JP2016106792A - 医療用複室容器 - Google Patents
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Abstract
Description
医療用プラスチック容器を用いる医療用容器は、Tダイ法やインフレーション法でシート状やチューブ状にされた後、熱融着等によって袋状の容器本体を形成し、開口部より薬液を充填した後、開口部を密封シールし、蒸気滅菌等により滅菌されることによって製造される。
特開2010−229256(特許文献1)では、複数の収容室に区画されている医療用複室容器であって、医療用複室容器は、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いない医療容器用ポリプロピレン系樹脂組成物により形成されている。そして、ポリプロピレン系樹脂組成物としては、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体成分(A)50〜65wt%、エチレン−α−オレフィン共重合体成分(B)25〜35wt%、条件(C−i)〜(C−iii)を満たすプロピレン系樹脂成分(C)10〜20wt%からなる医療容器用プロピレン系樹脂組成物およびそれを用いた医療用容器。(C−i)プロピレン−エチレンブロック共重合体であること、(C−ii)分子量分布(Mw/Mn)が9.0〜15.0の範囲にあること、(C−iii)プロピレン系樹脂成分(C)全体のメルトフローレートが2.0〜8.0g/10minの範囲にあるものを用いている。
本発明の目的は、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることなく、透明性および柔軟性を備え、良好な耐落下性、耐低温衝撃性、ヒートシール特性を有し、かつ、弱シール部である仕切部における良好な剥離作業性を備える仕切部を有する医療用複室容器を提供するものである。
(1)熱可塑性樹脂組成物により形成されたシートをヒートシールして形成した薬剤室を有する容器本体と、前記薬剤室の下端部と連通するように前記容器本体にヒートシールされた排出ポートとを有し、さらに、前記薬剤室は、剥離可能な仕切部により内部空間が第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分され、かつ、前記排出ポートが、前記容器本体に前記第1の薬剤室の下端部と連通するように固定されている医療用複室容器であって、前記シートは、融解温度が、120℃以上であるプロピレン系樹脂を65〜75wt%、融解温度が、90℃以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体を25〜35wt%含有する熱可塑性プロピレン系樹脂組成物により形成されており、かつ、前記熱可塑性プロピレン系樹脂組成物により形成された前記シートは、前記プロピレン系樹脂中に、略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体が分散した状態となっており、かつ、前記略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体は、粒度分布において円相当径が、300nm以下のものが、累積頻度90%以上であり、かつ、前記容器本体は、前記仕切部において、前記プロピレン系樹脂によりヒートシールされない領域を含むことにより、剥離可能なものとなっている医療用複室容器。
(3) 前記略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体は、粒度分布における累積50%粒子径が、80〜220nmである上記(1)または(2)に記載の医療用複室容器。
(4) 前記シートは、形成材料である前記プロピレン系樹脂および前記エチレン−α−オレフィン共重合体を含有する熱可塑性プロピレン系樹脂組成物を混練機能付き押出機に投入後、前記熱可塑性プロピレン系樹脂組成物の溶融温度以上にて、3分以上混練した後、シート状に押し出し、かつ押し出されたものを所定速度にて引き取ることにより作製したものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(6) 前記複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害する連通阻害用弱シール部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(7) 前記第1の薬剤室および前記第2の薬剤室のそれぞれに薬剤が収納されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(8) 前記医療用複室容器は、前記薬剤が収納された薬剤室を押圧することにより、前記仕切部が剥離するものである上記(7)に記載の医療用複室容器。
(9) 前記熱可塑性プロピレン系樹脂組成物は、前記プロピレン系樹脂として、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A)を50〜60wt%、プロピレン−エチレンブロック共重合体(C)を、10〜20wt%、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を25〜35wt%含有している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(A−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度が125〜135℃、エチレン含量が1.5〜3.0wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含有量が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を50〜40wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であること
(A−ii)メルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃ 2.16kg)が4〜10g/10minの範囲にあること
(A−iii)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表す温度−損失正接(tanδ)曲線が0℃以下に単一のピークを示すものであること
(B−i)密度が0.870〜0.890g/cm3の範囲にあること
(B−ii)DSC測定における融解ピーク温度が80℃以下であること
(B−iii)メルトフローレート(JIS K7210 A法 条件D、190℃ 2.16kg)が2.0〜5.0g/10minの範囲にあること
