JP2016105449A - 導電性基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電性及び密着性に優れた導電性基板を提供することを目的とする。【解決手段】基材の一面側に、絶縁樹脂層と、多孔性銅層とがこの順に配置された積層体であって、前記多孔性銅層が、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有し、前記絶縁樹脂層由来成分含有領域の最大厚みが100nmより大きい、導電性基板である。【選択図】図1

Description

本発明は、導電性基板に関するものである。
従来、基材上に導電性の配線を施した回路基板の製造には、基材上にスパッタ等の蒸着法により金属層を形成し、或いは、基材上に金属箔を貼り合わせて金属層を形成し、当該金属層上にフォトレジストを塗布し、所望の回路パターンを露光し、ケミカルエッチングによりパターンを形成する方法等が用いられてきた。上記フォトレジスト法によれば、体積抵抗率が小さく、高性能の導電性基板を製造することができる。一方、当該方法は工程数が多く、煩雑であるとともに、フォトレジスト材料を要する等の欠点があった。
これに対し、金属粒子を分散させた金属粒子分散体を用いて、スクリーン印刷やインクジェット印刷などの印刷プロセスにより、基材に直接パターンを印刷し、金属粒子を焼結させることにより、回路パターンを形成する手法が注目されている。基材に直接パターンを印刷する手法によれば、従来のフォトレジスト法等と比較して、生産性が飛躍的に向上する。
しかしながら、このような金属粒子分散体を用いて回路パターンを形成する場合、得られる金属粒子の焼結膜は多孔質なものとなるため、前記フォトレジスト法と比較して、体積抵抗率を小さくすることや、基材と金属層との間の密着性を向上させにくいという問題があった。
特許文献1には、金属層の密着性を向上する手法として、ポリイミド前駆体含有液を基体表面に塗布し、乾燥もしくは半硬化して前駆体樹脂層を形成し、該前駆体樹脂層の表面に金属層を形成し、加熱硬化する、ポリイミド被膜組成物の製造方法が開示されている。
特許文献2には、金属薄膜と基板との密着性が高く、従来の金属薄膜と同程度の導電性を有する積層体として、絶縁基板と、該絶縁基板上に形成された特定の絶縁性樹脂層と、該絶縁性樹脂層上に形成された、金属粒子が互いに融着した構造を含む金属薄膜層とからなる積層体であって、該融着した金属粒子の一部が該絶縁性樹脂層に埋め込まれた状態で、該絶縁性樹脂層と金属薄膜層とが密着しており、且つ、該絶縁性樹脂層と該金属薄膜層との接触界面に金属酸化物が存在する積層体が開示されている。
特許文献2においては、金属薄膜層と絶縁性樹脂層の接触界面に金属酸化物が存在することにより、当該金属酸化物と、絶縁樹脂層中のイミド基又はアミド基との間で好ましい化学的結合を形成するとされている。
特許文献2の手法は、絶縁性樹脂層上に金属酸化物分散体を塗布して薄膜とし、当該薄膜上にめっき層を形成して金属層とするものであり、上記金属酸化物分散体の薄層のみで導電性を得られるものではなく、めっき層により導電性を確保していた。また、めっき層形成時に用いられるめっき液などにより上記薄層中の金属酸化物が溶解しやすく、密着性が不十分となることがあった。
特開2002−292790号公報 国際公開第2007/020726号パンフレット
本発明は、このような状況下になされたものであり、導電性及び密着性に優れた導電性基板を提供することを目的とする。
本発明に係る導電性基板は、基材の一面側に、絶縁樹脂層と、多孔性銅層とがこの順に配置された積層体であって、
前記多孔性銅層が、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有し、前記絶縁樹脂層由来成分含有領域の最大厚みが100nmより大きいことを特徴とする。
本発明の導電性基板は、X線光電子分光(XPS)法により測定された前記絶縁樹脂層由来成分含有領域を含む前記多孔性銅層の元素分析において、銅原子の元素分率に対する、酸素原子の元素分率の割合が5%以下であることが、導電性の点から好ましい。
本発明の導電性基板は、前記多孔性銅層上に、更にめっき層が配置された導電性基板とすることができる。
本発明によれば、導電性及び密着性に優れた導電性基板を提供することができる。
図1は、本発明の導電性基板の一例を示す概略断面図である。 図2は、本発明の導電性基板の一実施態様における断面SEM像を示す拡大写真である。 図3は、図2の導電性基板から、多孔性銅層を除去した後の積層体の断面SEM像を示す拡大写真である。 図4は、実施例1の導電性基板の断面TEM像を示す拡大写真である。 図5は、比較例1の導電性基板の断面TEM像を示す拡大写真である。 図6は、実施例1の導電性基板のXPS測定の深さ方向プロファイルである。 図7は、比較例1の導電性基板のXPS測定の深さ方向プロファイルである。
[導電性基板]
本発明に係る導電性基板は、基材の一面側に、絶縁樹脂層と、多孔性銅層とがこの順に配置された積層体であって、
前記多孔性銅層が、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有し、前記絶縁樹脂層由来成分含有領域の最大厚みが100nmより大きいことを特徴とする。
上記本発明に係る導電性基板について、図を参照して説明する。図1は、本発明の導電性基板の一例を示す概略断面図である。本発明の導電性基板10は、基材1の一面側に絶縁樹脂層2と、多孔性銅層3とをこの順に配置されている。本発明の導電性基板10は、当該多孔性銅層3が、その少なくとも一部に、前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する絶縁樹脂層由来成分含有領域4(以下、単に含有領域ということがある)を有しており、当該含有領域4の最大厚みが100nmよりも大きいことを特徴とする。
前記含有領域4においては、多孔性銅層3の複雑に入り組んだ孔の内部にまで絶縁樹脂層由来の樹脂が入り込むため、平坦面の場合と比較して表面積が極めて大きいものとなるのみならず、アンカー効果により優れた密着性を得ることができる。
また、本発明の導電性基板の多孔性銅層3は、含有領域4においても実質的に酸化銅を有しておらず、金属銅粒子同士が焼結し、融着している。そのため、含有領域中の多孔性銅層も導電性に寄与し、優れた導電性を有している。このようなことから、導電性を低下させることなく、含有領域の最大厚みを100nmよりも大きくすることができ、その結果密着性も向上する。
このように本発明によれば、多孔性銅層自体が優れた導電性を有するため、薄層化した場合であっても導電性及び密着性に優れた導電性基板を得ることができる。
本発明の導電性基板は、少なくとも基材と、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層由来成分含有領域を有する多孔性銅層を有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、孔を有しない銅層や、更に他の層を有していてもよいものである。以下、このような本発明の導電性基板の構成について説明する。
<基材>
