、ここでの酸化ニッケルは中間物であるため粒径等については何等考慮されておらず、微細な酸化ニッケル微粉末が得られたとする報告はなされていない。
また、特開2009−196870号公報(特許文献5)には、マグネシウムを含む塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和し、得られた水酸化ニッケルを洗浄した後、450〜650℃の温度で焙焼して酸化ニッケルとし、有機酸の水溶液で洗浄するか、洗浄と解砕を同時に行うことにより塩素を除去する酸化ニッケルの製造方法が開示されている。
この方法で得られる酸化ニッケル粉末は、塩素品位が300質量ppm以下で且つ比表面積が6〜12m/gであるとされているが、粗大化抑制を意図して添加したマグネシウムが酸化ニッケル粉末に混入するという問題点があった。そのため、この方法で得られた酸化ニッケル粉末は、フェライト等の原料として用いたとき十分な焼結性が得られない場合があり、必ずしも電子部品材料として好適なものとは言えなかった。
特開2001−032002号公報 特開2004−123488号公報 特開2004−189530号公報 特開2005−002395号公報 特開2009−196870号公報
本発明は、上記上記した従来技術の問題点に鑑み、不純物品位、特に塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量が少なく、粒径が微細で、電子部品材料として好適な酸化ニッケル粉末及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、ニッケル塩水溶液を中和して得た水酸化ニッケルを焙焼して得られる酸化ニッケル粉末の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、水に硫酸ニッケルと塩化ニッケルを溶解したニッケル塩混合水溶液を中和して水酸化ニッケルを晶析させ、得られた水酸化ニッケルを特定条件で洗浄した後、熱処理することによって、塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量が少なく、且つ微細な酸化ニッケル粉末を製造できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法は、硫酸ニッケルと塩化ニッケルとのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを30℃未満の温度の水で洗浄した後、30℃以上の温度の水で洗浄する洗浄工程と、洗浄した水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において700〜980℃の温度で熱処理することより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備えることを特徴とする。
上記本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法では、洗浄工程において、30℃未満の温度の水で洗浄した後、30℃以上の温度の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで30℃以上の温度の水で洗浄することが好ましい。また、30℃未満の温度の水での洗浄と30℃以上の温度の水での洗浄を、それぞれ少なくとも2回行うことが好ましく、更には、30℃以上の温度の水酸化ナトリウム水溶液での洗浄を少なくとも2回行うことが好ましい。
また、上記本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法では、晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液中の全ニッケル塩の量に対する硫酸ニッケルの量の割合が10〜60質量%であることが好ましく、また、ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度が50〜130g/lであることが好ましい。更に、晶析工程で用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムであることが好ましい。
本発明は、上記酸化ニッケル粉末の製造方法で得られる酸化ニッケル粉末を提供するものであり、その酸化ニッケル粉末は比表面積が5.5m/g以上であって、且つ硫黄、塩素及びアルカリ金属の含有量がいずれも50質量ppm以下であることを特徴とする。
上記本発明の酸化ニッケル粉末は、硫黄、塩素及びアルカリ金属の含有量がいずれも20質量ppm以下であることが好ましく、更には、レーザー散乱法で測定したD90が1μm以下であることが好ましい。