(C−i)第1工程でメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が100〜200g/10minの範囲にあるポリプロピレン成分(C1)を65〜75wt%、第2工程でエチレン含量が4〜8wt%、重量平均分子量が80万〜300万のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)を35〜25wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体であること
(C−ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が9.0〜15.0の範囲にあること
(C−iii)プロピレン系樹脂成分(C)全体のメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が2.0〜8.0g/10minの範囲にあること。
図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。なお、図中の上側を「上端」、下側を「下端」として説明する。
本発明の医療用複室容器1は、熱可塑性樹脂組成物により形成されたシートをヒートシールして形成した薬剤室を有する容器本体と、薬剤室の下端部と連通するように容器本体にヒートシールされた排出ポートとを有し、さらに、薬剤室は、内部空間が剥離可能な仕切部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分され、かつ、排出ポートが、容器本体に第1の薬剤室の下端部と連通するように固定されている。さらに、シートは、融解温度が、120℃以上であるプロピレン系樹脂を65〜75wt%、融解温度が、90℃以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体を25〜35wt%含有する熱可塑性プロピレン系樹脂組成物により形成されており、かつ、シートを構成する熱可塑性プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂中に、略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体が分散した状態となっており、かつ、略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体は、粒度分布において円相当径が、300nm以下のものが、累積頻度90%以上であり、かつ、容器本体は、仕切部において、仕切部において、前記プロピレン系樹脂によりヒートシールされない領域を含むことにより、剥離可能なものとなっている。また、仕切部は、少なくとも分散した状態の略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体によりヒートシールされることにより、剥離可能なものとなっているということもできる。
医療用複室容器1は、図1に示すように、軟質バッグ2と、第1の薬剤と、第2の薬剤と、排出ポート3、混注ポート4とを備えている。
軟質バッグ2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、軟質バッグ2は、例えばブロー成形法などの種々の方法により製造されたものであってもよい。また、軟質バッグ2は、筒状体の外周部の全周をシールしたもの、上下端のみをシールしたもの、1枚のシートを2つ折りにして、折り曲げ部(側辺部7または8)以外の3辺をシールしたものなどの袋状物であってもよい。
なお、この実施例の医療用複室容器1において、側部シール部9bは、中央弱シール部9aより幅が広いものとなっているが、同程度の幅、あるいは狭幅のものとしてもよい。
また、実施例の側部シール部9bは、中央弱シール部9aおよび連通阻害部10より剥離しにくいものとなっている。
また、医療用複室容器1の第1の薬剤室21の容積はできるだけ小さい方がよい。このような構成であれば、第2の薬剤室22を圧迫したとき(例えば、押圧したときあるいは絞ったとき)、ワンアクションで連通阻害用弱シール部10が容易に剥離するものとなる。
また、医療用複室容器1は、第1の薬剤室21を圧迫することにより、仕切部9(中央弱シール部9a)の剥離に続いて連通阻害用弱シール部10が剥離するものであってもよい。このようなものであれば、軟質バッグ2の第1の薬剤室21を圧迫し、仕切部9の剥離時の流体の力により、連通阻害用弱シール部10を剥離させることができる。
剥離強度の具体的な測定方法としては、以下のようにして行うことができる。医療用容器を、各測定対象シール部を含む部分を容器の幅方向に10mmの長さに切断して、それぞれの切断片のシール部を引張速度300mm/分で剥離させた際の測定値の平均値である。
軟質バッグ2を構成するシート材料の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過度、耐熱性など)に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜550μm程度であるのが好ましく、200〜400μm程度であるのがより好ましい。また、軟質バッグ2としては、引張弾性率で500MPa以下、好ましくは50〜300MPaの押出フィルムあるいはインフレーション成形したチューブを用いることが好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂製シートを構成する熱可塑性プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂中に、略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体が分散した状態となっている。本発明において容器本体2の形成に用いる熱可塑性プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂を主構成成分とし、エチレン−α−オレフィン共重合体副構成成分としている。そして、プロピレン系樹脂がいわゆる海を形成し、略粒子状のエチレン−α−オレフィン共重合体がいわゆる島を形成する海島構造を有するものとなっている。そして、熱可塑性樹脂製シートはその表面においても、上記のように、プロピレン系樹脂がいわゆる海を形成し、略粒子状のエチレン−α−オレフィン共重合体がいわゆる島を形成する海島構造を有するものとなっている。
そして、略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体は、粒度分布において円相当径が、300nm以下のものが、累積頻度95%以上であることが好ましい。なお、円相当径とは、輸液バック断面を2〜4万倍程度の倍率でTEM解析を行い、その画像についてトレーシングペーパーにトレースした。その後、Image Pro-Plusを用いて画像処理を行い、PE粒子の断面積と同じ断面積を有する円に換算し、その直径を円相当径とした。累積頻度は円相当径の頻度の積分である。また、略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体は、粒度分布における累積50%粒子径が、80〜220nmであることが好ましく、特に、100〜200nmであることが好ましい。また、平均円相当径は、60〜240nmであることが好ましく、特に、90〜180nmであることが好ましい。なお、累積50%粒子径とは、全円相当径の中央値のことである。