本発明において基材は、導電性基板に用いられる基材の中から、用途に応じて適宜選択することができ、1層のみからなるものであってもよく、2層以上の積層体であってもよい。基材の材料としては、例えば、ガラス、アルミナ、シリカ、SUS箔などの無機材料を用いることができ、さらに高分子材料や、紙などを用いることもできる。本発明においては、後述する絶縁樹脂層との密着性の点から、基材として、後述する絶縁樹脂層を配置する側の表面に高分子材料を用いた樹脂層を備えた基材を用いることが好ましい。
高分子材料を用いた樹脂層の高分子材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン等のポリシクロオレフィン、液晶性高分子化合物等が挙げられる。
また、基材表面には、後述する絶縁樹脂層との密着性を向上するための処理を行ってもよい。基材表面の処理方法としては、従来公知の方法の中から適宜選択することができる。具体的には、例えば、コロナ処理、UV処理、真空紫外ランプ処理、プラズマ処理などのドライ処理、アミン系シランカップリング剤、イミダゾール系シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤処理などの薬液処理、多孔質シリカや、セルロース系受容層などの多孔質膜形成処理、活性エネルギー線硬化型樹脂層、熱硬化型樹脂層、熱可塑性樹脂層などの樹脂層形成処理を行うことができる。
当該基材の形状は、用途に応じて適宜選択すればよく、平板状であっても、曲面を有するものであってもよいが、通常は平板状である。平板状の基材を用いる場合、当該基材の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよく、例えば10μm〜1mm程度のものとすることができる。
<絶縁樹脂層>
本発明の導電性基板は、基材上に絶縁樹脂層が設けられている。絶縁樹脂層を用いることにより、多孔性銅層から基材側への漏電を防ぎ、且つ、多孔性銅層の少なくとも一部に、当該絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する絶縁樹脂層由来成分含有領域が形成される。
本発明において絶縁樹脂層は、絶縁性を担保する点から、通常、体積抵抗率が10Ω・cm以上の樹脂の中から選択すればよく、中でも、10Ω・cm以上の樹脂を用いることが好ましい。
本発明における絶縁性樹脂層中の樹脂としては、後述する多孔性銅層形成時に、多孔性銅層と混在する絶縁樹脂層由来成分含有領域を形成する点から、当該樹脂が、熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂より選択される1種以上の樹脂であることが好ましい。本発明においては、多孔性銅層との密着性の点から、絶縁性樹脂層全量に対して、熱硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。
絶縁性樹脂層の前駆体溶液として、熱硬化性樹脂を含む組成物を用いた場合には、当該熱硬化性樹脂を含む組成物の塗膜上に、銅粒子分散体を塗工した際に、前記熱硬化性樹脂は未硬化又は半硬化の状態であるため絶縁樹脂層由来成分含有領域を形成しやすく、次いで、多孔性銅層形成時の焼成において、絶縁樹脂層由来成分含有領域における上記熱硬化性樹脂の硬化反応が同時に進行するため、多孔性銅層と絶縁樹脂層との密着性が向上する。
絶縁性樹脂層中の樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合、樹脂のガラス転移温度(Tg)が、後述する多孔性銅層形成時の焼成温度よりも低いことが好ましく、中でもガラス転移温度(Tg)が150℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度(Tg)が150℃以下の樹脂を含む基材を用いることにより、多孔性銅層形成時の焼成において、多孔性銅層と上記樹脂成分とが混合して絶縁樹脂層由来成分含有領域が形成されやすく、密着性が向上する。
また、絶縁性樹脂層中の樹脂が熱硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂である場合、当該樹脂の前駆体である熱硬化性樹脂が、後述する銅粒子の融着が開始する温度よりも高温で硬化する熱硬化性樹脂であることが好ましい。銅粒子の焼結温度よりも高温で硬化する熱硬化性樹脂を用いることにより、後述する焼成時において、銅粒子の融着が先に進行するため、銅粒子同士の融着が阻害されることなく進行して導電性に優れるためである。
熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、ビスマレイミド−トリアジン樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等が好ましい。
絶縁性樹脂層中の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン等のポリシクロオレフィンなどが挙げられる。中でも、絶縁性及び密着性の点から、ポリイミド前駆体樹脂の硬化物であるポリイミドを含有することが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂としては、中でもポリアミック酸を用いることが好ましい。ポリアミック酸は、酸二無水物とジアミンとを溶液中で混合することにより得ることができる。
ポリアミック酸を構成する酸二無水物は、従来公知のものの中から適宜選択せればよい。得られるポリイミド樹脂の耐熱性及び低線熱膨張性の点から、テトラカルボン酸二無水物が好ましく、芳香族テトラカルボン酸二無水物がより好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が挙げられる。 またポリアミック酸を構成するジアミンは、従来公知のものの中から適宜選択すればよい。得られるポリイミド樹脂の耐熱性及び低線熱膨張性の点から、芳香族基を有するジアミンが好ましく、一つの芳香環に2つのアミノ基が結合しているジアミンであることが好ましい。このようなジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
絶縁樹脂層の厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜調整すればよい。絶縁樹脂層の厚みは、通常、0.01μm〜2μmの範囲内であり、0.1μm〜1μmであることが好ましい。
なお、本発明において絶縁樹脂層由来成分含有領域は、多孔性銅層の一部として取り扱うものとし、上記絶縁樹脂層の厚みには、後述する絶縁樹脂層由来成分含有領域は含まれないものとする。
<多孔性銅層>
本発明の導電性基板においては、前記絶縁樹脂層上に多孔性銅層を備えており、当該銅層は、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有している。
本発明における多孔性銅層は、このような含有領域を有するため、前記絶縁樹脂層との密着性に優れている。
なお、本発明において多孔性銅層とは、多数の孔を有する銅層をいい、同じ体積をもつ孔のない銅層よりも表面積が拡大されている。
