詳細な説明
本明細書において記載されるように、ヒトIgMモノクローナル抗体は、B7-DC(PD-L2)依存性の様式でヒトおよびマウスDCの両方に結合することが示されている。この結合は、(i)OT-I TCRトランスジェニックT細胞を活性化する能力によって見られるようなDCの抗原提示能力の増強;(ii)サイトカイン離脱に際しての処置DCの生存における増加;(iii)IL-12の分泌;および(iv)流入領域リンパ節に到達する増加した数を引き起こすDCの帰巣および/または生存を引き起こし得る。抗体(sHIgM12)の単量体型は、免疫応答を増強することができず、実際には無傷五量体抗体の活性を阻害した。したがって、DCの表面上の標的決定基は、架橋によって活性化され得る。
本明細書は、sHIgM12も、アレルギー性気道炎症のインビボモデルにおいて免疫応答を調節し得るという知見に基づく。本明細書において記載されるように、OVA感作の直前および同時のsHIgM12によるマウスの処置は、免疫応答を有意に弱めた。加えて、sHIgM12処置は、過感作の14日後に投与される場合でさえ、アレルギー性症候からマウスを保護した。したがって、sHIgM12抗体内に存在するアミノ酸配列と類似または同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドが、本明細書において提供される。sHIgM12抗体のアミノ酸配列と類似または同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子も、本明細書において提供される。加えて、アレルギー性喘息を緩和するために、sHIgM12などのB7-DC架橋分子を使用するための予防的および治療的方法が、本明細書において提供される。さらに、哺乳動物におけるTh2応答を阻害するための方法が、本明細書において提供される。
1. B7-DC架橋分子
本明細書は、B7-DCポリペプチドに特異的に結合する分子を提供する。そのような分子は、複数のB7-DCポリペプチドに同時に結合し得る(すなわち、一つのそのような分子は、複数のB7-DCポリペプチドに同時に結合し得る)。したがって、本明細書において提供される分子は、複数のB7-DCポリペプチドを効果的に架橋し得る。これらの分子は、典型的には、ポリペプチドであり、抗体は、特に有用であるが(以下を参照されたい)、細胞の表面上のB7-DCに結合しかつ架橋し得るその他の多価分子も、この能力において機能し得る。そのような分子の例は、非限定的に、多価RNAまたはDNAアプタマーを含む。アプタマーは、典型的には、抗体のように、親和性および特異性をともなって標的分子に結合し得る一本鎖DNAおよびRNA分子である。核酸は、一般的に直鎖状分子と考えられているが、それらは、実際には、複雑で配列依存性の三次元形状を呈し得る。結果として生じる形状が、標的タンパク質と相互作用する場合、結果は、抗体抗原相互作用に類似の固く結合された複合体であり得る。アプタマーは、核酸分解に耐えるために、例えばまたはそれらの治療的有用性を強化するために(例えば、より長く血流に残るために、または血清において安定であるために)、修飾され得る。
本明細書において提供される分子は、細胞表面上に存在するB7-DCポリペプチドを介して細胞に特異的に結合し得る。本明細書において使用されるように、「B7-DCに特異的に結合する」とは、分子が、B7-DCに選択的に結合し、その他の細胞表面ポリペプチドへの有意な結合を示さないことを意味する(例えば、その他の細胞表面ポリペプチドへの実質的により少なく検出可能なまたは検出可能でない結合)。以下に開示されるように、ポリペプチドは、翻訳後修飾に関わらず、アミノ酸鎖である。したがって、B7-DCポリペプチドに特異的に結合する分子は、B7-DCアミノ酸配列もしくはその部分、B7-DCの翻訳後修飾(例えば、B7-DCアミノ酸配列内の一つまたは複数のグリコシル化またはリン酸化位置)、またはその組み合わせを「認識」し得る。分子(例えば、抗体またはポリペプチド)は、FACS、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、および放射免疫測定(RIA)を含む標準的免疫測定法を使用して、B7-DCの認識に対して試験され得る。例えば、Short Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al., Green Publishing Associates and John Wiley & Sons (1992)を参照されたい。
B7-DCは、例えば、DC、活性化マクロファージ、およびいくつかの腫瘍細胞(例えば、グリオーマ腫瘍細胞)上で見出され得る細胞表面ポリペプチドである。本明細書において提供される分子は、哺乳動物(例えば、ヒト)におけるDCの表面上のB7-DCに結合し、免疫応答を増強し得る。本明細書において使用されるように、「免疫応答を増強する」という用語は、DC機能の強化およびナイーブT細胞の増加した活性化を包含する。強化DC機能は、DCの延長された寿命などの構成要素を含み、NF-κBの増加した発現および核へのNF-κBの増加した転位に基づいて検出され得る。強化DC機能のその他の構成要素は、ナイーブT細胞を活性化するDCの増加した能力、リンパ節へのDCの増加した局在、DC内でのAkt(タンパク質キナーゼBとしても公知)の増加したリン酸化、ならびにDCによるインターロイキン-6(IL-6)、IL-12、RANTES、および腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)などのサイトカインの増加した分泌を含む。本明細書において提供される分子は、培養におけるDCからのサイトカインの離脱に際して、DCの代謝も強化し得る。本明細書において記載される分子は、DC機能を強化し、上に載せられる構成要素の任意またはすべてを含み得る免疫応答を増強するために、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与され得る。そのような分子は、インビトロでDCと接触しかつDCを活性化するために使用されてもよい。
免疫応答の増強は、上に載せられる構成要素の任意を査定することによって測定され得る。IL-12などのサイトカインの分泌は、例えば、実施例(後述)において記載されるような酵素免疫吸着(ELISA)測定法によって測定され得る。ナイーブT細胞の活性化は、例えば、増殖細胞において新しく合成されたDNAへの3H-チミジンの取り込みを測定する、細胞溶解性T細胞活性の誘導を測定することによって、またはCD44および/もしくはCD69などのT細胞活性化マーカーを検出することによって、アッセイされ得る。NF-κBの発現または転位は、例えば、NF-κBに対する抗体での細胞染色によって測定され得る。Aktの増加したリン酸化は、例えば、リン酸化Aktに対する抗体でのウェスタンブロット法によって査定され得る。NF-κBおよびリン酸化Aktに対する抗体は、例えば、Cell Signaling Technologies, Inc. (Beverly, MA)から利用できる。強化DC機能および免疫増強によって包含されるその他の構成要素を測定するための方法も、本明細書において記載される。
本明細書において提供される分子は、典型的には精製される。本明細書において使用される「精製された」という用語は、分子が自然に付随されるその他の細胞構成要素(例えば、その他の細胞タンパク質、ポリヌクレオチド、または細胞構成要素)から分離もしくは単離されている、または分子がインビトロで合成される場合、反応混合物に存在するほとんどもしくはすべてのその他の構成要素から分離されている分子を指す。本明細書において使用される「精製された」とは、分子が付随される構成要素の少なくともいくつかが除去されるように、部分的に精製された分子も包含する。典型的には、分子が自然に結合するまたは分子が合成反応において付随されるタンパク質およびその他の有機分子または構成要素を、乾燥重量によって、少なくとも50%(例えば、55%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%)含まない場合、分子は「精製された」と考えられる。
アプタマーは、例えば、当技術分野において公知の方法を使用して、核酸の開始プールから特異的結合活性に対して初めに選択され得る。変異体は、増幅のその後のラウンドの間に獲得され得る。アプタマーは、それが単離されるプールにおけるその他の核酸を、少なくとも50%含まない場合、精製されたと考えられる。
2. ポリペプチドおよび抗体
本明細書において提供される分子は、ポリペプチドであり得る。本明細書において使用されるように、ポリペプチドは、長さまたは翻訳後修飾(例えば、リン酸化またはグリコシル化)に関わらず、アミノ酸鎖である。本明細書において提供されるポリペプチドは、B7-DCに特異的に結合し得、哺乳動物(例えば、ヒト)への投与に際して、DC機能を強化しかつ免疫応答を増強し得る。本明細書において提供されるポリペプチドは、インビトロでDCとともにインキュベートされる場合も、DC機能を強化し得る。
本明細書において特徴とされるポリペプチドは、sHIgM12のアミノ配列と類似または同一のアミノ酸配列を含み得る。例えば、ポリペプチドは、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列と少なくとも80.0%同一(例えば、80.0%、85.0%、90.0%、95.0%、97.0%、97.5%、98.0%、98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%同一)であるアミノ酸配列を含み得る。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、またはSEQ ID NO:12に記載のアミノ酸配列と少なくとも80.0%同一(例えば、80.0%、85.0%、90.0%、95.0%、97.0%、97.5%、98.0%、98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%同一)であるアミノ酸配列をさらに含み得る。パーセント配列同一性は、整列核酸配列における適合位置の数を決定し、整列ヌクレオチドの全数で適合位置の数を割り、かつ100をかけることによって計算される。適合位置は、同一ヌクレオチドが、整列核酸配列における同じ位置で生じる位置を指す。パーセント配列同一性は、任意のアミノ酸配列に対して決定されてもよい。
パーセント配列同一性を決定するために、標的核酸またはアミノ酸配列は、BLASTNバージョン2.0.14およびBLASTPバージョン2.0.14を含むBLASTZのスタンドアロンバージョンからのBLAST 2 Sequences (B12seq)プログラムを使用して、同定核酸またはアミノ酸配列と比較される。BLASTZのこのスタンドアロンバージョンは、Fish & Richardsonのウェブサイト(fr.com/blastにおけるワールドワイドウェブ)または米国政府のNational Center for Biotechnology Informationウェブサイト(ncbi.nlm.nih.govにおけるワールドワイドウェブ)から獲得され得る。B12seqプログラムをどのように使用するかを説明する取扱説明書は、BLASTZに付随するリードミーファイルにおいて見出され得る。
B12seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2つの配列間の比較を行なう。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用され、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。2つの核酸配列を比較するために、オプションが、以下のように設定される:-iは、比較される第一の核酸配列を含むファイルに設定される(例えば、C:\seq1.txt);-jは、比較される第二の核酸配列を含むファイルに設定される(例えば、C:\seq2.txt);-pは、blastnに設定される;-oは、任意の所望のファイル名に設定される(例えば、C:\output.txt);-qは、-1に設定される;-rは、2に設定される;およびすべてのその他のオプションは、それらのデフォルト設定のままにされる。例えば、以下のコマンドは、2つの配列間の比較を含む出力ファイルを生成するために使用され得る:C:\B12seq -i c:\seq1.txt -j c:\seq2.txt -p blastn -o c:\output.txt -q -1 -r 2。2つのアミノ酸配列を比較するために、B12seqのオプションは、以下のように設定される:-iは、比較される第一のアミノ酸配列を含むファイルに設定される(例えば、C:\seq1.txt);-jは、比較される第二のアミノ酸配列を含むファイルに設定される(例えば、C:\seq2.txt);-pは、blastpに設定される;-oは、任意の所望のファイル名に設定される(例えば、C:\output.txt);およびすべてのその他のオプションは、それらのデフォルト設定のままにされる。例えば、以下のコマンドは、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを生成するために使用され得る:C:\B12seq -i c:\seq1.txt -j c:\seq2.txt -p blastp -o c:\output.txt。2つの比較配列が、相同性を共有する場合、次いで、指定出力ファイルは、相同性のそれらの領域を整列配列として提示すると思われる。2つの比較配列が、相同性を共有しない場合、次いで、指定出力ファイルは、整列配列を提示しないと思われる。
整列されると、適合の数が、同一ヌクレオチドまたはアミノ酸残基が両方の配列において提示される位置の数をカウントすることによって決定される。パーセント配列同一性は、同定配列(例えば、SEQ ID NO:6)に規定される配列の長さまたは連接長(例えば、同定配列に規定される配列からの100連続ヌクレオチドまたはアミノ酸残基)のいずれかによって適合の数を割り、その後に結果として生じる値に100をかけることによって、決定される。例えば、SEQ ID NO:6に記載の配列と整列される場合に98の適合を有する核酸配列は、SEQ ID NO:6に記載の配列と92.5パーセント同一である(すなわち、98÷106*100=92.5)。パーセント配列同一性値は、小数第二位で四捨五入されることに留意されたい。例えば、75.11、75.12、75.13、および75.14は、75.1に切り捨てられ、75.15、75.16、75.17、75.18、および75.19は、75.2に切り上げられる。長さの値が、常に整数であることにも留意されたい。
本明細書において提供されるポリペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6および8に記載のアミノ酸配列に対して置換、欠失、または付加を有し得る。SEQ ID NO:6および/またはSEQ ID NO:8に対して修飾される(例えば、置換による)アミノ酸配列を有するポリペプチドは、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:8に記載の配列と同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと比較して、実質的には同じまたは改善された質を有し得る。置換は、保存置換であり得る。本明細書において使用されるように、「保存置換」とは、類似の側鎖を有する別のアミノ酸でのアミノ酸の置換である。保存置換は、典型的には、ペプチド全体が、その空間的立体構造を本質的には保有するが、変更された生物学的活性を有するように、アミノ酸の電荷またはアミノ酸の側鎖のサイズにおいて(または、サイズ、電荷、または側鎖内の化学基の種類において)起こり得る最も少ない変化を作るアミノ酸での置換であり得る。保存変化の例は、非限定的に、AspからGlu、Asn、またはGlnへ;HisからLys、Arg、またはPheへ;AsnからGln、Asp、またはGluへ、およびSerからCys、Thr、またはGlyへを含む。アラニンは、その他のアミノ酸を置換するために一般的に使用される。20の必須アミノ酸は、以下のように群化され得る:非極性側鎖を有するアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニン;非荷電極性側鎖を有するグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミン;酸性側鎖を有するアスパラギン酸およびグルタミン酸;ならびに塩基性側鎖を有するリジン、アルギニン、およびヒスチジン(例えば、Stryer, Biochemistry (2nd edition) W. H. Freeman and Co. San Francisco (1981), pp. 14-15;およびLehninger, Biochemistry (2nd edition, 1975), pp. 73-75を参照されたい)。保存置換は、これらの群内で作られる置換を含み得る。