排出ポート3は、図1に示すように、軟質バッグ2の下端側シール部6に形成された排出ポート取付部27に取り付けられている。排出ポート取付部27は、下端側シール部6の中心に設けられている。また、医療用複室容器1は、薬液を混注するための混注ポート4を備えている。このようにすることにより、医療用複室容器1に入れられた薬剤以外の成分を使用前に混注することができる。排出ポート3、混注ポート4は、高周波融着、熱融着、超音波融着等により軟質バッグ2に取り付けられている。なお、排出ポート3、混注ポート4としては、公知のものが使用できる。
熱可塑性プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂とエチレン−α−オレフィン共重合体との混合物である。具体的には、熱可塑性プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂として、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A)を50〜60wt%、プロピレン−エチレンブロック共重合体(C)を、10〜20wt%、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を25〜35wt%含有しているものであることが好ましい。
(A−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度が125〜135℃、エチレン含量が1.5〜3.0wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含有量が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を50〜40wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であること
(A−iii)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表す温度−損失正接(tanδ)曲線が0℃以下に単一のピークを示すものであること
(B−i)密度が0.870〜0.890g/cm3の範囲にあること
(B−ii)DSC測定における融解ピーク温度が80℃以下であること
(B−iii)メルトフローレート(JIS K7210 A法 条件D、190℃ 2.16kg)が2.0〜5.0g/10minの範囲にあること
(C−i)第1工程でメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が100〜200g/10minの範囲にあるポリプロピレン成分(C1)を65〜75wt%、第2工程でエチレン含量が4〜8wt%、重量平均分子量が80万〜300万のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)を35〜25wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体であること
(C−ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が9.0〜15.0の範囲にあること
(C−iii)プロピレン系樹脂成分(C)全体のメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が2.0〜8.0g/10minの範囲にあること。
プロピレン系樹脂組成物の主成分として用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であるプロピレン系樹脂成分(A)は、高い透明性、柔軟性、及び、耐衝撃性を備える樹脂である。本発明の医療容器用プロピレン系樹脂組成物は、医療用複室容器用プロピレン系樹脂組成物として特に有効である。
(1)基本規定
プロピレン系樹脂成分(A)は、メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定(示差走査熱量測定)における融解ピーク温度Tm(A)が125〜135℃、エチレン含量が1.5〜3.0wt%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含量が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を50〜40wt%逐次重合することで得られる。
(2−1)成分(A1)の融解ピーク温度Tm(A)
第1工程で製造される成分(A1)は、プロピレン系樹脂成分(A)において結晶性を決定する成分であり、成分(A)が耐熱性を発現するためには、成分(A1)の融解ピーク温度Tm(A)が比較的高いことが必要である。しかし一方で、Tm(A)が高すぎると柔軟性が不足し、また、ヒートシール特性を制御するためには、後述するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分である第2のプロピレン系樹脂成分(C)の融解ピーク温度Tm(C)との差が大きいことが必要である。そこで、成分(A1)の融解ピーク温度Tm(A)は、125〜135℃の範囲にあることが必要である。
一方、Tm(A)が高いと、耐熱性は良くなるが、柔軟性や透明性が阻害され易くなるばかりでなく、成分(C)の融解ピーク温度Tm(C)との差が小さくなることで、ヒートシールカーブが急激に立ち上がってしまい、多段階の安定的な剥離強度制御が困難となってしまうため、Tm(A)は135℃以下であることが必要であり、好ましくは133℃以下である。
成分(A1)の融解ピーク温度Tm(A)は、エチレン含有量によって制御され、本発明における成分(A1)のエチレン含量E(A1)が1.5〜3.0wt%の範囲である。エチレン含有量が1.5wt%以下の場合には、Tm(A)が高くなりすぎ、また、3.0wt%以上の場合には低くなりすぎる。
プロピレン系樹脂成分(A)中に占める成分(A1)の割合W(A1)は、成分(A)に耐熱性を付与する成分であるが、W(A1)が多過ぎると柔軟性や耐衝撃性を十分に発揮することが出来ず、また、透明性が損なわれる恐れがある。そこで成分(A1)の割合は60wt%以下であることが必要である。
一方、成分(A1)の割合が少なくなり過ぎると、融解ピーク温度Tm(A)が十分であっても耐熱性が低下し、薬液充填条件下にて、高圧蒸気滅菌した際に、容器に変形が生じたり、融着を起こすといった問題を生じ易くなるため、成分(A1)の割合は50wt%以上でなければならない。
(3−1)成分(A2)中のエチレン含量E(A2)