本発明において多孔性銅層は、体積抵抗率が100μΩ・cm以下であることが好ましく、40μΩ・cm以下であることがより好ましい。このように低体積抵抗率の多孔性銅層を用いることにより、薄層化した場合であっても優れた導電性を有する。なお、本発明において多孔質銅層の体積抵抗率は、表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用い、導電性基板の多孔性銅層に4探針を接触させ、4探針法により表面抵抗を測定し、後述の方法により測定した多孔性銅層の膜厚から算出することができる。
本発明において多孔性銅層中の孔の形状は、少なくとも一部の孔に前記絶縁樹脂層由来の樹脂が入り込める形状を有すればよく、特に限定されない。少なくとも前記絶縁樹脂層側の面においては、多数の孔が互いに連結した連通孔を有することが好ましい。
多孔性銅層中の孔の割合(空孔率)は、導電性と密着性を両立可能な範囲に適宜調整すればよく、特に限定されない。中でも、含有領域を形成しやすく、且つ、導電性に優れる点から、空孔率が5%〜25%であることが好ましく、10%〜20%であることがより好ましい。なお、本発明における空孔率は、銅が存在していない部分を表すものであり、前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在している部分も含まれる。
本発明において空孔率は、導電性基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)像から確認することができる。具体的には、得られたSEM像から孔の面積と、絶縁樹脂基材由来の成分の面積と、銅の面積とをそれぞれ算出し、孔の面積と前記絶縁樹脂基材由来の成分の面積との合計を、多孔性銅層の面積(即ち、孔の面積と前記絶縁樹脂基材由来の成分の面積と銅の面積との合計)で除することにより当該断面における空孔率を求めることができる。導電性基板の大きさに応じて適宜複数の断面について同様に空孔率を求め、その平均値を多孔性銅層の空孔率とする。
空孔率は、後述する製造方法において、銅粒子分散体に用いられる銅粒子の粒径や、分散剤の種類、焼成条件等により適宜調整することができる。
本発明において多孔性銅層の膜厚は、用途に応じて適宜調整すればよいものであるが、通常、0.02〜50μmの範囲であり、密着性及び導電性の点から、0.1〜20μmであることが好ましい。
多孔性銅層中の絶縁樹脂層由来成分含有領域の厚みは、絶縁樹脂基材と多孔性銅層との密着性に優れる点から、当該含有領域の最大厚みが少なくとも100nmを超過するものであり、更に200nm以上であることが好ましい。
上記含有領域の最大厚みが200nm以上の場合には、多孔性銅層上に銅めっきにより厚膜化した場合であっても、導電性及び密着性に優れた導電性基板を得ることができる。含有領域の最大厚みが200nm以上の場合には、含有領域中の金属銅にめっき液が届きにくくなるため、めっき液の影響を受けにくくなる。そのため、多孔性銅層上に後述する金属めっき層を形成した場合であっても、密着性が低下しない。このように含有領域の最大厚みが200nm以上の場合には、密着性を低下させずに多孔性銅層上に銅めっきにより更に銅層の膜厚を厚くすることができ、導電性及び密着性に優れた導電性基板を得ることができる。
一方、導電性の点から、含有領域の最大厚みは、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましい。
本発明における含有領域の厚みの測定方法を図2及び図3を参照して説明する。図2は、本発明の導電性基板の一実施態様における断面SEM像を示す拡大写真である。また図3は、図2の導電性基板から、多孔性銅層を除去した後の積層体の断面SEM像を示す拡大写真である。
まず、図2の例に示されるような基材1上に絶縁樹脂層2と多孔性銅層3とが積層した導電性基板の断面のSEM像から、(A)含有領域4を含む多孔性銅層3の厚みと、(B)絶縁樹脂層2と多孔性銅層3の合計の厚み、をそれぞれ求める。
次いで、銅を溶解し、且つ、樹脂成分は溶解しない溶媒乃至溶液(例えば、塩化第2鉄(FeCl)溶液)を用いて、導電性基板の銅成分のみを溶解することにより、基材1上に、絶縁樹脂層2と、銅除去後の含有領域4’との積層体が得られる(図3参照)。図3の例に示されるように銅除去後の含有領域4’は、含有領域中の樹脂成分が残留している。当該積層体の断面のSEM像から、(C)絶縁樹脂層2と銅除去後の含有領域4’との合計の厚みを求めることができる。そして、上記(A)〜(C)の厚みから下記式1により、含有領域の厚みが算出できる。
式1: 含有領域の厚み = (A)の厚み+(C)の厚み−(B)の厚み
なお、上記図2の例では、基材としてガラス基材を用いている。基材として樹脂フィルムを用いた場合には、当該樹脂フィルムと絶縁樹脂層との界面が不明瞭となる場合がある。この場合は、上記含有領域の厚みの測定方法において、絶縁樹脂層の厚みの代わりに、基材と絶縁樹脂層との合計の厚みを用いることにより、上記と同様にして、含有領域の厚みを算出することができる。
本発明の導電性基板は、X線光電子分光(XPS)法により測定された前記含有領域を含む前記多孔性銅層の元素分析において、銅原子の元素分率に対する、酸素原子の元素分率の割合が5%以下であることが好ましい。XPS法により測定された多孔性銅層中の銅原子の元素分率に対する、酸素原子の元素分率の割合が5%以下であることにより、多孔性銅層内に酸化銅が少なく、多孔性銅層の導電性に優れている。
また、本発明の導電性基板は、X線光電子分光(XPS)法により測定された前記含有領域を含む前記多孔性銅層の元素分析において、銅原子の元素分率が75%以上の領域において、銅原子の元素分率に対する、炭素原子の元素分率の割合が15%以上である場合には、金属めっき層を積層した場合であっても密着性が低下しない、導電性基板となる点から好ましい。
本発明において多孔性銅層の元素分析は、導電性基板の多孔性銅層側表面を最表面とし、イオンスパッタ(イオン種Ar(3.0keV)、加速電圧 3.0kV、エミッション電流6.0mA、エッチング範囲2mm角、入射角45度)により、当該最表面から基材側に向かってエッチングを繰り返しながら、X線光電子分光計を用いて光電子を測定し、炭素原子由来の光電子、酸素原子由来の光電子、及び銅原子由来の光電子の比率から、各測定点における元素分率(At%)を求め、深さ方向のプロファイルを得ることができる。なお、本発明においては、酸素原子、炭素原子、及び銅原子の合計を100At%として、各元素の元素分率を算出している。
上記X線光電子分光計としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Theta−Probeを用いることができる。
<その他の層>
本発明の導電性基板は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の層を有していてもよい。他の層としては、導電性基板に用いられる従来公知の層を適宜選択して用いることができる。例えば、更なる導電性向上の点から多孔質銅層上に金属めっき層を有していてもよい。
(金属めっき層)
本発明は導電性に優れた多孔性銅層を有するため、そのままでも優れた導電性基板とすることができるが、より優れた導電性が得られる点から、多孔性銅層上に更にめっき層が配置されていてもよい。
