以下、図面を参照しながら本実施形態の孔詰まり判定装置70について説明する。まず、図1を参照しながら本実施形態の孔詰まり判定装置70が適用されるエンジン冷却システム100について説明する。図1に示すように、エンジン冷却システム100は、エンジン10の内部を通過する第1冷却流路20と、エンジン10をバイパスする第2冷却流路30と、第1、第2冷却流路20,30に冷媒を循環させる冷媒ポンプ14とを備えている。
第1冷却流路20には上流側から直列に、冷媒ポンプ14と、内部に冷却流路が設けられて冷媒により冷却されるエンジン10と、エンジン10内部で温度が上昇した冷媒を冷却するラジェータ11と、冷媒温度により第1冷却流路20の冷媒の流れを開閉するサーモスタット13と、が接続されている。第1冷却流路20の冷媒ポンプ14とエンジン10との間の第1分岐点22と、サーモスタット13と冷媒ポンプ14との間の第2分岐点28との間は、エンジン10をバイパスする第2冷却流路30によって接続されている。第1冷却流路20のエンジン出口管24の第3分岐点25と、第2冷却流路30の第1分岐点22と第2分岐点28との間の第4分岐点31と、の間は接続管40によって接続され、接続管40には接続管40の冷媒の流れを開閉する切り替え弁50が取り付けられている。切り替え弁50は、電磁式アクチュエータで開閉動作するものである。図1では、電磁式アクチュエータ51は模式的に示す。切り替え弁50の弁体の中央には、弁が閉状態でも冷媒が内部を流通可能となるように孔(微小孔)52が設けられている。図1では、切り替え弁50をバイパスする管として孔(微小孔)52を模式的に表す。なお、図1のサーモスタット13、切り替え弁50は、エンジン10が冷間始動する際の状態を示しており、いずれも閉となっている。冷媒ポンプ14はモータ15で駆動される電動式であり、モータ15の回転数を検出する回転数センサ16が取り付けられている。また、第1冷却流路20のエンジン出口管24には、エンジン出口の冷媒温度を検出する温度センサ17が取り付けられている。
孔詰まり判定装置70は、内部にCPUと記憶部とを含むコンピュータであり、温度センサ17、回転数センサ16が接続され、各センサの検出データは孔詰まり判定装置70に入力される。また、冷媒ポンプ14を駆動するモータ15と切り替え弁50の電磁式アクチュエータ51とは、孔詰まり判定装置70とは別にエンジン10の動作全体を制御するECU60に接続されている。モータ15の回転数指令或いはモータ駆動デューティ比の信号はECU60から孔詰まり判定装置70に入力される。
図1に示す状態で、ECU60がエンジン10を始動すると、ECU60は、同時に冷媒ポンプ14を駆動するモータ15を始動して冷媒ポンプ14を始動する。この際、サーモスタット13、切り替え弁50はそれぞれ閉となっているので、冷媒は、図1の矢印に示すように、冷媒ポンプ14→吐出管21→第1分岐点22→エンジン入口管23→エンジン10→エンジン出口管24→第3分岐点25→孔(微小孔)52→第4分岐点31→第2分岐点28→冷媒ポンプ14と循環すると共に、エンジン10をバイパスして、冷媒ポンプ14→第1分岐点22→第2分岐点28→冷媒ポンプ14、と循環する。
ここで、図2を参照しながら、図1に示す孔(微小孔)52に冷媒が流れている場合と微小孔52が詰まって冷媒が流れていない場合のエンジン内部の冷媒温度の変化を説明する。微小孔52に冷媒が流れる場合、冷媒は図2に示すエンジン入口管23からエンジンブロックの内部に流入し、図2(b)に示すエンジンヘッドに通流し、エンジンヘッドに接続されているエンジン出口管24から外部に流出する。図2(a)の破線bに示すように、冷媒はエンジン10の内部に流入するとエンジン10の熱で温度が上昇し、そのまま、下流に向かってゆっくりと温度が上昇していく。そして、エンジン出口管24に設けられた温度センサ17の位置では温度T1に達する。