PD-1は、B7-DCに対する天然の受容体であるポリペプチドである。PD-1は、固体基質(例えば、プラスチックディッシュまたはガラス顕微鏡スライド)上に固定され得る。DCとのインキュベーションに際して、固定化PD-1は、細胞表面上の複数のB7-DCポリペプチドを架橋し、DCの機能を強化し得る。固定化PD-1との培養DCのインキュベーションは、例えば、PD-1とインキュベートされないDCの代謝速度と比較して、培養培地からのサイトカインの除去に際して、細胞の代謝速度を維持し得る(実施例7を参照されたい)。
本明細書において提供される分子は、B7-DCに対する特異的結合活性を有する抗体であり得る。「抗体」および「複数の抗体」という語は、B7-DCに結合することが可能な無傷分子ならびにそのフラグメントを包含する。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖Fv抗体フラグメント、Fabフラグメント、およびF(ab)2フラグメントであり得る。ポリクローナル抗体は、特定の抗原に特異的である抗体分子の異質集団であるが、モノクローナル抗体は、抗原内に含まれる特定のエピトープに対する抗体の均質集団である。
抗体は、IgM、IgA、IgD、IgE、およびIgGを含む任意の免疫グロブリン(Ig)クラス、ならびにその任意のサブクラスのものであり得る。IgMクラスの抗体(例えば、sHIgM12)は、典型的には五価であり、一つの抗体分子が複数のB7-DCポリペプチドを架橋し得るので、特に有用である。架橋され(例えば、架橋IgG)したがって多価であるIg分子を含む免疫複合体も、複数のB7-DC分子を架橋することが可能であり、特に有用であり得る。
本明細書において使用されるように、「エピトープ」とは、抗体が結合する抗原分子の部分である。抗原は、同時に複数のエピトープを提示し得る。ポリペプチド抗原に対して、エピトープは、典型的には、長さが約4〜6アミノ酸であり、修飾(例えば、リン酸化またはグリコシル化)アミノ酸を含み得る。2つの異なる免疫グロブリンは、それらが同じエピトープまたはエピトープのセットに結合する場合、同じエピトープ特異性を有し得る。
ポリクローナル抗体は、免疫動物の血清に含まれる。モノクローナル抗体は、例えば、標準的ハイブリドーマテクノロジーを使用して調製され得る。特に、モノクローナル抗体は、例えば、Kohler et al. (1975) Nature 256:495-497、Kosbor et al. (1983) Immunology Today 4:72のヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびCote et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、およびCole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. pp. 77-96 (1983)のEBV-ハイブリドーマ技術によって記載されるような、培養における連続継代細胞系によって抗体分子の産生を提供する任意の技術によって獲得され得る。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養され得る。
本明細書において提供される抗体は、例えば、個体の血清から単離されてもよい。例えば、sHIgM12抗体は、本明細書における実施例1において記載されるように、ヒト血清から単離された。単離に適した方法は、例えばクロマトグラフィーを含む技術を使用する哺乳動物血清からの精製を含む。
B7-DCに結合する抗体は、例えばB7-DCで宿主動物(例えば、ウサギ、ニワトリ、マウス、モルモット、またはラット)を免疫することによって産生されてもよい。B7-DCポリペプチドまたはB7-DCポリペプチドの部分は、化学的合成によって、またはナイーブタンパク質の精製によって、組換えにより産生され得、次いで、ポリペプチドの注射によって動物を免疫するために使用され得る。アジュバントは、宿主種に応じて、免疫応答を増加するために使用され得る。適したアジュバントは、フロインドアジュバント(完全または不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳液、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、およびジニトロフェノールを含む。標準的技術は、宿主動物の血清からB7-DC免疫原に応えて生成される抗体を単離するために使用され得る。そのような技術は、sHIgM12と類似の特徴(例えば、類似のエピトープ特異性およびその他の機能的類似性)を有する抗体を生成することに対して有用である。
sHIgM12などの抗体は、組換えにより産生されてもよい。本明細書において提供される抗体のアミノ酸配列(例えば、部分的アミノ酸配列)は、標準的技術によって決定され得、抗体または抗体の部分をコードするcDNAは、抗体が元来単離された被験体(例えば、ヒト患者または免疫宿主動物)の血清から単離され得る。cDNAは、標準的技術を使用して、発現ベクターにクローニングされ得る。次いで、発現ベクターは、適当な宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞、またはハイブリドーマ細胞)にトランスフェクトされ得、抗体は、発現および精製され得る。例えば、本明細書における実施例14を参照されたい。
B7-DCに対する特異的結合親和性を有し、架橋機能を保有する抗体フラグメントは、上に開示されるものなどの技術によって生成されてもよい。そのような抗体フラグメントは、抗体分子のペプシン分解によって産生され得るF(ab')2フラグメント、およびF(ab')2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成され得るFabフラグメントを含むが、それらに限定されない。または、Fab発現ライブラリーが、構築され得る。例えば、Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281を参照されたい。一本鎖Fv抗体フラグメントは、アミノ酸架橋(例えば、15〜18アミノ酸)によってFv領域の重および軽鎖フラグメントをリンクし、一本鎖ポリペプチドを引き起こすことによって形成される。一本鎖Fv抗体フラグメントは、米国特許第4,946,778号において開示されるものなどの標準的技術を介して産生され得る。そのようなフラグメントは、例えば、ビオチン化および架橋によって多価にされ得、したがって、複数のB7-DCポリペプチドを架橋し得る抗体フラグメントを生成する。
3. 核酸、ベクター、および宿主細胞
B7-DCに特異的に結合する分子(例えば、本明細書において記載されるものなどのポリペプチドおよび抗体)をコードする核酸は、本明細書において提供される。本明細書において使用されるように、「核酸」という語は、RNAならびにcDNA、ゲノムDNA、および合成(例えば、化学的に合成される)DNAを含むDNAの両方をさす。核酸分子は、二本鎖または一本鎖(すなわち、センスまたはアンチセンス一本鎖)であり得る。核酸は、例えば、sHIgM12抗体の軽および重鎖をコードするcDNAを含み得る。
「単離核酸」は、核酸が普通に見出されるゲノムにおける核酸の片側または両側に普通に隣接するその他の核酸分子から分離される核酸を指す。核酸に関して本明細書において使用されるような「単離」という用語は、任意の非自然発生的核酸配列も含むが、そのような非自然発生的配列は、自然において見出されず、自然発生的ゲノムにおける直接(immediately)隣接配列を有さないからである。
単離核酸は、自然発生的なゲノムにおいてDNA分子に直接隣接することが普通に見出される核酸配列の一つが除去されるまたは非存在であるならば、例えば、DNA分子であり得る。したがって、単離核酸は、その他の配列に非依存的な別個の分子として存在するDNA分子(例えば、化学的合成核酸、またはPCRもしくは制限酵素処置によって産生されるcDNAもしくはゲノムDNAフラグメント)、ならびにベクター、自己複製プラスミド、ウィルス(例えば、レトロウィルス、レンチウィルス、アデノウィルス、またはヘルペスウィルス)へ、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAへ取り込まれるDNAを非限定的に含む。加えて、単離核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸の一部であるDNA分子などの人工核酸を含み得る。例えば、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー、またはゲノムDNA制限分解(digest)を含むゲルスライス内の数百〜数百万のその他の核酸の中に存在する核酸は、単離核酸とは考えられない。
本明細書において開示される単離核酸は、ポリペプチドをコードし得る。例えば、単離核酸は、sHIgM12の可変または定常領域において見出されるアミノ酸配列と類似または同一のアミノ酸配列を含むペプチドをコードし得る。一つの態様において、核酸は、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列と少なくとも80.0%(例えば、80.0%、85.0%、90.0%、95.0%、97.0%、97.5%、98.0%、98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%)同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし得る。コードされるポリペプチドは、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、またはSEQ ID NO:12に記載のアミノ酸配列と少なくとも80.0%(例えば、80.0%、85.0%、90.0%、95.0%、97.0%、97.5%、98.0%、98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%)同一であるアミノ酸配列をさらに含み得る。別の態様において、単離核酸は、SEQ ID NO:13またはSEQ ID NO:14に記載のヌクレオチド配列と少なくとも80.0%(例えば、80.0%、85.0%、90.0%、95.0%、97.0%、97.5%、98.0%、98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%。または99.9%)同一であるヌクレオチド配列を含み得る。パーセント配列同一性を決定するための方法は、本明細書において提供される。
本明細書において提供される単離核酸分子は、一般的な分子クローニングおよび化学的核酸合成技術を非限定的に含む標準的技術によって産生され得る。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術は、sHIgM12などの抗体をコードする単離核酸分子を獲得するために使用され得る。単離核酸は、単一核酸分子として(例えば、ホスホロアミダイトテクノロジーを使用する3'から5'方向における自動DNA合成を使用して)または一連のポリヌクレオチドとして、化学的に合成されてもよい。例えば、所望の配列を含む長いポリヌクレオチド(例えば、>100ヌクレオチド)の一つまたは複数対は、ポリヌクレオチド対がアニールされる場合に二本鎖が形成されるように、各々の対が相補性の短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含んで合成され得る。DNAポリメラーゼは、ポリヌクレオチドを伸長するために使用され、ポリヌクレオチド対ごとに一本、二本鎖核酸分子を引き起こす。
前述したものなどの核酸を含むベクターも、本明細書において提供される。本明細書において使用されるように、「ベクター」とは、別のDNAセグメントが挿入されるセグメントの複製をもたらすように挿入され得る、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどのレプリコンである。本明細書において提供されるベクターは、発現ベクターであり得る。「発現ベクターと」は、一つまたは複数の発現制御配列を含むベクターであり、「発現制御配列」とは、別のDNA配列の転写および/または翻訳を制御および調節するDNA配列である。
本明細書において提供される発現ベクターにおいて、核酸(例えば、sHIgM12の軽および/または重鎖をコードする核酸)は、一つまたは複数の発現制御配列に操作可能なように結合される。本明細書において使用されるように、「操作可能なように結合される」とは、発現制御配列が、対象となるコード配列の発現を効果的に制御するように、遺伝的構築体に取り込まれることを意味する。発現制御配列の例は、プロモーター、エンハンサー、および転写終結領域を含む。プロモーターは、典型的には転写が始まるポイント(概して、RNAポリメラーゼIIに対する開始部位の近く)の上流の100〜500ヌクレオチド以内の、DNA分子の領域から成る発現制御配列である。コード配列をプロモーターの制御下に持って行くためには、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位を、1から約50ヌクレオチドプロモーターの下流に置く必要がある。エンハンサーは、時間、場所、およびレベルに関して、発現特異性を提供する。プロモーターと異なり、エンハンサーは、転写部位からの様々な距離に位置する場合に、機能し得る。エンハンサーは、転写開始部位から下流にも位置し得る。コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAへ転写することができ、次いでそのmRNAがコード配列によってコードされるタンパク質へと翻訳され得る場合に、「操作可能なように結合される」および細胞における発現制御配列の「制御下」にある。したがって、本明細書において提供される発現ベクターは、sHIgM12ならびに本明細書において提供されるその他の分子を産生するために有用である。
適した発現ベクターは、プラスミド、ならびに例えばバクテリオファージ、バキュロウィルス、タバコモザイクウィルス、ヘルペスウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、およびアデノ随伴ウィルスに由来するウィルスベクターを非限定的に含む。多くのベクターおよび発現システムは、Novagen(Madison、WI)、Clontech(Palo Alto, CA)、Stratagene(La Jolla, CA)、およびInvitrogen/Life Technologies(Carlsbad, CA)などの企業から市販されている。
発現ベクターは、発現される核酸配列のその後の操作(例えば、精製または局在)を容易にするためにデザインされるタグ配列を含み得る。緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、血球凝集素、またはフラッグ(Flag)(商標)タグ(Kodak, New Haven, CT)配列などのタグ配列は、典型的には、コードポリペプチドとの融合として発現される。そのようなタグは、カルボキシルまたはアミノ末端のいずれかを含む、ポリペプチド内の任意の場所に挿入され得る。
本明細書において記載されるようなベクターを含む宿主細胞も、提供される。「宿主細胞」という用語は、組換え発現ベクターが導入され得る原核および真核細胞を含むことを意図される。本明細書において使用されるように、「形質転換された」および「トランスフェクトされた」とは、多くの技術の一つによる細胞への核酸分子(例えば、ベクター)の導入を包含する。特定の技術に限定されないが、多くのこれらの技術が、当技術分野内で良く確立されている。原核細胞は、例えば電気穿孔法または塩化カルシウム媒介形質転換によって、核酸で形質転換され得る。核酸は、例えばリン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン-媒介トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔法、またはマイクロインジェクションを含む技術によって、哺乳動物細胞にトランスフェクトされ得る。宿主細胞を形質転換するおよびトランスフェクトするのに適した方法は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Mannual (2nd edition), Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989)において見出され、形質転換および/またはトランスフェクションのための試薬は、市販されている(例えば、リポフェクチン(Lipofectin)(登録商標)(Invitrogen/Life Technologies);Fugene(Roche, Indianapolis, IN);およびスーパーフェクト(SuperFect)(Qiagen, Valencia, CA))。
