JP2016105449A - 導電性基板 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、このような金属粒子分散体を用いて回路パターンを形成する場合、得られる金属粒子の焼結膜は多孔質なものとなるため、前記フォトレジスト法と比較して、体積抵抗率を小さくすることや、基材と金属層との間の密着性を向上させにくいという問題があった。
特許文献2においては、金属薄膜層と絶縁性樹脂層の接触界面に金属酸化物が存在することにより、当該金属酸化物と、絶縁樹脂層中のイミド基又はアミド基との間で好ましい化学的結合を形成するとされている。
特許文献2の手法は、絶縁性樹脂層上に金属酸化物分散体を塗布して薄膜とし、当該薄膜上にめっき層を形成して金属層とするものであり、上記金属酸化物分散体の薄層のみで導電性を得られるものではなく、めっき層により導電性を確保していた。また、めっき層形成時に用いられるめっき液などにより上記薄層中の金属酸化物が溶解しやすく、密着性が不十分となることがあった。
前記多孔性銅層が、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有し、前記絶縁樹脂層由来成分含有領域の最大厚みが100nmより大きいことを特徴とする。
本発明に係る導電性基板は、基材の一面側に、絶縁樹脂層と、多孔性銅層とがこの順に配置された積層体であって、
前記多孔性銅層が、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有し、前記絶縁樹脂層由来成分含有領域の最大厚みが100nmより大きいことを特徴とする。
前記含有領域4においては、多孔性銅層3の複雑に入り組んだ孔の内部にまで絶縁樹脂層由来の樹脂が入り込むため、平坦面の場合と比較して表面積が極めて大きいものとなるのみならず、アンカー効果により優れた密着性を得ることができる。
また、本発明の導電性基板の多孔性銅層3は、含有領域4においても実質的に酸化銅を有しておらず、金属銅粒子同士が焼結し、融着している。そのため、含有領域中の多孔性銅層も導電性に寄与し、優れた導電性を有している。このようなことから、導電性を低下させることなく、含有領域の最大厚みを100nmよりも大きくすることができ、その結果密着性も向上する。
このように本発明によれば、多孔性銅層自体が優れた導電性を有するため、薄層化した場合であっても導電性及び密着性に優れた導電性基板を得ることができる。
本発明において基材は、導電性基板に用いられる基材の中から、用途に応じて適宜選択することができ、1層のみからなるものであってもよく、2層以上の積層体であってもよい。基材の材料としては、例えば、ガラス、アルミナ、シリカ、SUS箔などの無機材料を用いることができ、さらに高分子材料や、紙などを用いることもできる。本発明においては、後述する絶縁樹脂層との密着性の点から、基材として、後述する絶縁樹脂層を配置する側の表面に高分子材料を用いた樹脂層を備えた基材を用いることが好ましい。
本発明の導電性基板は、基材上に絶縁樹脂層が設けられている。絶縁樹脂層を用いることにより、多孔性銅層から基材側への漏電を防ぎ、且つ、多孔性銅層の少なくとも一部に、当該絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する絶縁樹脂層由来成分含有領域が形成される。
絶縁性樹脂層の前駆体溶液として、熱硬化性樹脂を含む組成物を用いた場合には、当該熱硬化性樹脂を含む組成物の塗膜上に、銅粒子分散体を塗工した際に、前記熱硬化性樹脂は未硬化又は半硬化の状態であるため絶縁樹脂層由来成分含有領域を形成しやすく、次いで、多孔性銅層形成時の焼成において、絶縁樹脂層由来成分含有領域における上記熱硬化性樹脂の硬化反応が同時に進行するため、多孔性銅層と絶縁樹脂層との密着性が向上する。
熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、ビスマレイミド−トリアジン樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等が好ましい。
ポリアミック酸を構成する酸二無水物は、従来公知のものの中から適宜選択せればよい。得られるポリイミド樹脂の耐熱性及び低線熱膨張性の点から、テトラカルボン酸二無水物が好ましく、芳香族テトラカルボン酸二無水物がより好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が挙げられる。 またポリアミック酸を構成するジアミンは、従来公知のものの中から適宜選択すればよい。得られるポリイミド樹脂の耐熱性及び低線熱膨張性の点から、芳香族基を有するジアミンが好ましく、一つの芳香環に2つのアミノ基が結合しているジアミンであることが好ましい。このようなジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