本発明によれば、不純物品位、特に塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量が、いずれも50ppm以下と極めて少なく、しかもレーザー散乱法で測定したD90が1μm以下と、従来の方法によって得られるものに比べて微細な酸化ニッケル粉末を提供することができる。従って、本発明の酸化ニッケル粉末はフェライト部品などの電子部品材料として好適であり、その製造方法は比較的容易で且つ工業的に安定して大量生産が可能であるため、その工業的価値は極めて大きい。
本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法は、硫酸ニッケルと塩化ニッケルを水に溶解したニッケル塩混合水溶液を、アルカリによってpHを8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを30℃未満の温度の水と30℃以上の温度の水とで順に洗浄する洗浄工程と、洗浄した水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中にて700〜950℃の温度で熱処理して酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備えている。
上記本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法においては、晶析工程においてニッケル塩水溶液として塩化ニッケルと硫酸ニッケルからなるニッケル塩混合水溶液用いること、並びに、洗浄工程において30℃未満の温度の水での洗浄と30℃以上の温度の水での洗浄をこの順序で実施することが特に重要である。
即ち、上記晶析工程においては、塩化ニッケルと硫酸ニッケルのニッケル塩混合水溶液を用いることによって、アルカリで中和して得られた水酸化ニッケル中に残留イオンとして微量の塩素イオンと硫酸イオン及びアルカリ金属イオンが含有され、これらが後の熱処理工程において生成した酸化ニッケル粒子の焼結による結晶成長方向を制御し、微細で高比表面積の酸化ニッケル粉末を得ることができる。
上記残留イオンの中でも硫酸イオン(SO 2−)、即ちオキソ酸型の陰イオンが重要と推察される。詳細な理由は不明であるが、アルカリによる加水分解・中和反応の際に、オキソ酸型陰イオンの水酸化ニッケル(錯体)への配位がcis構造体として結合し、熱処理工程において酸化ニッケルのC軸方向の結晶粗大粒化を阻害することで、結晶成長を制御していると考えられる。このような熱処理における酸化ニッケル粒子の粗大化の抑制により、結果として微細化された電子材料に好適な酸化ニッケル粉末を他の特性を損なうことなく得ることができる。
一方、塩化ニッケルから晶析した水酸化ニッケルは、熱処理工程において比較的低温から微細で低塩素の酸化ニッケルを生成しやすいため、塩化ニッケルを含むニッケル塩混合水溶液を用いる利点がある。その理由は明確ではないが、残留する塩素イオンが脱離・ガス化しやすいこと、アルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合に中和により易水溶性のNaClを作るため、水酸化ニッケル中に焼結を阻害するNa化合物が残留し難いことなどが考えられる。
このように、晶析工程において塩化ニッケルと硫酸ニッケルからなるニッケル塩混合水溶液を用いることによって、熱処理時における酸化ニッケル粒子の粗大化の抑制することができると同時に、得られる水酸化ニッケル中の不純物含有量の低減を図ることができる。
上記ニッケル塩混合水溶液に含有される塩化ニッケルと硫酸ニッケルの混合割合は、特に制限されるものではないが、全ニッケル塩の量に対する硫酸ニッケルの量の割合が10〜60質量%となるように混合することが好ましい。硫酸ニッケルの量の割合が10質量%未満であると、上記粒子粗大化の抑制効果が十分に得られないことがある。一方、60質量%を超えると、アルカリでの中和において難溶性のNaSOあるいはKSOの生成量が増加して、洗浄工程での除去が十分にできず、最終的に得られる酸化ニッケル粉末中に残留する硫黄含有量が多くなり過ぎる恐れがある。
また、上記洗浄工程においては、30℃未満の温度の水と30℃以上の温度の水で順に洗浄することにより、酸化ニッケル粉末中に残留する不純物、特に塩素、硫黄及びアルカリ金属を大幅に低減させることが可能となる。
具体的には、例えばアルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合、晶析工程において、塩化ニッケル由来のNaClと硫酸ニッケル由来のNaSOからなる中和塩が混在して生成する。各中和塩の温度の違いによる水への溶解度を比較すると、NaClは温度に影響されず溶解しやすいのに対して、NaSOは室温では溶解し難いが加温すると溶解度が急激に増加し、40℃前後で極大まで増加する。一方、例えばアルカリとして水酸化カリウムを用いた場合、晶析工程でKClとKSOが生成するが、KClは水に対して易溶性で溶解度が温度に影響されないのに対して、KSOは水に比較的溶け難い。