4. 組成物
本明細書において記載される分子は、例えば、DC機能を強化しかつ免疫応答を増強するための、またはTh2免疫応答を阻害しかつアレルギー性喘息を治療するための、薬剤の製造において使用され得る。したがって、本明細書において記載される分子(例えば、sHIgM12などの抗体およびPD-1などのポリペプチド)は、組成物に取り込まれ得る。そのような組成物は、組成物の製造におけるB7-DC結合分子の使用のように、本明細書において提供される。本明細書において提供される組成物は、DC機能を強化しかつ免疫応答を増強するために、被験体に投与され得る。そのような組成物は、Th2免疫応答を阻害するためにも有用であり得、したがって、アレルギー性喘息を治療またはその発症を阻害し得る。本明細書において記載されるように、強化DC機能は、延長された寿命、ナイーブT細胞を活性化する増加した能力、リンパ節への増加した局在、Aktの増加したリン酸化、およびインターロイキン-12(IL-12)の増加した分泌などの構成要素を含む。
本明細書において提供される組成物は、固体基質に固定される分子(例えば、PD-1)を含んでもよい。そのような組成物は、上に記載されるように、DCに接触し、それらの機能を強化するために使用され得る。
治療的組成物を製剤しその後投与するための方法は、当業者にとって周知である。投薬量は、典型的には、数日〜数ヶ月または適した免疫応答が達成されるまで続く処置の経過とともに、分子への被験体の応答性に依存する。当業者は、最適な投薬量、投薬方法論、および繰り返し率を日常的に決定する。最適な投薬量は、抗体の相対的な効能に応じて変化し得、概して、インビトロおよび/またはインビボ動物モデルにおいて効果的であることが見出されたEC50に基づいて推定され得る。投薬量は、典型的には、体重のkgあたり0.01μg〜100 g(例えば、体重のkgあたり1μg〜100 mg、10μg〜10 mg、または50μg〜500μg)である。本明細書において提供される分子を含む組成物は、1日に、1週間に、1ヶ月に1回もしくは複数回、またはさらに低頻度で与えられ得る。
本明細書において提供される分子に加えて、本明細書において記載される組成物は、特異的免疫応答を引き起こすと思われる抗原をさらに含み得る。適した抗原は、例えば、腫瘍および病原生物体によって発現されるポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントを含む。殺傷されたウィルスおよびバクテリアの構成要素に加えて、殺傷されたウィルスおよびバクテリアも、有用な抗原である。そのような抗原は、腫瘍または病原体に対する免疫応答を刺激し得る。
組成物は、例えば骨髄、脾臓、または胸腺組織から単離されているDCを含んでもよい。DC系も、本明細書において提供される組成物において有用であり得る。
本明細書において特徴とされる分子(例えば、sHIgM12などの抗体)は、その他の分子、分子構造体、または例えばリポソーム、受容体標的分子などの化合物の混合物、または取り込み、分布、および/もしくは吸収において補助する経口、局所、もしくはその他の製剤と、混和、カプセル化、結合またはそうでなければ関連され得る。
いくつかの態様において、組成物は、薬学的に許容される担体との組み合わせにおいて、本明細書において提供される分子(例えば、sHIgM12、SEQ ID NO:6もしくはSEQ ID NO:8と少なくとも80.0%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、SEQ ID NO:6もしくはSEQ ID NO:8に既定される配列と少なくとも80.0%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸、またはSEQ ID NO:13もしくはSEQ ID NO:14に既定される配列と少なくとも80.0%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子)を含み得る。薬学的に許容される担体は、被験体に抗体を送達するための薬学的に許容される溶剤、懸濁剤、または任意のその他の薬理学的に不活性な賦形剤である。薬学的に許容される担体は、液体または固体であり得、一つまたは複数の治療的化合物および与えられる薬学的組成物の任意のその他の構成要素と組み合わせられる場合、望ましいバルク、硬度、ならびにその他の付属物輸送および化学的特性を提供するために、投与の計画された様式を考慮して選択され得る。典型的な薬学的に許容される担体は、水;食塩溶液;結合剤(例えば、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトースおよびその他の糖、ゼラチン、または硫酸カルシウム);潤滑剤(例えば、デンプン、ポリエチレングリコール、または酢酸ナトリウム);崩壊剤(例えば、デンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を非限定的に含む。
本明細書において提供される分子を含む薬学的組成物は、局部または全身処置が望ましいかどうかに応じて、多くの方法によって投与され得る。投与は、例えば、非経口(例えば、皮下、髄腔内、心室内、筋内、もしくは腹腔内注射によって、または静脈内(i.v.)点滴によって);経口;局所(例えば、経皮、舌下、点眼、または鼻腔内);または肺(例えば、粉末またはエアロゾルの吸入または吹送によって)であり得る。投与は、迅速(例えば、注射によって)であり得る、または時間の期間にわたって(例えば、徐注入または徐放製剤の投与によって)生じ得る。中枢神経系への投与に対しては、抗体は、典型的には血液脳関門の浸透を促進することが可能な一つまたは複数の薬剤とともに、脳脊髄液に注射または注入され得る。
非経口、髄腔内、または心室内投与に対する組成物および製剤は、滅菌水性溶液(例えば、滅菌生理食塩水)を含み、バッファー、希釈剤、およびその他の適した添加剤(例えば、浸透促進剤、担体化合物、およびその他の薬学的に許容される担体)を含んでもよい。
経口投与に対する組成物および製剤は、例えば、粉末もしくは顆粒、水もしくは非水性媒質における懸濁液もしくは溶液、カプセル、小袋、または錠剤を含む。そのような組成物は、増粘剤、香料添加剤、希釈剤、乳化剤、分散補助、または結合剤を取り込んでもよい。
局所投与に対する製剤は、例えば、滅菌および非滅菌水性溶液、アルコールなどの一般的な溶剤における非水性溶液、または液体もしくは固体油性基剤における溶液を含む。そのような溶液は、バッファー、希釈剤、およびその他の適した添加剤を含んでもよい。局所投与に対する薬学的組成物および製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、噴霧、液体、および粉末を含み得る。従来の薬学的担体、水性、粉末、または油性基剤、増粘剤、および同様のものは、有用であり得る。
薬学的組成物は、溶液、乳液、水性懸濁液、およびリポソーム含有製剤を含むが、それらに限定されない。これらの組成物は、例えば、予備成形液体、自己乳化固体、および自己乳化半固体を含む様々な構成要素から生成され得る。乳液製剤は、それらの製剤の容易さならびに可溶化、吸収、および生体利用性の効力のため、治療的組成物の経口送達に対して特に有用である。リポソームは、薬物送達の観点から、それらが提供するそれらの特異性および作用の期間により、特に有用であり得る。
本明細書において特徴とされる分子は、被験体への投与に際して、生物学的活性代謝体またはその残基を(直接的または間接的に)提供することが可能な、任意の薬学的に許容される塩、エステル、またはそのようなエステルの塩、または任意のその他の化合物を包含し得る。従って、例えば、本明細書は、抗体(例えば、sHIgM12)などの分子の薬学的に許容される塩、プロドラッグおよびそのようなプロドラッグの薬学的に許容される塩、ならびにその他の生物学的等価物を提供する。プロドラッグは、不活性型において調製され、内因性酵素の作用またはその他の化学物質および/もしくは状態によって、体またはその細胞内で活性型(すなわち、薬物)に変換される治療的薬剤である。「薬学的に許容される塩」という語は、本明細書において記載される方法において有用な抗体の生理学的および薬学的に許容される塩を指す(すなわち、望ましくない毒物学的効果を与えることなく親抗体の望ましい生物学的活性を保有する塩)。薬学的に許容される塩の例は、カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはスペルミンなどのポリアミン)で形成される塩;無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、または硝酸)で形成される酸付加塩;有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、シュウ酸、パルミチン酸、またはフマル酸)で形成される塩;および元素アニオン(例えば、臭素、ヨウ素、または塩素)で形成される塩を含むが、それらに限定されない。
組成物は、薬学的組成物において従来的に見出されたその他の付属構成要素を付加的に含み得る。したがって、組成物は、例えば、痒み止め薬、収斂剤、局部麻酔剤、もしくは抗炎症剤などの適合性の薬学的活性物質、または色素、香料添加剤、防腐剤、抗酸化物質、乳白剤、増粘剤、および安定剤などの、本明細書において提供される組成物の様々な調剤型を物理的に製剤することにおいて有用な付加的な物質を含んでもよい。さらに、組成物は、例えば、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、バッファー、着色剤、香味料、浸透促進剤、および芳香剤などの助剤と混合され得る。しかしながら、添加される場合、そのような物質は、本明細書において提供される組成物内のPNA構成要素の生物学的活性を過度に干渉するべきではない。
単位投薬形態で便宜的に提示され得る、本明細書において開示されるような薬学的製剤は、薬学的業界において周知の従来の技術に従って調製され得る。そのような技術は、活性成分(すなわち、抗体)を望ましい薬学的担体と関連付ける段階を含む。典型的には、製剤は、活性成分を液体担体または微粉化固体担体または両方と均一におよび密接に関連付けることによって、次いで、必要な場合は、製品を成形することによって調製され得る。製剤は、滅菌の方法が製剤に含まれる抗体の有効性を干渉しないならば、必要に応じて滅菌され得る。
組成物は、非限定的に、錠剤、カプセル、液体シロップ、ソフトゲル、坐薬、および浣腸剤などの多くの起こり得る任意の調剤型へ処方され得る。組成物は、水性、非水性、または混合媒質における懸濁液として処方されてもよい。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含む、懸濁液の粘度を増加する物質をさらに含み得る。懸濁液は、安定剤を含んでもよい。
5. 方法
DC機能を強化しかつ免疫応答を増強するために本明細書において記載される分子を使用するための方法は、本明細書において提供される。本明細書において記載される分子は、B7-DCと特異的に相互作用し得、本明細書において記載されるように、DCの機能を強化しかつ免疫応答を増強し得る。本明細書において提供される方法は、腫瘍を治療することおよび特異的抗原に対する免疫力を誘導することに対して特に有用であり得る。
加えて、哺乳動物におけるアレルギー性喘息を治療、予防、またはその発症を阻害するために本明細書において記載される分子を使用するための方法は、本明細書において提供される。さらに、本明細書は、哺乳動物における免疫応答の既存の状態を調節するため、および哺乳動物におけるTh2免疫応答を阻害するための方法を提供する。
本明細書において提供される方法は、典型的には、本明細書において提供される分子(例えば、sHIgM12などの抗体)または組成物(例えば、sHIgM12を含む組成物)を、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ウサギ、ラット、マウス、またはヒト)に投与することを含む。いくつかの態様において、方法は、本明細書において提供される分子または組成物(例えば、sHIgM12および抗原を含む組成物)と接触させられているDCの投与を含んでもよい。そのようなDCは、それらが投与される哺乳動物における免疫応答を増強するのに有用である。
上に記載されるように、分子、組成物、または活性化DCは、任意の適した全身または局部方法によって投与され得る。投与の全身方法は、経口、局所、または非経口投与、ならびに注射による投与を非限定的に含む。投与の局部方法は、例えば、腫瘍への直接的な注射を含む。
本明細書において提供される方法は、DC機能を調節する(例えば、強化する)ために使用されてもよい。DC機能の強化は、例えば、DCの寿命を延長すること、ナイーブT細胞を活性化するDCの能力を増加させること、および哺乳動物におけるリンパ節へのDCの局在を増加させることを含む。DCの寿命は、例えばNF-κBの発現または核へのNF-κBの転位を測定することによって、査定され得る。NF-κBは、プログラム細胞死の阻害に関与する細胞内シグナルなので、NF-κBの増加した発現および転位は、アポトーシスの阻害および延長されたDC寿命を示す。T細胞活性化は、例えば増殖T細胞において新しく合成されたDNAへの放射性標識(例えば、トリチウム化)チミジンの取り込みを査定することによって測定され得る。ナイーブT細胞の活性化は、T細胞表面上のCD44および/またはCD69活性化マーカーを検出することによって(例えば、フローサイトメトリーによって)測定されてもよい。
免疫応答を増強する(すなわち、特定の抗原への免疫力を誘導する)ための方法は、(1)B7-DCポリペプチドに特異的に結合することが可能な精製分子(例えば、ポリペプチドまたは抗体、特にsHIgM12)、および(2)抗原(例えば、腫瘍細胞からまたは病原体からの抗原)を含む組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することに関与し得る。そのような方法は、(1)B7-DCポリペプチドに特異的に結合することが可能な精製分子(例えば、ポリペプチドまたはsHIgM12などの抗体)、および(2)抗原(例えば、腫瘍細胞からまたは病原体からの抗原)に細胞を接触させることによってインビトロで活性化されているDCを投与することにも関与し得る。これらの方法は、例えば、腫瘍を治療するおよび/または病原体への免疫力を誘導するために有用である。
本明細書において提供される方法は、乳癌、肺癌、膵臓癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、腎臓癌、メラノーマ、およびその他の固形腫瘍を非限定的に含む固形腫瘍を治療することに対して有用であり得る。そのような方法は、メラノーマおよび腎臓癌腫瘍を治療することに対して特に有用である。固形腫瘍は、例えば、早期固形腫瘍であり得る。本明細書において使用されるように、「腫瘍を治療する」という用語は、腫瘍のサイズを減少させること、腫瘍における生存細胞の数を減少させること、および/または腫瘍の成長を遅くするもしくは止めることを包含する。そのような帰結を査定するための方法は、当技術分野において公知である。腫瘍を治療するための方法は、全身に(例えば、静脈内にまたは皮下に)または腫瘍への直接的な(例えば、注射によって)分子または組成物(例えば、sHIgM12および腫瘍抗原を含む組成物)の投与に関与し得る。
本明細書は、哺乳動物におけるアレルギー性喘息を治療またはその発症を阻害するために使用され得る方法も提供する。これらの方法は、哺乳動物における軽減された喘息症候を引き起こし得る。例えば、sHIgM12などの分子の投与は、以前に観測された症候の軽減されたレベルを引き起こし得る、または新しい症候の軽減された発生を引き起こし得る。喘息の症候は、咳、喘鳴、息切れまたは呼吸促迫、および胸部圧迫、AHR(例えば、メタコリン負荷に応えて)、気管支肺胞洗浄液における増加した細胞浸潤、および肺への好酸球遊走を非限定的に含み得る。
アレルギー性喘息を治療またはその発症を阻害するための方法は、B7-DC架橋分子の有効量、またはそのような分子を含む組成物の有効量を、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ウサギ、げっ歯類、またはヒト)に投与することを含み得る。本明細書において使用されるように、「有効量」という用語は、哺乳動物レシピエントにおける喘息症候の発生を少なくとも10%減少もしくは阻害するのに十分である、または気流、肺容量、および/もしくは気道反応性を少なくとも10%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%。75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%)増加し得る、分子または組成物の量である。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、喘息症候の発生を少なくとも50%減少または阻害するのに十分である組成物の量を、哺乳動物に投与することを含み得る。