一方、孔(微小孔)52が詰まっていてエンジン10の内部を冷媒が通流しない場合には、図2(a)に示す実線aに示すように、エンジン10の内部に滞留している冷媒は、エンジン10の熱によって温度が上昇するが、エンジン10の熱があまり伝わらないエンジン出口管24の近傍に滞留している冷媒の温度はあまり上昇せず、その温度は、図2(a)に示すように、温度T1より低い温度T0にとどまっている。つまり、エンジン冷間始動後のエンジン出口管24における冷媒の温度は、エンジン10の内部を冷媒が通流していない場合(孔(微小孔)52が詰まった場合)の方がエンジン10の内部を冷媒が通流している場合(孔(微小孔)52が詰まっていない場合)よりも低くなる。本実施形態の孔詰まり判定装置70は、上記の原理により孔(微小孔)52の詰まりの仮判定を行う。
以下、図3を参照しながら、本実施形態の孔詰まり判定装置70の動作について説明する。図3のステップS101に示すように、ECU60がエンジン10を冷間始動すると、冷媒ポンプ14のモータ15も始動され、冷媒ポンプ14が始動する。先に、図1を参照して説明したように、エンジン冷間始動の場合、サーモスタット13、切り替え弁50は閉となっているので、冷媒は、図1の矢印に示すように、冷媒ポンプ14→吐出管21→第1分岐点22→エンジン入口管23→エンジン10→エンジン出口管24→第3分岐点25→孔(微小孔)52→第4分岐点31→第2分岐点28→冷媒ポンプ14と循環すると共に、エンジン10をバイパスして、冷媒ポンプ14→第1分岐点22→第2分岐点28→冷媒ポンプ14と循環する。
図3のステップS102に示すように、孔詰まり判定装置70は、エンジン10を始動したら、温度センサ17によってエンジン出口管24中の初期冷媒温度T40を検出する。次に、孔詰まり判定装置70は、図3のステップS103に示すように、所定の時間が経過するまで待機する。所定の時間は、孔(微小孔)52が詰まっていない場合にエンジン出口冷媒温度T4が所定の温度まで上昇するのに必要な時間であって、例えば、3分或いは5分程度であってもよい。
図4(b)に示すように、時刻t1にエンジン10が冷間始動した後、孔(微小孔)52が詰まっておらず、エンジン10の内部及びエンジン出口管24に冷媒が流れている場合には、図4(b)の破線cに示すように、エンジン出口冷媒温度T4は、時刻t2に初期温度T40から上昇を開始し、所定の時間が経過した時刻t4には温度T41まで上昇する。一方、孔(微小孔)52が詰まっており、エンジン10の内部やエンジン出口管24の内部に冷媒が流れていない場合には、図4(b)の実線dに示すように、エンジン出口冷媒温度T4は、時刻t3まで初期温度T40であり、時刻t3になると温度センサの検出温度が上昇し始める。そして、所定の時刻t4には、温度T42まで上昇する。しかし、この温度T42は孔(微小孔)52が詰まっていない場合のエンジン出口冷媒温度T41よりも低い温度である。また、図4(b)の実線eに示すように、第1冷却流路20の中に冷媒が入っていない場合や冷媒注入直後の場合には、モータ15を駆動しても冷媒ポンプ14が空転してしまい、第1、第2冷却流路に冷媒が流れない。このため、エンジン出口冷媒温度T4は、孔(微小孔)52が詰まって冷媒が通流しない場合と同様、温度上昇が遅れる。つまり、孔(微小孔)52が詰まっている場合と冷媒ポンプ14が空転している場合とでは、図4(b)の実線d,eに示す様に、エンジン出口冷媒温度T4の時間に対する温度上昇度合いは略同等となる。
孔詰まり判定装置70は、図3のステップS104に示すように、所定時間経過後の時刻t4に再度エンジン出口冷媒温度T4を検出し、図3のステップS105に示すように、初期温度T40と所定時刻t4におけるエンジン出口冷媒温度T4との温度差ΔT4=(T4−T40)を計算する。そして、孔詰まり判定装置70は、この温度差ΔT4が所定の閾値ΔTS以上である場合(ΔT4がΔTS未満ではない場合)には、図3のステップS106でNOと判断し、図3ステップS113に示すように、孔(微小孔)52は詰まっていないと判断し(正常判断)、プログラムの実行を終了する。