上記硫酸塩であるNaSO又はKSOの溶解度が、塩化物であるNaCl又はKClの溶解度以上となる温度は概ね30℃以上である。本発明の洗浄工程では、このような硫酸塩と塩化物の水に対する溶解度を利用して、例えば、加熱していない30℃未満の純水に水酸化ニッケルを投入し、ミキサー等で撹拌洗浄して濾過することによって、まず塩化物を除去する。次に、30℃以上、好ましくは40〜60℃に加熱した純水に水酸化ニッケルを投入し、撹拌洗浄することで硫酸塩を除去することができる。
この洗浄工程において、更に効果的に洗浄するためには、晶析工程で得られた水酸化ニッケル中に残留する硫酸塩、特にKSOを、水酸化ナトリウムの添加によりナトリウム塩に置換する形で水に溶解させ除去することができる。即ち、上記のごとく30℃未満の温度の水で洗浄した後、30℃以上の温度の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、次に30℃以上の温度の水で洗浄することが好ましい。30℃以上の温度の水酸化ナトリウム水溶液での洗浄を行わない場合、溶解度の低いNaSOやKSOなどが溶け残って残留しやすいため、完全に除去するには30℃以上の温度の水での洗浄回数を増やすことが必要となる。
上記水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、特に限定されないが、上記塩化物や硫化物の再溶解及び水酸化ニッケルの相変化による不純物吐き出しを十分に行わせるためには、0.01〜0.5モルの範囲が好ましく、0.05〜0.2モルの範囲が更に好ましい。水酸化ナトリウム水溶液の濃度が0.01モルでは上記効果が十分に得られないことがあり、逆に0.5モルを超えると最終的に残留するナトリウムが多くなる恐れがあるからである。
上記のごとく水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、30℃以上の温度の水で洗浄することにより、上記水酸化ナトリウム水溶液による洗浄で新たに生成したNaClとNaSOを含めて、NiClやNiSOなどの微量に残留していた化合物が除去される。このようにして、低塩素、低硫黄、低ナトリウムの水酸化ニッケルとすることができる。
以下、本発明による酸化ニッケル粉末の製造方法を工程毎に詳細に説明する。まず、晶析工程は、硫酸ニッケルと塩化ニッケルとを混合したニッケル塩混合水溶液をアルカリによってpHを8.3〜9.0に中和して、水酸化ニッケルを得る工程である。
中和に用いるアルカリとしては、特に限定されるものではないが、反応液中に残留するニッケルの量を考慮すると、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、コストを考慮すると水酸化ナトリウムが特に好ましい。また、アルカリは固体又は液体のいずれの状態でニッケル塩混合水溶液に添加してもよいが、取扱いの容易さから水溶液として添加することが好ましい。均一な特性の水酸化ニッケルを得るためには、十分に撹拌されている反応槽内にニッケル塩混合水溶液とアルカリ水溶液をダブルジェット方式で添加することが有効である。その際、反応槽内に予め入れておく液は純水にアルカリを添加した液とし、所定のpHに調整しておくことが好ましい。
アルカリでの中和反応では、pHを8.3〜9.0の範囲内で一定とすることが必要である。pHが8.3未満では、水酸化ニッケル中に残存する塩素イオンや硫酸イオンといった陰イオン成分が増大し、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末中の塩素及び硫黄の含有量を十分に低減させることが困難になる。また、pHが9.0を超えて高くなると、得られる水酸化ニッケルが微細になりすぎるため、不純物の巻き込みが増加すると共に濾過が困難になる。
また、上記中和反応時のpHは、変動幅が8.3〜9.0の範囲内の設定値から±0.2以内となるように制御することが好ましい。pHの変動幅がこれより大きくなると、不純物の増大や酸化ニッケル粉末の粒径が大きくなり、低比表面積化を招く恐れがある。尚、上記中和条件であるpH8.3より低いpHでは水溶液中に僅かにニッケル成分が残存することがあるが、この場合には中和晶析後にpHを10程度まで上げ、濾液中のニッケルを低減させることが好ましい。
また、上記ニッケル塩混合水溶液において、ニッケル塩の合計濃度は、特に限定されないが、ニッケル濃度として50〜130g/lの範囲が好ましい。ニッケル濃度が50g/l未満では晶析工程での生産性が悪くなり、130g/lを超えると水溶液中の陰イオン濃度が高くなり、生成した水酸化ニッケル中の塩素や硫黄の含有量が多くなるため、最終的に得られる酸化ニッケル粉末中の塩素及び硫黄の含有量を十分に低減できない場合がある。
中和反応時の液温は、通常の条件で特に問題なく、室温で行うことも可能であるが、水酸化ニッケル粒子を十分に成長させるためには50〜70℃の範囲とすることが好ましい。水酸化ニッケル粒子を十分に成長させることで、水酸化ニッケル中への塩素、硫黄及びナトリウムなどの不純物の巻き込みを抑制し、最終的に酸化ニッケル粉末中の不純物を低減させることができる。液温が50℃未満では、水酸化ニッケル粒子の成長が十分ではなく、また水酸化ニッケル中への不純物の巻き込みが多くなりやすい。また、液温が70℃を超えると、水の蒸発が激しくなり、水溶液中の不純物濃度が高くなるため、生成した水酸化ニッケル中の不純物含有量が多くなることがある。