例えば、分子(例えば、sHIgM12などの抗体)の「有効量」とは、分子の投与に先行するまたは分子の投与なしの哺乳動物における症候のレベル(例えば、以前の喘息発作において観測された症候のレベル)と比較して、処置哺乳動物における喘息症候(例えば、AHR)の発生を少なくとも10%減少または阻害する量であり得る。したがって、未処置哺乳動物が、メタコリンの特定の濃度におけるメタコリン負荷の間にAHRを示す場合、B7-DC架橋分子の有効量での哺乳動物の処置は、AHRを引き起こさないと思われる、または最初の濃度よりも少なくとも10%高いメタコリンの濃度においてAHRを引き起こすと思われる。AHRは、本明細書において記載されるように、メタコリン負荷への気道応答性によって測定され得る。または、ダニ、ペットの鱗屑、花粉、またはカビなどの喘息誘発アレルゲンに曝露された哺乳動物におけるB7-DC架橋分子の有効量は、咳もしくは喘鳴などの症候の存在もしくは発生を少なくとも10%減少させ得る、またはBAL液における細胞浸潤の数を少なくとも10%減少させ得る。加えて、B7-DC架橋分子の有効量は、気流速度および気道容量を少なくとも10%増加させ得る。そのようなパラメータは、例えば肺活量測定呼吸テストを使用して、測定され得る。
6. 製造の品物
本明細書において提供される製造の品物は、本明細書において開示される一つまたは複数の分子および/または組成物を含み得る。分子および/または組成物は、包装材と組み合わせられ、アレルギー性喘息を治療またはその発症を低減させるためのキットとして売られ得る。分子および/または組成物は、例えば、バイアル、チューブ、またはシリンジなどの容器に入れられ得、少なくとも部分的に包装材で包囲され得る。製造の品物を産生するための構成要素および方法は、周知である。
製造の品物は、上のセクションに提示される分子の一つまたは複数を組み合わせ得る。例えば、製造の品物は、本明細書において提供される分子(例えば、sHIgM12などの抗体または固定化PD-1などのポリペプチド)を含む組成物を含み得る。製造の品物は、特定の免疫応答を刺激し得る一つまたは複数の抗原(例えば、腫瘍抗原または病原体からの抗原)を含んでもよい。さらに、製造の品物は、DCを含み得る。製造の品物は、例えば、免疫応答を増強するためのバッファーまたはその他の対照試薬を含んでもよい。分子、抗原、DC、および/または組成物が、免疫応答を増強することに対してまたはアレルギー性喘息を治療もしくはその発症を低減させることに対して効果的であることを示す取扱説明書も、そのようなキットに含まれ得る。
本発明は、特許請求の範囲において記載される本発明の範囲を限定しない、以下の実施例においてさらに記載されると思われる。
実施例1- sHIgM12を単離するおよび特徴付けるための材料および方法
ヒト抗体の単離- ヒト血清試料は、タンパク異常血症クリニックから獲得され、20 mg/mlよりも高いIgクローンピークを示すものが、さらなる評価のために選ばれた。選択された試料は、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、リンパ腫、および意味未確定のモノクローナル免疫グロブリン血症を含む、モノクローナルIgMスパイクによって特徴付けられる多種多様な状態をともなう50人の患者からであった。血清は、水に対して透析され、沈殿は、14,000 rpmで30分間遠心することによって収集され、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解された。試料は、遠心され、Superose-6カラム(Amersham Pharmacia, Piscataway, NJ)でのクロマトグラフィーを受けた。IgM画分は、プールされ、SDS-PAGEによって分析され、タンパク質濃度は、280 nmにおける吸光度を読むことによって決定された。IgM溶液は、滅菌フィルターされ、凍結保存された。抗体sHIgM12は、FACS分析によって決定されるように、DCに結合するその能力に基づいて同定された(実施例2を参照されたい)。ポリクローナルヒトIgM抗体対照は、以前に記載された(Miller et al. (1994) J. Neurosci. 14:6230-6238)。
単量体sHIgM12は、200 mMトリス、150 mM NaCl、1 mM EDTA pH 8.0における5 mMジチオスレイトール(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いた室温で2時間の還元によって、五量体型から獲得された。その後のアルキル化は、12 mMヨードアセトアミドを用いて氷上で1時間行なわれた。IgM単量体は、PBSで平衡化されたSuperdex-200カラム(Amersham Pharmacia)でのクロマトグラフィーによって単離され、還元および非還元SDS-PAGEによって特徴付けられた。
マウスおよび試薬- C57BL6/J、C3H/HeJ、およびBALB/Cマウス系統は、The Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から得た。OT-1およびD0-11トランスジェニックマウス系統(Hogquist et al. (1994) Cell 76:17-27;およびMurphy et al. (1990) Science 250:1720-1723)は、Institutional Review Board for Animal Rights, Mayo Clinicによって承認されたプロトコールに従って、Mayo Clinic動物施設において交配され維持された。C57BL/6-RAG-/-マウス、CD4-/-マウス、およびGFPトランスジェニックマウスは、The Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入された。β2-マイクログロブリンノックアウトマウスは、Francois Lemmonier, Pasteur Institute, Parisから獲得された。ニワトリOVAは、Sigma-Aldrichから得た。ペプチドは、Mayo Protein Core Facilityにおいて合成された。フルオロフォア結合抗CD11c(HL-3)、抗B220(RA3-6B2)、抗CD80(16-10A1)、抗CD86(GL-1)、抗CD44(IM7)、抗CD69(H1.2F3)、抗CD3e(145-2C11)、抗Mac1(M1/70)、Pan-NK抗体(DX-5)、抗Kb(AF6-88.5)、および抗I-Ab(KH74)は、BD PharMingen(San Diego, CA)から獲得された。FITC結合ヤギ抗ヒトIgMは、Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.(West Grove, PA)から獲得された。APCに結合したKb-Ser-Ile-Ile-Asn-Phe-Glu-Lys-Leu(SEQ ID NO:1)四量体は、以前に記載されたように調製された(Block et al. (2001) J. Immunol. 167:821-826)。RPMI-1640培地は、Gibco/Invitrogen(Carlsbad, CA)から購入された。
インビトロでの未成熟および成熟DCの生成- 骨髄からのDCは、確立されたプロトコールを使用して単離された。手短に、骨髄は、マウス後肢長骨から単離された。赤血球は、37℃で塩化アンモニウム-塩化カリウム(ACK;0.1 M NH4Ac、0.01 M KHCO3、60μM EDTA)での処置によって溶解された。残った細胞は、10μg/mlマウス顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF;PeproTech, Inc., Rocky Hill, NJ)および1 ng/mlマウスインターロイキン-4(IL-4;PeproTech, Inc.)を含むRPMI-10において、6ウェルプレート(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)においてmlあたり1×106 細胞の密度でプレートされた。細胞は、5% CO2で37℃にてインキュベートされた。培養2日目において、細胞を、穏やかに洗浄し、培地を、GM-CSFおよびIL-4の同じ濃度を含む新鮮なRPMI-10と交換し、培養を、さらに5日間継続した。DCは、48時間、培養物への10μg/mlリポ多糖類(LPS;Difco(登録商標))または50μモル/ml CpG(Mayo Molecular Core Facility)のいずれかの添加によって成熟させた。成熟状況は、クラスII、CD80、およびCD86に対する染色によって確認した。
ヒトDCは、GM-CSFおよびIL-4と培養された単球に由来した。7日目の細胞は、LPS(10μg/ml)、TNF-α/IL-1β(それぞれ1.1×104 U/mlおよび3.2×103 U/ml)、インターフェロン-γ(IFN-γ;2×103 U/ml)、またはPBS対照のいずれかを用いて、3日間活性化された。DC発生は、以下に記載されるように、CD83細胞表面マーカーの存在をモニターすることによって追跡された。
フローサイトメトリー- 細胞は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)バッファー(PBS中に0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄され、96ウェルプレート(Nunc)へと遠心された。抗体は、氷上の30分インキュベーションのために、ウェルに添加された。FACSバッファーでの3回の洗浄の後、細胞は、1%パラホルムアルデヒドで固定され、FACS Calibur(Becton Dickinson)上で分析された。データは、Cell Questソフトウェア(BD PharMingen)を使用して分析された。
活性化ヒトDCは、培養10日目に(成熟のインキュベーションの3日後)、10μg/mlのsHIgM12またはポリクローナルhIgM対照で染色された。FITC結合抗hIgM二次抗体は、数回の洗浄の後に添加された。CD83は、DC上の成熟マーカーであり、抗ヒトCD83-PE抗体によって査定された。
ヒトTP365グリオーマ細胞は、Mayo Clinic (Rochester, MN)のDr. Robert Jenkinsから獲得された。細胞は、10μg/mlのsHIgM12またはポリクローナルhIgM対照で染色された。二次抗ヒトIgM、Fc5μ、フラグメント特異的FITC結合抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories)は、2回の洗浄の後に添加された。細胞は、その後、洗浄され、2%パラホルムアルデヒドで固定され、フローサイトメトリー分析を受けた。
内因性DCの単離- DCは、マウス脾臓および胸腺から単離された。組織は、小さな断片に切断され、2 mg/mlコラゲナーゼ(Sigma-Aldrich)、100μg/ml DNA分解酵素(Sigma-Aldrich)、および2%ウシ胎仔血清(Hyclone)を含むRPMIにおいて、20分間37℃でインキュベートされた。EDTA(0.031 M)が、5分間添加された。赤血球は、37℃においてACKで溶解され、残った細胞は、カウントされ、フローサイトメトリーに対して使用された。
ナイーブT細胞のインビトロ活性化- ナイーブ脾細胞は、マウスから採取され、ACKバッファーを使用する赤血球溶解の後に、3連で(in triplicate)プレートされた。3×105キラー細胞は、抗原または抗原パルスDCの滴定用量で3日間インビトロで刺激された。プレートされた細胞は、それらが採取されかつ3Hレベルが決定される前の最後の18時間、3H-チミジンでパルスされた。
DCおよびT細胞の養子免疫伝達-7日目骨髄培養に由来するDCは、1μモル/mlのクラスI制限ペプチドSer-Ile-Ile-Asn-Phe-Glu-Lys-Leu(SEQ ID NO:1)もしくはクラスII制限ペプチドIle-Ser-Gln-Ala-Val-His-Ala-Ala-His-Ala-Glu-Ile-Asn-Glu(SEQ ID NO:2)で、または1 mg/mlニワトリOVAで、オーバーナイトでパルスされた。対照抗体またはsHIgM12は、10μg/mlの濃度で、培養においてペプチドと共インキュベートされた。細胞は、次の日に採取され、PBSで3回洗浄され、マウスあたり107細胞が、T細胞のインビボプライミングのために静脈内に注射された。
細胞***をモニターするための実験に対して、OT-1脾細胞は、養子免疫伝達に先行して、20分間37℃で、5μM-(および6-)カルボキシフルオロセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識された。PBSでの3回の洗浄の後に続いて、107 CFSE標識脾細胞は、各々のマウスに静脈内に注射された。DCおよびT細胞は、別個の注射において投与された。脾臓細胞は、養子免疫伝達の2または7日後に採取され、フローサイトメトリーによって直接的に分析された、または付加的な3日間、OVAの様々なの濃度をともなう培養においてインキュベートされた。培養は、採取およびT細胞活性化の尺度としての3H取り込みに対する評価の前に、オーバーナイトで、3H-チミジンでパルスされた。
結合に対する競合- PD-1.Igは、Mayo Clinic (Rochester, MN)のLieping Chenから取得された。PD-1.Igをコードするプラスミドは、元来Drew Pardoll (Johns Hopkins University, Baltimore, MD)から獲得された。プラスミドは、CHO細胞(ATCC, Manassas, VA)へ形質転換され、PD-1.Igは、タンパク質Gカラム(Pharmacia)を使用して培養上清から単離された。DCは、sHIgM12の添加およびその後のイソチオシアン酸フルオロセイン-(FITC-)結合二次抗体での染色の前に、20分間4℃で、PD-1.Igとともにプレインキュベートされた。逆実験に対して、細胞は、PD-1.Igの添加の前に、sHIgM12とともにプレインキュベートされた。イソタイプ対照抗体は、対照として使用された。
トランスフェクト細胞の染色- 293-T細胞およびP815細胞は、ATCCから得た。細胞は、B7-DCまたはB7-H1のいずれかをコードする発現プラスミドで一時的にトランスフェクトされ、sHIgM12、PD-1.Ig、またはイソタイプ対照抗体で染色された。
Ltk細胞(ATCC)は、2.5μgのpCDNA3.1(Invitrogen, Carlsbad, CA)または0.5μg〜10μgのpCDNA3.1-hB7.DC発現プラスミドで一時的にトランスフェクトされた。48時間後、細胞は、sHIgM12またはポリクローナルhIgM対照で染色された。FITC結合抗hIgM二次抗体は、数回の洗浄の後に添加された。
インビボアッセイ- T細胞増殖に対するsHIgM12のインビボ効果を評価するために、マウスは、-1、0、および+1日目において10μgのsHIgM12またはポリクローナルHIgM対照で処置され、0日目に1 mg OVAを静脈内に注射された。7日目に、脾細胞が単離され、1 ng/ml〜1 mg/mlの範囲のOVAの濃度でパルスされた。インビトロでの培養の3日後、細胞は、採取および3H取り込みの決定の前に、1μCiの3H-チミジンとともに16時間インキュベートされた。
致死的腫瘍負荷に対するsHIgM12の効果は、C57BL/6Jマウス、C57BL/6-RAG-/-免疫不全マウス、β2-マイクログロブリンノックアウトマウス(K-D-)、およびCD4-/-ノックアウトマウスにおいて評価された。動物は、-1、0、および+1日目に、10μgのsHIgM12、ポリクローナルHIgM対照、またはPBSを静脈内に受けた。すべてのマウスは、0日目に、側腹部に2×104 B16メラノーマ細胞の皮下注射を受けた。腫瘍の存在は、10日目から始まって評価された。データは、3回の別個の試行からプールされた。カテゴリーデータは、カイ二乗分布(C57BL/6J)またはフィッシャー直接確率検定(C57BL/6-RAG-/-、CD4-/-、およびK-D-)を使用して分析された。
腫瘍成長の研究に対しては、皮下腫瘍の幅および長さが、17日目(C57BL/6)または13日目(C57BL/6-RAG-/-)に測定された。幅および長さの積が、腫瘍サイズの推定として使用された。統計比較は、ANOVAを使用してなされた。
腫瘍残存における抗腫瘍耐性の持続性を評価するために、致死的B16メラノーマ負荷から別なやり方で(otherwise)生存したC57BL/6マウスは、一次負荷の30日以上後に、2×104腫瘍細胞で再負荷された。再負荷は、一次負荷の反対側の側腹部に投与された。さらなる抗体処置は、投与されなかった。比較のための参照ポイントとして、ナイーブ動物が、sHIgM12またはポリクローナルHIgM対照で処置され、同じ用量の腫瘍細胞で負荷された。発生する腫瘍は、14日目に測定され(幅および長さ)、データはANOVAによって分析された。