なお、本発明において絶縁樹脂層由来成分含有領域は、多孔性銅層の一部として取り扱うものとし、上記絶縁樹脂層の厚みには、後述する絶縁樹脂層由来成分含有領域は含まれないものとする。
本発明の導電性基板においては、前記絶縁樹脂層上に多孔性銅層を備えており、当該銅層は、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有している。
本発明における多孔性銅層は、このような含有領域を有するため、前記絶縁樹脂層との密着性に優れている。
なお、本発明において多孔性銅層とは、多数の孔を有する銅層をいい、同じ体積をもつ孔のない銅層よりも表面積が拡大されている。
多孔性銅層中の孔の割合(空孔率)は、導電性と密着性を両立可能な範囲に適宜調整すればよく、特に限定されない。中でも、含有領域を形成しやすく、且つ、導電性に優れる点から、空孔率が5%〜25%であることが好ましく、10%〜20%であることがより好ましい。なお、本発明における空孔率は、銅が存在していない部分を表すものであり、前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在している部分も含まれる。
本発明において空孔率は、導電性基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)像から確認することができる。具体的には、得られたSEM像から孔の面積と、絶縁樹脂基材由来の成分の面積と、銅の面積とをそれぞれ算出し、孔の面積と前記絶縁樹脂基材由来の成分の面積との合計を、多孔性銅層の面積(即ち、孔の面積と前記絶縁樹脂基材由来の成分の面積と銅の面積との合計)で除することにより当該断面における空孔率を求めることができる。導電性基板の大きさに応じて適宜複数の断面について同様に空孔率を求め、その平均値を多孔性銅層の空孔率とする。
空孔率は、後述する製造方法において、銅粒子分散体に用いられる銅粒子の粒径や、分散剤の種類、焼成条件等により適宜調整することができる。
上記含有領域の最大厚みが200nm以上の場合には、多孔性銅層上に銅めっきにより厚膜化した場合であっても、導電性及び密着性に優れた導電性基板を得ることができる。含有領域の最大厚みが200nm以上の場合には、含有領域中の金属銅にめっき液が届きにくくなるため、めっき液の影響を受けにくくなる。そのため、多孔性銅層上に後述する金属めっき層を形成した場合であっても、密着性が低下しない。このように含有領域の最大厚みが200nm以上の場合には、密着性を低下させずに多孔性銅層上に銅めっきにより更に銅層の膜厚を厚くすることができ、導電性及び密着性に優れた導電性基板を得ることができる。
一方、導電性の点から、含有領域の最大厚みは、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましい。
まず、図2の例に示されるような基材1上に絶縁樹脂層2と多孔性銅層3とが積層した導電性基板の断面のSEM像から、(A)含有領域4を含む多孔性銅層3の厚みと、(B)絶縁樹脂層2と多孔性銅層3の合計の厚み、をそれぞれ求める。
次いで、銅を溶解し、且つ、樹脂成分は溶解しない溶媒乃至溶液(例えば、塩化第2鉄(FeCl3)溶液)を用いて、導電性基板の銅成分のみを溶解することにより、基材1上に、絶縁樹脂層2と、銅除去後の含有領域4’との積層体が得られる(図3参照)。図3の例に示されるように銅除去後の含有領域4’は、含有領域中の樹脂成分が残留している。当該積層体の断面のSEM像から、(C)絶縁樹脂層2と銅除去後の含有領域4’との合計の厚みを求めることができる。そして、上記(A)〜(C)の厚みから下記式1により、含有領域の厚みが算出できる。
式1: 含有領域の厚み = (A)の厚み+(C)の厚み−(B)の厚み
なお、上記図2の例では、基材としてガラス基材を用いている。基材として樹脂フィルムを用いた場合には、当該樹脂フィルムと絶縁樹脂層との界面が不明瞭となる場合がある。この場合は、上記含有領域の厚みの測定方法において、絶縁樹脂層の厚みの代わりに、基材と絶縁樹脂層との合計の厚みを用いることにより、上記と同様にして、含有領域の厚みを算出することができる。
また、本発明の導電性基板は、X線光電子分光(XPS)法により測定された前記含有領域を含む前記多孔性銅層の元素分析において、銅原子の元素分率が75%以上の領域において、銅原子の元素分率に対する、炭素原子の元素分率の割合が15%以上である場合には、金属めっき層を積層した場合であっても密着性が低下しない、導電性基板となる点から好ましい。
上記X線光電子分光計としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Theta−Probeを用いることができる。
本発明の導電性基板は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の層を有していてもよい。他の層としては、導電性基板に用いられる従来公知の層を適宜選択して用いることができる。例えば、更なる導電性向上の点から多孔質銅層上に金属めっき層を有していてもよい。