洗浄工程は、上記晶析工程で回収した水酸化ニッケルを洗浄する工程である。最初に30℃未満の温度の水で水酸化ニッケルを洗浄した後、30℃以上の温度の水で洗浄することにより、不純物品位、特に塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量を低減させることができる。特に、上記30℃未満の温度の水での洗浄と30℃以上の温度の水での洗浄との間に、30℃以上の温度の水酸化ナトリウム水溶液での洗浄を行うことが好ましい。
即ち、30℃未満の水で洗浄して塩化物などを除去し、次に30℃以上の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄して、残留している微量の塩化ニッケルなどのほか硫酸塩を溶解あるいは中和して除去する。特に晶析時に水酸化カリウムを用いて中和した場合には、残留しているカリウム塩(KSO)がナトリウム塩(NaSO)に変ることで水への溶解度が向上し、除去効率が上がる効果がある。また、30℃以上の水酸化ナトリウム水溶液中で洗浄すると、水酸化ニッケル中の結晶水が離脱するため、この結晶構造が変化する際に結晶間に巻き込まれていた塩素や硫黄が放出されて不純物濃度が一層低下する。最後に、30℃以上の水で洗浄することで、得られる酸化ニッケル粉末中の塩素、硫黄及びアルカリ金属を大幅に低減させることができる。
上記30℃未満の温度の水での洗浄及び30℃以上の温度の水での洗浄は、1回の洗浄のみでは不純物除去効果が十分に得られないことがあるため、少なくとも2回行うことが好ましい。また、30℃以上の温度の水酸化ナトリウム水溶液による洗浄についても、少なくとも2回行うことが好ましい。
水酸化ニッケルに対する洗浄液(水又は水酸化ナトリウム水溶液)の量は、特に限定されるものではなく、不純物が十分に低減できる量とすればよいが、水酸化ニッケルを良好に分散させるためには、水酸化ニッケル/洗浄液の混合比を80〜150g/lとすることが好ましく、90〜110g/lとすることが更に好ましい。また、処理時間についても特に限定されるものではなく、処理条件により残留する不純物の濃度が十分に低減される洗浄条件(純水温度、洗浄時間、水酸化物濃度の組み合わせ)とすればよい。不純物濃度が十分に低減できる洗浄条件とすることで、微量に残留するオキソ酸(SO 2−)による効果で酸化ニッケルの微細化効果も十分に得られる。
上記洗浄の方法は、特に限定されるものではなく、ミキサー等による洗浄液との混合撹拌以外に、濾過物に洗浄液を通過させて塩を溶解除去するフィルタープレスによる洗浄濾過も有効である。水による洗浄では、不純物混入の恐れがない純水を用いることが好ましい。また、洗浄に用いる装置としては、通常の湿式反応槽やフィルタープレスなどがある。また、洗浄液を30℃以上に加熱して洗浄する場合、加温可能な通常の湿式反応槽を用いることができる。湿式反応槽を用いた洗浄においては、洗浄中は水酸化ニッケルを含むスラリーを撹拌することが好ましく、例えば超音波撹拌や機械式撹拌を用いることができる。
洗浄後の水酸化ニッケルは濾過して回収するが、濾過ケーキの含水率は10〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%とすることが更に好ましい。含水率が10質量%未満であると、更に洗浄する場合に濾過ケーキが均一に洗浄液中に分散しにくいため洗浄処理の効率が悪くなることや、濾過ケーキの含水率を下げるため厳しい脱水処理が必要となるなどの制約があり好ましくない。含水率が40質量%よりも高い場合には、水酸化ニッケルのハンドリング性が悪く、均一な処理を妨げる場合があるうえ、一定量の水酸化ニッケルを得るために必要な処理量が増加してしまうなどの不都合がある。
熱処理工程は、洗浄後の水酸化ニッケルを熱処理して、酸化ニッケルとする工程である。この熱処理により水酸化ニッケル結晶内の水酸基が脱離して酸化ニッケルの粒子が形成されるが、その際の熱処理温度を適切に設定することによって、粒径の微細化と硫黄含有量の制御が可能であると共に、洗処理後に残存した塩素の多くの部分を揮発させることができる。
この水酸化ニッケルの熱処理は、非還元性雰囲気中において700〜980℃の温度で行うが、この熱処理温度は800〜980℃の範囲が好ましく、850〜960℃の範囲が更に好ましい。熱処理温度が700℃未満では、残存塩素や硫黄の揮発が不十分であり、酸化ニッケル中の塩素及び硫黄の含有量を十分に低減させることができない。また、水酸化ニッケルの一次粒子は板状であり、酸化ニッケルの生成に伴い一次粒子が球状化するが、この球状化が700℃未満では進まず、酸化ニッケルの微細化も十分に起こらない。一方、980℃を超えると、酸化ニッケル粒子同士の焼結が顕著になり、比表面積が小さくなったり、機械的な解砕が必要になったりする。更に焼結が進行すると、機械的解砕でも必要な比表面積を得ることが困難になる。