サイトカイン離脱アッセイ-5日目のDCは、ウェルあたり2×104 細胞で、96ウェルプレート上にプレートされた。細胞は、10μg/ml顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)および1 ng/mlインターロイキン-4(IL-4)を含むRPMI-10において10μg/mlの最終濃度になるように、sHIgM12、A2B5対照抗体、または培地と培養された。または、DCは、GM-CSFおよびIL-4をともなうRPMI-10においてプレートおよび培養することに先行して、固定化PD-1.Igに接触させられた。細胞は、サイトカイン離脱の前に5日間培養された。サイトカイン離脱に対して、細胞は、RPMI-10単独において洗浄および培養された。1時間後、Alamar Blue(Biosource International, Camarillo, CA)が、10%(v/v)の最終濃度になるように添加された。リーディングは、CytoFluorマルチプレートリーダー(Series 4000, PerSeptive Biosystems, Framingham, MA)上で、6時間間隔で取られた。蛍光プレートリーダーは、520 nmの励起波長および590 nmの発光波長に設定された。各々のデータポイントは、3回行なわれた。
リンパ節へのDC遊走の査定- GFPトランスジェニックマウスからの骨髄が、GFP+ DCを得るために使用された。いくつかの実験において、細胞は、Ser-Ile-Ile-Asn-Phe-Glu-Lys-Leu(SEQ ID NO:1)ペプチドでパルスされ、次いで、16時間またはオーバーナイトで、sHIgM12またはイソタイプ対照抗体で処置された。細胞は、マウスに皮下で注射され、次いで、トランスファーの48時間後に、同側膝窩および鼠径リンパ節から単離された。両処置群からの対側リンパ節は、対照としての役目を果たした。リンパ節へ遊走したGFP+ DCの数を測定するために、試料は、PE結合CD11c抗体で染色され、フローサイトメトリーによって分析された。
これらのGFP+ DCの効果を査定するために、OT-1 T細胞受容体(TcR)トランスジェニックマウスからの脾細胞(ウェルあたり3×105 T細胞)が、上に記載されるように処置されたマウスの同側流入領域リンパ節からの滴定数の細胞とともに4日間共培養された。細胞は、インキュベーションの最後の16時間、ウェルあたり1 mCiの3H-チミジンでパルスされ、次いで、3H取り込みの測定のために採取された。各々の群は、3回行なわれた。
関連研究において、GFP+ DCは、移植手術の直前に、sHIgM12または対照抗体(10μg/ml)と混合され、リンパ節への細胞の遊走が、上に記載されるように査定された。研究の別の群において、細胞は、抗体なしでトランスファーされ、マウスは、移植に対して、-1、0、および+1日目において、10μg sHIgM12またはHIgM対照の3回静脈内尾注射を受けた。再度、リンパ節は、上に記載されるように採取されかつ分析された。
IL-12測定- DCに由来する7日目の骨髄は、10μg/mlの最終濃度において、sHIgM12、ポリクローナルHIgM対照、またはLPSで処置された。上清は、刺激の96時間後に収集され、ELISA(BD PharMingen, San Diego, CA)が、IL-12の活性画分に対して行なわれた。各々の処置群に対して試験された上清は、6つの別個のウェルからプールされた。実験群は、3回、多くの希釈において試験され、各々が、類似のプロファイルを実証した。
実施例2- モノクローナルヒトIgM抗体は、マウスDCに結合する
DCは、GM-CSFおよびIL-4で補足された培地におけるマウス骨髄細胞のインキュベーションの後に続いて、培養から獲得された。7日培養からの細胞は、ヒト血清から単離された精製抗体とインキュベートされ、フルオレセイン化ヤギ抗ヒト抗体ならびに典型的にはDC上に発現される細胞表面分子に特異的な抗体で染色された。図1において示されるように、ヒト抗体sHIgM12は、CD11c、クラスII、およびCD86の高レベルを発現した培養における細胞に結合した。ポリクローナルヒトIgM、ならびに免疫グロブリン異常症をともなう患者からまたはEBV-形質転換細胞系からのその他の試験されたモノクローナル抗体は、DC集団に認め得るほどには結合しなかった。
sHIgM12抗体によって認識される細胞表面決定基が、いつDCのインビトロ発生の間に最初に出現するのかを決定するために、培養細胞は、培養手順の間の様々な時間において、フローサイトメトリーによって分析された。決定基は、DCマーカーCD11cの高レベルを発現する細胞の出現のおよそ2日後の、5日目に最初に出現した。決定基は、バクテリア感染に関連する2つの分子シグナル、LPSおよびCpGの存在下で培養された細胞において、さらにより高いレベルで発現された。
様々な組織から単離されたDCは、内因性細胞が、sHIgM12抗体によって結合される決定基を発現するかどうかを確立するために検査された。脾臓、胸腺、および骨髄から新鮮に単離されたDCは、sHIgM12抗体によってすべて染色された。対照的に、ほとんどのその他の骨髄細胞、脾B細胞、脾T細胞、および脾マクロファージは、sHIgM12によって認め得るほどには染色されなかった。B細胞、T細胞、NK細胞、およびマクロファージは、活性化リンパ系または単球性細胞が抗原を発現するかどうかを査定するために、LPSまたはコンカナバリンAで活性化された。これらの系統からの活性化細胞のどれも、sHIgM12に結合しなかった。それ故に、sHIgM12抗体は、DCによって選択的に発現される細胞表面分子に結合するように見え、この決定基は、DCが成熟し活性化されるようになるにつれて次第に発現される。
実施例3- sHIgM12抗体は、樹状抗原提示機能を増強する
DCの表面へのsHIgM12の結合が、発現される細胞表面分子のパターンに影響するかどうかを決定するために、7日目DC培養は、10μg/ml抗体で補足され、オーバーナイトでインキュベートされ、フローサイトメトリーによって分析された。細胞表面マーカー(例えば、クラスII B7-IおよびB7-II)における変化は、観測されなかった。
DCの抗原提示機能が、インビトロで査定された。抗体処置DCは、ペプチド抗原でパルスされ、OT-1およびDO-11トランスジェニックマウスから新鮮に単離されたナイーブ抗原特異的T細胞を刺激するために使用された。T細胞活性化は、実施例1において記載されるように、3H-チミジンの取り込みによって測定された。クラスI結合ペプチド(Ser-Ile-Ile-Asn-Phe-Glu-Lys-Leu;SEQ ID NO:1)でパルスされかつポリクローナルHIgM対照抗体とインキュベートされたDCは、OT-1マウスからのナイーブCD8 T細胞を活性化することが可能であった。同じペプチドで処置されかつモノクローナルsHIgM12抗体とインキュベートされたDCは、3H-チミジンの取り込みを誘導するために必要とされる抗原パルスDCの数によって判断されるように、およそ10倍より効果的にナイーブT細胞を活性化した(図2A)。クラスII分子によって提示されるペプチド(Ile-Ser-Gln-Ala-Val-His-Ala-Ala-His-Ala-Glu-Ile-Asn-Glu;SEQ ID NO:2)でパルスされたBALB/c DCは、DO-11 TcRトランスジェニックマウスから新鮮に単離されたナイーブT細胞を活性化することにおいて、さらにより効果的であった。100倍よりも大きく多くのポリクローナルHIgM対照抗体で処置されたDCが、sHIgM12処置DCで観測されたレベルまでT細胞を活性化するのに必要であった(図2B)。これらの実験は、DCの抗原提示機能が、sHIgM12でのDCの処置によって、劇的に強化されることを実証した。
T細胞活性化の増強におけるDCとT細胞との間の直接的な接触に対する必要条件を査定するために、2つの細胞型が、可溶性因子がチャンバー間を移動することを可能にするがチャンバー間の細胞接触を可能にしない仕切り付き組織培養プレートにおいて培養される。または、sHIgM12で処置されたDC培養からの抗体枯渇上清が、トランスジェニック脾細胞または特異的抗原でパルスされたDCと混合されたトランスジェニック脾細胞の培養とインキュベートされる。
脾T細胞をインビボで刺激するためにインビトロで調製された抗原パルス、抗体処置DCの能力は、C3H/HeJマウスにおいて評価された。この同系交配系統は、TLR-4遺伝子座で遺伝的に欠損しており、結果として、DCの活性化因子であるLPSに応答しない。マウス骨髄由来DCの7日目培養が、ニワトリOVAおよびsHIgM12またはポリクローナルHIgM対照抗体とともにオーバーナイトでインキュベートされ、107 細胞が、各々のマウスに静脈内に注入された。7日後、脾細胞は、動物から除去され、3日間OVAの様々な量とインビトロでインキュベートされ、T細胞活性化が、3H-チミジンの取り込みによって測定された。図3において示されるように、sHIgM12処置DCを受けた動物からの脾臓細胞は、ポリクローナルHIgM対照で処置されたDCを受けたマウスからの脾臓細胞よりも、OVAでの二次負荷に対してより活発に応答した。それ故に、sHIgM12をともなう培養において処置されたDCは、インビボでT細胞を刺激する強化された能力を示した。TLR-4欠損マウスからのDCは、sHIgM12処置に応答したので、LPSによる起こり得るコンタミネーションは、これらの実験における因子ではなかった。並行研究において、ポリミキシンBが、潜在的LPSコンタミナントを不活性化するために、DC培養に添加された。ポリミキシンBは、sHIgM12での処置の後に続くDC機能への影響を有しなかったが、それは、LPSが培養に直接的に添加される場合、DCの成熟を軽減することにおいて効果的であった。
インビボでT細胞に何が起こっていたのかを可視化するために、C57BL/6抗原パルス、抗体処置DCが、トランスジェニックOT-1細胞とともにC57BL/6宿主へ養子免疫伝達された。OT-1 T細胞は、Kb:Ser-Ile-Ile-Asn-Phe-Glu-Lys-Leu(SEQ ID NO:1)四量体でプローブすることによって、これらの実験において同定された。脾細胞は、トランスファーの2または7日後に回収され、四量体陽性T細胞が、それらの活性化状況を決定するために、フローサイトメトリーによって分析された。sHIgM12で前処置されたDCによってインビボで刺激されたT細胞は、PBSで前処置されたDCによって刺激されたT細胞と比較して、トランスファーの2日後に、活性化マーカーCD44およびCD69の実質的により高いレベルを発現した。7日目まで、脾臓に残っていた細胞は、より低く活性化されたが、sHIgM12処置DCを受けたマウスへトランスファーされた細胞は、CD44およびCD69のより高いレベルをまだ発現した。抗原で処置されなかったDCは、sHIgM12で前処置されてもされなくても、養子免疫伝達に際して、トランスジェニックT細胞の活性化に対する効果を有しなかった。それ故に、sHIgM12での処置は、インビボでT細胞を活性化するDCの能力を増強した。
実施例4- sHIgM12の五量体構造は、DC増強を容易にする
低親和性IgM抗体は、それらが標的細胞の細胞表面上の複数受容体を架橋するので、細胞を活性化する能力を有するという仮説を試験するために、sHIgM12の単量体フラグメントが、DCを染色する、DC機能を増強する、および機能を増強する無傷sHIgM12抗体の能力をブロックするそれらの能力に対して評価された。IgM単量体は、DCを染色することにおいて、無傷sHIgM12よりも有意により低く効果的であった(図4A)。しかしながら、フラグメントは、ポリクローナルIgM抗体よりも多く細胞を染色し、それらが、無傷の低親和性結合部位を有することを示唆する。さらに、抗体フラグメントは、DC抗原提示機能を増強する無傷IgMの能力をブロックすることが可能であった(図4B)。しかしながら、sHIgM12単量体でのオーバーナイト処置は、T細胞を誘導して3H-チミジンを取り込ませるDCの能力を増強しなかった。それ故に、sHIgM12抗体は、DC上の複数決定基を架橋することによって機能し得る。単量体フラグメントは、決定基に結合し得、したがって、関連細胞表面構造を架橋する五量体の能力をブロックし得る。
実施例5- B7-DCは、マウスDC上のsHIgM12に対する同種受容体である
DCの表面上のsHIgM12に対する受容体の同一性を決定するために、マウス骨髄由来DCは、可溶性PD-1.Ig融合タンパク質とともにまたはなしでインキュベートされ、sHIgM12で染色された。PD-1融合タンパク質の結合は、PD-1の非存在下で観測されたレベルのおよそ50%まで、sHIgM12染色を弱めた(図5A)。相互実験は、sHIgM12も、DCへのPD-1の結合を、sHIgM12の非存在下で観測されたレベルの約20%まで減少させることを示した(図5B)。五量体IgM抗体のより高い親和力は、sHIgM12による競合のより高い度合に貢献し得る。
sHIgM12が、B7-DCに結合し得るかどうかを調査するために、293T細胞が、マウスB7-DCをコードするプラスミドでトランスフェクトされた。2×105 細胞がプレートされ、トランスフェクションに先行してオーバーナイトでインキュベートされた。2μgの発現プラスミドが、5μlのFU-GENE(Roche)と混合され、37℃インキュベーターにおいて20分間インキュベートされた。混合物は、細胞上に直接的にピペットされた。細胞は、37℃で48時間培養され、次いで、sHIgM12または対照抗体のいずれかで染色された。フローサイトメトリーは、トランスフェクト細胞のおよそ97%が、sHIgM12によって染色されることを明らかにした。PD-1受容体は、B7-DCおよびB7-H1に対する二重特異性を有することが示されているので、P815細胞は、sHIgM12に対するエピトープが、2つのファミリーメンバー間で保存されているかどうかを決定するために、B7-H1でトランスフェクトされた。sHIgM12は、B7-H1を発現するP815細胞に結合せず、B7-DCへの結合は、特異的であり得ることを示す。
実施例6- B7-DCに結合するsHIgM12は、DCにおける機能的変化を直接的に誘導する
B7-DCへのsHIgM12の結合が、DC生物学に直接的に影響を及ぼすかどうかを検査するために、DCは、sHIgM12、ポリクローナルHIgM対照、またはLPSで、インビトロで処置された。次いで、細胞は、(1)サイトカイン欠乏の後に続いて培養において生存する、(2)ナイーブ動物への養子免疫伝達の後に続いて流入領域リンパ節へ遊走する、および(3)主要な免疫モジュレーターであるIL-12を分泌する、それらの能力に対して分析された。
DCの延長された生存は、T細胞とのより効果的な相互作用をもたらし得、したがって、免疫応答を増強し得ると考えられる。sHIgM12が、そうでなければアポトーシスを経験すると考えられるDCに生存シグナルを提供する可能性は、サイトカイン離脱アッセイによって調査された。マウス骨髄由来DCは、96ウェルプレートに、5日目にプレートされた。細胞は、GM-CSFおよびIL-4を含むRPMI-10におけるsHIgM12、A2B5(DCに結合する対照抗体)、または培地と培養された。サイトカイン離脱を達成するために、細胞は、RPMI-10単独において洗浄および培養された。Alamar Blueは、離脱の1時間後に添加された。Alamar Blueの代謝は、6時間間隔で測定された。データは、サイトカイン離脱後24時間維持された細胞代謝のパーセンテージを示し、100%は、DCがGM-CSFおよびIL-4と培養された場合の代謝のレベルを示し、0%は、完全なサイトカイン離脱を任意で示す。
図6Aにおいて示されるように、GM-CSF/IL-4の離脱は、サイトカイン補足培地において培養された細胞において観測されたレベルの29%まで、代謝を軽減した。しかしながら、細胞をsHIgM12とインキュベートすることは、サイトカイン離脱の24時間後の代謝レベルの80%維持を引き起こした。A2B5での処置は、培地単独での処置と比較して、培養における代謝を有意に改善しなかった(33%対29%)。付加的に、sHIgM12での処置は、対照抗体で処置された同等の培養において見出されたものよりも、サイトカイン離脱の24時間後に、生存アネキシン-V陰性DCのより大きな数を引き起こした。類似の実験において、DCは、プラスチックプレートに結合することによって固定されたPD-1.Ig融合タンパク質とインキュベートされた。PD-1.Ig融合での処置は、sHIgM12での処置と同等の様式で、GM-CSF/IL-4離脱に際してDC代謝を維持し(図6B)、2群間に統計的な差はなかった。PD-1.Igと接触させられた細胞は、ポリクローナルHIgM対照抗体またはPBSで処置された細胞よりも、統計的により高いレベルで代謝を維持した(P<0.05)。DC膜に結合することが公知であるその他のIgM抗体も、本明細書において記載されるようなサイトカイン離脱実験に対して有用である。そのような抗体は、例えば、抗MHCクラスI抗体28-13-3(Kbに特異的)およびマウスオリゴデンドロサイト結合抗体94.03を含む。