第2工程で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、プロピレン系樹脂成分(A)の柔軟性と耐衝撃性及び透明性を向上させるのに必要な成分である。一般に、プロピレン−エチレンランダム共重合体においてエチレン含有量が増加することで結晶性は低下し、柔軟性向上効果は大きくなるため、成分(A2)中のエチレン含有量E(A2)は8wt%以上であることが必要である。E(A2)が8wt%以下の場合には十分な柔軟性を発揮することが出来ず、好ましくは10wt%以上である。
成分(A2)の割合が多過ぎると耐熱性が低下するため、成分(A2)の割合W(A2)は50wt%以下に抑えることが必要である。
一方、成分(A2)の割合が少なくなり過ぎると柔軟性と耐衝撃性の改良効果が得られないため、成分(A2)の割合は40wt%以上であることが必要である。
成分(A1)と(A2)の各エチレン含量及び成分量は、重合時の物質収支(マテリアルバランス)や、公知の各種分析法によって定量される。尚、本発明において用いた測定方法については、実施例においてその詳細を記載する。
プロピレン系樹脂成分(A)のMFRは、4〜10g/10minの範囲を取ることが必要である。
プロピレン系樹脂成分(A)全体のメルトフローレート MFR(A)は、各成分(A1)、(A2)各々のMFR(各々MFR(A1)、MFR(A2)とする)と比率によって決定されるが、本発明においては、全体のMFRが4〜10の範囲にあれば、各々のMFRは本発明の目的を損ねない範囲で任意である。しかし、両者のMFRが大きく異なる場合には外観不良等が生じることがあるため、各成分各々のMFR(A1)、MFR(A2)共に4〜10g/10minの範囲にあることが望ましい。
プロピレン系樹脂成分(A)においては、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示すことが必要である。
プロピレン系樹脂成分(A)が相分離構造を取る場合には、成分(A1)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(A2)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。この場合には、透明性が顕著に悪化するという問題が生じる。通常プロピレン−エチレンランダム共重合体におけるガラス転移温度は−60〜20℃の範囲において観測され、相分離構造を取っているかどうかは、本範囲における固体粘弾性測定におけるtanδ曲線において判別可能であり、成形品の透明性を左右する相分離構造の回避は、0℃以下に単一のピークを有することによりもたらされる。固体粘弾性測定(DMA)の具体的な方法については実施例に記載する。
本発明に用いられるプロピレン系樹脂成分(A)の製造方法は、特開2005−248156号公報、特許4156491号公報に記載の方法を用いることが好ましい。
また、メタロセン系触媒としては、特開2005−248156号公報に開示されているものが使用できる。代表的なメタロセン化合物としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが例示できる。なお、メタロセン系触媒は、上記のものに限定されるものではない。
エチレン−α−オレフィン共重合体成分(B)は、以下の条件(B−i)〜(B−iii)を具備するものである。
(B−i)密度が0.870〜0.890g/cm3の範囲にあること
(B−ii)DSC測定における融解ピーク温度が80℃以下であること
(B−iii)メルトフローレート(JIS K7210 A法 条件D、190℃ 2.16kg)が2.0〜5.0g/10minの範囲にあること
そして、本発明では、このエチレン−α−オレフィン共重合体成分(B)を含有させることにより、樹脂組成を用いて形成されたシートに良好な耐衝撃性とヒートシール特性を付与している。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体成分(B)の屈折率が成分(A)と大きく異なる場合には、組成物の透明性が悪化するため、屈折率をあわせることも重要である。これら融解温度や屈折率は密度によって制御可能であり、ヒートシール特性と透明性を両立させるには、密度を特定の範囲にすることが必要となる。
以上の理由から、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体成分(B)は、密度が0.870〜0.890g/cm3の範囲にあることが必要である。
密度が低くなりすぎると、屈折率差が大きくなり透明性が悪化するため、0.870未満の場合には、本発明に必要な透明性を確保することが出来ず、0.870以上であることが必要で、好ましくは0.875以上である。
一方、密度が高くなりすぎると、結晶性が高くなることで柔軟性、耐衝撃性や透明性が悪化し易くなり、また、成分(A)の融解温度と成分(B)の融解温度に差が無くなるとヒートシール特性の制御が困難となるため、0.890以下であることが必要で、好ましくは0.885以下である。
前述したように1〜10N/10mm程度の比較的弱いヒートシール強度領域のシール強度を制御するためには、成分(A)と成分(B)の融解温度を離すことが重要であり、本発明においては成分(B)の融解ピーク温度T(B)は80℃以下であることが必要である。T(B)が80℃以下であれば、1〜10N/10mmの強度領域にてシール強度が±1N/10mmの範囲内に設定可能であり、T(B)が80℃を越える場合には、ヒートシール温度範囲が狭く、安定したヒートシール強度を得ることが出来ない。
本発明の樹脂組成物は、成形性を確保するために適度な流動性を持っていることが必要であり、成分(B)の粘度が高すぎると流動性が不足し、分散不良が生じたりすることで透明性や耐衝撃性が低下し易くなり、また、ヒートシール特性にばらつきが生じるといった問題を生じ易くなる。そこで本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体成分(B)はメルトフローレートが2.0g/10min以上であることが必要であり、好ましくは2.5以上である。一方、メルトフローレートが高すぎると、成形時の安定性が低下し、フィルムの厚みムラが生じたり、耐衝撃性が低下するといった問題を生じ易くなり、また、ヒートシール時に成分(B)は成分(A)に比べより低い温度で融解するため、粘度が低すぎるとヒートシール圧力により表面にブリードしやすく、ヒートシールの制御性が悪化するため、メルトフローレートは5.0g/10min以下であることが必要であり、好ましくは4.5g/10min以下である。
成分(B)が樹脂組成物中に占める割合は、25〜35wt%の範囲であることが必要である。すなわち、成分(B)は成分(A)中にドメインとして存在し、かつ、成分(A)に比べ融解温度が低いため、低い温度域で成分(B)だけが融解することでヒートシール強度が低い領域の制御を行っている。このとき、成分(B)の量が少なすぎると、フィルム表面における成分(B)の存在量が少なくなり、弱シール時の強度が低くなりすぎ十分な制御を行うことが出来ないばかりでなく、耐衝撃性が不足し、製品が輸送時に破袋するといった問題を生じる。一方で、量が多くなりすぎると、成分(B)が表面に多く存在することで、加熱滅菌時に融着が生じてしまう恐れがある。本発明における成分(B)が組成物中に占める割合は、25〜35wt%の範囲にあることが必要で、25wt%未満の場合には、弱シール特性が不十分、かつ、柔軟性、耐衝撃性が不足になり、35wt%以上の場合には耐熱性が不足するため、用いることが出来ない。