金属めっき層は、前記多孔性銅層をめっき用のシード層として、従来公知の電界めっき法により形成することができる。特に本発明の導電性基板において、含有領域の最大厚みが200nm以上の場合には、めっき液に対する密着性の低下が抑制されるため、導電性及び密着性に優れた導電性基板を得ることができる。
金属めっき層の金属は、特に限定されないが、導電性の点から、銅、銀、金、ニッケル、亜鉛、クロムが好ましく、多孔性銅層との親和性の点から銅であることがより好ましい。
金属めっき層の厚みは、用途に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。通常、10nm〜30μmの範囲内であり、導電性と薄型化を両立する点から、100nm〜20μmであることが好ましい。
<導電性基板の製造方法>
本発明において、上記含有領域を有する多孔性銅層を備えた導電性基板の製造方法は、特に限定されないが、多孔性銅層及び含有領域を効率よく製造可能な点から、銅粒子分散体を用いた、以下のような製造方法とすることが好ましい。
即ち、絶縁樹脂層形成用組成物と、銅粒子分散体とを準備する工程と、
基材上に、前記絶縁樹脂層形成用組成物を塗布して塗膜とする工程と、
前記絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜上に、前記銅粒子分散体を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を焼成することにより、多孔性銅層を形成すると同時に、前記多孔性銅層の少なくとも一部に、前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する含有領域を形成する工程とを有する、導電性基板の製造方法が好ましい。
以下、上記好ましい製造方法について説明する。なお、基材については前述のとおりであるので、ここでの説明は省略する。
(絶縁樹脂層形成用組成物)
上記好ましい製造方法においては、まず絶縁樹脂層形成用組成物を準備する。絶縁樹脂層形成用組成物は、焼成時に多孔性銅層と混在し得る樹脂を有し、焼成工程後に硬化して上記所定の絶縁性樹脂層を形成するものの中から適宜選択して用いることができる。
本発明において絶縁樹脂層形成用組成物は、前述したような熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物であることが好ましく、中でもポリイミド前駆体樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いることが、絶縁性及び密着性の点から好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂は、従来公知の物の中から適宜選択して用いることができる。
(銅粒子分散体)
また、上記好ましい製造方法においては、銅粒子分散体を準備する。銅粒子分散体は市販品を用いてもよく、調製してもよい。銅粒子分散体は、少なくとも銅粒子と、これを分散する溶媒を有し、銅粒子の分散性の点、及び含有領域の形成性の点から、適宜分散剤を組み合わせて用いることが好ましい。
(1)銅粒子
本発明において銅粒子は、典型的には金属状態の銅粒子であるが、銅は非常に酸化され易い金属のため、金属状態の銅粒子の表面が一部酸化されて酸化物となっている場合が含まれていてもよいものである。
銅粒子の粒径は、特に限定されないが、上記空孔率を調整して導電性及び密着性に優れる点や、低温での焼結が進行しやすい点、また微細配線の点から、銅粒子の平均一次粒径が1nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜100nmであることがより好ましい。
なお、上記銅粒子の平均一次粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(例えば、日立ハイテク製 H−7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の最長部の長さの平均値を平均一次粒径とすることができる。
上記銅粒子分散体において、銅粒子の含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、分散性の点から、銅粒子分散体の全量に対して、0.01〜90質量%であることが好ましく、更に、0.1〜85質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記銅粒子の調製方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、メカノケミカル法などにより銅粉を粉砕する物理的な方法;化学気相法(CVD法)や蒸着法、スパッタ法、熱プラズマ法、レーザー法のような化学的な乾式法;熱分解法、化学還元法、電気分解法、超音波法、レーザーアブレーション法、超臨界流体法、マイクロ波合成法等による化学的な湿式法等を用いて銅粒子を得ることができる。
例えば、蒸着法では、高真空下で分散剤を含む低蒸気圧液体中に加熱蒸発した銅の蒸気を接触させて微粒子を製造する。
また、化学還元法の1種としては、錯化剤及び有機保護剤の存在下で、含銅化合物と還元剤とを溶媒中で混合して生成する方法が挙げられる。
なお、上記の方法の他、市販の銅粒子を適宜用いることができる。
本発明においては、中でも、銅粒子にカルボン酸とアルキルアミンを被覆させることが所望の多孔性銅層を形成しやすい点から好ましい。そのため、本発明においては、有機保護剤としてカルボン酸とアルキルアミンとを用いて、水酸化銅などの含銅化合物と還元剤とを溶媒中で混合して銅粒子を生成する方法が好適に用いられる。
上記カルボン酸は、配位子として、酸素原子により銅に結合し得る化合物である。従って、銅粒子分散体において、分散に寄与している当該カルボン酸は、通常、少なくとも1つの酸素原子により銅に結合した状態で存在する。
カルボン酸の具体例としては、特開2012−72418号公報の段落0029に記載のものを挙げることができ、中でも、炭素数が9以下のカルボン酸であることが、低温焼成性が良好になり、前記多孔性銅層の空孔率が適切な範囲となって導電性が向上する点から好ましい。また、分散性の点から炭素数が2以上のカルボン酸が用いられる。特に、炭素数が9以下の脂肪族カルボン酸であることが、分散性、低温焼成性が良好になり、導電性が向上する点から好ましい。なお、当該脂肪族カルボン酸は、飽和、不飽和のどちらでもよい。
上記カルボン酸は、1種のカルボン酸を使用してもよく、2種以上のカルボン酸を混合して使用してもよい。
上記カルボン酸は、極性が比較的弱く、焼成時に脱離しやすい点から、分子内に一つもしくは二つのカルボキシル基を有するカルボン酸を用いることが好ましく、更に分子内に一つのカルボキシル基を有するカルボン酸を用いることが好ましい。
また、上記カルボン酸は、焼成時に脱離しやすい点から、分子量が高過ぎないことが好ましく、分子量が300以下であることが好ましく、更に200以下であることが好ましい。また、沸点が400℃以下であることが好ましく、更に300℃以下であることが好ましい。一方で、銅粒子作製時、保管時の脱離、揮発防止の点から、カルボン酸の分子量は50以上であることが好ましい。また、沸点が50℃以上であることが好ましい。