熱処理時間は、処理温度及び処理量に応じて適宜設定することができるが、最終的に得られる酸化ニッケル粉末の比表面積が5.5m/g以上となるように設定すればよい。熱処理工程後に酸化ニッケルを解砕した場合、得られる酸化ニッケル粉末の比表面積は、熱処理後の酸化ニッケルの比表面積に対して0.5m/g程度増加する程度であるため、熱処理後の酸化ニッケル粉末の比表面積で判断して、解砕の要否及び条件を設定することができる。熱処理の雰囲気は非還元性雰囲気であれば特に限定されないが、経済性を考慮して大気雰囲気とすることが好ましい。また、熱処理の際に水酸基の脱離により発生する水蒸気を排出するため、十分な流速を持った気流中で行うことが好ましい。尚、熱処理には、一般的な焙焼炉を使用することができる
上記熱処理工程の後に、得られた酸化ニッケル粉末を機械的に解砕する工程を追加することもできる。解砕により増加する比表面積は上述のとおり0.5m/g程度と小さいが、解砕により凝集をほぐすことで、電子材料などとして一層好適な材料とすることが期待できる。また、熱処理工程で水酸化ニッケル結晶中の水酸基が離脱して酸化ニッケルとなる際に、オキソ酸陰イオンとニッケル錯体はcis型に結合することで粒径の微細化を促進すると推定されるが、不純物除去のために高温で熱処理した場合、酸化ニッケル粒子同士の焼結が進行することがある。このような場合には、解砕によって焼結部を破壊して酸化ニッケル粒子を微細化し、酸化ニッケル粉末の比表面積を十分に高めることが可能である。
酸化ニッケル粉末の解砕方法としては、乳鉢等による機械式解砕、特に工業的規模においてはビーズミルやボールミル等の解砕メディアを用いたものや、ジェットミル等の解砕メディアを用いないものが一般的な方法を用いることができるが、ジルコニア等の解砕メディアを構成している成分が不純物として混入することを防止するため、解砕メディアを用いることなく解砕を行うことが好ましい。
解砕メディアを用いることなく解砕する方法としては、粉体同士を衝突させる方法や、液体などの媒体により粉体にせん断力をかける方法等がある。前者を用いた解砕装置としては、例えば、ジェットミル、アルティマイザー(登録商標)等が挙げられる。また、後者を用いた解砕装置としては、例えば、ナノマイザー(登録商標)等が挙げられる。これらの解砕方法のうち、不純物混入の恐れが少なく且つ比較的大きな解砕力が得られることから、粉体同士を衝突させる方法が特に好ましい。また、解砕条件には特に限定がなく、通常の条件の範囲内での調整により容易に目的とする粒度分布の酸化ニッケル粉末を得ることができる。
以上の方法により製造される本発明の酸化ニッケル微粉末は、不純物含有量、特に塩素、硫黄、アルカリ金属の含有量が少なく、比表面積も大きいので、フェライト部品などの電子部品用の材料として好適な酸化ニッケル粉末である。具体的には、比表面積が5.5m/g以上であり、塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量がいずれも50質量ppm以下、より好ましくは20質量ppm以下である酸化ニッケル粉末である。尚、比表面積の上限は8m/g程度である。
また、本発明の酸化ニッケル微粉末は、その製造方法においてマグネシウム等の第2族元素を添加する工程を含まないので、これらの元素が不純物として含まれることは実質的にありえない。更に解砕メディアを使用せずに解砕する場合は、ジルコニアなどの解砕メディアの構成成分も含まれなくなるので、ジルコニア品位及び第2族元素品位を30質量ppm以下にすることができる。
更に、本発明の酸化ニッケル粉末は、レーザー散乱法で測定したD90(粒度分布曲線における粒子量の体積積算90%での粒径)が1μm以下であることが好ましい。尚、レーザー散乱法で測定したD90は電子部品等の製造時に他の材料と混合されるときに酸化ニッケル粉末が解砕されて小さくなるが、この解砕によって比表面積が大きくなる可能性は低いため、酸化ニッケル粉末自体の比表面積が大きいことがより重要である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、実施例及び比較例において、酸化ニッケル粒子の粒径はレーザー散乱法により測定し、その粒度分布から体積積算90%での粒径D90を求めた。また、酸化ニッケル粒子の比表面積の分析は、窒素ガス吸着によるBET法により求めた。
また、塩素含有量の分析は、塩素の揮発を抑制できる密閉容器内にて酸化ニッケル粉末をマイクロ波照射下で硝酸に溶解し、硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を蛍光X線定量分析装置(PANalytical社製、Magix)を用いて検量線法で評価することによって行った。アルカリ金属濃度の分析は、同じく硝酸に溶解した後、蛍光X線定量分析装置を用いて検量線法で評価した。また、硫黄含有量の分析は、同じく硝酸に溶解した後、ICP発光分光分析装置(セイコー社製、SPS−3000)によって行った。
[実施例1]