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体成分(B)は、成分(A)との屈折率差を小さくするためには密度を低くすることが必要であり、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには結晶性及び分子量分布が狭いことが望ましい。そこで、成分(B)の製造には結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒を用いることが望ましい。
メタロセン触媒としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合に用いられる公知の各種触媒を用いることが出来る。具体的には、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35006号、特開平3−163088号の各公報などに記載されているメタロセン系触媒を例示できる。
具体的な重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などが挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体成分(B)は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製アフィニティー(登録商標)及びエンゲージ(登録商標)、日本ポリエチレン社製カーネル(登録商標)、エクソン社製EXACT(登録商標)などが挙げられる。
これらの使用において、本発明の要件である密度と融解ピーク温度、MFRのグレードを選択すればよい。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体は、前記条件(B−i)〜(B−iii)を満たす限りエチレンとエチレン以外の一種類のα−オレフィンからなる共重合体であっても、エチレンとエチレン以外の二種類以上のα−オレフィンからなる共重合体であっても良い。
このプロピレン系樹脂成分(C)は、(C−i)〜(C−iii)の条件を具備する。
(C−i)第1工程でメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が100〜200g/10minの範囲にあるポリプロピレン成分(C1)を65〜75wt%、第2工程でエチレン含量が4〜8wt%、重量平均分子量が80万〜300万のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)を35〜25wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体であること
(C−iii)プロピレン系樹脂成分(C)全体のメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が2.0〜8.0g/10minの範囲にあること。
医療容器用プロピレン系樹脂組成物として、多段階の安定的な剥離強度制御性を有することが望ましい。本発明の樹脂組成物では、上述した成分(B)を含有することにより、1〜10N/10mm程度、好ましくは2〜6N/10mm程度の比較的容易に剥離可能な弱シール強度領域におけるシール温度に対し安定的な弱シール特性を発揮させることを可能としている。しかし、容易に剥離可能であるが1〜10N/10mmの弱シール領域に加えて、第2のヒートシール特性として、より高い2〜25N/10mm程度、好ましくは4〜20N、さらに好ましくは6〜15Nの剥離強度領域にてシール強度を制御することが望ましい。また、安定した剥離強度の製品を得るためには、ヒートシール温度に対するこの領域の強度の変化を出来るだけ小さくすることが必要なのは1〜10N/10mmと同様である。このとき、2〜25N/10mmの強度領域で設定強度±2N/10mmで強度管理するには、プロピレン系樹脂成分自体の改良が必要であり、プロピレン系樹脂成分(C)は、これを制御するための成分である。
プロピレン系樹脂成分(C)は、第1工程でメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が100〜200g/10minの範囲にあるポリプロピレン成分(C1)を65〜75wt%、第2工程でエチレン含量が4〜8wt%、重量平均分子量が80〜300万のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)を35〜25wt%逐次重合することで得られる。
成分(C1)はポリプロピレン成分であり、結晶性が高い成分である。本成分は組成物中で成分(A)よりも融解温度が高く、成分(A)が融解する温度での融着を抑えることで温度に対するヒートシール強度の変化をなだらかにするための成分である。従って、成分(C1)は成分(A)よりも結晶性が高いことが必要であり、プロピレンのみからなるポリプロピレン成分であることが好ましい。
後述するように、成分(C2)は分子量が高いことが必要であるが、成分(C)全体の分子量が高いと、流動性が悪く、組成物中で十分に分散することが出来ず効果が不十分となるばかりか、流れムラ、ゲルやフィッシュアイと呼ばれる外観不良の原因ともなるため、成分(C1)の流動性を高めることで、成分(C)全体の流動性を確保することが必要である。そこで、成分(C1)のメルトフローレートは少なくとも100g/10minである事が必要であるが、一方で、メルトフローレートが高すぎても流れムラが発生しやすくなったり、耐衝撃性や柔軟性が低下する恐れがあるため、200g/10min未満であることが必要であり、本発明における成分(C1)のメルトフローレートは100〜200g/10minの範囲にあることが必要である。
成分(C2)は成分(A)の結晶成分が融解した際の流動性を下げることで、ヒートシール強度の急激な上昇を抑えるための成分である。流動性を下げることでヒートシール強度の上昇を抑制するには、成分(A)が融解したときに、成分(C2)も融解している必要がある。そこで、成分(C2)は成分(C1)とは異なり、結晶性を低下させることが必要であり、結晶性はエチレン含有量で制御されるためエチレン含有量を4〜8wt%にすることが必要である。
成分(C2)はヒートシール時に成分(A)が融解し、ヒートシール圧力により流動するのを阻害することで、ヒートシール強度の急激な上昇を抑えることが必要である。このとき、成分(C2)の分子量が低いと、流動を阻害する効果が不足し、ヒートシール特性を十分に改良することが出来ない。そこで、成分(C2)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)が80万以上であることが必要である。また、分子量が高くなりすぎると分散性が悪化するため、300万未満であることが必要である。