本発明は導電性に優れた多孔性銅層を有するため、そのままでも優れた導電性基板とすることができるが、より優れた導電性が得られる点から、多孔性銅層上に更にめっき層が配置されていてもよい。
金属めっき層は、前記多孔性銅層をめっき用のシード層として、従来公知の電界めっき法により形成することができる。特に本発明の導電性基板において、含有領域の最大厚みが200nm以上の場合には、めっき液に対する密着性の低下が抑制されるため、導電性及び密着性に優れた導電性基板を得ることができる。
金属めっき層の金属は、特に限定されないが、導電性の点から、銅、銀、金、ニッケル、亜鉛、クロムが好ましく、多孔性銅層との親和性の点から銅であることがより好ましい。
金属めっき層の厚みは、用途に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。通常、10nm〜30μmの範囲内であり、導電性と薄型化を両立する点から、100nm〜20μmであることが好ましい。
本発明において、上記含有領域を有する多孔性銅層を備えた導電性基板の製造方法は、特に限定されないが、多孔性銅層及び含有領域を効率よく製造可能な点から、銅粒子分散体を用いた、以下のような製造方法とすることが好ましい。
即ち、絶縁樹脂層形成用組成物と、銅粒子分散体とを準備する工程と、
基材上に、前記絶縁樹脂層形成用組成物を塗布して塗膜とする工程と、
前記絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜上に、前記銅粒子分散体を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を焼成することにより、多孔性銅層を形成すると同時に、前記多孔性銅層の少なくとも一部に、前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する含有領域を形成する工程とを有する、導電性基板の製造方法が好ましい。
以下、上記好ましい製造方法について説明する。なお、基材については前述のとおりであるので、ここでの説明は省略する。
上記好ましい製造方法においては、まず絶縁樹脂層形成用組成物を準備する。絶縁樹脂層形成用組成物は、焼成時に多孔性銅層と混在し得る樹脂を有し、焼成工程後に硬化して上記所定の絶縁性樹脂層を形成するものの中から適宜選択して用いることができる。
本発明において絶縁樹脂層形成用組成物は、前述したような熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物であることが好ましく、中でもポリイミド前駆体樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いることが、絶縁性及び密着性の点から好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂は、従来公知の物の中から適宜選択して用いることができる。
また、上記好ましい製造方法においては、銅粒子分散体を準備する。銅粒子分散体は市販品を用いてもよく、調製してもよい。銅粒子分散体は、少なくとも銅粒子と、これを分散する溶媒を有し、銅粒子の分散性の点、及び含有領域の形成性の点から、適宜分散剤を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明において銅粒子は、典型的には金属状態の銅粒子であるが、銅は非常に酸化され易い金属のため、金属状態の銅粒子の表面が一部酸化されて酸化物となっている場合が含まれていてもよいものである。
なお、上記銅粒子の平均一次粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(例えば、日立ハイテク製 H−7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の最長部の長さの平均値を平均一次粒径とすることができる。
また、化学還元法の1種としては、錯化剤及び有機保護剤の存在下で、含銅化合物と還元剤とを溶媒中で混合して生成する方法が挙げられる。
なお、上記の方法の他、市販の銅粒子を適宜用いることができる。
カルボン酸の具体例としては、特開2012−72418号公報の段落0029に記載のものを挙げることができ、中でも、炭素数が9以下のカルボン酸であることが、低温焼成性が良好になり、前記多孔性銅層の空孔率が適切な範囲となって導電性が向上する点から好ましい。また、分散性の点から炭素数が2以上のカルボン酸が用いられる。特に、炭素数が9以下の脂肪族カルボン酸であることが、分散性、低温焼成性が良好になり、導電性が向上する点から好ましい。なお、当該脂肪族カルボン酸は、飽和、不飽和のどちらでもよい。
上記カルボン酸は、極性が比較的弱く、焼成時に脱離しやすい点から、分子内に一つもしくは二つのカルボキシル基を有するカルボン酸を用いることが好ましく、更に分子内に一つのカルボキシル基を有するカルボン酸を用いることが好ましい。