用いられる前記銅粒子において、カルボン酸の含有量は、用途に応じて適宜選択すれば良いが、低温焼成性の点から、銅100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、更に、0.1〜20質量部の範囲内であることがより好ましい。
上記アルキルアミンは、製造される銅粒子に期待される特性等に応じて、公知のアルキルアミンから適宜選択して用いることができる。
アルキルアミンは、プロトンを捕捉する機能を有することにより、銅原子が酸化されることを防止していると推定される。
上記アルキルアミンの具体例としては、特開2012−72418号公報の段落0033〜0035に記載されたものを好適に挙げることができ、本発明においては、中でも、炭素原子及び水素原子以外の原子を含有しない炭化水素鎖を有するアルキルアミンであることが、密着性や導電性の点から好ましい。
上記アルキルアミンは、1種のアルキルアミンを使用しても良いが、2種以上のアルキルアミンを混合して使用してもよい。
上記アルキルアミンは、極性が比較的弱く、焼成時に脱離しやすい点から、分子内に一つもしくは二つのアミノ基を有するアルキルアミンを用いることが好ましく、分子内に一つのアミノ基を有するアルキルアミンがより好ましい。
また、上記アルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、分子量が高すぎないことが好ましく、分子量が300以下であることが好ましく、更に200以下であることが好ましい。また、本発明で用いられるアルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、炭素数が8以下であることが好ましく、更に6以下であることが好ましい。
また、本発明で用いられるアルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、沸点が300℃以下であることが好ましく、更に200℃以下であることが好ましい。一方で、銅粒子作製時、保管時の脱離、揮発防止の点から、アルキルアミンの分子量は50以上であることが好ましい。また、沸点は23℃以上であることが好ましく、更に50℃以上であることが好ましい。
用いられる上記銅粒子において、アルキルアミンの含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、低温焼成性の点から、銅100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、更に、0.1〜20質量部の範囲内であることがより好ましい。
(2)分散剤
上記銅粒子分散体において、銅粒子の分散性を向上する点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、銅粒子を分散可能な従来公知の分散剤の中から適宜選択して用いることができる。本発明においては、銅粒子の凝集を防ぎ、分散性及び分散安定性に優れ、多孔性銅層中に基材が浸漬しやすい適切な孔を形成して密着性及び導電性を向上する点から、分散剤として酸価及びアミン価の少なくとも1種を有する高分子分散剤を用いることが好ましい。
上記高分子分散剤としては、中でも、アミン価及び酸価の一方が30〜160mgKOH/g、アミン価及び酸価の他の一方が0〜160mgKOH/gである高分子分散剤であり、塩基性官能基及び酸性官能基の少なくとも1種を有するものが好ましい。
塩基性官能基としては一級、二級、又は三級アミノ基、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環等をあげることができる。また、酸性官能基としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
なお、アミン価とは、遊離塩基、塩基の総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に対して当量の水酸化カリウムのmg数で表したものである。また、酸価とは、遊離酸、酸の総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表したものである。アミン価はJIS−K7237に準拠した方法で、酸価はJIS−K0070に準拠した方法で測定することができる。
上記特定のアミン価及び酸価を有する高分子分散剤が、銅粒子と安定して吸着することにより、分散性及び分散安定性が向上するため、銅粒子の分散粒径を小さくすることができる。そのため、上記高分子分散剤を用いると銅粒子分散体の塗膜の平滑性、均一性が優れたものとなり、また塗膜中の銅粒子は高密度に配列する。従って、焼結が均一に進行し易く、銅粒子同士が融着し易い。また当該高分子分散剤は、上記アルキルアミンとの相乗効果によって焼成により分解乃至揮散されやすく、得られた導電性基板は、有機成分の残存が抑制される。これらの結果、得られた多孔性銅層は導電性に優れると推定される。
上記高分子分散剤は、上述の理由から、アミン価及び酸価の一方が30〜160mgKOH/g、アミン価及び酸価の他の一方が0〜160mgKOH/gであるが、中でも、アミン価及び酸価の一方が40〜140mgKOH/gであり、アミン価及び酸価の他の一方が0〜140mgKOH/gであることが、好ましい。
上記高分子分散剤としては、分散性と塗布適性が優れる点から、重量平均分子量が、800以上であることが好ましく、更に900以上であることが好ましく、特に1000以上であることが好ましい。一方で、低温焼成性が優れる点から、50000以下であることが好ましく、更に30000以下であることが好ましく、特に20000以下であることが好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定することができる。
また、上記高分子分散剤は、90%熱重量減少温度が450℃以下であること、更に420℃以下であることが、低温焼成性及び焼結後の塗膜の導電性が優れる点から好ましい。なお、ここでの90%熱重量減少温度は、熱重量測定(TG)により次のようにして測定した値とする。熱重量測定装置(例えば、島津製作所製DTG−60A)を用い、試料約5mgについて窒素雰囲気下で測定する。昇温速度は10℃/分とし、室温(23℃)〜600℃まで測定する。本発明においては、室温時点の試料重量を基準に90%が減量した時点の温度を90%熱重量減少温度と定義する。
上記アミン価及び酸価の一方が30〜160mgKOH/g、アミン価及び酸価の他の一方が0〜160mgKOH/gである高分子分散剤は、通常、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている高分子分散剤から適宜選択して用いることができる。
上記高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
本発明において用いられる高分子分散剤としては、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に、ポリエステル骨格又はポリエーテル骨格を有することが好ましい。このような高分子分散剤は、その骨格構造に起因して、低温での焼成により分解されやすく、有機物が残存しにくいため、焼成後の膜の導電性に優れている。