成分(C2)は極めて分子量が高いため、成分(C)中に占める割合W(C2)が多くなりすぎると、成分(C)が組成物中で十分に分散することが出来ず、ヒートシール特性の改良が出来ないばかりか、物性の悪化や、外観不良等の問題の原因となるため、35wt%以下であることが必要である。一方、成分(C2)が少なすぎると、十分なヒートシール特性を発揮するために組成物中に多くの成分(C)が必要となることで柔軟性が低下し、また、透明性の低下を招く恐れがあるため、25wt%以上であることが必要である。
成分(C)が組成物中に占める割合は、10〜20wt%の範囲であることが必要である。本発明において成分(C)は高強度側のヒートシール特性を改良するための成分であり、成分(A)に結晶性分布を付与し、結晶の融解挙動を制御するために、高結晶性成分である成分(C1)を、また成分(A)のヒートシール時の圧力による流動を抑制するために高分子量の成分(C2)を含むことで、温度に対するヒートシール強度の急激な上昇を抑制している。成分(C)の量が少なすぎると、高結晶性成分や高分子量成分が不足し、十分なヒートシール特性改良効果を得ることが出来ない。さらに溶融張力不足によるシート成形性の改善効果も発揮できない。一方で、成分(C)の量が多くなりすぎると、柔軟性や透明性等の物性低下が顕著になり、本発明の樹脂組成物に要求される品質を満たすことが出来ない。
本発明に用いる成分(C)は、分子量の大きく異なる成分(C1)と成分(C2)からなるため、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が、9.0以上であることが必要である。分子量分布が9.0未満の場合には、ヒートシール特性改良効果が十分でなく、15.0以上の場合には分散性が悪化する。
本発明において用いる成分(C)は、分子量が高い成分(C2)を含んでいるにもかかわらず、組成物中で十分な分散が必要である。そのためには、成分(C)が適度な流動性を有することが必要であり、流動性の尺度であるメルトフローレートが2.0〜8.0g/10minの範囲にあることが必要である。メルトフローレートが2.0未満の場合には分散が悪化し、流れムラやゲル、フィッシュアイと呼ばれる外観不良を引き起こすばかりか、ヒートシール特性が安定しにくくなり、十分な効果が得ることが出来ない。一方、8.0以上の場合には、耐衝撃性や柔軟性の低下といった物性上の問題を生じたり、ヒートシール特性改良効果が得られにくくなる等の問題が生じる。
成分(C)は、分子量の低い成分(C1)と分子量の極めて高い成分(C2)からなるが、これらの各成分は流動性が極めて異なるため、両者を溶融混練により混ぜることは事実上不可能である。一方、溶媒等に溶かしてブレンドすることはコスト面、環境面から好ましくない。そこで、本発明に用いられる成分(C)は第1工程で成分(C1)を、第2工程で成分(C2)を逐次重合することで、重合分散させたものであることが必要である。
成分(C)を得るための触媒系としては、チタン含有固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを主体とするもの、またはπ電子共役配位子を少なくとも1個有するメタロセン系の遷移金属化合物を用いることができる。ここで、成分(C2)はより高分子量の成分が含まれるほどヒートシール特性の改良効果が大きいため、チタン含有固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを主体とするものより製造されることが好ましい。
触媒は、第1段階で重合前に添加されるのが一般的である。後段に於いて触媒を補充することを必ずしも排除するものではないが、樹脂のブレンドでは得られない特性を得るためには、触媒は第1段階で添加するのが好ましい。
成分(C1)を得るための工程(1)は、プロピレンを水素の存在下に重合する。水素は工程(1)で得られる重合体のMFRが100〜200の範囲となるように制御される。一般には水素濃度(スラリー重合においては気相部濃度、液体プロピレン中の重合あるいは気相法においてはモノマー中の含有量を指す)が1〜50mol%、好ましくは3〜30mol%添加される。
成分(C2)を得るための工程(2)は高分子量成分を得るための重合であり、水素濃度は0.1mol%以下の実質的に無水素状態で重合を進行させる。工程(2)で得られる重合体の重量平均分子量は80万〜300万である。
重合温度は通常40〜90℃、好ましくは50〜80℃であり、共重合コモノマーとしてエチレンを含みコモノマー含量は4〜8重量%の範囲となるようにモノマーの濃度を制御する。
酸化防止剤は、樹脂組成物の成形加工時の熱安定性や、成形体の熱劣化を抑制するための添加剤であり、内容物に影響が小さいものを用いる必要があり、本発明において最も好適なのは、フェノール系酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトであり、加水分解しやすいものはさけることが好ましい。添加量は、樹脂組成物の安定性を確保するために必要な最低限にとどめ、2000ppm以下に抑えることが好ましい。中和剤としては、ステアリン酸カルシウムを用いることが出来るが、内容物によって高圧蒸気滅菌後にも不溶性微粒子の発生原因になる場合があるので、添加量は200ppm以下であることが望ましい。
プロピレン系樹脂成分(A)として、下記のものを用いた。
メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度Tm(A)が125〜135℃、エチレン含量が1.5〜3.0wt%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含量が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を50〜40wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いた。プロピレン系樹脂成分(A)は、融解ピーク温度Tm(A)が、130℃、成分(A1)中のエチレン含有量が、2.2wt%、成分(A1)の比率が、56wt%、成分(A2)中のエチレン含有量が、11wt%、成分(A2)の比率が、44wt%、ガラス転移温度が、−8.6℃、成分(A)全体のMFRが、6g/10minであった。
エチレンとヘキセン−1の共重合体を製造した。触媒の調製は、特表平7−508545号公報に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等倍モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
得られたエチレン・α−オレフィン共重合体は、密度が、0.88g/cc、融解ピーク温度Tm(B)が、60℃、MFRが、3.5g/10minであった。