アルキルアミンは、プロトンを捕捉する機能を有することにより、銅原子が酸化されることを防止していると推定される。
上記アルキルアミンの具体例としては、特開2012−72418号公報の段落0033〜0035に記載されたものを好適に挙げることができ、本発明においては、中でも、炭素原子及び水素原子以外の原子を含有しない炭化水素鎖を有するアルキルアミンであることが、密着性や導電性の点から好ましい。
上記アルキルアミンは、極性が比較的弱く、焼成時に脱離しやすい点から、分子内に一つもしくは二つのアミノ基を有するアルキルアミンを用いることが好ましく、分子内に一つのアミノ基を有するアルキルアミンがより好ましい。
また、本発明で用いられるアルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、沸点が300℃以下であることが好ましく、更に200℃以下であることが好ましい。一方で、銅粒子作製時、保管時の脱離、揮発防止の点から、アルキルアミンの分子量は50以上であることが好ましい。また、沸点は23℃以上であることが好ましく、更に50℃以上であることが好ましい。
上記銅粒子分散体において、銅粒子の分散性を向上する点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、銅粒子を分散可能な従来公知の分散剤の中から適宜選択して用いることができる。本発明においては、銅粒子の凝集を防ぎ、分散性及び分散安定性に優れ、多孔性銅層中に基材が浸漬しやすい適切な孔を形成して密着性及び導電性を向上する点から、分散剤として酸価及びアミン価の少なくとも1種を有する高分子分散剤を用いることが好ましい。
塩基性官能基としては一級、二級、又は三級アミノ基、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環等をあげることができる。また、酸性官能基としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
なお、アミン価とは、遊離塩基、塩基の総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に対して当量の水酸化カリウムのmg数で表したものである。また、酸価とは、遊離酸、酸の総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表したものである。アミン価はJIS−K7237に準拠した方法で、酸価はJIS−K0070に準拠した方法で測定することができる。
上記高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
上記高分子分散剤の含有量が上記下限値以上であれば、銅粒子分散体の分散性及び分散安定性を優れたものとすることができる。また上記上限値以下であれば、焼成後の多孔性銅層の導電性に優れている。
上記銅粒子分散体は、通常、溶媒を含有する。銅粒子分散体に用いられる溶媒としては、銅粒子分散体中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶媒であればよく、特に限定されない。銅粒子分散体に従来用いられている有機溶媒を適宜選択して用いれば良い。中でも、溶媒として、MBA(酢酸3−メトキシブチル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)又はこれらを混合したものが、上記高分子分散剤の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
上記銅粒子分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、従来銅粒子分散体に用いられている公知のその他の成分を適宜含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、錯化剤、有機保護剤、還元剤、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤、等が挙げられる。また、本発明の効果が損なわれない限り、他の分散剤が含まれていてもよい。更に、本発明の効果が損なわれない範囲で、造膜性、印刷適性や分散性の点から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、オレフィン樹脂等の樹脂バインダーを添加してもよい。
銅粒子分散体の調製方法は、銅粒子を良好に分散できる方法であればよく、従来公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、まずカルボン酸及びアルキルアミンが付着した銅粒子を準備し、当該銅粒子を、従来公知の方法により、溶媒中で上記高分子分散剤により分散する方法が挙げられる。