上記銅粒子分散体において、上記分散剤としては、1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量は、用いる銅粒子の種類等に応じて適宜設定されるが、銅粒子100質量部に対して、通常、0.1〜100質量部の範囲であり、1〜50質量部であることが好ましく、2〜30質量部であることがより好ましい。
上記高分子分散剤の含有量が上記下限値以上であれば、銅粒子分散体の分散性及び分散安定性を優れたものとすることができる。また上記上限値以下であれば、焼成後の多孔性銅層の導電性に優れている。
(3)溶媒
上記銅粒子分散体は、通常、溶媒を含有する。銅粒子分散体に用いられる溶媒としては、銅粒子分散体中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶媒であればよく、特に限定されない。銅粒子分散体に従来用いられている有機溶媒を適宜選択して用いれば良い。中でも、溶媒として、MBA(酢酸3−メトキシブチル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)又はこれらを混合したものが、上記高分子分散剤の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
上記銅粒子分散体における溶媒の含有量は、該銅粒子分散体の各構成を均一に溶解又は分散することができるものであればよく、特に限定されない。本発明においては、該銅粒子分散体中の固形分含有量が、5〜95質量%の範囲が好ましく、10〜90質量%の範囲がより好ましい。上記範囲であることにより、塗布に適した粘度とすることができる。
(4)その他の成分
上記銅粒子分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、従来銅粒子分散体に用いられている公知のその他の成分を適宜含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、錯化剤、有機保護剤、還元剤、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤、等が挙げられる。また、本発明の効果が損なわれない限り、他の分散剤が含まれていてもよい。更に、本発明の効果が損なわれない範囲で、造膜性、印刷適性や分散性の点から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、オレフィン樹脂等の樹脂バインダーを添加してもよい。
(5)銅粒子分散体の調製方法
銅粒子分散体の調製方法は、銅粒子を良好に分散できる方法であればよく、従来公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、まずカルボン酸及びアルキルアミンが付着した銅粒子を準備し、当該銅粒子を、従来公知の方法により、溶媒中で上記高分子分散剤により分散する方法が挙げられる。
カルボン酸及びアルキルアミンが付着した銅粒子を準備する方法としては、製造時に保護剤としてカルボン酸及びアルキルアミンを用いて製造された銅粒子を用いても良いし、他の保護剤を用いて製造された銅粒子の保護剤を公知の方法でカルボン酸やアルキルアミンに置換しても良い。
中でも、本発明において、好ましい銅粒子分散体の調製方法は、銅を含む化合物、還元性化合物、カルボン酸、及びアルキルアミンを含む混合物、又は、カルボン酸銅、還元性化合物、及びアルキルアミンを含む混合物のいずれかを加熱することにより銅粒子を調製する工程と、前記銅粒子を、前記分散剤により溶媒中で分散することにより、銅粒子分散体を調製する工程とを有することが好ましい。
上記銅粒子を調製する工程は、例えば特開2012−72418号公報に記載の被覆銅微粒子の製造方法などを参照して調製することができる。
前記調製工程で得られた銅粒子を、溶媒中で前記特定の高分子分散剤により分散することにより、動的光散乱法による体積平均粒径が500nm以下である銅粒子分散体を調製することが好ましい。
例えば、前記特定の高分子分散剤を前記溶媒に混合、攪拌し、高分子分散剤溶液を調製した後、当該高分子分散剤溶液に、前記調製工程で得られた銅粒子と、必要に応じて他の成分を混合し、公知の攪拌機、又は分散機等を用いて分散させることよって、銅粒子分散体を調製することができる。
なお、本発明において体積平均粒径は、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、銅粒子分散体に用いられている溶媒で、銅粒子分散体をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。
(絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜の形成)
基材上に絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜を形成する方法は、従来公知の塗布乃至印刷方法の中から適宜選択すればよい。例えば、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、コールコート法、スピンコート法などの塗布手段を用いて基材上に塗布することにより塗膜を形成することができる。
絶縁樹脂層形成用組成物中に熱可塑性樹脂を含む場合には、得られた塗膜は、通常の方法で乾燥してもよい。
また、絶縁樹脂層形成用組成物中に熱硬化性樹脂を含む場合には、得られた塗膜を乾燥し、或いは半硬化させる。熱硬化性樹脂を完全に硬化させない温度で乾燥乃至半硬化することにより、銅粒子の焼成時に、銅粒子分散体と混合し得る流動性に調整することができる。
(銅粒子分散体の塗膜の形成)
上記銅粒子分散体を前記絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜上に塗布する方法は、従来公知の塗布乃至印刷方法の中から適宜選択すればよい。中でも、導電性パターンを印刷するに当たり、微細なパターニングを行うことができる点から、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、反転オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷が好ましい。或いは、塗布方法には全面を塗布する場合も包含される。全面塗布の場合には、当該塗膜を焼成処理して得られる多孔性銅層に対して、公知の化学エッチング法によりパターンを形成することが可能である。
基材上の銅粒子分散体は、塗布後、通常の方法で乾燥してもよい。
(塗膜の焼成)
上記により得られた絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜と銅粒子分散体の塗膜の積層体を焼成することにより、銅粒子同士が融着して焼結膜を形成し、多孔性銅層が得られると共に、前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する絶縁樹脂層由来成分含有領域が形成される。