第1工程でメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が100〜200g/10minの範囲にあるポリプロピレン成分(C1)を65〜75wt%、第2工程でエチレン含量が4〜8wt%、重量平均分子量が80〜300万のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)を35〜25wt%逐次重合することにより、プロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
上記成分(A)、成分(B)および成分(C)を、各々58、27、15wt%になるように計量し、ヘンシェルミキサーに投入後、この成分(A)と成分(B)と成分(C)の混合物100重量部に対して、下記の酸化防止剤、中和剤を添加し、充分に撹拌混合した。
中和剤:ステアリン酸カルシウム(日東化成工業(株)製 Ca−St)0.003重量部
スクリュ口径30mmの池貝製作所製PCM二軸押出機にて、スクリュ回転数200rpm、吐出量10kg/hr、押出機温度190℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでプロピレン系樹脂組成物原料ペレットを得た。
(1) シートの作製
上述のようにして作製したプロピレン系樹脂組成物原料ペレットを多層用の混練機能付サーキュラーダイ(インフレーションダイ)に供給し、190℃、混練機能付サーキュラーダイ滞留時間(混練時間)5分にて、チューブ状のシートを押出し、水冷リングで冷却後、厚さ0.3mm、折径190mmシートを18m/分の速度で引取ることにより、プロピレン系樹脂組成物製インフレーションシートを作製した。
上記のシートを300mm長に裁断し、排出ポート装着部、注入ポート装着部および薬剤注入部を除き上端をシート上端から幅 20〜30mmおよび下端をシート下端から幅20〜30mm、金型温度225℃、時間4秒の条件で片面加熱金型を用いてヒートシールして周縁部を有する容器本体を作製した。さらに、容器本体の中央部の幅7mm部分を金型温度120℃、時間3秒の条件で両面加熱金型を用いてヒートシールし、剥離可能な仕切部用弱シール部を形成した。次いで、幅7mmの連通阻害用弱シール部を金型温度130℃、時間5秒の条件で両面加熱金型を用いてヒートシールし、剥離可能であるが前述の弱シール部よりも剥離しにくいようにした剥離可能な連通阻害用弱シール部を形成した。そして、容器本体の排出ポート装着部および注入ポート装着部のそれぞれに筒状ポート部材を挿入し、両面加熱金型を用いてヒートシールして容器本体に固着した。また、排出ポート装着部に固着したポート部材の開口にゴム製の弾性部材を装着したキャップ部材を超音波融着し、開口を封止した。
上記のように作製した薬液入り医療用容器を高圧蒸気滅菌機に入れ、窒素雰囲気中で、温度110℃、ゲージ圧1.8Kg/cm2、時間30分の条件において滅菌し、室温まで冷却した。
(4−1)透明性の評価
滅菌後の薬液入り医療用容器を窒素雰囲気中で48時間放置した後、容器のシートの一部を切り取って、波長450mmにおける水中透過率を島津ダブルビーム型自記分光光度計UV−300にて測定したところ、水中透過率は、85%であった。
(4−2)柔軟性の評価
滅菌後の薬液入り医療用容器のシートをダンベル状に裁断し、JISK7113に準じて引張弾性率を測定したところ、引張弾性率は、180MPaであった。
滅菌後の薬液入り医療用容器の弱シール部および周縁部を部分的に切り取り、300mm/分の速度で180゜剥離強度を測定したところ、仕切部用弱シール部の剥離強度は、4Nであり、連通阻害用弱シール部の剥離強度は、8Nであった。なお、ここにおける剥離強度は、幅10mmに換算した値である。
実施例1の医療用複室容器の弱シール面近傍の非シール部分からシート切片を切り出した後、エポキシ樹脂に包埋処理し、ミクロトームにてバック断面超薄片を採取し、サンプルとした。このサンプルの断面におけるエチレン・α−オレフィン共重合体を四酸化ルテニウム(以下、「Ru04」という)を用いて着色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、内層部分断面における樹脂構造を観察した。断面観察において、ポリオレフィン成分を海とし、エチレン・α−オレフィン共重合体が微細な略粒状の島を形成する海島形態を確認した。そして、断面におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の粒状物の約660個の粒子について、TEM画像について画像解析により円相当径(nm)、頻度、累積%を測定したところ、図2に示す通りであった。
実施例1におけるシートの作製における混練機能付サーキュラーダイ滞留時間(混練時間)を4分とした以外は、実施例1と同様に行い、本発明の薬液入り医療用複室容器(実施例2)を作製した。実施例2の複室容器について、弱シール部および周縁部を部分的に切り取り、300mm/分の速度で180゜剥離強度を測定した。仕切部用弱シール部の剥離強度は、5Nであり、連通阻害用弱シール部の剥離強度は、10Nであった。なお、ここにおける剥離強度は、幅10mmに換算した値である。
実施例1におけるシートの作製における混練機能付サーキュラーダイの温度を180℃、混練機能付サーキュラーダイ滞留時間(混練時間)を6分とした以外は、実施例1と同様に行い、本発明の薬液入り医療用複室容器(実施例3)を作製した。実施例3の複室容器について、弱シール部および周縁部を部分的に切り取り、300mm/分の速度で180゜剥離強度を測定した。仕切部用弱シール部の剥離強度は、4Nであり、連通阻害用弱シール部の剥離強度は、12Nであった。なお、ここにおける剥離強度は、幅10mmに換算した値である。
実施例1におけるシートの作製における混練機能付サーキュラーダイ滞留時間(混練時間)を2分、引取速度を20m/minとした以外は、実施例1と同様に行い、薬液入り医療用複室容器(比較例1)を作製した。比較例1の複室容器について、弱シール部および周縁部を部分的に切り取り、300mm/分の速度で180゜剥離強度を測定した。仕切部用弱シール部の剥離強度は、8Nであり、連通阻害用弱シール部の剥離強度は、20Nであった。なお、ここにおける剥離強度は、幅10mmに換算した値である。
実施例1におけるシートの作製における混練機能付サーキュラーダイの温度を200℃、混練機能付サーキュラーダイ滞留時間(混練時間)、引取速度を250/minとした以外は、実施例1と同様に行い、薬液入り医療用複室容器(比較例2)を作製した。比較例2の複室容器について、弱シール部および周縁部を部分的に切り取り、300mm/分の速度で180゜剥離強度を測定した。仕切部用弱シール部の剥離強度は、10Nであり、連通阻害用弱シール部の剥離強度は、25Nであった。なお、ここにおける剥離強度は、幅10mmに換算した値である。
2 容器本体
3 排出ポート
4 混注ポート
5 上端側シール部
6 下端側シール部
9 仕切部
9a 中央弱シール部
9b 側部シール部
11 連通阻害用弱シール部
21 第1の薬剤室
22 第2の薬剤室