3リットルのビーカー内に、純水に水酸化ナトリウムを溶解してpH8.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液500mlを準備した。この水溶液に、塩化ニッケルと硫酸ニッケルを混合比1:1(硫酸ニッケル50質量%)で混合して水に溶解したニッケル塩混合水溶液(ニッケル濃度100g/l)と、12.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、pH8.5にて変動幅±0.2以内となるように調整しながら連続的に添加混合して、水酸化ニッケルの沈殿を生成させた(晶析工程)。
その際、ニッケル塩混合水溶液は6ml/分の速度で添加した。また、液温は60℃とし、混合は撹拌羽を200rpmで回転させて行った。1リットルのニッケル塩混合水溶液を添加した後、3時間撹拌を続けながら熟成させた。
その後、水酸化ニッケルの沈殿を濾過し、得られた水酸化ニッケルを20℃の純水に100g/lとなるように混合して30分間撹拌するレパルプ洗浄を2回繰り返した後、60℃の純水で同様のレパルプ洗浄を1回行い、水酸化ニッケル濾過ケーキを得た(洗浄工程)。上記洗浄工程で得られた濾過ケーキの含水率は25〜35質量%であった。
この濾過ケーキを大気中にて送風乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥し、水酸化ニッケルを得た。得られた水酸化ニッケル10gを大気焼成炉に供給し、800℃で3時間熱処理することにより酸化ニッケルを得た(熱処理工程)。次に、得られた酸化ニッケルを、乳鉢で解砕して酸化ニッケル粉末を得た。
得られた酸化ニッケル粉末は、塩素含有量が20質量ppm、硫黄含有量が25質量ppm、ナトリウム含有量が35質量ppm以下であった。また、酸化ニッケル粉末の比表面積は6.3m/g、D90は0.7μmであった。
引き続き、以下の実施例2〜9及び比較例1〜6を実施したが、これらについては上記実施例1と異なる条件のみを記載した。また、実施例1〜9及び比較例1〜6について、中和に用いたアルカリの種類、中和時のpH、ニッケル塩の混合比(NiSO濃度及びNi濃度)、洗浄条件(温度、回数)及び熱処理温度を下記表1に、得られた酸化ニッケル粉末の比表面積、不純物含有量(塩素、硫黄、アルカリ金属)、及びD90を下記表2に、それぞれまとめて示した。
[実施例2]
上記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の塩化ニッケルと硫酸ニッケルの混合比を、塩化ニッケル70質量%及び硫酸ニッケルが30質量%とした以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例3]
上記晶析工程において、水酸化ナトリウム水溶液に代えて水酸化カリウムを用いて中和した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例4]
上記熱処理工程において、700℃で3時間の熱処理を行った以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例5]
上記熱処理工程において、950℃で3時間の熱処理を行った以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例6]
上記晶析工程において、pHを9.0に調整した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例7]
上記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度を80g/lに変更した以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例8]
上記洗浄工程において、60℃の純水によるレパルプ洗浄を40℃で行った以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例9]
上記洗浄工程において、20℃と60℃の純水による各レパルプ洗浄をそれぞれ4回行った以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例1]
上記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の代わりに塩化ニッケル水溶液を用いた以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例2]
上記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の代わりに硫酸ニッケル水溶液を用いた以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例3]
上記熱処理工程において、600℃で3時間の熱処理を行った以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例4]