一方、孔詰まり判定装置70は、図3のステップS106において、温度差ΔT4が所定の閾値ΔTS未満の場合には、図3のステップS106でYESと判断し、図3のステップS107に進む。先に説明したように、孔(微小孔)52が詰まっている場合と冷媒ポンプ14が空転している場合とでは、エンジン出口冷媒温度T4の時間に対する温度上昇度合いは略同等なので、この段階では、エンジン出口冷媒温度T4の上昇が遅れているものの、図4(b)に示す実線dのように実際に孔(微小孔)52が詰まっている場合なのか、図4(b)の実線eに示すように、冷媒ポンプ14が空転して冷媒が孔(微小孔)52を通流していないのかの判定ができない。このため、孔詰まり判定装置70は、孔(微小孔)52が詰まっているとの仮判定を行い、図3のステップS108に進む。
孔詰まり判定装置70は、図3のステップS108に示すように、冷媒ポンプ14が空転しているかどうかを確認したことがあるかどうかを確認する。そして、孔詰まり判定装置70は、一度冷媒ポンプ14の空転有無の確認をしている場合には、図3のステップS110に進み、冷媒ポンプ14の空転が無かった場合には、第1、第2冷却流路20は冷媒で満たされており、エンジン出口冷媒温度T4の上昇が遅れたのは、切り替え弁50の孔(微小孔)52が詰まったことが原因であると判断し、図3のステップS111に示すように孔詰まり判定、つまり、異常判定を確定し、ダイアグ等に故障表示を行う。一方、図3のステップS108で冷媒ポンプ14の空転有無確認履歴が無いと判断した場合、孔詰まり判定装置70は、図3のステップS109に示す冷媒ポンプ空転有無確認処理を実行する。孔詰まり判定装置70は、図1に示すECUに冷媒ポンプ14のモータ15の駆動デューティ、あるいは、回転数指令値(目標回転数)を増加する信号を出力すると共に、ECU16から増加させたモータ15の駆動デューティ、あるいは、回転数指令値(目標回転数)を取得する。また、孔詰まり判定装置70は、回転数センサ16によってモータ15の実回転数を取得する。そして、両者を比較し、モータ15の実回転数が回転数指令値(目標回転数)よりも大きく、その差分が所定の閾値ΔRSを超えている場合には、冷媒ポンプ14は空転していると判断する。また、モータ15の実回転数が回転数指令値(目標回転数)との差分が所定の閾値ΔRSを超えていない場合には、冷媒ポンプ14は空転していないと判断する。そして、孔詰まり判定装置70は、図3のステップS110で冷媒ポンプが空転していない場合には、図3のステップS111でYESと判断して図3のステップS111に進んで孔詰まり判定を確定し(異常確定し)、ダイアグ等に故障表示を行う。一方、冷媒ポンプ14が空転している場合には、図3のステップS110でNOと判断して図3のステップS112に進み、図3のステップS107で判定し孔詰まり仮判定を解除し、ダイアグには故障表示を行わない。
以上説明したように、本実施形態の孔詰まり判定装置70は、エンジン出口冷媒温度T4の上昇度合いにより孔52の詰まり判定を行う際に、エンジン出口冷媒温度T4の上昇遅れの原因が冷媒ポンプ14の空転によるものかどうかを確認してから孔詰まりの異常判定を確定させるようにしているので、孔詰まりの誤判定を抑制することができ、孔詰まり判定の信頼性を向上させることができる。
以上説明した実施形態では、所定時刻t4におけるエンジン出口冷媒温度T4との温度差ΔT4が所定の閾値ΔTS以上であるかどうかによって孔(微小孔)52の詰まり判定を行うようにしたが、例えば、所定時間当たりの温度上昇率=(ΔT4/(t4-0))と所定の温度上昇率とを比較して微小孔52の詰まり判定を行うようにしてもよい。