sHIgM12によって誘導される抗アポトーシス活性は、抗体が、プログラム細胞死を阻害する細胞内シグナルを誘導し得ることを示した。この可能性を評価するために、骨髄細胞が、7日間、GM-CSFおよびIL-4と培養された。細胞は、時間の様々な長さの間、sHIgM12、ポリクローナルHIgM対照、またはLPSで処置され、NFκBのp65サブユニットに対する抗体で染色され、その後、DCマーカーCD11cに対する抗体で染色された。これらの実験は、NFκBが、sHIgM12の添加後15〜30分間、上方調整されることを明らかにした。ポリクローナルHIgM対照は、NFκBレベルに対する効果を有しなかった。Toll-4欠損マウスからのDCが、LPS処置に応答しなかったが、sHIgM12での処置後にNFκBを上方調整したので、sHIgM12の効果は、特異的であり、LPSコンタミネーションによるものではなかった。それ故に、sHIgM12抗体は、DCに結合して、プログラム細胞死をブロックする細胞内シグナルを誘導し得、したがって、特異的抗原に対するT細胞応答を誘導する細胞の能力を強化する。
B7-CDへのsHIgM12の結合が、DC生物学および生存能力に対する直接的な効果を有するかどうかをさらに検査するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)に対するトランスジェニックマウスからの骨髄由来DCが、同系非C57BL/6トランスジェニックマウスへの養子免疫伝達に先行して、インビトロで処置された。ポリクローナルHIgM対照で処置された細胞を受けたマウスよりも、5倍多くのGFP+、CD11c+ DCが、sHIgM12処置DCを受けたマウスにおける流入領域膝窩および鼠径リンパ節から回収された。免疫応答を増強するリンパ節移入物(immigrants)の能力は、養子免疫伝達に先行して、sHIgM12およびSer-Ile-Ile-Asn-Phe-Glu-Lys-Leu(SEQ ID NO:1)ペプチドでのDCの同時処置によって試験された。抗B7-DC抗体でのDCのインビトロ処置は、流入領域リンパ節によって回収されるDCの数を増加するだけでなく、抗原特異的T細胞応答を誘導するこれらのリンパ節DCの能力を10倍増加した。
離れた組織におけるDC機能を調節するsHIgM12の能力は、移植手術の時に抗体を未処置DCと混合することによって試験された。この実験は、抗体が移植手術部位に到達する場合、DC遊走および生存が強化され得るかどうかを決定するためにデザインされた。sHIgM12抗体での処置は、流入領域リンパ節への強化されたDC遊走を引き起こし、ポリクローナルHIgM対照は、強化された遊走を引き起こさなかった。関連実験において、マウスは、DC移植の前日、当日、および翌日に、sHIgM12またはポリクローナルHIgMの静脈内用量を受けた。再度、DCの遊走は、sHIgM12を受けたマウスにおいて増加し、対照は、そのような効果を有しなかった。それ故に、抗体の全身投与は、DC生物学に影響するのに十分である。
IL-12は、Th-1型細胞免疫力を促進することにおける主要な因子である。sHIgM12で処置されたDCによるIL-12の産生は、培養上清を使用してELISAによって測定された。sHIgM12での処置は、強い危険シグナルであるLPSよりも、DCによるIL-12 p70放出のほぼ3倍高いレベルを刺激した。ポリクローナルHIgM対照は、IL-12 p70の検出可能なレベルを引き起こさなかった。IL-12の増加した分泌は、sHIgM12によるB7-DCの調節が、弱免疫原性腫瘍に対してさえ細胞免疫応答を強く増強するという観測を支持する。
実施例7- sHIgM12は、ヒトDCに結合する
sHIgM12が、ヒトB7-DC相同分子種にも結合するかどうかを検査するために、ヒト単球由来DCが、sHIgM12またはポリクローナルIgM対照抗体で染色された。sHIgM12は、未成熟DCに弱く結合した。LPSによる細胞の成熟は、特にCD83+ 細胞上で、sHIgM12結合のレベルを増加した。異なる刺激プロトコールで活性化されたDCは、様々な程度まで増加したsHIgM12結合を示した:LPSで活性化された細胞は、高い程度までsHIgM12によって結合され、TNF-αおよびIL-1βで活性化された細胞は、中間の程度までsHIgM12によって結合され、IFN-γで活性化された細胞は、より低い程度までsHIgM12によって結合された。
ヒトB7-DCがsHIgM12に対するリガンドであるかどうかを決定するために、Ltk線維芽細胞が、ヒトB7-DC発現プラスミドで一時的にトランスフェクトされ、48時間培養された。sHIgM12は、模擬トランスフェクト細胞よりも有意に高いレベルまでB7-DCトランスフェクト細胞に結合した。さらに、L細胞に結合するsHIgM12のレベルは、トランスフェクションにおいて使用されたB7-DCプラスミドの量と正に相関した。
B7-DCは、様々なヒトおよびマウス腫瘍において発現される。sHIgM12が、腫瘍細胞に結合するかどうかを検査するために、ヒトTP365グリオーマ細胞が、抗体とインキュベートされた。これらの細胞は、ポリクローナルIgM対照抗体による染色よりも有意に高いレベルで、sHIgM12によって染色された。さらに、PCRは、TP365細胞からのDNAを用いてB7-DCアンプリコンを生成するために使用された。したがって、sHIgM12抗体は、B7-DCを介してグリオーマ細胞に結合し得る。
実施例8- タンパク質抗原への免疫応答に対するsHIgM12の効果
DCに結合するsHIgM12の全身効果は、インビボで検査された。マウスは、-1、0、および+1日目に10μg sHIgM12抗体またはポリクローナルHIgM対照で処置され、0日目において1 mgのOVAで免疫された。免疫付与の7日後に、脾細胞が単離され、OVA抗原に対する増殖応答に対してアッセイされた。ポリクローナルHIgM対照で処置された脾細胞は、OVAに対する免疫応答を高めなかった。しかしながら、sHIgM12での処置は、抗原の滴定量に応じて、増殖の高いレベルをもたらした(図7)。これらのデータは、全身sHIgM12が、おそらくDCとのその相互作用を介して、重大な免疫増強効果を有することを示す。
sHIgM12は、免疫応答性マウスへの養子免疫伝達の時にT細胞活性化を有意に強化したので(実施例3)、sHIgM12処置は、抗原性腫瘍由来ペプチドでプライムされた養子免疫伝達DCの保護効果を強化し得る可能性がある。この可能性を試験するために、B16由来抗原性ペプチドTrp2180-188でパルスされた同系DCは、抗体処置単独ではマウスを保護しない腫瘍接種後の最初の日に、C57BL/6マウスに養子免疫伝達される。C57BL/6の群は、sHIgM12またはポリクローナルHIgM対照とともに、腫瘍特異的抗原性ペプチドまたは無関係ペプチドのいずれかでパルスされたDCを受ける。または、ニワトリOVAを発現するB16メラノーマ変異体が、抗原として使用される。OT-1 TcRトランスジェニックマウスからのT細胞は、腫瘍負荷後の様々なステージ(例えば、+3、+5、+7、+9、および+11日目)における確立腫瘍を持つマウスへ養子免疫伝達される。OT-1受容体を持つT細胞の活性化、腫瘍浸潤、および抗腫瘍細胞毒性は、動物がsHIgM12またはポリクローナルHIgM対照で処置される時にモニターされる。代理腫瘍抗原に特異的なOT-1細胞は、抗原性Ser-Ile-Ile-Asn-Phe-Glu-Lys-Leu(SEQ ID NO:1)OVAペプチドに応えて生成されるものなどのT細胞特異的クラスI四量体を使用して、可視化され単離される。
実施例9- 抗腫瘍活性を与えることにおけるsHIgM12の免疫治療的潜在性のインビボ研究のための材料および方法
マウス:マウスの野生型C57BL/6J、B6.129S2-Cd4tm1Mak/J(CD4-/-)、B6.129S2-Cd8tm1Mak/J(CD8-/-)、B6.129S7-Rag1tm1Mom/J(Rag1-/-)、およびB6.129S2-Gzmbtm1Ley/J(granzyme B-/-)系統は、すべてC57BL遺伝的背景において、The Jackson Laboratoryから購入された。B6.129P2-B2mtm1Unc/J(β2-マイクログロブリン-/-)マウスは、Mayo Clinic, Rochester, MNの免疫遺伝的マウスコロニー(Chella David)において交配された。B細胞欠損μMTマウスは、Mayo ClinicのMarilia Cascalhoから獲得された。C57BL/6-Prf1tm1Sdz/J(perforin-/-)マウスは、The Jackson Laboratoryから元来獲得され、その後、Mayo ClinicのMoses Rodriguezのマウスコロニーにおいて交配された。
試薬:B7-DC架橋抗体、sHIgM12は、本明細書において記載されるように精製された。慢性リンパ増殖性障害をともなう患者の血清から精製されたpHIgMおよびIgM抗体(sHIgM39)の調製は、イソタイプ対照抗体として使用された。Bouin固定剤は、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)から獲得された。腫瘍のB16、B16-F10、およびEL-4系は、10%胎仔血清(GIBCO Invitrogen, Grand Island, NJ)を含むRPMI(Cambrex Bioscience, Walkersville, MD)において維持された。pan-NK細胞マーカー、DX-5に結合されたPE抗体は、PharMingen(San Diego, CA)から獲得された。NK1.1(PK136)は、Mayo ClinicのLieping Chenから獲得された。LPSおよびPoly I:Cは、Calbiochemから購入された。CpG
は、Mayo Clinic分子生物学コア施設(molecular biology core facility)において合成された。
予防的処方計画:マウスは、100μl容積において右側腹部に2×104 B16細胞を注射された。動物は、腫瘍負荷の前日、当日、および翌日に、PBS中100μlにおいて10μgのsHIgM12または対照抗体を遠位部位に注射された。マウスは、腫瘍発生に対してモニターされ、腫瘍サイズがサイズにおいて225 mm2に到達した場合に、安楽死させられた。腫瘍のサイズは、キャリパー(Dyer, Lancaster, PA)を使用して二次元で決定された。30日間腫瘍を発生できなかったマウスは、左側腹部に2×104 B16細胞で再負荷された。再負荷マウスは、さらに30日間モニターされた。B16メラノーマ移植片に耐えたマウスの別個のセットは、反対側の側腹部に2×106 EL-4細胞で負荷され、腫瘍成長をモニターされた。2×106 EL-4細胞を注射されたナイーブマウスは、腫瘍耐性の特異性のこの試験に対する対照としての役目を果たした。
治療的処方計画:マウスは、5×105 B16-F10細胞を静脈内に注射された。マウスは、3、4、および5日目に、10μgのsHIgM12または対照抗体で処置された。センチネルマウスは、腫瘍細胞を注射され、さらなる処置を受けなかった。センチネル動物における腫瘍負荷は、いつ有意な腫瘍負荷が処置群において存在したかを確実にするために、解剖顕微鏡を使用して定期的に個々の動物の肺を検査することによってモニターされた。それらの肺において50以上の腫瘍小結節を発生したセンチネルが検出された場合、実験処置群における動物は安楽死させられ、それらの肺における腫瘍小結節がカウントされた。欠失実験に対して、200μgのNK1.1 mAbが、腫瘍注射に72時間および48時間先行して、ならびにその後実験の期間に3〜4日毎に、腹腔内に注射された。適当な細胞サブセットの欠失は、抗NK1.1および抗DX-5抗体を使用して、フローサイトメトリーによって確認された。センチネル動物は、典型的には、17〜21日目までに肺において小結節を発生した。次いで、すべての実験群からのマウスは安楽死させられ、肺はBouin固定剤で固定され、小結節の数は解剖顕微鏡を使用して決定された。
フローサイトメトリー:血清は、側腹部にB16メラノーマを移植され、対照ポリクローナルIgM抗体またはsHIgM12抗体のいずれかで予防的処方計画を使用して処置されたマウスから収集された。血清の希釈は、B16メラノーマ細胞への結合を査定するために、標準的フローサイトメトリーを使用して抗腫瘍抗体の存在に対してアッセイされた。インビトロで骨髄前駆体に由来するまたは動物の脾臓から直接的に単離されたDC(例えば、Radhakrishnan et al. (2003) J. Immunol. 170:1830-1838を参照されたい)は、FITCの取り込みならびに抗B7.1-またはB7.2-PEおよび抗CD11c-APCでの染色に対して、多色フローサイトメトリーによって分析された。
細胞毒性アッセイ:簡潔には、5×105 B16メラノーマ細胞は、C57BL/6マウスの右側腹部に注射された。マウスは、腫瘍注射の前日、当日、および翌日に、10μgの対照抗体またはB7-DC架橋抗体のいずれかを静脈内に注射された。7日後、群あたり5匹のマウスからの流入領域リンパ節からの細胞が採取され、プールされ、さらに、付加的な4日間、2×106 cell/mlのマイトマイシンC(Calbiochem)処置B16メラノーマ細胞で刺激された。エフェクター細胞が採取され、標準的な4時間の細胞毒性アッセイにおいて、51Cr(Amersham)標識B16またはEL4細胞に対して3回滴定された。
統計解析:統計解析は、多重比較のためのANOVA、または2群の比較のためのStudentのt検定を使用して、正規分布データ上で行なわれた。正規分布しなかったデータに対しては、2処置群の分析に対してWhitney順位和検定が使用され、2つよりも多い処置群を比較するためには順位ANOVAが使用された。
実施例10- sHIgM12での全身処置は、B16メラノーマへの耐性を誘導する
B16メラノーマは、わずか2×104 細胞の皮下接種を受ける免疫応答性動物を殺傷する、C57BLマウスに由来する侵襲性腫瘍である。このモデルにおいて、触知可能な腫瘍は、腫瘍移植手術の後に続く10〜12日に発生し、腫瘍は、典型的には、17日目までに225 mm2を超える表面領域へ進行する。これらの実験において、マウスは、腫瘍移植に対して-1、0、および+1日目に、イソタイプ対照ポリクローナルIgM抗体(pHIgM)、PBS、またはsHIgM12を、離れた部位で静脈内に注射された。17日目において、pHIgMで処置された13匹のマウスの中で単一のマウス(7%)のみが無腫瘍であり、13匹のPBS処置動物の中のどのマウスも、無腫瘍ではなかった。対照的に、sHIgM12を注射された16匹のマウスの11匹(69%)は、17日目において無腫瘍のままであった(p<0.001、表1)。触知可能な腫瘍を発生したマウスに対して、sHIgM12処置は、PBSまたはpHIgMで処置されたマウスにおける腫瘍の成長と比較して、腫瘍成長を有意に阻害した(p<0.001、表1)。sHIgM12処置マウスにおいて発生した腫瘍は、最終的にはサイズが225 mm2まで進行したので、成長における遅延は、一過性であった。別個の実験において、B16メラノーマでの負荷に9、8、および7日先行してsHIgM12抗体で処置されたマウスは、腫瘍成長に対する処置効果を示さなかった;B7-DC架橋抗体(n=8)またはイソタイプ対照抗体(n=8)で処置された動物の100%は、同じ動態で腫瘍を発生した。この発見は、腫瘍移植に対する処置のタイミングが、処置帰結を決定することにおいて重要な因子であることを示す。
(表1) sHIgM12処置は、B16メラノーマでの皮下負荷からマウスを保護する
*NS = 統計的な差なし
実施例11- sHIgM12処置によるB16メラノーマへの耐性は、免疫介在性である
フローサイトメトリーは、sHIgM12が腫瘍細胞に直接的に結合するかどうかを評価するために使用された。結合は観測されず、抗体が、宿主に由来する細胞に結合することによって、腫瘍細胞に間接的に作用している可能性があることを示唆する。しかしながら、sHIgM12抗体は、インビトロで骨髄前駆体に由来するDCに結合し、致死的腫瘍負荷に対して誘導された耐性は、内因性DCとのsHIgM12相互作用によって媒介され得ることを示唆する。DC機能の調節は、免疫応答における変化を促進し得、抗体誘導性腫瘍耐性を決定する基礎をなすメカニズムであり得ると考えられる。この可能性は、2つのアプローチを使用して探究された。第一に、研究は、マウスに全身的に投与されたsHIgM12抗体が、内因性DCの表現型を調節し得るかどうかを評価するために実施された。第二に、研究は、sHIgM12のインビボ投与が、抗腫瘍応答を増強することによって腫瘍耐性を誘導するかどうかを決定するために実施された。