焼成方法は、従来公知の焼成方法の中から適宜選択して用いることができる。焼成方法の具体例としては、例えば、焼成炉(オーブン)により加熱する方法の他、赤外線加熱、各種レーザーアニール、紫外線、可視光、フラッシュ光による光照射焼成、マイクロ波加熱、プラズマ焼成などの方法が挙げられ、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
本発明において焼成方法は、最大厚みが100nmより大きい含有領域を形成するために、焼成炉(オーブン)により加熱する方法が好ましい。
焼成温度は特に限定されないが、300〜500℃であることが好ましく、320℃〜450度であることがより好ましい。また、銅粒子の焼成と、熱硬化性樹脂の硬化反応を十分に行う点から、20分以上加熱することが好ましく、30〜90分加熱することがより好ましい。
このようにして得られた導電性基板の多孔性銅層は、上記含有領域を有するため、絶縁樹脂基材との密着性に優れると共に、体積抵抗率が40μΩ・cm以下を達成することができる。
本発明において多孔性銅層の体積抵抗率は、表面抵抗計(例えば、ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用い、導電性基板上の多孔性銅層に4探針を接触させ、4探針法により表面抵抗を測定し、上記含有領域の厚み測定において求めた(A)含有領域を含む多孔性銅層の厚みの結果を用いて、体積抵抗率を算出することができる。
また、本発明の導電性基板において多孔性銅層は、表面が平滑で低抵抗であって、また、基材との界面に空隙が発生しにくく、密着性が良好で、且つ適度な空隙を有している。そのため、前述のように全面塗布により多孔性銅層を形成後に、更に化学的エッチングすることにより、微細な配線を形成することにも適している。
化学的エッチングによるパターン形成は、全面塗布による多孔性銅層に対し、フォトレジストを塗布するか又はドライフィルムレジストをラミネートしてフォトレジスト層を形成し、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィ法により露光、現像してパターンを形成した後、塩化第二鉄、塩化第二銅、リン硝酢酸などによるエッチングを行い、残ったレジストを剥離して、パターン状の多孔性銅層を形成することができる。
また、基材上に、前記銅粒子分散体をパターン状に塗布して、塗膜を形成し、該塗膜を焼成して、パターン状の多孔性銅層を形成するパターン状導電性基板の製造方法であってもよい。
本発明の導電性基板は、密着性及び導電性に優れている。このような導電性基板を用いた電子部材としては、表面抵抗の低い電磁波シールド用フィルム、導電膜、フレキシブルプリント配線板などに有効に利用することができる。また、本発明の導電性基板において多孔性銅層は、めっき用のシード層等とすることができ、例えば、光学装置用の鏡面や、各種装飾用途等に用いることができる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(合成例1:銅粒子の合成)
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 10.0g(0.1mol、和光純薬工業製)、ノナン酸 31.5g(0.2mol、東京化成工業製、沸点254℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 18.5g(20ml、関東化学製)を量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol、東京化成工業製、沸点130℃)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を、氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 10.0g(0.2mol、関東化学製)をPGME 18.5g(20ml、関東化学製)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン 33g(50ml、関東化学製)を添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ノナン酸とヘキシルアミンで被覆された銅粒子を得た。
(調製例1:銅粒子分散体の調製)
合成例1で得られた銅粒子40質量部、高分子分散剤としてDISPERBYK−111(ビックケミー・ジャパン製、酸価129mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、重量平均分子量1700、90%熱重量減少温度が320.4℃)4質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)56質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅粒子分散体1を得た。
(調製例2:絶縁樹脂層形成用組成物の調製)
ポリイミド前駆体を固形分が5質量%なるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、これを絶縁樹脂層形成用組成物1とした。
(実施例1:導電性基板の製造)
SUS箔(厚さ18μm)/ポリイミド膜(厚さ10μm)からなるベース基材に絶縁樹脂層形成用組成物1をスピンコートで塗布し、80℃3分間乾燥した後250℃で10分間乾燥し、絶縁性樹脂層形成用組成物の乾燥塗膜を得た。
次いで、当該乾燥塗膜上に、上記銅粒子分散体1を、スピンコートで塗布し、80℃で3分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下、350℃で1時間加熱することにより、絶縁樹脂層の厚み400nm、多孔性銅層の厚み560nm、絶縁樹脂層由来成分含有領域の厚み280nmの導電性基板1を得た。
(実施例2:導電性基板の製造)
前記実施例1において、絶縁樹脂層の乾燥時間を80℃3分間乾燥した後250℃30分 とした以外は、実施例1と同様にして、絶縁樹脂層の厚み400nm、多孔性銅層の厚み500nm、絶縁樹脂層由来成分含有領域の厚み110nmの導電性基板2を得た。
(比較例1:導電性基板の製造)
SUS箔(厚さ18μm)/ポリイミド膜(厚さ10μm)からなるベース基材に、上記銅粒子分散体1を、スピンコートで塗布し、80℃で3分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下、350℃で1時間加熱することにより、絶縁樹脂層由来成分含有領域を有しない導電性基板を得た。
<含有領域の厚み測定>
上記実施例及び比較例で導電性基板について、含有領域の厚みの測定を行った。各実施例、及び比較例で作製した導電性基板について、FIB(日立ハイテク製 FB−2100)を用いて銅層の断面を作製した。その後、SEM(日立ハイテク製 S−4800)を用いて基板を45°傾斜させた状態にて銅層断面を観察し、SEM像より(A)含有領域を含む多孔性銅層の厚みと、(B)絶縁樹脂層と多孔性銅層の合計の厚みをそれぞれ求めた。次いで、塩化第2鉄(関東化学製)を用いて、当該導電性基板の銅成分を溶解した。当該溶解後の基板のSEM像から、(C)絶縁樹脂層と含有領域中の樹脂成分との合計の厚みを求めた。上記(A)〜(C)の厚みから含有領域の厚みを算出した。結果を表1に示す。また、上記厚み測定の際に撮影された実施例1及び比較例1の導電性基板のTEM写真を図4及び図5に示す。