上記洗浄工程を行わず、晶析工程で得られた水酸化ニッケルの沈殿物を乾燥した後、熱処理工程を行ったこと以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例5]
上記洗浄工程において、20℃の純水によるレパルプ洗浄を4回行った以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例6]
上記洗浄工程において、50℃の純水によるレパルプ洗浄を4回行った以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
Figure 2013035738
Figure 2013035738
上記の結果から分かるように、実施例1〜9において、全ての不純物含有量が50質量ppm以下となっている。また、比表面積は5.5m/g以上と非常に大きく、D90値も1μm以下の微細な酸化ニッケル粉末が得られていることが分かる。
一方、比較例1及び2では、塩化ニッケルと硫酸ニッケルのニッケル塩混合水溶液を用いなかったため、塩素あるいは硫黄の含有率が50質量ppmを超えている。また、比較例3では、熱処理温度が低いため塩素と硫黄の揮発が十分でなく、いずれの含有量も50質量ppmを超えている。更に、比較例4〜6では、洗浄を行わなかったか、あるいは洗浄条件が本発明の範囲外であるため、水酸化ニッケルに残留する不純物が多くなり、酸化ニッケル粉末の不純物含有量が高くなっている。
次に、以下の実施例10〜18及び比較例7〜12を実施し、洗浄工程において水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を追加したときの効果を確認した。実施例10については実施例1と異なる条件のみを記載し、実施例11〜18及び比較例7〜12については実施例10と異なる条件のみをそれぞれ記載した。
また、実施例10〜18及び比較例7〜12について、中和に用いたアルカリの種類、中和時のpH、ニッケル塩の混合比(NiSO濃度及びNi濃度)、洗浄条件(温度、洗浄液、回数)及び熱処理温度を下記表3及び表4に、得られた酸化ニッケル粉末の比表面積、不純物含有量(塩素、硫黄、アルカリ金属)、及びD90を下記表5に、それぞれまとめて示した。
[実施例10]
上記洗浄工程において、20℃と60℃の純水によるレパルプ洗浄の間に、40℃の0.1M水酸化ナトリウム水溶液によるレパルプ洗浄を1回行ったこと、及び上記熱処理工程において900℃で3時間熱処理したこと以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例11]
上記晶析工程のニッケル塩混合水溶液の混合比を塩化ニッケル70質量%、硫酸ニッケル30質量%とした以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例12]
上記晶析工程において、水酸化ナトリウム水溶液に代えて水酸化カリウムで中和した以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例13]
上記熱処理工程において、800℃で5時間熱処理した以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例14]
上記熱処理工程において、980℃で3時間熱処理した以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例15]
上記晶析工程において、pHを9.0に調整した以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例16]
上記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の濃度を80g/lとした以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例17]
上記水洗工程において、水酸化ナトリウム水溶液によるレパルプ洗浄を60℃で行った以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例18]
上記洗浄工程において、40℃の水酸化ナトリウム水溶液によるレパルプ洗浄を2回行った以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例7]
上記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の代わりに塩化ニッケル水溶液を用いた以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例8]
上記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液の代わりに硫酸ニッケル水溶液を用いた以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例9]