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂組成物により形成されたシートをヒートシールして形成した薬剤室を有する容器本体と、前記薬剤室の下端部と連通するように前記容器本体にヒートシールされた排出ポートとを有し、さらに、前記薬剤室は、剥離可能な仕切部により内部空間が第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分され、かつ、前記排出ポートが、前記容器本体に前記第1の薬剤室の下端部と連通するように固定されている医療用複室容器であって、
前記シートは、融解温度が、120℃以上であるプロピレン系樹脂を65〜75wt%、融解温度が、90℃以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体を25〜35wt%含有する熱可塑性プロピレン系樹脂組成物により形成されており、かつ、前記熱可塑性プロピレン系樹脂組成物により形成された前記シートは、前記プロピレン系樹脂中に、略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体が分散した状態となっており、かつ、前記略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体は、粒度分布において円相当径が、300nm以下のものが、累積頻度90%以上であり、かつ、前記容器本体は、前記仕切部において、前記プロピレン系樹脂によりヒートシールされない領域を含むことにより、剥離可能なものとなっていることを特徴とする医療用複室容器。 - 前記略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体は、粒度分布において円相当径が、300nm以下のものが、累積頻度95%以上である請求項1に記載の医療用複室容器。
- 前記略粒状のエチレン−α−オレフィン共重合体は、粒度分布における累積50%粒子径が、80〜220nmである請求項1または2に記載の医療用複室容器。
- 前記シートは、形成材料である前記プロピレン系樹脂および前記エチレン−α−オレフィン共重合体を含有する熱可塑性プロピレン系樹脂組成物を混練機能付き押出機に投入後、前記熱可塑性プロピレン系樹脂組成物の溶融温度以上にて、3分以上混練した後、シート状に押し出し、かつ押し出されたものを所定速度にて引き取ることにより作製したものである請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用複室容器。
- 前記仕切部は、中央弱シール部と、該中央弱シール部の両側に形成され、かつ前記中央弱シール部よりシール強度が高い側部シール部を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用複室容器。
- 前記複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害する連通阻害用弱シール部を備えている請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用複室容器。
- 前記第1の薬剤室および前記第2の薬剤室のそれぞれに薬剤が収納されている請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用複室容器。
- 前記医療用複室容器は、前記薬剤が収納された薬剤室を押圧することにより、前記仕切部が剥離するものである請求項7に記載の医療用複室容器。
- 前記熱可塑性プロピレン系樹脂組成物は、前記プロピレン系樹脂として、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A)を50〜60wt%、プロピレン−エチレンブロック共重合体(C)を、10〜20wt%、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を25〜35wt%含有している請求項1ないし8のいずれかに記載の医療用複室容器。
- 前記プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A)は、下記条件(A−i)〜(A−iii)を満たし、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、下記条件(B−i)〜(B−iii)を満たし、前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(C)は、(C−i)〜(C−iii)を満たすものである請求項9に記載の医療用複室容器。
(A−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度が125〜135℃、エチレン含量が1.5〜3.0wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含有量が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を50〜40wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であること
(A−ii)メルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃ 2.16kg)が4〜10g/10minの範囲にあること
(A−iii)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表す温度−損失正接(tanδ)曲線が0℃以下に単一のピークを示すものであること
(B−i)密度が0.870〜0.890g/cm3の範囲にあること
(B−ii)DSC測定における融解ピーク温度が80℃以下であること
(B−iii)メルトフローレート(JIS K7210 A法 条件D、190℃ 2.16kg)が2.0〜5.0g/10minの範囲にあること
(C−i)第1工程でメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が100〜200g/10minの範囲にあるポリプロピレン成分(C1)を65〜75wt%、第2工程でエチレン含量が4〜8wt%、重量平均分子量が80万〜300万のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)を35〜25wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体であること
(C−ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が9.0〜15.0の範囲にあること
(C−iii)プロピレン系樹脂成分(C)全体のメルトフローレート(JIS K7210 A法 条件M、230℃、2.16荷重)が2.0〜8.0g/10minの範囲にあること。
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