カルボン酸及びアルキルアミンが付着した銅粒子を準備する方法としては、製造時に保護剤としてカルボン酸及びアルキルアミンを用いて製造された銅粒子を用いても良いし、他の保護剤を用いて製造された銅粒子の保護剤を公知の方法でカルボン酸やアルキルアミンに置換しても良い。
上記銅粒子を調製する工程は、例えば特開2012−72418号公報に記載の被覆銅微粒子の製造方法などを参照して調製することができる。
例えば、前記特定の高分子分散剤を前記溶媒に混合、攪拌し、高分子分散剤溶液を調製した後、当該高分子分散剤溶液に、前記調製工程で得られた銅粒子と、必要に応じて他の成分を混合し、公知の攪拌機、又は分散機等を用いて分散させることよって、銅粒子分散体を調製することができる。
なお、本発明において体積平均粒径は、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、銅粒子分散体に用いられている溶媒で、銅粒子分散体をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。
基材上に絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜を形成する方法は、従来公知の塗布乃至印刷方法の中から適宜選択すればよい。例えば、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、コールコート法、スピンコート法などの塗布手段を用いて基材上に塗布することにより塗膜を形成することができる。
絶縁樹脂層形成用組成物中に熱可塑性樹脂を含む場合には、得られた塗膜は、通常の方法で乾燥してもよい。
また、絶縁樹脂層形成用組成物中に熱硬化性樹脂を含む場合には、得られた塗膜を乾燥し、或いは半硬化させる。熱硬化性樹脂を完全に硬化させない温度で乾燥乃至半硬化することにより、銅粒子の焼成時に、銅粒子分散体と混合し得る流動性に調整することができる。
上記銅粒子分散体を前記絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜上に塗布する方法は、従来公知の塗布乃至印刷方法の中から適宜選択すればよい。中でも、導電性パターンを印刷するに当たり、微細なパターニングを行うことができる点から、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、反転オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷が好ましい。或いは、塗布方法には全面を塗布する場合も包含される。全面塗布の場合には、当該塗膜を焼成処理して得られる多孔性銅層に対して、公知の化学エッチング法によりパターンを形成することが可能である。
基材上の銅粒子分散体は、塗布後、通常の方法で乾燥してもよい。
上記により得られた絶縁樹脂層形成用組成物の塗膜と銅粒子分散体の塗膜の積層体を焼成することにより、銅粒子同士が融着して焼結膜を形成し、多孔性銅層が得られると共に、前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する絶縁樹脂層由来成分含有領域が形成される。
焼成方法は、従来公知の焼成方法の中から適宜選択して用いることができる。焼成方法の具体例としては、例えば、焼成炉(オーブン)により加熱する方法の他、赤外線加熱、各種レーザーアニール、紫外線、可視光、フラッシュ光による光照射焼成、マイクロ波加熱、プラズマ焼成などの方法が挙げられ、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
焼成温度は特に限定されないが、300〜500℃であることが好ましく、320℃〜450度であることがより好ましい。また、銅粒子の焼成と、熱硬化性樹脂の硬化反応を十分に行う点から、20分以上加熱することが好ましく、30〜90分加熱することがより好ましい。
本発明において多孔性銅層の体積抵抗率は、表面抵抗計(例えば、ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用い、導電性基板上の多孔性銅層に4探針を接触させ、4探針法により表面抵抗を測定し、上記含有領域の厚み測定において求めた(A)含有領域を含む多孔性銅層の厚みの結果を用いて、体積抵抗率を算出することができる。
本発明の導電性基板は、密着性及び導電性に優れている。このような導電性基板を用いた電子部材としては、表面抵抗の低い電磁波シールド用フィルム、導電膜、フレキシブルプリント配線板などに有効に利用することができる。また、本発明の導電性基板において多孔性銅層は、めっき用のシード層等とすることができ、例えば、光学装置用の鏡面や、各種装飾用途等に用いることができる。