上記実施例及び比較例で導電性基板について、導電性評価を行った。表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用い、各実施例、及び比較例の導電性基板の多孔性銅層に4探針を接触させ、4探針法により表面抵抗を測定した。結果を表1に示す。
<密着性評価1>
実施例1〜2及び比較例1の導電性基板を、JIS K5600−5−6のクロスカット法に準拠して、密着性の評価を行った。すなわち、実施例及び比較例の導電性基板の多孔性銅層側から、カッターナイフを用いて1mm間隔で碁盤目状に切れ込みを入れ、100マスの格子を形成した。次いで、当該格子上にセロハンテープ(ニチバン(株))を貼り付けた後剥離して、銅層の剥離を観察した。結果を表1に示す。表1中、N/100とあるのは、100マス中、Nマスが剥離しなかったことを示す。
<密着性評価2>
(1)銅めっき層の積層
実施例1〜2の導電性基板の多孔性銅層上に、次の方法により銅めっき層を形成した。
まず各導電性基板をアルカリ脱脂液(クリーナー160(Meltex製)50g/L)に1分間浸漬した後、水洗した。次いで、酸洗浄液(エンスアシッド82N(Meltex製)50g/L、硫酸(関東化学製)20mL/L)に1分間浸漬した後、水洗した。
洗浄後の導電性基板を下記めっき液に浸漬し、下記の条件で10μm厚みになるようにめっきした。
<めっき液組成>
硫酸 190g/L(関東化学)
硫酸銅 75g/L(和光純薬工業)
塩酸 135μL/L(関東化学)
カパーグリームST−901A 2mL/L(ロームアンドハース)
カパーグリームST−901B 20mL/L(ロームアンドハース)
<めっき条件>
陽極:含リン銅
陽極サイズ:陰極サイズの2倍
陰極電流密度:1.5A/dm2
処理時間: 20分(めっき膜厚10μm)
(2)銅めっき層が形成された実施例1〜2及び比較例1の導電性基板を、前記密着性評価1と同様にして密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
密着性評価2において密着性に優れていることが確認された10μm厚の銅めっき層が形成された実施例1の導電性基板から、3mm×60mmの剥離強度測定用パターンを作製し、90°剥離試験にてピール強度(剥離強度)を測定したところ、剥離強度が0.33kN/mであり、優れた密着性を有することが明らかとなった。
<導電性基板の元素分析>
実施例1及び比較例1の導電性基板について、X線光電子分光計( サーモサイエンティフィック社製、Theta−Probe(装置名))を用いて以下の通り元素分析を行った。
導電性基板の多孔性銅層側表面を最表面とし、イオンスパッタ(イオン種Ar(3.0keV)、加速電圧 3.0kV、エミッション電流6.0mA、エッチング範囲2mm角、入射角45度)により、当該最表面から基材側に向かってエッチングを繰り返しながら、X線光電子分光計を用いて光電子を測定し、炭素原子由来の光電子、酸素原子由来の光電子、及び銅原子由来の光電子の比率から、各測定点における元素分率(At%)を求め、深さ方向のプロファイルを得ることができる。なお、本発明においては、酸素原子、炭素原子、及び銅原子の合計を100At%として、各元素の元素分率を算出した。結果を図6〜7に示す。
[結果のまとめ]
含有領域を有しない比較例1の導電性基板は、表面抵抗値は良好なものの密着性が得られなかった。含有領域の最大厚みが100nmを超えている実施例1及び実施例2の導電性基板は、密着性に優れ、導電性にも優れていた。更に、含有領域の最大厚みが280nmである実施例1の導電性基板は、多孔性銅層をシード層とし銅めっき層を積層した場合であっても密着性が低下しないことが明らかとなった。
<元素分析結果の考察>
次に、実施例1(図6)及び比較例1(図7)の結果を参照して導電性基板の評価を行う。図6は、実施例1の導電性基板の深さ方向プロファイルである。また、図7は、比較例1の導電性基板の深さ方向プロファイルである。図6及び図7は、縦軸に算出された元素分率を、横軸にエッチングタイムを示す。エッチング前の点(エッチングタイムが0(ゼロ)の点)は多孔性銅層側最表面の測定結果であり、以下エッチングタイムが長いほど、導電性基板の絶縁樹脂層側に進んでいく。なお、エッチングタイムが0〜100秒の部分は、導電性基板表面に付着した不純物などを検出しているため、この部分は評価の対象としないものとした。
実施例1及び比較例1の深さ方向プロファイルの結果の比較から明らかな通り、銅の元素分率が75%以上と十分に高く多孔性銅層内であると考えられる領域において、実施例1の炭素原子の元素分率が、比較例1の炭素原子の元素分率よりも有意に高い値を有している。このように実施例1の導電性基板は、多孔質銅層内に含有領域を有することが明らかとなった。
実施例1の結果から、深さ方向プロファイルにおいて銅原子の元素分率が75%を下回る部分から、急激に銅原子の元素分率が低下しており、銅原子の元素分率が75%の点は多孔性銅層の最下端付近となると考えられた。実施例1の結果から、銅原子の元素分率が75%以上の領域において、銅原子の元素分率に対する、炭素原子の元素分率の割合が15%以上である場合には、銅めっき層を積層した場合であっても密着性が低下しない、好ましい導電性基板となることが明らかとなった。
図4及び図5は、それぞれ実施例1及び比較例1の導電性基板の断面TEM(透過型電子顕微鏡)写真である。図4と図5の比較から明らかなように、実施例1の導電性基板においては、多孔性銅層が有する孔に絶縁樹脂層由来の樹脂が入り込んだ含有領域が形成されているのに対し、比較例1の導電性基板は、ポリイミド基材と、多孔性銅層との界面が明確となっており、含有領域が形成されていないことが明らかとなった。このように、実施例の導電性基板は、多孔性銅層が最大厚みが100nmより大きい前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する絶縁樹脂層由来成分含有領域を有することにより基材と多孔性銅層との密着性に優れた導電性基板となることが明らかとなった。
1 基材
2 絶縁樹脂層
3 多孔性銅層
4 絶縁樹脂層由来成分含有領域
4’ 銅除去後の含有領域
5 樹脂成分を有しない領域
10 導電性基板

Claims (3)

  1. 基材の一面側に、絶縁樹脂層と、多孔性銅層とがこの順に配置された積層体であって、
    前記多孔性銅層が、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有し、前記絶縁樹脂層由来成分含有領域の最大厚みが100nmより大きい、導電性基板。
  2. X線光電子分光(XPS)法により測定された前記絶縁樹脂層由来成分含有領域を含む前記多孔性銅層の元素分析において、銅原子の元素分率に対する、酸素原子の元素分率の割合が5%以下である、請求項1に記載の導電性基板。
  3. 前記多孔性銅層上に、更にめっき層が配置された、請求項1又は2に記載の導電性基板。
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