骨髄前駆体からインビトロで生成されたDCを使用して、sHIgM12 B7-DC架橋抗体での処置が、ナイーブ抗原特異的T細胞を活性化するこれらの細胞の能力を増強するが、DCにおける伝統的な成熟マーカーを誘導しないことが示された。DCが成熟するにつれて、それらは、それらの周囲から抗原を捕捉する能力を失い、細胞表面での共刺激分子B7.1(CD80)およびB7.2(CD86)のそれらの発現を増加する(Banchereau and Steinman (1998) Nature 392:245-252)。B7.1およびB7.2発現レベルは、インビトロでのsHIgM12抗体での骨髄由来骨髄性DCの処置の後に、実質的に増加しなかった(Radhakrishnan et al., 前記)。sHIgM12処置の後に続く活性化に関連する機能的変化を評価するために、飲作用活性における変化が、インビトロでFITC-タグウシ血清アルブミン(BSA)を取り込むDCの能力をモニターすることによって査定された。表2Aにおいて示されるように、TLR-4アゴニストLPSで処置されたDCは、pHIgM対照抗体で処置されたDCによって捕捉されたレベルと比較して、FITC-BSAのより少ない量を蓄積した。TLR-4の咬合は、DCの成熟を誘導するので、これは、予期される結果であった。対照的に、B7-DC架橋抗体sHIgM12で処置されたDCは、イソタイプ対照抗体で処置されたDCよりも、有意に多くのFITC-BSAを蓄積した。この所見は、B7-DC架橋抗体でのDCの活性化が、伝統的に定義される成熟応答を誘導せず、むしろ特殊な活性化表現型を誘導する、という付加的な証拠を提供した。
飲作用する内因性DCの能力は、B7-DC架橋抗体での全身処置が、同様にインビボでDCを標的にするかどうかを決定するために評価された。C57BL/6マウスは、イソタイプ対照IgM抗体sHIgM39、B7-DC架橋抗体sHIgM12、またはTLR-3およびTLR-9アゴニストであるポリI:CおよびCpGオリゴヌクレオチドの組み合わせのいずれかで、2日連続で静脈内で処置された。LPSは、毒性を回避するために、インビボ分析においては使用されなかった。第二の処置の時に、動物は、100μgのFITC-OVAを腹腔内に受けた。20時間後、脾DCが単離され、FITC-OVAの蓄積および共刺激分子B7.1およびB7.2の発現レベルに対して、フローサイトメトリーによって分析された。DCは、表面マーカーCD11cのそれらの発現によって同定された。表2Bにおいて示されるように、sHIgM12で処置された動物から単離されたDCは、イソタイプ対照抗体で処置された動物からのDCに対して、FITC-OVAの有意により高いレベルを捕捉した。この結果は、インビトロでの骨髄由来DCの飲作用活性の分析に酷似していた。さらに、TLRアゴニストで処置された動物から単離されたDCは、FITC-OVAの有意により低いレベルを蓄積し、成熟DCによる抗原捕捉における減少と一致する発見である。この分析におけるこれらの内因性DCの成熟状況は、異なる処置群におけるB7.1およびB7.2共刺激分子の発現のレベルによって例示される。B7-DC架橋抗体またはイソタイプ対照抗体で処置された動物から単離されたDC上の共刺激分子の発現レベルにおける有意な差はなく、sHIgM12抗体での処置が、インビボでDCの成熟を誘導しないことを実証した。一方で、TLRアゴニストで処置されたマウスからのDCは、両共刺激分子の有意により高いレベルを発現し、DC成熟がTLR-3およびTLR-9を係合することによって誘導されることを実証した。
(表2) DC活性化の後に続く抗原捕捉および共刺激分子の発現
*ND = 決定されない
**NS = 統計的な差なし
抗原の樹状細胞取り込みは、抗原特異的T細胞応答の開始における重大な段階である。抗原を取り込むDCの能力に対するsHIgM12の効果は、モデル抗原としてFITC標識ニワトリアルブミンを使用して研究された。8週齢マウスが、100μg FITC-OVAの皮内注射を受けた。24時間後、CD11c+ 樹状細胞内に含まれるFITCの量が、フローサイトメトリーによって査定された。動物は、流入領域リンパ節におけるDCによる抗原取り込みに影響するための様々な処置を受けた。図8Aにおいて示されるように、標識は、FITC-OVAでの皮内負荷に1日先行しておよび皮内負荷と同じ日に10μg sHIgM39の静脈内注射を受けたマウスのDCに取り込まれなかった。この対照IgMヒト抗体は、マウス樹状細胞上への明白な結合を有しない。対照的に、イソタイプ適合sHIgM12抗体を受けた動物から単離されたDCは、実質的なFITC標識を取り込み、それらがFITC-OVA抗原を取り込んだことを示す(図8B)。TY-25抗B7-DC抗体でのDCの前処置は、sHIgM12とのインキュベーションの後に続いて通常は誘導される、DCにおける転写因子NF-κBの活性化を阻害した。図8Cにおいて示されるように、TY-25の投与も、sHIgM12によって誘導される可溶性抗原の捕捉を阻害した。図8Dにおいて示されるように、sHIgM12処置は、B7-DC欠損動物の流入領域リンパ節における樹状細胞による抗原取り込みに対する効果を有しなかったが、B7-DC欠損動物からのDCは、100μgのFITC-OVAでの皮内負荷に1日先行するおよび皮内負荷のその日のCD40に特異的なIgG抗体の静脈内注射の後に続いて、抗原を取り込むことが可能であった(図8E)。B7-DC-/-マウスのCD40特異的抗体処置によって誘導される抗原取り込みのレベルは、同じ処置に応えて正常動物において観測される取り込みのレベルと同等であった(図8F)。
sHIgM12でのマウスの処置が、免疫応答を増強することによって腫瘍耐性を誘導するかどうかを決定するために、BおよびT細胞を欠く免疫不全B6-RAG1-/-マウスにおける腫瘍耐性を誘導する抗体の能力が評価された。予防的処置プロトコールを使用したsHIgM12でのこれらの動物の処置は、B16メラノーマ出現または成長に対する効果を有さず、無傷免疫システムは、腫瘍耐性の誘導に対して必須であることを実証した(表3A)。Rag欠損マウスを保護することのsHIgM12抗体処置の失敗も、抗体が腫瘍に直接的に作用しないことの付加的な証拠を提供した。腫瘍に対する宿主免疫応答におけるCD8 T細胞の重要性は、β2-マイクログロブリン-/-マウスを使用して確立された。これらのノックアウトマウスは、無傷CD4 T細胞レパートリーを有するが、CD8 T細胞における欠損は、sHIgM12抗体処置の保護効果をなくした(表3B)。同様に、CD4ノックアウトマウスにおけるヘルパー応答の非存在は、これらのマウスのすべてが、対照処置を受けたマウスと同様に触知可能な腫瘍を発生したように、sHIgM12の保護効果を無効にした(表3C)。
(表3) B7-DC架橋抗体は、免疫機能低下宿主において保護的ではない
*NS = 統計的な差なし
抗腫瘍抗体の血清レベルによって測定されるように、B細胞免疫応答は、sHIgM12またはポリクローナルIgM処置を受けたC57BL/6マウス間で区別できなかった。血清は、イソタイプ対照抗体で処置された動物が、サイズが225 mm2に近づく腫瘍を発生した、17日目のマウスから収集された。B7-DC架橋抗体で処置された動物は、無腫瘍であった。血清の逐次希釈が、フローサイトメトリーによって腫瘍結合抗体に対して査定された。図9において示されるように、腫瘍反応性抗体のレベルは、B7-DC架橋抗体での腫瘍保護処置またはポリクローナルヒトIgM抗体での非保護処置を受けた動物において区別できなかった。
B細胞応答が、B7-DC架橋によって誘導される抗腫瘍応答に貢献するかどうかをさらに評価するために、B細胞欠損μMT動物が、実施例8において記載される予防的処置モデルを使用して、B7-DC架橋抗体で処置され、B16メラノーマで負荷された。イソタイプ対照ヒトIgM抗体で処置された野生型C57BL/6マウスは、腫瘍移植後17日目までに225 mm2に到達した急速に成長する腫瘍を発生した(n=4)。対照的に、sHIgM12 B7-DC架橋抗体で処置されたC57BL/6(n=5)およびB細胞欠損μMT(n=5)マウスは、強く保護された;C57BL/6マウスの5匹のうち1匹は、最終的には腫瘍を発生したが、B細胞欠損μMT動物においては、腫瘍は発生しなかった。B16メラノーマは、イソタイプ対照抗体での処置の後に続いて、μMTマウス系において急速に成長し、μMTサブ系(subline)との腫瘍の組織適合性を実証した。これらの結果は、抗腫瘍抗体応答が、この腫瘍モデルにおいて、感受性マウスを耐性マウスと区別する重大な因子ではないことを実証した。さらに、B細胞欠損マウスが、ヒト抗体sHIgM12での処置の後に続いてB16メラノーマから保護されるという所見は、抗体処置動物による抗ヒトIgM抗体応答が、B7-DC架橋抗体で引き起こされた処置効果の不可欠な構成要素であるという可能性を排除する。
効果的な適応的免疫応答の特質は、二次負荷に際しての活発なメモリー応答である。B16腫瘍抗原に対するメモリー応答が、sHIgM12抗体での処置の後に続いて確立されたかどうかを研究するために、生存マウスが、反対側の側腹部においてB16メラノーマ細胞の致死的用量で再負荷された。表4において示されるように、初めの腫瘍負荷の後に続いて少なくとも30日間生存したマウスは、腫瘍細胞での二次負荷に対する有意な耐性を示した(p<0.001)。生存マウスのどれもsHIgM12での付加的な処置を受けなかったので、二次負荷に対する耐性は、効果的な抗腫瘍免疫応答が、初めの負荷の後に続いてsHIgM12で処置されたマウスにおいて確立されたことを示す。対照的に、sHIgM12抗体処置の後に続いてB16メラノーマに耐えた動物は、無関係腫瘍、EL-4への増加した耐性を示さなかった。
B7-DC架橋抗体での処置が、腫瘍特異的CTLを増強するかどうかを決定するために、7日目腫瘍を持つマウスの流入領域リンパ節が、腫瘍特異的CTL前駆体に対してアッセイされた。動物は、腫瘍負荷に1日先行して、腫瘍負荷と同じ日に、および腫瘍負荷の1日後に、sHIgM12抗体または対照抗体で処置された。採取されたリンパ節細胞は、付加的な4日間マイトマイシン処置B16メラノーマ細胞の存在下で培養され、次いで、標準的な51Cr放出アッセイにおいて、腫瘍特異的細胞毒活性に対して査定された。B16標的細胞に対する細胞毒活性は、B7-DC架橋抗体で処置された動物に由来する細胞の培養においてのみ観測された(図10)。殺傷は、EL-4腫瘍細胞は殺傷されなかったので、B16メラノーマ標的に特異的であった。対照抗体で処置されたB16負荷マウスからのリンパ節細胞が活性を示さないという所見は、B16メラノーマ腫瘍系の公知の弱い生得抗原性と一致する。総合すると、これらの所見は、B7-DC架橋抗体sHIgM12での全身処置が、B16メラノーマに対する細胞免疫応答を増強し、急性腫瘍拒絶および長期間免疫力を引き起こすことを実証する。
(表4) B7-DC架橋抗体は、リコール応答を誘導する
*動物は、13日目におけるそれらの側腹部のEL-4腫瘍の成長に対して評価された。
**NS = 統計的な差なし
実施例12- sHIgM12での処置は、B16肺転移モデルにおいてマウスを保護する
B16メラノーマのF10-B16サブ系が、肺へ転移するその効率的な能力に対して選択された。この特別な腫瘍系は、高度に悪性で弱抗原性であり、抑制MHCクラスI遺伝子発現によって特徴付けられる。細胞懸濁液としてのF10-B16メラノーマの静脈内導入は、典型的には、3〜4週間以内に肺において50〜200腫瘍小結節を引き起こす。このモデルにおける腫瘍耐性の誘導に対するsHIgM12処置の有効性を評価するために、動物は、抗体処置に3日先行して、肺転移で播種された。動物は、腫瘍負荷の3、4、および5日後に、10μgのsHIgM12 B7-DC架橋抗体を静脈内に受けた。同一の腫瘍負荷を受けた未処置センチネルマウスは、腫瘍積載量(burden)に対してモニターされた。腫瘍積載量がセンチネルマウスにおいて50小結節を超えた場合、実験は終了され、すべての処置群からの動物の肺が、腫瘍の存在に対して分析された。
図11において示されるように、sHIgM12抗体を受けた動物の肺は、対照pHIgMを受けたマウスよりも、有意に少ない腫瘍少結節を含んだ。示される実験において、sHIgM12抗体で処置されたすべての8匹の動物は、対照イソタイプ適合抗体で処置された8匹の動物において観測された最小の数よりも少ない腫瘍小結節を発生し(p<0.001)、8匹の保護動物のうち3匹が、腫瘍を発生しなかった。全体として、sHIgM12で処置された動物のおよそ半分(29匹のうち14匹)が、腫瘍がないままであった。したがって、B7-DC架橋抗体の全身投与は、腫瘍が処置を開始することに先行して3日間確立することを可能にされる後でさえも、高度に致死的で弱免疫原性の腫瘍に対する耐性を与える。
実施例13- F10-B16メラノーマに対する誘導性耐性は、CD8+ T細胞によって媒介される
F10-B16腫瘍は、MHCクラスI分子の軽減された量を発現するので、sHIgM12での処置によって誘導される耐性が、NK細胞によって媒介され得るという可能性が評価された。動物は、腫瘍負荷に先行して、抗NK1.1抗体で処置された。NK細胞欠失プロトコールの効率性は、NK細胞を可視化するためにNK1.1およびDX-5特異的抗体を使用してフローサイトメトリーによってモニターされた。脾NK細胞は、NK1.1特異的抗血清で処置された動物において、90%よりも多く減少した。図12において示されるように、sHIgM12処置NK細胞枯渇動物とsHIgM12処置マウスとの直接的な比較は、全身sHIgM12処置によって誘導される抗腫瘍応答におけるNK細胞の軽度のしかし統計的に有意な(p<0.001)貢献を示唆する。しかしながら、NK細胞枯渇マウスは、F10-B16メラノーマでの静脈内負荷の3日後に投与されたB7-DC架橋抗体の免疫治療的効果に対してまだ応答性であった(p=0.002)。対照的に、CD-8ノックアウトマウスは、B7-DC架橋抗体での処置に対して応答性ではなく、CD8+ T細胞が、このモデルにおける抗腫瘍免疫力の重大なメディエーターであることを示す。B7-DC架橋抗体を受けなかったNK欠損またはCD8欠損マウスは、未処置動物よりも発生する肺腫瘍に対して感受性または耐性がなく、F10-B16腫瘍系の特徴的に弱い免疫原性と一致する。
腫瘍細胞を殺傷する細胞毒性リンパ球の能力は、部分的に、パーフォリンおよびグランザイム依存性経路によって媒介されるが(Van den Broek et al. (1996) J. Exp. Med. 184:1781-1790;およびPardo et al. (2002) Eur. J. Immunol. 32:2881-2887)、いくつかの環境において、細胞毒性の両方のメディエーターは必要とされない(Smyth et al. (2003) J. Immunol. 171:515-518)。実験は、全身抗体処置によって誘導される保護効果が、パーフォリン介在性であるかどうかを評価するために実施された。パーフォリンノックアウトマウスは、上に記載されるように、腫瘍負荷の3、4、および5日後にsHIgM12で処置され、肺が、腫瘍小結節の成長に対して分析された。図13において示されるように、sHIgM12免疫治療は、パーフォリン欠損動物において効果がなかったが、野生型B6マウスにおいて高度に効果的であった。独立の実験において、sHIgM12抗体でのB7-DC架橋は、グランザイムB欠損マウスにおいても保護的ではなかった。治療的処置モデルを使用して、sHIgM12 B7-DC架橋抗体で処置されたグランザイムB欠損マウスの肺における99.2(+/- 15.0、n=5)腫瘍小結節と比較して、98.2(+/- 4.9 SEM、n=5)腫瘍小結節の平均が、対照ポリクローナルヒトIgM抗体で処置されたグランザイムB欠損マウスの肺において見出された。NK細胞は、B7-DC架橋抗体での処置によって誘導される抗腫瘍耐性の一次メディエーターであるようには見えないので、かつ保護応答は、CD8 T細胞に依存するので、これらの発見は、B7-DC架橋抗体での腫瘍保持マウスの処置が、インビボで細胞溶解性CD8+ T細胞を増強する、および細胞毒性が、パーフォリンおよびグランザイムBの両方によって媒介されるという見解と最も一致する。
実施例14- 組換えヒトIgM抗体の産生
sHIgM12などの対象となる抗体が同定されたら、不死化供給源が、これらの重要な試薬を持続するために生成される。ベクターシステムが開発され、sHIgM12ならびにヴァルデンストレームマクログロブリン血症患者の血清において同定された別のヒトIgM抗体(sHIgM22)を不死化するために使用された。抗体のアミノ酸配列は、血清から生成されたFvフラグメントから決定された。悪性B細胞は、ヴァルデンストレーム患者の血液中を循環するので、最高血清濃度で存在するsHIgM22抗体の重および軽鎖遺伝子をコードするcDNAは、うまく単離された。これらのcDNA配列は、患者抗体に由来する可変領域をコードするゲノムヒトIgM重鎖遺伝子を生成するために使用され、cDNAに基づく軽鎖遺伝子は、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターの制御下で発現された。これらの抗体遺伝子配列は、SV40プロモーターの制御下で発現される選択可能なdHfR遺伝子とともに単一ベクター(図14)に取り込まれた。合成抗体遺伝子を持つベクターは、電気穿孔法によってF3B6ハイブリドーマ細胞に導入された。メトトレキサート耐性細胞は、培養培地におけるメトトレキサートの量を上げていくことによって、選択されかつ増幅された。上清のmlあたり100μg抗体を発現するクローンが回収された。組換え抗体は、患者血清から単離された抗体に対して同定されたすべての機能的特性を示した。