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 10.0g(0.1mol、和光純薬工業製)、ノナン酸 31.5g(0.2mol、東京化成工業製、沸点254℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 18.5g(20ml、関東化学製)を量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol、東京化成工業製、沸点130℃)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を、氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 10.0g(0.2mol、関東化学製)をPGME 18.5g(20ml、関東化学製)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン 33g(50ml、関東化学製)を添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ノナン酸とヘキシルアミンで被覆された銅粒子を得た。
合成例1で得られた銅粒子40質量部、高分子分散剤としてDISPERBYK−111(ビックケミー・ジャパン製、酸価129mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、重量平均分子量1700、90%熱重量減少温度が320.4℃)4質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)56質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅粒子分散体1を得た。
ポリイミド前駆体を固形分が5質量%なるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、これを絶縁樹脂層形成用組成物1とした。
SUS箔(厚さ18μm)/ポリイミド膜(厚さ10μm)からなるベース基材に絶縁樹脂層形成用組成物1をスピンコートで塗布し、80℃3分間乾燥した後250℃で10分間乾燥し、絶縁性樹脂層形成用組成物の乾燥塗膜を得た。
次いで、当該乾燥塗膜上に、上記銅粒子分散体1を、スピンコートで塗布し、80℃で3分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下、350℃で1時間加熱することにより、絶縁樹脂層の厚み400nm、多孔性銅層の厚み560nm、絶縁樹脂層由来成分含有領域の厚み280nmの導電性基板1を得た。
前記実施例1において、絶縁樹脂層の乾燥時間を80℃3分間乾燥した後250℃30分 とした以外は、実施例1と同様にして、絶縁樹脂層の厚み400nm、多孔性銅層の厚み500nm、絶縁樹脂層由来成分含有領域の厚み110nmの導電性基板2を得た。
SUS箔(厚さ18μm)/ポリイミド膜(厚さ10μm)からなるベース基材に、上記銅粒子分散体1を、スピンコートで塗布し、80℃で3分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下、350℃で1時間加熱することにより、絶縁樹脂層由来成分含有領域を有しない導電性基板を得た。
上記実施例及び比較例で導電性基板について、含有領域の厚みの測定を行った。各実施例、及び比較例で作製した導電性基板について、FIB(日立ハイテク製 FB−2100)を用いて銅層の断面を作製した。その後、SEM(日立ハイテク製 S−4800)を用いて基板を45°傾斜させた状態にて銅層断面を観察し、SEM像より(A)含有領域を含む多孔性銅層の厚みと、(B)絶縁樹脂層と多孔性銅層の合計の厚みをそれぞれ求めた。次いで、塩化第2鉄(関東化学製)を用いて、当該導電性基板の銅成分を溶解した。当該溶解後の基板のSEM像から、(C)絶縁樹脂層と含有領域中の樹脂成分との合計の厚みを求めた。上記(A)〜(C)の厚みから含有領域の厚みを算出した。結果を表1に示す。また、上記厚み測定の際に撮影された実施例1及び比較例1の導電性基板のTEM写真を図4及び図5に示す。
実施例1〜2及び比較例1の導電性基板を、JIS K5600−5−6のクロスカット法に準拠して、密着性の評価を行った。すなわち、実施例及び比較例の導電性基板の多孔性銅層側から、カッターナイフを用いて1mm間隔で碁盤目状に切れ込みを入れ、100マスの格子を形成した。次いで、当該格子上にセロハンテープ(ニチバン(株))を貼り付けた後剥離して、銅層の剥離を観察した。結果を表1に示す。表1中、N/100とあるのは、100マス中、Nマスが剥離しなかったことを示す。
(1)銅めっき層の積層
実施例1〜2の導電性基板の多孔性銅層上に、次の方法により銅めっき層を形成した。
まず各導電性基板をアルカリ脱脂液(クリーナー160(Meltex製)50g/L)に1分間浸漬した後、水洗した。次いで、酸洗浄液(エンスアシッド82N(Meltex製)50g/L、硫酸(関東化学製)20mL/L)に1分間浸漬した後、水洗した。
洗浄後の導電性基板を下記めっき液に浸漬し、下記の条件で10μm厚みになるようにめっきした。
<めっき液組成>
硫酸 190g/L(関東化学)
硫酸銅 75g/L(和光純薬工業)