上記熱処理工程において、1000℃で熱処理とした以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例10]
上記晶析工程において、pHを7.8に調整した以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。しかし、水酸化ニッケルはほとんど晶析せず、収率が大幅に低下した。
[比較例11]
上記洗浄工程において、水酸化ナトリウム水溶液によるレパルプ洗浄とその後の純水によるレパルプ洗浄をそれぞれ20℃で行った以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例12]
上記洗浄工程において、50℃の純水によるレパルプ洗浄を1回行った後、次いで40℃の水酸化ナトリウム水溶液によるレパルプ洗浄を1回、50℃の純水によるレパルプ洗浄を1回行った以外は上記実施例10と同様にして、酸化ニッケル粉末を得た。
Figure 2013035738
Figure 2013035738
Figure 2013035738
上記の結果から分かるように、実施例10〜18においては、不純物の塩素、硫黄及びアルカリ金属含有量は、水酸化ナトリウム水溶液によるレパルプ洗浄を行わなかった場合より更に低減され、20質量ppm以下となっている。また、比表面積が5.5m/g以上と非常に大きく、D90値も1μm以下の微細な酸化ニッケル粉末が得られていることが分かる。
一方、比較例7及び8では、塩化ニッケルと硫酸ニッケルのニッケル塩混合水溶液を用いなかったため、塩素あるいは硫黄の含有量が50質量ppmを超えている。また、比較例9では、熱処理温度が高いため酸化ニッケル粒子の焼結が進行し、比表面積が5.5m/g未満となり、D90値も1μmを超えている。比較例10では、pHが本発明の範囲を超えているため、収率が悪化すると共に不純物の含有量が大幅に増えている。更に、比較例11及び12では、洗浄条件が本発明の範囲外であるため、洗浄時に残留する不純物が多くなり、酸化ニッケル粉末の不純物含有量が多くなっている。

Claims (10)

  1. 硫酸ニッケルと塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを30℃未満の温度の水で洗浄した後、30℃以上の温度の水で洗浄する洗浄工程と、洗浄した水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において700〜980℃の温度で熱処理することより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備えることを特徴とする酸化ニッケル粉末の製造方法。
  2. 前記洗浄工程において、30℃未満の温度の水で洗浄した後、30℃以上の温度の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで30℃以上の温度の水で洗浄することを特徴とする、請求項1に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  3. 前記30℃未満の温度の水での洗浄と30℃以上の温度の水での洗浄を、それぞれ少なくとも2回行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  4. 前記30℃以上の温度の水酸化ナトリウム水溶液での洗浄を少なくとも2回行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  5. 前記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液中の全ニッケル塩の量に対する硫酸ニッケルの量の割合が10〜60質量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  6. 前記ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度が50〜130g/lであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  7. 前記晶析工程で用いるアルカリが、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  8. 比表面積が5.5m/g以上であり、且つ硫黄、塩素及びアルカリ金属の含有量がいずれも50質量ppm以下であることを特徴とする酸化ニッケル粉末。
  9. 硫黄、塩素及びアルカリ金属の含有量がいずれも20質量ppm以下であることを特徴とする、請求項8に記載の酸化ニッケル粉末。
  10. レーザー散乱法で測定したD90が1μm以下であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の酸化ニッケル粉末。
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