この同じ手順は、sHIgM12の組換え供給を生成するために使用された。sHIgM12のアミノ酸配列解析が得られた。抗体重鎖のアミノ末端はブロックされていたので、アミノ末端配列を得る効率性を増加させるために、Fvフラグメントが生成された。sHIgM12重鎖のアミノ末端配列は、
であることが決定され、軽鎖のアミノ末端配列は、
であることが決定された。
cDNAは、sHIgM12をコードするmRNAの完全長cDNAコピーを回収することに対して使用されるために、患者の末梢血細胞から単離された。回収されたcDNAが本当に対象となる抗体を示したのかを裏付けるために、sHIgM12のCDR3領域のアミノ酸配列が決定された。これは、Fvフラグメントのタンパク質溶解性分解および分解産物の従来のアミノ酸シークエンシングによって遂行された。sHIgM12 cDNAが獲得されると、それらは、上に記載されるのと同様であるが軽鎖定常領域を置換することによってIgM/Kappa抗体の発現に対して改変されたベクターに挿入された。次いで、組換えsHIgM12は、上に記載されるように、ヒト/マウスハイブリドーマ系F3B6において発現された。sHIgM12軽鎖の可変(Vk)および定常(Ck)ドメインに対するアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:6および7に記載する。sHIgM12重鎖の可変(Vh)および定常(CH1、CH2、CH3、およびCH4)ドメインに対するアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:8、9、10、11、および12に記載する。これらのアミノ酸配列は、図19Aおよび19Bにおいても提供される。sHIgM12軽および重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列は、図20において示される(それぞれSEQ ID NO:13および14)。改変ベクターも、ヒト抗体rHIgM46を発現するために成功して使用された。
実施例15- アレルギー性喘息実験のための材料および方法
マウスおよび試薬:6〜8週齢BALBc/JおよびBALB/c-Stat4tmlGruマウスは、Jackson Laboratoryから得た。OVAタンパク質は、Sigma Aldrich (St. Louis, MO)から購入した。
免疫付与および気道負荷:OVAでの感作および負荷手順は、Zhang et al. ((1997) Am. J. Respir. Crit. Care. Med. 155:661-669)によって記載される方法から改変された。手短に、すべてのマウスは、0日目に、1 mgのミョウバン(Pierce, Rockford, IL)に吸着された100μg OVAの腹腔内(i.p.)注射によって感作された。治療的処方計画に対して、マウスは、7日目に、ミョウバンに吸着された100μg OVAの第二の腹腔内注射を受けた。実験マウスは、14、23、24、25、および26日目に、トリブロモエタノール麻酔下で、PBSにおける100μg OVAで、鼻腔内で負荷された。
B7-DC架橋抗体での処置:予防的処方計画において、マウスは、ミョウバンにおけるOVAでの第一の感作に対して-1、0、1日目において、1日あたり10μgで、sHIgM12または対照ポリクローナルIgM(pHIgM)抗体で、静脈内で処置された。このスケジュールは、抗体処置が、典型的にはアジュバントとしてのミョウバンの使用によって引き起こされるTh2極性化応答の確立を予防または軽減するかどうかを決定するためにデザインされた。治療的処方計画において、抗体処置は、PBSにおけるOVAでの第一の鼻腔内負荷の前日、負荷の日、および負荷の翌日(ミョウバンにおけるOVAでの第一の感作に対して13、14、および15日目)に、同じ用量および投与法で実行された。この処置スケジュールは、Th2極性化処方計画による免疫付与後のB7-DC架橋抗体での処置が、確立された応答極性を調節し得るかどうかを査定するためにデザインされた。
メタコリンに対する気道応答性の測定:気道応答性は、全身プレチスモグラフ(Buxco Electronics, Troy, NY)における覚醒マウスにおけるメタコリン誘導性気流閉塞によって、27日目に査定された。肺気流閉塞は、前増幅モジュールに接続された変換器を用いて強化ポーズ(pause)(Penh)によって測定され、システムソフトウェアによって分析された。メタコリン応答性を測定するために、マウスは、PBSに2分間曝露され、エアロゾル化メタコリン(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)の増分投薬量が後に続いた。Penhは、各々の用量に対してモニターされた。
気管支肺胞洗浄(BAL)液の収集:AHRを測定した直後に、動物は、ペントバルビタール(Abbott Laboratories, Abbott Park, IL)の致死的用量(250 mg/kg)を腹腔内に注射された。気管は、カニューレを挿入され、肺が、0.5 mlのHBSSで2回洗浄された。遠心後、上清が収集され、-20℃で保存された。細胞は、再懸濁され、血球計を使用してカウントされた。BAL細胞識別は、Wright-Giemsa染色で決定された;≧200細胞は、従来の形態基準を使用して識別された。BAL液上清におけるIL-5は、製造業者(R&D Systems, Minneapolis, MN)によって指示されるようにELISAによって測定された。
組織学:BAL液収集の後、肺は、10%ホルマリンで固定され、パラフィンに包埋された。切片は、調製され、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色された。いくつかの切片は、抗CD3抗体およびペルオキシダーゼ標識二次発色試薬を用いる免疫組織化学研究に対しても使用された。切片は、100×および400×倍率において顕微鏡で評価された。
インビトロサイトカイン産生および増殖の測定:27日目において、対照抗体またはsHIgM12で処置されたマウスからの脾細胞が、採取されて処理された。手短に、単一細胞懸濁液を作った後、赤血球は、ACK(塩化アンモニウム/重炭酸カリウム/EDTA)を使用して高浸透圧ショックによって溶解された。細胞は、カウントされ、RPMI(Cambrex Biosci, Walkersville, MD)において3×106 cell/mlで再懸濁された。2 mg/mlの濃度におけるOVAは、半対数希釈で滴定された。脾細胞は、100μlにおける3×105 細胞で添加された。上清は、48時間後に採取され、サイトカインアッセイのために保存された。細胞は、72時間アッセイの最後の18時間の間に、[3]H-チミジン(Packard, Boston, MA)でパルスされた。細胞は、収集され、[3]H-チミジンの取り込みに対してカウントされた。保存された上清は、製造業者(R&D Systems)のプロトコールに従って、ELISAによってIL-4、IL-5、IL-10、IFN-γ、およびTNF-αに対して分析された。
統計解析:データは、正規分布データに対しては二元配置反復測定ANOVAまたはStudent T検定、およびノンパラメトリックデータに対してはWhitney順位和検定を使用して分析された。
実施例16- sHIgM12での処置は、アレルギー性気道炎症のマウスモデルにおける気管支AHRを軽減する
実験は、sHIgM12抗体でのマウスDC上のB7-DCの架橋が、アジュバントミョウバンでの免疫付与によって誘導され得る病原性Th2表現型から歪められた免疫応答を引き起こすかどうかを決定するために実施された。特に、OVAでの初めの免疫付与の間に誘導される喘息様状態に対するsHIgM12の効果が、分析された。sHIgM12は、図15Aのプロトコール時系列において描かれるように、ミョウバンにおけるOVAでの免疫付与の前日、当日、および翌日に始まるようにマウスに投与された。sHIgM12抗体で処置されたマウスは、イソタイプ対照抗体で処置された動物に対して、メタコリン負荷に対する気道過応答性(AHR)から有意に保護された(図16A、p=0.041)。
アレルギー性喘息のOVAモデルは、BALにおける全細胞の数における増加、肺およびBALにおける好酸球の数における増加、ならびに肺組織切片における血管周囲および気管支周囲細胞浸潤物によって反映される肺炎症によって特徴付けられる(Zhang et al., 前記)。BAL液における全細胞の数は、sHIgM12処置マウスにおいて有意に軽減された(図16B, p=0.013)。さらに、sHIgM12処置は、劇的に軽減された肺への好酸球遊走も引き起こした(図16C, p=0.015)。IL-5は、好酸球の遊走において極めて重要な役割を果たすサイトカインである(Macatonia et al. (1995) J. Immunol. 154:5071-5079)。有意な好酸球浸潤物を検出することの失敗は、sHIgM12抗体での処置の後に続くIL-5の軽減されたレベルの観測と相関した(図16D、p=0.008)。最も印象的なのは、sHIgM12処置が、イソタイプ対照抗体で処置されたマウスにおいて容易に明らかであった肺炎症、気管支上皮の肥厚、および粘液栓の付随の蓄積を全体的に無効にするという所見であった。
実施例17- sHIgM12での治療的処置は、AHRの発生を軽減する
sHIgM12処置での処置が、治療的マウスモデルにおいてアレルギー性気道炎症性疾患の発生を軽減し得るかどうかを決定するために、マウスは、図15Bのプロトコール処方計画において描かれるように、ミョウバンアジュバントにおけるOVAでの初めの感作の後に続いて13、14、および15日目にsHIgM12抗体で処置された。処置のこの処方計画は、免疫応答が病原性Th2極性の方へすでに歪められたセッティングにおいて、確立されたT細胞免疫反応性を調節するsHIgM12抗体の潜在性を査定するための機会を提供した。sHIgM12抗体を受けたマウスは、イソタイプ対照抗体を受けた動物に対して、メタコリンに対する気道応答性における劇的な軽減を示した(図17A、p=0.01)。さらに、sHIgM12処置マウスのBALにおいて観測された細胞浸潤物の数は、正常マウスにおいて回収された数と同等であり、対照抗体またはPBS処置マウスのいずれかからのBALにおいて見出された細胞浸潤物の数よりも有意に少なかった(図17B、p=0.008)。予防的処置処方計画にともなう所見と同様に、治療的にsHIgM12抗体で処置されたマウスにおいて、検出可能な好酸球浸潤はなかった(図17C、p=0.001)。
T細胞応答パターンをさらに特徴付けるために、マウスの様々な群のホモジナイズされた肺からの上清が、原型Th1サイトカイン、IFN-γ、およびTh2サイトカイン、IL-4に対して分析された。sHIgM12を受けたマウスは、対照抗体処置マウスとの比較において、IL-4(図17D、p=0.008)およびIFN-γ(図17E、p=0.016)の両方の有意に軽減された量を示した。IL-5レベルは、この実験において測定されなかったが、好酸球の完全な非存在は、IL-5レベルもsHIgM12処置動物において低いことを示した。このサイトカインパターンは、sHIgM12処置が、T細胞応答の極性をTh2からTh1に切り替えることによって肺における炎症誘発性サイトカイン環境をもたらすのではなく、むしろT細胞応答のいずれかの種類の発生をブロックすることを示唆した。プローブとしてCD3特異的抗体を使用した肺組織の免疫組織化学分析は、この結論を支持した。わずかなT細胞が、ナイーブ動物の肺に存在した。対照的に、PBSまたはポリクローナルIgM対照抗体で処置されたマウスからの肺は、大量のT細胞浸潤物を含んだ。注目すべきこととして、sHIgM12処置マウスからの肺は、未処置マウスの肺と同様に、炎症のサインを示さなかった。加えて、前感作の14日後にsHIgM12抗体の治療的処置プロトコールを受けた動物において、肺病変がなかった;ナイーブ動物およびsHIgM12抗体処置マウスの肺は、区別できなかった。対照的に、PBSまたはイソタイプ対照抗体で処置された動物は、それらの気管支気道の重度の変形および実質的な炎症性浸潤を示した。
IL-12シグナル伝達経路が、sHIgM12抗体処置のインビボの治療的効果に対して重要であるかどうかを決定するために、炎症性気道疾患を調節するsHIgM12の能力が、Stat4欠損動物において査定された。Stat 4は、IL-12シグナル伝達を媒介する必要な中間物である(Jacobson et al. (1995) J. Exp. Med. 181:1755-1762)。Stat 4欠損動物は、Th1形質をともなう免疫応答を発生するそれらの能力が、突然変異によって重度に低下しているので、高度極性化Th2応答を発生することが公知である(Kaplan et al. (1996) Nature 382:174-177;およびThierfelder et al. (1996) Nature 382:171-174)。これらの実験において、誘導性気道炎症性疾患の重症度は、野生型マウスと比較して、Stat 4欠損動物において実質的により高かった。sHIgM12でのStat 4欠損動物の治療的処置は、効果を有しなかったが、同じ実験において、野生型マウスは、気道炎症性疾患から完全に保護された。この発見は、Stat 4シグナル伝達分子を動員する能力が、sHIgM12の効果に対して重大であることを示し、IL-12産生が、前感作動物による応答の極性を変更することに対して重要であり得るという証拠を提供する。
実施例18- sHIgM12での処置は、サイトカイン産生を変更する
sHIgM12処置動物の肺における炎症の非存在において、アレルギー性応答のTh2極性特徴が、Th1極性の方へ変更されるかどうかを決定するために、抗体処置動物からの脾細胞が、OVA負荷に対するそれらのリコール応答の性質に対してインビトロで検査された。マウスは、ミョウバンアジュバントにおけるOVAでの感作後13、14、および15日目に、sHIgM12抗体またはイソタイプ対照抗体で処置された。脾細胞は、28日目に採取され、OVAでインビトロで再刺激された。抗原に応えたT細胞の増殖性応答は、対照抗体処置との比較において、sHIgM12処置を受けていたマウスにおいて10倍強化された(図18A)。この所見は、sHIgM12でのDCの処置が、T細胞を刺激する能力を強化するという以前の観測(Radhakrishnan et al., 前記)と一致した。これらの実験は、単離タンパク質に対する細胞応答を刺激するsHIgM12抗体の潜在性をも実証し、ワクチンの開発に対する重要な含意を有し得る観測である。
さらなる研究において、刺激された培養からの上清が採取され、サイトカインの存在に対して試験された。sHIgM12を受けたマウスは、イソタイプ対照抗体で処置されたマウスよりも、INF-γの有意に高いレベルを産生したが、いずれの処置群も、このサイトカインの実質的なレベルを産生しなかった(図18B、p=0.008)。同じ傾向が、TNF-α産生に対して観測された。sHIgM12で処置されたマウスからの脾細胞は、TNF-αの少ない量を分泌したが、TNF-αは、対照抗体で処置された脾細胞からの上清において検出されなかった(図18C、p=0.029)。これらのTh1サイトカインとは対照的に、原型Th2サイトカインIL-4およびIL-5は、sHIgM12抗体で処置されたマウスからの培養において、実質的にはより低かった。sHIgM12で処置されたマウスからの脾培養は、IL-4(図18D、p=0.004)およびIL-5(図18E、p=0.048)の非常に少ない量を含んだ。これらのデータは、sHIgM12が、T細胞応答をTh1極性の方へと歪めるが、二次抗原負荷に対する強い増殖性応答にも関わらず、Th1応答さえも弱いままであることを示す。sHIgM12で前処置された二次培養におけるIL-10の実質的なレベルの存在(図18F、p=0.008)は、実験的アレルゲンによって鼻腔内で負荷されたマウスの肺における炎症の非存在を説明し得ると考えられる。IFN-γおよびTNF-αを分泌するこれらの動物におけるT細胞の能力にもかかわらず、T調整性細胞は、この傾向を弱め、サイトカインが肺へと追跡するのを阻害し得ると考えられる。総合すると、これらのデータは、sHIgM12処置が、環境のTh2型を軽減することによって、および抗炎症性サイトカイン、IL-10の分泌を促進することによって、アレルギー性気道炎症性疾患から前感作個体を保護するという意見を支持する。
その他の態様
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されているが、前述の説明は、例示することを意図されており、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲を限定することを意図されないことが理解されるべきである。その他の局面、利点、および改変は、特許請求の範囲内である。