塩酸 135μL/L(関東化学)
カパーグリームST−901A 2mL/L(ロームアンドハース)
カパーグリームST−901B 20mL/L(ロームアンドハース)
<めっき条件>
陽極:含リン銅
陽極サイズ:陰極サイズの2倍
陰極電流密度:1.5A/dm2
処理時間: 20分(めっき膜厚10μm)
(2)銅めっき層が形成された実施例1〜2及び比較例1の導電性基板を、前記密着性評価1と同様にして密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1及び比較例1の導電性基板について、X線光電子分光計( サーモサイエンティフィック社製、Theta−Probe(装置名))を用いて以下の通り元素分析を行った。
導電性基板の多孔性銅層側表面を最表面とし、イオンスパッタ(イオン種Ar+(3.0keV)、加速電圧 3.0kV、エミッション電流6.0mA、エッチング範囲2mm角、入射角45度)により、当該最表面から基材側に向かってエッチングを繰り返しながら、X線光電子分光計を用いて光電子を測定し、炭素原子由来の光電子、酸素原子由来の光電子、及び銅原子由来の光電子の比率から、各測定点における元素分率(At%)を求め、深さ方向のプロファイルを得ることができる。なお、本発明においては、酸素原子、炭素原子、及び銅原子の合計を100At%として、各元素の元素分率を算出した。結果を図6〜7に示す。
含有領域を有しない比較例1の導電性基板は、表面抵抗値は良好なものの密着性が得られなかった。含有領域の最大厚みが100nmを超えている実施例1及び実施例2の導電性基板は、密着性に優れ、導電性にも優れていた。更に、含有領域の最大厚みが280nmである実施例1の導電性基板は、多孔性銅層をシード層とし銅めっき層を積層した場合であっても密着性が低下しないことが明らかとなった。
次に、実施例1(図6)及び比較例1(図7)の結果を参照して導電性基板の評価を行う。図6は、実施例1の導電性基板の深さ方向プロファイルである。また、図7は、比較例1の導電性基板の深さ方向プロファイルである。図6及び図7は、縦軸に算出された元素分率を、横軸にエッチングタイムを示す。エッチング前の点(エッチングタイムが0(ゼロ)の点)は多孔性銅層側最表面の測定結果であり、以下エッチングタイムが長いほど、導電性基板の絶縁樹脂層側に進んでいく。なお、エッチングタイムが0〜100秒の部分は、導電性基板表面に付着した不純物などを検出しているため、この部分は評価の対象としないものとした。
実施例1及び比較例1の深さ方向プロファイルの結果の比較から明らかな通り、銅の元素分率が75%以上と十分に高く多孔性銅層内であると考えられる領域において、実施例1の炭素原子の元素分率が、比較例1の炭素原子の元素分率よりも有意に高い値を有している。このように実施例1の導電性基板は、多孔質銅層内に含有領域を有することが明らかとなった。
実施例1の結果から、深さ方向プロファイルにおいて銅原子の元素分率が75%を下回る部分から、急激に銅原子の元素分率が低下しており、銅原子の元素分率が75%の点は多孔性銅層の最下端付近となると考えられた。実施例1の結果から、銅原子の元素分率が75%以上の領域において、銅原子の元素分率に対する、炭素原子の元素分率の割合が15%以上である場合には、銅めっき層を積層した場合であっても密着性が低下しない、好ましい導電性基板となることが明らかとなった。
図4及び図5は、それぞれ実施例1及び比較例1の導電性基板の断面TEM(透過型電子顕微鏡)写真である。図4と図5の比較から明らかなように、実施例1の導電性基板においては、多孔性銅層が有する孔に絶縁樹脂層由来の樹脂が入り込んだ含有領域が形成されているのに対し、比較例1の導電性基板は、ポリイミド基材と、多孔性銅層との界面が明確となっており、含有領域が形成されていないことが明らかとなった。このように、実施例の導電性基板は、多孔性銅層が最大厚みが100nmより大きい前記絶縁樹脂層由来の樹脂が混在する絶縁樹脂層由来成分含有領域を有することにより基材と多孔性銅層との密着性に優れた導電性基板となることが明らかとなった。
2 絶縁樹脂層
3 多孔性銅層
4 絶縁樹脂層由来成分含有領域
4’ 銅除去後の含有領域
5 樹脂成分を有しない領域
10 導電性基板
Claims (3)
- 基材の一面側に、絶縁樹脂層と、多孔性銅層とがこの順に配置された積層体であって、
前記多孔性銅層が、その少なくとも一部に絶縁樹脂層由来成分含有領域を有し、前記絶縁樹脂層由来成分含有領域の最大厚みが100nmより大きい、導電性基板。 - X線光電子分光(XPS)法により測定された前記絶縁樹脂層由来成分含有領域を含む前記多孔性銅層の元素分析において、銅原子の元素分率に対する、酸素原子の元素分率の割合が5%以下である、請求項1に記載の導電性基板。
- 前記多孔性銅層上に、更にめっき層が配置された、請求項1又は2に記載の導電性基板。
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